説明

含フッ素化合物の脱フッ素化法

【課題】穏和な条件下でも高い反応効率で含フッ素化合物中の炭素−フッ素結合を切断することができ、反応後には触媒を生成物から容易に分離して再利用することができる、含フッ素化合物の脱フッ素化法を提供する。
【解決手段】湿式にて含フッ素化合物を白金族金属触媒と接触させて、該含フッ素化合物中の炭素−フッ素結合を切断することを含む、含フッ素化合物からフッ素を脱離させる方法。前記白金族金属触媒は、炭素粒子と、該炭素粒子に担持され、白金、ルテニウムおよびイリジウムからなる群より選択される少なくとも1種の白金族金属とを含む触媒であることが好ましく、前記炭素粒子の比表面積は800〜2000m2/gであることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素原子を含有する有機化合物中の炭素−フッ素結合を切断し、該化合物からフッ素を脱離させる方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フッ素原子は水素原子に近似した大きさを持ち、また、全原子中最大の電気陰性度を有するという特徴を持つ。有機化合物にフッ素原子を導入することで化合物の熱安定性等を向上できることから、フッ素原子はテフロン(登録商標)、イオン液体などに利用されている。また、有機化合物にフッ素原子を導入することで、例えば化合物の立体構造を変えることなく脂溶性を向上させることができるため、フッ素原子は医薬品及び農薬にも利用されている。さらには、フッ素原子の導入によりC-HがC-Fへと変換されることでC-H伸縮振動によるエネルギーの損失(光吸収)を抑制することができることから、フッ素原子は光ファイバー、液晶材料など素材にも利用されている。しかしながら、一方でC-F結合は単結合の中で最も強固な結合であるため、含フッ素化合物は自然環境中において分解されにくく、脂溶性の高さから生体内に蓄積されるという問題がある。例えば、家庭用品などに使用されているテフロン又はゴアテックス(登録商標)に含有されるペルフルオロオクタンスルホン酸又はペルフルオロオクタン酸は、極めて安定で体内への残留性が高い有害化学物質であり、発癌性を示す場合があるため、国内外での使用規制及び削減が進んでいる。
【0003】
現在、これら有害な含フッ素化合物は過硫酸イオン存在下、紫外光線を照射する光化学反応又は亜臨界状態(250〜300℃、200気圧)での加水分解により分解されている。これらの分解法には、人体に有害である紫外線又は高温・高圧という過酷な反応条件を要し、亜臨界状態での加水分解の場合には亜臨界水の強力な酸化力に耐え得る特殊な反応容器及び設備が必要となる。このような背景から、穏和な条件下における含フッ素化合物の効率的な分解無毒化法の開発が望まれている。
【0004】
これまでに様々な金属触媒、リガンド、還元剤等を組み合わせた脱フッ素反応が報告されている。例えば、ニオブを触媒として用いLiAlH4を還元剤として用いた脱フッ素反応が報告されているが(非特許文献1)、LiAlH4を使用するためコスト高になり生産性が向上しにくいという問題がある。また、均一系ロジウム触媒を用いた接触還元条件下における脱フッ素化反応も報告されているが(非特許文献2)、この方法にも、高価な貴金属であるロジウムを使用する他、反応後の触媒の分離及び回収が難しいため、コスト高になり生産性の向上および省資源化が図りにくいという問題がある。その他、系中で不均一系ロジウム触媒を調製し脱フッ素化を行った例も報告されているが、加圧条件及び強塩基性条件を必要とする上、反応効率が低いという問題がある(非特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献1】K. Fuchibe, T. Akiyama, Syn.Lett 2004, 7, 1282
【非特許文献2】M. Aizenberg, D. Milstein, J. Am. Chem. Soc. 1995, 117, 8674
【非特許文献3】Robert J. Young, Jr., Organometallics 1999, 18, 294
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、穏和な条件下でも高い反応効率で含フッ素化合物中の炭素−フッ素結合を切断することができ、反応後には触媒を生成物から容易に分離して再利用することができる、含フッ素化合物の脱フッ素化法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意検討した結果、下記の方法により上記の目的を達成することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、湿式にて含フッ素化合物を白金族金属触媒と接触させて、該含フッ素化合物中の炭素−フッ素結合を切断することを含む、含フッ素化合物からフッ素を脱離させる方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の方法によれば、穏和な条件下でも高い反応効率で含フッ素化合物中の炭素−フッ素結合を切断することができる。また、第一に、反応系中には、白金族金属触媒、基質である含フッ素化合物、溶媒、及び場合により添加される塩基以外の特殊な成分を添加する必要がないことから、第二に、用いる白金族金属触媒は不均一系触媒であり、生成物から容易に分離することができることから、反応工程、装置、反応管理等を簡略化することができる。また、本発明で用いる白金族金属触媒は、反応後に分離し回収した後の触媒活性の低下は僅かであり、繰り返しの再使用が可能であるため、本発明の方法により、省資源化を実現することができ、また、生産コストを低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
<白金族金属触媒>
本発明で用いる白金族金属触媒は、通常、不均一系触媒であり、好ましくは、炭素粒子と、該炭素粒子に担持された白金族金属とを含む触媒(以下、白金族金属担持炭素触媒という場合がある)であり、より好ましくは、炭素粒子と、該炭素粒子に担持され、白金、ルテニウムおよびイリジウムからなる群より選択される少なくとも1種の白金族金属とを含む触媒である。白金族金属触媒中の白金族金属は、好ましくは白金、ルテニウムおよびイリジウムからなる群より選択される少なくとも1種の白金族金属である。白金族金属触媒の具体例としては、白金担持炭素触媒、ルテニウム担持炭素触媒、イリジウム担持炭素触媒等が挙げられる。
【0011】
−担体−
白金族金属担持炭素触媒において、炭素粒子は該触媒の担体である。炭素粒子は活性炭であることが好ましい。
【0012】
炭素粒子の比表面積は、600 m2/g以上であることが好ましく、800〜2,000 m2/gであることが更に好ましく、900〜1500 m2/gであることが特に好ましい。かかる比表面積を有する活性炭が最も好ましい。比表面積はBET法で測定した値である。
【0013】
また、炭素粒子の粒径は、特に限定されないが、メジアン径が0.5〜500μmの範囲であることが好ましく、5〜500μmが特に好ましい。メジアン径はレーザー散乱法により測定した値である。
【0014】
−触媒の調製方法(特に、炭素粒子への白金族金属の固定)−
白金族金属触媒は公知の方法により調製することができる。白金族金属担持炭素触媒の場合、炭素粒子への白金族金属の固定は、該炭素粒子に白金族金属を含む溶液を接触させることにより行うことができる。
【0015】
具体的には、本発明で用いる白金担持炭素触媒、ルテニウム担持炭素触媒、イリジウム担持炭素触媒等の白金族金属担持炭素触媒は、例えば、対応する白金族金属化合物を溶媒に溶解し、当該溶液中に炭素粒子を投入し、白金族金属化合物を吸着または含浸させることにより得ることができる。白金族金属を吸着または含浸などの方法で炭素粒子に担持した触媒に対しては、必要に応じて還元処理を実施してもよい。湿式で還元する場合には、メタノール、ホルムアルデヒド、蟻酸などの還元剤のほか、ガス状水素を用いることができる。乾式で還元する場合にはガス状水素を用いて行うが、水素ガスを窒素等の不活性ガスで希釈して使用することも可能である。こうして、通常、白金、ルテニウム、イリジウム等の白金族金属が炭素粒子に固定された白金族金属担持炭素触媒が得られる。
【0016】
触媒調製に用いる溶媒は、白金族金属化合物を溶解するものであれば特に制限されないが、塩化白金酸、ルテニウム酸ナトリウム、塩化ルテニウム、ヘキサクロロイリジウム(IV)酸カリウムなどの水溶性の白金族金属化合物を用いる場合には水が好ましく、ビス(アセチルアセトナト)白金、ドデカカルボニル三ルテニウム、トリス(アセチルアセトナト)イリジウムなどの非水溶性で有機溶媒に可溶な白金族金属化合物を用いる場合には、エタノール、アセトン、クロロホルム等の有機溶媒であって該白金族金属化合物を溶解するものが好適である。
【0017】
白金化合物としては、触媒調製工程に使用する溶媒に可溶性であれば特に限定されないが、例えば、ヘキサクロロ白金酸、ヘキサクロロ白金酸カリウム、ヘキサクロロ白金酸アンモニウム、テトラクロロ白金酸、テトラクロロ白金酸カリウム、テトラクロロ白金酸ナトリウム、テトラアンミン白金塩化物、テトラアンミン白金硫酸塩、ジクロロジアンミン白金、ジニトロジアンミン白金等の水溶性白金化合物;ビス(アセチルアセトナト)白金、ジクロロ(1,5−シクロオクタジエン)白金、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)白金、テトラキス(トリフェニルホスフィン)白金、ビス(ジベンジリデンアセトン)白金等の有機溶媒可溶性白金錯体が使用でき、ヘキサクロロ白金酸、ジクロロ(1,5−シクロオクタジエン)白金が好ましい。
【0018】
ルテニウム化合物としては、触媒調製工程に使用する溶媒に可溶性であれば特に限定されないが、例えば、ルテニウム酸ナトリウム、ヘキサアンミンルテニウム(II)塩化物、塩化ルテニウム等の水溶性ルテニウム化合物;ドデカカルボニル三ルテニウム、トリス(2,2’−ビピリジン)ルテニウムクロリド、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、シクロオクタジエン(シクロオクタトリエン)ルテニウム等の有機溶媒可溶性ルテニウム錯体が使用でき、塩化ルテニウム、ドデカカルボニル三ルテニウムが好ましい。
【0019】
イリジウム化合物としては、触媒調製工程に使用する溶媒に可溶性であれば特に限定されないが、例えば、ヘキサクロロイリジウム(IV)酸カリウム、ヘキサクロロイリジウム(IV)酸等の水溶性イリジウム化合物;トリス(アセチルアセトナト)イリジウム、クロロカルボニルビス(トリフェニルホスフィン)イリジウム等の有機溶媒可溶性イリジウム錯体が使用でき、ヘキサクロロイリジウム(IV)酸カリウムが好ましい。
【0020】
前記炭素粒子1g当たりの白金族金属の担持量は、特に制限されないが、白金族金属元素に換算して、好ましくは1.0μmol〜5mmol、より好ましくは10μmol〜3mmol、特に好ましくは100μmol〜2mmolである。
【0021】
なお、本発明の方法に使用される白金族金属触媒、例えば、白金、ルテニウム、イリジウム等の白金族金属が炭素粒子に担持された白金族金属担持炭素触媒において、白金族金属成分の存在状態は特に限定されない。例えば、元素の状態にあってもよいし、一部が酸化された状態にあってもよいし、水酸化物の状態にあってもよい。通常、白金金属、ルテニウム金属、イリジウム金属等の金属状態もしくは酸化白金(II)、酸化ルテニウム(IV)、酸化イリジウム(IV)等の酸化状態またはこれらが混合した状態にあると考えられる。
【0022】
<含フッ素化合物中の炭素−フッ素結合の切断方法>
湿式にて含フッ素化合物を白金族金属触媒と接触させることにより、該含フッ素化合物中の炭素−フッ素結合を切断することができる。「湿式にて」とは、通常、「溶媒の存在下で」を意味し、好ましくは「溶媒中で」を意味する。
【0023】
本発明において触媒は、含フッ素化合物に対して、白金族金属元素として、好ましくは0.01〜20モル%、より好ましくは0.1〜10モル%、更により好ましくは0.5〜5モル%の範囲で用いられる。
【0024】
本発明において用いられる含フッ素化合物は、炭素−フッ素結合を有する化合物である限り、特に制限されない。芳香環に直接結合したフッ素原子と該芳香環内に存在し該フッ素原子が直接結合する炭素原子との間において炭素−フッ素結合の切断反応が特に容易に進行することから、含フッ素化合物は芳香環と該芳香環に結合したフッ素原子とを含む化合物であることが好ましい。
【0025】
炭素−フッ素結合切断反応において含フッ素化合物と白金族金属触媒との接触に使用される溶媒は、特に制限されないが、イソプロパノールが特に好ましい。
【0026】
本発明の好ましい一実施形態において、炭素−フッ素結合切断反応における含フッ素化合物と白金族金属触媒との接触は水の存在下で行われる。反応系に水が存在すると前記切断反応が加速されやすい。特に、水の存在下、イソプロパノール中で前記接触を行うと、前記切断反応が加速されやすい。前記接触を水の存在下で行う場合、水の量は特に制限されないが、イソプロパノール等の溶媒100容量部に対し、好ましくは5〜200容量部、より好ましくは25〜150容量部である。
【0027】
本発明の好ましい一実施形態において、炭素−フッ素結合切断反応における含フッ素化合物と白金族金属触媒との接触は塩基の存在下で行われる。反応系に塩基が存在すると前記切断反応が加速されやすい。塩基は、特に制限されず、トリエチルアミン等の有機塩基でも、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機塩基でもよいが、無機塩基が好ましく、それらの中でも炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウムが特に好ましい。
【0028】
本発明において炭素−フッ素結合切断反応は、例えば、室温から200℃の温度領域で1〜48時間程度で行われる。反応温度は80〜140℃であることが特に好ましい。
【実施例】
【0029】
以下に本発明の実施例を含む実験を示し、本発明について更に詳細に説明する。本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0030】
[1]実験1−1〜1−7(触媒の検討)
炭素粒子に担持する金属の種類を変えて以下の実験1−1〜1−7を行った。結果を表1に示す。
【0031】
実験1−1
4−フルオロビフェニル37.0mg(0.25mmol)と、10重量%Pt/C(パラジウム担持炭素触媒、炭素粒子のBET法による比表面積1050 m2/g、炭素粒子のレーザー散乱法により測定したメジアン径:24μm、炭素粒子1g当たりの白金の担持量:白金元素に換算して0.57mmol、エヌ・イー ケムキャット(株)製、商品名:10%Pt-C(W)Kタイプ)14.6mg(白金元素として7.5μmol)と、イソプロパノール2.0mlとを、試験管に投入し、雰囲気をアルゴンに置換した。温度を100℃に上げ、12時間攪拌して反応を行った。その後、得られた反応液をメンブランフィルター(Millipore製、Millex−LH、孔径0.45μm)を用いてろ過し、更にメンブランフィルターをエーテル15mlで洗浄した。得られたろ液を濃縮し、得られた濃縮物をH−NMRにかけた。得られたスペクトルから、原料である4−フルオロビフェニルの回収率、ならびに、生成物として得られたビフェニルおよびシクロへキシルベンゼンの収率を算出した。なお、本明細書において、原料の回収率とは、反応に使用した原料に対する反応後も未反応のままの残留する原料のモル比をいい、生成物の収率とは、反応に使用した原料に対するその生成物のモル比をいう。
【0032】
実験1−2
実験1−1において、10重量%Pt/Cに代えて、10重量%Pd/C(パラジウム担持炭素触媒、エヌ・イー ケムキャット(株)製、商品名:10%Pd-C(W)Kタイプ)8.0mg(パラジウム元素として7.5μmol)を用いた以外は、実験1−1と同様に反応・後処理を行い、原料の回収率および生成物の収率を算出した。
【0033】
実験1−3
実験1−1において、10重量%Pt/Cに代えて、10重量%Rh/C(ロジウム担持炭素触媒、エヌ・イー ケムキャット(株)製、商品名:10%Rh-C(W)Kタイプ)7.7mg(ロジウム元素として7.5μmol)を用いた以外は、実験1−1と同様に反応・後処理を行い、原料の回収率および生成物の収率を算出した。
【0034】
実験1−4
実験1−1において、10重量%Pt/Cに代えて、10重量%Ir/C(イリジウム担持炭素触媒、炭素粒子のBET法による比表面積1050 m2/g、炭素粒子のレーザー散乱法により測定したメジアン径:24μm、炭素粒子1g当たりのイリジウムの担持量:イリジウム元素に換算して0.58mmol、エヌ・イー ケムキャット(株)製、商品名:10%Ir-C(W)Kタイプ)14.4mg(イリジウム元素として7.5μmol)を用いた以外は、実験1−1と同様に反応・後処理を行い、原料の回収率および生成物の収率を算出した。
【0035】
実験1−5
実験1−1において、10重量%Pt/Cに代えて、10重量%Au/C(金担持炭素触媒、エヌ・イー ケムキャット(株)製)14.8mg(金元素として7.5μmol)を用いた以外は、実験1−1と同様に反応・後処理を行い、原料の回収率および生成物の収率を算出した。
【0036】
実験1−6
実験1−1において、10重量%Pt/Cに代えて、10重量%Ru/C(ルテニウム担持炭素触媒、炭素粒子のBET法による比表面積1050 m2/g、炭素粒子のレーザー散乱法により測定したメジアン径:24μm、炭素粒子1g当たりのルテニウムの担持量:ルテニウム元素に換算して1.10mmol、エヌ・イー ケムキャット(株)製、商品名:10%Ru-C(W)Kタイプ)7.6mg(ルテニウム元素として7.5μmol)を用いた以外は、実験1−1と同様に反応・後処理を行い、原料の回収率および生成物の収率を算出した。
【0037】
実験1−7
実験1−1において、10重量%Pt/Cに代えて、10重量%Ni/C(ニッケル担持炭素触媒、エヌ・イー ケムキャット(株)製)4.4mg(ニッケル元素として7.5μmol)を用いた以外は、実験1−1と同様に反応・後処理を行い、原料の回収率および生成物の収率を算出した。
【0038】
【表1】

【0039】
[2]実験2−1〜2−11(溶媒の検討)
反応に用いる溶媒の種類を変えて以下の実験2−1〜2−11を行った。結果を表2に示す。
【0040】
実験2−1
実験1−1において、反応溶媒としてイソプロパノールに代えて、アセトニトリルを用いた以外は、実験1−1と同様に反応・後処理を行い、原料の回収率および生成物の収率を算出した。
【0041】
実験2−2
実験1−1において、反応溶媒としてイソプロパノールに代えて、1,4−ジオキサンを用いた以外は、実験1−1と同様に反応・後処理を行い、原料の回収率および生成物の収率を算出した。
【0042】
実験2−3
実験1−1において、反応溶媒としてイソプロパノールに代えて、ジメチルスルホキシドを用いた以外は、実験1−1と同様に反応・後処理を行い、原料の回収率および生成物の収率を算出した。
【0043】
実験2−4
実験1−1において、反応溶媒としてイソプロパノールに代えて、ジメチルホルムアミドを用いた以外は、実験1−1と同様に反応・後処理を行い、原料の回収率および生成物の収率を算出した。
【0044】
実験2−5
実験1−1において、反応溶媒としてイソプロパノールに代えて、ジメチルアセトアミドを用いた以外は、実験1−1と同様に反応・後処理を行い、原料の回収率および生成物の収率を算出した。
【0045】
実験2−6
実験1−1において、反応溶媒としてイソプロパノールに代えて、シクロヘキセンを用いた以外は、実験1−1と同様に反応・後処理を行い、原料の回収率および生成物の収率を算出した。
【0046】
実験2−7
実験1−1において、反応溶媒としてイソプロパノールに代えて、テトラヒドロフランを用いた以外は、実験1−1と同様に反応・後処理を行い、原料の回収率および生成物の収率を算出した。
【0047】
実験2−8
実験1−1において、反応溶媒としてイソプロパノールに代えて、メタノールを用いた以外は、実験1−1と同様に反応・後処理を行い、原料の回収率および生成物の収率を算出した。
【0048】
実験2−9
実験1−1において、反応溶媒としてイソプロパノールに代えて、水を用いた以外は、実験1−1と同様に反応・後処理を行い、原料の回収率および生成物の収率を算出した。
【0049】
実験2−10
実験1−1において、反応溶媒としてイソプロパノールに代えて、tert−ブタノールを用いた以外は、実験1−1と同様に反応・後処理を行い、原料の回収率および生成物の収率を算出した。
【0050】
実験2−11
実験1−1において、反応溶媒としてイソプロパノール2.0mlに代えて、イソプロパノール2.0mlと水1.0mlとの混合溶媒を用いた以外は、実験1−1と同様に反応・後処理を行い、原料の回収率および生成物の収率を算出した。
【0051】
【表2】

【0052】
[3]実験3−1〜3−9(塩基添加の検討)
反応系に更に塩基を添加して以下の実験3−1〜3−9を行った。結果を表3に示す。
【0053】
実験3−1
実験1−1において、4−フルオロビフェニル、10重量%Pt/Cおよびイソプロパノールに加え、塩基としてトリエチルアミン0.275mmol(基質である4−フルオロビフェニルに対し、1.1倍モル)を試験管に投入した以外は、実験1−1と同様に反応・後処理を行い、原料の回収率および生成物の収率を算出した。
【0054】
実験3−2
実験3−1において、塩基としてトリエチルアミンに代えて、ピリジンを用いた以外は、実験3−1と同様に反応・後処理を行い、原料の回収率および生成物の収率を算出した。
【0055】
実験3−3
実験3−1において、塩基としてトリエチルアミンに代えて、水酸化ナトリウムを用いた以外は、実験3−1と同様に反応・後処理を行い、原料の回収率および生成物の収率を算出した。
【0056】
実験3−4
実験3−1において、塩基としてトリエチルアミンに代えて、炭酸ナトリウムを用いた以外は、実験3−1と同様に反応・後処理を行い、原料の回収率および生成物の収率を算出した。
【0057】
実験3−5
実験3−1において、塩基としてトリエチルアミンに代えて、炭酸カリウムを用いた以外は、実験3−1と同様に反応・後処理を行い、原料の回収率および生成物の収率を算出した。
【0058】
実験3−6
実験3−1において、塩基としてトリエチルアミンに代えて、水酸化カリウムを用いた以外は、実験3−1と同様に反応・後処理を行い、原料の回収率および生成物の収率を算出した。
【0059】
実験3−7
実験3−1において、塩基としてトリエチルアミンに代えて、酢酸ナトリウムを用いた以外は、実験3−1と同様に反応・後処理を行い、原料の回収率および生成物の収率を算出した。
【0060】
実験3−8
実験3−1において、塩基としてトリエチルアミンに代えて、酢酸カリウムを用いた以外は、実験3−1と同様に反応・後処理を行い、原料の回収率および生成物の収率を算出した。
【0061】
実験3−9
実験3−1において、塩基としてトリエチルアミンに代えて、炭酸リチウムを用い、さらに反応時間を12時間から3時間に短縮した以外は、実験3−1と同様に反応・後処理を行い、原料の回収率および生成物の収率を算出した。
【0062】
【表3】

※反応時間3時間
【0063】
[4]実験4
実験1−1において、4−フルオロビフェニルに代えて、1−フルオロナフタレン36.5mg(0.25mmol)を用いた以外は、実験1−1と同様に反応・後処理を行い、H−NMRのスペクトルを得た。得られたスペクトルから、原料である1−フルオロナフタレンの回収率、および、生成物として得られたナフタレンの収率を算出したところ、原料は全て転化し、ナフタレンの収率は99%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
湿式にて含フッ素化合物を白金族金属触媒と接触させて、該含フッ素化合物中の炭素−フッ素結合を切断することを含む、含フッ素化合物からフッ素を脱離させる方法。
【請求項2】
前記白金族金属触媒が、炭素粒子と、該炭素粒子に担持され、白金、ルテニウムおよびイリジウムからなる群より選択される少なくとも1種の白金族金属とを含む触媒である請求項1に係る方法。
【請求項3】
前記炭素粒子の比表面積が800〜2000m2/gである請求項2に係る方法。
【請求項4】
前記含フッ素化合物が芳香環と該芳香環に結合したフッ素原子とを含む化合物である請求項1〜3のいずれか1項に係る方法。
【請求項5】
前記の含フッ素化合物と白金族金属触媒との接触がイソプロパノール中で行われる請求項1〜4のいずれか1項に係る方法。
【請求項6】
前記の含フッ素化合物と白金族金属触媒との接触が水の存在下で行われる請求項1〜5のいずれか1項に係る方法。
【請求項7】
前記の含フッ素化合物と白金族金属触媒との接触が塩基の存在下で行われる請求項1〜6のいずれか1項に係る方法。

【公開番号】特開2012−51839(P2012−51839A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−195904(P2010−195904)
【出願日】平成22年9月1日(2010.9.1)
【出願人】(000228198)エヌ・イーケムキャット株式会社 (87)
【Fターム(参考)】