説明

含フッ素化合物を含む低屈折率層用コーティング組成物、それを用いた反射防止フィルム、それを含む偏光板及び表示装置

【課題】本発明は、含フッ素化合物を含む低屈折率層用コーティング組成物、それを用いた反射防止フィルム、それを含む偏光板及び表示装置に関する。
【解決手段】本発明は、下記化学式1の含フッ素化合物を含む低屈折率層用コーティング組成物、それを用いた反射防止フィルム、それを含む偏光板及び表示装置に関するものであって、下記化学式1の含フッ素化合物は、1.28〜1.40の低い屈折率を有するため、反射防止フィルムの屈折率を容易に調節することができ、耐久性などの機械的物性に優れた反射防止フィルムのコーティング材料として有用に用いられることができる。
[化学式1]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下記化学式1の含フッ素化合物を含む低屈折率層用コーティング組成物、それを用いた反射防止フィルム、それを含む偏光板及び表示装置に関するものであって、下記化学式1の含フッ素化合物は、1.28〜1.40の低い屈折率を有するため、反射防止フィルムの屈折率を容易に調節することができ、耐久性などの機械的物性に優れた反射防止フィルムのコーティング材料として有用に用いられることができる。
【0002】
[化学式1]

【背景技術】
【0003】
現代人は、モニタ用CRT、TV用CPTなどのブラウン管、TFT-LCD偏光板、PDPフィルタ、RPTSフィルタ、及び携帯電話の液晶を始め、時計、写真、額縁などに至るまで様々なディスプレイに接している。このようなディスプレイが自然光などの光に露出される場合、反射光によって目に疲労感を覚えたり頭痛が誘発され、ディスプレイの内部で作られるイメージが目に鮮明に結像されないためコントラスト(contrast)の低下が発生する。これを解決するために、基材上に基材より低い屈折率を有する膜を形成して、反射率が低下することを用いる反射防止膜の形成に関する研究が進んでいる。このような反射防止の機能を有するためには、ガラス、プラスチックフィルムなどにハードコーティング液を適用したハードコーティング層、1.6以上の高い屈折率を有するコーティング液が積層された高屈折層、1.3〜1.5の低い屈折率を有するコーティング液が積層された低屈折率層の積層構造が用いられる。最近は、複雑な工程を減らすために、ハードコーティング層に低屈折層を直接適用した2層構造に転換されている。このような低屈折率層に求められる物性は、低い屈折率だけでなく、高い可視光線透過率、耐久性、耐汚染性、機械的強度などがある。また、大量コーティング時に用いられるロールコート法、グラビアコート法、スライドコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法など、大量コーティング及びUV硬化などのような連続的な硬化方式の容易さもともに求められている。
【0004】
低屈折率の反射防止用フッ素系材料として、特開平10-182745には、含フッ素多官能(メタ)アクリル酸エステルを含有する単量体組成物を重合してなる低屈折率フッ素材料が開示されている。しかし、フッ素アルキル基を含むアクリル酸エステルの場合、フッ素の含量を少なくすると屈折率が低くなり、フッ素の含量を高めると透明性が悪くなるという問題点を有している。
【0005】
このように、従来、様々なフッ素系コーティング液組成物が低屈折率の反射防止材料として検討されてきたが、1層のコーティングで、十分な反射防止の効果が得られる低い屈折率及びスクラッチに強い機械的強度を有する材料及びコーティング方法が当業界において求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10-182745(1998.07.07)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のような問題点を解決するために、本発明は、1層のコーティングで、十分な反射防止の効果が得られる低い屈折率及びスクラッチに強い機械的強度を有する材料として含フッ素化合物を含む低屈折率層用コーティング組成物、それを用いた反射防止フィルム、それを含む偏光板及び表示装置を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、下記化学式1の含フッ素化合物を含む低屈折率層用コーティング組成物、それを用いた反射防止フィルム、それを含む偏光板及び表示装置に関するものであって、下記化学式1の含フッ素化合物は、1.28〜1.40の低い屈折率を有するため、反射防止フィルムの屈折率を容易に調節することができ、耐久性などの機械的物性に優れた反射防止フィルムのコーティング材料として有用に用いられることができる。
【0009】
[化学式1]


(上記式中、
R1〜R4は、互いに独立して、水素、(C1-C20)アルキルまたは(C6-C20)アリールであり、R1及びR2は同時に水素ではなく、
m及びnは、互いに独立して、2〜10の整数であり、
A、B、D及びEは、互いに独立して、水素、フッ素または(C1-C4)アルキルであり、但し、A、B、D及びEの原子の総量のうちフッ素の含量は50%以上であり、
上記R1〜R4のアルキル及びアリールは、フッ素でさらに置換されることができる。)
【0010】
上記化学式1の含フッ素化合物は、1.28〜1.40の屈折率、好ましくは1.28〜1.35の低い屈折率を有するため、反射防止フィルムの屈折率を容易に調節することができ、耐久性などの機械的物性に優れた反射防止フィルムのコーティング材料として有用である。
【0011】
上記化学式1の含フッ素化合物の例としては、下記の化合物が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0012】

【0013】
上記化学式1の含フッ素化合物は、脱塩酸化剤の存在下で、化学式2のフッ素化ジアルキルシラン化合物、化学式3-1のアシルクロライド化合物及び化学式3-2のアシルクロライド化合物を反応させることにより製造される。
【0014】
[化学式1]

【0015】
[化学式2]

【0016】
[化学式3-1]

【0017】
[化学式3-2]

(上記式中、R1、R2、m、n、A、B、D及びEは、上記化学式1における定義と同じである。)
【0018】
この工程で用いられる無水溶媒としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、メチレンクロライドなどが挙げられ、前記脱塩酸化剤は、化学式2のフッ素化ジアルキルシラン化合物に対して2.0〜2.5当量を用いることが好ましい。また、用いられる脱塩酸化剤としては、ピリジンまたはトリエチルアミンなどがある。反応温度は用いられる溶媒によって変わるが、通常、0〜25℃で施す。反応時間は反応温度及び用いられる溶媒によって変わるが、通常、30分〜6時間、好ましくは2時間以下で反応させる。
【0019】
前記化学式2のフッ素化ジアルキルシラン化合物は、二つの方法により製造される。一つ方法は、マグネシウムを触媒として下記化学式4のシラン化合物、化学式5-1のフッ素化ブロモアルコール化合物及び化学式5-2のフッ素化ブロモアルコール化合物を-78℃〜25℃でグリニャール反応させることにより製造することであり、他の製造方法は、(C1-C10)アルキルリチウムの存在下で下記化学式4のシラン化合物、化学式5-1のフッ素化ブロモアルコール化合物及び化学式5-2のフッ素化ブロモアルコール化合物を-78℃〜25℃でアニオン性反応させることにより製造することである。
【0020】
[化学式2]

【0021】
[化学式4]

【0022】
[化学式5-1]

【0023】
[化学式5-2]

(前記式中、R1、R2、m、n、A、B、D及びEは、前記化学式1における定義と同じである。)
【0024】
この工程で用いられる無水溶媒としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ヘキサン、ヘプタンなどの単一溶媒と二つ以上の溶媒を配合した混合溶媒を用いる。前記マグネシウムは、通常、化学式4のシラン化合物に対して2.0〜2.1当量を用いることが好ましい。前記アルキルリチウムの有機金属試薬としては、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウムなどが挙げられ、通常、化学式4のシラン化合物に対して2.0〜2.1当量を用いることが好ましい。反応温度は用いられる溶媒によって変わるが、通常、-78〜25℃であり、好ましくはクロロ-リチウム置換反応は-78℃で施し、化学式5-1及び5-2のフッ素化ブロモアルコール化合物との反応は-10〜25℃で施す。反応時間は反応温度及び用いられる溶媒によって変わるが、通常、30分〜6時間、好ましくは2時間以下で反応させる。
【0025】
前記化学式1の含フッ素化合物は、低屈折率層用コーティング組成物の全体の固形分含量のうち1〜50重量%で含まれ、1重量%未満で含まれる場合には反射率の低減効果を得ることが困難となり、50重量%を超過する場合には機械的物性を得ることが困難となるため、前記範囲を維持することが好ましい。
【0026】
本発明の前記低屈折率層用コーティング組成物は、前記化学式1の含フッ素化合物、アクリル系不飽和基を有する化合物、低屈折率粒子及び溶媒を含むことができる。
【0027】
より具体的には、前記低屈折率層用コーティング組成物は、前記化学式1の含フッ素化合物、アクリル系不飽和基を有する化合物、低屈折率粒子及び溶媒を含み、固形分含量が3〜8重量%である。前記固形分含量のうち、前記化学式1の含フッ素化合物1〜50重量%、アクリル系不飽和基を有する化合物5〜40重量%及び低屈折率粒子1〜60重量%を含むことができる。
【0028】
前記低屈折率層用コーティング組成物の固形分含量が3重量%未満の場合には、硬化過程で時間が多く要され、経済性が劣るという問題があり、8重量%を超過する場合には、コーティング液の粘度が高くなって薄膜コーティングが困難となり、コーティング膜の平坦度が悪くなるという問題がある。
【0029】
前記アクリル系不飽和基を有する化合物は、硬化層の硬度を向上させるために用いられるものであり、前記含量が低屈折率層用コーティング組成物の固形分含量のうち5重量%未満の場合には、低屈折率層の表面硬化に問題があり、40重量%を超過する場合には、低屈折率層の屈折率が上昇して反射防止の効果が低下するという問題がある。前記アクリル系不飽和基を有する化合物は(メタ)アクリレートであり、本発明において(メタ)アクリレートとは、アクリレートまたはメタアクリレートを意味する。その具体的な例としては、エチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、トリメタノールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0030】
前記低屈折率粒子としては、LiF、MgF、3NaF・AlF、Na3AlF6または内部に空き空間を有する中空シリカを用いることができる。低屈折率粒子は、屈折率を低くして反射防止特性を高め、耐スクラッチ性を高めるために用いられるものであり、粒径が1nm以上100nm以下であることが好ましい。粒径が1nm未満の場合には、凝集現象が激しくなるという問題が発生し、100nmを超過する場合には白化現象による透明性の低下が発生する恐れがある。前記低屈折率粒子の含量は、前記低屈折率層用コーティング組成物の全体の固形分含量のうち1〜60重量%で含まれることが好ましい。前記含量が1重量%未満の場合には層間接着力の向上による耐スクラッチ性の向上効果及び反射率の低減効果が微小であり、60重量%を超過する場合には、使用量に比例して可視光透過率がやや低下するという問題が発生するため、前記範囲を維持することが好ましい。
【0031】
前記有機溶媒は、前記固形分成分を溶解するに適するものであれば制限されずに用いられることができ、アルコール類、アセテート類、ケトン類、または芳香族溶媒などを用いることができる。具体的には、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、2-ブトキシエタノール、2-イソプロポキシエタノール、メチルアセテート、エチルアセテート、ブチルアセテート、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、トルエン、キシレン、またはベンゼンなどを用いることができ、2種以上を混合して用いることも可能である。前記溶媒は、低屈折率層用コーティング組成物の固形分含量が3 〜8重量%となるように添加することが好ましい。固形分含量が3重量%未満の場合には、硬化過程で時間が多く要され、経済性が劣るという問題があり、8重量%を超過する場合には、コーティング液の粘度が高くなって薄膜コーティングが困難となり、コーティング膜の平坦度が悪くなるという問題がある。
【0032】
また、本発明の前記低屈折率層用コーティング組成物は、光開始剤をさらに含むことができる、光開始剤は、紫外線に分解可能な化合物であり、その例としては、α-アミノアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンジルジメチルケタール、ヒドロキシジメチルアセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインブチルエーテルなどが挙げられる。その含量は、化学式1の含フッ素化合物100重量部に対して1〜20重量部で含まれることが好ましい。その含量が1重量部未満の場合には、未硬化が発生する恐れがあり、20重量部を超過する場合には、過硬化によって低屈折率層にクラックが発生して、コーティング膜の耐スクラッチ性、耐磨耗性が低下する恐れがある。
【0033】
また、本発明の低屈折率層用コーティング組成物は、必要に応じて添加剤をさらに含むことができ、前記添加剤は該当分野において通常的に用いられるものであれば制限されずに用いることができる。その例としては、光刺激剤、抗酸化剤、UV吸収剤、光安定剤、熱安定剤、熱重合防止剤、レベリング剤、界面活性剤、潤滑剤などが挙げられる。その含量は、物性を低下させない範囲で用いることが好ましい。
【0034】
また、本発明は、含フッ素化合物を含む低屈折率層用コーティング組成物で製造された反射防止フィルムに関するものであって、本発明の含フッ素化合物を含む低屈折率層用コーティング組成物を用いて、公知の方法により反射防止フィルムを製造する。
【0035】
本発明による反射防止フィルムにおいて、透明支持体上に順に形成されるハードコーティング層と低屈折率層は、ダイコータ、エアーナイフ、リバースロール、スプレー、ブレード、キャスティング、グラビア及びスピンコーティングなどの適当な方式により、ハードコーティング層形成用組成物及び本発明による低屈折率層形成用組成物を塗布して形成することができる。
【0036】
本発明による反射防止フィルムは前記低屈折率層用コーティング組成物を用いて形成された低屈折率層を含むものであり、前記反射防止フィルムは、透明支持体上に低屈折率層が単独で積層されたり、透明支持体上にハードコーティング層と低屈折率層が順に積層された構造を有する。前記透明支持体は、透明性を有するプラスチックフィルムであれば全て使用可能であり、好ましくは、ポリエチレンテレフタレートフィルムまたはセルローストリアセテートフィルムを用いる。前記透明基材フィルムの厚さは8〜300μmであり、好ましくは40〜100μmである。前記透明支持体上に形成される低屈折率層の屈折率は、25℃で1.28〜1.40であることが好ましい。前記低屈折率層の屈折率が前記範囲より小さいと反射防止性が低下し、前記範囲より大きいと反射光の色感が強くなる短所がある。上記のように製造された反射防止フィルムは、優れた反射防止性だけでなく、優れた耐スクラッチ性及び密着性を有する。
【0037】
また、本発明は、前記反射防止フィルムを備える偏光板に関する。前記偏光板は、特に制限されないが、様々な種類が用いられることができる。前記偏光板としては、例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、及びエチレン-ビニルアセテート共重合体系部分けん化フィルムなどの親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料などの二色性物質を吸着させて1軸延伸したフィルム、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物などのポリエン系配向フィルムなどが挙げられる。このうちでも、ポリビニルアルコール系フィルムとヨウ素などの二色性物質からなる偏光板が好ましい。この偏光板の厚さは、特に制限されないが、通常5〜80μm程度である。
【0038】
また、本発明は、ディスプレイの最表面に前記反射防止フィルムまたは前記偏光板が備えられた画像表示装置に関する。一例として、本発明の反射防止フィルムが形成された偏光板を表示装置に内蔵することにより、優れた視認性を有する様々な表示装置を製造することができる。また、本発明の反射防止フィルムを表示装置のウィンドウに付着することもできる。本発明の反射防止フィルムは、反射型、透過型、半透過型LCDまたはTN(twisted nematic)型、STN(super twisted nematic)型、OCB(offset codebook)型、HAN(hybrid alignment nematic)型、VA(vertical alignment)型、IPS(in-plane-switching)型などの各種駆動方式のLCDに好ましく用いられることができる。また、本発明の反射防止フィルムは、プラズマディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ、有機ELディスプレイ、無機ELディスプレイ、電子ペーパーなどの各種表示装置にも好ましく用いられることができる。
【発明の効果】
【0039】
本発明による低屈折率層用コーティング組成物は、1.28〜1.40の低い屈折率を有し、優れた光学特性及び機械的特性を有する含フッ素化合物を含んでいるため、反射防止フィルムの屈折率を容易に調節することができる。また、前記低屈折率層用コーティング組成物を用いて製造された反射防止フィルムは、反射率が低く、可視光線透過率に優れた光学特性及び機械的特性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0040】
下記実施例及び比較例により本発明の効果を具体的に説明する。但し、下記実施例は本発明を例示するためのものに過ぎず、本発明の範囲を限定しようとするものではない。
【0041】
[製造例1]含フッ素化合物の製造
下記の第1反応工程及び第2反応工程を経て、本発明による様々な含フッ素化合物を製造した。
【0042】
<第1反応工程>
5Lの反応フラスコにテトラヒドロフラン(THF)を入れて-78℃に冷却させた後、下記表1に記載のシラン化合物(反応物I)5mol、マグネシウムターニング5mol及びフッ素化ブロモアルコール化合物(反応物II)5molを順に前記反応フラスコに投入して10分間撹拌した後、徐々に常温に加温させながら1.5時間撹拌した。撹拌が完了すると、塩酸(HCl)500gを水1Lに溶かして前記反応フラスコに加えて反応を終了させた後、20分間静置した。水とTHF層に分離され完全に透明になると、THF層を完全蒸発させた後、生成物であるフッ素化ジアルキルシラン化合物をカラムクロマトグラフィーで分離精製した。収率は56.6〜66.7%であり、各化合物毎の収率を下記表1に記載した。また、製造された各化合物の1H NMRを下記表1に記載した。
【0043】
【表1】

【0044】
<第2反応工程>
3Lの反応フラスコにメチレンクロライド(MC)を入れて、常温で下記表2に記載のアシルクロライド化合物(反応物III)3mol及び第1反応工程で得られた生成物3molを投入し、トリエチルアミン11molを投入して1時間反応させた。反応が完了すると、水を加えて20分間静置した。水とMC層に分離され完全に透明になると、MC層を完全蒸発させた後、生成物であるフッ素化ジアルキルジアクリレートシラン化合物をカラムクロマトグラフィーで分離精製した。収率は70.3〜90.5%であり、各化合物毎の収率を下記表2に記載した。また、製造された各化合物の1H NMRを下記表2に記載した。各化合物の屈折率は、589nmのD光線タングステンランプを光源として用い、屈折計(アタゴ アッベ屈折計、モデル:2T)を利用して測定した。下記表3に記載したように、各化合物の屈折率は1.28〜1.40であった。
【0045】
【表2】


【0046】
【表3】


【実施例1】
【0047】
低屈折率層用コーティング液の製造
含フッ素化合物(6)3g及びジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(NK化学、A-DPH)2.5gをメチルイソブチルケトン(MIBK)224gに混合して完全に溶解させた後、中空シリカ(日揮触媒化成株式会社)6gを混合し、光開始剤としてα-アミノアセトフェノン(BASF、Irgacure 907)0.3gを添加して、低屈折率層用コーティング液を製造した。

【実施例2】
【0048】
低屈折率層用コーティング液の製造
含フッ素化合物(4)を用いることを除き、前記実施例1と同様の方法で低屈折率層用コーティング液を製造した。

【実施例3】
【0049】
低屈折率層用コーティング液の製造
含フッ素化合物(7)を用いることを除き、前記実施例1と同様の方法で低屈折率層用コーティング液を製造した。

【実施例4】
【0050】
低屈折率層用コーティング液の製造
含フッ素化合物(2)を用いることを除き、前記実施例1と同様の方法で低屈折率層用コーティング液を製造した。

【実施例5】
【0051】
反射防止フィルムの製造
厚さ80μmの透明基材TAC(セルローストリアセテート)フィルムの表面上にハードコーティング層及び低屈折層を積層するにあたり、前記実施例1で製造された低屈折率層用コーティング液及びハードコーティング液(共栄社化学、HX-610UV)を、ワイヤバー(wire bar)を用いてハードコーティング層が5μm、低屈折率層が120nmとなるように調節した。それぞれの層を積層した後、独立的に乾燥及び硬化過程を経て、反射防止フィルムを製造した。乾燥は90℃で1分間施し、硬化は120W/cmの高圧水銀ランプを用いて10秒間UV硬化した。
【実施例6】
【0052】
反射防止フィルムの製造
前記実施例2で製造された低屈折率層用コーティング液を用いることを除き、実施例5と同様の方法で反射防止フィルムを製造した。
【実施例7】
【0053】
反射防止フィルムの製造
前記実施例3で製造された低屈折率層用コーティング液を用いることを除き、実施例5と同様の方法で反射防止フィルムを製造した。
【実施例8】
【0054】
反射防止フィルムの製造
前記実施例4で製造された低屈折率層用コーティング液を用いることを除き、実施例5と同様の方法で反射防止フィルムを製造した。
【0055】
[実験例1]
前記製造された反射防止フィルムの平均反射率、透過率及びヘイズを下記のように測定し、その結果を下記表4に記載した。
【0056】
1)反射率評価:コーティングフィルムの裏面を黒色処理した後、株式会社島津製作所の分光光度計(spectrophotometer)Solid Spec.3700で反射率を測定し、最小反射率値で低反射特性を評価した。
【0057】
2)透過率及びヘイズ(Haze)評価:ヘイズメーターHM-150(村上色彩技術研究所)を用いてコーティングフィルムの透過率及びヘイズをJIS K7105規格に準拠して測定した。
【0058】
【表4】

【0059】
前記表4に示すように、実施例1〜4の低屈折率層用コーティング液を用いて製造された反射防止フィルムは、1.1〜1.3%の平均反射率を有しており、反射防止の効果に優れるということを確認することができた。また、フッ素含有率が高くなるにつれてヘイズ値が大きくなる問題が発生する恐れがあるが、実施例1〜4の低屈折率層用コーティング液を用いて製造された反射防止フィルムは、0.3〜0.4%の低いヘイズ値を示した。実施例1〜4の低屈折率層用コーティング液は、フッ素化合物の種類を除いては低屈折率層用コーティング液の構成物が同様であるため、このようなことから、特定構造の含フッ素化合物が低屈折率層用コーティング組成物に必須成分として含まれることにより、中空シリカなどの低屈折率物質による反射率減少の効果を増大させることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表される含フッ素化合物を含む低屈折率層用コーティング組成物。
[化学式1]


(前記式中、
R1〜R4は、互いに独立して、水素、(C1-C20)アルキルまたは(C6-C20)アリールであり、R1及びR2は同時に水素ではなく。
m及びnは、互いに独立して、2〜10の整数であり、
A、B、D及びEは、互いに独立して、水素、フッ素または(C1-C4)アルキルであり、但し、A、B、D及びEの原子の総量のうちフッ素の含量は50%以上であり、
前記R1〜R4のアルキル及びアリールは、フッ素でさらに置換されることができる。)
【請求項2】
化学式1の含フッ素化合物は、低屈折率層用コーティング組成物の全体の固形分含量のうち1〜50重量%で含まれることを特徴とする請求項1に記載の低屈折率層用コーティング組成物。
【請求項3】
化学式1の含フッ素化合物、アクリル系不飽和基を有する化合物、低屈折率粒子、光開始剤及び溶媒を含むことを特徴とする請求項1に記載の低屈折率層用コーティング組成物。
【請求項4】
アクリル系不飽和基を有する化合物は、低屈折率層用コーティング組成物の全体の固形分含量のうち5〜40重量%で含まれることを特徴とする請求項3に記載の低屈折率層用コーティング組成物。
【請求項5】
化学式1の含フッ素化合物は、1.28〜1.40の屈折率を有することを特徴とする請求項1に記載の低屈折率層用コーティング組成物。
【請求項6】
化学式1の含フッ素化合物は、下記構造から選択されることを特徴とする請求項1に記載の低屈折率層用コーティング組成物。

【請求項7】
1.28〜1.4の屈折率を有することを特徴とする請求項1に記載の低屈折率層用コーティング組成物。
【請求項8】
請求項1乃至7から選択される何れか一項に記載の低屈折率層用コーティング組成物から作製される低屈折率層を含む反射防止フィルム。
【請求項9】
透明支持体上に低屈折率層が単独で積層されることを特徴とする請求項8に記載の反射防止フィルム。
【請求項10】
透明支持体上にハードコーティング層と低屈折率層が順に積層されることを特徴とする請求項8に記載の反射防止フィルム。
【請求項11】
請求項8に記載の反射防止フィルムを備えてなる偏光板。
【請求項12】
ディスプレイの最表面に請求項8に記載の反射防止フィルムを備えてなる画像表示装置。
【請求項13】
ディスプレイの最表面に請求項11に記載の偏光板を備えてなる画像表示装置。

【公開番号】特開2013−97385(P2013−97385A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−242357(P2012−242357)
【出願日】平成24年11月2日(2012.11.2)
【出願人】(508171000)エスケー イノベーション  シーオー., エルティーディー. (19)
【Fターム(参考)】