説明

含フッ素化合物及び炭素系化合物を含む有機発光素子

【課題】含フッ素化合物及び炭素系化合物を含む有機発光素子を提供する。
【解決手段】基板と、基板上に形成された第1電極と、第1電極上部に形成された正孔輸送層と、正孔輸送層上部に形成された発光層と、発光層上部に形成された第2電極と、を備え、第1電極と正孔輸送層との間に、フッ素置換されたフタロシアニン誘導体と、C(2x+2)、C(2x−2)またはC2xで表示される脂肪族及びC6y6y−2nで表示される芳香族のフッ化炭素化合物と、フッ素化フラーレン(fluorinated fullerene)とからなる群から選択された一つ以上の含フッ素化合物を含む有機膜を備え、式中、xは、1ないし500の整数であり、yは、1ないし80の整数であり、nは、0ないし80の整数であることを特徴とする有機発光素子である。これにより、高効率、低電圧、高輝度及び長寿命の効果を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は輝度、寿命、消費電力特性が改善された有機発光素子に係り、より詳細には、高品位有機発光表示素子開発のための必須先行技術による、有機発光表示素子の消費電力低減及び寿命改善に関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光素子とは、図1に示したように両電極間に挿入されている有機膜に電流を印加する時、有機膜で電子と正孔との結合によって光が発生する装置をいう。したがって、有機発光表示素子は、高画質、速い応答速度及び広視野角の特性を持つ軽量薄型の情報表示装置具現を可能にする長所を持つ。これは、有機発光表示素子技術の急激な成長を先導する原動力になり、現在有機発光表示素子は、携帯電話だけでなくその他の高品位の情報表示装置へまでその応用領域が拡張しつつある。
【0003】
このような有機発光表示素子の急成長で、学術的側面だけでなく、産業技術側面でもTFT−LCDのような他の情報表示素子との競争が不回避になり、既存の有機発光表示素子は、量的、質的成長を阻害する最も大きい要因として残っている素子の効率、寿命延長及び消費電力低減という技術的限界を克服せねばならないという難局に直面している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来技術の問題点を解決するために、本発明は、有機発光素子の寿命、輝度及び消費電力の効率特性を向上させることができる有機発光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記本発明の課題を解決するために、本発明は、基板と、前記基板上に形成された第1電極と、前記第1電極上部に形成された正孔輸送層と、前記正孔輸送層上部に形成された発光層と、前記発光層上部に形成された第2電極と、を備え、前記第1電極と正孔輸送層との間に、フッ素置換されたフタロシアニン誘導体と、C(2x+2)、C(2x−2)またはC2xで表示される脂肪族及びC6y6y−2nで表示される芳香族のフッ化炭素化合物と、フッ素化フラーレン(fluorinated fullerene)とからなる群から選択された一つ以上の含フッ素化合物を含む有機膜を備え、前記式中、xは、1ないし500の整数であり、yは、1ないし80の整数であり、nは、0ないし80の整数であることを特徴とする有機発光素子を提供する。
【0006】
また本発明は、基板と、前記基板上に形成された第1電極と、前記第1電極上部に形成された正孔注入層と、前記正孔注入層上部に形成された発光層と、前記発光層上部に形成された第2電極と、を備え、前記正孔注入層と発光層との間にフッ素置換されたフタロシアニン誘導体と、C(2x+2)、C(2x−2)またはC2xで表示される脂肪族及びC6y6y−2nで表示される芳香族のフッ化炭素化合物と、フッ素化フラーレンとからなる群から選択された一つ以上の含フッ素化合物を含む有機膜を備え、前記式中、xは、1ないし500の整数であり、yは、1ないし80の整数であり、nは、0ないし80の整数であることを特徴とする有機発光素子を提供する。
【0007】
前記含フッ素化合物を含む有機膜上に、炭素系化合物のバッファ層を前記有機膜の一面または両面にさらに備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明による有機発光素子は、高効率、低電圧、高輝度及び長寿命の効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0010】
本発明は、有機発光素子の界面を調節するために、アノードと正孔注入層(または正孔輸送層)との界面にフッ素含有化合物を含む薄膜を挿入して、駆動電圧降下を通じる低消費電力の有機発光素子を提供できる。
【0011】
本発明の一態様で、有機発光素子は、基板と、前記基板上に形成された第1電極と、前記第1電極上部に形成された正孔輸送層と、前記正孔輸送層上部に形成された発光層と、前記発光層上部に形成された第2電極と、を備え、前記第1電極と正孔輸送層との間に、フッ素置換されたフタロシアニン誘導体と、C(2x+2)、C(2x−2)またはC2xで表示される脂肪族及びC6y6y−2nで表示される芳香族のフッ化炭素化合物と、フッ素化フラーレン(fluorinated fullerene)からなる群から選択された一つ以上の含フッ素化合物を含む有機膜を備え、前記式中、xは、1ないし500の整数であり、yは、1ないし80の整数であり、nは、0ないし80の整数である。
【0012】
前記フッ素置換されたフタロシアニン誘導体は、中心部がCr、Fe、Co、Ni、Cu、Znなどの2価金属フタロシアニン塩であり、一つ以上のフッ素に置換される。望ましくは、前記中心金属は銅である。
【0013】
前記C(2x+2)、C(2x−2)またはC2xで表示される脂肪族フッ化炭素化合物の例として、C10、C12、C14、C16、C、C、C、C、C、C10、C12、C14などを挙げることができる。また、前記C6y6y−2nで表示される芳香族のフッ化炭素化合物の例として、C、C1210、C1814、C2418、C4230などを挙げることができる。
【0014】
前記フッ素化フラーレンは、一つ以上のフッ素を含むフラーレン系化合物である。フラーレンはバッキーボール(Bucky ball)とも呼ばれ、真空装置の中で強力なレーザーを黒鉛に照射する時、炭素が黒鉛表面から落ちて新たな結合をなして作られる。すなわち、前記フラーレンは炭素同素体であり、望ましくは、炭素数20ないし500の炭素材料でありうる。代表的には、炭素原子60個(C60)からなるC60分子があり、それ以外にC70、C76、C84などがある。このようなフラーレン分子とフッ素原子とを反応させてフッ素化フラーレンを合成でき、その例には、C6041、C6042、C6043、C600F48、C7438などがある。望ましくは、本発明で、前記フッ素化フラーレンとしてC6042が使われる。
【0015】
望ましくは、本発明の有機発光素子は、前記含フッ素化合物を含む有機膜上に炭素系化合物のバッファ層を前記有機膜の一面または両面にさらに形成できる。
【0016】
望ましくは、前記炭素系化合物はフラーレン、金属を含むフラーレン系錯化合物、炭素ナノチューブ、炭素ファイバ、カーボンブラック、黒鉛、カルビン、MgC60、CaC60、SrC60からなる群から選択された一つ以上である。
【0017】
前記炭素系化合物は特別に制限されないが、炭素同素体であって炭素数20ないし500の炭素材料であり、金属を含む炭素系化合物、すなわち、炭素系錯化合物も含む。本発明で使用する炭素系化合物の例として、フラーレン、金属を含むフラーレン系錯化合物、炭素ナノチューブ、炭素ファイバ、カーボンブラック、黒鉛、カルビン、MgC60、CaC60及びSrC60からなる群から選択された一つ以上を使用し、そのうちでもフラーレンを使用することが望ましい。
【0018】
このように本発明の有機発光素子が、前記含フッ素化合物を含む有機膜に炭素系化合物のバッファ層を共に形成すれば、駆動電圧をさらに低めて特に効率が改善され、また寿命特性をさらに改善させる。
【0019】
本発明による有機発光素子は前記有機膜上部に、または前記有機膜上部にバッファ層がさらに形成された場合、前記炭素系化合物のバッファ層上部に正孔注入層をさらに備えることができる。
【0020】
また、前記有機発光素子は、発光層と第2電極との間に正孔阻止層、電子注入層及び電子輸送層のうち選択された一つ以上をさらに備えることができる。
【0021】
本発明の他の態様で、有機発光素子は、基板と、前記基板上に形成された第1電極と、前記第1電極上部に形成された正孔注入層と、前記正孔注入層上部に形成された発光層と、前記発光層上部に形成された第2電極と、を備え、前記正孔注入層と発光層との間に、フッ素置換されたフタロシアニン誘導体と、C(2x+2)、C(2x−2)またはC2xで表示される脂肪族及びC6y6y−2nで表示される芳香族のフッ化炭素化合物と、フッ素化フラーレンとからなる群から選択された一つ以上の含フッ素化合物を含む有機膜を備え、前記式中、xは、1ないし500の整数であり、yは、1ないし80の整数であり、nは、0ないし80の整数である。
【0022】
これは、前記本発明の一態様による有機発光素子で別途の正孔注入層を備えない場合とは異なって、別途の正孔注入層を備える場合である。
【0023】
本発明による有機発光素子は、前記正孔注入層上部、前記有機膜上部、または前記有機膜上部にバッファ層がさらに形成された場合、前記炭素系化合物のバッファ層上部に正孔輸送層をさらに備えることができる。
【0024】
前記で使われるフッ素置換されたフタロシアニン誘導体と、C(2x+2)、C(2x−2)またはC2xで表示される脂肪族及びC6y6y−2nで表示される芳香族のフッ化炭素化合物(xは、1ないし500の整数であり、yは、1ないし80の整数であり、nは、0ないし80の整数)と、フッ化フラーレンは前述した通りである。
【0025】
望ましくは、前記本発明の他の具現例による有機発光素子は、前記含フッ素化合物を含む有機膜上に、炭素系化合物のバッファ層を前記有機膜の一面または両面にさらに形成できる。
【0026】
また、前記炭素系化合物は、前記バッファ層に関して前述した通りである。
【0027】
前記本発明の他の態様による有機発光素子は、前記有機膜、または有機膜の一面にバッファ層がさらに形成された場合、前記バッファ層上部に正孔輸送層をさらに備えることができる。
【0028】
また、前記有機発光素子は、発光層と第2電極との間に正孔阻止層、電子注入層及び電子輸送層のうち選択された一つ以上をさらに備えることができる。
【0029】
本発明の有機発光素子に備えられた前記有機膜は、フッ素含有化合物を含んで有機発光素子に備えられた層の蒸着及び界面特性を改善する。前記のように、フッ素含有化合物を含む有機膜を形成すれば、薄膜状態で形態変化がほとんどなく、有機発光素子の色座標特性には影響を与えない。この時、アノードに使われるITOと正孔注入層または正孔輸送層との界面エネルギーバンドギャップを変化させて、ITOから有機膜への正孔注入がさらに容易になって駆動電圧を低めることが可能になる。またアノードとして使われるITOと正孔注入層との界面に安定したバッファ層として作用して有機発光素子の長寿命化が可能になる。
【0030】
本発明の有機発光素子において、前記フッ素含有化合物を含む有機膜を備え、または炭素化合物を含むバッファ層をさらに備えると同時に、これを構成する膜の界面特性をさらに調節するために正孔注入層、正孔輸送層、発光層、正孔阻止層、電荷輸送層及び電荷注入層で形成される群から選択された一つ以上の層にフラーレンのような炭素系化合物をドーピングできる。前記炭素系化合物は、バッファ層で使われた炭素系化合物で説明した通りである。
【0031】
この時、炭素系化合物の含有量は、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、正孔阻止層、電荷輸送層または電荷注入層それぞれに対して総重量100重量部を基準として0.005ないし99.95重量部の範囲である。炭素系化合物の含有量が前記範囲を外れれば、有機発光素子の特性面で望ましくない。
【0032】
本発明の有機発光素子において、含フッ素化合物を含む有機膜の形成は、非制限的な例として蒸着法、LB(Langmuir Blodgett)法、電子ビームまたはスパッタ蒸着法、スピンコーティングなどを使用できる。このような有機膜の厚みは、望ましくは1ないし500Åである。前記有機膜の厚みが1Å未満である場合、厚み調節が難しく、特性再現も困難になるという問題点があり、500Åを超過する場合、かえって駆動電圧の上昇を招く恐れがある。
【0033】
本発明の有機発光素子において、前記炭素系化合物を含むバッファ層の形成時に非制限的な例として蒸着法などを使用できる。そして、このようなバッファ層の厚みは20ないし100Åであることが望ましく、さらに望ましくは20ないし30Åである。もし、バッファ層の厚みが20Å未満ならば、有機発光素子の特性向上効果が微小であり、100Åを超過すれば、寿命、コントラスト、画素ショート抑制(PMの場合)など有機発光素子の特性向上側面では望ましいが、駆動電圧の降下幅は飽和されるか、電圧利得幅が減少する。
【0034】
図1は、既存の有機発光素子の構造を示す図面である。
【0035】
図2は、本発明の望ましい一実施形態による有機発光素子の積層構造を概略的に示す図面である。
【0036】
図1を参照すれば、第1電極10上部に正孔注入層11が積層され、前記正孔注入層11上部に正孔輸送層12、発光層13、電子輸送層14、電子注入層15及び第2電極16が順次に積層される。
【0037】
図2の有機発光素子は、第1電極10上部に正孔注入層11が積層され、前記正孔注入層11上部に正孔輸送層12、発光層13、電子輸送層14、電子注入層15及び第2電極16が順次に積層されており、この時、前記第1電極10と正孔注入層11との間には含フッ素化合物を含む有機膜20が形成され、この時、前記有機膜の上部にバッファ層(図示せず)がさらに形成されうる。一方、この時、前記正孔注入層11は省略できる。
【0038】
それ以外にも、正孔阻止層(図示せず)がさらに積層されてもよく、それ以外にも層間の界面特性を改善するための中間層をさらに形成してもよい。また、前述したように、前記正孔注入層11、正孔輸送層12、発光層13、電子輸送層14または電子注入層15に炭素系化合物がドーピングされうる。
【0039】
以下、本発明の有機発光素子の製造方法を説明するが、便宜のために本発明の一実施形態である図2の有機発光素子の製造方法を例として説明する。
【0040】
まず、基板上部にパターニングされた第1電極10を形成する。ここで前記基板は、通常的な有機発光素子で使われる基板を使用するが、透明性、表面平滑性、取扱容易性及び防水性に優れたガラス基板または透明プラスチック基板が望ましい。そして、前記基板の厚みは0.3ないし1.1mmであることが望ましい。
【0041】
前記第1電極10の形成材料は、正孔注入の容易な伝導性金属またはその酸化物からなり、具体的な例として、ITO(Iindium Tin Oxide)、IZO(Iindium Zinc Oxide)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、金(Au)、イリジウム(Ir)などを使用する。
【0042】
前記第1電極10が形成された基板を洗浄した後、UV/オゾン処理を実施する。この時、洗浄方法としては、イソプロパノール(IPA)、アセトンなどの有機溶媒を利用する。
【0043】
洗浄された基板の第1電極10上部に含フッ素化合物を蒸着して、有機膜20を1ないし500Å厚に形成する。
【0044】
次いで、前記有機膜20上部に正孔注入物質を真空熱蒸着、またはスピンコーティングして正孔注入層11を形成する。このように正孔注入層11を形成すれば、第1電極10と発光層13との接触抵抗を減少させると同時に、発光層13に対する第1電極10の正孔輸送能力が向上して素子の駆動電圧及び寿命特性が全般的に改善される効果を得ることができる。
【0045】
前記正孔注入層11の厚みは300ないし1500Åであることが望ましい。もし、正孔注入層11の厚みが300Å未満である場合には寿命が短くなり、有機発光素子の信頼性が低下し、特に、PM有機発光素子の場合には画素ショートを起こす恐れがあり、1500Åを超過する場合には駆動電圧上昇のために望ましくない。
【0046】
前記正孔注入物質は特別に制限されず、銅フタロシアニン(CuPc)またはスターバスト型アミン類であるTCTA、m−MTDATA、IDE406(出光社製の材料)などを正孔注入層として使用できる。
【0047】
【化1】

【0048】
前記過程によって形成された正孔注入層11上部に、正孔輸送物質を真空熱蒸着またはスピンコーティングして正孔輸送層12を形成する。前記正孔輸送物質は特別に制限されず、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−[1,1−ビフェニル]−4,4’ジアミン(TPD)、N,N’−ジ(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ジフェニルベンジジン、N,N’−ジ(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ジフェニル−ベンジジン(α−NPD)、IDE320(出光社製材料)などが使われる。ここで、正孔輸送層12の厚みは100ないし400Åであることが望ましい。もし、正孔輸送層12の厚みが100Å未満である場合には薄過ぎて正孔輸送能力が低下し、400Åを超過する場合には、駆動電圧上昇のために望ましくない。
【0049】
【化2】

【0050】
次いで、前記正孔輸送層12上部に発光層13を形成する。
【0051】
前記発光層材料は通常的に使われるものを使用し、特別に制限されず、具体的な例として、アルミニウム錯体(例:Alq3(トリス(8−キノリノラト)−アルミニウム)、BAlq、SAlq、Almq3、ガリウム錯体(例:Gaq’OPiv、Gaq’OAc、2(Gaq’))、フルオレン系高分子、ポリパラフェニレンビニレンまたはその誘導体、ビフェニル誘導体、スピロポリフルオレン系高分子などを利用する。
【0052】
【化3】


【0053】
本発明において、前記発光層13の厚みは300ないし500Åであることが望ましい。もし、発光層13の厚みは150ないし600Åの場合がさらに望ましい。発光層の厚みが厚いほど駆動電圧が上昇する短所のために、600Åを超過すれば適用し難い。
【0054】
図2には示されていないが、前記発光層13上に、正孔ブロッキング物質を真空蒸着、またはスピンコーティングして正孔阻止層を選択的に形成することもある。この時に使用する正孔ブロッキング物質は特別に制限されないが、電子輸送能力を持ってかつ発光化合物より高いイオン化ポテンシャルを持たねばならず、代表的にBalq、BCP、TPBIなどが使われる。正孔阻止層の厚みは30ないし70Åであることが望ましい。もし、正孔阻止層の厚みが30Å未満である場合には正孔ブロッキング特性をよく具現できず、70Åを超過する場合には駆動電圧上昇で望ましくない。
【0055】
【化4】

【0056】
前記正孔阻止層上に電子輸送物質を真空蒸着またはスピンコーティングして電子輸送層14を形成する。電子輸送物質としては特別に制限されず、Alq3を利用できる。
【0057】
本発明では、第1電極10と正孔注入層11との間に形成された含フッ素化合物を含む有機膜20及び/または、炭素系化合物のバッファ層と共に、前記正孔注入層11、正孔輸送層12、発光層13、電子輸送層14または電子注入層15に炭素系化合物がドーピングされうる。
【0058】
すなわち、第1電極10と正孔注入層11との間に含フッ素化合物を含む有機膜20及び/または炭素系化合物のバッファ層を形成し、正孔注入層11、正孔輸送層12、発光層13、電子輸送層14及び電子注入層15のうちいずれか一つ以上の層の形成時、前記炭素化合物を正孔注入物質及び/または正孔輸送物質などと共に真空熱蒸着法で共蒸着して形成できる。この時、炭素系化合物の含有量は、正孔注入層11、正孔輸送層12、発光層13、電子輸送層14または電子注入層15それぞれに対して総重量100重量部を基準として0.005ないし99.95重量部である。もし、炭素系化合物の含有量が0.005重量部未満である場合には、有機発光素子の特性向上に及ぼす効果が微小で望ましくない。
【0059】
前記電子輸送層14の場合、厚みは150ないし600Åであることが望ましい。もし電子輸送層14の厚みが150Å未満である場合には電子輸送能力が低下し、600Åを超過する場合には駆動電圧上昇で望ましくない。
【0060】
また前記電子輸送層14上に電子注入層15が積層されうる。前記電子注入層の形成材料としてはLiF、NaCl、CsF、LiO、BaO、Liqなどの物質を利用できる。前記電子注入層の厚みは5ないし20Åであることが望ましい。もし、電子注入層の厚みが5Å未満である場合には効果的な電子注入層としての役割を行えず、20Åを超過する場合には駆動電圧が高くて望ましくない。
【0061】
【化5】

【0062】
次いで、前記電子注入層15上部に第2電極であるカソード用金属を真空熱蒸着して第2電極16のカソードを形成することによって有機発光素子が完成される。
【0063】
前記カソード金属としては、リチウム(Li)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、アルミニウム−リチウム(Al−Li)、カルシウム(Ca)、マグネシウム−インジウム(Mg−In)、マグネシウム−銀(Mg−Ag)などが利用される。
【0064】
本発明の有機発光素子は、アノード、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層、カソードの必要に応じて一層または二層の中間層をさらに形成することもできる。その他にも必要に応じて電子阻止層を形成してもよい。
【0065】
以下、本発明を下記実施例を挙げて説明するが、本発明が下記実施例のみに限定されるものではない。
【0066】
[比較例]
アノードとして、コーニング社製の15Ω/cm(1200Å)ITOガラス基板を50mm×50mm×0.7mmサイズに切って、イソプロピルアルコールと純水の中でそれぞれ5分間超音波洗浄した後、30分間UV、オゾン洗浄して使用した。有機発光素子の製作時に前記洗浄過程を経たITOガラス基板は、0.1mtorr以下の真空で9分間プラズマ処理された。前記基板上部にm−MTDATAを真空蒸着して正孔注入層を約600Å厚に形成した。
【0067】
前記正孔輸送層の上部に(発光層材料)を真空熱蒸着して約350Åの厚みに緑色発光層を形成した。次いで、前記発光層上部に電子輸送物質であるAlq3を蒸着して電子輸送層を約250Åの厚みに形成した。
【0068】
前記電子輸送層上部にLiF(電子注入層)とAl(カソード)とを順次に約10Å及び約800Åの厚みに真空熱蒸着してLiF/Al電極を形成し、有機発光素子を製造した。その結果、図1に示す一般的な構造の緑色有機発光素子を製造した。
【0069】
[実施例]
図2に示す素子構造として、含フッ素化合物としてF16CuPcを含む有機膜を蒸着して層をさらに形成したことを除いては、前記比較例と同じ条件で製作した。
【0070】
16CuPcの有機膜厚を5Å及び10Åとし、それぞれの素子に対して素子の特性(効率、駆動電圧)を評価した。
【0071】
[評価例]
有機発光素子の輝度はTOPCON社製のBM−5Aであり、駆動電圧はKEITHLEY社製の238 HIGH CURRENT SOURCE MEASURE UNITで評価した。この時、有機発光素子に印加された電流は、DC 10mA/cmから10mA/cm間隔で100mA/cmまで、同一素子構造に対してそれぞれ異なる9つ以上のデータを収集して評価した。その結果、緑色発光素子のDC初期特性は下記の表1の通りである。
【0072】
【表1】

【0073】
前記表から、本発明による実施形態では、緑色発光表示素子いずれに対しても色座標には影響を与えず、既存の有機発光表示素子に対する駆動電圧を75%以下に降下させたことが確認できる。
【0074】
また、緑色有機発光素子の駆動電圧を1V以上降下させたことが確認できる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、表示装置関連の技術分野に好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】既存の有機発光素子の構造を概略的に示す図面である。
【図2】本発明の望ましい一実施形態による有機発光素子を概略的に示す図面である。
【符号の説明】
【0077】
10 第1電極
11 正孔注入層
12 正孔輸送層
13 発光層
14 電子輸送層
15 電子注入層
16 第2電極
20 含フッ素化合物を含む有機膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に形成された第1電極と、
前記第1電極上部に形成された正孔輸送層と、
前記正孔輸送層上部に形成された発光層と、
前記発光層上部に形成された第2電極と、を備え、
前記第1電極と正孔輸送層との間に、フッ素置換されたフタロシアニン誘導体と、C(2x+2)、C(2x−2)またはC2xで表示される脂肪族及びC6y6y−2nで表示される芳香族のフッ化炭素化合物と、フッ素化フラーレンとからなる群から選択された一つ以上の含フッ素化合物を含む有機膜を備え、前記式中、xは、1ないし500の整数であり、yは、1ないし80の整数であり、nは、0ないし80の整数であることを特徴とする有機発光素子。
【請求項2】
前記含フッ素化合物を含む有機膜上に、炭素系化合物のバッファ層を前記有機膜の一面または両面にさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の有機発光素子。
【請求項3】
前記有機膜または前記バッファ層上部に、正孔注入層をさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載の有機発光素子。
【請求項4】
前記発光層と第2電極との間に、正孔阻止層、電子注入層及び電子輸送層のうち選択された一つ以上がさらに備えられることを特徴とする請求項3に記載の有機発光素子。
【請求項5】
前記含フッ素化合物を含む有機膜の厚みは1ないし500Åであることを特徴とする請求項1に記載の有機発光素子。
【請求項6】
前記バッファ層の厚みは20ないし100Åであることを特徴とする請求項2に記載の有機発光素子。
【請求項7】
前記含フッ素化合物は、F16CuPc、C0F42、C、C1210、C1814、C2418、C4230、C10、C12、C14、C16、C、C、C、C、C、C10、C12またはC14であることを特徴とする請求項1に記載の有機発光素子。
【請求項8】
前記炭素系化合物は、フラーレン、金属を含むフラーレン系錯化合物、炭素ナノチューブ、炭素ファイバ、カーボンブラック、黒鉛、カルビン、MgC60、CaC60及びSrC60からなる群から選択された一つ以上であることを特徴とする請求項2に記載の有機発光素子。
【請求項9】
前記正孔注入層、正孔輸送層、発光層、正孔阻止層、電子輸送層及び電子注入層からなる群から選択された一つ以上の層が、炭素系化合物を含むことを特徴とする請求項1ないし4のうちいずれか1項に記載の有機発光素子。
【請求項10】
前記炭素系化合物の含有量は、各層100重量部を基準として0.005ないし99.95重量部であることを特徴とする請求項9に記載の有機発光素子。
【請求項11】
基板と、
前記基板上に形成された第1電極と、
前記第1電極上部に形成された正孔注入層と、
前記正孔注入層上部に形成された発光層と、
前記発光層上部に形成された第2電極と、を備え、
前記正孔注入層と発光層との間に、フッ素置換されたフタロシアニン誘導体と、C(2x+2)、C(2x−2)またはC2xで表示される脂肪族及びC6y6y−2nで表示される芳香族のフッ化炭素化合物と、フッ素化フラーレンとからなる群から選択された一つ以上の含フッ素化合物を含む有機膜を備え、前記式中、xは、1ないし500の整数であり、yは、1ないし80の整数であり、nは、0ないし80の整数であることを特徴とする有機発光素子。
【請求項12】
前記含フッ素化合物は、F16CuPc、C0F42、C、C1210、C1814、C2418、C4230、C10、C12、C14、C16、C、C、C、C、C、C10、C12またはC14であることを特徴とする請求項11に記載の有機発光素子。
【請求項13】
前記含フッ素化合物を含む有機膜上に、炭素系化合物のバッファ層を前記有機膜の一面または両面にさらに備えることを特徴とする請求項11に記載の有機発光素子。
【請求項14】
前記正孔注入層、前記有機膜または前記バッファ層上部に正孔輸送層をさらに備えることを特徴とする請求項11ないし13のうちいずれか1項に記載の有機発光素子。
【請求項15】
前記発光層と第2電極との間に正孔阻止層、電子注入層及び電子輸送層のうち選択された一つ以上がさらに備えられることを特徴とする請求項14に記載の有機発光素子。
【請求項16】
前記正孔注入層、正孔輸送層、発光層、正孔阻止層、電荷輸送層及び電荷注入層からなる群から選択された一つ以上の層は、炭素系化合物を含むことを特徴とする請求項15に記載の有機発光素子。
【請求項17】
前記炭素系化合物の含有量は、各層総重量100重量部を基準として0.005ないし99.95重量部であることを特徴とする請求項16に記載の有機発光素子。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−182237(P2008−182237A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−12880(P2008−12880)
【出願日】平成20年1月23日(2008.1.23)
【出願人】(590002817)三星エスディアイ株式会社 (2,784)
【Fターム(参考)】