説明

含フッ素多官能化合物、反射防止膜及び反射防止フィルム

【課題】低屈折率かつ高耐擦傷性の反射防止フィルムの提供。
【解決手段】下記一般式(1)の化合物、および無機微粒子を含む組成物を硬化してなる層を含有する。(式(1)中、Yは式(2)で表される基(但し、Xは水素原子、フッ素原子、塩素原子、メチル基、又は水酸基を表す。)又はビニル基を表し、Lは式(3)又は(4)で表される基を表し、L及びLは、式(5)、(6)又は(7)で表される基を表し、Rfは飽和パーフルオロアルキル基、Rfはパーフルオロアルキル基又はフッ素原子を表し、Rfは、パーフルオロアルキル基又は塩素原子を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含フッ素多官能化合物、反射防止膜及び反射防止フィルムに関する。詳しくは、低屈折率で優れた硬度を有し、且つ、重合体を形成させる際に組成物中に存在する高フッ素含率材料、シリカ粒子、及びシランカップリング材などとの相溶性が高い含フッ素多官能化合物に関する。さらには、それを用いてなる、反射防止膜及び反射防止フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
含フッ素多官能化合物は、架橋剤として重合性組成物に混合することにより、低屈折率且つ高硬度のポリマーを与えるため、非常に有用な化合物である。このような含フッ素重合体は防汚性や離型性などにも優れ、反射防止フィルム、光ファイバーなどの光導波路、塗料、金型離型材などの分野に使用されている。3〜6官能の含フッ素多官能化合物が、これまでにいくつか知られている(例えば、特許文献1〜9参照)。
【0003】
一般的に反射防止フィルムは、支持体フィルム上に、該支持体より低屈折率の、適切な膜厚の低屈折率層を形成することにより作製できる。反射防止フィルムはディスプレイなどの最表面に用いられるために高い耐擦傷性が必要とされるが、低い屈折率と高い耐擦傷性の両立は困難であった(例えば、特許文献10参照)。その解決手段として表面への滑り性付与が有効であり、シランカップリング材などのシリコーン化合物の導入により、顕著な滑り性発現効果及び耐擦傷性改良効果が見られた。
【0004】
しかしながら一方で、シリコーン化合物と低屈折率層組成物素材との相溶性の不足に起因する、重合体膜の透明性低下、経時或いは高温時のブリードアウト、接触媒体へのシリコーン成分の転写、これらに伴う性能劣化や製造ラインの汚染など、様々な問題が浮上してきた。
【0005】
この問題の解決策として、3官能以上の含フッ素多官能化合物の使用が提案された(例えば、特許文献8および10参照)が、その効果は満足の行くものではなく、更に相溶性のよい多官能化合物が求められている。
【0006】
【特許文献1】特開平10−182746号公報
【特許文献2】特開平11−80312号公報
【特許文献3】特開2000−111716号公報
【特許文献4】国際公開第03/022906号パンフレット
【特許文献5】特開2003−313242号公報
【特許文献6】特開2004−238487号公報
【特許文献7】特表2004−523610号公報
【特許文献8】特開2006−28280号公報
【特許文献9】特開2006−45159号公報
【特許文献10】特開2006−28409号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、低屈折率及び高い耐擦傷性を同時に満たし、同時にシリコーン成分の相分離を起こさない含フッ素多官能化合物を提供すること、それを含有する反射防止膜及び反射防止フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、鋭意検討の結果、多官能含フッ素化合物分子内に塩素を有するパーフルオロアルキル基を導入することにより、それらを有しない化合物と比較して、同等に低い屈折率及び高い耐擦傷性を保持しつつ、尚且つシリコーン成分との相溶性の高い、含フッ素多官能化合物を見出した。
本発明によれば、下記の手段により、シリコーン成分との相分離を起こさない含フッ素多官能化合物、それを含有する反射防止膜及び反射防止フィルムが提供される。
【0009】
1. 下記一般式(1)で表されることを特徴とする含フッ素多官能化合物。
【0010】
【化1】

【0011】
(一般式(1)中、aは2〜8の整数を表し、bは1〜3の整数を表し、dは1〜10の整数を表し、gは0又は1を表し、Yは下記式(2)で表される基(但し、Xは水素原子、フッ素原子、塩素原子、メチル基、又は水酸基を表す。)又はビニル基を表し、Lは下記式(3)又は(4)で表される基(但し、mは0〜10の整数を表す。Yは前記と同義である。)を表し、L及びLは、それぞれ独立に、下記式(5)、(6)又は(7)で表される基(但し、nは0〜10の整数を表す。)を表し、Rfは(a+b)価の、エーテル性酸素原子を含んでもよい、直鎖状、分枝状又は環状の飽和パーフルオロアルキル基を表し、Rfは炭素数1〜5の直鎖状又は分枝状の1価のパーフルオロアルキル基又はフッ素原子を表し、Rfは、少なくとも1つの塩素原子を有する、エーテル性酸素原子を含んでもよい、炭素数1〜5の直鎖状、分枝状又は環状の1価のパーフルオロアルキル基又は塩素原子を表す。上記各基は複数存在する場合は互いに同一でも異なっていてもよい。)
【0012】
【化2】

【0013】
2. (a+b)が4〜8の整数であることを特徴とする上記1に記載の含フッ素多官能化合物。
3. aが3〜8であり、Lは式(3)又は(4)で表される基であり、且つmは0〜10の整数であることを特徴とする上記1又は2に記載の含フッ素多官能化合物。
4. aが2であり、Lは式(4)で表される基であり、且つmは1〜10の整数であることを特徴とする上記1又は2に記載の含フッ素多官能化合物。
5. dが1であることを特徴とする上記1〜4のいずれかに記載の含フッ素多官能化合物。
6. 液相全フッ素化の手法を用いて製造されたことを特徴とする上記1〜5のいずれかに記載の含フッ素多官能化合物。
7. 下記の[工程1]、[工程2]および[工程3]を経て製造されることを特徴とする上記1〜6のいずれかに記載の含フッ素多官能化合物。
[工程1]下記一般式(8)又は(9)で表される化合物を液相全フッ素化の手法を用いて、実質的に全ての水素原子をフッ素原子に置換する工程。
【0014】
【化3】

【0015】
(一般式(8)および(9)中、L及びLは、それぞれ独立に、下記式(10)、(11)又は(12)で表される基(但し、nは0〜10の整数を表す。)を表し、Rは(a+b)価の、エーテル性酸素原子を含んでもよい、またフッ素原子を含んでもよい、飽和アルキル基であって、液相全フッ素化法により前記一般式(1)中のRf基を与えるような基を表し、Rは炭素数1〜5の直鎖状又は分枝状の1価のアルキル基又は水素原子であって、液相全フッ素化法により前記一般式(1)中のRf基を与えるような基又は水素原子を表し、Rは、少なくとも1つの塩素原子を有する、エーテル性酸素原子を含んでもよい、炭素数1〜5の直鎖状又は分枝状の1価のアルキル基であって、液相全フッ素化法により前記一般式(1)中のRf基を与えるような基又は塩素原子を表し、R及びRは、それぞれ独立に、フッ素原子、塩素原子又は炭素数1〜10の、エーテル性酸素原子を含んでもよく、ハロゲン原子で置換されていてもよい、直鎖状、分枝状、又は環状の1価の飽和アルキル基を表す。a、b、d、gは各々前記一般式(1)中のものと同義である。)
【0016】
【化4】

【0017】
[工程2]フッ素化された生成物を、ROHで表される化合物と反応させることにより、下記一般式(13)で表される化合物を得る工程。
【0018】
【化5】

【0019】
(一般式(13)中、Rは炭素数1〜6の直鎖状、分枝状又は環状の1価のアルキル基、又は炭素数6〜14の芳香族炭化水素基を表す。)
[工程3]一般式(13)で表される化合物を還元し、下記一般式(14)で表される化合物を得る工程。
【0020】
【化6】

【0021】
8. 上記1〜7のいずれかに記載の含フッ素多官能化合物を1〜99質量%含有する硬化性樹脂組成物を硬化してなる低屈折率層を有することを特徴とする反射防止膜。
9. 上記1〜7のいずれかに記載の含フッ素多官能化合物及び無機酸化物微粒子を含有する硬化性樹脂組成物を硬化してなる低屈折率層を有することを特徴とする反射防止膜。
10. 透明支持体上に上記8又は9に記載の反射防止膜が少なくとも1層設けられたことを特徴とする反射防止フィルム。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、低屈折率及び高い耐擦傷性を同時に満たし、同時にシリコーン成分の相分離を起こさない含フッ素多官能化合物を提供できる。また、それを含有する反射防止膜及び反射防止フィルムを提供できる。さらに本発明者が予期しなかったことに、本発明の含フッ素多官能化合物は、少数の塩素原子を分子内に導入するだけで、低屈折率層素材との高い相溶性を実現し、不十分な相溶性に起因する、接触媒体へのシリコーン成分の転写など、前記のような問題を大幅に解決できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の含フッ素多官能化合物、組成物、重合体、反射防止膜及び反射防止フィルムについて詳細に説明する。
【0024】
本発明の一つの実施様態は、下記一般式(1)で表される含フッ素多官能化合物である。
【0025】
【化7】

【0026】
(一般式(1)中、aは2〜8の整数を表し、bは1〜3の整数を表し、dは1〜10の整数を表し、gは0又は1を表し、Yは下記式(2)で表される基(但し、Xは水素原子、フッ素原子、塩素原子、メチル基、又は水酸基を表す。)又はビニル基を表し、Lは下記式(3)又は(4)で表される基(但し、mは0〜10の整数を表す。Yは前記と同義である。)を表し、L及びLは、それぞれ独立に、下記式(5)、(6)又は(7)で表される基(但し、nは0〜10の整数を表す。)を表し、Rfは(a+b)価の、エーテル性酸素原子を含んでもよい、直鎖状、分枝状又は環状の飽和パーフルオロアルキル基を表し、Rfは炭素数1〜5の直鎖状又は分枝状の1価のパーフルオロアルキル基又はフッ素原子を表し、Rfは、少なくとも1つの塩素原子を有する、エーテル性酸素原子を含んでもよい、炭素数1〜5の直鎖状、分枝状又は環状の1価のパーフルオロアルキル基又は塩素原子を表す。上記各基は複数存在する場合は互いに同一でも異なっていてもよい。)
【0027】
【化8】

【0028】
aは2〜6の整数であり、好ましくは2〜5の整数である。bは1〜3の整数であり、好ましくは1〜2の整数であり、より好ましくは1である。dは1〜10の整数であり、好ましくは1〜5の整数であり、より好ましくは1〜3の整数であり、さらに好ましくは1又は2である。gは0又は1である。またa及びbは、(a+b)が4〜8の整数となるような組み合わせが好ましく、4〜6の整数となるような組み合わせがより好ましい。(a+b)が8より大きくなると、一般式(1)で表される化合物の合成が格段に難しくなる傾向がある。
【0029】
Yは、前記式(2)で表される基又はビニル基から選ばれる基であり、好ましくは式(2)で表される基である。式(2)中、Xは水素原子、フッ素原子、塩素原子、メチル基、又は水酸基であるが、好ましくは水素原子、フッ素原子又はメチル基であり、より好ましくは水素原子又はフッ素原子である。Xが水素原子又はフッ素原子以外である場合、一般式(1)で表される化合物中のフッ素原子含率が低下し、これを用いた重合体の屈折率が高くなってしまうために、好ましくない。また、複数のYは同一分子中において同一であっても異なっていてもよいが、好ましくは同一である。
【0030】
は、前記式(3)又は式(4)で表される基から選ばれる基である。式中、mは0〜10の整数であり、好ましくは0〜6の整数であり、より好ましくは0〜3の整数であり、さらに好ましくは0〜2の整数であり、特に好ましくは0又は1である。式(4)中のYは、前記と同義である。また、前記aが2の場合、Lは式(4)で表される基であることが好ましく、mは1〜10の整数であることが好ましく、より好ましくは1〜3の整数であり、さらに好ましくは1又は2であり、特に好ましくは1である。
【0031】
及びLは、それぞれ独立に、前記式(5)、式(6)又は式(7)で表される基から選ばれる基である。式中、nは0〜10の整数であり、好ましくは0〜6の整数であり、より好ましくは0〜3の整数であり、さらに好ましくは0〜2の整数であり、特に好ましくは0又は1である。nが10を超える整数の場合、分子内での各Y基間の距離及び/又はY基間の平均距離が長くなってしまうために十分な耐擦傷性を得られず、好ましくない。
【0032】
Rfは(a+b)価の、エーテル性酸素原子を含んでもよい、直鎖状、分枝状又は環状の飽和パーフルオロアルキル基を表す。パーフルオロアルキル基とは、少なくとも炭素原子及びフッ素原子を有し、エーテル性炭素原子及び/又は水素原子を有していてもよい基を表し、炭素数としては好ましくは1〜50であり、より好ましくは2〜30であり、さらに好ましくは3〜20である。
【0033】
以下に、Rf基の好ましい具体的な構造例を挙げるが、本発明はこれらにより限定されるものではない。(式中、*はL又はLで表される基の結合する位置を表す。)
【0034】
【化9】

【0035】
【化10】

【0036】
Rfは、炭素数1〜5の直鎖状又は分枝状の1価のパーフルオロアルキル基又はフッ素原子を表す。炭素数としては、好ましくは1〜3であり、より好ましくは1又は2であり、さらに好ましくは1である。
【0037】
Rf基の具体例としては、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロ−1−プロピル基、ヘプタフルオロ−2−プロピル基、ノナフルオロ−1−ブチル基、ノナフルオロ−2−ブチル基、2−トリフルオロメチル−ヘキサフルオロ−1−プロピル基、2−トリフルオロメチル−ヘキサフルオロ−2−プロピル基、ウンデカフルオロ−1−ペンチル基、ウンデカフルオロ−2−ペンチル基、ウンデカフルオロ−3−ペンチル基、2−トリフルオロメチル−オクタフルオロ−1−ブチル基、2−トリフルオロメチル−オクタフルオロ−2−ブチル基、2−トリフルオロメチル−オクタフルオロ−3−ブチル基、2,2−ビス(トリフルオロメチル)−ペンタフルオロ−1−プロピル基であり、好ましくはトリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロ−1−プロピル基、ヘプタフルオロ−2−プロピル基であり、より好ましくはトリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基であり、さらに好ましくはトリフルオロメチル基である。
【0038】
Rfは、少なくとも1つの塩素原子を有する、エーテル性酸素原子を含んでもよい、炭素数1〜5の直鎖状、分枝状又は環状の1価のパーフルオロアルキル基又は塩素原子を表す。1価のパーフルオロアルキル基は、直鎖状、分枝状又は環状だが、好ましくは直鎖状又は分枝状である。1価のパーフルオロアルキル基の炭素数は1〜5だが、好ましくは1〜3である。1価のパーフルオロアルキル基に含有される塩素原子数は、好ましくは1〜11であり、より好ましくは1〜7であり、さらに好ましくは1〜5であり、特に好ましくは1〜3である。塩素原子数が多いほど低屈折率層素材との相溶性は高まるが、本発明の含フッ素多官能化合物分子中のフッ素含率が低下するため、それを含有する組成物の重合物の屈折率が高くなり好ましくない。1価のパーフルオロアルキル基に含有される塩素原子の置換する位置は特に限定されないが、1価のパーフルオロアルキル基が直鎖状又は分枝状の場合は、基の末端に近い位置に置換していることが好ましい。1価のパーフルオロアルキル基に含有される塩素原子の置換位置は、同じ塩素原子数であれば、基の末端に位置する方がより相溶性を高める効果が高い傾向にあり好ましい。
【0039】
Rf基の具体例としては、例えばクロロジフルオロメチル基、クロロフルオロメチル基、ジクロロフルオロメチル基、1−クロロ−1,2,2,2−テトラフルオロエチル基、2−クロロ−1,1,2,2−テトラフルオロエチル基、2−クロロ−1,1,2−トリフルオロエチル基、1,1−ジクロロ−2,2,2−トリフルオロエチル基、1,2−ジクロロ−1,2,2−トリフルオロエチル基、2,2−ジクロロ−1,1,2−トリフルオロエチル基、1,1,2−トリクロロ−2,2−ジフルオロエチル基、1,2,2−トリクロロ−1,2−ジフルオロエチル基、2,2,2−トリクロロ−1,1−ジフルオロエチル基、1,1,2,2−テトラクロロ−2−フルオロエチル基、1,2,2,2−テトラクロロ−1−フルオロエチル基、1−クロロ−1,2,2,3,3,3−ヘキサフルオロ−1−プロピル基、2−クロロ−1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロ−1−プロピル基、3−クロロ−1,1,2,2,3,3−ヘキサフルオロ−1−プロピル基、1,1−ジクロロ−2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロピル基、1,2−ジクロロ−1,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロピル基、1,3−ジクロロ−1,2,2,3,3−ペンタフルオロ−1−プロピル基、2,2−ジクロロ−1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロピル基、2,3−ジクロロ−1,1,2,3,3−ペンタフルオロ−1−プロピル基、3,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロ−1−プロピル基、1,1,2−トリクロロ−2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロピル基、1,1,3−トリクロロ−2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロピル基、1,2,2−トリクロロ−1,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロピル基、1,2,3−トリクロロ−1,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロピル基、1,3,3−トリクロロ−1,2,2,3−テトラフルオロ−1−プロピル基、2,2,3−トリクロロ−1,1,3,3−テトラフルオロ−1−プロピル基、2,3,3−トリクロロ−1,1,2,3−テトラフルオロ−1−プロピル基、3,3,3−トリクロロ−1,1,2,2−テトラフルオロ−1−プロピル基、1,1,2,2−テトラクロロ−3,3,3−トリフルオロ−1−プロピル基、1,1,2,3−テトラクロロ−2,3,3−トリフルオロ−1−プロピル基、1,1,3,3−テトラクロロ−2,2,3−トリフルオロ−1−プロピル基、1,2,2,3−テトラクロロ−1,3,3−トリフルオロ−1−プロピル基、1,2,3,3−テトラクロロ−1,2,3−トリフルオロ−1−プロピル基、1,3,3,3−テトラクロロ−1,2,2−トリフルオロ−1−プロピル基、2,2,3,3−テトラクロロ−1,1,3−トリフルオロ−1−プロピル基、2,3,3,3−テトラクロロ−1,1,2−トリフルオロ−1−プロピル基、
【0040】
1−クロロ−1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロピル基、2−クロロ−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロピル基、1,1−ジクロロ−1,2,3,3,3−ペンタフルオロ−2−プロピル基、1,2−ジクロロ−1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−プロピル基、1,3−ジクロロ−1,1,2,3,3−ペンタフルオロ−2−プロピル基、1,1,1−トリクロロ−2,3,3,3−テトラフルオロ−2−プロピル基、1,1,2−トリクロロ−1,3,3,3−テトラフルオロ−2−プロピル基、1,1,3−トリクロロ−1,2,3,3−テトラフルオロ−2−プロピル基、1,2,3−トリクロロ−1,1,3,3−テトラフルオロ−2−プロピル基、1,1,1,2−テトラクロロ−3,3,3−トリフルオロ−2−プロピル基、1,1,1,3−テトラクロロ−2,3,3−トリフルオロ−2−プロピル基、1,1,2,3−テトラクロロ−1,3,3−トリフルオロ−2−プロピル基、1,1,3,3−テトラクロロ−1,2,3−トリフルオロ−2−プロピル基、1,1,1,2,3−ペンタクロロ−3,3−ジフルオロ−2−プロピル基、1,1,1,3,3−ペンタクロロ−2,3−ジフルオロ−2−プロピル基、1,1,1,2,3,3−ヘキサクロロ−3−フルオロ−2−プロピル基、1,1,1,3,3,3−ヘキサクロロ−2−フルオロ−2−プロピル基、
【0041】
4−クロロ−1,1,2,2,3,3,4,4−オクタフルオロ−1−ブチル基、4,4−ジクロロ−1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロ−1−ブチル基、3,4−ジクロロ−1,1,2,2,3,4,4−ヘプタフルオロ−1−ブチル基、4,4,4−トリクロロ−1,1,2,2,3,3−ヘキサフルオロ−1−ブチル基、3,4,4−トリクロロ−1,1,2,2,3,4−ヘキサフルオロ−1−ブチル基、4−クロロ−1,1,1,2,3,3,4,4−オクタフルオロ−2−ブチル基、1,4−ジクロロ−1,1,2,3,3,4,4−ヘプタフルオロ−2−ブチル基、4,4−ジクロロ−1,1,1,2,3,3,4−ヘプタフルオロ−2−ブチル基、1,1,4−トリクロロ−1,2,3,3,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブチル基、1,4,4−トリクロロ−1,1,2,3,3,4−ヘキサフルオロ−2−ブチル基、4,4,4−トリクロロ−1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロ−2−ブチル基、1,1,1,4−テトラクロロ−2,3,3,4,4−ペンタフルオロ−2−ブチル基、1,1,4,4−テトラクロロ−1,2,3,3,4−ペンタフルオロ−2−ブチル基、1,4,4,4−テトラクロロ−1,1,2,3,3−ペンタフルオロ−2−ブチル基、3−クロロ−2−トリフルオロメチル−1,1,2,3,3−ペンタフルオロ−1−プロピル基、3−クロロ−2−クロロジフルオロメチル−1,1,2,3,3−ペンタフルオロ−1−プロピル基、3−クロロ−2−ジクロロフルオロメチル−1,1,2,3,3−ペンタフルオロ−1−プロピル基、3−クロロ−2−トリクロロメチル−1,1,2,3,3−ペンタフルオロ−1−プロピル基、3,3−ジクロロ−2−ジクロロフルオロメチル−1,1,2,3−テトラフルオロ−1−プロピル基、3,3−ジクロロ−2−トリクロロメチル−1,1,2,3−テトラフルオロ−1−プロピル基、3,3,3−トリクロロ−2−トリクロロメチル−1,1,2−トリフルオロ−1−プロピル基、
【0042】
1−クロロ−2−トリフルオロメチル−1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−プロピル基、1,3−ジクロロ−2−トリフルオロメチル−1,1,3,3−テトラフルオロ−2−プロピル基、1,3−ジクロロ−2−クロロジフルオロメチル−1,1,3,3−テトラフルオロ−2−プロピル基、1,3−ジクロロ−2−ジクロロフルオロメチル−1,1,3,3−テトラフルオロ−2−プロピル基、1,1,3−トリクロロ−2−ジクロロフルオロメチル−1,3,3−トリフルオロ−2−プロピル基、1,1,3,3−テトラクロロ−2−ジクロロフルオロメチル−1,3−ジフルオロ−2−プロピル基、1,3−ジクロロ−2−トリクロロメチル−1,1,3,3−テトラフルオロ−2−プロピル基、1,1,3−トリクロロ−2−トリクロロメチル−1,3,3−トリフルオロ−2−プロピル基、1,1,1−トリクロロ−2−トリクロロメチル−3,3,3−トリフルオロ−2−プロピル基、1,1,3,3−テトラクロロ−2−トリクロロメチル−1,3−ジフルオロ−2−プロピル基、1,1,1,3−テトラクロロ−2−トリクロロメチル−3,3−ジフルオロ−2−プロピル基、1,1,1,3,3−ペンタクロロ−2−トリクロロメチル−3−フルオロ−2−プロピル基、1,1,1,3,3,3−ヘキサクロロ−2−トリクロロメチル−2−プロピル基、5−クロロ−1,1,2,2,3,3,4,4,5,5−デカフルオロ−1−ペンチル基、5,5−ジクロロ−1,1,2,2,3,3,4,4,5−ノナフルオロ−1−ペンチル基、4,5−ジクロロ−1,1,2,2,3,3,4,5,5−ノナフルオロ−1−ペンチル基、4−クロロ−3−トリフルオロメチル−1,1,2,2,3,4,4−ヘプタフルオロ−1−ブチル基、4−クロロ−3−クロロジフルオロメチル−1,1,2,2,3,4,4−ヘプタフルオロ−1−ブチル基、4−クロロ−3−トリフルオロメチル−1,1,2,2,3,4,4−ヘプタフルオロ−1−ブチル基、4−クロロ−2−クロロジフルオロメチル−1,1,2,3,3,4,4−ヘプタフルオロ−1−ブチル基、3−クロロ−2,2−ビス(トリフルオロメチル)−1,1,3,3−テトラフルオロ−1−プロピル基、3−クロロ−2,2−ビス(クロロジフルオロメチル)−1,1,3,3−テトラフルオロ−1−プロピル基、
【0043】
1−クロロ−2,2,3,3−テトラフルオロシクロプロピル基、2−クロロ−1,2,3,3−テトラフルオロシクロプロピル基、2,2−ジクロロ−1,3,3−トリフルオロシクロプロピル基、2,3−ジクロロ−1,2,3−トリフルオロシクロプロピル基、1−クロロジフルオロメチル−2,2,3,3−テトラフルオロシクロプロピル基、2−クロロジフルオロメチル−1,2,3,3−テトラフルオロシクロプロピル基、2−トリクロロメチル−1,2,3,3−テトラフルオロシクロプロピル基、2−トリクロロジフルオロエチル−1,2,3,3−テトラフルオロシクロプロピル基、2,2−ジクロロ−1,3,3−トリフルオロシクロプロピルジフルオロメチル基、2,3−ジクロロ−1,2,3−トリフルオロシクロプロピルジフルオロメチル基、2−トリクロロメチル−1,2,3,3−テトラフルオロシクロプロピルジフルオロメチル基、2,2−ジクロロ−1,3,3−トリフルオロシクロプロピルテトラフルオロエチル基、2,3−ジクロロ−1,2,3−トリフルオロシクロプロピルテトラフルオロエチル基、1−クロロ−2,2,3,3,4,4−ヘキサフルオロシクロブチル基、2−クロロ−1,2,3,3,4,4−ヘキサフルオロシクロブチル基、3−クロロ−1,2,2,3,4,4−ヘキサフルオロシクロブチル基、2,2−ジクロロ−1,3,3,4,4−ペンタフルオロシクロブチル基、3,3−ジクロロ−1,2,2,4,4−ペンタフルオロシクロブチル基、2,3−ジクロロ−1,2,3,4,4−ペンタフルオロシクロブチル基、2,4−ジクロロ−1,2,3,3,4−ペンタフルオロシクロブチル基、2,2,3,3−テトラクロロ−1,4,4−トリフルオロシクロブチル基、2,2−ジクロロ−1,3,3,4,4−ペンタフルオロシクロブチルジフルオロメチル基、3,3−ジクロロ−1,2,2,4,4−ペンタフルオロシクロブチルジフルオロメチル基、2,3−ジクロロ−1,2,3,4,4−ペンタフルオロシクロブチルジフルオロメチル基、1−クロロ−2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロシクロペンチル基、2−クロロ−1,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロシクロペンチル基、3−クロロ−1,2,2,3,4,4,5,5−オクタフルオロシクロペンチル基、2,3−ジクロロ−1,2,3,4,4,5,5−ヘプタフルオロシクロペンチル基、3,4−ジクロロ−1,2,2,3,4,5,5−ヘプタフルオロシクロペンチル基、
【0044】
クロロジフルオロメトキシジフルオロメチル基、ジクロロフルオロメトキシジフルオロメチル基、トリクロロメトキシジフルオロメチル基、2−クロロ−1,1,2,2−テトラフルオロエトキシジフルオロメチル基、2,2,2−トリクロロ−1,1−ジフルオロエトキシジフルオロメチル基、クロロジフルオロメトキシテトラフルオロエチル基、ジクロロフルオロメトキシテトラフルオロエチル基、トリクロロメトキシジフルオロエチル基、3−クロロ−1,1,2,2,3,3−ヘキサフルオロプロポキシジフルオロメチル基、1,3−ジクロロ−1,1,2,3,3−ペンタフルオロ−2−プロポキシジフルオロメチル基、2−クロロ−1,2,3,3−テトラフルオロシクロプロポキシジフルオロメチル基、2−クロロジフルオロメチル−1,2,3,3−テトラフルオロシクロプロポキシジフルオロメチル基、2−トリクロロメチル−1,2,3,3−テトラフルオロシクロプロポキシジフルオロメチル基、2−クロロジフルオロメチル−1,2,3,3−テトラフルオロシクロプロピルメチルオキシジフルオロメチル基、などが挙げられるが、
【0045】
好ましくは、クロロジフルオロメチル基、ジクロロフルオロメチル基、2−クロロ−1,1,2,2−テトラフルオロエチル基、2−クロロ−1,1,2−トリフルオロエチル基、2,2−ジクロロ−1,1,2−トリフルオロエチル基、2,2,2−トリクロロ−1,1−ジフルオロエチル基、1,1,2,2,2−ペンタクロロエチル基、3−クロロ−1,1,2,2,3,3−ヘキサフルオロ−1−プロピル基、3,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロ−1−プロピル基、2,2,3−トリクロロ−1,1,3,3−テトラフルオロ−1−プロピル基、2,3,3−トリクロロ−1,1,2,3−テトラフルオロ−1−プロピル基、3,3,3−トリクロロ−1,1,2,2−テトラフルオロ−1−プロピル基、2,2,3,3−テトラクロロ−1,1,3−トリフルオロ−1−プロピル基、2,3,3,3−テトラクロロ−1,1,2−トリフルオロ−1−プロピル基、1−クロロ−1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロピル基、1,1−ジクロロ−1,2,3,3,3−ペンタフルオロ−2−プロピル基、1,3−ジクロロ−1,1,2,3,3−ペンタフルオロ−2−プロピル基、1,1,1−トリクロロ−2,3,3,3−テトラフルオロ−2−プロピル基、1,1,3−トリクロロ−1,2,3,3−テトラフルオロ−2−プロピル基、1,1,1,3−テトラクロロ−2,3,3−トリフルオロ−2−プロピル基、1,1,3,3−テトラクロロ−1,2,3−トリフルオロ−2−プロピル基、1,1,1,3,3,3−ヘキサクロロ−2−フルオロ−2−プロピル基、4−クロロ−1,1,2,2,3,3,4,4−オクタフルオロ−1−ブチル基、4,4−ジクロロ−1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロ−1−ブチル基、3,4−ジクロロ−1,1,2,2,3,4,4−ヘプタフルオロ−1−ブチル基、4,4,4−トリクロロ−1,1,2,2,3,3−ヘキサフルオロ−1−ブチル基、3,4,4−トリクロロ−1,1,2,2,3,4−ヘキサフルオロ−1−ブチル基、3−クロロ−2−トリフルオロメチル−1,1,2,3,3−ペンタフルオロ−1−プロピル基、3−クロロ−2−クロロジフルオロメチル−1,1,2,3,3−ペンタフルオロ−1−プロピル基、3,3,3−トリクロロ−2−トリクロロメチル−1,1,2−トリフルオロ−1−プロピル基、1−クロロ−2−トリフルオロメチル−1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−プロピル基、1,3−ジクロロ−2−トリフルオロメチル−1,1,3,3−テトラフルオロ−2−プロピル基、1,3−ジクロロ−2−クロロジフルオロメチル−1,1,3,3−テトラフルオロ−2−プロピル基、1,1,1,3,3,3−ヘキサクロロ−2−トリクロロメチル−2−プロピル基、5−クロロ−1,1,2,2,3,3,4,4,5,5−デカフルオロ−1−ペンチル基、4,5−ジクロロ−1,1,2,2,3,3,4,5,5−ノナフルオロ−1−ペンチル基、4−クロロ−3−クロロジフルオロメチル−1,1,2,2,3,4,4−ヘプタフルオロ−1−ブチル基、4−クロロ−3−トリフルオロメチル−1,1,2,2,3,4,4−ヘプタフルオロ−1−ブチル基、4−クロロ−2−クロロジフルオロメチル−1,1,2,3,3,4,4−ヘプタフルオロ−1−ブチル基、3−クロロ−2,2−ビス(トリフルオロメチル)−1,1,3,3−テトラフルオロ−1−プロピル基、3−クロロ−2,2−ビス(クロロジフルオロメチル)−1,1,3,3−テトラフルオロ−1−プロピル基、
【0046】
2−クロロ−1,2,3,3−テトラフルオロシクロプロピル基、2,2−ジクロロ−1,3,3−トリフルオロシクロプロピル基、2,3−ジクロロ−1,2,3−トリフルオロシクロプロピル基、2−クロロジフルオロメチル−1,2,3,3−テトラフルオロシクロプロピル基、2−トリクロロメチル−1,2,3,3−テトラフルオロシクロプロピル基、2−トリクロロジフルオロエチル−1,2,3,3−テトラフルオロシクロプロピル基、2,2−ジクロロ−1,3,3−トリフルオロシクロプロピルジフルオロメチル基、2,3−ジクロロ−1,2,3−トリフルオロシクロプロピルジフルオロメチル基、2−トリクロロメチル−1,2,3,3−テトラフルオロシクロプロピルジフルオロメチル基、2−クロロ−1,2,3,3,4,4−ヘキサフルオロシクロブチル基、3−クロロ−1,2,2,3,4,4−ヘキサフルオロシクロブチル基、2,2−ジクロロ−1,3,3,4,4−ペンタフルオロシクロブチル基、3,3−ジクロロ−1,2,2,4,4−ペンタフルオロシクロブチル基、2,3−ジクロロ−1,2,3,4,4−ペンタフルオロシクロブチル基、2,2,3,3−テトラクロロ−1,4,4−トリフルオロシクロブチル基、2,2−ジクロロ−1,3,3,4,4−ペンタフルオロシクロブチルジフルオロメチル基、3,3−ジクロロ−1,2,2,4,4−ペンタフルオロシクロブチルジフルオロメチル基、2,3−ジクロロ−1,2,3,4,4−ペンタフルオロシクロブチルジフルオロメチル基、クロロジフルオロメトキシジフルオロメチル基、2−クロロ−1,1,2,2−テトラフルオロエトキシジフルオロメチル基、クロロジフルオロメトキシテトラフルオロエチル基、3−クロロ−1,1,2,2,3,3−ヘキサフルオロプロポキシジフルオロメチル基、1,3−ジクロロ−1,1,2,3,3−ペンタフルオロ−2−プロポキシジフルオロメチル基、2−クロロ−1,2,3,3−テトラフルオロシクロプロポキシジフルオロメチル基、2−クロロジフルオロメチル−1,2,3,3−テトラフルオロシクロプロポキシジフルオロメチル基、2−クロロジフルオロメチル−1,2,3,3−テトラフルオロシクロプロピルメチルオキシジフルオロメチル基であり、
【0047】
より好ましくは、クロロジフルオロメチル基、2−クロロ−1,1,2,2−テトラフルオロエチル基、2−クロロ−1,1,2−トリフルオロエチル基、2,2,2−トリクロロ−1,1−ジフルオロエチル基、3−クロロ−1,1,2,2,3,3−ヘキサフルオロ−1−プロピル基、3,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロ−1−プロピル基、2,3,3−トリクロロ−1,1,2,3−テトラフルオロ−1−プロピル基、3,3,3−トリクロロ−1,1,2,2−テトラフルオロ−1−プロピル基、1−クロロ−1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロピル基、1,3−ジクロロ−1,1,2,3,3−ペンタフルオロ−2−プロピル基、1,1,1−トリクロロ−2,3,3,3−テトラフルオロ−2−プロピル基、1,1,1,3,3,3−ヘキサクロロ−2−フルオロ−2−プロピル基、4−クロロ−1,1,2,2,3,3,4,4−オクタフルオロ−1−ブチル基、4,4−ジクロロ−1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロ−1−ブチル基、3,4−ジクロロ−1,1,2,2,3,4,4−ヘプタフルオロ−1−ブチル基、4,4,4−トリクロロ−1,1,2,2,3,3−ヘキサフルオロ−1−ブチル基、3−クロロ−2−トリフルオロメチル−1,1,2,3,3−ペンタフルオロ−1−プロピル基、3−クロロ−2−クロロジフルオロメチル−1,1,2,3,3−ペンタフルオロ−1−プロピル基、3,3,3−トリクロロ−2−トリクロロメチル−1,1,2−トリフルオロ−1−プロピル基、1−クロロ−2−トリフルオロメチル−1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−プロピル基、1,3−ジクロロ−2−トリフルオロメチル−1,1,3,3−テトラフルオロ−2−プロピル基、1,3−ジクロロ−2−クロロジフルオロメチル−1,1,3,3−テトラフルオロ−2−プロピル基、1,1,1,3,3,3−ヘキサクロロ−2−トリクロロメチル−2−プロピル基、5−クロロ−1,1,2,2,3,3,4,4,5,5−デカフルオロ−1−ペンチル基、4,5−ジクロロ−1,1,2,2,3,3,4,5,5−ノナフルオロ−1−ペンチル基、4−クロロ−3−クロロジフルオロメチル−1,1,2,2,3,4,4−ヘプタフルオロ−1−ブチル基、4−クロロ−2−クロロジフルオロメチル−1,1,2,3,3,4,4−ヘプタフルオロ−1−ブチル基、3−クロロ−2,2−ビス(クロロジフルオロメチル)−1,1,3,3−テトラフルオロ−1−プロピル基、2−クロロ−1,2,3,3−テトラフルオロシクロプロピル基、2,2−ジクロロ−1,3,3−トリフルオロシクロプロピル基、2,3−ジクロロ−1,2,3−トリフルオロシクロプロピル基、2−クロロジフルオロメチル−1,2,3,3−テトラフルオロシクロプロピル基、2−トリクロロメチル−1,2,3,3−テトラフルオロシクロプロピル基、2,2−ジクロロ−1,3,3−トリフルオロシクロプロピルジフルオロメチル基、2,3−ジクロロ−1,2,3−トリフルオロシクロプロピルジフルオロメチル基、2−トリクロロメチル−1,2,3,3−テトラフルオロシクロプロピルジフルオロメチル基、クロロジフルオロメトキシジフルオロメチル基、2−クロロ−1,1,2,2−テトラフルオロエトキシジフルオロメチル基、クロロジフルオロメトキシテトラフルオロエチル基、1,3−ジクロロ−1,1,2,3,3−ペンタフルオロ−2−プロポキシジフルオロメチル基、2−クロロ−1,2,3,3−テトラフルオロシクロプロポキシジフルオロメチル基、2−クロロジフルオロメチル−1,2,3,3−テトラフルオロシクロプロピルメチルオキシジフルオロメチル基であり、
【0048】
さらに好ましくは、クロロジフルオロメチル基、2−クロロ−1,1,2,2−テトラフルオロエチル基、2−クロロ−1,1,2−トリフルオロエチル基、3−クロロ−1,1,2,2,3,3−ヘキサフルオロ−1−プロピル基、1,3−ジクロロ−1,1,2,3,3−ペンタフルオロ−2−プロピル基、4−クロロ−1,1,2,2,3,3,4,4−オクタフルオロ−1−ブチル基、3,4−ジクロロ−1,1,2,2,3,4,4−ヘプタフルオロ−1−ブチル基、3−クロロ−2−クロロジフルオロメチル−1,1,2,3,3−ペンタフルオロ−1−プロピル基、1,3−ジクロロ−2−クロロジフルオロメチル−1,1,3,3−テトラフルオロ−2−プロピル基、2,3−ジクロロ−1,2,3−トリフルオロシクロプロピル基、2−クロロジフルオロメチル−1,2,3,3−テトラフルオロシクロプロピル基、2,3−ジクロロ−1,2,3−トリフルオロシクロプロピルジフルオロメチル基、2−クロロ−1,1,2,2−テトラフルオロエトキシジフルオロメチル基、クロロジフルオロメトキシテトラフルオロエチル基、1,3−ジクロロ−1,1,2,3,3−ペンタフルオロ−2−プロポキシジフルオロメチル基、2−クロロジフルオロメチル−1,2,3,3−テトラフルオロシクロプロピルメチルオキシジフルオロメチル基であり、特に好ましくは、クロロジフルオロメチル基、2−クロロ−1,1,2,2−テトラフルオロエチル基、3−クロロ−1,1,2,2,3,3−ヘキサフルオロ−1−プロピル基、1,3−ジクロロ−1,1,2,3,3−ペンタフルオロ−2−プロピル基、である。
【0049】
以下に、一般式(1)で表される化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0050】
【化11】

【0051】
【化12】

【0052】
【化13】

【0053】
【化14】


【0054】
【化15】

【0055】
【化16】

【0056】
【化17】

【0057】
【化18】

【0058】
一般式(1)で表される含フッ素多官能化合物の合成法は特に限定されないが、分子設計の自由度やコストの観点より、米国特許第5,093,432号明細書や国際公開第00/56694号パンフレットに記載の液相全フッ素化反応を利用するのが好ましい。
【0059】
本発明の一つの実施様態は、[工程1]一般式(8)又は一般式(9)で表される化合物を液相全フッ素化の手法を用いて、実質的に全ての水素原子をフッ素原子に置換する工程、[工程2]フッ素化された生成物を、ROHで表される化合物と反応させることにより、一般式(13)で表される化合物を得る工程、[工程3]一般式(13)で表される化合物を還元し、一般式(14)で表される化合物を得る工程、の3つの工程を経て製造される、含フッ素多官能化合物である。
【0060】
【化19】

【0061】
式中、a、b、d、g、Rf、Rf、Rf、L、Lは、一般式(1)におけるそれらと同義である。
【0062】
式(8)および(9)中のRは(a+b)価の、エーテル性酸素原子を含んでもよい、またフッ素原子を含んでもよい、飽和アルキル基であって、液相全フッ素化により一般式(1)中のRf基を与えるような基を表す。炭素数としては好ましくは1〜50であり、より好ましくは2〜30であり、さらに好ましくは3〜20である。以下にR基の好ましい具体的な構造例を挙げるが、本発明はこれらにより限定されるものではない。(式中、*はL又はLで表される基の結合する位置を表す。)
【0063】
【化20】

【0064】
【化21】

【0065】
は炭素数1〜5の直鎖状又は分枝状の1価のアルキル基であって、液相全フッ素化法により前記Rf基を与えるような基又は水素原子を表す。炭素数としては好ましくは1〜3であり、より好ましくは1又は2であり、さらに好ましくは1である。R基の具体例としては、メチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、2−メチル−1−プロピル基、2−メチル−2−プロピル基、1−ペンチル基、2−ペンチル基、3−ペンチル基、2−メチル−1−ブチル基、2−メチル−2−ブチル基、2−メチル−3−ブチル基、2,2−ジメチル−1−プロピル基であり、好ましくはメチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基であり、より好ましくはメチル基又はエチル基であり、さらに好ましくはメチル基である。
【0066】
は、少なくとも1つの塩素原子を有する、エーテル性酸素原子を含んでもよい、炭素数1〜5の直鎖状又は分枝状の1価のアルキル基であって、液相全フッ素化法により前記Rf基を与えるような基又は塩素原子を表す。1価のアルキル基は、直鎖状、分枝状又は環状だが、好ましくは直鎖状又は分枝状である。1価のアルキル基の炭素数は1〜5だが、好ましくは1〜3である。1価のアルキル基に含有される塩素原子数は、好ましくは1〜11であり、より好ましくは1〜7であり、さらに好ましくは1〜5であり、特に好ましくは1〜3である。1価のアルキル基に含有される塩素原子の置換する位置は特に限定されないが、1価のアルキル基が直鎖状又は分枝状の場合は、基の末端に近い位置に置換していることが好ましい。また、複数の塩素原子は、同じ炭素原子と結合するよりも、異なる炭素原子と結合することが好ましい。
【0067】
基の具体例としては、塩素原子、クロロメチル基、ジクロロメチル基、1−クロロエチル基、2−クロロエチル基、1,1−ジクロロエチル基、1,2−ジクロロエチル基、2,2−ジクロロエチル基、1,1,2−トリクロロエチル基、1,2,2−トリクロロエチル基、2,2,2−トリクロロエチル基、1,1,2,2−テトラクロロエチル基、1,2,2,2−テトラクロロエチル基、1−クロロ−1−プロピル基、2−クロロ−1−プロピル基、3−クロロ−1−プロピル基、1,1−ジクロロ−1−プロピル基、1,2−ジクロロ−1−プロピル基、1,3−ジクロロ−1−プロピル基、2,2−ジクロロ−1−プロピル基、2,3−ジクロロ−1−プロピル基、3,3−ジクロロ−1−プロピル基、1,1,2−トリクロロ−1−プロピル基、1,1,3−トリクロロ−1−プロピル基、1,2,2−トリクロロ−1−プロピル基、1,2,3−トリクロロ−1−プロピル基、1,3,3−トリクロロ−1−プロピル基、2,2,3−トリクロロ−1−プロピル基、2,3,3−トリクロロ−1−プロピル基、3,3,3−トリクロロ−1−プロピル基、1,1,2,2−テトラクロロ−1−プロピル基、1,1,2,3−テトラクロロ−1−プロピル基、1,1,3,3−テトラクロロ−1−プロピル基、1,2,2,3−テトラクロロ−1−プロピル基、1,2,3,3−テトラクロロ−1−プロピル基、1,3,3,3−テトラクロロ−1−プロピル基、2,2,3,3−テトラクロロ−1−プロピル基、2,3,3,3−テトラクロロ−1−プロピル基、1−クロロ−2−プロピル基、2−クロロ−2−プロピル基、1,1−ジクロロ−2−プロピル基、1,2−ジクロロ−2−プロピル基、1,3−ジクロロ−2−プロピル基、1,1,1−トリクロロ−2−プロピル基、1,1,2−トリクロロ−2−プロピル基、1,1,3−トリクロロ−2−プロピル基、1,2,3−トリクロロ−2−プロピル基、1,1,1,2−テトラクロロ−2−プロピル基、1,1,1,3−テトラクロロ−2−プロピル基、1,1,2,3−テトラクロロ−2−プロピル基、1,1,3,3−テトラクロロ−2−プロピル基、1,1,1,2,3−ペンタクロロ−2−プロピル基、1,1,1,3,3−ペンタクロロ−2−プロピル基、1,1,1,2,3,3−ヘキサクロロ−2−プロピル基、1,1,1,3,3,3−ヘキサクロロ−2−プロピル基、
【0068】
4−クロロ−1−ブチル基、4,4−ジクロロ−1−ブチル基、3,4−ジクロロ−1−ブチル基、4,4,4−トリクロロ−1−ブチル基、3,4,4−トリクロロ−1−ブチル基、4−クロロ−2−ブチル基、1,4−ジクロロ−2−ブチル基、4,4−ジクロロ−2−ブチル基、1,1,4−トリクロロ−2−ブチル基、1,4,4−トリクロロ−2−ブチル基、4,4,4−トリクロロ−2−ブチル基、1,1,1,4−テトラクロロ−2−ブチル基、1,1,4,4−テトラクロロ−2−ブチル基、1,4,4,4−テトラクロロ−2−ブチル基、3−クロロ−2−メチル−1−プロピル基、3−クロロ−2−クロロメチル−1−プロピル基、3−クロロ−2−ジクロロメチル−1−プロピル基、3−クロロ−2−トリクロロメチル−1−プロピル基、3,3−ジクロロ−2−ジクロロメチル−1−プロピル基、3,3−ジクロロ−2−トリクロロメチル−1−プロピル基、3,3,3−トリクロロ−2−トリクロロメチル−1−プロピル基、1−クロロ−2−メチル−2−プロピル基、1,3−ジクロロ−2−メチル−2−プロピル基、1,3−ジクロロ−2−クロロメチル−2−プロピル基、1,3−ジクロロ−2−ジクロロメチル−2−プロピル基、1,1,3−トリクロロ−2−ジクロロメチル−2−プロピル基、1,1,3,3−テトラクロロ−2−ジクロロメチル−2−プロピル基、1,3−ジクロロ−2−トリクロロメチル−2−プロピル基、1,1,3−トリクロロ−2−トリクロロメチル−2−プロピル基、1,1,1−トリクロロ−2−トリクロロメチル−2−プロピル基、1,1,3,3−テトラクロロ−2−トリクロロメチル−2−プロピル基、1,1,1,3−テトラクロロ−2−トリクロロメチル−2−プロピル基、1,1,1,3,3−ペンタクロロ−2−トリクロロメチル−2−プロピル基、1,1,1,3,3,3−ヘキサクロロ−2−トリクロロメチル−2−プロピル基、5−クロロ−1−ペンチル基、5,5−ジクロロ−1−ペンチル基、4,5−ジクロロ−1−ペンチル基、4−クロロ−3−メチル−1−ブチル基、4−クロロ−3−クロロメチル−1−ブチル基、4−クロロ−2−メチル−1−ブチル基、4−クロロ−2−クロロメチル−1−ブチル基、3−クロロ−2,2−ジメチル−1−プロピル基、3−クロロ−2,2−ビス(クロロメチル)−1−プロピル基、
【0069】
1−クロロシクロプロピル基、2−クロロシクロプロピル基、2,2−ジクロロシクロプロピル基、2,3−ジクロロシクロプロピル基、1−クロロメチルシクロプロピル基、2−クロロメチルシクロプロピル基、2−トリクロロメチルシクロプロピル基、2−トリクロロエチルシクロプロピル基、2,2−ジクロロシクロプロピルメチル基、2,3−ジクロロシクロプロピルメチル基、2−トリクロロメチルシクロプロピルメチル基、2,2−ジクロロシクロプロピルエチル基、2,3−ジクロロシクロプロピルエチル基、1−クロロシクロブチル基、2−クロロシクロブチル基、3−クロロシクロブチル基、2,2−ジクロロシクロブチル基、3,3−ジクロロシクロブチル基、2,3−ジクロロシクロブチル基、2,4−ジクロロシクロブチル基、2,2,3,3−テトラクロロシクロブチル基、2,2−ジクロロシクロブチルメチル基、3,3−ジクロロシクロブチルメチル基、2,3−ジクロロシクロブチルメチル基、1−クロロシクロペンチル基、2−クロロシクロペンチル基、3−クロロシクロペンチル基、2,3−ジクロロシクロペンチル基、3,4−ジクロロシクロペンチル基、クロロメトキシメチル基、ジクロロメトキシメチル基、トリクロロメトキシメチル基、2−クロロエトキシメチル基、2,2,2−トリクロロエトキシメチル基、クロロメトキシエチル基、ジクロロメトキシエチル基、トリクロロメトキシエチル基、3−クロロプロポキシメチル基、1,3−ジクロロ−2−プロポキシメチル基、2−クロロシクロプロポキシメチル基、2−クロロメチルシクロプロポキシメチル基、2−トリクロロメチルシクロプロポキシメチル基、2−クロロメチルシクロプロピルメチルオキシメチル基、などが挙げられるが、
【0070】
好ましくは、塩素原子、クロロメチル基、ジクロロメチル基、2−クロロエチル基、2,2−ジクロロエチル基、2,2,2−トリクロロエチル基、3−クロロ−1−プロピル基、3,3−ジクロロ−1−プロピル基、2,2,3−トリクロロ−1−プロピル基、2,3,3−トリクロロ−1−プロピル基、3,3,3−トリクロロ−1−プロピル基、2,2,3,3−テトラクロロ−1−プロピル基、2,3,3,3−テトラクロロ−1−プロピル基、1−クロロ−2−プロピル基、1,1−ジクロロ−2−プロピル基、1,3−ジクロロ−2−プロピル基、1,1,1−トリクロロ−2−プロピル基、1,1,3−トリクロロ−2−プロピル基、1,1,1,3−テトラクロロ−2−プロピル基、1,1,3,3−テトラクロロ−2−プロピル基、1,1,1,3,3,3−ヘキサクロロ−2−プロピル基、4−クロロ−1−ブチル基、4,4−ジクロロ−1−ブチル基、3,4−ジクロロ−1−ブチル基、4,4,4−トリクロロ−1−ブチル基、3,4,4−トリクロロ−1−ブチル基、3−クロロ−2−メチル−1−プロピル基、3−クロロ−2−クロロメチル−1−プロピル基、3,3,3−トリクロロ−2−トリクロロメチル−1−プロピル基、1−クロロ−2−メチル−2−プロピル基、1,3−ジクロロ−2−メチル−2−プロピル基、1,3−ジクロロ−2−クロロメチル−2−プロピル基、1,1,1,3,3,3−ヘキサクロロ−2−トリクロロメチル−2−プロピル基、5−クロロ−1−ペンチル基、4,5−ジクロロ−1−ペンチル基、4−クロロ−3−クロロメチル−1−ブチル基、4−クロロ−2−メチル−1−ブチル基、4−クロロ−2−クロロメチル−1−ブチル基、3−クロロ−2,2−ジメチル−1−プロピル基、3−クロロ−2,2−ビス(クロロメチル)−1−プロピル基、2−クロロシクロプロピル基、2,2−ジクロロシクロプロピル基、2,3−ジクロロシクロプロピル基、2−クロロメチルシクロプロピル基、2−トリクロロメチルシクロプロピル基、2−トリクロロエチルシクロプロピル基、2,2−ジクロロシクロプロピルメチル基、2,3−ジクロロシクロプロピルメチル基、2−トリクロロメチルシクロプロピルメチル基、2−クロロシクロブチル基、3−クロロシクロブチル基、2,2−ジクロロシクロブチル基、3,3−ジクロロシクロブチル基、2,3−ジクロロシクロブチル基、2,2,3,3−テトラクロロシクロブチル基、2,2−ジクロロシクロブチルメチル基、3,3−ジクロロシクロブチルメチル基、2,3−ジクロロシクロブチルメチル基、クロロメトキシメチル基、2−クロロエトキシメチル基、クロロメトキシエチル基、3−クロロプロポキシメチル基、1,3−ジクロロ−2−プロポキシメチル基、2−クロロシクロプロポキシメチル基、2−クロロメチルシクロプロポキシメチル基、2−クロロメチルシクロプロピルメチルオキシメチル基であり、
【0071】
より好ましくは、塩素原子、クロロメチル基、2−クロロエチル基、2,2,2−トリクロロエチル基、3−クロロ−1−プロピル基、3,3−ジクロロ−1−プロピル基、2,3,3−トリクロロ−1−プロピル基、3,3,3−トリクロロ−1−プロピル基、1−クロロ−2−プロピル基、1,3−ジクロロ−2−プロピル基、1,1,1−トリクロロ−2−プロピル基、1,1,1,3,3,3−ヘキサクロロ−2−プロピル基、4−クロロ−1−ブチル基、4,4−ジクロロ−1−ブチル基、3,4−ジクロロ−1−ブチル基、4,4,4−トリクロロ−1−ブチル基、3−クロロ−2−メチル−1−プロピル基、3−クロロ−2−クロロメチル−1−プロピル基、3,3,3−トリクロロ−2−トリクロロメチル−1−プロピル基、1−クロロ−2−メチル−2−プロピル基、1,3−ジクロロ−2−メチル−2−プロピル基、1,3−ジクロロ−2−クロロメチル−2−プロピル基、1,1,1,3,3,3−ヘキサクロロ−2−トリクロロメチル−2−プロピル基、5−クロロ−1−ペンチル基、4,5−ジクロロ−1−ペンチル基、4−クロロ−3−クロロメチル−1−ブチル基、4−クロロ−2−クロロメチル−1−ブチル基、3−クロロ−2,2−ビス(クロロメチル)−1−プロピル基、2−クロロシクロプロピル基、2,2−ジクロロシクロプロピル基、2,3−ジクロロシクロプロピル基、2−クロロメチルシクロプロピル基、2−トリクロロメチルシクロプロピル基、2,2−ジクロロシクロプロピルメチル基、2,3−ジクロロシクロプロピルメチル基、2−トリクロロメチルシクロプロピルメチル基、クロロメトキシメチル基、2−クロロエトキシメチル基、クロロメトキシエチル基、1,3−ジクロロ−2−プロポキシメチル基、2−クロロシクロプロポキシメチル基、2−クロロメチルシクロプロピルメチルオキシメチル基であり、
【0072】
さらに好ましくは、塩素原子、クロロメチル基、2−クロロエチル基、3−クロロ−1−プロピル基、1,3−ジクロロ−2−プロピル基、4−クロロ−1−ブチル基、3,4−ジクロロ−1−ブチル基、3−クロロ−2−クロロメチル−1−プロピル基、1,3−ジクロロ−2−クロロメチル−2−プロピル基、2,3−ジクロロシクロプロピル基、2−クロロメチルシクロプロピル基、2,3−ジクロロシクロプロピルメチル基、2−クロロエトキシメチル基、クロロメトキシエチル基、1,3−ジクロロ−2−プロポキシメチル基、2−クロロメチルシクロプロピルメチルオキシメチル基であり、特に好ましくは、塩素原子、クロロメチル基、2−クロロエチル基、3−クロロ−1−プロピル基、1,3−ジクロロ−2−プロピル基、である。
【0073】
及びRは、それぞれ独立に、フッ素原子、塩素原子又は炭素数1〜10の、エーテル性酸素原子を含んでもよく、ハロゲン原子で置換されていてもよい、直鎖状、分枝状、又は環状の1価の飽和アルキル基を表す。炭素数としては、好ましくは1〜8であり、より好ましくは1〜6である。飽和アルキル基は、好ましくは直鎖状又は分枝状である。飽和アルキル基はハロゲン原子で置換されていても置換されていなくてもよいが、好ましくはハロゲン原子で置換されている。これは、複数のハロゲン原子に置換されていることにより、液相全フッ素化反応の溶媒への溶解度が高くなり、この工程の収率向上が期待できるためである。しかし、例えば非特許文献(Journal of Fluorine Chemistry、第125巻、2004年、794ページ)に例示される、1,1,2−トリクロロトリフルオロエタンなどの塩素を含有するフッ素化溶媒を使用することにより、R及びRがハロゲン原子で置換されていなくても、これら溶媒への溶解度は十分に高く、この工程の収率はハロゲン原子の有無に大きくは影響されない。また、R及びR基に含有される水素原子の数は、少ない方が好ましい。水素原子数が多い場合、液相全フッ素化反応時に、1分子の一般式(8)又は一般式(9)で表される化合物をフッ素化するために必要なフッ素ガスの量が多くなり、経済的に不利になるためである。
【0074】
及びRの具体例としては、好ましくはメチル基、トリクロロメチル基、トリフルオロメチル基、エチル基、2−クロロエチル基、2,2,2−トリクロロエチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、1,1,2,2−テトラフルオロエチル基、1,1,2,2,2−ペンタフルオロエチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1,1,2,2,3,3,3−ヘプタフルオロ−1−プロピル基、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロピル基、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロピル基、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロ−2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、2−メチル−2−プロピル基、1,1,2,2,3,3,4,4−オクタフルオロ−1−ブチル基、1,1,2,2,3,3,4,4,4−ノナフルオロ−1−ブチル基、2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロ−1−ブチル基、1−ペンチル基、1−ヘキシル基、1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6−ウンデカフルオロ−1−ヘキシル基、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6−デカフルオロ−1−ヘキシル基、1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,6−トリデカフルオロ−1−ヘキシル基、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,6−ウンデカフルオロ−1−ヘキシル基、1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−ヘプタデカフルオロ−1−オクチル基、1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8−ヘキサデカフルオロ−1−オクチル基、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−ペンタデカフルオロ−1−オクチル基、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8−テトラデカフルオロ−1−オクチル基、パーフルオロ−1−デシル基、1H,1H−パーフルオロ−1−デシル基、パーフルオロ{2−(1−プロピルオキシ)エチル}基、パーフルオロ{2−(1−プロピルオキシ)プロピルオキシエチル}基、パーフルオロ[2−{2−(1−プロピルオキシ)プロピルオキシ}プロピルオキシエチル]基であり、より好ましくはメチル基、トリクロロメチル基、トリフルオロメチル基、エチル基、2−クロロエチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、1,1,2,2−テトラフルオロエチル基、1,1,2,2,2−ペンタフルオロエチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1,1,2,2,3,3,3−ヘプタフルオロ−1−プロピル基、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロピル基、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロピル基、2−メチル−2−プロピル基、1,1,2,2,3,3,4,4−オクタフルオロ−1−ブチル基、1,1,2,2,3,3,4,4,4−ノナフルオロ−1−ブチル基、2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロ−1−ブチル基、1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6−ウンデカフルオロ−1−ヘキシル基、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6−デカフルオロ−1−ヘキシル基、1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,6−トリデカフルオロ−1−ヘキシル基、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,6−ウンデカフルオロ−1−ヘキシル基、パーフルオロ{2−(1−プロピルオキシ)エチル}基、パーフルオロ{2−(1−プロピルオキシ)プロピルオキシエチル}基、パーフルオロ[2−{2−(1−プロピルオキシ)プロピルオキシ}プロピルオキシエチル]基であり、さらに好ましくはメチル基、トリフルオロメチル基、エチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、1,1,2,2,2−ペンタフルオロエチル基、1,1,2,2,3,3,3−ヘプタフルオロ−1−プロピル基、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロピル基、1,1,2,2,3,3,4,4−オクタフルオロ−1−ブチル基、1,1,2,2,3,3,4,4,4−ノナフルオロ−1−ブチル基、2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロ−1−ブチル基、パーフルオロ{2−(1−プロピルオキシ)エチル}基、パーフルオロ{2−(1−プロピルオキシ)プロピルオキシエチル}基であり、特に好ましくはメチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、1,1,2,2,3,3,4,4,4−ノナフルオロ−1−ブチル基、パーフルオロ{2−(1−プロピルオキシ)エチル}基である。
【0075】
及びLは、それぞれ独立に下記式(10)、(11)又は(12)で表される基(但し、nは0〜10の整数を示し、式(5)、(6)および(7)におけるnと同義である。)を表す。
【0076】
【化22】

【0077】
[工程1]は、一般式(8)又は(9)で表される化合物を液相全フッ素化の手法を用いて、実質的に全ての水素原子をフッ素原子に置換する工程である。液相全フッ素化反応については、例えば米国特許第5,093,432号明細書や国際公開第00/56694号パンフレットに記載の方法を適用できる。[工程1]により得られた生成物は、何ら処理をせずそのまま次の工程に用いてもよく、あるいは何らかの処理を行った後に次の工程に用いてもよい。ここで行われる処理としては、例えばろ過、分液、溶媒の留去、無機化合物や有機化合物の添加、加熱、冷却、などが挙げられ、これらを単独で行ってもよく、あるいは複数を組み合せて行ってもよい。
【0078】
[工程2]は、フッ素化された生成物を、ROHで表される化合物と反応させることにより、一般式(13)で表される化合物を得る工程である。
【0079】
は炭素数1〜6の直鎖状、分枝状又は環状の1価のアルキル基、又は炭素数6〜14の芳香族炭化水素基を表す。炭素数としては、好ましくは1〜4であり、より好ましくは1〜3であり、さらに好ましくは1である。1価のアルキル基は、好ましくは直鎖状又は分枝状であり、さらに好ましくは直鎖状である。R基としては、好ましくはメチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、2−メチル−2−プロピル基、1−ペンチル基、2−ペンチル基、3−ペンチル基、2−メチル−2−ブチル基、2−メチル−3−ブチル基、2,2−ジメチル−1−プロピル基、1−ヘキシル基、2−ヘキシル基、3−ヘキシル基、2−メチル−1−ペンチル基、2−メチル−2−ペンチル基、シクロプロピル基、1−メチルシクロプロピル基、2−メチルシクロプロピル基、シクロプロピルメチル基、2−メチルシクロプロピルメチル基、シクロブチル基、1−メチルシクロブチル基、2−メチルシクロブチル基、3−メチルシクロブチル基、2−メチルシクロブチルメチル基、シクロペンチル基、1−メチルシクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、2−トルイル基、3−トルイル基、4−トルイル基、2−エチルフェニル基、3−エチルフェニル基、4−エチルフェニル基、2,3−ジメチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、2,5−ジメチルフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基、3,4−ジメチルフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、4−n−プロピルフェニル基、4−i−プロピルフェニル基、4−n−ブチルフェニル基、4−s−ブチルフェニル基、4−i−ブチルフェニル基、4−t−ブチルフェニル基、ナフチル基であり、より好ましくはメチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、2−メチル−2−プロピル基、シクロプロピル基、1−メチルシクロプロピル基、2−メチルシクロプロピル基、シクロプロピルメチル基、フェニル基、2−トルイル基、3−トルイル基、4−トルイル基、2−エチルフェニル基、3−エチルフェニル基、4−エチルフェニル基、2,3−ジメチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、2,5−ジメチルフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基、3,4−ジメチルフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基であり、さらに好ましくはメチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、シクロプロピル基、フェニル基、2−トルイル基、3−トルイル基、4−トルイル基、であり、特に好ましくはメチル基である。R基は、続く[工程3]で脱離するため、ROHが安価であるようなR基を選択する方が、工業的に有利である。
【0080】
[工程2]は、溶媒中で行ってもよく、無溶媒で行ってもよい。又は、[工程1]終了後の反応液にROHを直接加えて行ってもよい。
【0081】
[工程2]を実施する温度は特に限定されないが、ROHの融点以上の温度、或いは−50℃〜+200℃の温度で行われる。−50℃より低い温度で行うことは、反応器などの冷却に莫大なエネルギーを必要とするため、工業的に不利である。+200℃より高い温度では、ROH又はこの工程で生成する副生成物が急激に沸騰することがあり、危険を伴うため、好ましくない。
【0082】
[工程3]は、一般式(13)で表される化合物を還元し、一般式(14)で表される化合物を得る工程である。
【0083】
還元反応の実施様態は特に限定されないが、好ましくは水素化ホウ素化合物(例えば、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウム、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、ジボランなどが挙げられる。)、水素化アルミニウム化合物(例えば、水素化アルミニウムリチウム、水素化ジイソブチルアルミニウム、水素化ビス(2−メトキシエトキシ)アルミン酸ナトリウム、水素化アルミニウムなどが挙げられる。)、水素化金属(例えば、水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、水素化カルシウムなどが挙げられる。)、アルカリ又はアルカリ土類金属(例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、マグネシウム、カルシウムなどが挙げられる。)を用いた還元反応或いは遷移金属触媒を用いた接触還元反応の方法により行われ、より好ましくは水素化ホウ素化合物又は水素化アルミニウム化合物を用いた還元反応により行われる。これらの反応は例えば、実験化学講座第4版第20巻12ページに記載の方法や、特開平2−169528号公報に記載の方法により、行うことができる。本発明では、水素化ホウ素ナトリウムを用いた方法で実施した。
【0084】
液相全フッ素化反応を利用した一般式(1)で表される含フッ素多官能化合物の合成方法としては、例えば、(a+b)価の水酸基含有炭化水素系化合物を出発原料とした下記のような経路(式1)で合成できるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0085】
【化23】

【0086】
(式1)中、a、b、d、g、Rf、Rf、Rf、R、R、R、R、R、R、L、L、L、L、L、Yは、前記と同義であり、LVGは脱離基を表し、例えば塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、メタンスルホニルオキシ基、トルエンスルホニルオキシ基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基などが挙げられる。
【0087】
一般式(8)及び(9)で表される化合物の入手方法は特に限定されないが、例えば上記(式1)中に表される方法で合成できる。
【0088】
出発化合物であるポリオール化合物(15)は、市販の化合物を用いてもよく、或いは公知の方法を用いて合成してもよい。公知の合成法としては、実験化学講座第4版第20巻1ページに記載の方法を適用することにより、様々な種類のポリオール化合物を得ることができる。
【0089】
一般式(16)で表される化合物において、Rが塩素原子であり、且つgが0であり、且つLである前記式(10)、式(11)又は式(12)で表される基中のnが0である化合物は、例えばポリオール化合物(15)中の1つ或いは2つ以上の水酸基を塩素原子に置換することにより得ることができる。水酸基の塩素原子への置換反応は、公知の方法を適用できるが、例えば実験化学講座第4版第19巻438ページに記載の方法を適用することにより、容易に塩素化された生成物を得ることができる。
【0090】
上記以外の一般式(16)で表される化合物の合成方法は特に限定されないが、例えばLVG−L−(O)−R で表される化合物を一般式(15)で表される化合物に必要量を作用させることにより、合成できる。式中、LVG、L、R及びgは前記と同義である。
【0091】
一般式(17)で表される化合物の合成方法は特に限定されないが、例えばH−L−LVGで表される化合物を一般式(16)で表される化合物に必要量を作用させることにより、合成できる。式中、LVG及びLは前記と同義である。
【0092】
一般式(8)で表される化合物の合成方法は特に限定されないが、例えばLVG−CH(R)−(CH(d+1)−OHで表される化合物を一般式(17)で表される化合物に作用させ、次いでRC(O)Clで表される化合物を作用させることにより、合成できる。式中、LVG、R、R及びdは前記と同義である。
【0093】
一般式(9)で表される化合物の合成方法は特に限定されないが、例えばLVG−CH(R)−(CH−C(O)−ORで表される化合物を一般式(17)で表される化合物に作用させることにより、合成できる。式中、LVG、R、R及びdは前記と同義である。
【0094】
一般式(14)で表される化合物は、一般式(8)及び/又は(9)で表される化合物から、前記の方法で合成できる。
【0095】
一般式(18)で表される化合物(但し、L基中のnは0ではない。)の合成方法は特に限定されないが、例えば実験化学講座第4版、第20巻、53ページに例示される、一般式(14)で表される化合物に、オキシランやオキセタンなどの環状エーテル化合物を作用させることにより合成できる。
【0096】
一般式(18)で表される化合物から、一般式(1)で表される化合物の合成法は特に限定されないが、例えば公知であるY−Clで表される化合物(例えば、アクリル酸クロリド、メタクリル酸クロリド、2−フルオロアクリル酸クロリドなどが挙げられる。)を作用させることにより、合成できる。この反応は好ましくは、溶媒を用いて行い、必要量以上の塩基存在下で行う。
【0097】
[含フッ素重合体]
含フッ素多官能化合物(重合性含フッ素化合物)は、種々の重合方法により、含フッ素重合体として使用することができる。重合に際しては、単独重合、または共重合してもよく、さらには、架橋剤として用いてもよい。
【0098】
共重合させる他のモノマーとしては、通常のモノマー類を使用することができるが、特に代表的なモノマーを例示すると、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,3−ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、1H,1H,7H−ドデカフルオロヘプチル(メタ)アクリレート、1H,1H,9H−ヘキサデカフルオロノニル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロオクチル)エチル(メタ)アクリレート、アリルアルコール、エチルアリルエーテル、α−フルオロアクリル酸メチルエステル、酢酸ビニル、エチルビニルケトン、ブチルビニルケトン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテルなどのラジカル重合性のモノマー類、
【0099】
テトラエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、クロロトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、または以下の化学式で表される、縮合重合性のモノマー類、
【0100】
【化24】

【0101】
【化25】

【0102】
グリセロールジグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、1,1,1−トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ビスフェノール−A−ジグリシジルエーテル、ハイドロキノンジグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、フルオログリシノールトリグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレート、エチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテルなどのカチオン重合性のモノマー類などが挙げられる。これらの中でも、重合性の観点から、ラジカルまたはカチオン重合性のモノマー類が好ましく、より好ましくは、ラジカル重合性のモノマー類である。
【0103】
重合反応は、塊状重合または溶液重合が好ましい。薄膜を得るためには、本発明の重合性含フッ素化合物を含む硬化性樹脂組成物を基板上に塗布し、溶媒を揮発させた後に重合を行うことが好ましい。このとき硬化性樹脂組成物において、本発明の重合性含フッ素化合物の含有率はとくに限定されないが、1〜99質量%であることが好ましく、5〜95質量%であることがより好ましく、10〜90質量%であることがさらに好ましい。重合の開始方法はラジカル開始剤を用いる方法、光または放射線を照射する方法、酸を加える方法、光酸発生剤を添加した後に光を照射する方法、加熱により脱水縮合させる方法等がある。これらの重合方法、重合の開始方法は、例えば鶴田禎二著、「高分子合成方法」改訂版(日刊工業新聞社刊、1971年)や大津隆行・木下雅悦共著、「高分子合成の実験法」、化学同人、昭和47年、124〜154頁に記載されている。
【0104】
用いられる溶媒としては、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ベンゼン、トルエン、アセトニトリル、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノールなどが挙げられる。これらは、単独あるいは2種以上混合してもよい。
【0105】
ラジカル重合の開始剤としては、熱の作用によりラジカルを発生するもの、あるいは光の作用によりラジカルを発生するもののいずれの形態も可能である。
【0106】
熱の作用によりラジカル重合を開始する化合物としては、有機あるいは無機過酸化物、有機アゾ及びジアゾ化合物等を用いることができる。
具体的には、有機過酸化物として過酸化ベンゾイル、過酸化ハロゲンベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化アセチル、過酸化ジブチル、クメンヒドロぺルオキシド、ブチルヒドロぺルオキシド、無機過酸化物として、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等、有機アゾ化合物として2−アゾ−ビス−イソブチロニトリル、2−アゾ−ビス−プロピオニトリル、2−アゾ−ビス−シクロヘキサンジニトリル等、ジアゾ化合物としてジアゾアミノベンゼン、p−ニトロベンゼンジアゾニウムなどを挙げることができる。
【0107】
光の作用によりラジカル重合を開始する化合物を使用する場合は、活性エネルギー線の照射によって皮膜の硬化が行われる。
このような光ラジカル重合開始剤の例としては、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物類、2,3−ジアルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、フルオロアミン化合物類や芳香族スルホニウム類などがある。アセトフェノン類の例には、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、1−ヒドロキシジメチルフェニルケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−4−メチルチオ−2−モルフォリノプロピオフェノンおよび2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノンが含まれる。ベンゾイン類の例には、ベンゾインベンゼンスルホン酸エステル、ベンゾイントルエンスルホン酸エステル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテルおよびベンゾインイソプロピルエーテルが含まれる。ベンゾフェノン類の例には、ベンゾフェノン、2,4−ジクロロベンゾフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノンおよびp−クロロベンゾフェノンが含まれる。ホスフィンオキシド類の例には、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシドが含まれる。これらの光ラジカル重合開始剤と併用して増感色素も用いることができる。
【0108】
前記ラジカル重合開始剤の添加量は、前記ラジカル反応基が重合反応を開始できる量であれば特に制限されないが、一般的には硬化性樹脂組成物中の全固形分に対して0.1〜15質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜10質量%であり、特に好ましくは2〜5質量%である。
【0109】
重合温度は特に制限は無いが、開始剤の種類によって適宜、調節すればよい。また、光ラジカル重合開始剤を用いる場合には、特に加熱の必要は無いが、加熱してもよい。
【0110】
含フッ素重合体を形成する硬化性樹脂組成物には、上記に加えて、皮膜硬度、屈折率、防汚性、耐水性、耐薬品性、滑り性の観点から、各種の添加剤を含有することもできる。
例えば、(中空)シリカ等の無機酸化物微粒子、シリコーン系あるいはフッ素系の防汚剤、もしくは、滑り剤などを添加することができる。これらを添加する場合には、硬化性樹脂組成物の全固形分に対して0〜99質量%の範囲であることが好ましく、0〜70質量%の範囲であることがより好ましく、0〜50質量%の範囲であることが特に好ましい。
【0111】
本発明において、用いることのできる無機酸化物微粒子(以下、無機微粒子という)について次に説明する。
該無機微粒子を含有させた前記硬化性樹脂組成物を用いて、反射防止フィルムにおける低屈折率層を形成する場合、無機微粒子の塗設量は、1mg/m〜100mg/mが好ましく、より好ましくは5mg/m〜80mg/m、更に好ましくは10mg/m〜60mg/mである。無機微粒子の量が少なすぎると耐擦傷性の改良効果が減り、多すぎると、例えば、反射防止フィルムの低屈折率層表面に微細な凹凸ができ、黒の締まりなどの外観や積分反射率が悪化する。該無機微粒子は、低屈折率層に含有させることから、低屈折率であることが望ましい。
【0112】
具体的には、有機溶媒分散液中における分散性の改良処理がなされている無機酸化物粒子または中空無機酸化物粒子であって、低屈折率のものが好ましく用いられる。例えば、シリカまたは中空シリカの微粒子が挙げられる。シリカ微粒子の平均粒径は、低屈折率層の厚みの30%以上150%以下が好ましく、より好ましくは35%以上80%以下、更に好ましくは40%以上60%以下である。即ち、低屈折率層の厚みが100nmであれば、シリカ微粒子の粒径は30nm以上150nm以下が好ましく、より好ましくは35nm以上80nm以下、更に好ましくは、40nm以上60nm以下である。
シリカ微粒子の粒径が小さすぎると、耐擦傷性の改良効果が少なくなり、大きすぎると低屈折率層表面に微細な凹凸ができ、黒の締まりといった外観、積分反射率が悪化する。
シリカ微粒子は、結晶質でも、アモルファスのいずれでもよく、また単分散粒子でも、所定の粒径を満たすならば凝集粒子でも構わない。形状は、球径が最も好ましいが、不定形であっても問題無い。ここで、無機微粒子の平均粒径はコールターカウンターにより測定される。
【0113】
低屈折率層の屈折率を低下させるために、中空のシリカ微粒子を用いることが好ましい。該中空シリカ微粒子は屈折率が1.17〜1.40、より好ましくは1.17〜1.35、さらに好ましくは1.17〜1.30である。ここでの屈折率は粒子全体としての屈折率を表し、中空シリカ粒子を形成している外殻のシリカのみの屈折率を表すものではない。この時、粒子内の空腔の半径をa、粒子外殻の半径をbとすると、空隙率xは下記数式(I)で算出される。
数式(I) x=(4πa/3)/(4πb/3)×100
空隙率xは、好ましくは10〜60%、さらに好ましくは20〜60%、最も好ましくは30〜60%である。中空のシリカ粒子をより低屈折率に、より空隙率を大きくしようとすると、外殻の厚みが薄くなり、粒子の強度としては弱くなるため、耐擦傷性の観点から1.17未満の低屈折率の粒子は成り立たない。
なお、これら中空シリカ粒子の屈折率はアッベ屈折率計(アタゴ(株)製)にて測定をおこなった。
【0114】
また、中空粒子を低屈折率層に含有させることで該層の屈折率を低下させることができる。中空粒子を用いた場合に好ましい該層の屈折率は1.20以上1.47以下であり、更に好ましくは1.25以上1.41以下であり、最も好ましくは1.25以上1.39以下である。中空シリカの調製方法は例えば、特開2001−233611号、特開2002−79616号の各公報等に記載されている。
【0115】
また、平均粒径が低屈折率層の厚みの25%未満であるシリカ微粒子(以下、「小サイズ粒径のシリカ微粒子」という。)の少なくとも1種を上記の粒径のシリカ微粒子(以下、「大サイズ粒径のシリカ微粒子」という。)と併用することが好ましい。小サイズ粒径のシリカ微粒子は、大サイズ粒径のシリカ微粒子同士の隙間に存在することができるため、大サイズ粒径のシリカ微粒子の保持剤として寄与することができる。
小サイズ粒径のシリカ微粒子の平均粒径は、低屈折率層が100nmの場合、1nm以上20nm以下が好ましく、5nm以上15nm以下が更に好ましく、10nm以上15nm以下が特に好ましい。このようなシリカ微粒子を用いると、原料コストおよび保持剤効果の点で好ましい。
【0116】
この他に、保存安定性の観点から上記硬化性樹脂組成物は重合禁止剤を含有してもよい。本発明において好適に用いることができる重合禁止剤としては、例えばヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、モノ−tert−ブチルヒドロキノン、カテコール、p−tert−ブチルカテコール、p−メトキシフェノール、p−tert−ブチルカテコール、2,6−ジ−tert−ブチル−m−クレゾール、ピロガロール、β−ナフトール等のフェノール類、ベンゾキノン、2,5−ジフェニル−p−ベンゾキノン、p−トルキノン、p−キシロキノンなどのキノン類;ニトロベンゼン、m−ジニトロベンゼン、2−メチル−2−ニトロソプロパン、α−フェニル−tert−ブチルニトロン、5,5−ジメチル−1−ピロリン−1−オキシドなどのニトロ化合物またはニトロソ化合物;クロラニル−アミン、ジフェニルアミン、ジフェニルピクリルヒドラジン、フェノール−α−ナフチルアミン、ピリジン、フェノチアジンなどのアミン類;ジチオベンゾイルスルフィド、ジベンジルテトラスルフィドなどのスルフィド類等のラジカル重合禁止剤が挙げられる。これらは単独で用いても良いし、複数を組み合わせて用いてもよい。
より好ましくはフェノール類、キノン類、ニトロ化合物、ニトロソ化合物、アミン類、スルフィド類のうち少なくとも1つに属する化合物である。中でも、屈折率、ラジカル捕捉能の観点から、フェノール類を用いることが好ましい。
【0117】
これら重合禁止剤は、硬化性樹脂組成物中の全固形分に対して0.0001〜10質量%となるように添加することが好ましく、より好ましくは0.0001〜5質量%であり、特に好ましくは0.001〜2質量%である。
【0118】
その他、硬化性樹脂組成物には各種シランカップリング剤、界面活性剤、増粘剤、レベリング剤などの添加剤を必要に応じて適宜添加してもよい。
本発明の含フッ素重合体は、後述する高屈折率層、中屈折率層、又はその他の各種基材上に本発明の含フッ素化合物を含む硬化性樹脂組成物を塗布したのち、硬化して形成することができる。
【0119】
[反射防止膜]
本発明の反射防止膜は、本発明の含フッ素多官能化合物を含有する硬化性樹脂組成物を硬化してなる低屈折率層を有する。
本発明の反射防止膜は、単層構造でもよいし多層構造でもよい。すなわち、反射防止膜が単層構造である場合は、低屈折率層のみからなる。反射防止膜が多層構造である場合は、低屈折率層と高屈折率層の少なくとも2層以上を有する。反射防止膜は多層構造であることが好ましく、前記低屈折率層と高屈折率層との二層構造、または前記低屈折率層及び前記高屈折率層の他に中屈折率層を有する三層構造が好ましい。
【0120】
[低屈折率層]
前記低屈折率層は、後述するように高屈折率層の上層に配置される。すなわち、低屈折率層の上面が反射防止膜の表面となる。
低屈折率層用の硬化性樹脂組成物は含フッ素多官能化合物を1〜99質量%含有することが好ましく、5〜95質量%含有することがより好ましく、10〜90質量%含有することが最も好ましい。
低屈折率層の屈折率は、1.20以上1.47以下であり、更に好ましくは1.25以上1.41以下であり、最も好ましくは1.25以上1.39以下である。屈折率は、アッベ屈折率計を用いる測定や、層表面からの光の反射率からの見積もりにより求めることができる。
低屈折率層の厚さは、50〜400nmであることが好ましく、50〜200nmであることがより好ましい。低屈折率層のヘイズは、3%以下であることが好ましく、2%以下であることがさらに好ましく、1%以下であることが最も好ましい。具体的な低屈折率層の強度は、1kg荷重の鉛筆硬度試験でH以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。
【0121】
[高屈折率層及び中屈折率層]
本発明の反射防止膜において、低屈折率層と組み合わせて用いられる高屈折率層及び中屈折率層は、それぞれ低屈折率層より高い屈折率を有する層である。また、中屈折率層は、低屈折率層よりも屈折率が高く、高屈折率層よりも屈折率が低い層である。
【0122】
高屈折率層及び中屈折率層は、それぞれ有機材料のみ又は有機材料と無機材料とを主成分としてなる。
この際用いられる有機材料としては、熱可塑性樹脂組成物(例、ポリスチレン、ポリスチレン共重合体、ポリカーボネート、ポリスチレン以外の芳香環、複素環、脂環式環状基を有するポリマー、またはフッ素以外のハロゲン基を有するポリマー);熱硬化性樹脂組成物(例、メラミン樹脂、フェノール樹脂、またはエポキシ樹脂などを硬化剤とする樹脂組成物);ウレタン樹脂形成性組成物(例、脂環式または芳香族イソシアネートとポリオールとを含有する樹脂組成物);およびラジカル重合性組成物(上記ポリマー又はモノマーに二重結合を導入することにより、ラジカル硬化を可能にした変性樹脂組成物または変性プレポリマーを含む組成物)などを挙げることができる。高屈折率層又は中屈折率層に用いる有機材料は、高い皮膜形成性を有する材料が好ましい。
【0123】
なお、高屈折率層又は中屈折率層には、有機材料と無機材料を併用することができる。
有機材料と無機材料を併用する場合は、一般に無機材料によって高い屈折率を確保できるため、有機材料単独で用いる場合よりも低屈折率の有機材料を用いることができる。このような有機材料としては、ペンタエリスリトールヘキサアクリレートなどのアクリル系モノマーとビニル系モノマーとの共重合体、ポリエステル、アルキド樹脂、繊維素系重合体、ウレタン樹脂、および、これらの樹脂を硬化させる各種の硬化剤又は硬化性官能基を有する化合物を含有する組成物等が挙げられる。これらの有機材料は、透明性があり、無機材料を安定に分散させることができる。硬化性官能基を有する化合物の具体例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のポリオールポリ(メタ)アクリレート類、ポリイソシナネートとヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレートの反応によって得られるウレタン(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0124】
さらに、有機材料としては、有機置換されたケイ素系化合物を用いることができる。該ケイ素系化合物としては、下記式(19)で表される化合物、あるいはその加水分解生成物が挙げられる。
式(19) R(RSiZ4−m−n
ここで、Rはアルキル基、アルケニル基、又はアリール基を表し、Rはハロゲン、エポキシ、アミノ、メルカプト、メタクリロイルまたはシアノで置換された、アルキル基、アルケニル基、又はアリール基を表し、Zは、アルコキシ基、アルコキシアルコキシ基、ハロゲン原子、アシルオキシ基から選ばれた加水分解可能な基を表し、m+nが1または2である条件下で、m及びnはそれぞれ0、1または2である。
【0125】
無機材料としては、無機系微粒子が挙げられる。前記無機系微粒子を構成する好ましい無機化合物としては、アルミニウム、チタニウム、ジルコニウム、アンチモンなどの金属元素の酸化物を挙げることができる。無機系微粒子は、粉末または粉末が水等の溶媒に分散されたコロイド状分散体として、市販されている。これらを使用する場合は、前記有機材料または有機ケイ素化合物中に混合分散して使用することが好ましい。
【0126】
また、無機材料としては、皮膜形成性で溶剤に分散し得るか、それ自身が液状である無機材料を用いることができる。このような無機材料としては、例えば、各種元素のアルコキシド、有機酸の塩、配位性化合物と結合した配位化合物(例、キレート化合物)、無機ポリマー)を挙げることができる。
より具体的には、チタンテトラエトキシド、チタンテトラ−i−プロポキシド、チタンテトラ−n−プロポキシド、チタンテトラ−n−ブトキシド、チタンテトラ−sec−ブトキシド、チタンテトラ−tert−ブトキシド、アルミニウムトリエトキシド、アルミニウムトリ−i−プロポキシド、アルミニウムトリブトキシド、アンチモントリエトキシド、アンチモントリブトキシド、ジルコニウムテトラエトキシド、ジルコニウムテトラ−i−プロポキシド、ジルコニウムテトラ−n−プロポキシド、ジルコニウムテトラ−n−ブトキシド、ジルコニウムテトラ−sec−ブトキシド及びジルコニウムテトラ−tert−ブトキシドなどの金属アルコレート化合物;ジイソプロポキシチタニウムビス(アセチルアセトネート)、ジブトキシチタニウムビス(アセチルアセトネート)、ジエトキシチタニウムビス(アセチルアセトネート)、ビス(アセチルアセトンジルコニウム)、アルミニウムアセチルアセトネート、アルミニウムジ−n−ブトキシドモノエチルアセトアセテート、アルミニウムジ−i−プロポキシドモノメチルアセトアセテート及びトリ−n−ブトキシドジルコニウムモノエチルアセトアセテートなどのキレート化合物;さらには炭素ジルコニルアンモニウムあるいはジルコニウムを主成分とする無機ポリマーなどを挙げることができる。
【0127】
高屈折率層及び中屈折率層には、以上に挙げた化合物の他に、屈折率が比較的低い化合物を併用できる。このような化合物としては、各種のアルキルシリケート類もしくはその加水分解物、微粒子状シリカ特にコロイド状に分散したシリカゲルが挙げられる。
また、高屈折率層及び中屈折率層には分散溶媒又は溶剤を使用することができる。分散溶媒又は溶剤としては、シクロヘキサノンやメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、酢酸エチル、DMF、2−プロパノール、n−ブタノールなどを挙げることができる。
さらに、高屈折率層及び中屈折率層には、従来の反射防止膜に通常添加される添加剤を適宜使用することができる。
【0128】
高屈折率層及び中屈折率層の実施態様としては、上記の無機材料の分散物と、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートなどのモノマーと、光重合開始剤や熱重合開始剤などの重合開始剤と、必要に応じて用いられる増感剤や触媒とを溶剤(前記分散溶媒と同じものが例示できる)に溶解してなる層形成用組成物を用いて形成されたものが挙げられる。
このような構成は従来の反射防止膜における高屈折率層や中屈折率層に関する構成が適宜適用される。
【0129】
高屈折率層の屈折率は、1.57〜2.40の範囲がよい。高屈折率層の厚さは、5nm〜10μmであることが好ましく、10nm〜1μmであることがさらに好ましく、30nm〜0.5μmであることが最も好ましい。高屈折率層のヘイズは、5%以下であることが好ましく、3%以下であることがさらに好ましく、1%以下であることが最も好ましい。高屈折率層の強度は、1kg荷重の鉛筆硬度で1H以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。
【0130】
中屈折率層の屈折率は、低屈折率層の屈折率と高屈折率層の屈折率との間の値となるように調整する。中屈折率層の屈折率は、1.50〜1.85の範囲がよい。高屈折率層に無機微粒子とポリマーを用い、中屈折率層は、高屈折率層よりも屈折率を低めに調節して形成することが特に好ましい。中屈折率層のヘイズは、3%以下であることが好ましい。
中屈折率層の厚さは、5nm〜10μmであることが好ましく、10nm〜1μmであることがさらに好ましく、30nm〜0.5μmであることが最も好ましい。中屈折率層の強度は、1kg荷重の鉛筆硬度で1H以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。
【0131】
[反射防止膜の形成方法]
本発明の反射防止膜は、各種基材などに前記高屈折率層や前記中屈折率層の形成用組成物を塗工し、光照射などにより硬化させて、前記高屈折率層などを形成した後、該高屈折率層又は該中屈折率層上に前記低屈折率層用の硬化性樹脂組成物を塗工し、更に光照射や加熱を行って硬化させることにより形成することができる。
なお、本発明の反射防止膜は、下記の反射防止フィルム及び表示装置に用いることが好ましく、その他、ケースカバー、光学用レンズ、眼鏡用レンズ、ウインドウシールド、ライトカバーやヘルメットシールドにも利用できる。
【0132】
[反射防止フィルム]
本発明の反射防止フィルムは、透明支持体上に本発明の反射防止膜が設けられたものである。
本発明の反射防止フィルム1の一実施態様として好適な反射防止フィルムの基本的な構成を図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の反射防止フィルムの一実施態様の断面を示す模式図である。
図1に示す反射防止フィルムは、透明支持体2上に、高屈折率層8及び低屈折率層5がこの順序で形成された反射防止膜6を有する。
このような構成では、特開昭59−50401号公報に記載されているように、高屈折率層8が下記数式(II)、低屈折率層5が下記数式(III)をそれぞれ満足すると、優れた反射防止性能を有する反射防止フィルムを得られるため好ましい。
【0133】
数式(II):(mλ/4)×0.7<n<(mλ/4)×1.3
【0134】
式中、mは正の整数(一般に1、2または3)であり、nは高屈折率層の屈折率であり、そして、dは高屈折率層の層厚(nm)である。
【0135】
数式(III):(nλ/4)×0.7<n<(nλ/4)×1.3
【0136】
式中、nは正の奇数(一般に1)であり、nは低屈折率層の屈折率であり、そして、dは低屈折率層の層厚(nm)である。
高屈折率層の屈折率nは、一般に透明支持体より少なくとも0.05高く、そして、低屈折率層の屈折率nは、一般に高屈折率層の屈折率より少なくとも0.1低くかつ透明支持体より少なくとも0.05低い。更に、高屈折率層の屈折率nは、一般に1.57〜2.40の範囲にある。
【0137】
また本発明の反射防止フィルムは、前記のように、低屈折率層と高屈折率層の二層からなる反射防止膜を有する構成でもよいが、さらに、中屈折率層、ハードコート層などの層を予め形成し、この上に前記した方法に従い低屈折率層と高屈折率層が形成された三層以上の反射防止膜を有する構成が好ましい。より好ましくは中・高・低屈折率層の三層以上の層を積層してなる形態である。このような反射防止フィルムの実施形態を図2に示す。
【0138】
すなわち、図2に示す反射防止フィルム1は、透明支持体2上にハードコート層3を有し、この上に中屈折率層7、高屈折率層8、低屈折率層5が、この順序で形成された反射防止膜6を有する。
このような構成では、特開昭59−50401号公報に記載されているように、中屈折率層7が下記数式(IV)、高屈折率層8が下記数式(V)、低屈折率層5が下記数式(VI)をそれぞれ満足することが好ましい。
【0139】
数式(IV):(hλ/4)×0.7<n<(hλ/4)×1.3
【0140】
式中、hは正の整数(一般に1、2または3)であり、nは中屈折率層の屈折率であり、そして、dは中屈折率層の層厚(nm)である。
【0141】
数式(V):(jλ/4)×0.7<n<(jλ/4)×1.3
【0142】
式中、jは正の整数(一般に1、2または3)であり、nは高屈折率層の屈折率であり、そして、dは高屈折率層の層厚(nm)である。
【0143】
数式(VI):(kλ/4)×0.7<n<(kλ/4)×1.3
【0144】
式中、kは正の奇数(一般に1)であり、nは低屈折率層の屈折率であり、そして、dは低屈折率層の層厚(nm)である。
【0145】
中屈折率層の屈折率nは、一般に1.50〜1.85の範囲にあり、高屈折率層の屈折率nは、一般に1.57〜2.40の範囲にある。
また、数式(II)〜(VI)中のλは可視光線の波長であり、380〜680nmの範囲の値である。ここで記載した高屈折率、中屈折率、低屈折率とは層相互の相対的な屈折率の高低をいう。例えば中屈折率層は高屈折率層に添加する高屈折率無機微粒子の含率を変えるなどの方法で作製される。
【0146】
反射防止フィルムには、上述のようにハードコート層を設けることができる他、防湿層、帯電防止層、下塗り層や保護層を設けてもよい。ハードコート層は、透明支持体に耐擦傷性を付与するために設ける。ハードコート層は、透明支持体とその上の層との接着を強化する機能も有する。ハードコート層は、アクリル系ポリマー、ウレタン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、シリコン系ポリマーやシリカ系化合物を用いて形成することができる。顔料をハードコート層に添加してよい。
アクリル系ポリマーは、多官能アクリレートモノマー(例、ポリオールアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート)の重合反応により合成することが好ましい。ウレタン系ポリマーの例には、メラミンポリウレタンが含まれる。シリコン系ポリマーとしては、シラン化合物(例、テトラアルコキシシラン、アルキルトリアルコキシシラン)と反応性基(例、エポキシ、メタクリル)を有するシランカップリング剤との共加水分解物が好ましく用いられる。二種類以上のポリマーを組み合わせて用いてもよい。シリカ系化合物としては、コロイダルシリカが好ましく用いられる。ハードコート層の強度は、1kg荷重の鉛筆硬度で、H以上である好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。透明支持体の上には、ハードコート層に加えて、接着層、シールド層、滑り層や帯電防止層を設けてもよい。シールド層は、電磁波や赤外線を遮蔽するために設けられる。
【0147】
[透明支持体]
本発明において好ましく用いることができる前記透明支持体としては、透明支持体としては、ガラス板よりもプラスチックフィルムの方が好ましい。プラスチックフィルムの材料の例には、セルロースアシレート(例、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、プロピオニルセルロース、ブチリルセルロース、アセチルプロピオニルセルロース、ニトロセルロース)、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル(例、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−1,2−ジフェノキシエタン−4,4’−ジカルボキシレート、ポリブチレンテレフタレート)、ポリスチレン(例、シンジオタクチックポリスチレン)、ポリオレフィン(例、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリメチルメタクリレートおよびポリエーテルケトンが含まれる。セルロースアシレート、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレートおよびポリエチレンナフタレートが好ましく、トリアセチルセルロースがさらに好ましい。
【0148】
セルロースアシレートフィルムの厚さは、使用目的によって異なるが、通常5〜500μmの範囲であり、さらに20〜250μmの範囲が好ましく、特に30〜180μmの範囲が最も好ましい。なお、光学用途としては30〜110μmの範囲が特に好ましい。セルロースアシレートフィルムを、非塩素系溶媒を用いて製造することについて、発明協会公開技報2001−1745号に詳しく記載されており、そこに記載されたセルロースアシレートフィルムも本発明に好ましく用いることができる。
【0149】
透明支持体の光透過率は、80%以上であることが好ましく、86%以上であることがさらに好ましい。透明支持体のヘイズは、2.0%以下であることが好ましく、1.0%以下であることがさらに好ましい。透明支持体の屈折率は、1.4〜1.7であることが好ましい。透明支持体には、赤外線吸収剤あるいは紫外線吸収剤を添加してもよい。赤外線吸収剤の添加量は、透明支持体の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.05〜10質量%であることがさらに好ましい。滑り剤として、不活性無機化合物の粒子を透明支持体に添加してもよい。該無機化合物の例には、SiO、TiO、BaSO、CaCO、タルクおよびカオリンが含まれる。透明支持体に、表面処理を実施してもよい。
表面処理の例には、薬品処理、機械的処理、コロナ放電処理、火焔処理、紫外線照射処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理、混酸処理およびオゾン酸化処理が含まれる。グロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ放電処理および火焔処理が好ましく、グロー放電処理と紫外線処理がさらに好ましい。
【0150】
[反射防止フィルムの形成方法]
反射防止膜の各層は、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法やエクストルージョンコート法(米国特許第2,681,294号明細書記載)により、透明支持体上に直接又は他の層を介して塗布することにより形成することができる。二層以上を同時に塗布してもよい。同時塗布の方法については、米国特許第2,761,791号、同第2,941,898号、同第3,508,947号、同第3,526,528号の各明細書および原崎勇次著、「コーティング工学」、253頁、朝倉書店(1973)に記載がある。本願の反射防止膜は、各層の塗布組成物を塗布後、乾燥し、電離放射線又は熱により硬化させることが好ましい。電離放射線を用いることが好ましく、紫外線を用いて硬化する場合には、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、キセノンアーク、メタルハライドランプ等の光線から発する紫外線等が利用できる。
【0151】
反射防止膜の反射率は低いほど好ましい。反射防止膜の平均反射率は、450〜650nmの波長領域において2%以下であることが好ましく、1%以下であることがさらに好ましく、0.7%以下であることが最も好ましい。反射防止膜(下記のアンチグレア機能がない場合)のヘイズは、3%以下であることが好ましく、1%以下であることがさらに好ましく、0.5%以下であることが最も好ましい。反射防止膜の強度は、1kg荷重の鉛筆硬度で、H以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましい。
【0152】
反射防止膜は、外光を散乱させるアンチグレア機能を有していてもよい。アンチグレア機能は、反射防止膜の表面に凹凸を形成することにより得られる。微粒子を使用した低屈折率層では、微粒子により反射防止膜の表面に凹凸が形成できる。微粒子により得られるアンチグレア機能では不充分な場合は、低屈折率層、高屈折率層、中屈折率層あるいはハードコート層に比較的大きな粒子(粒径:50nm〜2μm)を少量(0.1〜50質量%)添加してもよい。反射防止膜は、液晶表示装置の視野角(特に下方向視野角)を拡大し、観察方向の視角が変化してもコントラスト低下、階調または黒白反転、あるいは色相変化を抑止する目的で光拡散機能を有していてもよい。光拡散機能は光拡散フィルムに含有される透光性微粒子の内部散乱の効果により実現できる。反射防止膜がアンチグレア機能及び/又は光拡散機能を有する場合、反射防止膜のヘイズは、3〜60%であることが好ましく、4〜40%であることがさらに好ましい。
【実施例】
【0153】
以下に本発明を具体的に説明する実施例を挙げるが、本発明はこれらによって限定されるものではない。またここでは、高速液体クロマトグラフィーはHPLCと、核磁気共鳴法はNMRと、記す。H−NMRスペクトルではテトラメチルシランを内部標準として用い、19F−NMRスペクトルではフルオロトリクロロメタンを外部標準として用いて測定を行った。生成物の純度測定は、特に記さない限り、HPLCを用いて内部標準法により分析を行い、検出器はエバポレイト蒸発光散乱検出器(ELSD)を使用した。
【0154】
[実施例1]化合物(M1)の合成
【0155】
【化26】

【0156】
(実施例1−1)化合物(M1−A)の合成
化合物(M1−A)は、非特許文献(J.Am.Chem.Soc.第67巻、1945年、942ページ)に記載の方法を参考に合成した。
反応器にペンタエリスリトール(和光純薬工業(株)製)136.2g(1.00mol)、ピリジン711g(9mol)を取り、氷水浴中で攪拌させた。これに塩化チオニル125.0g(1.05mol)をゆっくりと滴下した後、浴を外して室温で1時間攪拌させ、さらに加熱還流下で10時間反応させた。反応器を冷却後、内容物を氷水に空け、酢酸エチルで抽出し、得られた有機層を食塩水で洗浄し、乾燥し、溶媒を留去して、粗生成物を得た。これをカラムクロマトグラフィーで精製し、化合物(M1−A)を得た。収量90.7g(収率59%)。
【0157】
(実施例1−2)化合物(M1−B)の合成
反応器に化合物(M1−A)77.3g(0.50mol)、トルエン270mlを取り、15℃の浴中で攪拌させた。これに50重量%水酸化カリウム水溶液80g(0.71mol)を加えてそのまま0.5時間攪拌させ、続いてアクリロニトリル81.0g(1.53mol)をゆっくりと滴下した後、トルエン300mLを加えてから上層を取り出した。得られたトルエン溶液を食塩水で洗浄し、乾燥し、溶媒を留去して、化合物(M1−B)を得た。収量138.0g(収率88%)。
【0158】
(実施例1−3)化合物(M1−C)の合成
乾燥させた反応器に化合物(M1−B)78.5g(0.25mol)、メタノール500mLを取り、水浴中20℃で攪拌させた。反応器に塩化水素ガスを、反応容器内が飽和に達しガスが吸収されなくなるまで流し入れた後、反応溶液を加熱還流条件で3時間攪拌させ、続いて常圧で溶媒を留去させた。残った残渣にトルエンを加え、食塩水で洗浄し、乾燥し、溶媒を留去して粗生成物を得た。これをカラムクロマトグラフィーで精製し、化合物(M1−C)を得た。収量74.3g(収率72%)。
【0159】
(実施例1−4)化合物(M1−D)の合成
乾燥させた反応器に水素化ホウ素ナトリウム37.8g(1.00mol)、1,2−ジメトキシエタン250mL、化合物(M1−C)41.3g(0.10mol)を取り、70℃の浴中で攪拌させた。これにメタノール150mLをゆっくりと滴下し、そのまま1.5時間攪拌させた後、室温まで冷却した。この反応液に希塩酸を加えて系中を酸性にした後、塩化ナトリウムを飽和するまで加えてから酢酸エチルで3回抽出し、集めた有機層を飽和食塩水で洗浄し、乾燥し、溶媒を留去して、化合物(M1−D)を得た。収量30.6g(収率93%)。
【0160】
(実施例1−5)化合物(M1−E)の合成
反応器に化合物(M1−D)32.9g(0.10mol)、ピリジン30.8g(0.39mol)、アセトニトリル300mLを取り、氷水浴中で攪拌させた。これにH(CFC(O)Cl118.0g(0.31mol)を滴下し、そのまま0.5時間攪拌させ、続いて浴を外して室温で2時間攪拌させた。これに氷水を加え、酢酸エチルで抽出し、有機層を洗浄し、乾燥し、溶媒を留去して、粗生成物を得た。これをカラムクロマトグラフィーで精製し、化合物(M1−E)を得た。収量106.0g(収率81%)。
【0161】
(実施例1−6)化合物(M1−F)の合成
化合物(M1−F)は、特許文献(特開2008−106036号公報)に記載の製造方法を参考にして合成した。
原料供給口、フッ素供給口、へリウムガス供給口およびドライアイスで冷却した還流装置を経由してフッ素トラップに接続されている排気口を備えた500mLフッ素樹脂製反応器に、フッ化ナトリウム24.4g(0.58mol)及び溶媒300mL(商品名FC−72、住友スリーエム(株)製)を入れ、内温−10℃にてヘリウムガスを流速100mL/minで1時間吹き込んだ。引き続き20体積%F/Nガス(以降、希釈フッ素ガスと略する。)を100mL/minで0.5時間吹き込んだ後、希釈フッ素ガス流量を200mL/minとし、化合物(M1−E)13.1g(0.01mol)及びヘキサフルオロベンゼン4.65g(0.025mol)の混合溶液を4.1時間かけて添加した。希釈フッ素ガス流量を100mL/minに下げ、ヘキサフルオロベンゼン0.6mLを1時間で添加し、次いで希釈フッ素ガスを流しながら浴温を20℃に上げてヘキサフルオロベンゼン0.6mLを1時間で添加し、さらに希釈フッ素ガスを100mL/minで0.25時間流した。反応器内部をヘリウムガスで置換した後、メタノール(100mL)を加え、1時間攪拌した。反応液をろ過した後、母液を洗浄し、乾燥し、溶媒を留去した。残渣から低沸点成分を1mmHgの減圧下で留去し、純度約90%の化合物(M1−F)を得た。主な不純物はF(CFC(O)OCHだった。収量7.0g(収率76%)。この反応をスケールを変えて繰り返し行い、得られた生成物を再度蒸留精製して、最終的に純度96%の化合物(M1−F)を得た。
【0162】
(実施例1−7)化合物(M1−G)の合成
反応器にTHF325mL、水125mL、水素化ホウ素ナトリウム15.1g(0.40mol)を取り、氷水浴中で攪拌させた。これに化合物(M1−F)92.3g(0.10mol)及びTHF50mLの混合溶液を滴下してそのまま0.25時間攪拌させ、浴を外して室温で3時間攪拌させた。再び氷水浴中で反応液を攪拌させながら、2mol/L塩酸を加えて系中を酸性にし、これに食塩水を加えた。この溶液を酢酸エチルで3回抽出し、集めた有機層を食塩水で洗浄し、乾燥し、溶媒を留去して、粗生成物を得た。これをカラムクロマトグラフィーにより精製して、化合物(M1−G)を得た。収量60.9g(収率73%)。
【0163】
(実施例1−8)化合物(M1)の合成
反応器に化合物(M1−G)41.9g(0.05mol)、炭酸カリウム83.0g(0.60mol)、アセトニトリル400mLを取り、氷水浴中で攪拌させた。これにアクリル酸クロリド27.2g(0.30mol)を滴下し、そのまま1時間攪拌した後、浴を外して室温で3時間攪拌させた。再び氷水浴中で反応液を攪拌させながら、酢酸エチル150mLを加えて、次いで2mol/L塩酸を加えて系中を酸性にし、残った固形物が溶解するまで水を加えた。この溶液から上層を取り出し、食塩水及び重曹水で洗浄した。この溶液を50℃重曹水で処理して副生成したアクリル酸無水物を加水分解除去し、洗浄し、乾燥し、溶媒を留去して、粗生成物を得た。これをカラムクロマトグラフィーにより精製して、化合物(M1)を得た。収量41.7g(収率83%)。
H−NMR(CDCl、TMS):δ[ppm]=6.51(dd、J=17、1Hz、1H)、6.16(dd、J=17、10Hz、1H)、5.97(dd、J=10、1Hz、1H)、4.57(t、J=12Hz、2H);19F−NMR(CDCl、CFCl):δ[ppm]=−52.1(m、2F)、−66.8(m、6F)、−86.2(s、6F)、−123.3(t、J=12Hz、6F);CI−MS(m/z)1001[M+H]。
【0164】
[実施例2]化合物(M18)の合成
【0165】
【化27】

【0166】
(実施例2−1)化合物(M18−A)の合成
反応器にペンタエリスリトール(和光純薬工業(株)製)136.2g(1.00mol)、テトラブチルアンモニウム硫酸水素塩339g(1.00mol)を取り、50%水酸化カリウム水溶液150mLを加えて窒素気流下40℃の浴中で攪拌させた。これにビス(2−クロロエチル)エーテル157g(1.10mol)を滴下していき、そのまま3時間攪拌させた。反応終了後、食塩水及び酢酸エチルを加えて分液し、得られた有機層を塩酸で洗浄し、食塩水で洗浄し、乾燥し、溶媒を留去して、粗生成物を得た。これをカラムクロマトグラフィーで精製し、化合物(M18−A)を得た。収量116.8g(収率48%)。
【0167】
(実施例2−2)化合物(M18−B)の合成
乾燥させた反応器にジイソプロピルエーテル500mL、1H,1H,2H,2H−パーフルオロ−1−オクタノール(ダイキン工業(株)製)80.1g(0.22mol)を取り、これに実験化学講座第4版、第19巻、420ページの方法に従って発生させた臭化水素32.4g(0.40mol)を吹き込んだ。これにγ−ブチチロラクトン17.2g(0.20mol)を滴下していき、そのまま1時間攪拌させた後、加熱還流条件下で4時間攪拌させた。反応後、溶媒を留去して粗生成物を得た。これをカラムクロマトグラフィーで精製し、化合物(M18−B)を得た。収量57.8g(収率56%)。
【0168】
(実施例2−3)化合物(M18−C)の合成
乾燥させた反応器に化合物(M18−A)24.3g(0.10mol)、アセトニトリル500mL、炭酸カリウム82.9g(0.60mol)を取り、氷水浴中で攪拌させた。これに化合物(M18−B)159.1g(0.31mol)のアセトニトリル100mL溶液をゆっくりと滴下していき、そのまま1時間攪拌させた後、浴を外して室温でさらに5時間攪拌させた。反応終了後、酢酸エチルを加えて固体をろ別し、得られたろ液を水で洗浄し、乾燥させ、溶媒を留去して粗生成物を得た。これをカラムクロマトグラフィーで精製し、化合物(M18−C)を得た。収量128.7g(収率81.7%)。
【0169】
(実施例2−4)化合物(M18−D)の合成
原料供給口、フッ素供給口、へリウムガス供給口およびドライアイスで冷却した還流装置を経由してフッ素トラップに接続されている排気口を備えた500mLフッ素樹脂製反応器に、フッ化ナトリウム38.6g(0.92mol)及び溶媒300mL(商品名FC−72、住友スリーエム(株)製)を入れて、内温−10℃にてヘリウムガスを流速100mL/minで1時間吹き込んだ。引き続き20体積%F/Nガス(以降、希釈フッ素ガスと略する。)を100mL/minで0.5時間吹き込んだ後、希釈フッ素ガス流量を200mL/minとし、化合物(M18−C)15.8g(0.01mol)及びヘキサフルオロベンゼン4.65g(0.025mol)の混合溶液を6時間かけて添加した。希釈フッ素ガス流量を100mL/minに下げ、ヘキサフルオロベンゼン0.6mLを1時間で添加し、次いで希釈フッ素ガスを流しながら浴温を20℃に上げてヘキサフルオロベンゼン0.6mLを1時間で添加し、さらに希釈フッ素ガスを100mL/minで0.25時間流した。反応器内部をヘリウムガスで置換した後、メタノール(100mL)を加え、1時間攪拌した。反応液をろ過した後、母液を洗浄し、乾燥し、溶媒を留去した。残渣から低沸点成分を1mmHgの減圧下で留去し、純度約89%の化合物(M18−D)を得た。主な不純物はF(CFC(O)OCHだった。収量8.3g(収率72%)。
【0170】
(実施例2−5)化合物(M18−E)の合成
反応器にTHF32.5mL、水12.5mL、水素化ホウ素ナトリウム1.14g(0.03mol)を取り、氷水浴中で攪拌させた。これに化合物(M18−D)9.24g(0.008mol)及びTHF5.0mLの混合溶液を滴下してそのまま0.25時間攪拌させ、次いで浴を外して室温で3時間攪拌させた。再び氷水浴中で反応液を攪拌させながら、2mol/L塩酸を加えて系中を酸性にし、これに食塩水を加えた。この溶液を酢酸エチルで3回抽出し、集めた有機層を食塩水で洗浄し、乾燥し、溶媒を留去して、粗生成物を得た。これをカラムクロマトグラフィーにより精製して、化合物(M18−E)を得た。収量6.88g(収率80%)。
【0171】
(実施例2−6)化合物(M18−F)の合成
反応器に化合物(M18−E)5.35g(0.005mol)、エチレンカーボネート1.98g(0.023mol)、トリエチルアミン1.52g(0.015mol)を取り、油浴中で攪拌させながらゆっくりと95℃まで昇温していき、気体の発生が止まるまでそのまま30時間攪拌させた。反応終了後、反応器内を減圧して低沸点成分を留去し、反応器内の残渣に酢酸エチル及び水を加えて抽出し、有機層を洗浄し、乾燥し、溶媒を留去して、粗生成物を得た。これをカラムクロマトグラフィーにより精製して、化合物(M18−F)を得た。収量3.24g(収率54%)。
【0172】
(実施例2−7)化合物(M18)の合成
反応器に化合物(M18−F)3.01g(0.0025mol)、炭酸カリウム4.15g(0.03mol)、アセトニトリル20mLを取り、氷水浴中で攪拌させた。これにアクリル酸クロリド1.36g(0.015mol)を滴下し、そのまま0.5時間攪拌した後、浴を外して室温で3時間攪拌させた。再び氷水浴中で反応液を攪拌させながら、酢酸エチル10mLを加え、次いで3mol/L塩酸を加えて系中を酸性にし、残った固形物が溶解するまで水を加えた。この溶液から上層を取り出し、食塩水及び重曹水で洗浄し、乾燥させ、溶媒を留去して、粗生成物を得た。これをカラムクロマトグラフィーにより精製して、化合物(M18)を得た。収量2.35g(収率69%)。
H−NMR(CDCl、TMS):δ[ppm]=6.51(dd、J=17、1Hz、1H)、6.16(dd、J=17、10Hz、1H)、5.97(dd、J=10、1Hz、1H)、4.30(t、J=5Hz、2H)、4.01(t、J=12Hz、2H)、3.87(t、J=5Hz、2H);MARDI−MS(m/z)1387[M+Na]。
【0173】
[実施例3]化合物(M24)の合成
【0174】
【化28】

【0175】
(実施例3−1)化合物(M24−A)の合成
反応器に、実施例1−1で合成した化合物(M1−A)15.5g(0.10mol)、アセトニトリル300mL、炭酸カリウム82.9g(0.60mol)を取り、氷水浴中で攪拌させた。これに化合物(M18−B)164.0g(0.33mol)のアセトニトリル100mL溶液を滴下していき、そのまま1時間攪拌させた後、浴を外して室温でさらに5時間攪拌させた。反応終了後、酢酸エチル及びヘキサンを加えて固体をろ別し、得られたろ液を水で洗浄し、乾燥させ、溶媒を留去して粗生成物を得た。これをカラムクロマトグラフィーで精製し、化合物(M24−A)を得た。収量113.3g(収率78.1%)。
【0176】
(実施例3−2)化合物(M24−B)の合成
化合物(M18−C)15.8g(0.01mol)を化合物(M24−A)17.6g(0.012mol)に変更した以外は、実施例2−4と同様に反応を行い、純度約92%の化合物(M24−B)を得た。主な不純物はF(CFC(O)OCHだった。収量7.8g(収率70%)。
【0177】
(実施例3−3)化合物(M24−C)の合成
反応器にTHF21.0mL、水8.0mL、水素化ホウ素ナトリウム0.76g(0.02mol)を取り、氷水浴中で攪拌させた。これに化合物(M24−B)4.61g(0.005mol)及びTHF3.0mLの混合溶液を滴下してそのまま0.5時間攪拌させ、次いで浴を外して室温で3時間攪拌させた。再び氷水浴中で反応液を攪拌させながら、2mol/L塩酸を加えて系中を酸性にし、塩化ナトリウムを加え、この溶液を酢酸エチルで3回抽出し、集めた有機層を食塩水で洗浄し、乾燥し、溶媒を留去して、粗生成物を得た。これをカラムクロマトグラフィーにより精製して、化合物(M24−C)を得た。収量3.5g(収率84%)。
【0178】
(実施例3−4)化合物(M24)の合成
反応器に化合物(M24−C)2.52g(0.003mol)、炭酸カリウム3.11g(0.023mol)、アセトニトリル20mLを取り、氷水浴中で攪拌させた。これにアクリル酸クロリド1.63g(0.018mol)を滴下し、そのまま0.5時間攪拌した後、浴を外して室温で3時間攪拌させた。再び氷水浴中で反応液を攪拌させながら、酢酸エチル10mL及びヘキサン10mLを加え、次いで3mol/L塩酸を加えて系中を酸性にし、残った固形物が溶解する量の水を加えた。この溶液から上層を取り出し、食塩水及び重曹水で洗浄し、乾燥させ、溶媒を留去して、粗生成物を得た。これをカラムクロマトグラフィーにより精製して、化合物(M24)を得た。収量1.95g(収率65%)。
H−NMR(CDCl、TMS):δ[ppm]=6.51(dd、1H)、6.16(dd、1H)、5.97(dd、1H)、4.57(t、2H);MARDI−MS(m/z)1023[M+Na]。
【0179】
[実施例4]化合物(M28)の合成
【0180】
【化29】

【0181】
(実施例4−1)化合物(M28−A)の合成
2−(2−テトラヒドロピラニル)エチル−p−トルエンスルホナート及び3−(2−テトラヒドロピラニル)プロピル−p−トルエンスルホナートは、文献記載の方法(E.Weber、Liebig Ann.Chem.、1983年、770ページ)を参考に、別途合成した。
乾燥させた反応容器に、水素化ナトリウム(油性60%)18.0g(0.45mol)、乾燥ジメチルスルホキシド500mLを取り、氷水浴中、窒素気流下で攪拌させ、これに化合物(M1−A)15.5g(0.10mol)の乾燥ジメチルスルホキシド50mL溶液を滴下し、そのまま30分間攪拌させた後、35℃の浴中で15時間攪拌させた。この溶液に2−(2−テトラヒドロピラニル)エチル−p−トルエンスルホナート135.2g(0.45mol)の乾燥ジメチルスルホキシド50mL溶液をゆっくりと滴下し、そのまま35℃の浴中で18時間攪拌させた。反応終了後、氷水及びジエチルエーテルを加えて分液し、有機層を水で洗浄し、乾燥させた。これにシリカゲル20gを加えて攪拌させてから固形物をろ別し、ろ液から溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、得られた油状物をメタノール100mLに溶解させ、これに濃塩酸0.10mLを加えて室温で6時間攪拌させた。これに炭酸ナトリウム2.0gを加えて、室温で0.5時間攪拌させた後、固体をろ別し、溶媒を留去した。この残渣をクロロホルムに溶解させ、食塩水で洗浄し、乾燥させ、溶媒を留去した。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、化合物(M28−A)を得た。収量15.8g(収率55%)。
【0182】
(実施例4−2)化合物(M28−B)の合成
乾燥させた反応容器に、水素化ナトリウム(油性60%)9.0g(0.23mol)、乾燥ジメチルスルホキシド250mLを取り、氷水浴中、窒素気流下で攪拌させ、これに化合物(M1−B)14.3g(0.05mol)の乾燥ジメチルスルホキシド50mL溶液を滴下し、そのまま30分間攪拌させた後、35℃の浴中で8時間攪拌させた。この溶液に3−(2−テトラヒドロピラニル)プロピル−p−トルエンスルホナート70.7g(0.23mol)の乾燥ジメチルスルホキシド25mL溶液をゆっくりと滴下し、そのまま35℃の浴中で15時間攪拌させた。反応終了後、氷水及びジエチルエーテルを加えて分液し、有機層を水で洗浄し、乾燥させ、溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、得られた油状物をメタノール100mLに溶解させ、これに濃塩酸0.10mLを加えて室温で6時間攪拌させた。これに炭酸ナトリウム2.0gを加えて、室温で0.5時間攪拌させた後、固体をろ別し、溶媒を留去した。この残渣をクロロホルムに溶解させ、食塩水で洗浄し、乾燥させ、溶媒を留去した。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、化合物(M28−B)を得た。収量11.4g(収率49%)。
【0183】
(実施例4−3)化合物(M28−C)の合成
乾燥させた反応容器に、化合物(M28−B)10.0g(0.022mol)、炭酸カリウム18.0g(0.13mol)、乾燥アセトニトリル250mLを取り、20℃浴中、窒素気流下で攪拌させた。これに1H−パーフルオロヘプタン酸クロリド(ダイキン工業(株)製)35.0g(0.096mol)を滴下し、浴を外して室温で3時間攪拌させ、加熱還流条件で0.5時間攪拌させた。室温まで冷却後、固体をろ別し、ろ液に酢酸エチルを加えて水及び食塩水で洗浄し、乾燥させ、溶媒を留去した。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、化合物(M28−C)を得た。収量24.7g(収率79%)。
【0184】
(実施例4−4)化合物(M28−D)の合成
化合物(M18−C)15.8g(0.01mol)を化合物(M28−C)16.2g(0.011mol)に変更した以外は、実施例2−4と同様に反応を行い、純度約95%の化合物(M28−D)を得た。主な不純物はF(CFC(O)OCHだった。収量9.1g(収率74%)。
【0185】
(実施例4−5)化合物(M28−E)の合成
化合物(M24−B)を化合物(M28−D)5.6g(0.005mol)に変更した以外は、実施例3−3と同様に反応を行った。収量4.4g(収率85%)。
【0186】
(実施例4−6)化合物(M28)の合成
化合物(M24−C)を化合物(M28−D)3.1g(0.003mol)に変更した以外は、実施例3−4と同様に反応を行った。収量2.3g(収率65%)。
H−NMR(CDCl、TMS):δ[ppm]=6.51(dd、1H)、6.16(dd、1H)、5.97(dd、1H)、4.56(t、2H);MARDI−MS(m/z)1221[M+Na]。
【0187】
これらと同様の方法により、他化合物も合成できる。
【0188】
[実施例3]反射防止膜の作製および評価
(内部に空孔を有する粒子の調製)
(分散液B−1の調製)
特開2002−79616号公報の調製例4から調製時の条件を変更して、内部に空洞を有するシリカ微粒子を作製した。最終ステップで水分散液状態からメタノールに溶媒置換し、20%シリカ分散液とした。平均粒子径45nm、シェル厚み約7nm、シリカ粒子の屈折率1.30の粒子が得られた。これを分散液(A−1)とした。
【0189】
分散液(A−1)の500重量部に対してアクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン30重量部、およびジイソプロポキシアルミニウムエチルアセテート1.5重量部加え混合した後に、イオン交換水を9重量部を加えた。60℃で8時間反応させた後に室温まで冷却し、アセチルアセトン1.8重量部を添加した。総液量がほぼ一定になるように2−ブタノン(MEK)を添加しながら減圧蒸留により溶媒を置換した。最終的に固形分が20%になるように調節して分散液B−1を調製した。
【0190】
(反射防止フィルムの作製)
(低屈折率層用塗布液(Ln−1〜Ln−5)の調製)
各成分を下記表1のように混合し、MEKに溶解して固形分5%の低屈折率層用塗布液を作製した。比較化合物としては特開2008−106036の実施例に記載の化合物(下記Q1およびQ2)を用いた。
【0191】
【表1】

【0192】
上記表において、各成分の量は質量部である。
なお、上記表中における略号は以下の通りである。
「P−1」:特開2004−45462号公報に記載の含フッ素共重合体P−3(質量平均分子量約50000)
DPHA:ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物、日本化薬(株)製
Irg.907:イルガキュア907、重合開始剤(チバ・ジャパン(株)製)
RMS−033:メタクリロキシ変性シリコーン(Gelest(株)製)
M1:本文記載の3官能含フッ素アクリレート
M18:本文記載の3官能含フッ素アクリレート
M36:本文記載の5官能含フッ素アクリレート
【0193】
【化30】

【0194】
(ハードコート層用塗布液(HCL−1)の調製)
MEK90重量部に対して、シクロヘキサノン10重量部、部分カプロラクトン変性の多官能アクリレート(DPCA−20、日本化薬(株)製)85重量部、KBM−5103(シランカップリング剤:信越化学工業(株)製)10重量部、光重合開始剤(イルガキュア184、チバ・ジャパン(株)製)5重量部、を添加して攪拌した。孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過してハードコート層用の塗布液(HCL−1)を調製した。
【0195】
(反射防止フィルム試料1の作製)
80μmの厚さのトリアセチルセルロース(TAC)フィルム“TAC−TD80U”(富士フイルム(株)製)をロール形態で巻き出して、直接、上記のハードコート層用塗布液(HCL−1)を、線数180本/in、深度40μmのグラビアパターンを有する直径50mmのマイクログラビアロールとドクターブレードを用いて、グラビアロール回転数30rpm、搬送速度30m/分の条件で塗布し、60℃で150秒乾燥の後、さらに窒素パージ下酸素濃度0.1体積%で160W/cmの「空冷メタルハライドランプ」(アイグラフィックス(株)製)を用いて、放射照度400mW/cm、照射量50mJ/cmの紫外線を照射して塗布層を硬化させ、厚さ10.0μmの層を形成し、巻き取った。このようにしてハードコート層(HC−1)を得た。
【0196】
このようにして得られたハードコート層(HC−1)の上に、上記低屈折率層用塗布液Ln−1を用い、低屈折率層膜厚が95nmになるように調節して、マイクログラビア塗工方式で反射防止フィルム試料1を作製した。
【0197】
低屈折率層形成の硬化条件を以下に示す。
(1)乾燥:80℃−120秒、(2)UV硬化:酸素濃度が0.01体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら240W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度120mW/cm、照射量500mJ/cmの照射量とした。
【0198】
(反射防止フィルム試料2〜5の作製)
反射防止フィルム試料1の作製において、低屈折率層用塗布液(Ln−1)を用いる代わりに、(Ln−2)〜(Ln−5)を用いること以外は反射防止フィルム試料1と同様にして反射防止フィルム2〜5を作製した。
【0199】
(反射防止フィルムの鹸化処理)
得られた反射防止フィルムを以下の鹸化標準条件で処理・乾燥した。
アルカリ浴:1.5mol/L水酸化ナトリウム水溶液、55℃、120秒。
第1水洗浴:水道水、60秒。
中和浴:0.05mol/L硫酸水溶液、30℃、20秒。
第2水洗浴:水道水、60秒。
乾燥:120℃、60秒。
【0200】
(反射防止フィルムの評価)
上記の鹸化済みの反射防止フィルムを用いて以下の評価を行った。
【0201】
(スチールウール耐傷性評価)
ラビングテスターを用いて、以下の条件でこすりテストを行った。
評価環境条件:25℃、60%RH
こすり材:試料と接触するテスターのこすり先端部(1cm×1cm)にスチールウール(日本スチールウール(株)製、No.0000)を巻いて、動かないようバンド固定した。
移動距離(片道):13cm、こすり速度:13cm/秒、荷重:500g/cm2、先端部接触面積:1cm×1cm、こすり回数:10往復。
こすり終えた試料の裏側に油性黒インキを塗り、反射光で目視観察して、こすり部分の傷を、以下の基準で評価した。
A:非常に注意深く見ても、全く傷が見えない。
B:弱い傷が見える。
C:中程度の傷が見える。
D:一目見ただけで分かる傷がある。
【0202】
(動摩擦係数測定)
表面滑り性の指標として動摩擦係数にて評価した。動摩擦係数は試料を25℃、相対湿度60%で2時間調湿した後、HEIDON−14動摩擦測定機により5mmφステンレス鋼球、荷重100g、速度60cm/minにて測定した値を用いた。本発明の反射防止フィルムの動摩擦係数は好ましくは0.03〜0.40であるが、より好ましくは0.03〜0.35以下であり、さらには0.03〜0.30であることが最も好ましい。
【0203】
(積分反射率測定)
分光光度計(日本分光(株)製)を用いて、380〜780nmの波長領域において、入射角5°における分光反射率を測定した。結果には450〜650nmの鏡面平均反射率を用いた。
【0204】
ΔR:鹸化処理前後におけるスチールウール擦り試験による擦り部の反射率変化
Δθ:鹸化処理前後の水に対する接触角の変化
【0205】
(被接触媒体へのシリコーン成分の転写性試験)
シリコーン成分と低屈折率層素材との相溶性改善効果の確認は、被接触媒体へのシリコーン成分の転写性試験により行った。
厚さ80μmのTACフィルム(TAC−TD80U、富士フィルム(株)製)と反射防止膜サンプルを貼り合わせ、2kg/mの荷重をかけて25℃で24時間放置した後、TACフィルム表面に転写したSiの量をX線光電子分光法(ESCA)(島津製作所(株)製ESCA−3400)を用いて測定し、Si/Cの面積比を指標とした。なお転写試験前のTACフィルム表面のSi/C値は0.000であった。
反射防止フィルムの評価結果を下記表2に示す。
【0206】
【表2】

【0207】
表2に示された結果より、本発明で得られた反射防止フィルムは低屈折率(即ち、低積分反射率)と耐傷性を保持しつつ、同時にシリコーン成分の転写性が大幅に改良されていることがわかる。
【0208】
[実施例4]
上記本発明の反射防止フィルム(S−1、2および3)をそれぞれ用いて、画像表示装置を作製した。それらの画像表示装置はいずれも外光の反射によるコントラスト低下や像の映り込みを防止しつつ、かつ表面強度に優れるものであった。
【図面の簡単な説明】
【0209】
【図1】本発明の反射防止フィルム一実施態様を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明の反射防止フィルムの別の実施態様を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0210】
1 反射防止フィルム
2 透明支持体
3 ハードコート層
5 低屈折率層
6 反射防止膜
7 中屈折率層
8 高屈折率層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されることを特徴とする含フッ素多官能化合物。
【化1】

(一般式(1)中、aは2〜8の整数を表し、bは1〜3の整数を表し、dは1〜10の整数を表し、gは0又は1を表し、Yは下記式(2)で表される基(但し、Xは水素原子、フッ素原子、塩素原子、メチル基、又は水酸基を表す。)又はビニル基を表し、Lは下記式(3)又は(4)で表される基(但し、mは0〜10の整数を表す。Yは前記と同義である。)を表し、L及びLは、それぞれ独立に、下記式(5)、(6)又は(7)で表される基(但し、nは0〜10の整数を表す。)を表し、Rfは(a+b)価の、エーテル性酸素原子を含んでもよい、直鎖状、分枝状又は環状の飽和パーフルオロアルキル基を表し、Rfは炭素数1〜5の直鎖状又は分枝状の1価のパーフルオロアルキル基又はフッ素原子を表し、Rfは、少なくとも1つの塩素原子を有する、エーテル性酸素原子を含んでもよい、炭素数1〜5の直鎖状、分枝状又は環状の1価のパーフルオロアルキル基又は塩素原子を表す。上記各基は複数存在する場合は互いに同一でも異なっていてもよい。)
【化2】

【請求項2】
(a+b)が4〜8の整数であることを特徴とする請求項1に記載の含フッ素多官能化合物。
【請求項3】
aが3〜8であり、Lは式(3)又は(4)で表される基であり、且つmは0〜10の整数であることを特徴とする請求項1又は2に記載の含フッ素多官能化合物。
【請求項4】
aが2であり、Lは式(4)で表される基であり、且つmは1〜10の整数であることを特徴とする請求項1又は2に記載の含フッ素多官能化合物。
【請求項5】
dが1であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の含フッ素多官能化合物。
【請求項6】
液相全フッ素化の手法を用いて製造されたことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の含フッ素多官能化合物。
【請求項7】
下記の[工程1]、[工程2]および[工程3]を経て製造されることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の含フッ素多官能化合物。
[工程1]下記一般式(8)又は(9)で表される化合物を液相全フッ素化の手法を用いて、実質的に全ての水素原子をフッ素原子に置換する工程。
【化3】

(一般式(8)および(9)中、L及びLは、それぞれ独立に、下記式(10)、(11)又は(12)で表される基(但し、nは0〜10の整数を表す。)を表し、Rは(a+b)価の、エーテル性酸素原子を含んでもよい、またフッ素原子を含んでもよい、飽和アルキル基であって、液相全フッ素化法により前記一般式(1)中のRf基を与えるような基を表し、Rは炭素数1〜5の直鎖状又は分枝状の1価のアルキル基又は水素原子であって、液相全フッ素化法により前記一般式(1)中のRf基を与えるような基又は水素原子を表し、Rは、少なくとも1つの塩素原子を有する、エーテル性酸素原子を含んでもよい、炭素数1〜5の直鎖状又は分枝状の1価のアルキル基であって、液相全フッ素化法により前記一般式(1)中のRf基を与えるような基又は塩素原子を表し、R及びRは、それぞれ独立に、フッ素原子、塩素原子又は炭素数1〜10の、エーテル性酸素原子を含んでもよく、ハロゲン原子で置換されていてもよい、直鎖状、分枝状、又は環状の1価の飽和アルキル基を表す。a、b、d、gは各々前記一般式(1)中のものと同義である。)
【化4】

[工程2]フッ素化された生成物を、ROHで表される化合物と反応させることにより、下記一般式(13)で表される化合物を得る工程。
【化5】

(一般式(13)中、Rは炭素数1〜6の直鎖状、分枝状又は環状の1価のアルキル基、又は炭素数6〜14の芳香族炭化水素基を表す。)
[工程3]一般式(13)で表される化合物を還元し、下記一般式(14)で表される化合物を得る工程。
【化6】

【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の含フッ素多官能化合物を1〜99質量%含有する硬化性樹脂組成物を硬化してなる低屈折率層を有することを特徴とする反射防止膜。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれかに記載の含フッ素多官能化合物及び無機酸化物微粒子を含有する硬化性樹脂組成物を硬化してなる低屈折率層を有することを特徴とする反射防止膜。
【請求項10】
透明支持体上に請求項8又は9に記載の反射防止膜が少なくとも1層設けられたことを特徴とする反射防止フィルム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−83813(P2010−83813A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−255442(P2008−255442)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】