説明

含フッ素樹脂及び感光性樹脂組成物

【課題】優れた撥インク性、その持続性、インク転落性、その持続性及び現像性を奏する含フッ素樹脂の提供する。
【解決手段】下記式で表されるポリフルオロエーテル構造からなるRf基(a)と、酸性基(b)とを有し、酸価が1〜300mgKOH/gであり、フッ素原子の含有量が5〜40%であり、かつアルカリ水溶液に対して溶解性を有することを特徴とする含フッ素樹脂。−(X−O)−Y式中、Xは、炭素数1〜10の2価飽和炭化水素基又は炭素数1〜10のフルオロ化された2価飽和炭化水素基であって、nで括られた単位毎に同一の基又は異なる基を示し、Yは、水素原子(Yに隣接する酸素原子に隣接する炭素原子にフッ素原子が結合していない場合に限る)、炭素数1〜20の1価飽和炭化水素基又は炭素数1〜20のフルオロ化された1価飽和炭化水素基を示し、nは2〜50の整数を示す。ただし、式におけるフッ素原子の総数は2以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含フッ素樹脂及び感光性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体集積回路(IC)、液晶ディスプレイ(LCD)用薄膜、トランジスタ(TFT)回路等の回路製造用のマスクを作成するために感光性樹脂組成物が用いられており、より微細なパターン構造を形成することのできる感光性樹脂組成物が要求されている。
【0003】
一方、感光性樹脂組成物は、LCDや有機ELディスプレイ等のITO電極形成のためのレジスト材料、層間絶縁膜、回路保護膜、カラーフィルタ用隔壁材、有機ELディスプレイ用隔壁材等の永久膜形成材料としても注目されている。例えば、カラーフィルタの製造においては、微小画素内にインクを噴射塗布するインクジェット法が提案されており、感光性樹脂組成物を画素パターンの隔壁として形成することが行われている。
【0004】
この場合、隣り合う画素領域間におけるインクの混色等が起こるのを防止するために、感光性樹脂組成物においては水や有機溶剤等のインク溶剤をはじく性質、いわゆる撥インク性が要求されている。さらに画素隔壁上に僅かにはずれて噴射されたインクが目的の画素内に収まるためには、インク転落性が要求されている。
【0005】
特許文献1には、(成分1)ヘキサフルオロプロピレン、不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸無水物、及びその他の不飽和化合物の共重合体、(成分2)放射線の照射を受けて酸を発生する酸発生化合物、(成分3)架橋性化合物、及び(成分4)(成分1)以外の含フッ素有機化合物を含有することを特徴とする隔壁形成用感放射線性樹脂組成物が開示されており、(成分4)としてパーフルオロアルキル基と親油性基含有オリゴマーやシリコン含有フッ素系表面改質剤が例示されている。
【0006】
特許文献2には、(成分5)バインダー樹脂及び(成分6)感放射線化合物を含有し、(成分5)が、それ自身アルカリ可溶性であるか又は放射線照射後の該感放射線化合物の作用により化学変化を起こしてアルカリ可溶性となるものであって、少なくとも1個のフッ素原子を有するモノマーから導かれる単量体単位を有することを特徴とする化学増幅型レジスト組成物が開示いる。
【0007】
しかし、特許文献1の隔壁形成用感放射線性樹脂組成物では、アルカリ現像を必須とするフォトリソグラフィーにおいて、多量の(成分4)を使用したとき露光後のアルカリ溶解性が不足しているため溶け残りを生じる傾向がある。一方、少量の(成分4)を使用した場合、塗膜表面に撥インク性を充分に付与することができない。さらに、塗膜表面にインク転落性を充分に付与することができない。一方、特許文献2における(成分5)は、塗膜表面にインク転落性を充分に付与することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−82042号公報(請求項1、段落0038、0039)
【特許文献2】特開2002−6501号公報(請求項1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、優れた撥インク性、その持続性、インク転落性、その持続性及び現像性を奏する含フッ素樹脂を提供することを課題とする。また、本発明は、撥インク性、その持続性、インク転落性、その持続性に優れた塗膜を形成することができ、さらには微細なパターン形成が可能な感光性樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、下記の手段を提供するものである。
(1)下記式1で表されるポリフルオロエーテル構造からなるRf基(a)と、酸性基(b)とを有し、酸価が1〜300mgKOH/gであり、フッ素原子の含有量が5〜40%であり、かつアルカリ水溶液に対して溶解性を有することを特徴とする含フッ素樹脂。
−(X−O)−Y ・・・式1
式1中、Xは、炭素数1〜10の2価飽和炭化水素基又は炭素数1〜10のフルオロ化された2価飽和炭化水素基であって、nで括られた単位毎に同一の基又は異なる基を示し、
Yは、水素原子(Yに隣接する酸素原子に隣接する炭素原子にフッ素原子が結合していない場合に限る)、炭素数1〜20の1価飽和炭化水素基又は炭素数1〜20のフルオロ化された1価飽和炭化水素基を示し、
nは2〜50の整数を示す。
ただし、式1におけるフッ素原子の総数は2以上である。
(2)エチレン性二重結合とRf基(a)とを有する単量体に基づく単量体単位と、エチレン性二重結合と酸性基(b)とを有する単量体に基づく単量体単位とを有する共重合体である(1)の含フッ素樹脂。
(3)前記エチレン性二重結合が、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、又はアリル基である(2)の含フッ素樹脂。
(4)前記エチレン性二重結合とRf基(a)とを有する単量体が、CH=CRCOOQRf、CH=CROCOQRf、CH=CROQRf、CH=CRCHOQRf、CH=CRCOOQNRSORf、CH=CRCOOQNRCORf、CH=CRCOOQNRCOOQRf、及びCH=CRCOOQOQRfからなる群から選ばれる少なくともひとつである(2)の含フッ素樹脂。ただし、Rは水素原子又はメチル基、Qは単結合又は炭素数1〜6の2価有機基、Qは炭素数1〜6の2価有機基を示す。
(5)前記エチレン性二重結合とRf基(a)とを有する単量体に基づく単量体単位と、前記エチレン性二重結合と酸性基(b)とを有する単量体に基づく単量体単位と、前記Rf基(a)及び前記酸性基(b)を有しないその他の単量体に基づく単量体単位からなる共重合体であり、
前記その他の単量体は、官能基として水酸基、カルボニル基、アルコキシ基、アミド基のいずれかが含まれていてもよい、炭化水素系オレフィン類、ビニルエーテル類、イソプロペニルエーテル類、アリルエーテル類、ビニルエステル類、アリルエステル類、(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリルアミド類、芳香族ビニル化合物、クロロオレフィン類、フルオロオレフィン類、及び共役ジエン類からなる群から選ばれる単量体である(2)〜(4)のいずれかの含フッ素樹脂。
(6)前記エチレン性二重結合とRf基(a)とを有する単量体に基づく単量体単位の含有量が、1〜95%である(2)〜(5)のいずれかの含フッ素樹脂。
(7)前記酸性基(b)が、カルボキシル基、フェノール性水酸基、又はスルホン酸基である(1)〜(6)のいずれかの含フッ素樹脂。
(8)前記酸性基(b)を有する単量体に基づく単量体単位の含有量が、0.1〜40%である(2)〜(7)のいずれかの含フッ素樹脂。
(9)Rf基(a)が下記式2で表される基である(1)〜(8)のいずれかの含フッ素樹脂。
−Cp−12(p−1)O−(C2pO)n−1−C2q+1 ・・・式2
式2中、pは2又は3の整数を示し、nで括られた単位毎に同一の基であり、qは1〜20の整数、nは2〜50の整数を示す。
【0011】
(10)前記(1)〜(9)のいずれかの含フッ素樹脂(A)と、光酸発生剤(B)と、前記酸性基(b)と反応し得る基を2個以上有する化合物である酸架橋剤(C)とを含有することを特徴とする感光性樹脂組成物。
(11)酸性基を有し、かつ前記式1で表されるポリフルオロエーテル構造からなるRf基(a)を有しないアルカリ可溶性樹脂(D)をさらに含有する(10)の感光性樹脂組成物。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、優れた撥インク性、その持続性、インク転落性、その持続性及び現像性を奏する含フッ素樹脂が得られる。また、撥インク性、その持続性、インク転落性、その持続性に優れた塗膜を形成することができ、さらには微細なパターン形成が可能な感光性樹脂組成物が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書の化合物名において(メタ)アクリレートとは、アクリレート及び/又はメタクリレートを意味する。同様に、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を意味し、(メタ)アクリルアミドとは、アクリルアミド及び/又はメタクリルアミドを意味する。
【0014】
本明細書において、特に説明しない場合、%は質量%を表す。
【0015】
本発明の含フッ素樹脂は、下記式1で表されるポリフルオロエーテル構造からなるRf基(a)と、酸性基(b)とを有し、酸価が1〜300mgKOH/gであり、フッ素原子の含有量が5〜40%であり、かつアルカリ水溶液に対して溶解性を有する。
−(X−O)−Y ・・・式1
式1中、Xは、炭素数1〜10の2価飽和炭化水素基又は炭素数1〜10のフルオロ化された2価飽和炭化水素基であって、nで括られた単位毎に同一の基又は異なる基を示し、Yは、水素原子(Yに隣接する酸素原子に隣接する炭素原子にフッ素原子が結合していない場合に限る)、炭素数1〜20の1価飽和炭化水素基又は炭素数1〜20のフルオロ化された1価飽和炭化水素基を示し、nは2〜50の整数を示す。ただし、式1におけるフッ素原子の総数は2以上である。
【0016】
式1におけるX、Yの態様として、好ましくは、Xは、炭素数1〜10の水素原子1個を除いてフルオロ化されたアルキレン基又は炭素数1〜10のパーフルオロ化されたアルキレン基であって、nで括られた単位毎に同一の基又は異なる基を示し、Yは、炭素数1〜20の水素原子1個を除いてフルオロ化されたアルキル基又は炭素数1〜20のパーフルオロ化されたアルキル基を示すものが挙げられる。
【0017】
式1におけるX、Yの態様として、より好ましくは、Xは、炭素数1〜10のパーフルオロ化されたアルキレン基であって、nで括られた単位毎に同一の基又は異なる基を示し、Yは、炭素数1〜20のパーフルオロ化されたアルキル基を示すものが挙げられる。
【0018】
X、Yの態様が上記のものであることにより、含フッ素樹脂は良好な撥インク性を奏する。
【0019】
式1においてnは2〜50の整数を示す。nは2〜30が好ましく、2〜15がより好ましい。nが2以上であると、インク転落性が良好である。nが50以下であると、含フッ素樹脂をRf基(a)を有する単量体と、酸性基(b)を有する単量体やその他の単量体との共重合によって合成する場合に、単量体の相溶性が良好となる。
【0020】
また、式1で表されるポリフルオロエーテル構造からなるRf基(a)における炭素原子の総数は2〜50が好ましく、2〜30がより好ましい。当該範囲では、含フッ素樹脂は良好な撥インク性、特に撥有機溶剤性を奏する。また含フッ素樹脂をRf基(a)を有する単量体、酸性基(b)を有する単量体及びその他の単量体との共重合によって合成する場合に、単量体の相溶性が良好となる。
【0021】
Xの具体例としては、−CF−、−CFCF−、−CFCFCF−、−CFCF(CF)−、−CFCFCFCF−、−CFCFCF(CF)−、及びCFCF(CF)CF−が挙げられる。
【0022】
Yの具体例としては、−CF、−CFCF、−CFCHF、−(CFCF、−(CFCF、−(CFCF、−(CFCF、−(CFCF、−(CFCF、−(CFCF、−(CFCF、及び(CF11CF、−(CF15CFが挙げられる。
【0023】
式1で表されるポリフルオロエーテル構造からなるRf基(a)の好ましい態様としては、式2で表されるRf基(a)が挙げられる。
【0024】
−Cp−12(p−1)−O−(C2p−O)n−1−C2q+1 ・・・式2
式2中、pは2又は3の整数を示し、nで括られた単位毎に同一の基であり、qは1〜20の整数、nは2〜50の整数を示す。
【0025】
式2で表されるRf基(a)として、具体的には、
−CFO(CFCFO)n−1CF (nは2〜9)、
−CF(CF)O(CFCF(CF)O)n−113 (nは2〜6)、
−CF(CF)O(CFCF(CF)O)n−1 (nは2〜6)
が合成の容易さの点から好ましく挙げられる。
【0026】
含フッ素樹脂内のRf基(a)は、全て同一でもよいし、異なっていてもよい。
【0027】
含フッ素樹脂におけるフッ素原子の含有量は1〜60%が好ましく、5〜40%がより好ましい。当該範囲であると含フッ素樹脂は良好な撥インク性を奏し、本発明の感光性樹脂組成物の現像性が良好となる。
【0028】
含フッ素樹脂は、酸性基(b)を有する。
酸性基(b)としては、カルボキシル基、フェノール性水酸基、及びスルホン酸基からなる群から選ばれる少なくとも1つの酸性基又はその塩が好ましい。
【0029】
含フッ素樹脂の酸価は、1〜300mgKOH/gが好ましく、5〜200mgKOH/gがより好ましく、10〜150mgKOH/gが特に好ましい。この範囲であると本発明の感光性樹脂組成物の現像性が良好となる。なお、酸価は樹脂1gを中和するのに必要な水酸化カリウムの質量(単位mg)であり、本明細書においては単位をmgKOH/gと記載する。
【0030】
含フッ素樹脂の数平均分子量は、500以上20,000未満が好ましく、2,000以上15,000未満がより好ましい。当該範囲であると本発明の感光性樹脂組成物の現像性が良好である。数平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー法によりポリスチレンを標準物質として測定される。
【0031】
含フッ素樹脂は、エチレン性二重結合とRf基(a)とを有する単量体に基づく単量体単位と、エチレン性二重結合と酸性基(b)とを有する単量体に基づく単量体単位とを含む共重合体であって、酸価が1〜300mgKOH/gであるのが好ましい。
【0032】
エチレン性二重結合としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基が挙げられる。
【0033】
エチレン性二重結合とRf基(a)とを有する単量体としては、
CH=CRCOOQRf、
CH=CROCOQRf、
CH=CROQRf、
CH=CRCHOQRf、
CH=CRCOOQNRSORf、
CH=CRCOOQNRCORf、
CH=CRCOOQNRCOOQRf、
CH=CRCOOQOQRf
等が挙げられる。ただし、Rは水素原子又はメチル基を、Qは単結合又は炭素数1〜6の2価有機基を、Qは炭素数1〜6の2価有機基を、それぞれ示す。Q、Qは環状構造を有していてもよい。
【0034】
、Qの具体例としては、
−CH−、
−CHCH−、
−CH(CH)−、
−CHCHCH−、
−C(CH−、
−CH(CHCH)−、
−CHCHCHCH−、
−CH(CHCHCH)−、
−CH(CHCH−、
−CH(CHCH(CH)−、
−CHCH(OH)CH−、
−CHCHNHCOOCH−、
−CHCH(OH)CHOCH
等が挙げられる。Qは単結合であってもよい。
合成の容易さの観点から、−CH−、−CHCH−、−CHCH(OH)CH−が好ましい。
【0035】
エチレン性二重結合とRf基(a)とを有する単量体として具体的には以下のものが挙げられる。
【0036】
CH=CHCOOCHCFO(CFCFO)n−1CF (nは3〜9)、
CH=CHCOOCHCF(CF)O(CFCF(CF)O)n−113 (nは2〜6)、
CH=CHCOOCHCF(CF)O(CFCF(CF)O)n−1 (nは2〜6)。
【0037】
CH=C(CH)COOCHCHNHCOOCHCFO(CFCFO)n−1CF (nは3〜9)、
CH=C(CH)COOCHCHNHCOOCHCF(CF)O(CFCF(CF)O)n−1 (nは2〜6)、
CH=C(CH)COOCHCHNHCOOCHCF(CF)O(CFCF(CF)O)n−113 (nは2〜6)。
【0038】
CH=C(CH)COOCHCH(OH)CHOCHCFO(CFCFO)n−1CF (nは3〜9)、
CH=C(CH)COOCHCH(OH)CHOCHCF(CF)O(CFCF(CF)O)n−113 (nは2〜6)、
CH=C(CH)COOCHCH(OH)CHOCHCF(CF)O(CFCF(CF)O)n−1 (nは2〜6)。
【0039】
含フッ素樹脂におけるエチレン性二重結合とRf基(a)とを有する単量体に基づく単量体単位の含有量は、1〜95%等が好ましく、5〜80%がより好ましく、20〜60%がさらに好ましい。当該範囲であると含フッ素樹脂は良好な撥インク性を奏し、本発明の感光性樹脂組成物の現像性が良好となる。
【0040】
酸性基(b)を有する単量体として、カルボキシル基を有する単量体、フェノール性水酸基を有する単量体、スルホン酸基を有する単量体が挙げられる。
【0041】
カルボキシル基を有する単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、ビニル酢酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、ケイ皮酸、もしくはそれらの塩が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0042】
フェノール性水酸基を有する単量体としては、o−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン等が挙げられる。またこれらのベンゼン環の1個以上の水素原子が、メチル基、エチル基、n−ブチル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、n−ブトキシ基等のアルコキシ基、ハロゲン原子、アルキル基の1個以上の水素原子がハロゲン原子に置換されたハロアルキル基、ニトロ基、シアノ基、アミド基に置換された化合物等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0043】
スルホン酸基を有する単量体としては、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アリルオキシプロパンスルホン酸、(メタ)アクリル酸−2−スルホエチル、(メタ)アクリル酸−2−スルホプロピル、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロキシプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、もしくはそれらの塩等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0044】
含フッ素樹脂における酸性基(b)を有する単量体に基づく単量体単位の含有量は、0.1〜40%等が好ましく、0.5〜30%がより好ましく、1〜20%がさらに好ましい。当該範囲であると含フッ素樹脂は良好な撥インク性を奏し、感光性樹脂組成物の現像性が良好となる。
【0045】
含フッ素樹脂がエチレン性二重結合とRf基(a)とを有する単量体に基づく単量体単位と、エチレン性二重結合と酸性基(b)とを有する単量体に基づく単量体単位とを有する共重合体である場合、Rf基(a)及び酸性基(b)を有しない単量体(以下、「その他の単量体」という。)に基づく単量体単位を有していてもよい。
【0046】
その他の単量体としては、炭化水素系オレフィン類、ビニルエーテル類、イソプロペニルエーテル類、アリルエーテル類、ビニルエステル類、アリルエステル類、(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリルアミド類、芳香族ビニル化合物、クロロオレフィン類、フルオロオレフィン類、共役ジエン類が挙げられる。これらの化合物には、官能基が含まれていてもよく、例えば水酸基、カルボニル基、アルコキシ基、アミド基等が挙げられる。またポリシロキサン構造を有する基を有していてもよい。ただし、これらのその他の単量体に基づく単量体単位は、Rf基(a)及び酸性基(b)を有しない。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。特に(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリルアミド類が、本発明の感光性樹脂組成物から形成される塗膜の耐熱性に優れるので好ましい。
【0047】
含フッ素樹脂において、その他の単量体に基づく単量体単位の割合は80%以下が好ましく、70%以下がより好ましい。当該範囲であると本発明の感光性樹脂組成物の現像性が良好となる。
【0048】
本発明における含フッ素樹脂は、上記のエチレン性二重結合とRf基(a)とを有する単量体に基づく単量体単位と、エチレン性二重結合と酸性基(b)とを有する単量体に基づく単量体単位とを含む共重合体を合成することによって得られるほか、反応部位を有する重合体にRf基(a)を有する化合物及び/又は酸性基(b)を有する化合物を反応させる各種変性方法によっても得られる。
【0049】
反応部位を有する重合体にRf基(a)を有する化合物を反応させる各種変性方法としては、例えば、エポキシ基を有する単量体をあらかじめ共重合させ、後にRf基(a)とカルボキシル基を有する化合物を反応させる方法、エポキシ基を有する単量体をあらかじめ共重合させ、後にRf基(a)とヒドロキシル基を有する化合物を反応させる方法が挙げられる。
【0050】
エポキシ基を有する単量体の具体例としては、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアクリレートが挙げられる。
【0051】
Rf基(a)とカルボキシル基を有する化合物としては、下記式3で表される化合物が挙げられる。
【0052】
HOOC−Cp−12(p−1)−O−(C2p−O)n−1−C2q+1 ・・・式3
式3中、pは2又は3の整数、qは1〜20の整数、nは2〜50の整数を示す。
【0053】
Rf基(a)とヒドロキシル基を有する化合物としては、下記式4で表される化合物が挙げられる。
【0054】
HOCH−Cp−12(p−1)−O−(C2p−O)n−1−C2q+1 ・・・式4
式4中、pは2又は3の整数、qは1〜20の整数、nは2〜50の整数を示す。
【0055】
反応部位を有する重合体に酸性基(b)を有する化合物を反応させる各種変性方法としては、例えば、水酸基を有する単量体をあらかじめ共重合させ、後に酸無水物を反応させる方法が挙げられる。また、エチレン性二重結合を有する酸無水物をあらかじめ共重合させ、後に水酸基を有する化合物を反応させる方法が挙げられる。
【0056】
水酸基を有する単量体の具体例としては、ビニルフェノール、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、シクロヘキサンジオールモノビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルアリルエーテル、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ビス(ヒドロキシメチル)等が挙げられる。
【0057】
さらに、水酸基を有する単量体としては、末端が水酸基であるポリオキシアルキレン鎖を有する単量体であってもよい。例えば、CH=CHOCH10CHO(CO)H(ここで、gは1〜100の整数、以下同じ。)、CH=CHOCO(CO)H、CH=CHCOOCO(CO)H、CH=C(CH)COOCO(CO)H、CH=CHCOOCO(CO)(CO)H(ここで、hは0又は1〜100の整数であり、kは1〜100の整数であり、h+kは1〜100である。以下同じ。)、CH=C(CH)COOCO(CO)(CO)H等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0058】
酸無水物の具体例としては、無水フタル酸、無水3−メチルフタル酸、無水トリメリット酸等が挙げられる。
【0059】
エチレン性二重結合を有する酸無水物の具体例としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水メチル−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸、無水3,4,5,6−テトラヒドロフタル酸、無水cis−1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸、2−ブテン−1−イルスシニックアンハイドライド等が挙げられる。
【0060】
水酸基を有する化合物としては、1つ以上の水酸基を有している化合物であれば良く、前記に示した水酸基を有する単量体の具体例や、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、エチレングリコール等のアルコール類、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール等のセルソルブ類、2−(2−メトキシエトキシ)エタノール、2−(2−エトキシエトキシ)エタノール、2−(2−ブトキシエトキシ)エタノール等のカルビトール類等が挙げられる。分子内に1個の水酸基を有する化合物が好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0061】
含フッ素樹脂あるいは含フッ素樹脂の前駆体となる前記反応部位を有する重合体は、単量体を必要に応じて連鎖移動剤と共に、溶媒に溶解して加熱し、重合開始剤を加えて反応させる方法によって合成できる。
【0062】
次に、上記の含フッ素樹脂を含有する、本発明の感光性樹脂組成物について説明する。本発明の感光性樹脂組成物は、含フッ素樹脂(A)と、光酸発生剤(B)と、酸架橋剤(C)とを含有する感光性樹脂組成物である。また、本発明の感光性樹脂組成物は、含フッ素樹脂(A)と、光酸発生剤(B)と、酸架橋剤(C)と、アルカリ可溶性樹脂(D)とを含有する感光性樹脂組成物である。
【0063】
含フッ素樹脂(A)の配合量は、感光性樹脂組成物中の固形分に対し、0.01〜50%が好ましく、0.1〜30%がより好ましく、0.2〜10%が特に好ましい。当該範囲であると感光性樹脂組成物は良好な撥インク性、インク転落性を奏し、現像性が良好となる。
【0064】
光酸発生剤(B)は、光により酸を発生する化合物である。
光酸発生剤(B)としては、例えば、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、トリアジン系化合物、スルホニル化合物、スルホン酸エステル類等が挙げられる。
【0065】
ジアリールヨードニウム塩のカチオン部分の具体例としては、ジフェニルヨードニウム、4−メトキシフェニルフェニルヨードニウム、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム等が挙げられる。
【0066】
ジアリールヨードニウム塩のアニオン部分の具体例としては、トリフルオロメタンスルホネート、ノナフルオロブタンスルホネート、p−トルエンスルホネート、ペンタフルオロベンゼンスルホネート、ヘキサフルオロホスフェート、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロアンチモネート等が挙げられる。
【0067】
ジアリールヨードニウム塩は前記カチオン部分とアニオン部分とからなり、上記カチオン部分の具体例の1種とアニオン部分の具体例の1種との組み合わせからなる。例えば、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム トリフルオロメタンスルホネートが一例となる。
【0068】
トリアリールスルホニウム塩のカチオン部分の具体例としては、トリフェニルスルホニウム、ジフェニル−4−メチルフェニルスルホニウム、ジフェニル−2,4,6−トリメチルフェニルスルホニウム等が挙げられる。
【0069】
トリアリールスルホニウム塩のアニオン部分の具体例としては、前記ジアリールヨードニウム塩のアニオン部分の具体例が挙げられる。
【0070】
トリアリールスルホニウム塩は前記カチオン部分とアニオン部分とからなり、上記カチオン部分の具体例の1種とアニオン部分の具体例の1種との組み合わせからなる。例えば、トリフェニルスルホニウム トリフルオロメタンスルホネートが一例となる。
【0071】
トリアジン系化合物の具体例としては、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(2−フリル)エテニル−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(5−メチル−2−フリル)エテニル−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(3,4−ジメトキシフェニル)エテニル−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン等が挙げられる。
【0072】
スルホニル化合物の具体例としては、ビス(フェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(t−ブチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p−トルエンスルホニル)ジアゾメタン等が挙げられる。
【0073】
スルホン酸エステル類の具体例としては、2−ニトロベンジルp−トルエンスルホネート、α−(p−トルエンスルホニルオキシイミノ)−フェニルアセトニトリル等が挙げられる。
【0074】
光酸発生剤(B)の配合量は、感光性樹脂組成物中の固形分に対し、0.1〜30%が好ましく、1〜20%がより好ましい。当該範囲であると感光性樹脂組成物の現像性が良好となる。
【0075】
酸架橋剤(C)は、酸性基(c)と反応しうる基を2個以上有する化合物である。
酸架橋剤(C)としては、アミノ樹脂、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0076】
アミノ樹脂としては、メラミン系化合物、グアナミン系化合物、尿素系化合物等のアミノ基の一部もしくはすべてをヒドロキシメチル化した化合物、又は該ヒドロキシメチル化した化合物の水酸基の一部もしくはすべてをメタノール、エタノール、n−ブチルアルコール、2−メチル−1−プロパノール等でエーテル化した化合物、例えば、ヘキサメトキシメチルメラミン等が挙げられる。
【0077】
市販品としては、サイメル300、同301、同303、同325、同350、同370、同380、同1156、同1116、同1130、同1123、同1125、同1134、UFR−60、UFR−65(以上、三井サイアナミッド社製)、ニカラックMW−30M、同MW−30HM、同MW−30、同MW−22、同MW−100LM、同MS−21、同MS−11、同MW−24X、同MS−001、同MX−002、同MX−28、同MX−29、同MX−730、同MX−750、同MX−750LM、同MX−708、同MX−706、同MX−042、同MX−035、同MX−45、同MX−410、同MX−202、同BX−4000、同BX−37、同BL−60、同BX−55H、同N−2702(以上、三和ケミカル社製)、スミマールM−100C、同M−55、同M−40S、同M−50W、同M−40W、同M−30W、同MC−1、同MD−101、同M66−B、同M504C(以上、住友化学社製)等が挙げられる。
【0078】
エポキシ化合物としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノール・ノボラック型エポキシ樹脂、クレゾール・ノボラック型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂等のグリシジルエーテル類、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテルなどの脂環式エポキシ樹脂、ジグリシジルヘキサヒドロフタレート、ジグリシジルテトラヒドロフタレート、ジグリシジルフタレート等のグリシジルエステル類、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルパラアミノフェノール等のグリシジルアミン類、トリグリシジルイソシアヌレートなどの複素環式エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0079】
オキサゾリン化合物としては、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン等の重合性単量体の共重合体を挙げることができる。
【0080】
酸架橋剤(C)の配合量は、感光性樹脂組成物中の固形分に対し、1〜50%が好ましく、5〜30%がより好ましい。当該範囲であると感光性樹脂組成物の現像性が良好となる。
【0081】
アルカリ可溶性樹脂(D)は酸性基(b)を有し、かつ前記式1で表されるRf基(a)を有しない樹脂である。酸性基(b)、ポリフルオロアルキルエーテル構造を有する基(a)は、上記含フッ素樹脂において説明したものと同一である。
【0082】
アルカリ可溶性樹脂(D)の酸価は、10〜400mgKOH/gが好ましく、50〜300mgKOH/gがより好ましい。当該範囲であると本発明の感光性樹脂組成物の現像性が良好となる。
【0083】
アルカリ可溶性樹脂(D)の数平均分子量は、500以上20,000未満が好ましく、2,000以上15,000未満がより好ましい。当該範囲であると本発明の感光性樹脂組成物のアルカリ溶解性、現像性が良好となる。
【0084】
アルカリ可溶性樹脂(D)は、酸性基(b)を有する単量体に基づく単量体単位を含む重合体(DI)及びフェノール樹脂(DII)の群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0085】
酸性基(b)を有する単量体単位としては、上記含フッ素樹脂において説明した酸性基(b)を有する単量体が挙げられる。
【0086】
酸性基(b)を有する単量体に基づく単量体単位を含む重合体(DI)は、酸性基(b)を有する単量体以外のその他の単量体に基づく単量体単位を有していてもよい。
【0087】
その他の単量体としては、上記含フッ素樹脂において使用されるその他の単量体を使用することができる。
【0088】
酸性基(b)を有する単量体に基づく単量体単位を含む重合体(DI)において、その他の単量体単位の割合は90%以下が好ましい。この範囲であると本発明の感光性樹脂組成物のアルカリ溶解性、現像性が良好である。
【0089】
酸性基(b)を有する単量体に基づく単量体単位を含む重合体(DI)は、上記の酸性基(b)を有する単量体に基づく単量体単位を含む重合体を合成することにより得るほか、反応部位を有する重合体に酸性基(b)を有する化合物を反応させる各種変性方法によっても合成することによっても得ることができる。
【0090】
反応部位を有する重合体に酸性基(b)を有する化合物を反応させる各種変性方法は、上記含フッ素樹脂のところで説明した反応部位を有する重合体に酸性基(b)を有する化合物を反応させる各種変性方法と同様である。
【0091】
酸性基(b)を有する単量体に基づく単量体単位を含む重合体(DI)あるいは酸性基(b)を有する単量体に基づく単量体単位を含む重合体(DI)の前駆体となる反応部位を有する重合体は、単量体を必要に応じて連鎖移動剤と共に、溶媒に溶解して加熱し、重合開始剤を加えて反応させる方法により合成できる。
【0092】
本明細書におけるフェノール樹脂(DII)とは、フェノール類をアルデヒド類と重縮合して得られるものである。
【0093】
フェノール類の具体例としては、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,3−キシレノール、2,5−キシレノール、3,5−キシレノール、2,3,5−トリメチルフェノール、カテコール、レゾルシノール、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ピロガロール、フロログリシノール等が挙げられる。アルデヒド類としては、ホルムアルデヒドが好ましい。
【0094】
フェノール樹脂(DII)としては、フェノール・ホルムアルデヒド樹脂、クレゾール・ホルムアルデヒド樹脂、フェノール・クレゾール・ホルムアルデヒド共縮合樹脂等が好ましい。
【0095】
アルカリ可溶性樹脂(D)の配合量は、感光性樹脂組成物中の固形分に対し、10〜90%が好ましく、30〜80%がより好ましい。当該範囲であると本発明の感光性樹脂組成物の現像性が良好である。
【0096】
本発明の感光性樹脂組成物においては、必要に応じてシランカップリング剤(E)を使用することができる。シランカップリング剤を使用すると本発明の感光性樹脂組成物から形成される基材密着性が向上する。
【0097】
シランカップリング剤の具体例としては、テトラエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、へプタデカフルオロオクチルエチルトリメトキシシラン、ポリオキシアルキレン鎖含有トリエトキシシラン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0098】
本発明の感光性樹脂組成物においては、必要に応じて着色剤(F)を使用することができる。着色剤としては、染料、有機顔料、無機顔料、メタリック顔料等が例示される。顔料を使用することにより遮光性が得られることから、本発明の感光性樹脂に混合して、ブラックマトリックス等の遮光用塗膜として使用される。
【0099】
青の顔料としては、フタロシアニン系顔料等が、赤の顔料としては、キナクリドン系顔料、ペリレン系顔料、ピロロ・ピロール系顔料、アントラキノン系顔料等が、緑の顔料としては、ハロゲン化フタロシアニン系顔料がそれぞれ好ましい例として挙げられる。これらは、単独で用いるか、あるいは他の顔料を加えて調色しても構わない。また、ブラックマトリクス用顔料としては、カーボン、チタンカーボン、酸化鉄、アゾ系黒色顔料が使用される。これらは、単独で使用してもよいし2種以上を併用してもよい。
【0100】
顔料は、分散剤(例えば、ポリカプロラクトン系化合物、長鎖アルキルポリアミノアマイド系化合物等が使用される。)と共にサンドミル、ロールミル等の分散機によって分散され、その後、感光性樹脂組成物に加えてもよい。粒径は、1μm以下が好ましい。当該範囲であると本発明の感光性樹脂組成物の現像性が良好となる。
【0101】
本発明の感光性樹脂組成物においては、希釈剤(G)を使用することができる。希釈剤(G)の具体例としては、例えばエタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、エチレングリコール等のアルコール類、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール等のセルソルブ類、2−(2−メトキシエトキシ)エタノール、2−(2−エトキシエトキシ)エタノール、2−(2−ブトキシエトキシ)エタノール等のカルビトール類、メチルアセテート、エチルアセテート、n−ブチルアセテート、エチルラクテート、n−ブチルラクテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールジアセテート、グリセリントリアセテート等のエステル類、n−ブタン、n−ヘキサン等の鎖式炭化水素、シクロヘキサン等の環式飽和炭化水素、トルエン、キシレン、ベンジルアルコール等の芳香族炭化水素、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0102】
感光性樹脂組成物においては、塩基性化合物を使用することができる。塩基性化合物を使用することにより、レジスト膜中での酸の拡散速度が抑制されて、解像度が向上する場合がある。また、エネルギー線照射後に発生する酸を中和させる効果により、酸による基板やその他材料への悪影響を緩和する効果を有する。
【0103】
塩基性化合物としては、第一級、第二級、第三級の脂肪族アミン類、混成アミン類、芳香族アミン類、複素環アミン類、アミド誘導体、イミド誘導体等が挙げられる。
【0104】
感光性樹脂組成物においては、有機カルボン酸化合物を使用することができる。有機カルボン酸化合物を使用することにより、レジスト膜中での酸の拡散が促進されて、解像度及び感度が向上する場合がある。
【0105】
感光性樹脂組成物においては、増感剤が含有されていてもよい。増感剤としては、例えばフラボン類、ジベンジルアセトン類、ジベンジルシクロヘキサン類、カルコン類、キサントン類、チオキサントン類、ポルフィリン類、フタロシアニン類、アクリジン類、アントラセン類、ベンゾフェノン類、アセトフェノン類、クマリン類等を挙げることができる。増感剤を使用することにより、良好なパターン形状が得られる場合がある。
【0106】
感光性樹脂組成物においては、必要に応じて増粘剤、可塑剤、消泡剤、レベリング剤、ハジキ防止剤、紫外線吸収剤等を使用することができる。
【0107】
含フッ素樹脂(A)を含有する感光性樹脂組成物よりフォトレジストが得られる。本明細書においてフォトレジストとは、支持体や基板の上に塗られた感光性樹脂組成物より得られる塗膜をいう。
【0108】
以下、感光性樹脂組成物を使用したフォトリソグラフィー工程を述べる。
まずは、基材に感光性樹脂組成物を塗装する。基材としては、その材質は特に限定されるものではないが、例えば、各種ガラス板、熱可塑性プラスチックシート、熱硬化性プラスチックシート等を挙げることができる。熱可塑性プラスチックシートの具体例としては、ABS樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンエーテル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、フッ素樹脂、ウレタン樹脂、エラストマー等を挙げることができる。熱硬化性プラスチックシートの具体例としては、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ガラス繊維強化プラスチック等を挙げることができる。
【0109】
塗装方法としては、通常用いられる塗装方法が特に限定なく採用でき、スプレー法、ロールコート法、回転塗布法、バー塗布法などが挙げられる。
【0110】
次いで塗膜は、加熱される。加熱することによって、溶媒が揮発し、流動性のない塗膜が得られる。加熱条件は、各成分の種類、配合割合などによっても異なるが、好ましくは50〜150℃、10〜2,000秒間程度の幅広い範囲で使用できる。
【0111】
次に、エネルギー線を照射する。本発明におけるエネルギー線の具体例としては、可視光、紫外線、遠紫外線、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、Fエキシマレーザー、Krエキシマレーザー、KrArエキシマレーザー、Arエキシマレーザー等のエキシマレーザー、X線、電子線等が挙げられる。露光量は、1〜300mJ/cm程度が好ましい。
【0112】
次に、発生した酸の拡散を促進し、架橋反応を促進するため加熱を行う(以下、当該操作を「ポストエクスポージャーベーク」という。)。加熱条件は、各成分の種類、配合割合などによっても異なるが、好ましくは50〜150℃、10〜300秒間程度の幅広い範囲で使用できる。
【0113】
次に、現像を行う。現像液としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水などの無機アルカリ類;エチルアミン、n−プロピルアミンなどの第一級アミン類;ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミンなどの第二級アミン類;トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、N−メチルピロリドンなどの第三級アミン類;ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアルコールアミン類;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、コリンなどの第四級アンモニウム塩;ピロール、ピペリジン等の環状アミン類のアルカリ類からなるアルカリ水溶液を用いることができる。また上記アルカリ水溶液に、メタノール、エタノールなどの水溶性有機溶媒、界面活性剤などを適当量添加した水溶液を現像液として使用することもできる。
【0114】
現像時間は、30〜180秒間が好ましい。また現像方法は液盛り法、ディッピング法、スプレー法などのいずれでもよい。現像後、洗浄を行い、圧縮空気や圧縮窒素で風乾させることによって、基板上の水分を除去する。続いて、ホットプレート、オーブンなどの加熱装置により、好ましくは120〜250℃で、5〜90分間加熱処理(以下、ポストベーク処理と呼ぶ。)をすることによって、パターンが形成される。
【0115】
本発明の含フッ素樹脂は、化学増幅型感光性樹脂組成物に使用することができる。すなわち、光の照射により光酸発生剤(B)から酸が発生し、主に含フッ素樹脂(A)、酸架橋剤(C)及びアルカリ可溶性樹脂(D)が架橋され硬化し、現像によって光照射されていない部分が除去される。
【0116】
本発明における含フッ素樹脂の奏する優れた現像性の理由は、必ずしも明確ではないが以下のように考えられる。含フッ素樹脂は酸性基を有しているため、アルカリ水溶液に対する溶解性もしくは親和性を有している。特に、含フッ素樹脂の酸価が好ましくは1〜300(mgKOH/g)の場合、より好ましくは5〜200mgKOH/gの場合、さらに好ましくは10〜150mgKOH/gの場合、ライン又はドット部分に溶け残りの樹脂を発生させることがなく、微細なパターンを形成することが可能である。具体的には100μm以下のパターン形成に好ましく用いられ、50μm以下のパターン形成により好ましく用いられる。
【0117】
さらに、含フッ素樹脂の酸価がこの範囲であると、含フッ素樹脂(A)の酸架橋剤(C)及びアルカリ可溶性樹脂(D)との相溶性が良好であり、撥インク性及びインク転落性を充分発現し得るまで含フッ素樹脂(A)を多く配合しても、微細なパターンを形成することが可能である。
【0118】
本発明において、含フッ素樹脂(A)が優れた撥インク性、その持続性、インク転落性、その持続性を奏する理由は、必ずしも明確ではないが、含フッ素樹脂(A)におけるRf基(a)は撥インク性及びインク転落性を付与すると考えられる。含フッ素樹脂(A)における酸性基(b)は、アルカリ水溶液に対し溶解性又は親和性を有する。一方で、含フッ素樹脂(A)は露光によって感光した部分は架橋しアルカリ不溶となる。したがって、その後現像処理を施しても、感光した含フッ素樹脂(A)は現像液に溶解しない。さらにその後に洗浄工程を経た後も、撥インク性及びインク転落性を持続することができ得る。
【0119】
撥インク性は、水及びキシレンの接触角で見積もることができる。ガラス基板に形成されたパターンの塗膜部分表面の水及びキシレンの接触角(度)により評価される。接触角とは、固体と液体が接触する点における液体表面に対する接線と固体表面がなす角で、液体を含む方の角度で定義する。この角度が大きいほど塗膜の撥インク性が優れることを意味する。水の接触角は80度以上が好ましく、90度以上がより好ましい。また、キシレンの接触角は30度以上が好ましく、35度以上がより好ましい。
【0120】
撥インク持続性は、ガラス基板に形成されたパターンの塗膜部分をキシレンを染み込ませたガーゼで10回軽くこすった後の撥インク性により評価できる。
【0121】
インク転落性は、水及びキシレンの転落角で見積もることができる。水平に保持したガラス基板に形成されたパターンの塗膜部分表面に50μLの水又は10μLのキシレンを滴下し、ガラス基板の一辺を持ち上げて徐々に傾けていき、水滴又はキシレン滴が落下し始めたときのガラス基板表面と水平面との角度を転落角(度)として読み取る。この角度が小さいほど塗膜のインク転落性が優れることを意味する。水の転落角は35度以下が好ましく、25度以下がより好ましい。また、キシレンの転落角は30度以下が好ましく、20度以下がより好ましい。
【0122】
インク転落持続性は、ガラス基板に形成されたパターンの塗膜部分をキシレンを染み込ませたガーゼで10回軽くこすった後のインク転落性により評価できる。
【0123】
本発明の含フッ素樹脂又は感光性樹脂組成物は、インクを弾く性質が必要とされる用途に適用できる。例えば、液晶ディスプレイ用カラーフルター又は有機ELディスプレイ等の隔壁、半導体装置又は電気回路における配線パターン形成用の隔壁に好適に用いられる。
【実施例】
【0124】
以下に例1〜26に基づき説明するが、本発明はこれらに限定されない。以下において、特に断らない限り、部及び%は質量基準である。以下の各例において用いた化合物の略号を表1に示す。
【0125】
【表1】

【0126】
[例1]<CH=CHCOOCHCFO(CFCFO)CF(M1)の合成例>
(工程1−1)エステル化反応によるCHO(CHCHO)COCF(CF)OCFCF(CF)OCFCFCFの製造工程
温度計、撹拌機、還流管及び温度調節機を備えた内容量200mLのガラス製フラスコに、CHO(CHCHO)H(25.0g)、ジクロロペンタフルオロプロパン(20.0g)、フッ化ナトリウム(1.2g)及びピリジン(1.6g)を入れ、内温を10℃以下に保ちながら激しく撹拌して、窒素ガスをバブリングさせた。さらにFCOCF(CF)OCFCF(CF)OCFCFCF(46.6g)を、内温を5℃以下に保ちながら3時間かけて滴下した。その後、50℃で12時間、さらに室温で24時間撹拌して粗液を得た。得られた粗液を減圧ろ過し、ろ液を減圧乾燥機で50℃、ゲージ圧0.67kPaの条件下12時間乾燥した。得られた粗液をジクロロペンタフルオロプロパン(100mL)に溶解し、飽和重曹水(1L)で3回洗浄し、有機相を回収した。回収した有機相に硫酸マグネシウム(1.0g)を加え、12時間撹拌した。加圧ろ過により硫酸マグネシウムを除去し、エバポレーターにてジクロロペンタフルオロプロパンを留去し、室温で液状の化合物(55.2g)を得た。H−NMR、19F−NMR分析の結果、標記化合物が主たる生成物であることを確認した。
【0127】
(工程1−2)フッ素化反応によるCFO(CFCFO)COCF(CF)OCFCF(CF)OCFCFCFの製造工程
内容量3Lのハステロイ製オートクレーブに、トリクロロトリフルオロエタン(1560.0g)を入れて撹拌し、25℃に保った。オートクレーブガス出口には、20℃に保持した冷却器、NaFペレット充填層、及び−20℃に保持した冷却器を直列に設置した。
【0128】
なお、−20℃に保持した冷却器からは凝集した液をオートクレーブに戻すための液体返送ラインを設置した。窒素ガスを1時間吹き込んだ後、窒素ガスで10%に希釈したフッ素ガス(以下、「10%フッ素ガス」と記す。)を、流速24.8L/hで1時間吹き込んだ。
【0129】
次に、10%フッ素ガスを同じ流速で吹き込みながら、工程1−1で得た生成物(55.2g)をクロロトリフルオロエチレン(1,350g)に溶解させた溶液を30時間かけて注入した。
【0130】
次に、内温40℃に変更して、10%フッ素ガスを同じ流速で吹き込みながら、工程1−1で得た生成物の6.7%クロロトリフルオロエチレン溶液(12ml)を注入した。続けて、ベンゼンを1%溶解したトリクロロトリフルオロエタン溶液(6mL)を注入した。さらに、フッ素ガスを1時間吹き込んだ後、窒素ガスを1時間吹き込んだ。
【0131】
反応終了後、減圧乾燥にて、60℃で6時間溶媒を留去した後、室温で液体の生成物(89.5g)を得た。NMR分析の結果標記化合物が主たる生成物であることを確認した。
【0132】
(工程1−3)CFO(CFCFO)CFCOOCHの製造工程
スターラーチップを投入した300mLの丸底フラスコを十分に窒素置換した後、メタノール(36.0g)、フッ化ナトリウム(5.6g)及びジクロロペンタフルオロプロパン(50.0g)を入れ、工程1−2で得た生成物(89.5g)を滴下した後、室温でバブリングしながら激しく撹拌した。なお、丸底フラスコ出口は窒素シールした。
【0133】
8時間後、冷却管に真空ポンプを設置して系内を減圧に保ち、過剰のメタノール及び反応副生物を留去した。24時間後、室温で液体の生成物(59.3g)を得た。NMR分析の結果、標記化合物が主たる生成物であることを確認した。
【0134】
(工程1−4)エステル結合の還元反応によるCFO(CFCFO)CFCHOHの製造工程
スターラーチップを投入した300mLの丸底フラスコを充分に窒素置換した。2−プロパノール(30.0g)、ジクロロペンタフルオロプロパン(50.0g)及びテトラヒドロホウ酸ナトリウム(4.1g)を加えて、工程1−3で得た生成物(59.3g)をジクロロペンタフルオロプロパン(50.0g)に希釈して滴下し、室温で激しく撹拌した。なお、丸底フラスコ出口は窒素シールした。
【0135】
8時間後、冷却管に真空ポンプを設置して系内を減圧に保ち、溶媒を留去した。24時間後、1Lの丸底フラスコに移し、ジクロロペンタフルオロプロパン(100.0g)を投入し、撹拌しながら0.2規定塩酸水溶液(500.0g)を滴下した。滴下後、6時間撹拌を維持した。有機相を蒸留水(500.0g)で3回洗浄し、有機相を回収した。さらに、回収した有機相に硫酸マグネシウム(1.0g)を加え、12時間撹拌を行った。その後、加圧ろ過を行って硫酸マグネシウムを除去し、エバポレーターでジクロロペンタフルオロプロパンを留去し、室温で液状物質(56.7g)を得た。NMR分析の結果、標記化合物が主たる生成物であることを確認した。
【0136】
(工程1−5)CH=CHCOOCHCFO(CFCFO)CFの製造工程
温度計、撹拌機、還流管及び温度調節機を備えた300mLの丸底フラスコに、ジクロロペンタフルオロプロパン(100.0g)、工程1−4で得た生成物(20.0g)及びトリエチルアミン(2.2g)を入れ、窒素雰囲気下で撹拌しながら、アクリロイルクロライドの10%ジクロロペンタフルオロプロパン溶液(20.0g)を30℃で5時間かけて滴下し、さらに40℃で5時間撹拌を続けた。得られた反応液を2Lの三角フラスコに移し、水(1.0L)を加えて洗浄し水相を捨てた。これを3回繰り返し、ロータリーエバポレーターにて溶媒を留去し、液状物質(21.0g)を得た。NMR分析の結果、標記化合物が主たる生成物であることを確認した。
【0137】
[例2]<CH=CHCOOCHCFO(CFCFO)CF(M2)の合成例>
(工程2−1)CHO(CHCHO)COCF(CF)OCFCF(CF)OCFCFCFの製造工程
工程1−1におけるCHO(CHCHO)H(25.0g)をCHO(CHCHO)H(25.0g)に変更し、FCOCF(CF)OCFCF(CF)OCFCFCF(46.6g)をFCOCF(CF)OCFCF(CF)OCFCFCF(98.7g)に変更すること以外は工程1−1と同様の方法で反応を行うと、標記化合物が得られる。
【0138】
(工程2−2)フッ素化反応によるCFO(CFCFO)COCF(CF)OCFCF(CF)OCFCFCFの製造工程
工程1−2における工程1−1で得た生成物(55.2g)をクロロトリフルオロエチレン(1,350g)に溶解させた溶液を、工程2−1で得た生成物(97.6g)をクロロトリフルオロエチレン(1,350g)に溶解させた溶液に変更し、工程1−1で得た生成物の6.7%クロロトリフルオロエチレン溶液(12mL)を、工程2−1で得た生成物の6.7%クロロトリフルオロエチレン溶液(12mL)に変更すること以外は工程1−2と同様の方法で行うと、標記化合物が得られる。
【0139】
(工程2−3)CFO(CFCFO)CFCOOCHの製造工程
工程1−3における工程1−2で得た生成物(89.5g)を工程2−2で得た生成物(136.0g)に変更すること以外は工程1−3と同様の方法で行うと、標記化合物が得られる。
【0140】
(工程2−4)エステル結合の還元反応によるCFO(CFCFO)CFCHOHの製造工程
工程1−4における300mLの丸底フラスコを500mLの丸底フラスコに変更し、ジクロロペンタフルオロプロパン(50.0g)をジクロロペンタフルオロプロパン(100.に変更し、テトラヒドロホウ酸ナトリウム(4.1g)をテトラヒドロほう酸ナトリウム(7.6g)に変更し、工程1−3で得た生成物(59.3g)をジクロロペンタフルオロプロパン(50.0g)に希釈して滴下する方法を工程2−3で得た生成物(62.0g)をジクロロペンタフルオロプロパン(100.0g)に希釈して滴下する方法に変更すること以外は工程1−4と同様の方法で行うと、標記化合物が得られる。
【0141】
(工程2−5)CH=CHCOOCHCFO(CFCFO)CFの製造工程
工程1−5における300mLの丸底フラスコを500mLの丸底フラスコに変更し、工程1−4で得た生成物(20.0g)を工程2−4で得た生成物(57.0g)に変更し、トリエチルアミン(2.2g)をトリエチルアミン(15.9g)に変更し、アクリロイルクロライドの10%ジクロロペンタフルオロプロパン溶液(20.0g)をアクリロイルクロライドの10%ジクロロペンタフルオロプロパン溶液(142.0g)に変更すること以外は工程1−5と同様の方法で行うと、標記化合物が得られる。
【0142】
[例3]<CH=C(CH)COOCHCHNHCOOCHCFO(CFCFO)CF(M3)の合成例>
温度計、撹拌機、還流管及び温度調節機を備えた内容量300mLのガラス製フラスコに、ジクロロペンタフルオロプロパン(100.0g)、工程1−4で得た生成物(20.0g)、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(3.2g)、ジブチルスズジラウレート(16.0mg)、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(3.2mg)を入れ、40℃で24時間撹拌した。ロータリーエバポレーターで溶媒を留去し、液状物質(23.0g)を得た。NMR分析の結果、標記化合物が主たる生成物であることを確認した。
【0143】
[例4]<CH=CHCOOCHCFCFO(CFCFCFO)(M4)の合成例>
温度計、撹拌機、還流管及び温度調節機を備えた300mLのガラス製フラスコに、ジクロロペンタフルオロプロパン(150.0g)、HOCHCF(CF)O(CFCF(CF)O)CFCFCF(60.0g)、トリエチルアミン(6.2g)を仕込み、窒素雰囲気下に撹拌しながら、アクリロイルクロライドの10%ジクロロペンタフルオロプロパン溶液(56.0g)を30℃で5時間かけて滴下し、さらに40℃で5時間撹拌を継続する。得られる反応液を2Lの三角フラスコに移し、1.0Lの水を加えて洗浄し水相を捨てることを3回繰り返し、ロータリーエバポレーターで溶媒を留去すると、標記化合物が得られる。
【0144】
[例5]<含フッ素樹脂(A1)の合成例>
撹拌機を備えた内容積300mLのオートクレーブに、アセトン(140.0g)、M1(18.0g)、MAA(1.8g)、IBMA(24.0g)、2−HEMA(16.0g)、連鎖移動剤DSH(1.7g)及び重合開始剤V−70(0.9g)を入れ、窒素雰囲気下で撹拌しながら、40℃で18時間重合させ、含フッ素樹脂(A1)のアセトン溶液を得る。得られる含フッ素樹脂(A1)のアセトン溶液に水を加え再沈精製し、次いで石油エーテルで再沈精製し、真空乾燥すると、含フッ素樹脂(A1)が得られる。
【0145】
[例6〜9]<含フッ素樹脂(A2)〜(A5)の合成例>
各成分を表2に示す配合量に変更する以外は、例5と同様の方法により、含フッ素樹脂(A2)〜(A5)が得られる。
【0146】
(A1)〜(A5)の酸価(mgKOH/g)、フッ素含有量(%)は表2に示すようになる。
【0147】
[例10、11]<比較用樹脂(Z1)、(Z2)の合成例>
各成分を表2に示す配合量に変更する以外は、例5と同様の方法により、比較用樹脂(Z1)、(Z2)が得られる。酸価(mgKOH/g)、フッ素含有量(%)は表2に示すようになる。
【0148】
[例12]<アルカリ可溶性樹脂(D1)の合成例>
各成分を表2に示す配合量に変更する以外は、例5と同様の方法により、アルカリ可溶性樹脂(D1)が得られる。酸価(mgKOH/g)、フッ素含有量(%)は表2に示すようになる。
【0149】
<着色剤(F1)の調製>
カーボンブラック(20g)、分散剤としてポリカプロラクトン系化合物ディスパービック−161(ビックケミー社製、商品名ディスパービック−161)(4g)及びDEGDM(76g)を加え、サンドミルで分散すると、着色剤(F1)が得られる。
【0150】
【表2】

【0151】
[例13〜24]<感光性樹脂組成物の調製と評価>
表3に示す割合で、含フッ素樹脂(A)、比較用樹脂(Z)、光酸発生剤(B)、酸架橋剤(C)、アルカリ可溶性樹脂(D)、シランカップリング剤(E)、着色剤(F)、希釈剤(G)を配合し、孔径0.5μmのフィルターで加圧ろ過すると、感光性樹脂組成物が得られる。
【0152】
ガラス基板上にスピンナーを用いて、感光性樹脂組成物を塗布した後、100℃で2分間ホットプレート上でプリベークすると、膜厚3.0μmの塗膜が形成される。次に塗膜にマスク(ライン/スペ−ス=20μm/20μm)を接触させ、超高圧水銀灯により紫外線(150mJ/cm)を照射する。次に100℃で2分間PEB処理を行う。次に未露光部分を0.1%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に40秒間浸漬し現像し、未露光部を水により洗い流し、乾燥させる。次いで、ホットプレート上、220℃で1時間加熱することにより、パターンが形成されたガラス基板が得られる。
【0153】
これについて、撥インク性、撥インク持続性、インク転落性、インク転落持続性、現像性を評価すると、表3に示すようになる。撥インク性、撥インク持続性、インク転落性、インク転落持続性については性能が良好なものを○、劣るものを×と表記する。現像性については完全に現像できるものを○、現像されない部分があるものを×と表記する。例13〜20が実施例で、例21〜24が比較例である。
【0154】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0155】
本発明の含フッ素樹脂又は感光性樹脂組成物は、インクを弾く性質が必要とされる用途に適用できる。例えば、液晶ディスプレイ用カラーフルター又は有機ELディスプレイ等の隔壁、半導体装置又は電気回路における配線パターン形成用の隔壁に好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式1で表されるポリフルオロエーテル構造からなるRf基(a)と、酸性基(b)とを有し、酸価が1〜300mgKOH/gであり、フッ素原子の含有量が5〜40%であり、かつアルカリ水溶液に対して溶解性を有することを特徴とする含フッ素樹脂。
−(X−O)−Y ・・・式1
式1中、Xは、炭素数1〜10の2価飽和炭化水素基又は炭素数1〜10のフルオロ化された2価飽和炭化水素基であって、nで括られた単位毎に同一の基又は異なる基を示し、
Yは、水素原子(Yに隣接する酸素原子に隣接する炭素原子にフッ素原子が結合していない場合に限る)、炭素数1〜20の1価飽和炭化水素基又は炭素数1〜20のフルオロ化された1価飽和炭化水素基を示し、
nは2〜50の整数を示す。
ただし、式1におけるフッ素原子の総数は2以上である。
【請求項2】
エチレン性二重結合とRf基(a)とを有する単量体に基づく単量体単位と、エチレン性二重結合と酸性基(b)とを有する単量体に基づく単量体単位とを有する共重合体である請求項1に記載の含フッ素樹脂。
【請求項3】
前記エチレン性二重結合が、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、又はアリル基である請求項2に記載の含フッ素樹脂。
【請求項4】
前記エチレン性二重結合とRf基(a)とを有する単量体が、CH=CRCOOQRf、CH=CROCOQRf、CH=CROQRf、CH=CRCHOQRf、CH=CRCOOQNRSORf、CH=CRCOOQNRCORf、CH=CRCOOQNRCOOQRf、及びCH=CRCOOQOQRfからなる群から選ばれる少なくともひとつである請求項2に記載の含フッ素樹脂。
ただし、Rは水素原子又はメチル基、Qは単結合又は炭素数1〜6の2価有機基、Qは炭素数1〜6の2価有機基を示す。
【請求項5】
前記エチレン性二重結合とRf基(a)とを有する単量体に基づく単量体単位と、前記エチレン性二重結合と酸性基(b)とを有する単量体に基づく単量体単位と、前記Rf基(a)及び前記酸性基(b)を有しないその他の単量体に基づく単量体単位からなる共重合体であり、
前記その他の単量体は、官能基として水酸基、カルボニル基、アルコキシ基、アミド基のいずれかが含まれていてもよい、炭化水素系オレフィン類、ビニルエーテル類、イソプロペニルエーテル類、アリルエーテル類、ビニルエステル類、アリルエステル類、(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリルアミド類、芳香族ビニル化合物、クロロオレフィン類、フルオロオレフィン類、及び共役ジエン類からなる群から選ばれる単量体である請求項2〜4のいずれか一項に記載の含フッ素樹脂。
【請求項6】
前記エチレン性二重結合とRf基(a)とを有する単量体に基づく単量体単位の含有量が、1〜95%である請求項2〜5のいずれか一項に記載の含フッ素樹脂。
【請求項7】
前記酸性基(b)が、カルボキシル基、フェノール性水酸基、又はスルホン酸基である請求項1〜6のいずれか一項に記載の含フッ素樹脂。
【請求項8】
前記酸性基(b)を有する単量体に基づく単量体単位の含有量が、0.1〜40%である請求項2〜7のいずれか一項に記載の含フッ素樹脂。
【請求項9】
Rf基(a)が下記式2で表される基である請求項1〜8のいずれか一項に記載の含フッ素樹脂。
−Cp−12(p−1)O−(C2pO)n−1−C2q+1 ・・・式2
式2中、pは2又は3の整数を示し、nで括られた単位毎に同一の基であり、qは1〜20の整数、nは2〜50の整数を示す。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の含フッ素樹脂(A)と、光酸発生剤(B)と、前記酸性基(b)と反応し得る基を2個以上有する化合物である酸架橋剤(C)とを含有することを特徴とする感光性樹脂組成物。
【請求項11】
酸性基を有し、かつ前記式1で表されるポリフルオロエーテル構造からなるRf基(a)を有しないアルカリ可溶性樹脂(D)をさらに含有する請求項10に記載の感光性樹脂組成物。

【公開番号】特開2012−236999(P2012−236999A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−153346(P2012−153346)
【出願日】平成24年7月9日(2012.7.9)
【分割の表示】特願2008−287115(P2008−287115)の分割
【原出願日】平成15年7月18日(2003.7.18)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】