説明

含フッ素樹脂粒子分散液、含フッ素樹脂粒子分散液の製造方法、含フッ素樹脂粒子含有塗布液、含フッ素樹脂粒子含有被覆膜の製造方法、含フッ素樹脂粒子含有被覆膜および成形体

【課題】水酸基含有溶媒群の溶媒への含フッ素樹脂粒子の分散性を向上させる。
【解決手段】含フッ素樹脂粒子と、分子構造中に芳香環を含まない炭素数1以上10以下のアルコール系溶剤および水系媒体からなる水酸基含有溶媒群の内の少なくとも1種の溶媒に溶解せず、前記含フッ素樹脂粒子の表面に付着した樹脂と、前記水酸基含有溶媒群のうち前記樹脂を溶解しないものから選ばれる少なくとも1種であって、表面に前記樹脂が付着した前記含フッ素樹脂粒子を分散させる溶媒と、を含有する含フッ素樹脂粒子分散液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含フッ素樹脂粒子分散液、含フッ素樹脂粒子分散液の製造方法、含フッ素樹脂粒子含有塗布液、含フッ素樹脂粒子含有被覆膜の製造方法、含フッ素樹脂粒子含有被覆膜および成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
含フッ素樹脂粒子を塗布液中に混合し、塗料中に含フッ素樹脂粒子を分散させた塗布液が用いられている。一般的に含フッ素樹脂粒子は表面エネルギーが小さいために水やアルコール、有機溶剤などのいかなる溶媒ともなじみにくく安定な分散状態が保てないため、大量の界面活性剤を用いて分散される。また、近年では有機溶剤の環境負荷を低減するために、水、あるいは、アルコール系溶剤で使用されることが多くなっている。
【0003】
これら溶剤に含フッ素樹脂粒子を分散する方法としては、例えば、アルキルとオキシアルキレンからなるノニオン系界面活性剤を用いて分散する方法(例えば特許文献1参照)、パーフルオロアルキル基、またはパーフルオロポリエーテル基を有するノニオン系界面活性剤を用いて分散する方法(例えば特許文献2参照)、ノニオン系界面活性剤とさらに非イオン性水溶性高分子を添加する方法(例えば特許文献3参照)、フッ素樹脂粒子自身に官能基を導入する方法(例えば特許文献4参照)などが開示されている。
また、アルコール分散液が市販されており(例えば、KD−500AS、イソプロパノール分散液、(株)喜多村)またその他に、含フッ素樹脂粒子を分散させた電子写真感光体が開示されている(例えば特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−233345号公報
【特許文献2】特開平11−130927号公報
【特許文献3】特開2008−13669号公報
【特許文献4】特表2007−511657号公報
【特許文献5】特開2005−181396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、分子構造中に芳香環を含まない炭素数1以上10以下のアルコール系溶剤および水系媒体からなる水酸基含有溶媒群の内の少なくとも1種の溶媒に溶解しない樹脂が表面に付着していない場合に比べ、水酸基含有溶媒群の溶媒への含フッ素樹脂粒子の分散性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、以下の本発明によって達成される。
即ち、請求項1に係る発明は、
含フッ素樹脂粒子と、
分子構造中に芳香環を含まない炭素数1以上10以下のアルコール系溶剤および水系媒体からなる水酸基含有溶媒群の内の少なくとも1種の溶媒に溶解せず、前記含フッ素樹脂粒子の表面に付着した樹脂と、
前記水酸基含有溶媒群のうち前記樹脂を溶解しないものから選ばれる少なくとも1種であって、表面に前記樹脂が付着した前記含フッ素樹脂粒子を分散させる溶媒と、
を含有する含フッ素樹脂粒子分散液である。
【0007】
請求項2に係る発明は、
前記樹脂が、前記含フッ素樹脂粒子の表面に吸着している請求項1に記載の含フッ素樹脂粒子分散液である。
【0008】
請求項3に係る発明は、
前記水酸基含有溶媒群が、脂肪族アルコールと含フッ素アルコールとからなる請求項1または請求項2に記載の含フッ素樹脂粒子分散液である。
【0009】
請求項4に係る発明は、
分子構造中に芳香環を含まない炭素数1以上10以下のアルコール系溶剤および水系媒体からなる水酸基含有溶媒群の内の少なくとも1種の溶媒に溶解しない樹脂を、該樹脂を溶解し得る他の溶媒に溶解させる溶解工程と、
前記樹脂に含フッ素樹脂粒子を接触させて該含フッ素樹脂粒子の表面に前記樹脂を吸着させる吸着工程と、
表面に前記樹脂が吸着した前記含フッ素樹脂粒子を前記他の溶媒から分離する分離工程と、
分離された前記含フッ素樹脂粒子を、前記水酸基含有溶媒群のうち前記樹脂を溶解しないものから選ばれる少なくとも1種の溶媒に分散する分散工程と、
を有する含フッ素樹脂粒子分散液の製造方法である。
【0010】
請求項5に係る発明は、
分子構造中に芳香環を含まない炭素数1以上10以下のアルコール系溶剤および水系媒体からなる水酸基含有溶媒群の内の少なくとも1種の溶媒に溶解しない樹脂の原料となる反応性の単量体を、前記樹脂を溶解し得る他の溶媒に溶解させる溶解工程と、
前記単量体に含フッ素樹脂粒子を接触させて該含フッ素樹脂粒子の表面に前記単量体を吸着させる吸着工程と、
前記単量体を重合させて前記含フッ素樹脂粒子の表面に樹脂を形成する重合工程と、
表面に前記樹脂が形成された前記含フッ素樹脂粒子を前記他の溶媒から分離する分離工程と、
分離された前記含フッ素樹脂粒子を、前記水酸基含有溶媒群のうち前記樹脂を溶解しないものから選ばれる少なくとも1種の溶媒に分散する分散工程と、
を有する含フッ素樹脂粒子分散液の製造方法である。
【0011】
請求項6に係る発明は、
分子構造中に芳香環を含まない炭素数1以上10以下のアルコール系溶剤および水系媒体からなる水酸基含有溶媒群の内の少なくとも1種の溶媒に溶解しない樹脂の原料となる反応性の単量体を、前記水酸基含有溶媒群のうち前記樹脂を溶解せず且つ前記単量体を溶解し得るものから選ばれる少なくとも1種の溶媒に溶解させる溶解工程と、
前記単量体に含フッ素樹脂粒子を接触させて該含フッ素樹脂粒子の表面に前記単量体を吸着させる吸着工程と、
前記単量体を重合させて前記含フッ素樹脂粒子の表面に樹脂を形成する重合工程と、
を有する含フッ素樹脂粒子分散液の製造方法である。
【0012】
請求項7に係る発明は、
含フッ素樹脂粒子と、
分子構造中に芳香環を含まない炭素数1以上10以下のアルコール系溶剤および水系媒体からなる水酸基含有溶媒群の内の少なくとも1種の溶媒に溶解せず、前記含フッ素樹脂粒子の表面に付着した樹脂と、
前記水酸基含有溶媒群のうち前記樹脂を溶解しないものの中の少なくとも1種の溶媒に溶解し得るポリマーと、
前記水酸基含有溶媒群のうち前記樹脂を溶解せず且つ前記ポリマーを溶解し得るものから選ばれる少なくとも1種であって、表面に前記樹脂が付着した前記含フッ素樹脂粒子および前記ポリマーを分散させる溶媒と、
を含有する含フッ素樹脂粒子含有塗布液である。
【0013】
請求項8に係る発明は、
含フッ素樹脂粒子と、
分子構造中に芳香環を含まない炭素数1以上10以下のアルコール系溶剤および水系媒体からなる水酸基含有溶媒群の内の少なくとも1種の溶媒に溶解せず、前記含フッ素樹脂粒子の表面に付着した樹脂と、
前記水酸基含有溶媒群のうち前記樹脂を溶解しないものの中の少なくとも1種の溶媒に溶解し得る反応性のモノマーと、
前記水酸基含有溶媒群のうち前記樹脂を溶解せず且つ前記反応性のモノマーを溶解し得るものから選ばれる少なくとも1種であって、表面に前記樹脂が付着した前記含フッ素樹脂粒子および前記反応性のモノマーを分散させる溶媒と、
を含有する含フッ素樹脂粒子含有塗布液である。
【0014】
請求項9に係る発明は、
請求項7に記載の含フッ素樹脂粒子含有塗布液を基材表面に塗布し塗布膜を形成する塗布工程と、
該塗布膜を乾燥させ被覆膜を形成する乾燥工程と、
を有する含フッ素樹脂粒子含有被覆膜の製造方法である。
【0015】
請求項10に係る発明は、
請求項7に記載の含フッ素樹脂粒子含有塗布液を塗布して形成された塗布膜を乾燥させて製造された含フッ素樹脂粒子含有被覆膜である。
【0016】
請求項11に係る発明は、
請求項8に記載の含フッ素樹脂粒子含有塗布液を基材表面に塗布し塗布膜を形成する塗布工程と、
該塗布膜を乾燥し且つ前記反応性のモノマーを重合させて被覆膜を形成する重合工程と、
を有する含フッ素樹脂粒子含有被覆膜の製造方法である。
【0017】
請求項12に係る発明は、
請求項8に記載の含フッ素樹脂粒子含有塗布液を塗布して形成された塗布膜を乾燥し且つ前記反応性のモノマーを重合させて製造された含フッ素樹脂粒子含有被覆膜である。
【0018】
請求項13に係る発明は、
基材と、該基材上に請求項10または請求項12に記載の含フッ素樹脂粒子含有被覆膜と、を備えた成形体である。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に係る発明によれば、分子構造中に芳香環を含まない炭素数1以上10以下のアルコール系溶剤および水系媒体からなる水酸基含有溶媒群の内の少なくとも1種の溶媒に溶解しない樹脂が表面に付着していない場合に比べ、上記水酸基含有溶媒群の溶媒への含フッ素樹脂粒子の分散性が向上される。
【0020】
請求項2に係る発明によれば、含フッ素樹脂粒子の表面に樹脂が吸着していない場合に比べ、上記水酸基含有溶媒群の溶媒への含フッ素樹脂粒子の分散性が向上される。
【0021】
請求項3に係る発明によれば、脂肪族アルコールおよび含フッ素アルコールの内の少なくとも1種に溶解しない樹脂が表面に付着していない場合に比べ、脂肪族アルコールおよび含フッ素アルコールへの含フッ素樹脂粒子の分散性が向上される。
【0022】
請求項4に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べ、水酸基含有溶媒群の溶媒への分散性が向上され且つ長期の耐候性に優れた含フッ素樹脂粒子分散液を製造し得る。
【0023】
請求項5に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べ、水酸基含有溶媒群の溶媒への分散性が向上され且つ長期の耐候性に優れた含フッ素樹脂粒子分散液を製造し得る。
【0024】
請求項6に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べ、水酸基含有溶媒群の溶媒への分散性が向上された含フッ素樹脂粒子分散液を製造し得る。
【0025】
請求項7に係る発明によれば、分子構造中に芳香環を含まない炭素数1以上10以下のアルコール系溶剤および水系媒体からなる水酸基含有溶媒群の内の少なくとも1種の溶媒に溶解しない樹脂が表面に付着していない場合に比べ、上記水酸基含有溶媒群の溶媒への含フッ素樹脂粒子の分散性が向上される。
【0026】
請求項8に係る発明によれば、分子構造中に芳香環を含まない炭素数1以上10以下のアルコール系溶剤および水系媒体からなる水酸基含有溶媒群の内の少なくとも1種の溶媒に溶解しない樹脂が表面に付着していない場合に比べ、上記水酸基含有溶媒群の溶媒への含フッ素樹脂粒子の分散性が向上される。
【0027】
請求項9に係る発明によれば、分子構造中に芳香環を含まない炭素数1以上10以下のアルコール系溶剤および水系媒体からなる水酸基含有溶媒群の内の少なくとも1種の溶媒に溶解しない樹脂が表面に付着していない場合に比べ、含フッ素樹脂粒子をムラなく含有した被覆膜を製造し得る。
【0028】
請求項10に係る発明によれば、分子構造中に芳香環を含まない炭素数1以上10以下のアルコール系溶剤および水系媒体からなる水酸基含有溶媒群の内の少なくとも1種の溶媒に溶解しない樹脂が表面に付着していない場合に比べ、含フッ素樹脂粒子をムラなく含有した被覆膜が提供される。
【0029】
請求項11に係る発明によれば、分子構造中に芳香環を含まない炭素数1以上10以下のアルコール系溶剤および水系媒体からなる水酸基含有溶媒群の内の少なくとも1種の溶媒に溶解しない樹脂が表面に付着していない場合に比べ、含フッ素樹脂粒子をムラなく含有した被覆膜を製造し得る。
【0030】
請求項12に係る発明によれば、分子構造中に芳香環を含まない炭素数1以上10以下のアルコール系溶剤および水系媒体からなる水酸基含有溶媒群の内の少なくとも1種の溶媒に溶解しない樹脂が表面に付着していない場合に比べ、含フッ素樹脂粒子をムラなく含有した被覆膜が提供される。
【0031】
請求項13に係る発明によれば、分子構造中に芳香環を含まない炭素数1以上10以下のアルコール系溶剤および水系媒体からなる水酸基含有溶媒群の内の少なくとも1種の溶媒に溶解しない樹脂が表面に付着していない場合に比べ、含フッ素樹脂粒子をムラなく含有した被覆膜を備えた成形体が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0033】
<含フッ素樹脂粒子分散液>
本実施形態に係る含フッ素樹脂粒子分散液は、含フッ素樹脂粒子と、分子構造中に芳香環を含まない炭素数1以上10以下のアルコール系溶剤および水系媒体からなる水酸基含有溶媒群の内の少なくとも1種の溶媒に溶解せず、前記含フッ素樹脂粒子の表面に付着した樹脂と、前記水酸基含有溶媒群のうち前記樹脂を溶解しないものから選ばれる少なくとも1種であって、表面に前記樹脂が付着した前記含フッ素樹脂粒子を分散させる溶媒と、を含有してなる。
【0034】
含フッ素樹脂粒子を前記水酸基含有溶媒群の溶媒に分散させ安定化を図る際には、基本的には分散剤が添加され分散させる溶媒に溶解させて使用することから、多量の上記アルコール系溶剤または水系媒体に溶解し得る極性基を有するものを用いる必要があった。一方、前記水酸基含有溶媒群の溶媒に溶解しない樹脂(以下「特定樹脂」と称す)を分散剤として用いる場合、含フッ素樹脂粒子の表面に付着させない状態で上記特定樹脂を溶解しない溶媒中にそれぞれ分散させようとしても、前記特定樹脂がそもそも溶媒に不溶であるために分散しない。
しかし本実施形態では、前記特定樹脂が含フッ素樹脂粒子の表面に付着した状態であるために上記溶媒に対する親和性が高められ、その結果優れた分散性が得られるものと推察される。
【0035】
ここで、特定樹脂が前記水酸基含有溶媒群の溶媒に対して溶解しないか否か(溶解性)の確認は、以下の試験方法によって行なわれる。
−溶解性の確認テスト方法−
上記溶解性は、あらかじめ水酸基含有溶媒群の溶媒の表面張力を測定し、さらに特定樹脂を該水酸基含有溶媒群の溶媒に対し5質量%加えて5時間攪拌処理した後の表面張力を測定し、特定樹脂添加前後の表面張力の変化率が10%未満のものを「溶解しない」ものと定義する。
また、後述の(製造方法2)によって製造する場合には、表面に樹脂が形成された含フッ素樹脂粒子を他の溶媒から分離し、乾燥した該含フッ素樹脂粒子を水酸基含有溶媒群の溶媒に対し5質量%加えて5時間攪拌処理した後の表面張力を測定し、表面に樹脂が形成された含フッ素樹脂粒子添加前後の表面張力の変化率が10%未満のものを「溶解しない」ものと定義する。
尚、表面張力計としては、例えば協和界面科学(株)社製:表面張力計DY−700が用いられる。
【0036】
また、上記「付着」とは、含フッ素樹脂粒子の表面に特定樹脂が化学的または物理的に結合していることを指し、具体的には含フッ素樹脂粒子の表面に特定樹脂が吸着している場合および化学結合している場合を含む概念である。
尚、吸着とは、ファンデルワールス力による物理吸着を表し、含フッ素樹脂粒子の表面に特定樹脂が接して該表面における特定樹脂の濃度が大きくなっている状態を表す。
【0037】
以下、本実施形態に係る含フッ素樹脂粒子分散液を構成する各組成物や製造方法について詳細に説明する。
【0038】
−含フッ素樹脂粒子−
含フッ素樹脂粒子としては、フルオロオレフィンのホモポリマーや、2種以上の共重合体であって、フルオロオレフィンの1種または2種以上と非フッ素系のモノマーとの共重合体が用いられる。
【0039】
フルオロオレフィンとしては、例えばテトラフルオロエチレン(TFE)、パーフルオロビニルエーテル、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)などのパーハロオレフィン、フッ化ビニリデン(VdF)、トリフルオロエチレン、フッ化ビニルなどの非パーフルオロオレフィン等が挙げられ、VdF、TFE、CTFE、HFPなどが好ましい。
【0040】
また上記非フッ素系のモノマーとしては、例えばエチレン、プロピレン、ブテンなどのハイドロカーボン系オレフィン、シクロヘキシルビニルエーテル(CHVE)、エチルビニルエーテル(EVE)、ブチルビニルエーテル、メチルビニルエーテルなどのアルキルビニルエーテル、ポリオキシエチレンアリルエーテル(POEAE)、エチルアリルエーテルなどのアルケニルビニルエーテル、ビニルトリメトキシシラン(VSi)、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(メトキシエトキシ)シランなどの反応性α,β−不飽和基を有する有機ケイ素化合物、アクリル酸メチル、アクリル酸エチルなどのアクリル酸エステル、メタアクリル酸メチル、メタクリル酸エチルなどのメタアクリル酸エステル、酢酸ビニル、安息香酸ビニル、「ベオバ」(商品名、シェル社製のビニルエステル)などのビニルエステルなどが挙げられ、アルキルビニルエーテル、アリルビニルエーテル、ビニルエステル、反応性α,β−不飽和基を有する有機ケイ素化合物が好ましい。
【0041】
これらのうち、フッ素化率の高いものが好ましく、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(PFA)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)などが好ましい。これらのうちでも、PTFE、FEP、PFAが特に好ましい。
【0042】
含フッ素樹脂粒子は、例えばフッ素系単量体を乳化重合などの方法で製造した粒子(フッ素樹脂水性分散液)をそのまま使用してもよく、十分に水洗した後に乾燥したものを使用してもよい。
含フッ素樹脂粒子の平均粒子径としては0.01μm以上100μm以下が好ましく、特に0.03μm以上5μm以下であることが好ましい。
【0043】
含フッ素樹脂粒子は、市販で入手したものを用いてもよく、例えばPTFE粒子としては、フルオンL173JE(旭ガラス社製)、ダニイオンTHV−221AZ、ダニイオン9205(住友3M社製)、ルブロンL2、ルブロンL5(ダイキン社製)などが挙げられる。
【0044】
−水酸基含有溶媒群の内の少なくとも1種の溶媒に溶解しない樹脂−
本実施形態の含フッ素樹脂粒子分散液においては、前記含フッ素樹脂粒子の表面に、水酸基含有溶媒群の内の少なくとも1種の溶媒に溶解しない樹脂(特定樹脂)が付着してなる。尚、特定樹脂が前記水酸基含有溶媒群の溶媒に対して溶解しないか否か(溶解性)は、前述の試験方法によって確認される。
【0045】
尚、上記特定樹脂は、界面活性作用を有していることが好ましく、つまり分子内に親水基と疎水基とを持つ物質であることが好ましい。
【0046】
水酸基含有溶媒群の内の少なくとも1種の溶媒に溶解しない樹脂(特定樹脂)としては、以下の反応性の単量体を重合した樹脂が挙げられる。
具体的には、パーフルオロアルキル基を有するアクリレートと、フッ素を有さないモノマーと、のランダムまたはブロック共重合体、メタクリレートホモポリマーおよび前記パーフルオロアルキル基を有するアクリレートと、前記フッ素を有さないモノマーと、のランダムまたはブロック共重合体、メタクリレートと、前記フッ素を有さないモノマーと、のランダムまたはブロック共重合体が挙げられる。
尚、パーフルオロアルキル基を有するアクリレートとしては、例えば2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルメタクリレート、2−(パーフルオロブチル)エチルメタクリレート、3−(パーフルオロブチル)−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−(パーフルオロヘキシル)エチルメタクリレート、3−パーフルオロヘキシル−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、1H,1H,3H−テトラフルオロプロピルメタクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルメタクリレート、1H,1H,7H−ドデカフルオロヘプチルメタクリレート、1H−1−(トリフルオロメチル)トリフルオロエチルメタクリレート、1H,1H,3H−ヘキサフルオロブチルメタクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルアクリレート、2−(パーフルオロブチル)エチルアクリレート、3−(パーフルオロブチル)−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレート、3−パーフルオロヘキシル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、1H,1H,3H−テトラフルオロプロピルアクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルアクリレート、1H,1H,7H−ドデカフルオロヘプチルアクリレート、1H−1−(トリフルオロメチル)トリフルオロエチルアクリレート、および1H,1H,3H−ヘキサフルオロブチルアクリレートが挙げられる。
また、フッ素を有さないモノマーとしては、例えば、イソブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、イソボルニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ベンジルアクリレート、エチルカルビトールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、フェノキシポリエチレングリコールメタクリレート、ヒドロキシエチルo−フェニルフェノールアクリレート、o−フェニルフェノールグリシジルエーテルアクリレート、エチレングリコールモノアクリレート、ジエチレングリコールモノアクリレート、トリエチレングリコールモノアクリレート、ヘキサエチレングリコールモノアクリレート、エチレングリコールモノメタクリレート、ジエチレングリコールモノメタクリレート、トリエチレングリコールモノメタクリレート、およびヘキサエチレングリコールモノメタクリレートが挙げられる。
またその他に、米国特許5637142号明細書、特許第4251662号明細書、特許第4251662号明細書などに開示されたブロックまたはブランチポリマーなどが挙げられる。
【0047】
尚、含フッ素樹脂粒子の表面に上記特定樹脂を付着させる方法としては、上記特定樹脂を直接含フッ素樹脂粒子の表面に付着させてもよいし(物理的な結合)、まず上記の単量体を含フッ素樹脂粒子の表面に吸着させた後に重合を行なって、含フッ素樹脂粒子の表面に前記特定樹脂を形成させてもよい(化学的な結合)。
【0048】
−水酸基含有溶媒群−
本実施形態に係る含フッ素樹脂粒子分散液では、表面に前記特定樹脂が付着した前記含フッ素樹脂粒子を分散させるための溶媒として、分子構造中に芳香環を含まない炭素数1以上10以下のアルコール系溶剤および水系媒体からなる水酸基含有溶媒群の内の少なくとも1種の溶媒が用いられる。
これら水酸基含有溶媒群に属する溶媒としては、例えば水等の水系媒体、メタノール、エタノール、プロパノール、t−ブタノール、シクロヘキサノール、フルフリルアルコールなどの、未分岐、分岐および環状脂肪族アルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール類、メチルセロソルブなどのセロソルブ類、フェノール、ベンジルアルコールなどの芳香族類などが挙げられる。
また、フッ素含有アルコールとしては2,2,2−トリフルオロエタノール、2−フルオロエタノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロパノール、1,1,3−トリヒドロテトラフルオロペンタノール、2−ヒドロ−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、1,1,3−トリヒドロヘキサフルオロブタノール、1,1,5−トリヒドロテトラフルオロペンタノール、2,2−ビス(トリフルオロメチル)プロパノール、2−(パーフルオロブチル)エタノール、2−パーフルオロプロポキシ−2,3,3,3−テトラフルオロプロパノール、3−パーフルオロブチル−2−ヨードプロパノール、2−(パーフルオロ−3−メチルブチル)エタノール、1,1,7−トリヒドロドデカフルオロヘプタノール、6−(パーフルオロエチル)ヘキサノール、1,1−ジヒドロヘプタフルオロブタノール、2−(パーフルオロヘキシル)エタノール、3−(パーフルオロヘキシル)プロパノール、3−パーフルオロヘキシル−2−ヨードプロパノール、6−(パーフルオロ−1−メチルエチル)ヘキサノール、2−(パーフルオロ−5−メチルヘキシル)エタノール、1,1,9トリヒドロヘキサデカフルオロノナノール、6−(パーフルオロブチル)ヘキサノール、2−(パーフルオロオクチル)エタノール、3−(パーフルオロ−5−メチルヘキシル)−2−ヨードプロパノール、3−(パーフルオロオクチル)プロパノール、3−パーフルオロオクチル−2−ヨードプロパノール、6−(パーフルオロ−3−メチルブチル)ヘキサノール、2−(パーフルオロ−7−メチルオクチル)エタノール、6−(パーフルオロヘキシル)ヘキサノール、2−(パーフルオロデシル)エタノール、3−(パーフルオロ−7−メチルオクチル)−2−ヨードプロパノール、6−(パーフルオロ−5−メチルヘキシル)ヘキサノール、2−(パーフルオロ−9−メチルデシル)エタノール、6−(パーフルオロオクチル)ヘキサノール、および6−(パーフルオロ−7−メチルデシル)エタノール等の含フッ素アルコールが挙げられる。
尚、乾燥時間の点から沸点が150℃以下のものが好ましい。
【0049】
−界面活性剤−
本実施形態に係る含フッ素樹脂粒子分散液では、界面活性剤を添加してもよい。但し、その量としては極力少ないことが好ましく、含フッ素樹脂粒子1質量部に対し、0質量部以上0.1質量部以下が好ましく、更に0質量部以上0.05質量部以下がより好ましく、0質量部以上0.03質量部以下が特に好ましい。
【0050】
界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤が好ましく、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルエステル類、ソルビタンアルキルエステル類、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル類、グリセリンエステル類およびその誘導体などが挙げられる。
【0051】
またフッ素を含有する界面活性剤でもよく、例えばサーフロンS−611、サーフロンS−385(AGCセイミケミカル社製)、フタージェント730FL、フタージェント750FL(ネオス社製)、PF−636、PF−6520(北村化学社製)、メガファックEXP,TF−1507、メガファックEXP、TF−1535(DIC社製)、FC−4430、FC−4432(3M社製)などが挙げられる。
【0052】
<含フッ素樹脂粒子分散液の製造方法>
本実施形態に係る含フッ素樹脂粒子分散液の製造方法としては、特に限定されるものではないが、例えば以下の3通りの方法が挙げられる。
【0053】
(製造方法1)
以下の各工程を有する製造方法。
・溶解工程
分子構造中に芳香環を含まない炭素数1以上10以下のアルコール系溶剤および水系媒体からなる水酸基含有溶媒群の内の少なくとも1種の溶媒に溶解しない樹脂を、該樹脂を溶解し得る他の溶媒に溶解させる
・吸着工程
前記樹脂に含フッ素樹脂粒子を接触させて該含フッ素樹脂粒子の表面に前記樹脂を吸着させる
・分離工程
表面に前記樹脂が吸着した前記含フッ素樹脂粒子を前記他の溶媒から分離する
・分散工程
分離された前記含フッ素樹脂粒子を、前記水酸基含有溶媒群のうち前記樹脂を溶解しないものから選ばれる少なくとも1種の溶媒に分散する
上記製造方法1によって、表面に物理的に樹脂を吸着させた含フッ素樹脂粒子が分散された分散液が得られる。
【0054】
(製造方法2)
以下の各工程を有する製造方法。
・溶解工程
分子構造中に芳香環を含まない炭素数1以上10以下のアルコール系溶剤および水系媒体からなる水酸基含有溶媒群の内の少なくとも1種の溶媒に溶解しない樹脂の原料となる反応性の単量体を、前記樹脂を溶解し得る他の溶媒に溶解させる
・吸着工程
前記単量体に含フッ素樹脂粒子を接触させて該含フッ素樹脂粒子の表面に前記単量体を吸着させる
・重合工程
前記単量体を重合させて前記含フッ素樹脂粒子の表面に樹脂を形成する
・分離工程
表面に前記樹脂が形成された前記含フッ素樹脂粒子を前記他の溶媒から分離する
・分散工程
分離された前記含フッ素樹脂粒子を、前記水酸基含有溶媒群のうち前記樹脂を溶解しないものから選ばれる少なくとも1種の溶媒に分散する
上記製造方法2によって、含フッ素樹脂粒子の表面で反応性の単量体を化学的に重合させ、樹脂を化学的に結合させた含フッ素樹脂粒子が分散された分散液が得られる。
【0055】
(製造方法3)
以下の各工程を有する製造方法。
・溶解工程
分子構造中に芳香環を含まない炭素数1以上10以下のアルコール系溶剤および水系媒体からなる水酸基含有溶媒群の内の少なくとも1種の溶媒に溶解しない樹脂の原料となる反応性の単量体を、前記水酸基含有溶媒群のうち前記樹脂を溶解せず且つ前記単量体を溶解し得るものから選ばれる少なくとも1種の溶媒に溶解させる
・吸着工程
前記単量体に含フッ素樹脂粒子を接触させて該含フッ素樹脂粒子の表面に前記単量体を吸着させる
・重合工程
前記単量体を重合させて前記含フッ素樹脂粒子の表面に樹脂を形成する
【0056】
尚、上記(製造方法1)および(製造方法2)により得られた含フッ素樹脂粒子分散液は、一旦含フッ素樹脂粒子の表面に特定樹脂を吸着させて上記他の溶媒から分離した後に、改めて水酸基含有溶媒群の溶媒に分散しているため、含フッ素樹脂粒子に付着していない前記特定樹脂(以下「遊離した樹脂」と称す)が存在しないまたは遊離した樹脂の存在が極めて抑制された分散液となる。
含フッ素樹脂粒子分散液中に前記遊離した樹脂が存在する場合、この遊離した樹脂は特に湿度の影響を受けやすいため、分散液における特性の変動が起こりやすい。しかし、上記方法によれば、特に湿度の影響を受けやすい遊離した樹脂の存在が抑制されるため、長期の耐候性に優れ且つ分散性に優れた含フッ素樹脂粒子分散液となるものと推察される。
【0057】
ここで、上記遊離した樹脂の存在(樹脂の乖離の有無)の確認方法は、上記溶媒の表面張力を測定することで容易に判別し得る。即ち、溶媒のみの状態での表面張力(STs(mN/m))と、上記特定樹脂が付着した含フッ素樹脂粒子を分散した後の溶媒の表面張力(STp(mN/m))を、市販の表面張力計(本明細書においては、協和界面科学(株)社製、表面張力計:DY−700を使用)にて測定し、|STs−STp|/STs≦0.05であれば遊離はないものと判断される。
【0058】
−製造方法1による製造−
・溶解工程および吸着工程
前記特定樹脂を溶解し得る他の溶媒としては、特定樹脂の溶解度が10質量%以上である溶媒であればいかなる溶媒も使用し得る。尚、上記溶解度は、特定樹脂を他の溶媒に加え、特定樹脂と他の溶媒との全体の質量を秤量した後、十分な時間攪拌処理してからろ過し、ろ液の質量を秤量し、攪拌前の全体の質量とろ過後のろ液の質量から未溶解分の樹脂の質量を測定することで、算出される。
【0059】
好適な他の溶媒は樹脂によって異なるが、例えば、トルエン、キシレンなどの芳香族、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系、ヘキサン、オクタン、シクロヘキサンなどの炭化水素系、N,N−ジメチルホルムアミドなどのアミド系、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド系、などの溶媒が挙げられる。尚、水酸基含有溶媒群の溶媒と任意の割合で混合し得るものが好ましく、沸点が180℃以下であるものが好ましく、更には150℃以下のものがより好ましい。
【0060】
上記他の溶媒は、特定樹脂1質量部に対し1質量部以上1000質量部以下が好ましく、2質量部以上800質量部以下がより好ましく、5質量部以上700質量部以下が特に好ましい。
【0061】
特定樹脂の量は、含フッ素樹脂粒子表面への吸着性に依存するが、含フッ素樹脂粒子1質量部に対し0.001質量部以上10質量部以下が好ましく、0.005質量部以上8質量部以下がより好ましく、0.01質量部以上5質量部以下が特に好ましい。
【0062】
処理方法としては、特定樹脂を溶解した上記他の溶媒に含フッ素樹脂粒子を加え、好ましくは0℃以上他の溶媒の沸点以下、より好ましくは10℃以上100℃以下、特に好ましくは10℃以上50℃以下で、攪拌、超音波照射、ペイントシェーカーなどでの振とう、ホモジナイーザーなどでの分散を行いながら接触させることが好ましい。
【0063】
尚、接触時間は5分以上48時間以下が好ましく、10分以上24時間以下で行うことがより好ましい。吸着状態を、表面張力計などで溶媒の表面張力の変化を観察しつつ、変化しなくなった時点で終了することが好ましい。
【0064】
・分離工程および分散工程
吸着工程後の他の溶媒から特定樹脂が吸着した含フッ素樹脂粒子を分離する方法としては、デカンテーション、ろ過、遠心分離などが挙げられ、この操作で含フッ素樹脂粒子に吸着されなかった余剰の特定樹脂が分離される。この含フッ素樹脂粒子を乾燥させても良いが、乾燥させることなく、水酸基含有溶媒群のうち前記樹脂を溶解しないものから選ばれる少なくとも1種の溶媒に加え分散させることがより好ましい。こうして、遊離した樹脂の存在が抑制された含フッ素樹脂粒子分散液が得られる。
【0065】
−製造方法2による製造−
・溶解工程および吸着工程
樹脂(特定樹脂)を溶解し得る他の溶媒としては、前記製造方法1に用いたものが用いられる。また、上記反応性の単量体としては、前述の「−水酸基含有溶媒群の内の少なくとも1種の溶媒に溶解しない樹脂−」の項において列挙した反応性の単量体が用いられる。
【0066】
尚、上記製造方法2に用いられる反応性の単量体によって合成される特定樹脂(I)と、該特定樹脂を溶解しない水酸基含有溶媒群の溶媒(II)と、該特定樹脂を溶解し得る他の溶媒(III)との具体的な組合せとしては、例えば以下の組合せが挙げられる((I)(II)(III)の順に記載)。
・ヒドロキシエチルメタクリレートと2−(パーフルオロヘキシル)エチルメタクリレートとの共重合体,シクロペンタノール,トルエン
・2−(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレートとヘキサエチレングリコールモノアクリレートとの共重合体、n−ブタノール、テトラヒドロフラン
・2−(パーフルオロブチル)エチルメタクリレートとスチレンとヘキサエチレングリコールモノアクリレートとの共重合体、n−プロパノール、テトラヒドロフラン
【0067】
他の溶媒の量としては、特定樹脂1質量部の原料となる前記反応性の単量体に対し1質量部以上1000質量部以下が好ましく、2質量部以上800質量部以下がより好ましく、5質量部以上700質量部以下が特に好ましい。
【0068】
反応性の単量体の量としては、含フッ素樹脂粒子表面への吸着性に依存するが、含フッ素樹脂粒子1質量部に対し0.001質量部以上10質量部以下の特定樹脂の原料となる反応性の単量体の量とすることが好ましく、0.005質量部以上8質量部以下の特定樹脂の原料となる反応性の単量体の量とすることがより好ましく、0.01質量部以上5質量部以下の特定樹脂の原料となる反応性の単量体の量とすることが特に好ましい。
【0069】
・重合工程
反応方法としては熱ラジカル重合が好ましく、反応性の単量体を溶解した上記他の溶媒に含フッ素樹脂粒子と重合開始剤を加え、好ましくは50℃以上150℃以下で、攪拌しながら反応させる。反応は窒素などの不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
【0070】
反応時間としては、30分以上24時間以下が好ましく、更に1時間以上10時間以下で行うことがより好ましい。
【0071】
重合開始剤としては、例えば下記に示す市販触媒が用いられる。
例えば、V−30、V−40、V−59、V601、V65、V−70、VF−096、Vam−110、Vam−111(和光純薬製)、OTAzo−15、OTazo−30、AIBM、AMBN、ADVN、ACVA(大塚化学)等のアゾ系開始剤。パーテトラA、パーヘキサHC、パーヘキサC、パーヘキサV、パーヘキサ22、パーヘキサMC、パーブチルH,パークミルH、パークミルP、パーメンタH、パーオクタH、パーブチルC、パーブチルD、パーヘキシルD、パーロイルIB、パーロイル355、パーロイルL、パーロイルSA、ナイパーBW、ナイパーBMT−K40/M、パーロイルIPP、パーロイルNPP、パーロイルTCP、パーロイルOPP、パーロイルSBP、パークミルND、パーオクタND、パーヘキシルND、パーブチルND、パーブチルNHP、パーヘキシルPV、パーブチルPV、パーヘキサ250、パーオクタO、パーヘキシルO、パーブチルO、パーブチルL、パーブチル355、パーヘキシルI、パーブチルI、パーブチルE、パーヘキサ25Z、パーブチルA、パーヘキシルZ、パーブチルZT、パーブチルZ(日油化学社製)などが挙げられる。
【0072】
・分離工程および分散工程
吸着工程後の溶媒から特定樹脂が吸着した含フッ素樹脂粒子を分離する方法としては、デカンテーション、ろ過、遠心分離などが挙げられ、この操作で含フッ素樹脂粒子に吸着されなかった余剰の特定樹脂が分離される。この含フッ素樹脂粒子を乾燥させても良いが、乾燥させることなく水酸基含有溶媒群のうち前記樹脂を溶解しないものから選ばれる少なくとも1種の溶媒に加え分散させることがより好ましい。こうして、遊離した樹脂の存在が抑制された含フッ素樹脂粒子分散液が得られる。
【0073】
−製造方法3による製造−
・溶解工程および吸着工程
上記反応性の単量体としては、前述の「−水酸基含有溶媒群の内の少なくとも1種の溶媒に溶解しない樹脂−」の項において列挙した反応性の単量体が用いられる。
【0074】
水酸基含有溶媒群の溶媒の量としては、特定樹脂1質量部の原料となる前記反応性の単量体に対し1質量部以上1000質量部以下が好ましく、2質量部以上800質量部以下がより好ましく、5質量部以上700質量部以下が特に好ましい。
【0075】
反応性の単量体の量としては、含フッ素樹脂粒子表面への吸着性に依存するが、含フッ素樹脂粒子1質量部に対し0.001質量部以上10質量部以下の特定樹脂の原料となる反応性の単量体の量とすることが好ましく、0.005質量部以上8質量部以下の特定樹脂の原料となる反応性の単量体の量とすることがより好ましく、0.01質量部以上5質量部以下の特定樹脂の原料となる反応性の単量体の量とすることが特に好ましい。
【0076】
・重合工程
反応方法としては熱ラジカル重合が好ましく、反応性の単量体を溶解した上記溶媒に含フッ素樹脂粒子と重合開始剤を加え、好ましくは50℃以上150℃以下で、攪拌しながら反応させる。反応は窒素などの不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
【0077】
反応時間や用いる重合開始剤としては、前記製造方法2における反応時間や重合開始剤が適用される。
【0078】
<含フッ素樹脂粒子含有塗布液、含フッ素樹脂粒子含有被覆膜、成形体>
含フッ素樹脂粒子含有塗布液(以下単に「塗料」とも称す)を調製する際には、前記含フッ素樹脂粒子分散液に対し、該分散液に用いられている溶媒(即ち水酸基含有溶媒群のうち前記特定樹脂を溶解しないものの中の少なくとも1種の溶媒)に溶解し得るポリマーや、該ポリマーの原料となる反応性のモノマーであって溶媒(即ち水酸基含有溶媒群のうち前記特定樹脂を溶解しないものの中の少なくとも1種の溶媒)に溶解し得るモノマーが溶解される。また、例えば顔料、増粘剤、分散剤、消泡剤、凍結防止剤、成膜助剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤など一般に塗料に用いられている添加剤を配合してもよい。
この塗料はコンクリート、スレート、ALC板などの無機質基材、金属基材の表面保護コーティング剤として、さらに塗工紙用コーティング剤などとして用いられる。また、ツヤ消し用の合成樹脂ビーズ、天然石などを配合することにより意匠性コーティング剤としても用いられる。さらに中低層建物の外装および/または内装用水性塗料用としても用いられる。
【0079】
尚、含フッ素樹脂粒子含有塗布液における本実施形態に係る含フッ素樹脂粒子分散液中の固形成分の配合割合は、上記塗布液の形態や塗装方法などによって異なるが、塗布液の5質量%以上95質量%以下、好ましくは20質量%以上90質量%以下を占めるようにすればよい。
【0080】
かかる塗料の塗装方法としては従来の公知の塗装方法が採用される。塗装には、ハケ、ローラー、ロールコーター、エアースプレー、エアレススプレー、静電塗装機、浸漬塗装機、電着塗装機など従来公知の塗装器具が使用される。
【0081】
前記塗料は、鉄、アルミニウム、銅あるいはこれらの合金類などの金属に限らず、ガラス、セメント、コンクリートなどの無機材料、FRP、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂などの樹脂類、木材、繊維などの種々の基材に適用し得る。また、基材に公知の水性樹脂エマルション塗料、溶剤型塗料などの下塗り剤を塗布するなどの予備処理や表面処理を行なってもよく、アンダーコートやプレコートを施したのちに上記塗料を塗装してもよい。
【0082】
前記塗料の塗装は、各種公知の凹凸や色模様などの意匠性をもたせた基材上へのクリア塗料としての塗布、エナメル塗料としての塗布なども行なわれる。塗膜は塗装後、通常5℃以上300℃以下で30秒以上1週間乾燥して硬化させる。塗膜の膜厚はとくに制限されないが、通常1μm以上200μm以下が好ましく、5μm以上100μm以下がより好ましく、10μm以上50μm以下が特に好ましい。
【0083】
かくして得られる塗装物は幅広い用途で使用し得る。例えば、電気製品(電子レンジ、トースター、冷蔵庫、洗濯機、ヘアードライアー、テレビ、ビデオ、アンプ、ラジオ、電気ポット、炊飯機、ラジオカセット、カセットデッキ、コンパクトディスクプレーヤー、ビデオカメラなど)の内外装、エアーコンディショナーの室内機、室外機、吹き出口およびダクト、空気清浄機、暖房機などのエアーコンディショナーの内外装、蛍光燈、シャンデリア、反射板などの照明器具、家具、機械部品、装飾品、くし、めがねフレーム、天然繊維、合成繊維(糸状のものおよびこれらから得られる織物)、事務機器(電話機、ファクシミリ、複写機(ロールを含む)、写真機、オーバーヘッドプロジェクター、実物投影機、時計、スライド映写機、机、本棚、ロッカー、書類棚、いす、ブックエンド、電子白板など)の内外装、自動車(ホイール、ドアミラー、モール、ドアのノブ、ナンバープレート、ハンドル、インスツルメンタルパネルなど)、あるいは厨房器具類(レンジフード、流し台、調理台、包丁、まな板、水道の蛇口、ガスレンジ、換気扇など)の塗装用として、間仕切り、バスユニット、シャッター、ブラインド、カーテンレール、アコーディオンカーテン、壁、天井、床などの屋内塗装用として、外装用としては外壁、手摺り、門扉、シャッターなどの一般住宅外装、ビル外装など、窯業系サイジング材、発泡コンクリートパネル、コンクリートパネル、アルミカーテンウォール、鋼板、亜鉛メッキ鋼板、ステンレス鋼板、塩ビシートなどの建築用外装材、窓ガラス、その他に広い用途を有する。
【実施例】
【0084】
以下、実施例および比較例について説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。尚、以下において「部」は、特に断りのない限り質量基準である。
【0085】
〔樹脂合成例A〕
1リットルの攪拌機付き耐圧反応容器に、下記式(1)(mは80)で示されるマクロモノマー50部、2−(パーフルオロヘキシル)エチルメタクリレート30部、トリフルオロトルエン300部、アゾイソブチロニトリル0.5部を加え、窒素雰囲気下90℃で5時間反応させた。この反応液をメタノール5000部中に滴下し、樹脂を析出させ、ろ過、乾燥し、樹脂(界面活性剤)(A)を65部得た。
GPCにて分子量を測定したところ、スチレン換算でMwは30000であった。この樹脂(A)のメタノール、エタノール、シクロペンタノール、および1H,1H−ペンタフルオロプロパノールに対する溶解性を前述の方法にて測定したところ、表面張力の低下率はメタノール、エタノール、シクロペンタノールで0.1%以下、1H,1H−ペンタフルオロプロパノールでは0.5%であり、いずれの溶媒にも不溶であった。
【0086】
【化1】



【0087】
〔樹脂合成例B〕
前記樹脂合成例Aにおける、2−(パーフルオロヘキシル)エチルメタクリレート30部を、下記式(2)で示されるモノマー30部に変更した以外は、樹脂合成例Aに記載の方法により、樹脂(界面活性剤)(B)を60部得た。
GPCにて分子量を測定したところ、スチレン換算でMwは35000であった。この樹脂(B)のメタノール、エタノール、シクロペンタノール、および1H,1H−トリフルオロエタノールに対する溶解性を前述の方法にて測定したところ、表面張力の低下率はメタノール、エタノール、シクロペンタノールで0.1%以下、1H,1H−ペンタフルオロプロパノールでは0.5%であり、いずれの溶媒にも不溶であった。
【0088】
【化2】



【0089】
〔樹脂合成例C〕
1リットルの攪拌機付き耐圧反応容器に、ヒドロキシエチルメタクリレート20部、2−(パーフルオロヘキシル)エチルメタクリレート60部、トリフルオロトルエン300部、アゾイソブチロニトリル0.5部を加え、窒素雰囲気下90℃で5時間反応させた。この反応液をメタノール5000部中に滴下し、樹脂を析出させ、ろ過、乾燥し、樹脂(界面活性剤)(C)を60部得た。
GPCにて分子量を測定したところ、スチレン換算でMwは20000であった。この樹脂(C)のメタノール、エタノール、およびシクロペンタノールに対する溶解性を前述の方法にて測定したところ、表面張力の低下率はメタノール、エタノール、シクロペンタノールで0.2%以下、1H,1H−ペンタフルオロプロパノールでは0.6%であり、若干の膨潤は見られたがいずれの溶媒にも不溶であった。
【0090】
〔樹脂D〕
東亜合成社製の「アロンGF300」を樹脂(D)として用いた。
この樹脂(D)のメタノール、エタノール、およびシクロペンタノールに対する溶解性を前述の方法にて測定したところ、表面張力の低下率はメタノール、エタノール、シクロペンタノールで0.1%以下、1H,1H−ペンタフルオロプロパノールでは0.2%であり、いずれの溶媒にも不溶であった。
【0091】
<実施例1>
500mlのガラス瓶にトルエン300部、樹脂(界面活性剤)(A)3部を入れ、溶解させた(溶解工程)。
溶解後、PTFE粒子(ダイキン社製:ルブロンL−2)30部を入れ、室温(25℃)で1日攪拌した後、遠心分離し、メタノール、エタノール、およびシクロペンタノールに不溶の樹脂を吸着させたPTFE粒子を得た(吸着工程および分離工程)。遠心分離後の上澄み液をエバポレーターにて溶剤を除去し秤量したところ、1.2部の未吸着の樹脂(A)が回収され、6質量%/1g−PTFEが吸着されていることを確認した。
尚、樹脂(A)を吸着処理した後のPTFEを分離し、テトラヒドロフランで洗浄し、洗浄液を濃縮して回収された樹脂(A)が6質量%/1g−PTFEであったことからも、PTFE表面に樹脂(A)が吸着されていることが確認された。
次いで遠心分離後のPTFE粒子を300部のシクロペンタノールに分散したところ(分散工程)、容易に分散液となり、一日静置した後もほとんど沈降は見られなかった。これを分散液(1)とする。
【0092】
尚、シクロペンタノールの室温(25℃)での表面張力(STs)は、33.50mN/m、PTFE粒子分散後の表面張力(STp)は33.45mN/mであり、|STs−STp|/STs=0.001でPTFE粒子表面からの樹脂(A)の遊離はないものと判断される。
【0093】
<実施例2〜4>
実施例1における樹脂(A)を、樹脂(B)、樹脂(C)、樹脂(D)(アロンGF300,東亜合成社製)に変えた以外は実施例1に記載の方法によって処理し、分散液(2)〜(4)を得た。
分散液(2)〜(4)は、分散後一日静置した後もほとんど沈降は見られなかった。また、吸着量の測定結果および|STs−STp|/STsの算出結果を下記表1に示す。
【0094】
<実施例5>
1リットルの攪拌機付き耐圧反応容器に、ヒドロキシエチルメタクリレート1部、2−(パーフルオロヘキシル)エチルメタクリレート6部、トルエン300部、PTFE粒子(ダイキン社製:ルブロンL−2)30部を入れ、室温で1日攪拌した(溶解工程および吸着工程)。
ついで、アゾイソブチロニトリル0.1部を加え、窒素雰囲気下90℃で5時間反応させた(重合工程)。
反応液を冷却後、遠心分離したのち、再度トルエン300部に再分散し、遠心分離して、上記樹脂を吸着させたPTFE粒子を得た(分離工程)。遠心分離後の上澄み液全てをエバポレーターにて溶剤を除去し秤量したところ、3.9部の未吸着の樹脂が回収され、7質量%/1g−PTFEが吸着されていることを確認した。
次いで遠心分離後のPTFE粒子を300部のシクロペンタノールに分散したところ(分散工程)、容易に分散液となり、一日静置した後もほとんど沈降は見られなかった。これを分散液(5)とする。
【0095】
尚、ヒドロキシエチルメタクリレート1部と2−(パーフルオロヘキシル)エチルメタクリレート6部とを重合して得られる樹脂を別途合成し、この樹脂のメタノール、エタノール、およびシクロペンタノールに対する溶解性を前述の方法にて測定したところ、いずれの溶媒にも不溶であった。
【0096】
また、シクロペンタノールの室温(25℃)での表面張力(STs)は33.50mN/m、PTFE粒子分散後の表面張力(STp)は33.25mN/mであり、|STs−STp|/STs=0.007でPTFE粒子表面からの樹脂の遊離はないものと判断される。
【0097】
<実施例6,7>
実施例1におけるPTFE粒子(ダイキン社製:ルブロンL−2)を、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)(三井デュポンフルオロケミカル社製:MP102)、およびテトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)(三井デュポンフルオロケミカル社製:MPE056)に変えた以外は実施例1に記載の方法によって処理し、分散液(6),(7)を得た。
分散液(6),(7)は、分散後一日静置した後に少量の沈降が見られた。また、吸着量の測定結果および|STs−STp|/STsの算出結果を下記表1に示す。
【0098】
<実施例8,9>
実施例6,7におけるシクロペンタノール300部を、シクロペンタノール240部と1H,1H−ペンタフルオロプロパノール60部との混合溶媒に変えた以外は実施例6,7に記載の方法によって処理し、分散液(8),(9)を得た。
分散液(8),(9)は、分散後一日静置した後もほとんど沈降は見られなかった。また、吸着量の測定結果および|STs−STp|/STsの算出結果を下記表1に示す。
【0099】
<実施例10,11>
実施例1における樹脂(界面活性剤)(A)の量を、3部から10部および15部に変えた以外は実施例1に記載の方法により処理し、分散液(10),(11)を得た。
分散液(10),(11)は、分散後一日静置した後もほとんど沈降は見られなかった。また、吸着量の測定結果および|STs−STp|/STsの算出結果を下記表1に示す。
【0100】
<実施例12>
実施例5における分散溶剤を、シクロペンタノールから、水とメタノール1:1(体積比)との混合溶媒に変えた以外は実施例5に記載の方法によって処理し、分散液(12)を得た。
分散液(12)は、分散後一日静置した後に少量の沈降が見られた。また、吸着量の測定結果および|STs−STp|/STsの算出結果を下記表1に示す。
【0101】
<比較例1>
500mlのガラス瓶にシクロペンタノール300部、樹脂(界面活性剤)(A)3部を入れ、室温(25℃)で攪拌したが、全く溶解しなかった。
この混合液にPTFE粒子(ダイキン社製:ルブロンL−2)30部を入れ、室温(25℃)で1日攪拌したが、分散性は著しく不良でありすぐに沈降が発生した。
また、|STs−STp|/STsの算出結果を下記表1に示す。
【0102】
<比較例2〜4>
比較例1における樹脂(A)を、樹脂(B)、樹脂(C)、樹脂(D)(アロンGF300,東亜合成社製)に変えた以外は比較例1に記載の方法によって処理した。
しかし、分散性は著しく不良でありすぐに沈降が発生した。また、|STs−STp|/STsの算出結果を下記表1に示す。
【0103】
<比較例5,6>
比較例1におけるPTFE粒子(ダイキン社製:ルブロンL−2)を、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)(三井デュポンフルオロケミカル社製:MP102)、およびテトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)(三井デュポンフルオロケミカル社製:MPE056)に変えた以外は比較例1に記載の方法によって処理した。
しかし、分散性は著しく不良でありすぐに沈降が発生した。また、|STs−STp|/STsの算出結果を下記表1に示す。
【0104】
【表1】



【0105】
<実施例13>
分散液(1)10部、フェノール樹脂(PL−4852:群栄化学社製)5部、フタージェント730FL(NEOS社製)0.01部を混合し、塗布液を得た。
尚、フェノール樹脂のシクロペンタノールに対する溶解性を前記樹脂合成例Aに記載の方法によりテストしたところ可溶であった。
上記塗布液をポリカーボネート樹脂板の上にワイヤーバーにて塗布し、130℃で20分硬化して10μmの表面膜を形成した。表面膜形成時にポリカーボネート樹脂の変質、クラックは見られず、良好な皮膜が得られた。また、得られた表面膜はベンコットによる簡易のラビングテストで非常に傷が付きにくいものであった。
【0106】
<実施例14〜19>
分散液(1)の代わりに分散液(2)〜(5)、(10)、(11)を用いた以外は実施例13に記載の方法により塗布液を得、表面膜を形成した。
何れにおいても、表面膜形成時にポリカーボネート樹脂の変質、クラックは見られず、良好な皮膜が得られた。また、得られた表面膜はベンコットによる簡易のラビングテストで非常に傷が付きにくいものであった。
【0107】
<実施例20>
分散液(1)10部、ジプロピレングリコールジアクリレート(DPGDA:ダイセルサイテック社製)5部、フタージェント730FL(NEOS社製)0.01部、Irgacure819(BASF社製)0.2部を混合し、塗布液を得た。
尚、ジプロピレングリコールジアクリレートのシクロペンタノールに対する溶解性をテストしたところ可溶であった。
上記塗布液をポリカーボネート樹脂板の上にワイヤーバーにて塗布し、乾燥後、窒素下で紫外線照射装置(ユニキュア:ウシオ電機社製)にて160W/cmで60秒光硬化させ、表面膜を形成した。表面膜形成時にポリカーボネート樹脂の変質、クラックは見られず、良好な皮膜が得られた。また、得られた表面膜はベンコットによる簡易のラビングテストで非常に傷が付きにくいものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
含フッ素樹脂粒子と、
分子構造中に芳香環を含まない炭素数1以上10以下のアルコール系溶剤および水系媒体からなる水酸基含有溶媒群の内の少なくとも1種の溶媒に溶解せず、前記含フッ素樹脂粒子の表面に付着した樹脂と、
前記水酸基含有溶媒群のうち前記樹脂を溶解しないものから選ばれる少なくとも1種であって、表面に前記樹脂が付着した前記含フッ素樹脂粒子を分散させる溶媒と、
を含有する含フッ素樹脂粒子分散液。
【請求項2】
前記樹脂が、前記含フッ素樹脂粒子の表面に吸着している請求項1に記載の含フッ素樹脂粒子分散液。
【請求項3】
前記水酸基含有溶媒群が、脂肪族アルコールと含フッ素アルコールとからなる請求項1または請求項2に記載の含フッ素樹脂粒子分散液。
【請求項4】
分子構造中に芳香環を含まない炭素数1以上10以下のアルコール系溶剤および水系媒体からなる水酸基含有溶媒群の内の少なくとも1種の溶媒に溶解しない樹脂を、該樹脂を溶解し得る他の溶媒に溶解させる溶解工程と、
前記樹脂に含フッ素樹脂粒子を接触させて該含フッ素樹脂粒子の表面に前記樹脂を吸着させる吸着工程と、
表面に前記樹脂が吸着した前記含フッ素樹脂粒子を前記他の溶媒から分離する分離工程と、
分離された前記含フッ素樹脂粒子を、前記水酸基含有溶媒群のうち前記樹脂を溶解しないものから選ばれる少なくとも1種の溶媒に分散する分散工程と、
を有する含フッ素樹脂粒子分散液の製造方法。
【請求項5】
分子構造中に芳香環を含まない炭素数1以上10以下のアルコール系溶剤および水系媒体からなる水酸基含有溶媒群の内の少なくとも1種の溶媒に溶解しない樹脂の原料となる反応性の単量体を、前記樹脂を溶解し得る他の溶媒に溶解させる溶解工程と、
前記単量体に含フッ素樹脂粒子を接触させて該含フッ素樹脂粒子の表面に前記単量体を吸着させる吸着工程と、
前記単量体を重合させて前記含フッ素樹脂粒子の表面に樹脂を形成する重合工程と、
表面に前記樹脂が形成された前記含フッ素樹脂粒子を前記他の溶媒から分離する分離工程と、
分離された前記含フッ素樹脂粒子を、前記水酸基含有溶媒群のうち前記樹脂を溶解しないものから選ばれる少なくとも1種の溶媒に分散する分散工程と、
を有する含フッ素樹脂粒子分散液の製造方法。
【請求項6】
分子構造中に芳香環を含まない炭素数1以上10以下のアルコール系溶剤および水系媒体からなる水酸基含有溶媒群の内の少なくとも1種の溶媒に溶解しない樹脂の原料となる反応性の単量体を、前記水酸基含有溶媒群のうち前記樹脂を溶解せず且つ前記単量体を溶解し得るものから選ばれる少なくとも1種の溶媒に溶解させる溶解工程と、
前記単量体に含フッ素樹脂粒子を接触させて該含フッ素樹脂粒子の表面に前記単量体を吸着させる吸着工程と、
前記単量体を重合させて前記含フッ素樹脂粒子の表面に樹脂を形成する重合工程と、
を有する含フッ素樹脂粒子分散液の製造方法。
【請求項7】
含フッ素樹脂粒子と、
分子構造中に芳香環を含まない炭素数1以上10以下のアルコール系溶剤および水系媒体からなる水酸基含有溶媒群の内の少なくとも1種の溶媒に溶解せず、前記含フッ素樹脂粒子の表面に付着した樹脂と、
前記水酸基含有溶媒群のうち前記樹脂を溶解しないものの中の少なくとも1種の溶媒に溶解し得るポリマーと、
前記水酸基含有溶媒群のうち前記樹脂を溶解せず且つ前記ポリマーを溶解し得るものから選ばれる少なくとも1種であって、表面に前記樹脂が付着した前記含フッ素樹脂粒子および前記ポリマーを分散させる溶媒と、
を含有する含フッ素樹脂粒子含有塗布液。
【請求項8】
含フッ素樹脂粒子と、
分子構造中に芳香環を含まない炭素数1以上10以下のアルコール系溶剤および水系媒体からなる水酸基含有溶媒群の内の少なくとも1種の溶媒に溶解せず、前記含フッ素樹脂粒子の表面に付着した樹脂と、
前記水酸基含有溶媒群のうち前記樹脂を溶解しないものの中の少なくとも1種の溶媒に溶解し得る反応性のモノマーと、
前記水酸基含有溶媒群のうち前記樹脂を溶解せず且つ前記反応性のモノマーを溶解し得るものから選ばれる少なくとも1種であって、表面に前記樹脂が付着した前記含フッ素樹脂粒子および前記反応性のモノマーを分散させる溶媒と、
を含有する含フッ素樹脂粒子含有塗布液。
【請求項9】
請求項7に記載の含フッ素樹脂粒子含有塗布液を基材表面に塗布し塗布膜を形成する塗布工程と、
該塗布膜を乾燥させ被覆膜を形成する乾燥工程と、
を有する含フッ素樹脂粒子含有被覆膜の製造方法。
【請求項10】
請求項7に記載の含フッ素樹脂粒子含有塗布液を塗布して形成された塗布膜を乾燥させて製造された含フッ素樹脂粒子含有被覆膜。
【請求項11】
請求項8に記載の含フッ素樹脂粒子含有塗布液を基材表面に塗布し塗布膜を形成する塗布工程と、
該塗布膜を乾燥し且つ前記反応性のモノマーを重合させて被覆膜を形成する重合工程と、
を有する含フッ素樹脂粒子含有被覆膜の製造方法。
【請求項12】
請求項8に記載の含フッ素樹脂粒子含有塗布液を塗布して形成された塗布膜を乾燥し且つ前記反応性のモノマーを重合させて製造された含フッ素樹脂粒子含有被覆膜。
【請求項13】
基材と、該基材上に請求項10または請求項12に記載の含フッ素樹脂粒子含有被覆膜と、を備えた成形体。

【公開番号】特開2012−188514(P2012−188514A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−52103(P2011−52103)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】