説明

含フッ素水性塗料用組成物

【課題】常温で硬化可能であり、しかも耐薬品性、耐水性、耐溶剤性、耐汚染性、硬度、耐候性、耐久性に優れた塗膜を与えるフッ素樹脂水性塗料用組成物を提供する。
【解決手段】(A)溶液重合法により得られた官能基を有するフルオロオレフィン共重合体を水に分散して得られた官能基含有フッ素樹脂水性エマルションおよび(B)水分散可能な非ブロック型イソシアネート化合物からなる含フッ素水性塗料用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、常温で硬化させることができ、しかも耐溶剤性、耐候性、塗膜硬度、光沢などに優れた塗膜を与える水性塗料用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水性のフッ素樹脂組成物を耐候性水性塗料用樹脂として利用する技術が知られているが、かかる架橋型水性塗料は一般に、耐水性、耐溶剤性、耐汚染性、塗膜硬度などの点で架橋型溶剤塗料にくらべて性能が劣る。
【0003】
これを改良するために、水性塗料に使用する架橋型フッ素樹脂の開発も検討されているが、現時点では不充分である。たとえばクロロトリフルオロエチレンやテトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンと架橋性官能基含有モノマーとの共重合体の例としては、特許文献1および特許文献2などがある。しかしながら、これらは乳化重合により官能基含有フルオロオレフィン共重合体を製造しており、樹脂の分子量が比較的高くなっているため樹脂と硬化剤の相溶性が低い。また架橋性官能基含有モノマーが水に対する安定性に劣ることもあって導入される架橋性官能基の含有量が少ないことから常温での硬化性が不充分であり、造膜性が低く、塗膜の架橋密度も低い。これらのため、塗膜の耐溶剤性、耐薬品性、耐久性、耐候性、硬度に劣る。
【0004】
また、フッ化ビニリデン重合体と架橋性官能基を有するアクリル重合体との組成物として特許文献3および特許文献4などが知られている。しかしながら、これらのフッ素樹脂には架橋性官能基が導入されておらず、フッ素樹脂とアクリル樹脂との間に化学結合が生じず、得られた塗膜の塗膜全体の架橋密度は低く、またフッ素樹脂と架橋反応した後のアクリル樹脂とは相溶性が低いため、塗膜の耐水性、耐溶剤性、耐汚染性、硬度が不充分となっている。
【0005】
【特許文献1】米国特許第5,548,019号明細書
【特許文献2】特開平7−324180号公報
【特許文献3】特開平7−268163号公報
【特許文献4】特開2001−72725号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、常温で硬化可能であり、しかも耐薬品性、耐水性、耐溶剤性、耐汚染性、硬度、耐候性、耐久性に優れた塗膜を与えるフッ素樹脂水性塗料用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、(A)溶液重合法により得られた官能基を有するフルオロオレフィン共重合体を水に分散して得られた官能基含有フッ素樹脂水性エマルションおよび(B)水分散可能な非ブロック型イソシアネート化合物からなる含フッ素水性塗料用組成物に関する。
【0008】
また前記官能基含有フッ素樹脂(A)は、イソシアネート化合物(B)と反応し得る架橋性水酸基のほかに酸価を与える水溶性または水分散性の官能基を有していることが好ましく、特に水酸基価が10〜300mgKOH/gで酸価が5〜200mgKOH/gであることが好ましい。
【0009】
また、前記水溶性または水分散性官能基は、たとえばカルボキシル基またはスルホン酸基などのアニオン性官能基をアルカリで中和して得ることができる。
【0010】
前記水溶性または水分散性官能基としては、アニオン性官能基の水溶性または水分散性塩、たとえばアンモニウム塩、アミン塩またはアルカリ金属塩が好ましく例示できる。
【0011】
前記官能基含有フッ素樹脂としては、構造単位としてテトラフルオロエチレンおよび/またはヘキサフルオロプロピレンを含んでいるものが好ましい。
【0012】
他方の成分である水分散可能な非ブロック型イソシアネート化合物(B)としては、ポリエチレンオキシド変性の非ブロック型イソシアネート化合物が好ましくあげられる。
【0013】
なお、本発明における水酸基価および酸価は、つぎの方法で算出した計算値である。
【0014】
(水酸基価算出方法)
生成したポリマー、ポリマー溶液、残存モノマー量の分析およびモノマー仕込み量から、ポリマー中のモノマー組成を算出する。つぎに、その全モノマー組成と水酸基含有モノマーの組成からポリマー中の水酸基価を算出する。
【0015】
(酸価算出方法)
生成したポリマー、ポリマー溶液、残存モノマー量の分析およびモノマー仕込み量から、ポリマー中のモノマー組成を算出する。つぎに、その全モノマー組成とカルボキシル基含有モノマーの組成からポリマー中の酸価を算出する。
【発明の効果】
【0016】
本発明のフッ素樹脂水性塗料用組成物は常温で硬化可能であり、耐薬品性、耐水性、耐溶剤性、耐汚染性、硬度、耐候性、耐久性に優れた塗膜を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明のフッ素樹脂水性塗料用組成物は、(A)溶液重合法により得られた官能基を有するフルオロオレフィン共重合体を水に分散して得られた官能基含有フッ素樹脂水性エマルションおよび(B)水分散可能な非ブロック型イソシアネート化合物からなる。
【0018】
かかる官能基含有フルオロオレフィン共重合体は水酸基価と酸価を有するものが好ましい。
【0019】
特に官能基含有フルオロオレフィン共重合体は、10mgKOH/g以上、さらには30mgKOH/g以上、特に50mgKOH/g以上の水酸基価を有していることが架橋密度が高く、耐汚染性、耐候性、硬度に優れる点で好ましい。また水酸基価の上限は300mgKOH/g、好ましくは150mgKOH/gであることが塗膜に可とう性を付与する点で有利である。また、5mgKOH/g以上、さらには10mgKOH/g以上、特に20mgKOH/g以上の酸価を有していることがフッ素樹脂の水分散性が向上する点で好ましい。また酸価の上限は200mgKOH/g、好ましくは100mgKOH/gであることが塗膜に耐水性を付与する点で有利である。
【0020】
前記官能基含有フッ素樹脂のエマルション(A)としては、
(1)溶液重合法により得られた官能基を有するフルオロオレフィン共重合体(A1)を水に分散して得られた官能基含有フッ素樹脂水性エマルション、または
(2)少なくともカルボキシル基または水酸基を有する含フッ素重合体と該カルボキシル基または該水酸基と反応し得る官能基および重合性不飽和二重結合を有する化合物との反応生成物である重合性不飽和二重結合含有含フッ素重合体に、ビニル単量体をグラフト重合して得られる官能基含有含フッ素グラフト共重合体(A2)を水に分散して得られた官能基含有フッ素樹脂水性エマルション
が好ましい。
【0021】
前記(1)の官能基含有フッ素樹脂水性エマルションのフルオロオレフィン共重合体としては、官能基含有フルオロオレフィン共重合体(A1)が好ましい。
【0022】
前記のとおり、官能基含有フッ素樹脂水性エマルション(A1)の製造は乳化重合法で製造し、直接エマルションの形態に調製することが一般的である。本発明において、あえて官能基含有フルオロオレフィン共重合体を溶液重合法で製造することにより、重合溶剤として有機溶剤を使用するので官能基を導入するために用いる官能基含有モノマーを安定して重合系に供給でき、所望の量の官能基をフルオロオレフィン共重合体に導入することができる。
【0023】
このようなエマルション用の官能基含有フルオロオレフィン共重合体を溶液重合法で製造する技術としては、電着塗料の分野で知られており(たとえば特開昭62−143915号公報、特開昭63−152677号公報、特開平1−249866号公報など)、本発明においてもそれらの方法が利用できる。
【0024】
より具体的には、フルオロオレフィンと官能基含有モノマーと、要すればこれらと共重合可能なモノマーとを有機溶剤中で重合する。
【0025】
フルオロオレフィンとしては、テトラフルオロエチレン(TFE)、トリフルオロエチレン(TrFE)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、フッ化ビニル(VF)、フッ化ビニリデン(VdF)などの1種または2種以上があげられる。好ましいフルオロオレフィンとしては、TFEまたはHFPなどのパーフルオロオレフィンがあげられ、フッ素含有量の多いフルオロオレフィン共重合体を提供でき、フッ素樹脂の有利な効果、たとえば耐薬品性、耐水性、耐溶剤性、耐汚染性、耐候性などに優れた塗膜を与える。
【0026】
前記のとおり官能基にはイソシアネート化合物と反応し得る架橋性水酸基とフッ素樹脂に水溶性または水分散性を与える官能基があり、それらを両方含有する官能基含有モノマーが、本発明で好ましく使用できる。
【0027】
イソシアネート化合物と反応し得る架橋性官能基としては、水酸基が代表例であるが、そのほかアミノ基、シラノール基、ウレタン基、アミド基、カルボキシル基なども併用可能である。
【0028】
架橋性官能基含有モノマーとしての水酸基含有モノマーの具体例としては、たとえば式(I):
CH2=CHR1 (I)
(式中、R1は−OR2または−CH2OR2(ただし、R2は水酸基を有するアルキル基である))で表わされるヒドロキシアルキルビニルエーテルやヒドロキシアルキルアリルエーテルがあげられる。R2としては、たとえば炭素数1〜8の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基に1〜3個、好ましくは1個の水酸基が結合したものである。これらの例としては、たとえば2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、4−ヒドロキシ−2−メチルブチルビニルエーテル、5−ヒドロキシペンチルビニルエーテル、6−ヒドロキシヘキシルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルアリルエーテル、4−ヒドロキシブチルアリルエーテル、グリセロールモノアリルエーテルなどがあげられる。これらのなかでも、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテルが重合反応性、官能基の硬化性が優れる点で好ましい。
【0029】
他の水酸基含有モノマーとしては、たとえばアクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルなどが例示できる。
【0030】
水溶性または水分散性官能基は架橋性基として作用するものではなく、官能基含有フルオロオレフィン共重合体を水に分散しやすくし、安定なエマルションを形成するためのものである。
【0031】
水溶性または水分散性官能基としては、前述のとおり、たとえばそのままでは水溶性または水分散性を付与しないアニオン性官能基をアルカリで中和して水溶性または水分散性とした官能基が例示できる。
【0032】
また水溶性または水分散性官能基は具体的には、アニオン性官能基の水溶性または水分散性塩、たとえばアンモニウム塩、アミン塩またはアルカリ金属塩が好ましく例示できる。
【0033】
そのままでは水溶性または水分散性を付与しないアニオン性官能基としては、カルボキシル基、スルホン酸基、スルフィン酸基などが例示できるが、合成の利便性の点を考慮すると、カルボキシル基またはスルホン酸基が好ましい。
【0034】
カルボキシル基含有モノマーとしては、式(II):
【化1】

(式中、R3、R4およびR5は同じかまたは異なり、いずれも水素原子、アルキル基、カルボキシル基またはエステル基;nは0から20である)で表わされる不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸、そのモノエステルまたは酸無水物などの不飽和カルボン酸類などがあげられる。R3およびR4がいずれも水素原子であることが好ましく、また、nは3以上で15以下であることが好ましい。特にR3、R4およびR5がいずれも水素原子であって、nが6以上10以下のものが好ましい。
【0035】
式(I)の不飽和カルボン酸類の具体例としては、たとえばアクリル酸、メタクリル酸、ビニル酢酸、クロトン酸、桂皮酸、3−アリルオキシプロピオン酸、3−(2−アリロキシエトキシカルボニル)プロピオン酸、イタコン酸、イタコン酸モノエステル、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、マレイン酸無水物、フマル酸、フマル酸モノエステル、フタル酸ビニル、ピロメリット酸ビニル、5−ヘキセン酸、5−ヘプテン酸、6−ヘプテン酸、7−オクテン酸、8−ノネン酸、9−デセン酸、10−ウンデシレン酸、11−ドデシレン酸、17−オクタデシレン酸、オレイン酸などがあげられる。それらのなかでも単独重合性の低いクロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、フマル酸、フマル酸モノエステル、3−アリルオキシプロピオン酸、10−ウンデシレン酸が、単独重合体ができにくいことから好ましい。特に10−ウンデシレン酸が重合反応性が良好で難加水分解性であるなどの点で好ましい。
【0036】
カルボキシル基含有モノマーの別の例としては、式(III):
【化2】

(式中、R6およびR7は同じかまたは異なり、いずれも飽和または不飽和の直鎖または環状アルキル基;nは0または1;mは0または1である)で表わされるカルボキシル基含有ビニルエーテルモノマーなどがあげられる。
【0037】
式(III)のカルボキシル基含有ビニルエーテルモノマーの具体例としては、たとえば3−(2−アリロキシエトキシカルボニル)プロピオン酸、3−(2−アリロキシブトキシカルボニル)プロピオン酸、3−(2−ビニロキシエトキシカルボニル)プロピオン酸、3−(2−ビニロキシブトキシカルボニル)プロピオン酸などの1種または2種以上があげられる。これらの中でも3−(2−アリロキシエトキシカルボニル)プロピオン酸などが、モノマーの安定性や重合反応性がよい点で有利であり、好ましい。
【0038】
スルホン酸基含有モノマーの具体例としては、たとえばビニルスルホン酸などがあげられる。
【0039】
そのままでは水溶性または水分散性を付与しない官能基を水溶性または水分散性官能基に変換する方法については後述する。
【0040】
官能基含有フルオロオレフィン共重合体(A1)には、必要に応じて、他の共重合可能なモノマーを共重合してもよい。
【0041】
他の共重合可能なモノマーとしては、カルボン酸ビニルエステル類、アルキルビニルエーテル類、非フッ素系オレフィン類などがあげられる。
【0042】
カルボン酸ビニルエステル類としては、たとえば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプロン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、シクロヘキシルカルボン酸ビニル、安息香酸ビニル、パラ−t−ブチル安息香酸ビニルなどがあげられ、相溶性の向上、光沢の向上、ガラス転移温度の上昇などの特性を付与できる。
【0043】
アルキルビニルエーテル類としては、たとえばメチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテルなどがあげられ、光沢の向上、柔軟性の向上などの特性を付与できる。
【0044】
非フッ素系のオレフィン類としては、たとえばエチレン、プロピレン、n−ブテン、イソブテンなどがあげられ、可とう性の向上などの特性を付与できる。
【0045】
本発明においては、これらのモノマーを溶液重合法で共重合する。重合条件は前記の特開昭62−143915号公報、特開昭63−152677号公報、特開平1−249866号公報などに記載のものが採用される。
【0046】
好ましくは、有機溶剤中で、重合開始剤の存在下、重合温度10〜90℃にて1〜20時間重合反応を行なう。
【0047】
有機溶剤としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチルなどのエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;ヘキサン、シクロヘキサン、オクタンなどの炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレンなどの芳香族炭化水素類;メタノール、エタノール、tert−ブタノール、iso−プロパノール、エチレングリコールモノアルキルエーテルなどのアルコール類;テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサンなどの環状エーテル類;ジメチルスルホキシドなど、またはこれらの混合物などがあげられる。これらのなかでは、アセトン、酢酸エチル、イソプロパノールがフッ素樹脂の溶解性の点で有利であり、さらにはアセトン、酢酸エチルが水性エマルションの調製時に留去しやすい点で最も好ましい。
【0048】
重合開始剤としては、たとえばオクタノイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド類;イソプロポキシカルボニルパーオキサイド、tert−ブトキシカルボニルパーオキサイドなどのジアルコキシカルボニルパーオキサイド類;メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイドなどのケトンパーオキサイド類;過酸化水素、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイドなどのハイドロパーオキサイド類;ジ−tert−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイドなどのジアルキルパーオキサイド類;tert−ブチルパーオキシアセテート、tert−ブチルパーオキシピバレートなどのアルキルパーオキシエステル類;過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムなどの過硫酸塩類(さらに必要に応じて亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、ナフテン酸コバルト、ジメチルアニリンなどの還元剤も併用できる);酸化剤(たとえば過酸化アンモニウム、過酸化カリウムなど)と還元剤(たとえば亜硫酸ナトリウムなど)および遷移金属塩(たとえば硫酸鉄など)からなるレドックス開始剤類;2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−シクロプロピルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル、2,2’−アゾビス[2−(ヒドロキシメチル)プロピオニトリル]、4,4’−アゾビス(4−シアノペンテン酸)などのアゾ系化合物などが使用できる。
【0049】
さらに必要に応じて、分子量調整剤としてメタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール類なども使用してもよい。
【0050】
かくして得られる官能基含有フルオロオレフィン共重合体(A1)の分子量は数平均分子量で100,000以下、好ましくは50,000以下のものが溶液重合性の点で好ましく、4,000以上、特に8,000以上のものが耐候性、耐久性に優れる点で好ましい。
【0051】
以下に好ましい具体的な官能基含有フルオロオレフィン共重合体(A1)を例示する。
【0052】
TFE/エチルビニルエーテル/ヒドロキシブチルビニルエーテル/3−(2−アリロキシエトキシカルボニル)プロピオン酸共重合体、TFE/バーサティック酸ビニル/ヒドロキシブチルビニルエーテル/3−(2−アリロキシエトキシカルボニル)プロピオン酸共重合体、TFE/酢酸ビニル/ヒドロキシブチルビニルエーテル/3−(2−アリロキシエトキシカルボニル)プロピオン酸共重合体、TFE/酢酸ビニル/ヒドロキシエチルビニルエーテル/3−(2−アリロキシエトキシカルボニル)プロピオン酸共重合体、TFE/バーサティック酸ビニル/ヒドロキシエチルビニルエーテル/3−(2−アリロキシエトキシカルボニル)プロピオン酸共重合体。
【0053】
前記(2)の官能基含有フッ素樹脂水性エマルションのフッ素樹脂は官能基含有含フッ素グラフト共重合体(A2)も好ましい。
【0054】
官能基含有含フッ素グラフト共重合体(A2)は、カルボキシル基または水酸基を有する含フッ素重合体(a1)とカルボキシル基または水酸基と反応し得る官能基および重合性不飽和二重結合を有する化合物(a2)との反応生成物である重合性不飽和二重結合含有含フッ素重合体(a3)にビニル単量体(b1)をグラフト重合して得られる含フッ素グラフト共重合体である。
【0055】
含フッ素重合体(a3)には、含フッ素重合体(a1)が有するカルボキシル基または水酸基と重合性不飽和二重結合含有化合物(a2)が有する官能基とを反応させることにより、重合性不飽和二重結合が導入されている。
【0056】
かかる含フッ素重合体(a1)としては、フルオロオレフィン単位とカルボキシル基含有単量体単位および/または水酸基含有単量体単位を含む共重合体が好ましく例示できる。
【0057】
フルオロオレフィンとしては、たとえば前記官能基含有含フッ素グラフト共重合体(A1)の製造で例示したものが好ましく例示できる。
【0058】
カルボキシル基含有単量体としては、前記式(II)で表わされる不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸、そのモノエステルまたは酸無水物などの不飽和カルボン酸類;または前記式(III)で表わされるカルボン酸基含有ビニルエーテル単量体、カルボン酸基含有アリルエーテル単量体などがあげられ、前記の具体例の単量体が例示できる。
【0059】
カルボキシル基含有単量体のなかでは、式(II)で表される単量体およびカルボン酸基含有アリルエーテル単量体がより好ましい。
【0060】
フルオロオレフィン単位とカルボキシル基含有単量体単位とはモル比で100/50〜100/0.2、さらには100/20〜100/0.5、特に100/6〜100/0.9であることが好ましい。カルボキシル基含有単量体単位が少なくなるとグラフト率の低下による性能低下となり、一方多くなるとフルオロオレフィン重合体である主鎖(非グラフト鎖)の親水性が高すぎることによる性能低下となる傾向がある。
【0061】
含フッ素重合体(a1)は水酸基含有単量体単位を単独で含んでいるものであってもよい。
【0062】
水酸基含有単量体としては、たとえば前記式(III)で表わされるヒドロキシアルキルビニルエーテルやヒドロキシアルキルアリルエーテルがあげられ、前記の具体例の単量体が例示できる。
【0063】
さらに水酸基とカルボキシル基の両方を含フッ素重合体(a1)に導入することにより、イソシアネート系硬化剤による架橋が可能となり、塗膜性能が向上するといった効果が得られる。なお、水酸基の導入は後述するグラフト用単量体として水酸基含有単量体を使用することによっても可能である。
【0064】
そのほか、必要に応じて他の共重合可能な単量体単位を含フッ素重合体(a1)に含有させてもよい。他の共重合可能なモノマーとしては、カルボン酸ビニルエステル類、アルキルビニルエーテル類、非フッ素系オレフィン類などの前記官能基含有フルオロオレフィン共重合体(A1)で例示したものが好ましくあげられる。
【0065】
含フッ素重合体(a1)の分子量は数平均分子量で100,000以下、好ましくは50,000以下のものが溶液重合性の点で好ましく、4,000以上、特に8,000以上のものが耐候性、耐久性に優れる点で好ましい。
【0066】
以下に好ましい具体的な含フッ素重合体(a1)を例示するが、これらの共重合体に限定されるものではない。
【0067】
(1)カルボキシル基を単独で含有する含フッ素重合体:
テトラフルオロエチレン(TFE)/プロピオン酸ビニル/バーサッティク酸ビニル/クロトン酸共重合体、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)/酢酸ビニル/バーサティック酸ビニル/クロトン酸共重合体、TFE/酢酸ビニル/ウンデシレン酸共重合体、HFP/酢酸ビニル/ウンデシレン酸共重合体、TFE/バーサティック酸ビニル/ウンデシレン酸共重合体、HFP/バーサティック酸ビニル/ウンデシレン酸共重合体、TFE/酢酸ビニル/ビニル酢酸共重合体、HFP/酢酸ビニル/ビニル酢酸共重合体、TFE/バーサティック酸ビニル/ビニル酢酸共重合体、HFP/バーサティック酸ビニル/ビニル酢酸共重合体、TFE/酢酸ビニル/マレイン酸モノエチル共重合体、HFP/酢酸ビニル/マレイン酸モノエチル共重合体、TFE/バーサティック酸ビニル/マレイン酸モノエチル共重合体、HFP/バーサティック酸ビニル/マレイン酸モノエチル共重合体など。
【0068】
(2)水酸基を(単独で)含有する含フッ素重合体:
TFE/バーサティック酸ビニル/ヒドロキシブチルビニルエーテル(HBVE)重合体、TFE/酢酸ビニル/HBVE共重合体、HFP/酢酸ビニル/HBVE共重合体、HFP/バーサティック酸ビニル/HBVE共重合体など。
【0069】
(3)カルボキシル基と水酸基を含有する含フッ素重合体:
TFE/バーサティック酸ビニル/ヒドロキシブチルビニルエーテル(HBVE)/クロトン酸共重合体、TFE/酢酸ビニル/HBVE/ウンデシレン酸共重合体、HFP/酢酸ビニル/HBVE/ウンデシレン酸共重合体、TFE/バーサティック酸ビニル/HBVE/ウンデシレン酸共重合体、HFP/バーサティック酸ビニル/HBVE/ウンデシレン酸共重合体、TFE/酢酸ビニル/HBVE/ビニル酢酸共重合体、HFP/酢酸ビニル/HBVE/ビニル酢酸共重合体、TFE/バーサティック酸ビニル/HBVE/ビニル酢酸共重合体、HFP/バーサティック酸ビニル/HBVE/ビニル酢酸共重合体、TFE/酢酸ビニル/HBVE/マレイン酸モノエチル共重合体、HFP/酢酸ビニル/HBVE/マレイン酸モノエチル共重合体、TFE/バーサティック酸ビニル/HBVE/マレイン酸モノエチル共重合体、HFP/バーサティック酸ビニル/HBVE/マレイン酸モノエチル共重合体など。
【0070】
含フッ素重合体(a1)の製造は、前記官能基含有フルオロオレフィン共重合体(A1)と同様に、溶液重合法で製造することが好ましい。乳化重合で製造しようとすると、フルオロオレフィンの重合性が低い点、カルボキシル基や水酸基含有単量体の重合性が低い点、重合体の組成分布が大きい点、多量の乳化剤が必要な点などで不充分である。
【0071】
溶液重合法および重合条件、有機溶剤、重合開始剤、分子量調整剤などは、前記官能基含有フルオロオレフィン共重合体(A1)で例示したものが好ましくあげられる。
【0072】
かくして得られたカルボキシル基または水酸基含有含フッ素重合体(a1)に、カルボキシル基または水酸基と反応し得る官能基および重合性不飽和二重結合を有する化合物(a2)を反応させて重合性不飽和二重結合含有含フッ素重合体(a3)を得る。
【0073】
カルボキシル基または水酸基と反応し得る官能基としては、イソシアネート基、エポキシ基、アミノ基、カルボジイミド基などがあげられるが、これらのうちイソシアネート基およびエポキシ基がカルボキシル基または水酸基との反応が迅速に生起することから好ましい。
【0074】
化合物(a2)としては、たとえば2−イソシアナトエチルメタクリレートなどのイソシアネート基含有化合物;グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、アリルグリシジルエーテルなどのエポキシ基含有化合物などがあげられる。
【0075】
これらのうち、2−イソシアナトエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレートなどが好ましい。
【0076】
なお、イソシアネート基は水酸基とも反応するが、カルボキシル基との反応が優先する。
【0077】
化合物(a2)と含フッ素重合体(a1)との反応は、有機溶剤中で両者を混合することにより実施できる。好ましい反応条件としては、反応温度20〜150℃で1〜15時間が採用できる。
【0078】
有機溶剤は含フッ素重合体(a1)および化合物(a2)を溶解するものであればよく、たとえば含フッ素重合体(a1)の重合に使用した有機溶媒が使用できる。
【0079】
化合物(a2)は、含フッ素重合体(a1)1モルに対し、化合物(a2)の官能基が2〜0.01モル、好ましくは1〜0.1、特に1〜0.9モルとなる量反応させる。
【0080】
ついで得られた重合性不飽和二重結合含有含フッ素重合体(a3)にビニル単量体(b1)をグラフト共重合させて、含フッ素グラフト共重合体(A2)を得る。
【0081】
グラフトさせるビニル単量体(b1)は、含フッ素重合体(a3)中の重合性不飽和二重結合とグラフト共重合可能なビニル単量体であればよい。
【0082】
特に、種々の特性を付与する場合は、種々の官能基を有するビニル単量体を使用すればよい。
【0083】
たとえば含フッ素グラフト共重合体(a3)に前記特定の酸価(5〜200mgKOH/g)を与え、水溶性や水分散性を付与するためには、カルボキシル基および/またはスルホン酸基を含有するビニル単量体を使用すればよい。
【0084】
また、含フッ素グラフト共重合体(a3)に前記特定の水酸基価(10〜300mgKOH/g)を与え、イソシアネート化合物と架橋反応を生起させるためには、架橋性水酸基を含有するビニル単量体を使用すればよい。また、イソシアネート化合物と架橋反応を生起させる官能基としては、水酸基のほか、カルボキシル基、カルボニル基、アミノ基があり、これらの1種または2種以上を有するビニル単量体を併用してもよい。
【0085】
そのほか密着性、顔料分散性という特性を付与するにはカルボキシル基、アミノ基、アミド基、エポキシ基を有するビニル単量体を使用すればよい。
【0086】
ビニル単量体(b1)の具体例としては、たとえばメチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレートなどのメタクリル酸エステル類;メチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルへキシルアクリレートなどのアクリル酸エステル類;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、クロトン酸などの不飽和カルボン酸類;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−ブトキシメチルメタクリルアミドなどのアミド化合物類;アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシプロピルなどの水酸基含有単量体類;アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルなどのエポキシ基含有単量体類;γ−トリメトキシシランメタクリレート、γ−トリエトキシシランメタクリレートなどのシロキサン基含有単量体類;アクロレインなどのアルデヒド基含有単量体類などの1種または2種以上があげられる。
【0087】
これらのうち、高い重合性と市販されている単量体の豊富性の点から(メタ)アクリル系単量体が好ましい。
【0088】
グラフト共重合は、有機溶剤中で重合開始剤を加えて行なうことができる。有機溶媒としては含フッ素重合体(a1)の重合に使用する有機溶剤が使用でき、また重合開始剤としても同じく含フッ素重合体(a1)の重合に使用する重合開始剤が使用できる。
【0089】
グラフト共重合の重合条件としては、たとえば溶液中でのラジカル重合、溶液中でのイオン重合などが採用できる。
【0090】
グラフト共重合は、含フッ素重合体(a3)を分離してから行なってもよいし、含フッ素重合体(a1)と化合物(a2)との反応に引き続いて実施してもよい。
【0091】
ビニル単量体(b1)の共重合量は、含フッ素重合体(a3)100重量部に対して1重量部以上、さらには5重量部以上、特に10重量部以上であるのが、グラフト化による改質効果を奏させる点で好ましい。上限は300重量部、さらには100重量部、特に50重量部であり、多くなりすぎるとフッ素樹脂に由来する性能が低下する傾向にある。
【0092】
官能基含有含フッ素グラフト共重合体(A2)の水酸基価は、10mgKOH/g以上、さらには30mgKOH/g以上、特に50mgKOH/g以上の水酸基価を有していることが架橋密度が高く、耐汚染性、耐候性、硬度に優れる点で好ましい。また水酸基価の上限は300mgKOH/g、好ましくは150mgKOH/gであることが塗膜に可とう性を付与する点で有利である。
【0093】
グラフト鎖がカルボキシル基を有する場合、グラフト鎖の酸価は20mgKOH/g以上、好ましくは50mgKOH/g以上、さらには100mgKOH/g以上で、800mgKOH/g以下、好ましくは500mgKOH/g以下、さらには300mgKOH/g以下がより好ましい。
【0094】
また、グラフト重合後の含フッ素グラフト共重合体(A2)全体の酸価は5mgKOH/g以上、好ましくは10mgKOH/g以上、さらには20mgKOH/g以上で、200mgKOH/g以下、好ましくは150mgKOH/g以下、さらには100mgKOH/g以下がより好ましい。
【0095】
グラフト鎖の分子量は、使用目的や取り扱いの利便性などによって適宜選択すればよいが、数平均分子量で1,000以上、さらには2,000以上、特に3,000以上で、100,000以下、さらには50,000以下、特に20,000以下であるのが好ましい。
【0096】
グラフト化率は10重量%以上、さらには30重量%以上、特に50重量%以上と高いものである。
【0097】
官能基含有フッ素樹脂エマルション(A)は、上記の官能基含有含フッ素重合体の重合反応溶液を攪拌下に水中に投入するか、攪拌下に重合反応溶液に水を加えることによって調製できる。
【0098】
官能基としてそのままでは水溶性または水分散性ではないアニオン性官能基、たとえばカルボキシル基やスルホン酸基が存在するときは、水と混合する前、混合する際、または混合後に中和処理を行ない、水溶性または水分散性の官能基に変換する。
【0099】
中和に使用する中和剤としては、アンモニア;ジエチルアミン、エチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、モノプロパノールアミン、イソプロパノールアミン、エチルアミノエチルアミン、ヒドロキシエチルアミン、ジエチレントリアミンなどの有機アミン類;水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物などがあげられる。これらのうちアンモニア、トリエチルアミン、ジエタノールアミンが入手の利便性、エマルションの安定性などの点で好ましく、特にアンモニアとトリエチルアミンが取り扱い性容易の点で有利である。
【0100】
中和剤は、水溶液の形態で使用することが好ましいが、ガスまたは固形分の形態で使用してもよい。
【0101】
中和の結果、アニオン性官能基は、アンモニウム塩、アミン塩、アルカリ金属塩の形となる。
【0102】
中和は、官能基含有含フッ素樹脂が有する酸価のうち、5mgKOH/g以上、好ましくは10mgKOH/g以上、また70mgKOH/g以下、そして好ましくは50mgKOH/g以下に相当するアニオン性官能基を中和剤で中和すればよい。
【0103】
官能基含有フッ素樹脂エマルション(A)の固形分濃度は、塗装効率がよいことから通常20重量%以上、好ましくは30重量%以上であり、またエマルションの安定性の点から70重量%以下、好ましくは60重量%以下である。
【0104】
官能基含有フッ素樹脂エマルション(A)の安定性を向上させるために、さらに界面活性剤を使用してもよい。好ましい界面活性剤としては、たとえばアニオン性乳化剤、非イオン性乳化剤又はそれらの組み合わせを使用することができ、場合により両性乳化剤、カチオン性界面活性剤を使用することもできる。
【0105】
アニオン性界面活性剤としては、たとえば高級アルコールの硫酸エステルのナトリウム塩、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ジアルキルスクシネートスルホン酸のナトリウム塩またはアルキルジフェニルエーテルスルホン酸のナトリウム塩などを使用することができる。これらの中で好ましい具体例は、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキル(またはアルキルフェニル)エーテルスルホネート等である。非イオン性乳化剤としては、たとえばポリオキシエチレンアルキルエーテルまたはポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルなどを使用することができる。好ましい具体例は、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等である。両性乳化剤としては、ラウリルベタイン等が好適である。カチオン性界面活性剤としては、たとえばアルキルピリジニウムクロリド、アルキルアンモニウムクロリド等を使用することができる。また、単量体と共重合性の乳化剤、たとえばスチレンスルホン酸ナトリウム、アルキルアリールスルホン酸ナトリウム等も使用することができる。
【0106】
官能基含有フッ素樹脂エマルション(A)中の官能基含有フルオロオレフィン共重合体粒子の粒子径は、通常50μm以上、好ましくは100μm以上であり、また300μm以下、好ましくは200μm以下である。
【0107】
また、有機溶剤を蒸留または減圧蒸留により留去し、有機溶剤を含まないかまたは少量の有機溶剤を含むフッ素樹脂エマルションとすることもできる。たとえば、エマルションの調製の際、溶液重合に使用した有機溶剤を加熱しながら留去することができる。エネルギーコストの節約や熱に不安定な官能基や共重合単位を含む場合もあることから、加熱はできるだけ低い温度で行なうことが望ましい。好ましい加熱温度は100℃以下、さらに好ましくは80℃以下であり、また40℃以上、さらに好ましくは60℃以上である。
【0108】
本発明の特徴の一つは、硬化剤として水分散性の非ブロック型イソシアネート化合物(B)を使用する点にある。フッ素樹脂塗料用の硬化剤としては、非ブロック型イソシアネート化合物以外に、ブロック型イソシアネート化合物やメラミン樹脂などが使用されているが、ブロック型イソシアネート化合物、メラミン樹脂では常温硬化できないという課題がある。
【0109】
この点、非ブロック型イソシアネート化合物(B)は、官能基含有フッ素樹脂エマルション(A)と併用することにより、常温での硬化性に優れており、また架橋反応性の点でも有利である。
【0110】
なお非ブロック型イソシアネート化合物とは、アルコールやオキシム化合物とイソシアネート化合物との反応で得られるブロック型イソシアネート化合物以外の、通常のイソシアネート化合物のことをいう。
【0111】
非ブロック型イソシアネート化合物(B)としては、特開平11−310700号公報、特開平7−330861号公報、特開昭61−291613号公報などに記載されているポリエチレンオキシド化合物で変性された非ブロック型イソシアネート化合物が好適である。
【0112】
具体的には、ポリエチレンオキシド化合物で変性した非ブロック型脂肪族ポリイソシアネート化合物または非ブロック型芳香族ポリイソシアネート化合物が例示される。これらのなかでは、耐候性に優れる点から非ブロック型脂肪族系イソシアネート化合物が好ましい。
【0113】
脂肪族ポリイソシアネート化合物のうち鎖状脂肪族ポリイソシアネート化合物としては、たとえばトリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ジイソシアナトヘキサン(=ヘキサメチレンジイソシアネート)、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、2,4,4−または2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアネートメチルカプトロエートなどのジイソシアネート類;リジンエステルトリイソシアネート、1,4,8−トリイソシアネートオクタン、1,6,11−トリイソシアネートウンデカン、1,8−ジイソシアネート−4−イソシアネートメチルオクタン、1,3,6−トリイソシアネートヘキサン、2,5,7−トリメチル−1,8−ジイソシアネート−5−イソシアネートメチルオクタンなどのポリイソシアネート類が例示できる。
【0114】
脂肪族ポリイソシアネート化合物のうち脂環族ポリイソシアネート化合物としては、たとえば1,3−シクロペンテンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−イソシアナトメチル−シクロヘキサン(=イソホロンジイソシアネート)、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−または1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンなどのジイソシアネート類;1,3,5−トリイソシアネートシクロヘキサン、1,3,5−トリメチルイソシアネートシクロヘキサン、2−(3−イソシアネートプロピル)−2,5−ジ(イソシアネートメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、2−(3−イソシアネートプロピル)−2,6−ジ(イソシアネートメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、3−(3−イソシアネートプロピル)−2,5−ジ(イソシアネートメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5−(2−イソシアネートエチル)−2−イソシアネートメチル−3−(3−イソシアネートプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、6−(2−イソシアネートエチル)−2−イソシアネートメチル−3−(3−イソシアネートプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5−(2−イソシアネートエチル)−2−イソシアネートメチル−2−(3−イソシアネートプロピル)−ビシクロ(2.2.1)−ヘプタン、6−(2−イソシアネートエチル)−2−イソシアネートメチル−2−(3−イソシアネートプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタンなどのポリイソシアネート類が例示できる。
【0115】
芳香族系イソシアネート化合物としては、たとえばトリレンジイソシアネーなどがあげられる。
【0116】
これらのイソシアネート化合物は単独でまたは2種以上組合わせて使用してもよい。
【0117】
変性剤であるポリエチレンオキシド化合物としては、たとえばポリオキシエチレンモノオクチルエーテル、ポリオキシエチレンモノラウリルエーテル、ポリオキシエチレンモノデシルエーテル、ポリオキシエチレンモノセチルエーテル、ポリオキシエチレンモノステアリルエーテル、ポリオキシエチレンモノオレイルエーテルなどのポリオキシエチレンC8〜24アルキルエーテル、好ましくはポリオキシエチレンC10〜22アルキルエーテル、特にポリオキシエチレンC12〜18アルキルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル類;たとえばポリオキシエチレンモノオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンモノノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンモノデシルフェニルエーテルなどのポリオキシエチレンC8〜12アルキル−C6〜12アリールエーテルなどのポリオキシエチレンモノアルキルアリールエーテル類;たとえばポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンジステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレートなどのポリオキシエチレンソルビタン−モノ、ジまたはトリC10〜24脂肪酸エステルなどのポリオキシエチレンソルビタン高級脂肪酸エステル類;たとえばポリオキシエチレンモノラウリン酸エステル、ポリオキシエチレンモノステアリン酸エステルなどのポリオキシエチレンモノC10〜24脂肪酸エステルなどのポリオキシエチレンモノ高級脂肪酸エステル類などのノニオン性乳化剤として知られている化合物が例示できる。これらの化合物は単独でまたは2種以上組合わせて使用できる。好ましいものとしては、水分散性が容易である点からポリオキシエチレンC8〜24アルキルエーテル、ポリオキシエチレンC8〜12アルキルフェニルエーテルがあげられる。
【0118】
変性は、たとえば、溶液中にてイソシアネート化合物を変性剤と混合し、加熱して反応させるなどの方法で行なうことができる。
【0119】
前記ポリイソシアネート化合物と変性剤との割合は、ポリイソシアネート化合物中のイソシアネート基1当量に対して、変性剤の活性水素原子0.01〜0.034当量、好ましくは0.015〜0.03当量程度の範囲から選択できる。
【0120】
ポリエチレンオキシド変性の非ブロック型イソシアネート化合物の市販品としては、たとえば住友バイエルウレタン(株)製のバイヒジュール3100、バイヒジュールTPLS2150など;旭化成(株)製のデュラネートWB40−100などがあげられるが、これらに限定されるものではない。
【0121】
非ブロック型イソシアネート化合物(B)は、通常、水溶液または水分散液の形態で使用する。
【0122】
さらに硬化を促進するために、公知の硬化促進剤を併用してもよい。硬化促進剤としては、たとえばジブチル錫ジラウレートなどが例示できる。
【0123】
本発明のフッ素樹脂水性塗料用組成物は、官能基含有フッ素樹脂エマルション(A)と非ブロック型イソシアネート化合物(B)を混合することによって調製できる。
【0124】
官能基含有フッ素樹脂エマルション(A)(固形分)と非ブロック型イソシアネート化合物(B)の混合割合(重量比)は、A/B=100/100〜100/5であり、100/10〜100/30が好ましい。
【0125】
本発明の組成物には、必要に応じて他の樹脂エマルションや水性塗料に使用される通常の添加剤を配合してもよい。
【0126】
他の樹脂エマルションとしては、アクリル樹脂エマルション、ポリウレタン樹脂エマルション、ポリエステル樹脂エマルションなどがあげられる。
【0127】
また、上記のように他の樹脂エマルションをブレンドする以外に、上記の溶液重合法で製造した官能基含有フルオロオレフィン共重合体と他の樹脂とを複合化した形態とすることも好ましい。この複合化は、たとえば溶液重合で製造した官能基含有フルオロオレフィン共重合体を水性分散体とし、他の非フルオロオレフィンモノマーをシード重合(乳化重合)することにより行なうことができる(たとえば特開2002−179871号公報参照)。また、溶液重合で製造した官能基含有フルオロオレフィン共重合体を高分子乳化剤または高分子分散剤として存在させ、非フルオロオレフィンモノマーを乳化重合することによっても製造できる(たとえば特開平7−238253号公報参照)。乳化重合で製造された複合化重合体はエマルションの形態で得られる。
【0128】
非フルオロオレフィンモノマーは官能基を有していてもいなくてもよい。具体例としては、たとえばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、クロトン酸などの不飽和カルボン酸;アクリル酸メチルなどのアクリル酸エステル、メタクリル酸メチルなどのメタクリル酸エステル;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−ブトキシメチルメタクリルアミドなどのアミド化合物;アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシプロピルなどの水酸基含有単量体;アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルなどのエポキシ基含有単量体;γ−トリメトキシシランメタクリレート、γ−トリエトキシシランメタクリレートなどのシラノール基含有単量体;アクロレインなどのアルデヒド基含有単量体;スチレン、アクリロニトリルなどのビニル化合物などがあげられる。
【0129】
本発明の水性塗料用組成物に配合してもよい塗料用添加剤としては、たとえば界面活性剤、顔料、分散剤、増粘剤、防腐剤、紫外線吸収剤、消泡剤、レベリング剤などがあげられる。
【0130】
界面活性剤としては、エマルション(A)の安定化についての説明で例示したものが使用できる。
【0131】
また、増粘剤としてはプライマルQR708(ロームアンドハース社製)などが、消泡剤としてはByk023(ビックケミージャパン(株))などが、分散剤としてはByk190(ビックケミージャパン(株))、SNディスパーサント5027(サンノプコ(株))などが例示できる。
【0132】
本発明の水性塗料用組成物は、耐候性塗料、電着塗料、コイルコート用塗料、自動車用塗料、落書き防止用塗料、重防食塗料など各種の塗料材料として有用である。塗装方法としてはそれらの塗料に採用されている通常の塗装方法、たとえばロールコート、ディッピング、刷毛塗り、スプレー、ローラーなどや、電着塗装法などが採用できる。
【0133】
本発明の組成物から形成した塗膜は常温で硬化させることができる。これは官能基含有フルオロオレフィン共重合体中に架橋性官能基を比較的多く導入できることと、特に硬化剤であるイソシアネート化合物として非ブロック型のものを使用している効果である。なお、硬化を促進するために加熱してもよい。
【0134】
硬化して得られた塗膜は、充分に硬化(架橋)が進んでおり、乳化重合で得られたフッ素樹脂水性塗料に比べて、塗膜強度、耐溶剤性、耐汚染性が向上しており、外観も平滑で、艶むら、くすみなどの塗膜欠陥も減少している。
【0135】
つぎに本発明を合成例および実施例に基づいてさらに具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0136】
また、本明細書における数平均分子量および数平均粒子径は、それぞれつぎの方法で測定したものである。
【0137】
(数平均分子量)
測定装置:東ソー(株)製のGPC(型式HLC−8020)
測定条件:カラムとしてTSKgel:GMHXLを3本、G2500HXLを1本、GRCXL−Lを1本使用する。溶離液としてはテトラヒドロフランを使用し、分子量の標準サンプルとしては分子量既知のポリスチレンを使用する。
【0138】
(数平均粒子径)
測定装置:Honeywell(日機装(株))社製のMICROTRAC UPA MODEL:9340−UPA
測定条件:水希釈状態での測定
【0139】
合成例1
6Lステンレス製オートクレーブにアセトン1.6kg、イソプロピルアルコール500g、テトラフルオロエチレン680g(6.8モル)を加え、窒素置換し、67.5℃まで昇温した。これに撹拌下オクタノイルパーオキサイド溶液(固形分30%)を60g加え、エチルビニルエーテル178g(2.5モル)、ヒドロキシブチルビニルエーテル287g(2.5モル)、3−(2−アリロキシエトキシカルボニル)プロピオン酸[=エチレングリコールモノアリルエーテルと無水コハク酸との反応物]250g(1.2モル)の混合物を2時間かけて加えた。モノマーの添加終了後のさらに2時間後に同一の過酸化物溶液をさらに60g追加した。さらに2時間撹拌を続けた後、80℃まで昇温し3時間撹拌した。反応混合物を室温まで冷却し、未反応モノマーをパージしたのちさらに窒素置換して、生成物3.4kg(固形分36.9重量%)を得た。得られた共重合体は、テトラフルオロエチレン50モル%、エチルビニルエーテル20モル%、ヒドロキシブチルビニルエーテル20モル%、3−(2−アリロキシエトキシカルボニル)プロピオン酸10モル%の組成で、数平均分子量(Mn)5000、水酸基価104mgKOH/g、酸価52mgKOH/gであった。この溶液にアンモニア水を加えてカルボキシル基を中和した。減圧下に有機溶剤を徐々に除きながら水2.8kgを徐々に加えてエマルション(固形分30重量%)とした。これをF−1とする。
【0140】
実施例1
100mlポリカップに50gの前記F−1を入れ、0.5gの増粘剤(プライマルQR708)、0.25gの消泡剤(Byk023)、0.15gの硫酸エステル型アニオン性界面活性剤(日本乳化剤(株)製のNewcol−707SF)および5.0gのイオン交換水を加え、ホモディスパーで1000rpmで20分間撹拌し、一晩放置した。これに14.5gのオキシエチレン変性非ブロック型イソシアネート化合物(バイヒジュール3100)、3.5gのメトキシプロピルアセテートを加え、2000rpmで撹拌しながらイオン交換水20gを徐々に加え、約5分間撹拌した。この混合物をメッシュで濾過して、あらかじめ溶剤可溶型架橋型フッ素塗料(白)を塗装しサンディング処理したアルミニウム板上に、アプリケーターを用いて塗装して塗板を作製した。これを室温で5日間放置して硬化させ試験片とし、つぎの特性を調べた。結果を表1に示す。
外観:目視で塗膜外観を観察する。
A:艶むらがなくくすみもない。
B:艶むらがあるまたは多少くすみがある。
C:艶むらがあるまたはくすみが多い。
光沢:JIS K5400に準じて、60度の鏡面光沢度を測定する。
鉛筆硬度:JIS K5400に準じて測定する。
耐溶剤試験:塗膜表面をメチルエチルケトン(MEK)を含浸させた不織布でふき取る操作を行なう。ふき取り操作は200回往復が終了するまで行なう。試験終了後、目視により塗膜を観察し、以下の基準で評価する。
A:塗膜に溶解または光沢低下が認められない。
B:塗膜にわずかな溶解または光沢低下が認められる。
C:著しい溶解または光沢低下が認められる。
耐汚染性の試験:赤色インクのフェルトペン(サクラクレパス(株)製のサクラペンタッチ。商品名)により塗膜の10mm×10mmの面積を塗りつぶし、40℃で24時間放置した後にエタノールで拭きとり、赤色インクの残存状態を目視で観察する。評価はつぎの段階で行なう。
A:完全に除去された。
B:わずかに残った。
C:やや残った。
D:著しく残った。
【0141】
比較例1
実施例1においてF−1に代えて、特開平7−324180号公報の合成例1に従い乳化重合法で製造したクロロトリフルオロエチレン/ヒドロキシブチルビニルエーテル/エチルビニルエーテル/シクロヘキシルビニルエーテル/CH2=CHOCH2CH2CH2(CH2CH2O)nHの共重合体水性エマルションを用いたほかは実施例1と同様にして塗料用組成物を調製し、試験片を作製し、特性を調べた。結果を表1に示す。
【0142】
なお、CH2=CHOCH2CH2CH2(CH2CH2O)nHは数平均分子量が約500のものである。
【0143】
【表1】

【0144】
合成例2(含フッ素グラフト共重合体(A2)の製造)
500mlの4つ口セパラブルフラスコにテトラフルオロエチレン(TFE)、バーサティック酸ビニル(シェル化学社製のベオバ−10:VV−10)、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル(HBVE)、クロトン酸(49.0/39.5/10.0/1.5モル比)の共重合体(GPCで測定した数平均分子量10,500)のアセトン溶液(固形分65重量%)を142g入れ、攪拌しながら2−イソシアナトエチルメタクリレートを1.80g添加し、60℃で5時間攪拌した。次にイソプロパノール88.0g、n−ブチルアクリレート(BA)26.7g、アクリル酸(AA)6.96g、ドデシルメルカプタン0.337gを加えてよく攪拌した。この混合溶液に開始剤としてV−65(和光純薬社製の2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル))0.337gを加え、さらに60℃で2時間攪拌し、つぎに80℃に温度を上げて1時間攪拌して、含フッ素グラフト共重合体を46.5重量%濃度(固形分)で得た。このものは数平均分子量(Mn)10,500、水酸基価40mgKOH/g、酸価6mgKOH/gであった。
【0145】
合成例3〜4
表2に示す単量体を使用したほかは合成例1と同様にして含フッ素グラフト共重合体を製造した。
【0146】
表2中の略号は以下のとおりである。
TFE:テトラフルオロエチレン
HFP:ヘキサフルオロプロピレン
VAc:酢酸ビニル
VV−10:ベオバ−10。シェル化学社製のバーサチック酸ビニル
HBVE:4−ヒドロキシブチルビニルエーテル
BA:アクリル酸ブチル
AA:アクリル酸
【0147】
【表2】

【0148】
製造例1(水性分散体の製造)
300mlフラスコに合成例2で得られた含フッ素グラフト共重合体(A2−1)を50.0g入れ、次にトリエチルアミン2.13gを攪拌しながら加え、さらにゆっくりと水30.0gを攪拌しながら加えたところ、全体が白濁した。この混合溶液を60℃に加熱しながら減圧下にアセトン、イソプロパノールを留去してフッ素樹脂水性分散体得た。この水性分散体の固形分濃度は45.4重量%、含フッ素グラフト共重合体粒子(A2−1)の数平均粒子径は55nmであった。
【0149】
製造例2〜3
表3に示す含フッ素グラフト共重合体とトリエチルアミン量を採用したほかは製造例1と同様にして表3に示す含フッ素グラフト共重合体を製造した。
【0150】
【表3】

【0151】
実施例2(含フッ素塗料用組成物の調製)
100mlポリカップに50gのフッ素樹脂水性分散体(d−1)を入れ、0.5gの増粘剤(プライマルQR708)、0.25gの消泡剤(Byk023)、0.076gの硫酸エステル型アニオン性界面活性剤(日本乳化剤(株)製のNewcol−707SF、固形分30重量%)および5.0gのイオン交換水を加え、ホモディスパーで1000rpmで20分間撹拌し、一晩放置した。これに6.81gのオキシエチレン変性非ブロック型イソシアネート化合物(住友バイエルウレタン(株)製のバイヒジュール3100)、3.5gのメトキシプロピルアセテートを加え、2000rpmで撹拌しながらイオン交換水20gを徐々に加え、約5分間撹拌し、ついでメッシュで濾過して硬化性フッ素樹脂組成物を調製した。
【0152】
この硬化性フッ素樹脂組成物を、あらかじめ溶剤可溶型架橋型フッ素塗料(白)を塗装しサンディング処理したアルミニウム板上に、アプリケーターを用いて塗装して塗板を作製した。この塗板を40℃で3時間乾燥し、さらに室温で5日間放置して硬化させ試験片とし、つぎの特性を調べた。結果を表4に示す。
【0153】
なお、外観、光沢、鉛筆硬度および耐溶剤試験については、実施例1と同じ測定法と評価法を採用した。耐水性と耐雨筋汚染性については、つぎの方法で測定し評価した。
耐水性:塗膜を60℃の温水に24時間間浸漬し、その後に塗膜を目視観察する。
【0154】
異常がない場合をA、若干の白濁、艶引けが見られる場合をB、著しい白濁、艶引けが見られる場合をC、塗膜の溶解が発生している場合をDとする。
耐雨筋汚染性:塗膜を水平面に対して45度の角度で屋外に暴露し、1ヶ月後の初期との明度差、および6ヶ月後の明度差を測定する。
【0155】
明度差(ΔE)が0から2未満の場合をA、2以上4未満の場合をB、4以上6未満の場合をC、6以上10未満の場合をD、10以上の場合をEとする。
【0156】
実施例3〜4
表4に記載の配合(水性フッ素樹脂分散体は50.0g)で実施例2と同様に硬化性フッ素樹脂組成物を調製し、同様にして塗膜の評価を行なった。結果を表4に示す。
【0157】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)溶液重合法により得られた官能基を有するフルオロオレフィン共重合体を水に分散して得られた官能基含有フッ素樹脂水性エマルションおよび(B)水分散可能な非ブロック型イソシアネート化合物からなる含フッ素水性塗料用組成物。
【請求項2】
官能基を有するフルオロオレフィン共重合体(A)が、水酸基価が10〜300mgKOH/gで酸価が5〜200mgKOH/gである請求項1記載の組成物。
【請求項3】
官能基含有フッ素樹脂のエマルション(A)が、カルボキシル基または水酸基を有する含フッ素重合体とカルボキシル基または水酸基と反応し得る官能基および重合性不飽和二重結合を有する化合物との反応生成物である重合性不飽和二重結合含有含フッ素重合体に、ビニル単量体をグラフト重合して得られる官能基含有含フッ素グラフト共重合体を水に分散して得られた官能基含有フッ素樹脂水性エマルションである請求の範囲第1項記載の組成物。
【請求項4】
前記官能基含有フッ素樹脂が、水酸基、および水溶性または水分散性官能基を有している請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
前記水溶性または水分散性官能基が、アニオン性官能基をアルカリで中和して得られた官能基である請求項4記載の組成物。
【請求項6】
前記水溶性または水分散性官能基が、アニオン性官能基の水溶性または水分散性塩である請求項4または5記載の組成物。
【請求項7】
前記アニオン性官能基が、カルボキシル基および/またはスルホン酸基である請求項5または6記載の組成物。
【請求項8】
前記水溶性または水分散性塩が、アンモニウム塩、アミン塩またはアルカリ金属塩である請求項6または7記載の組成物。
【請求項9】
前記官能基含有フッ素樹脂が、構造単位としてテトラフルオロエチレンおよび/またはヘキサフルオロプロピレンを含んでいる請求項1〜8のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
前記水分散可能な非ブロック型イソシアネート化合物(B)が、ポリエチレンオキシド変性の非ブロック型イソシアネート化合物である請求項1〜9のいずれかに記載の組成物。

【公開番号】特開2009−46689(P2009−46689A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−261813(P2008−261813)
【出願日】平成20年10月8日(2008.10.8)
【分割の表示】特願2005−504936(P2005−504936)の分割
【原出願日】平成16年1月27日(2004.1.27)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】