説明

含フッ素複合重合体粒子の水性分散体の製法、水性分散体および複合重合体粒子

【課題】少ない割合のフッ素重合体量で同等またはそれ以上の含フッ素重合体の特性が得られる含フッ素複合重合体粒子を含む水性分散体およびその製法を提供する。
【解決手段】含フッ素重合体(A)をエチレン性不飽和基含有単量体(b)に溶解してえられる重合体溶液を乳化重合に供することを特徴とする含フッ素複合重合体粒子の水性分散体の製法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表面のフッ素含有率が高い含フッ素複合重合体粒子を含む水性分散体、その製法およびそれに含まれる含フッ素複合重合体粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複合化された含フッ素重合体の水性分散体の製法としては、乳化重合で製造された含フッ素重合体粒子にアクリル系単量体などのエチレン性不飽和基含有単量体をシード重合して複合化した粒子を得る方法(特許文献1ほか)、含フッ素重合体エマルションとアクリル系重合体エマルションを混合して共凝析させるエマルションブレンド法(特許文献2ほか)などが知られている。
【0003】
しかし、シード重合する方法では、シード粒子が含フッ素重合体粒子であるため、複合化された粒子の表面は必然的にアクリル系重合体の割合が多くなり、含フッ素重合体の特性が出しにくくなっている。
【0004】
一方、エマルションブレンド法では、単に均一なブレンドができるだけである。
【0005】
ところで含フッ素重合体は他の汎用樹脂に比べて高価なため、その含有割合を少なくすることが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭62−32102号公報
【特許文献2】国際公開第96/17890号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の従来の含フッ素複合重合体よりも少ない割合の含フッ素重合体量で同等またはそれ以上の含フッ素重合体の特性が得られる含フッ素複合重合体粒子を含む水性分散体およびその製法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、含フッ素複合重合体を含む水性分散体を上記のシード重合法における条件を種々変更して実験を行ったが、含フッ素重合体の特性を低下させずに含フッ素重合体の割合を少なくすることができなかった。
【0009】
ところが、含フッ素重合体と相溶性が良好でシード重合に多用されているアクリル系単量体に含フッ素重合体を溶解させ、この含フッ素重合体溶液を用いて乳化重合したところ、相溶性が良好な両者が均一に分布した粒子になるとの常識的な予測を覆し、意外なことに、溶解していた含フッ素重合体が得られた複合重合体粒子の表面に偏在していることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明は、含フッ素重合体(A)をエチレン性不飽和基含有単量体(b)に溶解してえられる重合体溶液を乳化重合に供することを特徴とする含フッ素複合重合体粒子の水性分散体の製法に関する。
【0011】
本発明において、含フッ素重合体(A)としては、構造単位としてテトラフルオロエチレン単位、ヘキサフルオロプロピレン単位、クロロトリフルオロエチレン単位およびフッ化ビニリデン単位よりなる群から選ばれる少なくとも1種のフルオロオレフィン単位を含む共重合体が好ましい。
【0012】
また、エチレン性不飽和基含有単量体(b)としては、アクリル系単量体またはメタクリル系単量体の1種または2種以上からなることが好ましい。
【0013】
前記重合体溶液の含フッ素重合体濃度としては1質量%以上で90質量%以下であることが好ましい。
【0014】
前記乳化重合は、含フッ素重合体濃度が高い場合、反応性乳化剤を少なくとも含む乳化剤の存在下に行うことが好ましい。
【0015】
本発明はまた、これらの製法により得られる水性分散体にも関する。かかる水性分散体中には、エチレン性不飽和基含有単量体(b)を重合して得られるエチレン性重合体(B)と含フッ素重合体(A)とからなる含フッ素複合重合体粒子であって、該粒子の表面のフッ素含有量が理論フッ素含有量の1.1倍以上である含フッ素複合重合体粒子が含まれる。本発明は、この含フッ素複合重合体粒子にも関する。
【0016】
また本発明は、上記の水性分散体からなる水性塗料用組成物にも関し、特に建材用塗料として有用である。
【0017】
本発明において、「含フッ素重合体(A)をエチレン性不飽和基含有単量体(b)に溶解してえられる重合体溶液」とは、含フッ素重合体(A)が単分子で溶解している場合、複数の分子が集合しているが集合体の形態で溶解または微分散している場合、複数の分子が集合しているが集合形態で部分的に溶解または部分的に膨潤している場合、含フッ素重合体がエチレン性不飽和基含有単量体に相溶化剤を介して溶解している場合などを含むが、シード重合法のような粒子状の重合体を実質的に含んでいる場合は含まない。別の観点からは、含フッ素重合体が溶媒としての単量体中を自由に移動できる状態と言ってもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、耐薬品性、耐溶剤性、塗膜硬度、耐水性などの含フッ素重合体に由来する優れた性能を従来に比べて少ない量の含フッ素重合体の複合化で獲得できる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の製法では、含フッ素重合体(A)をエチレン性不飽和基含有単量体(b)に溶解してえられる重合体溶液を乳化重合する。
【0020】
従来のシード重合法では、含フッ素重合体粒子の存在下にエチレン性不飽和基含有単量体を乳化重合しているが、エチレン性不飽和基含有単量体は含フッ素重合体粒子に一部浸入してはいる(いわゆる膨潤)が含フッ素重合体を溶解はしていない。この点で本発明の製法と基本的に異なる。なお、本発明において、含フッ素重合体(A)は結果として単量体(b)に溶解していればよく、単量体(b)と混合する時点で顆粒状でもペレット状でも微粉末状でも樹脂状でも溶液状でもよい。
【0021】
本発明で使用可能な含フッ素重合体(A)としては、官能基(後述するとおり、エチレン性不飽和基も含む。以下同様)を有する含フッ素重合体でも、官能基を有さない含フッ素重合体でもよい。これらについて以下説明する。
【0022】
(A1)官能基を有しない含フッ素重合体
(A1−1)フルオロオレフィン系重合体
フルオロオレフィンとしては、たとえばテトラフルオロエチレン(TFE)、トリフルオロエチレン(TrFE)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)、フッ化ビニル(VF)、フッ化ビニリデン(VdF)などの1種または2種以上があげられる。
【0023】
具体例としては、つぎのものがあげられる。
【0024】
(A1−1−1)TFE系重合体
PTFE、TFE/HFP系共重合体、TFE/PAVE系共重合体、TFE/エチレン系共重合体、TFE/ビニルエーテル系共重合体、TFE/ビニルエステル系共重合体、TFE/ビニルエステル/ビニルエーテル系共重合体、TFE/ビニルエーテル/アリルエーテル系共重合体などがあげられる。これらのうち、エチレン性不飽和基含有単量体への混合が良好な点から、TFE/エチレン系共重合体、TFE/ビニルエーテル系共重合体、TFE/ビニルエステル系共重合体、TFE/ビニルエステル/ビニルエーテル系共重合体、TFE/ビニルエーテル/アリルエーテル系共重合体などが好ましい。
【0025】
(A1−1−2)CTFE系重合体
PCTFE、CTFE/HFP系共重合体、CTFE/PAVE系共重合体、CTFE/エチレン系共重合体、CTFE/ビニルエーテル系共重合体、CTFE/ビニルエステル系共重合体、CTFE/ビニルエステル/ビニルエーテル系共重合体、CTFE/ビニルエーテル/アリルエーテル系共重合体などがあげられる。これらのうち、エチレン性不飽和基含有単量体への混合が良好な点から、CTFE/エチレン系共重合体、CTFE/ビニルエーテル系共重合体、CTFE/ビニルエステル系共重合体、CTFE/ビニルエステル/ビニルエーテル系共重合体、CTFE/ビニルエーテル/アリルエーテル系共重合体などが好ましい。
【0026】
(A1−1−3)VdF系重合体
PdVF重合体、VdF/TFE系共重合体、VdF/HFP系共重合体、VdF/TFE/HFP系共重合体、VdF/CTFE系共重合体、VdF/TFE/PAVE系共重合体、VdF/CTFE/TFE系共重合体、VdF/CTFE/HFP系共重合体などがあげられる。これらのうち、エチレン性不飽和基含有単量体への混合が良好な点から、VdFが重合体中に50モル%以上含有されていることが好ましい。
【0027】
(A1−2)フッ素化アクリル系重合体
αフルオロアクリレート単位やフルオロメタクリレートを含む重合体があげられる。
【0028】
具体例としては、αフルオロアクリレートとしては、たとえばCH2=CFCOOCH2CF2CF2H(4FFA)、CH2=CFCOOCH2CF2CF3(5FFA)、CH2=CFCOOCH2(CF23CF2H(8FFA)、CH2=CFCOOCH2(CF25CF2H(12FFA)など;フルオロメタクリレートとしては、たとえばCH2=C(CH3)COOCH2CF3(3FMA)、CH2=C(CH3)COOCH2CF2CF2H(4FMA)、CH2=C(CH3)COOCH2CF2CF3(5FMA)、CH2=C(CH3)COOCH2(CF22CF3(7FMA)、CH2=C(CH3)COOCH2(CF23CF2H(8FMA)などが例示できる。
【0029】
(A2)官能基含有含フッ素重合体
官能基含有単量体として、水酸基含有単量体、カルボン酸基含有単量体、反応性α,β−不飽和基を有する有機ケイ素化合物などを含む重合体があげられる。
【0030】
水酸基含有単量体の具体例としては、たとえば式(I):
CH2=CHR1 (I)
(式中、R1は−OR2または−CH2OR2(ただし、R2は水酸基を有するアルキル基である))で表わされるヒドロキシアルキルビニルエーテルやヒドロキシアルキルアリルエーテルがあげられる。R2としては、たとえば炭素数1〜8の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基に1〜3個、好ましくは1個の水酸基が結合したものである。これらの例としては、たとえば2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、4−ヒドロキシ−2−メチルブチルビニルエーテル、5−ヒドロキシペンチルビニルエーテル、6−ヒドロキシヘキシルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルアリルエーテル、4−ヒドロキシブチルアリルエーテル、グリセロールモノアリルエーテルなどがあげられる。
【0031】
カルボン酸基含有単量体としては、式(II):
【化1】

(式中、R3、R4およびR5は同じかまたは異なり、いずれも水素原子、アルキル基、カルボキシル基またはエステル基;nは0または1である)で表わされる不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸、そのモノエステルまたは酸無水物などの不飽和カルボン酸類;または式(III):
【化2】

(式中、R6およびR7は同じかまたは異なり、いずれも飽和または不飽和の直鎖または環状アルキレン基;nは0または1;mは0または1である)で表わされるカルボン酸基含有ビニルエーテル単量体などがあげられる。
【0032】
式(II)の不飽和カルボン酸類の具体例としては、たとえばアクリル酸、メタクリル酸、ビニル酢酸、クロトン酸、桂皮酸、3−アリルオキシプロピオン酸、3−(2−アリロキシエトキシカルボニル)プロピオン酸、イタコン酸、イタコン酸モノエステル、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、マレイン酸無水物、フマル酸、フマル酸モノエステル、フタル酸ビニル、ピロメリット酸ビニルなどがあげられる。
【0033】
式(III)のカルボン酸基含有ビニルエーテル単量体の具体例としては、たとえば3−(2−アリロキシエトキシカルボニル)プロピオン酸、3−(2−アリロキシブトキシカルボニル)プロピオン酸、3−(2−ビニロキシエトキシカルボニル)プロピオン酸、3−(2−ビニロキシブトキシカルボニル)プロピオン酸などの1種または2種以上があげられる。
【0034】
カルボン酸基含有単量体としては、また、前記水酸基含有含フッ素重合体へ二塩基性酸無水物を作用せしめたものなどもあげられる。
【0035】
本発明に用いられる反応性α、β−不飽和基を有する有機ケイ素化合物が有する加水分解性シリル基の具体例としては、式:
n(R83-nSi−
(式中、Xは加水分解性基または元素を示し、R8は水素原子または炭素数1〜10のアルキル基、アリール基またはアラルキル基を示し、nは1〜3の整数)で示される基が例示できる。
【0036】
前記加水分解性基としては、ハロゲン元素、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基などが含まれるが、塗料としての取り扱い性、反応速度、臭気、腐蝕物質を発生させないなどの点で、アルコキシ基を有するものを用いることが好ましい。
【0037】
ここで、アルコキシ基の炭素数は1〜10が好ましく、さらに好ましくは1〜5であり、たとえばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基が架橋反応速度の点で好ましい。
【0038】
加水分解性シリル基を含み、ビニル系単量体と共重合可能な単量体としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、アリルトリメトキシシラン、トリメトキシシリルエチルビニルエーテル、トリエトキシシリルエチルビニルエーテル、メチルジメトキシシリルエチルビニルエーテル、トリエトキシシリルプロピルビニルエーテル、メチルジメトキシシリルプロピルビニルエーテル、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシランまたはγ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシランなどがあげられる。
【0039】
含フッ素重合体(A)の製造方法は特に限定されず、乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法、塊状重合法、ミニエマルション重合法などが採用できる。重合条件は従来公知の条件が採用できる。なお、本発明では単量体に溶解するため、重合生成物の形態(たとえば粒子径など)は特に問題とならない。
【0040】
含フッ素重合体(A)の分子量は数平均分子量で1,000,000以下、さらには200,000以下、特に100,000以下のものが溶液重合性の点で好ましく、1,000以上、さらには4,000以上、特に5,000以上のものが耐候性、耐久性に優れる点で好ましい。
【0041】
本発明ではこの含フッ素重合体(A)をエチレン性不飽和基含有単量体(b)に溶解して含フッ素重合体溶液とする。したがって、エチレン性不飽和基含有単量体(b)は含フッ素重合体(A)を溶解するものであることが必要である。
【0042】
そうしたエチレン性不飽和基含有単量体(b)としては、種々の特性を有する単量体を使用すればよい。
【0043】
たとえば耐候性、耐薬品性、密着性、光沢などを向上させるためには(メタ)アクリル酸の低級アルキルエステルが好ましく、さらに耐候性を向上させるためには炭素数4〜10のアルキル基を含むエチレン性不飽和基含有単量体が好適である。
【0044】
また含フッ素複合重合体に水溶性や水分散性を付与するには、カルボキシル基および/またはスルホン酸基を含有するエチレン性不飽和基含有単量体を使用すればよいし、密着性、顔料分散性という特性を付与するにはカルボキシル基、アミノ基、アミド基、エポキシ基を有するエチレン性不飽和基含有単量体を使用すればよい。また、架橋性という特性を付与するには架橋性官能基として、たとえば水酸基、カルボキシル基、カルボニル基、アミノ基を有するエチレン性不飽和基含有単量体を使用すればよい。
【0045】
特に架橋性官能基を有する単量体および炭素数4〜10のアルキル基を含有するアクリル系またはメタクリル系単量体をそれぞれ少なくとも1種含む単量体混合物であることが好ましい。
【0046】
具体例としては、たとえばメチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレートなどの(メタ)アクリル酸の低級アルキルエステル類;2−エチルへキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレートなどの(メタ)アクリル酸の炭素数4〜10のアルキルエステル類;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、クロトン酸などの不飽和カルボン酸類;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−ブトキシメチルメタクリルアミドなどのアミド化合物類;アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシプロピルなどの水酸基含有単量体類;アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルなどのエポキシ基含有単量体類;γ−トリメトキシシランメタクリレート、γ−トリエトキシシランメタクリレートなどのシロキサン基含有単量体類;アクロレインなどのアルデヒド基含有単量体類などの1種または2種以上があげられる。
【0047】
これらのうち、高い重合性と市販されている単量体の豊富性の点から(メタ)アクリル系単量体が好ましい。
【0048】
含フッ素重合体(A)の単量体(b)への溶解は、通常の方法により行えばよい。たとえば単量体(b)へ含フッ素重合体(A)を添加する方法、含フッ素重合体(A)へ単量体(b)を添加する方法などの方法が採用される。また、常温で溶解しない場合、加温するか、相溶化剤を使用してもよい。
【0049】
含フッ素重合体溶液における含フッ素重合体(A)の濃度は、塗膜性能(耐候性、耐久性、耐薬品性)などによって適宜選定すればよいが、耐候性、耐久性などが良好な点から、通常1質量%以上、好ましくは2質量%以上、さらには3質量%以上が採用される。上限は重合安定性、光沢、密着性などの観点から90質量%、好ましくは80質量%、さらには70質量%である。
【0050】
本発明は、この含フッ素重合体溶液を乳化重合に供する。乳化重合は以下の方法および条件下に行えばよい。
【0051】
すなわち、この含フッ素重合体溶液に乳化剤と水を添加し、機械的な乳化方法を用いて含フッ素重合体溶液のプレ水分散体とする。このプレ水分散体をさらに超音波、コロイドミルまたは高圧ホモジナイザーなどの強力エネルギー付与手段を用いて剪断し、ミニエマルション化することも可能である。重合段階はこの乳化段階の後に、重合開始剤を用いて行う。このとき乳化剤としては、非反応性乳化剤、反応性乳化剤またはそれらの組み合わせを使用することができる。また重合は、エマルション重合で一般的に用いられる任意の方式、すなわちバッチ式、半連続式または連続式重合法で行うことができる。
【0052】
重合温度は約20〜100℃、特には約40〜90℃が好ましい。
【0053】
重合開始剤としては、たとえばオクタノイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド類;イソプロポキシカルボニルパーオキサイド、tert−ブトキシカルボニルパーオキサイドなどのジアルコキシカルボニルパーオキサイド類;メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイドなどのケトンパーオキサイド類;過酸化水素、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイドなどのハイドロパーオキサイド類;ジ−tert−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイドなどのジアルキルパーオキサイド類;tert−ブチルパーオキシアセテート、tert−ブチルパーオキシピバレートなどのアルキルパーオキシエステル類;過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムなどの過硫酸塩類(さらに必要に応じて亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、ナフテン酸コバルト、ジメチルアニリンなどの還元剤も併用できる);酸化剤(たとえば過酸化アンモニウム、過酸化カリウムなど)と還元剤(たとえば亜硫酸ナトリウムなど)および遷移金属塩(たとえば硫酸鉄など)からなるレドックス開始剤類;2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−シクロプロピルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル、2,2’−アゾビス[2−(ヒドロキシメチル)プロピオニトリル]、4,4’−アゾビス(4−シアノペンテン酸)などのアゾ系化合物などが使用できる。
【0054】
乳化剤としては、たとえばアニオン性乳化剤、非イオン性乳化剤またはそれらの組み合わせを使用することができ、場合により両性乳化剤、カチオン性乳化剤を使用することができる。
【0055】
非イオン性乳化剤として、たとえばポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル類;たとえばポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類;たとえばソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリオレエートなどのソルビタン高級脂肪酸エステル類;たとえばポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートなどのポリオキシエチレンソルビタン高級脂肪酸エステル類;たとえばポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレートなどのポリオキシエチレン高級脂肪酸エステル類;たとえばオレイン酸モノグリセライド、ステアリン酸モノグリセライドなどのグリセリン高級脂肪酸エステル類;たとえばポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン・ブロックコポリマーなどを例示することができる。
【0056】
アニオン性乳化剤としては、たとえばオレイン酸ナトリウムなどの高級脂肪酸塩類;たとえばドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルアリールスルホン酸塩類;たとえばラウリル硫酸ナトリウムなどのアルキル硫酸エステル塩類;たとえばポリエキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウムなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類;たとえばポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸ナトリウムなどのポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸エステル塩類;たとえばモノオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルスルホコハク酸ナトリウムなどのアルキルスルホコハク酸エステル塩;その誘導体類などが使用できる。
【0057】
特に含フッ素重合体溶液中の含フッ素重合体(A)濃度が高い場合は、反応性乳化剤を単独または非反応性乳化剤と併用すればよい。反応性乳化剤としてはアニオン性および非イオン性の何れの乳化剤にも特に限定されず、例えば、(メタ)アリル基、(メタ)アクリル基、スチリル基などのラジカル重合性不飽和基を有する乳化剤が単独で、または2種以上組合わせて使用できる。
【0058】
このようなアニオン性の反応性乳化剤としては、たとえば式(1)、(2)、(3)、(4)、(5)で示される反応性乳化剤をあげることができる。
式(1):
【化3】

式(2):
【化4】

式(3):
【化5】

式(4):
【化6】

式(5):
【化7】

(式中、R1aは炭素数1〜12の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基;R2aは水素原子またはメチル基;R2bは水素原子またはメチル基;R2cは水素原子または炭素数1〜18のアルキル基、アルケニル基、アリール基またはアラルキル基;R2dは水素原子または炭素数1〜18のアルキル基、アルケニル基、アリール基またはアラルキル基;X1は単結合またはメチレン基;EOはエチレンオキシド単位;;nは1〜50の整数;mは1〜50の整数;qは0または1)。
【0059】
上記式(1)で示されるアニオン性の反応性乳化剤の具体例としては、たとえばアデカリアソープ SE−10N、アデカリアソープ SE−20N、アデカリアソープ SE−30N(以上、旭電化工業(株)製)をあげることができる。上記式(2)で示されるアニオン性の反応性乳化剤の具体例としては、たとえばアクアロン HS−05、アクアロン HS−10、アクアロン HS−20、アクアロン HS−30(以上、第一工業製薬(株)製)をあげることができる。上記式(4)のアニオン性の反応性乳化剤の具体例としては、たとえばラテムル S−120、ラテムル S−120A、ラテムル S−180、ラテムル S−180A(以上、花王(株)製)、エレミノール JS−2(三洋化成工業(株)製)などをあげることができる。上記式(5)のアニオン性の反応性乳化剤の具体例としては、たとえばアントックス MS−60(日本乳化剤(株)製)などをあげることができる。
【0060】
またその他のアニオン性の反応性乳化剤としては、たとえばラテムル ASK(花王(株)製)などのアルキルアルケニルコハク酸エステル塩系反応性乳化剤;たとえばエレミノール RS−30(三洋化成工業(株)製)などのポリオキシアルキレン(メタ)アクリレート硫酸エステル塩系反応性乳化剤;たとえばRA−1120、RA−2614(以上、日本乳化剤(株)製)などのポリオキシアルキレンアルキルエーテル脂肪族不飽和ジカルボン酸エステル塩系反応性乳化剤;たとえばアントックス MS−2N(日本乳化剤(株)製)などの(メタ)アクリル酸スルホアルキルエステル塩系反応性乳化剤;フタル酸ジヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート硫酸エステル塩系反応性乳化剤;たとえばH−3330PL(第一工業製薬(株)製)などのモノもしくはジ(グリセロール−1−アルキルフェニル−3−アリル−2−ポリオキシアルキレンエーテル)リン酸エステル塩系反応性乳化剤などをあげることができる。
【0061】
本発明で用いることのできる非イオン性の反応性乳化剤としては、たとえば式(6)や(7)で示される反応性乳化剤をあげることができる。
式(6):
【化8】

式(7):
【化9】

(式中、R1a、R2a、R2b、R2c、X1、EOおよびmは前記と同じ)。
【0062】
上記式(6)で示される非イオン性の反応性乳化剤の具体例としては、たとえばアデカリアソープ NE−10、アデカリアソープ NE−20、アデカリアソープ NE−30(以上、旭電化工業(株)製)などをあげることができる。式(7)で示される非イオン性の反応性乳化剤の具体例としては、たとえばアクアロン RN−10、アクアロン RN−20、アクアロン RN−30、アクアロン RN−50(以上、第一工業製薬(株)製)などをあげることができる。
【0063】
またその他の非イオン性の反応性乳化剤としては、たとえばRMA−564、RMA−568(以上、日本乳化剤(株)製)などのポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル(メタ)アクリレート系反応性乳化剤;たとえばRMA−1114(日本乳化剤(株)製)などのポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル(メタ)アクリレート系反応性乳化剤などの反応性乳化剤があげられる。
【0064】
乳化剤の使用量は、含フッ素重合体(A)をエチレン性不飽和基含有単量体(b)に溶解してえられる重合体溶液100質量部に対して0.1質量部以上、好ましくは0.2質量部以上が好ましい。上限は、耐候性、耐水性、乳化重合安定性などの点から30質量部、さらには20質量部が好ましい。
【0065】
反応性乳化剤を併用する場合は、非反応性乳化剤の種類、含フッ素重合体(A)の種類や量、エチレン性不飽和基含有単量体(b)の種類や量などによって異なるが、全乳化剤中の90質量%以下、さらには85質量%以下、特に80質量%以下であることが、重合反応をスムーズに継続できる点から好ましい。もちろん、反応性乳化剤を使用しなくてもよいし、全ての乳化剤を反応性乳化剤としてもよい。
【0066】
本発明において、アクリル系共重合体水性分散液の乳化重合に際しては、得られる共重合体水性分散液の性能に悪影響を及ぼさない範囲において、以上に述べた反応性乳化剤や前記の非反応性のアニオン性乳化剤、非イオン性乳化剤とともに水溶性保護コロイドを併用することもできる。
【0067】
上記の水溶性保護コロイドとしては、たとえば部分ケン化ポリビニルアルコール、完全ケン化ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコールなどのポリビニルアルコール類;たとえばヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース塩などのセルロース誘導体;グアガムなどの天然多糖類などがあげられ、これらは、単独でも併用してもよい。
【0068】
乳化重合に際して、所望により、重合開始剤とともに還元剤を併用することができる。このような還元剤としては、たとえばアスコルビン酸、酒石酸、クエン酸、ブドウ糖、ホルムアルデヒドスルホキシラート金属塩などの還元性有機化合物;チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウムなどの還元性無機化合物などを例示できる。これら還元剤は、不飽和基含有単量体の合計100質量部に対して、0.1〜1質量部程度の量を用いるのが好ましい。
【0069】
さらにまた、乳化重合に際しては連鎖移動剤を使用することができる。このような連鎖移動剤としては、例えば、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ブチルメルカプタン、2−エチルヘキシルチオグリコレート、2−メルカプトエタノール、トリクロロブロモメタンなどをあげることができる。これら連鎖移動剤は、不飽和基含有単量体の合計100質量部に対して、0〜1質量部程度の量を用いるのが好ましい。
【0070】
かくして得られる水性分散体中には、エチレン性不飽和基含有単量体(b)を重合して得られるエチレン性重合体(B)と含フッ素重合体(A)とからなる含フッ素複合重合体粒子が存在する。
【0071】
この含フッ素複合重合体粒子は、粒子の表面のフッ素含有量が理論フッ素含有量の1.1倍以上である含フッ素複合重合体粒子である。このことは、乳化重合においてエチレン性不飽和基含有単量体(b)の重合が進むに従って溶解している含フッ素重合体(A)が重合溶液の液滴の表面に移行していき、そのまま重合が完了するからと推測される。この現象は、本来相溶性に優れる樹脂同士が均一に存在しないといった従来の予測から外れるものであり、本発明者らによって初めて見出されたものである。
【0072】
理論フッ素含有量に対する粒子の表面のフッ素含有量比は、たとえばフッ素重合体やエチレン性不飽和基含有単量体などを選択することによって制御することができる。好ましい理論フッ素含有量に対する粒子の表面のフッ素含有量比は、耐久性、耐候性の観点から1.15倍以上、さらには1.2倍以上である。上限は20倍程度である。
【0073】
粒子の表面のフッ素含有量は、化学分析用電子分光法(ESCA)で測定できる。
【0074】
含フッ素複合重合体粒子の数平均粒子径は、特に制限されないが、500nm以下、さらには400nm以下、特に300nm以下のものが得られる。下限は10nm程度である。
【0075】
本発明の製法で得られる含フッ素複合重合体粒子の水性分散体は、種々の形態で各種の用途に利用できる。
【0076】
たとえば、各種の塗料組成物の塗膜形成成分、フィルムやシートの成形材料のほか、接着剤組成物、インキ用組成物などが例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0077】
塗料組成物としては、耐候性塗料組成物、特に建築・建材用の耐候性塗料組成物、自動車の内・外装用塗料組成物、電気製品の内・外装塗料用組成物、事務機器あるいは厨房器具類の塗料組成物などが例示でき、特に耐候性・耐久性が良好な点から建材用の耐候性塗料組成物に有利に適用できる。
【0078】
耐候性塗料組成物は、たとえばクリアー塗料組成物でも、各種顔料が配合された塗料組成物でもよい。配合してもよい塗料用添加剤としては、硬化剤のほか、たとえば界面活性剤、顔料、分散剤、増粘剤、防腐剤、紫外線吸収剤、消泡剤、レベリング剤などがあげられる。
【0079】
また、含フッ素重合体(A)の製造を乳化剤を使用しない懸濁重合法、溶液重合法、塊状重合法などで製造するときは、最終的に得られる含フッ素複合重合体粒子中、さらには塗膜中に存在する乳化剤量を低減化させることができ、屋外に形成する塗料、たとえば遮熱塗料などにおいて、施工後の降雨による乳化剤が流れ落ち難い点で有利である。なお、含フッ素重合体(A)を乳化重合法で製造した場合でも、単量体(b)に溶解させる前に十分洗浄して乳化剤を除去しておけば、同様の効果が得られる。
【0080】
フィルムやシートは、本発明の水性分散体をキャスティング法といった従来公知の方法で製造することができる。
【実施例】
【0081】
つぎに実施例をあげて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0082】
本明細書で採用している測定法について、以下にまとめた。
(1)表面分析(表面のフッ素含有量)
化学分析用電子分光法(ESCA)による。
(2)数平均粒子径
レーザー光散乱粒径測定装置(大塚電子(株)ELS−3000(商品名))により測定する。
(3)耐候性試験
サンシャインウエザオメーター(スガ試験機(株)製)により2000時間促進耐候試験を行なう。
【0083】
光沢計(スガ試験器(株)製)を用い、JIS K 5400−6.7に従って60度鏡面光沢度を調べ、試験後の光沢保持率(%)で評価する。
【0084】
実施例1
1L容のポリエチレン製容器に乳化重合法で製造したフッ素樹脂(フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン/クロロトリフルオロエチレン共重合体)を16g、メチルメタクリレート44.8g、ブチルアクリレート18.56g、アクリル酸0.64gを加えて充分に混合して含フッ素重合体溶液を調製した(重合体濃度20質量%)。
【0085】
つぎに反応性乳化剤としてビス(ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル)メタクリレート硫酸エステル塩を4.44g、水を119.8g加え、乳化機を使用して乳化液を調製した。
【0086】
この乳化液の全量とメチルポリグリコールメタクリル酸エステル2.4g、水30.3gを0.5L容のガラス製セパラブルフラスコに入れ、攪拌しながら窒素置換を行い、80℃まで昇温した。過硫酸アンモニウム(1%水溶液)9.6gを加えて反応を開始し、重合開始から2.5時間後に反応溶液を室温まで冷却して反応を終了し、水性分散液を得た(得量246.54g。濃度30.4質量%)。
【0087】
この水性分散体中の含フッ素複合重合体粒子について、フッ素含有量の理論量を算出し、数平均粒子径を調べ、表面分析(表面のフッ素含有量)を行った。結果を表1に示す。
【0088】
さらにつぎの処方で建材用の耐候性塗料組成物(白塗料組成物)を調製した。
水性分散体 235質量部
酸化チタン(石原産業(株)製 商品名 タイペークCR−97) 50質量部
顔料分散剤(サンノプコ(株)製ノプコスパースSN−5027) 2質量部
凍結防止剤(エチレングリコール) 1質量部
消泡剤(ダウコーニング社製FSアンチフォーム013B) 0.5質量部
増粘剤(旭電化工業(株)製アデカノールUH−420) 0.5質量部
造膜助剤(イーストマンケミカル社製テキサノール) 10質量部
【0089】
アルミニウム板に下塗り剤(クラリアントポリマー社製のモビニールDM−772(商品名))をアプリケータにより厚さ40μmとなるように塗布し、室温で1日乾燥させた。ついでこの下塗り塗膜上に上記白塗料組成物をアプリケータにより厚さ40μmになるように塗布し、室温で7日放置して乾燥させて塗膜を形成し、耐候性を調べた。結果を表1に示す。
【0090】
実施例2
1L容のポリエチレン製容器に懸濁重合法で製造したフッ素樹脂(フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン/クロロトリフルオロエチレン共重合体)を6g、メチルメタクリレート163.8g、ブチルアクリレート67.86g、アクリル酸2.34gを加えて充分に混合して含フッ素重合体溶液を調製した(重合体濃度2.5質量%)。
【0091】
つぎに反応性乳化剤としてポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステル塩(30質量%水溶液)を16g、過硫酸アンモニウム(10質量%水溶液)11.7g、水を94.02g加え、乳化機を使用して乳化液を調製した。
【0092】
水130.2gを1L容のガラス製セパラブルフラスコに入れ、攪拌しながら窒素置換を行い、80℃まで昇温した。ついで乳化液を滴下して重合反応を開始し、重合開始から2時間で乳化液の滴下を完了した(全乳化液量361.72g)。乳化剤滴下終了後、さらに80℃で重合を継続し、2時間後に反応溶液を室温まで冷却して反応を終了し、水性分散液を得た(得量491.94g。濃度49.8質量%)。
【0093】
この水性分散体中の含フッ素複合重合体粒子について、フッ素含有量の理論量を算出し、数平均粒子径を調べ、表面分析(表面のフッ素含有量)を行った。結果を表1に示す。
【0094】
さらにつぎの処方で建材用の耐候性塗料組成物(白塗料組成物)を調製した。
水性分散体 144質量部
酸化チタン(石原産業(株)製 商品名 タイペークCR−97) 50質量部
顔料分散剤(サンノプコ(株)製ノプコスパースSN−5027) 2質量部
凍結防止剤(エチレングリコール) 1質量部
消泡剤(ダウコーニング社製FSアンチフォーム013B) 0.5質量部
増粘剤(旭電化工業(株)製アデカノールUH−420) 0.5質量部
造膜助剤(イーストマンケミカル社製テキサノール) 10質量部
【0095】
アルミニウム板に下塗り剤(クラリアントポリマー社製のモビニールDM−772(商品名))をアプリケータにより厚さ40μmとなるように塗布し、室温で1日乾燥させた。ついでこの下塗り塗膜上に上記白塗料組成物をアプリケータにより厚さ40μmになるように塗布し、室温で7日放置して乾燥させて塗膜を形成し、耐候性を調べた。結果を表1に示す。
【0096】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン性不飽和基含有単量体(b)を重合して得られるエチレン性重合体(B)と含フッ素重合体(A)とからなる含フッ素複合重合体粒子であって、該粒子の表面のフッ素含有量が理論フッ素含有量の1.15倍以上である含フッ素複合重合体粒子。
【請求項2】
請求項1記載の含フッ素複合重合体粒子を含む水性分散体。
【請求項3】
請求項2記載の水性分散体からなる水性塗料用組成物。
【請求項4】
建材用塗料に用いる請求項3記載の水性塗料用組成物。

【公開番号】特開2009−185300(P2009−185300A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−99988(P2009−99988)
【出願日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【分割の表示】特願2007−529270(P2007−529270)の分割
【原出願日】平成18年8月1日(2006.8.1)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】