説明

含フッ素重合性単量体およびそれを用いた高分子化合物

【課題】フッ素化合物が有する低吸水性に加え、親水性および透明性を有する材料を得るための含フッ素化合物を提供する。
【解決手段】一般式(1):


(式(1)中、a、bはそれぞれ独立に0〜2の整数であり、a+b=2である。cは0以上の整数である。dとeはそれぞれ独立に0〜2の整数であり、1≦d+e≦4である。)で表される含フッ素重合性化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造の際のリソグラフィーに用いるレジスト材料、フラットパネルディスプレイ用のコーティング材、電子回路用基板用保護膜または半導体用保護膜等向けの材料として有用な含フッ素重合性単量体およびそれを用いた高分子化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
ビスフェノールは、エンジニアリングプラスチックの原料として有用である。また、ビスフェノールを用いたポリマーは、電子部品に使用され、水処理、ガス分離または血液透析用の分離膜等の幅広い用途に使用される。しかしながら、ビスフェノールによる繰り返し単位を含むポリエステルは、有機溶剤に溶解し難く、また成型し難い。
【0003】
そこで、有機溶剤に対する溶解性の向上のため、ヘキサフルオロイソプロピリデン基、即ち、−C(CF−を化学構造中に有するビスフェノールまたはジカルボン酸をモノマーとして用いた含フッ素ポリマーが開発されている(非特許文献1を参照)。当該含フッ素ポリマーは、優れた耐熱性および耐腐食性、撥水性、低吸水性、低誘電率および低屈折率等の特徴を有する。
【0004】
また、フッ素化合物に適度な親水性を与える官能基として、フルオロカルビノール基が知られている。特に、半導体等を製造する際のフォトリソグラフィーにおけるパターニングにおいて、2−ヒドロキシ−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロピル基、即ち、−C(CFOH、(以下、HFIP基と呼ぶことがある)を含むフッ素化合物を原料とするレジストは、高い透明性に加え、基板への密着性を有する。また、フォトリソグラフィーにレジストとして用いた場合、フッ化アルゴンレーザー(波長、193nm)等を光源とする短波長紫外光の露光において、露光感度が高く、露光後のパターニングの際、現像液に対し可溶である。
【0005】
HFIP基を含む芳香族高分子化合物として、芳香族ポリアミドまたは芳香族ポリイミドにHFIP基を含ませた化合物が開示されている(特許文献1〜4を参照)。特許文献1〜4によれば、芳香族ポリアミドまたは芳香族ポリイミドにHFIP基を含ませることで、有機溶剤に対する溶解性が向上し誘電率が低下するとされる。また、HFIP基を含有した芳香族ポリアミドおよび芳香族ポリイミドの原料であるジアミンモノマーにおいて、HFIP基が付加した炭素とアミノ基が付加した炭素がオルト位置にあると、HFIP基含有ポリアミドを加熱して脱水反応させることにより、含フッ素複素環(ヘテロ環)を含有する特異な高分子化合物に転化することが開示されている。当該転化反応により極性基である水酸基が消失することで、さらなる吸水率および誘電率の低下、耐熱性の向上が達成できるとされる。
【0006】
しかしながら、芳香族ポリエステルにHFIP基を付加した含フッ素化合物においては、HFIP基を含むフェノール誘導体の報告例(非特許文献2を参照)があるものの、芳香環におけるHFIP基の置換位置の同定等の詳細な解析はされておらず、含フッ素重合性単量体に含フッ素フェノールを用いた重合物も報告されていない。HFIP基を付加した芳香族ポリエステルは、前述したフッ素化合物が有する低吸水性および透明性等に加え、適度な親水性を具備した高分子材料として期待される。
【0007】
また、非特許文献3には、HFIP基の水素原子の置換反応について記載される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−206879号公報
【特許文献2】特開2007−119503号公報
【特許文献3】特開2007−119504号公報
【特許文献4】特開2008−150534号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】高分子学会編「先端高分子材料シリーズ2 高性能芳香族系高分子材料」 p131
【非特許文献2】Journal of Organic Chemistry, vol. 30, p1004 (1965)
【非特許文献3】(日本化学会編 第4版 実験化学講座28 高分子合成p431−434)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、フッ素化合物が有する低吸水性に加え、適度な親水性を有する含フッ素高分子化合物を得るための含フッ素重合性単量体を得ることを目的とする。また、本発明は、フッ素化合物が有する低吸水性および適度な親水性に加え、従来の芳香族ポリエステルよりも、有機溶剤に対する溶解性に優れた含フッ素高分子化合物を得ることを目的とする。溶解性に優れるとコーティング加工が容易となる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記問題を解決する手段として、本発明者らは、新規な含フッ素重合性単量体である、HFIP基を導入した含フッ素芳香族多価フェノールを合成した。次いで、当該フッ素重合性単量体を重合させて、新規な高分子化合物である、HFIP基を導入した含フッ素多価芳香族ポリエステルを得、本発明を完成するに至った。当該含フッ素ポリエステルにおいて、複素環がない構造とすれば透明性が高い材料が得られる。このようにして得られた複素環を含有しない新規な含フッ素多価芳香族ポリエステルは、従来の芳香族ポリアミドまたは芳香族ポリイミドにHFIP基を導入した芳香族化合物に対して、遥かに透明性の高いものであった。尚、本発明において、多価フェノールとは2員環以上の多環芳香族の芳香環の水素原子がヒドロキシル基に置換した化合物をいう。
【0012】
即ち、本発明は以下の発明1〜15よりなる。
【0013】
[発明1]
一般式(1):
【化1】

【0014】
〔式(1)中、a、bはそれぞれ独立に0〜2の整数であり、a+b=2である。cは0以上の整数である。dとeはそれぞれ独立に0〜2の整数であり、1≦d+e≦4である。また、式(1)中、次式:
【化2】

【0015】
で表される部位は、炭素原子がヘテロ原子(窒素原子、酸素原子または硫黄原子)で置換して、水素原子は置換基で置換してもよく、この置換基は窒素原子、酸素原子または硫黄原子を含んでいてもよい。)
で表される、含フッ素重合性単量体。
【0016】
[発明2]
一般式(1)で表わされる含フッ素重合性単量体が、
一般式(2):
【化3】

【0017】
(式(2)中、dとeはそれぞれ独立に0〜2の整数であり、1≦d+e≦4である。)で表わされる、発明1の含フッ素重合性単量体。
【0018】
[発明3]
一般式(2)で表わされる含フッ素重合性単量体が、
式(3):
【化4】

【0019】
で表される、発明2の含フッ素重合性単量体。
【0020】
[発明4]
発明1〜3のいずれかの含フッ素重合性単量体と、一般式(4):
【化5】

【0021】
(式(4)中、Rは、アルキレン基、または芳香環もしくは脂環から水素原子が2個離脱した2価の有機基であり、構造中に酸素原子、硫黄原子または窒素原子を含んでよく、水素原子の一部がアルキル基、フッ素原子、塩素原子またはフルオロアルキル基で置換されていてもよい。Aはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基または置換基を有することもある炭素数6〜10のフェニル基である。)
で表される化合物、一般式(5):
【化6】

【0022】
(式(5)中、Rは、アルキレン基、または芳香環もしくは脂環から水素原子が2個離脱した2価の有機基であり、構造中に酸素原子、硫黄原子または窒素原子を含んでいてもよく、水素原子の一部がアルキル基、フッ素原子、塩素原子またはフルオロアルキル基で置換されていてもよい。Xはそれぞれ独立に塩素原子、フッ素原子、臭素原子またはヨウ素原子である。)
で表される化合物、および一般式(6):
【化7】

【0023】
(式(6)中、Rは、アルカン、芳香環または脂環から水素原子が4個離脱した4価の有機基であり、構造中に酸素原子、硫黄原子または窒素を含んでいてもよく、水素の一部がアルキル基、フッ素原子、塩素原子またはフルオロアルキル基で置換されていてもよい。)
で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種を含む、組成物。
【0024】
[発明5]
一般式(7):
【化8】

【0025】
(式(7)中、Rは、それぞれ独立にアルキレン基、または芳香環もしくは脂環から水素原子が2個離脱した2価の有機基であり、構造中に酸素原子、硫黄原子または窒素原子を含んでよく、水素原子の一部がアルキル基、フッ素原子、塩素原子またはフルオロアルキル基で置換されていてもよい。aとbはそれぞれ独立に0〜2の整数であり、a+b=2である。
【0026】
cは0以上の整数である。dとeはそれぞれ独立に0〜2の整数を表し、1≦d+e≦4である。
【0027】
また、式(7)中、次式:
【化9】

【0028】
で表される部位は、炭素原子がヘテロ原子(窒素原子、酸素原子または硫黄原子)で置換して、水素原子は置換基で置換してもよく、この置換基は窒素原子、酸素原子または硫黄原子を含んでいてもよい。)
で表される繰り返し単位を含む、高分子化合物。
【0029】
[発明6]
一般式(7)で表わされる繰り返し単位が、
一般式(8):
【化10】

【0030】
(式(8)中、Rは、それぞれ独立にアルキレン基、または芳香環もしくは脂環から水素原子が2個離脱した2価の有機基であり、構造中に酸素原子、硫黄原子または窒素原子を含んでいてもよく、水素原子の一部がアルキル基、フッ素原子、塩素原子またはフルオロアルキル基で置換されていてもよい。dとeはそれぞれ独立に0〜2の整数であり、1≦d+e≦4である。)
で表される繰り返し単位である、発明5の高分子化合物。
【0031】
[発明7]
一般式(8)で表わされる繰り返し単位が、
式(9):
【化11】

【0032】
で表される繰り返し単位である、発明6の高分子化合物。
【0033】
[発明8]
一般式(9)で表わされる繰り返し単位が、
一般式(10):
【化12】

【0034】
〔式(10)中、Rは、それぞれ独立に、アルカン、芳香環または脂環から水素原子が4個離脱した4価の有機基であり、構造中に酸素原子、硫黄原子または窒素原子を含んでいてもよく、水素原子の一部がアルキル基、フッ素、塩素またはフルオロアルキル基で置換されていてもよい。a、bはそれぞれ独立に0〜2の整数であり、a+b=2である。cは0以上の整数である。dとeはそれぞれ独立に0〜2の整数であり、1≦d+e≦4である。また、式(10)中、次式:
【化13】

【0035】
で表される部位は、炭素原子がヘテロ原子(窒素原子、酸素原子または硫黄原子)で置換して、水素原子は置換基で置換してもよく、この置換基は窒素原子、酸素原子または硫黄原子を含んでいてもよい。)
で表される繰り返し単位である、発明7の高分子化合物。
【0036】
[発明9]
一般式(10)で表わされる繰り返し単位が、
一般式(11):
【化14】

【0037】
(式(11)中、Rは、それぞれ独立にアルカン、芳香環または脂環から水素原子が4個離脱した4価の有機基であり、構造中に酸素原子、硫黄原子または窒素を含んでいてもよく、水素原子の一部がアルキル基、フッ素、塩素またはフルオロアルキル基で置換されていてもよい。dとeはそれぞれ独立に0〜2の整数であり、1≦d+e≦4である。)
で表される繰り返し単位である、発明8の高分子化合物。
【0038】
[発明10]
一般式(11)で表わされる繰り返し単位が、
式(12):
【化15】

【0039】
で表される繰り返し単位である、発明9の高分子化合物。
【0040】
発明5〜10の高分子化合物のHFIP基中のOH部位の水素原子は、グリシジル基と置換することが可能であり、そうすることで、単独であっても硬化しやすい高分子化合物が得られた。
【0041】
[発明11]
2−ヒドロキシ−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロピル基中のOH部位の水素原子の少なくとも一部がグリシジル基で置換されてなる、発明5〜10のいずれかの高分子化合物。
【0042】
[発明12]
発明5〜11のいずれかの高分子化合物とエポキシ化合物とを含む組成物。
【0043】
[発明13]
エポキシ化合物が一般式(13):
【化16】

【0044】
(式(13)中、Rは、アルカン、芳香環または脂環から水素原子が1個離脱した1価の有機基であり、構造中に酸素原子、硫黄原子または窒素を含んでいてもよく、水素原子の一部がアルキル基、フッ素、塩素またはフルオロアルキル基で置換されていてもよい。fは1〜4の整数である。)
で表される、発明12の組成物。
【0045】
[発明14]
発明11の高分子化合物のグリシジル基が架橋してなる硬化物。
【0046】
[発明15]
発明12または発明13の組成物を硬化させてなる硬化物。
【0047】
発明11の高分子化合物、発明12または発明13の組成物を加熱硬化等の方法で架橋反応させてなる発明14または発明15の硬化物であって、例えば、当該組成物を湿式塗布法等で基体上にコーティングし、加熱硬化などの方法で架橋反応させてなる硬化膜は、フラットパネルディスプレイ用のコーティング材、電子回路用基板本体用保護膜または半導体用保護膜として有用である。
【発明の効果】
【0048】
上述の通り、本発明により、フッ素化合物が有する低吸水性に加え、適度な親水性を有する材料を得るためのHFIP基を有する新規な含フッ素重合性単量体を得、それを用いた新規な高分子化合物である多価芳香族系ポリエステルを得ることができる。
【0049】
本発明のHFIP基を有する含フッ素多価芳香族ポリエステルは、従来のHFIP基を含有しない多価芳香族ポリエステルに対して、有機溶剤に対する溶解性に優れ、コーティングなどの加工性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0050】
1.含フッ素重合性単量体
本発明は、一般式(1)で表わされる含フッ素単量体である。
【化17】

【0051】
式(1)中、a、bはそれぞれ独立に0〜2の整数であり、a+b=2である。cは0以上の整数である。dとeはそれぞれ独立に0〜2の整数であり、1≦d+e≦4である。また、式(1)中、次式:
【化18】

【0052】
で表される部位は、炭素原子がヘテロ原子(窒素原子、酸素原子または硫黄原子)で置換して、水素原子は置換基で置換してもよく、この置換基は窒素原子、酸素原子または硫黄原子を含んでいてもよい。
【0053】
一般式(1)の含フッ素重合性単量体において、
下記一般式(14):
【化19】

【0054】
(式(14)中、a、bはそれぞれ独立に0〜2の整数であり、a+b=2である。cは0以上の整数である。)
で表される多環芳香族を化合物名で例示すると、ナフタレン、ペンタレン、インデン、ナフタレン、アズレン、ヘプタレン、インダセン、アセナフチレン、フルオレン、フェナレン、フェナントレン、アントラセン、フルオランセン、アセフェナントリレン、アセアントリレン、トリフェニレン、ピレン、クリセン、ナフタセン、ピセン、ペリレン、ペンタフェン、ペンタセン、テトラフェニレン、ヘキサフェン、ヘキサセン、ルビセン、コロネン、トリナフチレン、ヘプタフェン、ヘプタセン、ピラントレンまたはオヴァレンが挙げられる。
【0055】
しかしながら、合成し易いことより、前記多環芳香族は2員環であること、即ち、ナフタレンであることが好ましく、
一般式(2):
【化20】

【0056】
(式(2)中、dとeはそれぞれ独立に0〜2の整数であり、1≦d+e≦4である。)
で表される含フッ素重合性単量体であることが好ましい。
【0057】
一般式(2)で表される含フッ素重合性単量体を、以下に例示する。
【化21】

【0058】
このうち、合成が容易であること、および重合物の原料としてHFIP基が2官能であることが好ましく、
式(3):
【化22】

【0059】
で表される含フッ素重合性単量体が好ましい。
【0060】
2.含フッ素重合性単量体の合成
前記式(3)で表される含フッ素重合性単量体の合成方法について、例を挙げて説明する。
【0061】
前記式(3)で表される含フッ素重合性単量体は、式(15):
【化23】

【0062】
で表される多価フェノールと、ヘキサフルオロアセトンまたはヘキサフルオロアセトン三水和物を反応させることによって得られる。
【0063】
式(15)で表される多価フェノールにヘキサフルオロアセトンを付加反応させる場合、ヘキサフルオロアセトンの沸点は−28℃であるので、ヘキサフルオロアセトンを反応系内に留めるためには、冷却装置または密封反応器を使用することが好ましく、特に密封反応器を使用することが好ましい。
【0064】
また、式(15)で表される多価フェノールとヘキサフルオロアセトン三水和物を反応させる場合は、ヘキサフルオロアセトン三水和物の沸点は105℃であるので、ヘキサフルオロアセトンと比較して取り扱いが容易である。この際、反応装置としては、密封容器を使用してもよいが、還流冷却管を用い水冷することで、ヘキサフルオロアセトン三水和物を反応系内に留めることができる。
【0065】
本反応に使用するヘキサフルオロアセトンまたはヘキサフルオロアセトン三水和物の量は、式(15)で表される多価フェノールに対して、2.0モル当量以上、8.0モル当量以下が好ましく、好ましくは2.2モル当量以上、3.0モル当量以下である。2.0モル当量未満では、式(3)で表される含フッ素重合性単量体の収率が低く、8.0モル当量を超えて使用しても反応は進行するが、8.0モル当量を超えて使う必要はない。
【0066】
本反応は、50℃以上、200℃以下の温度範囲で行えるが、120℃以上、130℃以下が特に好ましい。50℃より低い温度では反応が進行し難く、200℃より高い温度、特に250℃以上では、式(3)で表される含フッ素重合性単量体の収率が低下する。
【0067】
本反応は、触媒を使用しなくても進むが、酸触媒を使用することで反応を促進させることができる。使用される酸触媒としては、ルイス酸である塩化アルミニウム、塩化鉄(III)またはフッ化硼素、有機スルホン酸であるベンゼンスルホン酸、カンファースルホン酸(CSA)、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸(pTsOH)、p−トルエンスルホン酸(pTsOH)一水和物またはピリジニウムp−トルエンスルホン酸(PPTS)が好ましく、これらの中でも、塩化アルミニウム、塩化鉄(III)、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸(pTsOH)一水和物が入手し易く特に好ましい。使用される触媒の量は、式(15)で表される多価フェノール1モルに対して、1モル%以上、50モル%以下であり、好ましくは、3モル%以上、40モル%以下である。1モル%未満では、式(3)で表される含フッ素重合性単量体の収率が低く、50モル%より多く使用しても反応は進むが、多く加える必要はない。
【0068】
本反応は無溶媒でも、溶媒を使用してもよい。使用される溶媒としては、反応に関与しないものなら特に制限は無いが、芳香族炭化水素類であるキシレン、トルエン、ベンゼン、アニソール、ジフェニルエーテル、ニトロベンゼンまたはベンゾニトリル、塩素系溶媒であるクロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタンまたはジクロロベンゼン、あるいは水が好ましい。使用する溶媒の量には特に制限が無いが、多量に使用することは反応器単位容積あたりの式(3)で表される含フッ素重合性単量体の収量が減少するので好ましくない。
【0069】
本反応を、密封反応器(オートクレーブ)を使用して行うには、ヘキサフルオロアセトンまたはヘキサフルオロアセトン3水和物のいずれを用いるかによって態様が異なる。ヘキサフルオロアセトンを用いる場合は、最初に式(15)で表される多価フェノールと触
媒または溶媒を反応器内に入れ、次いで、反応器内の圧力が0.5MPaを越えないように加温しつつ、ヘキサフルオロアセトンを加えることが好ましい。
【0070】
ヘキサフルオロアセトン3水和物を用いる場合は、最初に式(15)で表される多価フェノールとヘキサフルオロアセトン3水和物を反応器内に入れ、触媒または溶媒を添加し反応を行うことができる。
【0071】
本反応の反応時間に特別な制限はないが、温度または用いる触媒の量等により適宜選択される。従って、ガスクロマトグラフィー等、汎用の分析手段により、原料が十分消費されたことを確認した後、反応を終了することが好ましい。 反応終了後、抽出、蒸留、晶析等の手段により、式(3)で表される含フッ素重合性単量体を得ることができる。また、必要によりカラムクロマトグラフィーあるいは再結晶等により、式(3)で表される含フッ素重合性単量体を精製することができる。
【0072】
3.組成物およびその高分子化合物
本発明において、一般式(1)、一般式(2)または式(3)で表される含フッ素重合性単量体を含む組成物を縮重合させ、重合物を得ることができる。これら含フッ素重合性単量体は、2個のヒドロキシ基、1個以上のHFIP基を有する化合物であり、少なくとも分子内に2つ以上のヒドロキシ基を有している。高分子化合物を製造する場合、多環芳香環に結合したヒドロキシ基を反応させることが好ましい。
【0073】
本発明の含フッ素重合性単量体は、前記一般式(4)〜(6)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも一つの化合物との組成物とした後、所定の反応条件、例えば、好適な温度範囲で縮重合反応させることによって、一般式(7)、(8)、式(9)、一般式(10)、(11)または式(12)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物を得ることができる。
【0074】
3.1.本発明の含フッ素重合性単量体と一般式(4)または一般式(5)で表される化合物との組成物およびその高分子化合物
本発明の一般式(1)、一般式(2)または式(3)で表される含フッ素重合性単量体と、下記一般式(4)または一般式(5)で表される化合物を含む組成物を、所定の温度範囲で縮重合反応させれば、一般式(7)、(8)または式(9)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物が得られる。その後、必要であればHFIP基の水素原子をグリシジル基と置換反応させることも可能である。
【0075】
[一般式(4)で表される化合物]
【化24】

【0076】
(式(4)中、Rはアルキレン基、または芳香環もしくは脂環から水素原子が2個離脱した2価の有機基であり、構造中に酸素原子、硫黄原子または窒素原子を含んでよく、水素原子の一部がアルキル基、フッ素原子、塩素原子またはフルオロアルキル基で置換されていてもよい。Aはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基または炭素数6〜10のフェニル基である。)
[一般式(5)で表される化合物]
【化25】

【0077】
(式(5)中、Rはアルキレン基、または芳香環もしくは脂環から水素原子が2個離脱した2価の有機基であり、構造中に酸素原子、硫黄原子または窒素原子を含んでいてもよく、水素原子の一部がアルキル基、フッ素原子、塩素原子またはフルオロアルキル基で置換されていてもよい。Xはそれぞれ独立に塩素、フッ素、臭素またはヨウ素である。)、
一般式(4)または一般式(5)で表される化合物の原料としてのカルボン酸としては、脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸のいずれを用いてもよい。
【0078】
脂肪族ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸またはセバシン酸が挙げられる。
【0079】
脂肪族カルボン酸としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、3,3´−ジカルボキシルジフェニルエーテル、3,4´−ジカルボキシルジフェニルエーテル、4,4´−ジカルボキシルジフェニルエーテル、3,3´−ジカルボキシルジフェニルメタン、3,4´−ジカルボキシルジフェニルメタン、4,4´−ジカルボキシルジフェニルメタン、3,3´−ジカルボキシルジフェニルジフルオロメタン、3,4´−ジカルボキシルジフェニルジフルオロメタン、4,4´−ジカルボキシルジフェニルジフルオロメタン、3,3´−ジカルボキシルジフェニルスルホン、3,4´−ジカルボキシルジフェニルスルホン、4,4´−ジカルボキシルジフェニルスルホン、3,3´−ジカルボキシルジフェニルスルフィド、3,4´−ジカルボキシルジフェニルスルフィド、4,4´−ジカルボキシルジフェニルスルフィド、3,3´−ジカルボキシルジフェニルケトン、3,4´−ジカルボキシルジフェニルケトン、4,4´−ジカルボキシルジフェニルケトン、2,2−ビス(3−カルボキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,4´−ジカルボキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−カルボキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3,4´−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(3−カルボキシフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−カルボキシフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−カルボキシフェノキシ)ベンゼン、3,3´−(1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビス安息香酸、3,4´−(1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビス安息香酸、4,4´−(1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビス安息香酸、2,2−ビス(4−(3−カルボキシフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(4−カルボキシフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(3−カルボキシフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−(4−カルボキシフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−(3−カルボキシフェノキシ)フェニル)スルフィド、ビス(4−(4−カルボキシフェノキシ)フェニル)スルフィド、ビス(4−(3−カルボキシフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4−(4−カルボキシフェノキシ)フェニル)スルホン、5−(パーフルオロノネニルオキシ)イソフタル酸、パーフルオロノネニルオキシ基含有の4−(パーフルオロノネニルオキシ)フタル酸窓のカルボン酸が挙げられる。また、2−(パーフルオロノネニルオキシ)テレフタル酸もしくは4−メトキシ−5−(パーフルオロノネニルオキシ)イソフタル酸が挙げられる。また、パーフルオロヘキセニルオキシ基含有の5−(パーフルオロヘキセニルオキシ)イソフタル酸、4−(パーフルオロヘキセニルオキシ)フタル酸、2−(パーフルオロヘキセニルオキシ)テレフタル酸、4−メトキシ−5−(パーフルオロヘキセニルオキシ)イソフタル酸が挙げられる。縮重合反応のし易さ、および得られる高分子化合物が透明性に優れることより、イソフタル酸を用いることが好ましい。
【0080】
前述のように、一般式(1)、一般式(2)または式(3)で示される含フッ素重合性単量体と一般式(4)または一般式(5)で表される化合物を反応させ、以下一般式(7)、(8)または式(9)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物を得る。
【0081】
この重合反応の方法、条件については特に制限されない。例えば、前記含フッ素重合性単量体と一般式(4)または一般式(5)で表される化合物を含む組成物を150℃以上で相互に溶融させて無溶媒で縮重合反応させる方法、また有機溶媒中、好ましくは150℃以上で縮重合反応させる方法、−20℃以上、80℃以下の温度で有機溶媒中にて縮重合反応させる方法が挙げられる。
【0082】
使用できる有機溶媒としては原料の両成分が溶解すれば特に限定されないが、アミド系溶媒であるN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルホルムアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミドまたはN−メチル−2−ピロリドン、芳香族系溶媒であるベンゼン、アニソール、ジフェニルエーテル、ニトロベンゼンまたはベンゾニトリル、ハロゲン系溶媒であるクロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタンまたは1,1,2,2−テトラクロロエタン、ラクトン化合物であるγ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、ε−カプロラクトンまたはα−メチル−γ−ブチロラクトンが挙げられる。これらの有機溶媒は、単独でも2種以上の混合物として使用されてもよい。このような有機溶媒とともに、酸受容体、例えば、ピリジン、トリエチルアミンなどを共存させて反応を行うことが効果的である。
【0083】
その後、必要であればHFIP基の水素原子をグリシジル基と置換反応してもよい。この置換反応は、HFIP基とエピクロロヒドリンをアルカリ金属化合物の存在下で反応させ、目的とするグリシジル基付加体を得ることができる(非特許文献3に記載)。
【0084】
アルカリ金属化合物には、アルカリ金属水酸化物である水酸化ナトリウム、水酸化リチウムまたは水酸化カリウム、アルカリ金属塩である炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化リチウムまたは塩化カリウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド等のアルカリ金属アルコキシド、アルカリ金属フェノキシド、水素化ナトリウム、水素化リチウム、等、酢酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム等の有機酸のアルカリ金属塩などがあげられる。この反応には相間移動触媒を添加してもよく、好適には四級アンモニウム塩が用いられる。四級アンモニウム塩としては、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド,トリエチルメチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムアイオダイド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリメチルアンモニウムハイドロオキサイド、ベンジルトリブチルアンモニウムクロライド、フェニルトリメチルアンモニウムクロライドなどがあげられる。
【0085】
また、HFIP基の水素原子をグリシジル基と置換する他の方法としては、HFIP基をアリル基で保護した後、二重結合を酸化することでグリシジル基に変換することもできる。具体的には、アリルクロリド、アリルブロミド、アリルアイオダイドなどのハロゲン化アリルとHFIP基との反応でアリル基保護体を得た後、過酸化水素やアルキルヒドロパーオキシドなどの酸化剤を作用させることで、目的とするグリシジル基保護体を得ることができる。
【0086】
3.2.本発明の含フッ素重合性単量体と一般式(6)で表される化合物との組成物およびその高分子化合物
本発明の一般式(1)、(2)または式(3)で表される含フッ素重合性単量体と、以下の一般式(6)で表される化合物を含む組成物を、所定の反応条件で縮重合反応させれば、一般式(10)、(11)または式(12)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物が得られる。その後、必要であればHFIP基の水素原子をグリシジル基と置換反応させることも可能である。
【0087】
[一般式(6)で表される化合物]
【化26】

【0088】
(式(6)中、Rは、アルカン、芳香環または脂環から水素原子が4個離脱した4価の有機基であり、構造中に酸素原子、硫黄原子または窒素を含んでいてもよく、水素原子の一部がアルキル基、フッ素原子、塩素原子、またはフルオロアルキル基で置換されていてもよい。)
一般式(6)で表される化合物は、ポリアミド酸またはポリイミドの原料として一般に使用されているテトラカルボン酸二無水物が使用できる。
【0089】
当該テトラカルボン酸二無水物としては、ベンゼンテトラカルボン酸二無水物(ピロメリット酸ニ無水物;PMDA)、トリフルオロメチルベンゼンテトラカルボン酸二無水物、ビストリフルオロメチルベンゼンテトラカルボン酸二無水物、ジフルオロベンゼンテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水化物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ターフェニルテトラカルボン酸二無水物、ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物、オキシジフタル酸ニ無水物、ビシクロ(2,2,2)オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)フェキサフルオロプロパン酸二無水物(6FDA)、2,3,4,5−チオフェンテトラカルボン酸二無水化物、2,5,6,2´,5´,6´−ヘキサフルオロ- 3,3´,4,4´−ビフェニルテトラカルボン酸二無水化物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン酸二無水化物または3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水化物等が挙げられる。入手のし易さ、縮重合反応のし易さ、および得られる高分子化合物が透明性に優れることより、ベンゼンテトラカルボン酸二無水物(ピロメリット酸ニ無水物:PMDA)が好ましい。
【0090】
前述のように、一般式(1)、一般式(2)または式(3)で示される含フッ素重合性単量体と一般式(6)で表される化合物を縮重合反応させ、以下一般式(10)、(11)または式(12)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物を得る。
【0091】
縮重合反応の方法および条件は、前述の本発明の含フッ素重合性単量体と一般式(4)、(5)で表される化合物の反応と同様な方法および条件を適応することができる。使用できる溶媒も原料の組成物が溶解すれば特に限定されず、同様な溶媒を用いることができ、アミド系溶媒であるN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルホルムアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミドまたはN−メチル−2−ピロリドン、芳香族系溶媒であるベンゼン、アニソール、ジフェニルエーテル、ニトロベンゼン、またはベンゾニトリル、ハロゲン系溶媒であるクロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタンまたは1,1,2,2−テトラクロロエタン、ラクトン類であるγ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、ε−カプロラクトンまたはα−メチル−γ−ブチロラクトンを使用することができる。これらの有機溶媒は、単独でも2種以上の混合物として使用されても良い。このような有機溶媒とともに、酸受容体、例えば、ピリジン、トリエチルアミンなどを共存させて反応を行うことが効果的である。
【0092】
その後、必要であればHFIP基の水素原子をグリシジル基と置換反応してもよい。この置換反応は、前述のようにHFIP基とエピクロロヒドリンをアルカリ金属化合物の存在下で反応させ、目的とするグリシジル基付加体を得ることができる(非特許文献3に記載)。
【0093】
3.3.ジオール化合物
前記、一般式(7)、(8)、式(9)、一般式(10)、(11)および式(12)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物を重合するに当たり、本発明の一般式(1)、一般式(2)または式(3)の含フッ素重合性単量体、一般式(4)〜(6)で表される化合物以外に、所望の耐熱性または溶剤溶解性等を得るために、他のジオール化合物を加え、共重合成分としてもよい。
【0094】
加えるジオール化合物としては、1,4−シクロヘキサンジオール、1,3−アダマンタンジオール、カテコール、1,3−ベンゼンジオール、2,2´−ジヒドロキシビフェニル、4,4´−ジヒドロキシビフェニル、2,2´−メチレンジフェノール、4,4´−メチレンジフェノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルプロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−ブタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−ヘキサン、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、2,2−ビス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、1,4−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシピリジン、2,4−ジヒドロキシピリジン、4,4´−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4´−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4´−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4´−ジヒドロキシジフェニルスルホンまたは4,4´−ジヒドロキシベンゾフェノンを挙げることができる。
【0095】
3.4.高分子化合物の硬化
本発明の一般式(7)、(8)、式(9)、一般式(10)、(11)または式(12)で表される繰り返し単位を含む重合物であるポリエステルは、有機溶媒に溶解させたワニス、または粉末もしくはフィルム等として使用できる。その際、使用目的に応じて、前記高分子化合物に、酸化安定剤、フィラー、シランカップリング剤、感光剤、光重合開始剤および増感剤等を添加物してもよい。ワニスの場合は、ガラス、シリコンウェハ、金属、金属酸化物、セラミックスまたは樹脂等の基材上に、スピンコート、スプレーコート、フローコート、含浸コートまたはハケ塗り等の既知の方法で塗布することができる。
【0096】
前記一般式(7)、(8)、式(9)、一般式(10)、(11)または式(12)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物は、透明性または耐熱性等を向上させる目的で、エポキシ化合物と混合し、加熱または光照射等により硬化させて硬化物とすることができる。
【0097】
エポキシ化合物としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂、フェノールアラルキル樹脂、クレゾールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、ビフェニル変性フェノールアラルキル樹脂、フェノールトリメチロールメタン樹脂、テトラフェニロールエタン樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂またはアミノトリアジン変性フェノール樹脂化合物を、エピクロロヒドリンと接触させることによりエポキシ変性させたエポキシ化合物が挙げられる。
【0098】
これらは、市販品されており、ビスフェノールA型の大日本インキ工業株式会社製、商品名、エピクロン840、三菱化学株式会社製、商品名、JER828、ビスフェノールF型の旭電化工業株式会社製、商品名、アデカレジンEP−4901、クレゾールノボラック型の大日本インキ工業株式会社製、商品名、エピクロンN−600シリーズ、ジシクロペンタジエン型の大日本インキ工業株式会社製、商品名、エピクロンHP−7200シリーズ、トリアジン型の日産化学工業株式会社製、商品名、TEPICシリーズ等を挙げられる。
【0099】
尚、一般式(13):
【化27】

【0100】
(式(13)中、Rは、アルカン、芳香環または脂環から水素原子が1個離脱した1価の有機基であり、構造中に酸素原子、硫黄原子または窒素を含んでいてもよく、水素の一部がアルキル基、フッ素、塩素またはフルオロアルキル基で置換されていてもよい。fは1〜4の整数である。)
で表されるエポキシ化合物は、これに対応するアルコールとエピクロロヒドリンから合成される。
【0101】
当該アルコールとしては、1,4−シクロヘキサンジオール、1,3−アダマンタンジオール、カテコール、1,3−ベンゼンジオール、2,2´−ジヒドロキシビフェニル、4,4´−ジヒドロキシビフェニル、2,2´−メチレンジフェノール、4,4´−メチレンジフェノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルプロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−ブタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−ヘキサン、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、2,2−ビス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、1,4−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシピリジン、2,4−ジヒドロキシピリジン、4,4´−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4´−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4´−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4´−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4´−ジヒドロキシベンゾフェノン、1,4−ジヒドロキシヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)−プロパン、1,1´−メチレンジ−2−ナフトール、4,4´、4−トリヒドロキシトリフェニルメタン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンまたはα,α,α´−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−1−エチルー4−イソプロピルベンゼンが挙げられる。
【0102】
硬化物を得る際、これらエポキシ化合物と、エポキシ樹脂用硬化剤を併用してもよい。当該硬化剤を例示するならば、アミン系化合物、酸無水物系化合物、アミド系化合物、フェノ−ル系化合物、メルカプタン系化合物、イミダゾール系化合物、ポリスルフィド樹脂系化合物またはリン系化合物が挙げられる。具体的には、熱硬化剤であるジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ポリアルキレングリコールポリアミン、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、2−メチルイミダゾ−ル、トリフェニルホスフィン、2−エチルー4−メチルイミダゾール、BF3−アミン錯体またはグアニジン誘導体、紫外線硬化剤であるジフェニルヨードニウムヘキサフロロフォスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサフロロホスフェートが挙げられる。
【0103】
一般式(7)、(8)、式(9)、一般式(10)、(11)または式(12)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物とエポキシ化合物の混合割合は、質量比で表して高分子化合物:エポキシ化合物=10:90〜90:10であり、好ましくは30:70〜70:30、より好ましくは40:60〜60:40である。
【0104】
エポキシ化合物と、エポキシ樹脂用硬化剤との混合比は、質量比で表して、70:30〜99:1であり、好ましくは90:10〜99:30、より好ましくは40:60〜60:40である。
【0105】
上記の組成物を有機溶媒に溶解させ、例えば、ガラスまたはシリコン基板に塗布し、その後、加熱または、紫外線(UV)ランプ等による紫外線照射により硬化させて、架橋硬化した硬化膜とすることができる。使用できる有機溶媒としては、組成物が溶解するものであれば特に限定刷ること無く使用することができる。具体的に例示するならば、アミド系溶媒であるN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルホルムアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミドまたはN−メチル−2−ピロリドン、他、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートまたはγ―ブチロラクトンが挙げられる。
【0106】
本発明の硬化膜は、湿式成膜により、基体に塗布後、硬化膜とすることで、フラットパネルディスプレイ用のコーティング材、電子回路用基板本体用保護膜または半導体用保護膜等に使用される。
【実施例】
【0107】
以下に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0108】
実施例で合成した含フッ素重合性単量体の同定手法、高分子化合物であるポリアリレート樹脂の物性評価方法を、以下の(1)〜(6)に示す。
【0109】
(1)NMR(核磁気共鳴)測定
共鳴周波数400MHzの核磁気共鳴装置(日本電子株式会社製)を使用し、1H−NMR、19F−NMRの測定を行った。
【0110】
(2)DI−MS(質量分析スペクトル)測定
質量分析計(日本電子株式会社製 型番、JMS−T100GC)を使用し、質量分析スペクトルを測定した。
【0111】
(3)分子量測定
テトラヒドロフラン(以下、THFと略する)を溶媒としたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定を行い、ポリスチレン換算で分子量を算出した。
【0112】
(4)溶解性の評価
N−メチルピロリドン(以下、NMPと略する)、シクロヘキサノンまたは水酸化テトラメチルアンモニウム(以下、TMAH)の濃度2.38質量%の各々溶液に対し、合成した高分子化合物を樹脂濃度10質量%になるように加えて室温にて1時間攪拌した後に、目視にて溶解物の有無を観察した。尚、NMPおよびシクロヘキサノンは極性溶剤であり、TMAHは有機系強アルカリで、半導体表面処理剤やリソグラフィー用のポジレジスト用現像液として用いられる。
【0113】
[含フッ素重合性単量体の合成]
実施例1(式(3)で表される含フッ素重合性単量体の合成)
以下の反応式に示すように、式(15)で表される多価フェノールにヘキサフルオロアセトンを反応させて、式(3)で表される含フッ素重合性単量体、即ち、2,6−ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシプロパン−2−イル)−1,5−ジナフトールを合成した。
【化28】

【0114】
室温(20℃)下で、ステンレス製オートクレーブにトルエン、150gを入れ、原料である一般式(15)で表される多価フェノール、即ち、1,5−ナフトール、25g(0.54mol)を加え、さらにCHSOH、0.25gを加えた。次いで、オートクレーブに、ヘキサフルオロアセトン57g(0.34mol)を加えた後、徐々に昇温し100℃に保持した状態で8時間攪拌しつつ反応させた。
【0115】
反応系内の原料を含む反応物を濾過し、濾過残渣をイソプロピルエーテルに溶解させた後に水で洗浄し、分離した有機層に無水硫酸マグネシウムを加え脱湿した。減圧蒸留しイソプロピルエーテルを留去し、貧溶媒であるヘキサンを加え、式(3)の含フッ素重合性単量体の沈殿を析出させた。このようにして、76%の収率で式(3)の含フッ素重合性単量体を得た。
【0116】
得られた式(3)の含フッ素重合性単量体の分析結果を、以下に示す。
【0117】
1H−NMR(溶媒、d−DMSO,TMS)δ10.4(2H, br),7.82(2H, d, J =9.2 Hz),7.52 (2H,d,J=8.3Hz)
19F−NMR(溶媒、d−DMSO, CClF)δ −73.7(12F,s)
次いで、攪拌装置を備えた反応容器中、式(3)で表される含フッ素重合性単量体、1.97g(0.00400モル)を脱水精製したN−メチルピロリドン12.9gおよびピリジン0.70gに溶解した。次いで、イソフタル酸クロライド0.81g(0.00400モル)を加え、室温で5hr攪拌して重縮合反応を行った。
【0118】
反応終了後、貧溶媒であるビーカー内のメタノール50質量%水溶液、0.5kg中に上記反応駅を徐々に注ぎ、高分子化合物を析出させた。この高分子化合物をろ過した後、真空乾燥器内で、減圧下、100℃で8時間乾燥して、式(16)の繰り返し単位を含む重合物(2.04g、収率82%)を得た。分子量および溶解性の結果を表1に示す。
【化29】

【0119】
実施例2
攪拌装置を備えた反応容器中、式(3)で表される含フッ素重合性単量体、1.97g(0.004モル)を脱水精製したN−メチルピロリドン12.9gおよびピリジン0.70gに溶解した。次いで、2,2−ビス(4−カルボニルクロリドフェニル)−ヘキサフルオロプロパン、1.72g(0.004モル)を加え、室温で5hr攪拌して重縮合反応を行った。
【0120】
反応終了後、実施例1と同様の操作にて、式(18)の繰り返し単位を含む重合物(2.94g、収率80%)を得た。分子量および溶解性の結果を表1に示す。
【化30】

【0121】
実施例3
攪拌装置を備えた反応容器中、式(3)で表される含フッ素重合性単量体、1.97g(0.004モル)を脱水精製したN−メチルピロリドン12.9gおよびピリジン0.70gに溶解した。次いで、3,3´,4,4´−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1.18g(0.004モル)を加え、室温で5hr攪拌して重縮合反応を行った。
【0122】
反応終了後、実施例1と同様の操作にて、式(19)の繰り返し単位を含む重合物(2.67g、収率85%)を得た。分子量および溶解性の結果を表1に示す。
【化31】

【0123】
比較例1
攪拌装置を備えた反応容器中、4,4−ビフェノール0.931g(0.00500モル)を、N−メチルピロリドン8.6gおよびピリジン0.87gの脱水精製した混合溶媒に溶解した。この溶液にイソフタル酸クロライド1.015g(0.00500モル)を加え、室温(20℃)下で攪拌して、以下に示す重縮合反応を行った。撹拌開始後、1時間で沈殿が析出した。
【0124】
さらに、3時間撹拌した後に、得られた沈殿が析出した反応液を、貧溶媒であるメタノールを100g入れたビーカー内に注ぎ、重合物を析出させた。真空乾燥機で減圧下、100℃に8時間乾燥して、式(17)で示される繰り返し単位を含むポリアリレート樹脂を得た。このポリアリレート樹脂は有機溶剤に不溶であり、分子量測定や溶解性の評価を行うことができなかった。
【化32】

【0125】
比較例2
攪拌装置を備えた反応容器中、1,5−ジナフトール、0.800g(0.005モル)を、N−メチルピロリドン8.6gおよびピリジン0.87gの脱水精製した混合溶媒に溶解した。この溶液にイソフタル酸クロライド1.015g(0.005モル)を加え、室温(20℃)下で攪拌して、以下に示す重縮合反応を行った。撹拌開始後、30分で沈殿が析出した。
【0126】
さらに、3時間撹拌した後に、得られた沈殿が析出した反応液を、貧溶媒であるメタノールを100g入れたビーカー内に注ぎ、重合物を析出させた。真空乾燥機で減圧下、100℃で8時間乾燥して、式(20)で示される繰り返し単位を含むポリアリレート樹脂を得た。このポリアリレート樹脂は有機溶剤に不溶であり、分子量測定や溶解性の評価を行うことができなかった。
【化33】

【0127】
実施例1〜3及び比較例1〜2の分子量および溶解性の評価結果を表1に示す。
【表1】

【0128】
表1に示すように、HFIP基を含有した高分子化合物(実施例1乃至3)は、当該官能基を含有しない高分子化合物(比較例1および2)に比べて、溶解性に優れることが明らかとなった。
【0129】
実施例4
実施例1で合成した、式(16)の繰り返し単位を含む重合物、1.35gに、エポキシ化合物としてビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学製JER828)、1.28g、硬化促進剤としてトリフェニルホスフィン0.05g、およびシクロヘキサノン10.7gを加えて攪拌し溶解させることで、固形分濃度20質量%の溶液を得た。
【0130】
次いで、スピンコーターを用いて、当該ガラス基板上に垂らし、回転数1000rpmで、40秒間、スピンコートした後、80℃で5分間、乾燥させた。その後、180℃下で1時間加熱し硬化反応を行ったところ、ガラス基板上に硬質膜の形成を確認した。
【0131】
得られた膜はシクロヘキサノン、TMAHに不溶であり、IRスペクトル解析から、920cm−1付近のエポキシ環由来の吸収の消失を確認できたことから、得られた硬質膜は、式(16)の繰り返し単位を含む重合物とビスフェノールA型エポキシ樹脂による硬化膜であることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0132】
本発明のHFIP基を含有した含フッ素重合性単量体を原料とする高分子化合物、即ち、含フッ素多価芳香族ポリエステル樹脂は、有機溶剤への溶解性を改良されることで成型性が付与され、かつ、アルカリ現像液にも溶解することで半導体およびディスプレイ向けの感光性コーティング材料としても使用することが出来る。加えて、エポキシ樹脂と混合しても高透明性を維持出来ることから、エポキシ樹脂が使用されている高性能高分子材料分野で使用することもできる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1):
【化1】

〔式(1)中、a、bはそれぞれ独立に0〜2の整数であり、a+b=2である。cは0以上の整数である。dとeはそれぞれ独立に0〜2の整数であり、1≦d+e≦4である。また、式(1)中、次式:
【化2】

で表される部位は、炭素原子がヘテロ原子(窒素原子、酸素原子または硫黄原子)で置換して、水素原子は置換基で置換してもよく、この置換基は窒素原子、酸素原子または硫黄原子を含んでいてもよい。)
で表される、含フッ素重合性単量体。
【請求項2】
一般式(1)で表わされる含フッ素重合性単量体が、
一般式(2):
【化3】

(式(2)中、dとeはそれぞれ独立に0〜2の整数であり、1≦d+e≦4である。)で表わされる、請求項1に記載の含フッ素重合性単量体。
【請求項3】
一般式(2)で表わされる含フッ素重合性単量体が、
式(3):
【化4】

で表される、請求項2に記載の含フッ素重合性単量体。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の含フッ素重合性単量体と、一般式(4):
【化5】

(式(4)中、Rは、アルキレン基、または芳香環もしくは脂環から水素原子が2個離脱した2価の有機基であり、構造中に酸素原子、硫黄原子または窒素原子を含んでよく、水素原子の一部がアルキル基、フッ素原子、塩素原子またはフルオロアルキル基で置換されていてもよい。Aはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基または置換基を有することもある炭素数6〜10のフェニル基である。)
で表される化合物、一般式(5):
【化6】

(式(5)中、Rは、アルキレン基、または芳香環もしくは脂環から水素原子が2個離脱した2価の有機基であり、構造中に酸素原子、硫黄原子または窒素原子を含んでいてもよく、水素原子の一部がアルキル基、フッ素原子、塩素原子またはフルオロアルキル基で置換されていてもよい。Xはそれぞれ独立に塩素原子、フッ素原子、臭素原子またはヨウ素原子である。)
で表される化合物、および一般式(6):
【化7】

(式(6)中、Rは、アルカン、芳香環または脂環から水素原子が4個離脱した4価の有機基であり、構造中に酸素原子、硫黄原子または窒素を含んでいてもよく、水素の一部がアルキル基、フッ素原子、塩素原子またはフルオロアルキル基で置換されていてもよい。)
で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種を含む、組成物。
【請求項5】
一般式(7):
【化8】

(式(7)中、Rは、それぞれ独立にアルキレン基、または芳香環もしくは脂環から水素原子が2個離脱した2価の有機基であり、構造中に酸素原子、硫黄原子または窒素原子を含んでよく、水素原子の一部がアルキル基、フッ素原子、塩素原子またはフルオロアルキル基で置換されていてもよい。aとbはそれぞれ独立に0〜2の整数であり、a+b=2である。
cは0以上の整数である。dとeはそれぞれ独立に0〜2の整数を表し、1≦d+e≦4である。
また、式(7)中、次式:
【化9】

で表される部位は、炭素原子がヘテロ原子(窒素原子、酸素原子または硫黄原子)で置換して、水素原子は置換基で置換してもよく、この置換基は窒素原子、酸素原子または硫黄原子を含んでいてもよい。)
で表される繰り返し単位を含む、高分子化合物。
【請求項6】
一般式(7)で表わされる繰り返し単位が、
一般式(8):
【化10】

(式(8)中、Rは、それぞれ独立にアルキレン基、または芳香環もしくは脂環から水素原子が2個離脱した2価の有機基であり、構造中に酸素原子、硫黄原子または窒素原子を含んでいてもよく、水素原子の一部がアルキル基、フッ素原子、塩素原子またはフルオロアルキル基で置換されていてもよい。dとeはそれぞれ独立に0〜2の整数であり、1≦d+e≦4である。)
で表される繰り返し単位である、請求項5に記載の高分子化合物。
【請求項7】
一般式(8)で表わされる繰り返し単位が、
式(9):
【化11】

で表される繰り返し単位である、請求項6に記載の高分子化合物。
【請求項8】
一般式(9)で表わされる繰り返し単位が、
一般式(10):
【化12】

〔式(10)中、Rは、それぞれ独立に、アルカン、芳香環または脂環から水素原子が4個離脱した4価の有機基であり、構造中に酸素原子、硫黄原子または窒素原子を含んでいてもよく、水素原子の一部がアルキル基、フッ素原子、塩素原子またはフルオロアルキル基で置換されていてもよい。a、bはそれぞれ独立に0〜2の整数であり、a+b=2である。cは0以上の整数である。dとeはそれぞれ独立に0〜2の整数であり、1≦d+e≦4である。また、式(10)中、次式:
【化13】

で表される部位は、炭素原子がヘテロ原子(窒素原子、酸素原子または硫黄原子)で置換して、水素原子は置換基で置換してもよく、この置換基は窒素原子、酸素原子または硫黄原子を含んでいてもよい。)
で表される繰り返し単位である、請求項7に記載の高分子化合物。
【請求項9】
一般式(10)で表わされる繰り返し単位が、
一般式(11):
【化14】

(式(11)中、Rは、それぞれ独立にアルカン、芳香環または脂環から水素原子が4個離脱した4価の有機基であり、構造中に酸素原子、硫黄原子または窒素を含んでいてもよく、水素原子の一部がアルキル基、フッ素、塩素またはフルオロアルキル基で置換されていてもよい。dとeはそれぞれ独立に0〜2の整数であり、1≦d+e≦4である。)
で表される繰り返し単位である、請求項8に記載の高分子化合物。
【請求項10】
一般式(11)で表わされる繰り返し単位が、
式(12):
【化15】

で表される繰り返し単位である、請求項9に記載の高分子化合物。
【請求項11】
2−ヒドロキシ−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロピル基中のOH部位の水素原子の少なくとも一部がグリシジル基で置換されてなる、請求項5乃至請求項10のいずれか1項に記載の高分子化合物。
【請求項12】
請求項4乃至請求項11のいずれか1項に記載の高分子化合物とエポキシ化合物とを含む組成物。
【請求項13】
エポキシ化合物が一般式(13):
【化16】

(式(13)中、Rは、アルカン、芳香環または脂環から水素原子が1個離脱した1価の有機基であり、構造中に酸素原子、硫黄原子または窒素を含んでいてもよく、水素原子の一部がアルキル基、フッ素、塩素またはフルオロアルキル基で置換されていてもよい。fは1〜4の整数である。)
で表されるこ、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
請求項11に記載の高分子化合物のグリシジル基が架橋してなる硬化物。
【請求項15】
請求項12または請求項13に記載の組成物を硬化させてなる硬化物。

【公開番号】特開2013−10942(P2013−10942A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−118433(P2012−118433)
【出願日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)
【Fターム(参考)】