説明

含フッ素重合性単量体および含フッ素高分子化合物

【課題】 紫外線領域から近赤外線領域に至るまでの幅広い波長領域で高い透明性を有し、かつ基板への高い密着性及び成膜性、耐熱性、耐溶剤性、誘電特性、機械的安定性、さらには高いエッチング耐性を有したレジスト材料や感光性材料に有用な新規な含フッ素重合性単量体、含フッ素高分子化合物を提供する。
【解決手段】 一般式(1)
【化1】


で表される含フッ素重合性単量体(式中、Rは、水素、炭素数1〜4のフッ素を含有しても良い炭化水素基、フッ素、塩素、シアノ基であり、Rは水素、フッ素、ヒドロキシ基、メチル基、又は炭素数1〜10の分岐、環状構造を有しても良い炭化水素基、またはアルコキシ基であって、一部又は全部にフッ素を含有しても良い。Rは、水素又は保護基であって、エーテル構造、エステル構造、フッ素を含んでも良い。)およびこれを用いて得られる高分子化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な含フッ素重合性単量体、含フッ素高分子化合物、それを用いた感光性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピューターを始めとするデジタル機器の発展により、取り扱う演算データや二次元、三次元画像データの処理量が膨大になってきており、これらの情報を素早く処理するために大容量で高速なメモリと高性能なマイクロプロセッサが必要となっている。また、インターネットなどネットワークの発展に伴って、さらにブロードバンド化が加速し、デジタル機器に求められる処理能力は益々高まっていくものと予測されている。
【0003】
このような要求を達成するために、半導体に代表される各種デバイス、基板、又はモジュールには、より一層の高密度、高集積化が求められている。なかでも、微細加工を可能とするフォトリソグラフィー技術やパッケージ材料に求められる耐熱材料としての感光性パターニング技術に対する要求は年々厳しくなっており、特に先端半導体分野では、最小線幅0.13ミクロン以下の加工技術が必要となり、特に最近では0.09ミクロン以下の領域で開発が進められている。
【0004】
それらの開発またはデバイス生産に対応して、KrFエキシマレーザー(248nm)、ArFエキシマレーザー(193nm)を用いたフォトリソグラフィーが利用され始めている。さらに微細なパターンを加工する目的で、F(157nm)、電子線、軟X線などを用いたフォトリソグラフィーの開発も進められている。さらに最近になって、レジスト膜上に水やその他の流体を展開し、流体を通して光を照射する液浸リソグラフィーの開発も活発化している。
【0005】
これらの波長領域においては、使用する活性エネルギー線の波長に対して透明な感光性材料が用いられている。例えばKrF(248nm)ではヒドロキシスチレン系重合体が使用されているが、ArF(193nm)においてはアクリル系樹脂(例えば、特許文献1)やシクロオレフィン系樹脂(例えば、特許文献2)が検討されてきている。
【0006】
さらに、F(157nm)の波長では、透明性が高い樹脂が限られていることからフッ素樹脂の優位性が明らかとなってきている。特にフッ素系水酸基含有のレジスト樹脂は親水性にも優れた特性をもつことが報告されており、非常に期待が持たれている(例えば、非特許文献1、2)。
【0007】
一方、半導体デバイスやディスプレー用パッケージの分野においては、一般的にエポキシ樹脂などが採用されているが、プリント基板への実装時の熱ストレスを低減することを目的として封止樹脂材の中に素子基板(Si基板)と熱膨張係数の近い酸化ケイ素(SiO)の微粒子を添加する方法が用いられている。しかし、従来の技術では、熱伝導性に於て、金属や、セラミックス等に劣るエポキシ樹脂を用いた従来構造のプラスチックパッケージでは、放熱特性が悪く、熱抵抗がかなり高くなるため、パワーICなどの高消費電力のICや、高速で動作するICのパッケージとしては長期的な信頼性という面から不利であった。
【0008】
また、低応力にするために樹脂中に添加されているSiO2の微粒子は非常に硬いため、プリント基板への実装時に発生する熱応力で、素子表面へ局所的に大きな圧力を加え、素子を破壊することが発生していた。すなわち、半導体パッケージの分野においては、耐熱性が高く、素子表面に熱応力を加え難い材料が求められていた(例えば、特許文献3)。
【0009】
実際には、単独の半導体パッケージ材料では要求性能を満足することは難しく、種々の保護膜等が併用されている。パッケージ材料と保護膜は一体化しており、お互いの欠点を補いあうことによって役割を果たしているといえる。半導体チップへの水及び不純物の浸入を防ぐためにパッシベーション膜が、またパッケージ材料中に生じる応力集中を緩和するためにバッファーコート膜が用いられている。従来、半導体に用いられる絶縁膜や保護膜などの薄膜材料は酸化シリコンなどの無機化合物が主流であったが、現在は、ポリイミドなどの耐熱性高分子材料の有用性が認められ、相関絶縁膜、パッシベーション膜、バッファーコート膜などに使用されている。
【0010】
また、近年の半導体の高集積化、高速化の要求に対しては、信号の高速伝送に対応した材料が求められている。高速伝送では信号の伝播遅延が問題となるが、伝播遅延は材料の比誘電率に比例することから、材料の低誘電率化が有効である。現在では、フッ素樹脂が低誘電率であることが知られ、含フッ素ポリイミドも有力な材料の一つとして研究されている。
【0011】
フッ素原子を導入した樹脂はフッ素の持つ撥水性、非密着性などの特異な性質を有し、時には目的とする用途に採用が可能となるが、あるときはそれらの特異性のために採用が難しいこともあった。近年の新しい半導体応用製品の登場に合わせて半導体パッケージも多様化し、小型化、薄型化、低誘電率化など様々な要求がなされ、これらを満足するパッケージ材料が望まれていた。
【特許文献1】特開平10−161313
【特許文献2】特開2000−89463
【特許文献3】特開平8−241913
【非特許文献1】H. Ito, H. D. Truong, et al, J. Photopolym. Sci. Technol., 16, 523-536(2003)
【非特許文献2】Francis Houlihan, Andrew Romano, Ralph R, Dammel, et al, J. Photopolym. Sci. Technol., 16, 581-590(2003)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
紫外線領域から近赤外線領域に至るまでの幅広い波長領域で高い透明性を有し、かつ基板への高い密着性及び成膜性、耐熱性、耐溶剤性、誘電特性、機械的安定性、さらには高いエッチング耐性を有したレジスト材料や感光性材料に有用な新規な含フッ素重合性単量体、含フッ素高分子化合物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、前記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、ヘキサフルオロイソプロパノールとアミドを芳香環のオルト位に有する新規なアクリル酸アミド系化合物を見出した。さらに、この化合物を用いてアクリルアミド系高分子化合物が製造できることを見出した。
【0014】
すなわち、本発明は、
「1」 一般式(1)
【0015】
【化9】

【0016】
で表される含フッ素重合性単量体である。(式中、R1が、水素、炭素数1〜4のフッ素を含有しても良い炭化水素基、塩素、シアノ基であり、R2が、水素、メチル基、又は炭素数1〜10の分岐、環状構造を有しても良い炭化水素基、またはアルコキシ基であって、一部にフッ素を含有しても良い。さらにR3は、水素又は保護基であって、エーテル構造、エステル構造、フッ素を含んでも良い。)
「2」上記一般式(1)の重合性単量体を用いた、一般式(2)
【0017】
【化10】

【0018】
で表される構造を含有する含フッ素高分子化合物である。(式中、Rは、水素、炭素数1〜4のフッ素を含有しても良い炭化水素基、フッ素、塩素、シアノ基であり、Rは水素、フッ素、ヒドロキシ基、メチル基、又は炭素数1〜10の分岐、環状構造を有しても良い炭化水素基、またはアルコキシ基であって、一部又は全部にフッ素を含有しても良い。Rは、水素又は保護基であって、エーテル構造、エステル構造、フッ素を含んでも良い。)
「3」 一般式(3)
【0019】
【化11】

【0020】
で表される含フッ素重合性単量体である。(式中、Rは、水素、炭素数1〜4のフッ素を含有しても良い炭化水素基、フッ素、塩素、シアノ基であり、Rは水素、フッ素、ヒドロキシ基、メチル基、又は炭素数1〜10の分岐、環状構造を有しても良い炭化水素基、またはアルコキシ基であって、一部又は全部にフッ素を含有しても良い。)
「4」 一般式(4)
【0021】
【化12】

【0022】
で表される構造を含有する含フッ素高分子化合物。(式中、Rは、水素、炭素数1〜4のフッ素を含有しても良い炭化水素基、フッ素、塩素、シアノ基であり、Rは水素、フッ素、ヒドロキシ基、メチル基、又は炭素数1〜10の分岐、環状構造を有しても良い炭化水素基、またはアルコキシ基であって、一部又は全部にフッ素を含有しても良い。)
「5」 一般式(1)で表される重合性単量体が、式(5)の構造である上記「1」記載の重合性単量体である。
【0023】
【化13】

【0024】
「6」 上記式(5)の重合性単量体を用いる、式(6)
【0025】
【化14】

【0026】
で表される構造を含有する上記「2」に記載の含フッ素高分子化合物。
「7」 一般式(3)で表される重合性単量体が、式(7)の4,4−ビス(トリフルオロメチル)−2−イソプロペニル−6−メチル−3,1−ベンゾオキサジンである上記「3」に記載の重合性単量体。
【0027】
【化15】

【0028】
「8」 一般式(4)で表される高分子化合物が、式(8)で表される上記「4」に記載の高分子化合物。
【0029】
【化16】

【0030】
以下に、本願発明の一般式(1)の代表例として式(5)に示される下記単量体の合成方法を説明する。
【0031】
【化17】

【0032】
この単量体、2−メチル−N−[4−メチル−2−(1−ヒドロキシ−1−トリフルオロメチル−2,2,2−トリフルオロエチル)−フェニル]−2−プロペンアミドの合成は次の2工程よりなる。
【0033】
第1工程:4−トルイジンとヘキサフルオロアセトンを反応させ、下記式(9)で表される2−アミノ−5−メチル−α,α−ビス(トリフルオロメチル)−ベンゼンメタノールを製造する工程。
【0034】
第2工程:第1工程で得られた2−アミノ−5−メチル−α,α−ビス(トリフルオロメチル)−ベンゼンメタノールとメタクリル酸ハロゲン化物もしくはメタクリル酸無水物を用いてアミド化し、式(5)で表される2−メチル−N−[4−メチル−2−(1−ヒドロキシ−1−トリフルオロメチル−2,2,2−トリフルオロエチル)−フェニル]−2−プロペンアミドを得る工程。
【0035】
【化18】

【0036】
まず第1工程について詳しく説明する。本工程は4−トルイジンとヘキサフルオロアセトンを反応させ、2−アミノ−5−メチル−α,α−ビス(トリフルオロメチル)−ベンゼンメタノールを製造する工程である。本工程は、原料である4−トルイジンの中へヘキサフルオロアセトンを導入することによって行われる。ヘキサフルオロアセトンの沸点が低い(−28℃)ことから、ヘキサフルオロアセトンの反応系外への流出を防ぐための装置(冷却装置もしくは密封反応器)を使用することが好ましく、装置としては密封反応器が特に好ましい。
【0037】
本工程に使用するヘキサフルオロアセトンの量は、4−トルイジンに対して、0.9当量〜1.5当量が好ましく、さらに好ましくは1.0当量〜1.2当量である。これ以上使用しても反応は問題なく進行するが、経済性の面から好ましくない。
【0038】
本工程は、通常4−トルイジンの融点である40℃以上の反応温度で行われ、生成物である2−アミノ−5−メチル−α,α−ビス(トリフルオロメチル)−ベンゼンメタノールの融点である110℃以上で行うのが好ましく、120℃〜180℃が特に好ましい。180℃以上の温度では副反応が進行するので好ましくない。
【0039】
本工程は、触媒を使用しなくても行うことができるが、酸触媒を使用することで反応を促進させることができる。使用される酸触媒としては、塩化アルミニウム、フッ化硼素等のルイス酸、ベンゼンスルホン酸、カンファースルホン酸(CSA)、p−トルエンスルホン酸(pTsOH)、ピリジニウムp−トルエンスルホン酸(PPTS)などの有機スルホン酸が好ましい。使用される触媒の量は、4−トルイジン1モルに対して、0.1モル%〜10モル%が好ましく、0.5モル%から5モル%が特に好ましい。これ以上使用しても反応は問題なく進行するが、経済性の面から好ましくない。
【0040】
本工程は溶媒を使用せずに行うことができるが、溶媒を使用することもできる。使用される溶媒としては、反応に関与しないものなら特に制限は無いが、キシレン等の芳香族炭化水素類が好ましい。使用する溶媒の量には特に制限が無いが、多量に使用することは容積あたりの収量が減少するので好ましくない。
【0041】
本工程を密封反応器(オートクレーブ)を使用して行う場合には、通常、最初に4−トルイジンと、必要に応じて触媒および/または溶媒を反応器内に仕込む。次いで、反応器内圧が0.5MPaを越えないように、温度を上げつつ、ヘキサフルオロアセトンを逐次導入していくことが好ましい。
【0042】
本工程の反応時間に特別な制限はないが、温度や、用いる触媒の量等に依存して最適の反応時間は異なる。従って、ガスクロマトグラフィー等、汎用の分析手段により、反応の進行状況を測定しつつ反応を実施し、原料が十分消費されたことを確認した後、本工程を終了することが好ましい。 反応終了後、抽出、蒸留、晶析等の通常の手段により、2−アミノ−5−メチル−α,α−ビス(トリフルオロメチル)−ベンゼンメタノールを得ることができる。また、必要によりカラムクロマトグラフィーあるいは再結晶等により精製することもできる。
【0043】
次に第2工程について詳しく説明する。本工程は第1工程で得られた2−アミノ−5−メチル−α,α−ビス(トリフルオロメチル)−ベンゼンメタノール(式(9))とメタクリル酸ハロゲン化物もしくはメタクリル酸無水物を用いてアミド化し、2−メチル−N−[4−メチル−2−(1−ヒドロキシ−1−トリフルオロメチル−2,2,2−トリフルオロエチル)−フェニル]−2−プロペンアミド(式(5))を得る工程である。
【0044】
本工程に使用されるメタクリル酸ハロゲン化物もしくはメタクリル酸無水物とは、具体的にはメタクリル酸フッ化物、メタクリル酸塩化物、メタクリル酸臭化物、メタクリル酸ヨウ化物そしてメタクリル酸無水物である。これらのうち、価格と入手の容易さからメタクリル酸塩化物もしくはメタクリル酸無水物を使用するのが好ましい。使用されるメタクリル酸塩化物もしくはメタクリル酸無水物の量は、2−アミノ−5−メチル−α,α−ビス(トリフルオロメチル)−ベンゼンメタノール1当量に対して、0.9当量〜1.5当量が好ましく、さらに好ましくは1.0当量〜1.2当量である。これ以上使用すると副生成物が生じるので好ましくない。
【0045】
本工程のアミド化には塩基が使用される。使用される塩基としては、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、水素化ナトリウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムtert−ブトキシド、カリウムtert−ブトキシドなど無機塩基の他、トリエチルアミン、ジエチルアミン、ピリジン、2,6−ルチジン、ピペリジン、ピロリジン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセンなどの有機塩基を用いることができる。好ましくは、有機塩基が用いられ、特に、ピリジンか2,6−ルチジンが好ましく用いられる。塩基は2−アミノ−5−メチル−α,α−ビス(トリフルオロメチル)−ベンゼンメタノール1当量に対して1.8〜5当量、好ましくは2〜3当量用いられる。 本工程は、通常−78℃〜50℃の温度範囲で行われるが、−10℃〜40℃が好ましく、0℃〜30℃が特に好ましい。50℃より高い温度では副生成物を生じるので好ましくない。
【0046】
本工程は溶媒を使用せずに行うことができるが、溶媒を使用することもできる。使用される溶媒としては、反応に関与しないものなら特に制限は無いが、ベンゼン、トルエン、キシレン類等の芳香族炭化水素類もしくはジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類が好ましい。使用する溶媒の量には特に制限が無いが、2−アミノ−5−メチル−α,α−ビス(トリフルオロメチル)−ベンゼンメタノールに対して、1〜10倍重量使用するのが好ましく、さらに好ましくは2〜5倍重量である。多量に使用しても問題は無いが、容積あたりの収量が減少するので好ましくない。
【0047】
本工程の反応時間に特別な制限はないが、温度等に依存して最適の反応時間は異なる。従って、ガスクロマトグラフィー等、汎用の分析手段により、反応の進行状況を測定しつつ反応を実施し、原料が十分消費されたことを確認した後、本工程を終了することが好ましい。 反応終了後、抽出、晶析等の通常の手段により、2−メチル−N−[4−メチル−2−(1−ヒドロキシ−1−トリフルオロメチル−2,2,2−トリフルオロエチル)−フェニル]−2−プロペンアミドを得ることができる。また、必要によりカラムクロマトグラフィーあるいは再結晶等により精製することもできる。
【0048】
本発明で使用できる一般式(1)の重合性単量体を具体的に例示するならば、
【0049】
【化19】

【0050】
などが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、一般式(1)のRは酸の作用により解離する次のような酸不安定性基が好適に使用できる。
【0051】
すなわち、Rに使用できる酸不安定基の例としては、光酸発生剤や加水分解などの効果で脱離が起きる基であれば制限なく使用できるが、具体的な例を挙げるとするならば、アルキコキシカルボニル基、アセタール基、シリル基、アシル基等を挙げることができる。
【0052】
アルコキシカルボニル基としてはtert−ブトキシカルボニル基、tert−アミルオキシカルボニル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、i−プロポキシカルボニル基等を例示できる。
【0053】
アセタール基としては、メトキシメチル基、エトキシエチル基、ブトキシエチル基、シクロヘキシルオキシエチル基、ベンジルオキシエチル基、フェネチルオキシエチル基、エトキシプロピル基、ベンジルオキシプロピル基、フェネチルオキシプロピル基、エトキシブチル基、エトキシイソブチル基などが挙げられる。また水酸基に対してビニルエーテルを付加させたアセタール基を使用することもできる。
【0054】
シリル基としては、例えば、トリメチルシリル基、エチルジメチルシリル基、メチルジエチルシリル基、トリエチルシリル基、i−プロピルジメチルシリル基、メチルジ−i−プロピルシリル基、トリ−i−プロピルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、メチルジ−t−ブチルシリル基、トリ−t−ブチルシリル基、フェニルジメチルシリル基、メチルジフェニルシリル基、トリフェニルシリル基等を挙げることができる。
【0055】
アシル基としては、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ヘプタノイル基、ヘキサノイル基、バレリル基、ピバロイル基、イソバレリル基、ラウリロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、オキサリル基、マロニル基、スクシニル基、グルタリル基、アジポイル基、ピペロイル基、スベロイル基、アゼラオイル基、セバコイル基、アクリロイル基、プロピオロイル基、メタクリロイル基、クロトノイル基、オレオイル基、マレオイル基、フマロイル基、メサコノイル基、カンホロイル基、ベンゾイル基、フタロイル基、イソフタロイル基、テレフタロイル基、ナフトイル基、トルオイル基、ヒドロアトロポイル基、アトロポイル基、シンナモイル基、フロイル基、テノイル基、ニコチノイル基、イソニコチノイル基等を挙げることができる。
【0056】
さらに、これらの酸不安定基の水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されたものを使用することもできる。
【0057】
酸不安定性基を使用する目的としては、紫外線、真空紫外線などのレーザー、エキシマレーザー、X線等の高エネルギー線もしくは電子線の露光後のアルカリ水溶液への溶解性を発現させることであり、その官能基にフッ素原子を持つものは透明性を、環状構造を含むものはエッチング耐性や高ガラス転移点などの特徴をさらに付与させるためで、本発明の応用分野ごとに使い分けることが可能である。
【0058】
本発明で使用できる高分子化合物は、一般式(2)
【0059】
【化20】

【0060】
(式中、R、RおよびR3は前述の通り)の構造を含有すれば制限なく使用することができる。例えば一般式(1)の重合性単量体は、単独重合または以下に示すような任意の重合性単量体と共重合することが可能である。
【0061】
共重合可能な重合性単量体としては、オレフィン、無水マレイン酸、アクリル酸エステル、含フッ素アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、含フッ素メタクリル酸エステル、スチレン系化合物、含フッ素スチレン系化合物、ビニルエーテル、含フッ素ビニルエーテル、ビニルエステル、含フッ素ビニルエステル、アリルエーテル、含フッ素アリルエーテル、オレフィン、含フッ素オレフィン、ノルボルネン化合物、含フッ素ノルボルネン化合物、ビニルシランから選ばれた一種類以上の単量体との共重合が好適である。
【0062】
オレフィンとしては、エチレン、プロピレンなど、フルオロオレフィンとしては、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、ヘキサフルオロイソブテン、オクタフルオロシクロペンテンなどが例示できる。
【0063】
また、アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルとしては、エステル側鎖について特に制限なく使用できる。公知の化合物の例を示すならば、メチルアクリレート又はメタクリレート、エチルアクリレート又はメタクリレート、n-プロピルアクリレート又はメタクリレート、イソプロピルアクリレート又はメタクリレート、n-ブチルアクリレート又はメタクリレート、イソブチルアクリレート又はメタクリレート、n-ヘキシルアクリレート又はメタクリレート、n-オクチルアクリレート又はメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート又はメタクリレート、ラウリルアクリレート又はメタクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート又はメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート又はメタクリレートなどのアクリル酸又はメタクリル酸のアルキルエステル、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール基を含有したアクリレート又はメタクリレート、さらにアクリルアミド、メタクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N-メチロールメタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドなどの不飽和アミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アルコキシシラン含有のビニルシランやアクリル酸又はメタクリル酸エステル、t−ブチルアクリレート又はメタクリレート、3-オキソシクロヘキシルアクリレート又はメタクリレート、アダマンチルアクリレート又はメタクリレート、アルキルアダマンチルアクリレート又はメタクリレート、シクロペンチル又はシクロヘキシルアクリレート又はメタクリレート、ヒドロキシル基を1つ又は2つ有したシクロペンチル又はシクロヘキシルアクリレート又はメタクリレート、ヒドロキシル基を1つ又は2つ有したアダマンチルアクリレート又はメタクリレート、トリシクロデカニルアクリレート又はメタクリレート、ブチルラクトン、ノルボルナン環とラクトン環を同時に有した特殊ラクトン環を有したアクリレート又はメタクリレート、ノルボルナン環が直接又は間接的にエステル化されたアクリレート又はメタクリレート、アクリル酸、メタクリル酸などが使用できる。前述の各種環状のアクリレート又はメタクリレートは1級、2級、3級のどの形のエステルであってもよい。さらにヘキサフルオロカルビノール基を側鎖に一つ又は複数個有した構造のアクリレート、メタクリレート、ノルボルネン、スチレンなども使用することができる。また、スルホン酸、カルボン酸、ヒドロキシル基、シアノ基を側鎖に有した各種アクリレート、メタクリレート、ノルボルネン類、スチレン類も使用することができる。さらにαシアノ基含有の上記アクリレート類化合物や類似化合物としてマレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸などを共重合することも可能である。
【0064】
本発明で、好適に採用される共重合系としては、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン類との組み合わせの他、一般式(1)のアルファ位にフルオロアルキル基を導入したアクリル酸アミドとノルボルネン系単量体の共重合も好適な組み合わせである。
【0065】
本発明にかかる高分子化合物の重合方法としては、一般的に使用される方法であれば特に制限されないが、ラジカル重合、イオン重合などが好ましく、場合により、配位アニオン重合、リビングアニオン重合、カチオン重合などを使用することが可能である。
【0066】
ラジカル重合は、ラジカル重合開始剤あるいはラジカル開始源の存在下で、塊状重合、溶液重合、懸濁重合又は乳化重合などの公知の重合方法により、回分式、半連続式又は連続式のいずれかの操作で行えばよい。
【0067】
ラジカル重合開始剤としては特に限定されるものではないが、例としてアゾ系化合物、過酸化物系化合物、レドックス系化合物が挙げられ、とくにアゾビスイソブチロニトリル、t−ブチルパーオキシピバレート、ジ−t−ブチルパーオキシド、i−ブチリルパーオキシド、ラウロイルパーオキサイド、スクシン酸パーオキシド、ジシンナミルパーオキシド、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシアリルモノカーボネート、過酸化ベンゾイル、過酸化水素、過硫酸アンモニウム等が好ましい。
【0068】
重合反応に用いる反応容器は特に限定されない。また、重合反応においては、重合溶媒を用いてもよい。重合溶媒としては重合反応を阻害しなければよく、代表的なものとして、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどの芳香族炭化水素系、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサンなどの炭化水素系、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、メタノール、エタノール、t−ブタノールなどのアルコール類、四塩化炭素、クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素、水、エーテル系、環状エーテル系、フロン系などが例示できる。これらの溶剤は単独でもあるいは2種類以上を混合しても使用できる。なお反応温度は、通常は−70〜200℃が好ましく、特に−30〜60℃が好ましい。
【0069】
本発明によると一般式(2)を含有した高分子化合物を用いて感光性樹脂組成物とすることができる。ヘキサフルオロイソプロパノール基は酸性の水酸基であることから、アルカリ性の現像液に対して溶解性基として働くことを利用するものである。また、一般式(2)はアルカリ可溶性を高める目的、密着性を高める目的などの特定の目的において、極性基含有の単量体と共重合する方法が選択される。一例として、一般式(2)の高分子化合物において現像液などのアルカリ水溶液への溶解性を向上させるために、アクリル酸、メタクリル酸、及びこれらのカルボキシル基にアルキルアダマンタンやt−ブチル基などに代表される酸不安定基で保護した単量体、さらには次に示すヘキサフルオロアルコール基を含有する単量体との共重合も好適に採用される。
【0070】
【化21】

【0071】
Xは1又は2
本発明によると活性エネルギー線の照射に対して化学反応を伴うことで感光性を付与することが可能となる。その方式は特に制限されないが、酸の作用により溶解性が変化する化合物、例えばナフトキノンジアジド系化合物や他の酸不安定性化合物、高分子は溶解性抑制剤(インヒビター)を混合する方法も一例である。
【0072】
一方、一般式(2)のRに酸の作用により解離する酸不安定基を用いることもできる。このた場合、一般式(2)を有する高分子自体をポジ型感光性とすることができる。すなわち、分子内のヘキサフルオロイソプロパノール基を酸不安定性の保護基で保護した後に光酸発生剤と混合してレジスト化し、これを露光することによって酸不安定基がはずれ、ヘキサフルオロプロパノール基が生成し、その結果アルカリ現像可能となる。
すなわち本発明の含フッ素高分子化合物は、ポジ型、ネガ型、化学増幅型などいずれのタイプのレジスト材料においても有効であり、用途ごとにその配合量、配合方法を変えて用いることが可能である。
【0073】
本発明の高分子化合物は、レジスト分野へ応用可能である。レジスト材料の使用方法は、従来のフォトレジスト技術のレジストパターン形成方法を用いることが可能である。すなわち、まずシリコンウエーハのような基板に、レジスト材料の溶液をスピンナーなどを用いて塗布し、乾燥することによって感光層を形成させ、これに露光装置などにより高エネルギー線を所望のマスクパターンを介して照射し、加熱する。次いでこれを現像液、例えば0.1〜10重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液のようなアルカリ性水溶液などを用いて現像処理する。この形成方法でマスクパターンに忠実なパターンを得ることができる。さらに、所望によってレジスト材料に混和性のある添加物、例えば付加的樹脂、クエンチャー、可塑剤、安定剤、着色剤、界面活性剤、増粘剤、レベリング剤、消泡剤、相溶化剤、密着剤、酸化防止剤などの種々添加剤を含有させることができる。
【0074】
本発明の高分子化合物をレジスト分野で用い場合、高エネルギー線を照射して加工することができる。用いる高エネルギー線は特に限定されないが、特に微細加工を行なおうとする場合には、G線、I線はもちろんのこと、F2エキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、KrFエキシマレーザー又は軟X線など高エネルギー線の発生源を備えた露光装置を用いることが有効である。また、光路の一部に水やフッ素系の溶媒など、使用する高エネルギー線の吸収が少ない媒質を用い、開口数や有効波長においてより効率的な微細加工を可能とする液浸露光装置を使用することが可能である。
本発明の一般式(1)で表せる化合物は環化させることにより、一般式(3)で表される単量体化合物に変換することができる。
【0075】
【化22】

【0076】
環化反応は、特に制限はないが、環化は、熱、酸触媒など脱水条件を促進する種々の方法で行うことができる。
【0077】
環化させた場合、環化していない単量体と比較して種々の物性が変化することが予想され、樹脂にした場合、物性耐熱性の向上、溶解性変化、屈折率や誘電率の低下、低吸水性、撥水撥油性の発現などが期待できる。
一般式(3)で表される単量体は、重合させることにより、一般式(4)で示される高分子化合物を製造することができる。一般式(3)の単量体は単独重合、共重合を行うことができる。重合反応の条件は、上記一般式(1)で示した単量体の条件を適応することができる。すなわち、反応溶媒、反応温度、開始剤の種類および量、共重合できる化合物等の反応条件に関して、一般式(1)の場合と同じ条件で重合させることが可能である。
【0078】
【化23】

【0079】
さらに、一般式(2)の高分子を環化させることで、一般式(4)
の構造を有した高分子化合物とすることも可能である。
【0080】
【化24】

【0081】
環化反応は、特に制限はないが、単量体の場合と同様に、環化は熱、酸触媒など脱水条件を促進する種々の方法で行うことができる。
【0082】
環化させた場合、耐熱性の向上、溶解性変化、屈折率や誘電率の低下、低吸水性、撥水撥油性の発現など、大きな物性面の変化を伴う樹脂変性を行うことができる。
【0083】
また、環化を行う場合、感光性樹脂としてパターニングした状態で環化することで膜を強固にでき、かつ光学的、電気的にも重要な半永久パターンに加工することができる。
【0084】
本発明によるで表される含フッ素高分子化合物は、半導体デバイス用レジスト材料、パッケージ材料、光導波路などの光デバイス材料として好適に用いることができる。半導体デバイス用パッケージ材料としては、封止材料及びオーバーコート材料が代表的であり、オーバーコート材料としてはバッファーコート膜、パッシベーション膜、それらの保護膜が代表的である。特に本発明の一般式(4)で表される含フッ素高分子化合物は、分子内に環状構造を有することから耐熱性が高く、さらにヘキサフルオロイソプロパノール構造に由来する良好な溶剤溶解性をもってコーティング性に優れ、成膜性や成形性にも優れており、分子内に含まれる置換基の種類や共重合する単量体の種類、その組成、混合する他の材料との配合比、硬化剤の種類などによって各用途に合った物性を得ることが可能である。
【0085】
また、化学的、機械的あるいは電気的特性を改善する目的で、フィラーや他の樹脂とブレンドすることも可能であり、好ましく採用される。半導体デバイスをパッケージする方法としては、既に公知の方法をもちいることができ、特に限定されないが、例えばトランスファ成型法による封止、ポッティング法による封止、スピンコート法、ロールコート法、ディッピング法などによる薄膜の形成方法があげられる。
【実施例】
【0086】
以下、本発明を実施例によって説明する。
【0087】
[実施例1]2−アミノ−5−メチル−α,α−ビス(トリフルオロメチル)−ベンゼンメタノール(式9)の製造
100mlのガラス製密封容器(オートクレーブ)内に4−トルイジン 21.46g(0.2mol)、pTsOH 1.00g(5.8mmol、2.9mol%)を仕込み、系内を窒素雰囲気にした。次いでヘキサフルオロアセトンを21.04g(0.13mol、0.65当量)導入した後に昇温を開始し、反応液の内温を120℃とした。次いでヘキサフルオロアセトンを2時間、逐次導入し、最終的にヘキサフルオロアセトンを36.52g(0.22mol、1.1当量)導入した。その後反応液を冷却し、ジイソプロピルエーテル 100mlとn−ヘキサン 100mlを加えた。この混合物を加熱後、冷却して再結晶を行い、目的とする2−アミノ−5−メチル−α,α−ビス(トリフルオロメチル)−ベンゼンメタノールを40.2g(収率73.5%、純度98.8%)得た。
【0088】
[実施例2]2−メチル−N−[4−メチル−2−(1−ヒドロキシ−1−トリフルオロメチル−2,2,2−トリフルオロエチル)−フェニル]−2−プロペンアミド(式(5))の製造
100mlガラス製フラスコに、2−アミノ−5−メチル−α,α−ビス(トリフルオロメチル)−ベンゼンメタノール 6.65g(24.3mmol)、ピリジン 3.85g(48.7mmol、2.0当量)、トルエン 30mlを入れ、氷浴にて5℃まで冷却した。次いで、メタクリル酸塩化物 2.54g(24.3mmol、1.0当量)を5分間かけて滴下した。氷浴を外し、徐々に室温まで加温したところ、3時間後に反応が終了していた。次いで1Mの希塩酸 40mlとジイソプロピルエーテル 30mlを加えて抽出し、得られた有機層を飽和食塩水で洗浄した。その後有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後濃縮し、粗体の2−メチル−N−[4−メチル−2−(1−ヒドロキシ−1−トリフルオロメチル−2,2,2−トリフルオロエチル)−フェニル]−2−プロペンアミドを8.19g(収率99%、純度93.7%)得た。得られた粗体をジイソプロピルエーテル 30mlとn−ヘプタン 15mlから再結晶し、目的とする2−メチル−N−[4−メチル−2−(1−ヒドロキシ−1−トリフルオロメチル−2,2,2−トリフルオロエチル)−フェニル]−2−プロペンアミドを6.22g(収率75%、純度98.0%)得た。
【0089】
2−メチル−N−[4−メチル−2−(1−ヒドロキシ−1−トリフルオロメチル−2,2,2−トリフルオロエチル)−フェニル]−2−プロペンアミドの物性
白色固体。融点132−134℃。H−NMR(基準物質:TMS、溶媒:CDCl)σ(ppm):1.94(s,3H),2.30(s,3H),5.37(s,1H),5.83(s,1H),6.65(br,1H),7.02(d,1H,J=8.2Hz),7.25(s,1H),8.01(d,1H,J=8.2Hz),9.52(br,1H)。19F−NMR(基準物質:CClF、溶媒:CDCl)σ(ppm):−74.5(s,6F)。[実施例3]2−メチル−N−[4−メチル−2−(1−ヒドロキシ−1−トリフルオロメチル−2,2,2−トリフルオロエチル)−フェニル]−2−プロペンアミド(式(5))の製造
1lガラス製フラスコに、2−アミノ−5−メチル−α,α−ビス(トリフルオロメチル)−ベンゼンメタノール 120g(439mmol)、ピリジン 69.5g(879mmol、2.0当量)、ジイソプロピルエーテル 600mlを入れ、氷浴にて5℃まで冷却した。次いで、メタクリル酸塩化物 45.9g(439mmol、1.0当量)を50分間かけて滴下した。氷浴を外し、徐々に室温まで加温したところ、2時間後に反応が終了していた。次いで反応液を1Mの希塩酸 300ml、および飽和食塩水で洗浄した。その後有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後濃縮し、粗体の2−メチル−N−[4−メチル−2−(1−ヒドロキシ−1−トリフルオロメチル−2,2,2−トリフルオロエチル)−フェニル]−2−プロペンアミドを148g(収率99%、純度89.9%)得た。得られた粗体をジイソプロピルエーテル 550mlとn−ヘプタン 250mlから再結晶し、目的とする2−メチル−N−[4−メチル−2−(1−ヒドロキシ−1−トリフルオロメチル−2,2,2−トリフルオロエチル)−フェニル]−2−プロペンアミドを115g(収率76%、純度99.0%)得た。
【0090】
2−メチル−N−[4−メチル−2−(1−ヒドロキシ−1−トリフルオロメチル−2,2,2−トリフルオロエチル)−フェニル]−2−プロペンアミドの物性
白色固体。融点132−134℃。H−NMR(基準物質:TMS、溶媒:CDCl)σ(ppm):1.94(s,3H),2.30(s,3H),5.37(s,1H),5.83(s,1H),6.65(br,1H),7.02(d,1H,J=8.2Hz),7.25(s,1H),8.01(d,1H,J=8.2Hz),9.52(br,1H)。19F−NMR(基準物質:CClF、溶媒:CDCl)σ(ppm):−74.5(s,6F)。[実施例4]4,4−ビス(トリフルオロメチル)−2−イソプロペニル−6−メチル−3,1−ベンゾオキサジン(式(6))の製造
50mlガラス製フラスコに、2−アミノ−5−メチル−α,α−ビス(トリフルオロメチル)−ベンゼンメタノール 1.0g(3.66mmol)、トルエン 5mlを入れ、氷浴にて5℃まで冷却した。次いで、メタクリル酸塩化物 459mmg(4.39mmol、1.2当量)を滴下した。氷浴を外し、徐々に室温まで加温した。7時間後にメタクリル酸塩化物 230mmg(2.20mmol、0.6当量)を滴下した。さらに18時間攪拌後、1Mの希塩酸 10mlを添加し、ジイソプロピルエーテル 15mlにて抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄した。その後有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後濃縮し、粗体の4,4−ビス(トリフルオロメチル)−2−イソプロペニル−6−メチル−3,1−ベンゾオキサジンを1.23g得た。得られた粗体をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、目的とする4,4−ビス(トリフルオロメチル)−2−イソプロペニル−6−メチル−3,1−ベンゾオキサジンを325mg(収率28%、純度93.2%)得た。
【0091】
4,4−ビス(トリフルオロメチル)−2−イソプロペニル−6−メチル−3,1−ベンゾオキサジンの物性
淡黄色液体。H−NMR(基準物質:TMS、溶媒:CDCl)σ(ppm):2.01(s,3H),2.32(s,3H),5.51(s,1H),6.01(s,1H),7.21(m,3H)。19F−NMR(基準物質:CClF、溶媒:CDCl)σ(ppm):−76.7(s,6F)。
【0092】
[実施例5]還流冷却管、攪拌機を備えたフラスコに、窒素気流下で2−メチル−N−[4−メチル−2−(1−ヒドロキシ−1−トリフルオロメチル−2,2,2−トリフルオロエチル)−フェニル]−2−プロペンアミド(1.00g)、メチルエチルケトン(2.00g)、AIBN(19mg)を入れ、75℃のオイルバスで加熱して14時間攪拌した。
【0093】
反応終了後、n−ヘキサンとアセトン9:1の混合溶媒(100ml)に投入して攪拌し、生成した沈殿をろ過して取り出した。これを50℃で3時間真空乾燥し、白色固体のポリマー(0.97g)を得た。また、分子量はゲルパーミエィションクロマトグラフィー(GPC、標準ポリスチレン)から求めた。結果を表1に示した。
【0094】
[実施例6]還流冷却管、攪拌機を備えたフラスコに、窒素気流下で2−メチル−N−[4−メチル−2−(1−ヒドロキシ−1−トリフルオロメチル−2,2,2−トリフルオロエチル)−フェニル]−2−プロペンアミド(0.50 g)、メタクリル酸エチル(0.17g)、メチルエチルケトン(1.30g)、AIBN(19mg)を入れ、75℃のオイルバスで加熱して14時間攪拌した。
【0095】
反応終了後、n−ヘキサンとアセトン9:1の混合溶媒(100ml)に投入して攪拌し、生成した沈殿をろ過して取り出した。これを50℃で3時間真空乾燥し、白色固体のポリマー(0.61g)を得た。また、分子量はゲルパーミエィションクロマトグラフィー(GPC、標準ポリスチレン)から求めた。結果を表1に示した。
【0096】
[実施例7]還流冷却管、攪拌機を備えたフラスコに、窒素気流下で2−メチル−N−[4−メチル−2−(1−ヒドロキシ−1−トリフルオロメチル−2,2,2−トリフルオロエチル)−フェニル]−2−プロペンアミド(0.5 g)、メタクリル酸ヒドロキシエチル(0.19g)、メチルエチルケトン(1.4g)、AIBN(19mg)を入れ、75℃のオイルバスで加熱して14時間攪拌した。
【0097】
反応終了後、n−ヘキサンとアセトン9:1の混合溶媒(100ml)に投入して攪拌し、生成した沈殿をろ過して取り出した。これを50℃で3時間真空乾燥し、白色固体のポリマー(0.67g)を得た。また、分子量はゲルパーミエィションクロマトグラフィー(GPC、標準ポリスチレン)から求めた。結果を表1に示した。
【0098】
【表1】

【0099】
「実施例8」還流冷却管、攪拌機を備えたフラスコに、窒素気流下で、実施例4で合成した4,4−ビス(トリフルオロメチル)−2−イソプロペニル−6−メチル−3,1−ベンゾオキサジン(0.16g)、メチルエチルケトン(1.00g)、AIBN(25mg)を入れ、75℃のオイルバスで加熱して14時間攪拌した。
【0100】
反応終了後、n−ヘキサンとアセトン9:1の混合溶媒(100ml)に投入して攪拌し、生成した沈殿をろ過して取り出した。これを50℃で3時間真空乾燥し、白色固体のポリマー(0.07g)を得た。また、分子量はゲルパーミエィションクロマトグラフィー(GPC、標準ポリスチレン)から求めたところ、Mw=7,400であった。熱成形にて圧縮成形したところ、透明なフィルムが得られた。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明の含フッ素高分子化合物は、ヘキサフルオロイソプロパノール構造に由来する良好な溶剤溶解性を有するので、コーティング性に優れ、成膜性や成形性にも優れており、レジスト材料や感光性材料に利用できる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
【化1】

で表される含フッ素重合性単量体。(式中、Rは、水素、炭素数1〜4のフッ素を含有しても良い炭化水素基、フッ素、塩素、シアノ基であり、Rは水素、フッ素、ヒドロキシ基、メチル基、又は炭素数1〜10の分岐、環状構造を有しても良い炭化水素基、またはアルコキシ基であって、一部又は全部にフッ素を含有しても良い。Rは、水素又は保護基であって、エーテル構造、エステル構造、フッ素を含んでも良い。)
【請求項2】
上記一般式(1)の重合性単量体を用いた、一般式(2)
【化2】

で表される構造を含有する含フッ素高分子化合物(式中、Rは、水素、炭素数1〜4のフッ素を含有しても良い炭化水素基、フッ素、塩素、シアノ基であり、Rは水素、フッ素、ヒドロキシ基、メチル基、又は炭素数1〜10の分岐、環状構造を有しても良い炭化水素基、またはアルコキシ基であって、一部又は全部にフッ素を含有しても良い。Rは、水素又は保護基であって、エーテル構造、エステル構造、フッ素を含んでも良い。)。
【請求項3】
一般式(3)
【化3】

で表される含フッ素重合性単量体(式中、Rは、水素、炭素数1〜4のフッ素を含有しても良い炭化水素基、フッ素、塩素、シアノ基であり、Rは水素、フッ素、ヒドロキシ基、メチル基、又は炭素数1〜10の分岐、環状構造を有しても良い炭化水素基、またはアルコキシ基であって、一部又は全部にフッ素を含有しても良い。)。
【請求項4】
一般式(4)
【化4】

で表される構造を含有する含フッ素高分子化合物(式中、Rは、水素、炭素数1〜4のフッ素を含有しても良い炭化水素基、フッ素、塩素、シアノ基であり、Rは水素、フッ素、ヒドロキシ基、メチル基、又は炭素数1〜10の分岐、環状構造を有しても良い炭化水素基、またはアルコキシ基であって、一部又は全部にフッ素を含有しても良い。)。
【請求項5】
一般式(1)で表される重合性単量体が、式(5)の2−メチル−N−[4−メチル−2−(1−ヒドロキシ−1−トリフルオロメチル−2,2,2−トリフルオロエチル)−フェニル]−2−プロペンアミドである請求項1記載の重合性単量体。
【化5】

【請求項6】
上記式(5)の重合性単量体を用いる、式(6)
【化6】

で表される構造を含有する請求項2に記載の含フッ素高分子化合物。
【請求項7】
一般式(3)で表される重合性単量体が、式(7)の4,4−ビス(トリフルオロメチル)−2−イソプロペニル−6−メチル−3,1−ベンゾオキサジンである請求項3に記載の重合性単量体。
【化7】

【請求項8】
一般式(4)で表される高分子化合物が、式(8)で表される請求項4に記載の高分子化合物。
【化8】


【公開番号】特開2006−83346(P2006−83346A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−271838(P2004−271838)
【出願日】平成16年9月17日(2004.9.17)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)
【Fターム(参考)】