説明

含フッ素(α置換)アクリル化合物を含む硬化性組成物の硬化方法

【課題】
含フッ素(α置換)アクリル化合物を含有する硬化性組成物の硬化方法であり、表面特性に優れた塗膜を形成する事ができる硬化方法を提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明は、含フッ素(α置換)アクリル化合物を含む硬化性組成物を硬化する方法において、
(ii)該組成物を50℃以上の温度で加熱する工程、そして
(iv)不活性ガス雰囲気下で紫外線を照射して該組成物を硬化する工程を含む方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
含フッ素(α置換)アクリル化合物を含む硬化性組成物の硬化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線などの光照射により硬化可能で、かつフッ素化合物の優れた特性を有すると共に、非フッ素系有機化合物との相溶性に優れた含フッ素(α置換)アクリル化合物が種々知られている。該含フッ素(α置換)アクリル化合物を紫外線硬化型の非フッ素系ハードコート組成物と混合して基材に塗工すると、表面自由エネルギーの差によりフッ素基が表面側に移行する。その結果、膜の最表面にフッ素基の特長を有する硬化皮膜が得られる。この被膜は、ハードコート由来の高硬度、耐摩耗性、耐久性等に加え、フッ素基由来の汚れ防止性、汚れ拭き取り性、すべり性、防曇性等の機能を併せ持っているため、防汚性を付与したハードコート剤として有用である。
【0003】
含フッ素(α置換)アクリル化合物と非フッ素系有機溶剤の相溶性を更に向上させるために、非フッ素化セグメントを嵩高くしたり、パーフルオロポリエーテル鎖長を短くした含フッ素(α置換)アクリル化合物や、紫外線硬化性を向上させるために架橋基数を増加させた含フッ素(α置換)アクリル化合物がある(特許文献1〜3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−138112
【特許文献2】特開2010−053114
【特許文献3】特開2010−285501
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1〜3に記載されているような含フッ素(α置換)アクリル化合物は、非フッ素系の紫外線硬化性化合物との相溶性が高い反面、フッ素基が基材表面に移行しにくくなるという問題を有する。そのため、硬化皮膜に十分な撥水・撥油性、すべり性等が得られ難い。従って、本発明は、含フッ素(α置換)アクリル化合物を含有する硬化性組成物の硬化方法であり、表面特性に優れた塗膜を形成する事ができる硬化方法を提供することを目的とする。
【0006】
本発明者らは鋭意努力を重ねた結果、含フッ素(α置換)アクリル化合物を含む硬化性組成物を硬化する際に、紫外線を照射する工程の前に該組成物を50℃以上の温度で加熱し、かつ、紫外線を照射する工程を不活性ガス雰囲気下で行うことで上記目的を達成できる事を見出した。
【0007】
即ち、本発明は、含フッ素(α置換)アクリル化合物を含む硬化性組成物を硬化する方法において、
(ii)該組成物を50℃以上の温度で加熱する工程、そして
(iv)不活性ガス雰囲気下で紫外線を照射して該組成物を硬化する工程を含む方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の硬化方法によれば、含フッ素(α置換)アクリル化合物を含有する硬化性組成物を良好に硬化することができ、十分な撥水・撥油性、及びすべり性等を有する硬化皮膜を形成する事ができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、紫外線を照射して組成物を硬化する工程を不活性ガス雰囲気下で行う方法であって、組成物に紫外線を照射する工程の前に、組成物を50℃以上の温度で加熱する工程を含むことを特徴とする方法である。本発明の方法は、前記工程(ii)の前に、(i)基材に該組成物を塗工する工程を含んでいてもよく、基材上に硬化皮膜を形成する方法として好適に使用することができる。本発明において、不活性ガスの種類は特に限定されないが、入手の容易さなどから窒素ガスが好ましい。加熱温度は50℃以上160℃以下、好ましくは60℃以上120℃以下であるのがよい。加熱温度が上記下限値未満である場合、フッ素基が基材表面に十分に移行せず、十分な防汚性が得られない可能性がある。一方、加熱温度が上記上限値超である場合、組成物中の化合物が熱分解したり、一部熱硬化が起こったり、用いる基材によっては基材自体が熱変形したりして、均一な硬化皮膜が得られない可能性がある。
【0010】
加熱する手法は特に制限されないが、例えば、バッチ式あるいはコンベア式の熱風乾燥炉、遠赤外線乾燥炉、近赤外線乾燥炉、オーブン等任意のものを使用することが出来る。加熱時間は特に制限されないが、通常、10秒〜10分程度、好ましくは30秒間〜3分間が好適である。加熱時間が上記範囲より短いと、加熱不十分でフッ素基が基材表面に十分に移行せず、十分な防汚性が得られない可能性があり、加熱時間が上記範囲より長いと一部熱硬化が起こり均一な硬化皮膜が得られない可能性がある。
【0011】
組成物に紫外線を照射する方法は従来公知の方法に従えばよい。紫外線の光源としては高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、LED、及びレーザー等公知の光源を使用できる。紫外線照射量は該硬化性組成物を硬化させるのに十分であり、かつ、硬化物層あるいは基材を劣化させない範囲であれば特に制限されないが、通常、100mJ/cm〜3000mJ/cm、特に好ましくは200mJ/cm〜2000mJ/cmである。紫外線の照射線量が前記上限値超である場合、得られる硬化皮膜が黄変する恐れがあり、照射線量が前記下限値未満では硬化が不十分となる恐れがある。
【0012】
本発明は、さらに、前記工程(ii)の後、工程(iv)の前に、(iii)不活性ガス雰囲気下で該組成物の温度を50℃未満とする工程を含む方法を提供する。前記工程は、例えば、加熱した後すぐに紫外線照射をしない場合を想定するものである。含フッ素(α置換)アクリル化合物を含む硬化性組成物を加熱した後、一旦空気中で保管あるいは冷却する場合、温度が下がった状態で紫外線を照射しても組成物を十分に硬化することができない。しかし、組成物を加熱した後、不活性ガス雰囲気下に置くことにより、その後、組成物の温度が下がった状態で紫外線照射しても良好に硬化することができる。従って、本発明の方法によれば、組成物を加熱した後すぐに硬化しなくても、再度加熱することなく優れた表面特性を有する膜を提供することができる。
【0013】
本発明において、紫外線照射時の硬化性組成物の温度は0〜160℃、好ましくは10〜120℃であればよい。前記上限値を超える温度で紫外線照射を行うと、組成物中の化合物が熱分解したり、それに伴い硬化皮膜が黄変してしまったりして、均一で良好な外観を有する硬化皮膜が得られない可能性がある。また下限値以下の温度では、硬化性の低下により良好な硬化皮膜が得られない可能性がある。
【0014】
本発明において、基材は特に制限されるものではなく、例えば、外装用のプラスチックフィルム、ガラス、板、又は、液晶表示素子や有機EL素子用基板等の光学用途で用いられる基材が挙げられる。例えば、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリスチレン樹脂等の樹脂成形体、ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、及びポリ塩化ビニルなどのフィルム、及びガラスが挙げられる。
【0015】
本発明において、組成物を基材に塗工する方法としては、例えばロールコート、グラビアコート、ディップコート、スプレーコート、スピンコート、バーコート、スクリーン印刷等、従来の塗工方法を用いることができる。この時、形成する被膜の膜厚は、通常、数nm〜100μmであり、好ましくは数nm〜30μmである。得られる膜厚が上記下限値未満の場合、十分な表面硬度は得られず、また上記上限値超であるとハードコート膜の機械的強度が低下し、クラックが入りやすくなる。尚、硬化性組成物が溶剤を含む場合は、基材に組成物を塗工した後で、該組成物を乾燥し溶剤を除去する工程を含んでいてもよい。
【0016】
また、本発明の方法は、組成物を硬化し、成形品を形成する方法に使用することもできる。本発明の方法により組成物を硬化して成形品を形成する態様は、従来公知の装置や鋳型等を使用して行えばよい。当該使用態様における組成物の厚さは特に制限されないが、典型的には、5〜10mm程度を上限とする。前記上限値を超えると硬化不十分になるおそれがあるため好ましくない。
【0017】
本発明の方法により硬化される硬化性組成物は、組成物中に含フッ素(α置換)アクリル化合物を含み、紫外線や電子線など活性エネルギー線で硬化可能である樹脂組成物であれば如何なるものも用いることができる。含フッ素(α置換)アクリル化合物は、フッ素化合物の優れた特性を有し、非フッ素系有機化合物との相溶性に優れた化合物であるのが良い。例えば、特開2010−138112号公報、特開2010−53114号公報、及び特開2010−285501号公報に開示されているような含フッ素(α置換)アクリル化合物を使用する事ができる。硬化性組成物は、市販品のハードコート剤に含フッ素(α置換)アクリル化合物を添加したものであってもよい。特には、(A)含フッ素(α置換)アクリル化合物、(B)フッ素を含まない紫外線硬化性化合物、及び(C)光重合開始剤を含む組成物が挙げられる。以下、各成分について詳細に説明する。
【0018】
(A)含フッ素(α置換)アクリル化合物
含フッ素(α置換)アクリル化合物は、末端に、アクリル基、メタクリル基、及びα−フルオロアクリル基を少なくとも1個以上有し、分子中にフルオロアルキル基またはフルオロポリエーテル基を有するものがよい。中でも、下記式で示される単位のうち少なくとも一つを2回以上繰り返す単位を有する化合物が好ましい。
【化1】

【0019】
本発明の含フッ素(α置換)アクリル化合物は下記式(1)または(2)で表すことができる。
【化2】

式中、aは1〜5の整数であり、b、c、及びdはそれぞれ0〜5の整数であり、但しc+dは0ではなく、eは0または1であり、Rfはeが0のときは1価の、eが1のときは2価の、フルオロアルキル基、またはフルオロアルキルエーテル基を有する基であり、Qは酸素原子、窒素原子、またはケイ素原子を有していてよいa+b+1価の有機基であり、Q’は酸素原子、窒素原子、またはケイ素原子を有していてよいc+d+1価の有機基であり、Rはアクリル基、メタクリル基、およびα−フルオロアクリル基の少なくとも1を含む1価の有機基であり、Rはアクリル基、メタクリル基、およびα−フルオロアクリル基のいずれも含まない1価の有機基である。
【化3】

式中、a、b、c、d、R、R、Rf、Q、Q’は上記と同じであり、vは1〜5の整数であり、Q”は酸素原子、窒素原子、またはケイ素原子を有していてよいc’+d’+2価の有機基であり、c’、及びd’はそれぞれ0〜5の整数であり、但しc’+d’は0ではない。
【0020】
式(1)及び(2)において、Rはアクリル基、メタクリル基、およびα−フルオロアクリル基の少なくとも1を含む1価の有機基であり、好ましくは、下記式(3)または(4)で表す基である。
【化4】

【化5】

式中、Rは、互いに独立に、水素原子、フッ素原子、メチル基、又はトリフルオロメチル基であり、Rは炭素数1〜18のエーテル結合及び/又はエステル結合を含んでいてもよい2価もしくは3価の有機基であり、nは1又は2の整数である。Rはエチレン基であるのが特に好ましい。
【0021】
上記Rとしては下記に示す基が挙げられる。
【化6】

【化7】

【0022】
式(1)及び(2)において、Rはアクリル基、メタクリル基、およびα−フルオロアクリル基のいずれも含まない1価の有機基であり、好ましくは、下記式(5)で表される基である。
【化8】

式中、f、g、h、及びiはRの分子量が30〜600、好ましくは60〜300となる範囲において、それぞれ独立に0〜20の整数、好ましくは1〜10の整数である。各繰り返し単位の配列はランダムであってもよい。Rは炭素数1〜10、好ましくは炭素数1〜6の、飽和もしくは不飽和の炭化水素基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基等があげられる。特に好ましくはメチル基、及びエチル基である。
【0023】
このようなRとしては、下記式で示される基が好ましい。
【化9】

h、gは0〜20の整数、好ましくは1〜10の整数であり、h+gは1〜40、好ましくは1〜20であり、式中のプロピレン基は分岐していてもよく、各繰り返し単位はランダムに結合されていてもよい。
【0024】
式(1)及び(2)において、Q及びQ’は、互いに独立に、酸素原子、窒素原子、またはケイ素原子を有していてよいa+b+1価の有機基である。aは1〜5の整数であり、bは0から5の整数である。c及びdはそれぞれ0〜5の整数であり、但しc+d=0ではない。従って、Q及びQ’は2〜11価の有機基であり、好ましくは2〜6価の有機基である。Q及びQ’は、水酸基、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、及びウレタン結合を含んでいても良く、途中、環状構造や分岐を含んでいても良い。Q及びQ’は同一でも異なっていても良い。
【0025】
Q及びQ’の一態様としては、酸素原子、窒素原子、またはケイ素原子を有していてよい、炭素数1〜40、好ましくは炭素数1〜30の2価の有機基であり、たとえば以下のような基が挙げられる。
【化10】

【化11】

【0026】
また、Q及びQ’の別の態様としては、以下に示す基が挙げられる。
【化12】

式中Qは、互いに独立に、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合を含んでいてもよい炭素数3〜20の2価の有機基であり、途中環状構造や分岐を含んでいてもよく、それぞれ同一でも異なっていてもよい。Qは、上記Q及びQ’の一態様として記載した基であってよく、好ましくは以下に示される基である。
【化13】

(式中、右端の炭素原子がN原子に結合する)
【0027】
また、Q及びQ’の別の態様としては、下記式(6)で示される基が挙げられる。
【化14】

式中、a’は1〜4の整数、b’及びb”は0〜4の整数であり、a’+b’+b”は2、3または4であり、各繰返し単位の配列はランダムであってよい。Qは、互いに独立に、炭素数3〜20のエーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合を含んでいてもよい2価の連結基であり、途中環状構造や分岐を含んでいてもよく、それぞれ同一でも異なっていてもよい。Zは、酸素原子、窒素原子、またはケイ素原子を有していてよい2価の連結基であり、Zが式(1)及び(2)中のRfに結合する。
【0028】
式(2)において、vは1〜5の整数である。Q”は酸素原子、窒素原子、またはケイ素原子を有していてよいc’+d’+2価の有機基である。c’及びd’はそれぞれ0〜5の整数であり、但しc’+d’=0ではない。従って、Q”は3〜12価の有機基であり、好ましくは3〜5価の有機基である。Q”は、水酸基、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、及びウレタン結合を含んでいても良く、途中、環状構造や分岐を含んでいても良い。
【0029】
Q”としては、下記式(7)で示される基が好ましい。
【化15】

式中、c”、d”及びb'''は0〜3の整数であり、但し、c”+d”+b'''は1、2、3のいずれかの値であり、各繰返し単位の配列はランダムであってよい。Qは、互いに独立に、炭素数3〜20のエーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合を含んでいてもよい2価の連結基であり、途中環状構造や分岐を含んでいてもよく、それぞれ同一でも異なっていてもよい。Zは、酸素原子、窒素原子、またはケイ素原子を有していてよい2価の連結基であり、Zが式(2)中のRfに夫々結合する
【0030】
式(6)及び(7)中、Qは下記式で表わされる基であるのが好ましい。
【化16】

【0031】
式(6)及び(7)中、Zは下記式で表わされる基であるのが好ましい。
【化17】

【0032】
中でも、下記式で示される基が好ましい。
【化18】

【0033】
特に、下記式で示される基が好ましい。
【化19】

【0034】
式(1)及び(2)において、Rfは1価又は2価の、フルオロアルキル基、またはフルオロアルキルエーテル基を有する基である。フルオロアルキル基は炭素数2〜20、好ましくは4〜8であるものがよい。フルオロアルキルエーテル基を有する基は、下記式で示される単位のうち少なくとも一つを2回以上繰り返す単位を有するものが好ましい。
【化20】

【0035】
1価のフルオロアルキルエーテル基を有する基は、下記式で表すことができる。
【化21】

式中、j、k、l及びmは、Rfの分子量が200〜6000、好ましくは400〜2000となる範囲において、それぞれ独立に0〜100、好ましくは1〜50、さらに好ましくは2〜15の整数である。また、各繰り返し単位の配列はランダムであってよい。上記式中、pは1〜6の整数、Xは互い独立に、フッ素原子またはCF基である。
【0036】
好ましい1価のRfとしては下記の基が挙げられる。
【化22】

【0037】
2価のフルオロアルキルエーテル基を有する基は、下記式で表すことができる。
【化23】

式中、pは1〜6の整数、nは2〜200の整数である
【化24】

式中、Xはフッ素原子又はCF基、pは1〜6の整数、q、nはそれぞれ0〜200の整数、但し、q+nは2〜200である。各繰り返し単位はランダムに結合されていてよい。
【化25】

式中、Xはフッ素原子又はCF基、p及びpは互いに独立に1〜6の整数、n、q及びqは互いに独立に0〜200の整数であり、n+q+qは2〜200である。各繰り返し単位はランダムに結合されていてよい。
【0038】
好ましい2価のRfとしては下記の基が挙げられる。
【化26】

式中、q+qは2〜200である。各繰り返し単位はランダムに結合されていてよい。
【0039】
上記式(1)で示され、1価のRfを有する化合物としては、以下の化合物を挙げることができる。
【化27】

式中、Rfは上述した1価のフルオロアルキル基またはフルオロアルキルエーテル基を有する基である。
【0040】
また、以下に示す化合物を挙げることができる。
【化28】

式中、a’、b’、hは上述の通りである。
【化29】

式中、a’は上述の通りである。Rfは上述した1価のフルオロアルキル基またはフルオロアルキルエーテル基を有する基である
【0041】
上記式(1)で示され、2価のRfを有する化合物としては、以下の化合物を挙げることができる。
【化30】

式中、Rfは上述した2価のフルオロアルキル基またはフルオロアルキルエーテル基を有する基である。
【0042】
また、以下に示す化合物を挙げることができる。
【化31】

式中、Rfは上述した2価のフルオロアルキル基またはフルオロアルキルエーテル基を有する基である。
【0043】
また、本発明で用いる含フッ素(α置換)アクリル化合物として、上述の含フッ素(α置換)アクリル化合物と、反応性基を有する非含フッ素(α置換)アクリル化合物を重合させて得られる共重合体に、(メタ)アクリル基及び反応性基を有する化合物をさらに反応させて得られる共重合体を使用する事ができる。当該共重合体は、上記含フッ素アクリレート化合物と、2−ヒドロキシエチルアクリレートのような水酸基を有するアクリル類や、2−イソシアナトエチルアクリレートのようなイソシアネート基を有するアクリレート類、グリシジルメタクリレートのようなエポキシ基を有するアクリレート類等とを共重合し、得られた共重合体の官能基に対して反応性を有する基を持つ(メタ)アクリル化合物をさらに反応させて得ることができる。例えば水酸基に対してはイソシアネート基を有するアクリレート類、イソシアネート基に対しては水酸基をもつアクリレート類、エポキシ基に対してはアクリル酸を反応させればよい。
【0044】
また、本発明で用いる含フッ素(α置換)アクリル化合物として、以下の繰り返し単位(a)
【化32】

(式中、Xはフッ素原子、水素原子、塩素原子、またはエーテル結合を含んでいてよく、水素原子の一部または全てがフッ素化されていてよい、炭素数1〜4のアルキル基であり、XおよびXは、互いに独立に、フッ素原子、水素原子、または塩素原子である)
と、以下の繰り返し単位(b)
【化33】

(但し、Yは水酸基、又は、エーテル結合またはエステル結合を1以上有していても良い、少なくとも1の水酸基を有する、炭素数1〜10の1価の有機基であり、Rは水素原子または炭素数1〜6のアルキル基である)とを有する含フッ素共重合体(D)に、
(メタ)アクリル基を有するイソシアネート化合物(E)を反応させて得られる含フッ素(α置換)アクリル化合物を使用する事ができる。
【0045】
上記繰り返し単位(a)中、X、XおよびXは、フッ素原子、または塩素原子であるのが好ましく、特に、単位(a)がテトラフルオロエチレンおよび/またはクロロトリフルオロエチレンであることが好ましい。上記繰り返し単位(a)及び(b)は、1種単独でもよく、また2種以上を併用してもよい。含フッ素共重合体(D)はイソシアネート化合物(E)と反応するために、少なくとも1の水酸基を有する。上記繰り返し単位(b)中、Yで表わされる基としては、−OCHCHOH、−OCHCHCHCHOH、−OCHCHOCHCHOH、−COOCHCHOH、及び−COOCHCHCHCHOH、が挙げられる。中でも、−OCHCHCHCHOH、及び−COOCHCHOHが好ましい。Rは水素原子または炭素数1〜6のアルキル基であり、好ましくは水素原子、及びメチル基である。
【0046】
含フッ素共重合体(D)は、重量平均分子量が500〜50000、好ましくは1000〜20000であるのがよく、1分子中に繰り返し単位(a)を2〜200個、好ましくは4〜100個、繰返し単位(b)を2〜200個、好ましくは4〜100個含有するのがよい。
【0047】
含フッ素共重合体(D)は、従来公知の方法により単位(a)の原料化合物と単位(b)の化合物とを共重合させることで製造することができる。単位(a)の原料としては、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ジクロロジフルオロエチレン、ペンタフルオロプロピレン、ヘキサフルオロプロピレン等のフルオロオレフィンが挙げられる。単位(b)の原料としては、ヒドロキシブチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、グリシジルビニルエーテル、グリシジルアリルエーテル、ヒドロキシエチルアリルエーテル、ヒドロキシエチルメタクリレート、メタクリル酸、10−ウンデセン酸、アルコキシビニルシラン等が挙げられる。含フッ素共重合体(D)は、上記単位(a)および単位(b)以外の重合単位を含有してもよい。
【0048】
上記含フッ素共重合体(D)と、アクリル基及びまたはメタクリル基を有するイソシアネート化合物(E)とを反応させることで、含フッ素(α置換)アクリル化合物を得ることが出来る。上記化合物を簡便に得る為には、市販品として入手できる「ルミフロン」(旭硝子株式会社)、「フルオネート」(DIC株式会社)、「ゼッフル」(ダイキン工業株式会社)、「セラフルコート」(セントラル硝子株式会社)、「ザフロン」(東亞合成株式会社)等、水酸基を有する含フッ素ポリマーと、アクリル基及びまたはメタクリル基を有するイソシアネート化合物とを反応させる方法が好適である。
【0049】
含フッ素共重合体(D)の水酸基とイソシアネート化合物(E)の反応は、0〜70℃の温和な条件下で両者を混合することで進行させることができる。反応の速度は、適切な触媒系、例えば酢酸第1錫、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオクテート、ジブチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジオクテート、ジオクチル錫ジアセテート、ジオクタン酸第1錫のようなスズ誘導体、鉄アセチルアセトネートのような鉄誘導体、チタンテトライソプロピレートのようなチタンアルコレート、トリエチルアミンのような第三級アミン、またはN−メチルモリホリンを、反応物総重量に対して0.001〜2重量%、好ましくは0.001〜0.5重量%で加えることによって増加させることができる。また必要に応じて各種溶媒で希釈して、反応を行っても良い。
【0050】
(B)フッ素を含まない紫外線硬化性化合物
フッ素を含まない紫外線硬化性化合物は、上記含フッ素(α置換)アクリル化合物と混合でき、硬化可能であれば特に制限されるものではない。特には、アクリレート類であるのが好ましく、例えば、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキシド変性ジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸EO変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、トリス(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェート、フタル酸水素−(2,2,2−トリ−(メタ)アクリロイルオキシメチル)エチル、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート等の2〜6官能の(メタ)アクリル化合物、これらの(メタ)アクリル化合物をエチレンオキシド、プロピレンオキシド、エピクロルヒドリン、脂肪酸、アルキル変性品、エポキシ樹脂にアクリル酸を付加させて得られるエポキシアクリレート類、及びアクリル酸エステル共重合体の側鎖に(メタ)アクリロイル基を導入した共重合体等を含むものが挙げられる。
【0051】
また、ウレタンアクリレート類、ポリイソシアネートに水酸基を有する(メタ)アクリレートを反応させて得られるもの、ポリイソシアネートと末端ジオールのポリエステルに水酸基を有する(メタ)アクリレートを反応させて得られるもの、ポリオールに過剰のジイソシアネートと反応させて得られるポリイソシアネートに、水酸基を有する(メタ)アクリレートを反応させて得られるものを使用することもできる。中でも、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルメタクリレート、及びペンタエリスリトートリアクリレートから選ばれる水酸基を有する(メタ)アクリレートと、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、及びジフェニルメタンジイソシアネートから選ばれるポリイソシアネートを反応させたウレタンアクリレート類が好ましい。上記化合物は単独でも2種以上を併用してもよい。また組成物の物性調整のため1官能のアクリレート類を配合しても良い。
【0052】
(C)光重合開始剤
光重合開始剤は、紫外線照射によりアクリル化合物を硬化させることができるものであれば特に制限されるものではない。好ましくは、例えばアセトフェノン、ベンゾフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、1.2−オクタンジオン−1−[4−(フェニルチオ)−2−(o−ベンゾイルオキシム)]、エタノン−1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(0−アセチルオキシム)、2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン等が挙げられ、単独でも2種以上を併用してもよい。
【0053】
硬化性組成物中、含フッ素(α置換)アクリル化合物の配合量は、所望する撥油性、組成物の溶解性、硬化条件に応じて適宜調製されればよい。成分(A)、成分(B)、及び成分(C)の配合比率は特に制限はされないが、成分(B)100質量部に対し、成分(A)は0.01〜30質量部、好ましくは0.05〜5質量部、成分(C)は0.1〜10質量部、好ましくは0.5〜5質量部とすることが好適である。含フッ素(α置換)アクリル化合物の配合量が上記上限値超では、含フッ素アクリレート成分層が厚くなり、ハードコート剤としての性能を損なう可能性がある。また上記下限値未満では、フッ素基がハードコート層の表面を十分に覆うことが出来ず、十分な撥水・撥油性、すべり性が得られない可能性がある。また、成分(C)の配合量が上記上限値超では、硬化後の被膜が黄変し外観の劣化等を招く可能性がある。また上記下限値未満では、硬化が不十分となりハードコート剤としての性能を損なう可能性がある。
【0054】
本発明の紫外線硬化性組成物は用途に応じ、その性能を損なわない範囲で、その他の成分として有機溶剤、重合禁止剤、帯電防止剤、消泡剤、粘度調整剤、耐光安定剤、耐熱安定剤、酸化防止剤、界面活性剤、着色剤、フィラー等の配合を行ってもよい。有機溶剤としては、1−プロパノール、2−プロパノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、ジアセトンアルコールなどのアルコール類;メチルプロピルケトン、ジエチルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、アニソール、ジオキサン、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエーテル類;酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸シクロヘキシルなどのエステル類などを挙げることができる。上記溶剤は、1種を単独で又は2種以上を混合してもよい。溶剤の使用量は特に制限されるものではないが、成分(A)、成分(B)、及び成分(C)の合計100質量部に対し、50〜10000質量部、特に100〜1000質量部となるような量であることが好ましい。
【0055】
上記成分(B)及び(C)が配合されたハードコート剤は各社からさまざまなものが市販されている。本発明の硬化性組成物は、該市販品のハードコート剤に上記含フッ素(α置換)アクリル化合物を添加したものであっても良い。市販品のハードコート剤として、例えば、荒川化学工業(株)「ビームセット」、大橋化学工業(株)「ユービック」、オリジン電気(株)「UVコート」、カシュー(株)「カシューUV」、JSR(株)「デソライト」、大日精化工業(株)「セイカビーム」、日本合成化学(株)「紫光」、藤倉化成(株)「フジハード」、三菱レイヨン(株)「ダイヤビーム」、武蔵塗料(株)「ウルトラバイン」等が挙げられる。該ハードコート剤にはさらに、目的に応じて、有機溶剤、重合禁止剤、帯電防止剤、消泡剤、粘度調整剤、耐光安定剤、耐熱安定剤、酸化防止剤、界面活性剤、着色剤、及びフィラー等を配合することも出来る。
【0056】
本発明より得られる硬化皮膜は、塗工表面に優れた撥水、撥油性、耐指紋性を与えるため、塗工面が指紋、皮脂、汗などの人脂、化粧品等により汚れ難くなり、たとえ汚れが付着した場合であっても拭き取り性に優れたハードコート表面を与える。このため、例えば人体が触れて人脂、化粧品等により汚される可能性のある物品の表面を保護する目的で使用される。このような物品としては、例えば、光磁気ディスク、CD・LD・DVD・ブルーレイディスクなどの光ディスク、ホログラム記録などに代表される光記録媒体;メガネレンズ、プリズム、レンズシート、ペリクル膜、偏光板、光学フィルター、レンチキュラーレンズ、フレネルレンズ、反射防止膜、光ファイバーや光カプラーなどの光学部品・光デバイス;CRT、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、背面投写型ディスプレイ、蛍光表示管(VFD)、フィールドエミッシプロジェクションディスプレイ、トナー系ディスプレイ等の各種画面表示機器、特にPC、携帯電話、携帯情報端末、ゲーム機、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、自動現金引出し預け入れ装置、現金自動支払機、自動販売機自動車用等のナビゲーション装置、セキュリティーシステム端末等の画像表示装置、及びその操作も行うタッチパネル(タッチセンサー、タッチスクリーン)式画像表示入力装置;携帯電話、携帯情報端末、携帯音楽プレイヤー、携帯ゲーム機、リモートコントローラ、コントローラ、キーボード等、車載装置用パネルスイッチなどの入力装置;携帯電話、携帯情報端末、カメラ、携帯音楽プレイヤー、携帯ゲーム機などの筐体表面;自動車の外装、ピアノ、高級家具、大理石などの塗装及び表面;美術品展示用保護ガラス、ショーウインドー、ショーケース、広告用カバー、フォトスタンド用のカバー、腕時計、自動車用フロントガラス、列車、航空機等の窓ガラス、自動車ヘッドライト、テールランプなどの透明なガラス製または透明なプラスチック製(アクリル、ポリカーボネートなど)部材、各種ミラー部材等が挙げられる。
【実施例】
【0057】
以下、実施例を示し、本発明を詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0058】
[調製例1]
(A1)含フッ素アクリレート化合物1の調製
特開2010−285501号公報の段落0052〜段落0061に記載されている実施例2の方法に従い下記式(10)で表される化合物を得た。
【化34】

上記式(10)において、Rfは−CF(OCFCFx1(OCFy1OCF−であり、x1/y1は0.9、x1+y1≒45である。
【0059】
[調製例2]
(A2)含フッ素アクリレート化合物2の調製
特開2010−285501号公報の段落0057に記載されているアクリロイルオキシエチルイソシアネートの代わりに、1,1−(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネートを用いた以外は特開2010−285501号公報の段落0052〜段落0057に記載されている実施例1と同様の方法で、下記式(11)で表される化合物を得た。
【0060】
【化35】

上記式(11)において、Rfは−CF(OCFCFx1(OCFy1OCF−であり、x1/y1は0.9、x1+y1≒45である。
【0061】
[調製例3]
(A3)含フッ素アクリレート化合物3の調製
特開2010−285501号公報の段落0053に記載の式(16)で示される化合物の代わりに、下記式(12)
【化36】

で示される化合物を用いた以外は特開2010−285501号公報の段落0052〜段落0057に記載されている実施例1と同様の方法で、下記式(13)で表される化合物を得た。
【0062】
【化37】

上記式(13)において、Rfは上述の通り。
【0063】
硬化性組成物の調製
表1に示す組成で各成分を配合し、混合し攪拌した後で、0.45ミクロンの疎水性PTFEフィルターでろ過し、組成物1〜3を得た。
【0064】
【表1】

【0065】
硬化皮膜の作製
[実施例1、2及び3]
組成物1〜3をポリカーボネート基板上にNo.7のワイヤーバーで塗工し(ウエット膜厚16.0μm)、80℃のオーブン中で1分間加熱した後、窒素中で室温付近まで冷却した。その後、窒素雰囲気中で、コンべア型紫外線照射装置(パナソニック電工社製)にて1.6J/cmの紫外線を6秒間照射して硬化皮膜を作製した。
【0066】
[比較例1、2及び3]
組成物1〜3をポリカーボネート基板上にNo.7のワイヤーバーで塗工し(ウエット膜厚16.0μm)、窒素中で室温付近まで冷却し、コンべア型紫外線照射装置(パナソニック電工社製)にて窒素雰囲気中1.6J/cmの紫外線を6秒間照射して硬化皮膜を作製した。
【0067】
[比較例4]
組成物1をポリカーボネート基板上にNo.7のワイヤーバーで塗工し(ウエット膜厚16.0μm)、80℃のオーブン中で1分間加熱した後、空気中雰囲気下で室温付近まで冷却した。その後、空気中雰囲気下でコンべア型紫外線照射装置(パナソニック電工社製)にて1.6J/cmの紫外線を6秒間照射したところ、組成物が硬化しなかったため、以後の評価は中断した。
【0068】
硬化皮膜の防汚性能評価
各硬化皮膜について以下の評価を行った。結果を表2に示す。
【0069】
[接触角測定]
各硬化皮膜の水接触角、オレイン酸接触角及びオレイン酸転落角を、自動接触角計(協和界面科学社製)を用いて測定した。
【0070】
[動摩擦係数]
ベンコット(旭化成社製商品名)に対する動摩擦係数を表面性試験機(新東科学社製)にて測定した。
【0071】
[マジックインクはじき性]
油性マーカー(ゼブラ社製商品名)、及びハイマッキー(ゼブラ社製商品名)で被膜上に線を引き、インキのはじかれ具合を目視により観察した。評価は以下の指標でおこなった。
○:良くはじく
△:一部はじかない部分がある
×:全くはじかない
【0072】
【表2】

【0073】
表2に示す通り、紫外線照射前に組成物を加熱しなかった比較例1〜3の方法により得られた硬化皮膜に比べ、本発明の方法により得られた硬化皮膜は撥水・撥油性、及びすべり性が優れている。また、組成物を基材に塗工した後、空気中で冷却した比較例4の方法では硬化皮膜を得ることができなかったが、本発明の方法では優れた表面特性を有する硬化皮膜を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明の硬化方法によれば、優れた表面特性を有する膜を形成することが可能になる。特に、アクリルハードコートの表面に、撥水・撥油性、防汚性を付与するのに有用である。このため、本発明の方法は、人体が触れて人脂、化粧品等により汚される可能性のある物品の表面に塗装膜もしくは保護膜を形成するための方法として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
含フッ素(α置換)アクリル化合物を含む硬化性組成物を硬化する方法において、
(ii)該組成物を50℃以上の温度で加熱する工程、そして
(iv)不活性ガス雰囲気下で紫外線を照射して該組成物を硬化する工程を含む方法。
【請求項2】
該方法が、前記工程(ii)の後、工程(iv)の前に、(iii)不活性ガス雰囲気下で該組成物の温度を50℃未満とする工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該組成物を50℃以上160℃以下で加熱する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
硬化性組成物が、(A)含フッ素(α置換)アクリル化合物、(B)フッ素を含まない紫外線硬化性化合物、及び(C)光重合開始剤を含有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
含フッ素(α置換)アクリル化合物が、末端に、アクリル基、メタクリル基、及びα−フルオロアクリル基を少なくとも1個以上有し、分子中にフルオロアルキル基またはフルオロポリエーテル基を有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
含フッ素(α置換)アクリル化合物が、下記一般式(1)
【化1】

(式中、aは1〜5の整数であり、b、c、及びdはそれぞれ0〜5の整数であり、但しc+dは0ではなく、eは0または1であり、Rfはeが0のときは1価の、eが1のときは2価の、フルオロアルキル基、またはフルオロアルキルエーテル基を有する基であり、Qは酸素原子、窒素原子、またはケイ素原子を有していてよいa+b+1価の有機基であり、Q’は酸素原子、窒素原子、またはケイ素原子を有していてよいc+d+1価の有機基であり、Rはアクリル基、メタクリル基、およびα−フルオロアクリル基の少なくとも1を含む1価の有機基であり、Rはアクリル基、メタクリル基、およびα−フルオロアクリル基のいずれも含まない1価の有機基である)
または下記一般式(2)
【化2】

(式中、a、b、c、d、R、R、Rf、Q、Q’は上記と同じであり、vは1〜5の整数であり、Q”は酸素原子、窒素原子、またはケイ素原子を有していてよいc’+d’+2価の有機基であり、c’、及びd’はそれぞれ0〜5の整数であり、但しc’+d’は0ではない)
で表されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
Rfが下記式で示される単位のうち少なくとも一つを2回以上繰り返す単位を有する、請求項6に記載の方法。

【請求項8】
が下記式(3)または(4)で表される基である、請求項6または7に記載の方法。
【化3】

【化4】

(式中、Rは、互いに独立に、水素原子、フッ素原子、メチル基、又はトリフルオロメチル基であり、Rは炭素数1〜18のエーテル結合及び/又はエステル結合を含んでいてもよい2価もしくは3価の有機基であり、nは1又は2の整数である)
【請求項9】
が下記式(5)で表される基である、請求項6〜8のいずれか1項に記載の方法。
【化5】

式中、f、g、h、及びiはRの分子量が30〜600となる範囲において、それぞれ独立に0〜20の整数である。各繰り返し単位の配列はランダムであってもよい。Rは炭素数1〜10の飽和もしくは不飽和の炭化水素基である)
【請求項10】
Q及び/またはQ’が下記式(6)で示される基である、請求項6〜9のいずれか1項に記載の方法。
【化6】

(式中、a’は1〜4の整数、b’及びb”は0〜4の整数であり、a’+b’+b”は2、3または4であり、各繰返し単位の配列はランダムであってよい。Qは、互いに独立に、炭素数3〜20のエーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合を含んでいてもよい2価の連結基であり、途中環状構造や分岐を含んでいてもよく、それぞれ同一でも異なっていてもよい。Zは、酸素原子、窒素原子、またはケイ素原子を有していてよい2価の連結基であり、式(1)または(2)中のRfに結合する)
【請求項11】
Q”が下記式(7)で示される基である、請求項6〜10のいずれか1項に記載の方法。
【化7】

(式中、c”、d”及びb'''は0〜3の整数であり、但し、c”+d”+b'''は1、2、3のいずれかの値であり、各繰返し単位の配列はランダムであってよい。Qは、互いに独立に、炭素数3〜20のエーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合を含んでいてもよい2価の連結基であり、途中環状構造や分岐を含んでいてもよく、それぞれ同一でも異なっていてもよい。Zは、酸素原子、窒素原子、またはケイ素原子を有していてよい2価の連結基であり、式(2)中のRfに夫々結合する)
【請求項12】
が、下記のいずれかの基である請求項10または11に記載の方法。
【化8】

【請求項13】
Zが以下のいずれかの基である請求項10または11に記載の方法。
【化9】

【請求項14】
含フッ素(α置換)アクリル化合物が、請求項6から13のいずれか1項に記載されている含フッ素(α置換)アクリル化合物と、反応性基を有する非含フッ素(α置換)アクリル化合物とを重合させて得られる共重合体に、(メタ)アクリル基及び反応性基を有する化合物をさらに反応させて得られる共重合体である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
含フッ素(α置換)アクリル化合物が、以下の繰り返し単位(a)
【化10】

(式中、Xはフッ素原子、水素原子、塩素原子、またはエーテル結合を含んでいてよく、水素原子の一部または全てがフッ素化されていてよい、炭素数1〜4のアルキル基であり、XおよびXは、互いに独立に、フッ素原子、水素原子、または塩素原子である)
と、以下の繰り返し単位(b)
【化11】

(但し、Yは水酸基、又は、エーテル結合またはエステル結合を1以上有していても良い、少なくとも1の水酸基を有する、炭素数1〜10の1価の有機基であり、Rは水素原子ままたは炭素数1〜6のアルキル基である)とを有する含フッ素共重合体(D)に、
(メタ)アクリル基を有するイソシアネート化合物(E)を反応させて得られる含フッ素(α置換)アクリル化合物である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
該方法が、前記工程(ii)の前に、(i)基材に該組成物を塗工する工程を含む、請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
基材が樹脂成型体、フィルム、またはガラスである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
請求項16または17に記載の方法により得られる硬化皮膜を備えた物品。
【請求項19】
請求項1〜15に記載の方法により硬化性組成物を硬化して得られる成形品。

【公開番号】特開2013−82780(P2013−82780A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222307(P2011−222307)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】