説明

含フッ素2級アミン化合物の製造方法

【課題】毒性の高い還元剤を使用せずに、1級アミン化合物と含フッ素アルデヒドヘミアセタールから、含フッ素2級アミン化合物を高収率で製造する方法を提供する。
【解決手段】含フッ素アルデヒドヘミアセタールと1級アミン化合物を反応させ、N,O−アセタール化合物を生成させた後、還元剤と反応させることを特徴とする含フッ素2級アミン化合物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含フッ素2級アミン化合物を製造する方法に関する。より詳しくは、含フッ素アルデヒドヘミアセタール、1級アミン化合物及び還元剤から含フッ素2級アミン化合物を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
含フッ素2級アミン化合物は医農薬中間体あるいは電子材料原料等として広範に利用されている極めて有用な化合物である。この含フッ素2級アミン化合物の合成方法としては、次の3つの方法が知られている。第一の方法は、例えば特許文献1に開示されているような、含フッ素アミン化合物とハライド化合物を反応させる方法である。この方法の場合、フッ素の強い電子求引性のため、原料である含フッ素アミン化合物の反応性が低く低収率となる問題がある。例えば前記公報では、15当量の含フッ素アミンを使用しながら、目的物の収率はハライド化合物を基準として25%に止まっている。第二の方法は、特許文献2、特許文献3等に開示されているような1級アミン化合物とトリフルオロメタンスルホン酸含フッ素アルキルエステルを反応させる方法である。この方法は、反応は比較的容易であるものの、反応終了後、原料分子中に含まれるフッ素原子のうちの3個がトリフルオロメタンスルホン酸塩として副産物中に存在する。このため、経済性を求めて製造を行うには、このトリフルオロメタンスルホン酸塩を再生利用する必要があり、プロセスが非常に煩雑になる問題がある。
【0003】
第三の方法は、特許文献4、特許文献5、特許文献6及び特許文献7等に示されるような1級アミン化合物と含フッ素アルデヒド化合物及び還元剤を反応させる方法である。この方法の場合、原料分子の反応性は高く、また、原料分子中に含まれるフッ素原子基は原理的にはすべて目的物中に導入できるため、効率的な方法と言える。しかしながら、特許文献4に於いてはアミン類として低級脂肪族アミンに限られ、特許文献5〜7に於いては還元剤として極めて有毒なシアノ水素化ホウ素ナトリウムを用いるため、大量生産では廃棄などの問題が発生する。
【0004】
一方、含フッ素アルデヒドヘミアセタールと芳香族1級アミンをアルコール中、酸触媒存在下で反応させると、N,O−アセタール化合物が生成することが非特許文献1で報告されている。しかしながら、これを用いた含フッ素2級アミンの製造についてはこれまで全く知られていない。
【特許文献1】WO 02/24663号パンフレット
【特許文献2】WO 02/12235号パンフレット
【特許文献3】WO 04/29043号パンフレット
【特許文献4】欧州特許 第156470号明細書
【特許文献5】WO 01/16108号パンフレット
【特許文献6】WO 02/066475号パンフレット
【特許文献7】WO 05/085185号パンフレット
【非特許文献1】J. Fluor. Chem., 125(2004)767
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はこれらの課題に鑑みてなされたものである。即ち、毒性の高い還元剤を使用せずに、1級アミン化合物と含フッ素アルデヒドヘミアセタールから、含フッ素2級アミン化合物を高収率で製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題に鑑み本発明者らは鋭意検討した結果、1級アミン化合物と含フッ素アルデヒドヘミアセタールから、特定構造の中間体を生成させた後、還元を行うことにより、高収率で含フッ素2級アミン化合物が得られることを見出し本発明を完成させるに至った。即ち、本発明は下記要旨に関わるものである。
【0007】
1. 下記一般式(1)
【0008】
【化1】

【0009】
(式中、Xはフッ素原子または水素原子、nは1〜10の整数、R1は、炭素数1〜10の直鎖または分岐のアルキル基を表す。)
で表される含フッ素アルデヒドヘミアセタール及び下記一般式(2)
【0010】
【化2】

【0011】
(式中、R2は置換基を有していてもよい炭素数1〜30の直鎖若しくは分岐のアルキル基又は置換基を有していてもよい炭素数6〜30のアリール基を表す。)
で表される1級アミン化合物及び還元剤を反応させ、下記一般式(3)
【0012】
【化3】

【0013】
(式中、X、n、R及びRは前記定義に同じ。)
で表されるN,O−アセタール化合物を生成させた後、還元剤と反応させることを特徴とする一般式(4)
【0014】
【化4】

【0015】
(式中、X、n及びR2は前記定義に同じ。)
で表される含フッ素2級アミン化合物の製造方法。
【0016】
2. 前記一般式(2)の1級アミン化合物が、一般式(2)中のRが置換基を有していてもよい炭素数1〜30の直鎖若しくは分岐のアルキル基で表される脂肪族1級アミンであり、前記一般式(1)で表される含フッ素アルデヒドヘミアセタールと反応させてN,O−アセタール化合物を生成させる際、非プロトン性溶媒を溶媒として用いることを特徴とする1項に記載の含フッ素2級アミン化合物の製造方法。
【0017】
3. 一般式(2)の1級アミン化合物が、一般式(2)中のRが置換基を有していてもよい炭素数6〜30のアリール基で表される芳香族1級アミン化合物であり、前記一般式(1)で表される含フッ素アルデヒドヘミアセタールと反応させてN,O−アセタール化合物を生成させる際、アルコール類を溶媒として用い、酸触媒を存在させることを特徴とする1項に記載の含フッ素2級アミン化合物の製造方法。
【0018】
4.前記一般式(3)で表されるN,O−アセタール化合物を生成させる際、前記一般式(1)で表される含フッ素アルデヒドヘミアセタールと前記一般式(2)で表される1級アミン化合物を50〜150℃の温度で反応させることを特徴とする1〜3項のいずれか1項に記載の含フッ素2級アミン化合物の製造方法。
【0019】
5.還元剤が、接触水素化還元用触媒を共存させた分子状水素であることを特徴とする1〜4項のいずれか1項に記載の含フッ素2級アミン化合物の製造方法。
【0020】
6.還元反応を行う際、酸触媒を存在させることを特徴とする5項に記載の含フッ素2級アミン化合物の製造方法。
【0021】
7.還元剤が、水素化ホウ素化合物であることを特徴とする1〜4項のいずれか1項に記載の含フッ素2級アミン化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、毒性の高い還元剤を使用せずに、1級アミン化合物と含フッ素アルデヒドヘミアセタールから、含フッ素2級アミン化合物を高収率で製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明では、前記一般式(1)の含フッ素アルデヒドヘミアセタールと前記一般式(2)の1級アミン化合物とを反応させ、前記一般式(3)のN,O−アセタール化合物を生成させる。このN,O−アセタール化合物が下式のように直接あるいはイミン中間体(7)を経由しながら還元剤により還元されて含フッ素2級アミン化合物(4)が生成すると考えられる。
【0024】
【化5】

【0025】
(式中、Rfは炭素数1〜10のパーフルオロアルキル基を表し、R及びRは前記定義に同じ)
【0026】
本発明で用いられる含フッ素アルデヒドヘミアセタールは前記一般式(1)で表される。一般式(1)においてX(CF)n−は炭素数1〜10のパーフルオロアルキル基またはヒドロパーフルオロアルキル基であり、Rは炭素数1〜10の直鎖または分岐のアルキル基である。このような含フッ素アルデヒドヘミアセタールとして、例えば、トリフルオロアセトアルデヒドメチルヘミアセタール、トリフルオロアセトアルデヒドエチルヘミアセタール、トリフルオロアセトアルデヒドn−プロピルヘミアセタール、トリフルオロアセトアルデヒドイソプロピルヘミアセタール、トリフルオロアセトアルデヒドn−ブチルヘミアセタール、トリフルオロアセトアルデヒドイソブチルヘミアセタール、トリフルオロアセトアルデヒドt−ブチルヘミアセタール、トリフルオロアセトアルデヒドn−ヘキシルヘミアセタール、トリフルオロアセトアルデヒドn−オクチルヘミアセタール、ジフルオロアセトアルデヒドメチルヘミアセタール、パーフルオロプロパンアルデヒドメチルヘミアセタール、パーフルオロn−ブタンアルデヒドメチルヘミアセタール及び2,2,3,3−テトラフルオロプロパンアルデヒドメチルヘミアセタール等を挙げることができる。
【0027】
また、本発明に用いられる1級アミン化合物は前記一般式(2)で表される。式中、R2は炭素数1〜30の直鎖または分岐のアルキル基、または炭素数6〜30のアリール基である。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基及びエイコサン基等を挙げることができる。これらアルキル基は置換基により置換されていてもよく、置換基としては、アリール基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、ケトン基、エステル基、カルボン酸基、アルキルチオ基、チオール基、シアノ基、ニトロ基またはハロゲン原子等を挙げることができる。炭素数6〜30のアリール基としては、例えば、フェニル基、1−ナフチル基及び2−ナフチル基等を挙げることができる。これらアリール基は置換基により置換されていてもよく、置換基としては、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルール基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、ケトン基、エステル基、カルボン酸基、アルキルチオ基、チオール基、シアノ基、ニトロ基またはハロゲン原子等を挙げることができる。このような1級アミン化合物の一例として、例えば、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、n−ヘキシルアミン、n−オクチルアミン、2−メトキシエチルアミン、エタノールアミン、アラニンメチルエステル、アラニン、システアミン、3−アミノプロピオニトリル、2−クロロエチルアミン、アニリン、1−ナフチルアミン、2−ナフチルアミン、2−メチルアニリン、3−メチルアニリン、4−メチルアニリン、2,4−ジメチルアニリン、4−(トリフルオロメチル)アニリン、4−フェニルアニリン、3−メトキシアニリン、4−メトキシアニリン、4−ヒドロキシアニリン、4−アセチルアニリン、4−アミノ安息香酸エチル、4−アミノ安息香酸、4−メチルチオアニリン、4−アミノチオフェノール、4−アミノベンゾニトリル、4−ニトロアニリン及び4−フルオロアニリン等を挙げることができる。
【0028】
本発明方法により得られる前記一般式(4)の含フッ素2級アミン化合物としては、例えば、N−メチル−2,2,2−トリフルオロエチルアミン、N−メチル−2,2−ジフルオロエチルアミン、N−メチル−2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルアミン、N−メチル−2,2,3,3,4,4,5,5,5−ヘプタフルオロペンチルアミン、N−メチル−2,2,3,3−テトラフルオロプロピルアミン、N−エチル−2,2,2−トリフルオロエチルアミン、N−(2,2,2−トリフルオロエチル)n−プロピルアミン、N−(2,2,2−トリフルオロエチル)イソプロピルアミン、N−(2,2,2−トリフルオロエチル)n−ブチルアミン、N−(2,2,2−トリフルオロエチル)n−ヘキシルアミン、N−(2,2,2−トリフルオロエチル)n−オクチルアミン、N−(2−メトキシエチル)−2,2,2−トリフルオロエチルアミン、N―(2−ヒドロキシエチル)−2,2,2−トリフルオロエチルアミン、N−(2,2,2−トリフルオロエチル)アラニンメチルエステル、N−(2,2,2−トリフルオロエチル)アラニン、N−(2,2,2−トリフルオロエチル)システアミン、3−[N−(2,2,2−トリフルオロエチル)アミノ]プロピオニトリル、N−(2−クロロエチル)−2,2,2−トリフルオロエチルアミン、N−(2,2,2−トリフルオロエチル)アニリン、N−(2,2,2−トリフルオロエチル)−1−ナフチルアミン、N−(2,2,2−トリフルオロエチル)−2−ナフチルアミン、2−メチル−N−(2,2,2−トリフルオロエチル)アニリン、3−メチル−N−(2,2,2−トリフルオロエチル)アニリン、4−メチル−N−(2,2,2−トリフルオロエチル)アニリン、2,4−ジメチル−N−(2,2,2−トリフルオロエチル)アニリン、N−(2,2,2−トリフルオロエチル)−4−(トリフルオロメチル)アニリン、4−フェニル−N−(2,2,2−トリフルオロエチル)アニリン、3−メトキシ−N−(2,2,2−トリフルオロエチル)アニリン、4−メトキシ−N−(2,2,2−トリフルオロエチル)アニリン、4−ヒドロキシ−N−(2,2,2−トリフルオロエチル)アニリン、4−アセチル−N−(2,2,2−トリフルオロエチル)アニリン、4−[N−(2,2,2−トリフルオロエチル)アミノ]安息香酸エチル、4−[N−(2,2,2−トリフルオロエチル)アミノ]安息香酸、4−メチルチオ−N−(2,2,2−トリフルオロエチル)アニリン、4−[N−(2,2,2−トリフルオロエチル)アミノ]チオフェノール、4−[N−(2,2,2−トリフルオロエチル)アミノ]ベンゾニトリル、4−ニトロ−N−(2,2,2−トリフルオロエチル)アニリン及び4−フルオロ−N−(2,2,2−トリフルオロエチル)アニリン等を挙げることができるが、前記一般式(3)に包含される含フッ素2級アミン化合物であればこれらの例示に限定されることはない。
【0029】
本発明では、まず前記一般式(1)の含フッ素アルデヒドヘミアセタールと前記一般式(2)の1級アミン化合物を反応させ、前記一般式(3)のN,O−アセタール化合物を生成させる。1級アミン化合物に対する含フッ素アルデヒドの使用量は特に限定されないが、通常、モル比で0.5〜10倍である。N,O−アセタールを生成させる際、通常、溶媒を使用する。溶媒としては、非プロトン性溶媒及びアルコール溶媒が使用できる。
【0030】
ここで、一級アミン化合物が前記一般式(2)中のRが置換基を有していてもよい炭素数1〜30の直鎖若しくは分岐のアルキル基で表される脂肪族1級アミンの場合、溶媒として、非プロトン性溶媒を用いるとN,O−アセタール化合物が生成し易く好ましい。非プロトン性溶媒としては、ヘキサン、オクタン及びシクロヘキサン等のアルカン類、ベンゼン、トルエン、キシレン及びメシチレン等の芳香族化合物類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、モノグライム、ジグライム、トリグライム及びテトラヒドロフラン等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸n−ブチル及び安息香酸エチル等のエステル類、ジエチルスルフィド及びジn−ブチルスルフィド等のスルフィド類、アセトニトリル、プロピオニトリル及びベンゾニトリル等のニトリル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類、またはジメチルスルホキシド等のスルホキシド類等を挙げることができる。非プロトン性溶媒の使用量は、通常、重量比で0.1〜10倍である。
【0031】
また、一級アミン化合物が前記一般式(2)中のRが置換基を有していてもよい炭素数6〜30のアリール基で表される芳香族1級アミンの場合、溶媒としてアルコール類を用い、更に酸触媒を存在させることが、N,O−アセタール化合物が生成し易く好ましい。ここでアルコール類の例としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、n−ペンタノール、n−ヘキサノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール及びフェノール等を挙げることができる。アルコール溶媒の使用量は特に限定されるものではないが、通常、1級アミン化合物に対し、重量比で0.1〜10倍である。また、酸触媒としては、液体状の酸、固体状の酸のいずれを使用してもよく、液体状の酸としては、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸及びトリフルオロメタンスルホン酸等のスルホン酸類、酢酸、プロピオン酸及びトリフルオロ酢酸等のカルボン酸類、硫酸、燐酸及び塩酸等の鉱酸類または、三フッ化ホウ素エーテル錯塩及び四塩化チタン等のルイス酸等を挙げることができる。固体状の酸としては、陽イオン交換樹脂、硫酸化ジルコニア及びヘテロポリ酸等を挙げることができる。酸触媒の使用量は、1級アミン化合物に対し、モル比で0.001〜10倍である。
【0032】
また、N,O−アセタールを生成させる際の温度は30℃〜200℃、好ましくは50℃〜150℃の加温条件下で行うことが望ましい。温度が30℃未満の場合、N,O−アセタールの生成速度が非常に遅く、温度が200℃を超えると副反応が進行する場合がある。反応時間は温度によって影響されるが、通常、10分から10時間である。
【0033】
生成したN,O−アセタール化合物は、公知の抽出法、蒸留法、晶析法及びクロマトグラフ法等により単離することができる。
【0034】
次に、本発明では、N,O−アセタール化合物を還元剤と反応させることにより含フッ素2級アミン化合物を生成させる。この際、N,O−アセタール化合物は単離した後に用いてもよいし、含フッ素アルデヒドヘミアセタールと1級アミン化合物を反応によりN,O−アセタール化合物を生成させた反応液に還元剤を添加し還元反応を行ってもよい。また、原料である含フッ素アルデヒドヘミアセタール及び1級アミン化合物がそれぞれ還元剤と反応しない場合は、還元剤をあらかじめ存在させてN,O−アセタール化合物を生成させ、その後還元反応を行うことも可能である。
【0035】
還元方法としては、各種の方法を利用することができ、例えば、接触水素化還元用触媒の共存下で分子状水素を供給する接触水素化還元法、あるいは、還元剤として金属水素化物等を添加する方法等が使用できる。これらのうち、接触水素化還元法は工業的な実施が容易であり、含フッ素2級アミン化合物の収率が高く好ましい。接触水素化還元用触媒としては、例えば、パラジウム−活性炭等のパラジウム担持触媒、白金−活性炭等の白金担持触媒、スポンジニッケル触媒等を挙げることができる。接触水素化還元用触媒の使用量は、通常、N,O−アセタール化合物に対し金属成分のモル比で0.0001〜0.1である。また、接触水素化還元を行う際、酸触媒を存在させると還元反応が進行し易く、含フッ素2級アミン化合物が高収率で得られる。酸触媒としては液体状の酸、固体状の酸のいずれを使用してもよく、液体状の酸としては、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸及びトリフルオロメタンスルホン酸等のスルホン酸類、酢酸、プロピオン酸及びトリフルオロ酢酸等のカルボン酸類、硫酸、燐酸及び塩酸等の鉱酸類または、三フッ化ホウ素エーテル錯塩及び四塩化チタン等のルイス酸等を挙げることができる。固体状の酸としては、陽イオン交換樹脂、硫酸化ジルコニア及びヘテロポリ酸等を挙げることができる。この際の酸触媒の使用量は、N,O−アセタール化合物に対し、モル比で0.001〜10倍である。接触水素化還元は分子状水素の存在下で行うが、この際の圧力は、大気圧〜5MPaである。
【0036】
金属水素化物を添加する方法の場合、金属水素化物としては、例えば、水素化リチウムアルミニウム及び水素化ジイソブチルアルミニウム等の水素化アルミニウム化合物類、水素化トリブチルスズ等の水素化スズ化合物類、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、水素化ホウ素リチウム及びジボラン等の水素化ホウ素化合物類等が挙げられる。これらのうち、入手性、安全性、毒性及び含フッ素2級アミン化合物の収率の点から、水素化ホウ素化合物類を用いることが好ましい。
【0037】
また、還元反応を行う際、溶媒の不在下で反応させることもできるが、通常、溶媒を使用する。溶媒としては特に限定されるものではないが、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、n−ペンタノール、ベンジルアルコール及びフェノール等のアルコール類、ヘキサン、オクタン及びシクロヘキサン等のアルカン類、ベンゼン、トルエン、キシレン及びメシチレン等の芳香族化合物類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、モノグライム、ジグライム、トリグライム及びテトラヒドロフラン等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸n−ブチル及び安息香酸エチル等のエステル類、ジエチルスルフィド及びジn−ブチルスルフィド等のスルフィド類、アセトニトリル、プロピオニトリル及びベンゾニトリル等のニトリル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類、またはジメチルスルホキシド等のスルホキシド類等を挙げることができる。N,O−アセタール化合物を単離しない場合は、N,O−アセタールを生成させる際と同一の溶媒を使用することが操作上簡便である。また、還元反応を行う際の反応温度は、−20℃〜150℃、好ましくは0℃〜100℃である。反応時間は温度によって影響されるが、通常、1分から100時間である。
【0038】
還元反応後、接触水素化還元法の場合は、触媒をろ過等により分離した後、抽出法、蒸留法あるいは晶析法等により含フッ素2級アミン化合物を単離することができる。還元剤として金属水素化物等を使用する場合は、水及び鉱酸等を添加し還元剤を失活させた後、抽出法、蒸留法あるいは晶析法等により含フッ素2級アミン化合物を単離することができる。
【0039】
実施例
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0040】
実施例1
硝子製反応器に4−メトキシアニリン 0.50g(4.1mmol)、メタノール10ml、トリフルオロアセトアルデヒドメチルヘミアセタール 2.1g(16mmol)及びp−トルエンスルホン酸1水和物 0.020g(0.11mmol)を入れ、30分還流させた(液温65℃)。冷却後、トルエン 15mlを加え、メタノールを減圧留去し、残った溶液に10% NaHCO3水(30mL)及び水 10mlを加え酢酸エチル(20ml×2)で抽出した。抽出液を飽和食塩水(20ml)で洗浄し芒硝乾燥した。溶媒を減圧留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、N,O−アセタール化合物である4−メトキシ−N−(2,2,2−トリフルオロ−1−メトキシエチル)アニリン 0.90g(収率94%)を得た。
【0041】
IR (neat) : 3390, 2850, 1600, 1520, 1380, 1280, 1240, 1180, 1140, 900, 820, 780, 720, 650 cm-1;
1H -NMR (270 MHz, CDCl3) δ 3.47 (s, 3H, CH3), 3.76 (s, 3H, CH3), 4.02 (brs, 1H, NH), 4.83-4.92 (m, 1H, CH), 6.72-6.84 (m, 4H, Ar-H);
19F-NMR(90 MHz, アセトンd6) δ -79.19(d, J=4.9Hz)
EI-MS m/z 235 (M+, 92.98), 219 (1.04), 204 (47.97), 203 (18.81), 184 (6.09), 166 (100.00), 151 (28.15), 134 (33.67), 122 (25.23), 108 (14.54), 92 (8.40), 77 (8.55), 63 (10.34), 52 (2.87);
HR-MS (EI) m/z for C10H12O2NF3Calcd 235.0820, found 235.0823.
【0042】
硝子製反応器に4−メトキシ−N−(2,2,2−トリフルオロ−1−メトキシエチル)アニリン 0.21g(0.87mmol)、メタノール 4mlを入れ、水素化ホウ素ナトリウム 0.065g(1.7mmol)を加えて1時間還流した。反応後メタノールを減圧留去し、残渣に水 10mlを加え酢酸エチル(20ml×2)で抽出した。抽出液を飽和食塩水 10mlで洗浄し芒硝乾燥した。溶媒を減圧留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、4−メトキシ−N−(2,2,2−トリフルオロエチル)アニリン 0.16g(収率90%)を得た。
IR (neat) : 3400, 1520, 1470, 1440, 1390, 1330, 1280, 1240, 1160, 1120, 1040, 950, 820, 730, 670, 640 cm-1;
1H -NMR (270 MHz, CDCl3) δ 3.66-3.75 (m, 2H, CH2), 3.66-3.75 (brs, 1H, NH), 3.75 (s, 3H, CH3), 6.64-6.68 (m, 2H, Ar-H), 6.79-6.83 (m, 2H, Ar-H);
19F-NMR(90 MHz, アセトンd6) δ -71.78(t, J=9.1Hz)
EI-MS m/z 205 (M+, 97.69), 190 (100.00), 170 (11.56), 162 (12.62), 142 (4.97), 136 (73.87), 121 (16.08), 120 (14.99), 92 (10.38), 78 (6.49), 63 (7.51), 52 (5.03);
HR-MS (EI) m/z for C9H10ONF3Calcd 205.0714, found 205.0708.
【0043】
実施例2
ステンレス製反応器に実施例1と同様に方法で得た4−メトキシ−N−(2,2,2−トリフルオロ−1−メトキシエチル)アニリン 0.47g(2.0mmol)、メタノール 10ml、5%パラジウム活性炭 0.023g及びp−トルエンスルホン酸1水和物 0.020g(0.11mmol)を入れた。窒素置換後、0.5MPaの水素圧をかけ、60℃に加熱し、2時間反応させた。反応終了後、反応液を吸引ろ過して触媒を分離し、ろ液を19F−NMRで定量分析したところ、4−メトキシ−N−(2,2,2−トリフルオロエチル)アニリン(19F−NMR: −71.78ppm、t、J=9.1Hz)の生成量は0.38g(収率94%)であった。
【0044】
実施例3
ステンレス製反応器にメタノール 20g、トリフルオロアセトアルデヒドメチルヘミアセタール 4.9g(38mmol)、4−メトキシアニリン 4.2g(34mmol)、p−トルエンスルホン酸1水和物 0.36g(1.9mmol)を入れ、60℃で1時間攪拌した。冷却後、反応液をトリフルオロメチルベンゼンを内部標準として、19F−NMRで分析したところ、N,O−アセタール化合物である4−メトキシ−N−(2,2,2−トリフルオロ−1−メトキシエチル)アニリン(19F−NMR: −79.19ppm、d、J=4.9Hz)が72%の収率で生成していた。
【0045】
この液に5%担持パラジウム−活性炭を0.36g添加し、窒素置換後、0.5MPaの水素圧をかけ、60℃に加熱し、2時間反応させた。反応終了後、反応液を吸引ろ過して触媒を分離し、ろ液を19F−NMRで定量分析したところ、4−メトキシ−N−(2,2,2−トリフルオロエチル)アニリン(19F−NMR: −71.78ppm、t、J=9.1Hz)の生成量は6.5g(収率93%)であった。
【0046】
実施例4
硝子製反応器にメタノール 40g、トリフルオロアセトアルデヒドメチルヘミアセタール 9.7g(75mmol)、4−メトキシアニリン 14g(116mmol)、p−トルエンスルホン酸1水和物 0.71g(3.7mmol)を入れ、67℃で1時間攪拌した。冷却後、反応液をトリフルオロメチルベンゼンを内部標準として、19F−NMRにて定量分析したところ、N,O−アセタール化合物である4−メトキシ−N−(2,2,2−トリフルオロ−1−メトキシエチル)アニリン(19F−NMR: −79.19ppm、d、J=4.9Hz)が68%の収率で生成していた。
【0047】
この液に水素化ホウ素ナトリウム 2.8g(75mmol)を添加し、室温で1時間攪拌後、メタノール20gを添加し再度水素化ホウ素ナトリウム 2.8g(75mmol)を添加し、室温で1時間攪拌した。反応液に水60gを加えた後、クロロホルム50gで抽出した。クロロホルム層を19F−NMRで定量分析したところ、4−メトキシ−N−(2,2,2−トリフルオロエチル)アニリン(19F−NMR: −71.78ppm、t、J=9.1Hz)の生成量は9.5g(収率62%)であった。
【0048】
実施例5
ステンレス製反応器にメタノール 20g、トリフルオロアセトアルデヒドメチルヘミアセタール 4.9g(38mmol)、4−アミノ安息香酸エチル 5.6g(34mmol)、p−トルエンスルホン酸1水和物 0.36g(1.9mmol)を入れ、60℃で1時間攪拌した。冷却後、反応液をトリフルオロメチルベンゼンを内部標準として、19F−NMRで分析したところ、N,O−アセタール化合物である4−[N−(2,2,2−トリフルオロ−1−メトキシエチル)アミノ]安息香酸エチル(19F−NMR: −79.32ppm、d、J=4.9Hz)が66%の収率で生成していた。
【0049】
この液に5%担持パラジウム−活性炭0.36g、p−トルエンスルホン酸1水和物 1.1g(5.7mmol)を添加し、窒素置換後、0.5MPaの水素圧をかけ、60℃に加熱し、28時間反応させた。反応終了後、反応液を吸引ろ過して触媒を分離し、ろ液を19F−NMRで定量分析したところ、4−[N−(2,2,2−トリフルオロエチル)アミノ]安息香酸エチル(19F−NMR アセトンd6 −71.66ppm、t、J=9.1Hz、EI−MS m/Z 247(M+)、219、202、178、150、124、104、91、77、69、65、43、29)の生成量は5.5g(収率65%)であった。
【0050】
実施例6
硝子製反応器にメタノール 20g、トリフルオロアセトアルデヒドメチルヘミアセタール 4.9g(38mmol)、4−アミノベンゾニトリル 4.0g(34mmol)、p−トルエンスルホン酸1水和物 0.36g(1.9mmol)を入れ、60℃で1時間攪拌した。冷却後、反応液をトリフルオロメチルベンゼンを内部標準として、19F−NMRにて定量分析したところ、N,O−アセタール化合物である4−[N−(2,2,2−トリフルオロ−1−メトキシエチル)アミノ]ベンゾニトリル(19F−NMR: −79.33ppm、d、J=4.9Hz)が61%の収率で生成していた。
【0051】
この液に水素化ホウ素ナトリウム 1.3g(34mmol)を少量ずつ添加し、室温で1時間攪拌後、メタノール11gを添加し再度水素化ホウ素ナトリウム 1.3g(34mmol)を添加し、室温で1時間攪拌した。更に、メタノール27を加え、液温を40℃とした後、水素化ホウ素ナトリウム 2.6g(68mmol)を少量ずつ添加し、40℃で30分攪拌した。反応液に水30gを加えた後、クロロホルム44gで抽出した。クロロホルム層を19F−NMRで定量分析したところ、4−[N−(2,2,2−トリフルオロエチル)アミノ]ベンゾニトリル(19F−NMR: −71.60ppm、t、J=9.1Hz、EI−MS m/Z 200(M+)、131、102、75、69、51、39、28)の生成量は3.7g(収率55%)であった。
【0052】
実施例7
ステンレス製反応器にトルエン 22g、トリフルオロアセトアルデヒドメチルヘミアセタール 4.9g(38mmol)、n−ブチルアミン 1.8g(25mmol)を入れ、60℃で1時間攪拌した。冷却後、反応液をトリフルオロメチルベンゼンを内部標準として、19F−NMRで分析したところ、N,O−アセタール化合物である(2,2,2−トリフルオロ−1−メトキシエチル)n−ブチルアミン(19F-NMR: −78.60ppm、d、J=4.9Hz)が35%の収率で生成していた。
【0053】
この液に5%担持パラジウム−活性炭0.26g、p−トルエンスルホン酸1水和物 0.26g(1.4mmol)を添加し、窒素置換後、0.5MPaの水素圧をかけ、60℃に加熱し、12時間反応させた。反応終了後、反応液を吸引ろ過して触媒を分離し、ろ液を19F−NMRで定量分析したところ、N−(2,2,2−トリフルオロエチル)−n−ブチルアミン(19F−NMR: −71.02ppm、t、J=9.8Hz、EI−MS: m/z 155(M+)、112、92、86、69、65、56、42、28)の生成量は3.5g(収率90%)であった。
【0054】
実施例8
p−トルエンスルホン酸1水和物を用いなかったこと以外は実施例7と同様の操作を行った。反応終了後、反応液を吸引ろ過して触媒を分離し、ろ液を19F−NMRで定量分析したところ、N−(2,2,2−トリフルオロエチル)−n−ブチルアミン(19F−NMR: −71.02ppm、t、J=9.8Hz、EI−MS: m/z 155(M+)、112、92、86、69、65、56、42、28)の生成量は2.4g(収率61%)であった。
【0055】
実施例9
硝子製反応器にアニリン 0.50g(5.4mmol)、メタノール 20ml、トリフルオロアセトアルデヒドメチルヘミアセタール 2.1g(16mmol)及びp−トルエンスルホン酸1水和物 0.025g(0.13mmol)を入れ、2時間還流させた(液温65℃)。冷却後、炭酸水素ナトリウム 0.1gを加え不溶の固体をろ過し、メタノール 15mlで洗浄後、ろ液及び洗液からメタノールを減圧留去し、残った溶液に10% NaHCO3水(30mL)及び水 10mlを加え酢酸エチル(20ml×2)で抽出した。抽出液を飽和食塩水(20ml)で洗浄し芒硝乾燥した。溶媒を減圧留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、N,O−アセタール化合物である N−(2,2,2−トリフルオロ−1−メトキシエチル)アニリン 1.1g(収率91%)を得た。
【0056】
IR (neat) : 3400, 2950, 1610, 1520, 1505, 1380, 1280, 1260, 1190, 1150, 900, 850, 760, 720, 700 cm-1;
1H -NMR (270 MHz, CDCl3) δ 3.48 (s, 3H, CH3), 4.23-4.26 (brs, 1H, NH), 4.97-5.06 (m, 1H, CH), 6.75-7.29 (m, 5H, Ar-H);
EI-MS m/z 303 (1.09), 234 (0.56), 205 (M+, 39.36), 189 (0.34), 174 (38.91), 173 (4.73), 136 (100.00), 121 (8.17), 104 (42.18), 93 (23.38), 77 (31.27), 51 (9.76);
HR-MS (EI) m/z for C9H10ONF3Calcd 205.714, found 205.0719
【0057】
硝子製反応器にN−(2,2,2−トリフルオロ−1−メトキシエチル)アニリン 0.15g(0.74mmol)、メタノール 5mlを入れ、水素化ホウ素ナトリウム 0.056g(1.5mmol)を加えて15分還流した。反応後メタノールを減圧留去し、残渣に水 10mlを加え酢酸エチル(20ml×2)で抽出した。抽出液を飽和食塩水 10mlで洗浄し芒硝乾燥した。溶媒を減圧留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、N−(2,2,2−トリフルオロエチル)アニリン 0.092g(収率71%)を得た。
【0058】
IR (neat) : 3420, 1610, 1520, 1450, 1400, 1340, 1280, 1260, 1160, 830, 760, 700, 670, 620 cm-1;
1H -NMR (270 MHz, CDCl3) δ 3.71-3.81 (m, 2H, CH2), 3.91 (brs, 1H, NH), 6.67-7.27 (m, 5H, Ar-H);
EI-MS m/z 205 (2.67), 175 (M+, 46.39), 156 (4.69), 136 (8.25), 124 (1.68), 106 (100.00), 104 (14.53), 77 (33.86), 69 (9.38), 51 (11.27);
HR-MS (EI) m/z for C8H8NF3Calcd 175.0609, found 175.0601.
【0059】
実施例10
硝子製反応器に3−メトキシアニリン 0.50g(4.1mmol)、メタノール 10ml、トリフルオロアセトアルデヒドメチルヘミアセタール 2.1g(16mmol)及びp−トルエンスルホン酸1水和物 0.020g(0.11mmol)を入れ、1時間還流させた(液温65℃)。冷却後、10% 炭酸水素ナトリウム水溶液 30mLを加え酢酸エチル(30ml×2)で抽出した。抽出液を飽和食塩水(20ml)で洗浄し芒硝乾燥した。溶媒を減圧留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、N,O−アセタール化合物である 3−メトキシ−N−(2,2,2−トリフルオロ−1−メトキシエチル)アニリン 0.65g(収率68%)を得た。
【0060】
IR (neat) : 3370, 3000, 2950, 2850, 1720, 1620, 1530, 1500, 1470, 1380, 1310, 1280, 1260, 970, 880, 840, 770, 710, 690 cm-1;
1H -NMR (270 MHz, CDCl3) δ 3.48 (s, 3H, CH3), 3.79 (s, 3H, CH3), 4.25 -4.29 (brs, 1H, NH), 4.96 -5.05 (m, 1H, CH), 6.31 -6.46 (m, 3H, Ar-H), 7.12 -7.18 (m, 1H, Ar-H);
EI-MS m/z 235 (M+, 61.33), 219 (0.83), 204 (51.38), 203 (19.19), 184 (7.42), 166 (100.00), 151 (9.30), 134 (28.71), 123 (13.22), 107 (19.76), 92 (12.62), 77 (12.31), 63 (7.64), 51 (2.33);
HR-MS (EI) m/z for C10H12O2NF3Calcd 235.0820, found 235.0822.
【0061】
硝子製反応器に3−メトキシ−N−(2,2,2−トリフルオロ−1−メトキシエチル)アニリン 0.24g(1.0mmol)、メタノール 3mlを入れ、水素化ホウ素ナトリウム 0.076g(2.0mmol)を加えて1時間還流した。反応後メタノールを減圧留去し、残渣に水 10mlを加え酢酸エチル(20ml×2)で抽出した。抽出液を飽和食塩水 10mlで洗浄し芒硝乾燥した。溶媒を減圧留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、N−(2,2,2−トリフルオロエチル)アニリン 0.18g(収率87%)を得た。
【0062】
IR (neat) : 3440, 2950, 2850, 1610, 1605, 1520, 1500, 1400, 1280-1260, 1220, 1165, 1060, 960, 830, 770, 695 cm-1;
1H -NMR (270 MHz, CDCl3) δ 3.72-3.79 (m, 2H, CH2), 3.78 (s, 3H, CH3), 3.94 (brs, 1H, NH), 6.23-6.43 (m, 3H, Ar-H), 7.09-7.18 (m, 1H, Ar-H);
【0063】
比較例1
p−トルエンスルホン酸1水和物を用いなかったこと以外は実施例3と同様の操作を行った。60℃で1時間加熱後、N,O−アセタール化合物である4−メトキシ−N−(2,2,2−トリフルオロ−1−メトキシエチル)アニリンは全く生成しておらず、4−メトキシ−N−(2,2,2−トリフルオロ−1−ヒドロキシエチル)アニリンが30%の収率で生成していた。この液に5%担持パラジウム−活性炭0.36gを添加し、窒素置換後、0.5MPaの水素圧をかけ、60℃に加熱し、2時間反応させた。反応終了後、反応液を吸引ろ過して触媒を分離し、ろ液を19F−NMRで定量分析したところ、4−メトキシ−N−(2,2,2−トリフルオロエチル)アニリンの生成量は1.1g(収率16%)であった。
【0064】
比較例2
硝子製反応器にメタノール 9.9g、トリフルオロアセトアルデヒドメチルヘミアセタール 2.4g(19mmol)、4−メトキシアニリン 2.1g(17mmol)を入れ、60℃で1時間攪拌した。冷却後、反応液を19F−NMRにて定量分析したところ、N,O−アセタール化合物である4−メトキシ−N−(2,2,2−トリフルオロ−1−メトキシエチル)アニリンは全く生成しておらず、4−メトキシ−N−(2,2,2−トリフルオロ−1−ヒドロキシエチル)アニリンが32%の収率で生成していた。
【0065】
この液に水素化ホウ素ナトリウム 2.6g(68mmol)を添加し、室温で10時間攪拌した。反応液に水15gを加えた後、クロロホルム15gで抽出した。クロロホルム層を19F−NMRで定量分析したところ、4−メトキシ−N−(2,2,2−トリフルオロ−1−ヒドロキシエチル)アニリンは全く生成しておらず、生成物として、2,2,2−トリフルオロエタノールのみが生成していた。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の方法により、毒性の高い還元剤を使用せずに、1級アミン化合物と含フッ素アルデヒドヘミアセタールから、含フッ素2級アミン化合物を高収率で製造することができる。含フッ素2級アミン化合物は医農薬中間体、電子材料用原料として非常に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】

(式中、Xはフッ素原子または水素原子、nは1〜10の整数、R1は、炭素数1〜10の直鎖または分岐のアルキル基を表す。)
で表される含フッ素アルデヒドヘミアセタール及び下記一般式(2)
【化2】

(式中、R2は置換基を有していてもよい炭素数1〜30の直鎖若しくは分岐のアルキル基又は置換基を有していてもよい炭素数6〜30のアリール基を表す。)
で表される1級アミン化合物及び還元剤を反応させ、下記一般式(3)
【化3】

(式中、X、n、R及びRは前記定義に同じ。)
で表されるN,O−アセタール化合物を生成させた後、還元剤と反応させることを特徴とする一般式(4)
【化4】

(式中、X、n及びR2は前記定義に同じ。)
で表される含フッ素2級アミン化合物の製造方法。
【請求項2】
前記一般式(2)の1級アミン化合物が、一般式(2)中のRが置換基を有していてもよい炭素数1〜30の直鎖若しくは分岐のアルキル基で表される脂肪族1級アミンであり、前記一般式(1)で表される含フッ素アルデヒドヘミアセタールと反応させてN,O−アセタール化合物を生成させる際、非プロトン性溶媒を溶媒として用いることを特徴とする請求項1に記載の含フッ素2級アミン化合物の製造方法。
【請求項3】
一般式(2)の1級アミン化合物が、一般式(2)中のRが置換基を有していてもよい炭素数6〜30のアリール基で表される芳香族1級アミン化合物であり、前記一般式(1)で表される含フッ素アルデヒドヘミアセタールと反応させてN,O−アセタール化合物を生成させる際、アルコール類を溶媒として用い、酸触媒を存在させることを特徴とする請求項1に記載の含フッ素2級アミン化合物の製造方法。
【請求項4】
前記一般式(3)で表されるN,O−アセタール化合物を生成させる際、前記一般式(1)で表される含フッ素アルデヒドヘミアセタールと前記一般式(2)で表される1級アミン化合物を50〜150℃の温度で反応させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の含フッ素2級アミン化合物の製造方法。
【請求項5】
還元剤が、接触水素化還元用触媒を共存させた分子状水素であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の含フッ素2級アミン化合物の製造方法。
【請求項6】
還元反応を行う際、酸触媒を存在させることを特徴とする請求項5に記載の含フッ素2級アミン化合物の製造方法。
【請求項7】
還元剤が、水素化ホウ素化合物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の含フッ素2級アミン化合物の製造方法。

【公開番号】特開2008−24602(P2008−24602A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−195545(P2006−195545)
【出願日】平成18年7月18日(2006.7.18)
【出願人】(591180358)東ソ−・エフテック株式会社 (91)
【出願人】(506245800)有限会社 サイエンス シエンツア (1)
【Fターム(参考)】