説明

含フッ素5員環化合物の製造方法

【課題】経済的かつ簡便に含フッ素5員環化合物を製造する方法の提供。
【解決手段】(CF=CF(CFCF)で表されるヘキサフルオロプロペン2量体と、XCHCHROHで表されるアルコール類とを、非プロトン性極性溶剤中、有機塩基触媒存在下で反応させる製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素系溶剤、含フッ素化合物の合成中間体等として有用な含フッ素5員環化合物の経済的で簡便な製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
含フッ素5員環化合物の製造方法としては、ヘキサフルオロプロペン2量体と、アルコールを水酸化カリウムを用いて反応し、精製後、フッ化セシウムを用いて反応を行うという2段階で製造されている(非特許文献1)。しかしながら、この方法には以下の問題点を有する。
【0003】
反応が2段階であり、2回の精製工程が必要になる。また、2段階での収率が15%程度であり、収率が低い。さらに、フッ化セシウムは、高価であり、また吸湿性が高く、取り扱いが難しい。
【非特許文献1】Izvestiya Akademii Nauk SSSR,11,2641−2643(1981)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、以上のような問題点を解決し、経済的かつ簡便に含フッ素5員環化合物を製造する方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決すべく、工業的に有用な製造方法を検討した結果、ヘキサフルオロプロペン2量体とアルコール類を非プロトン性極性溶剤中において、有機塩基触媒存在下で反応させることにより、経済的かつ簡便に含フッ素5員環化合物を製造する方法を見出した。
【0006】
すなわち本発明は、式(1)で表されるヘキサフルオロプロペン2量体及び、下記の一般式(2)で表されるアルコールを、非プロトン性極性溶剤中において、有機塩基触媒存在下で反応させることを特徴とする一般式(3)で表される含フッ素5員環化合物の製造方法を提供する。
【0007】
(CF=CF(CFCF) (1)
XCHCHROH (2)
[式中、Rは、水素、炭素原子数が1〜20の飽和もしくは不飽和脂肪族炭化水素基(該脂肪族水素基は所望によりハロゲン原子、エーテル結合、エステル結合、アミド結合又はアリール基を有していてもよい。)を示し、Xは脱離基を示す。]
【0008】
【化1】

【0009】
[式中、Rは、水素、炭素原子数が1〜20の飽和もしくは不飽和脂肪族炭化水素基(該脂肪族水素基は所望によりハロゲン原子、エーテル結合、エステル結合、アミド結合又はアリール基を有していてもよい。)を示す。]
【発明の効果】
【0010】
本発明により、フッ素系溶剤等として有用な含フッ素5員環化合物を安価で簡便に製造方法することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明に用いる式(1)のヘキサフルオロプロペン2量体は、ヘキサフルオロプロペンのオリゴメリ化によって得られる。
(CF=CF(CFCF) (1)
XCHCHROH (2)
【0012】
本発明に用いる一般式(2)のアルコール類において、Xは脱離基を示す。脱離基を例示すれば、ハロゲン原子、置換スルホニル基等が挙げられる。ハロゲン原子としては、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。置換スルホニル基としては、トリフルオロメタンスルホニル基、メタンスルホニル基、ベンゼンスルホニル基、p−トルエンスルホニル基等が挙げられる。
【0013】
一般式(2)における、Rは、水素、炭素原子数が1〜20の飽和もしくは不飽和脂肪族炭化水素基(該脂肪族水素基は所望によりハロゲン原子、エーテル結合、エステル結合、アミド結合又はアリール基を有していてもよい。)を示す。例示すれば、以下に示すものが挙げられる。
H、(CHn1CH(n1=0〜9)、O(CHn2CH(n2=0〜9)、
CHCl、CHBr、CHI、CHOMs、CHOTs、CHOTf
【0014】
本発明に用いる非プロトン性極性溶剤としては、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチルピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルイミダゾリジノン等の溶媒が挙げられ、特にジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルホルムアミド(DMF)を用いることが好ましい。
【0015】
本発明に用いる有機塩基触媒としては、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン(DABCO)等が挙げられ、特にトリエチルアミンを用いることが好ましい。
【0016】
反応温度は、20〜70℃の範囲であり、好ましくは、40〜60℃である。反応温度が20℃未満の場合は、反応が進行せず、70℃を超えると、副反応が進行するために好ましくない。圧力は、常圧で反応が進行する。
【0017】
反応時間は、1〜24時間の範囲であり、好ましくは2〜8時間である。
【0018】
反応比率については、一般式(2)のアルコール類に対して、ヘキサフルオロプロペン2量体0.8〜3.0等量、好ましくは1.0〜1.5等量、有機塩基触媒1.0〜3.0等量、好ましくは1.0〜1.5等量で行うと良い。また、精製は一般的な方法の溶媒抽出、蒸留によって行うことができる。
【実施例】
【0019】
[実施例1]
1−フルオロ−1−(1,1,2,2,2−ペンタフルオロエチル)−2,2−ビストリフルオロメチルオキソランの合成
冷却管、滴下ロートを備えた3つ口フラスコに2−ブロモエタノール(62.5g,0.50mol)、トリエチルアミン(55.6g,0.55mol)、N,N−ジメチルアセトアミド(250g)を入れた。室温で滴下ロートにヘキサフルオロプロペン2量体(150.0g,0.50mol)を入れ反応溶液を攪拌しながら3つ口フラスコ内に滴下した。滴下終了後、反応温度を60℃に上げ3時間攪拌した。攪拌終了後、1N―HCl水溶液で反応を停止した。反応溶液を水に入れ、上層を除去した、得られた下層の溶液を水で水洗を3回行った。得られた粗生成物を減圧下蒸留することにより、1−フルオロ−1−(1,1,2,2,2−ペンタフルオロエチル)−2,2−ビストリフルオロメチルオキソランが112.1g(収率65%)得られた。得られた1−フルオロ−1−(1,1,2,2,2−ペンタフルオロエチル)−2,2−ビストリフルオロメチルオキソランのH−NMRと19F−NMRのデータを表1に示す。
【0020】
[実施例2]
4−(2−クロロエチル)−1−フルオロ−1−(1,1,2,2,2−ペンタフルオロエチル)−2,2−ビストリフルオロメチルオキソランの合成
冷却管、滴下ロートを備えた3つ口フラスコに1,3−ジクロロ−2−プロパノール(64.5g,0.50mol)、トリエチルアミン(55.6g,0.55mol)、N,N−ジメチルアセトアミド(250g)を入れた。室温で滴下ロートにヘキサフルオロプロペン2量体(150.0g,0.50mol)を入れ反応溶液を攪拌しながら3つ口フラスコ内に滴下した。滴下終了後、反応温度を60℃に上げ3時間攪拌した。攪拌終了後、1N−HCl水溶液で反応を停止した。反応溶液を水に入れ、上層を除去した。得られた下層の溶液を水で水洗を3回行った。得られた粗生成物を減圧下蒸留することにより4−(2−クロロエチル)−1−フルオロ−1−(1,1,2,2,2−ペンタフルオロエチル)−2,2−ビストリフルオロメチルオキソランが114.3g(収率72%)得られた。得られた4−(2−クロロエチル)−1−フルオロ−1−(1,1,2,2,2−ペンタフルオロエチル)−2,2−ビストリフルオロメチルオキソランのH−NMRと19F−NMRのデータを表2に示す。
【0021】
【表1】

【0022】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明の製造方法によれば、フッ素系溶剤、含フッ素化合物の合成中間体等として有用な含フッ素5員環化合物の経済的で簡便に製造することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の式(1)で表されるヘキサフルオロプロペン2量体及び、下記の一般式(2)で表されるアルコール類を、非プロトン性極性溶剤中において、有機塩基触媒存在下で反応させることを特徴とする一般式(3)で表される含フッ素5員環化合物の製造方法。
(CF=CF(CFCF) (1)
XCHCHROH (2)
[式中、Rは、水素、炭素原子数が1〜20の飽和もしくは不飽和脂肪族炭化水素基(該脂肪族水素基は所望によりハロゲン原子、エーテル結合、エステル結合、アミド結合又はアリール基を有していてもよい。)を示し、Xは脱離基を示す。]
【化1】

[式中、Rは、水素、炭素原子数が1〜20の飽和もしくは不飽和脂肪族炭化水素基(該脂肪族水素基は所望によりハロゲン原子、エーテル結合、エステル結合、アミド結合又はアリール基を有していてもよい。)を示す。]