説明

含水ゲルシート

【課題】強度、伸縮性、使用性、肌効果、経時安定性等が良好な含水ゲルシートを提供する。
【解決手段】本発明の含水ゲルシート10はシート状に成形されたゲル組成物(ゲル層15)を有している。その組成物は、成分(a):水溶性高分子と、成分(b):メチルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体と、成分(c):寒天と、成分(d):水とを有しており、成分(a)の水溶性高分子は、(メタ)アクリル酸と、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物と、が少なくとも結合した共重合体からなり、電解質を含有させた場合に増粘性を発揮する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3種類の特定の水溶性高分子を組み合わせた含水ゲルシートに関し、更に、油性成分、水溶性薬剤を含有する含水ゲルシートに関するものである。更に詳しくは、前記成分を含有することにより、水分をゲル構造中に抱え込むことで、みずみずしく、柔軟性・伸縮性に富み、肌への密着性に優れるという特徴を示し、使用することで肌の柔軟性や水分量を増加させ、なお且つ経時安定性に優れる含水ゲルシートを得ることが出来る。
【背景技術】
【0002】
従来より、含水ゲルシートは、消炎沈痛成分や皮膚浸透性薬剤を含浸させた医療用パップ剤のほか、発熱時に額に張ることで熱を吸収し水分を補給することで患者の苦痛を緩和する医療用製剤、傷自体を外部環境から保護する創傷被覆剤、更には美容成分を効果的に肌内部に浸透させるパック製剤等、様々な分野に応用されている。
例えば、アクリル酸系高分子に金属イオンを架橋剤として用いてゲルを形成させる技術(特許文献1参照)や、セルロース系高分子及びその多価金属塩を用いたゲル組成物(特許文献2)、寒天を基本骨格としたキサンタンガム及びローカストビーンガムを配合したパック用ゲルシート(特許文献3)、メチルビニルエーテル/無水マレイン酸クロスポリマーをゲル化剤として用いた貼付シート(特許文献4)、カラギーナンを用いた冷却シート(特許文献5)等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭63−150222号公報
【特許文献2】特開昭59−108045号公報
【特許文献3】特開2005−8613号公報
【特許文献4】特開2006−298894号公報
【特許文献5】特開2006−095200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載された技術では、製造時にアクリル酸系高分子と金属イオンからなる架橋構造が急激に形成されることにより、ゲルが不均一になることがあり、更にはこれらの架橋構造が経時で変化することにより、ゲルから水系成分が染み出てきてしまうといった安定性上の問題点が存在していた。また、上記特許文献2の技術ではゲル化反応が早く、製造時のハンドリングが非常に悪いものであった。更に、これらは多くの場合、ゲル自体の強度が不十分である。それを補うために、不織布等からなる支持体にゲルを塗布することで使用性を満たしているが、その結果ゲル本来の持つ伸縮性・柔軟性が損なわれてしまう等の問題点が存在していた。また、上記特許文献3の技術では、支持体を必要としないながらも、電解質等の水溶性薬剤の配合によってそのゲル構造が弱まり、使用時にその構造を維持できないという課題があった。更に上記特許文献4の技術では、シートの粘着性が非常に強すぎるため、使用後の後肌がべたついたり、使用感が悪かったり、肌より剥がす際にゲル自体がちぎれてしまう等の課題が存在していた。また、上記特許文献5の技術では、強度が向上しても、肌への密着感、伸縮性等が十分でなかった。
そこで、本発明は、ゲルの強度を保ちながら、みずみずしく、柔軟性・伸縮性に富み、肌への密着性に優れるという特徴を示し、使用することで肌の柔軟性や水分量を増加させ、なお且つ経時安定性に優れる含水ゲルシートを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の問題を解決するために、本発明者等は、3種類の特定の水溶性高分子を組み合わせた含水ゲルシートに関し、更に、油性成分、水溶性薬剤を含有することにより、ゲルシートの強度と伸縮性に優れ、更に使用性、肌効果に優れ、経時安定性が良好な含水ゲルシートが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
上記の知見に基づいて成された本発明は、成分(a):(メタ)アクリル酸と、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物と、が少なくとも結合した共重合体からなり、電解質を含有させた場合に増粘性を発揮する水溶性高分子と、成分(b):メチルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体と、成分(c):寒天と、成分(d):水と、を含有するゲル組成物をシート状に成形したことを特徴とする含水ゲルシートである。
本発明の含水ゲルシートは、前記成分(a)の水溶性高分子を、前記ゲル組成物中に0.5〜10.0質量%含有することが好ましい。
また、前記成分(b)のメチルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体を、前記ゲル組成物中に0.01〜5.0質量%含有することが好ましく、前記成分(c)の寒天を、前記ゲル組成物中に0.05〜3.0質量%含有することが好ましい。
更に、成分(e)として油性成分を前記ゲル組成物中に0.01〜20.0質量%含有することが好ましい。
更に、成分(f)として、水溶性薬剤を前記ゲル組成物中に0.01〜10.0質量%含有することが好ましい。
前記成分(f)の水溶性薬剤が、電解質成分である場合には、前記成分(d)水とからなる水溶液の25℃における電気伝導度が50〜2500mS/mになることが好ましい。
【発明の効果】
【0006】
本発明の含水ゲルシートは、ゲルがみずみずしく、柔軟性・伸縮性に富み、肌への密着性に優れるという特徴を示し、使用することで肌の柔軟性や水分量を増加させ、なお且つ経時安定性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の含水ゲルシートの一例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1の符号10は本発明の含水ゲルシートの一例を示しており、含水ゲルシート10はゲル組成物をシート状に成形したゲル層15を有している。
含水ゲルシート10をゲル層15単独で構成してもよいが、ゲル層15の片面又は両面に、支持フィルム11及び/又は剥離フィルム18を貼付してもよい。
支持フィルム11は特に限定されないが、不織布、樹脂フィルム等柔軟性を有するものが望ましい。
剥離フィルム18も特に限定されず、樹脂フィルム等種々の物を用いることができるが、ゲル層15が剥離しやすいように剥離処理されたものが望ましい。また、水蒸気透過性の低い剥離フィルム18をゲル層15に貼付すれば、ゲルからの水分蒸発が防止され、保存性が高まる。
【0009】
次に、ゲル層15を構成するゲル組成物について説明する。
本発明に用いるゲル組成物は、大別して、成分(a)電解質を含有させた場合にゲル化し増粘性を発揮する特定の水溶性高分子、成分(b)メチルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体、成分(c)寒天と、(d)水を少なくとも含有する。また必要に応じて、成分(e)油性成分、(f)水溶性薬剤を含有させても良い。
【0010】
以下、それぞれの構成成分について、詳細に説明する。
<成分(a):水溶性高分子>
ゲル組成物に用いることができる水溶性高分子は、ゲル組成物の基本骨格としてゲル構造を維持する目的で配合され、経時安定性及びゲルシートパックによる肌効果を向上させる効果がある。
成分(a)の水溶性高分子は、(メタ)アクリル酸と、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物とが少なくとも結合した共重合体からなり、電解質を含有させた場合に増粘性を発揮する水溶性高分子である。
【0011】
なお、本発明で(メタ)アクリル酸とはアクリル酸とメタクリル酸を指し、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとはアクリル酸アルキルエステルと、メタクリル酸アルキルエステルを指す。従って、(a)の水溶性高分子は、共重合体の原料モノマーに、アクリル酸とメタクリル酸のいずれか一方又は両方を使用する場合もあれば、アクリル酸アルキルエステルとメタクリル酸アルキルエステルのいずれか一方又は両方を使用する場合がある。
【0012】
(a−1)アクリル酸、メタクリル酸
アクリル酸又はメタクリル酸(以下(メタ)アクリル酸と称する。)の水溶性高分子(a)における構成比は、水溶性高分子(a)の特性を損なわない限り特に限定されず、自由に設定することができる。本発明では特に、95.42〜97.48質量%(以下、「質量%」を単に「%」と略す)、すなわち、95.42%以上97.48%以下が好ましく、95.47〜97.46%がより好ましく、95.97〜96.94%が更に好ましい。
(メタ)アクリル酸の水溶性高分子(a)における構成比が95.42%未満の場合、水溶性高分子(a)を含む後述する中和粘稠水溶液を調製した際に、低濃度の電解質存在下における粘度が著しく高くなり、所定の電解質濃度における粘度変化率が大きくなってしまい、使用しづらくなる場合がある。逆に、(メタ)アクリル酸の水溶性高分子(a)における構成比が97.48%を超える場合、水溶性高分子(a)を含む後述する中和粘稠水溶液を調製した際に、電解質存在下で充分な粘度が得られず、温度及び電解質濃度による粘度変化率が大きくて使用しづらくなる場合があるからである。
【0013】
(a−2)アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル
アクリル酸アルキルエステル又はメタクリル酸アルキルエステル(以下「(メタ)アクリル酸アルキルエステル」と称する。)の種類は、水溶性高分子(a)の特性を損なわなければ特に限定されないが、本発明においては、アルキル基の炭素数が、18〜24(18以上24以下)であることが好ましい。アルキル基の炭素数が18〜24である(メタ)アクリル酸アルキルエステルとは、(メタ)アクリル酸と、アルキル基の炭素数が18〜24である高級アルコールとのエステルをいい、例えば、(メタ)アクリル酸とステアリルアルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸とエイコサノールとのエステル、(メタ)アクリル酸とベヘニルアルコールとのエステル及び(メタ)アクリル酸とテトラコサノールとのエステル等を挙げることができる。これらは単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0014】
この中でも、本発明においては特に、水溶性高分子(a)を含む後述する中和粘稠水溶液、及び電解質存在下における該中和粘稠水溶液の粘度特性や質感を考慮すると、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸エイコサニル、メタクリル酸ベヘニル、及びメタクリル酸テトラコサニルが好ましく、少なくともメタクリル酸ベヘニルを50%以上含有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが更に好ましい。なお、アルキル基の炭素数が18〜24である(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば日本油脂株式会社製の商品名「ブレンマーVMA70」等の市販品を用いてもよい。
【0015】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルの水溶性高分子(a)における構成比は、水溶性高分子(a)の特性を損なわない限り特に限定されず、自由に設定することができる。本発明では特に、2.43〜4.3%が好ましく、2.91〜3.84%がより好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルの水溶性高分子(a)における構成比が2.43%未満の場合、水溶性高分子(a)を含む後述する中和粘稠水溶液を調製した際、電解質存在下で充分な粘度が得られず、温度及び電解質濃度による粘度変化率が大きくて使用しづらくなる場合がある。逆に、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの水溶性高分子(a)における構成比が4.3%を超える場合、水溶性高分子(a)を含む後述する中和粘稠水溶液を調製した際、低濃度の電解質存在下の粘度が著しく高くなり、所定の電解質濃度における粘度変化率が大きくて使用しづらくなる場合があるからである。
【0016】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルの水溶性高分子(a)におけるより詳しい構成比としては、アルキル基の炭素数が18〜24である(メタ)アクリル酸アルキルエステルを2.43〜4.3%含有させることが好ましい。より具体的には、例えば、アルキル基の炭素数が18〜24の1種の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを2.43〜4.3%含有させてもよく、アルキル基の炭素数が18〜24の2種以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの混合体を2.43〜4.3%含有させてもよい。
【0017】
(a−3)エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物
エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物の種類は、水溶性高分子(a)の特性を損なわなければ特に限定されないが、本発明においては、例えば、エチレン性不飽和基がアリル基である化合物を好適に用いることができる。具体的には、ペンタエリトリトールジアリルエーテル、ペンタエリトリトールトリアリルエーテル、及びペンタエリトリトールテトラアリルエーテル等のペンタエリトリトールアリルエーテルや、ジエチレングリコールジアリルエーテル、ポリエチレングリコールジアリルエーテル並びにポリアリルサッカロースが特に好ましい。なお、これらエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を併用してもよい。
【0018】
エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物の水溶性高分子(a)における構成比は、水溶性高分子(a)の特性を損なわない限り特に限定されず、自由に設定することができる。本発明では特に、0.08〜0.29%が好ましく、0.11〜0.24%がより好ましく、0.15〜0.19%が更に好ましい。エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物の水溶性高分子(a)における構成比が0.08%未満の場合、水溶性高分子(a)を含む後述する中和粘稠水溶液を調製した際、電解質存在下で充分な粘度が得られず、温度及び電解質濃度による粘度変化率が大きくて使用しづらくなる場合がある。逆に、エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物の水溶性高分子(a)における構成比が0.29%を超える場合、水溶性高分子(a)を含む後述する中和粘稠水溶液を調製した際、低濃度の電解質存在下の粘度が高くなり、所定の電解質濃度における粘度変化率が大きくて使用しづらくなる場合があるからである。
【0019】
本発明の含水ゲルシートのゲル組成物に含有される水溶性高分子(a)は、上記(メタ)アクリル酸と、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物と、が少なくとも結合した共重合体からなる。重合方法は特に限定されず、公知のあらゆる方法から自由に選択して用いることができる。例えば、これらの構成成分を不活性ガス雰囲気下、溶媒中で攪拌し、重合開始剤を用いて重合させる方法等の通常の方法を用いることができる。
【0020】
重合に用いる不活性ガス雰囲気を得るための不活性ガスは、特に限定されないが、例えば、窒素ガスやアルゴンガス等を挙げることができる。重合に用いる溶媒も特に限定されないが、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、及びエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物を溶解するが、得られる水溶性高分子(a)を溶解しないものであって、当該重合反応を阻害しないものであれば特に限定されない。そのような溶媒の具体例としては、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロペンタン、及びシクロヘキサン等の炭化水素溶媒が挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。これらの中でも特に、n−ヘキサン、及びn−へプタンを好適に用いることができる。また、これら炭化水素溶媒は、ケトン、エステル、エーテル、及び飽和アルコール等の有機溶媒と組み合わせて使用することもできる。好ましい有機溶媒の具体例としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、プロピオン酸ブチル、シクロヘキサノン等が挙げられる。
重合に用いる前記溶媒の量は、攪拌操作性を向上させる観点及び経済性の観点から、(メタ)アクリル酸100質量部に対して、300〜5000質量部(300質量部以上5000質量部以下)であることが好ましい。
【0021】
重合に用いる重合開始剤も特に限定されないが、例えば、ラジカル重合開始剤を好適に用いることができる。具体例としては、α,α’−アゾイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル及び2,2’−アゾビスメチルイソブチレート等を挙げることができる。これらの中でも特に、高分子量の水溶性高分子(a)を得るためには、2,2’−アゾビスメチルイソブチレートを用いることが好ましい。
重合に用いる前記重合開始剤の量は、(メタ)アクリル酸1モルに対して0.00003〜0.002モル(0.00003モル以上0.002モル以下)であることが好ましい。重合開始剤の使用量が0.00003モル未満の場合、反応速度が遅くなるため経済的でなくなるおそれがある。逆に、重合開始剤の使用量が0.002モルを超える場合、重合が急激に進行し、反応の制御が困難になるおそれがあるからである。
【0022】
重合における反応温度は、目的の水溶性高分子(a)が得られれば特に限定されないが、50〜90℃(50℃以上90℃以下)で行うのが好ましく、55〜75℃で行うのがより好ましい。反応温度が50℃未満の場合、反応溶液の粘度が上昇し、均一に攪拌することが困難になるおそれがある。逆に、反応温度が90℃を超える場合、反応が急激に進行し、反応の制御が困難になるおそれがあるからである。反応時間は、反応温度によって適宜設定することができるが、通常、0.5〜5時間(30分以上5時間以下)で行うことが好ましい。
【0023】
反応終了後、反応溶液を例えば80〜130℃で加熱して前記溶媒を揮散除去することにより、本発明に用いる水溶性高分子(a)を得ることができる。加熱温度が80℃未満の場合、乾燥に長時間を要するおそれがあり、130℃を超える場合、得られる水溶性高分子(a)の水への溶解性を損なうおそれがあるからである。
水溶性高分子(a)は、本発明に用いる場合、通常、中和剤を用いて1%程度での25℃におけるpHが6.5〜7.5(pH6.5以上7.5以下)になるような中和粘稠水溶液として用いる。この中和粘稠水溶液は、本発明の目的を達成するために、以下の性質を有することが好ましい。
【0024】
水溶性高分子(a)1%及び塩化ナトリウム1%を含む中和粘稠水溶液の25℃における粘度は、含水ゲルシートのゲル組成物に用いた際に、べたつきのないみずみずしい質感を得るために、少ない添加量で増粘できるという観点から、40000mPa・s以上であることが好ましく、42000mPa・s以上であることがより好ましい。
水溶性高分子(a)1%及び塩化ナトリウム1%を含む中和粘稠水溶液の25℃における粘度を1とすると、その中和粘稠水溶液の温度を50℃にしたときの粘度が、0.8〜1.2(0.8以上1.2以下)、より好ましくは0.9〜1.1であれば、含水ゲルシートのゲル組成物に用いた際に、気温変動の影響を受けにくい。
【0025】
水溶性高分子(a)1%及び塩化ナトリウム1%を含む中和粘稠水溶液の25℃における粘度1に対して、水溶性高分子(a)1%及び塩化ナトリウム0.5%を含む中和粘稠水溶液の25℃における粘度が、0.7〜1.2であることが好ましく、0.9〜1.0であることがより好ましい。この場合、含水ゲルシートのゲル組成物に用いた際に、電解質濃度の異なる種々の配合処方に活用しやすくなる。
【0026】
以上説明した水溶性高分子(a)を配合することにより、水分をゲル構造中に抱え込むことで、みずみずしく、柔軟性・伸縮性に富み、なお且つ経時安定性に優れる含水ゲルシートを得ることが出来る。これは、水溶性高分子(a)に導入されたアルキル基が、水溶液中で疎水性相互作用により会合体を形成することにより増粘性が増し、電解質の影響を低減させているものと推察される。また、水溶性高分子(a)に導入されたエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物が、架橋剤として作用して粘度を増加させると共に、疎水性相互作用の自由度が低下して温度の影響を低減させているものとも推察される。
【0027】
水溶性高分子(a)のゲル組成物中の含有量は、本発明の目的を損なわない限り、特に限定されず、目的や他の構成成分の配合により、適宜調整することが可能であるが、0.5〜10.0%、更に好ましくは1.0〜5.0%であることがより好ましい。なお、本発明で、ゲル組成物中の含有量とは、シート状に成形した後、すなわち、ゲル化後のゲル組成物(ゲル層15)中の含有量である。
【0028】
ゲル組成物には、水溶性高分子(a)を含む前記中和粘稠水溶液を調製するための中和剤となり得る塩基性物質を含有させることができる。塩基性物質の種類は、水溶性高分子(a)1%程度でのpHが6.5〜7.5になるように調製できれば特に限定されず、公知の塩基性物質を自由に選択して用いることができる。具体的には、例えば、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物や、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン等のアミン類等を挙げることができ、この中でも本発明においては特に、水酸化ナトリウムを好適に用いることができる。
水溶性高分子(a)は電解質の存在下で増粘性を発揮し、ゲル特性を示す。ゲル特性を得るための電解質は特に限定されないが、前記水溶性高分子(a)のゲル特性を評価するために、以下の電解質(前記塩基性物質は除く)を用いることができる。また、これら電解質は本発明の含水ゲルシートにも含有させることもでき、その結果、含水ゲルシートのゲル強度を更に強くさせることができる。
【0029】
電解質の種類は、通常皮膚化粧料に用いられる電解質であれば特に制限はない。具体的には、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カリウム等の中性の無機塩であり、後述の成分(f)以外の無機塩を指す。
【0030】
<成分(b):メチルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体>
含水ゲルシートのゲル組成物には、前記水溶性高分子(a)を基本骨格とした含水ゲルシートの強度を更に高めるため、肌への密着性を向上させるため、更には経時安定性を向上させるために、メチルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体を配合させる。メチルビニルエーテル/マレイン酸共重合体としては、米国特許第5874510号明細書に記載されている範囲のものであれば特に限定されず、製品としてはアイエスピー・ジャパン社より、スタビリーゼの商品名で販売されているもの等がある。
成分(b)メチルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体の、含水ゲルシート中の含有量は、本発明の目的を損なわない限り、特に限定されず、目的や他の構成成分の配合により、適宜調整することが可能であるが、組成物中に0.01〜5.0%、更に好ましくは0.05〜2.5%であることがより好ましい。
【0031】
<成分(c):寒天>
寒天は、水を固形状にゲル化させる成分であり、通常公知の寒天を用いることができる。また、成分(c)の寒天は、ゼリー強度を調整するために、酸処理等を施して分子を切断させた、いわゆる低強度寒天(例えば、特開平5−317008号公報に開示)を用いることができる。本発明において、成分(c)の寒天として、前記酸処理した低強度寒天を選択すると、みずみずしく、柔軟性・伸縮性に富み、使用することで肌の柔軟性や水分量を増加させ、なお且つ経時安定性に優れる含水ゲルシートを得ることが出来る。
成分(c)寒天のゲル組成物中の含有量は、本発明の目的を損なわない限り、特に限定されず、目的や他の構成成分の配合により、適宜調整することが可能であるが、組成物中に0.05〜3.0%、更に好ましくは0.1〜2.0%であることがより好ましい。
【0032】
成分(c)の寒天を使用すると、他の成分(ゼラチン、キサンタンガム)等を用いた場合比べてシート強度が高くなる。よって、本発明の含水ゲルシートは、皮膚に貼着後、剥がす際に、シートが破壊されず、ゲル組成物が皮膚に転着して残ることもない。
カラギーナンは、寒天と同様に紅藻類から作成されるものではあるが、寒天と比較すると、上記成分(a)、(b)と組み合わせた場合の肌密着性等が十分ではない。よって、本発明の含水ゲルシートには寒天が最も適している。
【0033】
<成分(d):水>
成分(d)の水は、含水ゲルシートの外相を形成する成分であり、みずみずしい使用感を具現化している成分である。成分(d)水のゲル組成物中の含有量は、本発明の目的を損なわない限り、特に限定されず、目的や他の構成成分の配合により、適宜調整することが可能であるが、ゲル組成物中に65.0〜99.5%、更に好ましくは80.0〜97.5%であることがより好ましい。
【0034】
<成分(e):油性成分>
油性成分は、含水ゲルシートのゲル組成物の油相を構成する成分であると共に、滑らかさ等の使用感やエモリエント感等の肌効果を得るために用いられる。成分(e)としては、皮膚化粧料一般に使用される動物油、植物油、合成油等の起源及び、固形油、半固形油、液体油、揮発性油等の性状を問わず、炭化水素類、油脂類、ロウ類、硬化油類、エステル油類、脂肪酸類、高級アルコール類、フッ素系油類、ラノリン誘導体類、油性ゲル化剤類、親油性界面活性剤類、油溶性紫外線吸収剤類等を配合することができる。
【0035】
具体的には、流動パラフィン、スクワラン、ワセリン、ポリイソブチレン、ポリブテン、パラフィンワックス、セレシンワックス、マイクロクリスタリンワックス、モンタンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の炭化水素類、オリーブ油、ヒマシ油、ミンク油、マカデミアンナッツ油、モクロウ等の油脂類、ミツロウ、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、ゲイロウ、ホホバ油等のロウ類、ミリスチン酸オクチルドデシル、ジイソステアリン酸ポリグリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、トリベヘン酸グリセリル、ロジン酸ペンタエリトリットエステル、コレステロール脂肪酸エステル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル・ベヘニル・オクチルドデシル)等のエステル類、ステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ベヘン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、ロジン酸等の高級脂肪酸類、ステアリルアルコール、セチルアルコール、ラウリルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の高級アルコール類、パーフルオロポリエーテル、パーフルオロデカン、パーフルオロオクタン等のフッ素系油剤類、ラノリン、酢酸ラノリン、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラノリンアルコール等のラノリン誘導体、デキストリン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、デンプン脂肪酸エステル、12−ヒドロキシステアリン酸、ステアリン酸カルシウム等の油性ゲル化剤類、アミノ安息香酸エチル、メトキシケイ皮酸−2−エチルヘキシル、4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン、オキシベンゾン等の油溶性紫外線吸収剤類等が挙げられ、これらの一種又は二種以上を組み合わせて用いることができる。更にこれらの中でも、イソノナン酸イソトリデシル、イソノナン酸イソノニル、ジ−2−エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコ−ル及びトリ−2−エチルヘキサン酸グリセリルから選択される、分子内に分岐を2個以上有する脂肪酸エステルのうち、少なくとも1種を含有する油性成分が更に好ましい。
【0036】
成分(e)の油性成分のゲル組成物中の含有量は、本発明の目的を損なわない限り、特に限定されず、目的や他の構成成分の配合により、適宜調整することが可能であるが、0.01〜20.0%であることが好ましく、更に好ましくは0.1〜10.0%がより好ましい。
【0037】
<成分(f):水溶性薬剤>
水溶性薬剤の種類は、電解質及び、非電解質からなり、通常の含水ゲルシートや皮膚化粧料等に用いられるものであれば特に制限はない。例えば、保湿効果のある電解質としては、アミノ酸、乳酸、クエン酸、ピロリドンカルボン酸等の有機化合物と、それらのカリウム、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム等の金属塩、L−アラニン、β−アラニン、L−アルギニン、L−アルギニン塩酸塩、L−アスパラギン一水和物、L−アスパラギン酸、ポリアスパラギン酸、L−シトルリン、L−システイン、L−システイン塩酸塩一水和物、L−シスチン、L−ドーパ、L−グルタミン酸、L−グルタミン酸塩酸塩、L−グルタミン、ポリグルタミン酸、グリシン、トリメチルグリシン、L−ヒスチジン、L−ヒスチジン塩酸塩一水和物、L−ヒドロキシプロリン、L−イソロイシン、L−ロイシン、L−リジン、L−リジン塩酸塩、L−メチオニン、L−オルニチン塩酸塩、L−プロリン、L−フェニルアラニン、L−セリン、L−スレオニン、L−トリプトファン、L−チロシン、L−バリン等のアミノ酸及びその誘導体や塩類が挙げられる。
【0038】
また、美白効果のある電解質としては、アスコルビン酸、アスコルビン酸リン酸エステル、アスコルビン酸硫酸エステル、アスコルビン酸グルコシド等とそれらのナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム等の金属塩等の水溶性アスコルビン酸類が挙げられる。さらに、グリチルリチン酸塩類、グリチルレチン酸塩、サリチル酸塩、トラネキサム酸塩、アルブチン、尿素、ミョウバンや海洋深層水、温泉水等、これら電解質を含む天然由来の水溶液も挙げられる。これらは一種又は二種以上を組み合わせて用いる事が出来る。これらの電解質の中でも、アルカリ金属塩あるいはアミン類を含む電解質が好ましく、特に好ましくは、アスコルビン酸、ピロリドンカルボン酸、グリチルリチン酸、及びこれらの水溶性誘導体、並びにこれらの塩類が挙げられる。
また、保湿効果のある非電解質としては、糖類や糖アルコール類などがある。糖類としては、例えばグルコース、フルクトース、ガラクトース、キシロース、マルトース、シュークロース、ラクトース、乳糖、ショ糖、果糖、デンプン、デキストリン等の単糖類、トレハロースなどの二糖類、オリゴ糖類、多糖類が挙げられる。糖アルコール類としては、例えばソルビトール、マンニトール、マルチトール等が挙げられる。
すなわち、本発明に用いることができる成分(f)の水溶性薬剤は、有機酸及びその塩類、アミノ酸及びその誘導体や塩類である電解質、及び糖類、糖アルコール類である非電解質からなり、これらは1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0039】
成分(f)水溶性薬剤のゲル組成物中の含有量は、本発明の目的を損なわない限り特に限定されず、目的や他の構成成分の配合により、適宜調整することが可能であるが、25℃における電気伝導度が50〜2500mS/m(50mS/m以上2500mS/m以下)、更に好ましくは80〜2000mS/mであることがより好ましい。
なお、電気伝導度は、成分(a)〜(c)を添加する前の、成分(f)の水溶性薬剤と、成分(d)の水からなる水溶液を25℃恒温下にて測定した値のことであり、ここでは、電気伝導率計(東亜電波工業(株)製の商品名「CM−60G」)を用いて測定した。
【0040】
上記成分(a)〜(f)を含有させることで、本発明に係る含水ゲルシートは、水分をゲル構造中に抱え込み、みずみずしく、柔軟性・伸縮性に富み、肌への密着性に優れるという特徴を示し、使用することで肌の柔軟性や水分量を増加させ、なお且つ経時安定性に優れる含水ゲルシートを得ることが出来る。
本発明の含水ゲルシートは、上記成分に加え、さらに通常の皮膚化粧料に用いられる成分、例えば、界面活性剤、(f)以外の電解質有効成分、高分子物質、保湿成分、美容成分、殺菌剤、防腐剤、無機紛体、有機紛体、酸化防止剤、色素、香料等を本発明の効果を損なわない範囲で使用することができる。
【0041】
本発明の含水ゲルシートの用途は、消炎沈痛成分や皮膚浸透性薬剤を含浸させた医療用パップ剤、発熱時に額に張ることで熱を吸収し水分を補給することで患者の苦痛を緩和する医療用製剤、傷自体を外部環境から保護する創傷被被覆剤、そして美容成分を効果的に肌内部に浸透させるシート状パック製剤として用いることが出来る。その使用法は、含水ゲルシートを直接肌に張る方法、不織布等に貼り付けて使用する方法等が挙げられる。
【0042】
<含水ゲルシートの製造方法>
本発明の含水ゲルシートの製造方法は特に限定されないが、一例を述べると、上記成分(a)〜(c)と、他の成分(水等)の混合物からなる組成物(ゲル化前)を、少なくとも寒天の融点以上(70℃以上)に加熱して、各成分を均一に混合する。
各成分が凝固又は析出しない温度に維持したまま、組成物をシート状に成形した後、寒天の凝固点未満(40℃未満)に冷却すると、ゲル状の組成物(ゲル組成物)となり、本発明の含水ゲルシートが得られる。
なお、成分(a)〜(d)以外の成分は、加熱前に添加してもよいし、加熱後に添加してもよい。組成物(ゲル化前)の加熱混合と成形との間に、脱泡、ろ過等の処理を行ってもよい。
成形法も特に限定されず、プレス成形、押出成形等種々の方法を採用することができるが、いずれの方法においても、組成物の温度が高い間に(寒天の凝固点以上)、充填、成形することが望ましい。その場合、冷却するだけでシートが形成されるから、成形が容易な上に、シート形状も良好になる。
【0043】
本発明に用いる成分(a)〜(c)は保水性が高いため、加熱溶解前の組成物と、シート成形後の組成物(ゲル層15)は、各成分の配合割合が略等しく、その誤差は無視できる程小さい。また、シート成形後に、成分(d)の水等が排液されないため、みずみずしさが維持され、肌密着性や保存性が高い。
また密着性をより高めるために、含水ゲルシート(ゲル層15)に凹凸等の表面加工を施してもよいが、本発明は成分(a)〜(c)の組み合わせにより、表面加工を施さなくても実用上十分な密着性が得られる。また、表面加工を施す場合であっても、本来密着性が高いので、厳密に凹凸の形状や大きさを制御する必要がなく、含水ゲルシートの製造が容易である。
【実施例】
【0044】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。なお、以下に説明する実施例は、本発明の代表的な実施例の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0045】
〔合成例1〕
攪拌機、温度計、窒素吹き込み管および冷却管を備えた500mL容の四つ口フラスコに、アクリル酸45g(0.625モル)、アルキル基の炭素数が18〜24である(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしてのブレンマーVMA70(日本油脂株式会社製:メタクリル酸ステアリルが10〜20質量部、メタクリル酸エイコサニルが10〜20質量部、メタクリル酸ベヘニルが59〜80質量部およびメタクリル酸テトラコサニルの含有量が1質量部以下の混合物)1.58g、ペンタエリトリトールアリルエーテル0.07g、ノルマルヘキサン150gおよび2,2’−アゾビスメチルイソブチレート0.081g(0.00035モル)を仕込んだ。
引き続き、均一に攪拌、混合した後、反応容器の上部空間、原料および溶媒中に存在している酸素を除去するために、溶液中に窒素ガスを吹き込んだ。次いで、窒素雰囲気下、60〜65℃に保持して4時間反応させた。反応終了後、生成したスラリーを90℃に加熱して、ノルマルヘキサンを留去し、さらに、110℃、10mmHgにて8時間減圧乾燥することにより、白色微粉末状の(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体43gを得た。
〔合成例2〕
合成例1において、ブレンマーVMA70(日本油脂株式会社製)の使用量を1.10g、ペンタエリトリトールアリルエーテルの使用量を0.03gに変更した以外は、実施例1と同様にして、白色微粉末状の(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体44gを得た。
〔合成例3〕
合成例1において、ブレンマーVMA70(日本油脂株式会社製)の使用量を2.20g、ペンタエリトリトールアリルエーテルの使用量を0.2gに変更した以外は、実施例1と同様にして、白色微粉末状の(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体44gを得た。
(1)含水ゲルシートの調製
下記表1〜3に示す組成の実施例1〜17、比較例1〜5に係る含水ゲルシートの調製を行った。なお、本実施例では、上記「合成例」で作成した水溶性高分子(a)を用いた。
【0046】
[実施例1〜17]
まず、水溶性高分子(a)及び、成分(b)、(c)と、塩基性物質として水酸化ナトリウムと、精製水とを80℃にて均一に混合溶解した。次に、1,3−ブチレンゴリコール、乳酸ソーダやアスコルビン酸2−グルコシド等を均一に混合分散させた。その後、脱泡を行い、得られたゲル組成物をシート状にプレスし、実施例1〜17に係る含水ゲルシートを調製した。
【0047】
[比較例1〜5]
まず、水溶性高分子(a)の代わりに、比較例1についてはアクリル酸アクリル酸アルキル共重合体、比較例2についてはアクリル酸ナトリウム及び塩化アルミニウム、比較例3についてはカルボキシメチルセルロースナトリウムに塩基性物質としてトリエタノールアミンを用いた。また、比較例4については成分(b)の代わりにポリビニルアルコール、比較例5については成分(c)の代わりにゼラチンを用い、上記表1〜3の組成で、実施例1〜17と同じ製造条件で含水ゲルシートを調整した。各実施例及び比較例の組成を、後述する評価試験の結果と共に下記表1〜3に記載する。
【0048】
【表1】

【0049】
【表2】

【0050】
【表3】

【0051】
上記表1〜3中の各成分の数値の単位は%(質量%)であり、成分(d)の水(精製水)の「残量」とは、100%から他の成分の合算(%)を引いた値である。また、電気伝導度は、上記表1〜3の配合割合で、成分(d)の水と成分(f)の電解質とを混合して水溶液を作成し、その水溶液について測定した。
【0052】
(2)各品質特性の評価
前記で調製した実施例1〜17、比較例1〜5に係る含水ゲルシートについて、以下に示す評価基準に従って比較評価を行った。
【0053】
化粧品評価専門パネル20名の官能評価試験により
(A)シート強度
(B)使用性
(B1)みずみずしさ、(B2)密着性、(B3)伸縮性、(B4)べたつきの無さ
(C)肌効果
(C1)肌の水分量、(C2)肌の柔軟性
(D)経時安定性
の8項目に関し、以下に示す評価基準に従って比較評価を行った。
【0054】
(A)シート強度
【0055】
【表4】

【0056】
(B)使用性
【0057】
【表5】

【0058】
【表6】

【0059】
【表7】

【0060】
【表8】

【0061】
(C)肌効果
【0062】
【表9】

【0063】
【表10】

【0064】
【表11】

【0065】
化粧品評価専門パネル20名による各項目の評価結果の点数をそれぞれ合計し、下記の表12に示す評価基準に従って評価した。なお、本発明では、B以上の評価が、本発明において好適であると考えられる。
【0066】
【表12】

【0067】
(3)結果
結果を上記表1〜3に示す。表1〜3に示す通り、実施例1〜17に係る含水ゲルシートについては、シート強度、使用性、肌効果、経時安定性の全ての評価が、B評価以上の結果を示した。特に、貼付行為においては、ゲルシート自身の強度、及び肌への密着性、伸縮性が重要であり、その密着性の高さが、肌の水分量や柔軟性にも寄与していると考えられる。この結果より、水溶性高分子(a)の好適な含有量は0.5〜10.0%であり、成分(b)の好適な含有量は0.01〜5.0%であり、成分(c)の好適な含有量は0.05〜3.0%であることが分かった。また、成分(e)として油性成分を配合したものが、肌の柔軟性をより向上させることがわかった。
【0068】
一方、比較例1〜5に係る含水ゲルシートについては、経時安定性の点で、実施例のものと比較して、排液、ゲル化等の問題が確認された。特に、比較例2では後肌のべたつきが酷く、比較例3はゲル強度、みずみずしさが特に乏しいものであった。
また、成分(a)、(c)等が同一であっても、比較例4のように、成分(b)のメチルビニルエーテル/マレイン酸共重合体を他の物に変えると、べたつきの無さや柔軟性が極端に劣化し、成分(a)、(b)が同一であっても、比較例5のように成分(c)の寒天を他の物に変えると、シート強度や経時安定性が著しく劣化し、その結果肌への密着性が低下して、肌の水分量や柔軟性が低下した。
以上のことから、成分(a)の水溶性高分子と、成分(b)のメチルビニルエーテル/マレイン酸共重合体と、成分(c)の寒天が全て揃うことで、成形性、使用性、肌効果の全てに優れた含水ゲルシートが得られることが実証された。
【0069】
次に、本発明の含水ゲルシートの他の具体例を説明する。
<実施例18:含水ゲルシート>
(成分)
1.合成例1記載の水溶性高分子(a) : 3.0%
2.水酸化ナトリウム : 1.25%
3.イソノナン酸イソトリデシル : 1.0%
4.メチルビニルエーテル/マレイン酸共重合体 : 0.05%
5.寒天 : 1.0%
6.クエン酸 : 0.5%
7.クエン酸ナトリウム : 0.1%
8.アスコルビン酸2−グルコシド : 2.0%
9.1,3−ブチレングリコール :10.0%
10.1,2−ペンタンジオール : 1.0%
11.グリセリン : 8.0%
12.L−テアニン : 0.1%
13.ラウロイルグルタミン酸リシンNa : 0.2%
14.精製水 (add 100%)
15.防腐剤 : 適量
16.エタノール : 5.0%
なお、13.ラウロイルグルタミン酸リシンNaは、旭化成(株)製の商品名「ペリセアL−30」を用いた。
【0070】
<<調製方法>>
上記1〜13の成分に、14の精製水を加え、その混合物を80℃にて混合溶解し、攪拌したものを50℃に冷却する。その後15、16を加え、混合攪拌したものを、シート状にプレスし、シート状のゲル組成物からなる含水ゲルシートを得た。
なお、実施例18と、後述する実施例19、20において、精製水の「add100%」とは、水を加えた合計が100%という意味であり、精製水の含有量は、100%から他の成分の合計(%)を引いた値になる。
実施例18の含水ゲルシートは、みずみずしく、柔軟性・伸縮性に富み、肌への密着性に優れるという特徴を示し、使用することで肌の柔軟性や水分量を増加させ、なお且つ経時安定性に優れるものであった。
【0071】
<実施例19:含水ゲルシート>
(成分)
1.合成例2記載の水溶性高分子(a) : 0.5%
2.水酸化ナトリウム : 0.12%
3.メチルビニルエーテル/マレイン酸共重合体 : 1.0%
4.寒天 : 3.0%
5.トレハロース : 0.5%
6.1,3−ブチレングリコール : 7.0%
7.1,2−ペンタンジオール : 1.0%
8.グリセリン : 8.0%
9.グリシルグリシン : 0.2%
10.インドメタシン : 5.0%
11.精製水 (add 100%)
12.防腐剤 : 適量
13.エタノール : 5.0%
【0072】
<<調製方法>>
上記1〜10の成分に、11の精製水を加え、その混合物を80℃にて混合溶解し、攪拌したものを50℃に冷却する。その後12、13を加え、混合攪拌したものを、シート状にプレスし、シート状のゲル組成物からなる含水ゲルシートを得た。
実施例19の含水ゲルシートは、みずみずしく、柔軟性・伸縮性に富み、肌への密着性に優れるという特徴を示し、使用することで肌の柔軟性や水分量を増加させ、なお且つ経時安定性に優れるものであった。
【0073】
<実施例20:含水ゲルシート>
(成分)
1.合成例3記載の水溶性高分子(a) : 5.0%
2.水酸化ナトリウム : 1.25%
3.メチルビニルエーテル/マレイン酸共重合体 : 2.0%
4.寒天 : 1.5%
5.サリチル酸メチル : 2.0%
6.1,3−ブチレングリコール : 7.0%
7.1,2−ペンタンジオール : 1.0%
8.グリセリン : 8.0%
9.グリシルグリシン : 0.2%
10.精製水 (add 100%)
11.防腐剤 : 適量
12.エタノール : 5.0%
【0074】
<<調製方法>>
上記1〜9の成分に、10の精製水を加え、その混合物を80℃にて混合溶解し、攪拌したものを50℃に冷却する。その後11、12を加え、混合攪拌したものを、シート状にプレスし、シート状のゲル組成物からなる含水ゲルシートを得た。
【0075】
実施例20の含水ゲルシートは、みずみずしく、柔軟性・伸縮性に富み、肌への密着性に優れるという特徴を示し、使用することで肌の柔軟性や水分量を増加させ、なお且つ経時安定性に優れるものであった。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の含水ゲルシートは、医療用パップ材、美容用パック製材等、人間や動物の皮膚に直接貼付して使用するものに広く用いることができる。
【符号の説明】
【0077】
10……含水ゲルシート
11……支持フィルム
15……ゲル層(シート状のゲル組成物)
18……剥離フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分(a):(メタ)アクリル酸と、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物と、が少なくとも結合した共重合体からなり、電解質を含有させた場合に増粘性を発揮する水溶性高分子と、
成分(b):メチルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体と、
成分(c):寒天と、
成分(d):水と、
を含有するゲル組成物をシート状に成形したことを特徴とする含水ゲルシート。
【請求項2】
前記成分(a)の水溶性高分子を、前記ゲル組成物中に0.5〜10.0質量%含有する、請求項1に記載の含水ゲルシート。
【請求項3】
前記成分(b)のメチルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体を、前記ゲル組成物中に0.01〜5.0質量%含有する、請求項1又は請求項2のいずれか1項記載の含水ゲルシート。
【請求項4】
前記成分(c)の寒天を、前記ゲル組成物中に0.05〜3.0質量%含有する、請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の含水ゲルシート。
【請求項5】
更に、成分(e)として油性成分を前記ゲル組成物中に0.01〜20.0質量%含有する、請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の含水ゲルシート。
【請求項6】
更に、成分(f)として、水溶性薬剤を前記ゲル組成物中に0.01〜10.0質量%含有する請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載の含水ゲルシート。
【請求項7】
前記成分(f)の水溶性薬剤が、電解質成分であり、前記成分(d)水とからなる水溶液の25℃における電気伝導度が50〜2500mS/mである請求項6記載の含水ゲルシート。


【図1】
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【公開番号】特開2011−207777(P2011−207777A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−74427(P2010−74427)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000145862)株式会社コーセー (734)
【Fターム(参考)】