説明

含水体の乾燥装置及びその運転方法

【課題】ヒートポンプ単体で含水体の乾燥スケジュールに追随して精度よく温湿度制御することができる含水体の乾燥装置及びその運転方法を提供する。
【解決手段】乾燥室1と、ヒートポンプ10の蒸発熱を用いて水分含有空気を冷却除湿する冷却除湿器4と、ヒートポンプ10の凝縮熱を用いて除湿空気を加熱するエアヒータ15とを備えた装置において、ヒートポンプ10の一次冷媒を外気と熱交換する補助熱交換器16と、補助熱交換器16をエアヒータ15と膨張弁11の間に接続し放熱手段として機能させる第1の冷媒ライン21と、冷却除湿器4をヒートポンプ10から切り離し、補助熱交換器16を膨張弁11と圧縮機14の間に接続し蒸発手段として機能させる第2の冷媒ライン22とを備え、乾燥スケジュールの加熱量と除湿量の比率に応じて切替手段により第1の冷媒ラインと第2の冷媒ラインとを切り替える構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートポンプを用いて、乾燥室内に収納された木材、食品、塗装物等の含水体を乾燥する含水体の乾燥装置及びその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、木材、食品、塗装物等の含水体を人工乾燥する際には、乾燥室内に含水体を収納し、加熱源を用いて乾燥室内の温度を上げて含水体を乾燥させている。さらに、含水体を高品質な状態に仕上げるには、乾燥室内の温度調整に加えて湿度調整が重要である。例えば木材の乾燥においては、乾燥時間に対して含水率が直線的な低下をみせるように均等に木材を乾燥させることによって割れや反りを防ぎ、乾燥木材を高品質化することが可能となる。
【0003】
しかし、乾燥過程における木材の状況によって除湿量が変化するため、一定の加熱量、除湿量で乾燥させても含水率は直線的に低下しない。したがって、高品質の乾燥木材を得るためには、乾燥過程に対応した最適な加熱量と除湿量からなる乾燥スケジュールに基づき乾燥装置を運転する必要があった。この乾燥スケジュールは、乾燥対象である含水体の種類や特性等によって決定されるものであり含水体によって異なるため、含水体ごとに設定された乾燥スケジュールに沿って温湿度調整を行なうことが重要である。
【0004】
このように含水体の温湿度制御を可能とした乾燥装置として、従来よりヒートポンプを用いた装置が知られている。これは、主としてヒートポンプの凝縮器で外気を加熱して乾燥室内に加熱空気を送り含水体の温度調整を行なうとともに、含水体から出た水分で高温となった空気を乾燥室外に排出し、蒸発器で冷却除湿することにより湿度調整を行なうものである。
【0005】
しかしながら上記した従来の乾燥装置は、乾燥室内の高温となった空気を外部に放出し、再循環して使用しないため、排気による熱ロスが多く、加熱源の投入エネルギーが多くなる欠点を持っている。
そこで、乾燥室内の空気を一部循環させることによりエネルギー消費を低減し熱効率を向上させることを可能とした乾燥装置が特許文献1(特開2007−192464号公報)に開示されている。
【0006】
この乾燥装置は、乾燥室内の空気を冷却除湿器に導入しヒートポンプの蒸発側で空気を冷却除湿した後、この空気を空気加熱器に導入しヒートポンプの凝縮側で加熱して加熱空気を乾燥室内に供給する構成となっている。さらにこの装置では、ヒートポンプにCO冷媒を用いており、蒸発工程後に超臨界圧まで圧縮したCO冷媒の保有熱を、乾燥室内に設置したエアヒータの熱源として供給することにより温度調整を行ない、また乾燥室内に加湿器を設置して湿度調整を行なっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−192464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1等の従来の乾燥装置においては、含水体の乾燥スケジュールに追随した高精度の温湿度制御をヒートポンプ単体で行なうことは難しく、そのため加湿器や除湿機、ヒータ等の機器をヒートポンプとは別に具備する必要があった。これは、基本的なヒートポンプサイクルは加熱量と除湿量の熱バランスが常に一定であるのに対して、含水体の最適な乾燥スケジュールは乾燥過程で加熱量と除湿量の比率が変化するためである。したがって、ヒートポンプサイクルの熱バランスからはずれる加熱量又は除湿量を他の機器で補っていたのが実状である。
【0009】
さらに、ヒートポンプと他の機器とを備える乾燥装置においては、乾燥スケジュールに沿った温湿度制御を行なうために、別系統の複数の機器を統合的に制御する必要があり、制御が困難でまた装置構成が複雑化するという問題があった。
本発明はかかる従来技術の課題に鑑み、ヒートポンプとは別に加湿器や除湿機、ヒータ等の機器を備える必要がなく、含水体の乾燥スケジュールに追随して精度よく温湿度制御することができる含水体の乾燥装置及びその運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明に係る含水体の乾燥装置は、含水体が収納される乾燥室と、ヒートポンプの膨張弁で減圧された一次冷媒の蒸発熱を用いて前記乾燥室から排気された水分含有空気を冷却除湿する冷却除湿器と、前記ヒートポンプの圧縮機から吐出された前記一次冷媒の凝縮熱を用いて前記冷却除湿器から排出された空気を加熱するエアヒータとを備え、温湿度調整された前記空気を前記乾燥室に供給して、前記含水体ごとに設定された最適な加熱量と除湿量とを含む乾燥スケジュールに基づき前記含水体を乾燥する含水体の乾燥装置において、前記ヒートポンプの前記一次冷媒を外気と熱交換する補助熱交換器と、前記補助熱交換器が前記エアヒータと前記膨張弁の間に接続され、該補助熱交換器を放熱手段として機能させる第1の冷媒ラインと、前記冷却除湿器が前記ヒートポンプから切り離されるとともに前記補助熱交換器が前記膨張弁と前記圧縮機の間に接続され、該補助熱交換器を蒸発手段として機能させる第2の冷媒ラインと、前記第1の冷媒ラインと前記第2の冷媒ラインとを切り替える切替手段とを備え、前記乾燥スケジュールの加熱量と除湿量の比率に応じて前記切替手段により前記第1の冷媒ラインと前記第2の冷媒ラインとを切り替えることを特徴とする。
【0011】
本発明では、ヒートポンプの一次冷媒を外気と熱交換する補助熱交換器を設け、この補助熱交換器を第1の冷媒ラインでは放熱手段として、第2の冷媒ラインでは蒸発手段として機能させている。これにより、乾燥室の加熱量と除湿量の比率を調整でき、含水体の乾燥スケジュールに追随して精度よく温湿度制御することが可能となる。さらに、本発明はヒートポンプ単体での温湿度制御が可能であるため、加湿器や除湿機、ヒータ等の他の機器を備える必要がなくなり、装置構成の簡素化が図れる。
【0012】
また、前記冷却除湿器は、前記ヒートポンプの蒸発器で前記一次冷媒により冷却された二次冷媒が循環し、前記二次冷媒と前記水分含有空気とを熱交換して該空気を冷却除湿する構成であり、前記二次冷媒の循環ラインに配設され該二次冷媒を貯留する貯留タンクをさらに備えていることが好ましい。
このように、二次冷媒を貯留する貯留タンクを設けて冷熱を蓄熱することで、除湿量が急増した場合など負荷急変時においても乾燥スケジュールに必要な量の冷熱を供給することが可能となる。
【0013】
また、前記貯留タンク内の前記二次冷媒の温度変化を検出する温度検出手段を有し、前記温度検出手段で検出された温度変化に基づいて前記切替手段により前記第1の冷媒ラインと前記第2の冷媒ラインとを切り替えることが好ましい。
本構成において、冷熱側負荷である冷却除湿器に供給される二次冷媒は、冷却除湿器と貯留タンクとの間を循環しているため、冷熱負荷の変動は貯留タンク内の温度から検出することができる。したがって、貯留タンク内の二次冷媒の温度変化を検出し、この温度変化に基づいて第1の冷媒ラインと第2の冷媒ラインとを切り替えることで、冷熱負荷が変化した場合であっても補助熱交換器を含むヒートポンプでの熱バランスを適切に維持することが可能となる。
【0014】
さらに、前記第2の冷媒ラインに切り替えられた状態で、前記冷却除湿器は前記貯留タンク内の蓄熱により前記水分含有空気を冷却除湿することが好ましい。
このように、ヒートポンプの熱バランスを維持しながら、貯留タンク内に蓄熱された冷熱により冷却除湿を行なうことが可能となる。
【0015】
さらにまた、前記第1の冷媒ラインに切り替えられた状態で、前記補助熱交換器は前記乾燥スケジュールの加熱量と除湿量の比率に応じて作動と停止が切り替えられるように構成されていることが好ましい。
このように、補助熱交換器の作動と停止が切り替えられるように構成することで、乾燥スケジュールの加熱量と除湿量の比率の調整幅を増大させることができる。
【0016】
また、含水体が乾燥室に収納され、前記乾燥室から排気された水分含有空気を冷却除湿器で冷却除湿した後、ヒートポンプの凝縮熱を用いたエアヒータで前記空気を加熱し、この温湿度調整された空気により前記含水体ごとに設定された最適な加熱量と除湿量とを含む乾燥スケジュールに基づいて前記含水体を乾燥する含水体の乾燥装置の運転方法において、前記冷却除湿器は貯留タンクに貯留された二次冷媒が循環する構成となっており、前記二次冷媒を前記ヒートポンプの蒸発器で蒸発潜熱により冷却し、前記冷却除湿器で前記二次冷媒により前記水分含有空気を冷却除湿した後前記エアヒータで加熱する第1の除湿運転工程と、前記冷却除湿器を前記ヒートポンプから切り離し、前記冷却除湿器で前記二次冷媒の蓄熱により前記水分含有空気を冷却除湿した後前記エアヒータで加熱するとともに、前記ヒートポンプの一次冷媒を、前記蒸発器を用いずに補助熱交換器で外気と熱交換して蒸発させる加熱運転工程とを備え、前記乾燥スケジュールの加熱量と除湿量の比率に応じて各運転工程を切り替えることを特徴とする。
【0017】
また、前記貯留タンク内の前記二次冷媒の温度に対する第1の温度しきい値と、前記第1の温度しきい値よりも低い第2の温度しきい値とが予め設定されており、前記貯留タンク内の前記二次冷媒の温度変化を検出し、温度上昇中に前記二次冷媒の温度が前記第1の温度しきい値を超えたら前記第1の除湿運転工程に切り替え、温度下降中に前記二次冷媒の温度が前記第2の温度しきい値を下回ったら前記加熱運転工程に切り替えることが好ましい。
【0018】
さらに、前記第1の除湿運転工程に加えて、前記エアヒータから排出された前記一次冷媒を前記補助熱交換器で外気と熱交換して放熱させる第2の除湿運転工程をさらに備え、前記第1の温度しきい値よりも高い第3の温度しきい値が予め設定されており、前記二次冷媒の温度が前記第3の温度しきい値以上である場合には前記第2の除湿運転工程に切り替えることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
以上記載のように本発明によれば、ヒートポンプの一次冷媒を外気と熱交換する補助熱交換器を設け、この補助熱交換器を第1の冷媒ラインでは放熱手段として、第2の冷媒ラインでは蒸発手段として機能させている。これにより、乾燥室の加熱量と除湿量の比率を調整でき、含水体の乾燥スケジュールに追随して精度よく温湿度制御することが可能となる。さらに、本発明はヒートポンプ単体での温湿度制御が可能であるため、加湿器や除湿機、ヒータ等の他の機器を備える必要がなくなり、装置構成の簡素化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係る含水体の乾燥装置を示す全体構成図である。
【図2】木材の乾燥スケジュールの一例を示すグラフである。
【図3】乾燥スケジュールに対応した温熱量と冷熱量を示すグラフである。
【図4】タンク温度に基づく各運転モードの切り替え制御を説明するグラフである。
【図5】含水体の乾燥装置における一連の運転方法を示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施形態に係る含水体の乾燥装置の基本的な運転方法を示すフローチャートである。
【図7】加熱運転モードを示すフローチャートである。
【図8】除湿運転モードを示すフローチャートである。
【図9】含水体の乾燥装置における第1の除湿運転モードを示す構成図である。
【図10】第1の除湿運転モードの温度領域を示すグラフである。
【図11】第1の除湿運転モードにおけるヒートポンプサイクルのモリエル線図である。
【図12】含水体の乾燥装置における第2の除湿運転工程を示す構成図である。
【図13】第2の除湿運転モードの温度領域を示すグラフである。
【図14】第2の除湿運転モードにおけるヒートポンプサイクルのモリエル線図である。
【図15】含水体の乾燥装置における加熱運転モードを示す構成図である。
【図16】加熱運転モードの温度領域を示すグラフである。
【図17】加熱運転モードにおけるヒートポンプサイクルのモリエル線図である。
【図18】含水体の乾燥装置におけるデフロスト運転モードを示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。本発明の実施形態に係る含水体の乾燥装置は、木材、食品、塗装物等の含水体を人工乾燥する際に用いられる。なお、以下に示す実施形態では、一例として木材を乾燥する場合につき説明する。
【0022】
まず最初に、図1を参照して本発明の実施形態に係る含水体の乾燥装置の全体構成を説明する。
この装置は、主に、木材Wが収納される乾燥室1と、乾燥室1から排気された空気が循環する空気ライン3と、空気ライン3上に配置され、乾燥室1から排気された空気を冷却除湿する冷却除湿器4、及び冷却除湿器4から排出された空気を加熱するエアヒータ15と、このエアヒータ15を含むヒートポンプ10とを備える。
【0023】
ヒートポンプ10は、一次冷媒が流通する冷媒ライン20と、この冷媒ライン上に配置された膨張弁11、蒸発器12、圧縮機14、エアヒータ15からなるヒートポンプサイクルの主要構成と、さらに補助熱交換器16と、冷媒ライン20を切り替える各バルブ22〜24、26〜28とを有する。また好適には、膨張弁11に導入される直前の一次冷媒と、蒸発器12から排出された直後の一次冷媒とを熱交換させる内部熱交換器13を有していてもよい。
また、二次冷媒である水を貯留する水貯留タンク30と、水を循環させることにより冷却除湿器4に蒸発器12の冷熱を供給する水循環ライン31、34とを有する。
【0024】
ヒートポンプ10の冷媒ライン20を循環する一次冷媒には、例えばCO冷媒、アンモニア冷媒、フロン冷媒等等を用いることができるが、本実施形態では特にCO冷媒を用いることが好ましく、さらに好適にはCO冷媒の超臨界サイクルのヒートポンプを用いるとよい。これは、100℃付近の熱源を取り出すことができるためである。
また、二次冷媒には自然冷媒を用いることができるが、本実施形態に示すように水もしくはブラインを用いることが好ましい。
【0025】
次に、各構成要素を詳細に説明する。
乾燥室1には、含水体である木材Wが収納される。好適には、木材Wは、木材間に空気が流通するように互いに間隔をあけて設置されている。乾燥室1内には、空気の循環流が形成されるように仕切り1aが設けられ、仕切り1aで形成される循環流路には乾燥室循環ファン2が配置されている。また、乾燥室1内の温湿度管理のために、温度センサと湿度センサが配置されている。
【0026】
乾燥室1には空気ライン3が接続されており、空気ライン3を含めて乾燥室1は密閉系となっている。空気ライン3は、乾燥室1内を循環して木材Wから生じた水分を含む水分含有空気が排気され、冷却除湿器4で冷却除湿された後、エアヒータ15で加熱されて温湿度調整された空気となって乾燥室1に再度供給される。この空気ライン3を循環する空気は、ファン5によってその循環量が調整される。
ヒートポンプ10には、上述したように、冷媒ライン20に、膨張弁11、蒸発器12、圧縮機14、エアヒータ15、補助熱交換器16、及び各バルブ22〜24、26〜28が介設されている。
【0027】
蒸発器12では、ヒートポンプ10を循環する一次冷媒と、水循環ライン31、34を循環する水とが熱交換される。すなわち、蒸発器12では、膨張弁11で減圧された一次冷媒の蒸発熱により水が冷却される。そして、冷熱を保有する水は水循環ライン31、34を通って冷却除湿器4に送られ、冷却除湿器4で乾燥室1から排気された水分含有空気と水が熱交換されて、水分含有空気が冷却除湿される。
【0028】
ここで、水循環ライン31、34上には水貯留タンク30が介設されており、ここで冷熱が蓄熱されるようになっている。具体的には水循環ラインは、蒸発器12と水貯留タンク30との間を水が循環する第1の水循環ライン34と、水貯留タンク30と冷却除湿器4との間を水が循環する第2の水循環ライン31とを含む。第1の水循環ライン34上にはポンプ35が設けられ、第2の水循環ライン31上にはポンプ32が設けられ、それぞれのポンプ35を制御することにより、冷却除湿器4に供給する冷熱量を制御するようになっている。
【0029】
さらに、第1の水循環ライン34は、蒸発器12をバイパスするバイパスライン34aを有しており、バイパスライン34aの分岐点に三方弁36が配設されている。この三方弁36により、水貯留タンク30から排出された水が蒸発器12を通って水貯留タンク30に戻るラインと、蒸発器12を通らずに水貯留タンク30に戻るラインとが選択的に設定される。同様に、第2の水循環ライン31は、冷却除湿器4をバイパスするバイパスライン31aを有しており、バイパスライン31aの分岐点に三方弁33が配設されている。この三方弁33により、水貯留タンク30から排出された水が冷却除湿器4を通って水貯留タンク30に戻るラインと、冷却除湿器4を通らずに水貯留タンク30に戻るラインとが選択的に設定される。
【0030】
エアヒータ15では、ヒートポンプ10を循環する一次冷媒と、空気ライン3を循環する空気とが熱交換される。すなわち、エアヒータ15では、圧縮機11から吐出された一次冷媒の凝縮熱により、冷却除湿器4から排出された除湿空気が加熱される。
【0031】
補助熱交換器16は、ファン16aで外気を取り込み、外気と一次冷媒とを熱交換する。この補助熱交換器16は、後述する乾燥装置の運転モードによってその機能が切り替えられるようになっている。第1の除湿運転モードにおいて補助熱交換器16は、ファン16aがOFFにされて単なる冷媒通路の一部となる。第2の除湿運転モードにおいて補助熱交換器16は、ファン16aがONにされるとともにエアヒータ15を通過した一次冷媒が供給され、一次冷媒を外気によりさらに冷却する放熱手段として機能する。加熱運転モードにおいては、ファン16aがONにされるとともに膨張弁11で減圧された一次冷媒が供給され、一次冷媒を外気により加温して蒸発させる蒸発手段として機能する。
【0032】
ここで、各運転モードを実現するための冷媒ライン20について説明する。
冷媒ライン20は、第1の除湿運転モード及び第2の除湿運転モードを含む除湿運転モードを実現する第1の冷媒ライン21(図9、図12参照)と、加熱運転モードを実現する第2の冷媒ライン22(図15参照)とを有している。
なお、図1、図9、図12、図15に示す冷媒ラインは、上記した各運転モードを実現するための冷媒ライン構成の一例である。
【0033】
第1の冷媒ライン21は、補助熱交換器16がエアヒータ15と膨張弁11の間に接続される構成となっており、補助熱交換器16を放熱手段として機能させるものである。
第2の冷媒ライン22は、冷却除湿器4(及び蒸発器12)がヒートポンプ10から切り離されるとともに補助熱交換器16が膨張弁11と圧縮機14の間に接続され、補助熱交換器16を蒸発手段として機能させるものである。
【0034】
図1を参照して、具体的には冷媒ライン20は、膨張弁11、蒸発器12、内部熱交換器13、圧縮機14、エアヒータ15、補助熱交換器16、内部熱交換器13、膨張弁11を順に通るライン201を有している。また、蒸発器12−内部熱交換器13間のライン201と補助熱交換器16−内部熱交換器13間のライン201とを接続するライン202と、膨張弁11−蒸発器12間のライン201とエアヒータ15−補助熱交換器16間のライン201とを接続するライン203とを有している。さらに、エアヒータ15−補助熱交換器16間のライン201と補助熱交換器16−内部熱交換器13間のライン201とを接続するライン204を有している。なお、このライン204のエアヒータ15−補助熱交換器16間の接続部は、ライン203の接続部よりエアヒータ15側に位置する。
【0035】
また、冷媒ライン20における各バルブの配置構成は以下のようになっている。
ライン201上には、膨張弁11−蒸発器12間にバルブ22が設けられ、エアヒータ15−補助熱交換器16間にバルブ23が設けられ、補助熱交換器16−内部熱交換器13間にバルブ24が設けられている。なお、バルブ22はライン203の接続部より蒸発器12側に位置し、バルブ23はライン204の接続部とライン203の接続部との間に位置し、バルブ24はライン202の接続部より内部熱交換器13側に位置する。
ライン202上には、バルブ26が設けられている。
ライン203上には、バルブ27が設けられている。
ライン204上には、バルブ28が設けられている。
【0036】
そして、上記構成を有する冷媒ライン20において、図9及び図12に示す第1の冷媒ライン21を形成するためには、バルブ22、バルブ23、バルブ24を開にし、バルブ26、バルブ27、バルブ28を閉にする。一方、第2の冷媒ライン22を形成するためには、バルブ22、バルブ23、バルブ24を閉にし、バルブ26、バルブ27、バルブ28を開にする。各バルブの開閉制御は、制御手段40によって行なわれる。
【0037】
制御手段40では、除湿運転モードを実現する第1の冷媒ライン21と、加熱運転モードを実現する第2の冷媒ライン22とを、木材Wの乾燥スケジュールの加熱量(温熱量)と除湿量(冷熱量)の比率に応じて各バルブを開閉制御することにより切り替えるようになっている。
ここで乾燥スケジュールとは木材を乾燥する条件の予定表であり、木材Wごとに設定された最適な加熱量と除湿量の時系列目標値で表される。乾燥スケジュールは、樹種や木材厚さ等により異なるもので、予め設定されている。
【0038】
図2に乾燥スケジュールの一例を示す。
目標温度は、乾燥時間が進むにつれて徐々に上昇するが、乾燥初期に比べて乾燥後期は温度上昇幅が小さくなっている。
目標湿度は、乾燥時間が進むにつれて徐々に下降するが、乾燥初期に比べて乾燥後期は湿度下降幅が小さくなっている。
このような目標温度、目標湿度となるように乾燥室1内の温湿度調整を行なう。
【0039】
図3は、上記した乾燥スケジュールを実現する際に必要とされる温熱量と冷熱量を示すグラフである。これは、実際にヒートポンプ10の運転に関わる数値である。乾燥スケジュールに沿って適正に温湿度調整しようとすると、同グラフに示されるように温熱量と冷熱量との熱バランスが変動する。すなわち、冷却除湿後の除湿空気の加熱量と、乾燥室1から排気された水分含有空気の除湿量とが一定の比率であれば従来のヒートポンプ10での一定運転が可能であるが、加熱量と除湿量との比率が変動するとヒートポンプ単体での温湿度調整ができなくなる。
したがって本実施形態では、乾燥スケジュールの温熱量と冷熱量の比率に応じて除湿運転モードと加熱運転モードとを切り替えることにより、ヒートポンプ10にて熱バランスの変動を吸収できるようになっている。
【0040】
図1に示すような装置構成とした場合、乾燥スケジュールの温熱量と冷熱量の熱バランスは水貯留タンク30内の水の温度により検出することができる。冷却除湿後の除湿空気の加熱量に対して、乾燥室1から排気された水分含有空気の除湿量が多ければ水貯留タンク30内の水温が上がり、除湿量が少なければ水貯留タンク30内の水温が下がる。
そこで、本実施形態では、水貯留タンク30内の水温を温度センサ39で検出し、検出温度に基づいて制御手段40により各運転モードを切り替える構成としている。
【0041】
図4はタンク温度に基づく各運転モードの切り替え制御を説明するグラフである。
ここでは、貯留タンク30内の水温に対する第1の温度しきい値(上限Th)と、この第1の温度しきい値よりも低い第2の温度しきい値(下限Tc)とを予め設定しておき、
温度上昇中に検出温度が上限Thを超えたら第1の除湿運転モードに切り替え、温度下降中に検出温度が下限Tcを下回ったら加熱運転モードに切り替える制御を行なう。さらに好ましくは、上限Thよりも高い第3の温度しきい値(放熱温度Ta)を設定しておき、第1の除湿運転モード中に検出温度が放熱温度Taを超えたら第2の除湿運転モードに切り替える。
【0042】
次に、本実施形態に係る装置の運転方法について説明する。
図5は一連の運転方法を示すフローチャートである。乾燥装置の運転を開始したら、立ち上げ運転モードに設定する。立ち上げ運転モードでは、例えば、第2の冷媒ライン22に設定して、蒸発器12の代わりに補助熱交換器16に一次冷媒が導入されて、外気から蒸発潜熱を得るようにする。運転初期は、乾燥室1内の空気は外気に近い状態であり、これを70℃程度の乾燥温度及び相対湿度100%まで数時間で急速上昇させる必要がある。このため、運転開始時には立ち上げ運転モードに設定し、上記したように補助熱交換器16に一次冷媒を導入して外気から蒸発潜熱を採熱する立ち上げ運転工程を実施するとよい。
【0043】
立ち上げ運転モードに設定されて立ち上げ運転工程を実施し、乾燥室1内を急速昇温、急速加湿し、温度70℃及び相対湿度100%の雰囲気とした後、スケジュール乾燥運転工程を実施する。スケジュール乾燥運転工程は、乾燥スケジュールに基づいた運転であり、第1の除湿運転モードと第2の除湿運転モードと加熱運転モードとデフロスト運転モードとを含む。各運転モードにおける詳細な構成は後述するが、水貯留タンク30内の検出温度に基づいて、制御装置40により各バルブを開閉制御して各運転モードを切り替える。
乾燥スケジュールに対応した乾燥運転が終了したら、停止運転モードに設定して運転を終了させる。
【0044】
より具体的な運転方法を説明する。
図6は乾燥装置の基本的な運転方法を示すフローチャートで、図7は加熱運転モードを示すフローチャートで、図8は除湿運転モードを示すフローチャートである。
図6に示すように、制御手段40にて立ち上げ運転モードAからスケジュール乾燥運転モードの運転指令がONとなったら、制御手段40は水貯留タンク30内の検出温度T0と上限Thとを比較し、検出温度T0が上限Th以上である場合には除湿運転モードに切り替え、検出温度T0が上限Th未満である場合には加熱運転モードに切り替える。
【0045】
図7に示すように、加熱運転モードでは、加熱運転モードの運転指令がONであるか否かを判断し、ONとなっていない場合には図6のAに戻る。ONとなっている場合には加熱運転工程を実施し、水貯留タンク30内の検出温度T0が上限Th以上となったら除湿運転モードに切り替える。
【0046】
図8に示すように、除湿運転モードでは、除湿運転モードの運転指令がONであるか否かを判断し、ONとなっていない場合には図6のAに戻る。ONとなっている場合には除湿運転工程を実施する。このとき、水貯留タンク30内の検出温度T0が上限Th未満である場合には、さらに検出温度T0と下限Tcとを比較して、検出温度T0が下限Tc以下となったら加熱運転モードに切り替える。
一方、検出温度T0が上限Th以上である場合には、第1の除湿運転モードに設定して、補助熱交換器16の補助ファン16をOFFにした第1の除湿運転工程を実施する。さらに、この状態で検出温度T0が放熱温度Taを超えたら第2の除湿運転モードに設定して、補助ファン16をONにした第2の除湿運転工程を実施する。検出温度T0が放熱温度Taを超えない場合には、補助ファン16はOFFにしたままである。
【0047】
なお、第1の温度しきい値である上限Thは、圧縮機14の運転条件と、蒸発器12の容量とに基づいて設定されることが好ましい。これにより、圧縮機14の定圧を高く設定することができ、運転効率が向上する。第2の温度しきい値である下限Tcは、一次冷媒、二次冷媒が凍結しない温度に基づき設定されることが好ましい。第3の温度しきい値であるTaは、補助熱交換器16の能力によって設定されることが好ましい。
【0048】
次いで、各運転モードについて、その構成と作用を詳細に説明する。
図9は第1の除湿運転モードを示す乾燥装置の構成図である。なお、第1の除湿運転モードは、図10のタンク温度(T)と運転時間(t)のグラフにおけるハッチングで示された領域で実施される。このモードは、基本的なヒートポンプ要素(圧縮機、エアヒータ、膨張弁、蒸発器)で生成される加熱量と除湿量の熱バランスが取れている場合に用いられる。
図9を参照して、第1の除湿運転モードでは、制御装置40により各バルブを切り替えて、第1の冷媒ライン21が形成されている。また、補助熱交換器16はOFFとなっている。
【0049】
第1の除湿運転モードに設定されたときの運転工程を以下に示す。
乾燥室1から排気された空気は、空気ライン3を通って冷却除湿器4に導入され、ここで水循環ライン31、34を循環する水と熱交換することにより冷却除湿された後、エアヒータ15で加熱されて乾燥室1に戻される。乾燥室1に戻される空気の温度と湿度は、エアヒータ15出口又は乾燥室1内の空気循環流の上流側に配置された温度センサ及び湿度センサで検出される。さらにこの検出温度及び検出湿度に基づいて、制御手段40により、主にファン5及び/又は圧縮機14を制御することにより乾燥室1内の空気が適切な温度及び湿度となるように調整する。
【0050】
ヒートポンプ10では、膨張弁11で減圧された一次冷媒の蒸発熱により蒸発器12で二次冷媒である水を冷却し、その後低圧気体の一次冷媒は、膨張弁11に導入される高圧液体の一次冷媒と内部熱交換器13で熱交換され、さらに低圧気体の一次冷媒は圧縮機14で圧縮されて高温高圧気体となりエアヒータ15に供給される。高温高圧気体の一次冷媒はエアヒータ15にて除湿空気を加熱して温熱が奪われることにより高圧液体となり、補助熱交換器16、内部熱交換器13を通って膨張弁11に導入される。このとき、補助熱交換器16はOFFとなっているため、単なる冷媒ライン20の一部として一次冷媒が通過する。
水循環ライン31、34では、ポンプ32、35が作動して水タンク30と蒸発器12間、及び水タンク30と冷却除湿器4間にそれぞれ水が循環するようになっている。
【0051】
図11は第1の除湿運転モードにおけるヒートポンプサイクルのモリエル線図である。図11の縦軸と横軸がそれぞれ圧力Pとエンタルピーhを表している。同図からわかるように、第1の除湿運転モードで得られる冷熱量と加熱量(温熱量)は、基本的なヒートポンプ要素から構成されるヒートポンプと同様である。
【0052】
図12は第2の除湿運転モードを示す乾燥装置の構成図である。なお、第2の除湿運転モードは、図13のタンク温度(T)と運転時間(t)のグラフにおけるハッチングで示された領域で実施される。このモードは、基本的なヒートポンプ要素(圧縮機、エアヒータ、膨張弁、蒸発器)で生成される加熱量と除湿量の熱バランスにおいて、除湿量が大きい場合に用いられる。
図12を参照して、第2の除湿運転モードでは、制御装置40により各バルブを切り替えて、第1の冷媒ライン21が形成されている。また、補助熱交換器16はONとなっている。
【0053】
第2の除湿運転モードに設定されたときの運転工程を以下に示す。
乾燥室1内空気は、第1の除湿運転モードと同様に、空気ライン3を通って循環し、冷却除湿器4で冷却除湿された後、エアヒータ15で加熱されて乾燥室1に戻される。
ヒートポンプ10も第1の除湿運転モードと同様の構成、作用を有するが、補助熱交換器16の補助ファン16aがONとなっているため、エアヒータ15から排出された空気は補助熱交換器16で外気と熱交換されて冷却される。
水循環ライン31、34も第1の除湿運転モードと同様である。
【0054】
図14は第1の除湿運転モードにおけるヒートポンプサイクルのモリエル線図である。同図からわかるように、補助熱交換器16にて一次冷媒を外気で冷却しているため、補助熱交換器16における放熱量の分だけ冷熱量(除湿量)が増加する。
【0055】
図15は加熱モードを示す乾燥装置の構成図である。なお、加熱運転モードは、図16のタンク温度(T)と運転時間(t)のグラフにおけるハッチングで示された領域で実施される。このモードは、基本的なヒートポンプ要素(圧縮機、エアヒータ、膨張弁、蒸発器)で生成される加熱量と除湿量の熱バランスに比べて、加熱量が大きい場合に用いられる。
図15を参照して、加熱運転モードでは、制御装置40により各バルブを切り替えて、第2の冷媒ライン22が形成されている。また、補助熱交換器16はONとなっている。
【0056】
加熱運転モードに設定されたときの運転工程を以下に示す。
乾燥室1内空気は、第1、第2の除湿運転モードと同様に、空気ライン3を通って循環し、冷却除湿器4で冷却除湿された後、エアヒータ15で加熱されて乾燥室1に戻される。
【0057】
ヒートポンプ10では、膨張弁11で減圧された一次冷媒は、蒸発器12に導入されず補助熱交換器16に導入される。補助熱交換器16では、外気により一次冷媒が加温されて蒸発し、低圧気体の一次冷媒は内部熱交換器13を通って圧縮機14に導入される。圧縮機14で圧縮された高温高圧気体の一次冷媒はエアヒータ15に導入される。エアヒータでは一次冷媒により除湿空気を加熱して温熱が奪われることによって一次冷媒は高圧液体となり、内部熱交換器13を通って膨張弁11に導入される。
【0058】
水循環ライン31、34では、ポンプ32が作動して水貯留タンク30と冷却除湿器4間を水が循環するようになっている。ポンプ35は停止して、蒸発器12内には水が循環しないようになっている。またこのとき、ポンプ35を停止せず、三方弁36により蒸発器12をバイパスして水が蒸発器12を通過しないように循環させてもよい。
このとき、水には新たな冷熱が供給されないが、水貯留タンク30の蓄熱により空気の冷却除湿を行なうようになっている。
【0059】
図17は加熱運転モードにおけるヒートポンプサイクルのモリエル線図である。同図からわかるように、蒸発器12の変わりに補助熱交換器16で得られる冷熱量によって冷凍サイクルが成立している。補助熱交換器16は外気によって一次冷媒を冷却する構成となっており、空気は水に比べて熱伝導率が低いため冷熱量も小さくなる。このため、基本的なヒートポンプ要素(圧縮機、エアヒータ、膨張弁、蒸発器)で生成される加熱量と除湿量の熱バランスに比べて冷熱量が小さい、すなわち加熱量を大きくすることができる。
【0060】
図18はデフロスト運転モードを示す乾燥装置の構成図である。このモードは、加熱運転時(立ち上げ運転時)にのみ設定される。具体的には、加熱運転において、蒸発温度を検出し、蒸発温度が予め設定された設定値よりも小さい場合に、所定時間デフロスト運転工程を実施するものである。
図9を参照して、デフロスト運転モードでは、制御装置40により各バルブを切り替えて、第1の冷媒ライン21が形成されている。また、補助熱交換器16はONとなっている。
【0061】
デフロスト運転モードに設定されたときの運転工程を以下に示す。
空気ライン3のファン5は停止され、空気の循環を停止する。
ヒートポンプ10では、膨張弁11で減圧された一次冷媒の蒸発熱により蒸発器12で二次冷媒である水を冷却し、その後低圧気体の一次冷媒は、膨張弁11に導入される高圧液体の一次冷媒と内部熱交換器13で熱交換され、さらに低圧気体の一次冷媒は圧縮機14で圧縮されて高温高圧気体となりエアヒータ15に供給される。ここで、エアヒータ15には空気が流通していないため、エアヒータ15は単なる冷媒ラインの一部となる。エアヒータ15を通過した一次冷媒は補助熱交換器16に導入され、外気により冷却されて凝縮し、高圧液体となり内部熱交換器13を通って膨張弁11に導入される。
水循環ライン31、34では、ポンプ32が停止してポンプ35が作動し、水貯留タンク30と蒸発器12間のみを水が循環するようになっている。これにより、エアヒータ15の除霜を行なうことができる。
【0062】
上述したように本実施形態によれば、ヒートポンプ10の一次冷媒を外気と熱交換する補助熱交換器16を設け、この補助熱交換器16を第1の冷媒ライン21では放熱手段として、第2の冷媒ライン22では蒸発手段として機能させることにより、乾燥室1の加熱量と除湿量の比率を調整でき、含水体の乾燥スケジュールに追随して精度よく温湿度制御することが可能となる。さらに、本実施形態ではヒートポンプ単体での温湿度制御が可能であるため、加湿器や除湿機、ヒータ等の他の機器を備える必要がなくなり、装置構成の簡素化が図れる。
【0063】
また、水を貯留する水貯留タンク30を設けて冷熱を蓄熱することで、除湿量が急増した場合など負荷急変時においても乾燥スケジュールに必要な量の冷熱を供給することが可能となる。さらに、加熱運転モードにおいては、水貯留タンク30に蓄熱された冷熱により冷却除湿を行なうことが可能となる。
さらにまた、補助熱交換器16の作動と停止が切り替えられるように構成することで、乾燥スケジュールの加熱量と除湿量の比率の調整幅を増大させることができる。
また、水貯留タンク30内の温度に基づいて運転モードを切り替えるようにしたため、正確に且つ簡単にヒートポンプ10の熱バランス制御を行なうことが可能となる。
【0064】
なお、上記した実施形態においては、一例として木材の乾燥について説明したが、乾燥対象となる含水体はこれに限定されるものではなく、他にも食品、塗装物等のように、乾燥スケジュールを有する含水体全般に適用できる。例えば、干物を製造する場合においては、アジのような小さな魚とホッケのような大きな魚を乾燥させる場合では、乾燥スケジュールが異なる。これは、大きな魚を急速に乾燥させると内部に比べて表面が乾きすぎてしまうためである。したがって、それぞれの魚種や大きさ等に応じた乾燥スケジュールに基づいて、加熱量と除湿量を適宜調整して乾燥を行なう。このとき、本実施形態のように、第1の除湿運転モード、第2の除湿運転モード、加熱運転モードを適宜切り替えて最適な加熱量と除湿量となるように温湿度調整することで、高品質の干物を製造可能となる。
【符号の説明】
【0065】
1 乾燥室
3 空気ライン
4 冷却除湿器
10 ヒートポンプ
11 膨張弁
12 蒸発器
14 圧縮機
15 エアヒータ
16 補助熱交換器
20 冷媒ライン
21 第1の冷媒ライン
22 第2の冷媒ライン
30 水貯留タンク
31、34 水循環ライン
32、35 ポンプ
39 温度センサ
40 制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
含水体が収納される乾燥室と、ヒートポンプの膨張弁で減圧された一次冷媒の蒸発熱を用いて前記乾燥室から排気された水分含有空気を冷却除湿する冷却除湿器と、前記ヒートポンプの圧縮機から吐出された前記一次冷媒の凝縮熱を用いて前記冷却除湿器から排出された空気を加熱するエアヒータとを備え、温湿度調整された前記空気を前記乾燥室に供給して、前記含水体ごとに設定された最適な加熱量と除湿量とを含む乾燥スケジュールに基づき前記含水体を乾燥する含水体の乾燥装置において、
前記ヒートポンプの前記一次冷媒を外気と熱交換する補助熱交換器と、
前記補助熱交換器が前記エアヒータと前記膨張弁の間に接続され、該補助熱交換器を放熱手段として機能させる第1の冷媒ラインと、
前記冷却除湿器が前記ヒートポンプから切り離されるとともに前記補助熱交換器が前記膨張弁と前記圧縮機の間に接続され、該補助熱交換器を蒸発手段として機能させる第2の冷媒ラインと、
前記第1の冷媒ラインと前記第2の冷媒ラインとを切り替える切替手段とを備え、
前記乾燥スケジュールの加熱量と除湿量の比率に応じて前記切替手段により前記第1の冷媒ラインと前記第2の冷媒ラインとを切り替えることを特徴とする含水体の乾燥装置。
【請求項2】
前記冷却除湿器は、前記ヒートポンプの蒸発器で前記一次冷媒により冷却された二次冷媒が循環し、前記二次冷媒と前記水分含有空気とを熱交換して該空気を冷却除湿する構成であり、
前記二次冷媒の循環ラインに配設され該二次冷媒を貯留する貯留タンクをさらに備えていることを特徴とする請求項1に記載の含水体の乾燥装置。
【請求項3】
前記貯留タンク内の前記二次冷媒の温度変化を検出する温度検出手段を有し、
前記温度検出手段で検出された温度変化に基づいて前記切替手段により前記第1の冷媒ラインと前記第2の冷媒ラインとを切り替えることを特徴とする請求項1又は2に記載の含水体の乾燥装置。
【請求項4】
前記第2の冷媒ラインに切り替えられた状態で、前記冷却除湿器は前記貯留タンク内の蓄熱により前記水分含有空気を冷却除湿することを特徴とする請求項2又は3に記載の含水体の乾燥装置。
【請求項5】
前記第1の冷媒ラインに切り替えられた状態で、前記補助熱交換器は前記乾燥スケジュールの加熱量と除湿量の比率に応じて作動と停止が切り替えられるように構成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の含水体の乾燥装置。
【請求項6】
含水体が乾燥室に収納され、前記乾燥室から排気された水分含有空気を冷却除湿器で冷却除湿した後、ヒートポンプの凝縮熱を用いたエアヒータで前記空気を加熱し、この温湿度調整された空気により前記含水体ごとに設定された最適な加熱量と除湿量とを含む乾燥スケジュールに基づいて前記含水体を乾燥する含水体の乾燥装置の運転方法において、
前記冷却除湿器は貯留タンクに貯留された二次冷媒が循環する構成となっており、
前記二次冷媒を前記ヒートポンプの蒸発器で蒸発潜熱により冷却し、前記冷却除湿器で前記二次冷媒により前記水分含有空気を冷却除湿した後前記エアヒータで加熱する第1の除湿運転工程と、
前記冷却除湿器を前記ヒートポンプから切り離し、前記冷却除湿器で前記二次冷媒の蓄熱により前記水分含有空気を冷却除湿した後前記エアヒータで加熱するとともに、前記ヒートポンプの一次冷媒を、前記蒸発器を用いずに補助熱交換器で外気と熱交換して蒸発させる加熱運転工程とを備え、
前記乾燥スケジュールの加熱量と除湿量の比率に応じて各運転工程を切り替えることを特徴とする含水体の乾燥装置の運転方法。
【請求項7】
前記貯留タンク内の前記二次冷媒の温度に対する第1の温度しきい値と、前記第1の温度しきい値よりも低い第2の温度しきい値とが予め設定されており、
前記貯留タンク内の前記二次冷媒の温度変化を検出し、温度上昇中に前記二次冷媒の温度が前記第1の温度しきい値を超えたら前記第1の除湿運転工程に切り替え、温度下降中に前記二次冷媒の温度が前記第2の温度しきい値を下回ったら前記加熱運転工程に切り替えることを特徴とする請求項6に記載の含水体の乾燥装置の運転方法。
【請求項8】
前記第1の除湿運転工程に加えて、前記エアヒータから排出された前記一次冷媒を前記補助熱交換器で外気と熱交換して放熱させる第2の除湿運転工程をさらに備え、
前記第1の温度しきい値よりも高い第3の温度しきい値が予め設定されており、
前記二次冷媒の温度が前記第3の温度しきい値以上である場合には前記第2の除湿運転工程に切り替えることを特徴とする請求項7に記載の含水体の乾燥装置の運転方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−52744(P2012−52744A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−196128(P2010−196128)
【出願日】平成22年9月1日(2010.9.1)
【出願人】(000148357)株式会社前川製作所 (267)
【Fターム(参考)】