含水吸水性ポリマー含有樹脂組成物及びこれを用いた多孔質物、絶縁電線及びその製造方法並びに同軸ケーブル
【課題】環境にやさしく容易に多孔質物を製造可能な含水吸水性ポリマー含有樹脂組成物を提供する。
【解決手段】液状架橋硬化型樹脂組成物に予め吸水させ膨潤させた吸水性ポリマーを分散させた含水吸水性ポリマー含有樹脂組成物であって、前記吸水性ポリマーの吸水膨潤前の平均粒子径が10μm以下であり、吸水性ポリマーの吸水量が10〜100g/gであるものである。
【解決手段】液状架橋硬化型樹脂組成物に予め吸水させ膨潤させた吸水性ポリマーを分散させた含水吸水性ポリマー含有樹脂組成物であって、前記吸水性ポリマーの吸水膨潤前の平均粒子径が10μm以下であり、吸水性ポリマーの吸水量が10〜100g/gであるものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含水吸水性ポリマー含有樹脂組成物及びこれを用いた多孔質物、絶縁電線及びその製造方法並びに同軸ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療分野をはじめとする精密電子機器類や通信機器類の小型化や高密度実装化が進むなかで、これらに使用される電線・ケーブルもますます細径化が図られている。
【0003】
さらに信号線等では、伝送信号の一層の高速化を求める傾向が顕著であり、これに使用される電線の絶縁体層を薄くかつ可能な限り低誘電率化することにより伝送信号の高速化を図ることが望まれている。
【0004】
この絶縁体には従来、ポリエチレンやフッ素樹脂などの誘電率の低い絶縁材料を発泡させたものが使われている。発泡絶縁体層の形成には、予め発泡させたフィルムを導体上に巻き付ける方法や押出方式が知られており、特に押出方式が広く用いられている。
【0005】
発泡を形成する方法としては、大きく物理的な発泡方法と化学的な発泡方法に分けられる。
【0006】
物理的な発泡方法としては、液体フロンのような揮発性発泡用液体を溶融樹脂中に注入し、その気化圧により発泡させる方法や窒素ガス、炭酸ガスなど押出機中の溶融樹脂に直接気泡形成用ガスを圧入させることにより一様に分布した細胞状の微細な独立気泡体を樹脂中に発生させる方法などがある。
【0007】
化学的な発泡方法としては、樹脂中に発泡剤を分散混合した状態で成形し、その後熱を加えることにより発泡剤の分解反応を発生させ、分解により発生するガスを利用して発泡させることが良く知られている。
【0008】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、次のものがある。
【0009】
【特許文献1】特開昭58−62024号公報
【特許文献2】特開昭57−170725号公報
【特許文献3】特開平3−185063号公報
【特許文献4】特開平11−5863号公報
【特許文献5】特開平11−100457号公報
【特許文献6】特許第3717942号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、溶融樹脂中に揮発性発泡用液体を注入する方法では、気化圧が強く、気泡の微細形成が難しく薄肉成形に限界がある。また、揮発性発泡用液体の注入速度が遅いために、高速製造化が難しく、生産性に劣るという問題もある。さらに、押出機中で直接気泡形成用ガスを圧入する方法は、細径薄肉押出形成に限界があること、安全面で特別な設備や技術を必要とするため、生産性に劣ることや製造コストの上昇を招いてしまう問題がある。
【0011】
一方、化学発泡方法は、予め樹脂中に発泡剤を混練し、分散混合し、成形加工後に熱により発泡剤を反応分解させて発生したガスにより発泡をさせるため、樹脂の成形加工温度を、発泡剤の分解温度より低く保持しなければならない問題がある。さらに、素線の径が細くなると、押出被覆では樹脂圧により断線が起こりやすく、高速化が難しくなるという別の問題もある。
【0012】
また、フロン、ブタン、炭酸ガス等を用いる物理発泡は環境負荷が大きい問題や、化学発泡に用いる発泡剤は価格が高いといった問題がある。
【0013】
そこで、本発明の目的は、上記の問題点を解決するために、環境にやさしく容易な含水吸水性ポリマー含有樹脂組成物及びこれを用いた多孔質物、絶縁電線及びその製造方法並びに同軸ケーブルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は上記目的を達成するために創案されたものであり、請求項1の発明は、液状架橋硬化型樹脂組成物に予め吸水させ膨潤させた吸水性ポリマーを分散させた含水吸水性ポリマー含有樹脂組成物であって、前記吸水性ポリマーの吸水膨潤前の平均粒子径が10μm以下であり、吸水性ポリマーの吸水量が10〜100g/gである含水吸水性ポリマー含有樹脂組成物である。
【0015】
請求項2の発明は、前記液状架橋硬化型樹脂組成物が、紫外線又は熱によって硬化する組成物である請求項1に記載の含水吸水性ポリマー含有樹脂組成物である。
【0016】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の含水吸水性ポリマー含有樹脂組成物を、架橋することにより硬化させた後、その硬化させた含水吸水性ポリマー含有樹脂組成物を加熱して前記吸水性ポリマーの水分を除去して形成した多孔質物である。
【0017】
請求項4発明は、請求項1又は2に記載の含水吸水性ポリマー含有樹脂組成物を導体の外周に被覆し、その含水吸水性ポリマー含有樹脂組成物を硬化させた後、その硬化させた含水吸水性ポリマー含有樹脂組成物を加熱して前記吸水性ポリマーの水分を除去して絶縁層を形成した絶縁電線である。
【0018】
請求項5の発明は、前記絶縁層の厚さが100μm以下であり、前記絶縁層の空隙率が20%〜60%である請求項4に記載の絶縁電線である。
【0019】
請求項6の発明は、前記絶縁層の空隙を形成する空孔の断面が略円形であり、その最大径部と最小径部との比が2以下であり、厚さ方向の空孔径Dが前記絶縁層の厚さtに対して、D<1/2tで形成される請求項5に記載の絶縁電線である。
【0020】
請求項7の発明は、請求項4〜6いずれかに記載の絶縁電線の外周に金属層を設けた同軸ケーブルである。
【0021】
請求項8の発明は、導体の外周に、液状架橋硬化型樹脂組成物に予め吸水し膨潤した吸水性ポリマーを分散した含水吸水性ポリマー含有樹脂組成物を被覆して絶縁層を形成し、この絶縁層を架橋することにより前記含水吸水性ポリマー含有樹脂組成物を硬化し、さらに加熱することにより、吸水性ポリマーの水分を除去して前記絶縁層の中に空孔を形成する絶縁電線の製造方法である。
【0022】
請求項9の発明は、前記加熱にマイクロ波加熱を用いる請求項8に記載の絶縁電線の製造方法である。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、フロン、ブタン、炭酸ガス等を用いた物理発泡を要しないので環境にやさしく、容易に多孔質物を形成できる材料が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の好適な実施形態を添付図面にしたがって説明する。
【0025】
本実施形態に係る含水吸水性ポリマー含有樹脂組成物は、液状架橋硬化型樹脂組成物に予め吸水させ膨潤させた吸水性ポリマーを分散させてなる。この吸水性ポリマーの吸水膨潤前の平均粒子径は、10μm以下であり、好ましくは平均粒子径が0.5〜5μmの範囲が良く、さらに好ましくは平均粒子径が1μmとすると良い。
【0026】
吸水性ポリマーの吸水前の平均粒子径を10μm以下とするのは、吸水性ポリマーの吸水前の平均粒子径が10μmより大きいと、吸水させた場合に、体積が数倍〜数十倍と大きくなるため、吸水させた吸水ポリマーを液状架橋硬化型樹脂組成物に分散させることが難しくなるほか、100μm以下の薄膜形成、微細な多孔質膜形成が難しくなるためである。吸水性ポリマーの膨潤倍率は粒子径の5倍以下が良く、吸水膨潤した含水吸水性ポリマーの大きさとしては1〜50μmが良い。吸水性ポリマーの吸水量は10〜100g/gであり、好ましくは20〜60g/gとすると良い。
【0027】
吸水性ポリマーの吸水量とは、吸水性ポリマー1gあたりに吸水する水の量であり、吸水量を10〜100g/gとするのは、吸水量が10g/gより少ないと、高い空隙率を得る際には吸水性ポリマーの添加量を多くする必要があり、コスト面や機械的特性面での問題や空孔形成効率の低下が生じやすくなるためであり、吸水量が100g/gより多いと、脱水効率が低下することや微細な空孔形成が難しくなるためである。
【0028】
液状架橋硬化型樹脂組成物とは、紫外線、熱、電子線、可視光などにより硬化するもので、特に限定するものではないが、好ましくは紫外線や熱、あるいは併用で架橋硬化する樹脂組成物が良く、さらに好ましくは紫外線架橋硬化型樹脂組成物が良い。液状架橋硬化型樹脂組成物としては、エチレン系、ウレタン系、シリコーン系、フッ素系、エポキシ系、ポリエステル系、ポリカーボネート系など公知の液状架橋硬化型樹脂組成物を選択できるが、液状架橋硬化型樹脂組成物の誘電率として4以下、好ましくは3以下のものが良い。
【0029】
吸水性ポリマーとは、非常に良く水を吸い込み、保水力が強いため多少の圧力を加えても吸水した水を放出しない高分子物質で、例えばデンプン−アクリロニトリルグラフト重合体の加水分解物、デンプン−アクリル酸グラフト重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体の加水分解物、ポリアクリル酸塩架橋体、カルボキシメチル化セルロース、ポリアルキレンオキサイド系樹脂、ポリアクリルアミド系樹脂等があり、好ましくはポリアルキレンオキサイド系樹脂、ポリアクリルアミド系樹脂が電気絶縁性面で良いが、用途、使用量によってはこの限りではなく、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0030】
吸水性ポリマーに吸水させるには、吸水性ポリマーの吸水量あるいはそれ以上の水を加えて吸水させることが良い。吸水量より少ない水を吸水させると吸水性ポリマー粒子間の吸水量が不均一になりやすいためである。
【0031】
吸水性ポリマーに吸水させる他の方法として、水が可溶で、且つ吸水性ポリマーが不溶な溶媒を用い、吸水性ポリマーの吸水量より少ない量の水を均一に吸水させるように調整しても良い。
【0032】
吸水性ポリマーの添加量は、0.1〜10質量部の範囲が良く、好ましくは0.5〜5質量部の範囲が良く、さらに好ましくは0.5〜3質量部の範囲が良い。吸水性ポリマーの添加量を0.1〜10質量部の範囲とするのは、吸水性ポリマーの添加量が10質量部より多くなると、吸水させて分散させた場合に、膜形成が困難になるほか、機械的特性が得られなくなり、吸水性ポリマーの添加量が、0.1質量部より少ないと、十分な多孔質形成効果が得られなくなるためである。吸水性ポリマーが添加されたとき、液状架橋硬化型樹脂組成物中の含水率が25〜65%で調整されていることが好ましい。
【0033】
吸水膨潤させた吸水性ポリマーを分散させるのは、空孔のサイズや形状が、吸水性ポリマーの粒子径と吸水量で制御できることや、吸水膨潤によりゲル状となった吸水性ポリマーが水を多く含み、水と液状架橋硬化型樹脂組成物とは非相溶なので、撹拌分散の際に、独立分散しやすく、且つ球状となって分散しやすくなるからである。このため硬化後の脱水によって得られる空孔形状を球に近い形状とすることができ、つぶれに対して強いものが得られやすくなる。
【0034】
含水吸水性ポリマー含有樹脂組成物には、必要に応じて分散剤、レベリング剤、カップリング剤、着色剤、難燃剤、酸化防止剤、電気絶縁性向上剤、充填剤など公知のものを加えて用いることができる。
【0035】
吸水性ポリマーは空孔のサイズや形状が、吸水性ポリマーの粒子径と吸水量で調整でき、さらに予め液状架橋硬化型樹脂組成物に空孔となる部分が形成された状態で被覆を形成できることから空孔のサイズや形状の制御が容易にできる。
【0036】
本実施形態に係る含水吸水性ポリマー含有樹脂組成物によれば、吸水性ポリマーの粒子径、吸水量を適正化することにより、吸水性ポリマー含有樹脂組成物を薄膜、細径の多孔質被覆電線の絶縁層の材料に用いることで断線等の問題なく絶縁電線を容易に得ることができる。
【0037】
多孔質物は、含水吸水性ポリマー含有樹脂組成物を架橋することにより硬化させた後、その硬化させた含水吸水性ポリマー含有樹脂組成物を加熱して吸水性ポリマーの水分を除去して形成される。
【0038】
次に、含水吸水性ポリマー含有樹脂組成物を用いた絶縁電線について説明する。
【0039】
図1に示すように、本実施形態に係る絶縁電線1は、導体2と、含水吸水性ポリマー含有樹脂組成物を導体の外周に被覆し、その含水吸水性ポリマー含有樹脂組成物を硬化させた後、その硬化させた含水吸水性ポリマー含有樹脂組成物を加熱して吸水性ポリマーの水分を除去して形成された絶縁層3とからなる。
【0040】
絶縁層3の厚さは、100μm以下であり、絶縁層3の空隙率が20%〜60%である。また、絶縁層3の空隙を形成する空孔4の断面は略円形であり、その最大径部と最小径部との比は2以下である。厚さ方向の空孔径Dは絶縁層の厚さtに対して、D<1/2tで形成される。
【0041】
絶縁層3の厚さを100μm以下とするのは、医療用プローブケーブルなどを代表とする同軸ケーブルでは、細径化、伝送信号高速化が進められており、絶縁層の薄肉化、低誘電率化が必須であるためである。
【0042】
絶縁層の低誘電率化には空孔形成が有効であるが、空隙率が高すぎたり、空孔径が大きすぎたりすると絶縁層がつぶれやすく安定した信号伝送が得られない問題が生じるが、空隙を形成する空孔4の断面が略円形で、最大・最小径部の比が2以下、厚さ方向の空孔径Dが絶縁層3の厚さtに対してD<1/2tとすると、薄肉、低誘電率でしかも耐つぶれに優れた絶縁電線1を得ることができる。
【0043】
絶縁層3の空隙率を20%〜60%とするのは、空隙率が20%より小さいと、低誘電率化効果が低く、空隙率が60%より大きくなると、絶縁層の成形性、耐つぶれ性などが低下しやすくなるためである。
【0044】
空孔4の最大・最小径部の比を2以下とするのは、2より大きくなると、つぶれが生じやすくなるためである。厚さ方向の空孔径Dが絶縁層3の厚さtに対してD<1/2tとするのは、1/2tより大きくなると、空隙率が高いほどつぶれが生じやすい問題があるためである。
【0045】
次に、本実施形態に係る絶縁電線1の製造方法を説明する。
【0046】
導体2の外周に、液状架橋硬化型樹脂組成物に予め吸水し膨潤した吸水性ポリマーを分散した含水吸水性ポリマー含有樹脂組成物を被覆して絶縁層3を形成する。この絶縁層3を加熱架橋することにより前記含水吸水性ポリマー含有樹脂組成物を硬化し、さらにマイクロ波加熱することにより、吸水性ポリマーの水分を除去することで絶縁層3の中に空孔4を形成すると本実施形態に係る絶縁電線1が得られる。
【0047】
液状架橋硬化型樹脂組成物を被覆して架橋硬化した後、加熱により脱水させるのは、脱水による体積収縮によって空隙率の低下が防止できるほか、膜厚や外径の変化を防止し、安定したものを得ることができるためである。さらに、予め空孔4となる部分を有し絶縁層3を形成できるため、発泡させる必要がなく、従来のガス注入や発泡剤によるガス発泡に生じやすい導体2と発泡層間(絶縁層間)の膨れや剥離による密着力低下がまったくなく、安定したものが得られる。
【0048】
吸水させた吸水性ポリマーの水を加熱脱水するのにマイクロ波加熱を利用するのは、水はマイクロ波により、急速に加熱されるため吸水性ポリマーや周囲の樹脂などに影響をあたえることなく、図13に示すように、120℃オーブン加熱脱水と比べ、短時間で加熱脱水ができ効率よく空孔形成ができるためである。また、導波管型マイクロ波加熱炉を用いることで、連続的に加熱脱水ができる。
【0049】
絶縁電線1とその製造方法によれば、含水吸水性ポリマー含有樹脂組成物を硬化させた後、加熱により脱水することで、容易に多孔質物や多孔質被覆電線が得られる。また、液状架橋硬化型樹脂組成物とし、吸水性ポリマーの粒子径、吸水量を適正化することにより、薄膜、細径の多孔質被覆電線を断線等の問題なく容易に得ることができる。
【0050】
図2に示すように、図1の絶縁電線1の外周にスキン層や被覆層5を設けることで、図1の絶縁電線1を多層被覆ケーブル6に用いることもできる。
【0051】
図1に示す絶縁電線1に、金属からなるシールド線8で外周を覆い、さらにその外周を被覆層9で覆うと同軸ケーブル7を得られる。シールドとして、シールド線8の代わりにシールド層を形成しても良い。
【0052】
含水吸水性ポリマー含有樹脂組成物により得られる多孔質物(発泡状物)は、緩衝剤、衝撃吸収フィルム(シート)、光反射板等への利用もできる。
【0053】
また、液状架橋硬化型樹脂組成物であることから、異形状物表面に多孔質層の形成ができる。
【実施例】
【0054】
【表1】
【0055】
液状架橋硬化型樹脂組成物として表1に示す樹脂組成物3種を用いた。それぞれの樹脂組成物について、15MILブレードを用いて厚さ約200μmのフィルムを窒素雰囲気下にて紫外線照射量500mJ/cm2により硬化させて作製し、空洞共振法(@10GHz)により求めた誘電率はそれぞれ2.4、2.6、2.5であった。
【0056】
また、押出成型用熱可塑性樹脂として、代表的な低誘電材料であるテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニールエーテル共重合体(PFA)を用いた。
【0057】
以下、表2及び3をもとに実施例1〜7、比較例1〜8について具体的に説明する。平均粒子径の値は、粒度分布測定装置(Microtrac Inc.製、MT3000II)を用いて測定し、体積平均のD50を適用した。
【0058】
【表2】
【0059】
(実施例1)
樹脂組成物A100質量部に、吸水性ポリマーのポリアルキレンオキサイド系樹脂(アクアコークTWB−PF、平均粒子径50μm、吸水量31g/g、住友精化製)を平均粒子径10μmに微粉砕処理した2質量部に、蒸留水を飽和吸水量の62質量部まで吸水させたものを撹拌分散した含水率37.8%の含水吸水性ポリマー含有樹脂組成物−実施例1(樹脂組成物−実施例1)を得た。
【0060】
樹脂組成物−実施例1を、ガラス板上に4MIL、7MIL、15MILのブレードを用いて、幅100mm、長さ200mmの塗膜を形成し、窒素雰囲気下で、紫外線照射コンベア装置を用いて紫外線照射量500mJ/cm2を照射し硬化させ、膜厚約50、100、200μmのフィルムを作製し、フィルム成形性が良好なことを確認した。
【0061】
これを、マイクロ波加熱装置(発振周波数2.45GHz)を用いて、5分間加熱した後、断面を電子顕微鏡を用いて観察した結果、多数の空孔が形成されていることを確認した(図4、50μm厚のフィルム断面例)。
【0062】
また、表2に示すように、50μm厚のフィルムについて加熱脱水後のフィルム体積と質量から求めた空隙率は約36.5%であった。空洞共振法により誘電率を測定したところ1.8(@10GHz)であった。50、100、200μm厚のフィルムにおいて、電子顕微鏡を用いた5箇所のフィルム断面写真より観察される10μm以上の空孔について、空孔断面の最大径部aと最小径部bを測定したところ、いずれもa/b≦2であった。さらに、厚さ方向の空孔径Dがいずれもフィルム厚tに対して1/2tより小さいことを確認した。
【0063】
次に樹脂組成物−実施例1を、加圧塗布槽でより導体48AWG(7/0.013 S−MF−AG合金線 日立電線製)上に速度50/minで被覆し、これを紫外線照射炉(アイグラフィックス製6kW)2灯に通して硬化させた後、導波管型マイクロ加熱炉を通して加熱脱水処理して、被覆厚50μmの電線を得、断面観察により絶縁層には多数の空孔が形成されていることを確認、また1mあたりの絶縁層の体積及び重量から空隙率を換算したところ約35.5%であった。さらにフィルムと同様に絶縁層の空孔断面の最大径部aと最小径部bを測定し、a/b≦2であること、厚さ方向の空孔径Dがフィルム厚tに対して1/2tより小さいことを確認した。
【0064】
(実施例2)
樹脂組成物A100質量部に、吸水性ポリマーのポリアルキレンオキサイド系樹脂を平均粒子径5μmに微粉砕処理した10質量部に、吸水量10g/gに調整し蒸留水を100質量部まで吸水させたものを撹拌分散した含水率47.6%の含水吸水性ポリマー含有樹脂組成物−実施例2(樹脂組成物−実施例2)を得た。
【0065】
樹脂組成物−実施例2を用い、実施例1と同様に、フィルムを作製しフィルム成形性が良好なことを確認した(図5、50μm厚のフィルム断面例)。50μm厚のフィルムにおいてマイクロ波加熱後の空隙率は約46%で、誘電率は1.7であった。また同様に、50、100、200μmフィルム厚の空孔断面の最大径部aと最小径部bを測定し、いずれもa/b≦2であること、厚さ方向の空孔径Dがフィルム厚tに対して1/2tより小さいことも確認した。
【0066】
次に実施例1と同様に電線を作製し、絶縁層に多数の空孔が形成されていることを確認、絶縁層の空隙率は45%であった。さらにフィルムと同様に絶縁層の空孔断面の最大径部aと最小径部bを測定し、a/b≦2であること、厚さ方向の空孔径Dがフィルム厚tに対して1/2tより小さいことを確認した。
【0067】
(実施例3)
樹脂組成物A100質量部に、吸水性ポリマーのポリアルキレンオキサイド系樹脂を平均粒子径8μmに微粉砕処理した2.5質量部に、吸水量15g/gに調整し、蒸留水を37.5質量部まで吸水させたものを撹拌分散した含水率26.8%の含水吸水性ポリマー含有樹脂組成物−実施例3(樹脂組成物−実施例3)を得た。
【0068】
樹脂組成物−実施例3を用い、実施例1と同様に、フィルムを作製しフィルム成形性が良好なことを確認した(図6、50μm厚のフィルム断面例)。50μm厚のフィルムにおいてマイクロ波加熱後の空隙率は約25.5%で、誘電率は2.05であった。また同様に、50、100、200μmフィルム厚の空孔断面の最大径部aと最小径部bを測定し、いずれもa/b≦2であること、厚さ方向の空孔径Dがフィルム厚tに対して1/2tより小さいことも確認した。
【0069】
次に実施例1と同様に電線を作製し、絶縁層に多数の空孔が形成されていることを確認、絶縁層の空隙率は25%であった。さらにフィルムと同様に絶縁層の空孔断面の最大径部aと最小径部bを測定し、a/b≦2であること、厚さ方向の空孔径Dがフィルム厚tに対して1/2tより小さいことを確認した。
【0070】
(実施例4)
樹脂組成物A100質量部に、吸水性ポリマーのポリアクリル酸塩架橋体I(アクアキープ10SH−NF、吸水量59g/g、平均粒子径25μm、住友精化製)を平均粒子径3μmに微粉砕処理した2質量部に、吸水量30g/gに調整し蒸留水を60質量部まで吸水させたものを撹拌分散した含水率37%の含水吸水性ポリマー含有樹脂組成物−実施例4(樹脂組成物−実施例4)を得た。
【0071】
樹脂組成物−実施例4を用い、実施例1と同様に、フィルムを作製しフィルム成形性が良好なことを確認した。50μm厚のフィルムについてマイクロ波加熱後の空隙率は約36.5%で、誘電率は1.8であった。また同様に、50、100、200μmフィルム厚の空孔断面の最大径部aと最小径部bを測定し、いずれもa/b≦2であること、厚さ方向の空孔径Dがフィルム厚tに対して1/2tより小さいことも確認した。
【0072】
次に実施例1と同様に電線を作製し、絶縁層に多数の空孔が形成されていることを確認、絶縁層の空隙率は36%であった。さらにフィルムと同様に絶縁層の空孔断面の最大径部aと最小径部bを測定し、a/b≦2であること、厚さ方向の空孔径Dがフィルム厚tに対して1/2tより小さいことを確認した。
【0073】
(実施例5)
樹脂組成物B100質量部に、吸水性ポリマーのポリアクリル酸塩架橋体Iを平均粒子径1μmに微粉砕処理した2.5質量部に、蒸留水を飽和吸水量の147.5質量部まで吸水させたものを撹拌分散した含水率59%の含水吸水性ポリマー含有樹脂組成物−実施例5(樹脂組成物−実施例5)を得た。
【0074】
樹脂組成物−実施例5を用い、実施例1と同様に、フィルムを作製しフィルム成形性が良好なことを確認した(図7、50μm厚のフィルム断面例)。50μm厚のフィルムについてマイクロ波加熱後の空隙率は約57%で、誘電率は1.67であった。また同様に、50、100、200μmフィルム厚の空孔断面の最大径部aと最小径部bを測定し、いずれもa/b≦2であること、厚さ方向の空孔径Dがフィルム厚tに対して1/2tより小さいことも確認した。
【0075】
次に実施例1と同様に電線を作製し、絶縁層に多数の空孔が形成されていることを確認、絶縁層の空隙率は56%であった。さらにフィルムと同様に絶縁層の空孔断面の最大径部aと最小径部bを測定し、a/b≦2であること、厚さ方向の空孔径Dがフィルム厚tに対して1/2tより小さいことを確認した。
【0076】
(実施例6)
樹脂組成物B100質量部に、吸水性ポリマーのポリアクリル酸塩架橋体II(サンフレッシュST−500MPSA、吸水量730g/g)を平均粒子径5μmに微粉砕処理した1質量部に、吸水量100g/gに調整し蒸留水を100質量部まで吸水させたものを撹拌分散した含水率49.8%の含水吸水性ポリマー含有樹脂組成物−実施例6(樹脂組成物−実施例6)を得た。
【0077】
樹脂組成物−実施例6を用い、実施例1と同様に、フィルムを作製しフィルム成形性が良好なことを確認した。50μm厚のフィルムについてマイクロ波加熱後の空隙率は48.4%で、誘電率は1.75であった。また同様に、50、100、200μmフィルム厚の空孔断面の最大径部aと最小径部bを測定し、いずれもa/b≦2であること、厚さ方向の空孔径Dがフィルム厚tに対して1/2tより小さいことも確認した。
【0078】
次に実施例1と同様に電線を作製し、絶縁層に多数の空孔が形成されていることを確認、絶縁層の空隙率は48%であった。さらにフィルムと同様に絶縁層の空孔断面の最大径部aと最小径部bを測定し、a/b≦2であること、厚さ方向の空孔径Dがフィルム厚tに対して1/2tより小さいことを確認した。
【0079】
(実施例7)
樹脂組成物C100質量部に、吸水性ポリマーのポリアクリル酸塩架橋体Iを平均粒子径3μmに微粉砕処理した1質量部に、蒸留水を飽和吸水量の59質量部まで吸水させたものを撹拌分散した含水率36.9%の含水吸水性ポリマー含有樹脂組成物−実施例7(樹脂組成物−実施例7)を得た。
【0080】
樹脂組成物−実施例7を用い、実施例1と同様に、フィルムを作製しフィルム成形性が良好なことを確認した。50μm厚のフィルムについてマイクロ波加熱後の空隙率は約36%で、誘電率は1.85であった。また同様に、50、100、200μmフィルム厚の空孔断面の最大径部aと最小径部bを測定し、いずれもa/b≦2であること、厚さ方向の空孔径Dがフィルム厚tに対して1/2tより小さいことも確認した。
【0081】
次に実施例1と同様に電線を作製し、絶縁層に多数の空孔が形成されていることを確認、絶縁層の空隙率は35.3%であった。さらにフィルムと同様に絶縁層の空孔断面の最大径部aと最小径部bを測定し、a/b≦2であること、厚さ方向の空孔径Dがフィルム厚tに対して1/2tより小さいことを確認した。
【0082】
【表3】
【0083】
(比較例1)
樹脂組成物A100質量部に、吸水性ポリマーのポリアルキレンオキサイド系樹脂を平均粒子径15μmに微粉砕処理した2質量部に、蒸留水を飽和吸水量の62質量部まで吸水させたものを撹拌分散した含水率37.8%の含水吸水性ポリマー含有樹脂組成物−比較例1(樹脂組成物−比較例1)を得た。
【0084】
樹脂組成物−比較例1を用い、実施例1と同様に、フィルムを作製したが、50μm厚のフィルムでは空隙率8%、誘電率2.35と層中に空孔がわずかしか形成されていないものしか得られなかった(図8、50μm厚のフィルム断面例)。これは、吸水性ポリマーの平均粒子径が大きく、吸水膨潤により径が3〜4倍に大きくなるため4MILブレードの隙間(100μm)を通過できにくくなったためである。このことは7MIL、15MILブレードと隙間が広くなるほどフィルムの空孔数は増えるが、100μm厚のフィルム(図9)では、膜厚に近い空孔ができていることからも、含水吸水性ポリマーの大きさが大きく、4MILブレードでは通過できなかったことを示している。さらに、50、100、200μmフィルム厚の空孔断面の最大径部aと最小径部bを測定したところ、いずれもa/b≦2であったが、100μm及び200μmフィルムでは、厚さ方向の空孔径Dがフィルム厚tに対して1/2tより大きいものが多数確認された。
【0085】
次に実施例1と同様に電線の作製を試みたが、絶縁層の被覆形成が悪く、加圧塗布槽中のダイス部で詰まりやすく断線が発生するなど、電線を得ることができなかった。
【0086】
(比較例2)
樹脂組成物A100質量部に、吸水性ポリマーのポリアルキレンオキサイド系樹脂を平均粒子径8μmに微粉砕処理した20質量部に、吸水量5g/gに調整し蒸留水を100質量部まで吸水させたものを撹拌分散した含水率45.5%の含水吸水性ポリマー含有樹脂組成物−比較例2(樹脂組成−比較例2)を得た。
【0087】
樹脂組成物−比較例2を用い、実施例1と同様に、フィルムの作製を試みたが、吸水性ポリマーの添加量が多いため脆く、いずれもフィルムとして得ることができなかった。次に実施例1と同様に電線の作製を試みたが、絶縁層の被覆が形成できず電線を得ることができなかった。
【0088】
(比較例3)
樹脂組成物A100質量部に、吸水性ポリマーのポリアクリル酸塩架橋体IIを平均粒子径5μmに微粉砕処理した2質量部に、吸水量110g/gに調整し蒸留水を220質量部まで吸水させたものを撹拌分散した含水率68.3%の含水吸水性ポリマー含有樹脂組成物−比較例3(樹脂組成物−比較例3)を得た。
【0089】
樹脂組成物−比較例3を用い、実施例1と同様に、フィルムの作製を試みたが、吸水性ポリマーの吸水量が多いため、いずれも硬化ができずにフィルムとして得ることができなかった。次に実施例1と同様に電線の作製を試みたが、絶縁層の被覆が形成できず電線を得ることができなかった。
【0090】
(比較例4)
樹脂組成物B100質量部に、吸水性ポリマーのポリアルキレンオキサイド系樹脂を平均粒子径10μmに微粉砕処理した2質量部に、吸水量9g/gに調整し蒸留水を18質量部まで吸水させたものを撹拌分散した含水率15%の含水吸水性ポリマー含有樹脂組成物−比較例4(樹脂組成物−比較例4)を得た。
【0091】
樹脂組成物−比較例4を用い、実施例1と同様に、フィルムを作製しフィルム成形性が良好なことを確認したが、50μm厚のフィルムについてマイクロ波加熱後の空隙率は13%で、誘電率は2.4であり、含水量が少ないと形成される空隙率も小さく、低誘電率化効果が小さいものであった(図10)。―方、50、100、200μmフィルム厚の空孔断面の最大径部aと最小径部bを測定し、いずれもa/b≦2であること、厚さ方向の空孔径Dがフィルム厚tに対して1/2tより小さいものであった。
【0092】
次に実施例1と同様に電線を作製し、絶縁層に空孔が形成されていることを確認したが、絶縁層の空隙率も11.5%と低いものであった。さらにフィルムと同様に絶縁層の空孔断面の最大径部aと最小径部bを測定し、a/b≦2であること、厚さ方向の空孔径Dがフィルム厚tに対して1/2tより小さいものであった。
【0093】
(比較例5)
樹脂組成物B100質量部に、吸水性ポリマーのポリアクリル酸塩架橋体IIを平均粒子径10μmに微粉砕処理した1質量部に、吸水量110g/gに調整し蒸留水を110質量部まで吸水させたものを撹拌分散した含水率52.1%の含水吸水性ポリマー含有樹脂組成物−比較例5(樹脂組成物−比較例5)を得た。
【0094】
樹脂組成物−比較例5を用い、実施例1と同様に、フィルムの作製を試みたが、弱くちぎれやすくいずれもフィルムとして得ることができなかった。次に実施例1と同様に電線の作製を試みたが、絶縁層の被覆が形成できず電線を得ることができなかった。
【0095】
(比較例6)
樹脂組成物B100質量部に、吸水性ポリマーのポリアクリル酸塩架橋体Iを1質量部に、蒸留水を飽和吸水量の59質量部まで吸水させたものを撹拌分散しだ含水率36.9%の含水吸水性ポリマー含有樹脂組成物−比較例6(樹脂組成物−比較例6)を得た。
【0096】
樹脂組成物−比較例6を用い、実施例1と同様に、フィルムを作製したが、50μm厚のフィルムでは空隙率3%、誘電率2.65と層中に空孔がわずかしか形成されていないものしか得られなかった(図11)。これは、比較例1と同様、吸水性ポリマーの平均粒子径が大きく、吸水膨潤により径が3〜4倍に大きくなるため4MILブレードの隙間(100μm)を通過できにくくなったためである。7MIL、15MILブレードと隙間が広くなるほどフィルムの空孔数は増え、200μm厚のフィルムでは、含水率が同じ実施例7の50μm厚のフィルムと同程度の空隙率36%、誘電率1.87であった(図12)。さらに、50、100、200μmフィルム厚の空孔断面の最大径部aと最小径部bを測定したところ、いずれもa/b≦2であったが、100μm及び200μm厚のフィルムでは、厚さ方向の空孔径Dがフィルム厚tに対して1/2tより大きいものが多数確認された。
【0097】
次に、実施例1と同様に、絶縁電線を作製したところ、フィルムと同様に、絶縁層に含水ポリマーがほとんど含まれないこと、すぐに加圧塗布横内のダイス部に含水ポリマーが詰まり断線が発生した。
【0098】
(比較例7)
樹脂組成物B100質量部に、吸水性ポリマーのポリアクリル酸塩架橋体Iを平均粒子径3μmに微粉砕処理した5質量部に、蒸留水を飽和吸水量の295質量部まで吸水させたものを撹拌分散した含水率73.8%の含水吸水性ポリマー含有樹脂組成物−比較例7(樹脂組成物−比較例7)を得た。
【0099】
樹脂組成物−比較例7を用い、実施例1と同様に、フィルムの作製を試みたが、含水率が高すぎるためいずれもフィルムとして得ることができなかった。次に実施例1と同様に電線の作製を試みたが、絶縁層の被覆が形成できず電線を得ることができなかった。
【0100】
(比較例8)
低誘電性熱可塑性ポリマーのテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合樹脂(PFA)を用い、28mm押出機で、液化炭酸ガスを圧入しながらより導体48AWG(7/0.013 S−MF−AG合金線、日立電線製)上に絶縁層の被覆厚50μmの押出被覆を速度50m/minで試みたが、断線が多発し、多孔質(発泡)電線を得ることができなかった。
【0101】
以上、実施例及び比較例で説明したとおり、実施例では予め吸水させた吸水性ポリマーを液状架橋硬化型樹脂組成物に分散したものを硬化させた後、加熱により脱水させることで、容易に多孔質物や多孔質絶縁電線が得られる。また、液状架橋硬化型樹脂組成物とし、吸水性ポリマーの粒子径、吸水量を適正化することにより、薄膜、細径の多孔質被覆電線を断線等の問題なく容易に得ることができる。―方、吸水性ポリマーの粒子径が大きい比較例1、6では薄肉化が困難であり、吸水量が多い比較例3、5、含水率が多い比較例7、吸水性ポリマーの添加量が多い比較例2では、成形性が著しく劣り、吸水量が少なく、含水率が低い比較例4では、成形性は問題ないが、空隙率が低いため低誘電効果が得られないものであった。また、従来押出方式の比較例8ではまったく高速化は困難であった。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本発明の好適な実施形態を示す絶縁電線の横断面図である。
【図2】図1の絶縁電線を用いた多層被覆ケーブルを示す横断面図である。
【図3】図1の絶縁電線を用いた同軸ケーブルを示す横断面図である。
【図4】本発明の実施例1により作製した厚さ50μmのフィルムを示す断面図である。
【図5】本発明の実施例2により作製した厚さ50μmのフィルムを示す断面図である。
【図6】本発明の実施例3により作製した厚さ50μmのフィルムを示す断面図である。
【図7】本発明の実施例5により作製した厚さ50μmのフィルムを示す断面図である。
【図8】比較例1により作製した厚さ50μmのフィルムを示す断面図である。
【図9】比較例1により作製した厚さ100μmのフィルムを示す断面図である。
【図10】比較例4により作製した厚さ50μmのフィルムを示す断面図である。
【図11】比較例6により作製した厚さ50μmのフィルムを示す断面図である。
【図12】比較例6により作製した厚さ200μmのフィルムを示す断面図である。
【図13】マイクロ波加熱と120℃オーブン加熱による脱水効率の比較図である。
【符号の説明】
【0103】
1 絶縁電線
2 導体
3 絶縁層
4 空孔
5 被覆層
6 多層被覆ケーブル
7 同軸ケーブル
8 シールド線
9 被覆層
【技術分野】
【0001】
本発明は、含水吸水性ポリマー含有樹脂組成物及びこれを用いた多孔質物、絶縁電線及びその製造方法並びに同軸ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療分野をはじめとする精密電子機器類や通信機器類の小型化や高密度実装化が進むなかで、これらに使用される電線・ケーブルもますます細径化が図られている。
【0003】
さらに信号線等では、伝送信号の一層の高速化を求める傾向が顕著であり、これに使用される電線の絶縁体層を薄くかつ可能な限り低誘電率化することにより伝送信号の高速化を図ることが望まれている。
【0004】
この絶縁体には従来、ポリエチレンやフッ素樹脂などの誘電率の低い絶縁材料を発泡させたものが使われている。発泡絶縁体層の形成には、予め発泡させたフィルムを導体上に巻き付ける方法や押出方式が知られており、特に押出方式が広く用いられている。
【0005】
発泡を形成する方法としては、大きく物理的な発泡方法と化学的な発泡方法に分けられる。
【0006】
物理的な発泡方法としては、液体フロンのような揮発性発泡用液体を溶融樹脂中に注入し、その気化圧により発泡させる方法や窒素ガス、炭酸ガスなど押出機中の溶融樹脂に直接気泡形成用ガスを圧入させることにより一様に分布した細胞状の微細な独立気泡体を樹脂中に発生させる方法などがある。
【0007】
化学的な発泡方法としては、樹脂中に発泡剤を分散混合した状態で成形し、その後熱を加えることにより発泡剤の分解反応を発生させ、分解により発生するガスを利用して発泡させることが良く知られている。
【0008】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、次のものがある。
【0009】
【特許文献1】特開昭58−62024号公報
【特許文献2】特開昭57−170725号公報
【特許文献3】特開平3−185063号公報
【特許文献4】特開平11−5863号公報
【特許文献5】特開平11−100457号公報
【特許文献6】特許第3717942号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、溶融樹脂中に揮発性発泡用液体を注入する方法では、気化圧が強く、気泡の微細形成が難しく薄肉成形に限界がある。また、揮発性発泡用液体の注入速度が遅いために、高速製造化が難しく、生産性に劣るという問題もある。さらに、押出機中で直接気泡形成用ガスを圧入する方法は、細径薄肉押出形成に限界があること、安全面で特別な設備や技術を必要とするため、生産性に劣ることや製造コストの上昇を招いてしまう問題がある。
【0011】
一方、化学発泡方法は、予め樹脂中に発泡剤を混練し、分散混合し、成形加工後に熱により発泡剤を反応分解させて発生したガスにより発泡をさせるため、樹脂の成形加工温度を、発泡剤の分解温度より低く保持しなければならない問題がある。さらに、素線の径が細くなると、押出被覆では樹脂圧により断線が起こりやすく、高速化が難しくなるという別の問題もある。
【0012】
また、フロン、ブタン、炭酸ガス等を用いる物理発泡は環境負荷が大きい問題や、化学発泡に用いる発泡剤は価格が高いといった問題がある。
【0013】
そこで、本発明の目的は、上記の問題点を解決するために、環境にやさしく容易な含水吸水性ポリマー含有樹脂組成物及びこれを用いた多孔質物、絶縁電線及びその製造方法並びに同軸ケーブルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は上記目的を達成するために創案されたものであり、請求項1の発明は、液状架橋硬化型樹脂組成物に予め吸水させ膨潤させた吸水性ポリマーを分散させた含水吸水性ポリマー含有樹脂組成物であって、前記吸水性ポリマーの吸水膨潤前の平均粒子径が10μm以下であり、吸水性ポリマーの吸水量が10〜100g/gである含水吸水性ポリマー含有樹脂組成物である。
【0015】
請求項2の発明は、前記液状架橋硬化型樹脂組成物が、紫外線又は熱によって硬化する組成物である請求項1に記載の含水吸水性ポリマー含有樹脂組成物である。
【0016】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の含水吸水性ポリマー含有樹脂組成物を、架橋することにより硬化させた後、その硬化させた含水吸水性ポリマー含有樹脂組成物を加熱して前記吸水性ポリマーの水分を除去して形成した多孔質物である。
【0017】
請求項4発明は、請求項1又は2に記載の含水吸水性ポリマー含有樹脂組成物を導体の外周に被覆し、その含水吸水性ポリマー含有樹脂組成物を硬化させた後、その硬化させた含水吸水性ポリマー含有樹脂組成物を加熱して前記吸水性ポリマーの水分を除去して絶縁層を形成した絶縁電線である。
【0018】
請求項5の発明は、前記絶縁層の厚さが100μm以下であり、前記絶縁層の空隙率が20%〜60%である請求項4に記載の絶縁電線である。
【0019】
請求項6の発明は、前記絶縁層の空隙を形成する空孔の断面が略円形であり、その最大径部と最小径部との比が2以下であり、厚さ方向の空孔径Dが前記絶縁層の厚さtに対して、D<1/2tで形成される請求項5に記載の絶縁電線である。
【0020】
請求項7の発明は、請求項4〜6いずれかに記載の絶縁電線の外周に金属層を設けた同軸ケーブルである。
【0021】
請求項8の発明は、導体の外周に、液状架橋硬化型樹脂組成物に予め吸水し膨潤した吸水性ポリマーを分散した含水吸水性ポリマー含有樹脂組成物を被覆して絶縁層を形成し、この絶縁層を架橋することにより前記含水吸水性ポリマー含有樹脂組成物を硬化し、さらに加熱することにより、吸水性ポリマーの水分を除去して前記絶縁層の中に空孔を形成する絶縁電線の製造方法である。
【0022】
請求項9の発明は、前記加熱にマイクロ波加熱を用いる請求項8に記載の絶縁電線の製造方法である。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、フロン、ブタン、炭酸ガス等を用いた物理発泡を要しないので環境にやさしく、容易に多孔質物を形成できる材料が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の好適な実施形態を添付図面にしたがって説明する。
【0025】
本実施形態に係る含水吸水性ポリマー含有樹脂組成物は、液状架橋硬化型樹脂組成物に予め吸水させ膨潤させた吸水性ポリマーを分散させてなる。この吸水性ポリマーの吸水膨潤前の平均粒子径は、10μm以下であり、好ましくは平均粒子径が0.5〜5μmの範囲が良く、さらに好ましくは平均粒子径が1μmとすると良い。
【0026】
吸水性ポリマーの吸水前の平均粒子径を10μm以下とするのは、吸水性ポリマーの吸水前の平均粒子径が10μmより大きいと、吸水させた場合に、体積が数倍〜数十倍と大きくなるため、吸水させた吸水ポリマーを液状架橋硬化型樹脂組成物に分散させることが難しくなるほか、100μm以下の薄膜形成、微細な多孔質膜形成が難しくなるためである。吸水性ポリマーの膨潤倍率は粒子径の5倍以下が良く、吸水膨潤した含水吸水性ポリマーの大きさとしては1〜50μmが良い。吸水性ポリマーの吸水量は10〜100g/gであり、好ましくは20〜60g/gとすると良い。
【0027】
吸水性ポリマーの吸水量とは、吸水性ポリマー1gあたりに吸水する水の量であり、吸水量を10〜100g/gとするのは、吸水量が10g/gより少ないと、高い空隙率を得る際には吸水性ポリマーの添加量を多くする必要があり、コスト面や機械的特性面での問題や空孔形成効率の低下が生じやすくなるためであり、吸水量が100g/gより多いと、脱水効率が低下することや微細な空孔形成が難しくなるためである。
【0028】
液状架橋硬化型樹脂組成物とは、紫外線、熱、電子線、可視光などにより硬化するもので、特に限定するものではないが、好ましくは紫外線や熱、あるいは併用で架橋硬化する樹脂組成物が良く、さらに好ましくは紫外線架橋硬化型樹脂組成物が良い。液状架橋硬化型樹脂組成物としては、エチレン系、ウレタン系、シリコーン系、フッ素系、エポキシ系、ポリエステル系、ポリカーボネート系など公知の液状架橋硬化型樹脂組成物を選択できるが、液状架橋硬化型樹脂組成物の誘電率として4以下、好ましくは3以下のものが良い。
【0029】
吸水性ポリマーとは、非常に良く水を吸い込み、保水力が強いため多少の圧力を加えても吸水した水を放出しない高分子物質で、例えばデンプン−アクリロニトリルグラフト重合体の加水分解物、デンプン−アクリル酸グラフト重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体の加水分解物、ポリアクリル酸塩架橋体、カルボキシメチル化セルロース、ポリアルキレンオキサイド系樹脂、ポリアクリルアミド系樹脂等があり、好ましくはポリアルキレンオキサイド系樹脂、ポリアクリルアミド系樹脂が電気絶縁性面で良いが、用途、使用量によってはこの限りではなく、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0030】
吸水性ポリマーに吸水させるには、吸水性ポリマーの吸水量あるいはそれ以上の水を加えて吸水させることが良い。吸水量より少ない水を吸水させると吸水性ポリマー粒子間の吸水量が不均一になりやすいためである。
【0031】
吸水性ポリマーに吸水させる他の方法として、水が可溶で、且つ吸水性ポリマーが不溶な溶媒を用い、吸水性ポリマーの吸水量より少ない量の水を均一に吸水させるように調整しても良い。
【0032】
吸水性ポリマーの添加量は、0.1〜10質量部の範囲が良く、好ましくは0.5〜5質量部の範囲が良く、さらに好ましくは0.5〜3質量部の範囲が良い。吸水性ポリマーの添加量を0.1〜10質量部の範囲とするのは、吸水性ポリマーの添加量が10質量部より多くなると、吸水させて分散させた場合に、膜形成が困難になるほか、機械的特性が得られなくなり、吸水性ポリマーの添加量が、0.1質量部より少ないと、十分な多孔質形成効果が得られなくなるためである。吸水性ポリマーが添加されたとき、液状架橋硬化型樹脂組成物中の含水率が25〜65%で調整されていることが好ましい。
【0033】
吸水膨潤させた吸水性ポリマーを分散させるのは、空孔のサイズや形状が、吸水性ポリマーの粒子径と吸水量で制御できることや、吸水膨潤によりゲル状となった吸水性ポリマーが水を多く含み、水と液状架橋硬化型樹脂組成物とは非相溶なので、撹拌分散の際に、独立分散しやすく、且つ球状となって分散しやすくなるからである。このため硬化後の脱水によって得られる空孔形状を球に近い形状とすることができ、つぶれに対して強いものが得られやすくなる。
【0034】
含水吸水性ポリマー含有樹脂組成物には、必要に応じて分散剤、レベリング剤、カップリング剤、着色剤、難燃剤、酸化防止剤、電気絶縁性向上剤、充填剤など公知のものを加えて用いることができる。
【0035】
吸水性ポリマーは空孔のサイズや形状が、吸水性ポリマーの粒子径と吸水量で調整でき、さらに予め液状架橋硬化型樹脂組成物に空孔となる部分が形成された状態で被覆を形成できることから空孔のサイズや形状の制御が容易にできる。
【0036】
本実施形態に係る含水吸水性ポリマー含有樹脂組成物によれば、吸水性ポリマーの粒子径、吸水量を適正化することにより、吸水性ポリマー含有樹脂組成物を薄膜、細径の多孔質被覆電線の絶縁層の材料に用いることで断線等の問題なく絶縁電線を容易に得ることができる。
【0037】
多孔質物は、含水吸水性ポリマー含有樹脂組成物を架橋することにより硬化させた後、その硬化させた含水吸水性ポリマー含有樹脂組成物を加熱して吸水性ポリマーの水分を除去して形成される。
【0038】
次に、含水吸水性ポリマー含有樹脂組成物を用いた絶縁電線について説明する。
【0039】
図1に示すように、本実施形態に係る絶縁電線1は、導体2と、含水吸水性ポリマー含有樹脂組成物を導体の外周に被覆し、その含水吸水性ポリマー含有樹脂組成物を硬化させた後、その硬化させた含水吸水性ポリマー含有樹脂組成物を加熱して吸水性ポリマーの水分を除去して形成された絶縁層3とからなる。
【0040】
絶縁層3の厚さは、100μm以下であり、絶縁層3の空隙率が20%〜60%である。また、絶縁層3の空隙を形成する空孔4の断面は略円形であり、その最大径部と最小径部との比は2以下である。厚さ方向の空孔径Dは絶縁層の厚さtに対して、D<1/2tで形成される。
【0041】
絶縁層3の厚さを100μm以下とするのは、医療用プローブケーブルなどを代表とする同軸ケーブルでは、細径化、伝送信号高速化が進められており、絶縁層の薄肉化、低誘電率化が必須であるためである。
【0042】
絶縁層の低誘電率化には空孔形成が有効であるが、空隙率が高すぎたり、空孔径が大きすぎたりすると絶縁層がつぶれやすく安定した信号伝送が得られない問題が生じるが、空隙を形成する空孔4の断面が略円形で、最大・最小径部の比が2以下、厚さ方向の空孔径Dが絶縁層3の厚さtに対してD<1/2tとすると、薄肉、低誘電率でしかも耐つぶれに優れた絶縁電線1を得ることができる。
【0043】
絶縁層3の空隙率を20%〜60%とするのは、空隙率が20%より小さいと、低誘電率化効果が低く、空隙率が60%より大きくなると、絶縁層の成形性、耐つぶれ性などが低下しやすくなるためである。
【0044】
空孔4の最大・最小径部の比を2以下とするのは、2より大きくなると、つぶれが生じやすくなるためである。厚さ方向の空孔径Dが絶縁層3の厚さtに対してD<1/2tとするのは、1/2tより大きくなると、空隙率が高いほどつぶれが生じやすい問題があるためである。
【0045】
次に、本実施形態に係る絶縁電線1の製造方法を説明する。
【0046】
導体2の外周に、液状架橋硬化型樹脂組成物に予め吸水し膨潤した吸水性ポリマーを分散した含水吸水性ポリマー含有樹脂組成物を被覆して絶縁層3を形成する。この絶縁層3を加熱架橋することにより前記含水吸水性ポリマー含有樹脂組成物を硬化し、さらにマイクロ波加熱することにより、吸水性ポリマーの水分を除去することで絶縁層3の中に空孔4を形成すると本実施形態に係る絶縁電線1が得られる。
【0047】
液状架橋硬化型樹脂組成物を被覆して架橋硬化した後、加熱により脱水させるのは、脱水による体積収縮によって空隙率の低下が防止できるほか、膜厚や外径の変化を防止し、安定したものを得ることができるためである。さらに、予め空孔4となる部分を有し絶縁層3を形成できるため、発泡させる必要がなく、従来のガス注入や発泡剤によるガス発泡に生じやすい導体2と発泡層間(絶縁層間)の膨れや剥離による密着力低下がまったくなく、安定したものが得られる。
【0048】
吸水させた吸水性ポリマーの水を加熱脱水するのにマイクロ波加熱を利用するのは、水はマイクロ波により、急速に加熱されるため吸水性ポリマーや周囲の樹脂などに影響をあたえることなく、図13に示すように、120℃オーブン加熱脱水と比べ、短時間で加熱脱水ができ効率よく空孔形成ができるためである。また、導波管型マイクロ波加熱炉を用いることで、連続的に加熱脱水ができる。
【0049】
絶縁電線1とその製造方法によれば、含水吸水性ポリマー含有樹脂組成物を硬化させた後、加熱により脱水することで、容易に多孔質物や多孔質被覆電線が得られる。また、液状架橋硬化型樹脂組成物とし、吸水性ポリマーの粒子径、吸水量を適正化することにより、薄膜、細径の多孔質被覆電線を断線等の問題なく容易に得ることができる。
【0050】
図2に示すように、図1の絶縁電線1の外周にスキン層や被覆層5を設けることで、図1の絶縁電線1を多層被覆ケーブル6に用いることもできる。
【0051】
図1に示す絶縁電線1に、金属からなるシールド線8で外周を覆い、さらにその外周を被覆層9で覆うと同軸ケーブル7を得られる。シールドとして、シールド線8の代わりにシールド層を形成しても良い。
【0052】
含水吸水性ポリマー含有樹脂組成物により得られる多孔質物(発泡状物)は、緩衝剤、衝撃吸収フィルム(シート)、光反射板等への利用もできる。
【0053】
また、液状架橋硬化型樹脂組成物であることから、異形状物表面に多孔質層の形成ができる。
【実施例】
【0054】
【表1】
【0055】
液状架橋硬化型樹脂組成物として表1に示す樹脂組成物3種を用いた。それぞれの樹脂組成物について、15MILブレードを用いて厚さ約200μmのフィルムを窒素雰囲気下にて紫外線照射量500mJ/cm2により硬化させて作製し、空洞共振法(@10GHz)により求めた誘電率はそれぞれ2.4、2.6、2.5であった。
【0056】
また、押出成型用熱可塑性樹脂として、代表的な低誘電材料であるテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニールエーテル共重合体(PFA)を用いた。
【0057】
以下、表2及び3をもとに実施例1〜7、比較例1〜8について具体的に説明する。平均粒子径の値は、粒度分布測定装置(Microtrac Inc.製、MT3000II)を用いて測定し、体積平均のD50を適用した。
【0058】
【表2】
【0059】
(実施例1)
樹脂組成物A100質量部に、吸水性ポリマーのポリアルキレンオキサイド系樹脂(アクアコークTWB−PF、平均粒子径50μm、吸水量31g/g、住友精化製)を平均粒子径10μmに微粉砕処理した2質量部に、蒸留水を飽和吸水量の62質量部まで吸水させたものを撹拌分散した含水率37.8%の含水吸水性ポリマー含有樹脂組成物−実施例1(樹脂組成物−実施例1)を得た。
【0060】
樹脂組成物−実施例1を、ガラス板上に4MIL、7MIL、15MILのブレードを用いて、幅100mm、長さ200mmの塗膜を形成し、窒素雰囲気下で、紫外線照射コンベア装置を用いて紫外線照射量500mJ/cm2を照射し硬化させ、膜厚約50、100、200μmのフィルムを作製し、フィルム成形性が良好なことを確認した。
【0061】
これを、マイクロ波加熱装置(発振周波数2.45GHz)を用いて、5分間加熱した後、断面を電子顕微鏡を用いて観察した結果、多数の空孔が形成されていることを確認した(図4、50μm厚のフィルム断面例)。
【0062】
また、表2に示すように、50μm厚のフィルムについて加熱脱水後のフィルム体積と質量から求めた空隙率は約36.5%であった。空洞共振法により誘電率を測定したところ1.8(@10GHz)であった。50、100、200μm厚のフィルムにおいて、電子顕微鏡を用いた5箇所のフィルム断面写真より観察される10μm以上の空孔について、空孔断面の最大径部aと最小径部bを測定したところ、いずれもa/b≦2であった。さらに、厚さ方向の空孔径Dがいずれもフィルム厚tに対して1/2tより小さいことを確認した。
【0063】
次に樹脂組成物−実施例1を、加圧塗布槽でより導体48AWG(7/0.013 S−MF−AG合金線 日立電線製)上に速度50/minで被覆し、これを紫外線照射炉(アイグラフィックス製6kW)2灯に通して硬化させた後、導波管型マイクロ加熱炉を通して加熱脱水処理して、被覆厚50μmの電線を得、断面観察により絶縁層には多数の空孔が形成されていることを確認、また1mあたりの絶縁層の体積及び重量から空隙率を換算したところ約35.5%であった。さらにフィルムと同様に絶縁層の空孔断面の最大径部aと最小径部bを測定し、a/b≦2であること、厚さ方向の空孔径Dがフィルム厚tに対して1/2tより小さいことを確認した。
【0064】
(実施例2)
樹脂組成物A100質量部に、吸水性ポリマーのポリアルキレンオキサイド系樹脂を平均粒子径5μmに微粉砕処理した10質量部に、吸水量10g/gに調整し蒸留水を100質量部まで吸水させたものを撹拌分散した含水率47.6%の含水吸水性ポリマー含有樹脂組成物−実施例2(樹脂組成物−実施例2)を得た。
【0065】
樹脂組成物−実施例2を用い、実施例1と同様に、フィルムを作製しフィルム成形性が良好なことを確認した(図5、50μm厚のフィルム断面例)。50μm厚のフィルムにおいてマイクロ波加熱後の空隙率は約46%で、誘電率は1.7であった。また同様に、50、100、200μmフィルム厚の空孔断面の最大径部aと最小径部bを測定し、いずれもa/b≦2であること、厚さ方向の空孔径Dがフィルム厚tに対して1/2tより小さいことも確認した。
【0066】
次に実施例1と同様に電線を作製し、絶縁層に多数の空孔が形成されていることを確認、絶縁層の空隙率は45%であった。さらにフィルムと同様に絶縁層の空孔断面の最大径部aと最小径部bを測定し、a/b≦2であること、厚さ方向の空孔径Dがフィルム厚tに対して1/2tより小さいことを確認した。
【0067】
(実施例3)
樹脂組成物A100質量部に、吸水性ポリマーのポリアルキレンオキサイド系樹脂を平均粒子径8μmに微粉砕処理した2.5質量部に、吸水量15g/gに調整し、蒸留水を37.5質量部まで吸水させたものを撹拌分散した含水率26.8%の含水吸水性ポリマー含有樹脂組成物−実施例3(樹脂組成物−実施例3)を得た。
【0068】
樹脂組成物−実施例3を用い、実施例1と同様に、フィルムを作製しフィルム成形性が良好なことを確認した(図6、50μm厚のフィルム断面例)。50μm厚のフィルムにおいてマイクロ波加熱後の空隙率は約25.5%で、誘電率は2.05であった。また同様に、50、100、200μmフィルム厚の空孔断面の最大径部aと最小径部bを測定し、いずれもa/b≦2であること、厚さ方向の空孔径Dがフィルム厚tに対して1/2tより小さいことも確認した。
【0069】
次に実施例1と同様に電線を作製し、絶縁層に多数の空孔が形成されていることを確認、絶縁層の空隙率は25%であった。さらにフィルムと同様に絶縁層の空孔断面の最大径部aと最小径部bを測定し、a/b≦2であること、厚さ方向の空孔径Dがフィルム厚tに対して1/2tより小さいことを確認した。
【0070】
(実施例4)
樹脂組成物A100質量部に、吸水性ポリマーのポリアクリル酸塩架橋体I(アクアキープ10SH−NF、吸水量59g/g、平均粒子径25μm、住友精化製)を平均粒子径3μmに微粉砕処理した2質量部に、吸水量30g/gに調整し蒸留水を60質量部まで吸水させたものを撹拌分散した含水率37%の含水吸水性ポリマー含有樹脂組成物−実施例4(樹脂組成物−実施例4)を得た。
【0071】
樹脂組成物−実施例4を用い、実施例1と同様に、フィルムを作製しフィルム成形性が良好なことを確認した。50μm厚のフィルムについてマイクロ波加熱後の空隙率は約36.5%で、誘電率は1.8であった。また同様に、50、100、200μmフィルム厚の空孔断面の最大径部aと最小径部bを測定し、いずれもa/b≦2であること、厚さ方向の空孔径Dがフィルム厚tに対して1/2tより小さいことも確認した。
【0072】
次に実施例1と同様に電線を作製し、絶縁層に多数の空孔が形成されていることを確認、絶縁層の空隙率は36%であった。さらにフィルムと同様に絶縁層の空孔断面の最大径部aと最小径部bを測定し、a/b≦2であること、厚さ方向の空孔径Dがフィルム厚tに対して1/2tより小さいことを確認した。
【0073】
(実施例5)
樹脂組成物B100質量部に、吸水性ポリマーのポリアクリル酸塩架橋体Iを平均粒子径1μmに微粉砕処理した2.5質量部に、蒸留水を飽和吸水量の147.5質量部まで吸水させたものを撹拌分散した含水率59%の含水吸水性ポリマー含有樹脂組成物−実施例5(樹脂組成物−実施例5)を得た。
【0074】
樹脂組成物−実施例5を用い、実施例1と同様に、フィルムを作製しフィルム成形性が良好なことを確認した(図7、50μm厚のフィルム断面例)。50μm厚のフィルムについてマイクロ波加熱後の空隙率は約57%で、誘電率は1.67であった。また同様に、50、100、200μmフィルム厚の空孔断面の最大径部aと最小径部bを測定し、いずれもa/b≦2であること、厚さ方向の空孔径Dがフィルム厚tに対して1/2tより小さいことも確認した。
【0075】
次に実施例1と同様に電線を作製し、絶縁層に多数の空孔が形成されていることを確認、絶縁層の空隙率は56%であった。さらにフィルムと同様に絶縁層の空孔断面の最大径部aと最小径部bを測定し、a/b≦2であること、厚さ方向の空孔径Dがフィルム厚tに対して1/2tより小さいことを確認した。
【0076】
(実施例6)
樹脂組成物B100質量部に、吸水性ポリマーのポリアクリル酸塩架橋体II(サンフレッシュST−500MPSA、吸水量730g/g)を平均粒子径5μmに微粉砕処理した1質量部に、吸水量100g/gに調整し蒸留水を100質量部まで吸水させたものを撹拌分散した含水率49.8%の含水吸水性ポリマー含有樹脂組成物−実施例6(樹脂組成物−実施例6)を得た。
【0077】
樹脂組成物−実施例6を用い、実施例1と同様に、フィルムを作製しフィルム成形性が良好なことを確認した。50μm厚のフィルムについてマイクロ波加熱後の空隙率は48.4%で、誘電率は1.75であった。また同様に、50、100、200μmフィルム厚の空孔断面の最大径部aと最小径部bを測定し、いずれもa/b≦2であること、厚さ方向の空孔径Dがフィルム厚tに対して1/2tより小さいことも確認した。
【0078】
次に実施例1と同様に電線を作製し、絶縁層に多数の空孔が形成されていることを確認、絶縁層の空隙率は48%であった。さらにフィルムと同様に絶縁層の空孔断面の最大径部aと最小径部bを測定し、a/b≦2であること、厚さ方向の空孔径Dがフィルム厚tに対して1/2tより小さいことを確認した。
【0079】
(実施例7)
樹脂組成物C100質量部に、吸水性ポリマーのポリアクリル酸塩架橋体Iを平均粒子径3μmに微粉砕処理した1質量部に、蒸留水を飽和吸水量の59質量部まで吸水させたものを撹拌分散した含水率36.9%の含水吸水性ポリマー含有樹脂組成物−実施例7(樹脂組成物−実施例7)を得た。
【0080】
樹脂組成物−実施例7を用い、実施例1と同様に、フィルムを作製しフィルム成形性が良好なことを確認した。50μm厚のフィルムについてマイクロ波加熱後の空隙率は約36%で、誘電率は1.85であった。また同様に、50、100、200μmフィルム厚の空孔断面の最大径部aと最小径部bを測定し、いずれもa/b≦2であること、厚さ方向の空孔径Dがフィルム厚tに対して1/2tより小さいことも確認した。
【0081】
次に実施例1と同様に電線を作製し、絶縁層に多数の空孔が形成されていることを確認、絶縁層の空隙率は35.3%であった。さらにフィルムと同様に絶縁層の空孔断面の最大径部aと最小径部bを測定し、a/b≦2であること、厚さ方向の空孔径Dがフィルム厚tに対して1/2tより小さいことを確認した。
【0082】
【表3】
【0083】
(比較例1)
樹脂組成物A100質量部に、吸水性ポリマーのポリアルキレンオキサイド系樹脂を平均粒子径15μmに微粉砕処理した2質量部に、蒸留水を飽和吸水量の62質量部まで吸水させたものを撹拌分散した含水率37.8%の含水吸水性ポリマー含有樹脂組成物−比較例1(樹脂組成物−比較例1)を得た。
【0084】
樹脂組成物−比較例1を用い、実施例1と同様に、フィルムを作製したが、50μm厚のフィルムでは空隙率8%、誘電率2.35と層中に空孔がわずかしか形成されていないものしか得られなかった(図8、50μm厚のフィルム断面例)。これは、吸水性ポリマーの平均粒子径が大きく、吸水膨潤により径が3〜4倍に大きくなるため4MILブレードの隙間(100μm)を通過できにくくなったためである。このことは7MIL、15MILブレードと隙間が広くなるほどフィルムの空孔数は増えるが、100μm厚のフィルム(図9)では、膜厚に近い空孔ができていることからも、含水吸水性ポリマーの大きさが大きく、4MILブレードでは通過できなかったことを示している。さらに、50、100、200μmフィルム厚の空孔断面の最大径部aと最小径部bを測定したところ、いずれもa/b≦2であったが、100μm及び200μmフィルムでは、厚さ方向の空孔径Dがフィルム厚tに対して1/2tより大きいものが多数確認された。
【0085】
次に実施例1と同様に電線の作製を試みたが、絶縁層の被覆形成が悪く、加圧塗布槽中のダイス部で詰まりやすく断線が発生するなど、電線を得ることができなかった。
【0086】
(比較例2)
樹脂組成物A100質量部に、吸水性ポリマーのポリアルキレンオキサイド系樹脂を平均粒子径8μmに微粉砕処理した20質量部に、吸水量5g/gに調整し蒸留水を100質量部まで吸水させたものを撹拌分散した含水率45.5%の含水吸水性ポリマー含有樹脂組成物−比較例2(樹脂組成−比較例2)を得た。
【0087】
樹脂組成物−比較例2を用い、実施例1と同様に、フィルムの作製を試みたが、吸水性ポリマーの添加量が多いため脆く、いずれもフィルムとして得ることができなかった。次に実施例1と同様に電線の作製を試みたが、絶縁層の被覆が形成できず電線を得ることができなかった。
【0088】
(比較例3)
樹脂組成物A100質量部に、吸水性ポリマーのポリアクリル酸塩架橋体IIを平均粒子径5μmに微粉砕処理した2質量部に、吸水量110g/gに調整し蒸留水を220質量部まで吸水させたものを撹拌分散した含水率68.3%の含水吸水性ポリマー含有樹脂組成物−比較例3(樹脂組成物−比較例3)を得た。
【0089】
樹脂組成物−比較例3を用い、実施例1と同様に、フィルムの作製を試みたが、吸水性ポリマーの吸水量が多いため、いずれも硬化ができずにフィルムとして得ることができなかった。次に実施例1と同様に電線の作製を試みたが、絶縁層の被覆が形成できず電線を得ることができなかった。
【0090】
(比較例4)
樹脂組成物B100質量部に、吸水性ポリマーのポリアルキレンオキサイド系樹脂を平均粒子径10μmに微粉砕処理した2質量部に、吸水量9g/gに調整し蒸留水を18質量部まで吸水させたものを撹拌分散した含水率15%の含水吸水性ポリマー含有樹脂組成物−比較例4(樹脂組成物−比較例4)を得た。
【0091】
樹脂組成物−比較例4を用い、実施例1と同様に、フィルムを作製しフィルム成形性が良好なことを確認したが、50μm厚のフィルムについてマイクロ波加熱後の空隙率は13%で、誘電率は2.4であり、含水量が少ないと形成される空隙率も小さく、低誘電率化効果が小さいものであった(図10)。―方、50、100、200μmフィルム厚の空孔断面の最大径部aと最小径部bを測定し、いずれもa/b≦2であること、厚さ方向の空孔径Dがフィルム厚tに対して1/2tより小さいものであった。
【0092】
次に実施例1と同様に電線を作製し、絶縁層に空孔が形成されていることを確認したが、絶縁層の空隙率も11.5%と低いものであった。さらにフィルムと同様に絶縁層の空孔断面の最大径部aと最小径部bを測定し、a/b≦2であること、厚さ方向の空孔径Dがフィルム厚tに対して1/2tより小さいものであった。
【0093】
(比較例5)
樹脂組成物B100質量部に、吸水性ポリマーのポリアクリル酸塩架橋体IIを平均粒子径10μmに微粉砕処理した1質量部に、吸水量110g/gに調整し蒸留水を110質量部まで吸水させたものを撹拌分散した含水率52.1%の含水吸水性ポリマー含有樹脂組成物−比較例5(樹脂組成物−比較例5)を得た。
【0094】
樹脂組成物−比較例5を用い、実施例1と同様に、フィルムの作製を試みたが、弱くちぎれやすくいずれもフィルムとして得ることができなかった。次に実施例1と同様に電線の作製を試みたが、絶縁層の被覆が形成できず電線を得ることができなかった。
【0095】
(比較例6)
樹脂組成物B100質量部に、吸水性ポリマーのポリアクリル酸塩架橋体Iを1質量部に、蒸留水を飽和吸水量の59質量部まで吸水させたものを撹拌分散しだ含水率36.9%の含水吸水性ポリマー含有樹脂組成物−比較例6(樹脂組成物−比較例6)を得た。
【0096】
樹脂組成物−比較例6を用い、実施例1と同様に、フィルムを作製したが、50μm厚のフィルムでは空隙率3%、誘電率2.65と層中に空孔がわずかしか形成されていないものしか得られなかった(図11)。これは、比較例1と同様、吸水性ポリマーの平均粒子径が大きく、吸水膨潤により径が3〜4倍に大きくなるため4MILブレードの隙間(100μm)を通過できにくくなったためである。7MIL、15MILブレードと隙間が広くなるほどフィルムの空孔数は増え、200μm厚のフィルムでは、含水率が同じ実施例7の50μm厚のフィルムと同程度の空隙率36%、誘電率1.87であった(図12)。さらに、50、100、200μmフィルム厚の空孔断面の最大径部aと最小径部bを測定したところ、いずれもa/b≦2であったが、100μm及び200μm厚のフィルムでは、厚さ方向の空孔径Dがフィルム厚tに対して1/2tより大きいものが多数確認された。
【0097】
次に、実施例1と同様に、絶縁電線を作製したところ、フィルムと同様に、絶縁層に含水ポリマーがほとんど含まれないこと、すぐに加圧塗布横内のダイス部に含水ポリマーが詰まり断線が発生した。
【0098】
(比較例7)
樹脂組成物B100質量部に、吸水性ポリマーのポリアクリル酸塩架橋体Iを平均粒子径3μmに微粉砕処理した5質量部に、蒸留水を飽和吸水量の295質量部まで吸水させたものを撹拌分散した含水率73.8%の含水吸水性ポリマー含有樹脂組成物−比較例7(樹脂組成物−比較例7)を得た。
【0099】
樹脂組成物−比較例7を用い、実施例1と同様に、フィルムの作製を試みたが、含水率が高すぎるためいずれもフィルムとして得ることができなかった。次に実施例1と同様に電線の作製を試みたが、絶縁層の被覆が形成できず電線を得ることができなかった。
【0100】
(比較例8)
低誘電性熱可塑性ポリマーのテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合樹脂(PFA)を用い、28mm押出機で、液化炭酸ガスを圧入しながらより導体48AWG(7/0.013 S−MF−AG合金線、日立電線製)上に絶縁層の被覆厚50μmの押出被覆を速度50m/minで試みたが、断線が多発し、多孔質(発泡)電線を得ることができなかった。
【0101】
以上、実施例及び比較例で説明したとおり、実施例では予め吸水させた吸水性ポリマーを液状架橋硬化型樹脂組成物に分散したものを硬化させた後、加熱により脱水させることで、容易に多孔質物や多孔質絶縁電線が得られる。また、液状架橋硬化型樹脂組成物とし、吸水性ポリマーの粒子径、吸水量を適正化することにより、薄膜、細径の多孔質被覆電線を断線等の問題なく容易に得ることができる。―方、吸水性ポリマーの粒子径が大きい比較例1、6では薄肉化が困難であり、吸水量が多い比較例3、5、含水率が多い比較例7、吸水性ポリマーの添加量が多い比較例2では、成形性が著しく劣り、吸水量が少なく、含水率が低い比較例4では、成形性は問題ないが、空隙率が低いため低誘電効果が得られないものであった。また、従来押出方式の比較例8ではまったく高速化は困難であった。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本発明の好適な実施形態を示す絶縁電線の横断面図である。
【図2】図1の絶縁電線を用いた多層被覆ケーブルを示す横断面図である。
【図3】図1の絶縁電線を用いた同軸ケーブルを示す横断面図である。
【図4】本発明の実施例1により作製した厚さ50μmのフィルムを示す断面図である。
【図5】本発明の実施例2により作製した厚さ50μmのフィルムを示す断面図である。
【図6】本発明の実施例3により作製した厚さ50μmのフィルムを示す断面図である。
【図7】本発明の実施例5により作製した厚さ50μmのフィルムを示す断面図である。
【図8】比較例1により作製した厚さ50μmのフィルムを示す断面図である。
【図9】比較例1により作製した厚さ100μmのフィルムを示す断面図である。
【図10】比較例4により作製した厚さ50μmのフィルムを示す断面図である。
【図11】比較例6により作製した厚さ50μmのフィルムを示す断面図である。
【図12】比較例6により作製した厚さ200μmのフィルムを示す断面図である。
【図13】マイクロ波加熱と120℃オーブン加熱による脱水効率の比較図である。
【符号の説明】
【0103】
1 絶縁電線
2 導体
3 絶縁層
4 空孔
5 被覆層
6 多層被覆ケーブル
7 同軸ケーブル
8 シールド線
9 被覆層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状架橋硬化型樹脂組成物に予め吸水させ膨潤させた吸水性ポリマーを分散させた含水吸水性ポリマー含有樹脂組成物であって、前記吸水性ポリマーの吸水膨潤前の平均粒子径が10μm以下であり、吸水性ポリマーの吸水量が10〜100g/gであることを特徴とする含水吸水性ポリマー含有樹脂組成物。
【請求項2】
前記液状架橋硬化型樹脂組成物が、紫外線又は熱によって硬化する組成物である請求項1に記載の含水吸水性ポリマー含有樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の含水吸水性ポリマー含有樹脂組成物を、架橋することにより硬化させた後、その硬化させた含水吸水性ポリマー含有樹脂組成物を加熱して前記吸水性ポリマーの水分を除去して形成したことを特徴とする多孔質物。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の含水吸水性ポリマー含有樹脂組成物を導体の外周に被覆し、その吸水性ポリマー含有樹脂組成物を硬化させた後、その硬化させた含水吸水性ポリマー含有樹脂組成物を加熱して前記吸水性ポリマーの水分を除去して絶縁層を形成したことを特徴とする絶縁電線。
【請求項5】
前記絶縁層の厚さが100μm以下であり、前記絶縁層の空隙率が20%〜60%である請求項4に記載の絶縁電線。
【請求項6】
前記絶縁層の空隙を形成する空孔の断面が略円形であり、その最大径部と最小径部との比が2以下であり、厚さ方向の空孔径Dが前記絶縁層の厚さtに対して、D<1/2tで形成される請求項5に記載の絶縁電線。
【請求項7】
請求項4〜6いずれかに記載の絶縁電線の外周に金属層を設けたことを特徴とする同軸ケーブル。
【請求項8】
導体の外周に、液状架橋硬化型樹脂組成物に予め吸水し膨潤した吸水性ポリマーを分散した含水吸水性ポリマー含有樹脂組成物を被覆して絶縁層を形成し、この絶縁層を架橋することにより前記含水記吸水性ポリマー含有樹脂組成物を硬化し、さらに加熱することにより、吸水性ポリマーの水分を除去して前記絶縁層の中に空孔を形成することを特徴とする絶縁電線の製造方法。
【請求項9】
前記加熱にマイクロ波加熱を用いる請求項8に記載の絶縁電線の製造方法。
【請求項1】
液状架橋硬化型樹脂組成物に予め吸水させ膨潤させた吸水性ポリマーを分散させた含水吸水性ポリマー含有樹脂組成物であって、前記吸水性ポリマーの吸水膨潤前の平均粒子径が10μm以下であり、吸水性ポリマーの吸水量が10〜100g/gであることを特徴とする含水吸水性ポリマー含有樹脂組成物。
【請求項2】
前記液状架橋硬化型樹脂組成物が、紫外線又は熱によって硬化する組成物である請求項1に記載の含水吸水性ポリマー含有樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の含水吸水性ポリマー含有樹脂組成物を、架橋することにより硬化させた後、その硬化させた含水吸水性ポリマー含有樹脂組成物を加熱して前記吸水性ポリマーの水分を除去して形成したことを特徴とする多孔質物。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の含水吸水性ポリマー含有樹脂組成物を導体の外周に被覆し、その吸水性ポリマー含有樹脂組成物を硬化させた後、その硬化させた含水吸水性ポリマー含有樹脂組成物を加熱して前記吸水性ポリマーの水分を除去して絶縁層を形成したことを特徴とする絶縁電線。
【請求項5】
前記絶縁層の厚さが100μm以下であり、前記絶縁層の空隙率が20%〜60%である請求項4に記載の絶縁電線。
【請求項6】
前記絶縁層の空隙を形成する空孔の断面が略円形であり、その最大径部と最小径部との比が2以下であり、厚さ方向の空孔径Dが前記絶縁層の厚さtに対して、D<1/2tで形成される請求項5に記載の絶縁電線。
【請求項7】
請求項4〜6いずれかに記載の絶縁電線の外周に金属層を設けたことを特徴とする同軸ケーブル。
【請求項8】
導体の外周に、液状架橋硬化型樹脂組成物に予め吸水し膨潤した吸水性ポリマーを分散した含水吸水性ポリマー含有樹脂組成物を被覆して絶縁層を形成し、この絶縁層を架橋することにより前記含水記吸水性ポリマー含有樹脂組成物を硬化し、さらに加熱することにより、吸水性ポリマーの水分を除去して前記絶縁層の中に空孔を形成することを特徴とする絶縁電線の製造方法。
【請求項9】
前記加熱にマイクロ波加熱を用いる請求項8に記載の絶縁電線の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
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【図5】
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【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−209190(P2009−209190A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−50913(P2008−50913)
【出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】
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