説明

含水土壌の粒状化方法および含水土壌処理剤

【課題】 高含水比の含水土壌であっても少量かつ短時間で対応し得る含水土壌の粒状化方法および含水土壌処理剤を提供する。
【解決手段】 (A)カルボキシル基(カルボン酸塩基を含む)およびスルホン基(スルホン酸塩基を含む、以下同じ)を含有し、かつ、全構成ユニット100mol%中、スルホン基含有ユニットが0.5〜50mol%である水溶性重合体(a)を含水土壌に混合した後に、(B)三水化物以上の水化物を形成し得る二価以上の陽イオンを含有する硫酸塩(b)と、水硬性物質(c)とを添加する含水土壌の粒状化方法。
上記含水土壌の粒状化方法に用いる含水土壌処理剤であって、カルボキシル基(カルボン酸塩基を含む)およびスルホン基(スルホン酸塩基を含む、以下同じ)を含有し、かつ、全構成ユニット100mol%中、スルホン基含有ユニットが0.5〜50mol%である水溶性重合体(a)を構成要素に含む含水土壌処理剤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含水土壌を改質し、砂などの代替品として埋め戻し材などに再利用し得るようにするための処理剤および処理方法に関するものである。本発明の処理剤および処理方法は、含水比が高く、極めて低粘度の含水土壌にも適用可能である。
【背景技術】
【0002】
土木工事などで発生する建設発生土のうち、掘削工事で発生する発生土は、掘削部へ水を流し込んで汚泥として外部へ排出することがあり、このような汚泥は含水比が高いため、そのままでは通常のトラックやダンプカーで運搬することすらできず、当然、埋め戻し材として使用することはできない。このため、泥土に対して、脱水処理や固化処理などを施して運搬可能な状態とすることが行われている。
【0003】
しかし、脱水処理を行っても、上記のような再利用を行うには、さらに適切な改良を施す必要があり、また、固化処理を行う場合では、得られた固化土壌をどうするか、という点で、発生する泥土量と見合うだけの固化土壌の廃棄場所がそれほどない、という問題を抱えていた。
【0004】
こういった観点から、泥土などの含水土壌をさらさらの砂状のような粒状物にして、埋め戻し材に利用する検討がなされている。粒状化方法としては、例えば、カルボシキル基含有水溶性重合体粉末を添加混合し、次に石灰を添加混合し、養生を経て粒状化する方法がある(特許文献1)。また、カルボキシル基含有水溶性重合体粉末が含水土壌に溶け難い、という問題を解決した技術として、カルボキシル基とスルホン基とを含有する水溶性重合体を用いて粒状化する方法がある(特許文献2)。さらに、特許文献3には、アクリルアミドとアクリル酸との共重合体とアルギン酸ナトリウムとを、泥土に混ぜて粒状化する方法が開示されている。この他、特許文献4には、水溶性高分子物質および2価以上の陽イオンを含有する塩類と、水硬性セメントを含有する掘削土の改質方法が開示されている。
【0005】
上記従来技術は、夫々特色があり、それなりの効果を発揮しているが、含水比が高く粘度の低い泥土に適用するには、十分な処理性能を備えているとはいえない場合もあり、例えば、上述の水溶性重合体の如き処理剤を多量に必要とすることが多かった。
【特許文献1】特開平6‐17052号公報
【特許文献2】特開2000‐136383号公報
【特許文献3】特開平10‐152682号公報
【特許文献4】特公平4‐15038号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、高含水比の含水土壌であっても少量、かつ、短時間で微細な粒状土となし得る含水土壌の粒状化方法およびこの方法に用いる含水土壌処理剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成し得た本発明の含水土壌の粒状化方法とは、(A)カルボキシル基(カルボン酸塩基を含む)およびスルホン基(スルホン酸塩基を含む、以下同じ)を含有し、かつ、全構成ユニット100mol%中、スルホン基含有ユニットが0.5〜50mol%である水溶性重合体(a)を含水土壌に混合した後に、(B)三水化物以上の水化物を形成し得る二価以上の陽イオンを含有する硫酸塩(b)と、水硬性物質(c)とを添加するところに特徴を有している。
【0008】
上記水硬性物質(c)としては、セメントが好ましく、上記二価以上の陽イオンとしては、アルミニウム、鉄、マグネシウムのいずれか1種以上が好ましい。
【0009】
本発明の含水土壌の粒状化方法は、本発明の含水土壌処理剤を含水土壌に混合するところに要旨が存在する。上記方法に用いられる本発明の含水土壌処理剤とは、カルボキシル基(カルボン酸塩基を含む)およびスルホン基(スルホン酸塩基を含む)を含有し、且つ全構成ユニット100mol%中、スルホン基含有ユニットが0.5〜50mol%である水溶性重合体(a)を構成要素に含むところに要旨を有している。
【0010】
以下、本明細書において、上記水溶性重合体(a)や該重合体を形成するための単量体における「カルボキシル基」には、特に断らない限り、遊離のカルボキシル基(−COOH基)に加えて、カルボン酸塩基も含めるものとし、同「スルホン基」には、特に断らない限り、遊離のスルホン基(−SOH基)に加えて、スルホン酸塩基も含めることとする。
【0011】
このように、本発明の含水土壌の粒状化方法は、含水土壌から粒状土を製造する方法であり、これらの粒状化方法で得られる粒状土も本発明に包含される。
【発明の効果】
【0012】
特定の水溶性重合体と特定の硫酸塩および水硬性物質を必須の構成要素として用いた本発明の含水土壌処理剤は、優れた含水土壌処理性能を有しており、高含水比土壌であっても、僅かな使用量で短時間のうちに、例えば砂の代替品として使用可能な粒状土とすることができる。
【0013】
また、上記含水土壌処理剤を用いた本発明の含水土壌の粒状化方法によれば、通常、汚泥として廃棄される含水土壌を再利用できるので、環境保全、省資源、および廃棄場所の延命を図り得ると共に、含水土壌の処分費用を低減することが可能である。
【0014】
さらに、本発明の処理剤および粒状化方法で得られる粒状土は、トラックで運搬することが可能であり、砂の代替品としての埋め戻し材など、種々の用途に再利用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
当該技術分野においては、例えば上記特許文献4に開示されているように、2価以上の陽イオンを含有する塩類を、水溶性重合体と共に含水土壌処理剤の構成要素に用い得ることが知られている。
【0016】
しかしながら、本発明者等は、特定の硫酸塩と水硬性物質とを、特定の水溶性重合体と共に含水土壌処理剤を所定の順序で使用すれば、従来の含水土壌処理剤では粒状化し得なかった高含水比で低粘度の含水土壌であっても、極少量かつ短時間で粒状化することができ、さらに処理後の粒状土の径を微細なものにできることを見出し、本発明を完成させた。
【0017】
すなわち、本発明の含水土壌の処理方法とは、カルボシキル基およびスルホン基を含有し、且つ全構成ユニット100mol%中、スルホン基含有ユニットが0.5〜50mol%である水溶性重合体(a)を含水土壌に混合した後に、三水化物以上の水化物を形成し得る二価以上の陽イオンを含有する硫酸塩(b)と、水硬性物質(c)を添加するところに最大の特徴を有している。
【0018】
本発明の含水土壌の粒状化方法および含水土壌処理剤による含水土壌処理のメカニズムについては、次のように考えている。
【0019】
〔1〕水溶性重合体(a)による粒状化効果
水溶性重合体(a)が含水土壌に添加混合されると、この水溶性重合体(a)が水に溶けながら水と結合することで、系内の水を取り込み、このような水を含んだ状態で水溶性重合体(a)の分子鎖がいくつかの土壌粒子に吸着し、土壌粒子同士を付着結合することでさらにその水溶性重合体‐土壌粒子ネットワーク内に水を取り込み、含水土壌を粒状化する。
【0020】
〔2〕上記硫酸塩(b)および水硬性物質(c)に由来するエトリンガイドの生成
高含水比の土壌の場合には、水溶性重合体(a)単独では土壌粒子を結合させる力が弱く、安定な粒状化状態を形成するためには水溶性重合体(a)を多量に添加する必要が生じる。しかしながら、水溶性重合体(a)を多量に使用することはコスト的に望ましくない。そこで、本発明では、上記水溶性重合体(a)に加えて、上記硫酸塩(b)と水硬性物質(c)を使用する。これらの物質は含水土壌中に添加されると、系内において、まず上記硫酸塩(b)が解離し、生成した硫酸イオン(SO2−)が、水硬性物質(c)中に含まれるアルミン酸三カルシウム(3CaO・Al)と反応することでエトリンガイド(3CaO・Al・3CaSO・32HO)を生成する。こうして生成したエトリンガイドは、土壌粒子間に強固な結合を形成し、得られる粒状土の形状を安定化させる。また、エトリンガイドの存在により、土壌粒子同士の間隙に水が包含されていても粒状化が可能となる。加えて、上記組成式にも示されているように、エトリンガイドの生成には多量の化合水が必要であり、エトリンガイドの生成反応そのものが含水土壌中の水分の固定に寄与する。
【0021】
〔3〕硫酸塩(b)由来の陽イオンによる水溶性重合体(a)の賦活効果
通常、土壌粒子は、その表面が正あるいは負に帯電している。一方、本発明にかかる水溶性重合体(a)はカルボキシル基やスルホン基といった官能基を有するため、上記水溶性重合体(a)が、正に帯電した土壌粒子の表面に付着することで、含水土壌の粒状化が進行する。他方、負に帯電した土壌粒子表面には、上記硫酸塩(b)の解離により生じる陽イオンが付着する。そして、上記水溶性重合体(a)は、この陽イオンを介してさらに土壌粒子に付着するため、土壌粒子に関与する水溶性重合体(a)の数が増加し、水溶性重合体(a)単独で使用した場合に比べて、含水土壌の粒状化が一層促進される。
【0022】
本発明の粒状化方法および含水土壌処理剤では、これら(1)〜(3)の効果が相俟って、高含水比・低粘度の含水土壌から安定な粒状化物が短時間の内に得られるようになる。以下に、まず、本発明の含水土壌処理剤の構成要素について、詳細に説明する。
【0023】
本発明で用いられる水溶性重合体(a)の合成に用い得るカルボキシル基含有単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、ビニル酢酸、マレイン酸、イタコン酸、メサコン酸、フマル酸、シトラコン酸、N‐(メタ)アクリロイルアスパラギン酸、およびこれらの単量体のカルボン酸塩(例えば、アルカリ金属塩やアンモニウム塩)が挙げられる。これらの重合性単量体は、1種単独で使用し得る他、2種以上を併用することもできる。上記例示の単量体の中でも、(メタ)アクリル酸およびその塩が好ましく、(メタ)アクリル酸がより好ましい。
【0024】
また、本発明の水溶性重合体(a)は、上記カルボキシル基含有単量体に由来するカルボキシル基のみならず、スルホン基を含有している。例えばポリ(メタ)アクリル酸の如きカルボキシル基含有水溶性重合体では、水に対する溶解速度が比較的遅く、このような水溶性重合体を用いた含水土壌処理剤では、含水土壌の処理時間が比較的長くなる場合がある。しかし、こうしたカルボシキル基含有水溶性重合体でも、さらにスルホン基やスルホン酸塩基を導入することで、水に対する溶解速度が非常に速くなる。よって、カルボキシル基に加えてスルホン基をも含有する水溶性重合体(a)を用いた含水土壌処理剤では、より短時間での含水土壌処理が可能となる。
【0025】
本発明に係る水溶性重合体(a)において、スルホン基を導入するために用い得るスルホン基含有単量体としては、スルホン基を有する重合性単量体であれば特に限定されないが、例えば、2‐アクリルアミド‐2‐メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、アリルオキシベンゼンスルホン酸、2‐ヒドロキシ‐3‐(2‐プロペニルオキシ)プロパンスルホン酸、イソプロペニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、スルホエチル(メタ)アクリレート、イソプレンのスルホン化物、およびこれら単量体のスルホン酸塩(アルカリ金属塩やアンモニウム塩など)が挙げられる。これらの単量体は、1種単独で使用し得る他、2種以上を併用することもできる。上記例示の単量体の中でも、2‐アクリルアミド‐2‐メチルプロパンスルホン酸、スルホエチル(メタ)アクリレート、およびこれらの塩が好ましく、2‐アクリルアミド‐2‐メチルプロパンスルホン酸、スルホエチル(メタ)アクリレートが特に好ましい。よって、水溶性重合体(a)としては、(メタ)アクリル酸と、2‐アクリルアミド‐2‐メチルプロパンスルホン酸および/またはスルホエチル(メタ)アクリレートとを含む単量体組成物を重合させて得られるものが、最も好ましい。
【0026】
水溶性重合体(a)の形成においては、上述のカルボキシル基含有単量体やスルホン基含有単量体と共重合可能な他の単量体を用いてもよい。このような他の単量体としては、例えば、アリルホスホン酸、イソプロペニルホスホン酸、ビニルホスホン酸、およびこれらの塩などのモノエチレン性不飽和酸;ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートなどの、ポリアルキレングリコールと上記カルボキシル基含有単量体とのエステル;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニルなどのビニルエステル;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテルなどのアルキルビニルエーテル;アリルアルコール、メタリルアルコール、3‐メチル‐3‐ブテン‐1‐オール、3‐メチル‐2‐ブテン‐1‐オール、2‐メチル‐3‐ブテン‐2‐オールなどの不飽和アルコール;アクロレインなどのアルデヒド基含有ビニル単量体;(メタ)アクリロニトリルなどのニトリル基含有ビニル単量体;(メタ)アクリルアミド、N‐t‐ブチルアクリルアミドなどのアミド系単量体;ホスホエチルメタクリレート;スチレン;アリルアルコールのエチレンオキシド付加物;N‐ビニル‐2‐ピロリドン;N‐ビニルアセトアミド;N‐ビニルホルムアミド:などが挙げられる。
【0027】
上記例示の他の単量体のうち、モノエチレン性不飽和酸;ポリアルキレングリコールと上記カルボキシル基含有単量体とのエステル;(メタ)アクリル酸エステル;ビニルエステル;アルキルビニルエーテル;不飽和アルコール;ホスホエチルメタクリレート;スチレン;アリルアルコールのエチレンオキシド付加物;N‐ビニル‐2‐ピロリドン;N‐ビニルアセトアミド;N‐ビニルホルムアミド;などのように、含水土壌の処理時にアンモニアなどの気体を発生する虞が無い単量体がより好適である。これらの他の単量体は、必要に応じて、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。上記例示の他の単量体の中でも、メチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N‐ビニル‐2‐ピロリドンが特に好ましい。
【0028】
水溶性重合体(a)においては、該水溶性重合体の全構成ユニット100mol%中、カルボキシル基含有ユニットが50mol%以上、好ましくは75mol%以上、より好ましくは80mol%以上であって、99.5mol%以下、好ましくは99mol%以下であることが推奨される。カルボキシル基含有ユニット量が上記範囲を下回るときには、含水土壌に対する含水土壌処理剤の使用量を増加させる必要が生じる場合がある。他方、上記範囲を超えると、土壌中に存在する金属イオンの影響を受け易くなり、含水土壌処理剤の使用量の変動幅が大きくなる場合がある。
【0029】
また、水溶性重合体(a)においては、該水溶性重合体の全構成ユニット100mol%中、スルホン基含有ユニットが0.5mol%以上、より好ましくは1mol%以上であって、50mol%以下、より好ましくは25mol%以下、さらに好ましくは20mol%以下である。スルホン基含有ユニット量が上記範囲を下回ると、スルホン基の導入による重合体の水溶解速度向上効果が十分に確保できない場合がある。他方、上記範囲を超えると、水溶性重合体(a)中に存在するカルボキシル基含有ユニット量が減少するため、上記の通り、含水土壌に対する含水土壌処理剤の使用量を増加させる必要が生じるようになる。
【0030】
なお、本明細書において、水溶性重合体(a)における上述の「構成ユニット」とは、水溶性重合体(a)を構成する基本単位を意味し、カルボキシル基含有ユニットとは、こうした基本単位のうち、カルボキシル基を含有するものを、スルホン基含有ユニットとは、同じくスルホン基を含有するものを意味している。
【0031】
また、水溶性重合体(a)において、上述のカルボキシル基含有ユニット量とスルホン基含有ユニット量の好適範囲から導き出せるカルボキシル基とスルホン基との好適なモル比は、199:1〜1:1であり、このモル比は99:1〜4:1であることがより好ましい。なお、上記水溶性重合体(a)におけるカルボシキル基とスルホン基とのモル比は、例えば、常法に従い、pH=2に調整された水溶液と、pH=10に調整された水溶液とを用いたコロイド滴定を実施することで容易に測定することができる。
【0032】
水溶性重合体(a)の製造方法は特に限定されるものではなく、例えば、ラジカル重合開始剤などの重合開始剤を用いる重合方法;イオン化放射線、電子線などの放射線や、紫外線などの電磁波を照射する重合方法;加熱による重合方法;などの従来公知の各種重合方法を採用することができ、さらに、これら重合方法の2種以上を併用することも可能である。
【0033】
また、重合形式としては、懸濁重合、溶液重合、乳化重合、塊状重合などの従来公知の各種重合形式を採用することができ、さらにこれらはバッチ式、連続式のいずれの態様であっても構わない。
【0034】
上述の重合開始剤を用いる重合方法を採用する場合に用い得るラジカル重合開始剤は、特に限定されないが、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過酸化水素、過酸化ベンゾイル、t‐ブチルパーオキサイドなどの過酸化物;亜硫酸水素ナトリウム、メタ重硫酸ナトリウム、硫酸第一鉄アンモニウム、L‐アスコルビン酸、トリエタノールアミンなどの、レドックス系で好適に用いられる還元剤;2,2’‐アゾビス(2,4‐ジメチルバレロニトリル)、2,2’‐アゾビス(2‐アミノプロパン)二塩酸塩、2,2’‐アゾビスイソブチルアミド二水和物、2,2’‐アゾビス〔2‐(2‐イミダゾリン‐2‐イル)プロパン〕二塩酸塩、4,4’‐アゾビス(4‐シアノペンタン酸)などのアゾ系開始剤;1‐ヒドロキシ‐シクロヘキシル‐フェニル‐ケトン(商品名「IRGACURE184」)、2‐ヒドロキシ‐2‐メチル‐1‐フェニル‐プロパン‐1‐オン(商品名「DAROCUR1173」)、IRGACURE184とベンゾフェノンとの共融混合物(商品名「IRGACURE500」)、2,2‐ジメトキシ‐1,2‐ジフェニルエタン‐1‐オン(商品名「IRGACURE651」)、ビス(2,4,6‐トリメチルベンゾイル)‐フェニルフォスフィンオキサイド(商品名「IRGACURE819」)、2‐メチル‐1‐[4‐(メチルチオ)フェニル]‐2‐モルフォリノプロパン‐1‐オン(商品名「IRGACURE907」)、2‐ベンジル‐2‐ジメチルアミノ‐1‐(4‐モルフォリノフェニル)‐ブタノン‐1(商品名「IRGACURE369」)とIRGACURE651の3:7の混合物(商品名「IRGACURE1300」)、ビス(2,6‐ジメトキシベンゾイル)‐2,4,4‐トリメチル‐ペンチルフォスフィンオキサイドとIRGACURE184の1:3の混合物(商品名「IRGACURE1800」)、2,4,6‐トリメチルベンゾイル‐ジフェニル‐フォスフィンオキサイドとDAROCUR1173の1:1の液状混合物(商品名「DAROCUR4265」)、2,4,6‐トリメチルベンゾイル‐ジフェニル‐フォスフィンオキサイド(商品名「DAROCUR TPO」)などの光開始剤(尚、上記「IRGACURE」,「DAROCUR」はいずれもチバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製の光開始剤である);などが使用可能である。なお、重合開始剤の使用量や、重合反応の条件などは、特に限定されるものではなく、使用する単量体の種類、量などに応じて適宜決定すればよい。
【0035】
水溶性重合体(a)では、その重量平均分子量は特に限定されないが、例えば10万以上、より好ましくは50万以上、さらに好ましくは100万以上であって、2000万以下、より好ましくは1000万以下であることが推奨される。重量平均分子量が上記範囲を超えると、水に対する溶解速度が低下する場合があり、また、このような水溶性重合体を構成要素とする含水土壌処理剤では、含水土壌と混合した際に増粘効果が生じて両者を均一に混合することが困難となる虞ある他、重合体の合成自体も困難となる傾向にある。他方、重量平均分子量が上記範囲を下回る場合には、この水溶性重合体を用いた含水土壌処理剤では、含水土壌処理性能(粒状化性能)が低下することがある。なお本発明者等の検討により、一般的には、水溶性重合体(a)の重量平均分子量は、上記範囲内でもより高分子量側の方が、含水土壌処理性能が優れている傾向にあることが判明している。
【0036】
ちなみに、含水土壌処理剤の取り扱い性の面から、水溶性重合体(a)の水溶液の好適な粘度は、例えば、濃度0.2質量%の場合に25℃で5〜10000mPa・s、より好ましくは10〜2000mPa・sである。よって、水溶性重合体(a)の重量平均分子量は、このような水溶液粘度を達成できるように調整することも好ましい。
【0037】
上述の通り、水溶性重合体(a)では、これらに含まれるカルボキシル基は、遊離のカルボキシル基またはカルボン酸塩基の態様で存在していればよいが、遊離のカルボキシル基が含まれていることがより好ましい。なお、カルボン酸塩基の場合の具体例としては、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩;アミン塩;などが挙げられるが、これらに限定される訳ではない。
【0038】
水溶性重合体(a)中に含まれるカルボキシル基100mol%中、遊離のカルボキシル基の割合は、5mol%以上であることが好ましく、20mol%以上であることがより好ましく、40mol%以上であることがさらに好ましく、60mol%以上であることが特に好ましい。遊離のカルボキシル基の割合が上記下限値を下回ると、このような水溶性重合体を用いた含水土壌処理剤では、含水土壌処理性能が低下する場合がある。処理すべき含水土壌の性質によっては(例えば関東地方で排出される含水土壌)、遊離のカルボキシル基の割合は、100mol%であることが最も好ましい。
【0039】
水溶性重合体(a)が、カルボン酸塩基やスルホン酸塩基を有する場合には、これらの水溶性重合体(a)を形成するための単量体としてカルボン酸塩基やスルホン酸塩基を含有するものを用いて合成する他、遊離のカルボキシル基や遊離のスルホン基を有する単量体を用いて一旦重合体を合成した後、これら遊離のカルボキシル基や遊離のスルホン基の一部または全部を中和して塩(カルボン酸塩基、スルホン酸塩基)としてもよい。中和のために利用できるアルカリとしては、ナトリウム、カリウム、リチウムなどのアルカリ金属の水酸化物や炭酸塩;アンモニア;モノメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジメチルアミン、トリエチルアミンなどのアルキルアミン類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イソプロパノールアミン、第2級ブタノールアミンなどのアルカノールアミン類などを挙げることができるが、ナトリウムの水酸化物や炭酸塩が一般的である。
【0040】
また、水溶性重合体(a)におけるスルホン基は、この水溶性重合体(a)を形成するための重合性単量体が予め有していた基の他、特定の重合体を後変成することにより導入された基であってもよい。
【0041】
スルホン基を後変成により導入するに当たり、ベースとなる重合体(後変成用重合体)としては、例えば、上記例示のカルボキシル基含有単量体、および必要に応じて上記例示のスルホン基含有単量体やその他の単量体(上記例示の各単量体の他、例えばブタジエンやイソプレンの如き分子内に二重結合を2個以上有するもの)を、上記例示の各種方法で重合して得られるものが使用できる。このような後変成用重合体の中でも、ポリ(メタ)アクリル酸が好適であり、ポリアクリル酸がより好ましい。
【0042】
上述の後変成用重合体にスルホン基を導入する後変成の方法としては、該重合体に、後述のスルホン基導入化合物を反応させる方法が採用できる。例えば、後変成用重合体の含有するカルボキシル基と、スルホン基導入化合物であるイセチオン酸ナトリウム(ヒドロキシエタンスルホン酸ナトリウム)が含有するヒドロキシル基とを、エステル結合させる方法;後変成用重合体が含有するカルボキシル基と、スルホン基導入化合物であるタウリン・ナトリウム塩(アミノエタンスルホン酸ナトリウム)が含有するアミノ基とを、アミド結合させる方法;スルホン基導入化合物である発煙硫酸などを用いて、後変成用重合体をスルホン化する方法;後変成用重合体が含有する二重結合に、スルホン基導入化合物である亜硫酸水素ナトリウムを付加反応させる方法;などが挙げられるが、これらに限定される訳ではない。
【0043】
スルホン基導入化合物としては、後変成用重合体にスルホン基を導入し得るものであれば特に限定されない。上記例示の化合物以外の具体例としては、ヒドロキシメタンスルホン酸ナトリウム、ヒドロキシプロパンスルホン酸ナトリウムなどのエステル結合形成に好適な化合物;アミノメタンスルホン酸ナトリウム、アミノプロパンスルホン酸などのアミド結合形成に好適な化合物などが挙げられる。
【0044】
後変成の反応方法・条件は特に限定されず、使用するスルホン基導入化合物およびその反応のタイプに応じて、適宜選択すればよい。例えば、後変成用重合体とスルホン基導入化合物とを混合して加熱する方法などが採用できる。また、後変成用重合体に対するスルホン基導入化合物の使用量についても特に限定されず、必要なスルホン基量を満たし得るように、該重合体や該化合物の種類、これらの組み合わせなどに応じて、適宜決定すればよい。また、後変成用重合体として、水溶性重合体(a)を用い、該水溶性重合体中のスルホン基量を高める目的で、上記の後変成を実施することも可能である。
【0045】
なお、後変成によりスルホン基を導入した水溶性重合体において、スルホン基含有ユニット量を定量するに当たっては、この後変成によってスルホン基が導入された基本単位も、前記スルホン基含有ユニットに含めて評価する。
【0046】
水溶性重合体(a)を本発明の含水土壌処理剤で使用する場合には、該重合体は水溶液やエマルジョンであってもよく、粉体であっても構わない。なお、水溶性重合体(a)の種類や分子量などによっては、水溶液が非常に高粘度となり、取り扱い性が低下したり、含水土壌処理時において、含水土壌との混合性が低下する場合もあるため、このような水溶性重合体(a)の水溶液の場合には、水を多量に使用して該水溶液濃度を下げ、粘度を低下させる必要があることもある。よって、取り扱い性や含水土壌との混合性を考慮すると、水溶性重合体(a)は、必要に応じて乾燥、粉砕して、粉体として使用することが好ましい。なお、水溶性重合体(a)の乾燥方法や粉砕方法は特に限定されず、従来公知の方法を採用すればよい。
【0047】
水溶性重合体(a)を粉体(粒子)として用いる場合の粒径は、平均粒径で0.01〜2mmであることが好ましく、0.02〜1mmであることがより好ましい。平均粒径がこのような範囲の水溶性重合体(a)であれば、この水溶性重合体(a)を構成要素とする処理剤を含水土壌と混合しても継粉になり難く、取り扱い性も良好である。
【0048】
本発明で用いる硫酸塩(b)は、三水化物以上の水化物を形成し得る二価以上の陽イオンを含有するものである。本発明の処理剤は、かかる硫酸塩(b)の使用により、系内において、エトリンガイドを生成させ(上記〔2〕)、さらに、上記水溶性重合体(a)の作用を賦活させることで(上記〔3〕)、たとえ、高含水比の含水土壌であっても、少量の水溶性重合体(a)の使用で、短時間の内に含水土壌を微細な粒状土とすることを可能にしたものである。
【0049】
上記硫酸塩(b)に含まれる三水化物以上の水化物を形成し得る二価以上の陽イオンとしては、周期律表2族、3〜15族の遷移金属の陽イオンなどが挙げられ、例えば、マグネシウム、アルミニウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ロジウム、インジウム、白金、ランタン、ネオジムなどの陽イオンが例示できる。これらの中でも、上記陽イオンは、アルミニウム、鉄、マグネシウムのいずれか一種以上であるのが好ましく、具体的には、上記硫酸塩(b)としては、硫酸アルミニウム、硫酸鉄(II)、硫酸鉄(III)、硫酸マグネシウムのいずれか1種以上であるのが好ましい。
【0050】
尚、上記硫酸塩(b)は、水溶性重合体(a)を含水土壌に混合・分散させた後に添加するのが好ましい(詳しくは後述する)。
【0051】
また、本発明の含水土壌処理剤では、さらに水硬性物質(c)も必須の構成要素とする。水硬性物質(c)は、粒状土を固化させ、その強度の向上に寄与すると同時に、上述のように硫酸塩(b)と共に用いることで、含水土壌中にエトリンガイドを生成し、含水土壌中の水分をエトリンガイドの化合水として固定する効果も有している。水硬性物質(c)としては、水中で硬化が進行する物質であれば特に限定されないが、例えば、セメント、生石灰、消石灰、石膏(半水石膏、無水石膏)、およびこれらの混合物などが挙げられる。上記例示の水硬性物質の中でも、セメントが好適である。なお、上記含水土壌処理剤を用いる本発明の粒状化方法においては、通常の態様では、水硬性物質(c)は、水溶性重合体(a)を含水土壌と混合・分散させた後に添加するのが好ましい。なお、作業性や、処理時間の短縮、短時間での粒状化を促進する観点からは、硫酸塩(b)と水硬性物質(c)は、同時に添加すること、あるいは予め混合した状態で含水土壌に添加することが推奨される。
【0052】
上記のセメントとしては、公知の各種セメントを採用することができる。例えば、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメントなどのポルトランドセメント;高炉セメント;アルミナセメント;カルシウムセメント;フライアッシュセメント;などが挙げられるが、これらに限定される訳ではない。中でも、重金属である6価クロムの溶出が実質的に見られない点で、高炉セメントが好ましく採用できる。
【0053】
その他、本発明の含水土壌処理剤では、吸水性樹脂、吸水性繊維物質(セルロース、パルプ、回収古紙など)、タルク、ベントナイト、酸性白土、アルミナ、カオリン、シリカ、ゼオライト、パーライト、珪砂、珪藻土、フライアッシュなどを必要に応じて構成要素とすることもできる。
【0054】
本発明の含水土壌処理剤の形態は、上記水溶性重合体(a)(粉体、水溶液、エマルジョン)が、上記硫酸塩(b)や水硬性物質(c)とは分けて包装されているのが好ましい。尚、硫酸塩(b)と水硬性物質(c)については特に限定はなく、上記硫酸塩(b)と水硬性物質(c)とが別々に包装されたもの、あるいは、上記硫酸塩(b)と水硬性物質(c)とが混合した状態で包装されたもの、などいずれの態様も採用可能である。
【0055】
本発明の含水土壌の処理方法では、上記いずれの形態の含水土壌処理剤を使用する場合であっても、まず、水溶性重合体(a)を含水土壌に混合し、その後、三水化物以上の水化物を形成し得る二価以上の陽イオンを含有する硫酸塩(b)と、水硬性物質(c)とを添加することが重要である。上記硫酸塩(b)や水硬性物質(c)を先に添加すると、水溶性重合体(a)が土壌粒子に働きかけるよりも先にこれらの成分が水溶性重合体(a)に作用し、水溶性重合体(a)の効果が十分に発揮されず、含水土壌を粒状化することができなくなる場合がある。尚、上記水溶性重合体(a)が含水土壌中に分散している状態であれば、上記硫酸塩(b)と水硬性物質(c)の添加方法は特に限定されず、逐次であっても同時であってもよい。作業性、処理時間を短縮する観点からは、上記硫酸塩(b)と水硬性物質(c)とは、含水土壌へ同時に添加するのが好ましい。
【0056】
水溶性重合体(a)の混合後、上記硫酸塩(b)および水硬性物質(c)を添加するまでの時間は特に限定されないが、含水土壌と水溶性重合体(a)が十分に混合されてから硫酸塩(b)および水硬性物質(c)を添加することが好ましく、処理スケールの大きさにもよるが、例えば、水溶性重合体(a)の混合後20〜180秒程度の時間をおいてから上記硫酸塩(b)や水硬性物質(c)を添加することが推奨される。なお、含水土壌の処理を開始してから、すなわち、水溶性重合体(a)を含水土壌に混合してから、含水土壌処理の完了までの時間(トータル処理時間)は420秒以内であることが望ましい。
【0057】
含水土壌と水溶性重合体(a)あるいは、水溶性重合体(a)が分散した含水土壌と硫酸塩(b)および水硬性物質(c)とを混合する方法は特に限定されないが、これらを混練することなく撹拌・混合し得る混合機を用いることが好ましい。例えば、これらの混合物に剪断力を付与しながら撹拌し得るように、棒状や釣針状などに形成されている形状の撹拌翼を備えた装置が好適である。すなわち、撹拌翼は、撹拌・混合によって移動する混合物の移動方向に対して、できるだけ直角方向に拡がった形状のものが、混練による粒子径の粗大化を抑制し得ると共に、撹拌翼や装置内壁への混合物の付着を防止できるため、望ましい。
【0058】
このような装置としては、水平軸型混合機や垂直軸型混合機などが挙げられる。水平軸型混合機としては、一軸および複数軸パドル型混合機が好ましい。垂直軸型混合機としては、例えば、パンミキサ型混合機が好ましく、遊星型混合機がより好ましく、該遊星型混合機の中でも、ソイルミキサや、モルタルミキサ、アイリッヒ混合機が特に好ましい。
【0059】
粒状化までの時間は短い方が作業効率上好ましく、通常、数分以内である。撹拌によって、含水土壌はさらさらの砂状の粒状土になる。粒状土の粒径は、0.1〜100mm程度であることが好ましく、0.1〜40mmであることがより好ましい。
【0060】
なお、水溶性重合体(a)の混合、または、水溶性重合体(a)と硫酸塩(b)との混合により含水土壌がすでに粒状化されている場合には、粒状土の表面に硫酸塩(b)および/または水硬性物質(c)をまぶすように付着させることが望ましい。別段、水硬性物質の一部が粒状土の内部に取り込まれても差し支えない。
【0061】
こうした含水土壌の処理における処理剤の使用量は、含水処理の態様(含水比や粘度、土壌成分の種類など)によって変動するが、例えば、含水土壌100質量部に対し、上記水溶性重合体(a)の使用量を0.01質量部以上であって、5質量部以下、より好ましくは1質量部以下とすることが推奨される。また、上記硫酸塩(b)の使用量は、含水土壌100質量部に対し、0.1質量部以上であるのが好ましく、より好ましくは2質量部以上であり、さらに好ましくは5質量部以上であって、100質量部以下であるのが好ましく、より好ましくは35質量部以下である。さらに、水硬性物質(c)は、その使用量が、含水土壌100質量部に対し、1質量部以上であって、より好ましくは5質量部以上であって、35質量部以下であるのが好ましく、より好ましくは20質量部以下とすることが推奨される。よって、本発明の含水土壌処理剤における各構成要素の使用比率は、含水土壌100質量部に対する各構成要素の上記好適使用量の範囲内で、決定すればよい。例えば、上記水溶性重合体(a)と、上記硫酸塩(b)および水硬性物質(c)との配合比〔(a):(b)+(c)〕は質量比で1:1以上とするのが好ましく、より好ましくは1:10以上であり、1:10000以下とするのが好ましく、より好ましくは1:1000以下とすることが推奨される。また、上記硫酸塩(b)と、水硬性物質(c)との配合比〔(b):(c)〕は質量比で1:0.01以上とするのが好ましく、より好ましくは1:0.1以上であり、1:500以下とするのが好ましく、より好ましくは1:50以下とすることが推奨される。
【0062】
含水土壌では、含水比が同じであっても、土壌の成分組成などに応じてその粘度が異なり、処理の容易さにも違いが生じる。こうした成分組成などの違いによる影響を加味して、含水土壌の粘度に関係する特性を評価する指標として、例えば、後述の測定法によって得られるフロー値があるが、本発明の含水土壌処理剤および処理方法では、従来の処理剤が対象としていたフロー値55mm以上70mm未満程度の比較的低含水比の土壌のみならず、フロー値70mm以上1000mm以下程度の高含水比・低粘度の土壌に対しても、上述の如き少ない使用量で、従来レベルの粒径の粒状土とすることが可能であり、非常に優れた含水土壌処理性能を備えている。
【0063】
上記フロー値は次のようにして求められる。内径:55mm、高さ:55mmの中空円筒をテーブル上に置き、該円筒内に含水土壌を詰めた後、円筒を垂直に持ち上げた際に、テーブルに広がった含水土壌の直径(長径と短径)を2方向について測定し、この平均値をフロー値とする。
【0064】
本発明の処理剤および処理方法で得られる粒状土は、トラックで運搬することが可能であり、砂の代替品としての埋め戻し材など、種々の用途に再利用することができる。
【実施例】
【0065】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は本発明を制限するものではなく、前・後記の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施をすることは、全て本発明の技術的範囲に包含される。なお、本実施例において、「部」は、特に断らない限り、質量基準である。
【0066】
<水溶性重合体>
水溶性重合体A
水溶性重合体Aは、アクリル酸:90mol%と2‐アクリルアミド‐2‐メチルプロパンスルホン酸ナトリウム:10mol%との共重合体であり、次の製法によって合成したものである。
【0067】
攪拌機、温度計、還流冷却器、窒素導入管を備えた5Lのステンレス鋼製セパラブルフラスコ(I)に、シクロヘキサン:1000g、ソルビタンモノステアレート:13.5gを入れ、攪拌しながら50ml/分の速度で窒素を導入し、70℃まで昇温した。
【0068】
攪拌機、温度計、還流冷却器、窒素導入管を備えた2Lのセパラブルフラスコ(II)に、アクリル酸:332.5g、2‐アクリルアミド‐2‐メチルプロパンスルホン酸:106.2g、48質量%水酸化ナトリウム水溶液:42.8g、イオン交換水:391.8gを入れ、攪拌して溶解させた。さらに攪拌を継続しながら、窒素を25分間セパラブルフラスコ(II)の溶液内に導入した後(溶液の溶存酸素濃度1mg/L以下)、2,2’‐アゾビス[2‐(2‐イミダゾリン‐2‐イル)プロパン]二塩酸塩が0.03質量%、4,4’‐アゾビス(4‐シアノペンタン酸)が0.04質量%、および次亜リン酸ソーダ一水和物が0.01質量%の水溶液:126.9gをセパラブルフラスコ(II)の溶液に加え、さらに5分間窒素を導入した。
【0069】
その後、セパラブルフラスコ(II)の内容物を、セパラブルフラスコ(I)に2時間かけてフィードして重合を行い、30分間熟成した。次いで、6.50質量%2,2’‐アゾビス[2‐(2‐イミダゾリン‐2‐イル)プロパン]二塩酸塩水溶液:5.9gをセパラブルフラスコ(I)に加え、さらに30分間熟成を行った。引き続き脱水を行った後、30℃以下まで冷却し、内容物の固液分離を行い、乾燥して水溶性重合体A(白色微粒子)を得た。
【0070】
この水溶性重合体の0.2質量%水溶液についてB型粘度計で、ローター:No.2、30rpmの条件で測定した25℃での粘度は、115mPa・sであった。中和度は、10%であった。
【0071】
水溶性重合体C
水溶性重合体Cとして、重量平均分子量(MW)400〜500万のポリアクリル酸ソーダを使用した。
<評価土壌>
評価土壌は、豊浦標準砂:5部、シルト:75部、粘土:270部、および水道水:350部を十分に混合してなる含水土壌である。この評価土壌について、上述の測定法によって求められるフロー値は、250mmであった。
【0072】
実験例1
評価土壌:100部を、ビーター型攪拌翼を備えた混合器に仕込み、160rpmで攪拌しながら、水溶性重合体A:0.25部を添加し240秒間攪拌した。その後、硫酸アルミニウム(和光純薬工業株式会社製):5部とポルトランドセメント(太平洋セメント株式会社製):5部を添加し、さらに15秒間攪拌して評価土壌の処理を行った。処理後の評価土壌の状態を表1に示す基準に従って評価した。結果を表2に示す。
【0073】
実験例2
ポルトランドセメントの代わりに高炉セメント(高炉セメントB種,太平洋セメント社製):5部を用いた以外は実験例1と同様にして評価土壌の処理を行った。処理後の評価土壌の状態を表1に示す基準に従って評価した。結果を表2に示す。
【0074】
実験例3
水溶性重合体Aの添加量を0.12部とした以外は実験例1と同様にして評価土壌の処理を行った。処理後の評価土壌の状態を表1に示す基準に従って評価した。結果を表2に示す。
【0075】
実験例4
評価土壌:100部を、ビーター型攪拌翼を備えた混合器に仕込み、160rpmで攪拌しながら、水溶性重合体A:0.25部を添加し240秒間攪拌した。その後、硫酸アルミニウム:2部と高炉セメント:8部を添加し、さらに30秒間攪拌して評価土壌の処理を行った。処理後の評価土壌の状態を表1に示す基準に従って評価した。結果を表2に示す。
【0076】
実験例5
硫酸アルミニウムに代えて、硫酸鉄(III)(和光純薬工業株式会社製):5部を用いた以外は実験例1と同様にして評価土壌の処理を行った。処理後の評価土壌の状態を表1に示す基準に従って評価した。結果を表2に示す。
【0077】
実験例6
評価土壌:100部を、ビーター型攪拌翼を備えた混合器に仕込み、160rpmで攪拌しながら、水溶性重合体A:0.25部を添加し、240秒間攪拌した。その後、硫酸マグネシウム(和光純薬工業株式会社製):5部とポルトランドセメント:5部を添加し、さらに20秒間攪拌して評価土壌の処理を行った。処理後の評価土壌の状態を表1に示す基準に従って評価した。結果を表2に示す。
【0078】
実験例7
評価土壌:100部を、ビーター型攪拌翼を備えた混合器に仕込み、160rpmで攪拌しながら、水溶性重合体A:0.25部を添加し、240秒間攪拌した。その後、硫酸鉄(II)(和光純薬工業株式会社製):5部とポルトランドセメント:5部を添加し、さらに30秒間攪拌して評価土壌の処理を行った。処理後の評価土壌の状態を表1に示す基準に従って評価した。結果を表2に示す。
【0079】
実験例8
評価土壌:100部を、ビーター型攪拌翼を備えた混合器に仕込み、160rpmで240秒間攪拌した後、ポルトランドセメント:10部を添加し、60秒間攪拌して評価土壌の処理を行った。すなわち、本実験例は、水溶性重合体も硫酸塩も使用しない例である。処理後の評価土壌の状態を表1に示す基準に従って評価した。結果を表3に示す。
【0080】
実験例9
評価土壌:100部を、ビーター型攪拌翼を備えた混合器に仕込み、160rpmで攪拌しながら、水溶性重合体A:0.25部を添加して、240秒間攪拌した。ついで、ここにポルトランドセメント:5部を添加し、さらに60秒間攪拌して評価土壌の処理を行った。処理後の評価土壌の状態を表1に示す基準に従って評価した。結果を表3に示す。
【0081】
実験例10
ポルトランドセメントの添加量を10部とした以外は、上記実験例9と同様にして評価土壌の処理を行った。処理後の評価土壌の状態を表1に示す基準に従って評価した。結果を表3に示す。
【0082】
実験例11
ポルトランドセメント添加後の攪拌時間を15秒とした以外は、上記実験例10と同様にして評価土壌の処理を行った。処理後の評価土壌の状態を表1に示す基準に従って評価した。結果を表3に示す。
【0083】
実験例12
評価土壌:100部を、ビーター型攪拌翼を備えた混合器に仕込み、160rpmで攪拌しながら、水溶性重合体A:0.25部と硫酸アルミニウム:5部を予め混合したものを添加し、240秒間攪拌した後、ポルトランドセメント:5部を添加し、さらに60秒間攪拌して評価土壌の処理を行った。処理後の評価土壌の状態を表1に示す基準に従って評価した。結果を表4に示す。
【0084】
実験例13
評価土壌:100部を、ビーター型攪拌翼を備えた混合器に仕込み、160rpmで攪拌しながら、水溶性重合体A:0.25部を添加し、240秒間攪拌した。その後、水酸化アルミニウム:5部とポルトランドセメント:5部を添加し、さらに60秒間攪拌して評価土壌の処理を行った。処理後の評価土壌の状態を表1に示す基準に従って評価した。結果を表4に示す。
【0085】
実験例14
評価土壌:100部を、ビーター型攪拌翼を備えた混合器に仕込み、160rpmで攪拌しながら、水溶性重合体A:0.25部を添加し、240秒間攪拌した。その後、硫酸ナトリウム(和光純薬工業株式会社製):5部とポルトランドセメント:5部を添加し、さらに60秒間攪拌して評価土壌の処理を行った。処理後の評価土壌の状態を表1に示す基準に従って評価した。結果を表4に示す。
【0086】
実験例15
評価土壌:100部を、ビーター型攪拌翼を備えた混合器に仕込み、160rpmで240秒間攪拌した後、硫酸アルミニウム:5部とポルトランドセメント:5部を添加し、15秒間攪拌して評価土壌の処理を行った。すなわち、本実験例は、水溶性重合体を使用しない例である。処理後の評価土壌の状態を表1に示す基準に従って評価した。結果を表4に示す。
【0087】
実験例16
評価土壌:100部を、ビーター型攪拌翼を備えた混合器に仕込み、160rpmで240秒間攪拌した後、硫酸アルミニウム:5部とポルトランドセメント:5部を添加し、60秒間攪拌して評価土壌の処理を行った。すなわち、本実験例は、水溶性重合体を使用しない例である。処理後の評価土壌の状態を表1に示す基準に従って評価した。結果を表4に示す。
【0088】
実験例17
評価土壌:100部を、ビーター型攪拌翼を備えた混合器に仕込み、160rpmで攪拌しながら、水溶性重合体C:0.25部を添加して、240秒間攪拌した。ついで、ここに、硫酸アルミニウム:5部とポルトランドセメント:5部を添加し、さらに15秒間攪拌して評価土壌の処理を行った。処理後の評価土壌の状態を表1に示す基準に従って評価した。結果を表4に示す。
【0089】
実験例18
評価土壌:100部を、ビーター型攪拌翼を備えた混合器に仕込み、160rpmで攪拌しながら、水溶性重合体C:0.25部を添加して、240秒間攪拌した。ついで、ここに、硫酸アルミニウム:5部とポルトランドセメント:5部を添加し、さらに60秒間攪拌して評価土壌の処理を行った。処理後の評価土壌の状態を表1に示す基準に従って評価した。結果を表4に示す。
【0090】
【表1】

【0091】
表1における処理後の評価値が4以上のものが合格、3以下が不合格であり、評価値が高いものほど砂の代替品などの資源として、埋め戻し材、盛土材、園芸用土として好適に用いられる。例えば、評価値4および5のものについては、トラックなどでの運搬が容易な程度に粒状化が達成されており、適用場所などによっては、埋め戻し材としての使用も可能である。評価値6〜9のものについては、埋め戻し材、盛土材、園芸用土として好適に使用できる。
【0092】
【表2】

【0093】
【表3】

【0094】
【表4】

【0095】
表2〜4において、硫酸塩の添加方法のうち、「混合」とは、予め水溶性重合体と硫酸塩を混合して評価土壌に添加したことを、「セメント混合」とは、予め水硬性物質と硫酸塩を混合しておいたことをそれぞれ意味しており、水硬性物質の添加方法の「後添加」とは、水溶性重合体を評価土壌に添加し、表中の処理時間の欄に示す時間の間混合した後に、水硬性物質を添加したことを意味している。なお、「粒状化状態」の数値は、表1の評価値を意味している。
【0096】
表2より、水溶性重合体(a)、硫酸塩(b)および水硬性物質(c)を含む本発明の含水土壌処理剤を使用した実験例1〜7では、硫酸塩(b)を用いない実験例9〜11(表3、粒状化状態:5[実験例9]、6[実験例10]、2[実験例11])に比べて、短時間の内に、非常に高いレベル(粒状化状態:7,9)にまで含水土壌が粒状化されていることが分かる。特に、硫酸塩(b)として硫酸アルミニウム、硫酸鉄(II)、硫酸鉄(III)を用いた実験例1,2,4,5,7では非常に高いレベルの粒状化が達成されている(粒状化状態:9)。また、実験例3からは、硫酸塩(b)を必須の構成要素とすることで、水溶性重合体(a)の使用量を半分以下に低減しても、埋め戻し材、盛土材として好適なレベルにまで十分に含水土壌を粒状化し得ることが分かる(粒状化状態:7)。さらに、後処理時間についても、硫酸塩(b)を用いた場合は(実験例1〜7:後処理時間15〜30秒)、硫酸塩(b)を用いない場合(表3、実験例9,10:後処理時間60秒)に比べて、半分以下に短縮されており、含水土壌の速やかな粒状化が実現できていることが分かる。
【0097】
表3,4には、水溶性重合体(a)および/または硫酸塩(b)の必須の構成要素を欠く例を示している(実験例8〜18)。水硬性物質(c)しか用いなかった実験例8では、含水土壌は全く粒状化されていない(粒状化状態:1)。また、必須の構成要素である水溶性重合体(a)を用いなかった実験例15,16でも、含水土壌は全く粒状化されなかった。
【0098】
さらに、硫酸塩(b)の代替物を用いた実験例13,14でも、本発明のような優れた粒状化効果は得られていない。すなわち、3価以上の陽イオンであるアルミニウムを含有していても水酸化物である場合(実験例13,粒状化状態:6,後処理時間:60秒)や、硫酸塩であっても1価の陽イオン(Na)である場合(実験例14,粒状化状態:2,後処理時間:60秒)には、粒状化状態、後処理時間とも本発明で必須の硫酸塩(b)を用いた例(実験例1〜7)のいずれと比較しても劣っている。すなわち、かかる場合には、処理系内においてエトリンガイドが生成され難く(実験例13)、また、水溶性重合体の賦活効果も得られ難いことを意味している(実験例14)。なお、硫酸塩(b)の添加時期については、水溶性重合体(a)と硫酸塩(b)を同時に添加・混合した場合には粒状土は得られておらず(表4,実験例12,粒状化状態:1)、水溶性重合体(a)を予め含水土壌と混合した後に、硫酸塩を添加する必要が有ることが分かる。
【0099】
実験例17および18は、水溶性重合体Cとしてポリアクリル酸ソーダを用いた例を示している。この水溶性重合体Cは、含水土壌に対する溶解性、耐塩性を向上させることにより粒状化性能を高めた本発明にかかる水溶性重合体(a)とは異なって、水溶性重合体自体が含水土壌に溶解し難く、また、粒状化性能も不十分であるため、硫酸塩(b)および水硬性物質(c)を用いても含水土壌は全く粒状化されなかった(粒状化状態:1)。
【0100】
以上の結果より、水溶性重合体(a)と硫酸塩(b)および水硬性物質(c)を必須の構成要素とする本発明によれば、含水土壌を短時間の内に非常に高いレベルにまで粒状化できることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
含水土壌を粒状化する方法であって、
(A)カルボキシル基(カルボン酸塩基を含む)およびスルホン基(スルホン酸塩基を含む、以下同じ)を含有し、かつ、全構成ユニット100mol%中、スルホン基含有ユニットが0.5〜50mol%である水溶性重合体(a)を含水土壌に混合した後に、
(B)三水化物以上の水化物を形成し得る二価以上の陽イオンを含有する硫酸塩(b)と、水硬性物質(c)とを添加することを特徴とする含水土壌の粒状化方法。
【請求項2】
上記水硬性物質(c)は、セメントである請求項1に記載の含水土壌の粒状化方法。
【請求項3】
上記二価以上の陽イオンが、アルミニウム、鉄およびマグネシウムのいずれか1種以上である請求項1または2に記載の含水土壌の粒状化方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の含水土壌の粒状化方法によって得られるものであることを特徴とする粒状土。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載の含水土壌の粒状化方法に用いる含水土壌処理剤であって、
カルボキシル基(カルボン酸塩基を含む)およびスルホン基(スルホン酸塩基を含む、以下同じ)を含有し、かつ、全構成ユニット100mol%中、スルホン基含有ユニットが0.5〜50mol%である水溶性重合体(a)を構成要素に含むことを特徴とする含水土壌処理剤。

【公開番号】特開2006−328321(P2006−328321A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−157936(P2005−157936)
【出願日】平成17年5月30日(2005.5.30)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】