説明

含水土壌の脱水用袋体

【課題】河川・湖沼などに堆積する高含水量の土壌を、排水処理が不要なレベルまでろ過することが可能で、高含水土壌を注入する際、逆流や詰まりなどが無く、安定に効率的に注入することができる袋体を提供する。
【解決手段】高含水比粘土を袋体に注入し袋詰め脱水する布帛製の袋詰脱水袋において、袋体への注入部を、袋体に取り付けた筒状体から構成し、該筒状体の内部への突出長が30cm以上500cm以下となり、かつ筒状体の端部径が注入口の径の1.5倍以上となるように袋体の内外部に突出するように形成した構造とすること、さらに袋体として特定のカバーファクターの織物を使用することにより安定に効率よくろ過する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば河川・湖沼に堆積した、水を含む土壌を脱水減量化するのに好適に使用可能な袋体、および水を含む土壌を脱水減量化して、土壌を袋体の内部に封じ込めることが可能な含水土壌の脱水用袋体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、織物や不織布製の袋に、水、及びダイオキシンやPCBなどの有害物質を含む汚染土壌を充填し、脱水減量化して汚染土壌封じ込める工法が提案されており、例えば、特開2002−178000号公報には化学繊維製の透水性袋体を使用し、汚染土壌を圧入して加圧脱水したり、該袋体を順次積み重ねて下側の袋体を加圧脱水する方法が開示されている。
【0003】
このような工法では、高含水土壌を、筒状の注入口から圧送ポンプに連なる注入ホースの先端部を挿入し注入する方法が多く用いられている。しかし注入した土壌がホースを抜いた際に逆流してこないようにするため、特許第3330026号公報には筒状注入口を袋体内部へ突出するように設置する方法が開示されている。
【0004】
しかしながら、上記方法においては、土壌を注入した際、内部へ突出させた注入口が暴れてしまうため、注入速度を抑えなければならず、それを回避するためにホースを袋体内部へ突出した注入口より先まで挿入せねばならないが、その場合、注入終了後にホースを抜くと袋体内部筒状注入口をホースとともに引っ張り出すような状況が起こり、しばしば逆流防止の機能が果たせないという問題点を有していた。
【0005】
また袋体として、特開2002−178000号公報にはポリエステルやポリプロピレン等の化学繊維からなる袋体またその形態も不織布、織物、編物などが提示されている。しかしながら不織布では均一な目付けや厚さのものを得ることは難しく、高圧で注入すると低目付けや厚さの薄い部位に圧がかかり目が拡大してろ過効率が低下するという問題があり、また編物でも縫い目が拡大してろ過効率が低下するという問題があり、織物でも目詰まりや縫い目が裂けやすいという問題点があった。
【0006】
【特許文献1】特開2002−178000号公報
【特許文献2】特許第3330026号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上記従来技術の有する問題点を解消し、河川・湖沼などに堆積する高含水量の土壌を効率良く、かつ、排水処理が不要なレベルまでろ過することが可能で、のり面などにおける含水土壌の封じ込め用袋体において、高含水土壌を注入する際、安定にかつ効率的に注入することができ、注入後の土壌逆流を防止できる袋体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、高含水比粘土を袋体に注入し袋詰め脱水する布帛製の袋詰脱水袋において、袋体への注入部を、袋体に取り付けた筒状体から構成し、該筒状体の内部への突出長が30cm以上500cm以下となり、かつ筒状体の端部径が注入口の径の1.5倍以上となるように袋体の内外部に突出するように形成した構造とすることにより解決できること、さらに袋体として特定のカバーファクターの織物を使用することにより安定にかつ効率よくろ過できることを見出した。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、河川・湖沼などに堆積する高含水量の土壌を安定して効率良く、かつ、排水処理が不要なレベルまでろ過することが可能な袋体、およびこの袋体を用いた含水土壊の封じ込め方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明において、袋体への注入部は該袋体の内外部に突出するように形成された筒状体であり、該筒状体は、袋体内部への突出長が30cm以上500cm以下であることが必要である。30cmよりも短いと、十分な逆流防止効果がなく、ホースを抜いた際に注入した土壊が漏れ出る可能性がある。また、500cmよりも長い場合は、ホースを袋体奥まで挿入する必要があり、注入効率が悪い。
【0011】
一方、筒状体の径については、筒状体外部へ突出した端部に設けられた注入口の径に対し、内部に突出した最も奥部の排出口の径が1.5倍以上あり、内部へいくほど広がっていることが必要である。
径の比が1.5よりも小さい場合はホースより注入する際、ホース出口から注入口先までの間に高含水比土壌が通過すると、筒状注入口が暴れ、効率よく注入を行うことができない。
【0012】
本発明で使用する合成繊維のマルチフィラメント糸としては、ポリエステル、ナイロン、ビニロン、ポリプロピレンなどのマルチフィラメント糸が例示され、中でもポリエステルマルチフィラメント糸であることが好ましい。特に、ポリエステルマルチフィラメント糸の中でも、良好な物性を示すポリエチレンテレフタレートマルチフィラメント糸や、袋体を恒久的に埋設しようとする場合は、生分解性の観点から、ポリ乳酸繊維からなるマルチフィラメント糸が好ましい。
【0013】
また、上記のポリエステルマルチフィラメント糸は、再生ポリエステルからなるマルチフィラメント糸であることが好ましい。ここで、再生ポリエステルとは、回収ペットボトル、回収ボリエステル繊維、或いは回収ポリエステルフィルムなどから再生されたポリエステルを言い、回収したポリエステルを溶融して再度糸条に形成させるマテリアルリサイクル法や、回収したポリエステルを解重合して再度ボリマー化するケミカルリサイクル法により得られた再生ポリエステルなどが例示される。
【0014】
マテリアルリサイクル法の具体例としては、特開2000−29362号公報に開示される如く、回収されたポリエステルポリマーを、ビスオキサゾリン系化合物と溶融反応させて、該ポリエステルポリマーの固有粘度をO.5〜1.1とする方法、また、ケミカルリサイクル法の具体例としては、特開2003−160656号公報に開示される如く、回収されたポリアルキレンテレフタレートポリマーをメタノール解重合して得られたテレフタル酸ジメチルを70重量%以上使用し、かつ、触媒として、チタン化合物とリン化合物とを、チタン元素のモル数に対するリン元素のモル数(P/Ti)が特定の範囲となるように、グリコール中で加熱することにより得られた析出物を用いて重縮合反応させる方法などが例示される。
【0015】
なお、上記マルチフィラメント糸の総繊度は、通常、75〜2000dtex、好ましくは150〜1500dtexであり、また、総フィラメント数は、通常、75〜2000フィラメント、好ましくは150〜1500フィラメントである。上記の合成繊維のマルチフィラメント糸は、常法により織成されて織物とされ、該織物を用いて袋体が形成される。
【0016】
ここで、袋体に使用する織物のカバーファクター(CF)が、1900〜2700であることが必要である。好ましくは2100〜2500である。カバーファクター(CF)は下記の式で算出した。
CF=(DWp/1.1)1/2×MWp+(DWf/1.1)1/2×MWf
ここで、DWpは経糸総繊度(dtex)、MWpは経糸織密度(本/3.79cm)、DWfは緯糸総繊度(dtex)、MWfは緯糸織密度(本/3.79cm)である。また織組織、層数は特に限定されるものではない。例えば、織組織としては平組織、綾組織、サテンなどが好適に例示されるがこれらに限定されるものではない。また、層数も単層でもよいし2層以上の多層であってもよい。
【0017】
上記カバーファクター(CF)は、式から明らかなように織物を構成する経糸,緯糸の繊度や密度により、適宜調整することができる。このカバーファクターが1900より低い場合は、高圧で土壌を注入する際、メッシュの開口径が大きくなり、ろ過性が低下したり、また袋体の縫い目が拡大し、ろ過されない土壌や有害物質が流出する問題がある。またカバーファクターが2700より高い場合はメッシュ目が目詰まりし、ろ過速度が低下する。
【0018】
かくして、本発明によれば、高含水比粘土を袋体に注入し袋詰脱水する布串製の袋詰脱水袋において、袋体への注入部を、袋体に取り付けた筒状体から構成し、該筒状体の内部への突出長が30cm以上500cm以下となり、かつ筒状体の端部径が注入口の径の1.5倍以上となるように袋体の内外部に突出するように形成された構造とすること、含水土壌の脱水用袋体が合成繊維のマルチフィラメント糸織物からなる袋体において、該合成繊維のマルチフィラメント糸織物のカバーファクターが1900〜2700とすることにより、有害物質を含む汚染土壌を、上記袋体内に入れた後、該袋体内の汚染土壌に含まれる水分を袋体外に安定に透過させて脱水することが出来るとともに、汚染土壌に付着した有害物質を袋体内に封じ込めることができる。
【実施例】
【0019】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。
【0020】
[実施例1−9、比較例1−3]
土壌の作成:霞ヶ浦粘土を含水比300%の泥水状に調整した。
袋体の作成:ポリエステル製の平織物を縫製し、周長8m、長さ20mの袋材を作製した。
【0021】
表1、実施例1〜7に示すようなサイズの注入口を設け、ポンプにより上記作成の土壌を注入し、その状況を観察した。その際、ホースは注入口筒状体全長の2分の1のところまで挿入した。これらの構造をとることにより安定して含水土壌を注入でき、ろ過も良好であった。比較例1〜3では逆流したり、筒状体があばれたり、詰まりが生じるなど問題であった。 実施例8、9ではカバーファクター2000と2600のものを使用したが非常にろ過効率が良く、逆に比較例4ではカバーファクターが1500と低いため、ろ過漏れを起こし、比較例5では3000と高いため、逆に目詰まりを起こし効率が悪くなり問題であった。
【0022】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明によれば、有害物質を含む含水土壊の封じ込めに好適に使用可能な袋体、およびこの袋体を用いた含水土壊の封じ込め方法が提供されるので、ダイオキシン類、PCB、砒素、鉛等の河川・湖沼などに堆積する有害物質を含む高含水土壌を効率良く、かつ、排水処理が不要なレベルまでろ過することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高含水比粘土を袋体に注入し袋詰脱水する布帛製の袋詰脱水用袋体において、袋体への注入部が該袋体の内外部に突出するように形成された筒状体であり、該筒状体の袋体内部への突出長が30cm以上500cm以下、かつ該筒状体の外部へ突出した端部に設けられた注入口と内部へ突出した端部に設けられた排出口の口径比が1.5倍以上となるように形成された構造であることを特徴とする袋詰脱水用袋体。
【請求項2】
袋詰脱水用袋体が合成繊維のマルチフィラメント糸織物からなる袋体であって、該合成繊維のマルチフィラメント糸織物のカバーファクターが1900〜2700の範囲である請求項1記載の袋詰脱水用袋体。
【請求項3】
該合成繊維のマルチフィラメント糸が、ポリエステル、ナイロン、ビニロン、およびポリプロピレンの群から選ばれた少なくとも1種の合成繊維からなるマルチフィラメント糸である請求項2記載の袋詰脱水用袋体。
【請求項4】
該ポリエステルのマルチフィラメント糸が、再生ポリエステルからなるマルチフィラメント糸である請求項2、3記載の袋詰脱水用袋体。
【請求項5】
該再生ポリエステルが、回収ペットボトルより再生されたポリエステルである請求項4記載の袋詰脱水用袋体。
【請求項6】
該再生ボリエステルが、回収ポリエステル繊維より再生されたポリエステルである請求項4記載の袋詰脱水用袋体。
【請求項7】
該再生ポリエステルが、回収ポリエステルフィルムより再生されたポリエステルである請求項4記載の袋詰脱水用袋体。
【請求項8】
該合成繊維のマルチフィラメント糸が、ボリ乳酸繊維からなるマルチフィラメント糸である請求項2記載の袋詰脱水用袋体。
【請求項9】
水を含む土壌を、透水性の袋体内に入れた後、該袋体内の土壌に含まれる水分を袋体外に透過させて脱水するとともに、土壌を袋体内に残留させて、袋体内に封じ込めるに際し、該袋体として、請求項1〜8のいずれか1項に記載の袋詰脱水用袋体を使用することを特徴とする含水土壌の封じ込め方法。
【請求項10】
土壌がさらに有害物質を含み、土壌とそれに含まれる有害物質を袋体内に残留させて、袋体内に封じ込める請求項9記載の含水土壌の封じ込め方法。

【公開番号】特開2007−175642(P2007−175642A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−378304(P2005−378304)
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(303013268)帝人テクノプロダクツ株式会社 (504)
【Fターム(参考)】