含水性バイオマスの急速熱分解ガス化合成システム
【課題】
生成物の収率が高く消費するエネルギー量が少ない、新規なバイオマスのガス化装置を開発する。また、バイオマスに含まれる水分を水蒸気に変換し、これを原料として使用する。更に、バイオマスの種類や性状にかかわらず、一定の条件で操作でき、小型化が可能な装置を提供する
【解決手段】
(1)原料物質を供給する原料物質供給部と、(2)原料物質供給部と連結し、原料物質をマイクロ波加熱器を用いて無酸素状態で加圧下に加熱分解し、生成した分解物を炭化部に供給する加熱分解部と、(3)加熱分解部に連通し、インライン式高周波誘導式加熱器を備え、加熱分解部から供給される分解物を常圧で加熱して炭素材料と気体成分とを製造する炭化部と、(4)炭化部と連通し、炭素材料と気体成分とを分離し排出する分離部と、を含む含水性バイオマスの急速熱分解ガス化合成システム。
生成物の収率が高く消費するエネルギー量が少ない、新規なバイオマスのガス化装置を開発する。また、バイオマスに含まれる水分を水蒸気に変換し、これを原料として使用する。更に、バイオマスの種類や性状にかかわらず、一定の条件で操作でき、小型化が可能な装置を提供する
【解決手段】
(1)原料物質を供給する原料物質供給部と、(2)原料物質供給部と連結し、原料物質をマイクロ波加熱器を用いて無酸素状態で加圧下に加熱分解し、生成した分解物を炭化部に供給する加熱分解部と、(3)加熱分解部に連通し、インライン式高周波誘導式加熱器を備え、加熱分解部から供給される分解物を常圧で加熱して炭素材料と気体成分とを製造する炭化部と、(4)炭化部と連通し、炭素材料と気体成分とを分離し排出する分離部と、を含む含水性バイオマスの急速熱分解ガス化合成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素ガスと一酸化炭素を含む水性ガスを製造する含水性バイオマスの急速熱分解ガス化合成システムに係り、より詳しくは、マイクロ波加熱器及び高周波電磁誘導加熱器を用いて、バイオマス等から水素ガスと一酸化炭素とを含む水性ガスを効率よく製造する含水性バイオマスの急速熱分解ガス化合成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
化石燃料の使用量を削減して二酸化炭素の放出量を削減するために、バイオマス、未利用資源、及び廃棄物等(以下バイオマス等と略記する)を化石燃料の代替燃料、或いは工業用の原料として利用する方法の開発が進められている。
バイオマス等を化石燃料の代替燃料に変換する方法として最初に試みられたのは、糖化発酵法によるエタノールの製造である。砂糖きび、トウモロコシなどの農産物のデンプンから糖化発酵法によってエタノールが製造されている。しかし、この方法は、農産物価格の高騰と食糧不足という問題を起こした。
【0003】
また、この方法は、エタノール発酵の酵母が、与えられたデンプンの3分の一を消費して二酸化炭素に変換して放出し、更に、発酵液からエタノールを取り出すエネルギーを得るために多量の化石燃料が消費されるなど、二酸化炭素放出量削減効果に限度があることが明らかになっている。
一方、間伐材や建築廃材などの木材の廃材から発酵法でエタノールを得る方法は、木材の成分であるセルロースを、エタノール発酵可能なグルコースに変換する糖化工程に問題があり、未だに開発段階に留まっている。
【0004】
バイオマス等を工業利用可能な素材に変換する第2の方法として、バイオマスの液化がある。バイオマスと水に金属塩を加えてマイクロ波を照射してバイオマス等を液化して「バイオオイル」を製造する方法が記載されている(例えば特許文献1を参照)。この方法は、操作が簡単で収率が良いが、「バイオオイル」は単位重量当たりの発熱量が低いという問題点がある。
【0005】
バイオマス等を工業利用可能な素材に変換する第3の方法として、バイオマス等のガス化がある。
固体燃料をガス化させる方法の一つとして、固体燃料を不完全燃焼させて水素と一酸化炭素を含む合成ガスを製造する方法がある。石炭を不完全燃焼させて合成ガスを製造する方法は、石炭化学の基礎反応として、19世紀から20世紀前半にかけて確立された反応である。この反応をバイオマス等に応用してバイオマス等をガス化することができる。
しかし、合成ガスの製造は、通常900℃以上の温度で行われるため、反応温度を保つためにバイオマス等の一部を燃料として使用しなければならないので収率が低下する。
また、この反応は基本的には不完全燃焼反応なので、バイオマス等を原料として用いる場合は、バイオマスは単位重量当たりの発熱量が低く、不純物を多く含むために、不揮発成分(チャー)が多量に生成してガス成分の収率が低下するという問題点がある。
【0006】
バイオマスをマイクロ波加熱器で加熱して炭化する方法が提案されている(例えば特許文献2を参照)。バイオマスを高温で乾留して製造した炭素材料と水蒸気とを、触媒の存在下に、マイクロ波加熱することによって、水素と一酸化炭素を含む水性ガスを製造する方法がある(例えば特許文献3、4を参照)。この2反応を組み合わせてバイオマス等をガス化することができる。
しかし、バイオマス等を高温で乾留して炭化すると重量が大きく減少するので、使用したバイオマス等に対する水性ガスの収率は低いものになる。バイオマス等のガス化は広く研究され、多くの方法が提案されているが、決定的な方法は未だ報告されていない。
【0007】
バイオマス等のガス化で得られた水素と一酸化炭素を含む合成ガスからは、エタノール、ジメチルエーテル(特許文献5を参照)、メタノール(特許文献6を参照)を製造する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表2009−543926号公報
【特許文献2】特開2002−161278号公報
【特許文献3】特開2007−146115号公報
【特許文献4】特開2010−222429号公報
【特許文献5】特開2007−277179号公報
【特許文献6】特開平7−173088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
バイオマス等を化石燃料の代替燃料、或いは工業用の原料として利用する方法の開発が緊急の課題としてすすめられている。
しかし、上述したように、農産物からエタノールを製造する方法は食糧問題を惹起し、バイオマス等の液化による製品は発熱量が低いために用途が限られ、バイオマス等のガス化に関して多くの提案が行われているが、決定的な方法は未だ報告されていない。
バイオマス等のガス化の現状は、使用する原料物質(バイオマス等)の重量を100重量%とするとき、生成する生産物の重量は20重量%が上限であるとされている。
【0010】
かかる現状における問題を解決するための本発明の第1の課題は、生成物の収率が高く消費するエネルギー量が少ない、新規なバイオマス等のガス化手段を提供することにある。
【0011】
また、バイオマス等は、例えば海藻や汚泥のように多量の水分を含むものがあり、これらを単純に乾燥させて水分を除くためには大量のエネルギーが必要なので、エネルギー効率が低下する。バイオマス等に含まれる水分を有効に利用してする必要がある。
かかる課題を解決するため、本発明の第2の課題は、バイオマス等に含まれる水分を水蒸気に変換し、これを熱分解及び水性ガスの原料として使用する新規な含水性バイオマス等の急速熱分解ガス化合成システムを提供することにある。
【0012】
更に、バイオマス等は種類や性状が多様で、生産量が少なく、生産量が季節的に変動するものが多い。そのために、バイオマス等を処理する装置は、多品種の少量原料を同一の装置で処理しなければならないことが多い。このためには、バイオマス等の種類や性状にかかわらず、一定の条件で操作できるような装置であることが好ましい。
かかる問題を解決するための本発明の第3の課題は、バイオマス等の種類や性状にかかわらず、一定の条件で操作でき、小型化が可能な含水性バイオマス等の急速熱分解ガス化合成システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
かかる課題を解決するための本発明の含水性バイオマスの急速熱分解ガス化合成システムは、構成元素として炭素(C)を含み、水を含有する原料物質から、炭素材料と水蒸気を製造する加熱分解炭化装置と、加熱分解炭化装置で製造された炭素材料と水蒸気から水素ガスと一酸化炭素を製造する水性ガス製造装置と、を備える含水バイオマス等のガス化合成システムであって、
加熱分解炭化装置は、(1)原料物質を供給する原料物質供給部と、(2)原料物質供給部と連結し、加圧式マイクロ波加熱器を備え、原料物質を無酸素状態で150〜350℃で加熱分解し、生成した分解物を炭化部に供給する加熱分解部と、(3)加熱分解部と連通し、高周波誘導式加熱器を備え、加熱分解部から供給される分解物を常圧で350〜600℃に加熱して炭素材料と気体成分とを製造する炭化部と、(4)炭化部と連通し、炭素材料と気体成分とを分離する固体・気体分離器と、固体・気体分離器の気体出口と連通し、水蒸気を分離する膜分離器と、水素を分離する水素分離器と、を備え、炭素材料出口と、水蒸気出口と、水素ガス出口と、排ガス出口と、を有する分離部と
を含むことを特徴とする。
【0014】
また本発明は、原料物質が、稲わら、麦わら、木材、竹材、海藻を含むバイオマスと、生ごみ、農産廃棄物、畜産廃棄物、活性汚泥廃棄物を含む廃棄物と、石炭を含む固体燃料と、から成る群の中から選ばれる1種以上であることが好ましい。
更に本発明は、原料物質が、稲わら、麦わら、木材、竹材、海藻を含むバイオマスと、生ごみ、活性汚泥廃棄物を含む廃棄物と、石炭を含む固体燃料と、から成る群の中から選ばれる2種以上を組み合わせて生成する水蒸気の発生量を調整することができる。
【0015】
また本発明は、原料物質供部が、原料物質供部は、原料物質を粉末化する粉砕機と、粉末化された原料物質と搬送気体との混合気体を供給する粉体輸送器であり、
加熱分解部が、原料物質供給部に連通して設けられ、混合気体を混合し加圧して供給する加圧ポンプと、マイクロ波発振器と、少なくとも内面が金属製の円筒形空間を有する容器を備え、空間内に、向きが空間の中心軸に平行で、大きさが空間の中心軸方向及び空間の円周方向に一定な軸対称マイクロ波電磁界を有するマイクロ波共振器と、マイクロ波共振器の中心軸と中心軸を共有し、マイクロ波共振器の内部を貫通し、一端で加圧ポンプと連結するマイクロ波を吸収しない材質の円筒と、マイクロ波を吸収しない材質の円筒の他端に設けられた圧力制御弁と、を有することを特徴とする。
また本発明は、容器が耐圧性を有する耐圧式マイクロ波共振器であって、容器の内部の圧力をマイクロ波を吸収しない材質の円筒内部の圧力と等しくなるように加圧する加圧機を備えることができる。
【0016】
また本発明は、炭化部が、非磁性体で形成された円筒形の容器であって、圧力制御弁と連通する炭化部入口と、炭化部入口に連通し、分岐され、相互に離隔されて容器の内側に設けられた複数の磁性体の管と、複数の磁性体の管を合流させて設けられた炭化部出口と、容器の外周に卷回された高周波電磁誘導コイルと、を備えるインライン式高周波誘導加熱器であることが好ましい。
【0017】
また本発明は、分離部が、炭化部出口に連通するサイクロン式の固体・気体分離器と、固体・気体分離器の気体出口に連結して設けられ、水蒸気通過膜を備える水蒸気分離器と、水蒸気分離器の水蒸気通過膜を通過した気体の出口に連通する水素分離器と、を有し、
固体・気体分離機の固体出口である炭素材料出口と、水素分離器の水素透過膜を通過した気体の出口である水素ガス供給口と、水素透過膜を通過しなかった気体の出口である水蒸気供給口と、水蒸気分離器の水蒸気透過膜を通過しなかった気体の出口である排気ガス出口と、を備えることが好ましい。
【0018】
また本発明は、水性ガス製造装置が、(1)炭素材料出口から供給された炭素材料と、水蒸気出口から供給された水蒸気を混合し、水蒸気に炭素材料の粉末を浮遊させた混合気体を製造する噴流混合器と、(2)混合気体を加圧して供給する加圧ポンプと、(3)マイクロ波発振器と、(4)マイクロ波発振器と連通し、マイクロ波が導入される円筒形の空間を有し、空間内に、向きが空間の中心軸に平行で大きさが空間の中心軸方向及び空間の円周方向に一定な、軸対称マイクロ波電磁界を有するマイクロ波共振器と、(5)マイクロ波共振器の内部に形成され、一端が加圧ポンプと連通し、他端側に一酸化炭素出口を有するマイクロ波を吸収しない材質の外管と、外管の他端から外管の内部に挿入して形成され、他端側に水素ガス出口が設けられた多孔質支持体の支持管と、支持管の外側に設けられた水素透過膜と、水素透過膜の外側に設けられた水性ガス化反応触媒と、を有する水性ガス化反応管と、を備えることを特徴とする。
【0019】
更に本発明は、水素ガス出口及び前記一酸化炭素出口と連通するジメチルエーテル製造装置を備えることができる。
また、本発明のジメチルエーテル製造装置は、マイクロ波加熱器を備えることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る加熱分解反応は、バイオマスを水(水蒸気)と加圧下に加熱するバイオオイルを製造する工程の前半部と類似する反応である。バイオオイルを製造する工程は更に加圧下で加熱を続けるが、本反応は常圧に戻して水分を蒸発させながら乾留して炭化し、炭素材料と気体成分を製造することを特徴とする。バイオオイルを製造する反応は収率が良い。従って、投入したバイオマス重量の20重量%以上の収率を確保することができた。バイオオイル製造中間物を常圧に戻して比較的低温度で乾留して炭素化する方法は、反応自体は発熱分解反応なので、少ないエネルギー投入量で炭素材料と水蒸気を製造することができる。
【0021】
本発明は、水分を水蒸気として再利用するので、水分を多量に含むバイオマス等を乾燥することなく利用して炭素材料と水蒸気を効率よく製造することができた。
バイオマス等に含まれる水分を水性ガス反応に用いる水蒸気として用いるので、水蒸気を製造するエネルギーを節減することができた。
【0022】
本発明の第1段階はバイオオイルを製造するのと同一な反応であって、バイオマス等と水蒸気を所定の温度で急速加熱すればよい。マイクロ波加熱器を用いることによって急速な加熱が可能となり、バイオマス等のオイル化の温度の低下と、反応の安定化とが達成された。従って、反応条件がバイオマス等の性状に影響されることが少なく、多様ななバイオマス等を安定した条件で利用できるので、同一主の生産量が少なく、季節や地域で変化する多様なバイオマス等の処理を同一の反応装置で容易に行うことができた。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に用いる装置の全体構成を示す構成図である。
【図2】本発明の1実施例に係る原料物質供給部及び加熱分解部の構成図である。
【図3】(A)は本発明の1実施例に係る炭化部の模式断面図であり、(B)は(A)のa−a断面図である。
【図4】本発明の1実施例に係る分離部の模式断面図である。
【図5】本発明の1実施例に水性ガス製造装置の部分模式断面構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、構成元素として炭素(C)を含み、水を含有する原料物質から、水素ガスと一酸化炭素を含有する水性ガスを製造し、水性ガスから、例えばジメチルエーテルを製造する装置を備える含水性バイオマス等の急速熱分解ガス化合成システムに関する。
【0025】
本発明で用いる原料物質は、稲わら、麦わら、木材、竹材、海藻を含むバイオマスと、生ごみ、農産廃棄物、畜産廃棄物、活性汚泥廃棄物を含む廃棄物と、石炭を含む固体燃料と、から成る群の中から選ばれる1種以上であることが好ましい。
【0026】
本発明は、原料物質に含まれる水分から生成した水蒸気、及び原料物質が分解して発生した水蒸気を、水性ガスを製造プロセスの原料の一つである水蒸気として利用する。従って、所望によって、原料物質中の水の含有量を、バイオマスと、廃棄物と、水と、の中の2以上を組み合わせて調整することができる。
また本発明は、原料物質の水分を調節するために、石炭などの固形燃料又は水を加えることができる。
【0027】
バイオマス等には、例えば海藻や汚泥のように、多量の水分を含むものがある。このようなバイオマス等は、乾燥させて水分を除くためには大量のエネルギーが必要なので、プロセス全体のエネルギー効率を低下させることがある。水分を多量に含むバイオマス等を用いる場合には、バイオマス等に含まれる水分を有効に利用する工夫が必要がある。本発明の急速熱分解ガス化合成システムは、原料物質から発生した水蒸気を水性ガス反応の原料として用いるので、消費するエネルギーを大幅に削減することができる。
【0028】
以下に添付した図を参照して本発明に係る炭素含有物の含水性バイオマスの急速熱分解ガス化合成システムの実施の形態を詳細に記載する。
図1は、本発明の一実施例に係る含水性バイオマスの急速熱分解ガス化合成システム1の概略図である。図1に示すように、本実施例は、原料物質10を、加熱分解炭化装置100によって炭素材料と水蒸気とに分解する。加熱分解炭化装置100は、原料物質供給部110と、加熱分解部120と、炭化部150と、分離部160と、を有することが好ましい。
【0029】
加熱分解炭化装置100は、原料物質10を、マイクロ波加熱器を備える加熱分解部120で加圧下に急速加熱分解する加熱分解部120、及び加熱分解部120の分解物60を、常圧で加熱して分解すると共に乾燥させて炭素材料20と気体成分70との混合物を製造する炭化部150を備えることが好ましい。炭素材料20と気体成分70との混合物は、分離部160に送られる。
【0030】
分離部160は、固体・気体分離機162と、水蒸気を選択的に通過させるSOD型ゼオライト膜を備える水蒸気分離器170と水素透過膜を備える水素分離器175と、を備え、炭素材料20と水蒸気30と水素ガス40とを分離し、炭素材料20と水蒸気30とを水性ガス製造装置200に供給することができる。
【0031】
水性ガス製造装置200は、炭素材料20と水蒸気30から水素ガス40と一酸化炭素50を含む水性ガス52を製造することができる。
水素ガス40と一酸化炭素50を含む水性ガス52は、例えばジメチルエーテル製造装置230に供給してジメチルエーテル51に変換することができる。
【0032】
以下に、各装置について詳細に説明する。
図2は、本発明の1実施例に係る原料物質供給部及び加熱分解部の構成図である。
本発明の原料物質供給部110は、加熱分解部120に原料物質10を供給できる装置であれば特に制限されないが、好ましい実施例として搬送気体80を用いる粉体輸送機112を例示することができる。
第2図に示すように、原料物質供部110は、原料物質10を粉末化する粉砕機111と、粉末化された原料物質10と搬送気体80との混合気体81を供給する粉体輸送機112とを備えることができる。搬送気体は、本発明の目的にかなうものであれば特に制限されないが、好ましい例として水蒸気、二酸化炭素、及び窒素ガスを例示することができる。
【0033】
加熱分解部120は、原料物質供給部110の出口113に連通して設けられ、混合気体81を混合し加圧して供給する加圧ポンプ121と、マイクロ波発振器122と、少なくとも内面が金属製の円筒形空間126を有する容器124を備え、円筒形空間126内に、向きが円筒形空間126の中心軸128に平行で、大きさが円筒形空間126の中心軸方向及び円周方向に一定な軸対称マイクロ波電磁界を有するマイクロ波共振器129と、
前記マイクロ波共振器の中心軸と中心軸を共有して前記マイクロ波共振器129の内部を貫通し、一端で前記加圧ポンプと連結する非磁性体の円筒130と、
前記非磁性体の円筒130の他端に設けられた圧力制御弁132と、を有することが好ましい。
【0034】
本発明に係るバイオマス等のガス化方法は、原料物質10をマイクロ波発振器122とマイクロ波共振器129を備える加熱分解部120において無酸素状態で150〜350℃で急速加熱することによって行われる。原料物質10は水分を含むので、容器124内は加圧状態となる。加熱温度は160〜300℃がより好ましく、最も好ましい実例として180〜250℃の温度範囲を例示することができる。マイクロ波加熱器122は被照射物を急速に加熱できるので、反応時間は1〜600秒の範囲であることができる。
【0035】
マイクロ波発振器と被照射物の間には、マイクロ波を吸収する材料、たとえば金属を使用することができず、一方マイクロ波を吸収しない材料は金属より強度が劣るので、従来はマイクロ波加熱を加圧下に行うのは困難であった。本発明の他の実施形態では、マイクロ波共振器129を耐圧性にし、加圧機134を設けて、マイクロ波共振器124と内部に設けられたマイクロ波を吸収しない材質の円筒130と、の間の円筒形空間126を非磁性体の円筒130の内部の圧力と同じになるように加圧するので、マイクロ波を吸収しない材料の円筒130の内部で加圧反応が行えるようになった。
【0036】
原料物質10は、水分と共に無酸素状態で急速加熱されることによって、主として加水分解反応および水酸基の脱水反応がトリガーとなって分解物60を与える。分解物60は、「バイオオイル」を製造する中間体であって、特許文献1に記載された方法では、バイオマス等をマイクロ波処理した後に、オートクレーブで加圧下に加熱してバイオオイルを製造している。
本発明は、マイクロ波処理して生成した分解物60を、炭化部において常圧で加熱して乾燥させながら乾留して炭素材料を製造することを特徴とする。また、分解物60は、例えば原料物質の予備加熱用の燃料に使用することが可能である。
【0037】
海藻は海水中の金属イオンを吸収する性質があるので、海藻は多量の金属イオンを含んでいる場合がある。金属イオンはマイクロ波を吸収して発熱する。
マイクロ波加熱器を用いる加熱分解部120の原料物質に金属イオンを含有する海藻等の金属イオンを含む物質を混合して用いると、金属イオンがマイクロ波を吸収して金属イオンの近辺だけが温度が高くなり、ヒートスポットが形成されることがある。
【0038】
このヒートスポットにおいては、急速に分解が進行し、水性ガス反応が起こって一酸化炭素と水素ガスが発生することがある。ここで生成した水素ガスは、分離部160(図4参照)で分離されて水素ガス製造装置に供給することが可能である。また排気ガス出口177からは、一酸化炭素の他にメタンや二酸化炭素が排出される。これらの気体は分離して使用することも、例えば原料物質の予備加熱用の燃料に使用することも、いずれも可能である。
【0039】
図3は、(A)は本発明の1実施例に係る炭化部の模式断面図であり、(B)は(A)のa−a断面図である。図3に示すように、炭化部150は、非磁性体で形成された円筒形の容器152であって、圧力制御弁132と連通する炭化部入口154と、炭化部入口154に連通し、分岐され、相互に離隔して容器152の内側に設けられた複数の磁性体の管156と、複数の磁性体の管156を合流させて設けられた炭化部出口155と、容器152の外周に卷回された高周波電磁誘導コイル158と、を備えるインライン式高周波誘導加熱器であることが好ましい。
磁性体の管156の表面にタール処理剤の膜を設けることができる。
【0040】
分解物60は、380℃以上に加熱すると発熱しながら自己分解する。従って、反応開始時は高周波誘導加熱器で加熱し、反応が定常状態になった後は温度制御を行えばよい。反応温度は350〜600℃であり、好ましくは360〜500℃であり、最も好ましい実例として370〜450℃を例示することができる。
分解物60は、炭化し、乾燥されて炭素材料20と気体成分70とを与える。炭素材料20と気体成分70は分離部160に送られる。
【0041】
図4は、本発明の1実施例に係る分離部の模式断面図である。分離部160は、炭化部150から供給される、炭素材料20と気体成分70の混合物から、炭素材料20と水蒸気30それぞれを単離できる装置であれば特に制限されない。好ましい実施例として、炭化部出口155に連通するサイクロン式の固体・気体分離機162と、固体・気体分離機162の気体出口166に連通して設けられ、水蒸気通過膜を備える水蒸気分離器170と、水蒸気分離器170の水蒸気透過膜を通過した気体の出口173に連通する水素分離器175を有し、固体・気体分離機の固体出口である炭素材料出口164と、水素分離器175の水素透過膜を通過した気体の出口である水素ガス出口171と、水素透過膜を通過しなかった気体の出口である水蒸気出口172と、前記水蒸気分離器170の水蒸気透過膜を通過しなかった排ガス71の出口である排ガス出口177と、を備えることが好ましい。炭素材料20と水蒸気30は水性ガス製造装置200に供給され、水素ガス40はジメチルエーテル製造装置に供給されることができる。
【0042】
水蒸気分離器に適用される水蒸気分離膜は、本発明の目的にかなうものであれば特に制限されないが、好ましい例としてSOD型ゼオライト膜を挙げることができる。また、水素分離器に適用される水素分離膜も、本発明の目的にかなうものであれば特に制限されないが、好ましい例として、例えばパラジウム薄膜を多孔質の指示体に担持させたものを挙げることができる。
【0043】
図5は、本発明の1実施例に係る水性ガス製造装置の部分模式断面図である。図5に示すように、水性ガス製造装置200は、分離部160の炭素材料出口164から供給された炭素材料20と、水蒸気出口172から供給された水蒸気30とを混合し、水蒸気30に炭素材料20の粉末を浮遊させた混合気体91を製造する噴流混合器202と、混合気体91を加圧して水性ガス製造装置200に供給する加圧ポンプ204と、マイクロ波発振器206と、マイクロ波発振器206と連通し、内面が金属製のマイクロ波が導入される円筒形の空間208を有し、円筒形の空間208内に、向きが円筒形の空間208の中心軸212に平行で大きさが円筒形の空間208の中心軸212方向及び円筒形の空間208の円周方向に一定な、軸対称マイクロ波電磁界を有するマイクロ波共振器210と、マイクロ波共振器210の内部に形成され、一端が加圧ポンプ204と連通し、他端側に一酸化炭素出口216を有するマイクロ波を吸収しない材質の外管214と、外管214の他端側から外管214の内部に挿入して形成され、他端側に水素ガス出口218が設けられた多孔質支持体の支持管220と、支持管220の外側に設けられた水素透過膜222と、水素透過膜222の外側に設けられた水性ガス化反応触媒224と、を備えることが好ましい。
【0044】
水性ガス化反応触媒224は、炭素材料20と水蒸気30を、水素ガス40と一酸化炭素50とに変換する触媒であれば特に制限されないが、好ましい実例として、ペロブスカイト酸化物にニッケルなどの遷移金属を担持した触媒を挙げることができる。
多孔質支持体の支持管220の外側に水素透過膜222を設け、その外側に水性ガス化反応触媒224を設けることによって、発生した水素ガス40を反応系外に取り出し、水性ガス化反応を促進させることが好ましい。
【0045】
水性ガス製造装置200で製造された水素ガス40と一酸化炭素50は、ジメチルエーテル製造装置230に供給することができる。
ジメチルエーテル製造装置230は、メタノールを製造してメタノールからジメチルエーテルを製造する装置と、一工程でジメチルエーテルを製造する装置とがある。例えば、二酸化炭素と水素を含む混合ガスを、Cu、Zn、Cr、Al、Au、又はZrの何れかの元素を1種類以上含む触媒を用いて、マイクロ波加熱によって120〜300℃で加熱してメタにールを製造し、メタノールをアルミナ、シリカ等の公知の脱水触媒を用いて、マイクロ波加熱器で200〜350℃に加熱することによってジメチルエーテルを製造することができる。
【符号の説明】
【0046】
1 含水性バイオマスの急速熱分解ガス化合成システム
10 原料物質
20 炭素材料
30 水蒸気
40 水素ガス
50 一酸化炭素
51 ジメチルエーテル
52 水性ガス
60 分解物
70 気体成分
71 排ガス
80 搬送気体
81 混合気体
90、91 混合気体
100 加熱分解炭化装置
110 原料物質供給部
111 粉砕機
112 粉体輸送機
113 出口
120 加熱分解部
121 加圧ポンプ
122 マイクロ波発振器
124 容器
126 円筒形空間
128 中心軸
129 マイクロ波共振器
130 マイクロ波を吸収しない材質の円筒
132 圧力制御弁
134 加圧機
150 炭化部
152 容器
154 炭化部入口
155 炭化部出口
156 磁性体の管
158 高周波電磁誘導コイル
160 分離部
162 固体・気体分離機
164 炭素材料出口
166 気体成分出口
170 水蒸気分離器
171 水素ガス出口
172 水蒸気出口
173 水蒸気透過膜を通過した気体の出口
175 水素分離器
177 排ガス出口
200 水性ガス製造装置
202 噴流混合器
204 加圧ポンプ
206 マイクロ波発振器
208 円筒形の空間
210 マイクロ波共振器
212 中心軸
214 外管
216 一酸化炭素出口
218 水素ガス出口
220 支持管
222 水素透過膜
224 水性ガス化反応触媒
230 ジメチルエーテル製造装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素ガスと一酸化炭素を含む水性ガスを製造する含水性バイオマスの急速熱分解ガス化合成システムに係り、より詳しくは、マイクロ波加熱器及び高周波電磁誘導加熱器を用いて、バイオマス等から水素ガスと一酸化炭素とを含む水性ガスを効率よく製造する含水性バイオマスの急速熱分解ガス化合成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
化石燃料の使用量を削減して二酸化炭素の放出量を削減するために、バイオマス、未利用資源、及び廃棄物等(以下バイオマス等と略記する)を化石燃料の代替燃料、或いは工業用の原料として利用する方法の開発が進められている。
バイオマス等を化石燃料の代替燃料に変換する方法として最初に試みられたのは、糖化発酵法によるエタノールの製造である。砂糖きび、トウモロコシなどの農産物のデンプンから糖化発酵法によってエタノールが製造されている。しかし、この方法は、農産物価格の高騰と食糧不足という問題を起こした。
【0003】
また、この方法は、エタノール発酵の酵母が、与えられたデンプンの3分の一を消費して二酸化炭素に変換して放出し、更に、発酵液からエタノールを取り出すエネルギーを得るために多量の化石燃料が消費されるなど、二酸化炭素放出量削減効果に限度があることが明らかになっている。
一方、間伐材や建築廃材などの木材の廃材から発酵法でエタノールを得る方法は、木材の成分であるセルロースを、エタノール発酵可能なグルコースに変換する糖化工程に問題があり、未だに開発段階に留まっている。
【0004】
バイオマス等を工業利用可能な素材に変換する第2の方法として、バイオマスの液化がある。バイオマスと水に金属塩を加えてマイクロ波を照射してバイオマス等を液化して「バイオオイル」を製造する方法が記載されている(例えば特許文献1を参照)。この方法は、操作が簡単で収率が良いが、「バイオオイル」は単位重量当たりの発熱量が低いという問題点がある。
【0005】
バイオマス等を工業利用可能な素材に変換する第3の方法として、バイオマス等のガス化がある。
固体燃料をガス化させる方法の一つとして、固体燃料を不完全燃焼させて水素と一酸化炭素を含む合成ガスを製造する方法がある。石炭を不完全燃焼させて合成ガスを製造する方法は、石炭化学の基礎反応として、19世紀から20世紀前半にかけて確立された反応である。この反応をバイオマス等に応用してバイオマス等をガス化することができる。
しかし、合成ガスの製造は、通常900℃以上の温度で行われるため、反応温度を保つためにバイオマス等の一部を燃料として使用しなければならないので収率が低下する。
また、この反応は基本的には不完全燃焼反応なので、バイオマス等を原料として用いる場合は、バイオマスは単位重量当たりの発熱量が低く、不純物を多く含むために、不揮発成分(チャー)が多量に生成してガス成分の収率が低下するという問題点がある。
【0006】
バイオマスをマイクロ波加熱器で加熱して炭化する方法が提案されている(例えば特許文献2を参照)。バイオマスを高温で乾留して製造した炭素材料と水蒸気とを、触媒の存在下に、マイクロ波加熱することによって、水素と一酸化炭素を含む水性ガスを製造する方法がある(例えば特許文献3、4を参照)。この2反応を組み合わせてバイオマス等をガス化することができる。
しかし、バイオマス等を高温で乾留して炭化すると重量が大きく減少するので、使用したバイオマス等に対する水性ガスの収率は低いものになる。バイオマス等のガス化は広く研究され、多くの方法が提案されているが、決定的な方法は未だ報告されていない。
【0007】
バイオマス等のガス化で得られた水素と一酸化炭素を含む合成ガスからは、エタノール、ジメチルエーテル(特許文献5を参照)、メタノール(特許文献6を参照)を製造する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表2009−543926号公報
【特許文献2】特開2002−161278号公報
【特許文献3】特開2007−146115号公報
【特許文献4】特開2010−222429号公報
【特許文献5】特開2007−277179号公報
【特許文献6】特開平7−173088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
バイオマス等を化石燃料の代替燃料、或いは工業用の原料として利用する方法の開発が緊急の課題としてすすめられている。
しかし、上述したように、農産物からエタノールを製造する方法は食糧問題を惹起し、バイオマス等の液化による製品は発熱量が低いために用途が限られ、バイオマス等のガス化に関して多くの提案が行われているが、決定的な方法は未だ報告されていない。
バイオマス等のガス化の現状は、使用する原料物質(バイオマス等)の重量を100重量%とするとき、生成する生産物の重量は20重量%が上限であるとされている。
【0010】
かかる現状における問題を解決するための本発明の第1の課題は、生成物の収率が高く消費するエネルギー量が少ない、新規なバイオマス等のガス化手段を提供することにある。
【0011】
また、バイオマス等は、例えば海藻や汚泥のように多量の水分を含むものがあり、これらを単純に乾燥させて水分を除くためには大量のエネルギーが必要なので、エネルギー効率が低下する。バイオマス等に含まれる水分を有効に利用してする必要がある。
かかる課題を解決するため、本発明の第2の課題は、バイオマス等に含まれる水分を水蒸気に変換し、これを熱分解及び水性ガスの原料として使用する新規な含水性バイオマス等の急速熱分解ガス化合成システムを提供することにある。
【0012】
更に、バイオマス等は種類や性状が多様で、生産量が少なく、生産量が季節的に変動するものが多い。そのために、バイオマス等を処理する装置は、多品種の少量原料を同一の装置で処理しなければならないことが多い。このためには、バイオマス等の種類や性状にかかわらず、一定の条件で操作できるような装置であることが好ましい。
かかる問題を解決するための本発明の第3の課題は、バイオマス等の種類や性状にかかわらず、一定の条件で操作でき、小型化が可能な含水性バイオマス等の急速熱分解ガス化合成システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
かかる課題を解決するための本発明の含水性バイオマスの急速熱分解ガス化合成システムは、構成元素として炭素(C)を含み、水を含有する原料物質から、炭素材料と水蒸気を製造する加熱分解炭化装置と、加熱分解炭化装置で製造された炭素材料と水蒸気から水素ガスと一酸化炭素を製造する水性ガス製造装置と、を備える含水バイオマス等のガス化合成システムであって、
加熱分解炭化装置は、(1)原料物質を供給する原料物質供給部と、(2)原料物質供給部と連結し、加圧式マイクロ波加熱器を備え、原料物質を無酸素状態で150〜350℃で加熱分解し、生成した分解物を炭化部に供給する加熱分解部と、(3)加熱分解部と連通し、高周波誘導式加熱器を備え、加熱分解部から供給される分解物を常圧で350〜600℃に加熱して炭素材料と気体成分とを製造する炭化部と、(4)炭化部と連通し、炭素材料と気体成分とを分離する固体・気体分離器と、固体・気体分離器の気体出口と連通し、水蒸気を分離する膜分離器と、水素を分離する水素分離器と、を備え、炭素材料出口と、水蒸気出口と、水素ガス出口と、排ガス出口と、を有する分離部と
を含むことを特徴とする。
【0014】
また本発明は、原料物質が、稲わら、麦わら、木材、竹材、海藻を含むバイオマスと、生ごみ、農産廃棄物、畜産廃棄物、活性汚泥廃棄物を含む廃棄物と、石炭を含む固体燃料と、から成る群の中から選ばれる1種以上であることが好ましい。
更に本発明は、原料物質が、稲わら、麦わら、木材、竹材、海藻を含むバイオマスと、生ごみ、活性汚泥廃棄物を含む廃棄物と、石炭を含む固体燃料と、から成る群の中から選ばれる2種以上を組み合わせて生成する水蒸気の発生量を調整することができる。
【0015】
また本発明は、原料物質供部が、原料物質供部は、原料物質を粉末化する粉砕機と、粉末化された原料物質と搬送気体との混合気体を供給する粉体輸送器であり、
加熱分解部が、原料物質供給部に連通して設けられ、混合気体を混合し加圧して供給する加圧ポンプと、マイクロ波発振器と、少なくとも内面が金属製の円筒形空間を有する容器を備え、空間内に、向きが空間の中心軸に平行で、大きさが空間の中心軸方向及び空間の円周方向に一定な軸対称マイクロ波電磁界を有するマイクロ波共振器と、マイクロ波共振器の中心軸と中心軸を共有し、マイクロ波共振器の内部を貫通し、一端で加圧ポンプと連結するマイクロ波を吸収しない材質の円筒と、マイクロ波を吸収しない材質の円筒の他端に設けられた圧力制御弁と、を有することを特徴とする。
また本発明は、容器が耐圧性を有する耐圧式マイクロ波共振器であって、容器の内部の圧力をマイクロ波を吸収しない材質の円筒内部の圧力と等しくなるように加圧する加圧機を備えることができる。
【0016】
また本発明は、炭化部が、非磁性体で形成された円筒形の容器であって、圧力制御弁と連通する炭化部入口と、炭化部入口に連通し、分岐され、相互に離隔されて容器の内側に設けられた複数の磁性体の管と、複数の磁性体の管を合流させて設けられた炭化部出口と、容器の外周に卷回された高周波電磁誘導コイルと、を備えるインライン式高周波誘導加熱器であることが好ましい。
【0017】
また本発明は、分離部が、炭化部出口に連通するサイクロン式の固体・気体分離器と、固体・気体分離器の気体出口に連結して設けられ、水蒸気通過膜を備える水蒸気分離器と、水蒸気分離器の水蒸気通過膜を通過した気体の出口に連通する水素分離器と、を有し、
固体・気体分離機の固体出口である炭素材料出口と、水素分離器の水素透過膜を通過した気体の出口である水素ガス供給口と、水素透過膜を通過しなかった気体の出口である水蒸気供給口と、水蒸気分離器の水蒸気透過膜を通過しなかった気体の出口である排気ガス出口と、を備えることが好ましい。
【0018】
また本発明は、水性ガス製造装置が、(1)炭素材料出口から供給された炭素材料と、水蒸気出口から供給された水蒸気を混合し、水蒸気に炭素材料の粉末を浮遊させた混合気体を製造する噴流混合器と、(2)混合気体を加圧して供給する加圧ポンプと、(3)マイクロ波発振器と、(4)マイクロ波発振器と連通し、マイクロ波が導入される円筒形の空間を有し、空間内に、向きが空間の中心軸に平行で大きさが空間の中心軸方向及び空間の円周方向に一定な、軸対称マイクロ波電磁界を有するマイクロ波共振器と、(5)マイクロ波共振器の内部に形成され、一端が加圧ポンプと連通し、他端側に一酸化炭素出口を有するマイクロ波を吸収しない材質の外管と、外管の他端から外管の内部に挿入して形成され、他端側に水素ガス出口が設けられた多孔質支持体の支持管と、支持管の外側に設けられた水素透過膜と、水素透過膜の外側に設けられた水性ガス化反応触媒と、を有する水性ガス化反応管と、を備えることを特徴とする。
【0019】
更に本発明は、水素ガス出口及び前記一酸化炭素出口と連通するジメチルエーテル製造装置を備えることができる。
また、本発明のジメチルエーテル製造装置は、マイクロ波加熱器を備えることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る加熱分解反応は、バイオマスを水(水蒸気)と加圧下に加熱するバイオオイルを製造する工程の前半部と類似する反応である。バイオオイルを製造する工程は更に加圧下で加熱を続けるが、本反応は常圧に戻して水分を蒸発させながら乾留して炭化し、炭素材料と気体成分を製造することを特徴とする。バイオオイルを製造する反応は収率が良い。従って、投入したバイオマス重量の20重量%以上の収率を確保することができた。バイオオイル製造中間物を常圧に戻して比較的低温度で乾留して炭素化する方法は、反応自体は発熱分解反応なので、少ないエネルギー投入量で炭素材料と水蒸気を製造することができる。
【0021】
本発明は、水分を水蒸気として再利用するので、水分を多量に含むバイオマス等を乾燥することなく利用して炭素材料と水蒸気を効率よく製造することができた。
バイオマス等に含まれる水分を水性ガス反応に用いる水蒸気として用いるので、水蒸気を製造するエネルギーを節減することができた。
【0022】
本発明の第1段階はバイオオイルを製造するのと同一な反応であって、バイオマス等と水蒸気を所定の温度で急速加熱すればよい。マイクロ波加熱器を用いることによって急速な加熱が可能となり、バイオマス等のオイル化の温度の低下と、反応の安定化とが達成された。従って、反応条件がバイオマス等の性状に影響されることが少なく、多様ななバイオマス等を安定した条件で利用できるので、同一主の生産量が少なく、季節や地域で変化する多様なバイオマス等の処理を同一の反応装置で容易に行うことができた。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に用いる装置の全体構成を示す構成図である。
【図2】本発明の1実施例に係る原料物質供給部及び加熱分解部の構成図である。
【図3】(A)は本発明の1実施例に係る炭化部の模式断面図であり、(B)は(A)のa−a断面図である。
【図4】本発明の1実施例に係る分離部の模式断面図である。
【図5】本発明の1実施例に水性ガス製造装置の部分模式断面構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、構成元素として炭素(C)を含み、水を含有する原料物質から、水素ガスと一酸化炭素を含有する水性ガスを製造し、水性ガスから、例えばジメチルエーテルを製造する装置を備える含水性バイオマス等の急速熱分解ガス化合成システムに関する。
【0025】
本発明で用いる原料物質は、稲わら、麦わら、木材、竹材、海藻を含むバイオマスと、生ごみ、農産廃棄物、畜産廃棄物、活性汚泥廃棄物を含む廃棄物と、石炭を含む固体燃料と、から成る群の中から選ばれる1種以上であることが好ましい。
【0026】
本発明は、原料物質に含まれる水分から生成した水蒸気、及び原料物質が分解して発生した水蒸気を、水性ガスを製造プロセスの原料の一つである水蒸気として利用する。従って、所望によって、原料物質中の水の含有量を、バイオマスと、廃棄物と、水と、の中の2以上を組み合わせて調整することができる。
また本発明は、原料物質の水分を調節するために、石炭などの固形燃料又は水を加えることができる。
【0027】
バイオマス等には、例えば海藻や汚泥のように、多量の水分を含むものがある。このようなバイオマス等は、乾燥させて水分を除くためには大量のエネルギーが必要なので、プロセス全体のエネルギー効率を低下させることがある。水分を多量に含むバイオマス等を用いる場合には、バイオマス等に含まれる水分を有効に利用する工夫が必要がある。本発明の急速熱分解ガス化合成システムは、原料物質から発生した水蒸気を水性ガス反応の原料として用いるので、消費するエネルギーを大幅に削減することができる。
【0028】
以下に添付した図を参照して本発明に係る炭素含有物の含水性バイオマスの急速熱分解ガス化合成システムの実施の形態を詳細に記載する。
図1は、本発明の一実施例に係る含水性バイオマスの急速熱分解ガス化合成システム1の概略図である。図1に示すように、本実施例は、原料物質10を、加熱分解炭化装置100によって炭素材料と水蒸気とに分解する。加熱分解炭化装置100は、原料物質供給部110と、加熱分解部120と、炭化部150と、分離部160と、を有することが好ましい。
【0029】
加熱分解炭化装置100は、原料物質10を、マイクロ波加熱器を備える加熱分解部120で加圧下に急速加熱分解する加熱分解部120、及び加熱分解部120の分解物60を、常圧で加熱して分解すると共に乾燥させて炭素材料20と気体成分70との混合物を製造する炭化部150を備えることが好ましい。炭素材料20と気体成分70との混合物は、分離部160に送られる。
【0030】
分離部160は、固体・気体分離機162と、水蒸気を選択的に通過させるSOD型ゼオライト膜を備える水蒸気分離器170と水素透過膜を備える水素分離器175と、を備え、炭素材料20と水蒸気30と水素ガス40とを分離し、炭素材料20と水蒸気30とを水性ガス製造装置200に供給することができる。
【0031】
水性ガス製造装置200は、炭素材料20と水蒸気30から水素ガス40と一酸化炭素50を含む水性ガス52を製造することができる。
水素ガス40と一酸化炭素50を含む水性ガス52は、例えばジメチルエーテル製造装置230に供給してジメチルエーテル51に変換することができる。
【0032】
以下に、各装置について詳細に説明する。
図2は、本発明の1実施例に係る原料物質供給部及び加熱分解部の構成図である。
本発明の原料物質供給部110は、加熱分解部120に原料物質10を供給できる装置であれば特に制限されないが、好ましい実施例として搬送気体80を用いる粉体輸送機112を例示することができる。
第2図に示すように、原料物質供部110は、原料物質10を粉末化する粉砕機111と、粉末化された原料物質10と搬送気体80との混合気体81を供給する粉体輸送機112とを備えることができる。搬送気体は、本発明の目的にかなうものであれば特に制限されないが、好ましい例として水蒸気、二酸化炭素、及び窒素ガスを例示することができる。
【0033】
加熱分解部120は、原料物質供給部110の出口113に連通して設けられ、混合気体81を混合し加圧して供給する加圧ポンプ121と、マイクロ波発振器122と、少なくとも内面が金属製の円筒形空間126を有する容器124を備え、円筒形空間126内に、向きが円筒形空間126の中心軸128に平行で、大きさが円筒形空間126の中心軸方向及び円周方向に一定な軸対称マイクロ波電磁界を有するマイクロ波共振器129と、
前記マイクロ波共振器の中心軸と中心軸を共有して前記マイクロ波共振器129の内部を貫通し、一端で前記加圧ポンプと連結する非磁性体の円筒130と、
前記非磁性体の円筒130の他端に設けられた圧力制御弁132と、を有することが好ましい。
【0034】
本発明に係るバイオマス等のガス化方法は、原料物質10をマイクロ波発振器122とマイクロ波共振器129を備える加熱分解部120において無酸素状態で150〜350℃で急速加熱することによって行われる。原料物質10は水分を含むので、容器124内は加圧状態となる。加熱温度は160〜300℃がより好ましく、最も好ましい実例として180〜250℃の温度範囲を例示することができる。マイクロ波加熱器122は被照射物を急速に加熱できるので、反応時間は1〜600秒の範囲であることができる。
【0035】
マイクロ波発振器と被照射物の間には、マイクロ波を吸収する材料、たとえば金属を使用することができず、一方マイクロ波を吸収しない材料は金属より強度が劣るので、従来はマイクロ波加熱を加圧下に行うのは困難であった。本発明の他の実施形態では、マイクロ波共振器129を耐圧性にし、加圧機134を設けて、マイクロ波共振器124と内部に設けられたマイクロ波を吸収しない材質の円筒130と、の間の円筒形空間126を非磁性体の円筒130の内部の圧力と同じになるように加圧するので、マイクロ波を吸収しない材料の円筒130の内部で加圧反応が行えるようになった。
【0036】
原料物質10は、水分と共に無酸素状態で急速加熱されることによって、主として加水分解反応および水酸基の脱水反応がトリガーとなって分解物60を与える。分解物60は、「バイオオイル」を製造する中間体であって、特許文献1に記載された方法では、バイオマス等をマイクロ波処理した後に、オートクレーブで加圧下に加熱してバイオオイルを製造している。
本発明は、マイクロ波処理して生成した分解物60を、炭化部において常圧で加熱して乾燥させながら乾留して炭素材料を製造することを特徴とする。また、分解物60は、例えば原料物質の予備加熱用の燃料に使用することが可能である。
【0037】
海藻は海水中の金属イオンを吸収する性質があるので、海藻は多量の金属イオンを含んでいる場合がある。金属イオンはマイクロ波を吸収して発熱する。
マイクロ波加熱器を用いる加熱分解部120の原料物質に金属イオンを含有する海藻等の金属イオンを含む物質を混合して用いると、金属イオンがマイクロ波を吸収して金属イオンの近辺だけが温度が高くなり、ヒートスポットが形成されることがある。
【0038】
このヒートスポットにおいては、急速に分解が進行し、水性ガス反応が起こって一酸化炭素と水素ガスが発生することがある。ここで生成した水素ガスは、分離部160(図4参照)で分離されて水素ガス製造装置に供給することが可能である。また排気ガス出口177からは、一酸化炭素の他にメタンや二酸化炭素が排出される。これらの気体は分離して使用することも、例えば原料物質の予備加熱用の燃料に使用することも、いずれも可能である。
【0039】
図3は、(A)は本発明の1実施例に係る炭化部の模式断面図であり、(B)は(A)のa−a断面図である。図3に示すように、炭化部150は、非磁性体で形成された円筒形の容器152であって、圧力制御弁132と連通する炭化部入口154と、炭化部入口154に連通し、分岐され、相互に離隔して容器152の内側に設けられた複数の磁性体の管156と、複数の磁性体の管156を合流させて設けられた炭化部出口155と、容器152の外周に卷回された高周波電磁誘導コイル158と、を備えるインライン式高周波誘導加熱器であることが好ましい。
磁性体の管156の表面にタール処理剤の膜を設けることができる。
【0040】
分解物60は、380℃以上に加熱すると発熱しながら自己分解する。従って、反応開始時は高周波誘導加熱器で加熱し、反応が定常状態になった後は温度制御を行えばよい。反応温度は350〜600℃であり、好ましくは360〜500℃であり、最も好ましい実例として370〜450℃を例示することができる。
分解物60は、炭化し、乾燥されて炭素材料20と気体成分70とを与える。炭素材料20と気体成分70は分離部160に送られる。
【0041】
図4は、本発明の1実施例に係る分離部の模式断面図である。分離部160は、炭化部150から供給される、炭素材料20と気体成分70の混合物から、炭素材料20と水蒸気30それぞれを単離できる装置であれば特に制限されない。好ましい実施例として、炭化部出口155に連通するサイクロン式の固体・気体分離機162と、固体・気体分離機162の気体出口166に連通して設けられ、水蒸気通過膜を備える水蒸気分離器170と、水蒸気分離器170の水蒸気透過膜を通過した気体の出口173に連通する水素分離器175を有し、固体・気体分離機の固体出口である炭素材料出口164と、水素分離器175の水素透過膜を通過した気体の出口である水素ガス出口171と、水素透過膜を通過しなかった気体の出口である水蒸気出口172と、前記水蒸気分離器170の水蒸気透過膜を通過しなかった排ガス71の出口である排ガス出口177と、を備えることが好ましい。炭素材料20と水蒸気30は水性ガス製造装置200に供給され、水素ガス40はジメチルエーテル製造装置に供給されることができる。
【0042】
水蒸気分離器に適用される水蒸気分離膜は、本発明の目的にかなうものであれば特に制限されないが、好ましい例としてSOD型ゼオライト膜を挙げることができる。また、水素分離器に適用される水素分離膜も、本発明の目的にかなうものであれば特に制限されないが、好ましい例として、例えばパラジウム薄膜を多孔質の指示体に担持させたものを挙げることができる。
【0043】
図5は、本発明の1実施例に係る水性ガス製造装置の部分模式断面図である。図5に示すように、水性ガス製造装置200は、分離部160の炭素材料出口164から供給された炭素材料20と、水蒸気出口172から供給された水蒸気30とを混合し、水蒸気30に炭素材料20の粉末を浮遊させた混合気体91を製造する噴流混合器202と、混合気体91を加圧して水性ガス製造装置200に供給する加圧ポンプ204と、マイクロ波発振器206と、マイクロ波発振器206と連通し、内面が金属製のマイクロ波が導入される円筒形の空間208を有し、円筒形の空間208内に、向きが円筒形の空間208の中心軸212に平行で大きさが円筒形の空間208の中心軸212方向及び円筒形の空間208の円周方向に一定な、軸対称マイクロ波電磁界を有するマイクロ波共振器210と、マイクロ波共振器210の内部に形成され、一端が加圧ポンプ204と連通し、他端側に一酸化炭素出口216を有するマイクロ波を吸収しない材質の外管214と、外管214の他端側から外管214の内部に挿入して形成され、他端側に水素ガス出口218が設けられた多孔質支持体の支持管220と、支持管220の外側に設けられた水素透過膜222と、水素透過膜222の外側に設けられた水性ガス化反応触媒224と、を備えることが好ましい。
【0044】
水性ガス化反応触媒224は、炭素材料20と水蒸気30を、水素ガス40と一酸化炭素50とに変換する触媒であれば特に制限されないが、好ましい実例として、ペロブスカイト酸化物にニッケルなどの遷移金属を担持した触媒を挙げることができる。
多孔質支持体の支持管220の外側に水素透過膜222を設け、その外側に水性ガス化反応触媒224を設けることによって、発生した水素ガス40を反応系外に取り出し、水性ガス化反応を促進させることが好ましい。
【0045】
水性ガス製造装置200で製造された水素ガス40と一酸化炭素50は、ジメチルエーテル製造装置230に供給することができる。
ジメチルエーテル製造装置230は、メタノールを製造してメタノールからジメチルエーテルを製造する装置と、一工程でジメチルエーテルを製造する装置とがある。例えば、二酸化炭素と水素を含む混合ガスを、Cu、Zn、Cr、Al、Au、又はZrの何れかの元素を1種類以上含む触媒を用いて、マイクロ波加熱によって120〜300℃で加熱してメタにールを製造し、メタノールをアルミナ、シリカ等の公知の脱水触媒を用いて、マイクロ波加熱器で200〜350℃に加熱することによってジメチルエーテルを製造することができる。
【符号の説明】
【0046】
1 含水性バイオマスの急速熱分解ガス化合成システム
10 原料物質
20 炭素材料
30 水蒸気
40 水素ガス
50 一酸化炭素
51 ジメチルエーテル
52 水性ガス
60 分解物
70 気体成分
71 排ガス
80 搬送気体
81 混合気体
90、91 混合気体
100 加熱分解炭化装置
110 原料物質供給部
111 粉砕機
112 粉体輸送機
113 出口
120 加熱分解部
121 加圧ポンプ
122 マイクロ波発振器
124 容器
126 円筒形空間
128 中心軸
129 マイクロ波共振器
130 マイクロ波を吸収しない材質の円筒
132 圧力制御弁
134 加圧機
150 炭化部
152 容器
154 炭化部入口
155 炭化部出口
156 磁性体の管
158 高周波電磁誘導コイル
160 分離部
162 固体・気体分離機
164 炭素材料出口
166 気体成分出口
170 水蒸気分離器
171 水素ガス出口
172 水蒸気出口
173 水蒸気透過膜を通過した気体の出口
175 水素分離器
177 排ガス出口
200 水性ガス製造装置
202 噴流混合器
204 加圧ポンプ
206 マイクロ波発振器
208 円筒形の空間
210 マイクロ波共振器
212 中心軸
214 外管
216 一酸化炭素出口
218 水素ガス出口
220 支持管
222 水素透過膜
224 水性ガス化反応触媒
230 ジメチルエーテル製造装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構成元素として炭素(C)を含み、水を含有する原料物質から、炭素材料と水蒸気を製造する加熱分解炭化装置と、前記加熱分解炭化装置で製造された前記炭素材料と水蒸気から水素ガスと一酸化炭素を製造する水性ガス製造装置と、を備える含水性バイオマスの急速熱分解ガス化合成システムであって、
前記加熱分解炭化装置は、
(1)前記原料物質を供給する原料物質供給部と、
(2)前記原料物質供給部と連結し、マイクロ波加熱器を備え、前記原料物質を無酸素状態で150〜350℃で加熱分解し、生成した分解物を炭化部に供給する加熱分解部と、
(3)前記加熱分解部と連通し、高周波誘導式加熱器を備え、前記加熱分解部から供給される分解物を常圧で350〜600℃に加熱して前記炭素材料と気体成分とを製造する炭化部と、
(4)前記炭化部と連通し、前記炭素材料と気体成分とを分離する固体・気体分離器と、前記固体・気体分離器の気体出口と連通し、水蒸気を分離する水蒸気分離器と、水素を分離する水素分離器と、を備え、炭素材料出口と、水蒸気出口と、水素ガス出口と、排ガス出口と、を有する分離部と、
を含むことを特徴とする含水性バイオマスの急速熱分解ガス化合成システム。
【請求項2】
前記原料物質が、稲わら、麦わら、木材、竹材、海藻を含むバイオマスと、生ごみ、農産廃棄物、畜産廃棄物、活性汚泥廃棄物を含む廃棄物と、石炭を含む固体燃料と、から成る群の中から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1に記載の含水性バイオマスの急速熱分解ガス化合成システム。
【請求項3】
前記原料物質が、稲わら、麦わら、木材、竹材、海藻を含むバイオマスと、生ごみ、活性汚泥廃棄物を含む廃棄物と、石炭を含む固体燃料と、から成る群の中から選ばれる2種以上を組み合わせて、生成する水蒸気の発生量を調整することを特徴とする請求項2に記載の含水性バイオマスの急速熱分解ガス化合成システム。
【請求項4】
前記原料物質供部は、前記原料物質を粉末化する粉砕機と、粉末化された前記原料物質と搬送気体との混合気体を供給する粉体輸送器であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の含水性バイオマスの急速熱分解ガス化合成システム。
【請求項5】
前記加熱分解部は、
前記原料物質供給部に連通して設けられ、前記混合気体を混合し加圧して供給する加圧ポンプと、
マイクロ波発振器と、
少なくとも内面が金属製の円筒形空間を有する容器を備え、前記空間内に、向きが前記空間の中心軸に平行で、大きさが前記空間の中心軸方向及び前記空間の円周方向に一定な軸対称マイクロ波電磁界を有するマイクロ波共振器と、
前記マイクロ波共振器の中心軸と中心軸を共有し、前記マイクロ波共振器の内部を貫通し、一端で前記加圧ポンプと連結するマイクロ波を吸収しない材質の円筒と、
前記マイクロ波を吸収しない材質の円筒の他端に設けられた圧力制御弁と、を有することを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の含水性バイオマスの急速熱分解ガス化合成システム。
【請求項6】
前記マイクロ波共振器はは、前記容器が耐圧性を有する耐圧式マイクロ波共振器であって、前記容器の内部の圧力を、前記マイクロ波を吸収しない材質の円筒の内部の圧力と等しくなるように加圧する加圧機を有することを特徴とする請求項5に記載の含水性バイオマスの急速熱分解ガス化合成システム。
【請求項7】
前記炭化部は、非磁性体で形成された円筒形の容器であって、前記圧力制御弁と連通する炭化部入口と、前記炭化部入口に連通し、分岐され、相互に離隔されて前記容器の内側に設けられた複数の磁性体の管と、前記複数の磁性体の管を合流させて設けられた炭化部出口と、前記容器の外周に卷回された高周波電磁誘導コイルと、を備えるインライン式高周波誘導加熱器であることを特徴とする請求項乃至6の何れか1項に記載の含水性バイオマスの急速熱分解ガス化合成システム。
【請求項8】
前記分離部は、前記炭化部出口に連通するサイクロン式の固体・気体分離器と、前記固体・気体分離器の気体出口に連結して設けられ、水蒸気通過膜を備える水蒸気分離器と、前記水蒸気分離器の水蒸気通過膜を通過した気体の出口に連通する水素分離器と、を有し、
前記固体・気体分離機の固体出口である炭素材料出口と、前記水素分離器の水素透過膜を通過した気体の出口である水素ガス供給口と、水素透過膜を通過しなかった気体の出口である水蒸気供給口と、前記水蒸気分離器の水蒸気透過膜を通過しなかった気体の出口である排気ガス出口と、を備えることを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載の含水性バイオマスの急速熱分解ガス化合成システム。
【請求項9】
前記水性ガス製造装置は、
(1)前記炭素材料出口から供給された炭素材料と、前記水蒸気出口から供給された水蒸気を混合し、前記水蒸気に前記炭素材料の粉末を浮遊させた混合気体を製造する噴流混合器と、
(2)前記混合気体を加圧して供給する加圧ポンプと、
(3)マイクロ波発振器と、
(4)前記マイクロ波発振器と連通し、マイクロ波が導入される円筒形の空間を有し、前記空間内に、向きが前記空間の中心軸に平行で大きさが前記空間の中心軸方向及び前記空間の円周方向に一定な、軸対称マイクロ波電磁界を有するマイクロ波共振器と、
(5)前記マイクロ波共振器の内部に形成され、一端が前記加圧ポンプと連通し、他端側に一酸化炭素出口を有するマイクロ波を吸収しない材質の外管と、前記外管の他端から前記外管の内部に挿入して形成され、前記他端側に水素ガス出口が設けられた多孔質支持体の支持管と、前記支持管の外側に設けられた水素透過膜と、前記水素透過膜の外側に設けられた水性ガス化反応触媒と、を有する水性ガス化反応管と、
を備えることを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載の含水性バイオマスの急速熱分解ガス化合成システム。
【請求項10】
水素ガス出口及び前記一酸化炭素出口と連通するジメチルエーテル製造装置を更に備えることを特徴とする請求項9に記載の含水性バイオマスの急速熱分解ガス化合成システム。
【請求項11】
前記ジメチルエーテル製造装置は、マイクロ波加熱器を備えることを特徴とする請求項10に記載の含水性バイオマスの急速熱分解ガス化合成システム。
【請求項1】
構成元素として炭素(C)を含み、水を含有する原料物質から、炭素材料と水蒸気を製造する加熱分解炭化装置と、前記加熱分解炭化装置で製造された前記炭素材料と水蒸気から水素ガスと一酸化炭素を製造する水性ガス製造装置と、を備える含水性バイオマスの急速熱分解ガス化合成システムであって、
前記加熱分解炭化装置は、
(1)前記原料物質を供給する原料物質供給部と、
(2)前記原料物質供給部と連結し、マイクロ波加熱器を備え、前記原料物質を無酸素状態で150〜350℃で加熱分解し、生成した分解物を炭化部に供給する加熱分解部と、
(3)前記加熱分解部と連通し、高周波誘導式加熱器を備え、前記加熱分解部から供給される分解物を常圧で350〜600℃に加熱して前記炭素材料と気体成分とを製造する炭化部と、
(4)前記炭化部と連通し、前記炭素材料と気体成分とを分離する固体・気体分離器と、前記固体・気体分離器の気体出口と連通し、水蒸気を分離する水蒸気分離器と、水素を分離する水素分離器と、を備え、炭素材料出口と、水蒸気出口と、水素ガス出口と、排ガス出口と、を有する分離部と、
を含むことを特徴とする含水性バイオマスの急速熱分解ガス化合成システム。
【請求項2】
前記原料物質が、稲わら、麦わら、木材、竹材、海藻を含むバイオマスと、生ごみ、農産廃棄物、畜産廃棄物、活性汚泥廃棄物を含む廃棄物と、石炭を含む固体燃料と、から成る群の中から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1に記載の含水性バイオマスの急速熱分解ガス化合成システム。
【請求項3】
前記原料物質が、稲わら、麦わら、木材、竹材、海藻を含むバイオマスと、生ごみ、活性汚泥廃棄物を含む廃棄物と、石炭を含む固体燃料と、から成る群の中から選ばれる2種以上を組み合わせて、生成する水蒸気の発生量を調整することを特徴とする請求項2に記載の含水性バイオマスの急速熱分解ガス化合成システム。
【請求項4】
前記原料物質供部は、前記原料物質を粉末化する粉砕機と、粉末化された前記原料物質と搬送気体との混合気体を供給する粉体輸送器であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の含水性バイオマスの急速熱分解ガス化合成システム。
【請求項5】
前記加熱分解部は、
前記原料物質供給部に連通して設けられ、前記混合気体を混合し加圧して供給する加圧ポンプと、
マイクロ波発振器と、
少なくとも内面が金属製の円筒形空間を有する容器を備え、前記空間内に、向きが前記空間の中心軸に平行で、大きさが前記空間の中心軸方向及び前記空間の円周方向に一定な軸対称マイクロ波電磁界を有するマイクロ波共振器と、
前記マイクロ波共振器の中心軸と中心軸を共有し、前記マイクロ波共振器の内部を貫通し、一端で前記加圧ポンプと連結するマイクロ波を吸収しない材質の円筒と、
前記マイクロ波を吸収しない材質の円筒の他端に設けられた圧力制御弁と、を有することを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の含水性バイオマスの急速熱分解ガス化合成システム。
【請求項6】
前記マイクロ波共振器はは、前記容器が耐圧性を有する耐圧式マイクロ波共振器であって、前記容器の内部の圧力を、前記マイクロ波を吸収しない材質の円筒の内部の圧力と等しくなるように加圧する加圧機を有することを特徴とする請求項5に記載の含水性バイオマスの急速熱分解ガス化合成システム。
【請求項7】
前記炭化部は、非磁性体で形成された円筒形の容器であって、前記圧力制御弁と連通する炭化部入口と、前記炭化部入口に連通し、分岐され、相互に離隔されて前記容器の内側に設けられた複数の磁性体の管と、前記複数の磁性体の管を合流させて設けられた炭化部出口と、前記容器の外周に卷回された高周波電磁誘導コイルと、を備えるインライン式高周波誘導加熱器であることを特徴とする請求項乃至6の何れか1項に記載の含水性バイオマスの急速熱分解ガス化合成システム。
【請求項8】
前記分離部は、前記炭化部出口に連通するサイクロン式の固体・気体分離器と、前記固体・気体分離器の気体出口に連結して設けられ、水蒸気通過膜を備える水蒸気分離器と、前記水蒸気分離器の水蒸気通過膜を通過した気体の出口に連通する水素分離器と、を有し、
前記固体・気体分離機の固体出口である炭素材料出口と、前記水素分離器の水素透過膜を通過した気体の出口である水素ガス供給口と、水素透過膜を通過しなかった気体の出口である水蒸気供給口と、前記水蒸気分離器の水蒸気透過膜を通過しなかった気体の出口である排気ガス出口と、を備えることを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載の含水性バイオマスの急速熱分解ガス化合成システム。
【請求項9】
前記水性ガス製造装置は、
(1)前記炭素材料出口から供給された炭素材料と、前記水蒸気出口から供給された水蒸気を混合し、前記水蒸気に前記炭素材料の粉末を浮遊させた混合気体を製造する噴流混合器と、
(2)前記混合気体を加圧して供給する加圧ポンプと、
(3)マイクロ波発振器と、
(4)前記マイクロ波発振器と連通し、マイクロ波が導入される円筒形の空間を有し、前記空間内に、向きが前記空間の中心軸に平行で大きさが前記空間の中心軸方向及び前記空間の円周方向に一定な、軸対称マイクロ波電磁界を有するマイクロ波共振器と、
(5)前記マイクロ波共振器の内部に形成され、一端が前記加圧ポンプと連通し、他端側に一酸化炭素出口を有するマイクロ波を吸収しない材質の外管と、前記外管の他端から前記外管の内部に挿入して形成され、前記他端側に水素ガス出口が設けられた多孔質支持体の支持管と、前記支持管の外側に設けられた水素透過膜と、前記水素透過膜の外側に設けられた水性ガス化反応触媒と、を有する水性ガス化反応管と、
を備えることを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載の含水性バイオマスの急速熱分解ガス化合成システム。
【請求項10】
水素ガス出口及び前記一酸化炭素出口と連通するジメチルエーテル製造装置を更に備えることを特徴とする請求項9に記載の含水性バイオマスの急速熱分解ガス化合成システム。
【請求項11】
前記ジメチルエーテル製造装置は、マイクロ波加熱器を備えることを特徴とする請求項10に記載の含水性バイオマスの急速熱分解ガス化合成システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【公開番号】特開2012−153838(P2012−153838A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−15813(P2011−15813)
【出願日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(507146658)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(507146658)
【Fターム(参考)】
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