説明

含水木材チップおよび含水木材チップの利用方法

【課題】
この発明は、枕等を構成する木材チップ等の繊維の間、あるいは細胞の中に取り込まれている天然の水分等を木材チップの繊維の間や細胞内に保持されている状態で冷凍したり、あるいは冷蔵することで肌に当接した場合にもあまり冷たくなく、また冷たく感じる場合でも枕等の周囲をタオル等で被覆するだけで十分に使用に耐えることができる枕等を提供しようとするものである。
【解決手段】
この発明の凍結あるいは冷蔵させた含水木材チップは、ヒノキその他の芳香性のある木材や間伐材類を伐採した後、生木の状態でチップ状に加工するか、あるいはチップ状等に加工した木材の含水率が少ない場合や、乾燥済みの木材チップにおいては所定の含水量になるよう加水し、これを通気性を備えた不織布や布地等からなるカバーに芯材として詰めた上、冷凍機内で凍結あるいは冷蔵させたことを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は特にヒノキの間伐材等の木材を伐採後即座に(生木の状態)チップ状に加工し、あるいはチップ状等に加工した木材の含水率が少ない時や、乾燥済みの木材チップにおいては意図的に水分を加え、これを不織布や布地等の芯材とし詰めた上、冷凍機内で凍結あるいは冷蔵させ、もしくは加温機内で加温させた含水木材チップに関するものである。
そして、得た凍結あるいは冷蔵させ、もしくは加温させた含水木材チップは人体の適所、例えば頭部その他の部位に当てて冷却あるいは加温するために利用することができ、かつ温度が上昇したら再度冷凍機内で凍結あるいは冷蔵させ、もしくは加温機内で加温させることにより、繰り返し使用することができる含水木材チップの利用方法をも提供するものである。
【背景技術】
【0002】
これまでの人体の適所、例えば夏季における暑さ対策としての頭部のみならず、発熱した場合の頭部、脇の下(リンパ部)、その他の部位に当てて冷却するために利用することができるようにした商品は、直接プラスチックの袋体に封入した同じくプラスチック系冷却ジェルを冷凍あるいは冷蔵して使用するものがほとんどである。
また、加温機内で温めて目の上に置いて使用することができるようにしたも知られている。
【0003】
他方、木材チップを袋詰め等をして人体の適所、例えば頭部その他の部位に当てて使用する枕として利用する例が従来からよく知られている。
しかしながら、前記木材チップを袋詰め等をした枕においては、これに冷却機能を持たせようとすると、結局は冷却ジェルを重ねる等して併用するしか方法がなかったのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特にありません。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記のような直接プラスチックの袋体に封入した冷却ジェルを凍らせて使用するものにおいては、肌に当接した場合にあまりにも冷たく、その周囲をタオル等で被覆しても使用に耐えないものとなる可能性が高いものであった。
しかも、冷凍した状態では硬化してしまっているため、非常に使い勝手の悪いものである。
【0006】
この発明は、枕等を構成する木材チップ等の繊維の間、あるいは細胞の中に取り込まれている天然の水分等を木材チップの繊維の間や細胞内に保持されている状態で冷凍したり、あるいは冷蔵することで肌に当接した場合にもあまり冷たくなく、また冷たく感じる場合でも枕等の周囲をタオル等で被覆するだけで十分に使用に耐えることができる枕等を提供しようとするものである。
また冷凍した状態でも柔軟性が残っているため、使い勝手の良く、しかもヒノキその他の木材の発する芳香により、より熟睡を誘うことができる枕等を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の含水木材チップは前記課題を解決するため、ヒノキその他の芳香性のある木材や間伐材類を伐採した後、生木の状態でチップ状に加工するか、あるいはチップ状等に加工した木材の含水率が少ない場合や、乾燥済みの木材チップにおいては所定の含水量ないし含水率になるよう加水し、これを通気性を備えた不織布や布地等からなるカバーに芯材として詰めた上、冷凍機内で凍結あるいは冷蔵させ、もしくは加温器内で温めたことを特徴とするものである。
【0008】
この発明の含水木材チップは、前記木材チップの含水量ないし含水率は、水滴が滴らなくなるまで放置するか、脱水装置により強制脱水することにより調整することをも特徴とするものである。
【0009】
この発明の含水木材チップは、前記木材チップの含水量ないし含水率は、下記の計算式を基準として、140%〜360%、とりわけ140%〜280%であることをも特徴とするものである。
最大含水率=(水を最大限に含んだ重さ−元の重さ)/元の重さ
【0010】
この発明の含水木材チップは、前記通気性を備えたカバーは、不織布、布地、プラスチック網、耐水性を有する通気性紙料、あるいはこれらと通気性のあるプラスチック層との積層体から選ばれてなることをも特徴とするものである。
【0011】
この発明の含水木材チップの利用方法は、頭部その他の人体の適所に当てて冷却するために利用し、かつ解凍して温度が上昇したら、再度冷凍機内で冷凍することにより、また放熱して温度が常温に近くなったら、再度加温機内で加温することにより繰り返し使用することを可能としたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、枕等を構成する木材チップ等の繊維の間、あるいは細胞の中に取り込まれている天然の水分等を木材チップの繊維の間や細胞内に保持されている状態で冷凍したり、あるいは冷蔵することで肌に当接した場合にもあまり冷たくなく、また冷たく感じる場合でも枕等の周囲をタオル等で被覆するだけで十分に使用に耐えることができ、また冷凍した状態でも柔軟性が残っているため、使い勝手の良い枕等を提供することが可能となった。
その上、ヒノキその他の木材からなる木材チップの発する芳香により、間接的にその芳香による癒し効果や、より熟睡を誘うことができる枕等を得ることができるようになった。
またこの発明の含水木材チップは、逆にレンジ等で温めて使用することができる。
パソコン等を長時間使用する場合、疲れ目などの解消のためにこれまでにない癒し効果があえられることはもとより、温めて使用するあるいは冷やして使用するという両方の用法が可能となり、かつ適宜の水分を含んでいるので目の上に当てて使用する場合には、肌にやさしく、空気が乾燥した状態において肌に潤いを与える効果もある。
【0013】
さらに含水量ないし含水率を適宜な値にすること、および初期設定温度を調整することで木材チップ等の持つ質感を調整することができる。
しかも、不織布や布地等はその表面が質感のある触感の良いものが使用され、時としてタオル等を巻かなくてもその使用感は非常に軟らかく穏やかなクール感を得ることができ、かつ適宜に木材チップの発する芳香を通すことができる。
【0014】
この発明によって得られた凍結あるいは冷蔵させた含水木材チップは、繰り返し冷凍して多数回使用することができる。
しかも廃棄する際は木材チップとカバーとを分別し、それぞれ木材チップは固形化等によって燃料として使用したり、堆肥の製造や土木用資材として再利用することができ、またカバーはプラスチックのリサイクルの流通に乗せること等によって再利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明の凍結あるいは冷蔵させた含水木材チップの1実施例を示す平面図である。
【図2】その断面図である。
【図3】この発明の凍結あるいは冷蔵させた含水木材チップの他の実施例を示す平面図である。
【図4】その断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下この発明の凍結あるいは冷蔵させた含水木材チップの実施の形態を図面に基いて詳細に説明する。
図1および図2はこの発明の凍結あるいは冷蔵させた含水木材チップの1実施例を示すものである。
図において11は、ヒノキその他の芳香性のある木材や間伐材類を伐採した後、生木の状態でチップ状に加工するか、あるいはチップ状等に加工した木材の含水量ないし含水率が少ない場合や、乾燥済みの木材チップにおいては所定の含水量ないし含水率になるよう加水した含水木材チップである。
加水する際の材料としては、水道水、ミネラルウォーター(鉱泉水)、温泉水等とすることができる。
【0017】
前記含水木材チップ11は、通気性を備えた不織布や布地等からなるカバー21に芯材として詰めて、冷凍機内で凍結あるいは0℃から3℃に冷蔵した上で使用される。
冷凍機から出した直後の表面はこれまでのジェル状のものとはほとんど変わらないが、ごくわずかな弾力感が感じ取れる。すなわち、ジェル状のものは液体なので凍らせた表面は均一な一面である。他方、含水木材チップ11のものは表面が微妙な凹凸がある。したがって、同じ温度で凍らせて外気に触れさせた時、これまでのジェル状のものは溶け出す速度が遅いのに対し、木材チップ等のものは溶け出す速度が速い。
しかしながら、含水木材チップ11においては表面の一部が速く溶けだすことにより空気層ができ、また表面が速く溶けだしたからといってジェル状のものと比べて低温保持の時間が短くなることはない。
逆に、前記冷気をもった空気層は時間が経過するほど厚くなる。そして、この空気層が熱負荷(又は熱交換)を遅くする。またこの空気層の表面は人間があらゆる部位に使用する時の使用感を極めて穏やかに使用できる条件と位置付けられる。
他方、これまでのジェル状のものは常に表面でのみ熱負荷または熱交換が行われる。それゆえ、あまりにも冷たすぎるためタオル等を巻きその表面から離れることで空気層を作っており、この空気層の成り立ちは使用感として違いがはっきりしている。
同じ重さ(水分のみ)での低温保持の時間はごくわずかに木材チップが劣るが、ほとんど問題はない範囲である。同じく、同じ重さ(水分のみ)での低温保持の時間は、木材の屑の場合は袋内の含水木材の密度を上げて重さを増すことでジェル状のもの以上に確保することができる。
またこの発明の含水木材チップ11は、逆にレンジ等で温めて使用することができる。その場合には、個人差はあるがおおむね38℃〜43℃程度で使用することが望ましい。
なお、前記通気性を備えたカバー21は、不織布、布地、プラスチック網、耐水性を有する通気性紙料から選ぶことができる。
【実施例1】
【0018】
前記含水木材チップ11は、木材チップの繊維の間、または細胞の中に取り込まれている天然水分あるいは強制含水させた水分を木材チップの繊維の間、あるいは木材チップの細胞の中に保持されている状態で凍らせたり、冷やすことで冷却させた含水木材チップ11として利用したり、間接的に芳香による癒し効果や、硬くないことによる安眠作用、その他の効果を得ることができる。
これにより肌に近付けた場合、直接冷気を感じることが無くなるという効果を奏することができ、木材チップの繊維の間や木材チップの細胞内で凍らされたり、または冷やされた水分は木材チップの繊維の間や木材チップの細胞外の表面を通り外部に冷却効果を生じさせる。
【0019】
次に、含水量ないし含水率を適宜な値にすること、袋内充てん密度を調整すること、および初期設定温度を調整することで含水木材チップ11の持つ質感を調整することができる。
<木材チップ(削り屑、ヌカ等)の最大含水率確認実験の結果>
1)最大含水率を求めるための条件
a.含水木材チップ11の含水率は重量基準含水率とする。
b.材種はヒノキ、杉の削り屑、ならびに削りヌカの各々2種について実験した。
c.使用するヒノキ、杉の木材の比重、年輪、繊維構成は、根に近い部分、その逆で幹の先の部分、または育った環境による南面の部分、北面の部分等々により大きく違うが、基本的にはこれを無視する。また木材の芯部分、辺部分等、木材の部位についても無視する。
d.削り屑及びヌカそれぞれの間、表面に着く水分も含む。
e.外気温、湿度等も無視し、実験期は8月とする。
f.含水木材チップ11を構成する削り屑、削りヌカは絶対乾燥にはしない。その理由は木材中に含まれるセルロース、ヘミセルロース、リグニン等々の特殊成分等は前記含水木材チップ11の大切な要素であるにもかかわらず、絶対乾燥値を用いることは機械的にかつ強制的に乾燥させるため、香料等の特殊成分が失われてしまうからである。
ゆえに最大含水率を確定後、文献上表示や証明等がなされている絶対自然乾燥時の含水率(18%夏季時、13%冬季時)を計算上引くことで最大含水率を確定する。
もちろん、前記含水木材チップ11中に含まれている特殊成分等も絶対自然乾燥時の含水率(18%夏季時、13%冬季時)に含まれているはずである。それゆえ、この件を考慮して最大含水率を算出する。
【0020】
2)最大含水率
削り屑等100gを18時間水に浸けておくとほとんどが水より重くなり沈殿する。その後、ザルに移して3分から5分すると水が自然落下し、水滴が落ちなくなる。この状態=水を最大限に含んだ重さ=最大含水率とする。
※ 最大含水率=(水を最大限に含んだ重さ−元の重さ)/元の重さ
【0021】
3)最大含水率を求め理想的含水率を求める理由
上記状態で含水木材チップ11を透水性のある不織布や布地等へ入れ、冷凍室で8時間から12時間凍らせ、冷凍室より取り出す。
これを、人体等に当接して使用するクール商品とし使用した場合、冷凍した不織布や布地等へ収納した含水木材チップ11によれば、非常に程良いクール感を得ることができる、
なおかつ含水木材チップ11の中に入り込んでいる水分等は解けても不織布や布地等の外に漏れ出ることがなく、快適な状態を維持したままであった。そして解凍して冷え冷え感が無くなった後も、気化熱の作用で外気温、または体温と同等の温度に上昇するまではクール感を味わうことができる。
このことから最大含水率を求める、冷え冷え感、クール感を最長時間維持することができる時間を理想的含水率と考えてよい。
しかしながら、最大含水率は凍らせた時にカチカチになり、氷の固まり状態に近似した状態となって使用感は落ちる。むろん凍らせる温度も問題であるが含水率を適宜に下げた理想的含水率状態で凍らせることが望ましい。そうすることにより、前記含水木材チップ11の質感を適宜に感じ得ることができ、より一層快適に使用することができる。
【0022】
4)実験結果
上記、1)の条件にあてはめると実験結果にはかなりの誤差があるが、今回は次のように簡易ではあるが実験結果を正確にトレースした。
<含水木材チップがヒノキの削り屑の場合>
最大含水率376%−18%=358%
なお、ヒノキの削り屑の場合、芯材の部分では116%〜216%の最大含水率である。
この最大含水率はヒノキの場合、芯材の部分と辺材の部分では大きく違い、芯材部分に比べ辺材部分は2倍以上の水分を含むことができる。その原因は芯材にあっては中心部より揮発性成分(テルペン類)が多く含まれており水分を含みずらい部位だからである。つまり、木が生長するに当たり辺部で水分を多く貯え、成長するほどに芯材部に揮発性成分(テルペン類)が蓄積されるのである。
また、揮発性成分(テルペン類)が無くなった場合はその分については吸水性は増す。
<含水木材チップがヒノキの削りヌカの場合>
最大含水率290%−18%=272%
<含水木材チップが杉の削り屑の場合>
最大含水率313%−18%=295%
<含水木材チップが杉の削りヌカの場合>
最大含水率290%−18%=272%
【0023】
5)検討結果1
木材チップの削りヌカは、木の繊維を粉砕してしまっていることで水分が繊維内に入り込むことができず、したがって含水率が低くなる。
これとは逆に木材チップの削り屑はしっかりと木の繊維が残っているため、該繊維の間に水分はしっかりと保持される。
むろん、1)における諸条件以外に削り厚、削り形状、極小角材、粉砕繊維、その他あらゆる木材の加工方法により木の繊維状態を生かす形状を取ることで、最大含水率は上記以上にも以下にもなり得ることが、今回の実験にあっては上記数値を用いる。
上記、数値以下が冷凍庫(−10度前後)で適宜な時間(8時間程度)凍らせた後、冷凍庫外に持ち出し冷え冷え商品等として使用しても外部に水等が漏れ出さず最長時間使用できる。また、単純気化熱利用最大含水率と置き換えることができる。
6)検討結果2
また、最大含水率より含水率が少なくなるほど保持時間は短くなる。
一方、含水率が少なくなるほど冷凍庫から出した時の表面の質感は弾力感が良く感じる。木材チップの削り屑、削りヌカ等々の形状やサイズ等にも左右されることはもちろんである。
【0024】
<理想的含水率について>
実施例1における理想的含水率は下記の通りとする。
A)商品としての理想的含水率:木材チップがヒノキ削り屑の場合は116%〜286%である。
商品としての理想的含水率:木材チップがヒノキ削りヌカの場合は122%〜261%である。
前記含水率は使用条件等によりその数字を調整する。ちなみに、アイス枕の中心部分は削りぬかを使用して280%〜320%程度とし、それを包む外周部分は削り屑または削りぬかを使用した場合、110%〜220%程度とすることが望ましい。
熱取りマットとして使用する場合は、削りヌカを使用し、280%〜320%程度が望ましい。
また目の上に置く場合は、削りヌカを使用し、160%〜220%程度が望ましい。
前記理想的含水率(140%〜360%、とりわけ140%〜280%)を持続する最大保持時間は以下の通りである。
B)ヒノキ削り屑は約4時間程度である。
ヒノキ削りヌカは約5時間程度である。
【0025】
木材チップがヒノキの削り屑の場合は、含水率が大きくても屑同士の密度が低くて隙間が大きく、その間には空気層が含まれるので大量の空洞部分が生まれ、熱負荷が大きくなり、保持時間が短くなる。
逆に木材チップがヒノキの削りヌカの場合は、ヌカ同士の密度が高くて隙間が小さく、その間には空気層は少なく、逆にヌカ相互間表面等に水分があってその部分も凍るため、密度が上がって熱負荷が小さくなり、保持時間が長くなるのである。
(1)水分を含ませた試験体をそのまま冷凍庫に入れ、約8時間〜12時間経過すると、試験体の重さは冷凍庫に入れる前より6%〜12%減ることが分かった。これは冷凍庫内の空気が乾燥をしていて、凍り出すまでの間に試験体表面(カバーに含まれる水分も含む)より水分が気化し、比重が落ちる。
その後もそのまま冷凍庫内に置いておくと、完全に凍った状態であっても24時間ごとに0.011%〜0.032%程度ずつ試験体は軽くなる。
(2)上記において、−10℃程度に適宜に凍らせた試験体を外部に持ち出し、最大保持時間(4時間〜5時間)を経過した後の、その時点での重さを量ってみると、冷凍庫から持ち出した時の重さよりも0.013%〜0.036%程度一時的に重くなる。これは凍っている状態から解凍状態が始まることで大気中の水分が吸水性、透湿性のあるカバーや削り屑やヌカを構成する木材チップに吸着したものと考えられる。これより先、双方とも最大保持時間を経過後水分は気化熱として空気中に気化して行く。したがって、ここからは徐々に重さは減っていくことになる。この状態で試験体または試験体水分が周りの雰囲気中の絶対温度と同じ程度になるまでは、一般的な気化熱としてのクール感を得ることができる。
【0026】
<カバーについて>
実施例1にあっては、カバー21は通気性や透水性を備えた不織布や布地等から選ぶことができる。
そして、最大含水量以下で使用する分には、通気性や透水性を備えた不織布や布地等からなるカバー21を用いても、水漏れはほとんど無い。削り屑や削りヌカ等からなる含水木材チップ11の芳香もしっかり出ており、人体等に当接して使用するクール商品とし使用した場合、快適に使用できる。
ちなみに冷凍庫から出した際の外気温℃35度の環境下では、前記クール商品の表面温度は11℃±0.5℃であり、快適な心地を使用者に与えることができる。
前記実施例1においては、適宜な透水性を持った不織布(スパンボンド法でフリース形成したもの)を使用して非常に良い結果を得た。
適宜な含水率を持った含水木材チップ11をカバー21内に入れた瞬間からカバー21は水分を吸収し始める。そのため含水木材チップ11の含水率は急激に落ちる。
また含水木材チップ11をカバー21に入れたクール商品を水に浸け、適宜な含水率を持った状態にしても、カバー21を構成する不織布や布地等は水分を含んだ状態になる。
いずれにしても、現実にはキッチリと理想の含水率を得ることは難しい。したがって、脱水機(機械的)、あるいは手で絞るなどの種々の手法できっちりと理想の含水率を得ることが望ましい。また、適宜にその調整ができるカバー21の素材を使用しても良い。
【0027】
上述のように、現実的には一般消費者が適宜な含水率を持った状態にすることは難しい。すなわち、快適な使用状況に整えるには理想的な含水率を作り出し、冷凍庫に入れて冷やすことで得られるが、一般消費者では適宜な含水率を作り出すことは困難である。
もちろん、含水木材チップ11をカバー21に入れたクール商品を水の中に浸し、空気が抜けた状態で取り出して、洗濯機等の脱水機能を利用して約40秒〜1分程度脱水をすることにより、適宜な含水率を求めることができる。
また、水の中に浸して手で適宜な含水率に絞ることは不可能なため、カゴなどに入れ、水分を自然落下させ、水分が滴らなくなった状態を適宜な含水率として冷蔵庫に入れてもよい。
このような事情をみてみると、一般エンドユーザーではなく、たとえばビジネスホテル、旅館等で夏季シーズンに他社との差別化を図るサービス商品として、上記手間暇をかけて顧客に提供しても良い。その他、病院、介護施設等々で使用することができる。
【実施例2】
【0028】
図3および図4はこの発明の凍結あるいは冷蔵させた含水木材チップの他の実施例を示すものである。
図において31は、ヒノキその他の芳香性のある木材や間伐材類を伐採した後、生木の状態でチップ状に加工するか、あるいはチップ状等に加工した木材の含水量ないし含水率が少ない場合や、乾燥済みの木材チップにおいては所定の含水量ないし含水率になるよう加水した含水木材チップである。
【0029】
前記含水木材チップ31は、通気性を備えた不織布や布地等からなるカバー41に芯材として詰めて、冷凍機内で凍結した上で使用される。
本実施例における前記通気性を備えたカバー41は、不織布、布地、プラスチック網、耐水性を有する通気性紙料等からなる外層41−1とポリエチレンフィルム等の通気性のあるプラスチック素材で構成された内層41−2との積層構造を有している。この積層構造は、接着剤による接着や熱融着によって形成される。前記ポリエチレンフィルム等の通気性のあるプラスチック素材で構成された内層41−2は水を通すことが無く、他方前記含水木材チップ31を構成するヒノキ等の芳香を通す性質を持っている。したがって、水分を漏出させることなくヒノキ等の芳香を通すことができるという、非常に有用な機能を発揮させることができる。
図において42は、前記内層41−2の外縁に形成した外層41−1のみからなる縁取り部で、硬質の内層41−2が露出して使用者が怪我をしないよう配慮されている。
【0030】
この発明の凍結あるいは冷蔵させた含水木材チップの利用方法を適用したクール商品によれば、病気等の発熱である程度長時間冷やすことが必要な場合などにおける使用に適すると思われる。
また一般成人等で夏季の夜、寝苦しい時などもこれまでと同様の使用環境であると十分想定でき、これまでに無い快適な心地よさを得られる。
例えば、冷やした枕等は介護施設等の高齢者等に好まれる。その際、含水木材チップ等が完全に凍っていない、または凍り始めた状態(ほぼ0℃から3℃程度)においては、含水木材チップ等は固有の弾力感があり、また質感は軟らかくて穏やかに体の部位になじみ、これまでに無い快適な心地よさを得られる。
もちろん、その場合における含水木材チップの設定温度は凍らせた時よりも高いため使用時間は短くなる。
これまでの氷枕等は、ほぼ0℃以下の一定温度に保たれる。市販のクール商品も同じで、その冷たさはタオル等を巻いた状態で使用しても、冷え加減はやはり0℃に近い状態である。
【0031】
ところで、桐の木などはほぼ無臭であり、ゆえにタンスなど衣類を入れることはよく知られている。
したがって、ヒノキその他の芳香性のある木材や間伐材類の代わりに、桐のチップ等を利用するとともに、相性の良い、たとえばハーブ等々の木(草)をそのまま粉砕して配合したものをヒノキその他の芳香性のある木材や間伐材類として利用することができる。もちろんその際、適宜な水分(含水率)とともに商品化することが望ましい。
もちろん、前記木材チップにはのこ屑やカンナ屑以外の破砕物等を含むものである。また、木材以外のチップ状になる植物であれば、木材チップと同様に利用することができる。
ポイントをまとめると以下の通りである。
1) 含水率は最大含水率前後の水分量を用いる。
2) 冷凍機から出した場合、外気との熱交換の過程で気圧の変化に伴い内部の空気がわずかに膨張する。この空気を処理しないと生地自体が破損する可能性がある。それゆえ、問題のない範囲で生地に穴をあけて内部の空気を抜く処置を行う。あるいは生地を通気性の良いものに変えることで対処する。
3) これは逆にポリエチレンフィルム等の通気性を補う役目を負うこととなり、内部木材チック等の芳香が出やすくなる。
【0032】
この発明の凍結あるいは冷蔵させた含水木材チップの利用方法は、頭部その他の人体の適所に当てて冷却するために利用することができ、かつ解凍して温度が上昇したら、再度冷凍機内で冷凍することによって、何回でも繰り返し使用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0033】
この発明の冷却した含水木材チップおよび冷却した含水木材チップの利用方法は以上の構成を有しており、人体の適所、例えば頭部や腋の下、目の上、その他の部位に当てて冷却するために利用される。
さらに、ペットその他の動物用として、あるいは商品をソフトに包み込むことができるため、ソフトな保持力と冷却作用を要求される種々の用途に適宜使用することができる。
またこの発明の含水木材チップは、逆にレンジ等で温めて使用することができる。その場合には、個人差はあるがおおむね38℃〜43℃程度で使用することが望ましい。
【符号の説明】
【0034】
11 含水木材チップ
21 カバー
31 含水木材チップ
41 カバー
41−1 外層
41−2 内層
42 縁取り部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒノキその他の芳香性のある木材や間伐材類を伐採した後、生木の状態でチップ状に加工するか、あるいはチップ状等に加工した木材の含水率が少ない場合や、乾燥済みの木材チップにおいては所定の含水量になるよう加水し、これを通気性を備えた不織布や布地等からなるカバーに芯材として詰めた上、冷凍機内で凍結あるいは冷蔵させ、もしくは加温機内で加温させたことを特徴とする含水木材チップ。
【請求項2】
前記木材チップの含水量は、水滴が滴らなくなるまで放置するか、脱水装置により強制脱水することにより調整することを特徴とする請求項1記載の含水木材チップ。
【請求項3】
前記木材チップの含水量は、下記の計算式を基準として、140%〜360%、とりわけ140%〜280%であることを特徴とする請求項1記載の含水木材チップ。
最大含水率=(水を最大限に含んだ重さ−元の重さ)/元の重さ
【請求項4】
前記通気性を備えたカバーは、布地、不織布、プラスチック網、耐水性を有する通気性紙料、あるいはこれらと通気性のあるプラスチック層との積層体から選ばれてなることを特徴とする請求項1記載の含水木材チップ。
【請求項5】
含水木材チップは、頭部その他の人体の適所に当てて冷却するために利用し、かつ解凍して温度が上昇したら、再度冷凍機内で冷凍することにより、また放熱して温度が常温に近くなったら、再度加温機内で加温することにより繰り返し使用することを可能としたことを特徴とする含水木材チップの利用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−82223(P2013−82223A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−218905(P2012−218905)
【出願日】平成24年9月29日(2012.9.29)
【出願人】(599174982)
【Fターム(参考)】