説明

含水物質含有ポリマー部材の製造方法

【課題】水を含む層と水を含まない層とを積層させることにより得られ、水による積層した層同士の接着阻害が生じない含水物質含有ポリマー部材の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の含水物質含有ポリマー部材の製造方法は、重合性モノマーを吸収可能なモノマー吸収性シートのモノマー吸収面上に、重合性モノマーを含むモノマー混合物又はその部分重合物、水、さらに水溶性物質及び水分散性物質からなる群より選ばれた少なくとも1つの物質を含有する水含有重合性組成物層を積層してから、重合に付して、水と、水溶性物質及び水分散性物質からなる群より選ばれた少なくとも1つの物質とからなる含水物質が、モノマー吸収面と水含有重合性組成物層との界面とは反対側の界面又は該界面近傍に分布している構造を有するポリマー部材を得ることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含水物質が偏在しているポリマー部材の製造方法に関する。より詳細には、水を含む層状部分と水を含まない層状部分とを有するポリマー部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フィルムやシート等において、水を含む層と水を含まない層との多層構成のものが求められてきている。例えば、人間の感冒等による発熱症状を緩和するための除熱ゲル材や、肌に保湿剤や美容液を供給するための美顔用ゲルパックなどが挙げられる。
【0003】
このようなものとして、例えば、改質剤を含むプラスチックフィルムからなる支持体と、少なくとも片側表面に積層される含水ゲル層からなる含水ゲルシート(特許文献1参照)、支持基材の表面に、少なくとも水と、ポリアクリル酸化合物と、多価アルコールと、油状成分と、分散補助剤と、を含むゲル状組成物から構成してある含水ゲル層を積層してなるゲルパック材(特許文献2参照)等が知られている。しかし、水を含む層と含まない層との積層化において、水が積層した層同士の接着を阻害する場合があり、また、得られたシートにおける一体性や、取り扱い性など点で問題を生じていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−347895号公報
【特許文献2】特開2008−247807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的は、水を含む層と水を含まない層との積層工程を含み、該積層工程において積層した層同士の水による接着阻害が生じない含水物質含有ポリマー部材の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは前記目的を達成するために鋭意検討した結果、重合性モノマーを吸収可能なモノマー吸収性シートのモノマー吸収面に、重合性モノマーを含むモノマー混合物又はその部分重合物、水、さらに水溶性物質及び水分散性物質からなる群より選ばれた少なくとも1つの物質を含有する水含有重合性組成物層を積層してから、重合に付すと、水による積層した層同士の接着阻害が生じることはなく、一体化しており、含水物質が偏って分布するポリマー部材が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は、重合性モノマーを吸収可能なモノマー吸収性シートのモノマー吸収面上に、重合性モノマーを含むモノマー混合物又はその部分重合物、水、さらに水溶性物質及び水分散性物質からなる群より選ばれた少なくとも1つの物質を含有する水含有重合性組成物層を積層してから、重合に付して、水と、水溶性物質及び水分散性物質からなる群より選ばれた少なくとも1つの物質とからなる含水物質が、モノマー吸収面と水含有重合性組成物層との界面とは反対側の界面又は該界面近傍に分布している構造を有するポリマー部材を得ることを特徴とする含水物質含有ポリマー部材の製造方法を提供する。
【0008】
また、本発明は、重合性モノマーを吸収可能なモノマー吸収性シートのモノマー吸収面上に、重合性モノマーを含むモノマー混合物又はその部分重合物、水、さらに水溶性物質及び水分散性物質からなる群より選ばれた少なくとも1つの物質を含有する水含有重合性組成物層を積層し、さらに該水含有重合性組成物層上にカバーフィルムを積層してから、重合に付して、水と、水溶性物質及び水分散性物質からなる群より選ばれた少なくとも1つの物質からなる含水物質が、モノマー吸収面と水含有重合性組成物層との界面とは反対側の界面又は該界面近傍に分布している構造を有するポリマー部材を得ることを特徴とする含水物質含有ポリマー部材の製造方法を提供する。
【0009】
また、本発明は、重合性モノマーを吸収可能なモノマー吸収性シートのモノマー吸収面上に、重合性モノマーを含むモノマー混合物又はその部分重合物、水、さらに水溶性物質及び水分散性物質からなる群より選ばれた少なくとも1つの物質を含有する水含有重合性組成物層を積層し、さらに該水含有重合性組成物層上にモノマー吸収面が接する形態で別のモノマー吸収性シートを積層してから、重合に付して、水、水溶性物質及び水分散性物質からなる群より選ばれた少なくとも1つの物質からなる含水物質が、モノマー吸収面と水含有重合性組成物層との界面又は該界面近傍には分布しない構造を有するポリマー部材を得ることを特徴とする含水物質含有ポリマー部材の製造方法を提供する。
【0010】
さらに、本発明は、重合を、活性エネルギー線の照射によって開始する前記含水物質含有ポリマー部材の製造方法を提供する。
【0011】
さらに、本発明は、水溶性物質及び水分散性物質からなる群より選ばれた少なくとも1つの物質が、水溶性のポリマー及び水分散性のポリマーからなる群より選ばれた少なくとも1つのポリマーである前記の含水物質含有ポリマー部材の製造方法を提供する。
【0012】
さらに、本発明は、水溶性物質及び水分散性物質からなる群より選ばれた少なくとも1つの物質が、水溶性の無機物及び水分散性の無機物からなる群より選ばれた少なくとも1つの無機物である前記の含水物質含有ポリマー部材の製造方法を提供する。
【0013】
さらにまた、本発明は、前記のポリマー部材の製造方法により得た含水物質含有ポリマー部材を、加熱及び減圧から選ばれた少なくとも1つの手段より、水を除去することを特徴とするポリマー部材の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の含水物質含有ポリマー部材の製造方法によれば、前記構成を有しているので、水を含む層と水を含まない層との積層工程において積層した層同士の水による接着阻害が生じることなく、水と、水溶性物質及び水分散性物質からなる群より選ばれた少なくとも1つの物質とからなる含水物質が偏って分布するポリマー部材を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、実施例5のポリマー部材の断面構造の電子顕微鏡写真である。
【図2】図2は、比較例5のポリマー部材の断面構造の電子顕微鏡写真である。
【図3】図3は、実施例1及び比較例1の赤外線スペクトルチャート(A面側)である。
【図4】図4は、実施例2及び比較例2の赤外線スペクトルチャート(A面側)である。
【図5】図5は、実施例4及び比較例4の赤外線スペクトルチャート(A面側)である。
【図6】図6は、実施例6及び比較例6の赤外線スペクトルチャート(A面側)である。
【図7】図7は、実施例7のポリマー部材の表面の電子顕微鏡写真である。
【図8】図8は、実施例8のポリマー部材の断面構造の電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の含水物質含有ポリマー部材の製造方法によれば、重合性モノマーを吸収可能なモノマー吸収性シートのモノマー吸収面上に、重合性モノマーを含むモノマー混合物又はその部分重合物、水、さらに水溶性物質及び水分散性物質からなる群より選ばれた少なくとも1つの物質を含有する水含有重合性組成物層を積層してから、重合に付して、水と、水溶性物質及び水分散性物質からなる群より選ばれた少なくとも1つの物質とからなる含水物質が、モノマー吸収面と水含有重合性組成物層との界面とは反対側の界面又は該界面近傍に分布している構造を有するポリマー部材を得ることができる。すなわち、本発明の含水物質ポリマー部材の製造方法によれば、前記の含水物質が一定の層状領域(層状部分)に偏って分布しているポリマー部材を得ることができる。
【0017】
本発明の含水物質含有ポリマー部材の製造方法において、モノマー吸収性シートは、構成成分として水を含有することはなく、「水を含まない層」に相当し、また、水含有重合性組成物層は、構成成分として水を含有し、「水を含む層」に相当する。このため、本発明の含水物質含有ポリマー部材の製造方法では、「水を含む層」と「水を含まない層」との積層工程を必須の工程として含む。
【0018】
本願において、含水物質含有ポリマー部材の製造方法を「本発明の製造方法」と称する場合がある。また、「水溶性物質及び水分散性物質からなる群より選ばれた少なくとも1つの物質」を「水溶性または水分散性物質」と称する場合がある。さらに、「水と、水溶性物質及び水分散性物質からなる群より選ばれた少なくとも1つの物質とからなる含水物質」を単に「含水物質」と称する場合がある。さらに、界面は、2つの異なる物質同士が、境界面を介して接する場合の境界面のことである。例えば、含水物質含有ポリマー部材が大気中で存在する場合、当然に空気と接しているので、その含水物質含有ポリマー部材表面は界面であり、また、モノマー吸収性シートと水含有重合性組成物層とを積層させることにより得られる構造物が大気中で存在する場合、当然に空気に接しているので、その構造物表面は界面である。なお、本発明の製造方法において「シート」という場合には、テープ状のもの、即ち「テープ」も含まれるものとする。
【0019】
本発明の製造方法では、モノマー吸収性シートのモノマー吸収面に水含有重合性組成物層が設けられると、モノマー吸収性シートと、重合性モノマーのうち少なくとも一種との間で相互作用を生じて、該重合性モノマーがモノマー吸収性シートの内部まで移動する現象が生じる。このため、モノマー吸収性シートと水含有重合性組成物層とを積層させることにより得られた構造物において、含水物質がモノマー吸収面と水含有重合性組成物層との界面とは反対側の界面又は該界面近傍に分布している偏在構造が得られ、水を含む層と水を含まない層とを積層した際に生じる水による層同士の接着阻害が生じない。なお、含水物質とは、水と、水溶性物質及び水分散性物質からなる群より選ばれた少なくとも1つの物質とから少なくとも構成される混合物である。
【0020】
本発明の製造方法では、前記のように、モノマー吸収性シートと水含有重合性組成物層とを積層させることにより得られた構造物において、含水物質がモノマー吸収面と水含有重合性組成物層との界面とは反対側の界面又は該界面近傍に分布している偏在構造(偏析構造)を得てから、この含水物質の偏在構造を有する構造物を重合に付すので、含水物質の偏在構造を有する含水物質含有ポリマー部材を得ることができる。
【0021】
本発明の含水物質含有ポリマー部材の製造方法の一つの具体例(「本発明の製造方法(1)と称する場合がある)は、重合性モノマーを吸収可能なモノマー吸収性シートのモノマー吸収面上に、重合性モノマーを含むモノマー混合物又はその部分重合物、水、さらに水溶性物質及び水分散性物質からなる群より選ばれた少なくとも1つの物質を含有する水含有重合性組成物層を積層してから、重合に付して、水と、水溶性物質及び水分散性物質からなる群より選ばれた少なくとも1つの物質とからなる含水物質が、モノマー吸収面と水含有重合性組成物層との界面とは反対側の界面又は該界面近傍に分布している構造を有するポリマー部材を得ることである。
【0022】
本発明の含水物質含有ポリマー部材の製造方法の他の具体例(「本発明の製造方法(2)と称する場合がある)は、重合性モノマーを吸収可能なモノマー吸収性シートのモノマー吸収面上に、重合性モノマーを含むモノマー混合物又はその部分重合物、水、さらに水溶性物質及び水分散性物質からなる群より選ばれた少なくとも1つの物質を含有する水含有重合性組成物層を積層し、さらに該水含有重合性組成物層上にカバーフィルムを積層してから、重合に付して、水と、水溶性物質及び水分散性物質からなる群より選ばれた少なくとも1つの物質とからなる含水物質が、モノマー吸収面と水含有重合性組成物層との界面とは反対側の界面又は該界面近傍に分布している構造を有するポリマー部材を得ることである。本発明の製造方法(2)によれば、カバーフィルム付きの含水物質含有ポリマー部材を得ることができる。
【0023】
さらに、本発明の含水物質含有ポリマー部材の製造方法の他の具体例(「本発明の製造方法(3)と称する場合がある)は、重合性モノマーを吸収可能なモノマー吸収性シートのモノマー吸収面上に、重合性モノマーを含むモノマー混合物又はその部分重合物、水、さらに水溶性物質及び水分散性物質からなる群より選ばれた少なくとも1つの物質を含有する水含有重合性組成物層を積層し、さらに該水含有重合性組成物層上にモノマー吸収面が接する形態で別のモノマー吸収性シートを積層してから、重合に付して、水と、水溶性物質及び水分散性物質からなる群より選ばれた少なくとも1つの物質とからなる含水物質が、モノマー吸収面と水含有重合性組成物層との界面又は該界面近傍には分布しない構造を有するポリマー部材を得ることである。
【0024】
(モノマー吸収性シート)
本発明の製造方法において、モノマー吸収性シートは、モノマー吸収層からなるシートであり、水含有重合性組成物層の含有する重合性モノマーのうち少なくとも一種を吸収できるシートである。より詳細には、モノマー吸収性シートは、前記の重合性モノマーのうち少なくとも一種との間で相互作用を生じ、該重合性モノマーを吸い、シート内部(層内部)まで移動させることが可能なシート(内部に取り込むことが可能なシート)である。なお、モノマー吸収性シートのモノマー吸収面は、モノマー吸収層により提供される面である。また、モノマー吸収性シートは、作業性や取り扱い性の点から、後述の基材(モノマー吸収性シート用基材)上に設けられていてもよい。
【0025】
モノマー吸収性シート(モノマー吸収層)としては、特に制限されないが、単層のポリマー層が好適に用いられる。つまり、モノマー吸収性シートとして、モノマー吸収層として作用するシート形状あるいはフィルム形状のポリマーを好適に用いることができる。なお、本願において、シート形状あるいはフィルム形状のポリマーを「ポリマーシート」と称する場合がある。
【0026】
ポリマーシートと重合性モノマーとの関係において、ポリマーシートがその重合性モノマーに対してモノマー吸収性シート(モノマー吸収層)に該当するか否かは、下記の条件を満たすか否かにより判断される。ポリマーシートを過剰量(重量でポリマーシートの300倍以上)の重合性モノマー中へ25℃で75秒間漬け込んだ場合に、ポリマーシートの重量が初期の重量の2倍以上になり、且つポリマーシートを過剰量(重量でモノマー吸収層の300倍以上)の重合性モノマー中へ25℃で3日間漬け込んだ場合に、溶解により消失することなく、ポリマーシートの重量が初期の重量の2倍以上になるか否かにより判断される。ポリマーシートと重合性モノマーとの関係において、この条件を満たす場合、すなわち前記の両方の場合においてポリマーシートの重量が初期の重量の2倍以上になる場合、本発明の製造方法では、そのポリマーシートを、その重合性モノマーに対するモノマー吸収層として組み合わせて使用することができる。
【0027】
モノマー吸収性シート(モノマー吸収層)としてのポリマーシートは、公知・慣用の方法を用いて形成することができ、例えば、後述の基材(モノマー吸収性シート用基材)やセパレーターの離型処理された面などの適宜な支持体の所定の面上に、ポリマーシートを形成する組成物を塗布して、必要に応じて、乾燥、重合等を行うことにより形成することができる。なお、ポリマーシートを形成する組成物を「ポリマーシート形成組成物」と称する場合がある。
【0028】
ポリマーシート形成組成物は、特に限定されず、例えば、ポリマーを必須成分とするポリマーシート形成組成物、ポリマーを形成するモノマーの混合物(モノマー混合物)又はその部分重合物を必須成分とするポリマーシート形成組成物などが挙げられる。具体的には、前者としては、例えば、いわゆる溶剤型のポリマーシート形成組成物が挙げられ、後者としては、例えば、いわゆる活性エネルギー線硬化型のポリマーシート形成組成物が挙げられる。なお、ポリマーシート形成組成物には、必要に応じて、架橋剤やその他の各種添加剤が用いられていてもよい。
【0029】
モノマー吸収性シートとしてのポリマーシートを構成するポリマーとしては、特に制限されず、例えば、アクリル系ポリマー、ゴム系ポリマー、ビニルアルキルエーテル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、ポリアミド系ポリマー、ウレタン系ポリマー、フッ素系ポリマー、エポキシ系ポリマーなどから適宜選択して用いることができる。上記の中でも、吸収可能なモノマーの選択範囲が広いこと、強度などの機械的性質が軟らかいものから硬いものまで広範囲であること、透明性や耐候性に優れるなどの観点から、アクリル系ポリマーが特に好ましい。つまり、モノマー吸収性シートは、アクリル系ポリマーシートであることが好ましい。なお、上記ポリマーは、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0030】
なお、モノマー吸収性シートとしてのポリマーシートは、上記のポリマーをベースポリマーとする粘着剤層(感圧性接着剤層)であってもよい。すなわち、モノマー吸収性シートとしてのポリマーシートは、粘着シート(感圧性接着シート)であってもよい。このような粘着剤層を形成する粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、ウレタン系粘着剤、フッ素系粘着剤、エポキシ系粘着剤などが挙げられる。
【0031】
前記のアクリル系ポリマーとしては、(メタ)アクリル酸エステルをモノマー成分とするアクリル系ポリマー、特に主たるモノマー成分(モノマー主成分)が(メタ)アクリル酸アルキルエステルであるアクリル系ポリマーが好適に用いられる。このような(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、環状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。なお、上記の「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及び/又は「メタクリル」を表し、他も同様である。また、(メタ)アクリル酸アルキルエステルは単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0032】
直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシルなどのアルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。中でも、アルキル基の炭素数が1〜14の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、より好ましくはアルキル基の炭素数が1〜10の(メタ)アクリル酸アルキルエステルである。
【0033】
環状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えばシクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0034】
なお、上記の(メタ)アクリル酸アルキルエステルはアクリル系ポリマーのモノマー主成分として用いられているので、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの割合は、例えば、アクリル系ポリマーを形成するためのモノマー成分全量に対して60重量%以上(好ましくは80重量%以上)であることが重要である。
【0035】
前記アクリル系ポリマーでは、モノマー成分として、極性基含有モノマーや多官能性モノマーなどの各種共重合性モノマーが用いられてもよい。モノマー成分として共重合性モノマーを用いることにより、例えば、凝集力を高めることができる。なお、共重合性モノマーは、単独で、又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0036】
前記極性基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸などのカルボキシル基含有モノマー又はその無水物(無水マレイン酸など);(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルなどの水酸基含有モノマー;アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミドなどのアミド基含有モノマー;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチルなどのアミノ基含有モノマー;(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジルなどのグリシジル基含有モノマー;アクリロニトリルやメタクリロニトリルなどのシアノ基含有モノマー;N−ビニル−2−ピロリドン、(メタ)アクリロイルモルホリンの他、N−ビニルピリジン、N−ビニルピペリドン、N−ビニルピリミジン、N−ビニルピペラジン、N−ビニルピロール、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルオキサゾール等の複素環含有ビニル系モノマー;(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチルなどの(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル系モノマー;ビニルスルホン酸ナトリウムなどのスルホン酸基含有モノマー;2−ヒドロキシエチルアクリロイルフォスフェートなどのリン酸基含有モノマー;シクロヘキシルマレイミド、イソプロピルマレイミドなどのイミド基含有モノマー;2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートなどのイソシアネート基含有モノマーなどが挙げられる。極性基含有モノマーとしてはアクリル酸等のカルボキシル基含有モノマー又はその無水物が好適である。
【0037】
極性基含有モノマーの使用量としては、アクリル系ポリマーを形成するためのモノマー成分全量に対して30重量%以下(例えば1〜30重量%)であり、好ましくは3〜20重量%である。極性基含有モノマーの使用量が30重量%を超えると、凝集力が高くなりすぎ、例えば、モノマー吸収性シートとしてのポリマーシートの柔軟性の点で不具合を生じる場合がある。また、極性基含有モノマーの使用量が少なすぎると(例えばアクリル系ポリマーを形成するためのモノマー成分全量に対して1重量%未満であると)、得られるポリマーの凝集力が低下し、モノマー吸収性シートとしてのポリマーシートで高い強度が得られないおそれがある。また、ポリマーシートとしての取り扱いが難しくなる場合がある。
【0038】
前記多官能性モノマーとしては、例えば、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレートなどが挙げられる。
【0039】
多官能性モノマーの使用量としては、アクリル系ポリマーを形成するためのモノマー成分全量に対して20重量%以下(例えば、0.01〜20重量%)であり、好ましくは0.02〜10重量%である。多官能性モノマーの使用量がアクリル系ポリマーを形成するためのモノマー成分全量に対して20重量%を超えると、例えばアクリル系ポリマーの凝集力が高くなりすぎ、モノマー吸収性シートとしてのポリマーシートのモノマー吸収性が損なわれるおそれがある。また、多官能性モノマーの使用量が少なすぎると(例えばアクリル系ポリマーを形成するためのモノマー成分全量に対して0.01重量%未満であると)、例えば、アクリル系ポリマーの凝集力が低下したり、重合性モノマーへ溶解してしまうおそれがある。
【0040】
また、極性基含有モノマーや多官能性モノマー以外の共重合性モノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類;スチレン、ビニルトルエンなどの芳香族ビニル化合物;エチレン、ブタジエン、イソプレン、イソブチレンなどのオレフィン又はジエン類;ビニルアルキルエーテルなどのビニルエーテル類;塩化ビニルなどが挙げられる。
【0041】
また、本発明の製造方法では、モノマー吸収性シートとしてのポリマーシートを構成するポリマーとしては、水含有重合性組成物層の重合性モノマーのうち少なくとも1種を構成単位とするポリマーや、水含有重合性組成物層の重合性モノマーのうち少なくとも一種とモノマーを特徴づける部分構造(例えば、アクリル系モノマーのアクリレート構造部、エポキシ系モノマーのエポキシ構造部など)が共通するモノマーを構成単位とするポリマーが好ましい。重合性モノマーのモノマー吸収性シートへの吸収がより生じやすくなるためである。後述のように、水含有重合性組成物層としては水含有アクリル系重合性組成物層が好ましいので、モノマー吸収性シートとしてのポリマーシートは、かかる点からも、アクリル系ポリマーシートであることが好ましい。
【0042】
上記のアクリル系ポリマーは、公知乃至慣用の重合方法によりモノマー成分を重合(共重合)させることにより形成することができる。このような重合方法としては、例えば、溶液重合法、乳化重合法、塊状重合法、活性エネルギー線の照射による重合法(活性エネルギー線重合法、光重合法)などが挙げられる。中でも、有機溶剤を用いることなく、省エネルギーで、さらに比較的厚いポリマー層(ポリマーシート)を得やすいことから、活性エネルギー線重合法が好ましく、特に紫外線の照射による紫外線重合法が好ましい。
【0043】
光重合開始剤としては、特に制限されず、例えばベンゾインエーテル系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、α−ケトール系光重合開始剤、芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤、光活性オキシム系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンジル系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、ケタール系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤などを用いることができる。なお、光重合開始剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0044】
具体的には、ケタール系光重合開始剤には、例えば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン[例えば、商品名「イルガキュア651」(チバ・ジャパン社製)など]等が含まれる。アセトフェノン系光重合開始剤としては、例えば、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン[例えば、商品名「イルガキュア184」(チバ・ジャパン社製)など]、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−(t−ブチル)ジクロロアセトフェノンなどが挙げられる。ベンゾインエーテル系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルなどが挙げられる。アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤としては、例えば、商品名「ルシリンTPO」(BASF社製)などが使用できる。α−ケトール系光重合開始剤としては、例えば、2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノン、1−[4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル]−2−メチルプロパン−1−オンなどが挙げられる。芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤としては、例えば、2−ナフタレンスルホニルクロライドなどが挙げられる。光活性オキシム系光重合開始剤としては、例えば、1−フェニル−1,1−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)−オキシムなどが挙げられる。ベンゾイン系光重合開始剤には、例えば、ベンゾインなどが含まれる。ベンジル系光重合開始剤には、例えば、ベンジルなどが含まれる。ベンゾフェノン系光重合開始剤は、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3、3′−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、ポリビニルベンゾフェノン、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどが含まれる。チオキサントン系光重合開始剤には、例えば、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、ドデシルチオキサントンなどが含まれる。
【0045】
光重合開始剤の使用量としては、特に制限されないが、例えば、アクリル系ポリマーを形成する全モノマー成分100重量部に対して、0.01〜5重量部(好ましくは0.05〜3重量部)の範囲から選択することができる。
【0046】
上記の活性エネルギー線の照射による重合法で用いられる活性エネルギー線としては、例えば、α線、β線、γ線、中性子線、電子線などの電離性放射線や、紫外線などが挙げられ、特に紫外線が好適である。また、活性エネルギー線の照射エネルギー、照射時間、照射方法などは特に制限されず、光重合開始剤を活性化させて、重合反応を生じさせることができればよい。
【0047】
なお、熱重合開始剤としては、例えば、アゾ系重合開始剤[例えば、2,2´−アゾビスイソブチロニトリル、2,2´−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、2,2´−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチル、4,4´−アゾビス−4−シアノバレリアン酸、アゾビスイソバレロニトリル、2,2´−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2´−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2´−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2´−アゾビス(N,N´−ジメチレンイソブチルアミジン)ジヒドロクロライドなど]、過酸化物系重合開始剤(例えば、ジベンゾイルペルオキシド、tert−ブチルペルマレエートなど)、レドックス系重合開始剤(例えば有機過酸化物/バナジウム化合物;有機過酸化物/ジメチルアニリン;ナフテン酸金属塩/ブチルアルデヒド、アニリンあるいはアセチルブチロラクトン等の組み合わせなど)などが挙げられる。熱重合開始剤の使用量としては、特に制限されず、熱重合開始剤として利用可能な範囲であればよい。なお、レドックス系重合開始剤を熱重合開始剤として用いれば、常温で重合させることが可能である。
【0048】
また、モノマー吸収性シートとしてのポリマーシートを構成するアクリル系ポリマーを溶液重合により得る際に用いられる溶剤としては、公知慣用の有機溶剤を用いることができる。例えば、酢酸エチル、酢酸メチルなどのエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶剤;メタノール、エタノール、ブタノールなどのアルコール系溶剤;シクロヘキサン、ヘキサン、ヘプタンなどの炭化水素系溶剤;トルエン、キシレンなどの芳香族系溶剤などが使用できる。これらの有機溶剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0049】
さらに、ポリマーシート形成組成物には、架橋剤が添加されていてもよい。架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、メラミン系架橋剤、過酸化物系架橋剤、尿素系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、アミン系架橋剤などが挙げられる。中でも、取り扱い性の点から、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤が好ましい。なお、架橋剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0050】
上記イソシアネート系架橋剤としては、例えば、1,2−エチレンジイソシアネート、1,4−ブチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートなどの低級脂肪族ポリイソシアネート類;シクロペンチレンジイソシアネート、シクロへキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネ−ト、水素添加キシレンジイソシアネ−トなどの脂環族ポリイソシアネート類;2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート類などが挙げられ、その他、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート付加物[日本ポリウレタン工業(株)製、商品名「コロネートL」]、トリメチロールプロパン/ヘキサメチレンジイソシアネート付加物[日本ポリウレタン工業(株)製、商品名「コロネートHL」]なども用いられる。
【0051】
上記エポキシ系架橋剤としては、例えば、N,N,N′,N′−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、ジグリシジルアニリン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビタンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、o−フタル酸ジグリシジルエステル、トリグリシジル−トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、レゾルシンジグリシジルエーテル、ビスフェノール−S−ジグリシジルエーテルの他、分子内にエポキシ基を2つ以上有するエポキシ系樹脂などが挙げられる。
【0052】
また、ポリマーシート形成組成物には、必要に応じて、適宜な添加剤が含まれていてもよい。このような添加剤としては、例えば、界面活性剤(例えば、イオン性界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤など)、粘着付与剤(例えば、ロジン誘導体樹脂、ポリテルペン樹脂、石油樹脂、油溶性フェノール樹脂などからなる常温で固体、半固体あるいは液状のもの)、可塑剤、充填剤、老化防止剤、酸化防止剤、着色剤(顔料や染料など)などが挙げられる。これらの添加剤の量は、本発明の効果を損なわない範囲で、適宜選択することができる。
【0053】
さらにまた、本発明の製造方法では、モノマー吸収性シートとしてのポリマーシートを形成するポリマーシート形成組成物は、重合性モノマーの移行のしやすさに伴う含水物質偏在部の形成しやすさの点や作業性の点から、後述の水含有重合性組成物と同一又は近似する組成であることが好ましい。
【0054】
ポリマーシート形成組成物が後述の水含有重合性組成物と近似する組成を有している場合の具体例としては、例えば、重合性モノマーの少なくとも一種を形成成分として有しているポリマーシート形成組成物、重合性モノマーの少なくとも一種と、モノマーを特徴づける部分構造(例えば、アクリル系モノマーのアクリレート構造部、エポキシ系モノマーのエポキシ構造部など)が共通するモノマーを形成成分として有しているポリマーシート形成組成物などが挙げられる。
【0055】
上述のように、本発明の製造方法では、モノマー吸収性シートとしてはアクリル系ポリマーシートが好ましいので、ポリマーシート形成組成物は、アクリル系ポリマーを形成するアクリル系ポリマーシート形成組成物であること好ましい。
【0056】
本発明の製造方法では、モノマー吸収性シートとしてのポリマーシートの形成方法は、特に制限されず、公知・慣用の方法を適宜選択することができる。
【0057】
具体的には、アクリル系ポリマーを必須成分とするポリマーシート形成組成物(アクリル系ポリマーシート形成組成物溶液など)の場合には、ポリマーシート形成組成物を所定の面上(例えば、下記のポリマーシート用基材の少なくとも片側の面上など)に、乾燥後の厚みが所定の厚みになるように塗布し、必要に応じて乾燥及び/又は硬化させる方法(直写法)、適当な剥離ライナー上にポリマーシート形成組成物を、乾燥後の厚みが所定の厚みになるように塗布し、必要に応じて乾燥及び/又は硬化させてポリマー層を形成した後、該ポリマー層を所定の面上(例えば、下記のポリマーシート用基材の少なくとも片側の面上など)に転写(移着)させる方法(転写法)などが挙げられる。
【0058】
また、アクリル系ポリマーを形成するモノマー成分の混合物(モノマー混合物)又はその部分重合物を必須成分とするポリマーシート形成組成物の場合には、ポリマーシート形成組成物を所定の面上(例えば、下記のポリマーシート用基材の少なくとも片側の面上など)に塗布し、活性エネルギー線を照射して、活性エネルギー線硬化によりポリマー層を形成する方法(直写法)、適当な剥離ライナー上にポリマーシート形成組成物を塗布し、活性エネルギー線を照射して、活性エネルギー線硬化によりポリマー層を形成した後、該ポリマー層を所定の面上(例えば、下記のポリマーシート用基材の少なくとも片側の面上など)に転写(移着)させる方法(転写法)などが挙げられる。さらに、必要に応じて、乾燥工程を加えてもよい。
【0059】
特に、本発明の製造方法では、モノマー吸収性シートとしてのポリマーシートの形成方法は、有機溶剤を用いることなく、省エネルギーで、比較的厚いポリマー層(ポリマーシート)を得ることができる点から、活性エネルギー線硬化によるポリマーシートの形成方法が好ましい。
【0060】
なお、ポリマーシート形成組成物の塗布に際しては、例えば、慣用のコーター(例えば、コンマロールコーター、ダイロールコーター、グラビヤロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーターなど)を用いることができる。
【0061】
本発明の製造方法において、モノマー吸収性シートの厚み(特に、モノマー吸収性シートとしてのポリマーシートの厚み)としては、含水物質含有ポリマー部材における水を含む層状部分の形成しやすさの点から、モノマー吸収性シートの厚みと水含有重合性組成物層の厚みとの比(モノマー吸収性シートの厚み/水含有重合性組成物層の厚み)が、0.1〜10であることが好ましく、特に0.2〜5であることが好ましい。前記の比が0.1未満であると、得られたポリマー部材において含水物質の偏りが生じない場合があり、一方前記の比が10を越えると、モノマー吸収性シートと水含有重合性組成物層とを積層させることにより得られる構造物において、モノマー吸収性シートと水含有重合性組成物層との一体化が進みすぎ、含水物質の層状偏在構造が得られない場合がある。また、モノマー吸収性シートの具体的な厚み(特に、モノマー吸収性シートとしてのポリマーシートの厚み)は、特に制限されないが、通常、取り扱い性などの点から、1〜1000μmが好ましく、より好ましくは2〜500μmであり、特に好ましくは5〜200μmである。なお、このようなモノマー吸収性シートの厚みは、水含有重合性組成物層を積層させる前の厚みである。
【0062】
本発明の製造方法において、モノマー吸収性シート(特にモノマー吸収性シートしてのポリマーシート)が基材上に設けられている場合における基材(モノマー吸収性シート用基材)としては、例えば、紙などの紙系基材;布、不織布、ネットなどの繊維系基材;金属箔、金属板などの金属系基材;プラスチックのフィルムやシートなどのプラスチック系基材;ゴムシートなどのゴム系基材;発泡シートなどの発泡体や、これらの積層体[例えば、プラスチック系基材と他の基材との積層体や、プラスチックフィルム(又はシート)同士の積層体など]等の適宜な薄葉体を用いることができる。本発明の製造方法では、基材としては、プラスチックのフィルムやシートなどのプラスチック系基材を好適に用いることができる。このようなプラスチックのフィルムやシートにおける素材としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のα−オレフィンをモノマーとするオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル系樹脂;ポリ塩化ビニル(PVC);酢酸ビニル系樹脂;ポリフェニレンスルフィド(PPS);ポリアミド(ナイロン)、全芳香族ポリアミド(アラミド)等のアミド系樹脂;ポリイミド系樹脂;ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などが挙げられる。なお、これらの素材は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0063】
なお、上記基材として、プラスチック系基材が用いられている場合は、延伸処理等により伸び率などの変形性を制御していてもよい。また、基材としては、モノマー吸収性シート(特にモノマー吸収性シートしてのポリマーシート)が活性エネルギー線による硬化により形成される場合は、活性エネルギー線の透過を阻害しないものを使用することが好ましい。
【0064】
また、上記基材(モノマー吸収性シート用基材)の表面は、モノマー吸収性シート(特にモノマー吸収性シートしてのポリマーシート)との密着性を高めるため、慣用の表面処理、例えば、コロナ処理、クロム酸処理、オゾン暴露、火炎暴露、高圧電撃暴露、イオン化放射線処理等の化学的又は物理的方法による酸化処理等が施されていてもよく、下塗り剤や剥離剤等によるコーティング処理等が施されていてもよい。
【0065】
さらに、上記基材(モノマー吸収性シート用基材)の厚みは、強度や柔軟性、使用目的などに応じて適宜に選択でき、例えば、一般的には1000μm以下(例えば、1〜1000μm)、好ましくは1〜500μm、さらに好ましくは3〜300μm程度であるが、これらに限定されない。なお、基材(モノマー吸収性シート用基材)は、単層、積層の何れの形態を有していてもよい。
【0066】
(水含有重合性組成物層)
本発明の製造方法において、水含有重合性組成物層は、モノマー吸収性シートのモノマー吸収面に(モノマー吸収性シートのモノマー吸収層上に)に設けられる層であって、「重合性モノマーを含むモノマー混合物又はその部分重合物」、「水」、さらに「水溶性物質及び水分散性物質からなる群より選ばれた少なくとも一つの物質」を含有する。水含有重合性組成物層は、本発明の製造方法により得られる含水物質含有ポリマー部材中で、一定の層状領域に偏在する含水物質を提供する。また、水含有重合性組成物層は、重合性モノマーを含むモノマー混合物又はその部分重合物、水、さらに水溶性物質及び水分散性物質からなる群より選ばれた少なくとも一つの物質を含有する組成物(水含有重合性組成物)により形成される層である。なお、「モノマー混合物」はモノマー成分のみからなる混合物を意味し、また1のモノマー成分のみからなる場合を含むものとする。また、「部分重合物」はモノマー混合物のうち1つ又は2つ以上の成分が部分的に重合している組成物を意味する。また、水含有重合性組成物層を形成する組成物であり、重合性モノマーを含むモノマー混合物又はその部分重合物、水、さらに水溶性物質及び水分散性物質からなる群より選ばれた少なくとも一つの物質を含有する組成物を「水含有重合性組成物」と称する場合がある。
【0067】
重合性モノマーは、ラジカル重合やカチオン重合などの反応機構を問わず、光エネルギーや熱エネルギーを利用して重合可能な化合物であることが重要である。このような重合性モノマーは、例えば、アクリル系ポリマーを形成するアクリル系モノマー等のラジカル重合性モノマー;エポキシ系樹脂を形成するエポキシ系モノマー、オキセタン系樹脂を形成するオキセタン系モノマー、ビニルエーテル系樹脂を形成するビニルエーテル系モノマー等のカチオン重合性モノマー;ウレタン系樹脂を形成するポリイソシアネートとポリオールとの組み合わせ;ポリエステル系樹脂を形成するポリカルボン酸、ポリオールとの組み合わせ等が挙げられる。なお、重合性モノマーは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0068】
本発明の製造方法では、比較的マイルドな反応条件(例えば、温度や照度)で高い重合度が得られる点から、重合性モノマーとしてはアクリル系モノマーが好ましい。すなわち、本発明の製造方法では、水含有重合性組成物層としては、アクリル系モノマーを主成分とするアクリル系モノマー混合物又はその部分重合物、水、さらに水溶性物質及び水分散性物質からなる群より選ばれた少なくとも一つの物質を含有する水含有アクリル系重合性組成物層が好ましい。
【0069】
このようなアクリル系モノマーとしては、アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを好適に用いることができる。中でも、アルキル基の炭素数が2〜14の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、より好ましくはアルキル基の炭素数が2〜10の(メタ)アクリル酸アルキルエステルである。上記の「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及び/又は「メタクリル」を表し、他も同様である。なお、アクリル系モノマーは、単独で、又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0070】
アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、環状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルのいずれも好適に用いることができる。
【0071】
直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシルなどのアルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。
【0072】
また、環状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えばシクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0073】
本発明の製造方法において、水含有アクリル系重合性組成物層では、上記アクリル系モノマーは、モノマー混合物又はその部分重合物の主の形成モノマー成分として用いられることから、その割合は、モノマー混合物又はその部分重合物を形成する全モノマー成分に対して60重量%以上(例えば60〜100重量%)が好ましく、より好ましくは80重量%以上(例えば80〜100重量%)である。
【0074】
さらに、水含有アクリル系重合性組成物層の含有するモノマー混合物又はその部分重合物には、各種の共重合性モノマーがその形成成分として用いられていてもよい。例えば、アクリル系モノマー混合物又はその部分重合物では、その形成成分として、主の形成成分であるアクリル系モノマーの他に、極性基含有モノマーや多官能性モノマーなどの各種共重合性モノマーが用いられてもよい。極性基含有モノマーや多官能性モノマーなどの共重合性モノマーを用いることにより、例えば、得られる含水物質含有ポリマー部材の柔軟性や強度を調整することができる。なお、共重合性モノマーは単独で、又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0075】
前記極性基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸などのカルボキシル基含有モノマー又はその無水物(無水マレイン酸など);(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル、ビニルアルコール、アリルアルコールなどの水酸基含有モノマー;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミドなどのアミド基含有モノマー;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチルなどのアミノ基含有モノマー;(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジルなどのグリシジル基含有モノマー;アクリロニトリルやメタクリロニトリルなどのシアノ基含有モノマー;N−ビニル−2−ピロリドン、(メタ)アクリロイルモルホリンの他、N−ビニルピリジン、N−ビニルピペリドン、N−ビニルピリミジン、N−ビニルピペラジン、N−ビニルピロール、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルオキサゾール等の複素環含有ビニル系モノマー;(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチルなどの(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル系モノマー;ビニルスルホン酸ナトリウムなどのスルホン酸基含有モノマー;2−ヒドロキシエチルアクリロイルフォスフェートなどのリン酸基含有モノマー;シクロヘキシルマレイミド、イソプロピルマレイミドなどのイミド基含有モノマー;2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートなどのイソシアネート基含有モノマーなどが挙げられる。極性基含有モノマーとしては、上記の中でも、カルボキシル基含有モノマー又はその無水物が好適であり、アクリル酸が特に好適である。
【0076】
極性基含有モノマーの使用量としては、特に制限されないが、例えばアクリル系モノマー混合物又はその部分重合物を形成するモノマー成分全量に対して30重量%以下(例えば1〜30重量%)が好ましく、より好ましくは3〜20重量%である。極性基含有モノマーの割合が30重量%を超えると、凝集力が高くなりすぎ、例えば、柔軟性の点で不具合を生じる場合がある。また、重合性モノマーの使用量が少なすぎると(重合性モノマー全量に対して1重量%未満であると)、得られるポリマーの凝集力が低下し、高い強度が得られないおそれがある。
【0077】
前記多官能性モノマーとしては、例えば、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレートなどが挙げられる。
【0078】
多官能性モノマーの使用量としては、特に制限されないが、例えばアクリル系モノマー混合物又はその部分重合物を形成するモノマー成分全量に対して2重量%以下(例えば、0.01〜2重量%)であることが好ましく、より好ましくは0.02〜1重量%である。多官能性モノマーの使用量が、2重量%を超えると、得られるポリマーの凝集力が高くなりすぎ、例えば、得られたポリマー部材の柔軟性の点で不具合を生じる場合がある。また、重合性モノマーの使用量が少なすぎると(モノマー成分全量に対して0.01重量%未満であると、得られるポリマーの凝集力が低下し、例えば、得られたポリマー部材で高い強度が得られないおそれがある。
【0079】
上記の極性基含有モノマーや多官能性モノマー以外の共重合性モノマーとしては、例えば、フェニル(メタ)アクリレート等の芳香族炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル、極性基含有モノマーや多官能性モノマー以外の(メタ)アクリル酸エステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類;スチレン、ビニルトルエンなどの芳香族ビニル化合物;エチレン、ブタジエン、イソプレン、イソブチレンなどのオレフィン又はジエン類;ビニルアルキルエーテルなどのビニルエーテル類;塩化ビニルなどが挙げられる。
【0080】
本発明の製造方法において、水含有重合性組成物層中に含まれる水溶性物質及び水分散性物質からなる群より選ばれた少なくとも1つの物質(水溶性または水分散性物質)とは、モノマー吸収性シートに吸収されにくい物質であって、水溶性又は水分散性を有する物質のことである。
【0081】
本発明の製造方法において、ある物質が水溶性又は水分散性を有するか否かは下記方法により判断される。25℃の条件下、水:30重量部、油相成分(重合性モノマー相成分、上記重合性モノマーの混合物):100重量部、及びある物質(水溶性又は水分散性を有するか否かを判断する物質):3重量部を十分に混合し、一日放置する。放置後、この混合液は水相と油相(重合性モノマー相)とに分離するが、ある物質が、油相ではなく、水相にのみ存在している場合、ある物質は水溶性又は水分散性を有する物質と判断できる。なお、放置後、ある物質の沈殿が生じた場合は、水溶性及び水分散性を有しない物質と判断できる。
【0082】
このような水溶性または水分散性物質は、有機物、無機物を問わないで用いることができ、その具体例としては、水溶性や水分散性ポリマー、高級アルコール類や多価アルコール類などのアルコール類、糖類、水溶性の無機物、水分散性の無機粒子などが挙げられる。なお、水溶性または水分散性物質は、単独で、又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0083】
本発明の製造方法では、水溶性または水分散性物質としては、例えば、含水物質含有ポリマー部材の水を含む層状部分が水をしっかりと保持できるという点から、水溶性のポリマー及び水分散性のポリマーからなる群より選ばれた少なくとも一つのポリマー(水溶性のポリマーや水分散性のポリマー)が好適である。
【0084】
また、水溶性または水分散性物質としては、例えば、含水物質含有ポリマー部材の水を含む層状部分の電気伝導度やイオン伝導度を高めたり、また前記部分を酸性やアルカリ性などへ調整できる点から、水溶性の無機物及び水分散性の無機物からなる群より選ばれた少なくとも一つの無機物も好適である。
【0085】
前記の水溶性のポリマーや水分散性のポリマーとしては、例えば、カラヤガム、ゼラチン、ポリアクリル酸又はその塩、アクリルポリマー、ポリアクリルアミド、ポリウレタン、ポリピロールなどが挙げられる。
【0086】
前記のアルコール類としては、1価及び多価のアルコールを制限なく用いることができ、また炭素数1〜4の低級アルコール及び炭素数5以上の高級アルコールを制限なく用いることができる。例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、イソプレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、ポリビニルアルコールなどが挙げられる。
【0087】
前記の糖類としては、単糖類やこれらの誘導体、多糖類やこれらの誘導体の何れも用いることができる。例えば、カルボキシメチルセルロースなどが挙げられる。
【0088】
さらに、水溶性の無機物又は水分散性の無機物としては、例えば、無機塩、無機酸、無機粒子など挙げられる。水溶性の無機塩としては、例えば、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化銅、塩化鉄などの塩化物;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化鉄などの水酸化物;炭酸ナトリウムなどの炭酸塩;リン酸ナトリウムなどのリン酸塩;硝酸ニッケルなどの硝酸塩などが挙げられる。また、無機酸としては、例えば硫酸、リン酸、ホウ酸などが挙げられる。さらに、無機粒子としては、例えば、シリカ、層状ケイ酸塩などが挙げられる。
【0089】
本発明の製造方法では、水溶性または水分散性物質は、例えば、水溶性または水分散性物質を均一に溶解または分散させて水含有重合性組成物の調製を容易にできる点から、水に溶解あるいは分散させてから用いられることが好ましい。つまり、水含有重合性組成物は、水溶性または水分散性物質を水に溶解あるいは分散させてから、重合性モノマーと混合することにより得ることが好ましい。
【0090】
本発明の製造方法において、水含有重合性組成物を水溶性または水分散性物質を水に溶解あるいは分散させてから重合性モノマーと混合することにより得る場合、水溶性または水分散性物質を水に溶解あるいは分散させる際の水に対する水溶性または水分散性物質の割合は、特に制限されないが、含水物質含有ポリマー部材において水を含む層状部分の偏在構造を維持しやすくする点から、1〜90重量%が好ましく、より好ましくは2〜50重量%である。
【0091】
また、本発明の製造方法において、水含有重合性組成物を水溶性または水分散性物質を水に溶解あるいは分散させてから重合性モノマーと混合することにより得る場合、水溶性または水分散性物質を水に溶解あるいは分散させてから重合性モノマーと混合する際、重合性モノマーとの混合性をよくするために分散剤や乳化剤を利用することができる。このような分散剤や乳化剤としては、水と重合性モノマーの両方に対して親和性があるものである限り特に制限されず、例えば、脂肪酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルカルボキシベタインなどの界面活性剤やアルコール類が挙げられる。なお、アルコール類としては、前記のアルコール類が挙げられる。また、分散剤や乳化剤の量は、本発明の効果に影響を与えない範囲で適宜選択することができる。
【0092】
本発明の製造方法において、水含有重合性組成物層中の水溶性物質又は水分散性物質の量は、特に制限されないが、含水物質含有ポリマー部材において水を含む層状部分の偏在構造を維持しやすくする点から、水含有重合性組成物層に含有されるモノマー混合物又はその部分重合物100重量部に対して、0.1〜200重量部が好ましく、より好ましく0.5〜100重量部であり、さらにより好ましくは1.0〜50重量部である。
【0093】
本発明の製造方法では、水含有重合性組成物層には、重合開始剤(例えば熱重合開始剤や光重合開始剤など)が含まれていることが好ましい。重合の際には、含水物質の偏在構造を維持しつつ、短時間でスムーズに重合させる必要があることから、熱重合開始剤や光重合開始剤などの重合開始剤を用いた熱や活性エネルギー線による硬化反応を利用することが好ましいためである。
【0094】
特に、本発明の製造方法では、厚手の部材の得やすさや作業性の点、加熱すると水の蒸発を生じさせるおそれがあることから、光重合開始剤を用いた活性エネルギー線による硬化反応を利用することが好ましい。このため、水含有重合性組成物層には、光重合開始剤が含まれていることが好ましい。
【0095】
光重合開始剤としては、特に制限されず、例えばベンゾインエーテル系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、α−ケトール系光重合開始剤、芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤、光活性オキシム系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンジル系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、ケタール系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤などを用いることができる。なお、光重合開始剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0096】
具体的には、ケタール系光重合開始剤には、例えば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン[例えば、商品名「イルガキュア651」(チバ・ジャパン社製)など]等が含まれる。アセトフェノン系光重合開始剤としては、例えば、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン[例えば、商品名「イルガキュア184」(チバ・ジャパン社製)など]、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−(t−ブチル)ジクロロアセトフェノンなどが挙げられる。ベンゾインエーテル系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルなどが挙げられる。アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤としては、例えば、商品名「ルシリンTPO」(BASF社製)などが使用できる。α−ケトール系光重合開始剤としては、例えば、2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノン、1−[4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル]−2−メチルプロパン−1−オンなどが挙げられる。芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤としては、例えば、2−ナフタレンスルホニルクロライドなどが挙げられる。光活性オキシム系光重合開始剤としては、例えば、1−フェニル−1,1−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)−オキシムなどが挙げられる。ベンゾイン系光重合開始剤には、例えば、ベンゾインなどが含まれる。ベンジル系光重合開始剤には、例えば、ベンジルなどが含まれる。ベンゾフェノン系光重合開始剤は、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3、3′−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、ポリビニルベンゾフェノン、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどが含まれる。チオキサントン系光重合開始剤には、例えば、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、ドデシルチオキサントンなどが含まれる。
【0097】
光重合開始剤の使用量としては、特に制限されないが、例えば、水含有重合性組成物層に含有されるモノマー混合物又はその部分重合物100重量部に対して0.01〜5重量部(好ましくは0.05〜3重量部)の範囲から選択することができる。
【0098】
なお、熱重合開始剤としては、例えば、アゾ系重合開始剤[例えば、2,2´−アゾビスイソブチロニトリル、2,2´−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、2,2´−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチル、4,4´−アゾビス−4−シアノバレリアン酸、アゾビスイソバレロニトリル、2,2´−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2´−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2´−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2´−アゾビス(N,N´−ジメチレンイソブチルアミジン)ジヒドロクロライドなど]、過酸化物系重合開始剤(例えば、ジベンゾイルペルオキシド、tert−ブチルペルマレエートなど)、レドックス系重合開始剤(例えば有機過酸化物/バナジウム化合物;有機過酸化物/ジメチルアニリン;ナフテン酸金属塩/ブチルアルデヒド、アニリンあるいはアセチルブチロラクトン等の組み合わせなど)などが挙げられる。熱重合開始剤の使用量としては、特に制限されず、熱重合開始剤として利用可能な範囲であればよい。なお、レドックス系重合開始剤を熱重合開始剤として用いれば、常温で重合させることが可能である。
【0099】
また、水含有重合性組成物層には、必要に応じて、適宜な添加剤が含まれていてもよい。このような添加剤としては、例えば、界面活性剤(例えば、イオン性界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤など)、架橋剤(例えば、ポリイソシアネート系架橋剤、シリコーン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アルキルエーテル化メラミン系架橋剤など)、粘着付与剤(例えば、ロジン誘導体樹脂、ポリテルペン樹脂、石油樹脂、油溶性フェノール樹脂などからなる常温で固体、半固体あるいは液状のもの)、可塑剤、充填剤、老化防止剤、酸化防止剤、着色剤(顔料や染料など)などが挙げられる。
【0100】
本発明の製造方法において、水含有重合性組成物層は水含有重合性組成物により形成されるが、該水含有重合性組成物は上記各成分を混合することにより調製することができる。前記のように、水溶性または水分散性物質を均一に溶解または分散させて水含有重合性組成物の調製を容易にできる点から、水含有重合性組成物は、水溶性または水分散性物質を水に溶解あるいは分散させてから重合性モノマーと混合することに得ることが好ましい。
【0101】
本発明の製造方法では、上記の水含有重合性組成物は、通常、シート状に成形されるので、塗布作業に適した適度な粘度を持たせておくのがよい。水含有重合性組成物の粘度は、例えば、アクリルゴム、増粘性添加剤などの各種ポリマーを配合することや、水含有重合性組成物中の重合性モノマーを光の照射や加熱などにより一部重合させることにより調整することができる。なお、望ましい粘度は、BH粘度計を用いて、ローター:No.5ローター、回転数10rpm、測定温度:30℃の条件で設定された粘度として、5〜50Pa・s、より好ましくは10〜40Pa・sである。粘度が5Pa・s未満であると、塗布したときに液が流れてしまい、50Pa・sを超えていると、粘度が高すぎて塗布が困難となる。
【0102】
本発明の製造方法において、水含有重合性組成物層は、水含有重合性組成物を用いて、公知・慣用の方法により得ることができる。例えば、適当な支持体上に、水含有重合性組成物を塗布具を用いて塗布することにより得ることができる。
【0103】
また、水含有重合性組成物層の厚みとしては、特に制限されないが、含水物質含有ポリマー部材において水を含む層状部分の偏在構造を維持しやすくする点から、1〜1000μmが好ましく、より好ましくは10〜500μmである。なお、水含有重合性組成物層の厚みは、モノマー吸収性シート上に塗布した直後の厚みを意味する。
【0104】
(カバーフィルム)
本発明の製造方法では、モノマー吸収性シートのモノマー吸収面上に水含有重合性組成物層を積層してから重合に付す際、空気中の酸素により反応が阻害されるため、空気中の酸素と接触しないようにカバーフィルムで表面を覆うことが好ましい。なお、本発明の製造方法により得られた含水物質含有ポリマー部材を利用する際には、通常、カバーフィルムは剥がされる。
【0105】
上記のカバーフィルムとしては、酸素を透過し難い薄葉体であれば特に制限されないが、光重合反応を用いる場合は透明なものが好ましい。このようなカバーフィルムとしては、例えば慣用の剥離紙などを使用することができる。具体的には、カバーフィルムとしては、例えば離型処理剤(剥離処理剤)による離型処理層(剥離処理層)を少なくとも一方の表面に有する基材の他、フッ素系ポリマー(例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、クロロフルオロエチレン・フッ化ビニリデン共重合体等)からなる低接着性基材や、無極性ポリマー(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂など)からなる低接着性基材などを用いることができる。なお、低接着性基材では、両面が離型面と利用することができ、一方、離型処理層を有する基材では、離型処理層表面を離型面(離型処理面)として利用することができる。
【0106】
また、カバーフィルムとしては、例えば、カバーフィルム用基材の少なくとも一方の面に離型処理層が形成されているカバーフィルム(離型処理層を有する基材)を用いてもよいし、カバーフィルム用基材をそのまま用いてもよい。
【0107】
このようなカバーフィルム用基材としては、ポリエステルフィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルム等)、オレフィン系樹脂フィルム(ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等)、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドフィルム(ナイロンフィルム)、レーヨンフィルムなどのプラスチック系基材フィルム(合成樹脂フィルム)や、紙類(上質紙、和紙、クラフト紙、グラシン紙、合成紙、トップコート紙など)の他、これらを、ラミネートや共押し出しなどにより、複層化したもの(2〜3層の複合体)等が挙げられる。カバーフィルム用基材としては、透明性の高いプラスチック系基材フィルム(特に、ポリエチレンテレフタレートフィルム)が用いられたカバーフィルム用基材を好適に用いることができる。
【0108】
離型処理剤としては、特に制限されず、例えば、シリコーン系離型処理剤、フッ素系離型処理剤、長鎖アルキル系離型処理剤などを用いることができる。離型処理剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。なお、離型処理剤により離型処理が施されたカバーフィルムは、例えば公知の形成方法により形成される。
【0109】
カバーフィルムの厚みは、特に制限されないが、取り扱い易さと経済性の点から、例えば、12〜250μm(好ましくは20〜200μm)の範囲から選択することができる。なお、カバーフィルムは単層、積層の何れの形態を有していてもよい。
【0110】
(含水物質含有ポリマー部材の製造方法)
本発明の含水物質含有ポリマー部材の製造方法は、前記のモノマー吸収性シート上に、水含有重合性組成物層を積層してから、重合に付すことにより、含水物質が、一定の層状領域(層状部分)に偏って分布する構造を有する含水物質含有ポリマー部材を作製する方法である。つまり、本発明の含水物質含有ポリマー部材の製造方法は、含水物質の偏在部(含水物質の偏析部)(含水物質偏在部、含水物質偏析部)を有する含水物質含有ポリマー部材を作製する方法である。
【0111】
このような含水物質含有ポリマー部材の製造方法として、例えば、前記の本発明の製造方法(1)〜(3)が挙げられる。
【0112】
本発明の製造方法(1)は、重合性モノマーを吸収可能なモノマー吸収性シートのモノマー吸収面上に、重合性モノマーを含むモノマー混合物又はその部分重合物、水、さらに水溶性物質及び水分散性物質からなる群より選ばれた少なくとも1つの物質(水溶性または水分散性物質)を含有する水含有重合性組成物層を積層する工程(i)、及び、工程(i)で得られた構造物を重合に付して、水と、水溶性物質及び水分散性物質からなる群より選ばれた少なくとも1つの物質(水溶性または水分散性物質)とからなる含水物質が、モノマー吸収面と水含有重合性組成物層との界面とは反対側の界面又は該界面近傍に分布している構造を有するポリマー部材を得る工程(ii)を必須の工程とする含水物質含有ポリマー部材の製造方法である。
【0113】
本発明の製造方法(1)の工程(i)では、水含有重合性組成物層がモノマー吸収性シート上に積層されると、水、及び、水溶性または水分散性物質はモノマー吸収性シートに吸収されないものの、重合性モノマーのうち少なくとも一種はモノマー吸収性シートに吸収される。このため、工程(i)で得られた構造物(モノマー吸収性シートに水含有重合性組成物層を積層することにより得られる構造物)では、含水物質の偏在構造(偏析構造)が得られる。このような含水物質の偏在構造は、水含有重合性組成物層とモノマー吸収性シートとの界面とは反対側であり、且つ水含有重合性組成物層を積層した側の表面又は該表面近傍に層状に存在する。つまり、本発明の製造方法(1)の工程(i)では、モノマー吸収性シートに水含有重合性組成物層を積層することにより得られる構造物であって、含水物質が水含有重合性組成物層とモノマー吸収性シートとの界面とは反対側の界面又は該界面近傍に偏って分布する構造部(含水物質偏在部、含水物質偏析部)を有する構造物を得ることができる。
【0114】
本発明の製造方法(1)の工程(ii)は、工程(i)で得られる構造物の含水物質の偏在構造を維持して、重合に付す工程である。工程(ii)では、含水物質が、モノマー吸収性シートと水含有重合性組成物層との界面とは反対側であり、且つ水含有重合性組成物層を積層した側の界面又は該界面近傍に分布している構造を有するポリマー部材を得ることができる。つまり、本発明の製造方法(1)の工程(ii)では、工程(i)で得られた構造物(モノマー吸収性シートに水含有重合性組成物層を積層することにより得られる構造物)を重合に付すことにより、工程(i)で水含有重合性組成物層を積層した側の表面又は該表面近傍に偏って含水物質が分布する構造部(含水物質偏在部、含水物質偏析部)を有するポリマー部材を得ることができる。
【0115】
本発明の製造方法(2)は、重合性モノマーを吸収可能なモノマー吸収性シートのモノマー吸収面上に、重合性モノマーを含むモノマー混合物又はその部分重合物、水、さらに水溶性物質及び水分散性物質からなる群より選ばれた少なくとも1つの物質(水溶性または水分散性物質)を含有する水含有重合性組成物層を積層し、さらに該水含有重合性組成物層上にカバーフィルムを積層する工程(i)、工程(i)で得られた構造物を重合に付して、水と、水溶性物質及び水分散性物質からなる群より選ばれた少なくとも1つの物質(水溶性または水分散性物質)とからなる含水物質が、モノマー吸収面と水含有重合性組成物層との界面とは反対側の界面又は該界面近傍に分布している構造を有するポリマー部材を得る工程(ii)を必須の工程とする含水物質含有ポリマー部材の製造方法である。
【0116】
なお、本発明の製造方法(2)により得られる含水物質含有ポリマー部材は、カバーフィルム付き含水物質含有ポリマー部材である。
【0117】
本発明の製造方法(2)の工程(i)において、水含有重合性組成物層がモノマー吸収性シート上に積層されると、水、水溶性または水分散性物質はモノマー吸収性シートに吸収されないものの、重合性モノマーのうち少なくとも一種はモノマー吸収性シートに吸収される。このため、工程(i)で得られる構造物(モノマー吸収性シートに水含有重合性組成物層を積層してから、さらに水含有重合性組成物層上にカバーフィルムを積層することにより得られる構造物)では、水と、水溶性または水分散性物質とからなる含水物質の構造部(含水物質偏在部、含水物質偏析部)が得られる。
【0118】
本発明の製造方法(2)の工程(i)で得られる含水物質の偏在構造は、水含有重合性組成物層とモノマー吸収性シートとを積層することにより得られる構造物中に、水含有重合性組成物層とモノマー吸収性シートとの界面とは反対側であり、且つ水含有重合性組成物層を積層した側の表面又は該表面近傍に層状に存在する。つまり、含水物質の偏在構造は、工程(i)で得られる構造物において、水含有重合性組成物層とモノマー吸収性シートとを積層することにより得られる構造物とカバーフィルムとの界面又は該界面近傍に層状で存在する。
【0119】
つまり、本発明の製造方法(2)の工程(i)では、モノマー吸収性シートに水含有重合性組成物層を積層してから、さらに水含有重合性組成物層上にカバーフィルムを積層することにより得られる構造物であって、含水物質が水含有重合性組成物層とモノマー吸収性シートとの界面とは反対側の界面又は該界面近傍に偏って分布する構造部(含水物質偏在部、含水物質偏析部)を有する構造物を得ることができる。なお、含水物質偏在部は、工程(i)で得られる構造物において、カバーフィルムと接している。
【0120】
本発明の製造方法(2)の工程(ii)は、工程(i)で得られる構造物の含水物質の偏在構造を維持して重合に付す工程である。このため、含水物質が、モノマー吸収面と水含有重合性組成物層との界面とは反対側の界面又は該界面近傍に分布している構造を有するポリマー部材を得ることができる。なお、工程(ii)で得られるポリマー部材では、含水物質偏在部は、カバーフィルムと接している。
【0121】
つまり、本発明の製造方法(2)の工程(ii)では、工程(i)で得られる構造物の含水物質の偏在構造を維持して重合に付すことにより、含水物質が、前記のモノマー吸収性シート及び前記の水含有重合性組成物層を積層することにより得られる構造物に由来する部分(ポリマー部材)中に、水含有重合性組成物層とモノマー吸収性シートとの界面とは反対側であり、且つ水含有重合性組成物層を積層した側の界面又は該界面近傍に分布する構造を有するカバーフィルム付きポリマー部材を得ることができる。すなわち、本発明の製造方法(2)の工程(ii)では、含水物質が、前記のモノマー吸収性シート及び前記の水含有重合性組成物層を積層することにより得られる構造物に由来する部分(ポリマー部材)中に、前記部分(ポリマー部材)とカバーフィルムとの界面又は該界面近傍に分布する構造を有するカバーフィルム付きポリマー部材を得ることができる。
【0122】
さらに、本発明の含水物質含有ポリマー部材の製造方法の他の具体例(「本発明の製造方法(3)と称する場合がある)は、重合性モノマーを吸収可能なモノマー吸収性シートのモノマー吸収面上に、重合性モノマーを含むモノマー混合物又はその部分重合物、水、さらに水溶性物質及び水分散性物質からなる群より選ばれた少なくとも1つの物質(水溶性または水分散性物質)を含有する水含有重合性組成物層を積層し、さらに該水含有重合性組成物層上にモノマー吸収面が接する形態で別のモノマー吸収性シートを積層する工程(i)、工程(i)で得られた構造物を重合に付して、水と、水溶性物質及び水分散性物質からなる群より選ばれた少なくとも1つの物質(水溶性または水分散性物質)とからなる含水物質が、モノマー吸収面と水含有重合性組成物層との界面又は該界面近傍には分布しない構造を有するポリマー部材を得る工程(ii)を必須の工程とする。
【0123】
本発明の製造方法(3)の工程(i)において、水含有重合性組成物層がモノマー吸収性シートのモノマー吸収面上に積層されると、水、及び、水溶性または水分散性物質はモノマー吸収性シートに吸収されないものの、重合性モノマーのうち少なくとも一種はモノマー吸収性シートに吸収される。このため、工程(i)で得られた構造物(モノマー吸収性シート上に水含有重合性組成物層を積層し、さらに該水含有重合性組成物層上にモノマー吸収性シートを積層することにより得られる構造物)では、含水物質の偏在構造(偏析構造)が得られる。このような含水物質の偏在構造は、工程(i)で得られた構造物の表面又は該表面近傍及びモノマー吸収面と水含有重合性組成物層との界面又は該界面近傍には存在せず、内部に偏って、層状に存在する。つまり、工程(i)で得られた構造物中の含水物質の偏在構造は、工程(i)で得られた構造物の水含有重合性組成物層による部分と仮想される部分中の一定の層状領域に存在すると推測される。
【0124】
つまり、本発明の製造方法(3)の工程(i)では、水含有重合性組成物層をモノマー吸収性シートのモノマー吸収面上に積層して、さらに該水含有重合性組成物層上にモノマー吸収面が接する形態でモノマー吸収性シートを積層しているので、得られた構造物において、内部の一定層状領域に含水物質偏在部(含水物質偏析部)を得ることができる。
【0125】
本発明の製造方法(3)の工程(ii)では、工程(i)で得られる構造を維持して重合に付すことにより、含水物質が、モノマー吸収面と水含有重合性組成物層との界面又は該界面近傍には分布せず、また表面又は該表面近傍に存在することはなく、内部に偏って分布する構造を有するポリマー部材を形成することがきる。
【0126】
本発明の製造方法では、重合に付す際、その重合方法として、特に制限されず、例えば、熱重合開始剤を用いた場合の熱重合法や、光重合開始剤を用いた場合の光重合法などを用いることができる。上述のように、厚手のポリマーシートの得やすさの点、作業性の点などから、光重合法を用いることが好ましい。つまり、本発明の製造方法では、重合に付す際、活性エネルギー線の照射を用いることが好ましい。
【0127】
また、重合に付す際、光源や熱源、照射エネルギーや熱エネルギー、照射方法や加熱方法、照射時間や加熱時間、照射や加熱の開始時期、照射や加熱の終了時期等について、特に制限されることはない。なお、光重合法を用いる場合、片面から活性エネルギー線を照射しても重合を開始してもよいし、両面から活性エネルギー線を照射して重合を開始してもよい。
【0128】
上記光重合に際して照射される活性エネルギー線としては、例えば、α線、β線、γ線、中性子線、電子線などの電離性放射線や、紫外線などが挙げられ、特に、照射装置の操作性、危険性、作業性の点から紫外線が好適である。
【0129】
本発明の製造方法では、重合に付す際、紫外線照射による光重合法により重合に付す場合の方法としては、例えば、ブラックライトランプ、ケミカルランプ、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプなどによる紫外線の照射が挙げられる。また、加熱により重合に付す場合の方法としては、例えば公知の加熱方法(例えば、電熱ヒーターを用いた加熱方法、赤外線等の電磁波を用いた加熱方法など)が挙げられる。
【0130】
本発明の含水物質含有ポリマー部材の製造方法において、モノマー吸収性シート上に水含有重合性組成物層を積層してから重合に付すまでの時間(放置時間)(例えば、上記の本発明の製造方法(1)〜(3)において、工程(i)により構造物を得てから、工程(i)で得られた構造物を重合に付すまでの時間)は、含水物質の偏在構造を形成させる点から、1秒〜60分程度であり、好ましくは10秒〜10分程度である。なお、放置時間が長すぎると、生産性の低下をまねくおそれがある。
【0131】
本発明の製造方法によれば、水と、水溶性物質及び水分散性物質からなる群より選ばれた少なくとも1つの物質(水溶性または水分散性物質)とからなる含水物質の層状部分(含水物質偏在部、含水物質偏析部)を有する含水物質含有ポリマー部材を得ることができる。つまり、本発明の製造方法によれば、ポリマー部材中に層状の含水物質偏在部を効果的に形成できる。
【0132】
本発明の製造方法では、含水物質含有ポリマー部材の含水物質偏在部を、例えば、表面から内部への一定層状領域や、内部の一定層状領域(例えば、中央部を中心とする内部の一定層状領域など)に存在させることができる。
【0133】
本発明の製造方法によれば、含水物質含有ポリマー部材中の含水物質偏在部の位置や厚みを調整することができる。例えば、モノマー吸収性シートの厚み、水含有重合性組成物層の厚み、水含有重合性組成物層中の水や水溶性または水分散性物質の量、重合性モノマーの選択などにより調整することができる。
【0134】
本発明の製造方法(1)によれば、モノマー吸収性シート上に水含有重合性組成物層を積層することにより得られる構造物を重合に付すので、含水物質が水含有重合性組成物層を積層した側の表面又はその表面近傍に偏って分布する構造を有する含水物質含有ポリマー部材を得ることができる。
【0135】
また、本発明の製造方法(2)によれば、モノマー吸収性シート上に水含有重合性組成物層を積層し、さらに該水含有重合性組成物層上にカバーフィルムを積層することにより得られる構造物を重合に付すので、含水物質がポリマー部材中に水含有重合性組成物層を積層した側の表面又はその表面近傍に偏って分布する構造を有するカバーフィルム付き含水物質含有ポリマー部材を得ることができる。
【0136】
さらにまた、本発明の製造方法(3)によれば、モノマー吸収性シート上に水含有重合性組成物層を積層し、さらに別のモノマー吸収性シートを積層することにより得られる構造物を重合に付すので、含水物質が、表面又は表面近傍ではなく、一定の内部層状領域に含水物質偏在部(含水物質偏析部)を有する含水物質含有ポリマー部材を得ることができる。
【0137】
本発明の製造方法により得られる含水物質含有ポリマー部材の厚みは、特に制限されないが、得られるポリマー部材の取り扱い性の点から、例えば、10〜2000μm程度であり、好ましくは50〜1000μm程度である。
【0138】
なお、上記の含水物質含有ポリマー部材の厚みは、モノマー吸収性シート及び水含有重合性組成物層から形成される部分の厚みの意味である。上記の本発明の製造方法(2)では、カバーフィルムを用いているが、このカバーフィルムの厚みは含まれない。また、モノマー吸収性シートはモノマー吸収性シート用基材上に設けられていてもよいが、このモノマー吸収性シート用基材の厚みは含まれない。
【0139】
本発明の製造方法によれば、「水を含まない層」であるモノマー吸収性シートと、「水を含む層」である水含有重合性組成物層との積層工程を必須の工程として含むものの、該工程では水、及び、水溶性または水分散性物質はモノマー吸収性シートに吸収されないものの、重合性モノマーのうち少なくとも一種はモノマー吸収性シートに吸収されることから、含水物質の偏在構造が得られ、水によって積層が阻害されるという問題が生じることはない。従って、全体で一体化しており、機械的強度に優れ、取り扱い性に優れた含水物質含有ポリマー部材を得ることができる。
【0140】
特に、上記の本発明の製造方法(1)及び(2)で得られる含水物質含有ポリマー部材では、含水性物質偏在部は含水物質含有ポリマー部材表面に層状に存在するので、表面で、冷却性、導電性、クッション性などの含水物質によって生じる機能を発揮することができる。
【0141】
特に、上記の本発明の製造方法(3)で得られる含水物質含有ポリマー部材では、含水性物質偏在部は、表面ではなく、内部の一定領域に層状に存在するので、冷却性、導電性、クッション性などの含水物質によって生じる機能を効果的に維持できる。
【0142】
このような含水物質含有ポリマー部材は、例えば、除熱ゲル材、クッション材、ポリマー電解質などの用途に用いられる。
【0143】
また、本発明の製造方法により得られる含水物質含有ポリマー部材では、加熱・乾燥、減圧、及びこれらの併用により、含水物質含有ポリマー部材内部から水を除くことにより、含水量を調節することができる。さらに、含水物質含有ポリマー部材を加熱・乾燥、減圧、及びこれらの併用により、含水性物質偏在部から水を除去して、表面に多孔構造を得ることができる。
【0144】
つまり、前記のポリマー部材の製造方法により得た含水物質含有ポリマー部材(例えば、本発明の製造方法(1)〜(3)により得られる含水物質含有ポリマー部材など)を、加熱及び減圧から選ばれた少なくとも1つの手段より、水を除去することでポリマー部材を製造することができる。
【0145】
例えば、本願の製造方法(1)及び(2)で得られる含水物質含有ポリマー部材(含水性物質偏在部が表面に層状に存在する含水物質含有ポリマー部材)を、加熱して水分を留去することにより、該部材の表面近傍を多孔質化することができる。
【0146】
なお、加熱・乾燥としては、例えば、熱風乾燥機、赤外線乾燥機等を用いて、40〜200℃での5秒〜48時間の乾燥が挙げられる。また、減圧としては、例えば、真空ポンプ等を用いて、真空度60kPa〜0.01kPaでの1分〜48時間の減圧乾燥が挙げられる。
【実施例】
【0147】
以下に実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【0148】
(光重合性シロップの調製例1)
2−エチルヘキシルアクリレート:90重量部、およびアクリル酸:10重量部が混合されたモノマー混合物と、光重合開始剤(商品名「イルガキュア651」チバ・ジャパン社製):0.1重量部とを、攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、冷却管を備えた4つ口のセパラブルフラスコ中で均一になるまで攪拌した後、窒素ガスによりバブリングを1時間行って溶存酸素を除去した。その後、ブラックライトランプにより紫外線をフラスコ外側より照射して重合し、適度な粘度になった時点でランプを消灯、窒素吹き込みを停止して、重合率が7%の一部が重合した組成物(シロップ状組成物、「光重合シロップ(A)と称する場合がある」)を得た。
【0149】
(水含有光重合性組成物の調製例1)
ポリビニルアルコール(商品名「PVA205」クラレ社製)を蒸留水に溶解させて30重量%水溶液(30重量%PVA水溶液)を作製した。
光重合シロップ(A):100重量部に、該PVA水溶液:10重量部、及び1,6−ヘキサンジオールジアクリレート:0.1重量部を加え、ディスパー型分散機(商品名「TKロボミックス」プライミクス社製)により、2000rpmで5分間攪拌して、水含有光重合性組成物(「水含有光重合性組成物(A)」と称する場合がある)を調製した。
【0150】
(水含有光重合性組成物の調製例2)
ポリビニルアルコール(商品名「PVA205」クラレ社製)を蒸留水に溶解させて30重量%水溶液(30重量%PVA水溶液)を作製した。
光重合シロップ(A):100重量部に、該PVA水溶液:100重量部、及び1,6−ヘキサンジオールジアクリレート:0.1重量部を加え、ディスパー型分散機(商品名「TKロボミックス」プライミクス社製)により、2000rpmで5分間攪拌して、水含有光重合性組成物(「水含有光重合性組成物(B)」と称する場合がある)を調製した。
【0151】
(水含有光重合性組成物の調製例3)
光重合シロップ(A):100重量部に、水分散ポリピロール(商品名「PPY−12」丸善油化工業):30重量部、及び1,6−ヘキサンジオールジアクリレート:0.1重量部を加え、ディスパー型分散機(商品名「TKロボミックス」プライミクス社製)により、2000rpmで5分間攪拌して、水含有光重合性組成物(「水含有光重合性組成物(C)」と称する場合がある)を調製した。
【0152】
(水含有光重合性組成物の調製例4)
蒸留水:100重量部に、ポリアクリル酸(商品名「アクアリックAS58」日本触媒社製):20重量部、及び塩化カリウム:20重量部を溶解させて、ポリアクリル酸−塩化カリウム混合水溶液を作製した。
光重合シロップ(A):100重量部に、上記ポリアクリル酸−塩化カリウム混合水溶液:10重量部、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート:0.1重量部を加え、ディスパー型分散機(商品名「TKロボミックス」プライミクス社製)により、2000rpmで5分間攪拌して、水含有光重合性組成物(「水含有光重合性組成物(D)」と称する場合がある)を調製した。
【0153】
(水含有光重合性組成物の調製例5)
蒸留水:100重量部に、ポリアクリル酸(商品名「アクアリックAS58」日本触媒社製):20重量部、及び塩化カリウム:20重量部を溶解させて、ポリアクリル酸−塩化カリウム混合水溶液を作製した。
光重合シロップ(A):100重量部に、上記ポリアクリル酸−塩化カリウム混合水溶液:100重量部、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート:0.1重量部を加え、ディスパー型分散機(商品名「TKロボミックス」プライミクス社製)により、2000rpmで5分間攪拌して、水含有光重合性組成物(「水含有光重合性組成物(E)」と称する場合がある)を調製した。
【0154】
(水含有光重合性組成物の調製例6)
ホウ酸を蒸留水に溶解させて4重量%水溶液(4重量%ホウ酸水溶液)を作製した。
光重合シロップ(A):100重量部に、該ホウ酸水溶液:20重量部、及び1,6−ヘキサンジオールジアクリレート:0.1重量部を加え、ディスパー型分散機(商品名「TKロボミックス」プライミクス社製)により、2000rpmで5分間攪拌して、水含有光重合性組成物(「水含有光重合性組成物(F)」と称する場合がある)を調製した。
【0155】
(水含有光重合性組成物の調製例7)
蒸留水100重量部に、ポリアクリル酸(商品名「アクアリックAS58」日本触媒社製):20重量部を溶解させて、ポリアクリル酸水溶液を作製した。
光重合シロップ(A):100重量部に、該ポリアクリル酸水溶液:100重量部、及び1,6−ヘキサンジオールジアクリレート:0.1重量部を加え、ディスパー型分散機(商品名「TKロボミックス」プライミクス社製)により、2000rpmで5分間攪拌して、水含有光重合性組成物(「水含有光重合性組成物(G)」と称する場合がある)を調製した。
【0156】
(カバーフィルムの使用例1)
カバーフィルムは、片面がシリコーン系離型処理剤で離型処理された、厚み38μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名「MRN38」三菱樹脂社製)(「カバーフィルム(A)と称する場合がある」)を用いた。
【0157】
(カバーフィルムの使用例2)
カバーフィルムは、片面がシリコーン系離型処理剤で離型処理された、厚み38μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名「MRF38」三菱樹脂社製)(「カバーフィルム(B)と称する場合がある」)を用いた。
【0158】
(モノマー吸収性シートの作製例1)
光重合性シロップ(A):100重量部に1,6−ヘキサンジオールジアクリレート:0.1重量部を均一に混合することにより得られる光重合性組成物を、カバーフィルム(B)の離型処理面に、硬化後の厚みが60μmとなるように塗布して、塗布層を形成させた。そして、該塗布層上に離型処理面が接する形態でカバーフィルム(A)を貼り合わせてから、ブラックライトを用いて紫外線(照度:5mW/cm2)を3分間照射し、該塗布層を硬化させ、モノマー吸収性シートの両面がカバーフィルムで保護されているシート(カバーフィルム(A)/モノマー吸収性シート/カバーフィルム(B))を作製した。
なお、モノマー吸収性シートの作製例1で得たモノマー吸収性シートを、「モノマー吸収性シート(A)」と称する場合がある。
【0159】
(モノマー吸収性シートの作製例2)
光重合性シロップ(A):100重量部に1,6−ヘキサンジオールジアクリレート:0.1重量部を均一に混合することにより得られる光重合性組成物を、カバーフィルム(B)の離型処理面に、硬化後の厚みが100μmとなるように塗布して、塗布層を形成させた。そして、該塗布層上に離型処理面が接する形態でカバーフィルム(A)を貼り合わせてから、ブラックライトを用いて紫外線(照度:5mW/cm2)を3分間照射し、該塗布層を硬化させ、モノマー吸収性シートの両面がカバーフィルムで保護されているシート(カバーフィルム(A)/モノマー吸収性シート/カバーフィルム(B))を作製した。
なお、モノマー吸収性シートの作製例2で得たモノマー吸収性シートを、「モノマー吸収性シート(B)」と称する場合がある。
【0160】
(実施例1)
カバーフィルム(A)の離型処理された面に、水含有光重合性組成物(A)を、厚みが50μmになるように層状に塗布して、水含有光重合性組成物層を有するシートを形成した。
該水含有光重合性組成物層を有するシートを、カバーフィルム(A)を剥がしたモノマー吸収性シート(A)に、モノマー吸収性シート(A)と水含有光重合性組成物層とが接する形態で貼り合わせた。
貼り合わせてから1分後に、両面から、光源としてブラックライトランプを用い、紫外線(照度:5mW/cm2)の照射を開始した。紫外線の照射は、5分間行った。そして、光硬化させることにより、含水物質を含有するポリマー部材(カバーフィルム(A)/含水物質を含有するポリマー部材/カバーフィルム(B))を製造した。
【0161】
(実施例2)
カバーフィルム(A)の離型処理された面に、水含有光重合性組成物(B)を、厚みが50μmになるように層状に塗布して、水含有光重合性組成物層を有するシートを形成した。
該水含有光重合性組成物層を有するシートを、カバーフィルム(A)を剥がしたモノマー吸収性シート(A)に、モノマー吸収性シート(A)と水含有光重合性組成物層とが接する形態で貼り合わせた。
貼り合わせてから1分後に、両面から、光源としてブラックライトランプを用い、紫外線(照度:5mW/cm2)の照射を開始した。紫外線の照射は、5分間行った。そして、光硬化させることにより、含水物質を含有するポリマー部材(カバーフィルム(A)/含水物質を含有するポリマー部材/カバーフィルム(B))を製造した。
【0162】
(実施例3)
カバーフィルム(A)の離型処理された面に、水含有光重合性組成物(C)を、厚みが50μmになるように層状に塗布して、水含有光重合性組成物層を有するシートを形成した。
該水含有光重合性組成物層を有するシートを、カバーフィルム(A)を剥がしたモノマー吸収性シート(A)に、モノマー吸収性シート(A)と水含有光重合性組成物層とが接する形態で貼り合わせた。
貼り合わせてから1分後に、両面から、光源としてブラックライトランプを用い、紫外線(照度:5mW/cm2)の照射を開始した。紫外線の照射は、5分間行った。そして、光硬化させることにより、含水物質を含有するポリマー部材(カバーフィルム(A)/含水物質を含有するポリマー部材/カバーフィルム(B))を製造した。
【0163】
(実施例4)
カバーフィルム(A)の離型処理された面に、水含有光重合性組成物(D)を、厚みが50μmになるように層状に塗布して、水含有光重合性組成物層を有するシートを形成した。
該水含有光重合性組成物層を有するシートを、カバーフィルム(A)を剥がしたモノマー吸収性シート(A)に、モノマー吸収性シート(A)と水含有光重合性組成物層とが接する形態で貼り合わせた。
貼り合わせてから1分後に、両面から、光源としてブラックライトランプを用い、紫外線(照度:5mW/cm2)の照射を開始した。紫外線の照射は、5分間行った。そして、光硬化させることにより、含水物質を含有するポリマー部材(カバーフィルム(A)/含水物質を含有するポリマー部材/カバーフィルム(B))を製造した。
【0164】
(実施例5)
カバーフィルム(A)の離型処理された面に、水含有光重合性組成物(E)を、厚みが50μmになるように層状に塗布して、水含有光重合性組成物層を有するシートを形成した。
該水含有光重合性組成物層を有するシートを、カバーフィルム(A)を剥がしたモノマー吸収性シート(A)に、モノマー吸収性シート(A)と水含有光重合性組成物層とが接する形態で貼り合わせた。
貼り合わせてから1分後に、両面から、光源としてブラックライトランプを用い、紫外線(照度:5mW/cm2)の照射を開始した。紫外線の照射は、5分間行った。そして、光硬化させることにより、含水物質を含有するポリマー部材(カバーフィルム(A)/含水物質を含有するポリマー部材/カバーフィルム(B))を製造した。
【0165】
(実施例6)
カバーフィルム(A)の離型処理された面に、水含有光重合性組成物(E)を、厚みが100μmになるように層状に塗布して、水含有光重合性組成物層を有するシートを形成した。
該水含有光重合性組成物層を有するシートを、カバーフィルム(A)を剥がしたモノマー吸収性シート(A)に、モノマー吸収性シート(A)と水含有光重合性組成物層とが接する形態で貼り合わせた。
貼り合わせてから1分後に、両面から、光源としてブラックライトランプを用い、紫外線(照度:5mW/cm2)の照射を開始した。紫外線の照射は、5分間行った。そして、光硬化させることにより、含水物質を含有するポリマー部材(カバーフィルム(A)/含水物質を含有するポリマー部材/カバーフィルム(B))を製造した。
【0166】
(実施例7)
実施例2で得られた含水物質を含有するポリマー部材について、カバーフィルム(A)を剥がして露出させてから、熱風乾燥機にて130℃で10分間の熱処理を行って水を除去することにより、ポリマー部材を得た。
【0167】
(実施例8)
水含有光重合性組成物(G)を、カバーフィルム(A)を剥がしたモノマー吸収性シート(B)に、150μmの厚さで塗布して、水含有光重合性組成物層を有するシートを得た。
次に、該水含有光重合性組成物層を有するシートを、カバーフィルム(A)を剥がした別のモノマー吸収性シート(B)に、モノマー吸収性シートと水含有光重合性組成物層とが接する形態で貼り合わせた。これにより、水含有光重合性組成物層がモノマー吸収層で挟まれている形態の有するシート(カバーフィルム(B)/モノマー吸収性シート(B)/水含有光重合性組成物層(水含有光重合性組成物(G)の層)/モノマー吸収性シート(B)/カバーフィルム(B))を得た。
貼り合わせてから5分後に、両面から、光源としてブラックライトランプを用い、紫外線(照度:5mW/cm2)の照射を開始した。紫外線の照射は、5分間行った。そして、光硬化させることにより、含水物質を含有するポリマー部材(カバーフィルム(B)/含水物質を含有するポリマー部材/カバーフィルム(B))を製造した。
【0168】
(比較例1)
カバーフィルム(A)の離型処理された面に、水含有光重合性組成物(A)を、厚みが50μmになるように層状に塗布して、水含有光重合性組成物層を有するシートを形成した。
該水含有光重合性組成物層を有するシートを、カバーフィルム(B)の離型処理された面に貼り合わせて、積層体を形成した。
次に、積層体を形成してから1分後に、該積層体の両面から、光源としてブラックライトランプを用い、紫外線(照度:5mW/cm2)の照射を開始した。紫外線の照射は、5分間行った。そして、光硬化させることにより、含水物質を含有するポリマー層(カバーフィルム(A)/含水物質を含有するポリマー層/カバーフィルム(B))を作製した。
【0169】
(比較例2)
カバーフィルム(A)の離型処理された面に、水含有光重合性組成物(B)を、厚みが50μmになるように層状に塗布して、水含有光重合性組成物層を有するシートを形成した。
該水含有光重合性組成物層を有するシートを、カバーフィルム(B)の離型処理された面に貼り合わせて、積層体を形成した。
次に、積層体を形成してから1分後に、該積層体の両面から、光源としてブラックライトランプを用い、紫外線(照度:5mW/cm2)の照射を開始した。紫外線の照射は、5分間行った。そして、光硬化させることにより、含水物質を含有するポリマー層(カバーフィルム(A)/含水物質を含有するポリマー層/カバーフィルム(B))を作製した。
【0170】
(比較例3)
カバーフィルム(A)の離型処理された面に、水含有光重合性組成物(C)を、厚みが50μmになるように層状に塗布して、水含有光重合性組成物層を有するシートを形成した。
該水含有光重合性組成物層を有するシートを、カバーフィルム(B)の離型処理された面に貼り合わせて、積層体を形成した。
次に、積層体を形成してから1分後に、該積層体の両面から、光源としてブラックライトランプを用い、紫外線(照度:5mW/cm2)の照射を開始した。紫外線の照射は、5分間行った。そして、光硬化させることにより、含水物質を含有するポリマー層(カバーフィルム(A)/含水物質を含有するポリマー層/カバーフィルム(B))を作製した。
【0171】
(比較例4)
カバーフィルム(A)の離型処理された面に、水含有光重合性組成物(D)を、厚みが50μmになるように層状に塗布して、水含有光重合性組成物層を有するシートを形成した。
該水含有光重合性組成物層を有するシートを、カバーフィルム(B)の離型処理された面に貼り合わせて、積層体を形成した。
次に、積層体を形成してから1分後に、該積層体の両面から、光源としてブラックライトランプを用い、紫外線(照度:5mW/cm2)の照射を開始した。紫外線の照射は、5分間行った。そして、光硬化させることにより、含水物質を含有するポリマー層(カバーフィルム(A)/含水物質を含有するポリマー層/カバーフィルム(B))を作製した。
【0172】
(比較例5)
カバーフィルム(A)の離型処理された面に、水含有光重合性組成物(E)を、厚みが50μmになるように層状に塗布して、水含有光重合性組成物層を有するシートを形成した。
該水含有光重合性組成物層を有するシートを、カバーフィルム(B)の離型処理された面に貼り合わせて、積層体を形成した。
次に、積層体を形成してから1分後に、該積層体の両面から、光源としてブラックライトランプを用い、紫外線(照度:5mW/cm2)の照射を開始した。紫外線の照射は、5分間行った。そして、光硬化させることにより、含水物質を含有するポリマー層(カバーフィルム(A)/含水物質を含有するポリマー層/カバーフィルム(B))を作製した。
【0173】
(比較例6)
カバーフィルム(A)の離型処理された面に、水含有光重合性組成物(F)を、厚みが100μmになるように層状に塗布して、水含有光重合性組成物層を有するシートを形成した。
該水含有光重合性組成物層を有するシートを、カバーフィルム(B)の離型処理された面に貼り合わせて、積層体を形成した。
次に、積層体を形成してから1分後に、該積層体の両面から、光源としてブラックライトランプを用い、紫外線(照度:5mW/cm2)の照射を開始した。紫外線の照射は、5分間行った。そして、光硬化させることにより、含水物質を含有するポリマー層(カバーフィルム(A)/含水物質を含有するポリマー層/カバーフィルム(B))を作製した。
【0174】
(比較例7)
比較例2の含水物質を含有するポリマー層を有する部材について、カバーフィルム(A)を剥がして露出させてから、熱風乾燥機にて130℃で10分間の熱処理を行って水を除去することにより、ポリマー部材を得た。
【0175】
(評価1)
実施例及び比較例のポリマー部材の断面構造を光学顕微鏡(装置名「OPTIPHOTO−2」株式会社ニコン製)で観察した。
そして、実施例5及び比較例5のポリマー部材の断面構造を、それぞれ、図1及び2に示した。また、実施例8のポリマー部材の断面構造を図8に示した。
【0176】
図1において、a及びbから構成される部分は、含水物質を含有するポリマー部材であり、表面には含水物質(水及び親水性物質)が層状に存在している。aは、水含有光重合性組成物層により得られた部分と仮想できる層状部分ある。bは、モノマー吸収層により得られた部分と仮想できる層状部分である。cは、カバーフィルムである。
【0177】
図2において、dは含水物質を含有するポリマー層であり、cはカバーフィルムである。
【0178】
図8において、a及びbから構成される部分は、含水物質を含有するポリマー部材であり、中央部(芯部)には含水物質(水及び親水性物質)が層状に存在している。aは、水含有光重合性組成物層により得られた部分と仮想できる層状部分ある。bは、モノマー吸収層により得られた部分と仮想できる層状部分である。cは、カバーフィルムである。
【0179】
実施例5と比較例5とは、同一の水含有重合性組成物を塗布し、同じUV照射条件にて硬化させたものである。比較例5の図2では、d層内部に楕円形状が多数みられる。これは、含水物質のドメインである。一方、実施例5の図1では、a層には、そのようなドメインはみられない。モノマー吸収性シート内部にモノマーが拡散し、表面に含水物質が層状に存在しているためである。
【0180】
上記の実施例5と比較例5の場合と同様に、同一の水含有重合性組成物を塗布し、同じUV照射条件にて硬化させた実施例と比較例とを対比すると、実施例は含水物質を含有するポリマー部材であり、含水物質の層状の偏在構造を有することが確認できたが、比較例は、含水物質のドメインがみられ、含水物質の層状の偏在構造を有することはなかった。
【0181】
(評価2)
実施例と比較例について、カバーフィルム(A)を剥がすことにより露出する面(A面)(実施例では、水含有重合性組成物を塗布した側の面)及びカバーフィルム(B)を剥がすことにより露出する面(B面)(実施例では、モノマー吸収性シート側の面)について、表面抵抗率を測定し、その結果を表1に示した。
【0182】
(表面抵抗率)
JIS K 6271の二重リング電極法に準じて、表面抵抗率を測定した。抵抗値の測定には、装置名「デジタル・マルチメータ VOAC7520」(岩通計測株式会社製)を使用した。
【0183】
【表1】

【0184】
表1において、「A面」は「実施例及び比較例においてカバーフィルム(A)を剥がすことにより露出する面」であり、「B面」は「実施例及び比較例においてカバーフィルム(B)を剥がすことにより露出する面」である。
【0185】
実施例2、3、5では、A面側の表面抵抗がB面側の表面抵抗より低く、導電性が高まっていた。これは、A面側に含水物質の層状領域が存在しており、水の影響にて導電性を高めることができたためである。なお、実施例5のように塩化カリウムのような電解質を利用することで表面抵抗率をより低くすることができた。
実施例7は、実施例2を乾燥して水を除去したものであり、A面側の表面では導電性がなくなっており、導電性の低下が水の効果であったことを支持している。
一方、比較例は、モノマー吸収性シートを利用しなかった場合であり、実施例と同一の水含有重合性組成物を用いても、A面側及びB面側のどちらも導電性を示さず、含水物質を層状に存在させることによる機能を発現することはなかった。このように、比較例では、含水物質は、ポリマー層中に分散して存在しており、含水物質を層状に存在させることによる機能を発現することはなかった。なお、比較例において、含水物質がポリマー層中に分散して存在していることは図2にも示されている。
仮に、比較例のような方法、つまりモノマー吸収層を用いないで水含有重合性組成物を塗布し水含有重合性組成物層を設けて硬化させる方法で表面導電性を下げようとすると、ポリマー中の水の量を大幅に増加させることが必要となる。
このように、本発明は、より少ない水の量で効果的に含水層を得ることを可能にする。
【0186】
図8より、中央部に存在する水含有光重合性組成物層により得られた部分と仮想できる層状部分aは、約40μmの厚さとなっている。これは、実施例8では、作製時に、水含有光重合性組成物(G)を150μmの厚さで塗布したことから、モノマー吸収性シート内部にモノマーが拡散し、中央部(芯部)に含水物質が層状に存在しているためである。
(評価3)
同一の水含有重合性組成物を用いた実施例及び比較例について、それぞれ、A面側の赤外線スペクトルチャートを測定し、その結果を図3〜6に示した。なお、図3〜6において、実施例の赤外線スペクトルチャートは実線であり、比較例の赤外線スペクトルチャートは破線である。
【0187】
図3には、実施例1及び比較例1の赤外線スペクトルチャートが示されており、実施例1のA面側の方が、水とポリビニルアルコール成分を多く含んでいた。
【0188】
図4には、実施例2及び比較例2の赤外線スペクトルチャートが示されており、実施例2のA面側の方が、水とポリビニルアルコール成分を多く含んでいた。
【0189】
図5には、実施例4及び比較例4の赤外線スペクトルチャートが示されており、実施例4のA面側の方が、水とポリアクリル酸成分を多く含んでいた。
【0190】
図6には、実施例6及び比較例6の赤外線スペクトルチャートが示されており、実施例6のA面側の方が、水を多く含んでいた。
【0191】
このように、赤外線スペクトルからも、本発明の製造方法によれば、含水物質の層状領域を効果的に形成できることが明らかであった。
【0192】
評価1〜3から、本発明の製造方法は、含水物質の層状領域(水と親水性物質を含む層状物)を効果的に形成できた。また、実施例は、作製時に水によって積層が阻害されるという問題が生じることはなかった。さらに、実施例は、水を含有し、全体で一体化しており、機械的強度に優れ、取り扱い性に優れていた。
【0193】
(評価4)
実施例7のポリマー部材のA面側表面を走査型電子顕微鏡(SEM)(装置名「S−4800」株式会社日立ハイテクノロジーズ製)で観察した。そして、その電子顕微鏡写真を図7に示した。
【0194】
図7に示すように、本発明の製造方法によれば効果的に形成した含水物質の層状領域から水を除去することによって、表面に多孔構造を形成させることが可能であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性モノマーを吸収可能なモノマー吸収性シートのモノマー吸収面上に、重合性モノマーを含むモノマー混合物又はその部分重合物、水、さらに水溶性物質及び水分散性物質からなる群より選ばれた少なくとも1つの物質を含有する水含有重合性組成物層を積層してから、重合に付して、水と、水溶性物質及び水分散性物質からなる群より選ばれた少なくとも1つの物質とからなる含水物質が、モノマー吸収面と水含有重合性組成物層との界面とは反対側の界面又は該界面近傍に分布している構造を有するポリマー部材を得ることを特徴とする含水物質含有ポリマー部材の製造方法。
【請求項2】
重合性モノマーを吸収可能なモノマー吸収性シートのモノマー吸収面上に、重合性モノマーを含むモノマー混合物又はその部分重合物、水、さらに水溶性物質及び水分散性物質からなる群より選ばれた少なくとも1つの物質を含有する水含有重合性組成物層を積層し、さらに該水含有重合性組成物層上にカバーフィルムを積層してから、重合に付して、水と、水溶性物質及び水分散性物質からなる群より選ばれた少なくとも1つの物質からなる含水物質が、モノマー吸収面と水含有重合性組成物層との界面とは反対側の界面又は該界面近傍に分布している構造を有するポリマー部材を得ることを特徴とする含水物質含有ポリマー部材の製造方法。
【請求項3】
重合性モノマーを吸収可能なモノマー吸収性シートのモノマー吸収面上に、重合性モノマーを含むモノマー混合物又はその部分重合物、水、さらに水溶性物質及び水分散性物質からなる群より選ばれた少なくとも1つの物質を含有する水含有重合性組成物層を積層し、さらに該水含有重合性組成物層上にモノマー吸収面が接する形態で別のモノマー吸収性シートを積層してから、重合に付して、水、水溶性物質及び水分散性物質からなる群より選ばれた少なくとも1つの物質からなる含水物質が、モノマー吸収面と水含有重合性組成物層との界面又は該界面近傍には分布しない構造を有するポリマー部材を得ることを特徴とする含水物質含有ポリマー部材の製造方法。
【請求項4】
重合を、活性エネルギー線の照射によって開始する請求項1〜3の何れかの項に記載の含水物質含有ポリマー部材の製造方法。
【請求項5】
水溶性物質及び水分散性物質からなる群より選ばれた少なくとも1つの物質が、水溶性のポリマー及び水分散性のポリマーからなる群より選ばれた少なくとも1つのポリマーである請求項1〜4の何れかの項に記載の含水物質含有ポリマー部材の製造方法。
【請求項6】
水溶性物質及び水分散性物質からなる群より選ばれた少なくとも1つの物質が、水溶性の無機物及び水分散性の無機物からなる群より選ばれた少なくとも1つの無機物である請求項1〜4の何れかの項に記載の含水物質含有ポリマー部材の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6の何れかの項に記載のポリマー部材の製造方法により得た含水物質含有ポリマー部材を、加熱及び減圧から選ばれた少なくとも1つの手段より、水を除去することを特徴とするポリマー部材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−132279(P2011−132279A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−290156(P2009−290156)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】