説明

含水粉末状化粧料

【課題】 本発明は、粉末状化粧料でありながら、使用時に優れた収斂効果(制汗効果)を有し、清涼感のある感触で、均一な塗布膜が得られ、化粧持続性に優れ、かつ保存安定性に極めて良好な含水粉末状化粧料に関するものである。
【解決手段】 次の成分(a)〜(e):(a)ミョウバン、(b)比表面積80m/g以上の疎水性粉体、(c)水性ゲル化剤、(d)キレート剤、(e)水とを含有し、塗擦により液化することを特徴とする含水粉末化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末状化粧料でありながら、使用時に優れた収斂効果(制汗効果)を有し、清涼感のある感触で、均一な塗布膜が得られ、化粧持続性に優れ、かつ保存安定性に極めて良好な含水粉末状化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、粉末状の化粧料は、ファンデーション、白粉、頬紅、ボディパウダー、制汗パウダーなどに用いられている。粉末状の化粧料は、主成分となる粉体が余分な皮脂を吸収して、化粧崩れを防ぎ、汗を吸収して、デオドラント効果を得るものとして知られているが、揮発成分がないため、収斂作用や清涼感が得られるものではなかった。
収斂作用は、汗の分泌を抑制する制汗効果だけでなく、肌を引き締め化粧持ち向上効果が挙げられ、化粧料の効果でも重要な要素である。そのミョウバン等の収斂作用のある物質は、浴用剤としても用いられ、また、粉体化粧料においても、局方ミョウバン、アラビアゴム、不活性粉末および酸化亜鉛を配合する技術(例えば、特許文献1参照)や制汗成分として硫酸アルミニウムカリウムを配合する化粧料が開発されている(例えば、特許文献2参照)。
一方、水性成分を粉末でコートして、外観は粉末状であるが、塗擦により液状化する粉末化粧料の技術も開発されている。(例えば、特許文献3参照、特許文献4参照)
【0003】
【特許文献1】特表平6−509081号公報
【特許文献2】特開2010−77094号公報
【特許文献3】特開平5−65212号公報
【特許文献4】特開2001−131528号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ミョウバンは、水に溶解し、複塩中の硫酸アルミニウムが加水分解することで酸性を呈し、皮膚や粘膜に対して収斂効果を示すものである。そのため、粉末状であっても、入浴剤の様に使用時に水に溶解して用いる場合は、その効果が得られるが、水分を殆ど含まない粉末状の化粧料においては、その効果を有効に発揮することはできなかった。
また、粉末の形状のまま優れた収斂作用を示すものはなく、その多くが水に溶解することでその効果を発揮するため、粉末化粧料において優れた収斂作用を示す化粧料を提供するのは困難であった。
そこで、ミョウバンを水性ゲルに含有せしめ、疎水性粉体で被覆してなる含水粉末化粧料とすることで、粉末化粧料でも優れた収斂作用を示すことができると考えたが、水性ゲルにミョウバンを含有させると、水性ゲルが崩れて、粉末状にすることが困難であることがわかった。
このため、粉末状でありながら、使用時に優れた収斂効果(制汗効果)を有し、清涼感のある感触で、均一な塗布膜が得られ、化粧持続性に優れ、かつ保存安定性に極めて良好な粉末化粧料の提供が求められてきた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記実情に鑑み、本発明者は鋭意研究を行った結果、ミョウバンを、キレート剤と組み合わせて、水性ゲルに含有することにより、安定な水性ゲルを調製することができ、上記の課題が解決できることを見出し、本発明を完成した。これは、ミョウバン中の硫酸アルミニウムの加水分解により生じた水酸化アルミニウムが、加熱により沈殿・析出して、水性ゲル化剤のゲル化能を阻害しているものと考えられる。ここでキレート剤を含有させると、アルミニウムイオンの水和性を向上させることができるため、ゲル化能を阻害することなく、水性ゲルが安定になり、上記の課題が解決できることを見出した。
【0006】
すなわち本発明は、
(1)次の成分(a)〜(e):
(a)ミョウバン
(b)比表面積80m/g以上の疎水性粉体
(c)水性ゲル化剤
(d)キレート剤
(e)水
を含有し、塗擦により液化することを特徴とする含水粉末化粧料を提供するものである。
(2)また、更に、成分(f)として、成分(b)以外の水不溶性粉体を含有することを特徴とする(1)に記載の含水粉末化粧料である。
(3)前記成分(d)のキレート剤が有機酸及び/または有機酸塩であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の含水粉末化粧料。
(4)そして、前記成分(a)を0.001〜1質量%、成分(b)を0.1〜7質量%、成分(c)を0.01〜10%、成分(d)を0.005〜1%、成分(e)を10〜99.884質量%含有することを特徴とする(1)〜(2)の何れかに記載の含水粉末化粧料を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の含水粉末化粧料は、使用時に優れた収斂効果(制汗効果)を有し、清涼感のある感触で、均一な塗布膜が得られ、化粧持続性に優れ、かつ保存安定性に極めて良好なものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の含水粉末化粧料は、使用前は粉末形態でありながら、使用時には塗擦により一定時間後に内部の水性成分が出て液化して、化粧水や乳液様の性状を呈する化粧料である。
本発明においては、成分(a)ミョウバン、(d)キレート剤を含む成分(e)水に成分(c)水性ゲル化剤を含有せしめることにより、水性ゲルを形成せしめることができ、その水性ゲルを(b)比表面積80m/g以上の疎水性粉体で被覆して含水粉末化粧料とすることが好ましい。
【0009】
本発明の成分(a)ミョウバンは、特に限定されず、化粧料に用いられるものであれば特に限定されず、具体的には、硫酸アルミニウムカリウム(AlK(SO・12HO]、硫酸アルミニウムアンモニウム(AlNH(SO・12HO]、又は硫酸アルミニウムナトリウム[NaAlNH(SO・12HO]やこれらの無水物である焼きミョウバン等を好適に用いることができ、これらを一種又は二種以上を用いることができる。
【0010】
本発明の成分(a)の含有量は、含水粉末化粧料中0.001〜1質量%(以下単に「%」と示す)が好ましく、更に好ましくは0.05〜0.5%である。この範囲であると、充分な収斂効果が得られ、保存安定性も良好なものが得られるため好ましい。
【0011】
本発明の成分(b)である比表面積(BET法)が80m/g以上の疎水性粉体は、この比表面積を有し、その粉体表面が疎水性を示すものであればよく、それ自体が疎水性である粉体、親水性粉体を通常公知の疎水化剤により表面処理した粉体、疎水化度をより高めるために疎水性粉体を更に疎水化剤により処理した粉体等が挙げられる。本発明においては、粉末が疎水性であるか否かは、粉末を25℃の水に分散することにより判断され、デスパーを用いて1000rpmで5分間撹拌した場合、沈降したり分散したりせず、水に浮いているものが疎水性粉末とした。
【0012】
成分(b)のうち、それ自体が疎水性である疎水性粉体としては、例えば、ポリスチレン粉末、ポリエチレン粉末、オルガノポリシロキサン粉末、N−アシルリジン粉末、四フッ化ポリエチレン粉末、エポキシ樹脂粉末等の有機樹脂粉末、ステアリン酸アルミニウム、ラウリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム等の金属石鹸粉末等が挙げられる。
【0013】
また、表面処理により疎水化される親水性粉体としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、無水ケイ酸、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、マイカ、合成マイカ、合成セリサイト、セリサイト、タルク、炭化ケイ素、硫酸バリウム、窒化ホウ素、オキシ塩化ビスマス、雲母チタン等の無機粉体類、シルクパウダー、デンプン、ナイロン、結晶セルロース等の有機粉体類、微粒子酸化チタン被覆雲母チタン、微粒子酸化亜鉛被覆雲母チタン、硫酸バリウム被覆雲母チタン等の複合粉体等が挙げられる。
【0014】
また、粉体を疎水化するために用いられる疎水化剤としては、種々のトリメチルシリル化剤、ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン等の有機ケイ素化合物、パーフルオロアルキルリン酸、パーフルオロポリエーテルアルキルリン酸、フルオロアルキルシラン等のフッ素化合物、金属石鹸、ロウ、油脂、炭化水素等の他の油剤等が挙げられるが、この中でも有機ケイ素化合物やフッ素化合物が、粉末状にしたものの保存安定性の点において好ましい。
本発明において、疎水化された粉体中の疎水化剤の比率は1〜40%が好ましく、更に好ましくは、2〜30%である。この範囲であると、水性ゲルを粉末状にしたものの保存安定性の点において好ましい。
【0015】
上記成分(b)の疎水性粉体として特に好ましいものは、含水粉末化粧料の保存安定性の点で、平均粒子径0.001〜0.1μmの煙霧状無水ケイ酸を疎水化処理したものである。具体的には、AEROSIL R974、AEROSIL R972、AEROSIL RX200、AEROSIL RX300(何れも、日本アエロジル社製)、キャボジルTS−530(キャボット社製)等として市販されているものが挙げられる。
成分(b)の比表面積80m/g以上の疎水性粉体は一種又は二種以上を用いることができる。
【0016】
本発明の成分(b)の含有量は、含水粉末化粧料中0.1〜7%が好ましく、更に好ましくは2〜5%である。この範囲であると、粉末状にしたものの保存安定性の点において好ましい。
【0017】
本発明の成分(c)の水性ゲル化剤としては、水に溶解又は膨潤することにより水をゲル化するものである。例えば、寒天、グァーガム、ローカストビーンガム、クインスシードガム、ファーセンラン、カラギーナン、アルギン酸ソーダ、ジェランガム、デンプン、ペクチン、コンニャク等の植物系天然高分子、ゼラチン等の動物系天然高分子、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体等の半合成高分子、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、酢酸ビニル(共)重合体等のカルボン酸ビニル(共)重合体、(メタ)アクリル酸(共)重合体、(メタ)アクリル酸ナトリウム(共)重合体等、カルボキシビニルポリマー、アルキル変性カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸ソーダ、ポリメタクリル酸ソーダ、ポリビニルピロリドン等の合成高分子、ケイ酸ナトリウムマグネシウム、含水ケイ酸アルミニウム、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、フッ素四ケイ素雲母等の水膨潤性粘土鉱物等が挙げられ、これらを一種又は二種以上用いることができる。
これらの水性ゲル化剤は、高速剪断や凍結粉砕時の粉砕のし易さや、保存安定性の向上の観点より、寒天、ゼラチン、カラギーナン、ジェランガム、ケイ酸ナトリウムマグネシウム、スクレロチウムガム等のように水と硬いゲルを形成するものが好ましい。
【0018】
本発明の成分(c)の含有量は、成分(e)の水を含む水性成分とゲルを形成する量が好ましく、水性成分の含有量によるが、含水粉末化粧料中0.01〜10%が好ましく、更に好ましくは0.05〜8%である。この範囲であると、粉末状にしたものの保存安定性の点において好ましい。また、水性成分のゲルの形成という点において、成分(c)の含有量は、成分(e)の水との合計量の0.1〜10%が好ましく、更に好ましくは0.5〜8%が好ましい。
【0019】
本発明の成分(d)キレート剤を含有することにより、成分(a)の加水分解による沈殿物の生成を阻害することができる。
本発明の成分(d)キレート剤としては、化粧料に使用されるものであれば特に限定されないが、具体的には、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、酒石酸、コハク酸、ピロリドンカルボン酸、ポリリン酸、メタリン酸等の有機酸、また、有機酸の塩として、これらのナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、アンモニウム、バリウム塩等、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレングリコールビス(2−アミノエチルエーテル)四酢酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸(HEDP)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)等が挙げられる。これらの中でも、ゲルの形成の点において、有機酸や有機酸塩が好ましく、特にクエン酸および、クエン酸ナトリウムが、水性成分のゲルの形成の点でより好ましい。
【0020】
本発明の成分(d)の含有量は、含水粉末化粧料中の0.005〜1%が好ましく、特に好ましくは0.01〜0.5%である。この範囲であれば、水性成分のゲルの形成が良く、保存安定性や収斂効果、化粧持続性に優れた含水粉末化粧料が得られるため好ましい。
【0021】
本発明の成分(e)の水は、精製水や温泉水、深層水、或いはアロエベラ、ウイッチヘーゼル、ハマメリス、キュウリ、レモン、ラベンダー、ローズ等の植物の水蒸気蒸留水等の水でも良い。
【0022】
本発明の成分(e)の含有量は、含水粉末化粧料中、10〜99.884%が好ましく、20〜80%がより好ましい。この範囲であると、化粧料の安定した粉末化が可能であり、また、塗擦時の液化も良好で、みずみずしさを充分に感じられる粉末化粧料が得られるので好ましい。
【0023】
本発明においては、成分(a)ミョウバン、(d)キレート剤を含む成分(e)水の中に成分(c)水性ゲル化剤を含有せしめることにより、水性ゲルを形成せしめることができ、その水性ゲルには、成分(a),(d)、(e)以外に、本発明の効果を損なわない範囲で必要に応じて水性成分を含有することができる。
【0024】
水性成分としては、水に可溶な成分であれば特に制約なく使用することができ、例えば、エチルアルコール等の低級アルコール類、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ペンタンジオール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール等のグリコール類、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン等のグリセロール類、フェノキシエタノール等が挙げられ、これらを一種又は二種以上用いることができる。
【0025】
さらに、本発明の含水粉末化粧料には、成分(f)として成分(b)以外の水不溶性粉体を含有することにより、着色効果や皮脂や汗を吸収する効果が格段に向上する。水不溶性粉体は、表面積80m/g未満であるか、または、親水性の粉体であれば、球状、針状、板状、紡錘状等の形状、多孔質、無孔質等の粒子構造、煙霧状、微粒子、顔料級等の粒子径等により特に限定されず、無機粉体類、有機粉体類、色素粉体類、複合粉体類、ラメ剤、パール剤等いずれのものでも使用することができる。これらは、基剤成分や感触調整としても配合される。また、表面積80m/g未満の水不溶性粉体であれば、前記の有機ケイ素化合物、フッ素化合物、金属石鹸、他の油剤等を用いて表面処理を施したものを用いてもよい。具体的には、酸化チタン、黒色酸化チタン、コンジョウ、群青、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、無水ケイ酸、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化クロム、水酸化クロム、カーボンブラック、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、マイカ、合成マイカ、セリサイト、タルク、カオリン、炭化珪素、硫酸バリウム、ベントナイト、スメクタイト、窒化硼素等の無機粉体類、オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆マイカ、酸化鉄被覆マイカ、酸化鉄被覆マイカチタン、有機顔料被覆マイカチタン、酸化チタン被覆ガラス末、酸化鉄酸化チタン被覆ガラス末、アルミニウムパウダー等の光輝性粉体類、ナイロンパウダー、ポリメチルメタクリレートパウダー、アクリロニトリル−メタクリル酸共重合体パウダー、塩化ビニリデン−メタクリル酸共重合体パウダー、ポリエチレンパウダー、ポリスチレンパウダー、オルガノポリシロキサンエラストマーパウダー、ポリメチルシルセスキオキサンパウダー、ポリウレタンパウダー、ウールパウダー、シルクパウダー、結晶セルロースパウダー、N−アシルリジンパウダー等の有機粉体類、有機タール系顔料、有機色素のレーキ顔料等の色素粉体類、微粒子酸化チタン被覆マイカチタン、微粒子酸化亜鉛被覆マイカチタン、硫酸バリウム被覆マイカチタン、酸化チタン含有無水ケイ酸、酸化亜鉛含有無水ケイ酸等の複合粉体等が挙げられ、これらをその使用目的に応じて一種又は二種以上を用いることができる。
【0026】
成分(f)を配合する場合の配合量は、含水粉末化粧料中の0.1〜80%が好ましく、特に好ましくは0.5〜60%である。この範囲であれば、着色効果や皮脂や汗を吸収する効果、化粧持続性に優れた含水粉末化粧料が得られるため好ましい。
【0027】
本発明の含水粉末化粧料には、更に、本発明の効果を損なわない範囲で必要に応じて、通常、化粧料に用いられる成分、すなわち、油性成分、界面活性剤、メントール等の清涼剤、被膜形成剤、親水性紫外線吸収剤、塩類、pH調整剤、酸化防止剤、保湿剤、ビタミンC誘導体等の美容成分、パラオキシ安息香酸エステル、フェノキシエタノール等の防腐剤、香料等を各種の効果を付与するために適宜配合することができる。
【0028】
例えば、油性成分としては、通常化粧料に使用される原料であれば特に限定されず、用いることができる。例えば、動物油、植物油、合成油等の起源や、固形油、半固形油、液体油、揮発性油等の性状を問わず、炭化水素類、油脂類、高級アルコール類、ロウ類、硬化油類、エステル油類、脂肪酸類、シリコーン油類、フッ素系油類、ラノリン誘導体類、油性ゲル化剤類、油溶性紫外線吸収剤類等が挙げられる。具体的には、流動パラフィン、スクワラン、ワセリン、ポリイソブチレン、ポリブテン、パラフィンワックス、セレシンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャトロプスワックス等の炭化水素類、オリーブ油、ヒマシ油、ホホバ油、ミンク油、マカデミアンナッツ油等の植物油類、ミツロウ、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、ゲイロウ、モクロウ等のロウ類、モンタンワックス、2−エチルヘキサン酸セチル、イソステアリン酸イソトリデシル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、トリオクタン酸セチル、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、ジイソステアリン酸ポリグリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、トリベヘン酸グリセリル、ロジン酸ペンタエリトリットエステル、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、コレステロール脂肪酸エステル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル・ベヘニル・オクチルドデシル)、マカデミアンナッツ脂肪酸フィトステリル等のエステル類、ステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ベヘニン酸、イソステアリン酸、オレイン酸等の脂肪酸類、セチルアルコール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の高級アルコール類、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、フッ素変性シリコーン等のシリコーン系油等、パーフルオロポリエーテル、パーフルオロデカン、パーフルオロオクタン等のフッ素系油剤類、ラノリン、酢酸ラノリン、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラノリンアルコール等のラノリン誘導体、デキストリン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、デンプン脂肪酸エステル、12−ヒドロキシステアリン酸、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム等の油性ゲル化剤類、パラアミノ安息香酸エチル、パラメトキシケイ皮酸−2−エチルヘキシル、4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン、オクチルトリアゾン、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール、オキシベンゾン等の油溶性紫外線吸収剤類等が挙げられる。これらの油剤は必要に応じて一種、又は二種以上を用いることができる。
【0029】
界面活性剤としては、化粧料一般に用いられている界面活性剤であれば特に制約はなく、非イオン界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が使用される。更に、水溶性紫外線吸収剤としては、例えばヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸、ウロカニン酸、ウロカニン酸エチル、ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノンスルホン酸、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸等が挙げられ、保湿剤としては、例えばタンパク質、ムコ多糖、コラーゲン、エラスチン、ケラチン等が挙げられる。
酸化防止剤としては、例えばα−トコフェロール、アスコルビン酸等が、美容成分としては、例えばビタミン類、消炎剤、生薬等が、防腐剤としては、例えばパラオキシ安息香酸エステル等がそれぞれ挙げられる。
【0030】
本発明の含水粉末化粧料の製造方法については、特に限定はないが、例えば成分(a)ミョウバン、(d)キレート剤を含む成分(e)水に成分(c)水性ゲル化剤を含有せしめることにより、水性ゲルを形成し、その水性ゲルを(b)比表面積80m/g以上の疎水性粉体で被覆して粉末状とする方法、さらに、このものは、水相成分を水性ゲル化剤によりゲル化した後、高速剪断や凍結粉砕等により、粉末状の水性ゲル芯物質とし、次いでこの粉体を疎水性粉体で被覆する方法が挙げられる。
また、本発明の含水粉末化粧料の好ましい製造方法の一つとして、成分(a)と成分(d)を溶解した成分(e)と成分(c)より形成される水性ゲルを粒子状(水性ゲル粒子)とし、これを成分(b)で被覆して粉末状とした含水粉末組成物を調製し、それに必要に応じて、成分(f)や他の添加成分を加え、混合する方法が挙げられ、このようにして得られた含水粉末化粧料は保存安定性の点でより好ましい。
このように、本発明の含水粉末化粧料は、成分(a)〜(e)で調製される含水粉末組成物をそのまま含水粉末化粧料として使用することができるが、予め、成分(a)〜(e)で含水粉末組成物を調製して、他の成分や成分(f)を混合して含水粉末化粧料とすることもできる。
【0031】
(水性ゲル粒子の説明)
成分(a)〜(e)の水性ゲルは、保存安定性の観点から、水性ゲルを粒子状に固めた状態で用いることが好ましい。水性ゲル粒子を製造するための方法としては、特に限定はされないが、水相と水性ゲル化剤で調製される水性ゲルを加熱して高速剪断する方法や、凍結粉砕する方法等が挙げられる。高速剪断する方法としては、高速ピンミルやカッターミキサー等を用いる方法が挙げられる。また、凍結粉砕する方法としては、水性ゲルを液体窒素等の冷媒を用いて凍結して粉砕する方法が挙げられる。得られる水性ゲル粒子の平均粒子径としては、1〜300μmが好ましい。
【0032】
また、前記水性ゲル粒子の外側を疎水性粉体で被覆するための方法は特に限定されないが、例えば、攪拌機中に該水性ゲル粒子を入れ、温度の上昇によって融解、凝集をおこさないよう低温下で攪拌しながら、成分(b)の比表面積80m/g以上の疎水性粉体を添加し、混合攪拌して被覆する方法が挙げられる。混合する攪拌機としては、好ましくは冷却機構を有するジャケットを装着し、ジャケット内の壁面や底面に衝突、接触の少ない形状の攪拌羽根を装着している攪拌機が挙げられる。
【0033】
上記含水粉末組成物の調製に当たり、成分(b)の粒子径は、前記水性ゲル粒子の粒子径よりも小さいことが必要であるが、水性ゲル粒子表面への被覆効率の観点から、疎水性粉体(成分(b))の粒子径は該水性ゲル粒子の1/10以下が好ましい。また、水性ゲル粒子と疎水性粉体との比率は、それぞれの粒子径等に影響されるが、質量比で100:0.5〜100:25が好ましい。
【0034】
以上のようにして得られる本発明の含水粉末化粧料は、白粉、ファンデーション、頬紅もしくはアイカラー等のメークアップ化粧料、美白パウダー、ボディパウダー、制汗パウダー等に適用することができる。
【実施例】
【0035】
以下に実施例をもって本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらにより、何ら限定されるものではない。
【0036】
実施例1〜7、比較例1〜5 含水粉末白粉
表1に示す、実施例1〜7及び比較例1〜5の組成の含水粉末白粉を下記の製造方法で調製した。得られた含水粉末白粉について、清涼感のある感触としては使用時のみずみずしさ、収斂効果、均一な塗布膜としてはよれやカスがでないかどうか、化粧持続性としては経時でのよれやテカリのなさ、保存安定性、について評価を行った。その結果も併せて表1に示す。
【0037】
【表1】

【0038】
(注1) AEROSIL RX−300 (日本アエロジル社製)(比表面積210±20m/g)
(注2) AEROSIL R972 (日本アエロジル社製)(比表面積110±20m/g)
(注3) AEROSIL 300 (日本アエロジル社製)(比表面積300±30m/g)
(注4) メチルハイドロジェンポリシロキサン3%処理
(注5) パーフルオロアルキルリン酸ジエタノールアミン塩5%処理
(注6) ラウリン酸亜鉛3%処理
【0039】
(製造方法)
A.成分1〜10を85℃で加熱溶解し、冷却固化後、−80℃で粉砕することにより、水性ゲル粒子(30〜100μm)を得た。
B.室温にて、Aに成分11〜13を加え、ヘンシェルミキサー(三井三池社製)で混合して、含水粉末組成物を調製した。
C.あらかじめ混合しておいた成分14〜19にBを加え、ヘンシェルミキサーで混合して、含水粉末白粉を調製した。
【0040】
(評価方法 1)
下記(イ)〜(ニ)の評価項目については、各試料を専門パネル20名による使用テストを行い、パネル各人が下記評価基準にて7段階に評価し評点を付け、各試料ごとにパネル全員の評点から、その平均値を算出し、下記判定規準により4段階で判定した。尚、(イ)〜(ハ)は使用直後を評価し、(ニ)については使用後3時間経過の状態を評価した。
評価項目:
(イ)清涼感のある感触(使用時のみずみずしさ)
(ロ)収斂効果(引き締まった感覚が得られる)
(ハ)均一な塗布膜(よれやカスのなさ)
(ニ)化粧持続性(経時でのよれやテカリのなさ)
【0041】
評価基準:
(評点):(評価)
6 :非常に良い
5 :良い
4 :やや良い
3 :普通
2 :やや悪い
1 :悪い
0 :非常に悪い
判定基準:
(評点の平均点) : (判定)
5.0以上 :◎(非常に良好)
3.5以上5.0未満:○(良好)
1.5以上3.5未満:△(普通)
1.5未満 :×(不良)
【0042】
(評価方法 2)
評価項目のうち、(ホ)の保存安定性については、含水粉末白粉を気密容器に封入し、50℃で1ヵ月保存した後の状態を目視観察にて評価した。
(評価) :(判定)
粉末がさらさらして流動性がある : ◎
粉末が均一な大きさで流動性がある: ○
粉末が一部凝集している : △
粉末全体が凝集している : ×
【0043】
(結果)
表1から明らかなように、実施例1〜7の含水粉末白粉は、良好な保存安定性を有し、収斂効果や、みずみずしさを与える優れた使用感を有し、塗布膜も、カスやよれがなく均一で優れていた。また、経時でのよれ、テカリもなく、化粧持続性の項目においても優れた効果を発現することができた。
【0044】
一方、成分(c)を含有していない比較例1では、水性成分の粉末化がきれいにできず、含水粉末組成物の形成ができないため、保存安定性の項目を筆頭に多くの項目において満足いくものが得られなかった。
成分(a)を含有していない比較例2は、収斂効果がなく、満足いくものが得られなかった。
成分(b)の疎水性粉体の代わりに、親水性の無水ケイ酸を用いた比較例3では、含水粉末組成物の形成がきれいにできないため、保存安定性の項目を筆頭に多くの項目において満足いくものが得られなかった。
成分(d)のキレート剤を含有していない比較例4では、水性ゲルが崩れ、含水粉末組成物の形成がきれいにできないため、保存安定性が悪く、収斂効果があまり得られず、よれが生じ満足いくものが得られなかった。
さらに、成分(a)を成分(c)や成分(b)と混合せずに配合した比較例5では、ミョウバンを水に溶解することが困難で高い収斂効果を得ることができなかった。
【0045】
実施例8 含水粉末ファンデーション
(成分) (%)
1.寒天 1.5
2.カラギーナン 0.1
3.ミョウバン 0.2
4.クエン酸 0.02
5.クエン酸ナトリウム 0.3
6.グリセリン 1
7.1,3−ブチレングリコール 10
8.パラオキシ安息香酸メチル 0.3
9.精製水 54.08
10.疎水化無水ケイ酸(注1) 2.5
11.フッ素化合物処理酸化チタン(注5) 10
12.フッ素化合物処理タルク(注5) 10
13.フッ素化合物処理セリサイト(注5) 8.2
14.シリコーン化合物処理ベンガラ(注4) 0.2
15.シリコーン化合物処理黄色酸化鉄(注4) 1.5
16.シリコーン化合物処理黒色酸化鉄(注4) 0.1
【0046】
(製造方法)
A.成分1〜9を85℃で加熱溶解し、冷却固化後、−80℃で粉砕することにより、水性ゲル粒子(140〜250μm)を得た。
B.Aに成分10を加え、ヘンシェルミキサーで混合して、含水粉末を調製した。C.成分11〜16を混合し、そこにBを加え混合して、ファンデーションを調製した。
【0047】
本発明の含水粉末ファンデーションは、良好な保存安定性を有し、使用時には、収斂効果やみずみずしさを与える優れた使用感を有し、また、塗布性もカスやよれがなく均一な優れたものであり、更に、化粧持続性も経時でのよれ、テカリもなく、化粧持続性に優れたものであった。
【0048】
実施例8 含水粉末頬紅
(成分) (%)
1.ゼラチン 3
2.デンプン 0.2
3.ミョウバン 0.2
4.クエン酸 0.02
5.クエン酸ナトリウム 0.3
6.グリセリン 1
7.1,3−ブチレングリコール 10
8.パラオキシ安息香酸メチル 0.3
9.精製水 51.98
10.疎水化無水ケイ酸(注2) 3
11.フッ素化合物処理酸化チタン(注5) 5
12.金属石鹸処理タルク(注6) 22.7
13.ジメチルポリシロキサン 1
14.シリコーン化合物赤色202号(注4) 0.3
15.シリコーン化合物処理黄色酸化鉄(注4) 1
【0049】
(製造方法)
A.成分1〜9を85℃で加熱溶解し、冷却固化後、−80℃で粉砕することにより、水性ゲル粒子(140〜250μm)を得た。
B.Aに成分10を加え、ヘンシェルミキサーで混合して、含水粉末を調製した。C.成分11〜15を混合し、そこにBを加え混合して、頬紅を調製した。
【0050】
本発明の含水粉末頬紅は、良好な保存安定性を有し、使用時には、収斂効果やみずみずしさを与える優れた使用感を有し、また、塗布膜もカスやよれがなく均一で優れたものであり、更に、化粧持続性も経時でのよれ、テカリもなく、化粧持続性に優れたものであった。
【0051】
実施例9 含水粉末ボディパウダー
(成分) (%)
1.寒天 1.5
2.カラギーナン 0.1
3.ミョウバン 0.2
4.クエン酸 0.02
5.クエン酸ナトリウム 0.3
6.1,3−ブチレングリコール 10
7.パラオキシ安息香酸メチル 0.3
8.精製水 54.58
9.疎水化無水ケイ酸(注2) 3
10.フッ素化合物処理酸化チタン(注5) 2
11.シリコーン処理微粒子酸化亜鉛(注4) 1
12.シリコーン処理セリサイト(注4) 9.95
13.2−エチルヘキサン酸トリグリセリル 1
14.パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル 1
15.4−tert−ブチル−4‘
−メトキシベンゾイルメタン 0.05
16.ポリスチレンパウダー 5
17.ポリアクリル酸アルキルパウダー 10
【0052】
(製造方法)
A.成分1〜8を85℃で加熱溶解し、冷却固化後、−80℃で粉砕することにより、水性ゲル粒子(140〜250μm)を得た。
B.Aに成分9を加え、ヘンシェルミキサーで混合して、含水粉末を調製した。C.成分10〜17を混合し、そこにBを加え混合して、ボディパウダーを調製した。
【0053】
本発明の含水粉末ボディパウダーは、良好な保存安定性を有し、使用時には、収斂効果やみずみずしさを与える優れた使用感を有し、また、塗布膜もカスやよれがなく均一で優れたものであった。
実施例10 含水粉末制汗パウダー
(成分) (%)
1.寒天 2
2.カラギーナン 0.5
3.ミョウバン 0.2
4.乳酸 0.02
5.乳酸ナトリウム 0.3
6.グリセリン 5
7.1,3−ブチレングリコール 15
8.精製水 69.58
9.カンファ 0.05
10.l−メントール 0.05
11.エタノール 2
12.パラオキシ安息香酸メチル 0.3
13.疎水化無水ケイ酸(注2) 5
【0054】
(製造方法)
A.成分9〜12を混合する。
B.成分1〜8を85℃で加熱溶解し、Aを添加混合する。
C.Bを冷却固化し、−80℃で粉砕することにより、水性ゲル粒子(140〜250μm)を得た。
D.Cに成分13を加え、ヘンシェルミキサーで混合して、含水粉末制汗パウダーを調製した。
【0055】
本発明の含水制汗パウダーは、良好な保存安定性を有し、使用時には、収斂効果やみずみずしさを与える優れた使用感を有し、また、塗布膜もカスやよれがなく均一で優れたものであり、更に、化粧持続性も経時でのよれ、テカリもなく、化粧持続性に優れたものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(a)〜(e):
(a)ミョウバン
(b)比表面積80m/g以上の疎水性粉体
(c)水性ゲル化剤
(d)キレート剤
(e)水
を含有し、塗擦により液化することを特徴とする含水粉末化粧料。
【請求項2】
更に、成分(f)として、成分(b)以外の水不溶性粉体を含有することを特徴とする請求項1に記載の含水粉末化粧料。
【請求項3】
前記成分(d)のキレート剤が有機酸及び/または有機酸塩であることを特徴とする請求項1又は2に記載の含水粉末化粧料。
【請求項4】
前記成分(a)を0.001〜1質量%、成分(b)を0.1〜7質量%、成分(c)を0.01〜10%、成分(d)を0.005〜1%、成分(e)を10〜99.884質量%含有することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の含水粉末化粧料。

【公開番号】特開2012−224556(P2012−224556A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−91103(P2011−91103)
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【出願人】(000145862)株式会社コーセー (734)
【Fターム(参考)】