説明

含油液状製剤用包装袋およびこれに含油液状製剤を収納したラミネート包装型製品

【課題】 極性油剤を含有する水性の液状組成物を収納しても組成物が変質することがないラミネート包装材を見出し、ガラス瓶収納の製品と同等の品質を経時的に維持し得る含油液状製剤用包装袋およびこれに上記の液状組成物を収納したラミネート包装型製品を提供すること。
【解決手段】 媒体としての水と、極性油剤および非イオン性界面活性剤を含有する含油液状製剤を収納する包装袋であって、該包装袋は、環状ポリオレフィン系樹脂を主成分として含む樹脂をシーラント層とするラミネートフィルムで形成したことを特徴とする含油液状製剤用包装袋およびラミネート包装型製品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含油液状製剤用包装袋およびこれに含油液状製剤を収納したラミネート包装型製品に関し、更に詳細には、ラミネート包装されているにも係わらず、極性油剤を含有する水性の液状組成物である含油液状製剤を、ガラス瓶に詰めた時と同様に安定に収納することのできる含油液状製剤用包装袋およびこれに上記の含油液状製剤を収納したラミネート包装型製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、極性のある油剤を有効成分とし、水系中に配合する水性の液状組成物は、その使用性、使用感、生理活性効果等が優れていることから、種々の化粧品や、外用剤などの液状製剤として広く使用されている。
【0003】
これら液状製剤として提供される化粧品や、外用剤等は、ガラス製やプラスチック等の瓶容器に充填され収納されることが一般的であるが、最近では、試供品や販促品として、少量の化粧品等を四方シール型、三方シール型等のラミネート包装袋に収納したものを配布することも行われている。しかしながら、油溶性紫外線吸収剤、香料、油溶性ビタミン類等の極性油剤を有効成分などとして含有する、透明ローション状や白濁ローション状の液状組成物を、通常のラミネート包装袋に収納すると、含有する極性油剤が包装袋内側のシーリング層(通常、ポリエチレン等が使用される)に吸着し、液状組成物中の極性油剤の含有量が減少したり、変臭や白濁の薄化が起こるなど、組成物の変質をきたす場合があった。そして、このような変質は製品の品質低下を示すものであり、また本来の瓶容器詰め製品の見本とはならないことを意味する。
【0004】
上記のような極性油剤の吸着の問題を解消するためには、まず、包装袋内側のシーラント層として非吸着性素材の樹脂、例えば延伸ポリエチレンテレフタレート(延伸PET)等の材料を使用することが着想されるが、通常のシール装置ではこの延伸PETはシールが困難であるという問題があり、実用的ではない。また、近年ではアモルファス−PETのような、シールが可能なPET型材料も開発され、使用されているが、極性油剤の種類によってはこのアモルファス−PETに対しても吸着性を有する場合があり、十分とはいえなかった。
【0005】
一方、充填された組成物の有効成分が、ラミネート包装袋に吸着されたり、逆にラミネート包装袋から溶出した成分で汚染されたりすることを防止しうる高分子フィルムは既に知られている。例えば、特許文献1には、内容物の組成の変化を防止するため、特定のポリオレフィン系樹脂と環状ポリオレフィン系樹脂を用いた積層フィルムおよびこれを用いた包装袋が開示されている。また、特許文献2には、サリチル酸メチル、メントール、カンフル等の吸着の少ない包装体として、特定のノルボルネン系開環重合体水素添加物を利用したフィルムが開示されている。更に、特許文献3には、香気を損なうことのない保香性の包装材として、特定の環状オレフィン系樹脂が開示されている。しかしながら、シーラント層による吸着現象は、充填される組成物溶液の配合成分や、溶液の形態(例えば、エマルジョンタイプ等)によっても相違するため、これら先行技術を単純に適用すれば良いというものではない。
【0006】
このため、有効性のある油性成分として極性油剤を含有する水性の液状組成物をラミネート包装袋に収納することの要望があっても、成分の吸着を防止するためには、それぞれ検討しなければ達成できず、特に、極性油剤を非イオン性界面活性剤を用いて水系中に安定配合した水性の液状組成物のラミネート包装袋のシーラント層での吸着を防止することは困難であるとされていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−254508
【特許文献2】特開2009−143573
【特許文献3】特開平08−332701
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って本発明の課題は、上記のような極性油剤を含有する水性の液状組成物を収納しても組成物が変質することがないラミネート包装材を見出し、ガラス瓶収納の製品と同等の品質を経時的に維持し得る含油液状製剤用包装袋およびこれに上記の液状組成物を収納したラミネート包装型製品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の含油液状製剤に含まれる極性油成分を吸着することがなく、しかも、実用上十分なシール性を有するラミネート包装材を得るべく、種々の高分子材料について検索を行っていたところ、特定の環状ポリオレフィン樹脂がこのような性質を有することを見出した。そして、内面にこの材料を用いたラミネートフィルムを利用することにより、ガラス瓶収納の製品と変わらない品質を維持し得る含油液状製剤用包装袋およびラミネート包装型製品を提供し得ることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち本発明は、媒体としての水と、極性油剤および非イオン性界面活性剤を含有する含油液状製剤を充填する包装袋であって、該包装袋は、環状ポリオレフィン系樹脂を主成分として含む樹脂をシーラント層とするラミネートフィルムで形成したことを特徴とする含油液状製剤用包装袋である。
【0011】
また、本発明は、媒体としての水と、極性油剤および非イオン性界面活性剤を含有し、液状組成物である含油液状製剤を、環状ポリオレフィン系樹脂を主成分として含む樹脂をシーラント層とするラミネートフィルムで形成する包装袋に収納したことを特徴とするラミネート包装型製品である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の含油液状製剤用包装袋により、極性油剤を有効成分等として含有する化粧品、医薬部外品等、水性液状の含油液状製剤が包装袋中で変質するのを防ぐことができる。特に、極性油剤がシーラント層の樹脂に吸着してしまうため、上記含油液状製剤の容器として従来は不可能であったラミネート包装袋への収納においても、吸着による液状組成物中の極性油剤含有量の減少や白濁の薄化などの変質を防ぐことができ、しかも通常のラミネート包装の設備を用いて簡便に包装することができるため、このような水性の含油液状製剤のラミネート包装型製品の製造が可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の含油液状製剤用包装袋に収納される液状組成物は、媒体としての水と、極性油剤および非イオン性界面活性剤を含有するものである。ここでいう極性油剤とは、分子内に水酸基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、エーテル基、アミド基等の極性基を含有する炭化水素系の油剤である。本発明においては特にIOB値(無機性/有機性バランス)の範囲が0.1〜1.0の油剤が好ましく、このような油剤として具体的には、2−エチルヘキサン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、イソノナン酸イソトリデシル、イソノナン酸イソノニル、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、ジカプリン酸プロピレングリコール、ジオレイン酸エチレングリコール、ジステアリン酸エチレングリコール、クエン酸アセチルトリブチル、等のエステル油;トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、トリ(カプリル・カプリン)酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、トリイソパルミチン酸グリセリル等のトリグリセリド;オリーブ油、米胚芽油、米ヌカ油、硬化ヒマシ油、マカデミアンナッツ油、アボガド油、サフラワー油、サンフラワー油、ホホバ油、麻実油、亜麻仁油、エゴマ油、クルミ油、ケシ油、しなぎり油、大豆油、タバコ種子油、日本きり油、ヒマワリ種子油、ぶどう種子油、あんず核油、かぼちゃ種子油、ゴマ油、西洋すもも油、コーン油、菜種油、綿実油、レモン油、茶実油、ツバキ油、落花生油、シア脂、カカオ脂、パーム核油、ヤシ油等の植物油;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレイン酸、ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸等の高級脂肪酸;ビタミンE、ビタミンEアセテート、ビタミンA、ビタミンAパルミテート、ビタミンCパルミテート等の油溶性ビタミン類;パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル、パラメトキシケイ皮酸エトキシエチル、パラアミノ安息香酸、パラアミノ安息香酸メチル、パラアミノ安息香酸グリセリル、パラジメチルアミノ安息香酸アミル、パラジメチルアミノ安息香酸オクチル、ヒドロキシメトキシベンゾフェノン等の油溶性紫外線吸収剤;香料などを挙げることができる。
【0014】
これらの中でも、特にIOB値が0.15〜0.45の範囲内にある油剤が好ましく、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル等のトリグリセリド、ビタミンEアセテート等の油溶性ビタミン類、パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル等の油溶性紫外線吸収剤がとりわけ好ましい。
【0015】
本発明において、上記液状組成物に含まれる極性油剤は1種または2種以上を組み合わせて使用することができ、その含有量は水性の液状組成物を形成し得る量として20質量%以下が好ましいが、0.0001〜10質量%(以下、質量%を単に%と略記する)がより好ましく、特に0.001〜5%が好ましい。
【0016】
また、上記液状組成物が含有する非イオン性界面活性剤としては、上記極性油剤を媒体である水に可溶化、懸濁または乳化するなどして安定に配合できるものであればよく、そのためHLB値が6ないし15の範囲内、好ましくは6.5ないし13.5の範囲内にある非イオン性界面活性剤が好ましい。
【0017】
このような非イオン性界面活性剤として具体的には、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンコレステリルエーテル、ポリオキシエチレンコレスタノールエーテル、ポリオキシエチレンフィトステロールエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステルの酸化エチレン誘導体、ポリグリセリン脂肪酸エステルの酸化エチレン誘導体、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルポリグルコシド、ポリオキシエチレン脂肪酸アルカノールアミド、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン、アルキル含有ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン等を挙げることができる。
【0018】
これらの中でも、特にポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油脂肪酸エステルが、上記極性油剤を水系中に安定に可溶化、懸濁または乳化する上で、好ましい。
【0019】
本発明において、上記液状組成物に含まれる非イオン性界面活性剤は1種または2種以上を組み合わせて使用することができ、その含有量は極性油剤を水系に安定に可溶化、懸濁または乳化し得る量として0.001〜10%が好ましく、特に0.005〜5%がより好ましい。
【0020】
また、上記非イオン性界面活性剤のHLB値は6ないし15の範囲内にあることが好ましいが、これは単独では当該範囲を外れる非イオン性界面活性剤も含めて、液状組成物中に配合される全非イオン性界面活性剤のHLB値の加重平均値が6ないし15の範囲内にあることを意味する。
【0021】
本発明において、上記液状組成物の媒体として使用する水は、特に限定されないが、非イオン性界面活性剤により極性油剤をより安定に含有し得る媒体として、蒸留水、イオン交換水等の精製水が好ましい。
【0022】
上記液状組成物においては、上記極性油剤、非イオン性界面活性剤および水の他、必要に応じて化粧品に通常使用される他の成分、例えばエタノール、イソプロピルアルコール等の一価低級アルコール類;プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、ソルビトール、マルチトール、キシリトール、ペンタエリスリトール、グルコース等の多価アルコール;両性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤等のイオン性界面活性剤;流動パラフィン、ミネラルオイル、スクワラン、ジメチルポリシロキサン等の非極性油剤;水溶性紫外線吸収剤;増粘性水溶性高分子、水溶性多糖類等の増粘剤;植物抽出物、アミノ酸、アミノ酸誘導体、ペプチド、ペプチド誘導体、リン脂質、水溶性ビタミン類等の美容成分;エデト酸塩、ヒドロキシエタンジホスホン酸等の金属キレート剤;クエン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、リン酸またはこれらの塩等のpH緩衝剤;酸化防止剤;色素;顔料粉体;防腐剤等を本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。
【0023】
本発明における液状組成物は、上記各成分を常法により混合し、均一化することにより製造することができる。かくして得られる液状組成物は、極性油剤を含む油分が水媒体中に、非イオン性界面活性剤の作用で溶解ないし懸濁したものであり、透明な可溶化物または半透明ないし白濁状の乳化物(O/W型)で、透明可溶化ローションや白濁ローションとなる。また、このものは各種の用途に使用できるが、極性油剤として油溶性ビタミン類、油溶性紫外線吸収剤を利用したものは、外用剤(化粧品、医薬部外品、医薬品等)として有利に使用される。
【0024】
なお、本発明において「半透明ないし白濁状」とは、分光光度計を用いて測定される、液状組成物の波長650nmの可視光による透過率(%)(光路長1cm)が0〜99%の範囲内にある状態を示す。
なお、本発明において「半透明ないし白濁状」とは、分光光度計を用いて測定される、液状組成物の波長650nmの可視光による透過率(%)(光路長1cm)が0〜99%の範囲内にある状態を示し、特に「半透明」とは、同測定方法にて透過率(%)が10〜99%の範囲内にある状態を示す。
【0025】
一方、上記液状組成物を充填する包装袋は、この液状組成物が接触する面を環状ポリオレフィン系樹脂を主成分として含む樹脂フィルムをシーラント層とするラミネートフィルムで形成される。
【0026】
ラミネートフィルムは、一般に基材層と、その一面側に積層されるシーラント層から形成されるが、本発明の包装袋はこのシーラント層を、環状ポリオレフィン系樹脂を主成分として含む樹脂フィルムで形成したものである。
【0027】
本発明において好適に用いられる環状ポリオレフィン系樹脂を構成する環状オレフィンモノマーとしては、ジシクロペンタジエン、ノルボルネン、テトラシクロドデセンといった分子骨格中にノルボルネン骨格が含まれるモノマーが挙げられる。
【0028】
また、上記環状ポリオレフィン系樹脂には、本発明の目的を損なわない範囲で、上記ノルボルネン骨格含有モノマー(以下、環状オレフィンモノマーと記す)と共に他のモノマーを併用することも可能である。このような他のモノマーとしては、炭素数2以上のα−オレフィン等が挙げられ、より具体的には、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセンおよび1−エイコセン等が挙げられる。これらは1種を単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0029】
本発明において、環状ポリオレフィン系樹脂とは、上述した環状オレフィンモノマーを含むモノマー組成物を重合して得られる樹脂、或いはその誘導体を意味する。ここで、誘導体とは、環状オレフィンモノマーを含むモノマー組成物を重合して得られる樹脂の水素添加体などを意味する。
【0030】
本発明における環状ポリオレフィン系樹脂としては、上記環状オレフィンモノマーの1種または2種以上を重合して得られるポリノルボルネン系樹脂の、1種または2種以上の組み合わせ、または、上記環状オレフィンモノマーの1種または2種以上を重合して得られるポリノルボルネン系樹脂の水素添加体の、1種または2種以上の組み合わせであることが好ましい。
【0031】
上記環状ポリオレフィン系樹脂として好ましいもの具体的に示すと、例えば下記一般式(1)または(2)で示される化学構造を有するものを挙げることができる。
【0032】
【化1】

(式中、R、Rは互いに同一又は異種の炭素数1〜20の有機基を示し、互いに環を形成していてもよい。nは1以上の整数を示す。)
【化2】

(式中、R、Rは互いに同一又は異種の炭素数1〜20の有機基を示し、互いに環を形成していてもよい。p、rは0または1以上の整数を示し、qは1以上の整数を示す。)
【0033】
上記炭素数1〜20の有機基を具体的に例示すると、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、i−ペンチル基、t−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、t−オクチル基(1,1−ジメチル−3,3−ジメチルブチル基)、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル等のシクロアルキル基;1−メチルシクロペンチル基、1−メチルシクロヘキシル基、1−メチル−4−i−プロピルシクロヘキシル基等のアルキルシクロアルキル基;アリル基、プロペニル基、ブテニル基、2−ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル等のアルケニル基;フェニル基、ナフチル基、メチルフェニル基、メトキシフェニル基、ビフェニル基、フェノキシフェニル基、クロロフェニル基、スルホフェニル基等のアリール基;ベンジル基、2−フェニルエチル基(フェネチル基)、α−メチルベンジル基、α,α−ジメチルベンジル基等のアラルキル基等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。また、これらは1種を単独で、あるいは2種以上を併用しても良い。
【0034】
このような環状ポリオレフィンのガラス転移温度(Tg)は、上記一般式(1)、(2)中のq、r、n、pの値、あるいは置換基を適宜選択することにより適宜調整することが可能である。上記一般式(1)、(2)以外の環状ポリオレフィンのガラス転移温度についても、用いるモノマー種、モノマー種の配合割合、モノマー配列、置換基の種類などを適宜設定することにより、任意に調整することができる。
【0035】
本発明において、環状ポリオレフィンはガラス転移温度が40〜200℃の範囲内にあるものが好ましいが、より良好なヒートシール性と上記液状組成物の安定性保持効果を得る上で65℃〜200℃のものがより好ましく、特に80℃〜200℃、とりわけ100℃〜200℃のものが好ましい。なお、本発明において「ガラス転移温度」とは、JIS
K7121(DSC)にて測定した値を意味する。
【0036】
上記一般式(1)で示される環状ポリオレフィンとしては市販品を用いることができ、例えば日本ゼオン社製のゼオネックス(登録商標)、ゼオノア(登録商標)を好適に用いることができる。
【0037】
上記一般式(2)で示される環状ポリオレフィンとしては市販品を用いることができ、例えば三井化学社製のアペル(登録商標)、Topas Advanced Polymers社製のTOPAS(登録商標)を好適に用いることができる。
【0038】
本発明においては、上記環状ポリオレフィンとして、上記一般式(1)で示される化学構造のものが特に好ましく、本発明の効果を十分に得ることができる。
【0039】
本発明の包装袋を形成するラミネートフィルムにおいて、そのシーラント層は上記環状ポリオレフィン系樹脂を主成分として含む樹脂フィルムで構成される。ここで「主成分として含む」とは、上記環状ポリオレフィン系樹脂がシーラント層マトリックスを構成する材料全体の50%以上の割合を占めることを意味するものである。この割合は、70〜100%であることがより好ましい。
【0040】
なお、本発明の包装袋において、上記シーラント層には、更に必要に応じ種々の添加剤、例えば顔料、分散剤、酸化防止剤、脱酸素剤、紫外線吸収剤、光安定剤、無機充填剤等を添加することもできる。
【0041】
一方、前記ラミネートフィルムの基材層を構成する材料としては、すでに周知のものを使用することができ、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・α−オレフィン(炭素数4〜8)共重合体、プロピレン・α−オレフィン(炭素数4〜8)・エチレン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリビニルアルコール、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル共重合体、環状ポリオレフィン等の樹脂を利用することができる。また、必要に応じて、アルミニウム箔等の金属箔を併せて利用することができる。
【0042】
前記ラミネートフィルムの基材層は、上記樹脂材料の1種単独または2種以上を混合した材料をフィルム化したもの、またはこれらフィルムに金属やセラミックを蒸着したもの、更にこれらの樹脂フィルム、金属等蒸着樹脂フィルムおよび金属箔から選ばれる2種以上を積層したもので構成することができる。
【0043】
本発明の包装袋において、上記基材層としてはポリエチレンテレフタレートや、ナイロン等ポリアミドのフィルム、それらと金属箔や上記各種蒸着フィルムを積層したラミネートフィルム、およびこれらフィルムやラミネートフィルムに、更に低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレンなどのフィルムを積層したものが好ましい。
【0044】
本発明の包装袋において、上記基材層には、更に必要に応じ種々の添加剤、例えば顔料、分散剤、酸化防止剤、脱酸素剤、紫外線吸収剤、光安定剤、無機充填剤等をフィルム中に添加することも、あるいはフィルムに塗着することもできる。また、上記基材層の少なくとも一部に、印刷やその他の方法により加飾を施してもよい。
【0045】
本発明の包装袋を形成するラミネートフィルムの構成としては、上述の基材層に、上述のシーラント層を直接積層した2層構成であっても良いし、基材層とシーラント層の接着性の観点に鑑み、シーラント層と基材層との間に1層または2層以上の中間層を介在させた多層構成としても良い。なお、このような中間層としては特に制限はなく、ドライラミネーション用の接着剤にて接着層を形成しても良いが、溶剤を用いずとも確実な積層を実現する上で、上記シーラント層と上記基材層とを良好に接着させることが可能な接着性樹脂、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、変性ポリオレフィン等や、アルミニウム等の金属箔により中間層を構成することが好適である。
【0046】
本発明の含油液状製剤用包装袋を用い、通常のラミネート包装用の充填機により、前記の含油液状製剤を収納したラミネート包装型製品を製造することができる。具体的には、例えば三方シール包装型製品では、三方シール包装充填機において前記ラミネートフィルムのシーラント層側がそれぞれ内側となるように二つ折りにして2辺を封止し、残った辺の開口部から含油液状製剤を注入した後この開口部を封止し、余剰のラミネートフィルムをカットすることにより製造し得る。また、四方シール包装型製品においても、四方シール包装充填機で前記ラミネートフィルムのシーラント層側をそれぞれ内側となるようにして3辺を封止し、残った辺の開口部から含油液状製剤を注入した後この開口部を封止し、余剰ラミネートフィルムをカットすることにより製造し得る。これらの他、スティック包装型製品も前記ラミネートフィルムのシーラント層側が内側となるようにラミネートフィルムを長さ方向(縦方向)に封止して筒体を形成し、下側の開口部を封止して上側開口部から含油液状製剤を注入した後この開口部を封止し、余剰ラミネートフィルムをカットする等の方法により製造し得る。これら三方シール、四方シール、スティック包装の各製造工程については、上記した他、始めに側辺の封止により筒体を形成し、この筒体に前記含油液状製剤を注入した後にこの筒体の上下を封止し、上下封止部をカットする方法を用いることも可能である。
【0047】
本発明の含油液状製剤用包装袋を用いたラミネート包装型製品は、上記したラミネート包装型製品に限定されず、その他にも、例えば前記含油液状製剤を収納し、全周囲を封止した不定形のラミネート包装型製品、ポート部を有する医薬品用注射剤容器、詰め替え液用パウチ容器、更には前記含油液状製剤を含浸または保有するシート等の支持体を収納する製品等、前記含油液状製剤を収納し、シーラント層を封止することにより密封する形態のラミネート包装型製品であれば、特に限定されない。なお、これらラミネートフィルムの封止方法は、特に限定されないが、熱封止、超音波封止、高周波封止等の手法が利用できる。
【0048】
かくして得られる本発明の含油液状製剤用包装袋は、油溶性紫外線吸収剤、油溶性ビタミン類等の極性油剤を、水を媒体として含有する透明ローション状、白濁ローション状などの液状組成物を充填しても極性油剤が吸着しないため、これを収納したラミネート包装型製品は、ガラス製の瓶に収納したものと同じ品質を維持することが可能なものである。
【0049】
従って、化粧品、医薬部外品、医薬品等の身体外用製剤を充填した簡易な製品として利用できるものである。特に、極性油剤である油溶性ビタミン類や油溶性紫外線吸収剤、トリグリセリドを配合し、かつ、外観や使用時の感触に価値が置かれるため透明な可溶化物や半透明ないし白濁状の乳化物として製品化されることの多い化粧品や医薬部外品において、本発明の効果を十分に享受することができる。
【実施例】
【0050】
次に実施例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例等に何ら制約されるものではない。
【0051】
実 施 例 1
シーラント層の吸着性試験:
内面に下記の樹脂のシーリング層を利用したラミネートフィルムを用い、通常のラミネート包装用充填機にて包装袋を作製したところ、何れも製品として問題のない範囲のヒートシール強さ(JIS Z 0238(1998)準拠試験法で、ヒートシール強さ(N/15mm)の値が6以上)であった。この包装袋の各々に下記の各種組成の液状組成物を収納して、経時での極性油剤の吸着程度を調べた。
【0052】
ラミネートフィルムは、基材層としてポリエチレンテレフタレート(厚さ12μm)およびアルミニウム箔(厚さ9μm)の積層体を、シーラント層樹脂として環状ポリオレフィン系樹脂(以下、COP1と略記する)、アモルファス−ポリエチレンテレフタレート(以下、A−PETと略記する)およびポリエチレン**(以下、PEと略記する)の各フィルム(厚さはそれぞれ30μm)を各々用い、基材と積層したものを用いた。
【0053】
また、収納する液状組成物の組成および製法は下記の通りであり、極性油剤としては、油溶性紫外線吸収剤であるp−メトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル(以下、MCOと略記する)、トリグリセリドであるトリ2−エチルヘキサン酸グリセリル(以下、GTOと略記する)および油溶性ビタミン類であるビタミンEアセテート(以下、VEAと略記する)をそれぞれ1種ずつ用い、各々について下記製法に従い液状組成物を調製した。
【0054】
* :ゼオノア1020R(日本ゼオン社製)(ガラス転移温度102℃)
** :直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)(無添加グレード、融点121℃)
なお、本発明において「融点」とは、JIS K7121(DSC)にて測定した融解ピーク温度の値をさす。
【0055】
(1)可溶化系液状組成物
<組成> (%)
(成分)
(1)極性油剤(MCO、GTOまたはVEA) 0.1
(2)非イオン性界面活性剤 0.5
(3)エタノール 15
(4)pH緩衝剤 0.06
(5)精製水 加えて100
+ ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(HLB13.5)
【0056】
<製法>
・成分(1)〜(3)を均一に混合・溶解し、成分(4)、(5)の混合・溶解物
に、撹拌しながら徐々に添加し、透明液状の可溶化物を調製した。
【0057】
(2)白濁系液状組成物:
<組成> (%)
(成分)
(1)極性油剤(GTOまたはVEA) 0.1
(2)非イオン性界面活性剤++ 0.01
(3)非イオン性界面活性剤+++ 0.03
(4)陰イオン性界面活性剤+++++ 0.02
(5)エタノール 15
(6)pH緩衝剤 0.06
(7)精製水 加えて100
++ モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(HLB15)
+++ セスキオレイン酸ソルビタン(HLB3.7)
+++++ ポリオキシエチレン(8)ジアルキル(C12−15)エーテルリン酸ナトリウム塩
【0058】
<製法>
・成分(1)〜(5)を均一に混合・溶解し、これを成分(6)、(7)の混合・溶
解物に、撹拌しながら徐々に添加し、水とほぼ同じ低粘度で半透明の白濁ローショ
ン状乳化物を調製した。
【0059】
得られた上記(1)の可溶化系液状組成物および上記(2)の白濁系液状組成物を上記各種の包装袋中に所定条件で保存した後、開封し、各極性油剤の残存率を求めた。また、(2)白濁系液状組成物については保存後の白濁度の残存率を求めた。(1)の可溶化系液状組成物の結果を表1に、(2)の白濁系液状組成物の結果を表2および表3に示す。
【0060】
(残存率測定方法)
上記(1)の可溶化系液状組成物については、保存前の試料(ブランク)および各種樹脂シーリング層のラミネートフィルム製包装袋中で40℃、15日間保存した各試料中の極性油剤の含有量を、上記(2)白濁系液状組成物については、保存前の試料(ブランク)および包装袋中で40℃、7日間保存した各試料中の極性油剤の含有量を測定し、保存後の各試料中における上記極性油剤の残存率(%)を求めた。
【0061】
定量分析は、p−メトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル(MCO)およびビタミンEアセテート(VEA)については高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用い、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル(GTO)についてはガスクロマトグラフィー(GC)を用いた。
【0062】
(白濁度残存率測定方法)
上記(2)の白濁系液状組成物について、保存前の試料(ブランク)および各種樹脂シーリング層のラミネートフィルム製包装袋中で40℃、7日間保存した各試料に対し、分光光度計を用いて光路長1cm(石英セル)による波長650nmの可視光の透過率(%)を求め、下記計算式に従って各試料の白濁度を求めた。これら白濁度の値から、保存後の各試料の白濁度残存率(%)を求めた。
【0063】
A=−log(T/100)
A:白濁度
T:透過率(%)
白濁度残存率(%)=100×A/A
:ブランクの白濁度
【0064】
( 結 果 )
<極性油剤残存率;可溶化系液状組成物(1)、40℃、15日間静置後>
【表1】

【0065】
<極性油剤残存率;白濁系液状組成物(2)、40℃、7日間静置後>
【表2】

【0066】
<白濁度残存率;白濁系液状組成物(2)、40℃、7日間静置後>
【表3】

【0067】
上記結果より、シーラント層としてガラス転移温度が102℃である環状ポリオレフィン系樹脂(COP1)を用いた本発明品の含油液状製剤用包装袋は、媒体である水、極性油剤および非イオン性界面活性剤を含有する可溶化型および白濁乳化型の液状組成物を収納しても、包装袋材料への吸着による液状組成物中の極性油剤含有量の減少がほとんどなく、極性油剤を含有する液状製剤用のラミネート包装袋として、優れた特性を有するものであった。一方、シーラント層として汎用のポリエチレン(PE)やA−PETを用いたラミネート包装袋に上記液状組成物を収納したものは、p−メトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリルおよびビタミンEアセテートの全ての極性油剤についてその上記液状組成物中における含有量の減少を防ぐことはできなかった。
【0068】
また、白濁乳化型の液状組成物については更に、シーラント層がCOP1である本発明品のラミネート包装袋に収納したものは、液状組成物中の極性油剤含有量だけでなく白濁度の減少もなく、変質を防ぐ効果が高いことが立証された。一方、シーラント層がPEであるラミネート包装袋では極性油剤含有量に加えて白濁度の減少も著しく、変質を防ぐ効果が劣るものであった。なお、上記結果より、本発明における白濁乳化型液状組成物の系では、極性油剤の含有量の変化と、白濁度の変化とがよく対応していることがわかった。
【0069】
実 施 例 2
環状ポリオレフィンのガラス転移温度の検討試験:
シーラント層樹脂として、実施例1の環状ポリオレフィン系樹脂COP1(ガラス転移温度102℃)およびそれと同組成でガラス転移温度が68℃および40℃の環状ポリオレフィン系樹脂(以下、それぞれCOP2、COP3と略記する)を用いたラミネートフィルムでラミネート包装袋を作製し、各々に極性油剤としてトリ2−エチルヘキサン酸グリセリル(GTO)を含有する実施例1の(2)白濁系液状組成物を収納し、試料とした。この試料について、加速試験として40℃、50℃で7日間保存後の白濁度を求めた。次に、保存前の試料をブランクとし、保存後の各試料の白濁度の残存率(%)を求め、環状ポリオレフィン系樹脂のガラス転移温度と残存率(%)との関係を求めた。結果を表4に示す。
【0070】
<環状ポリオレフィン系樹脂のガラス転移温度と、白濁度残存率との関係>
【表4】

【0071】
上記結果より、シーラント層として用いる環状ポリオレフィン系樹脂のガラス転移温度は、40℃であれば温度50℃、7日間の保存条件でも80%近くの白濁度残存率を示し、有効であることがわかった。また、上記表4のデータをグラフ化したものの外挿値として、環状ポリオレフィン系樹脂のガラス転移温度が65℃であれば、温度50℃、7日間の保存条件で90%程度の白濁度残存率に相当してより好ましく、更に、ガラス転移温度が80℃、特に100℃程度以上あれば50℃、7日間の保存条件でもほとんど白濁度残存率が減少せず、とりわけ好ましいものであることがわかった。
【0072】
実 施 例 3
ラミネート包装型含油液状製品(白濁系)の製造:
下記に示す白濁ローション状の液状組成物を調製し、これを、基材層がポリエチレンテレフタレート(厚さ12μm)、中間層がアルミニウム箔(厚さ9μm)、シーラント層がガラス転移温度102℃の環状ポリオレフィン系樹脂(実施例1のCOP1と同じ、厚さ30μm)であるラミネートフィルムより作製したラミネート包装袋に充填し、ラミネート包装型製品(白濁系)を製造した。
【0073】
<組成> (%)
(成分)
(1)トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル 0.2
(2)ビタミンEアセテート 0.1
(3)非イオン性界面活性剤++++ 0.1
(4)非イオン性界面活性剤++ 0.05
(5)非イオン性界面活性剤+++ 0.05
(6)エタノール 15
(7)pH緩衝剤 0.06
(8)精製水 加えて100
++++ ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(HLB14)
++ モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(HLB15)
+++ セスキオレイン酸ソルビタン(HLB3.7)
【0074】
<製法>
・成分(1)〜(6)を均一に混合・溶解し、これを成分(7)、(8)の混合・溶
解物に撹拌しながら徐々に添加して乳化し、白濁ローション状の液状組成物を調製
した。
【0075】
このものについて、40℃で15日間保存したものは、内容物の白濁ローション状乳化物の白濁度残存率が減少せず、安定性において優れた品質を有するものであった。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の含油液状製剤用包装袋およびこれに含油液状製剤を収納したラミネート包装型製品によれば、ラミネート包装袋への極性油剤の吸着を防ぐことができ、従来は難しかった極性油剤含有水性液を収納するラミネート包装型製品の通常シール装置による製造を可能とするものである。そして、極性油剤を含有する水性の液状組成物を収納・保存しても、ガラス製の瓶に収納したものと同様の品質を維持することが可能なものである。
【0077】
従って、化粧品、医薬部外品、医薬品等の身体外用製剤を収納した本製品はもとより、特に簡易な包装容器の製品として有利に利用でき、試供品や販促品、詰め替え品などとしても広く使用することができるものである。

以 上


【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体としての水と、極性油剤および非イオン性界面活性剤を含有する含油液状製剤を収納する包装袋であって、該包装袋は、環状ポリオレフィン系樹脂を主成分として含む樹脂をシーラント層とするラミネートフィルムで形成したことを特徴とする含油液状製剤用包装袋。
【請求項2】
シーラント層を形成する環状ポリオレフィン系樹脂が、ガラス転移温度が40〜200℃の範囲内にある環状ポリオレフィン系樹脂である請求項1記載の含油液状製剤用包装袋。
【請求項3】
前記環状ポリオレフィン系樹脂が、下記一般式(1)で示される化学構造を有する化合物である請求項1または2記載の含油液状製剤用包装袋。
【化1】

(式中、R、Rは互いに同一又は異種の炭素数1〜20の有機基を示し、互いに環を形成していてもよい。nは1以上の整数を示す。)
【請求項4】
含油液状製剤に含有される極性油剤が、IOB値(無機性/有機性バランス)の範囲が0.1〜1.0の油剤である請求項1ないし3の何れかの項記載の含油液状製剤用包装袋。
【請求項5】
含油液状製剤に含有される極性油剤が、油溶性ビタミン類、油溶性紫外線吸収剤またはトリグリセリドである請求項1ないし4の何れかの項記載の含油液状製剤用包装袋。
【請求項6】
含油液状製剤に含有される非イオン性界面活性剤が、HLB値6ないし15のものである請求項1ないし5の何れかの項記載の含油液状製剤用包装袋。
【請求項7】
含油液状製剤に含有される非イオン性界面活性剤が、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油またはポリオキシエチレン硬化ヒマシ油脂肪酸エステルである請求項1ないし6の何れかの項記載の含油液状製剤用包装袋。
【請求項8】
含油液状製剤が身体外用製剤である請求項1ないし7の何れかの項記載の含油液状製剤用包装袋。
【請求項9】
媒体としての水と、極性油剤および非イオン性界面活性剤を含有する含油液状製剤を、環状ポリオレフィン系樹脂を主成分として含む樹脂をシーラント層とするラミネートフィルムで形成する包装袋に収納したことを特徴とするラミネート包装型製品。
【請求項10】
含油液状製剤が、透明な可溶化物または半透明ないし白濁状の乳化物である請求項9記載のラミネート包装型製品。
【請求項11】
含油液状製剤が身体外用製剤である請求項9または10記載のラミネート包装型製品。
【請求項12】
化粧品または医薬部外品である請求項11記載のラミネート包装型製品。

【公開番号】特開2011−136734(P2011−136734A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−297711(P2009−297711)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(000145862)株式会社コーセー (734)
【出願人】(000224101)藤森工業株式会社 (292)
【Fターム(参考)】