説明

含浸の際の基体の色の変化を防止する方法

本発明は、最初にプライマー組成物を標的基体表面に施与し、このプライマー系を乾燥させかつ硬化させ、その際にこの基体表面が、それに施与された水の滴がそれらが基体中へ浸透する前に蒸発し、かつそれに同様に施与されかつ30秒間作用させたn−デカンの滴が、これらの滴がダークスポットを基体表面上に残すことなく除去されることができるように疎水性及び疎油性を獲得し、ついで含浸を実施することによって、多孔質の無機基体を含浸する際に基体の色の変化を防止する特別な方法に関する。さらに本発明は、含浸により建築物保護の場合に基体の色の変化を防止するためのプライマーとしての、フルオロアルキル−変性された及び/又はフルオロ官能性のアクリレート系又はフルオロアルキル−/アミノアルキル−/アルコキシ及び/又はヒドロキシ−官能性のシロキサン系又はフルオロアルキル−官能性のシラン及び/又はシロキサン系、又は前記の物質の少なくとも2つからなる混合物、又は水及び/又はアルコール中のそれらの溶液の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に建築物保護措置のための、基体増強効果(substrate intensification effects)、すなわち多孔質の無機基体を含浸する際の色の変化を防止する特別な方法に関する。
【0002】
油及び水を表面反発させるための、多孔質の鉱物質建築材料の含浸は当工業界において長く使用されてきており、かつこの主題はしばしば"手入れの簡単さ(easy to clean)"という用語で論じられる。より最近には汚れ、インキ及びペイントをはじくように作用する含浸も存在している。この活性は、慣用的に耐落書き効果(antigraffiti effect)とも呼ばれる。これらの含浸はそうすれば耐落書き含浸である。
【0003】
そのような耐落書き含浸の一例は、独国特許出願公開(DE-A)第199 55 047号明細書の例1から明らかである種類の生成物である。
【0004】
欧州特許出願公開(EP-A2)第1 193 302号明細書には、2段階で無機基体の手入れを簡単にする方法が教示され、その際に特に含浸組成物の最小限の消費、すなわち方法の経済性について強調されている。
【0005】
欧州特許出願公開(EP-A1)第1 358 946号明細書には、"エアレス"又は"HVLP"吹付け技術を使用することによる、多孔質の鉱物質基体の含浸方法が開示されている。
【0006】
鉱物質基体のはっ水及びはつ油の含浸のためには、フッ素化された樹脂系、例えばDuPontからの多様なZonylグレード又は他の製造者からの相応する製品、例えばWacker BS 28又はWacker BS 29も使用される。
【0007】
鉱物質基体の純粋にはっ水の処理のためには、液状シリコーン樹脂、シリコーン樹脂乳濁液又はシリコーン樹脂の溶液、例えばWacker BS 290又はGoldschmidt HL 100を使用することが一般的である。
【0008】
また、樹脂溶液又は樹脂乳濁液、例えばアクリレート樹脂、並びに前記で述べた含浸組成物からなる組合せ物も、鉱物質建築材料の表面を保護するために当工業界において使用される。
【0009】
これらの含浸の全てに共通する現象は、特にそれらが高い濃度で鉱物質表面に施工される場合に、処理された基体表面の、幾つかの場合に激しくかつ持続的な、色の深まり(deepening in color)をそれらの含浸がまねくことである。表面増強とも呼ばれるこの効果は、特に、建築物保護措置の一環として、ファサードの部材のみが保護されるべきである場合に、しばしば望ましくない。例えば建築物ファサードはしばしば落書きに対して2〜3mの高さまでのみ保護される。この理由のために前記の含浸組成物は、所望の効果、例えば落書きからの永久的な保護を得るか又は高めるために、高い濃度が望ましいという事実にもかかわらず、しばしば低い濃度で使用されるに過ぎない。永久的な耐落書き含浸の場合に、欧州特許出願公開(EP-A2)第1 193 302号明細書によれば、例えば、顕著な色の深まりは、未処理の基体と比較して処理された基体でしばしば明白である。
【0010】
故に、課題は、多孔質の無機基体を含浸する際に経験される色の変化を軽減する手段を提供することであった。
【0011】
挙げた課題は、本発明により特許請求の範囲に明記されるようにして達成される。
【0012】
故に、意外なことに、含浸の下方に有効なプライマー系が設置される場合に、含浸の有効性が付加的な段階により減少されることなく、上記で概説された色を深める効果が事実上又は完全にすら回避されることができることが見出された。有効なプライマーとして、その後に施与される含浸が基体中へ浸透するのを防止する物質が有利であることが判明している。言い換えれば、この下塗りは、本発明によれば、含浸組成物が施与される前に、このプライマー系が既に有効な疎水性及び疎油性を有するように実施されるべきである、それというのも含浸材料中の未硬化の活性物質は溶剤の性質も有するからである(低い表面張力を有する無極性液体)。故に、本方法の場合に、含浸が施与される前に、生じる疎水性及び疎油性の効果が、含浸組成物が基体中へ浸透するのを防止するのに十分であるような程度までプライマー系が硬化されなければならないことが適切に保証されなければならない。さらにプライマー組成物も、基体表面の色を変えないように適して選択されるべきである。
【0013】
付加的に、含浸組成物として希釈形で通常使用される多数の疎水化及び疎油化する物質がこのために有利に適していることが見出された。そのような物質は、特に、フルオロ官能性生成物、例えば−しかし排他的でなく−欧州特許出願公開(EP-A2)第0 846 716号明細書、欧州特許出願公開(EP-A2)第0 846 717号明細書、独国特許出願公開(DE-A)第199 55 047号明細書及び欧州特許出願公開(EP-A2)第1 193 302号明細書により開示される生成物を含む。
【0014】
本方法の場合に、そうして、プライマーとして、フルオロアルキルを有しているシロキサン又はシリコーン樹脂並びにフッ素化された樹脂系、例えば商標Zonyl(登録商標)シリーズ、特にZonyl(登録商標) 9361、225、210、9027、8740、321及び329からの製品、又は他の製造者からの相応する製品、例えばWacker BS 28又はBS 29を使用することが好ましい。これら全ての製品に共通することは、それらが、フルオロアルキル官能基を有し、かつ鉱物質基体の表面上に強い疎水性及び疎油性の効果を生じさせることができることである。
【0015】
従って本発明は、多孔質の無機基体を含浸する際に基体増強効果を防止する方法であって、最初に標的基体表面にプライマー組成物を施与し、このプライマー系を乾燥させかつ硬化させ、その際にこの基体表面が、それに施与された水の滴がそれらが基体中へ浸透する前に蒸発し、かつそれに同様に施与されかつ約30秒間作用させたn−デカンの滴が、これらの滴がダークスポットを基体表面上に残すことなく除去されることができるように疎水性及び疎油性を獲得し、ついで、含浸、特に手入れの簡単な含浸、例えば耐落書き含浸を従来的に実施することによって、多孔質の無機基体を含浸する際に基体増強効果を防止する方法を提供する。
【0016】
故に本発明の方法は、一般的に、水及び油、言い換えれば原則的には全ての液体をはじく特別で十分制御された下塗り又はシーリング系により、基体の当初の色、すなわち着色された外観が変わりうることがないか、又は受け入れることができる程度まででのみ変わりうるものであり、かつこうして、その後に施与される含浸組成物又は塗料組成物が、さもなければ付加的な、受け入れることができない色の深まりをまねきうる深くへの浸透について防止されるという有利な効果を有し、特に手入れの簡単な含浸組成物又は耐落書き含浸と呼ばれるものについては、例えば国際公開(WO)第92/21729号パンフレット、欧州特許出願公開(EP-A2)第0 846 716号明細書、欧州特許出願公開(EP-A2)第0 846 717号明細書、独国特許出願公開(DE-A)第199 55 047号明細書、欧州特許出願公開(EP-A2)第1 193 302号明細書、欧州特許出願公開(EP-A1)第1 358 946号明細書及び国際公開(WO)第88/10284号パンフレットを含む刊行物から明らかであるものである。前記の刊行物並びに以下に挙げられる刊行物の内容は、本明細書の開示内容の一環として全面的に明示的に考慮されるべきである。
【0017】
故に本発明の方法の場合に、以下に活性物質とも呼ばれる、少なくとも1つのフルオロ官能性成分を含有するプライマーを使用することが好ましい。
【0018】
少なくとも1つのフルオロアルキルシリル官能性成分を含有するプライマーが特に好ましい。
【0019】
特に有利には、少なくとも1つのフルオロアルキル官能性シラン及び少なくとも1つのアミノアルキル官能性シランからなる少なくとも1つの共縮合物を含有するか又は少なくとも1つのフルオロアルキル変性されたアクリレートポリマー及び/又は少なくとも1つのフルオロ官能性アクリルコポリマーを含有するプライマーが使用される。
【0020】
水ベース、アルコールベース又は水/アルコールベースのプライマーを使用することが適している。しかしながら前記のプライマーは濃縮された活性物質系として使用されることもできる。
【0021】
好ましい例として次のプライマー:Zonyl(登録商標) 321又はZonyl(登録商標) 329又はZonyl(登録商標) 8857、8867、8952、8740の水溶液又はZonyl(登録商標) 9027又はProtectosil(登録商標) Antigraffiti、Protectosil(登録商標) SC Concentrate、DYNASYLAN(登録商標) F 8815、DYNASYLAN(登録商標) F 8800、SIVOClear、DYNASYLAN(登録商標) F 8262又はDYNASYLAN(登録商標) F 8263、及び水及び/又はアルコール中又は前記系の少なくとも2つからなる混合物中のそれらの溶液をここでは挙げることができる。
【0022】
本発明の方法の場合に、0.5〜30質量%のフルオロ官能性活性物質の含量を有する、好ましくは1〜20質量%、より好ましくは3〜15質量%を有するプライマー組成物を使用することが適している。
【0023】
本発明の方法の場合に、プライマー組成物は好ましくは吹付け、はけ塗、ロール塗又はナイフ塗布により施与される。
【0024】
故にプライマー組成物は有利には25〜200g/m2の割合で施与され、その際に40〜150g/m2、より好ましくは50〜130g/m2、極めて好ましくは60〜110g/m2及び特に標的基体表面1m2当たりプライマー組成物70〜90gの割合が好ましい。
【0025】
さらに、本発明の方法の場合に、プライマー系が5〜40℃の温度で及び30%〜80%の相対大気湿度で乾燥及び硬化される場合が有利である。
【0026】
一般的に、本発明の方法の場合に、疎水化及び疎油化するプライマー系は、このプライマー系に施与された水及び/又はエタノールの滴がそれが蒸発する前に基体上にダークスポットを残さず、かつこのプライマー系に施与された油又は有機溶剤の滴が基体表面からビードとして、ダークパッチ又はスポットを残さずに、すなわち下塗り又はシールされた基体表面の色の変化なしに流れ落ちるように、選択されかつ実施される。はつ油テストに使用されるモデル物質は一般的にn−デカンである。
【0027】
本発明の方法の場合に好ましい含浸組成物は、製品Protectosil(登録商標) Antigraffiti又は類似のフルオロアルキル−/アミノアルキル−/アルコキシ−及び/又はヒドロキシ−官能性のシランコオリゴマー、あるいは活性物質としてフルオロアルキル−/アミノアルキル−/アルコキシ−及び/又はヒドロキシ−官能性のシランコオリゴマーを含有する、濃厚溶液もしくは水溶液もしくはアルコール性溶液又は水、所望の場合には有機又は無機の酸、例えばギ酸、酢酸又は塩酸及びアルコール、例えばメタノール、エタノール又はイソプロパノールを含有する溶液である。あるいは、本発明によれば有利には、含浸組成物として、幾つかの例のみを挙げるが、単量体フルオロアルキルアルコキシシラン、例えばトリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルトリメトキシシラン又はトリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルトリエトキシシラン、又は少なくとも1つのそのようなフルオロアルキルアルコキシシラン又はフルオロアルキルアルコキシシランの部分水解物又は少なくとも1つの相応するオリゴマーを含む水性又はアルコール性の製剤が使用されることができる。故に、例えば、欧州特許出願公開(EP-A2)第1 101 787号明細書の例1からの生成物は、好ましくは水で、1:2〜1:15の質量比で希釈される場合に、本発明によれば使用されることができる;しかしながら、他の使用濃度も選択されることができる。
【0028】
本発明の方法の場合に含浸組成物も、好ましくは吹付け、はけ塗、ロール塗又はナイフ塗布により施与される。
【0029】
前記組成物の吹付け施工のために特に適しているのは、エアレス又はHVLP法である;欧州特許出願公開(EP-A1)第1 358 946号明細書参照。これらの吹付け技術は、本発明の方法に関連して、前記プライマー組成物及び含浸組成物の双方の施与に有利に適している。
【0030】
本発明の方法の場合に、プライマー組成物としてZonyl(登録商標) 321、329又はZonyl(登録商標) 9027又は前記のZonyl(登録商標)グレードの少なくとも2つからなる混合物又は相応する水中に希釈された溶液及び含浸組成物としてProtectosil(登録商標) Antigraffiti、フルオロアルキル−/トリアミノアルキル−/アルコキシ−及び/又はヒドロキシ−官能性のシロキサン系を使用することが特に好ましい。
【0031】
従って、本発明はまた、含浸による建築物保護の場合に基体増強効果を防止するためのプライマー組成物としての、シリーズZonyl(登録商標) 321、Zonyl(登録商標) 329、Zonyl(登録商標) 8857、Zonyl(登録商標) 8867、Zonyl(登録商標) 8952、Zonyl(登録商標) 8740、Zonyl(登録商標) 9027(とりわけ米国特許(US)第5 798 415号明細書、欧州特許出願公開(EP-A1)第0 714 921号明細書参照)からのフルオロ官能性の又はフルオロアルキル変性されたアクリル樹脂並びにProtectosil(登録商標) Antigraffiti、Protectosil(登録商標) SC ConcentrateもしくはDYNASYLAN(登録商標) F 8815(欧州特許出願公開(EP-A2)第1 101 787号明細書参照)、DYNASYLAN(登録商標) F 8800(欧州特許出願公開(EP-A2)第0 846 716号明細書及び欧州特許出願公開(EP-A2)第0 846 717号明細書参照)、SIVOClear(独国特許出願(DE)第103 36 544.3号参照)、DYNASYLAN(登録商標) F 8262及びDYNASYLAN(登録商標) F 8263(欧州特許出願公開(EP-A2)第0 846 715号明細書及び欧州特許出願公開(EP-A2)第1 033 395号明細書参照)からなるシリーズからのフルオロアルキル−/アミノアルキル−/アルコキシ−及び/又はヒドロキシ−官能性のシロキサン系又はフルオロアルキル官能性のシラン及び/又はシロキサン系、又は前記の活性物質又は活性物質系の少なくとも2つからなる混合物、又は水及び/又はアルコール中のそれらの溶液の使用を提供する。
【0032】
概して言えば、本発明の方法は特殊な下塗り段階及び少なくとも1つのその後の含浸段階を含んでいる。この下塗りのためには、活性物質としてのフルオロ官能性化合物を含有する組成物を使用することが適しており、その際に標的基体に施与されたこのプライマー系は乾燥及び硬化後に疎水性及び疎油性の双方を有し、それにより基体中への含浸組成物の浸透に対して、ひいては色の望まれない変化に対して基体表面が保護されることを可能にする。故にこの特別なプライマー系は含浸の結果として感受性で多孔質の、すなわち、吸収性の基体の増強を有利に防止し、その際に標的基体の多孔度は一般的に0.5〜20体積%に達する。
【0033】
故にこのプライマーは一般的に疎水化及び疎油化する成分、すなわち活性物質、好ましくはフルオロアルキルシラン系、フルオロアルキル変性されたアクリレートポリマー溶液又はフッ素化されたアクリルコポリマーを含有する。前記のアクリレートをベースとする系は、例えばZonyl(登録商標) 321及び329の場合に、好ましくはアクリルコポリマーを含有し、かつ水ベース、アルコールベース及び/又は溶剤ベースであるカチオン性組成物である。
【0034】
さらに、そのような組成物の活性物質含量は、好ましくは0.5質量%〜30質量%、より好ましくは1質量%〜10質量%、極めて好ましくは2質量%〜8質量%及び特に3質量%〜5質量%である。そのような組成物は一般的に4〜10のpH、特に4.5〜6(酸性の系)又は7〜9(中性ないし僅かに塩基性の系)を有する。
【0035】
少なくとも1つのフルオロ官能性のアクリルポリマー又はアクリルコポリマーを含有する組成物は、例えば溶液、乳濁液又は分散液の形で、好ましくは高度に移動性を持った、液体からハチミツ状を経てペースト状までに達する性質を有していてよい。この場合に使用されることができるアルコールの例は、メタノール、エタノール及び/又はイソプロパノール−しかし排他的でなく−又は溶剤として、例えば、N−メチルピロリドンを含む。
【0036】
この含浸は好ましくは水溶性で及びフルオロアルキルシランをベースとする系からなる。他の含浸組成物も使用されることができるが、しかしながらそれらは前記プライマー系に施与されることができるという条件である。
【0037】
このプライマーの場合の色の深まりを回避するために、本発明の方法の場合に、=30質量%の活性物質濃度を有するプライマー組成物を使用することが適している。他方では、このプライマー系が十分に有効であることを保証するためには、本発明の方法の場合に使用されるプライマー組成物は=0.5質量%の活性物質濃度を有するべきである。
【0038】
さらに、本発明の方法の場合に、含浸が施与される前に、この含浸の深くへの、ひいては色を変える浸透を防止するために、このプライマー系が十分に硬化されていることが保証されるべきである。このプライマー系のための十分な硬化時間は一般的に、使用される活性物質濃度、温度及び大気湿度及び使用される活性物質の性質に依存する。故に本発明によれば、プライマーのためには有利には少なくとも4時間の、乾燥時間を含めた硬化時間が保証されるべきであり;適切にはこの時間は6時間、好ましくは8時間、より好ましくは16時間、極めて好ましくは1日間、特に32〜48時間であるが、しかしまた数日間から1週間までの期間が必要でありうる。硬化温度は好ましくは5〜60℃、より好ましくは10〜40℃であり、かつ特に屋外で支配される又は屋外で生じる相対大気湿度はできるだけ低い、すなわち好ましくは約0%〜90%、より好ましくは10%〜80%であるべきである。標的基体表面は、必要な場合には、付加的に加熱される又は均一に状態調節されることができる。目安として、より高い温度及びより低い大気湿度で作業する場合及び高い活性物質濃度が選択される場合に、硬化が比較的より迅速であることを示すことができる。
【0039】
好ましくはHVLP法による吹付けにより行われるこの含浸組成物の施与の前に、このプライマーは十分に硬化されていなければならない、言い換えれば、液体が基体の細孔系中へずっと深くに−すなわち、色を深める効果を有して−浸透することができないように、特に際立った疎水性だけでなく疎油性も有していなければならない。
【0040】
含浸組成物がプライマー系に施与されると直ちに、この含浸組成物は常法で乾燥されかつ同様に硬化されることができるが、その際に基体のいずれの変色も生じない。
【0041】
それゆえ本方法は一般的に、基体増強効果、すなわち、多孔質の無機基体の含浸の間の色の深まりの防止、特に保護されるべき基体、好ましくは多孔質の鉱物質基体、例えば、幾つかの例のみを挙げるが、建築物、建築物の部材、構造部材、建築材料、例えばコンクリート、れんが、天然石及び人工石、セラミック、ファイバーセメントボード及び鉱物質ファイバーボードの耐落書き含浸に有利に適している。
【0042】
本発明の方法の有利な特徴は、特に耐落書き含浸の場合に、含浸の耐久性及び耐候安定性に関連した性能特性に著しい影響を及ぼさないが、しかし含浸された基体の視覚的な外観が先行技術の方法と比較して実質的にかつ持続的に改善されることを可能にすることである。
【0043】
故に、基体の色の変化を事実上有さずかつ同時に高度に有効な方法で、相対的に高い濃度を有する含浸組成物を用いてでさえ、耐落書き含浸を実施することが目下可能である。
【0044】
本発明は以下の実施例により説明されるが、その技術主題に限定されるものではない。
【0045】
実施例
以下の例において使用される無機又は鉱物質の基体は赤いマイン(Main)砂岩である。この基体は増強効果に特に感受性であることが判明している。
【0046】
耐落書き性はフェルトペン(Edding 800)を用いて試験する。フェルトペンの線を、処理された基体に施与する。5分間の乾燥後に、フェルトペンの線をエタノール及び清浄吸収布を用いて除去することを試みる。基体中へ浸透したインキにより生じた影が後に残ることなく除去が完全である場合には、前記テストに成功して合格する。本実施例においてこのテストをフェルトペンテストと呼ぶ。
【0047】
色の深まり効果は視覚的に決定される。含浸の後に、基体が水で完全に湿潤されたかのように見える場合には、結果は"激しい色の深まり"と解される。
【0048】
含浸された基体が当初の基体から色の区別ができない場合には、結果は"色の深まりなし"である。
【0049】
色の深まり効果(含浸基体のより暗い色)がより近くで見た場合にのみ目に見える場合には、結果は"軽微な色の深まり"として示される。
【0050】
明らかな色の深まり効果が近い検査なしでかつ一見したところ認知できるが、しかし完全に湿潤された基体の場合よりもあまり著しく際立っていない場合には、結果は"色の深まり"と解される。
【0051】
液状含浸系及び液状プライマー系をHVLP吹付け法により施工する;欧州特許出願公開(EP-A1)第1 358 946号明細書参照。施工割合は基体の即時の示差秤量により決定され、かつg/m2で報告する。
【0052】
経時的にのみ明らかになる色の深まり効果を迅速に目に見えるようにするために、基体を、色の深まり効果を評価する前に60℃で16時間加熱する。目視評価は基体を冷却した後に行う。
【0053】
例1(比較例)
独国特許明細書(DE)第199 55 047号明細書の例1に相当する生成物を用いる耐落書き含浸(以下に、耐落書き含浸組成物又は耐落書き含浸、又は短くAGIとも呼ぶ):
このAGI生成物を、3つの連続する工程で吹付けることにより塗布する。第二及び第三の吹付け操作の直後に基体上に形成された微細な小滴を、ブラシを用いて広げて表面上に均一な液膜を形成させる。施工工程の間の乾燥時間はその都度約20℃の温度及び約50%の相対大気湿度で1/2時間である。第一工程の1/2時間後、第二工程の直前に水の滴を基体に施与する。これはダークスポットを残さずに蒸発する。基体に施与しかつ30秒間作用させたn−デカンの滴は明らかなダークスポットを残す。最終的な乾燥時間及び硬化時間は約60℃の温度で約16時間である。全製品消費は200g/m2になる。フェルトペンテストに合格する。含浸は基体上に色の深まりを生じさせる。
【0054】
例2(比較例)
Zonyl(登録商標) 9027(未希釈)を用いる含浸:
Zonyl(登録商標) 9027 (製造者: DuPont)製品を、3つの連続する工程で吹付けることにより施工する。施工工程の間の乾燥時間はその都度約20℃の温度及び約50%の相対大気湿度で1時間である。第二及び第三の吹付け操作の直後に、基体上に形成された微細な小滴を、ブラシを用いて広げて表面上に均一な液膜を形成させる。最終的な乾燥時間及び硬化時間は約60℃の温度で約16時間である。全製品消費は150g/m2になる。フェルトペンテストに合格する。含浸は基体上に激しい色の深まりを生じさせる。
【0055】
例3(比較例)
Zonyl(登録商標) 321(未希釈)を用いる含浸:
Zonyl(登録商標) 321(製造者:DuPont)製品を、3つの連続する工程で吹付けることにより施工する。施工工程の間の乾燥時間はその都度約20℃の温度及び約50%の相対大気湿度で1時間である。第二及び第三の吹付け操作の直後に、基体上に形成された微細な小滴を、ブラシを用いて広げて表面上に均一な液膜を形成させる。最終的な乾燥時間及び硬化時間は約60℃の温度で約16時間である。全製品消費は150g/m2になる。フェルトペンテストに合格する。含浸は基体上に激しい色の深まりを生じさせる。
【0056】
例4(比較例)
HL 100(シリコーン樹脂含浸、製造者:Goldschmidt)を用いる含浸:
HL 100を、約20℃の温度及び約50%の相対大気湿度で1工程で施工する。最終的な乾燥時間及び硬化時間は約60℃の温度で約16時間である。全製品消費は100g/m2になる。基体は強いはっ水効果を示す。しかしながらフェルトペンテストに合格しない。含浸は基体上に激しい色の深まりを生じさせる。
【0057】
例5(比較例)
Zonyl(登録商標) 329(希釈)を用いる下塗り、独国特許(DE)第199 55 047号明細書の例1に相当する生成物(AGI)を用いる含浸:
Zonyl(登録商標) 329 1質量部を水4質量部と混合し、この混合物を100g/m2で基体表面に吹付けることにより施与する。基体表面が乾燥した直後(施工の約1/2h後)に水の滴をこれに約20℃の温度及び約50%の相対大気湿度で施与する。水の滴は数分以内に基体中へ浸透し、その際にダークスポットが後に残る。その後直ちに未希釈のAGIを、2工程で100g/m2の全製品消費で吹付けることにより表面に施工する。施工工程の間に、基体表面上の微細な小滴を、ブラシを用いて広げて均一な液膜を形成させる。工程の間の乾燥時間は1/2時間である。最終的な乾燥時間及び硬化時間は約60℃の温度で約16時間である。フェルトペンテストに合格する。含浸は基体上に色の深まりを生じさせる。
【0058】
例6
Zonyl(登録商標) 329(希釈)を用いる下塗り及び凝結時間の拡大、すなわちAGI(未希釈)を用いる含浸の前のプライマー系の乾燥時間及び硬化時間の延長:
Zonyl(登録商標) 329 1質量部を水4質量部と混合し、この混合物を100g/m2で基体表面に吹付けることにより施与する。この基体を実験室中で約20℃の温度及び約50%の相対大気湿度で1日間貯蔵する。このプライマー系は基体上に軽微な色の深まりのみを生じさせる。水の滴を基体に施与する。これは基体中へ浸透せずに基体表面から完全に蒸発する(ダークスポットなし)。基体に施与しかつ30秒間作用させたn−デカンの滴は、ダークスポットを残さずに除去されることができる。その後未希釈のAGIを2工程で100g/m2の全製品消費で吹付けることにより表面に施工する。施工工程の間に、基体表面上の微細な小滴を、ブラシを用いて広げて均一な液膜を形成させる。工程の間の乾燥時間は1/2時間である。最終的な乾燥時間及び硬化時間は約60℃の温度で約16時間である。フェルトペンテストに合格する。含浸は基体上に軽微な色の深まりのみを生じさせる。
【0059】
例7
Zonyl(登録商標) 329(多く希釈)を用いる下塗り、AGI(未希釈)を用いる含浸、プライマー系の拡大された凝結時間:
Zonyl(登録商標) 329 1質量部を水19質量部と混合し、この混合物を100g/m2で基体表面に吹付けることにより施与する。この基体を実験室中で約20℃の温度及び約50%の相対大気湿度で1日間貯蔵する。このプライマー系は基体上に色の深まりを生じない。水の滴を基体に施与する。これは基体中へ浸透せずに基体表面から完全に蒸発する(ダークスポットなし)。基体に施与しかつ30秒間作用させたn−デカンの滴は、ダークスポットを残さずに除去されることができる。その後未希釈のAGIを2工程で100g/m2の全製品消費で吹付けることにより表面に施工する。施工工程の間に、基体表面上の微細な小滴を、ブラシを用いて広げて均一な液膜を形成させる。工程の間の乾燥時間は1/2時間である。最終的な乾燥時間及び硬化時間は約60℃の温度で約16時間である。フェルトペンテストに合格する。含浸は基体上に色の深まりを生じない。
【0060】
例8
Zonyl(登録商標) 329(希釈)を用いる下塗り、Goldschmidt HL 100(未希釈)を用いる含浸:
Zonyl(登録商標) 329 1質量部を水4質量部と混合し、この混合物を100g/m2で基体表面に吹付けることにより施与する。この基体を実験室中で約20℃の温度及び約50%の相対大気湿度で1日間貯蔵する。このプライマー系は基体上に軽微な色の深まりのみを生じさせる。水の滴を基体に施与する。これは基体中へ浸透せずに基体表面から完全に蒸発する(ダークスポットなし)。基体に施与しかつ30秒間作用させたn−デカンの滴は、ダークスポットを残さずに除去されることができる。その後HL 100を、1工程で吹付けることにより表面に施工し、約20℃の温度及び約50%の相対大気湿度で乾燥させる。最終的な乾燥時間及び硬化時間は約60℃の温度で約16時間である。この場合の製品消費は50g/m2である。この基体は強いはっ水効果を示す。しかしながらフェルトペンテストに合格しない、それというのもこの含浸はいずれのはつ油効果を示さず、かつこのプライマー系は希釈形でのその使用のために十分な耐落書き性に欠けるからである。この含浸は基体上に軽微な色の深まりのみを生じさせる。
【0061】
例9(比較例)
Goldschmidt HL 100(希釈)を用いる下塗り、未希釈のAGIを用いる含浸:
HL 100 1質量部をエタノール9質量部と混合する。この希釈溶液を基体の表面に吹付けることにより100g/m2の製品消費で施工する。約20℃の温度及び約50%の相対大気湿度での1週間の反応時間後に、基体表面に水の滴を施与する。この滴は基体中へ浸透せずに蒸発する。基体に施与したn−デカンの滴はこの基体中へ直ちに浸透する(疎油性なし)。その後未希釈のAGIを2工程で100g/m2の全製品消費で吹付けることにより表面に施工する。施工工程の間に、基体表面上の微細な小滴を、ブラシを用いて広げて均一な液膜を形成させる。施工工程の間の乾燥時間は1/2時間である。最終的な乾燥時間及び硬化時間は約60℃の温度で約16時間である。フェルトペンテストに合格する。含浸は基体上に色の深まりを生じさせる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質の無機基体を含浸する際に基体変色効果を防止する方法であって、最初に標的基体表面にプライマー組成物を施与し、このプライマー系を乾燥させかつ硬化させ、その際にこの基体表面が、それに施与された水の滴がそれが基体中へ浸透する前に蒸発し、かつそれに同様に施与されかつ30秒間作用させたn−デカンの滴が、これらの滴がダークスポットを基体表面上に残すことなく除去されることができるように疎水性及び疎油性を獲得し、ついで含浸を実施することによって、多孔質の無機基体を含浸する際に基体変色効果を防止する方法。
【請求項2】
少なくとも1つのフルオロ官能性成分を含有するプライマーを使用する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
少なくとも1つのフルオロアルキルシリル官能性成分を含有するプライマーを使用する、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1つのフルオロアルキル官能性シラン及び少なくとも1つのアミノアルキル官能性シランからなる少なくとも1つの共縮合物を含有するプライマーを使用する、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1つのフルオロアルキル変性されたアクリレートポリマーを含有するプライマーを使用する、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1つのフルオロ官能性アクリルコポリマーを含有するプライマーを使用する、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
濃縮された活性物質系又は水及び/又はアルコールで希釈された活性物質系をプライマーとして使用する、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
0.5質量%〜30質量%のフルオロ官能性活性物質の含量を有するプライマーを使用する、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
プライマーを吹付け、はけ塗、ロール塗又はナイフ塗布により施与する、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
プライマーを25〜200g/m2の割合で施与する、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
プライマー系を5〜60℃の温度及び0%〜90%の相対大気湿度で乾燥させかつ硬化させる、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
含浸を施与する前にプライマー系を少なくとも4時間、乾燥させかつ硬化させる、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
含浸組成物を吹付け、はけ塗、ロール塗又はナイフ塗布により施与する、請求項1から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
ここで使用される組成物の吹付けを、エアレス又はHVLP法により実施する、請求項1から13までのいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
請求項1から14までのいずれか1項記載の含浸により建築物保護の場合に基体変色効果を防止するためのプライマーとしての、フルオロアルキル−変性された及び/又はフルオロ官能性のアクリレート系又はフルオロアルキル−/アミノアルキル−/アルコキシ−及び/又はヒドロキシ−官能性のシロキサン系又はフルオロアルキル−官能性のシラン及び/又はシロキサン系、又は前記の物質の少なくとも2つからなる混合物、又は水、アルコール及び/又は溶剤中のそれらの溶液の使用。

【公表番号】特表2007−517756(P2007−517756A)
【公表日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−548190(P2006−548190)
【出願日】平成16年11月30日(2004.11.30)
【国際出願番号】PCT/EP2004/053176
【国際公開番号】WO2005/068401
【国際公開日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(501073862)デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Bennigsenplatz 1, D−40474 Duesseldorf, Germany
【Fターム(参考)】