説明

含硫カルボン酸エステル類の製造方法

【課題】多様化する付香製品の要望を満足することのできる、香気・香味付け用として有用な含硫カルボン酸エステル類の製造方法、該製法で製造されたエステル類を含有する香料組成物、及び付香製品を提供する。
【解決手段】酸触媒存在下、α,β−不飽和カルボン酸エステルとチオカルボン酸とを反応させることを特徴とする下記式(3)


(式中、Rは炭素数1〜10のアルキル基又は置換基を有していてもよいフェニル基(該置換基は炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基を表し、R及びRはそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数2〜10のアルケニル基を表すか、又はRとRとでアルキレン基を形成してもよい。波線はシス又はトランス配置のいずれかを表し、Rは炭素数1〜4のアルキル基を表す。)で表される含硫カルボン酸エステル類の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は香料成分として有用な含硫カルボン酸エステル類の製造方法及び該エステル類を用いた付香製品に関する。
【背景技術】
【0002】
含硫化合物は広く食品及び植物精油から見出されており、一般的に閾値が非常に小さく高濃度では不快臭として感じられるが、低濃度ではフルーティーノートをはじめ特徴ある香気を呈し、香気構成上重要な役割を果たすことが知られている。
【0003】
例えば特許文献1では、3−メルカプト酪酸エチルが香料物質として開示されている。特許文献2では、3−メルカプトヘキサン酸エチルが開示されている。さらに特許文献3では、4−チオアセトキシ酪酸エチルが開示されている。
【0004】
そのような含硫化合物を製造する方法としては、例えば非特許文献1にクロトン酸エチルとチオ酢酸を150℃にて終夜反応させて、収率54%で3−アセチルチオブタン酸エチルが得られることが記載されている。非特許文献2では、2−エチル−2−プロペン酸エチルとチオ酢酸(2当量)の反応を65℃にて36時間行っている。
【0005】
特許文献4では、2−メチル−2−プロペン酸エチルにチオ酢酸を付加することによる3−メルカプト−2−メチルプロピオン酸エチル及び3−アセチルチオ−2−メチルプロピオン酸エチルの合成が開示されている。特許文献1では、クロトン酸エチルと水硫化ナトリウムとの反応により得られるジスルフィドを還元することによりメルカプト基を有する化合物を製造している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許6878366号
【特許文献2】米国特許7105194号
【特許文献3】米国特許6899911号
【特許文献4】米国特許5565473号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Tetrahedron Assym., vol.5, issue 3, March, 1994,pp 403−410
【非特許文献2】J. Med. Chem., 1994,37,pp 1153−1164
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の方法では、高温又は長時間の反応が多く、反応基質の分解、低い収率等様々な問題点があった。本発明の目的は、多様化する付香製品の要望を満足することのできる、香気・香味付け用として有用な含硫カルボン酸エステル類の製造方法、該製法で製造されたエステル類を含有する香料組成物、及び付香製品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは前記の課題を解決するために検討を重ねた結果、酸触媒存在下で、α,β−不飽和カルボン酸エステルにチオカルボン酸を付加反応させることにより、一段階で短時間かつ高収率にて含硫カルボン酸エステル類が得られることを見出した。
【0010】
本発明は以下の内容を含むものである。
[1]酸触媒存在下、下記一般式(1)
【化1】

(式中、Rは炭素数1〜10のアルキル基又は置換基を有していてもよいフェニル基(該置換基は炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基である。)を表し、R及びRはそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数2〜10のアルケニル基を表すか、又はRとRとでアルキレン基を形成してもよい。波線はシス又はトランス配置のいずれかを表す。)
で表されるα,β−不飽和カルボン酸エステルと、下記一般式(2)
【化2】

(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基を表す。)
で表されるチオカルボン酸とを反応させることを特徴とする下記式(3)
【化3】

(式中、R、R、R及びRは前記と同一意味を表す。)
で表される含硫カルボン酸エステル類の製造方法。
[2]酸触媒が、パラトルエンスルホン酸(及びその水和物)、パラトルエンスルホン酸ピリジン塩、ナフタレンスルホン酸(及びその水和物)、メタンスルホン酸、カンファースルホン酸(及びその水和物)、硫酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、クロロ酢酸及び塩酸の中から選ばれる少なくとも1種を使用することを特徴とする前記[1]に記載の製造方法。
[3]前記[1]又は[2]に記載の方法で製造される一般式(3)
【化4】

(式中、Rは炭素数1〜10のアルキル基又は置換基を有していてもよいフェニル基(該置換基は炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基である。)を表し、R及びRはそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基を表すか、又はRとRとでアルキレン基を形成してもよい。Rは炭素数1〜4のアルキル基を表す。)
で表される含硫カルボン酸エステル類を、炭素数1〜10のアルコール中で、炭素数1〜10のアルカリ金属アルコキシド又は炭酸アルカリ金属塩を用いて脱アシル化することを特徴とする下記一般式(4)
【化5】

(式中、Rは炭素数1〜10のアルキル基又は置換基を有していてもよいフェニル基(該置換基は炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基である。)を表し、R及びRはそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基を表すか、又はRとRとでアルキレン基を形成してもよい。)
で表される3−メルカプトカルボン酸エステル類の製造方法。
[4]前記[1]乃至[3]に記載の方法で製造された、一般式(3)及び一般式(4)で表されるカルボン酸エステル類の少なくとも1種類以上を含むことを特徴とする香料組成物。
[5]前記[4]に記載の香料組成物を含有することを特徴とする飲食品、化粧品、洗剤、柔軟剤、芳香剤、消臭剤、入浴剤又は医薬品。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、優れた香気を有する含硫カルボン酸エステル類が収率及び純度よく得られる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明の方法において、一般式(1)、(3)及び(4)の化合物において、R、R及びRで表される基について説明する。Rは炭素数1〜10のアルキル基又は置換基を有していてもよいフェニル基(該置換基は炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基である。)を表し、R及びRはそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基を表すか、又はRとRとでアルキレン基を形成してもよい。
【0013】
、R及びRにおける炭素数1〜10のアルキル基としては、直鎖又は分岐もしくは環状のアルキル基が挙げられる。直鎖又は分岐のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、イソペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、1−エチルプロピル基、イソヘキシル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、2−エチルヘキシル基等が挙げられる。環状のアルキル基であるシクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が挙げられる。R及びRにおける炭素数2〜10のアルケニル基としては、直鎖又は分岐もしくは環状のアルケニル基が挙げられる。アルケニル基としては、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基等が挙げられ、該アルケニル基中の任意の箇所に二重結合を有してよい。
【0014】
における置換基を有していてもよいフェニル基の置換基としては、炭素数1〜4のアルキル基及びアルコキシ基である。具体的なアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基であり、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基である。
【0015】
とRとで形成してもよいアルキレン基としては、炭素数3〜14のアルキレン基が挙げられ、具体的には、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、デカメチレン基、ドデカメチレン基、トリデカメチレン基、ヘキサデカメチレン基等が挙げられる。これらアルキレン基は炭素数1〜4のアルキル基で、単数又は複数箇所置換されていてもよい。
【0016】
本発明の方法において用いられる、一般式(2)で表されるチオカルボン酸としては、炭素数2〜5のチオカルボン酸が挙げられ、一般式(2)中、Rにおける炭素数1〜4のアルキル基としては、直鎖又は分岐もしくは環状のアルキル基が挙げられる。直鎖又は分岐のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基が挙げられるが、チオカルボン酸としては、チオ酢酸が好ましい。チオカルボン酸の使用量は、原料であるα,β−不飽和カルボン酸エステルに対して、0.5〜20倍モルが好ましく、より好ましくは1〜5倍モルである。チオカルボン酸の使用量が多いほど反応時間が短縮されるが、反応の後処理との関係もあり、反応させる基質により適量が使用される。
【0017】
本発明に使用される酸触媒としては、硫酸及び塩酸等の無機酸、酢酸、トリフルオロ酢酸及びクロロ酢酸等の有機酸、及びパラトルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、カンファースルホン酸等のスルホン酸類が挙げられるが、この中でもスルホン酸類が好ましく、特にパラトルエンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸ピリジン塩が好ましい。これら上記した酸において水和物が存在し、該水和物も酸触媒として使用可能である。
【0018】
本発明は無溶媒又は溶媒を使用して行うことができる。使用される溶媒としては、本発明の製造法に悪影響を及ぼさないものであれば特に限定されないが、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、ヘキサン、ヘプタン、(置換)シクロヘキサン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、メチルtert-ブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル等が挙げられる。上記溶媒は、単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。溶媒の使用量は特に限定されないが、原料のα,β−不飽和カルボン酸エステル1質量部に対して、溶媒を0.1〜20質量部の割合で使用することが好ましく、より好ましくは0.5〜5質量部である。本発明の反応温度は本発明の製造法に悪影響を及ぼさないものであれば特に限定されないが、20〜200℃が好ましく、さらに好ましくは、40〜120℃である。また、反応時間は、0.5〜60時間で実施することができるが、3〜30時間が好ましく、1〜30時間で実施することが経済的にも好ましい。
【0019】
続いて、本発明の製造法である脱アシル化工程について説明する。上記のようにして得られる一般式(3)で表される含硫カルボン酸エステル類を、炭素数1〜10のアルコール中で、炭素数1〜10のアルカリ金属アルコキシドもしくは炭酸アルカリ金属塩を用いて脱アシル化することによって、上記一般式(4)で表される3−メルカプトカルボン酸エステル類を製造することができる。
【0020】
本発明の脱アシル化工程で溶媒として用いられるアルコール、及び脱アシル化助剤として用いられる金属アルコキシドとしては、前記Rの説明で述べた炭素数1〜10のアルキル基を有するものが挙げられるが、エステル交換反応が起こりうるため、脱アシル化しようとする3−アシルチオカルボン酸エステルのエステル残基と同じ骨格のアルコール及び金属アルコキシドを用いることが好ましい。具体的なアルコールとしては、例えば、エタノール等が挙げられる。具体的な金属アルコキシドとしては、例えば、ナトリウムエトキシド等が挙げられる。炭酸アルカリ金属塩としては、特に限定されないが、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム又は炭酸カルシウム等が挙げられる。前記アルコールの使用量は、適宜設定でき、特に限定されない。前記金属アルコキシドの使用量は、特に限定されないが、含硫カルボン酸エステル類に対して、好ましくは0.1〜5当量であり、より好ましくは0.5〜2当量である。
【0021】
脱アシル化の反応温度としては、特に限定されないが、−70〜100℃であり、好ましくは−30〜50℃である。また、反応時間は、0.5〜20時間で実施することが好ましく、0.5〜5時間で実施することがさらに好ましい。反応終了後の反応溶液から目的物を精製(単離)する方法には特に制限はないが、通常用いられる操作、例えば、抽出、蒸留、再結晶等の方法を用いることができる。
【実施例】
【0022】
以下に実施例を示し、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例により限定されるものではない。なお、純度等の分析はガスクロマトグラフィー(GC)で行った。分析に使用したカラムは以下の通りである。
キャピラリーカラム:TC−1(15m x 0.53mm)
カラム温度:50 → 250℃(10℃/分 昇温),
インジェクション温度:250℃ ,
ディテクター温度:250℃
【0023】
(実施例1)3−アセチルチオ−2−メチル酪酸エチルの合成
チグリン酸エチル51.27g(0.40mol)、チオ酢酸76.12g(1.00mol)及びパラトルエンスルホン酸7.60g(0.04mol)の混合物を、窒素気流下、75℃で24時間撹拌した。冷却後、反応液にジエチルエーテル及び飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて、有機層を分液後、飽和食塩水で2回洗浄した。有機層から溶媒を留去後、減圧蒸留(68℃〜71℃/2torr)を行い76.36gの目的物が得られた(GC純度:98.3%、収率:91.8%、ジアステレオマー比:80.9/19.1)。
【0024】
(実施例2〜8)
種々のα,β−不飽和カルボン酸エステルについて実施例1と同様の操作を行った結果を下記表1に示し、得られた含硫カルボン酸エステル類を下記式(3’)で示す。表中の純度はGC純度を表す。
【化6】

(3’)
(式中、Acはアセチル基を表し、R、R及びRは、それぞれ下記表1に記載の基又は水素原子を表す。)
【0025】
【表1】

(表中、Meはメチル基を表し、Etはエチル基を表し、i−Buはイソブチル基を表し、n−Prはn−プロピル基を表し、Phはフェニル基を表す。)
【0026】
(実施例9)3−メルカプト−2−メチル酪酸エチルの合成
窒素気流下、3−アセチルチオ−2−メチル酪酸エチル40.00g(0.192mol)及びエタノール800mlの混合物を、−15℃に冷却し、20%ナトリウムエトキシドのエタノール溶液72.01g(0.212mol、1.1当量)を1時間で滴下後、3時間攪拌した。酢酸15.00gを反応液に加え中和後、減圧下でエタノールを留去した。残渣に食塩水を加え、ジエチルエーテルで抽出し、得られた有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水(2回)の順で洗浄した。有機層から溶媒を留去後、減圧蒸留(35℃〜36℃/2torr)を行い17.63gの目的物を得た(GC純度:99.3%、収率:56.1%、ジアステレオマー比:80.6/19.4)。
【0027】
(実施例10〜16)
種々の3−アセチルチオカルボン酸エステルについて実施例9と同様の操作を行った結果を下記表2に示し、得られた3−メルカプトカルボン酸エステル類を下記式(4)で示す。表中の純度はGC純度を表す。
【化7】

(式中、R、R及びRは、それぞれ下記表2に記載の基又は水素原子を表す。)
【0028】
【表2】

(表中、Meはメチル基を表し、Etはエチル基を表し、i−Buはイソブチル基を表し、n−Prはn−プロピル基を表し、Phはフェニル基を表す。)
【0029】
(比較例)3−アセチルチオ−2−メチル酪酸エチルの合成(酸触媒なし)
チグリン酸エチル3.20g(0.025mol)及びチオ酢酸4.76g(0.0625mol)の混合物を、窒素気流下で85℃、24時間反応させた。その結果、チグリン酸エチルの転化率は35.3%、目的物の選択率は91.6%であった。
【0030】
(実施例17)香料組成物の調製
実施例9で合成した3−メルカプト−2−メチル酪酸エチルを、クエン酸トリエチル(TEC)にて0.01%に希釈して香料組成物を調製した。
【0031】
(実施例18)フローラル香料の調製
下記表3に示すように、実施例17の香料組成物を3重量%含有するフローラル香料100gを調製した。
【0032】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明により、香気・香味付け用として有用な含硫カルボン酸エステル類を収率及び純度よく得ることができ、該エステル類を含有する香料組成物、及び付香製品を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸触媒存在下、下記一般式(1)
【化1】

(式中、Rは炭素数1〜10のアルキル基又は置換基を有していてもよいフェニル基(該置換基は炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基である。)を表し、R及びRはそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数2〜10のアルケニル基を表すか、又はRとRとでアルキレン基を形成してもよい。波線はシス又はトランス配置のいずれかを表す。)
で表されるα,β−不飽和カルボン酸エステルと、下記一般式(2)
【化2】

(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基を表す。)
で表されるチオカルボン酸とを反応させることを特徴とする下記式(3)
【化3】

(式中、R、R、R及びRは前記と同一意味を表す。)
で表される含硫カルボン酸エステル類の製造方法。
【請求項2】
酸触媒が、パラトルエンスルホン酸(及びその水和物)、パラトルエンスルホン酸ピリジン塩、ナフタレンスルホン酸(及びその水和物)、メタンスルホン酸、カンファースルホン酸(及びその水和物)、硫酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、クロロ酢酸及び塩酸の中から選ばれる少なくとも1種を使用することを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の方法で製造される一般式(3)
【化4】

(式中、Rは炭素数1〜10のアルキル基又は置換基を有していてもよいフェニル基(該置換基は炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基である。)を表し、R及びRはそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基を表すか、又はRとRとでアルキレン基を形成してもよい。Rは炭素数1〜4のアルキル基を表す。)
で表される含硫カルボン酸エステル類を、炭素数1〜10のアルコール中で、炭素数1〜10のアルカリ金属アルコキシド又は炭酸アルカリ金属塩を用いて脱アシル化することを特徴とする下記一般式(4)
【化5】

(式中、Rは炭素数1〜10のアルキル基又は置換基を有していてもよいフェニル基(該置換基は炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基である。)を表し、R及びRはそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基を表すか、又はRとRとでアルキレン基を形成してもよい。)
で表される3−メルカプトカルボン酸エステル類の製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3に記載の方法で製造された、一般式(3)及び一般式(4)で表されるカルボン酸エステル類の少なくとも1種類以上を含むことを特徴とする香料組成物。
【請求項5】
請求項4に記載の香料組成物を含有することを特徴とする飲食品、化粧品、洗剤、柔軟剤、芳香剤、消臭剤、入浴剤又は医薬品。

【公開番号】特開2011−236185(P2011−236185A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−111483(P2010−111483)
【出願日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【出願人】(000169466)高砂香料工業株式会社 (194)
【Fターム(参考)】