説明

含窒素化合物の製造方法

【課題】クロムを含有しない触媒を用いて、副生成物の少ない高純度の脂肪族第3級アミンを、生産性よく経済的に有利に製造する方法を提供する。
【解決手段】銅及びマグネシウムを、質量比(マグネシウム/銅)0.01〜20の割合で含有する触媒の存在下、アミド化合物を還元する、一般式(II) で表される第3級アミンの製造方法。


(式中、R1は炭素数5〜23の直鎖又は分岐鎖の脂肪族炭化水素基、R2及びR3は各々炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は含窒素化合物の製造方法に関し、特に、第3級アミンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
脂肪族第3級アミンは、繊維柔軟仕上げ剤、帯電防止剤、ガソリン添加剤、シャンプー、リンス、殺菌剤、洗浄剤などの重要な中間体であり、家庭用、工業用分野において幅広い用途に用いられている。
脂肪族第3級アミンの製造方法として、安価で再生可能な脂肪酸から得られるアミド化合物を原料とするアミド還元法が知られている。このアミド還元法として、これまで銅−クロム系の触媒、貴金属系の触媒等を用いる方法が知られており、例えば、特許文献1には貴金属系触媒を用いる方法が開示されているが、この方法はいずれも溶媒を使用するため生産性が劣る。特許文献2においてはパラジウム-レニウム触媒にゼオライトを物理添加することにより脱水効率を高め反応性の改善を試みているが、この方法においても、依然として高い反応圧力を要する。また、特許文献3には銅-クロム触媒を用いる方法が開示されているが、この方法も反応圧力が高く設備負荷が大きい。特許文献4にはマンガンを銅-クロム系触媒に添加することにより耐久性を向上させることが開示されているが、この場合も、高い反応圧力と大過剰の水素流通量を要する。特許文献5には、水素化触媒を用いてアミドを還元する方法が開示されており、その水素化触媒の好ましいものとして銅-クロム系触媒が挙げられている。しかしながら、これらの触媒は、廃処理時における安全性など取扱いに充分な注意が必要で、脱クロム触媒の開発が望まれている。
クロムを含有しない銅系触媒として、特許文献6に銅-亜鉛、銅-亜鉛-ルテニウム又は銅-ニッケル-ルテニウム触媒を用いる方法が開示されているが、この方法では、反応選択性が満足し得るものではなかった。
【0003】
【特許文献1】特開平9-241222号公報
【特許文献2】特開昭63-255253号公報
【特許文献3】ドイツ特許公開第1493839号公報
【特許文献4】米国特許第5075505号明細書
【特許文献5】米国特許公開2006−287556号公報
【特許文献6】特開2001-302596号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、クロムを含有しない触媒を用いて、副生成物の少ない高純度の脂肪族第3級アミンを、高い生産性で経済的に有利に製造する方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、銅及びマグネシウムを、質量比(マグネシウム/銅)0.01〜20の割合で含有する触媒の存在下、一般式(I)
【0006】
【化1】

【0007】
(式中、R1は炭素数5〜23の直鎖の又は分岐鎖の脂肪族炭化水素基、R2及びR3は各々炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を示し、これらは同一又は異なっていてもよい。)
で表されるアミド化合物を還元する、一般式(II)
【0008】
【化2】

【0009】
(式中、R1 、R2及びR3は、いずれも前記と同じ意味を示す。)
で表される第3級アミンの製造方法、に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の方法によれば、アミド化合物を温和な条件で還元し、副生成物の少ない高純度の脂肪族第3級アミンを、高い生産性で経済的に有利に製造することができ、またクロムを含有しない触媒を使用するため、使用済み触媒の廃処理における安全性に優れるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、触媒の存在下、下記一般式(I)で表されるアミド化合物を還元して、下記一般式(II)で表される第3級アミンを製造する。
【化3】

【0012】
(式中、R1は炭素数5〜23の直鎖の又は分岐鎖の脂肪族炭化水素基、R2及びR3は各々炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を示し、これらは同一又は異なっていてもよい。)
【0013】
【化4】

(式中、R1 、R2及びR3は、いずれも前記と同じ意味を示す。)
【0014】
前記一般式(I)及び(II)の各々において、R1は炭素数5〜23の直鎖の若しくは分岐鎖の脂肪族炭化水素基を示す。該脂肪族炭化水素基は飽和、不飽和のいずれであってもよい。なお、分岐鎖の脂肪族炭化水素基には脂環式基も包含する。
一般式(I)及び(II)の各々において、このR1としては、例えば、各種ヘキシル基、各種ヘプチル基、各種オクチル基、各種ノニル基、各種デシル基、各種ウンデシル基、各種ドデシル基、各種トリデシル基、各種テトラデシル基、各種ペンタデシル基、各種ヘキサデシル基、各種ヘプタデシル基、各種オクタデシル基、各種ノナデシル基、各種エイコサニル基、各種ヘンエイコサニル基、各種ドコサニル基、各種トリコサニル基、各種テトラコサニル基、各種ヘプテニル基、各種オクテニル基、各種ノネニル基、各種デセニル基、各種ウンデセニル基、各種ドデセニル基、各種トリデセニル基、各種テトラデセニル基、各種ペンタデセニル基、各種ヘキサデセニル基、各種ヘプタデセニル基、各種オクタデセニル基、各種ノナデセニル基、各種イコセニル基、各種ドコセニル基等を挙げることができる。
【0015】
これらの中では、得られる第3級アミンの有用性の観点から、炭素数が5〜21の直鎖の若しくは分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基が好ましく、より好ましくは、各種ペンチル基、各種ヘプチル基、各種ノニル基、各種ウンデシル基、各種トリデシル基、各種ペンタデシル基、各種ヘプタデシル基、各種ノナデシル基、各種ヘンエイコサニル基、各種ヘプテニル基、各種ノネニル基、各種ウンデセニル基、各種トリデセニル基、各種ペンタデセニル基、各種ヘプタデセニル基、各種ノナデセニル基、各種ヘンエイコセニル基である。ここで、「各種」とは上記直鎖の若しくは分岐鎖のものをいずれも含むことを示す。
【0016】
前記一般式(I)及び(II)において、R2及びR3は、それぞれ独立に炭素数1〜6の直鎖の若しくは分岐鎖のアルキル基を示す。なお、分岐鎖のアルキル基には、環状のアルキル基も包含する。このR2及びR3の各々としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などを挙げることができるが、これらの中では得られる第3級アミンの有用性の観点から、炭素数1〜4の直鎖のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基又は、プロピル基がより好ましい。
なお、前記R2及びR3は、たがいに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0017】
前記一般式(I)で表されるアミド化合物としては、例えば、N,N−ジメチルカプリルアミド、N,N−ジメチル2−エチルヘキサンアミド、N,N−ジメチルカプリンアミド、N,N−ジメチルラウロイルアミド、N,N−ジメチルミリストイルアミド、N,N−ジメチルパルミトイルアミド、N,N−ジメチルステアロイルアミド、N,N−ジメチルイソステアロイルアミド、N,N−ジメチルオレイルアミド、N,N−ジメチルベヘニルアミドなどのN,N−ジメチル脂肪酸アミド、これらの脂肪酸アミドのN,N−ジメチルをN,N−ジエチル、N,N−ジプロピル、N−エチル−N−メチル、N−メチル−N−プロピル又はN−エチル−N−プロピルに置き換えた化合物などを挙げることができる。これらのうち、第3級アミンの有用性の観点から、N,N−ジメチル、N,N−ジエチル、又はN−エチル−N−メチルの炭素数8〜22の脂肪酸アミドが好ましく用いられる。
【0018】
一方、前記一般式(II)で表される第3級アミンとしては、前記一般式(I)で表わされる化合物として例示したアミド化合物に対応する化合物が挙げられ、該化合物としては、N,N−ジメチルオクチルアミン、N,N−ジメチル2−エチルヘキシルアミン、N,N−ジメチルデシルアミン、N,N−ジメチルラウリルアミン、N,N−ジメチルミリスチルアミン、N,N−ジメチルヘキサデシルアミン、N,N−ジメチルステアリルアミン、N,N−ジメチルイソステアリルアミン、N,N−ジメチルオレイルアミン、N,N−ジメチルベヘニルアミンなどのN,N−ジメチル脂肪族アミン、これらの脂肪族アミンのN,N−ジメチルをN,N−ジエチル、N,N−ジプロピル、N−メチル−N−プロピル、N−エチル−N−メチル、N−メチル−N−プロピル又はN−エチル−N−プロピルに置き換えた化合物などを挙げることができる。これらのうち、前記好ましいものとして挙げられたアミド化合物に対応する第3級アミンが好ましく用いられる。
【0019】
上記本発明の製造方法に用いられる触媒は、銅とマグネシウムを、質量比(マグネシウム/銅)0.01〜20の割合で含有する触媒である。当該触媒の好ましい態様としては、触媒の活性及び選択性の観点から、例えば、マグネシア、マグネシウムを含有するハイドロタルサイト、シリカ−マグネシア、マグネシア−アルミナなどのマグネシウムを含有する金属酸化物を担体とした担持銅又は担持銅―マグネシウム触媒、或いはシリカ、アルミナ、ゼオライト、珪藻土、チタニア、ジルコニア、活性炭などを担体とした担持銅―マグネシウム触媒などが好ましく挙げられる。これら触媒の中では、シリカ、アルミナ、ゼオライト又は珪藻土を担体とする担持銅−マグネシウム触媒、或いはマグネシウム含有金属酸化物を担体とする担持銅又は担持銅―マグネシウム触媒がより好ましい。上記触媒は、単独でも使用できるが、二種以上組み合わせて使用することもできる。
【0020】
また、本発明においては、更に助触媒として、周期律表第VIII族金属元素、カルシウム、バリウム、亜鉛等を含有する触媒を用いることができる。これらの助触媒のうち、触媒の活性及び選択性の観点から、カルシウム、バリウム、亜鉛、パラジウムが好ましく用いられる。これらの助触媒は1種で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。また、これらの助触媒は好ましくは前記の銅及びマグネシウムを含有する触媒中に含有させても良く、また、これらの助触媒を含有する別個の触媒として上記銅及びマグネシウムを含有する触媒と共に混合して用いてもよい。
【0021】
本発明の触媒中における銅に対するマグネシウムの割合(マグネシウム/銅)は、触媒の活性及び選択性の観点から、質量比で0.01〜20、好ましくは0.03〜15、より好ましくは0.05〜10、より好ましくは0.05〜5であり、より好ましくは0.05〜1であり、更に好ましくは0.1〜1.0である。また、銅に対する前記助触媒の割合(助触媒/銅)は、触媒の活性及び選択性の観点から、質量比で0.0005〜0.5であることが好ましく、0.001〜0.3であることがより好ましい。また、触媒中の銅の含有量は、触媒活性の観点から、銅金属として、好ましくは5〜70質量%、より好ましくは10〜60質量%、更に好ましくは15〜55質量%である。
【0022】
本発明においては、触媒中の構成元素の含有量は、例えば、以下の手順に従って測定することができる。
試料0.1gを専用分解容器に採取する。硫酸2mlを加えて加熱し、そこに更に過酸化水素及び硝酸を適宜加えて再度加熱する。この繰り返し操作を溶液が透明になるまで行う。冷却後、メスフラスコに入れ替えて純水で50mlにメスアップする。この溶液をICP発光分析により測定する。
本発明の触媒の調製方法については特に制限はなく、従来公知の方法、例えば含浸法、沈殿法、イオン交換法などを、担体の種類に応じて適宣選択することができる。
【0023】
本発明の当該触媒は、例えば以下のようにして調製することができる。
前記各金属の硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、塩化物、アンミン錯体等を含有する水溶液と、必要により担体とを混合し、その懸濁溶液にナトリウム、カリウム等の水酸化物、炭酸塩等を含有するアルカリ水溶液を滴下して沈殿物を得て、この沈殿物を、濾過、遠心分離等の方法で固液分離を行う。次いで、得られた固形分をイオン交換水で水洗後、乾燥させ、好ましくは空気流通下で300〜1000℃、より好ましくは400〜800℃の温度で焼成処理することにより、金属酸化物として得ることができる。
このようにして得た触媒は、従来の銅−クロム触媒と同等以上の性能を発現するため、当該触媒を用いることによって、前記一般式(II)で表される温和な条件でアミド化合物を還元させることができる。
【0024】
本発明の第3級アミンの製造方法においては、前記のようにして調製された触媒の存在下に、前記一般式(I)で表されるアミド化合物を好ましくは水素還元などにより還元する。この還元反応は、水素雰囲気下、常圧又は水素加圧下で、また水素流通下、常圧又は加圧下で実施することができる。反応形式は、連続式、回分式のいずれであってもよく、回分式の場合、触媒の使用量は、反応性、副生成物抑制及び製造コスト低減などの観点から、原料のアミド化合物に対して、好ましくは0.01〜20質量%、より好ましくは0.05〜20質量%、更に好ましくは0.1〜15質量%である。反応温度は、反応性及び副生成物抑制などの観点から、好ましくは140〜300℃、より好ましくは160〜270℃である。
【0025】
また、反応圧力は、反応性及び設備負荷低減などの観点から、ゲージ圧として、通常常圧乃至25MPaG程度、好ましくは0.1〜5.0MPaG、より好ましくは0.1〜3.0MPaG、更に好ましくは0.1〜2.5MPaGである。また、反応性及び副生成物抑制などの観点から、水素流通下で実施することが好ましく、その流通量は原料アミドに対して好ましくは毎時0.1〜10.0倍モル、より好ましくは毎時0.1〜5.0倍モルである。
【0026】
また、本発明の水素還元反応で得られた反応生成物の組成分析はガスクロマトグラフィーを使用して測定することができる。
このようにして、前記一般式(I)で表されるアミド化合物を温和な条件で水素還元することにより、副生成物が少ない高純度の前記一般式(II)で表される第3級アミンを生産性よく、経済的に有利に製造することができる。
【実施例】
【0027】
以下に本発明について実施例を挙げて更に具体的に説明する。
調製例1
セパラブルフラスコに硝酸銅三水和物100gと硝酸マグネシウム六水和物69gを仕込み、2Lのイオン交換水に溶解した後、攪拌しながら50℃まで昇温した。その溶液に合成ゼオライト(東ソー(株)製ゼオラムF−9)33gを加えて90℃まで昇温し、724gの10%炭酸ナトリウム水溶液を1時間滴下した後、1時間熟成した。得られた懸濁溶液を冷却して濾過・水洗を行い、110℃で一昼夜乾燥した後、600℃で1時間焼成した。得られた金属酸化物は、各金属原子の質量比がマグネシウム/銅で0.25であり、触媒中の銅含有量が34質量%であった。
【0028】
調製例2
セパラブルフラスコに酸化マグネシウム(協和化学工業(株)製キョーワマグ150)33gを仕込み、1Lのイオン交換水に懸濁させた後、攪拌しながら90℃まで昇温した。その溶液に硝酸銅三水和物100gを500mlのイオン交換水に溶解した水溶液と、440gの10%炭酸ナトリウム水溶液を1時間同時滴下した後、1時間熟成した。得られた懸濁溶液を冷却して濾過・水洗を行い、110℃で一昼夜乾燥した後、450℃で3時間焼成した。得られた金属酸化物は、各金属原子の質量比がマグネシウム/銅で0.76であり、触媒中の銅含有量は40質量%であった。
【0029】
調製例3
調製例2において、硝酸銅三水和物100gに加え、塩化パラジウム0.108gを用い、600℃で1時間焼成した以外は調製例2と同様の操作を行い、各金属の質量比が、マグネシウム/銅で0.76、パラジウム/銅で0.0024であり、触媒中の銅含有量が40質量%であるマグネシア担持銅−パラジウム触媒を得た。
【0030】
調製例4
調製例2において、硝酸銅三水和物100gに加え、硝酸亜鉛六水和物0.296gを用い、600℃で1時間焼成した以外は調製例2と同様の操作を行い、各金属の質量比が、マグネシウム/銅で0.76、亜鉛/銅で0.0025であり、触媒中の銅含有量が40質量%であるマグネシア担持銅−亜鉛触媒を得た。
【0031】
調製例5
調製例2において、硝酸銅三水和物100gに加え、硝酸カルシウム四水和物0.388gを用い、600℃で1時間焼成した以外は調製例2と同様の操作を行い、各金属の質量比が、マグネシウム/銅で0.76、カルシウム/銅で0.0025であり、触媒中の銅含有量が40質量%であるマグネシア担持銅−カルシウム触媒を得た。
【0032】
調製例6
調製例5において、硝酸カルシウム四水和物に代えて硝酸バリウム12.4gを用い、アルカリ剤として10%炭酸ナトリウム水溶液を724g用いる以外は調製例5と同様の操作を行い、各金属の質量比が、マグネシウム/銅で0.76、バリウム/銅で0.25であり、触媒中の銅含有量が36質量%であるマグネシア担持銅−バリウム触媒を得た。
【0033】
調製例7
調製例1において、硝酸銅三水和物100g、硝酸マグネシウム六水和物34.5gを用い、担体としてMg4.5Al12(OH)13CO3・3.5H2Oで表わされる合成ハイドロタルサイト(協和化学工業製キョーワード1000)33gを用いる以外は調製例1と同様の操作を行い、得られた金属酸化物は各金属の質量比が、マグネシウム/銅で0.30であり、触媒中の銅含有量が37質量%であった。
【0034】
調製例8
セパラブルフラスコに440gの10%炭酸ナトリウム水溶液と酸化マグネシウム(市販品:キシダ化学)33gを仕込み、1.5Lのイオン交換水に懸濁させた後、攪拌しながら90℃まで昇温した。その溶液に硝酸銅三水和物100gを1時間かけて滴下した後、1時間熟成した。得られた懸濁溶液を冷却して濾過・水洗を行い、110℃で一昼夜乾燥した後、450℃で3時間焼成した。得られた金属酸化物は、各金属原子の質量比がマグネシウム/銅で0.76であり、触媒中の銅含有量は40質量%であった。
【0035】
調製例9
硝酸銅三水和物100gと硝酸マグネシウム六水和物15gを仕込み、2Lのイオン交換水に溶解した後、攪拌しながら50℃まで昇温した。その溶液に合成ゼオライト(東ソー(株)製ゼオラムF−9)33gを加えて90℃まで昇温し、724gの10%炭酸ナトリウム水溶液を1時間滴下した後、1時間熟成した。得られた懸濁溶液を冷却して濾過・水洗を行い、110℃で一昼夜乾燥した後、600℃で1時間焼成した。得られた金属酸化物は、各金属原子の質量比がマグネシウム/銅で0.05であり、触媒中の銅含有量が38質量%であった。
【0036】
調製例10
調製例1において、合成ゼオライトに代えて、シリカ(富士シリシア化学(株)社製 CARiACT Q-3)を用いた以外は調製例1と同様の操作を行い、各金属原子の質量比がマグネシウム/銅で0.25であり、触媒中の銅含有量が34質量%であった。
【0037】
調製例11
調製例1において、合成ゼオライトに代えて、アルミナ(水澤化学社製活性アルミナMGA)を用いた以外は調製例1と同様の操作を行い、各金属原子の質量比がマグネシウム/銅で0.25であり、触媒中の銅含有量が34質量%であった。
【0038】
調製比較例1
比較触媒を、特開2001-302596号公報の調製例2に記載の手順に従い、更に450℃で3時間焼成して、各金属原子の質量比が、亜鉛/銅で0.25であり、触媒中の銅含有量が35質量%であるゼオライト担持銅-亜鉛触媒を得た。
【0039】
調製比較例2
調製比較例1において、600℃で1時間焼成した以外は調製比較例1と同様の操作を行い、各金属原子の質量比が、亜鉛/銅で0.25であり、触媒中の銅含有量が35質量%であるゼオライト担持銅-亜鉛触媒を得た。
【0040】
実施例1
回転式オートクレーブに、N,N−ジメチルラウロイルアミド300g、調製例1で調製した触媒5質量%(対原料アミド化合物)を仕込み、窒素置換後、水素を導入し0.5MPaGまで昇圧した。その後0.5MPaGの圧力を維持しながら、40L/h(毎時1.35倍モル対原料アミド化合物)の速度で水素を反応系内に導入した。その後250℃まで昇温し、水素還元反応を6時間行った。得られた反応生成物は触媒を濾別した後、ガスクロマトグラフィーで組成分析を行った。反応生成物の組成を表1に示す。
【0041】
実施例2及び比較例1、2
実施例1において、調製例1の触媒に代えて調製例2又は比較調製例1、2の触媒を用いた以外は実施例1と同様の操作を行った。反応生成物の組成を表1に示す。
【0042】
【表1】

【0043】
実施例3〜11及び比較例3、4
実施例1において、調製例1の触媒の代わりに調製例3〜11及び比較調製例1、2の各々の触媒を用いて、反応圧力を1.5MPaGで維持しながら、水素還元反応を表2に示した時間で行った以外は実施例1と同様の操作を行った。得られた反応生成物は触媒を濾別した後、ガスクロマトグラフィーで組成分析を行った。反応生成物の組成を表2に示す。
【0044】
【表2】

【0045】
実施例12
実施例1において、調製例1の触媒に代えて調製例7の触媒を用いて、反応圧力を1.5MPaGを維持しながら、20L/h(毎時0.68倍モル対原料アミド)の速度で水素を反応系内に導入した以外は実施例1と同様の操作を行った。得られた反応生成物は触媒を濾別した後、ガスクロマトグラフィーで組成分析を行った。アミド転化率は90.1%で、反応生成物はジメチルラウリルアミン79.5%、ジラウリルモノメチルアミン4.6%、ラウリルアルコール4.6%であった。
【0046】
実施例13
実施例12において、反応を9時間行うと、原料アミドがガスクロマトグラフィーで検出限界以下になった。そのとき得られた反応生成物はジメチルラウリルアミン86.5%、ジラウリルモノメチルアミン6.6%、ラウリルアルコール5.4%であった。
【0047】
実施例14
実施例12において、調製例7の触媒3質量%(対原料アミド化合物)を仕込み、40L/h(毎時1.35倍モル対原料アミド)の速度で水素を反応系内に導入して水素還元反応を9時間行った以外は実施例12と同様の操作を行った。得られた反応生成物は触媒を濾別した後、ガスクロマトグラフィーで組成分析を行った。アミド転化率は93.0%で、反応生成物はジメチルラウリルアミン79.9%、ジラウリルモノメチルアミン3.2%、ラウリルアルコール8.1%であった。
【0048】
実施例15
実施例1において、N,N−ジメチルラウロイルアミドに代えてN,N−ジメチルステアロイルアミド300g、及び調製例1の触媒に代えて調製例2の触媒を用いた以外は実施例1と同様の操作を行った。得られた反応生成物は触媒を濾別した後、ガスクロマトグラフィーで組成分析を行った。アミド転化率は74.3%で、反応生成物はジメチルステアリルアミン60.2%、ジステアリルモノメチルアミン4.1%、ステアリルアルコール7.7%であった。
【0049】
なお、上記実施例等における、金属原子含有量は、前述のICP発光分析により、JobinYbon製JY238で測定した。
また、ガスクロマトグラフィーによる組成分析は、下記装置を用いて行った。
・ガスクロマトグラフ装置:HEWLETT PACKARD Series 6890
・カラム:J & W製DB−17(内径×長さ×フィルム厚さ:15m×0.25mm×0.5μm)
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の製造方法により、副生成物の少ない高純度の脂肪族第3級アミンを、生産性よく経済的に有利に製造することができることから、得られる脂肪族第3級アミンは、繊維柔軟仕上げ剤、帯電防止剤、ガソリン添加剤、シャンプー、リンス、殺菌剤、洗浄剤などの中間体として、家庭用、工業用分野において幅広い用途に好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅及びマグネシウムを、質量比(マグネシウム/銅)0.01〜20の割合で含有する触媒の存在下、一般式(I)
【化1】

(式中、R1は炭素数5〜23の直鎖の又は分岐鎖の脂肪族炭化水素基、R2及びR3は各々炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を示し、これらは同一又は異なっていてもよい。)
で表されるアミド化合物を還元する、一般式(II)
【化2】

(式中、R1 、R2及びR3は、いずれも前記と同じ意味を示す。)
で表される第3級アミンの製造方法。
【請求項2】
触媒中の銅の含有量が、銅金属として5〜70質量%である、請求項1記載の第3級アミンの製造方法。
【請求項3】
触媒が、更に、周期律表第VIII族金属元素、カルシウム、バリウム及び亜鉛からなる群から選ばれる少なくとも一種を含有する、請求項1又は2に記載の第3級アミンの製造方法
【請求項4】
触媒が、シリカ、アルミナ、ゼオライト及び珪藻土から選ばれる少なくとも一種を担体とする担持銅−マグネシウム触媒、又はマグネシウム含有金属酸化物を担体とする担持銅、或いは担持銅−マグネシウム触媒である、請求項1〜3のいずれかに記載の第3級アミンの製造方法
【請求項5】
一般式(I)で表わされるアミド化合物に対して、水素を毎時0.1〜10倍モルの量で流通させてアミド化合物を還元する、請求項1〜4のいずれかに記載の第3級アミンの製造方法。
【請求項6】
触媒の使用量が、一般式(1)で表わされるアミド化合物に対して0.01〜20質量%である、請求項1〜5のいずれかに記載の第3級アミンの製造方法。

【公開番号】特開2008−179600(P2008−179600A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−183990(P2007−183990)
【出願日】平成19年7月13日(2007.7.13)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】