説明

含窒素芳香環配位子を含む金属錯体

【課題】化合物の合成や、添加剤、改質剤、電池、触媒、センサー等の材料や、有機EL素子、有機トランジスタ素子、有機光電変換素子等の材料として有用であり、特に発光材料として優れた耐久性(耐熱性)をもつ金属錯体を提供する。
【解決手段】電荷輸送性が優れる共役系を有し、対称又は非対称に樹枝状に分岐したデンドロン構造やハイパーブランチ構造を含む樹枝状分子鎖を有する含窒素芳香環配位子、及び銅(I)イオン又は銀(I)イオンを含む金属錯体と前記金属錯体を含む素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含窒素芳香環配位子を含む金属錯体に関する。
【背景技術】
【0002】
有機電界発光素子に用いられる発光材料として、三重項励起状態からの発光を利用した発光材料の開発が行われている。三重項励起状態からの発光を利用した発光材料としては、無置換ピリジンをハロゲン化銅(I)に結合させることによって得られる金属錯体が提案されている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】K. R. Kyle et al., Journal of the American Chemical Society 113, 2954-2965 (1991).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前記金属錯体は、耐熱性が十分ではなかった。
【0005】
そこで、本発明は、優れた耐熱性をもつ金属錯体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は第一に、樹枝状分子鎖を有する含窒素芳香環配位子と、銅(I)イオン又は銀(I)イオンとを含む金属錯体を提供する。
【0007】
本発明は第二に、前記金属錯体を含む素子を提供する。
【0008】
本発明は第三に、下記式(14)又は(15)で表される化合物を提供する。
【0009】
【化1】

(式中、R100、R101、R102及びR103は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、アミノ基、アシルアミノ基、イミド基、シリル基、水酸基、アシル基、ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基又はヒドロカルビルチオ基を表す。)
【0010】
本発明は第四に、下記式(16)で表される化合物を提供する。
【0011】
【化2】

(式中、R104、R105及びR106は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、アミノ基、アシルアミノ基、イミド基、シリル基、水酸基、アシル基、ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基又はヒドロカルビルチオ基を表す。)
【発明の効果】
【0012】
本発明の金属錯体は、優れた耐久性(耐熱性)をもつ金属錯体であり、好ましい実施形態では、有機溶剤に対する溶解性が高く、塗布法による素子作製にも有用である。また、本発明の金属錯体は、化合物の合成や、添加剤、改質剤、電池、触媒、センサー等の材料や、有機EL素子、有機トランジスタ素子、有機光電変換素子等の材料として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を説明する。
本明細書において、Meはメチル基、i−Prはイソプロピル基、t−Buはtert−ブチル基、n−Hexはn−ヘキシル基、Phはフェニル基を表す。
【0014】
本発明の金属錯体は、樹枝状分子鎖を有する含窒素芳香環配位子と、銅(I)イオン又は銀(I)イオンとを有する。
【0015】
本発明の金属錯体において、含窒素芳香環配位子と、銅(I)イオン又は銀(I)イオンとは、通常、配位結合で結合しているが、イオン結合、水素結合、π−π相互作用、ファンデルワールス力で結合していてもよい。
【0016】
樹枝状分子鎖とは、対称又は非対称に樹枝状に分岐した構造を意味し、デンドロン構造やハイパーブランチ構造を含む。ここで、デンドロン構造は分岐構造が規則的なもの、ハイパーブランチ構造は分岐構造が規則的でないものを意味する。
【0017】
樹枝状分子鎖は、電荷輸送性が優れるので、共役系を有することが好ましい。樹枝状分子鎖における全共有結合のうち、個数基準で、30〜100%の共有結合が共役していることが好ましい。50〜100%の共有結合が共役していることがより好ましく、65〜100%の共有結合が共役していることが更に好ましい。
【0018】
樹枝状分子鎖は、分岐構造を有し、化学的安定性が優れるので、分岐部分が芳香環を有する基であり、これに芳香環を有する基が結合していることが好ましく、該分岐構造が芳香環を有する3価の基であり、これに芳香環を有する基が結合していることがより好ましい。
【0019】
分岐部分の芳香環及びこれに結合する芳香環の例は、置換基を有していてもよい以下の式(A−1)〜(A−32)で表される環構造が挙げられ、好ましくは、式(A−1)〜(A−7)で表される環構造、より好ましくは、式(A−1)で表される環構造である。
【0020】
【化3】

【0021】
【化4】

【0022】
【化5】

【0023】
分岐部分が芳香環を有する3価の基である場合、その芳香環上の置換基の個数は、好ましくは0〜7個、より好ましくは0〜5個、更に好ましくは0〜2個、特に好ましくは0個である。
【0024】
また、分岐部分に芳香環を有する基が結合する場合、該芳香環上の置換基の個数は、好ましくは0〜8個、より好ましくは0〜6個、更に好ましくは0〜3個、特に好ましくは1個である。
【0025】
本明細書において、特に断りのない限り、置換基とは、その置換基が炭素原子に結合する場合には、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、−COO-基、アミノ基、ホスホノ基、スルホ基、アシルアミノ基、イミド基、シリル基、水酸基、アシル基、アンモニオ基、ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基、ヒドロカルビルチオ基、複素環基を表し、好ましくは、カルボキシル基、−COO-基、ホスホノ基、スルホ基、水酸基、アンモニオ基、ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基、ヒドロカルビルチオ基、複素環基であり、より好ましくはヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基、ヒドロカルビルチオ基であり、特に好ましくは、ヒドロカルビル基である。なお、置換基が複数存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。
【0026】
また、置換基が窒素原子又はケイ素原子に結合する場合には、置換基はヒドロカルビル基を表す。
【0027】
ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基及びヒドロカルビルチオ基は、これらの基に含まれる1以上の水素原子が、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、−COO-基、アミノ基、ホスホノ基、スルホ基、アシルアミノ基、イミド基、シリル基、水酸基、アシル基、アンモニオ基、ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基、ヒドロカルビルチオ基、複素環基により、更に置換されていてもよい。
【0028】
上記アミノ基、ホスホノ基、スルホ基、シリル基及びアンモニオ基は、これらの基に含まれる1以上の水素原子が、ヒドロカルビル基により、更に置換されていてもよい。
【0029】
置換基が炭素原子を含み、かつ芳香環を含まない基である場合には、炭素原子数は1〜50であり、好ましくは1〜30であり、より好ましくは1〜20であり、更に好ましくは1〜10であり、特に好ましくは1〜4である。芳香環を含む基である場合には、炭素原子数は2〜50であり、好ましくは3〜30であり、より好ましくは4〜20であり、更に好ましくは4〜10であり、特に好ましくは4〜6である。
【0030】
置換基であるハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子であり、好ましくは、フッ素原子、塩素原子及び臭素原子であり、より好ましくは、フッ素原子である。
【0031】
置換基である−COO-基は対イオンを有していてもよく、対イオンとしては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオン、アンモニウムイオン等が挙げられ、好ましくは、ナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオンであり、より好ましくは、ナトリウムイオン、カリウムイオンである。
【0032】
置換基であるアミノ基は、これに含まれる1以上の水素原子が、前述の通りヒドロカルビル基により置換されていてもよく、具体例としてフェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、プロピルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ブチルアミノ基、ジブチルアミノ基が挙げられ、好ましくは、ジフェニルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基であり、更に好ましくは、ジフェニルアミノ基である。
【0033】
置換基であるアシルアミノ基としては、ホルムアミド基、アセトアミド基、プロピオアミド基、ブチロアミド基、ベンズアミド基、トリフルオロアセトアミド基、ペンタフルオロベンズアミド基、ジホルムアミド基、ジアセトアミド基、ジプロピオアミド基、ジブチロアミド基、ジベンズアミド基、ジトリフルオロアセトアミド基、ジペンタフルオロベンズアミド基等が挙げられ、好ましくは、ホルムアミド基、アセトアミド基、プロピオアミド基、ブチロアミド基、ベンズアミド基である。
【0034】
置換基であるイミド基としては、N−スクシンイミド基、N−フタルイミド基、ベンゾフェノンイミド基等が挙げられ、好ましくは、N−フタルイミド基である。
【0035】
置換基であるシリル基は、これに含まれる1以上の水素原子が、前述の通りヒドロカルビル基により置換されていてもよく、より具体的には、アルキル基、アリール基及びアリールアルキル基からなる群から選ばれる1〜3個の基で置換されたシリル基が挙げられ、好ましくは、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリプロピルシリル基、トリイソプロピルシリル基、ジメチルイソプロピリシリル基、ジエチルイソプロピルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、ペンチルジメチルシリル基、ヘキシルジメチルシリル基、ヘプチルジメチルシリル基、オクチルジメチルシリル基、2−エチルヘキシル−ジメチルシリル基、ノニルジメチルシリル基、デシルジメチルシリル基、3,7−ジメチルオクチル−ジメチルシリル基、ラウリルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、トリ−p−キシリルシリル基、トリベンジルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、tert−ブチルジフェニルシリル基、ジメチルフェニルシリル基であり、より好ましくは、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリプロピルシリル基であり、更に好ましくは、トリメチルシリル基である。
【0036】
置換基であるアシル基としては、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、トリフルオロアセチル基、ペンタフルオロベンゾイル基等が挙げられ、好ましくはアセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基である。
【0037】
置換基であるアンモニオ基は、これに含まれる1以上の水素原子が、前述の通りヒドロカルビル基により置換されていてもよく、具体的には、アンモニオ基、メチルアンモニオ基、ジメチルアンモニオ基、トリメチルアンモニオ基、エチルアンモニオ基、ジエチルアンモニオ基、トリエチルアンモニオ基、プロピルアンモニオ基、ジプロピルアンモニオ基、トリプロピルアンモニオ基、ブチルアンモニオ基、ジブチルアンモニオ基、トリブチルアンモニオ基等が挙げられ、好ましくは、トリメチルアンモニオ基、トリエチルアンモニオ基、トリプロピルアンモニオ基、トリブチルアンモニオ基である。
【0038】
置換基であるアンモニオ基は対イオンを有していてもよく、対イオンとしては、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、水酸化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、炭酸イオン、酢酸イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、ヘキサフルオロアンチモンイオン、ヘキサフルオロヒ素イオン、メタンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、パラトルエンスルホン酸イオン、ドデシルベンゼンスルホン酸イオン、テトラフェニルボレートイオン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートイオン等が挙げられ、好ましくは、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、水酸化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフェニルボレートイオン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートイオンであり、更に好ましくは、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオンである。また、対イオンは、これらのイオンを繰り返し単位中に有する高分子のイオンでもよい。
【0039】
置換基であるヒドロカルビル基としては、メチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、2−エチルヘキシル基、3,7−ジメチルオクチル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、ノルボルニル基、アンモニオエチル基、ベンジル基、α,α―ジメチルベンジル基、1−フェネチル基、2−フェネチル基、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、オレイル基、エイコサペンタエニル基、ドコサヘキサエニル基、2,2−ジフェニルビニル基、1,2,2−トリフェニルビニル基、2−フェニル−2−プロペニル基、フェニル基、2−トリル基、4−トリル基、4−トリフルオロメチルフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−シアノフェニル基、2−フェニルフェニル基、3−フェニルフェニル基、4−フェニルフェニル基、ビフェニルフェニル基、3,5−ジフェニルフェニル基、3,4−ジフェニルフェニル基、ペンタフェニルフェニル基、4−(2,2−ジフェニルビニル)フェニル基、4−(1,2,2−トリフェニルビニル)フェニル基、フルオレニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、9−アントリル基、2−アントリル基、9−フェナントリル基、1−ピレニル基、クリセニル基、ナフタセニル基、コロネニル基等が挙げられ、好ましくは、メチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、2−エチルヘキシル基、3,7−ジメチルオクチル基、ベンジル基、α,α―ジメチルベンジル基、1−フェネチル基、2−フェネチル基、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、オレイル基、エイコサペンタエニル基、ドコサヘキサエニル基、2,2−ジフェニルビニル基、1,2,2−トリフェニルビニル基、2−フェニル−2−プロペニル基、フェニル基、2−トリル基、4−トリル基、4−トリフルオロメチルフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−シアノフェニル基、2−フェニルフェニル基、3−フェニルフェニル基、4−フェニルフェニル基、ビフェニルフェニル基、3,5−ジフェニルフェニル基、3,4−ジフェニルフェニル基、ペンタフェニルフェニル基、4−(2,2−ジフェニルビニル)フェニル基、4−(1,2,2−トリフェニルビニル)フェニル基、フルオレニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、9−アントリル基、2−アントリル基、9−フェナントリル基であり、より好ましくは、メチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、2−エチルヘキシル基、3,7−ジメチルオクチル基、ベンジル基、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、フェニル基、2−フェニルフェニル基、3−フェニルフェニル基、4−フェニルフェニル基、ビフェニルフェニル基であり、更に好ましくは、メチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、フェニル基であり、特に好ましくは、メチル基、エチル基、tert−ブチル基、フェニル基であり、とりわけ好ましくは、メチル基、tert−ブチル基である。
【0040】
置換基であるヒドロカルビルオキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、1−プロピルオキシ基、2−プロピルオキシ基、1−ブチルオキシ基、2−ブチルオキシ基、sec−ブチルオキシ基、tert−ブチルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基、シクロプロピルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、1−アダマンチルオキシ基、2−アダマンチルオキシ基、ノルボルニルオキシ基、アンモニオエトキシ基、トリフルオロメトキシ基、ベンジロキシ基、α,α-ジメチルベンジロキシ基、2−フェネチルオキシ基、1−フェネチルオキシ基、フェノキシ基、メトキシフェノキシ基、オクチルフェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、ペンタフルオロフェニルオキシ基等が挙げられ、好ましくは、メトキシ基、エトキシ基、1−プロピルオキシ基、2−プロピルオキシ基、1−ブチルオキシ基、2−ブチルオキシ基、sec−ブチルオキシ基、tert−ブチルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基であり、更に好ましくは、メトキシ基、エトキシ基である。
【0041】
置換基であるヒドロカルビルチオ基としては、メチルチオ基、エチルチオ基、1−プロピルチオ基、2−プロピルチオ基、1−ブチルチオ基、2−ブチルチオ基、sec−ブチルチオ基、tert−ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、デシルチオ基、ドデシルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基、3,7−ジメチルオクチルチオ基、シクロプロピルチオ基、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基、1−アダマンチルチオ基、2−アダマンチルチオ基、ノルボルニルチオ基、アンモニオエチルチオ基、トリフルオロメチルチオ基、ベンジルチオ基、α,α−ジメチルベンジルチオ基、2−フェネチルチオ基、1−フェネチルチオ基、フェニルチオ基、メトキシフェニルチオ基、オクチルフェニルチオ基、1−ナフチルチオ基、2―ナフチルチオ基、ペンタフルオロフェニルチオ基等が挙げられ、好ましくは、メチルチオ基、エチルチオ基、1−プロピルチオ基、2−プロピルチオ基、1−ブチルチオ基、2−ブチルチオ基、sec−ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、デシルチオ基、ドデシルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基、3,7−ジメチルオクチルチオ基であり、更に好ましくは、メチルチオ基、エチルチオ基である。
【0042】
置換基である複素環基は、複素環式化合物から水素原子を1個除いた残りの原子団を意味する。複素環基としては、置換基を有していてもよいフリル基、チエニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、ピリジル基等が挙げられ、好ましくは、置換基を有していてもよいチエニル基、イミダゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基及びピリジル基であり、より好ましくは、置換基を有していてもよいイミダゾリル基及びピリジル基である。
【0043】
樹枝状分子鎖の分岐部分は、式(1):
【0044】
【化6】

(式中、Ar1は、直接結合、酸素原子、イミノ基、−Q1−CONH−基、ジイミド基、ヒドロカーボンジイル基、−Q1−O−基、−Q1−S−基又は2価の複素環基を表す。Q1はヒドロカーボンジイル基を示す。ここで、イミノ基及びヒドロカーボンジイル基は、置換基を有していてもよい。R10は、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、アミノ基、アシルアミノ基、イミド基、シリル基、水酸基、アシル基、ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基、ヒドロカルビルチオ基又は2価の複素環基を表す。アミノ基、ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基及びヒドロカルビルチオ基は、置換基を有していてもよい。eは0〜3の整数である。eが2以上である場合、複数存在するR10は、同一であっても異なっていてもよい。)
で表される3価の基であることが好ましい。
【0045】
分岐部分に結合する基としては、式(2):
【0046】
【化7】

(式中、Ar2は、直接結合、酸素原子、イミノ基、−Q2−CONH−基、ジイミド基、ヒドロカーボンジイル基、−Q2−O−基、−Q2−S−基又は2価の複素環基を表す。Q2はヒドロカーボンジイル基を示す。ここで、イミノ基及びヒドロカーボンジイル基は、置換基を有していてもよい。R11は、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、−COO-基、アミノ基、ホスホノ基、スルホ基、アシルアミノ基、イミド基、シリル基、水酸基、アシル基、アンモニオ基、ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基、ヒドロカルビルチオ基又は2価の複素環基を表す。アミノ基、ホスホノ基、スルホ基、シリル基、アンモニオ基、ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基及びヒドロカルビルチオ基は、置換基を有していてもよい。fは0〜5の整数である。fが2以上である場合、複数存在するR11は、同一であっても異なっていてもよい。)
で表される基が好ましい。
【0047】
樹枝状分子鎖の分岐部分が、式(1)で表される3価の基であり、これに式(2)で表される1価の基が結合することがより好ましい。
【0048】
式(1)及び(2)中、Ar1及びAr2で表される置換基を有していてもよいアミノ基としては、フェニルアミノ基、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、ブチルアミノ基、ジブチルアミノ基が挙げられ、好ましくは、フェニルアミノ基である。
【0049】
式(1)及び(2)中、Ar1及びAr2で表される−Q1−CONH−基及び−Q2−CONH−基のQ1及びQ2としては、直接結合、メチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、−C64CH2−基、フルオロメチレン基、−C6FH3CH2−基等が挙げられ、好ましくは、直接結合、メチレン基、トリメチレン基、−C64CH2−基であり、より好ましくは、直接結合である。
【0050】
式(1)及び(2)中、Ar1及びAr2で表されるジイミド基としては、ピロメリト酸ジイミド基、ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸ジイミド基等が挙げられる。
【0051】
式(1)及び(2)中、Ar1及びAr2で表される置換基を有していてもよいヒドロカーボンジイル基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、デカメチレン基、ドデカメチレン基、エチルヘキシレン基、ジメチルオクチレン基、シクロプロピレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、アダマンタンジイル基、ノルボルナンジイル基、アンモニオエチレン基、−C64CH2−基、−CH363CH2−基、−C64CH2CH2−基、ビニレン基、プロペニレン基、ブテニレン基、ジフェニルビニレン基、フェニルビニレン基、フェニルプロペニレン基、フェニレン基、メチルフェニレン基、トリフルオロメチルフェニレン基、メトキシフェニレン基、シアノフェニレン基、ビフェニルジイル基、ターフェニルジイル基、テトラフェニルフェニレン基、(2,2−ジフェニルビニル)フェニレン基、(1,2,2−トリフェニルビニル)フェニレン基、フルオレンジイル基、ナフチレン基、アントリレン基、フェナントリレン基、ピレンジイル基等が挙げられ、好ましくは、メチレン基、エチレン基、−C64CH2−基、−C64CH2CH2−基、ビニレン基、プロペニレン基、ブテニレン基、フェニルビニレン基、フェニレン基、ビフェニルジイル基、ターフェニルジイル基、テトラフェニルフェニレン基、フルオレンジイル基、ナフチレン基、アントリレン基、フェナントリレン基、ピレンジイル基であり、より好ましくは、メチレン基、−C64CH2−基、ビニレン基、プロペニレン基、フェニルビニレン基、フェニレン基、フルオレンジイル基、ナフチレン基であり、更に好ましくは、ビニレン基、フェニルビニレン基、フェニレン基である。
【0052】
式(1)及び(2)中、Ar1及びAr2で表される−Q1−O−基及び−Q2−O−基におけるQ1及びQ2としては、上述のヒドロカーボンジイル基が挙げられ、好ましくは、メチレン基、エチレン基、−C64CH2−基、−C64CH2CH2−基、フェニレン基及びナフチレン基であり、より好ましくは、メチレン基及びエチレン基である。
【0053】
式(1)及び(2)中、Ar1及びAr2で表される−Q1−S−基及び−Q2−S−基におけるQ1及びQ2としては、上述のヒドロカーボンジイル基が挙げられ、好ましくは、メチレン基、エチレン基、−C64CH2−基、−C64CH2CH2−基、フェニレン基及びナフチレン基であり、より好ましくは、メチレン基及びエチレン基である。
【0054】
式(1)及び(2)中、Ar1及びAr2で表される2価の複素環基は、複素環式化合物から水素原子を2個除いた残りの原子団を意味する。2価の複素環基としては、置換基を有していてもよいフランジイル基、チオフェンジイル基、ピロールジイル基、ピリミジンジイル基、ピラジンジイル基、イミダゾールジイル基、オキサゾールジイル基、チアゾールジイル基、ピリジンジイル基等が挙げられ、好ましくは、置換基を有していてもよいフランジイル基、チオフェンジイル基、オキサゾールジイル基、チアゾールジイル基である。
【0055】
式(1)及び(2)中、Ar1及びAr2は、好ましくは、直接結合、酸素原子、イミノ基、−Q2−CONH−基、ヒドロカーボンジイル基、−Q2−O−基であり、より好ましくは、直接結合、ヒドロカーボンジイル基、−Q2−O−基である。ここでQ2はヒドロカーボンジイル基を示す。
【0056】
式(1)中、R10で表されるハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、アミノ基、アシルアミノ基、イミド基、シリル基、水酸基、アシル基、ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基、ヒドロカルビルチオ基、及び複素環基の具体例は、前記と同じであり、好ましいR10はヒドロカルビル基及びヒドロカルビルオキシ基であり、より好ましいR10はヒドロカルビル基である。
【0057】
式(1)中、eは、好ましくは、0〜2の整数であり、より好ましくは、0又は1であり、更に好ましくは0である。
【0058】
式(2)中、R11で表されるハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、−COO-基、アミノ基、ホスホノ基、スルホ基、アシルアミノ基、イミド基、シリル基、水酸基、アシル基、アンモニオ基、ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基、ヒドロカルビルチオ基、複素環基の具体例は前記と同じであり、好ましいR11は、カルボキシル基、−COO-基、ホスホノ基、スルホ基、水酸基、アンモニオ基、ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基、ヒドロカルビルチオ基、複素環基であり、より好ましいR11は、ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基、ヒドロカルビルチオ基であり、更に好ましいR11はヒドロカルビル基である。
【0059】
式(2)中、fは、好ましくは、0〜3の整数であり、より好ましくは、0〜2の整数であり、更に好ましくは1である。
【0060】
樹枝状分子鎖において、電荷輸送性が優れるので、Ar1及びAr2が直接結合であることが好ましい。
【0061】
式(1)で表される3価の基としては、例えば、以下の式(a−1)〜(a−16)で表される基が挙げられる。
【0062】
【化8】

【0063】
【化9】

【0064】
式(2)で表される1価の基としては、例えば、以下の式(b−1)〜(b−32)で表される基が挙げられる。
【0065】
【化10】

【0066】
【化11】

【0067】
【化12】

【0068】
【化13】

【0069】
樹枝状分子鎖を有する含窒素芳香環配位子において、含窒素芳香環配位子とは、窒素原子を含む芳香環を有する化合物であって、配位子となる化合物を意味する。
【0070】
該含窒素芳香環配位子は、式(3):
【0071】
【化14】

(式中、X01は窒素原子又は−C(R02)=基であり、X02は、−X03=X04−、−N(R03)−基、N-、酸素原子又は硫黄原子である。X03は窒素原子又は−C(R04)=基であり、X04は窒素原子又は−C(R05)=基である。但し、X02が−X03=X04−である場合、X01、X03及びX04の少なくとも1個は、窒素原子ではない。X01が窒素原子である場合、X02は−X03=X04−、又は−N(R03)−基であり、X02がN-、酸素原子又は硫黄原子である場合、X01は−C(R02)=基である。R01、R02、R04、R05及びR06は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、−COO-基、アシルアミノ基、イミド基、シリル基、水酸基、アシル基、ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基、ヒドロカルビルチオ基又は複素環基を表し、R03は、水素原子、ヒドロカルビル基又は複素環基を表す。シリル基、ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基及びヒドロカルビルチオ基は置換基を有していてもよい。R01、R02、R03、R04、R05及びR06の少なくとも1個は前記樹枝状分子鎖を有する。R01とR02、R02とR03、R02とR04、R03とR06、R04とR05、又はR05とR06は、それぞれ一緒になって環を形成していてもよい。)
で表されるものが好ましい。
【0072】
式(3)中、R01、R02、R04、R05及びR06のそれぞれの基の具体例は前記と同じであり、これらとしては、水素原子、ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基又はヒドロカルビルチオ基であることが好ましく、水素原子又はヒドロカルビル基であることがより好ましく、水素原子であることが更に好ましい。
【0073】
式(3)中、R03の具体例は前記と同じであり、ヒドロカルビル基が好ましい。
【0074】
また、樹枝状分子鎖を有する含窒素芳香環配位子の例として、式(3)におけるR06から水素原子を1個除いた基を2つ連結したものが挙げられる。ここで、連結される式(3)におけるR06から水素原子を1個除いた基のそれぞれは同じでも異なっていてもよい。連結される基におけるX02が、共に−N(R03)−基である場合はR03同士で、共に−X03=X04−基である場合はX04同士で、一方が−N(R03)−基で他方が−X03=X04−基である場合はR03とX04で、それぞれが一緒になって環を形成していてもよい。
【0075】
式(3)は、式(4):
【0076】
【化15】

(式中、X20は窒素原子又は−C(R21)=基であり、X21は窒素原子又は−C(R22)=基であり、X22は窒素原子又は−C(R23)=基である。但し、X20、X21及びX22の少なくとも1個は、窒素原子ではない。R20、R21、R22、R23及びR24の少なくとも1個は、樹枝状分子鎖を有し、R20、R21、R22、R23及びR24は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、−COO-基、アシルアミノ基、イミド基、シリル基、水酸基、アシル基、ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基、ヒドロカルビルチオ基又は複素環基を表す。シリル基、ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基及びヒドロカルビルチオ基は置換基を有していてもよい。R20とR21、R21とR22、R22とR23、R23とR24は、それぞれ一緒になって環を形成していてもよい。)
、又は、式(5):
【0077】
【化16】

(式中、X23は窒素原子又は−C(R26)=基であり、X24は−N(R27)−基、N-、酸素原子又は硫黄原子である。但し、X23が窒素原子である場合、X24は−N(R27)−基であり、X24がN-、酸素原子又は硫黄原子である場合、X23は−C(R26)=基である。R25、R26、R27及びR28の少なくとも1個は前記樹枝状分子鎖を有し、R25、R26及びR28は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、−COO-基、アシルアミノ基、イミド基、シリル基、水酸基、アシル基、ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基、ヒドロカルビルチオ基又は複素環基を表す。シリル基、ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基及びヒドロカルビルチオ基は置換基を有していてもよい。R27は水素原子、ヒドロカルビル基又は複素環基を表し、ヒドロカルビル基は置換基を有していてもよい。R25とR26、R26とR27、R27とR28は、それぞれ一緒になって環を形成していてもよい。)
で表されるものがより好ましい。
【0078】
式(4)中、R20、R21、R22、R23及びR24のそれぞれの基の具体例は前記と同じであり、これらとしては、水素原子、ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基又はヒドロカルビルチオ基であることが好ましく、水素原子又はヒドロカルビル基であることがより好ましく、水素原子であることが更に好ましい。
【0079】
式(4)中、X20は、好ましくは−C(R21)=基であり、X21は、好ましくは−C(R22)=基であり、X22は、好ましくは−C(R23)=基である。
【0080】
式(5)中、R25、R26及びR28のそれぞれの基の具体例は前記と同じであり、水素原子、ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基、ヒドロカルビルチオ基が好ましく、水素原子、ヒドロカルビル基がより好ましく、水素原子が更に好ましい。
【0081】
式(5)中、R27の具体例は前記と同じであり、ヒドロカルビル基が好ましい。
【0082】
式(5)中、X23は、好ましくは−C(R26)=基であり、X24は、好ましくは−N(R27)−基、硫黄原子又は酸素原子であり、より好ましくは−N(R27)−基である。
【0083】
また、樹枝状分子鎖を有する含窒素芳香環配位子は、式(4)におけるR24から水素原子を1個除いた1価の基、及び式(5)におけるR28から水素原子を1個除いた1価の基からなる群から選択される基を2つ連結したもので表される。連結される式(4)におけるR24から水素原子を1個除いた1価の基、又は式(5)におけるR28から水素原子を1個除いた1価の基のそれぞれは同じでも異なっていてもよい。連結される基が、共に前記式(4)のR24から水素原子を1個除いた基である場合はR23同士で、共に式(5)からR28から水素原子を1個除いた基である場合はR27同士で、一方が式(4)のR24から水素原子を1個除いた基で他方が式(5)からR28から水素原子を1個除いた基である場合はR23とR27で、それぞれが一緒になって環を形成していてもよい。
【0084】
前記1価の基が連結した含窒素芳香環配位子としては、例えば、以下の式(C−1)〜(C−11)で表される骨格構造を有するものが挙げられる。
【0085】
【化17】

【0086】
樹枝状分子鎖を有する含窒素芳香環配位子の例として、分岐の数が2である場合を模式的に表すと、以下の通りである。
【0087】
【化18】

(式中、Aは含窒素芳香環を表し、Jは分岐部分を表し、Tは分岐部分に結合する末端部を表し、bは1以上の整数を表す。以下、点線で囲んで示される分岐部分を最も多く有する分子鎖を「最大分岐分子鎖」という。)
【0088】
最大分岐分子鎖における分岐部分の個数は、2以上が好ましい。また、有機溶剤に対する溶解性が優れるので、通常、50個以下であり、好ましくは20個以下であり、より好ましくは10個以下であり、更に好ましくは6個以下であり、特に好ましくは4個以下である。
【0089】
したがって、最大分岐分子鎖における分岐部分の個数は、通常、1〜50個であり、1〜20個が好ましく、2〜10個がより好ましく、2〜6個が更に好ましく、2〜4個が特に好ましい。
【0090】
樹枝状分子鎖を有する含窒素芳香環配位子としては、例えば、以下の式(B−1)〜(B−15)で表されるものが挙げられる。
【0091】
【化19】

【0092】
【化20】

【0093】
【化21】

【0094】
【化22】

【0095】
【化23】

【0096】
前記樹枝状分子鎖を有する含窒素芳香環配位子としては、下記式(100):
【0097】
【化24】

(式中、X01は窒素原子又は−C(R02)=基であり、X02は、−X03=X04−基、−N(R03)−基、N-、酸素原子又は硫黄原子である。X03は窒素原子又は−C(R04)=基であり、X04は窒素原子又は−C(R05)=基である。但し、X02が−X03=X04−基である場合、X01、X03及びX04の少なくとも1個は、窒素原子ではない。X01が窒素原子である場合、X02は−X03=X04−基、又は−N(R03)−基であり、X02がN-、酸素原子又は硫黄原子である場合、X01は−C(R02)=基である。R01、R02、R04及びR05は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、−COO-基、アシルアミノ基、イミド基、シリル基、水酸基、アシル基、ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基、ヒドロカルビルチオ基又は複素環基を表す。シリル基、ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基及びヒドロカルビルチオ基は置換基を有していてもよい。R03は、水素原子、ヒドロカルビル基又は複素環基を表し、ヒドロカルビル基は置換基を有していてもよい。R01、R02、R03、R04及びR05の少なくとも1個は樹枝状分子鎖を有する。R01とR02、R02とR03、R02とR04、又は、R04とR05は、それぞれ一緒になって環を形成していてもよい。R07は直接結合、酸素原子、イミノ基、−Q3−CONH−基、ジイミド基、ヒドロカーボンジイル基、−Q3−O−基、−Q3−S−基又は2価の複素環基を表す。Q3は置換基を有していてもよいヒドロカーボンジイル基を示す。X02が、共に−N(R03)−基である場合はR03同士で、X02が共に−X03=X04−基である場合はX04同士で、一方が−N(R03)−基で他方が−X03=X04−基である場合はR03とX04とで、それぞれが一緒になって環を形成していてもよい。)
で表される配位子も好ましい。
【0098】
本発明の金属錯体における銀(I)イオン又は銅(I)イオンは、資源量が豊富であり、経済性に優れるので、銅(I)イオン好ましい。
【0099】
本発明の金属錯体は、含窒素芳香環配位子、銅(I)イオン又は銀(I)イオンに加えて、含窒素芳香環配位子以外の配位子及び/又は対イオンを有していてもよい。
含窒素芳香環配位子以外の配位子としては、例えば、複素環式化合物、ホスフィン化合物、アミン化合物、及び以下:
【0100】
【化25】

【0101】
【化26】

【0102】
【化27】

に示した構造を有する配位子が挙げられ、L1からL81で示される配位子は置換基を有していてもよい。
【0103】
上記の複素環式化合物としては、置換基を有していてもよいピリジン、キノリン、ピラゾール、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、トリアジン、ピリミジン、ピラジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、チオフェン、フラン、トリアゾール、トリアジン、アクリジンが挙げられ、好ましくは、置換基を有していてもよいピリジン、キノリン、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、トリアジンである。
【0104】
上記のホスフィン化合物としては、トリフェニルホスフィン、プロピルジフェニルホスフィン、tert−ブチルジフェニルホスフィン、1−ブチルジフェニルホスフィン、1−ヘキシルジフェニルホスフィン、シクロヘキシルジフェニルホスフィン、ジシクロヘキシルフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリメチルホスフィン、トリ(2−フリル)ホスフィン、トリ(3−フリル)ホスフィン、トリ(2−ピリジル)ホスフィン、トリ(3−ピリジル)ホスフィン、トリ(4−ピリジル)ホスフィン、2−フリルジフェニルホスフィン、3−フリルジフェニルホスフィン、2−ピリジルジフェニルホスフィン、3−ピリジルジフェニルホスフィン、4−ピリジルジフェニルホスフィン等が挙げられ、好ましくは、トリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリメチルホスフィン、トリ(2−フリル)ホスフィン、トリ(3−フリル)ホスフィン、トリ(2−ピリジル)ホスフィン、トリ(3−ピリジル)ホスフィン、トリ(4−ピリジル)ホスフィン、2−フリルジフェニルホスフィン、3−フリルジフェニルホスフィン、2−ピリジルジフェニルホスフィン、3−ピリジルジフェニルホスフィン、4−ピリジルジフェニルホスフィンであり、より好ましくは、トリフェニルホスフィンであり、ここに例示したホスフィン化合物のフェニル基、シクロヘキシル基、フリル基及びピリジル基は置換基を有していてもよい。
【0105】
上記のアミン化合物としては、トリフェニルアミン、ジフェニルアミン、プロピルジフェニルアミン、tert−ブチルジフェニルアミン、n−ブチルジフェニルアミン、n−ヘキシルジフェニルアミン、シクロヘキシルジフェニルアミン、ジシクロヘキシルフェニルアミン、トリシクロヘキシルアミン、トリメチルアミン、ジメチルアミン等が挙げられ、好ましくは、トリフェニルアミン、ジフェニルアミン、トリシクロヘキシルアミン、トリメチルアミン、ジメチルアミンであり、ここに例示したアミン化合物のフェニル基及びシクロヘキシル基は置換基を有していてもよい。
【0106】
含窒素芳香環配位子以外の配位子としては、ピリジン、キノリン、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、トリアジン、トリフェニルホスフィン、L1〜L33、L65〜L71が好ましく、ピリジン、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、トリフェニルホスフィン、L1、L2、L4、L6、L65、L66がより好ましく、L1、L2、L4、L6が更に好ましく、L2、L6が特に好ましい。
【0107】
対イオンとしては、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、炭酸イオン、酢酸イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、ヘキサフルオロアンチモンイオン、ヘキサフルオロヒ素イオン、メタンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、パラトルエンスルホン酸イオン、ドデシルベンゼンスルホン酸イオン、テトラフェニルボレートイオン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートイオンが挙げられ、好ましくは、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフェニルボレートイオン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートイオンであり、更に好ましくは、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオンである。なお、Xで表される対イオンは、これらのイオンの構造を繰り返し単位中に有する高分子化合物であってもよい。
【0108】
本発明の金属錯体は、電荷輸送性が優れるので、組成式(6):
【0109】
【化28】

(式中、M+は銅(I)イオン又は銀(I)イオンであり、Lは配位子であり、Xは対イオンである。pは正の数であり、q及びrは、それぞれ独立に、0以上の数である。R40、R41及びR42は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、アミノ基、アシルアミノ基、シリル基、水酸基、アシル基、ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基、ヒドロカルビルチオ基又は複素環基を表し、アミノ基、シリル基、ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基及びヒドロカルビルチオ基は置換基を有していてもよい。R40、R41及びR42の少なくとも1個の水素原子は式(7):
【0110】
【化29】

で示される基によって置換されている。それぞれのR40又はそれぞれのR41は、同一であっても異なっていてもよく、R40とR41、R41とR42はそれぞれが一緒になって環を形成していてもよい。上記式(7)中、R43、R44、R45、R46又はR47は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、アミノ基、アシルアミノ基、シリル基、水酸基、アシル基、ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基又はヒドロカルビルチオ基を表し、アミノ基、シリル基、ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基及びヒドロカルビルチオ基は置換基を有していてもよい。複数存在するR43、R45、R46又はR47は、同一であっても異なっていてもよい。R43とR45、R44とR45、R45とR46、又はR46とR47は、それぞれが一緒になって環を形成していてもよい。L、X、下記式:
【0111】
【化30】

で表される構造が複数存在する場合、それらは、各々、同一であっても異なっていてもよい。)
で表されることが更に好ましい。
【0112】
Lは含窒素芳香環配位子以外の配位子のことであり、具体例及び好ましい例は前述したものと同じである。Xは対イオンであり、具体例及び好ましい例は前述したものと同じである。
【0113】
40、R41及びR42のそれぞれの基の具体例は前記と同じであり、これらとしては、水素原子、ヒドロカルビル基及びヒドロカルビルオキシ基が好ましく、水素原子及びヒドロカルビル基がより好ましく、水素原子が更に好ましい。
【0114】
43、R44及びR45のそれぞれの基の具体例は前記と同じであり、これらとしては、水素原子、ヒドロカルビル基及びヒドロカルビルオキシ基が好ましく、水素原子がより好ましい。
【0115】
46及びR47のそれぞれの基の具体例は前記と同じであり、これらとしては、水素原子、ヒドロカルビル基及びヒドロカルビルオキシ基が好ましく、ヒドロカルビル基がより好ましい。
【0116】
40、R41及びR42における、少なくとも1個の水素原子は式(7)で示される基にて置換されたものであるが、好ましくはR41又はR42における水素原子が式(7)で示される基で置換されたものである。
【0117】
q及びrは、0<(q+r)≦4を満たすことが好ましく、0<(q+r)≦3を満たすことがより好ましく、0<(q+r)≦2を満たすことが更に好ましい。pは、0<p≦2を満たすことが好ましい。
【0118】
本発明の金属錯体は、電荷輸送性が優れるので、組成式(8):
【0119】
【化31】

(式中、M+は銅(I)イオン又は銀(I)イオンであり、Lは配位子であり、Xは対イオンである。pは正の数であり、q及びrは、それぞれ独立に、0以上の数である。R50、R51、R52、R53、R54、R55又はR56は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、アミノ基、アシルアミノ基、シリル基、水酸基、アシル基、ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基又はヒドロカルビルチオ基を表し、アミノ基、シリル基、ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基及びヒドロカルビルチオ基は置換基を有していてもよい。複数存在するR50、R52、R53、R54、R55又はR56は、同一であっても異なっていてもよい。R52とR54、R53とR54、R54とR55、R55とR56は、それぞれが一緒になって環を形成していてもよい。L、X、式:
【0120】
【化32】

で表される構造が複数存在する場合、それらは、各々、同一であっても異なっていてもよい。)
で表されることが特に好ましい。
【0121】
50及びR51のそれぞれの基の具体例は前記と同じであり、これらとしては、水素原子、ヒドロカルビル基及びヒドロカルビルオキシ基が好ましく、水素原子及びヒドロカルビル基がより好ましく、水素原子が更に好ましい。
【0122】
52、R53及びR54のそれぞれの基の具体例は前記と同じであり、これらとしては、水素原子、ヒドロカルビル基及びヒドロカルビルオキシ基が好ましく、水素原子がより好ましい。
【0123】
55及びR56のそれぞれの基の具体例は前記と同じであり、これらとしては、水素原子、ヒドロカルビル基及びヒドロカルビルオキシ基が好ましく、ヒドロカルビル基がより好ましい。
【0124】
本発明の金属錯体は、電荷輸送性が優れるので、組成式(9):
【0125】
【化33】

(式中、M'+は銅(I)イオン又は銀(I)イオンであり、L'は配位子であり、X'は対イオンである。sは正の数であり、t及びuは、それぞれ独立に、0以上の数である。R60、R61、R62及びR63は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、アミノ基、アシルアミノ基、シリル基、水酸基、アシル基、ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基、ヒドロカルビルチオ基又は複素環基を表し、アミノ基、シリル基、ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基及びヒドロカルビルチオ基は置換基を有していてもよい。R60、R61、R62及びR63の少なくとも1個の水素原子は式(7)で示される基によって置換されている。それぞれのR60、それぞれのR61、それぞれのR62又はそれぞれのR63は、同一であっても異なっていてもよく、R60とR61、R61とR62、R62とR63、R63同士はそれぞれが一緒になって環を形成していてもよい。L'、X'、式:
【0126】
【化34】

で表される構造が複数存在する場合、それらは、各々、同一であっても異なっていてもよい。)
で表されること、又は式(10):
【0127】
【化35】

(式中、M'+は銅(I)イオン又は銀(I)イオンであり、L'は配位子であり、X'は対イオンである。sは正の数であり、t及びuは、それぞれ独立に、0以上の数である。R64、R65、R66及びR67は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、アミノ基、アシルアミノ基、シリル基、水酸基、アシル基、ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基、ヒドロカルビルチオ基又は複素環基を表し、アミノ基、シリル基、ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基及びヒドロカルビルチオ基は置換基を有していてもよい。R64、R65、R66及びR67の少なくとも1個の水素原子は式(7)で示される基によって置換されている。それぞれのR64、それぞれのR65、それぞれのR66又はそれぞれのR67は、同一であっても異なっていてもよく、R64とR65、R65とR66、R66とR67、R67同士はそれぞれが一緒になって環を形成していてもよい。L'、X'、式:
【0128】
【化36】

で表される構造が複数存在する場合、それらは、各々、同一であっても異なっていてもよい。)
で表されること、又は式(11):
【0129】
【化37】

(式中、M'+は銅(I)イオン又は銀(I)イオンであり、L'は配位子であり、X'は対イオンである。sは正の数であり、t及びuは、それぞれ独立に、0以上の数である。R68、R69、R70、R71、R72、R73及びR74は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、アミノ基、アシルアミノ基、シリル基、水酸基、アシル基、ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基、ヒドロカルビルチオ基又は複素環基を表し、アミノ基、シリル基、ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基及びヒドロカルビルチオ基は置換基を有していてもよい。R71、R72、R73及びR74の少なくとも1個の水素原子は式(7)で示される基によって置換されている。それぞれのR68、それぞれのR69、それぞれのR70、それぞれのR71、それぞれのR72、それぞれのR73又はそれぞれのR74は、同一であっても異なっていてもよく、R68とR69、R69とR70、R71とR72、R72とR73、R73とR74、R74同士はそれぞれが一緒になって環を形成していてもよい。L'、X'、式:
【0130】
【化38】

で表される構造が複数存在する場合、それらは、各々、同一であっても異なっていてもよい。)
で表されることが、更に好ましい。
【0131】
L'は含窒素芳香環配位子以外の配位子であり、具体例及び好ましい例は前記と同じである。X'は対イオンであり、具体例及び好ましい例は前記と同じである。
【0132】
t及びuは、0<(t+u)≦3を満たすことが好ましく、0<(t+u)≦2を満たすことがより好ましく、0<(t+u)≦1を満たすことが更に好ましい。sは、0<s≦2を満たすことが好ましい。
【0133】
60、R61、R62、R63、R64、R65、R66、R67、R68、R69、R70、R71、R72、R73及びR74のそれぞれの基の具体例は前記と同じであり、これらとしては、水素原子、ヒドロカルビル基及びヒドロカルビルオキシ基が好ましく、水素原子及びヒドロカルビル基がより好ましく、水素原子が更に好ましい。
【0134】
60、R61、R62及びR63のうち少なくとも1個が式(7)で示される基であることが好ましく、R61、R62及びR63のうち少なくとも1個が式(7)で示される基であることがより好ましく、R61及びR62のうち少なくともどちらかが式(7)で示される基であることが更に好ましい。
【0135】
64、R65、R66及びR67のうち少なくとも1個が式(7)で示される基であることが好ましく、R65、R66及びR67のうち少なくとも1個が式(7)で示される基であることがより好ましい。
【0136】
71、R72、R73及びR74のうち少なくとも1個が式(7)で示される基であることが好ましく、R71、R72、及びR73のうち少なくとも1個が式(7)で示される基であることがより好ましく、R72、及びR73のうち少なくともどちらかが式(7)で示される基であることが更に好ましい。
【0137】
本発明の金属錯体は、電荷輸送性が優れるので、組成式(12):
【0138】
【化39】

(式中、M'+は銅(I)イオン又は銀(I)イオンであり、L'は配位子であり、X'は対イオンである。sは正の数であり、t及びuは、それぞれ独立に、0以上の数である。R80、R81、R82、R83、R84、R85、R86及びR87は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、アミノ基、アシルアミノ基、イミド基、シリル基、水酸基、アシル基、ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基又はヒドロカルビルチオ基を表し、アミノ基、シリル基、ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基及びヒドロカルビルチオ基は置換基を有していてもよい。複数存在するR80、R81、R82、R83、R84、R85、R86又はR87は、同一であっても異なっていてもよい。R83とR85、R84とR85、R85とR86、R86とR87は、それぞれが一緒になって環を形成していてもよい。L'、X'、式:
【0139】
【化40】

で表される構造が複数存在する場合、それらは、各々、同一であっても異なっていてもよい。)
で表されることが特に好ましい。
【0140】
80、R81及びR82のそれぞれの基の具体例は前記と同じであり、これらとしては、水素原子、ヒドロカルビル基及びヒドロカルビルオキシ基が好ましく、水素原子及びヒドロカルビル基がより好ましく、水素原子が更に好ましい。
【0141】
83、R84及びR85のそれぞれの基の具体例は前記と同じであり、これらとしては、水素原子、ヒドロカルビル基及びヒドロカルビルオキシ基が好ましく、水素原子がより好ましい。
【0142】
86及びR87のそれぞれの基の具体例は前記と同じであり、これらとしては、水素原子、ヒドロカルビル基及びヒドロカルビルオキシ基が好ましく、ヒドロカルビル基がより好ましい。
【0143】
本発明の金属錯体は、電荷輸送性が優れるので、組成式(13):
【0144】
【化41】

(式中、M'+は銅(I)イオン又は銀(I)イオンであり、L'は配位子であり、X'は対イオンである。sは正の数であり、t及びuは、それぞれ独立に、0以上の数である。R89、R90、R91、R92、R93、R94、R95、R96、R97、R98又はR99は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、アミノ基、アシルアミノ基、イミド基、シリル基、水酸基、アシル基、ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基又はヒドロカルビルチオ基を表し、アミノ基、シリル基、ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基及びヒドロカルビルチオ基は置換基を有していてもよい。複数存在するR89、R90、R91、R92、R93、R94、R95、R96、R97、R98又はR99は、同一であっても異なっていてもよい。R89とR90、R90とR91、R92とR95、R93とR94、R94同士、R93とR95、R95とR97、R96とR97、R97とR98、R98とR99は、それぞれが一緒になって環を形成していてもよい。L'、X'、式:
【0145】
【化42】

で表される構造が複数存在する場合、それらは、各々、同一であっても異なっていてもよい。)
で表されることが特に好ましい。
【0146】
89、R90及びR91のそれぞれの具体例は前記と同じであり、これらとしては、水素原子、ヒドロカルビル基及びヒドロカルビルオキシ基が好ましく、水素原子及びヒドロカルビル基がより好ましく、水素原子が更に好ましい。
【0147】
92、R93、R94、R95、R96及びR97のそれぞれの具体例は前記と同じであり、これらとしては、水素原子、ヒドロカルビル基及びヒドロカルビルオキシ基が好ましく、水素原子がより好ましい。
【0148】
98及びR99のそれぞれの具体例は前記と同じであり、これらとしては、水素原子、ヒドロカルビル基及びヒドロカルビルオキシ基が好ましく、ヒドロカルビル基がより好ましい。
【0149】
また、本発明の金属錯体は、発光性金属錯体であることが好ましい。ここで、「発光性」とは、外場(光、電場、磁場、圧力等)によって発光を生じる性質を意味している。
【0150】
本発明の金属錯体としては、以下の金属錯体が挙げられる。
【0151】
【化43】

【0152】
【化44】

【0153】
【化45】

【0154】
【化46】

【0155】
【化47】

【0156】
【化48】

【0157】
本発明の金属錯体は、対応する金属塩と、樹枝状分子鎖を有する含窒素芳香環配位子となる化合物(例えば、前記式(B−1)〜(B−15)で表される配位子となる化合物、前記式(14)〜(16)で表される化合物)とを、室温下、溶媒中で混合させる工程を含む製造方法により得ることが好ましい。必要に応じて、この工程により得られた沈殿を回収することもできるし、該工程により得られた溶液から溶媒を留去することもできる。前記工程において、樹枝状分子鎖を有する含窒素芳香環配位子以外の配位子(例えば、前記L1〜L81)、アルカリ金属塩(例えば、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、過塩素酸ナトリウム、テトラフルオロボレートナトリウム、ヘキサフルオロホスフェートナトリウム、ヘキサフルオロアンチモネートナトリウム、メタンスルホン酸ナトリウム、トリフルオロメタンスルホン酸ナトリウム、トリフルオロ酢酸ナトリウム、ベンゼンスルホン酸ナトリウム、パラトルエンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、テトラフェニルボレートナトリウム)を更に混合することができる。
【0158】
前記の対応する金属塩としては、ヨウ化銅(I)、臭化銅(I)、塩化銅(I)、フッ化銅(I)、テトラキス(アセトニトリル)銅(I)テトラフルオロボレート、テトラキス(アセトニトリル)銅(I)トリフレート、テトラキス(アセトニトリル)銅(I)ヘキサフルオロホスフェート、硫酸銅(I)、硝酸銅(I)、酢酸銅(I)、トリフルオロメタンスルホン酸銅(I)等が挙げられ、ヨウ化銅(I)、テトラキス(アセトニトリル)銅(I)テトラフルオロボレート、テトラキス(アセトニトリル)銅(I)トリフレート、テトラキス(アセトニトリル)銅(I)ヘキサフルオロホスフェートが好ましい。
【0159】
上述の混合を行う際には、対応する金属塩、含窒素芳香環配位子を溶媒中に均一に溶解させるため、又は溶液の粘度が高い場合には撹拌を容易にするために、緩衝液等の水系溶媒、有機溶媒を用いてもよいが、有機溶媒が好ましい。
【0160】
有機溶媒としては、クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン等の塩素化炭化水素溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ペンタン、ヘキサン、へプタン、オクタン、ノナン、デカン等の脂肪族炭化水素溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテート等のエステル溶媒、エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジメトキシエタン、プロピレングリコール、ジエトキシメタン、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、グリセリン、1,2−ヘキサンジオール等の多価アルコール及びその誘導体、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、シクロヘキサノール等のアルコール溶媒、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド溶媒が挙げられる。これらの有機溶媒は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0161】
<用途>
本発明の金属錯体は、可視光、紫外線、真空紫外線、真空紫外線よりも短波長の光、電子注入、電界、熱、応力、超音波、電磁波以外の放射線等の励起源により発光させることができるので、三波長型蛍光ランプ等の紫外線発光素子、白色LED等の紫外線・可視励起発光素子、CRT等の電子励起発光素子、有機EL等の電子注入発光素子、フィルムパッチ等の電磁波以外での放射線による励起発光素子に用いることができる。例えば、本発明の金属錯体を有機ELに用いる場合、本発明の金属錯体を有機溶媒に溶解又は分散させた後に、塗布により薄膜化して用いることができる。
【0162】
本発明の金属錯体は、導電性材料として有用であるので、電荷輸送材料、電荷注入材料としても有用である。また、本発明の金属錯体は、有機トランジスタ素子、有機光電変換素子等の材料や、化合物の合成原料、添加剤、改質剤、電池、触媒、センサー等の材料としても有用である。
【0163】
本発明の素子が発光素子である場合、陰極と発光層との間に電子輸送層又は正孔阻止層を備える素子、陽極と発光層との間に正孔輸送層又は電子阻止層を備える素子、陰極と発光層との間に電子輸送層又は正孔阻止層を備え、かつ陽極と発光層との間に正孔輸送層又は電子阻止層を備える素子等が挙げられる。
【0164】
本発明の素子の具体的な構造を、以下に示す。なお、「/」は各層が隣接して積層されていることを示す。以下、同様である。
a)陽極/(電荷注入層)/発光層/(電荷注入層)/陰極
b)陽極/(電荷注入層)/正孔輸送層/発光層/(電荷注入層)/陰極
c)陽極/(電荷注入層)/発光層/電子輸送層/(電荷注入層)/陰極
d)陽極/(電荷注入層)/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/(電荷注入層)/陰極
【0165】
また、本発明の素子においては、発光層、正孔輸送層、及び電子輸送層をそれぞれ独立に2層以上設けてもよい。
【0166】
電極に隣接して設けた電荷輸送層(正孔輸送層及び電子輸送層)のうち、電極からの電荷注入効率を改善する機能を有し、素子の駆動電圧を下げる効果を有するものは、一般に電荷注入層(正孔注入層及び電子注入層)と呼ばれることがある。電荷注入層を備える素子としては、陰極に隣接して電荷注入層を備える素子、陽極に隣接して電荷注入層を備える素子が挙げられる。
【0167】
本発明の素子では、電極との密着性向上や電極からの電荷注入の改善のために電極に隣接して膜厚2nm以下の絶縁層を設けてもよい。前記絶縁層に用いる材料としては、金属フッ化物、金属酸化物、有機絶縁材料等が挙げられる。膜厚2nm以下の絶縁層を備える素子としては、陰極に隣接して前記絶縁層を備える素子、陽極に隣接して前記絶縁層を備える素子が挙げられる。
【0168】
本発明の素子では、更に、界面の密着性向上や混層の防止等のために、電極と発光層との間にこの電極に隣接して、また、電荷輸送層と発光層と界面に、平均膜厚2nm以下のバッファー層を設けてもよい。
【0169】
本発明の素子は上記例示した構造に限定されるものではなく、層の順番、数、及び各層の厚さを、発光効率又は光電効率や素子寿命を考慮して設定したものも含まれる。
本発明の素子の各層について説明する。
【0170】
本発明の素子の発光層は、電界印加時に陽極側の隣接する層より正孔を注入することができ、陰極側の隣接する層より電子を注入することができる機能、注入した電荷(電子と正孔)を電界の力で移動させる機能、電子と正孔の再結合の場を提供し、これを発光につなげる機能を有するものである。本発明の有機電界発光素子の発光層は、上記金属錯体を含有することが好ましく、この金属錯体をゲスト材料とするホスト材料を含有していてもよい。
【0171】
ホスト材料としては、フルオレン骨格を有する化合物、カルバゾール骨格を有する化合物、ジアリールアミン骨格を有する化合物、ピリジン骨格を有する化合物、ピラジン骨格を有する化合物、トリアジン骨格を有する化合物及びアリールシラン骨格を有する化合物等が挙げられる。ホスト材料のT1(最低三重項励起状態のエネルギーレベル)は、ゲスト材料のT1より大きいことが好ましく、その差が0.2eVよりも大きいことが更に好ましい。ホスト材料は低分子化合物であっても、高分子化合物であってもよい。また、ホスト材料と金属錯体等の発光材料とを混合して塗布する、あるいは共蒸着等することによって、発光材料がホスト材料にドープされた発光層を形成することができる。
【0172】
金属錯体を含有する層中の金属錯体の含有量は、当該層全体に対し、通常0.01〜100重量%であり、0.1〜50重量%が好ましく、1〜30重量%がより好ましい。
【0173】
前記正孔輸送層に用いる材料としては、例えば、特開昭63−70257号公報、特開昭63−175860号公報、特開平2−135359号公報、特開平2−135361号公報、特開平2−209988号公報、特開平3−37992号公報、特開平3−152184号公報に記載されている化合物が挙げられる。具体的には、ポリピニルカルバゾール及びその誘導体、ポリシラン及びその誘導体、側鎖又は主鎖に芳香族アミン化合物基を有するポリシロキサン誘導体、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体、ポリアニリン及びその誘導体、ポリアミノフェン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、ポリ(p−フェニレンピニレン)及びその誘導体、並びにポリ(2,5−チエニレンピニレン)及びその誘導体等が挙げられる。
【0174】
正孔輸送層の膜厚は、発光効率又は光電効率と駆動電圧とが適度な値となるように設定され、用いる材料によって最適値が異なるが、ピンホールが発生しない厚さが必要である。膜厚が厚すぎる正孔輸送層は素子の駆動電圧が高くなる傾向がある。従って、正孔輸送層の膜厚は1nm〜1μmであることが好ましく、2〜500nmであることがより好ましく、5〜200nmであることが特に好ましい。
【0175】
電子輸送層に用いる材料としては、例えば、特開昭63−70257号公報、特開昭63−175860号公報、特開平2−135359号公報、特開平2−135361号公報、特開平2−209988号公報、特開平3−37992号公報、特開平3−152184号公報に記載されている化合物が挙げられる。具体的には、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン及びその誘導体、ベンゾキノン及びその誘導体、ナフトキノン及びその誘導体、アントラキノン及びその誘導体、テトラシアノアントラキノジメタン及びその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン及びその誘導体、ジフェノキノン誘導体、8−ヒドロキシキノリン及びその誘導体の金属錯体、ポリキノリン及びその誘導体、ポリキノキサリン及びその誘導体、並びにポリフルオレン及びその誘導体等が挙げられる。
【0176】
電子輸送層の膜厚は、発光効率又は光電効率と駆動電圧とが適度な値となるように設定され、用いる材料によって最適値が異なるが、ピンホールが発生しない厚さが必要である。膜厚が厚すぎる電子輸送層は素子の駆動電圧が高くなる傾向がある。従って、電子輸送層の膜厚は1nm〜1μmであることが好ましく、2〜500nmであることがより好ましく、5〜200nmであることが特に好ましい。
【0177】
本発明の素子は、通常、基板を用いて形成される。基板の一方の面には電極が形成され、他方の面に素子の各層を形成する。本発明に用いる基板は電極及び素子の各層を形成する際に化学的に変化しないものであればよく、例えば、ガラス、プラスチック、高分子フイルム、シリコンの基板が挙げられる。この基板が不透明のものである場合には反対の電極として透明又は半透明のものを形成することが好ましい。
【0178】
通常、陽極及び陰極のうちの少なくとも一方は透明又は半透明のものであり、陽極が透明又は半透明のものであることが好ましい。また、本発明の素子が光電変換素子の場合には、陽極及び陰極のうちの少なくとも一方の電極を櫛型に形成してもよい。この場合、電極は不透明のものであってもよいが、透明又は半透明のものであることが好ましい。
【0179】
陽極に用いる材料としては、導電性の金属酸化物膜、半透明の金属薄膜等が挙げられる。具体的には、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、及びそれらの複合体(インジウム・スズ・オキサイド(ITO)及びインジウム・亜鉛・オキサイド等)、アンチモン・スズ・オキサイド、NESA、金、白金、銀、銅等が挙げられる。これらのうち、ITO、インジウム・亜鉛・オキサイド、酸化スズが好ましい。また、陽極として、ポリアニリン及びその誘導体、並びにポリアミノフェン及びその誘導体等の有機の透明導電膜を用いてもよい。
【0180】
陽極の形成方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法等が挙げられる。
【0181】
陽極の膜厚は、光の透過性と電気伝導度とを考慮して設定することができ、10nm〜10μmであることが好ましく、20nm〜1μmであることがより好ましく、50〜500nmであることが特に好ましい。
【0182】
陰極に用いる材料としては、仕事関数の小さい材料が好ましく、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、スカンジウム、バナジウム、亜鉛、イットリウム、インジウム、セリウム、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、及びイッテルビウム等の金属;それらのうちの2つ以上の金属の合金;それらのうちの1個以上の金属と、金、銀、白金、銅、マンガン、チタン、コバルト、ニッケル、タングステン、錫のうちの1個以上の金属との合金;グラファイト;並びにグラファイト層間化合物等が挙げられる。前記合金として、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金、インジウム−銀合金、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−マグネシウム合金、リチウム−インジウム合金、カルシウム−アルミニウム合金等が挙げられる。
【0183】
陽極及び陰極の形成方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、及び金属薄膜を熱圧着するラミネート法等が挙げられる。また、2層以上の積層構造の陰極を形成してもよい。
【0184】
陰極の膜厚は、電気伝導度や耐久性を考慮して設定することができ、10nm〜10μmであることが好ましく、20nm〜1μmであることがより好ましく、50〜500nmであることが特に好ましい。
また、陰極と有機物層との間に、導電性高分子からなる層、又は金属酸化物、金属フッ化物、若しくは有機絶縁材料等からなる平均膜厚2nm以下の層を設けてもよい。
【0185】
本発明の素子では、素子を外部から保護して長期安定的に使用するために、陰極形成後、素子を保護する保護層及び/又は保護カバーを形成していてもよい。
【0186】
このような保護層に用いる材料としては、高分子化合物、金属酸化物、金属フッ化物、金属ホウ化物等が挙げられる。また、保護カバーとしては、ガラス板、表面に低透水率処理を施したプラスチック板等が挙げられる。これらのうち、保護カバーを熱硬化性樹脂や光硬化性樹脂を用いて素子と貼り合わせて素子を密閉することが好ましい。
【0187】
電荷注入層としては、導電性高分子を含む層、陽極材料と正孔輸送層に含まれる正孔輸送材料との中間の値のイオン化ポテンシャルを有する材料を含む層(陽極と正孔輸送層との間に設けられる場合)、陰極材料と電子輸送層に含まれる電子輸送材料との中間の値の電子親和力を有する材料を含む層(陰極と電子輸送層との間に設けられる場合)等が挙げられる。
【0188】
電荷注入層に用いる材料は、電極や隣接する層の材料との関係に応じて選択すればよい。具体的には、ポリアニリン及びその誘導体、ポリアミノフェン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、ポリフェニレンビニレン及びその誘導体、ポリチエニレンビニレン及びその誘導体、ポリキノリン及びその誘導体、ポリキノキサリン及びその誘導体、芳香族アミン構造を主鎖又は側鎖に含む重合体等の導電性高分子、金属フタロシアニン(銅フタロシアニン等)、カーボン等が挙げられる。
【0189】
電荷注入層の膜厚は、1nm〜100nmであることが好ましく、1nm〜50nmであることがより好ましく、1nm〜10nmであることがより好ましい。
【0190】
本発明はまた、式(14)及び(15):
【0191】
【化49】

(式中、R100、R101、R102及びR103は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、アミノ基、アシルアミノ基、イミド基、シリル基、水酸基、アシル基、ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基又はヒドロカルビルチオ基を表す。)
で表される化合物に関するものである。
【0192】
100及びR102のそれぞれの基の具体例は前記と同じであり、水素原子、ヒドロカルビル基及びヒドロカルビルオキシ基が好ましく、水素原子及びヒドロカルビル基がより好ましく、水素原子が更に好ましい。
【0193】
101及びR103のそれぞれの基の具体例は前記と同じであり、水素原子、ヒドロカルビル基及びヒドロカルビルオキシ基が好ましく、水素原子及びヒドロカルビル基がより好ましく、ヒドロカルビル基が更に好ましい。
【0194】
本発明はまた、式(16):
【0195】
【化50】

(式中、R104、R105及びR106は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、アミノ基、アシルアミノ基、イミド基、シリル基、水酸基、アシル基、ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基又はヒドロカルビルチオ基を表す。)
【0196】
104及びR105のそれぞれの基の具体例は前記と同じであり、水素原子、ヒドロカルビル基及びヒドロカルビルオキシ基が好ましく、水素原子及びヒドロカルビル基がより好ましく、水素原子が更に好ましい。
【0197】
106のそれぞれの基の具体例は前記と同じであり、水素原子、ヒドロカルビル基及びヒドロカルビルオキシ基が好ましく、水素原子及びヒドロカルビル基がより好ましく、ヒドロカルビル基が更に好ましい。
【実施例】
【0198】
以下、本発明について、実施例を用いてより詳細に説明する。
【0199】
発光スペクトルは、励起波長を365nmとして、蛍光分光光度計(JOBINYVON−SPEX社製、商品名:Fluorolog−Tau3)により測定した。励起寿命は、この発光スペクトルの発光ピーク波長における励起寿命を求めた。
【0200】
<実施例1>
(化合物B1の合成例)
【0201】
【化51】

【0202】
化合物A1は、Chinese Journal of Chemistry 24, 1631-1638 (2006)に記載された方法で合成した。
【0203】
次いで、アルゴン雰囲気下、化合物A1(100mg、0.213mmol)、3,5−ジブロモピリジン(21mg、0.0889mmol)及びテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(10mg、0.00889mmol)に、トルエン(3mL)、エタノール(1mL)及び2Mの炭酸カリウム水溶液(1.5mL)を加え、85℃で加熱しながら、22時間撹拌した。室温まで冷却した後、得られた反応溶液の有機層と水層とを分離し、有機層を濃縮乾固したところ、粗生成物を得た。この粗生成物をシリカゲルのカラムクロマトグラフィーで精製することにより、化合物B1を得た(68mg)。
【0204】
1H NMR(300MHz、CDCl3):δ8.96(s、2H)、8.22(s、1H)、7.85(s、2H)、7.81(s、4H)、7.64(d、J=6.6Hz、8H)、7.51(d、J=6.6Hz、8H)、1.38(s、36H).
13C NMR(75MHz、CDCl3):δ150.79、147.33、142.60、138.68、137.90、136.77、133.16、127.00、125.87、124.79、34.58、31.35.
DART−MS(M/Z):found 760.29、calcd for M+ 759.48.
【0205】
(金属錯体C1の合成例)
アルゴン雰囲気下、化合物B1(16mg、0.0210mmol)のクロロホルム溶液(2mL)にヨウ化銅(I)(2mg、0.0105mmol)を加え、室温で12時間撹拌したところ、沈殿が生じた。この沈殿を回収することにより、下記組成式:
【0206】
【化52】

で表される金属錯体C1(15.7mg)を得た。
【0207】
元素分析 Found(%)C:77.95、H:6.86、N:1.61、Cu:3.76、Calcd for C1(%) C:78.30、H:7.03、N:1.60、Cu:4.36
【0208】
金属錯体C1は、紫外線励起(365nm)により黄色に発光し、その発光ピーク波長は583nmであり、励起寿命は1.0μsであった。
【0209】
金属錯体C1は、室温において、クロロホルム、トルエン、キシレン、ヘキサンに易溶であった。
【0210】
金属錯体C1を、大気中100℃で7時間放置したところ、発光強度に変化はほとんど認められなかった。また、熱重量・示差熱分析装置(セイコーインスツルメンツ製、商品名:EXSTAR−6300)を用いて、金属錯体C1を加熱したところ、30〜400℃の温度範囲において質量減少は認められなかった。
【0211】
<実施例2>
(化合物B2の合成例)
【0212】
【化53】

【0213】
化合物A2は、Chinese Journal of Chemistry 24, 1631-1638 (2006)に記載された方法で合成した。
【0214】
次いで、アルゴン雰囲気下、化合物A2(100mg、0.113mmol)、3,5−ジブロモピリジン(12mg、0.0507mmol)及びテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(6mg、0.00507mmol)に、トルエン(2mL)、エタノール(0.7mL)及び2Mの炭酸カリウム水溶液(1mL)を加え、85℃で加熱して還流させながら、22時間撹拌した。室温まで冷却した後、得られた反応溶液の有機層と水層とを分離し、有機層を濃縮乾固したところ、粗生成物を得た。この粗生成物をシリカゲルのカラムクロマトグラフィーで精製することにより、化合物B2を得た(69mg、収率85%)。
【0215】
1H NMR(300MHz、CDCl3):δ9.01(s、2H)、8.30(s、1H)、8.04(s、2H)、7.95(s、4H)、7.87(s、8H)、7.82(s、4H)、7.64(d、J=7.3Hz、16H)、7.49(d、J=7.3Hz、16H)、1.36(s、72H).
13C NMR(75MHz、CDCl3):δ150.61、147.64、143.02、142.41、141.63、139.17、138.15、136.86、133.55、127.04、125.81、125.68,125.48、125.00、34.56、31.36.
【0216】
(金属錯体C2の合成例)
アルゴン雰囲気下、化合物B2(17mg、0.0105mmol)のクロロホルム溶液(2mL)にヨウ化銅(I)(1mg、0.00525mmol)を加え、室温で12時間撹拌した。得られた溶液を濃縮乾固したところ、下記組成式:
【0217】
【化54】

で表される金属錯体C2(18mg)を得た。
【0218】
金属錯体C2は、紫外線励起(365nm)により黄緑色に発光し、その発光ピーク波長は546nmであり、励起寿命は0.9μsであった。
【0219】
金属錯体C2は、室温において、クロロホルム、トルエン、キシレン、ヘキサンに易溶であった。
【0220】
金属錯体C2を、大気中100℃で7時間放置したところ、発光強度に変化はほとんど認められなかった。また、熱重量・示差熱分析装置(セイコーインスツルメンツ製、商品名:EXSTAR−6300)を用いて、金属錯体C2を加熱したところ、30〜400℃の温度範囲において質量減少は認められなかった。
【0221】
<実施例3>
(金属錯体C3の合成例)
【0222】
【化55】

【0223】
【化56】

【0224】
化合物B3は、Tetrahedron Letters 41, 6809-6813 (2000)に記載された方法で合成した。
【0225】
アルゴン雰囲気下、テトラフルオロホウ酸銀(I)(6.10mg、0.0313mmol)と、4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテン(18.1mg、0.0313mmol)とを脱水塩化メチレン(2mL)中にて、室温で5分間撹拌した。反応溶液に化合物B3(31.0mg、0.0360mmol)を加え、均一反応溶液を40℃で5分間加熱撹拌した。反応溶液にジエチルエーテルの蒸気を徐々に拡散させて再結晶を行い、50℃で5時間真空乾燥することで金属錯体C3を得た(35.0mg、収率68%)。
【0226】
1H NMR(300MHz、CDCl3):δ8.78(s、2H)、8.67(s、2H)、8.27(s、2H)、7.89(s、2H)、7.69(d、J=8.4Hz、8H)、7.58―7.56(m、12H)、7.26―7.19(m、8H)、7.12―7.08(m、16H)、6.99―6.94(m、2H)、6.61(br、2H)、1.42(s、36H).
31P NMR(122MHz、CDCl3):δ−4.8(d、J(31P−107Ag、109Ag)=375、433Hz).
元素分析 Found(%)C:75.54、H:5.77、N:1.61、Calcd for C3(%) C:75.69、H:5.92、N:1.71
【0227】
金属錯体C3は、紫外線励起(365nm)により緑色に発光し、その発光ピーク波長は553nmであり、励起寿命は1.8μsであった。
【0228】
金属錯体C3は、室温において、クロロホルムに易溶であった。
金属錯体C3を、大気中100℃で7時間放置したところ、発光強度に変化はほとんど認められなかった。
【0229】
(金属錯体C3の有機EL素子作製例)
スパッタ法により150nmの厚みでITO膜を形成したガラス基板に、ポリ(エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸の溶液(バイエル社、商品名:Baytron P)を用いてスピンコート法により65nmの厚みで成膜し、ホットプレート上、200℃で10分間乾燥した。次に、金属錯体C3をスピンコート法により成膜した。膜厚は約70nmであった。成膜された膜を窒素ガス雰囲気下、130℃で10分間乾燥した後、バリウムを約4nm、次いでアルミニウムを約100nm蒸着して陰極とし、有機EL素子を作製した。
【0230】
得られた有機EL素子に電圧を印加したところ、560nm付近にピークを有する電界発光が得られた。
【0231】
<実施例4>
(金属錯体C4の合成例)
【0232】
【化57】

【0233】
アルゴン雰囲気下、ヘキサフルオロリン酸銅(I)(1.6mg、0.0043mmol)と、ビス[2−(ジフェニルホスフィノ)フェニル]エーテル(2.3mg、0.0043mmol)とを脱水塩化メチレン(2mL)中にて、室温で2時間撹拌した。反応溶液に上記化合物B3(3.7mg、0.0043mmol)の脱水塩化メチレン溶液(1mL)を加え、均一反応溶液を室温で1時間撹拌し、反応溶液を濃縮乾固することで金属錯体C4を得た。
【0234】
1H NMR(300MHz、CDCl3):δ8.92(s、2H)、8.76(s、2H)、8.25(s、2H)、7.90(s、2H)、7.64(d、J=8.4Hz、8H)、7.58(d、J=8.4Hz、8H)、7.54(s、4H)、7.19(t、J=7.3Hz、2H)、7.04(t、J=7.5Hz、8H)、6.10―6.92(m、14H)、6.81―6.70(br、4H)、1.43(s、36H).
31P NMR(122MHz、CDCl3):δ−9.06.
【0235】
金属錯体C4は、紫外線励起(365nm)により黄色に発光し、その発光ピーク波長は581nmであり、励起寿命は2.4μsであった。
【0236】
金属錯体C4は、室温において、クロロホルム、トルエン、キシレンに易溶であった。
【0237】
金属錯体C4を、大気中100℃で7時間放置したところ、発光強度に変化はほとんど認められなかった。
【0238】
<実施例5>
(金属錯体C5の合成例)
【0239】
【化58】

【0240】
【化59】

【0241】
化合物B4は、Tetrahedron Letters 41, 6809-6813 (2000)に記載された方法で合成した。
【0242】
アルゴン雰囲気下、ヘキサフルオロリン酸銅(I)(2.4mg、0.0064mmol)と、ビス[2−(ジフェニルホスフィノ)フェニル]エーテル(3.4mg、0.0064mmol)とを脱水塩化メチレン(2mL)中にて、室温で2時間撹拌した。反応溶液に上記化合物B4(10.8mg、0.0064mmol)の脱水塩化メチレン溶液(1mL)を加え、均一反応溶液を室温で1時間撹拌し、反応溶液を濃縮乾固することで金属錯体C5を得た。
【0243】
1H NMR(300MHz、CDCl3):δ9.00(s、2H)、8.79(s、2H)、8.28(s、2H)、8.11(s、2H)、7.91(s、4H)、7.86(s、8H)、7.70(d、J=7.2Hz、16H)、7.52(d、J=7.2Hz、16H)、6.95(br、20H)、6.89―6.80(m、4H)、6.74(br、2H)、6.69(br、2H)、1.38(s、36H).
31P NMR(122MHz、CDCl3):δ−8.82.
【0244】
金属錯体C5は、紫外線励起(365nm)により黄色に発光し、その発光ピーク波長は572.5nmであり、励起寿命は1.4μsであった。
【0245】
金属錯体C5は、室温において、クロロホルム、トルエン、キシレンに易溶であった。
【0246】
金属錯体C5を、大気中100℃で7時間放置したところ、発光強度に変化はほとんど認められなかった。
【0247】
<実施例6>
(化合物B5の合成例)
【0248】
【化60】

【0249】
アルゴン雰囲気下、化合物A1(120mg、0.256mmol)、化合物A3(55.4mg、0.116mmol)及び (1,3-ジイソプロピルイミダゾール-2-イリデン)(3-クロロピリジル)パラジウム(II)ジクロライド(7.91mg、0.0116mmol)に、トルエン(4mL)、エタノール(1mL)及び2M炭酸カリウム水溶液(1mL)を加え、90℃で9時間撹拌した。反応溶液に水とクロロホルムを加えた後、有機層を回収し、硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を濃縮乾固したところ、粗生成物を得た。この粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、淡黄色固体の化合物B5を得た(11.2mg、収率96.7%)。
【0250】
1H NMR(300MHz、CDCl3):δ8.78―8.76(m、2H)、8.00(d、J=8.0Hz、2H)、7.79(d、J=8.0Hz、2H)、7.69(s、2H)、7.57―7.53(m、12H)、7.46(d、J=7.2Hz、8H)、7.25(br、2H)、7.18―7.16(m、2H)、7.07(s、2H)、1.36(s、36H).
元素分析 Found(%)C:87.16、H:7.00、N:2.54、Calcd for B5+2H2O(%) C:87.00、H:7.20、N:2.71.
【0251】
(金属錯体C6の合成例)
【0252】
【化61】

【0253】
アルゴン雰囲気下、ヘキサフルオロリン酸銅(I)(2.4mg、0.0064mmol)と、ビス[2−(ジフェニルホスフィノ)フェニル]エーテル(3.4mg、0.0064mmol)とを脱水塩化メチレン(2mL)中にて、室温で2時間撹拌した。反応溶液に上記化合物B5(6.6mg、0.0064mmol)の脱水塩化メチレン溶液(1mL)を加え、均一反応溶液を室温で1時間撹拌し、反応溶液を濃縮乾固することで金属錯体C6を得た。
【0254】
1H NMR(300MHz、CDCl3):δ8.26(br、2H)、8.06(d、J=8.0Hz、2H)、7.80(d、J=8.0Hz、2H)、7.72(s、2H)、7.60―7.50(m、12H)、7.44(m、8H)、7.35―7.22(m、4H)、7.15―6.80(m、26H)、6.75(br、2H)、6.63(br、2H)、1.34(s、36H).
31P NMR(122MHz、CDCl3):δ−12.0.
【0255】
金属錯体C6は、紫外線励起(365nm)により黄色に発光し、その発光ピーク波長は566.0nmであり、励起寿命は1.4μsであった。
【0256】
金属錯体C6は、室温において、クロロホルム、トルエン、キシレンに易溶であった。
【0257】
金属錯体C6を、大気中100℃で7時間放置したところ、発光強度に変化はほとんど認められなかった。
【0258】
<比較例1>
(金属錯体D1の合成)
アルゴン雰囲気下、ヨウ化銅(I)(400mg、2.1mmol)に、ピリジン(5mL)及び乾燥アセトン(10mL)を加え、室温で撹拌して溶液を調製した。この溶液を−18℃まで冷却したところ、結晶が得られた。この結晶を回収することにより、下記組成式:
【0259】
【化62】

で表される金属錯体D1(312mg)を得た。
【0260】
金属錯体D1は、紫外線励起(365nm)により黄色に発光し、その発光ピーク波長は560nmであり、励起寿命は6.3μsであった。
【0261】
金属錯体D1は、室温にて、クロロホルム、トルエン、キシレンに難溶、ヘキサンに不溶であった。
【0262】
金属錯体D1を、大気中100℃で7時間放置したところ、発光を示さなくなった。また、熱重量・示差熱分析装置(セイコーインスツルメンツ製、商品名:EXSTAR−6300)を用いて、金属錯体D1を加熱したところ、123℃で全質量の23%の質量減少が認められた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹枝状分子鎖を有する含窒素芳香環配位子と、銅(I)イオン又は銀(I)イオンとを含む金属錯体。
【請求項2】
樹枝状分子鎖が共役系を有する請求項1に記載の金属錯体。
【請求項3】
樹枝状分子鎖中の分岐部分が芳香環を有する3価の基であり、該分岐部分に芳香環を有する基が結合している請求項1又は2に記載の金属錯体。
【請求項4】
分岐部分が、下記式(1):
【化1】

(式中、Ar1は、直接結合、酸素原子、イミノ基、−Q1−CONH−基、ジイミド基、ヒドロカーボンジイル基、−Q1−O−基、−Q1−S−基又は2価の複素環基を表す。Q1はヒドロカーボンジイル基を示す。ここで、イミノ基及びヒドロカーボンジイル基は、置換基を有していてもよい。R10は、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、アミノ基、アシルアミノ基、イミド基、シリル基、水酸基、アシル基、ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基、ヒドロカルビルチオ基又は複素環基を表す。アミノ基、ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基及びヒドロカルビルチオ基は、置換基を有していてもよい。eは0〜3の整数である。eが2以上である場合、複数存在するR10は、同一であっても異なっていてもよい。)
で表される3価の基であり、これに下記式(2):
【化2】

(式中、Ar2は、直接結合、酸素原子、イミノ基、−Q2−CONH−基、ジイミド基、ヒドロカーボンジイル基、−Q2−O−基、−Q2−S−基又は2価の複素環基を表す。Q2はヒドロカーボンジイル基を示す。ここで、イミノ基及びヒドロカーボンジイル基は、置換基を有していてもよい。R11は、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、−COO-基、アミノ基、ホスホノ基、スルホ基、アシルアミノ基、イミド基、シリル基、水酸基、アシル基、アンモニオ基、ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基、ヒドロカルビルチオ基又は複素環基を表す。アミノ基、ホスホノ基、スルホ基、シリル基、アンモニオ基、ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基及びヒドロカルビルチオ基は、置換基を有していてもよい。fは0〜5の整数である。fが2以上である場合、複数存在するR11は、同一であっても異なっていてもよい。)
で表される1価の基が結合する請求項3に記載の金属錯体。
【請求項5】
Ar1及びAr2が直接結合である請求項4に記載の金属錯体。
【請求項6】
樹枝状分子鎖を有する含窒素芳香環配位子が、下記式(3):
【化3】

(式中、X01は窒素原子又は−C(R02)=基であり、X02は、−X03=X04−基、−N(R03)−基、N-、酸素原子又は硫黄原子である。X03は窒素原子又は−C(R04)=基であり、X04は窒素原子又は−C(R05)=基である。但し、X02が−X03=X04−基である場合、X01、X03及びX04の少なくとも1個は、窒素原子ではない。X01が窒素原子である場合、X02は−X03=X04−基、又は−N(R03)−基であり、X02がN-、酸素原子又は硫黄原子である場合、X01は−C(R02)=基である。R01、R02、R04、R05及びR06は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、−COO-基、アシルアミノ基、イミド基、シリル基、水酸基、アシル基、ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基、ヒドロカルビルチオ基又は複素環基を表す。シリル基、ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基及びヒドロカルビルチオ基は置換基を有していてもよい。R03は、水素原子、ヒドロカルビル基又は複素環基を表し、ヒドロカルビル基は置換基を有していてもよい。R01、R02、R03、R04、R05及びR06の少なくとも1個は樹枝状分子鎖を有する。R01とR02、R02とR03、R02とR04、R03とR06、R04とR05、又はR05とR06は、それぞれ一緒になって環を形成していてもよい。)
で表される配位子である請求項1〜5のいずれか一項に記載の金属錯体。
【請求項7】
樹枝状分子鎖を有する含窒素芳香環配位子が、下記式(100):
【化4】

(式中、X01は窒素原子又は−C(R02)=基であり、X02は、−X03=X04−基、−N(R03)−基、N-、酸素原子又は硫黄原子である。X03は窒素原子又は−C(R04)=基であり、X04は窒素原子又は−C(R05)=基である。但し、X02が−X03=X04−基である場合、X01、X03及びX04の少なくとも1個は、窒素原子ではない。X01が窒素原子である場合、X02は−X03=X04−基、又は−N(R03)−基であり、X02がN-、酸素原子又は硫黄原子である場合、X01は−C(R02)=基である。R01、R02、R04及びR05は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、−COO-基、アシルアミノ基、イミド基、シリル基、水酸基、アシル基、ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基、ヒドロカルビルチオ基又は複素環基を表す。シリル基、ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基及びヒドロカルビルチオ基は置換基を有していてもよい。R03は、水素原子、ヒドロカルビル基又は複素環基を表し、ヒドロカルビル基は置換基を有していてもよい。R01、R02、R03、R04及びR05の少なくとも1個は樹枝状分子鎖を有する。R01とR02、R02とR03、R02とR04、又は、R04とR05は、それぞれ一緒になって環を形成していてもよい。R07は直接結合、酸素原子、イミノ基、−Q3−CONH−基、ジイミド基、ヒドロカーボンジイル基、−Q3−O−基、−Q3−S−基又は2価の複素環基を表す。Q3は置換基を有していてもよいヒドロカーボンジイル基を示す。X02が、共に−N(R03)−基である場合はR03同士で、X02が共に−X03=X04−基である場合はX04同士で、一方が−N(R03)−基で他方が−X03=X04−基である場合はR03とX04とで、それぞれが一緒になって環を形成していてもよい。)
で表される配位子である請求項1〜5のいずれか一項に記載の金属錯体。
【請求項8】
樹枝状分子鎖を有する含窒素芳香環配位子が、下記式(4):
【化5】

(式中、X20は窒素原子又は−C(R21)=基であり、X21は窒素原子又は−C(R22)=基であり、X22は窒素原子又は−C(R23)=基である。但し、X20、X21及びX22の少なくとも1個は、窒素原子ではない。R20、R21、R22、R23及びR24の少なくとも1個は、樹枝状分子鎖を表し、R20、R21、R22、R23及びR24は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、−COO-基、アシルアミノ基、イミド基、シリル基、水酸基、アシル基、ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基、ヒドロカルビルチオ基又は複素環基を表す。シリル基、ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基及びヒドロカルビルチオ基は置換基を有していてもよい。R20とR21、R21とR22、R22とR23、R23とR24は、それぞれ一緒になって環を形成していてもよい。)
又は下記式(5):
【化6】

(式中、X23は窒素原子又は−C(R26)=基であり、X24は−N(R27)−基、N-、酸素原子又は硫黄原子である。但し、X23が窒素原子である場合、X24は−N(R27)−基であり、X24がN-、酸素原子又は硫黄原子である場合、X23は−C(R26)=基である。R25、R26、R27及びR28の少なくとも1個は樹枝状分子鎖を表し、R25、R26及びR28は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、−COO-基、アシルアミノ基、イミド基、シリル基、水酸基、アシル基、ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基、ヒドロカルビルチオ基又は複素環基を表す。シリル基、ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基及びヒドロカルビルチオ基は置換基を有していてもよい。R27は、水素原子、ヒドロカルビル基又は複素環基を表し、ヒドロカルビル基は置換基を有していてもよい。R25とR26、R26とR27、R27とR28は、それぞれ一緒になって環を形成していてもよい。)
で表される配位子である請求項1〜5のいずれか一項に記載の金属錯体。
【請求項9】
下記組成式(6):
【化7】

(式中、M+は銅(I)イオン又は銀(I)イオンであり、Lは配位子であり、Xは対イオンである。pは正の数であり、q及びrは、それぞれ独立に、0以上の数である。R40、R41及びR42は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、アミノ基、アシルアミノ基、シリル基、水酸基、アシル基、ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基、ヒドロカルビルチオ基又は複素環基を表す。アミノ基、シリル基、ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基及びヒドロカルビルチオ基は置換基を有していてもよい。R40、R41及びR42の少なくとも1個の水素原子は下記式(7):
【化8】

によって置換されている。それぞれのR40又はそれぞれのR41は、同一であっても異なっていてもよく、R40とR41、R41とR42はそれぞれが一緒になって環を形成していてもよい。式(7)中、R43、R44、R45、R46及びR47は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、アミノ基、アシルアミノ基、シリル基、水酸基、アシル基、ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基又はヒドロカルビルチオ基を表す。アミノ基、シリル基、ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基及びヒドロカルビルチオ基は置換基を有していてもよい。複数存在するR43、R45、R46又はR47は、同一であっても異なっていてもよい。R43とR45、R44とR45、R45とR46、又はR46とR47は、それぞれが一緒になって環を形成していてもよい。L、X、下記式:
【化9】

で表される構造が複数存在する場合、それらは、各々、同一であっても異なっていてもよい。)
で表される請求項1〜8のいずれか一項に記載の金属錯体。
【請求項10】
下記組成式(8):
【化10】

(式中、M+は銅(I)イオン又は銀(I)イオンであり、Lは配位子であり、Xは対イオンである。pは正の数であり、q及びrは、それぞれ独立に、0以上の数である。R50、R51、R52、R53、R54、R55及びR56は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、アミノ基、アシルアミノ基、シリル基、水酸基、アシル基、ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基又はヒドロカルビルチオ基を表す。アミノ基、シリル基、ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基及びヒドロカルビルチオ基は置換基を有していてもよい。複数存在するR50、R52、R53、R54、R55又はR56は、同一であっても異なっていてもよい。R52とR54、R53とR54、R54とR55、R55とR56は、それぞれが一緒になって環を形成していてもよい。L、X、下記式:
【化11】

で表される構造が複数存在する場合、それらは、各々、同一であっても異なっていてもよい。)
で表される請求項9に記載の金属錯体。
【請求項11】
下記組成式(9):
【化12】

(式中、M'+は銅(I)イオン又は銀(I)イオンであり、L'は配位子であり、X'は対イオンである。sは正の数であり、t及びuは、それぞれ独立に、0以上の数である。R60、R61、R62及びR63は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、アミノ基、アシルアミノ基、シリル基、水酸基、アシル基、ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基、ヒドロカルビルチオ基又は複素環基を表す。アミノ基、シリル基、ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基及びヒドロカルビルチオ基は置換基を有していてもよい。R60、R61、R62及びR63の少なくとも1個の水素原子は前記式(7)によって置換されている。それぞれのR60、それぞれのR61、それぞれのR62又はそれぞれのR63は、同一であっても異なっていてもよく、R60とR61、R61とR62、R62とR63、R63同士はそれぞれが一緒になって環を形成していてもよい。L'、X'、下記式:
【化13】

で表される構造が複数存在する場合、それらは、各々、同一であっても異なっていてもよい。)
又は下記式(10):
【化14】

(式中、M'+は銅(I)イオン又は銀(I)イオンであり、L'は配位子であり、X'は対イオンである。sは正の数であり、t及びuは、それぞれ独立に、0以上の数である。R64、R65、R66及びR67は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、アミノ基、アシルアミノ基、シリル基、水酸基、アシル基、ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基、ヒドロカルビルチオ基又は複素環基を表し、それぞれは置換基を有していてもよい。R64、R65、R66及びR67の少なくとも1個の水素原子は前記式(7)によって置換されている。それぞれのR64、それぞれのR65、それぞれのR66又はそれぞれのR67は、同一であっても異なっていてもよく、R64とR65、R65とR66、R66とR67、R67同士はそれぞれが一緒になって環を形成していてもよい。L'、X'、下記式:
【化15】

で表される構造が複数存在する場合、それらは、各々、同一であっても異なっていてもよい。)
又は下記式(11):
【化16】

(式中、M'+は銅(I)イオン又は銀(I)イオンであり、L'は配位子であり、X'は対イオンである。sは正の数であり、t及びuは、それぞれ独立に、0以上の数である。R68、R69、R70、R71、R72、R73及びR74は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、アミノ基、アシルアミノ基、シリル基、水酸基、アシル基、ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基、ヒドロカルビルチオ基又は複素環基を表す。アミノ基、シリル基、ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基及びヒドロカルビルチオ基は置換基を有していてもよい。R71、R72、R73及びR74の少なくとも1個の水素原子は前記式(7)によって置換されている。それぞれのR68、それぞれのR69、それぞれのR70、それぞれのR71、それぞれのR72、それぞれのR73又はそれぞれのR74は、同一であっても異なっていてもよく、R68とR69、R69とR70、R71とR72、R72とR73、R73とR74、R74同士はそれぞれが一緒になって環を形成していてもよい。L'、X'、下記式:
【化17】

で表される構造が複数存在する場合、それらは、各々、同一であっても異なっていてもよい。)
で表される請求項1〜8のいずれか一項に記載の金属錯体。
【請求項12】
下記組成式(12):
【化18】

(式中、M'+は銅(I)イオン又は銀(I)イオンであり、L'は配位子であり、X'は対イオンである。sは正の数であり、t及びuは、それぞれ独立に、0以上の数である。R80、R81、R82、R83、R84、R85、R86又はR87は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、アミノ基、アシルアミノ基、イミド基、シリル基、水酸基、アシル基、ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基又はヒドロカルビルチオ基を表す。アミノ基、シリル基、ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基及びヒドロカルビルチオ基は置換基を有していてもよい。複数存在するR80、R81、R82、R83、R84、R85、R86又はR87は、同一であっても異なっていてもよい。R83とR85、R84とR85、R85とR86、R86とR87は、それぞれが一緒になって環を形成していてもよい。L'、X'、下記式:
【化19】

で表される構造が複数存在する場合、それらは、各々、同一であっても異なっていてもよい。)
で表される請求項11に記載の金属錯体。
【請求項13】
下記組成式(13):
【化20】

(式中、M'+は銅(I)イオン又は銀(I)イオンであり、L'は配位子であり、X'は対イオンである。sは正の数であり、t及びuは、それぞれ独立に、0以上の数である。R89、R90、R91、R92、R93、R94、R95、R96、R97、R98又はR99は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、アミノ基、アシルアミノ基、イミド基、シリル基、水酸基、アシル基、ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基又はヒドロカルビルチオ基を表す。アミノ基、シリル基、ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基及びヒドロカルビルチオ基は置換基を有していてもよい。複数存在するR89、R90、R91、R92、R93、R94、R95、R96、R97、R98又はR99は、同一であっても異なっていてもよい。R89とR90、R90とR91、R92とR95、R93とR94、R94同士、R93とR95、R95とR97、R96とR97、R97とR98、R98とR99は、それぞれが一緒になって環を形成していてもよい。L'、X'、下記式:
【化21】

で表される構造が複数存在する場合、それらは、各々、同一であっても異なっていてもよい。)
で表される請求項11に記載の金属錯体。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の金属錯体を含む素子。
【請求項15】
下記式(14)又は(15)で表される化合物。
【化22】

(式中、R100、R101、R102及びR103は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、アミノ基、アシルアミノ基、イミド基、シリル基、水酸基、アシル基、ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基又はヒドロカルビルチオ基を表す。)
【請求項16】
下記式(16)で表される化合物。
【化23】

(式中、R104、R105及びR106は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、アミノ基、アシルアミノ基、イミド基、シリル基、水酸基、アシル基、ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基又はヒドロカルビルチオ基を表す。)

【公開番号】特開2010−270113(P2010−270113A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−97602(P2010−97602)
【出願日】平成22年4月21日(2010.4.21)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】