説明

吸光光度自動定量分析装置

【課題】
本発明は、試料中の超微量濃度成分の高精度濃度測定が可能になると共に、超微量成分の濃度を高精度に且つ短時間(5〜10分程度)に測定できる新規な吸光光度自動定量分析装置を提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明は、溶液層の屈折率をn、セルの壁材の屈折率をm及びセルに対する光源の入射角をθとした場合に、各要素(n、m、θ)の値が以下の(1)及び(2)の関係を具備する吸光光度自動定量分析装置であって、この吸光光度自動定量分析装置は、前記セル内に連続的に溶液層を送り込む方式を採用したものであり、しかも、目的成分測定時においてセル内の溶液層の移動を停止することを特徴とする吸光光度自動定量分析装置。

(1) n>m
(2) sinθ>m/n

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ランベルト・ベールの法則に基づき、超微量濃度成分の濃度測定を可能にすると共に、超微量濃度成分の濃度を正確に且つ短時間に測定できる吸光光度自動定量分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ある波長の光が溶液層を通過したとき、入射光の強さをI0、通過光の強さをIとすれば、透過率Tは、
(1) T=I/I0
の式で表され、透過率Tと吸光度Aは、
(2) A=−logT=log(I0/I)
の式で定義される。
【0003】
そして、光が通過した溶液層の厚さ(長さ)をL(cm)、溶液中の光吸収に関係する物質の濃度をc(mol/l)とすれば、透過後の光の強さIは、
(3) I=I0×10-εcL
で与えられ、更に、この式(3)を、前記式(2)を使って書きかえると、
(4) A=log(I0/I)=εcL
となる(なお、εはモル吸光係数であり、吸光物質に固有の定数である)。
【0004】
即ち、溶液層の中を光が通過すると光吸収がおきるが、式(3)は、その光の吸収が溶液の濃度や通過した溶液層の厚さ(長さ)に対してどのように変化するかを示したもので、濃度cを一定とした場合、光の強度Iが溶液層の厚さ(長さ)Lの増加に対して指数関数的に減少するというランベルトの法則と、溶液層の厚さ(長さ)Lを一定とした場合、濃度cの増加に対して光の強度Iが指数関数的に減少するというベールの法則の二つをまとめたものであり、ランベルト・ベールの法則と称されている。
【0005】
又、式(4)は、ランベルト・ベールの法則の別表現であり、吸光度Aは溶液の濃度c及び溶液層の厚さ(長さ)Lに比例することを表している。
【0006】
吸光光度定量分析は、前記ランベルト・ベールの法則を利用して溶液層中の超微量成分の定量を行うものであり、即ち、複数の既知濃度の溶液(標準溶液)と吸光度Aの関係を予め求めて検量線を得ることにより、測定した未知濃度の試料の吸光度Aから濃度cを決定するものであり、例えば、チオシアン酸コバルト(II)錯イオンとの複合錯体の生成に基づく溶媒抽出吸光光度法は、水質検査の方法(水中の非イオン界面活性剤測定法)として公定法に記述されており、又、その他の水中の非イオン界面活性剤測定法として、トルエン抽出−チオシアン酸鉄による吸光光度定量法が開発されている(例えば、非特許文献1、非特許文献2。)。
【0007】
【非特許文献1】島津アプリケーションニュース No.A356
【非特許文献2】工業用水 第505号 第17〜20頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここで、溶液層中の試料(光吸収に関係する物質)の濃度が極めて希薄な場合(超微量成分の濃度を測定する場合)、溶液層の厚さL(セル長)が短いと、入射光の強さI0と通過光の強さIは極めて近似することになり、これより透過率Tが限りなく100%に近づくことになって、正確な定量が困難となる。
【0009】
そのため、溶液層中の試料(超微量成分)の濃度が極めて希薄な場合にあっては、溶液層の厚さ(長さ)L(セル長)を長く確保し、入射光の強さI0と通過光の強さIに差が生じるようにする必要がある。
【0010】
しかしながら、吸光光度定量分析においては、光源からの光をセルに対して垂直に入射させて漏洩光を防止する必要があるため、溶液層の厚さ(長さ)Lを長く確保すべく、単に真っ直ぐで長いセルを採用すると、当該セルの設置スペースの確保が必要になる上、光の漏洩を防止し再現性の高い定量を実現するためには、光源とセルの位置関係に相当の精度とスペースが必要となる。
【0011】
この点につき、本発明者は、溶液層の屈折率をn、セルの壁材の屈折率をm及びセルに対する光源の入射角をθとした場合に、各要素(n、m、θ)の値が一定の関係を具備することを特徴とする高精度の吸光光度自動定量分析方法、吸光光度自動定量分析装置及びこれらに用いられるセルを提案するに至っている(特願2004−379754)。
【0012】
即ち、本発明者は、前記各要素(n、m、θ)の値の関係につき、セルに入射した光が当該セル内で全反射を繰り返すように設定すれば、セル長を比較的長くしても漏洩光を防ぐことができるのであり、結果として超微量成分の濃度の吸光光度自動定量分析が可能となるとの知見を得たのである。
【0013】
又、本発明者は、前記各要素(n、m、θ)の値について一定の関係を具備させると共に、セルに入射した光が当該セル内で全反射を繰り返すように設定すれば、セルの形状について弧を描いているものや、螺旋状のものも使用することができるので、セルの設置スペースを小さくすることができるとの知見も得たのである。
【0014】
更に、本発明者は、このような試料の吸光光度自動定量分析方法を用いると、当該超微量成分の濃度測定に要する作業時間が5〜10分程度であるのに対し、現行公定法の超微量成分の濃度測定では、その作業時間が固相抽出及び乾燥時間に3.5〜4時間を要し、更に発色測定作業時間に1.5〜2時間を要し、従って、5〜6時間と長時間を要するとの知見を得たのである。
【0015】
しかしながら、この吸光光度自動定量分析方法を利用した吸光光度自動定量分析装置において、ポンプなどを用いて連続的に溶液層をセル内に送り込む方式を採用した場合、セル内において、溶液層の移動に起因する管壁抵抗が発生し、セル内壁近傍とセル中心部とにおいて流速のずれや溶液層の揺れが生じ、これより微弱なバックグラウンドノイズが発生するため、特に超微量濃度の定量の精度を低下させる場合が生じるのである。
【0016】
そこで、本発明者は、試料の目的成分測定時においてセル内の溶液層の移動を停止することを特徴とする本発明の吸光光度自動定量分析装置を完成するに至ったのであり、即ち、試料の目的成分測定時においてセル内の溶液層の移動を停止して、セル内壁近傍とセル中心部とにおける流速のずれや溶液層の揺れをなくすれば、これに起因するバックグラウンドノイズが発生しないため、超微量濃度成分の定量精度を向上することが可能になるとの知見を得たのである。
【0017】
本発明は、前記知見に基づき完成されたものであり、試料中の超微量濃度成分の高精度濃度測定が可能になると共に、超微量成分の濃度を高精度に且つ短時間に測定できる新規な吸光光度自動定量分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
以上の課題を解決する手段である本発明に係る吸光光度自動定量分析装置(以下、本発明装置と称する。)においては、溶液層の屈折率をn、セルの壁材の屈折率をm及びセルに対する光源の入射角をθとした場合に、これらの各要素(n、m、θ)の値が一定の関係を具備するように構成した吸光光度自動定量分析装置において、この吸光光度自動定量分析装置は、前記セル内に連続的に溶液層を送り込む方式を採用し、しかも、目的成分測定時においてセル内の溶液層の移動を停止することを特徴とするものである。
以下、本発明装置について詳細に説明する。
【0019】
本発明装置は、セル中に目的成分又はその誘導体を含有する溶液層を満たし、当該セルに満たされた溶液層中の目的成分に対して前記光源からの光を通過させ、その際の吸光度を測定することにより、溶液層中の目的成分又はその誘導体の濃度を導くランベルト・ベールの法則を応用した吸光光度自動定量分析装置であり、少なくともセル及び光源を具備する。
【0020】
そして、本発明装置は、この種、吸光光度自動定量分析方法において、溶液層の屈折率をn、セルの壁材の屈折率をm及びセルに対する光源の入射角をθとした場合に、それらの各要素(n、m、θ)の値が、
(1) n>m
(2) sinθ>m/n
の関係を具備することを前提とするものである。
【0021】
即ち、本発明装置においては、前記各要素(n、m、θ)の値につき、前記(1)及び(2)の関係を具備するように設定されているため、セルに入射した光が当該セル内で全反射を繰り返すのであり、これにより、セル長を比較的長くしても漏洩光を防ぐことができるのであり、結果として超微量成分の濃度測定が吸光光度自動定量分析が可能となるのである。
【0022】
又、本発明装置においては、セルに入射した光が当該セル内で全反射を繰り返すことから、セルの形状について弧を描いているものや、螺旋状のものも使用することができるので、セルの設置スペースを小さくすることもできるのである。
【0023】
本発明において用いられる溶液層は、測定対象たる目的成分又はその誘導体を溶かす溶媒の層であり、当該目的成分又はその誘導体に応じて適宜選択するものであることから、特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、メタノール(n=1.362)、水(n=1.333)、アセトン(n=1.342)、エタノール(n=1.359)、ヘキサン(n=1.372)、1−プロパノール(n=1.383)、クロロホルム(n=1.444)、四塩化炭素(n=1.459)、トルエン(n=1.494)、ベンゼン(n=1.498)クロロベンゼン(n=1.523)又は二硫化炭素(n=1.628)等から選ばれた少なくとも1種以上を挙げることができる
【0024】
又、本発明装置において用いられるセルの内壁を構成する材料としては、前記溶液層の屈折率に応じて適宜選択するものであり、特に限定されるものではないが、一般的には、テフロンアモルファス(m=1.29)、FEP(m=1.338)、PTFE(m=1.35〜1.38)、石英ガラス(m=1.458)又は硼ケイ酸ガラス(m=1.474)等から選ばれた少なくとも1種以上が用いられる。
【0025】
ここで、本発明装置において用いられるセルとしては、セル内を光が全反射するように構成することから、チューブ状のセルを用いる必要がある。
【0026】
ところで、本発明装置において、セル長としては、測定対象たる目的成分又はその誘導体の濃度に応じて適宜選択すれば良いのであり、理論的には、本発明装置においてセル長(チューブの長さ)を長く採れば長く採るほどより目的成分の超微量濃度の測定が可能になることになるが、セル長が長くなればそれだけ試薬ブランク(サンプル濃度がゼロのときの吸光度(バックグランド))が拡大することから、一般的には、セル長を10cm〜10m程度にすることが好ましい。
【0027】
そして、本発明装置においては、前記セルに入射した光が当該セル内で全反射を繰り返すことから、必ずしもセルを一直線に設置する必要は無く、例えば、弧を描いているものや、螺旋状のものも使用することができる結果、セルの設置スペースに応じて適宜セルの形状を選択することができるのである。
【0028】
又、本発明装置において用いられる光源としては、測定対象たる目的成分又はその誘導体が有する吸収波長に応じて適宜選択するものであることから、特に限定されるものではないが、一般的には、ハロゲンランプ、タングステンランプ、キセノンランプ、ヨウ素ランプ、LED、水素放電管又は重水素放電管等が用いられるのであり、実際には、これら光源中に含まれる各種波長の中から特定の波長のみを選別するために、干渉フィルターや、プリズム式或いは回折格子式の分光器(モノクロメータ)が用いられる。
【0029】
そして、本発明装置においては、ポンプなどを用いてチューブ状のセル内に連続的に溶液層を送り込む方式を採用していることから、測定の自動化が可能となるのである。
【0030】
しかしながら、この吸光光度自動定量分析装置において、単にポンプなどを用いて連続的に溶液層をセル内に送り込む方式を採用した場合、セル内において、溶液層の移動に起因する管壁抵抗が発生し、セル内壁近傍とセル中心部とにおいて流速のずれや溶液層の揺れが生じ、これより微弱なバックグラウンドノイズが生じるため、特に超微量濃度の定量の精度を低下させることがある。
【0031】
この点につき、本発明装置においては、目的成分測定時においてセル内の溶液層の移動を停止しているから、溶液層の移動に起因する管壁抵抗の発生が無く、流速のずれや溶液層の揺れが発生しないので、非常に精度の高い超微量濃度の定量が可能になるのである。
【0032】
なお、本発明装置において、セル内の溶液層の移動を停止する手段としては、特に限定されるものではないが、具体的には、例えばポンプを適宜停止してセル内の溶液層の移動を停止したり、多方向切り替えバルブを用いて適宜フロー経路を変更してセル内への溶液層の送り込みを停止したりする手段等を採用することができるのである。
【0033】
特に、本発明装置においては、フロー経路の変更を確実にするために、電磁弁などの切り替えバルブによるバイパス機構により溶液の流れの方向を変更してセル内の溶液層の移動を停止することが好ましい。
【発明の効果】
【0034】
本発明装置は、前記構成を有し、超微量濃度成分(目的成分)の高精度の吸光光度自動定量分析が可能となる新規な吸光光度自動定量分析装置である。
【0035】
即ち、本発明装置は、溶液層の屈折率をn、セルの壁材の屈折率をm及びセルに対する光源の入射角をθとした場合に、これらの各要素(n、m、θ)の値が一定の関係を具備することを特徴とする吸光光度自動定量分析方法を利用した吸光光度自動定量分析装置であり、前記各要素(n、m、θ)の値につき、セルに入射した光が当該セル内で全反射を繰り返すように設定しているから、セル長を比較的長くしても漏洩光を防ぐことができるのであり、その結果として超微量濃度成分の吸光光度自動定量分析が可能となるのである。
【0036】
特に、本発明装置においては、超微量濃度成分(目的成分)の濃度測定時においてセル内の溶液層の移動を停止して、管壁抵抗の発生を防止しているから、これに起因するバックグラウンドノイズが発生することがなく、その結果、超微量濃度成分の定量精度を著しく向上させることが可能になるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、本発明の実施例を図面に基づき詳細に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0038】
<水中の非イオン界面活性剤の自動定量分析>
(1)セル
セルとして、テフロンアモルファス(デュポン社製:屈折率=1.29)のチューブ(長さ5m、内径1mm)を用いた。
(2)光源
光源としてタングステンランプを用い、干渉フィルターにより510nmの波長を選別した。
なお、本実施例においては、光ファイバーを用いて前記510nmの波長の光をセル導入部に導き、セルに対する光源の入射角が75.4度以上(実際には、80度)となるように設定した。
(3)測定器
測定器として光学センサーを用い、これをセルの末端部に近接させ、光量の変化を検出した。
(4)溶液層
溶液層として、水(屈折率=1.333)を用いた。
(5)試料
神田川の河川水
【0039】
図1は、実施例1に係る本発明の吸光光度自動定量分析装置を用いた吸光光度自動定量分析方法を示すフロー図であり、ポンプによって、試料を移動させ、順次発色試薬等と接触・反応・抽出をさせ、最後にセル内に送り込んでその吸光度を測定するフロー式の自動吸光光度自動定量分析装置の概略図である。
以下、このフロー式の自動吸光光度自動定量分析装置の概略図について詳細に説明する。
【0040】
まず、図中1の位置から、分節空気を導入しつつ試料とトルエンを抽出コイル21に導いて当該抽出コイル21内で試料中の非イオン界面活性剤成分をトルエン中に抽出する。
【0041】
次いで、フューズセパレータ31において、比重の軽いトルエン層を取り出し、当該トルエン層とチオシアノコバルト(II)酸アンモニウム溶液を抽出コイル22に導き、フューズセパレータ32において、再度比重の軽いトルエン層を取り出す。
【0042】
この取り出したトルエン層とPAR溶液を抽出コイル23に導き、非イオン界面活性剤成分をPARと結合させ、フューズセパレータ33において、比重の重い水層を取り出し、当該水層をセル4の直前で2方向に分岐させることによって気泡を除去すると共に気泡を除去した水層をセル4に導く。
【0043】
このセル4は、図3に示す電磁弁5(51、52)で挟まれており、通常時、溶液層(前記気泡を除去した水槽)は、図3中白抜きの矢印で示した経路を通ってセル4内を通過する。
【0044】
一方、非イオン界面活性剤成分の濃度測定時においては、電磁弁5を作動し、溶液層の流れを図3中黒抜きの矢印で示したバイパス経路を通過させる。
【0045】
これにより、セル4はフロー経路からはずれ、当該セル4内を移動していた溶液層は当該セル内で停止する。このように、セル内の溶液層の移動を停止すると、管壁抵抗の発生が無くなるから、バックグラウンドノイズの発生が無くなるのである。
【0046】
そして、この状態のセル4に、510nmの光を通過させてその吸光度を測定する。
【0047】
得られた吸光度を、標準溶液を測定して得た検量線に照らし合せたところ、試料中の非イオン界面活性剤の濃度は、37.2ppbであり、又、この分析作業に要した作業時間は6分程度であった。
【0048】
又、前記(5)の試料を現行公定法で測定したところ、試料中の非イオン界面活性剤の濃度は37.0ppbであり、又、この分析作業に要した作業時間は5時間15分程度であり、本発明装置で超微量の非イオン界面活性剤の濃度を正確に測定できることが認められた。
【実施例2】
【0049】
<水中の非イオン界面活性剤の自動定量分析>
(1)セル
セルとして、FEP(デュポン社製:屈折率=1.338)のチューブ(長さ5m、内径1mm)を用いた。
(2)光源
光源としてタングステンランプを用い、干渉フィルターにより510nmの波長を選別した。
なお、本実施例においては、光ファイバーを用いて前記510nmの波長の光をセル導入部に導き、セルに対する光源の入射角が64.0度以上(実際には70度)となるように設定した。
(3)測定器
測定器として光学センサーを用い、これをセルの末端部に近接させ、光量の変化を検出した。
(4)溶液層
溶液層として、トルエン(屈折率=1.494)を用いた。
(5)試料
多摩川の河川水
【0050】
図2は、実施例2に係る本発明の吸光光度自動定量分析装置を用いた吸光光度自動定量分析方法を示すフロー図であり、ポンプによって、試料を移動させ、順次試薬と接触・反応・抽出をさせ、最後にセル内に送り込んでその吸光度を測定するフロー式の吸光光度自動定量分析装置の概略図である。
以下、このフロー式の吸光光度自動定量分析装置の概略図について詳細に説明する。
【0051】
まず、図中1の位置から、分節空気を導入しつつ試料とトルエンを抽出コイル21に導いて当該抽出コイル21内で試料中の非イオン界面活性剤成分をトルエン中に抽出する。
【0052】
次いで、フューズセパレータ31において、比重の軽いトルエン層を取り出し、当該トルエン層と、チオシアン酸カリウム溶液及び塩化第二鉄溶液の混合溶液を抽出コイル22に導き、非イオン界面活性剤成分をチオシアン酸カリウムと結合させ、フューズセパレータ32において、比重の軽いトルエン層を取り出し、当該トルエン層をセル4の直前で2方向に分岐させることによって気泡を除去すると共に、気泡を除去したトルエン層をセル4に導く。
【0053】
このセル4は、図3に示す電磁弁5(51、52)で挟まれており、通常時、溶液層(前記気泡を除去した水槽)は、図3中白抜きの矢印で示した経路を通ってセル4内を通過する。
【0054】
一方、非イオン界面活性剤成分の濃度測定時においては、電磁弁5を作動し、溶液層の流れを図3中黒抜きで示した矢印のバイパス経路を通過させる。
【0055】
これにより、セル4はフロー経路からはずれ、当該セル4内を移動していた溶液層は当該セル内で停止する。このように、セル4内の溶液層の移動を停止すると、管壁抵抗の発生が無くなるから、バックグラウンドノイズの発生が無くなるのである。
【0056】
そして、この状態のセル4に、510nmの光を通過させてその吸光度を測定する。
【0057】
得られた吸光度を、標準溶液を測定して得た検量線に照らし合せたところ、試料中の非イオン界面活性剤の濃度は、13.2ppbであり、又、この分析作業に要した作業時間は6分程度であった。
【0058】
又、前記(5)の試料を現行公定法で測定したところ、試料中の非イオン界面活性剤の濃度は13.0ppbであり、又、この分析作業に要した作業時間は5時間10分程度であり、本発明装置で超微量の非イオン界面活性剤の濃度を正確に測定できることが認められた。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】図1は、実施例1に係る本発明の吸光光度自動定量分析装置を用いた吸光光度自動定量分析方法を示すフロー図である。
【図2】図2は、実施例2に係る本発明の吸光光度自動定量分析装置を用いた吸光光度自動定量分析方法を示すフロー図である。
【図3】図3は、実施例1及び実施例2において用いた電磁弁におけるバイパス機構を示す模式図である。
【符号の説明】
【0060】
1 試料
21 抽出コイル
22 抽出コイル
23 抽出コイル
31 フューズセパレータ
32 フューズセパレータ
33 フューズセパレータ
4 セル
5 電磁弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶液層の屈折率をn、セルの壁材の屈折率をm及びセルに対する光源の入射角をθとした場合に、各要素(n、m、θ)の値が以下の(1)及び(2)の関係を具備する吸光光度定量分析装置であって、この吸光光度分析装置は、前記セル内に連続的に気泡が除去された溶液層を送り込む方式を採用したものであり、しかも、目的成分測定時においてセル内の溶液層の移動を停止することを特徴とする吸光光度自動定量分析装置。

(1) n>m
(2) sinθ>m/n
【請求項2】
電磁弁などの切り替えバルブによるバイパス機構によりセル内の溶液層の移動を停止する請求項1に記載の吸光光度自動定量分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−234601(P2006−234601A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−50139(P2005−50139)
【出願日】平成17年2月25日(2005.2.25)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(504049626)ビーエルテック株式会社 (3)
【Fターム(参考)】