吸光度計測装置またはその方法
【課題】 大きな気泡による吸光度の誤差を排除した吸光度を求める。
【手段】 制御部7は試薬反応室における複数の地点を計測候補として決定して、前記複数の計測候補に第1発光部3を移動させると共に前記発光命令を与え、さらに、前記各計測候補に第2発光部4を相対的に移動させると共に前記発光命令を与える。演算手段8は第2波長の光の計測吸光度が閾値記憶手段9に記憶された閾値以上の計測地点を対象外計測地点として決定し、前記対象外計測地点以外の対象計測地点における第1波長による計測吸光度に基づき、検査対象液状物の吸光度を求める。
【手段】 制御部7は試薬反応室における複数の地点を計測候補として決定して、前記複数の計測候補に第1発光部3を移動させると共に前記発光命令を与え、さらに、前記各計測候補に第2発光部4を相対的に移動させると共に前記発光命令を与える。演算手段8は第2波長の光の計測吸光度が閾値記憶手段9に記憶された閾値以上の計測地点を対象外計測地点として決定し、前記対象外計測地点以外の対象計測地点における第1波長による計測吸光度に基づき、検査対象液状物の吸光度を求める。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、吸光度計測の補正に関し、特に、気泡による影響の排除に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、体液成分を検査する検査器具200が開示されている。図1に、かかる検査器具200の断面図を示す。検査器具200においては、検体Aを検体供給口211に供給して、栓体205を手指操作で押圧して前記供給口内の検体Aを加圧することにより、この検体を検体供給口211から流路281,208、283を介して、測定室207に移送する。測定室207には、試薬が配置されており、かかる試薬と検体Aを反応させ、反応後の色を測定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO/2009/034649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1には以下のような問題があった。測定室207に気泡が混在した場合、正確な吸光度を計測することができない。微小な気泡の場合、照射光の散乱により透過光量が減少し、大きな気泡が存在する場合には、その部分で光が透過し、全体として透過光量が増加するからである。
【0005】
この発明は、上記の問題点を解決して、吸光度の計測について気泡による影響を排除できる吸光度計測装置またはその方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明にかかる吸光度の計測方法は、挿入部に挿入された検査対象液状物を加圧して送り込むことにより、前記挿入部に連結された試薬反応室に前記検査対象液状物を送り込み、前記試薬反応室において前記検査対象液状物を反応させ、反応結果に所定の波長の光を照射して、前記検査対象液状物の吸光度を求める吸光度計測方法であって、前記試薬反応室内に前記所定の波長の光を照射する主波長照射手段により、複数の計測地点について吸光度を計測し、前記所定の波長とは異なる波長の光を照射する副波長照射手段により、前記複数の計測地点の吸光度を計測し、前記副波長照射手段による計測吸光度が所定の閾値以上である計測値の計測地点以外を対象計測地点として決定し、前記対象計測地点における主波長の平均値を求め、前記対象計測地点における副波長の平均値を求め、前記主波長の平均値から前記副波長の平均値を減算した値を吸光度とする。
【0007】
このように、前記副波長照射手段による計測吸光度が所定の閾値以上である計測値の計測地点以外を対象計測地点として決定し、前記対象計測地点における主波長の平均値を求め、前記対象計測地点における副波長の平均値を求め、前記主波長の平均値から前記副波長の平均値を減算した値を吸光度副波長によって、大きな気泡および小さな気泡の双方による影響を排除することができる。これにより、正確な吸光度を計測することができる。
【0008】
(2)本発明にかかる吸光度の計測方法は、試薬反応室で反応した検査対象液状物に所定の波長の光を照射して、前記検査対象液状物の吸光度を求める吸光度計測方法であって、前記所定の波長光を前記試薬反応室の複数の計測地点について照射して、第1の波長による吸光度を計測し、前記所定の波長とは異なる波長の光を前記試薬反応室の複数の計測地点について照射して、第2の波長による吸光度を計測し、前記第2の波長による計測吸光度が所定の閾値以上の計測地点を対象外計測地点として決定し、前記対象外計測地点以外の対象計測地点における前記第1の波長による計測吸光度に基づき、前記検査対象液状物の吸光度を求める。
【0009】
これにより、大きな気泡による影響を排除することができ、正確な吸光度を計測することができる。
【0010】
(3)本発明にかかる吸光度計測装置は、1)計測対象液状物を試薬と反応させる試薬反応室に照射光として、前記計測対象液状物の色素と関連する第1波長の光および、前記第1波長とは異なる第2波長の光を照射する照射手段、2)前記試薬反応室を透過した前記第1波長,前記第2波長の光を受光する受光手段、3)前記受光手段が受光した光量に基づき、前記試薬反応室における計測対象液状物の吸光度を演算する演算手段を備え、4)前記照射手段は、前記第1波長の光を前記試薬反応室における複数の計測地点にて照射するとともに、前記第1波長の光を照射したのと同じ計測地点について前記第2波長の光を照射し、5)前記演算手段は、前記第2の波長の光の計測吸光度が所定の閾値以上の計測地点を対象外計測地点として決定し、前記対象外計測地点以外の対象計測地点における前記第1の波長による計測吸光度に基づき、前記検査対象液状物の吸光度を求める。
【0011】
これにより、大きな気泡による影響を排除することができ、正確な吸光度を計測することができる。
【0012】
(4)本発明にかかる吸光度計測装置は、計測対象液状物を試薬と反応させる試薬反応室に光を照射するとともに、前記試薬反応室を透過した透過光を受光し、前記受光光量に基づき、前記試薬反応室における計測対象液状物の吸光度を求める吸光度計測装置であって、1)発光命令が与えられると、前記計測対象液状物の色素と関連する第1波長の光を照射する第1発光部、2)発光命令が与えられると、前記第1波長とは異なる第2波長の光を照射する第2発光部、3)前記試薬反応室を透過した前記第1波長および前記第2波長の光を受光する受光部、4)移動命令が与えられると、前記第1発光部、前記第2発光部、および前記受光部を、前記試薬反応室に対して相対的に移動させる移動手段、5)前記発光命令および前記移動命令を与える制御部、6)前記受光部の計測値に基づいて吸光度を演算する演算手段を備え、7)前記制御部は、前記試薬反応室における複数の地点を計測候補として決定して、前記複数の計測候補に前記第1発光部を移動させると共に前記発光命令を与え、さらに、前記各計測候補に前記第2発光部を相対的に移動させると共に前記発光命令を与え、8)前記演算手段は、前記第2波長の光の計測吸光度の閾値を記憶する閾値記憶手段を備え、前記各計測候補の地点について前記第1波長および第2波長の計測吸光度をそれぞれ演算し、前記第2波長の光の計測吸光度が前記閾値以上の計測地点を対象外計測地点として決定し、前記対象外計測地点以外の対象計測地点における前記第1波長による計測吸光度に基づき、前記検査対象液状物の吸光度を求める。
【0013】
これにより、大きな気泡による影響を排除することができ、正確な吸光度を計測することができる。また、発光部および受光部が簡易な構成とすることができる。
【0014】
(5)本発明にかかる光学特性計測装置は、1)光学特性を計測する計測対象物に照射光として、前記計測対象物の色素と関連する第1波長の光および、前記第1波長とは異なる第2波長の光を照射する照射手段、2)前記計測対象物を透過した前記第1波長,前記第2波長の光を受光する受光手段、3)前記受光手段が受光した光量に基づき、前記計測対象物の光学特性を演算する演算手段、を備えた光学特性計測装置において、4)前記照射手段は、前記第1波長の光を前記計測対象物の複数の計測地点にて照射するとともに、前記第1波長の光を照射したのと同じ計測地点について前記第2波長の光を照射し、5)前記演算手段は、前記第2の波長の光の光量が所定の値以上の計測地点を対象外計測地点として決定し、前記対象外計測地点以外の対象計測地点における前記第1の波長による光量に基づき、前記検査対象物の光学特性を求める。
【0015】
これにより、前記計測対象物における大きな気泡による影響を排除した光学特性の計測が可能となる。
【0016】
なお、本明細書において、「計測対象液状物の色素と関連する波長の光」とは、吸収される波長であり、実施形態では、中心波長630nmの光が該当する。また、「計測対象液状物の色素と関連する波長以外の波長の光」とは、実施形態では、810nmとしたが、この場合、波長は主波長よりも長い方および短い方のいずれでもよい。
【0017】
また、「第1、第2発光部が走査軸上に配置される」とは、第1、第2発光部の中心がともに走査軸上にある場合はもちろん、多少ずれている場合も含む概念である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】特許文献1の検査器具200の構造を説明するための図である。
【図2】この発明の一実施形態による吸光度計測装置1の機能ブロック図である。
【図3】図2に示す吸光度計測装置20を、CPUを用いて実現した場合のハードウエア構成である。
【図4】吸光度計測装置20の外観図(一部)である。
【図5】試薬チップを示す図である。
【図6】吸光度計測装置20の発光部の構造を示す。
【図7】発光部および受光部のパルス信号を示す。
【図8】LED91,92による計測位置の関係を説明する図である。
【図9】演算処理のフローチャートである。
【図10】計測結果のデータ例である。
【図11】図10のデータをグラフに表したものである。
【図12】気泡を示す図である。
【図13】補正前後のデータ例である。
【図14】補正前後のタイムコースを示す図である。
【図15】他の計測対象の計測結果データである。
【図16】LEDの配置パターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
1.機能ブロック図
図2に、この発明の一実施形態による吸光度計測装置1の機能ブロック図を示す。吸光度とは、液体に光を照射したときに透過した光量と照射した光量との比の逆対数である。かかる吸光度は液体の濃度に比例するので、これを利用した分析が可能となる。
【0020】
吸光度計測装置1は、計測対象液状物を試薬と反応させる試薬反応室に光を照射するとともに、試薬反応室を透過した透過光を受光し、この受光光量に基づき、試薬反応室における計測対象液状物の吸光度を求める吸光度計測装置であり、第1発光部3、第2発光部4、受光部5、移動手段6、制御部7、および演算手段8を備えている。
【0021】
第1発光部3は発光命令が与えられると、計測対象液状物の色素と関連する第1波長の光を照射する。第2発光部4は発光命令が与えられると、前記第1波長とは異なる第2波長の光を照射する。受光部5は試薬反応室を透過した前記第1波長および前記第2波長の光を受光する。移動手段6は移動命令が与えられると、第1発光部3、第2発光部4、および受光部5を、試薬反応室に対して相対的に移動させる。制御部7は前記試薬反応室における複数の地点を計測候補として決定して、前記複数の計測候補に第1発光部3を移動させると共に前記発光命令を与え、さらに、前記各計測候補に第2発光部4を相対的に移動させると共に前記発光命令を与える。
【0022】
演算手段8は受光部5の計測値に基づいて吸光度を演算する。詳細としては、第2波長の光の計測吸光度の閾値を記憶する閾値記憶手段9を備えており、前記各計測候補の地点について第1波長および第2波長の計測吸光度をそれぞれ演算し、第2波長の光の計測吸光度が閾値記憶手段9に記憶された閾値以上の計測地点を対象外計測地点として決定し、前記対象外計測地点以外の対象計測地点における第1波長による計測吸光度に基づき、検査対象液状物の吸光度を求める。
【0023】
このように、第2波長による計測吸光度が前記閾値以上の計測地点を対象外計測地点として決定し、前記対象外計測地点以外の対象計測地点における前記第1波長による計測吸光度に基づき、前記検査対象液状物の吸光度を求める。ここで、第1波長の光は前記計測対象液状物の色素と関連する波長であり、第2波長は、第1波長とは異なる波長の光である。したがって、第2発光部4は発光命令が与えられると、前記第1波長とは異なる第2波長の光を照射する。このように、吸光度を計測するLEDとは波長の異なるLEDで計測することにより、後述するように、大きな気泡による吸光度の誤差を排除した吸光度を求めることができる。
【0024】
2.ハードウェア構成
つぎに、吸光度計測装置1のハードウェア構成について説明する。図3は、CPUを用いて構成した吸光度計測装置1のハードウェア構成の一例である。
【0025】
吸光度計測装置1は、CPU23、RAM27、ROM26、表示部30、スイッチ部31、I/Oポート36およびバスライン29を備えている。CPU23は、ROM26に記憶された各プログラムにしたがいバスライン29を介して、各部を制御する。
【0026】
ROM26は、オペレーティングシステムプログラム(以下OSと略す)26o、閾値記憶部26h、メインプログラム26pを有する。閾値記憶部26hには後述するように、副波長用の閾値が記憶されている。
【0027】
I/Oポート36には、計測器41、計測器41を走査させる走査機構45、2次元コードリーダー43が接続されている。計測器41は、後述するように、発光部および受光部を有しており、試薬保持部材である試薬チップにおける試薬吸光度を計測する。2次元コードリーダー43は、試薬チップの2次元コードに記録されたデータを読みとる。スイッチ部31は、吸光度計測装置1における各種処理の開始等の命令をユーザが入力する入力手段である。計測器41および2次元コードリーダー43からのデータは、I/Oポート36aを介してCPU23に与えられる。
【0028】
メインプログラム26pによる処理の詳細については後述する。本実施形態においては、オペレーティングシステムプログラム(OS)26oとして、μITRON仕様準拠の組み込み用のリアルタイムOSを使用したが、これに限定されるものではない。
【0029】
図4に吸光度計測装置1の外観図を示す。吸光度計測装置1は、ヒーター53の上に試薬保持部材である試薬チップ61が載置される。
【0030】
試薬チップ61の構造について、図5を用いて説明する。試薬チップ61の構造は、反応室が複数ある以外は、特許文献1とほぼ同様である。具体的には、試薬チップ61は、開口63に計測対象の血液などが投入され、図示しないキャップで圧力がかけられると、投入された血液は、図示しないフィルタによって血球と血漿に分離される。分離後の血漿は、微細な流路を通して反応室71〜78に送り込まれる。反応室には、反応試薬が塗布されており、送り込まれた血漿は腰薬と混和する。反応室71〜78は、図4に示す、発光部57,受光部55により吸光度が計測できるように透過性を有する素材で構成されている。本実施形態においては、各反応室の寸法として、p3=1.6mm、p4=1.8mmとした。
【0031】
図4に示す発光部57について、図6を用いて説明する。発光部57は、走査軸141上に間隔P20(本実施形態においてはP20=0.4mm)で配置された2つのLED91,92を有する。LED91,92はそれぞれ、中心波長630nm,810nmである。
【0032】
図4に示す発光部57、受光部55が固定されたブロック56は、ラック&ピニオン59によって、図4の奥行き方向に走査される。かかるラック&ピニオン59はモータ(図示せず)により一定速度でブロック56が移動するよう制御される。かかるモータは、図3のCPU23およびメインプログラムにより制御される。これにより、1組の受光部と発光部とで、8カ所の反応室の吸光度を計測することができる。
【0033】
試薬チップ61がヒーター53(図4参照)の上に載置され、図示しないキャップによって、反応室に送り込まれた後、CPU23は、発光部57に発光命令を与える。
【0034】
反応室を通過した光は受光部55で計測される。受光部で計測された計測値はCPU23に与えられ、CPU23は、吸光度を求める。CPU23は、計測した吸光度に基づいて計測結果を表示する。計測結果の表示については従来と同様であるので説明は省略する。
【0035】
発光タイミングについて図7を用いて説明する。CPU23は、図7Aに示すように、LED91に0.5ミリ秒の発光を0.5ミリ秒毎に繰り返すパルスを発光命令として与える。また、CPU23は、LED92に、図7Bに示すように、LED91と位相が0.5ミリ秒ずれたパルスを発光命令として与える。これにより、図7に示すようにLED91,92は所定間隔で所定秒間発光する。
【0036】
反応室を通過した光は受光部55で計測される。受光部55が受光する光量を図7Cに示す。このように、図5A,Bで発光しているタイミングで図5Cの103の領域では、受光が検出されていない。これは、反応室の外側における発光を示している。本実施形態においては、図5に示すように走査軸141方向における1つの反応室の幅は、1.6mmである。LED91,92の照射スポット径は、直径0.8mmであり、0.1mm移動する毎にLED91およびLED92が発光するよう走査速度と発光タイミングが決定されている。したがって、反応室内において、発色の色むらがないとすると、照射スポット径分移動するまで、徐々に受光量が増加する。照射スポットが反応室の幅に全て位置すれば、その受光量で推移し、スポット径が反応室の反対側に位置して外側にかかるようになると、徐々に受光量が減少する。また、反応室の幅が、1.6mmであり、発光する間隔は0.1mmであるので、1のLEDで1つの反応室に対して、約14の受光を検出することになる。
【0037】
LED91,92は、図7A,Bに示すように、前記0.5ミリ秒、発光タイミングがずれている。CPU23は、かかる発光タイミングに基づき、図7D,Eに示すように、受光する光を分配する。これにより、2つのLED91,92のうちいずれからの照射光に基づく受光であるかを判断できる。
【0038】
既に述べたように本実施形態においては、LED91,92の配置ピッチP20は0.4mmである。また0.1mm移動する毎にLED91およびLED92が発光する。このように、LED91,92とも、配置ピッチの整数分の1倍(この場合、1/4倍)移動させて発光させることにより、LED91,92は実質的に同じ地点にて発光する。同じ地点を計測することについて、図8を用いて説明する。図8は0.1mm間隔で離れた地点Po1〜Po14に対するLED91,92の位置関係を示す。地点Po1は反応室内における走査方向の一番手前の位置とする。LED91が地点Po1に位置するときには、LED92は、矢印95とは逆側に0.4mm離れた地点(図示せず)に位置する。LED91が地点Po1で発光することにより、Po1におけるLED91の照射光が受光部で計測される。0.5ミリ秒ずれてLED92が発光するが、反応室の幅の外であるので検出されない。LED91,92は定速で矢印95方向に走査されているので、所定時間経過すると地点Po1から0.1mm離れた地点Po2に移動する。このタイミングで、LED91が発光する。これにより地点Po2における照射光が受光部で計測される。0.5ミリ秒ずれてLED92が発光するが、反応室の幅の外であるので検出されない。同様にして地点Po3において、LED91による受光量が計測される。
【0039】
LED91が地点Po4に移動するとLED91が発光する。これにより、地点Po4におけるLED91の照射光が受光部で計測される。また、0.5ミリ秒ずれてLED92が発光する。これにより地点Po1におけるLED92の照射光が受光部で計測される。このように、地点Po1においては、LED91の検出に時系列的に遅れてLED92からの照射光が受光される。このように、発光タイミングする距離を2つのLEDの配置ピッチの整数分の1とし、同地点の計測値を組み合わせて記憶することにより各地点におけるLED91、92の照射光が受光部で計測できる。
【0040】
以降、同様にして、地点Po3、Po4・・・・と主波長と副波長による計測が得られる。
【0041】
なお、LED91とLED92との発光タイミングには0.5ミリ秒ずれているので、その分だけ計測地点がずれることとなる。たとえば、走査速度が55mm/秒である場合には、0.03mmである。発光のスポット径が0.8mmであるので実質上は、ほとんど影響でない。
【0042】
3.演算処理
本実施形態においては、既に説明したように、反応室の幅は、1.6mm、発光する間隔は0.1mm移動する毎、発光スポット径は0.8mmである。したがって、1の反応室で計測された計測地点のうち、中央の前後9カ所の地点では、発光スポット径がすべて反応室内に位置しているが、それ以外は一部が反応室外に位置することとなる。したがって、本実施形態においては、計測した受光量の変動から、反応室のほぼ中央を決定するとともに、この中央計測値およびその前後4つの計測地点における計測値を加えた計9つの計測地点の受光値から、当該反応質における試薬の吸光度を求めている。
【0043】
図9を用いて、かかる演算処理について説明する。本実施形態においては、閾値記憶部26hに記憶された値として、「0.12」を採用したものとする。なお、かかる閾値は、反応室の径、厚みなどによって適切な値を決定すればよい。
【0044】
また、本実施形態においては、検出対象としてトリグリセリドを採用した。トリグリセリドは中心波長630nmの光を用いるので、第1波長(主波長)として中心波長630nmのLED91を、第2波長(副波長)として中心波長810nmのLED92を選択した。
【0045】
CPU23は、全ての計測地点について、主波長および副波長の吸光度を求める(ステップS101)。ここでは、計測地点地点Po1〜Po14が検出されたものとする。
【0046】
CPU23は、副波長の吸光度に基づいて、開始する計測地点および終了する計測地点を決定する(ステップS102)。計測された値から吸光度を求めるのは従来と同様であるので説明は省略する。開始計測地点および終了計測地点の検出手法は、以下のように行えばよい。副波長による吸光度については、計測地点が進むにつれて、吸光度が上限値から減り、変動はするもののやがて受光量が上限値となる。かかる上限値からつぎに上限値となる計測地点を抽出し、それぞれ、開始計測地点および終了計測地点とすればよい。
【0047】
CPU23は、中央地点を決定する(ステップS103)。前記開始計測地点および終了計測地点の真ん中とを中央地点として決定すればよい。ここでは、図8に示す地点po8が中央地点として決定されたものとする。
【0048】
CPU23は、中央地点po8の中心として所定数離れた地点までを候補計測地点とする(図9ステップS104)。本実施形態においては、かかる所定数を「4」としたので、計測地点po4〜po12が候補計測地点となる。
【0049】
図10に、サンプルNo1〜4について、反応後300秒後における9つの計測地点po4〜po12における主波長と副波長とによる吸光度の計測結果を示す。図11は、これをグラフにしたものである。このように9つの計測地点のうちいくつかの計測地点では、主波長と副波長の傾向がほぼ逆方向になっている。たとえば、図11Aにおいて、地点po5〜po8について、主波長は吸光度が小さくなり、副波長は吸光度が大きくなっている。他の図11B,Cについてもほぼ同様である。
【0050】
かかる主波長と副波長における吸光度の傾向の差異について、発明は以下のように考えた。本実施形態における反応室は、図12Aに示すように、反応室207の直径が小さく(p3=1.6mm)に加え、反応室の厚さtが0.15mm程度と薄い。したがって、小さな気泡122だけでなく、厚み方向に渡って存在するような大きな気泡121が発生する可能性がある。かかる大きな気泡121,小さな気泡122による吸光度の計測誤差については、計測対象の色素に吸収される中心波長の光(主波長の光)とそうでない波長の光(副波長の光)では、傾向が異なる。
【0051】
まず、副波長の光は、その色素に対して非計測対象用の光であるので、色素の影響を受けない。すなわち、当該色素では光の減衰はおきないので、理論上は吸光度はそもそもゼロとなるはずである。ただ、小さな気泡があれば、気泡で反射される光が増えて、結果的に通過する光が減る。そのため、小さな気泡分だけの領域があれば、それは、気泡による吸光度の変動値となる。これに対して、大きな気泡の部分は、気泡の内側界面による光の反射が起こり、結果的に透過する光量が減少し、これにより吸光度が上昇する。
【0052】
主波長の光についても、これらと同様の現象は生じる。すなわち、小さな気泡があれば、気泡で反射される光が増えて、結果的に通過する光が減る。ただ、主波長の光については、大きな気泡の部分では、さらに気泡の内側界面による光の反射が起きる。ここで、主波長は、その色素に対して計測対象用の光であるので、気泡以外の部分であれば、色素の影響を受け、かなりの量が吸光される。しかし、気泡121のような大きな気泡の部分では色抜けと同じ状態となり、かなりの量の光が透過する。かかる色抜けによる増加分は、界面における反射の程度よりもかなり大きく、実質上大きな気泡の部分における内側界面による光の反射は吸収されてしまう。これにより、主波長と副波長の傾向は逆になる。
【0053】
CPU23は、副波長が所定の閾値を越える計測地点を計測候補から除外する(図9ステップS105)。この場合、閾値は「0.12」が記憶されているので、CPU23は、サンプルNo1であれば、これよりも大きな値を有する計測地点po5〜po8を除外する。
【0054】
CPU23は、残った候補についての主波長、副波長の平均値を求める(図9ステップS106)。この場合、サンプルNo1であれば、計測地点po4、po9〜po12が残った候補なので、これらの地点における主波長の吸光度「0.5293」,「0.5318」、「0.5275」、「0.5216」、「0.5235」から、平均値「0.5267」を得る。副波長についても同様にして、「0.0698」を取得する。
【0055】
CPU23は、ステップS106で得られた主波長の吸光度の平均値から副波長の吸光度の平均値を減算する(ステップS107)。かかる副波長の吸光度の平均値は、既に述べたように小さな気泡による変動値であり、これは主波長についても同じ値だけ、上記変動値が存在するからである。
【0056】
このように、副波長の計測結果により大きな気泡の存在位置を推測し、かかる大きな気泡が存在する位置以外の計測地点の計測結果から、その反応室における試薬の吸光度を求める。また、その際、大きな気泡が存在する位置以外の計測地点の副波長の計測結果は、小さな気泡による影響であるので、その分だけ減算した。これにより、大きな気泡が存在しない計測地点のデータを用いて、かつ、小さな気泡による反射誤差を除去できるので、より正確な吸光度を求めることができる。
【0057】
図13に補正前後の吸光度の差異を示す。このように、図9ステップS105の処理により、色抜けの部分を排除して平均を求めてことができる。
【0058】
図14に、X軸に反応時間、Y軸に吸光度の変化量を示した反応タイムコースを示す。実線で示したグラフが補正後で、波線で示したグラフが補正前の反応タイムコースである。このように、補正後は時間の経過とともに好ましい値が得られている。
【0059】
これは、反応室に試料が導入されると、試料中の特定成分が反応し、その結果として発色剤が呈色する。かかる反応は徐々に進むことになり、時間経過に従って吸光度が増加するからである。
【0060】
なお、補正前において、吸光度が急激に変化したのは「大きな気泡」によるものであると考えられるが、これは、この時点で発生したものではなく、大きな気泡がスキャン軸上に移動したものと考えられる。
【0061】
なお、主波長の計測値について、値が大きく変動している地点の計測値を除くことにより、本件発明と同様の効果を得られる場合もある。たとえば、色素のばらつきが無い場合である。これに対して、本実施形態のように,副波長が所定の吸光度以上の計測地点によって、大きな気泡であると判断することにより、以下のようなメリットがある。本実施形態において計測対象としたトリグリセリドと異なり、グルコースなどは発色ムラが発生する。このような発色ムラがあるような試薬の場合、複数の計測結果の平均値を求めることにより、吸光度を演算する。したがって、主波長の値が大きく変動している地点を計測対象から除外すると、このような発色ムラがある場合には、対応ができない。本実施形態のように副波長によって計測地点とするか否かを決定する方式を採用した場合、大きな気泡である部分のみを取り除いて、吸光度を判断することができる。なぜなら、副波長は発色ムラに対しては計測結果が変わらないからである。図15にグルコースの計測結果を示す。このように,副波長を用いることにより、主波長には特異な吸光度による変動が出ない場合にも、大きな気泡であっても対応することができる。
【0062】
本実施形態においては、移動(走査)を止めることなく、発光をさせている。しかし、これに限定されず、計測地点に移動後、一旦停止させ、主波長および副波長を発光させてから、移動させるように制御してもよい。この場合、主波長と副波長でズレの問題はなくなる。かかる制御は制御プログラムをハードディスク26に記憶しておき、CPU23によって制御させればよい。
【0063】
本実施形態においては、1の反応室について説明したが、複数の反応室についてもこれを繰り返すことにより、同様に吸光度を演算することができる。
【0064】
なお、本実施形態においては、LED91とLED92との発光タイミングのずれの分だけ、計測地点がずれる場合について説明したが、走査速度と発光タイミングのズレ時間から、ずれる距離を演算して、その分だけ配置間隔を調整してもよい。
【0065】
また、本実施形態においては、図6に示すように走査軸141に主波長と副波長のLEDの中心がずれないで配置されている場合について説明した。しかし、これに限定されず、中心がずれても実質上走査軸上に2つのLEDが配置されているようにしてもよい。かかるズレの程度は、以下の値まで許容される。
【0066】
本件発明は、試薬反応室に大きな気泡が存在した場合に、色抜けの問題が起きるので、かかる大きな気泡による悪影響を防止しようとするものである。このような色抜けを生じさせる気泡は、前記試薬反応室における厚み(深さ方向)またはそれ以上の大きさにて存在する。かかる気泡を光軸方向でみた場合、直径が前記厚みt以上となる。このような直径の気泡を検出できればよいのであるから、図16に示すように、走査軸におけるズレp30は許容される。
【0067】
また、本実施形態においては、前記試薬反応室における厚み(深さ方向)またはそれ以上の大きさが試薬反応室に存在する場合について説明したが、完全に厚み方向に渡っていなくても、すなわち、厚みよりもやや小さな気泡でも色抜けがおこる場合には同様に、これを排除できる。
【0068】
また、本実施形態においては、主波長と副波長のLEDを630nm,810nmとした場合について説明した。しかし、これに限定されるわけではない。試薬によって検出する中心波長が異なるので、別の試薬の吸光度を検出する場合には、主波長と副波長が逆転する場合、さらに、別の波長のLEDを用いる場合などがある。
【0069】
なお、3つのLEDを用いている場合、本実施形態と同様に、当該LEDを3つ走査軸上に並べて配置するようにすればよい。
【0070】
また、本実施形態においては、計測器41を走査させる場合について説明したが、これに限定されず、例えば、光ファイバーなどで複数箇所について光を照射し、これを、受光部で受光するようにしてもよい。
【0071】
なお、計測は端末で行い、これをサーバに転送して、補正処理はセンターコンピュータで行うようにしてもよい。
【0072】
本実施形態においては、吸光度を計測する場合について説明したが、透過光に基づいて光学特性を計測する場合についても、同様に適用することができる。その場合、副波長で計測した値が所定値以上の計測地点を候補から除外するようにすればよい。また、大きな気泡が発生しているのであれば、計測時には液状物でなくてもよい。
【0073】
上記実施形態においては、各機能を実現する為に、CPUを用い、ソフトウェアによってこれを実現している。しかし、その一部若しくは全てを、ロジック回路等のハードウェアによって実現してもよい。
【0074】
なお、上記プログラムの一部の処理をオペレーティングシステム(OS)にさせるようにしてもよい。
【技術分野】
【0001】
この発明は、吸光度計測の補正に関し、特に、気泡による影響の排除に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、体液成分を検査する検査器具200が開示されている。図1に、かかる検査器具200の断面図を示す。検査器具200においては、検体Aを検体供給口211に供給して、栓体205を手指操作で押圧して前記供給口内の検体Aを加圧することにより、この検体を検体供給口211から流路281,208、283を介して、測定室207に移送する。測定室207には、試薬が配置されており、かかる試薬と検体Aを反応させ、反応後の色を測定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO/2009/034649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1には以下のような問題があった。測定室207に気泡が混在した場合、正確な吸光度を計測することができない。微小な気泡の場合、照射光の散乱により透過光量が減少し、大きな気泡が存在する場合には、その部分で光が透過し、全体として透過光量が増加するからである。
【0005】
この発明は、上記の問題点を解決して、吸光度の計測について気泡による影響を排除できる吸光度計測装置またはその方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明にかかる吸光度の計測方法は、挿入部に挿入された検査対象液状物を加圧して送り込むことにより、前記挿入部に連結された試薬反応室に前記検査対象液状物を送り込み、前記試薬反応室において前記検査対象液状物を反応させ、反応結果に所定の波長の光を照射して、前記検査対象液状物の吸光度を求める吸光度計測方法であって、前記試薬反応室内に前記所定の波長の光を照射する主波長照射手段により、複数の計測地点について吸光度を計測し、前記所定の波長とは異なる波長の光を照射する副波長照射手段により、前記複数の計測地点の吸光度を計測し、前記副波長照射手段による計測吸光度が所定の閾値以上である計測値の計測地点以外を対象計測地点として決定し、前記対象計測地点における主波長の平均値を求め、前記対象計測地点における副波長の平均値を求め、前記主波長の平均値から前記副波長の平均値を減算した値を吸光度とする。
【0007】
このように、前記副波長照射手段による計測吸光度が所定の閾値以上である計測値の計測地点以外を対象計測地点として決定し、前記対象計測地点における主波長の平均値を求め、前記対象計測地点における副波長の平均値を求め、前記主波長の平均値から前記副波長の平均値を減算した値を吸光度副波長によって、大きな気泡および小さな気泡の双方による影響を排除することができる。これにより、正確な吸光度を計測することができる。
【0008】
(2)本発明にかかる吸光度の計測方法は、試薬反応室で反応した検査対象液状物に所定の波長の光を照射して、前記検査対象液状物の吸光度を求める吸光度計測方法であって、前記所定の波長光を前記試薬反応室の複数の計測地点について照射して、第1の波長による吸光度を計測し、前記所定の波長とは異なる波長の光を前記試薬反応室の複数の計測地点について照射して、第2の波長による吸光度を計測し、前記第2の波長による計測吸光度が所定の閾値以上の計測地点を対象外計測地点として決定し、前記対象外計測地点以外の対象計測地点における前記第1の波長による計測吸光度に基づき、前記検査対象液状物の吸光度を求める。
【0009】
これにより、大きな気泡による影響を排除することができ、正確な吸光度を計測することができる。
【0010】
(3)本発明にかかる吸光度計測装置は、1)計測対象液状物を試薬と反応させる試薬反応室に照射光として、前記計測対象液状物の色素と関連する第1波長の光および、前記第1波長とは異なる第2波長の光を照射する照射手段、2)前記試薬反応室を透過した前記第1波長,前記第2波長の光を受光する受光手段、3)前記受光手段が受光した光量に基づき、前記試薬反応室における計測対象液状物の吸光度を演算する演算手段を備え、4)前記照射手段は、前記第1波長の光を前記試薬反応室における複数の計測地点にて照射するとともに、前記第1波長の光を照射したのと同じ計測地点について前記第2波長の光を照射し、5)前記演算手段は、前記第2の波長の光の計測吸光度が所定の閾値以上の計測地点を対象外計測地点として決定し、前記対象外計測地点以外の対象計測地点における前記第1の波長による計測吸光度に基づき、前記検査対象液状物の吸光度を求める。
【0011】
これにより、大きな気泡による影響を排除することができ、正確な吸光度を計測することができる。
【0012】
(4)本発明にかかる吸光度計測装置は、計測対象液状物を試薬と反応させる試薬反応室に光を照射するとともに、前記試薬反応室を透過した透過光を受光し、前記受光光量に基づき、前記試薬反応室における計測対象液状物の吸光度を求める吸光度計測装置であって、1)発光命令が与えられると、前記計測対象液状物の色素と関連する第1波長の光を照射する第1発光部、2)発光命令が与えられると、前記第1波長とは異なる第2波長の光を照射する第2発光部、3)前記試薬反応室を透過した前記第1波長および前記第2波長の光を受光する受光部、4)移動命令が与えられると、前記第1発光部、前記第2発光部、および前記受光部を、前記試薬反応室に対して相対的に移動させる移動手段、5)前記発光命令および前記移動命令を与える制御部、6)前記受光部の計測値に基づいて吸光度を演算する演算手段を備え、7)前記制御部は、前記試薬反応室における複数の地点を計測候補として決定して、前記複数の計測候補に前記第1発光部を移動させると共に前記発光命令を与え、さらに、前記各計測候補に前記第2発光部を相対的に移動させると共に前記発光命令を与え、8)前記演算手段は、前記第2波長の光の計測吸光度の閾値を記憶する閾値記憶手段を備え、前記各計測候補の地点について前記第1波長および第2波長の計測吸光度をそれぞれ演算し、前記第2波長の光の計測吸光度が前記閾値以上の計測地点を対象外計測地点として決定し、前記対象外計測地点以外の対象計測地点における前記第1波長による計測吸光度に基づき、前記検査対象液状物の吸光度を求める。
【0013】
これにより、大きな気泡による影響を排除することができ、正確な吸光度を計測することができる。また、発光部および受光部が簡易な構成とすることができる。
【0014】
(5)本発明にかかる光学特性計測装置は、1)光学特性を計測する計測対象物に照射光として、前記計測対象物の色素と関連する第1波長の光および、前記第1波長とは異なる第2波長の光を照射する照射手段、2)前記計測対象物を透過した前記第1波長,前記第2波長の光を受光する受光手段、3)前記受光手段が受光した光量に基づき、前記計測対象物の光学特性を演算する演算手段、を備えた光学特性計測装置において、4)前記照射手段は、前記第1波長の光を前記計測対象物の複数の計測地点にて照射するとともに、前記第1波長の光を照射したのと同じ計測地点について前記第2波長の光を照射し、5)前記演算手段は、前記第2の波長の光の光量が所定の値以上の計測地点を対象外計測地点として決定し、前記対象外計測地点以外の対象計測地点における前記第1の波長による光量に基づき、前記検査対象物の光学特性を求める。
【0015】
これにより、前記計測対象物における大きな気泡による影響を排除した光学特性の計測が可能となる。
【0016】
なお、本明細書において、「計測対象液状物の色素と関連する波長の光」とは、吸収される波長であり、実施形態では、中心波長630nmの光が該当する。また、「計測対象液状物の色素と関連する波長以外の波長の光」とは、実施形態では、810nmとしたが、この場合、波長は主波長よりも長い方および短い方のいずれでもよい。
【0017】
また、「第1、第2発光部が走査軸上に配置される」とは、第1、第2発光部の中心がともに走査軸上にある場合はもちろん、多少ずれている場合も含む概念である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】特許文献1の検査器具200の構造を説明するための図である。
【図2】この発明の一実施形態による吸光度計測装置1の機能ブロック図である。
【図3】図2に示す吸光度計測装置20を、CPUを用いて実現した場合のハードウエア構成である。
【図4】吸光度計測装置20の外観図(一部)である。
【図5】試薬チップを示す図である。
【図6】吸光度計測装置20の発光部の構造を示す。
【図7】発光部および受光部のパルス信号を示す。
【図8】LED91,92による計測位置の関係を説明する図である。
【図9】演算処理のフローチャートである。
【図10】計測結果のデータ例である。
【図11】図10のデータをグラフに表したものである。
【図12】気泡を示す図である。
【図13】補正前後のデータ例である。
【図14】補正前後のタイムコースを示す図である。
【図15】他の計測対象の計測結果データである。
【図16】LEDの配置パターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
1.機能ブロック図
図2に、この発明の一実施形態による吸光度計測装置1の機能ブロック図を示す。吸光度とは、液体に光を照射したときに透過した光量と照射した光量との比の逆対数である。かかる吸光度は液体の濃度に比例するので、これを利用した分析が可能となる。
【0020】
吸光度計測装置1は、計測対象液状物を試薬と反応させる試薬反応室に光を照射するとともに、試薬反応室を透過した透過光を受光し、この受光光量に基づき、試薬反応室における計測対象液状物の吸光度を求める吸光度計測装置であり、第1発光部3、第2発光部4、受光部5、移動手段6、制御部7、および演算手段8を備えている。
【0021】
第1発光部3は発光命令が与えられると、計測対象液状物の色素と関連する第1波長の光を照射する。第2発光部4は発光命令が与えられると、前記第1波長とは異なる第2波長の光を照射する。受光部5は試薬反応室を透過した前記第1波長および前記第2波長の光を受光する。移動手段6は移動命令が与えられると、第1発光部3、第2発光部4、および受光部5を、試薬反応室に対して相対的に移動させる。制御部7は前記試薬反応室における複数の地点を計測候補として決定して、前記複数の計測候補に第1発光部3を移動させると共に前記発光命令を与え、さらに、前記各計測候補に第2発光部4を相対的に移動させると共に前記発光命令を与える。
【0022】
演算手段8は受光部5の計測値に基づいて吸光度を演算する。詳細としては、第2波長の光の計測吸光度の閾値を記憶する閾値記憶手段9を備えており、前記各計測候補の地点について第1波長および第2波長の計測吸光度をそれぞれ演算し、第2波長の光の計測吸光度が閾値記憶手段9に記憶された閾値以上の計測地点を対象外計測地点として決定し、前記対象外計測地点以外の対象計測地点における第1波長による計測吸光度に基づき、検査対象液状物の吸光度を求める。
【0023】
このように、第2波長による計測吸光度が前記閾値以上の計測地点を対象外計測地点として決定し、前記対象外計測地点以外の対象計測地点における前記第1波長による計測吸光度に基づき、前記検査対象液状物の吸光度を求める。ここで、第1波長の光は前記計測対象液状物の色素と関連する波長であり、第2波長は、第1波長とは異なる波長の光である。したがって、第2発光部4は発光命令が与えられると、前記第1波長とは異なる第2波長の光を照射する。このように、吸光度を計測するLEDとは波長の異なるLEDで計測することにより、後述するように、大きな気泡による吸光度の誤差を排除した吸光度を求めることができる。
【0024】
2.ハードウェア構成
つぎに、吸光度計測装置1のハードウェア構成について説明する。図3は、CPUを用いて構成した吸光度計測装置1のハードウェア構成の一例である。
【0025】
吸光度計測装置1は、CPU23、RAM27、ROM26、表示部30、スイッチ部31、I/Oポート36およびバスライン29を備えている。CPU23は、ROM26に記憶された各プログラムにしたがいバスライン29を介して、各部を制御する。
【0026】
ROM26は、オペレーティングシステムプログラム(以下OSと略す)26o、閾値記憶部26h、メインプログラム26pを有する。閾値記憶部26hには後述するように、副波長用の閾値が記憶されている。
【0027】
I/Oポート36には、計測器41、計測器41を走査させる走査機構45、2次元コードリーダー43が接続されている。計測器41は、後述するように、発光部および受光部を有しており、試薬保持部材である試薬チップにおける試薬吸光度を計測する。2次元コードリーダー43は、試薬チップの2次元コードに記録されたデータを読みとる。スイッチ部31は、吸光度計測装置1における各種処理の開始等の命令をユーザが入力する入力手段である。計測器41および2次元コードリーダー43からのデータは、I/Oポート36aを介してCPU23に与えられる。
【0028】
メインプログラム26pによる処理の詳細については後述する。本実施形態においては、オペレーティングシステムプログラム(OS)26oとして、μITRON仕様準拠の組み込み用のリアルタイムOSを使用したが、これに限定されるものではない。
【0029】
図4に吸光度計測装置1の外観図を示す。吸光度計測装置1は、ヒーター53の上に試薬保持部材である試薬チップ61が載置される。
【0030】
試薬チップ61の構造について、図5を用いて説明する。試薬チップ61の構造は、反応室が複数ある以外は、特許文献1とほぼ同様である。具体的には、試薬チップ61は、開口63に計測対象の血液などが投入され、図示しないキャップで圧力がかけられると、投入された血液は、図示しないフィルタによって血球と血漿に分離される。分離後の血漿は、微細な流路を通して反応室71〜78に送り込まれる。反応室には、反応試薬が塗布されており、送り込まれた血漿は腰薬と混和する。反応室71〜78は、図4に示す、発光部57,受光部55により吸光度が計測できるように透過性を有する素材で構成されている。本実施形態においては、各反応室の寸法として、p3=1.6mm、p4=1.8mmとした。
【0031】
図4に示す発光部57について、図6を用いて説明する。発光部57は、走査軸141上に間隔P20(本実施形態においてはP20=0.4mm)で配置された2つのLED91,92を有する。LED91,92はそれぞれ、中心波長630nm,810nmである。
【0032】
図4に示す発光部57、受光部55が固定されたブロック56は、ラック&ピニオン59によって、図4の奥行き方向に走査される。かかるラック&ピニオン59はモータ(図示せず)により一定速度でブロック56が移動するよう制御される。かかるモータは、図3のCPU23およびメインプログラムにより制御される。これにより、1組の受光部と発光部とで、8カ所の反応室の吸光度を計測することができる。
【0033】
試薬チップ61がヒーター53(図4参照)の上に載置され、図示しないキャップによって、反応室に送り込まれた後、CPU23は、発光部57に発光命令を与える。
【0034】
反応室を通過した光は受光部55で計測される。受光部で計測された計測値はCPU23に与えられ、CPU23は、吸光度を求める。CPU23は、計測した吸光度に基づいて計測結果を表示する。計測結果の表示については従来と同様であるので説明は省略する。
【0035】
発光タイミングについて図7を用いて説明する。CPU23は、図7Aに示すように、LED91に0.5ミリ秒の発光を0.5ミリ秒毎に繰り返すパルスを発光命令として与える。また、CPU23は、LED92に、図7Bに示すように、LED91と位相が0.5ミリ秒ずれたパルスを発光命令として与える。これにより、図7に示すようにLED91,92は所定間隔で所定秒間発光する。
【0036】
反応室を通過した光は受光部55で計測される。受光部55が受光する光量を図7Cに示す。このように、図5A,Bで発光しているタイミングで図5Cの103の領域では、受光が検出されていない。これは、反応室の外側における発光を示している。本実施形態においては、図5に示すように走査軸141方向における1つの反応室の幅は、1.6mmである。LED91,92の照射スポット径は、直径0.8mmであり、0.1mm移動する毎にLED91およびLED92が発光するよう走査速度と発光タイミングが決定されている。したがって、反応室内において、発色の色むらがないとすると、照射スポット径分移動するまで、徐々に受光量が増加する。照射スポットが反応室の幅に全て位置すれば、その受光量で推移し、スポット径が反応室の反対側に位置して外側にかかるようになると、徐々に受光量が減少する。また、反応室の幅が、1.6mmであり、発光する間隔は0.1mmであるので、1のLEDで1つの反応室に対して、約14の受光を検出することになる。
【0037】
LED91,92は、図7A,Bに示すように、前記0.5ミリ秒、発光タイミングがずれている。CPU23は、かかる発光タイミングに基づき、図7D,Eに示すように、受光する光を分配する。これにより、2つのLED91,92のうちいずれからの照射光に基づく受光であるかを判断できる。
【0038】
既に述べたように本実施形態においては、LED91,92の配置ピッチP20は0.4mmである。また0.1mm移動する毎にLED91およびLED92が発光する。このように、LED91,92とも、配置ピッチの整数分の1倍(この場合、1/4倍)移動させて発光させることにより、LED91,92は実質的に同じ地点にて発光する。同じ地点を計測することについて、図8を用いて説明する。図8は0.1mm間隔で離れた地点Po1〜Po14に対するLED91,92の位置関係を示す。地点Po1は反応室内における走査方向の一番手前の位置とする。LED91が地点Po1に位置するときには、LED92は、矢印95とは逆側に0.4mm離れた地点(図示せず)に位置する。LED91が地点Po1で発光することにより、Po1におけるLED91の照射光が受光部で計測される。0.5ミリ秒ずれてLED92が発光するが、反応室の幅の外であるので検出されない。LED91,92は定速で矢印95方向に走査されているので、所定時間経過すると地点Po1から0.1mm離れた地点Po2に移動する。このタイミングで、LED91が発光する。これにより地点Po2における照射光が受光部で計測される。0.5ミリ秒ずれてLED92が発光するが、反応室の幅の外であるので検出されない。同様にして地点Po3において、LED91による受光量が計測される。
【0039】
LED91が地点Po4に移動するとLED91が発光する。これにより、地点Po4におけるLED91の照射光が受光部で計測される。また、0.5ミリ秒ずれてLED92が発光する。これにより地点Po1におけるLED92の照射光が受光部で計測される。このように、地点Po1においては、LED91の検出に時系列的に遅れてLED92からの照射光が受光される。このように、発光タイミングする距離を2つのLEDの配置ピッチの整数分の1とし、同地点の計測値を組み合わせて記憶することにより各地点におけるLED91、92の照射光が受光部で計測できる。
【0040】
以降、同様にして、地点Po3、Po4・・・・と主波長と副波長による計測が得られる。
【0041】
なお、LED91とLED92との発光タイミングには0.5ミリ秒ずれているので、その分だけ計測地点がずれることとなる。たとえば、走査速度が55mm/秒である場合には、0.03mmである。発光のスポット径が0.8mmであるので実質上は、ほとんど影響でない。
【0042】
3.演算処理
本実施形態においては、既に説明したように、反応室の幅は、1.6mm、発光する間隔は0.1mm移動する毎、発光スポット径は0.8mmである。したがって、1の反応室で計測された計測地点のうち、中央の前後9カ所の地点では、発光スポット径がすべて反応室内に位置しているが、それ以外は一部が反応室外に位置することとなる。したがって、本実施形態においては、計測した受光量の変動から、反応室のほぼ中央を決定するとともに、この中央計測値およびその前後4つの計測地点における計測値を加えた計9つの計測地点の受光値から、当該反応質における試薬の吸光度を求めている。
【0043】
図9を用いて、かかる演算処理について説明する。本実施形態においては、閾値記憶部26hに記憶された値として、「0.12」を採用したものとする。なお、かかる閾値は、反応室の径、厚みなどによって適切な値を決定すればよい。
【0044】
また、本実施形態においては、検出対象としてトリグリセリドを採用した。トリグリセリドは中心波長630nmの光を用いるので、第1波長(主波長)として中心波長630nmのLED91を、第2波長(副波長)として中心波長810nmのLED92を選択した。
【0045】
CPU23は、全ての計測地点について、主波長および副波長の吸光度を求める(ステップS101)。ここでは、計測地点地点Po1〜Po14が検出されたものとする。
【0046】
CPU23は、副波長の吸光度に基づいて、開始する計測地点および終了する計測地点を決定する(ステップS102)。計測された値から吸光度を求めるのは従来と同様であるので説明は省略する。開始計測地点および終了計測地点の検出手法は、以下のように行えばよい。副波長による吸光度については、計測地点が進むにつれて、吸光度が上限値から減り、変動はするもののやがて受光量が上限値となる。かかる上限値からつぎに上限値となる計測地点を抽出し、それぞれ、開始計測地点および終了計測地点とすればよい。
【0047】
CPU23は、中央地点を決定する(ステップS103)。前記開始計測地点および終了計測地点の真ん中とを中央地点として決定すればよい。ここでは、図8に示す地点po8が中央地点として決定されたものとする。
【0048】
CPU23は、中央地点po8の中心として所定数離れた地点までを候補計測地点とする(図9ステップS104)。本実施形態においては、かかる所定数を「4」としたので、計測地点po4〜po12が候補計測地点となる。
【0049】
図10に、サンプルNo1〜4について、反応後300秒後における9つの計測地点po4〜po12における主波長と副波長とによる吸光度の計測結果を示す。図11は、これをグラフにしたものである。このように9つの計測地点のうちいくつかの計測地点では、主波長と副波長の傾向がほぼ逆方向になっている。たとえば、図11Aにおいて、地点po5〜po8について、主波長は吸光度が小さくなり、副波長は吸光度が大きくなっている。他の図11B,Cについてもほぼ同様である。
【0050】
かかる主波長と副波長における吸光度の傾向の差異について、発明は以下のように考えた。本実施形態における反応室は、図12Aに示すように、反応室207の直径が小さく(p3=1.6mm)に加え、反応室の厚さtが0.15mm程度と薄い。したがって、小さな気泡122だけでなく、厚み方向に渡って存在するような大きな気泡121が発生する可能性がある。かかる大きな気泡121,小さな気泡122による吸光度の計測誤差については、計測対象の色素に吸収される中心波長の光(主波長の光)とそうでない波長の光(副波長の光)では、傾向が異なる。
【0051】
まず、副波長の光は、その色素に対して非計測対象用の光であるので、色素の影響を受けない。すなわち、当該色素では光の減衰はおきないので、理論上は吸光度はそもそもゼロとなるはずである。ただ、小さな気泡があれば、気泡で反射される光が増えて、結果的に通過する光が減る。そのため、小さな気泡分だけの領域があれば、それは、気泡による吸光度の変動値となる。これに対して、大きな気泡の部分は、気泡の内側界面による光の反射が起こり、結果的に透過する光量が減少し、これにより吸光度が上昇する。
【0052】
主波長の光についても、これらと同様の現象は生じる。すなわち、小さな気泡があれば、気泡で反射される光が増えて、結果的に通過する光が減る。ただ、主波長の光については、大きな気泡の部分では、さらに気泡の内側界面による光の反射が起きる。ここで、主波長は、その色素に対して計測対象用の光であるので、気泡以外の部分であれば、色素の影響を受け、かなりの量が吸光される。しかし、気泡121のような大きな気泡の部分では色抜けと同じ状態となり、かなりの量の光が透過する。かかる色抜けによる増加分は、界面における反射の程度よりもかなり大きく、実質上大きな気泡の部分における内側界面による光の反射は吸収されてしまう。これにより、主波長と副波長の傾向は逆になる。
【0053】
CPU23は、副波長が所定の閾値を越える計測地点を計測候補から除外する(図9ステップS105)。この場合、閾値は「0.12」が記憶されているので、CPU23は、サンプルNo1であれば、これよりも大きな値を有する計測地点po5〜po8を除外する。
【0054】
CPU23は、残った候補についての主波長、副波長の平均値を求める(図9ステップS106)。この場合、サンプルNo1であれば、計測地点po4、po9〜po12が残った候補なので、これらの地点における主波長の吸光度「0.5293」,「0.5318」、「0.5275」、「0.5216」、「0.5235」から、平均値「0.5267」を得る。副波長についても同様にして、「0.0698」を取得する。
【0055】
CPU23は、ステップS106で得られた主波長の吸光度の平均値から副波長の吸光度の平均値を減算する(ステップS107)。かかる副波長の吸光度の平均値は、既に述べたように小さな気泡による変動値であり、これは主波長についても同じ値だけ、上記変動値が存在するからである。
【0056】
このように、副波長の計測結果により大きな気泡の存在位置を推測し、かかる大きな気泡が存在する位置以外の計測地点の計測結果から、その反応室における試薬の吸光度を求める。また、その際、大きな気泡が存在する位置以外の計測地点の副波長の計測結果は、小さな気泡による影響であるので、その分だけ減算した。これにより、大きな気泡が存在しない計測地点のデータを用いて、かつ、小さな気泡による反射誤差を除去できるので、より正確な吸光度を求めることができる。
【0057】
図13に補正前後の吸光度の差異を示す。このように、図9ステップS105の処理により、色抜けの部分を排除して平均を求めてことができる。
【0058】
図14に、X軸に反応時間、Y軸に吸光度の変化量を示した反応タイムコースを示す。実線で示したグラフが補正後で、波線で示したグラフが補正前の反応タイムコースである。このように、補正後は時間の経過とともに好ましい値が得られている。
【0059】
これは、反応室に試料が導入されると、試料中の特定成分が反応し、その結果として発色剤が呈色する。かかる反応は徐々に進むことになり、時間経過に従って吸光度が増加するからである。
【0060】
なお、補正前において、吸光度が急激に変化したのは「大きな気泡」によるものであると考えられるが、これは、この時点で発生したものではなく、大きな気泡がスキャン軸上に移動したものと考えられる。
【0061】
なお、主波長の計測値について、値が大きく変動している地点の計測値を除くことにより、本件発明と同様の効果を得られる場合もある。たとえば、色素のばらつきが無い場合である。これに対して、本実施形態のように,副波長が所定の吸光度以上の計測地点によって、大きな気泡であると判断することにより、以下のようなメリットがある。本実施形態において計測対象としたトリグリセリドと異なり、グルコースなどは発色ムラが発生する。このような発色ムラがあるような試薬の場合、複数の計測結果の平均値を求めることにより、吸光度を演算する。したがって、主波長の値が大きく変動している地点を計測対象から除外すると、このような発色ムラがある場合には、対応ができない。本実施形態のように副波長によって計測地点とするか否かを決定する方式を採用した場合、大きな気泡である部分のみを取り除いて、吸光度を判断することができる。なぜなら、副波長は発色ムラに対しては計測結果が変わらないからである。図15にグルコースの計測結果を示す。このように,副波長を用いることにより、主波長には特異な吸光度による変動が出ない場合にも、大きな気泡であっても対応することができる。
【0062】
本実施形態においては、移動(走査)を止めることなく、発光をさせている。しかし、これに限定されず、計測地点に移動後、一旦停止させ、主波長および副波長を発光させてから、移動させるように制御してもよい。この場合、主波長と副波長でズレの問題はなくなる。かかる制御は制御プログラムをハードディスク26に記憶しておき、CPU23によって制御させればよい。
【0063】
本実施形態においては、1の反応室について説明したが、複数の反応室についてもこれを繰り返すことにより、同様に吸光度を演算することができる。
【0064】
なお、本実施形態においては、LED91とLED92との発光タイミングのずれの分だけ、計測地点がずれる場合について説明したが、走査速度と発光タイミングのズレ時間から、ずれる距離を演算して、その分だけ配置間隔を調整してもよい。
【0065】
また、本実施形態においては、図6に示すように走査軸141に主波長と副波長のLEDの中心がずれないで配置されている場合について説明した。しかし、これに限定されず、中心がずれても実質上走査軸上に2つのLEDが配置されているようにしてもよい。かかるズレの程度は、以下の値まで許容される。
【0066】
本件発明は、試薬反応室に大きな気泡が存在した場合に、色抜けの問題が起きるので、かかる大きな気泡による悪影響を防止しようとするものである。このような色抜けを生じさせる気泡は、前記試薬反応室における厚み(深さ方向)またはそれ以上の大きさにて存在する。かかる気泡を光軸方向でみた場合、直径が前記厚みt以上となる。このような直径の気泡を検出できればよいのであるから、図16に示すように、走査軸におけるズレp30は許容される。
【0067】
また、本実施形態においては、前記試薬反応室における厚み(深さ方向)またはそれ以上の大きさが試薬反応室に存在する場合について説明したが、完全に厚み方向に渡っていなくても、すなわち、厚みよりもやや小さな気泡でも色抜けがおこる場合には同様に、これを排除できる。
【0068】
また、本実施形態においては、主波長と副波長のLEDを630nm,810nmとした場合について説明した。しかし、これに限定されるわけではない。試薬によって検出する中心波長が異なるので、別の試薬の吸光度を検出する場合には、主波長と副波長が逆転する場合、さらに、別の波長のLEDを用いる場合などがある。
【0069】
なお、3つのLEDを用いている場合、本実施形態と同様に、当該LEDを3つ走査軸上に並べて配置するようにすればよい。
【0070】
また、本実施形態においては、計測器41を走査させる場合について説明したが、これに限定されず、例えば、光ファイバーなどで複数箇所について光を照射し、これを、受光部で受光するようにしてもよい。
【0071】
なお、計測は端末で行い、これをサーバに転送して、補正処理はセンターコンピュータで行うようにしてもよい。
【0072】
本実施形態においては、吸光度を計測する場合について説明したが、透過光に基づいて光学特性を計測する場合についても、同様に適用することができる。その場合、副波長で計測した値が所定値以上の計測地点を候補から除外するようにすればよい。また、大きな気泡が発生しているのであれば、計測時には液状物でなくてもよい。
【0073】
上記実施形態においては、各機能を実現する為に、CPUを用い、ソフトウェアによってこれを実現している。しかし、その一部若しくは全てを、ロジック回路等のハードウェアによって実現してもよい。
【0074】
なお、上記プログラムの一部の処理をオペレーティングシステム(OS)にさせるようにしてもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿入部に挿入された検査対象液状物を加圧して送り込むことにより、前記挿入部に連結された試薬反応室に前記検査対象液状物を送り込み、前記試薬反応室において前記検査対象液状物を反応させ、反応結果に所定の波長の光を照射して、前記検査対象液状物の吸光度を求める吸光度計測方法であって、
前記試薬反応室内に前記所定の波長の光を照射する主波長照射手段により、複数の計測地点について吸光度を計測し、
前記所定の波長とは異なる波長の光を照射する副波長照射手段により、前記複数の計測地点の吸光度を計測し、
前記副波長照射手段による計測吸光度が所定の閾値以上である計測値の計測地点以外を対象計測地点として決定し、
前記対象計測地点における主波長の平均値を求め、
前記対象計測地点における副波長の平均値を求め、
前記主波長の平均値から前記副波長の平均値を減算した値を吸光度とすること、
を特徴とする吸光度の計測方法。
【請求項2】
試薬反応室で反応した検査対象液状物に所定の波長の光を照射して、前記検査対象液状物の吸光度を求める吸光度計測方法であって、
前記所定の波長光を前記試薬反応室の複数の計測地点について照射して、第1の波長による吸光度を計測し、
前記所定の波長とは異なる波長の光を前記試薬反応室の複数の計測地点について照射して、第2の波長による吸光度を計測し、
前記第2の波長による計測吸光度が所定の閾値以上の計測地点を対象外計測地点として決定し、前記対象外計測地点以外の対象計測地点における前記第1の波長による計測吸光度に基づき、前記検査対象液状物の吸光度を求めること、
を特徴とする吸光度の計測方法。
【請求項3】
計測対象液状物を試薬と反応させる試薬反応室に照射光として、前記計測対象液状物の色素と関連する第1波長の光および、前記第1波長とは異なる第2波長の光を照射する照射手段、
前記試薬反応室を透過した前記第1波長,前記第2波長の光を受光する受光手段、
前記受光手段が受光した光量に基づき、前記試薬反応室における計測対象液状物の吸光度を演算する演算手段、
を備えた吸光度計測装置において、
前記照射手段は、前記第1波長の光を前記試薬反応室における複数の計測地点にて照射するとともに、前記第1波長の光を照射したのと同じ計測地点について前記第2波長の光を照射し、
前記演算手段は、前記第2の波長の光の計測吸光度が所定の閾値以上の計測地点を対象外計測地点として決定し、前記対象外計測地点以外の対象計測地点における前記第1の波長による計測吸光度に基づき、前記検査対象液状物の吸光度を求めること、
を特徴とする吸光度計測装置。
【請求項4】
計測対象液状物を試薬と反応させる試薬反応室に光を照射するとともに、前記試薬反応室を透過した透過光を受光し、前記受光光量に基づき、前記試薬反応室における計測対象液状物の吸光度を求める吸光度計測装置であって、
発光命令が与えられると、前記計測対象液状物の色素と関連する第1波長の光を照射する第1発光部、
発光命令が与えられると、前記第1波長とは異なる第2波長の光を照射する第2発光部、
前記試薬反応室を透過した前記第1波長および前記第2波長の光を受光する受光部、
移動命令が与えられると、前記第1発光部、前記第2発光部、および前記受光部を、前記試薬反応室に対して相対的に移動させる移動手段、
前記発光命令および前記移動命令を与える制御部、
前記受光部の計測値に基づいて吸光度を演算する演算手段、
を備えた吸光度計測装置において、
前記制御部は、前記試薬反応室における複数の地点を計測候補として決定して、前記複数の計測候補に前記第1発光部を移動させると共に前記発光命令を与え、さらに、前記各計測候補に前記第2発光部を相対的に移動させると共に前記発光命令を与え、
前記演算手段は、
前記第2波長の光の計測吸光度の閾値を記憶する閾値記憶手段を備え、
前記各計測候補の地点について前記第1波長および第2波長の計測吸光度をそれぞれ演算し、前記第2波長の光の計測吸光度が前記閾値以上の計測地点を対象外計測地点として決定し、前記対象外計測地点以外の対象計測地点における前記第1波長による計測吸光度に基づき、前記検査対象液状物の吸光度を求めること、
を特徴とする吸光度計測装置。
【請求項5】
光学特性を計測する計測対象物に照射光として、前記計測対象物の色素と関連する第1波長の光および、前記第1波長とは異なる第2波長の光を照射する照射手段、
前記計測対象物を透過した前記第1波長,前記第2波長の光を受光する受光手段、
前記受光手段が受光した光量に基づき、前記計測対象物の光学特性を演算する演算手段、
を備えた光学特性計測装置において、
前記照射手段は、前記第1波長の光を前記計測対象物における複数の計測地点にて照射するとともに、前記第1波長の光を照射したのと同じ計測地点について前記第2波長の光を照射し、
前記演算手段は、前記第2の波長の光の光量が所定の閾値以上の計測地点を対象外計測地点として決定し、前記対象外計測地点以外の対象計測地点における前記第1の波長による光量に基づき、前記検査対象物の光学特性を求めること、
を特徴とする光学特性計測装置。
【請求項1】
挿入部に挿入された検査対象液状物を加圧して送り込むことにより、前記挿入部に連結された試薬反応室に前記検査対象液状物を送り込み、前記試薬反応室において前記検査対象液状物を反応させ、反応結果に所定の波長の光を照射して、前記検査対象液状物の吸光度を求める吸光度計測方法であって、
前記試薬反応室内に前記所定の波長の光を照射する主波長照射手段により、複数の計測地点について吸光度を計測し、
前記所定の波長とは異なる波長の光を照射する副波長照射手段により、前記複数の計測地点の吸光度を計測し、
前記副波長照射手段による計測吸光度が所定の閾値以上である計測値の計測地点以外を対象計測地点として決定し、
前記対象計測地点における主波長の平均値を求め、
前記対象計測地点における副波長の平均値を求め、
前記主波長の平均値から前記副波長の平均値を減算した値を吸光度とすること、
を特徴とする吸光度の計測方法。
【請求項2】
試薬反応室で反応した検査対象液状物に所定の波長の光を照射して、前記検査対象液状物の吸光度を求める吸光度計測方法であって、
前記所定の波長光を前記試薬反応室の複数の計測地点について照射して、第1の波長による吸光度を計測し、
前記所定の波長とは異なる波長の光を前記試薬反応室の複数の計測地点について照射して、第2の波長による吸光度を計測し、
前記第2の波長による計測吸光度が所定の閾値以上の計測地点を対象外計測地点として決定し、前記対象外計測地点以外の対象計測地点における前記第1の波長による計測吸光度に基づき、前記検査対象液状物の吸光度を求めること、
を特徴とする吸光度の計測方法。
【請求項3】
計測対象液状物を試薬と反応させる試薬反応室に照射光として、前記計測対象液状物の色素と関連する第1波長の光および、前記第1波長とは異なる第2波長の光を照射する照射手段、
前記試薬反応室を透過した前記第1波長,前記第2波長の光を受光する受光手段、
前記受光手段が受光した光量に基づき、前記試薬反応室における計測対象液状物の吸光度を演算する演算手段、
を備えた吸光度計測装置において、
前記照射手段は、前記第1波長の光を前記試薬反応室における複数の計測地点にて照射するとともに、前記第1波長の光を照射したのと同じ計測地点について前記第2波長の光を照射し、
前記演算手段は、前記第2の波長の光の計測吸光度が所定の閾値以上の計測地点を対象外計測地点として決定し、前記対象外計測地点以外の対象計測地点における前記第1の波長による計測吸光度に基づき、前記検査対象液状物の吸光度を求めること、
を特徴とする吸光度計測装置。
【請求項4】
計測対象液状物を試薬と反応させる試薬反応室に光を照射するとともに、前記試薬反応室を透過した透過光を受光し、前記受光光量に基づき、前記試薬反応室における計測対象液状物の吸光度を求める吸光度計測装置であって、
発光命令が与えられると、前記計測対象液状物の色素と関連する第1波長の光を照射する第1発光部、
発光命令が与えられると、前記第1波長とは異なる第2波長の光を照射する第2発光部、
前記試薬反応室を透過した前記第1波長および前記第2波長の光を受光する受光部、
移動命令が与えられると、前記第1発光部、前記第2発光部、および前記受光部を、前記試薬反応室に対して相対的に移動させる移動手段、
前記発光命令および前記移動命令を与える制御部、
前記受光部の計測値に基づいて吸光度を演算する演算手段、
を備えた吸光度計測装置において、
前記制御部は、前記試薬反応室における複数の地点を計測候補として決定して、前記複数の計測候補に前記第1発光部を移動させると共に前記発光命令を与え、さらに、前記各計測候補に前記第2発光部を相対的に移動させると共に前記発光命令を与え、
前記演算手段は、
前記第2波長の光の計測吸光度の閾値を記憶する閾値記憶手段を備え、
前記各計測候補の地点について前記第1波長および第2波長の計測吸光度をそれぞれ演算し、前記第2波長の光の計測吸光度が前記閾値以上の計測地点を対象外計測地点として決定し、前記対象外計測地点以外の対象計測地点における前記第1波長による計測吸光度に基づき、前記検査対象液状物の吸光度を求めること、
を特徴とする吸光度計測装置。
【請求項5】
光学特性を計測する計測対象物に照射光として、前記計測対象物の色素と関連する第1波長の光および、前記第1波長とは異なる第2波長の光を照射する照射手段、
前記計測対象物を透過した前記第1波長,前記第2波長の光を受光する受光手段、
前記受光手段が受光した光量に基づき、前記計測対象物の光学特性を演算する演算手段、
を備えた光学特性計測装置において、
前記照射手段は、前記第1波長の光を前記計測対象物における複数の計測地点にて照射するとともに、前記第1波長の光を照射したのと同じ計測地点について前記第2波長の光を照射し、
前記演算手段は、前記第2の波長の光の光量が所定の閾値以上の計測地点を対象外計測地点として決定し、前記対象外計測地点以外の対象計測地点における前記第1の波長による光量に基づき、前記検査対象物の光学特性を求めること、
を特徴とする光学特性計測装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2010−276443(P2010−276443A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−128581(P2009−128581)
【出願日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(591029518)テラメックス株式会社 (11)
【出願人】(305053226)株式会社ティー・ティー・エム (10)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(591029518)テラメックス株式会社 (11)
【出願人】(305053226)株式会社ティー・ティー・エム (10)
【Fターム(参考)】
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