説明

吸入器コンポーネント

本発明は、ハウジング外被を備えたハウジング(3)、吸入可能な媒体を利用者の口腔内に供給するための吸い口開口部(5)を備えた吸い口(4)、周囲に匂い物質(16)を放出するため、及び利用者による匂い物質の嗅覚的知覚のために、拡散により周囲と連通可能な、匂い物質(16)を内包する匂い物質タンク(6)、を有する吸入器コンポーネントに関し、その際、a) ハウジング(3)がハウジングコンポーネント(3a)を含み、b) 吸い口(4)がハウジングコンポーネント(3a)と分離可能に結合しており、c) ハウジング外被が第一の外被パーツ(11)及び第二の外被パーツ(14)を含み、d) ハウジングコンポーネント(3a)が第一の外被パーツ(11)を形成し、e) 吸い口(4)が第二の外被パーツ(14)を形成し、f) 且つ匂い物質タンク(6)が、吸い口(4)と構造的に一体化されており、平面的に形成されており、第二の外被パーツ(14)の表面に平面的に配置されているか又は匂い物質タンク自体が第二の外被パーツ(14)を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
ハウジング外被を備えたハウジング、
吸入可能な媒体を利用者の口腔内に供給するための吸い口開口部を備えた吸い口、
周囲に匂い物質を放出するため、及び利用者による匂い物質の嗅覚的知覚のために、拡散により周囲と連通可能な、匂い物質を内包する匂い物質タンク
を有する吸入器コンポーネントに関する。
【背景技術】
【0002】
本特許出願では、「吸入器」という概念は、医療用吸入器具及び非医療用吸入器具に関する。この概念はさらに、それが吸入可能な媒体を利用者に提供するために用いることに定められている場合に限り、例えば欧州特許分類A24F47/00Bに含まれるような紙巻きタバコ代替品に関する。この吸入可能な媒体は、蒸気空気混合物又は/及びエアロゾル、特にニコチン含有の蒸気空気混合物又は/及びエアロゾルから成る。「匂い物質」という単数形の使用は、その匂い物質が一種類の含有物質だけから成ると類推させるものではない。むしろ「匂い物質」が多数の非常に異なる単一物質を含む可能性もある。「拡散により周囲と連通可能な匂い物質タンク」としては、その中に内包された匂い物質が気化又は/及び昇華して拡散することにより周囲へ揮発可能なあらゆるタンクが考慮される。
【0003】
今日において入手可能なニコチン吸入器は、一般的には、ニコチン含有の蒸気空気混合物又は/及びエアロゾルを利用者の口腔内に投与するというコンセプトである。例として、マクニール コンシューマー ヘルスケア社(McNeil Consumer Healthcare GmbH)により「Nicorette(登録商標)吸入器」(www.nicorette.deを参照)の名称で販売されているニコチン吸入器を挙げておく。この吸入器は、吸い口を介して利用者にニコチン含有の蒸気空気混合物を供給するものであり、この混合物の感覚刺激効果は多くの利用者にとって不快と感じるものである。この吸入器は、紙巻きタバコ煙の複雑な感覚刺激効果をまったく真似できていない。喫煙の際、吸引中に紙巻きタバコの赤く輝く端から流れ出る副流煙によってもたらされるような嗅覚的刺激はまったく生じない。この追加的な嗅覚的刺激は、タバコの消費を継続する本質的な動機を喫煙者に与える鍵刺激と同一視可能であると前提できる。
【0004】
米国特許第7,100,618号(アルマンド ドミンゲス(Armando Dominguez))は、隔壁43で隔てられた二つのチャンバ41、42を内包するハウジング40から成る感覚的な煙シミュレータを記載している。下のチャンバ42は、片側に空気流入窓10を備えている。反対側にはこのチャンバに筒状の吸い口ホルダ14aが結合されている。筒状の吸い口ホルダ14aは、内側の通路14bを備えた吸い口15を保持している。吸い口15には、紙巻きタバコ煙に似せて苦い味がつけられている。下のチャンバ42内には二つの羽根車12が配置されており、この羽根車は、利用者により吸入の際に引き起こされる吸気流によって回転する。羽根車12の方では回転軸16を介し、上のチャンバ41内に配置された対応する二つの羽根車29を駆動し、この羽根車29は吸い込みポンプのように作用する。上のチャンバ41は、片側に紙巻きタバコホルダ24を備えている。反対側では二つの流出管30がチャンバ41に結合されており、この流出管の口は、煙シミュレータの利用中は利用者の鼻の近くにあるように配置されている。上のチャンバ41は、主流出口35が組み込まれた蓋34で閉じられている。煙シミュレータを機能させるには、利用者は紙巻きタバコホルダ24に紙巻きタバコ21aを嵌め込み、この紙巻きタバコに火をつける。利用者が吸い口15を介して吸入を実施するとすぐに羽根車12が動き出し、この羽根車12が吸い込みポンプ羽根車29を駆動する。吸い込みポンプ羽根車29により、周囲から空気が紙巻きタバコ21aを通って吸い込まれ、その最中に、従来の喫煙の場合のように紙巻きタバコ煙が生成され、その煙がチャンバ41を通ってポンピングされる。煙の主な部分は使われずに主流出口35を介して再び周囲に吹き出され、一方で比較的少量の煙が流出管30を介して的確に利用者の鼻の近くに流し出され、利用者はそれをタバコ煙の香りとして知覚することができる。煙シミュレータの代替的な一形態では、紙巻きタバコ21aの代わりに、紙巻きタバコ煙香料含浸体21eを紙巻きタバコホルダ24に嵌め込むこともできる(図3A)。さらなる代替的な一形態では、羽根車12の代わりに電気モータ17で吸い込みポンプ羽根車29を駆動することもできる(図2)。
【0005】
四つの羽根車12、29の慣性、羽根車の軸受内の摩擦、羽根車とハウジング40の間の隙間、及びチャンバ41、42内にどうしても存在する死容積により、喫煙の際に一回の吸引中に一般的に口腔内に吸い込まれる気体体積(約20〜80mL)では、前述のような機能を引き起こすにはおそらく十分でない。それにもかかわらず、この煙シミュレータはかなり複雑で手間の掛かる構造を有している。羽根車12を電気モータ17に置き換えても組立の手間は減らない。紙巻きタバコ21aを使用する場合は、かなりの量の、健康を害する副流煙が生成され、周囲に放出される。「紙巻きタバコ煙香料」含浸体21eの含有物質については詳しく示されていない。特開平11-009693(ナガイ ケンイチ)は、原理的に類似した構成を示している。
【0006】
特開平08-056640(セツオ クロキ)は、主に、(図3、図4及び図6)香料含浸体6又はタバコ煙香料含浸体6aを内包する筒体7と、さらに吸い口11を備えた吸い口ユニット10とから成る吸入器具を記載している。この器具の前方部分には、流入口3を開閉する第一の逆止弁Bが存在している。この器具の後方部分には、流出口15を開閉する第二の逆止弁Cが存在している。器具の機能は図7に示されており、すなわち吸引又は吸入の間、流入口3を介して周囲から器具内に空気が流れ込み、香料含浸体6又はタバコ煙香料含浸体6aに浸透し、香料を摂取蓄積し、最終的に吸い口11を介して利用者の口腔内に達する。このようにして投与された空気香料混合物は、吸入後、紙巻きタバコの場合に一般的なように周囲に吹き出されるのではなく、吸い口11を介して吸入器具内に吹き戻され、これにより器具内に超過気圧が生じる。超過気圧により逆止弁Cが開き、空気香料混合物が流出口15を通って利用者の鼻の方向に流出し、これにより最終的に利用者は空気香料混合物を嗅覚的に知覚できる。つまりこの吸入器具を利用しようとすると、喫煙者は吸引行為又は吸入行為を完全に転換しなければならない。この状況は欠点と見なすことができる。さらに、嗅覚的刺激が吸引と同期して起こらないことも欠点と見なされる。投与される香料又は「タバコ煙香料」の含有物質については詳しく示されていない。特開平01-094861(ワタベ イサム(Watabe Isamu))は、逆止弁を使用せずに原理的に類似に作用する構成を示している。
【0007】
米国特許第2,809,634号(ヒロタダ ムライ)及びGB 408,856(ウィートスケ ファン セテルス-ボッシュ(Wietske van Seters-Bosch)ら)は、吸入可能な媒体を口と鼻で同時に吸入することを可能にした吸入器具を記載している。米国特許第2,809,634号に基づく器具は非常に複雑な構造であり、この構造の場合、利用者が弁メカニズムを作動させることで、吸入可能な媒体を引き込むことができ、この弁メカニズムの作動は歯を噛み合わせることで生じる。GB 408,856では、利用者は吸い口のほかにさらに二つの鼻チューブを付けなければならない。多くの利用者は、その独特で人前での使用が制限される取扱い及び操作だけで既にこの器具を拒否してしまうであろう。米国特許第2,809,634号によれば、吸入可能な媒体は、アルコール中に溶解させたタバコ抽出物又はタバコ煙抽出物を含むことができる。抽出用の溶剤としては、例としてエーテルが挙げられている。
【0008】
WO 88/01884(ポール(Paul) テラサキ)は、「嗅ぎ棒」の様々な形態を記載しており、これらの形態はどれも、吸い口1、延長部2、及び延長部2に支持されたフレーバ物質調合物3を含んでいる。利用者が唇又は歯の間に吸い口1を保持すると、フレーバ物質調合物3は利用者の鼻孔の近くにあり、これによりフレーバ物質を効率的に消費することができる。図4に基づく例示的実施形態では、一本のプラスチック棒が吸い口1も延長部2も形成している。フレーバ物質調合物3は紙製基材4中に吸収されており、この基材は延長部2の周りに巻き付けられており、接着剤でプラスチック棒の表面に固定されている。図7は原理的に類似の構成を示しており、本質的な違いは、図7に基づく例示的実施形態では吸い口1も延長部2も平たく形成されていることである。図8及び図9は、屈曲した延長部2を備えた構成を示している。この形態は、使用中に、フレーバ物質をしみ込ませた基材4が利用者の鼻孔付近にさらに近寄っているという効果を有する。図11〜図37は、円筒形の延長部2によって形成された中空空間8内に配置された棒状の基材4を備えた構成を示している。利用者が、フレーバ物質の放出にある程度の範囲内で影響を及ぼし得る様々な種類の制御機構が設けられている。WO 88/01884は、専ら利用者の鼻内だけにフレーバ物質を投与する「嗅ぎ棒」を開示しており、しかしながら吸入器への如何なる関連付けもなく、したがってフレーバ物質基材が、有利にはどのように吸入器構成に組み込まれ得るであろうかという具体的な教示を当業者に与えることもできない。
【0009】
米国特許第4,503,851号(クラウス ブラウンロス(Klaus Braunroth))は、嫌な臭いのする環境で、例えば動物廃棄物の周辺で使用するための、不快な臭いを遮蔽するための使い捨て呼吸保護マスクを記載している。呼吸保護マスク40は、(図5〜図7)空気透過性のフィルタリング織布カバー41をベースとしており、この織布カバーはバンド42を使って頭に固定することができる。織布カバー41のほぼ中央には、不透過性のケーシング52から成る臭気遮蔽手段50が存在する。ケーシング52は、二つの相互に向かい合う面52A及び面52Bから構成されている。面52Aと面52Bの間には吸収性材料54、例えば綿が存在する。吸収性材料54には、臭気遮蔽物質55をしみ込ませている。面52Bは、多数の穴56を有しており、且つシーリング材60で覆われており、このシーリング材はケーシングの外周縁で貼り付けられている。シーリング材60は耳部62を有しており、この耳部を使ってシーリング材60をケーシング52から取り外すことができる。シーリング材60を取り外せば、呼吸保護マスク40はすぐに使用できる。すると臭気遮蔽物質55は、穴56を通って気化することができ、織布カバー41を貫流する臭い空気と混ざってあらゆる臭気を中和することができる。
【0010】
最後に、上述の文献中で開示されている現況技術は、形式的に、冒頭に示した属概念には入らないことを述べておく。それでも、これらの文献は少なくとも本願の基礎になっている発明の周辺環境を示しており、その点では考慮に値するので引用した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、上で指摘した現況技術の欠点を取り除くことである。特に本発明の課題は、冒頭で説明した種類の吸入器コンポーネントを下記のように形成することである。
【0012】
-) 匂い物質が効率的に投与され、且つ匂い物質を放出することで関係ない第三者に可能な限り迷惑をかけない、
-) 吸入器コンポーネントの全体構成がコンパクトなままである、
-) 吸入器コンポーネントを簡単に、人間工学的に、操作者が負担を感じずに取り扱うことができ、且つ吸入器コンポーネントの使用が衛生的である、
-) 紙巻きタバコの副流煙の嗅覚的効果を可能な限りリアルに模倣する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この課題は、
a) ハウジングがハウジングコンポーネントを含み、
b) 吸い口がハウジングコンポーネントと分離可能に結合しており、
c) ハウジング外被が第一の外被パーツ及び第二の外被パーツを含み、
d) ハウジングコンポーネントが第一の外被パーツを形成し、
e) 吸い口が第二の外被パーツを形成し、
f) 且つ匂い物質タンクが、吸い口と構造的に一体化されており、平面的に形成されており、第二の外被パーツの表面に平面的に配置されているか又は匂い物質タンク自体が第二の外被パーツを形成することによって解決される。
【0014】
「匂い物質タンク」の単数形としての使用は、複数の匂い物質タンクの存在を排除するものではない。複数の匂い物質タンクの存在も明確に本発明に基づいていると見なされる。匂い物質タンクの平面的な、例えばプレート状若しくはシャーレ状の形成、及び匂い物質タンクの平面的な、ハウジング外被表面での配置若しくはハウジング外被内への組み込みは、一方では、ハウジング外被の内側のその他の機能パーツ、特に吸入可能な媒体を生成するための機能パーツの配置に影響を与えない又は本質的には影響を与えないという効果を有しており、もう一方では、匂い物質タンクが、隣接するハウジング区域に段差なく又はほぼ段差なく接するという効果を有し、これは美的観点から利点と見なせるだけでなく、さらに吸入器コンポーネントの取扱いを簡略化させる。匂い物質タンク、特にプレート状の匂い物質タンクに関する実用的な例示的実施形態については後でさらに示す。
【0015】
吸い口により形成された第二の外被パーツの表面に匂い物質タンクを配置することにより、又は匂い物質タンクが第二の外被パーツを形成することにより、吸入器コンポーネントの使用中に匂い物質タンクが利用者の鼻孔の近くにある状態が強制的に作られる。この条件下で放出された匂い物質は、比較的低い放出率でも既に利用者が嗅覚的に知覚でき、この知覚は、鼻呼吸、及びそれによりさらに誘発される、対流による物質輸送によっていっそう促進される。比較的近辺にいる他の人々は、匂い物質タンクとの距離が何倍も大きいので、放出された匂い物質による影響をほとんど受けない。匂い物質タンクと交換可能な吸い口を構造的に一体化することで、両方の部材を一緒に交換することができる。これは、取扱いをかなり簡略化させる。この取扱いは非常に簡単であり、すなわち利用者は、吸い口の自由端をつかみ、吸い口をハウジングコンポーネントから外す。その際、利用者が匂い物質タンクに触れることはない。特に有利なのは、匂い物質タンクが吸い口と分離不能に結合されている場合である。これにより、匂い物質の放出を維持したければ、利用者は吸い口を定期的に新しい吸い口と取り替えることを事実上強制される。定期的な、例えば毎日の吸い口交換は、衛生的観点から疑いなく有利である。
【0016】
本発明の有利な一発展形態では、第一の外被パーツ及び第二の外被パーツが、匂い物質タンクの領域内で又は/及び匂い物質タンクの周辺で、少なくとも部分的に重なり合っている。さらに、本発明の特に有利な一形態では、匂い物質タンク又は/及び第二の外被パーツのうち匂い物質タンクを収容している区域が、少なくとも部分的に、第一の外被パーツの空所又は切れ込み内に噛み合うか、或いは匂い物質タンクが第一の外被パーツ内の空所を介して周囲と連通する。この構成は、ハウジング外被での匂い物質タンクの位置決めに関して設計者にいっそうの柔軟性を与え、他の機能部材と入り組んだ構造にすることを可能にし、これにより最終的には吸入器コンポーネントをさらにコンパクトにする。
【0017】
本発明によれば、吸い口開口部と匂い物質タンクはハウジング中心平面mの反対側に配置されており、このハウジング中心平面mは、ハウジングを外被方向にほぼ同じ大きさの二つの部分に分割する平面と定義されている。この構成は、吸入器コンポーネントの使用中に、匂い物質タンクが利用者の鼻孔付近にさらに近寄るという効果を有しており、これにより匂い物質をさらに効率的に投与することができ、又は言い換えれば、同じ嗅覚的作用の場合、放出率をさらに低くすることができる。つまりこうすることで匂い物質タンクの利用期間を長引かせることができる。
【0018】
本発明の一発展形態では、吸い口がさらに、吸入可能な媒体の蒸気相又は粒子相によって貫流され得る冷却器を含んでおり、別の一発展形態では、吸い口がさらに、吸入可能な媒体に香り物質を添加する香り物質タンクを含んでいる。これらの発展形態では、吸い口は、匂い物質タンクのほかにさらに冷却器又は/及び香り物質タンクも含んだ多機能機構に改造されている。すべての機能機構を一緒に、簡単な手技により交換することができる。これにより吸入器コンポーネントの操作がかなり簡略化される。冷却器は吸入可能な媒体を冷却し、したがって吸入可能な媒体をより快適に消費することができる。このような冷却は、特に、吸引-吸入器において、エタノール又は/及び水で非常に薄く希釈されたニコチン溶液の蒸発により生成される場合の、ニコチン含有の蒸気空気混合物及び凝縮エアロゾルで非常に有利であることが分かった。吸引-吸入器とは、吸入可能な媒体が、紙巻きタバコの場合のように二つのステップで、つまり、最初に吸引として口腔内に(第一のステップ)、そして吸入器を外した後、それに続く肺吸入の形で(第二のステップ)利用者に供給される吸入器具である。冷却器は、例えば貫流され得る多孔体により形成することができる。加えて多孔体を香り付けすることができる。後者の場合、貫流する蒸気空気混合物又はエアロゾルは、冷却されるだけでなく、さらに香り物質を添加され、これにより蒸気空気混合物又はエアロゾルをさらに快適に消費することができる。もちろん、冷却作用を伴わない、又は言うに値する冷却作用を伴わない香り物質タンクを設けてもよい。つまり、例えば吸い口のうち吸入可能な媒体を導く管路壁を、香り物質でコーティングすることができる。
【0019】
特に有利なのは、香り物質タンクが、周囲空気によっては貫流され得るが吸入可能な媒体の蒸気相又は粒子相による影響は受けないタンクとして形成される場合である。香り物質タンクを通って流れる空気流は、香り物質を添加され、最終的にはさらに下流の香り物質タンクの外で、吸入可能な媒体の蒸気相又は粒子相を輸送する主流と合流する。この構成により、香り物質の放出を著しく妨害するおそれのある凝縮物又は/及びエアロゾル粒子が香り物質タンク内に堆積することを効果的に防止することができる。
【0020】
本発明によれば、匂い物質タンクの匂い物質はタバコを含んでいる。タバコとしては、特に、乾燥させ、発酵させたタバコ、水で戻したタバコ、膨張させたタバコ、又はそれらの混合物が適している。タバコは天然原料なので、タバコ含有匂い物質タンクを備えた本発明による吸入器コンポーネント又は吸入器は、多くの利用者に好意的に受け入れられると前提できる。特に有利なのは、このタバコが、刻みタバコ、好ましくは細刻みタバコとして、又は細かい顆粒若しくはタバコ粉として存在する場合である。これらのタバコ形態の大きな表面積は、タバコ中に含まれる匂い物質の放出を促進する。
【0021】
これに代わる策として、本発明に基づき、匂い物質タンクの匂い物質は、タバコ煙凝縮物、又はタバコ抽出物、又は前述の物質混合物の揮発性香気画分を含んでいるものの、匂い物質は実質的にニコチンを含まない。ニコチンそれ自体は、本質的におおいに使用可能であるがその毒性作用(LD50: 0.88mg・kg-1)とはまったく関係ない、匂い物質特性を有している。匂い物質タンクは外側からアクセス可能なので、本発明によると、匂い物質のニコチン含有率は制限されており、詳しくは0.5質量%に制限されている。この残留ニコチン含有率は、本特許出願の枠内ではなおも「ニコチンを含んでいない」と見なされる。
【0022】
「タバコ煙凝縮物」という概念は、あらゆる、結露したタバコ煙を意味している。タバコ煙凝縮物は、稠度が粘稠状からペースト状であり、黄色がかった茶色をしている。本発明による匂い物質タンク内の匂い物質として同タバコ煙凝縮物を使用することにより、紙巻きタバコの副流煙の本質的な嗅覚的効果を真似ることができる。タバコ煙凝縮物の獲得は、これまでは主として分析目的のために実験室規模で、紙巻きタバコ及び類似のタバコ製品を機械で実際に火をつけて品質検査するなかで行われていた。この場合に用いられる凝縮物の分離方法は、下記の四つの原理に帰することができる。
【0023】
1) 例えばフィルタへの衝突作用による、又はキャピラリプレス器による分離(「Jet Impaction Trap」)、
2) 冷却トラップによる分離、
3) 電界内での分離、
4) 例えば洗浄瓶内の適切な溶剤中での分離、又は溶剤の噴霧による結露。溶剤としては、とりわけ水、アセトン、及びエタノールが考慮される。
【0024】
本出願人は、タバコ煙凝縮物を比較的大量に獲得するための商業的大規模に適用された方法を承知していない。しかしながら、燻製にする代わりとして食品の中又は表面に使用するための、木材から作られた燻煙液製品を製造するための工業用設備が存在している。このような設備の事業者の例は、レッド アロー インターナショナル社(Red Arrow International LLC)、www.redarrowinternational.comである。この設備は、硬材のおがくずの熱分解を基礎としている。できる限り酸素を排除した中でおがくずを熱し、発生する煤煙を、溶剤、例えば水の中に捕集する。タバコ煙凝縮物の工業的な獲得は類似の設備で行うことができる。熱分解すべき原料は、乾燥させ、発酵させたタバコから成り、その際、ニコチンを含まない品種のタバコ又はニコチンを取り除いたタバコは、追加のステップなしでニコチンを含まないタバコ煙凝縮物を獲得できるという利点を有している。
【0025】
タバコ煙凝縮物は、数千種の単一物質による非常に複雑な混合物から成っている。その単一物質の多くが香気特性を有しており、つまりタバコ煙凝縮物の総体的な香りに寄与している。その他の単一物質は匂い物質特性を有さないか、又はそれどころか不利な匂い物質特性を有している。これらすべての含有物質の揮発性は非常に様々であり、したがって匂い物質タンクはその利用の初期段階では易揮発性物質を平均以上に大量に放出することになり、これにより匂い物質の香りの質は利用期間にわたって変化し、香りの作用は間もなく低下してしまう。精製により、タバコ煙凝縮物の含有物質及び特性に的確に影響を及ぼすことができ、特に、匂い物質特性を有さない、又は不利な匂い物質特性有する含有物質又は画分を分離し、揮発性スペクトルを狭め、有利で香気性の成分を濃縮することができる。このために用いるべき方法、例えば抽出及び蒸留は、匂い物質及び香りの化学に携わる技術者には周知である。精製の最終生成物とは、タバコ煙凝縮物のうちの、ニコチンを含まず、揮発性で、濃縮され、香気性の画分であるか、又は複数のそのような画分、例えば様々な揮発性スペクトルを有する画分である。
【0026】
「タバコ抽出物」という概念は、発酵させたタバコから獲得されたエーテル油を意味している。この油はしばしば「タバコアロマオイル」とも呼ばれる。ニコチンを含まないタバコアロマオイルの獲得は、例えば特許公報DE 19654945及びDE 19630619(アダム ミュラー(Adam Mueller)ら)に詳細に示されているような方法に基づいて行うことができる。タバコアロマオイルは、場合によっては、さらに、様々な揮発性スペクトルを有する画分に分離することができる。
【0027】
さらに、本発明に基づくと見なされるのは、匂い物質タンクの匂い物質が少なくとも一種の揮発性酸を含み、且つ匂い物質中のすべての揮発性酸の分率が合わせて5質量%より大きいことである。揮発性酸により利用者には、紙巻きタバコの副流煙の少しつんとくる刺すような匂いに似ており、鼻粘膜の同等の刺激を伴う嗅覚印象が与えられる。揮発性酸としては、例示的に酢酸、ギ酸、及びプロピオン酸、並びにそれらの混合物が考慮される。ただし本発明はこれらの酸に制限されない。
【0028】
最後に、本発明に基づき、匂い物質タンクの匂い物質はメントールを含んでいる。メントールはさわやかな作用を有している。メントールの添加は、匂い物質の総体的な香りを快適に仕上げる。メントールは単一物質として、又はエーテル油、例えばペパーミント油の構成要素として加えることができる。
【0029】
本発明の有用且つ有利な例示的実施形態を図面に示し、以下の記述において詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明による吸入器の幾つかの面を示す図である。
【図2】再利用可能な吸入器パーツ及び交換可能な吸入器コンポーネントを備えた、図1に基づく吸入器を連結を外した状態で示す図である。
【図3】交換可能な吸い口を備えた交換可能な吸入器コンポーネントの幾つかの面を連結を外した状態で示す図である。
【図4】交換可能な吸い口の幾つかの面を示す図である。
【図5】図4の線A-Aに沿った、交換可能な吸い口の断面図である。
【図6】異なるタイプの匂い物質タンクの、図4の線B-Bに沿った、交換可能な吸い口の断面図である。
【図7】異なるタイプの匂い物質タンクの、図4の線B-Bに沿った、交換可能な吸い口の断面図である。
【図8】異なるタイプの匂い物質タンクの、図4の線B-Bに沿った、交換可能な吸い口の断面図である。
【図9】吸い口が連結された交換可能な吸入器コンポーネントの部分断面図である。
【図10】図10a及び図10bは、それぞれ、二つの代替的な変形形態における、吸い口が連結された交換可能な吸入器コンポーネントの部分断面図である。
【図11】図9に基づく交換可能な吸入器コンポーネントを使用位置で示す図である。
【図12】さらに発展させた変形形態における、吸い口が連結された交換可能な吸入器コンポーネントの部分断面図である。
【図13】図12に基づく交換可能な吸入器コンポーネントを使用位置で示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、例としての本発明による吸入器を示しており、この吸入器は、具体的には、二つの部分から、詳しくは吸入器パーツ1及び吸入器コンポーネント2から成る。吸入器コンポーネント2は直方体のハウジング3から成る。さらに吸入器コンポーネント2は、吸入可能な媒体を利用者の口腔内に供給するための、パイプのような吸い口端部と吸い口開口部5を備えた吸い口4を含んでいる。最後に吸入器コンポーネント2はU字形の匂い物質タンク6も含んでいる。匂い物質タンク6は、後でもっと正確に示すように、ハウジング外被内に組み込まれている。ハウジング3及び吸い口4は、好ましくはプラスチックから製造されている。
【0032】
図2が示すように、この例示的実施形態では、吸入器パーツ1及び吸入器コンポーネント2は相互に取り外せるように製作されている。この取外し可能な連結は、スナップフィット結合から成っており、二つのスナップフィットフック7及びこのスナップフィットフックと協働する二つの外れ止め突起8から形成されている。この構成は、吸入器パーツ1を再利用可能、又は吸入器コンポーネント2を交換可能にし、とりわけ吸入器パーツ1が吸入器コンポーネント2の構成要素よりも長持ちする構成要素を含んでいる場合に有利に使用できる。このような比較的長持ちする構成要素とは、例えば再充電可能なバッテリ及び電子回路であり得る。強調しておくが、本発明はこの二つの部分から成る吸入器のコンセプトに制限されるわけでは決してない。むしろ本発明は、吸入可能な媒体を利用者の口腔内に供給するための吸い口を備えるあらゆるタイプの吸入器に適用可能である。したがって、もちろん吸入器パーツ1と吸入器コンポーネント2が一つの部分から成っていても、つまり相互に分離不能に製作されていてもよく、この場合は吸入器全体を吸入器コンポーネント2と理解することができるであろう。
【0033】
図3が示すように、吸い口4はハウジングコンポーネント3aと分離可能に結合している。ハウジングコンポーネント3aと吸い口4のパーツとが一緒に直方体のハウジング3を形成している。吸い口4は、吸い口開口部5に面していない側で中空シリンダ9を形成しており、この中空シリンダの外被上には、以下でもっと正確に述べるように、匂い物質タンク6が配置されている。つまり、匂い物質タンク6を吸い口4と一緒に交換することができる。吸い口4とハウジングコンポーネント3aの連結は、中空シリンダ9を介し、中空シリンダをハウジングコンポーネント3aの対応する開口部10内に押し込むことによって行われる。さらにハウジングコンポーネント3aは外被コンポーネント11を形成している。外被コンポーネント11にはU字形の空所12が設けられており、この空所は、吸い口4を連結する際に、U字形の匂い物質タンク6をぴったりと収容するのに役立ち、これにより匂い物質タンク6は、覆われることなく周囲と連通することができる。
【0034】
図4〜図6は、交換可能な吸い口4だけを単独でもう一度詳しく示している。図9は、ハウジングコンポーネント3aと連結した状態の吸い口4を示している。これらの図から読み取れるように、中空シリンダ9は長方形の横断面を有している。U字形の匂い物質タンク6は、この例示的実施形態では中空シリンダ9のシリンダ外被14内の平たい凹部13から成っている。凹部13は隆起部15により画定されている。隆起部15はシリンダ外被14により形成されている。吸い口4とハウジングコンポーネント3aを連結する際に、匂い物質タンク6及び匂い物質タンク6を縁取る隆起部15は、外被コンポーネント11の空所12内に噛み合う(図9を参照)。
【0035】
匂い物質タンク6内に、つまり凹部13内に、本来の匂い物質16が存在しており、この匂い物質は、液状、ペースト状、固体状、又はゲル状の形で存在することができる。匂い物質タンク6は、周囲方向へは、通気性の膜17により画定されている。膜17は、隆起部15に溶接又は溶融によって固定されており、複数の目的のために役立ち、すなわち第一には、タンク6から匂い物質16が漏れ出すことを防止する。第二には、周囲への匂い物質の放出を抑制又は制御する。第三には、匂い物質タンク6内に水分、特に雨水が侵入することを防止する。そして最後に、利用者が匂い物質16と接触するのを防止する。前述の作用のすべてが必ず実現される必要はない。つまり例えば任意選択で、後でもっと詳しく述べるように、匂い物質16を吸収力のある灯芯のような多孔体内に蓄え、つまり毛管現象により拘束することができる。この場合、膜17の最初に挙げた作用はなくてもよい。通気性の膜17は、例えばポリエチレン又はエチレンビニルアセテートコポリマーを材料とする熱可塑性プラスチックフィルムなどから成ることができる。揮発性の匂い物質16の分子がこのフィルムを通り抜けて拡散する。本発明の目的には、ミクロ多孔質で熱可塑性のポリマー材料が特に適していると思われる。セルガード社(Celgard LLC)、www.celgard.comは、このような材料を、例えば疎水性ポリプロピレン膜の形で提供している。この膜は、CELGARD(登録商標)の商品名で販売されている。EP 836,857(エリク ジャレラート(Eric Jallerat))及び米国特許第4,917,301号(マリーナ A. ムンテアーヌ(Marina A. Munteanu))は、匂い物質を放出するための代替的なミクロ多孔質ポリマー材料を記載している。膜17の透過性又は浸透性は、タンク6内に蓄えられる匂い物質16の固有の匂い物質特性(嗅覚閾値、揮発性)に適応させるべきである。事情によっては、とりわけ匂い物質中に含まれる物質の匂い物質特性のばらつきが特に大きい場合は、異なる膜特性を有する複数の独立した匂い物質タンクを設けることが有利であり得る。匂い物質が固体の形で、例えば細刻みタバコ又は細かいタバコ顆粒として存在する場合、膜17は簡単に、目の細かいワイヤクロスから成るだけでもよい。
【0036】
図7は、匂い物質タンク6の代替的な一形態を示している。これによれば、匂い物質タンク6は膜17と共に、予め作り上げられている平たい匂い物質パック18から形成されており、この匂い物質パックは、吸い口4のシリンダ外被14内の対応する凹部13に嵌め込むことができ、隆起部15に接着結合によって固定される。この種の匂い物質パックは、既に上で米国特許第4,503,851号(クラウス ブラウンロス(Klaus Braunroth))について述べた際に紹介した。このようなパックは、特許文献では米国特許第4,094,119号(ウィリアム E. サリバン(William E. Sullivan))、米国特許第4,145,001号(ロバート J. ウェインバーグ(Robert J. Weyenberg)ら)、及び米国特許第4,161,283号(サイ ハイマン(Sy Hyman))で最初に記載された。匂い物質パック18は、実質的に二つの部分から、すなわち一つには前述のような通気性の膜17から、もう一つには例えばプラスチックのラミネート又はアルミニウムとプラスチックのラミネートから成る非浸透性フィルム19から成る。非浸透性フィルム19は膜17と周縁側で溶接又は溶融されており、こうして内側に匂い物質タンク6を形成している。本発明による吸入器コンポーネント2又は本発明による交換可能な吸い口4において、予め作り上げられ且つ充填されている匂い物質パック18を使用することは、吸入器コンポーネント又は交換可能な吸い口を大量生産する場合に費用の利点を提供する。
【0037】
図8は、匂い物質タンク6のさらなる代替的な一形態を示している。この場合、匂い物質タンク6は、匂い物質16をその細孔内に収容する多孔体20から形成されている。プレート状の多孔体20は、吸収力のある灯芯のような材料から成り、吸い口4のシリンダ外被14に接着結合によって固定されている。多孔体20の材料は、できるだけ型崩れせず、匂い物質16に対してほぼ不活性であることが望ましい。これに関しては下記のものが考慮に値する。
【0038】
-) 熱又は結合剤により相互に結合された天然繊維又は化学繊維から成る繊維成形体;フィルトローナ リッチモンド社(Filtrona Richmond Inc.)、www.filtronaporoustechnologies.comは、このような繊維複合体の製造を専門にしており、トリアセチンを用いて結合させたセルロースアセテート繊維も、熱により結合させたポリオレフィン繊維及びポリエステル繊維も加工している。
【0039】
-) 開孔性の焼結成形体、例えば、ポーレックス テクノロジーズ社(Porex Technologies)、www.porex.comの多孔質に焼結されたポリエチレン材料又はポリプロピレン材料。
【0040】
-) 発泡材料、特に発泡金属;三菱マテリアル株式会社、www.mmc.co.jpは、特殊鋼(例えばAISI 316L)製で、2mmまでの厚さで、気孔率が>90%の、このような発泡材料を標準的に製品ラインナップに有している。
【0041】
ペースト状及び固体状の匂い物質は、多孔体20により容易に吸収され得るように、予め適切な溶剤中に溶解又は分散させることができる。図8に基づく例示的実施形態では、匂い物質タンク6又は多孔体20は周囲と直接連通している。膜は設けられていない。このような単純な構成は、とりわけ、揮発性が低い又は/及び嗅覚閾値が高い匂い物質を使用する際に考慮に値する。本発明はもちろんこの特殊な場合に制限されるわけではない。むしろ多孔体20を、同様に図6に基づく凹部13内に配置してもよく、又は図7に基づく匂い物質パック18内に嵌め込んでもよい。
【0042】
図5及び図9が示すように、中空シリンダ9の内部には、吸入可能な媒体が貫流し得る冷却器21が存在している。この例示的実施形態に基づく冷却器は、特に、非常に薄く希釈されたニコチン溶液の蒸発により生成された蒸気空気混合物又は/及び凝縮エアロゾルを冷却するために設計されている。冷却器21は二段階に構成されており、前冷却器22及びその後ろに配置されたタバコ充填部23から成る。前冷却器22は、第一の冷却段階を形成しており、蒸気空気混合物又は凝縮エアロゾルを、タバコ充填部23に達する前に可能な限り効果的且つ十分に冷却する役割を有している。この前冷却器により、タバコ充填部23にたまる溶剤凝縮物が少なくなる。タバコ充填部23にあまりにも多く凝縮物がたまると、タバコ充填部の香り付け作用に悪影響を及ぼす可能性がある。前冷却器22は、例えば合成繊維不織布から成ることができる。フロイデンベルク フリースシュトッフェ社(Freudenberg Vliesstoffe KG)、www.freudenberg-filter.comは、マット/プレートの形のこのような材料を、Viledon(登録商標)フィルタマットの名称で提供している。この材料は、顧客の仕様に応じて製造可能である。特に、生成された凝縮エアロゾルの細かい粒子に対して最終生産物がほぼ透過性であるように材料特性を適応させることができる。このマット/プレートは、ポリオレフィン繊維(PE、PP)又はポリエステル繊維から製造され、型抜きによりさらに加工することができる。タバコ充填部23は、予め作り上げられているパックとして存在しており、紙を巻き付けたタバコストランド24から成り、このタバコストランドは無端ストランドから獲得されるのが有利である。タバコストランド24及び前冷却器22は中空シリンダ9内に挿入されている。前冷却器22は中空シリンダ9内で接着結合によって固定されており、これにより間接的にタバコストランド24も固定される。吸い口側では、タバコ充填部23はワイヤクロス25によって画定されており、このワイヤクロスは、充填材料が吸い口管路26内に又はそれどころか利用者の口腔内に達し得ることを防止する。つまり、前冷却器22とタバコストランド24は吸い口4と共に、匂い物質タンク6と一緒に交換可能な構造上のユニットを形成している。任意選択で、タバコストランド24に紙巻きタバコのように追加的に香り付けする又は/及びメントールを加えることができ、その際は類似の方法を適用することができる。
【0043】
図10a及び図10bは、吸い口4が連結された吸入器コンポーネント2の二つの代替的な例示的実施形態を示している。図10aに基づく構成は、前に示した例示的実施形態(図3及び図9を参照)のように、外被コンポーネント11内に空所12を有している。ただしここでは、匂い物質タンク6は空所12に噛み合っているのではなく、少し内側にずれて配置されており、空所12を介して、いわば窓を通ってのように、周囲と連通している。図10bに基づく例示的実施形態は、吸い口4が、匂い物質タンク6の領域内で外被コンポーネント11と部分的に重なった外被パーツ14を形成する構成を示している。原理的には自立式の構成も可能であり、この構成の場合、匂い物質タンク6自体が外被パーツ14を形成し、外被コンポーネント11と直接重なっている。代替的な例示的実施形態の両方とも、全体構成を比較的コンパクトにすることができる。
【0044】
図11は最後にさらに吸入器コンポーネント2をその使用位置で示している。吸入可能な媒体の流れは実線矢印で象徴されており、匂い物質の放出は破線矢印によって示されている。はっきり認識できるように、両方の物質流は相互に影響を及ぼさない。吸入可能な媒体は、ニコチン含有の蒸気空気混合物又は/及びエアロゾルから成ることが好ましい。吸入可能な媒体の発生源、又は吸入器コンポーネント2内での吸入可能な媒体の生成方法は、本発明の対象にとって重要ではなく、したがってこの枠内で詳しく示す必要もない。
【0045】
利用者27は、吸い口4のうち平面的に成形されたパイプのような吸い口端部をその唇28の間に保持する。平面的な吸い口端部は、プレート状の匂い物質タンク6と平行に位置合わせされている。これにより強制的に、匂い物質タンク6が利用者27の鼻29又は鼻孔30に対して常に正確に位置決めされる。さらにパイプのような吸い口端部は、ハウジング3の正面で、真ん中ではなくずらして取り付けられており、これにより、吸い口開口部5と匂い物質タンク6が、ハウジング中心平面mの反対側に位置するようになる。この、構造上の措置により、匂い物質タンク6は、可能な限り鼻孔30に近寄り、しかしながら吸入器コンポーネント2のハウジング表面から突き出ることはなく、したがって吸入器は、扱い易さが保たれたままであり、美的な要求も果たされる。匂い物質タンク6と鼻孔30の間隔が小さいことは、高い物質輸送効率を可能にし、このことは、全体的に放出される匂い物質量の比較的大きな部分がさらに実際にも鼻孔30内に達し、嗅覚的に効果を表し得ることを意味している。
【0046】
図12は、さらに発展させた変形形態における交換可能な吸入器コンポーネントを示している。この吸入器コンポーネントは、冷却器21の隣に別個の香り物質タンク33が設けられていることにより図9に基づく実施形態とは異なる。香り物質タンク33は冷却器21及び吸い口4と共に、ここでもまた、匂い物質タンク6と一緒に交換可能な構造上のユニットを形成している。図13が示すように、吸入可能な媒体の香り付けと冷却は、互いに空間的に隔てられて行われ、その際、二つの物質流が生じ、すなわち一方では、周囲から供給され、香り物質タンク33を通る空気流(破線矢印で象徴されている)が、もう一方では、蒸気空気混合物又はエアロゾルのために定められた、冷却器21を通る本来の主流(実線矢印で象徴されている)が生じる。両方の物質流はさらに下流で、吸い口管路26の入口領域で合流し、最終的に一緒に利用者の口腔内に達する。両方の物質流が広範囲で分離していることは、エアロゾル粒子又は蒸気相から生成された凝縮物、特に溶剤凝縮物が香り物質タンク33内に堆積し得ることを防止する。この堆積は、香り物質の放出を著しく妨害するおそれがある。両方の物質流は、利用者により吸い口で生成された吸気圧力によって誘発される。したがって、一方では香り物質タンク33の流れ抵抗を、及び他方では冷却器21の流れ抵抗を、並びに場合によってはさらなる貫流されるコンポーネントの流れ抵抗を、総体的に所望の抵抗特性、例えば紙巻きタバコの抵抗特性、及び所望の貫流率が生じるように相互に適応させるべきである。
【0047】
具体的な例示的実施形態では冷却器21に香り付け作用は要求されないので、冷却器を簡略化のために一段式に実施するということが当然推測される。冷却材料としてはここでもまた、既に上で述べたような合成繊維不織布を使用することができる。香り物質タンク33は、例えば貫流され得る高多孔質の充填材料から成ることができ、その際、特に有利なのは、充填材料がタバコを含むか又はタバコから成る場合である。タバコとしては、特に、乾燥させ、発酵させたタバコ、水で戻したタバコ、膨張させたタバコ、又はそれらの混合物が適している。特に有利なのは、このタバコが、刻みタバコ、好ましくは細刻みタバコとして、又は細かい顆粒若しくはタバコ粉として存在する場合である。これらのタバコ形態の大きな表面積は、タバコ中に含まれる香り物質の放出を促進する。これに代わる策として香り物質タンク33は、表面が香り物質でコーティングされた不活性な充填材料又はその他の開孔性の担持材料から成ることもできる。コーティングは、例えばタバコ煙凝縮物、又はタバコ抽出物、又は前述の物質混合物の揮発性香気画分、又はタバコ粉を含むことができる。代替的又は補充的に、コーティングがさらにメントール又はメントールを含んだエーテル油を含むこともできる。
【0048】
WO 2010/095659(タケウチ マナブら)及びWO 2010/095660(ヤマダ マナブら)は、空気を貫流させる香り物質タンクの詳しい例示的実施形態を記載している。このような香り物質タンクを備えた吸入器も既に市場に出回るようになっており、日本たばこ産業株式会社、www.jt.comによりZeroStyle(登録商標)の商標名で販売されている。
【0049】
図13に基づく例示的実施形態における匂い物質の放出は、図11に基づくそれと違わないので、これに関して再び説明することはしない。
【0050】
もちろん本発明は、図面に基づいて示した例示的実施形態に制限されるのではなく、当然それぞれの要件に応じて有用にさらに発展させることができる。したがって例えば、吸入器コンポーネント2のハウジングの外側に、スライド開閉式の蓋を配置することが考えられ、この蓋により、匂い物質タンク6の、効果的に周囲と連通する面積を可変に調節することができ、これにより利用者には、匂い物質の放出を個人的な欲求に適応させる機会が与えられるであろう。スライド開閉式の蓋は、例えば吸入器を比較的長期にわたって使用しない間、匂い物質タンク6を完全に密閉するためにも使用できるであろう。その代わりに、吸入器コンポーネント2の正面及び吸い口4の上に被せられ、ハウジング3の外面で案内されるキャップ31を設けてもよく(図1を参照)、このキャップは、匂い物質タンク6だけでなく、同時に吸い口開口部5も密閉する。匂い物質タンク6の本来の利用の前に既に匂い物質16が漏れ出てしまわないようにするために、匂い物質タンク6を適切に包装しなければならない。このような包装は、匂い物質タンク6を平面的に覆う自着性で非浸透性の保護フィルム32によって簡単にもたらすことができる(図3、破線矢印を参照)。交換可能な吸い口4そのものは、気密性フィルムで小分け包装して市場に出すことが望ましい。
【符号の説明】
【0051】
1 吸入器パーツ
2 吸入器コンポーネント
3 ハウジング
3a ハウジングコンポーネント
4 吸い口
5 吸い口開口部
6 匂い物質タンク
7 スナップフィットフック
8 外れ止め突起
9 中空シリンダ
10 開口部
11 外被コンポーネント、第一の外被パーツ
12 空所
13 凹部
14 シリンダ外被、第二の外被パーツ
15 隆起部
16 匂い物質
17 通気性の膜
18 匂い物質パック
19 非浸透性フィルム
20 多孔体
21 冷却器
22 前冷却器
23 タバコ充填部
24 タバコストランド
25 ワイヤクロス
26 吸い口管路
27 利用者
28 唇
29 鼻
30 鼻孔
31 キャップ
32 保護フィルム
33 香り物質タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング外被を備えたハウジング(3)、
吸入可能な媒体を利用者の口腔内に供給するための吸い口開口部(5)を備えた吸い口(4)、
周囲に匂い物質(16)を放出するため、及び利用者による匂い物質の嗅覚的知覚のために、拡散により周囲と連通可能な、匂い物質(16)を内包する匂い物質タンク(6)
を有する吸入器コンポーネントにおいて、
a) 前記ハウジング(3)がハウジングコンポーネント(3a)を含み、
b) 前記吸い口(4)が前記ハウジングコンポーネント(3a)と分離可能に結合しており、
c) 前記ハウジング外被が第一の外被パーツ(11)及び第二の外被パーツ(14)を含み、
d) 前記ハウジングコンポーネント(3a)が前記第一の外被パーツ(11)を形成し、
e) 前記吸い口(4)が前記第二の外被パーツ(14)を形成し、
f) 且つ前記匂い物質タンク(6)が、前記吸い口(4)と構造的に一体化されており、平面的に形成されており、前記第二の外被パーツ(14)の表面に平面的に配置されているか又は前記匂い物質タンク自体が前記第二の外被パーツ(14)を形成することを特徴とする吸入器コンポーネント。
【請求項2】
前記匂い物質タンク(6)が前記吸い口(4)と分離不能に結合されていることを特徴とする請求項1に記載の吸入器コンポーネント。
【請求項3】
前記第一の外被パーツ(11)及び前記第二の外被パーツ(14)が、前記匂い物質タンク(6)の領域内で又は/及び前記匂い物質タンクの周辺で、少なくとも部分的に重なり合っていることを特徴とする請求項1又は2に記載の吸入器コンポーネント。
【請求項4】
前記匂い物質タンク(6)又は/及び前記第二の外被パーツ(14)のうち前記匂い物質タンクを収容している区域が、少なくとも部分的に前記第一の外被パーツ(11)の空所(12)又は切れ込み内に噛み合うか、或いは前記匂い物質タンク(6)が前記第一の外被パーツ(11)内の空所(12)を介して周囲と連通することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の吸入器コンポーネント。
【請求項5】
前記ハウジング(3)を外被方向にほぼ同じ大きさの二つの部分に分割するハウジング中心平面mを備えた吸入器コンポーネントにおいて、前記吸い口開口部(5)と前記匂い物質タンク(6)が、前記ハウジング中心平面mの反対側に配置されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の吸入器コンポーネント。
【請求項6】
前記吸い口(4)がさらに、吸入可能な媒体の蒸気相又は粒子相によって貫流され得る冷却器(21)を含むことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の吸入器コンポーネント。
【請求項7】
前記吸い口(4)がさらに、吸入可能な媒体に香り物質を添加する香り物質タンク(33)を含むことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の吸入器コンポーネント。
【請求項8】
前記香り物質タンクが、周囲空気によっては貫流され得るが吸入可能な媒体の蒸気相又は粒子相による影響は受けないタンク(33)として形成されていることを特徴とする請求項7に記載の吸入器コンポーネント。
【請求項9】
前記匂い物質タンク(6)の匂い物質(16)がタバコを含むことを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の吸入器コンポーネント。
【請求項10】
前記タバコが、刻みタバコ、好ましくは細刻みタバコとして、又は細かい顆粒若しくはタバコ粉として存在することを特徴とする請求項9に記載の吸入器コンポーネント。
【請求項11】
前記匂い物質タンク(6)の匂い物質(16)が、タバコ煙凝縮物、又はタバコ抽出物、又は前記物質混合物の揮発性香気画分を含んでおり、ただし前記匂い物質(16)が本質的にニコチンを含まないことを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の吸入器コンポーネント。
【請求項12】
前記匂い物質タンク(6)の匂い物質(16)が少なくとも一種の揮発性酸を含み、且つ前記匂い物質(16)中のすべての揮発性酸の分率が合わせて5質量%より大きいことを特徴とする請求項11に記載の吸入器コンポーネント。
【請求項13】
前記匂い物質タンク(6)の匂い物質(16)がメントールを含むことを特徴とする請求項9から12のいずれか一項に記載の吸入器コンポーネント。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載の吸入器コンポーネントの交換可能な吸い口(4)。
【請求項15】
請求項1から13のいずれか一項に記載の吸入器コンポーネント(2)を含む吸入器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2013−521074(P2013−521074A)
【公表日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−556342(P2012−556342)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際出願番号】PCT/AT2011/000122
【国際公開番号】WO2011/109848
【国際公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(303036094)バットマーク・リミテッド (2)