説明

吸入用溶液

加圧下で医薬組成物を収容するキャニスタ;それを必要とする患者に投与するために、該キャニスタから定量用量の該組成物を計量するための絞り弁;及び該患者への該定量用量の放出を作動させるための作動装置を含み、該作動装置が0.2〜0.4mmの範囲の直径を有する放出孔を含み、かつ該医薬組成物が抗コリン薬及び医薬として許容し得る噴霧剤を含む、吸入製剤のための吸入器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の技術分野)
本発明は、加圧吸入用溶液及びその製造方法、並びに喘息、COPD(慢性閉塞性肺疾患)及び他の呼吸器疾患の治療のためのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
(背景及び先行技術)
エアロゾル製剤から生成された粒子のサイズ及び分布の理解は、製品最適化の観点からのみならず、特定の作動装置の設計、バルブ特性、キャニスタ特性等の潜在的吸入特性からも重要である。
【0003】
加圧方式の定量吸入器(MDI)による薬剤のエアロゾル製剤の投与は、閉塞性気道疾患及び喘息の治療などの療法に広く使用されている。経口投与と比較して、吸入は、全身性副作用を最小化すると同時に、より迅速な作用の発現を提供する。エアロゾル製剤は、口からの吸入、又は鼻粘膜への適用による局所的吸入により投与することができる。
【0004】
MDIによるエアロゾル投与のための製剤は、溶液又は懸濁液であってよい。溶液製剤は、薬剤及び賦形剤が噴霧媒体に完全に溶解した本質的に均質であるという利点を提供する。また、溶液製剤は、懸濁製剤に関連する物理的安定性の問題を不要なものにし、より恒常的な一定用量の投与を保証し、一方で界面活性物質の必要性も除去する。
【0005】
MDIを介したエアロゾル溶液製剤の投与は、その製品で使用される噴霧剤系(propellant system)の推進力に左右される。噴霧剤は従来、所望の溶解性、蒸気圧、及び製剤の安定性を提供するために、クロロフルオロカーボン(CFC)類の混合物を含んだ。しかしながら、近年、CFC類は地球のオゾン層減少の一因となるため環境的に有害であることが確立されたことから、エアロゾル吸入製剤において、環境的に有害なCFC噴霧剤の代わりに安全なハイドロフルオロカーボン(HFC)噴霧剤又は他の非塩素系噴霧剤に置き換えることが望ましい。例えば、米国特許第4,174,295号は、HFC類の組み合わせからなる噴霧剤系の使用を開示しており、これは、ヘアスプレー、制汗品、香水、脱臭剤、塗料、殺虫剤など家庭向け製品の分野での適用に適した飽和炭化水素化合物を含有することもできる。
【0006】
HFA類を噴霧剤として使用するこれらの適用の多くは、共溶媒として作用する化合物を含む補助剤、フッ素化及び非フッ素化界面活性物質を含む表面活性剤、アルキルポリエトキシラートを含む分散剤、及び安定化剤の1以上を添加することを提案している。
【0007】
例えば、MDIなどのエアロゾル装置の有効性は、肺の適切な部位に沈着される用量に依存する。沈着はいくつかのパラメータに影響され、該パラメータの最も重要なものは、微粒子投与量(Fine Particle Dose)(FPD)及び空気力学的粒子径(aerodynamic particle size)である。エアロゾル製剤における固体粒子及び/又は液滴は、その空気力学的重量中位径(MMAD、重量空気力学的粒子径が等しく分布しているあたりの直径)によって特徴付けすることができる。FPDは、特定のサイズ範囲内での粒子の質量の直接測定を提供し、製品の有効性と密接に関係している。
【0008】
1998年10月6日付で提出された国際出願番号PCT/EP98/03533において、該出願人は、活性物質、ヒドロフルオロアルカン(HFA)を含む噴霧剤、共溶媒を含み、かつ吸入器の作動においてエアロゾル粒子の空気力学的重量中位径(MMAD)を増大させるために低揮発性構成成分を更に含む、エアロゾル吸入器に使用するための溶液組成物を開示している。
【0009】
WO98/34596は、エアロゾル吸入器に使用するための溶液組成物を開示しており、これは、活性物質、ヒドロフルオロアルカン(HFA)を含む噴霧剤、共溶媒を含み、更に吸入器の作動においてエアロゾル粒子の空気力学的重量中位径(MMAD)を増大させるために低揮発性構成成分を含む。前記出願は、活性成分の化学的安定性の技術的問題には触れていないが、それは肺への薬剤送達に幾分関わる問題である。
これら製剤の広範囲の使用は、分解生成物の形成を引き起こす、その化学的不安定性によって制限される。
【0010】
米国特許番号第5,676,930号は、HFA類を含むエアロゾル溶液製剤における活性成分の化学的分解を防ぐために、安定化剤として酸を使用することを提案している。活性成分が有機酸又は無機酸と組み合わされる多くの組成物の例が提供され、選択された薬剤の中で臭化イプラトロピウムが開示されている。
【0011】
WO96/32099、WO96/32150、W096/32151及びW096/32345は、噴霧剤中に懸濁している種々の活性成分の投与のための定量吸入器を開示している。該吸入器の内部表面は、任意に1以上の非フルオロカーボンポリマーと組み合わせた1以上のフルオロカーボンポリマーで、一部又は全部がコーティングされている。
【0012】
Polliらの文献、Journal of Pharmaceutical Sciences Vol. 58, No. 4, 1969年4月「エアロゾル粒子サイズにおける製剤化の影響(Influence of formulation on Aerosol Particle Size)」に記載されるように、上記種類のエアロゾル製剤は、多くの場合、粒子サイズを低下させること、薬剤濃度を低下させること、製剤中に界面活性物質などの添加剤を含むこと、蒸気圧を増加させることに影響され、それによって、患者において達成されるべき治療上の有効性を特定するのに重要な役割を果たすことが広く知られている。
【0013】
臭化オキシトロピウム、臭化チオトロピウム及び臭化イプラトロピウムなどの抗コリン性四級アンモニウム塩は、その気管支拡張性、抗分泌性(antisecretive)及び気管支痙攣予防性作用のために、呼吸器疾患に罹患している患者用に、吸入用製剤の形態で通常処方される。
【0014】
前記薬剤、特に臭化イプラトロピウムは、従来のβ2アゴニストよりも刺激の少ない気管支拡張を誘導するが、より大きなピーク応答及びより長い作用期間を提供する。前記特徴は、それらを急性的な治療よりもむしろ慢性的な治療に特に適したものにさせる(Ferguson G.らの文献、N Engl J Med 1993, 328, 1017-1022)。
【0015】
COPDの治療において、ネブライザーによる臭化イプラトロピウムの投与用の単回の最適な用量は、0.4mgであることが確立されている(Gross N Jらの文献、Am Rev Respir Dis 1989, 139, 1188-1191)が、加圧式定量吸入器を介した投与は、明確には確立されていない。しかしながら、何人かの専門家(Ferguson Gら、方々にて)は、前記疾患の治療が、推奨される用量(54〜109μg)よりも高い用量の使用によって利益を得ることができることを提示している。最近の研究(Ikeda Aらの文献、Thorax 1996, 51, 48-53;Shivaram Uらの文献、Resp Med 1997, 91, 327-334;Wood Fらの文献、Amer J Resp Crit Care Med 1999, 159, A 523)から、80〜320μgの範囲の単回用量の投与が、肺機能、最大仕事量及び酸素消費の改善に有益であることが示された。
【0016】
しかしながら、上記技術のいずれもが、国際出願番号PCT/EP98/03533に記載されるように、そのパラメータを特別に強調しながらも、必要な製剤において、活性粒子/エアロゾル粒子のFPDにおける妥協なしに、定量吸入器を介して投与される活性物質の用量を低下させることは教示していない。特に、驚くべきことに、小孔作動装置(low orifice actuator)を介した、活性物質を含む溶液形態の加圧エアロゾル吸入可能製剤の投与が、活性粒子/エアロゾル粒子の所望のFPDをもたらすことが見出された。
したがって、前記製剤において活性粒子/エアロゾル粒子の所望のFPDを達成する加圧エアロゾル吸入可能製剤を開発する要求がある。
【0017】
(発明の目的)
本発明の一目的は、有効量の活性物質又はその生理学的に許容し得る塩を、医薬として許容し得る賦形剤とともに含む、吸入可能なエアロゾル製剤を提供することである。
別の目的は、有効量の活性物質又はその生理学的に許容し得る塩を、医薬として許容し得る賦形剤とともに含む、吸入可能な製剤の製造方法を提供することである。
本発明の更に別の目的は、有効量の活性物質又はその生理学的に許容し得る塩を、医薬として許容し得る賦形剤とともに投与することを含む、喘息、COPD又は関連の呼吸器疾患を予防する又は治療する方法を提供することである。
【発明の概要】
【0018】
本発明の第1の態様によると、下記を含む吸入用溶液が提供される:
i) チオトロピウム、イプラトロピウム、オキシトロピウム、アクリジニウム、又はそれらの医薬として許容し得る塩、溶媒和物、互変異性体、誘導体、鏡像異性体、異性体、水和物、プロドラッグ、若しくはその多形からなる群から選択される抗コリン薬;
ii) 1以上の医薬として許容し得る賦形剤。
【0019】
本発明の第2の態様によると、チオトロピウム、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物、互変異性体、誘導体、鏡像異性体、異性体、水和物、プロドラッグ、若しくはその多形を、HFC噴霧剤及び共溶媒を含む1以上の医薬として許容し得る賦形剤とともに含む、吸入液剤が提供される。
【0020】
本発明の第3の態様によると、チオトロピウム、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物、互変異性体、誘導体、鏡像異性体、異性体、水和物、プロドラッグ、若しくはその多形を、HFC噴霧剤及び共溶媒を含む1以上の医薬として許容し得る賦形剤とともに含む吸入用溶液であって、定量吸入器を介して投与される前記吸入用溶液を投与する方法が提供される。
【0021】
本発明の第4の態様によると、チオトロピウム、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物、互変異性体、誘導体、鏡像異性体、異性体、水和物、プロドラッグ、若しくはその多形、及びβアドレナリン作動薬及び/又はコルチコステロイド薬を、HFC噴霧剤及び共溶媒を含む1以上の医薬として許容し得る賦形剤とともに含む吸入用溶液であって、定量吸入器を介して投与される前記吸入用溶液が提供される。
【0022】
本発明の第5の態様によると、チオトロピウム、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物、互変異性体、誘導体、鏡像異性体、異性体、水和物、プロドラッグ、若しくはその多形を、1以上の医薬として許容し得る賦形剤とともに含む吸入用溶液を製造する方法が提供される。
【0023】
本発明の特定の好ましい実施態様によると、加圧下で医薬組成物を収容するキャニスタ;それを必要とする患者に投与するために、該キャニスタから定量用量の該組成物を計量するための絞り弁;及び該患者への該定量用量の放出を作動させるための作動装置を含む、吸入製剤のための吸入器であって、該作動装置が0.2〜0.4mmの範囲の直径を有する放出孔(discharge orifice)を含み、かつ該医薬組成物が抗コリン薬及び医薬として許容し得る噴霧剤を含む、前記吸入器が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の吸入器の一実施態様の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(発明の詳細な説明)
本明細書中に記載されるように、驚くべきことに、活性物質を含む溶液形態の加圧エアロゾル吸入製剤の小孔作動装置による投与が、活性粒子/エアロゾル粒子の望ましいFPDをもたらすことが見出された。
該小孔作動装置は、有利には、0.2mm〜0.4mmの範囲の孔径を有する。好ましくは、該直径は、0.2mm〜0.33mm、より好ましくは、0.28mm〜0.33mmである。
【0026】
本発明の吸入可能な溶液は、チオトロピウム、イプラトロピウム、オキシトロピウム、アクリジニウム、又はそれらの医薬として許容し得る塩、溶媒和物、互変異性体、誘導体、鏡像異性体、異性体、水和物、プロドラッグ、若しくはその多形を含む抗コリン薬の1以上を含み得る。
【0027】
好ましい塩は、臭化物塩、特に、チオトロピウム、イプラトロピウム、オキシトロピウム、及びアクリジニウムの臭化物塩である。本発明の特に好ましい実施態様において、吸入用溶液は、活性物質として、チオトロピウム又はその塩、最も好ましくは、臭化チオトロピウムを、1以上の医薬として許容し得る賦形剤とともに含み得る。
【0028】
本発明によると、適当な医薬として許容し得る賦形剤は、1以上のHFC噴霧剤、共溶媒、低揮発性構成成分、安定化剤、分散剤、pH調整剤、酸化防止剤、保存剤、キレート剤、表面活性剤、又はそれらの混合物を含み得る。
また、少量の水(最大約1重量%)が、該噴霧剤/共溶媒系中に存在してもよい。
【0029】
適当なHFC噴霧剤は、共溶媒と混合したときに、治療上有効な量の薬剤を溶解することができる均一な噴霧剤系を形成するものである。該HFC噴霧剤は、毒物学的に安全でなければならず、かつ薬剤が加圧式MDIを介して投与されるのを可能とするのに適した蒸気圧を有しなければならない。加えて、該HFC噴霧剤は、薬剤を投与するのに用いられるMDIデバイスの構成部品(例えば、容器、バルブ及びシーリングガスケットなど)に適合しなければならない。好ましいHFC噴霧剤は、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC-134(a))及び1,1,1,2,3,3,3,-ヘプタフルオロプロパン(HFC-227)である。HFC-134(a)が特に好ましい。HFC噴霧剤の他の例は、HFC-32(ジフルオロメタン)、HFC-143(a)(1,1,1-トリフルオロエタン)、HFC-134(1,1,2,2-テトラフルオロエタン)、及びHFC-152a(1,1-ジフルオロエタン)である。
【0030】
本発明において、HFC噴霧剤の代わりに非ハロゲン化炭化水素噴霧剤を使用できることは、当業者には明らかであろう。非ハロゲン化炭化水素の例は、プロパン、n-ブタン及びイソブタンを含む飽和炭化水素類、並びにジエチルエーテルを含むエーテル類である。
単体のHFC噴霧剤を使用することが好ましいが、2以上のHFC噴霧剤の混合物、又は少なくとも1のHFC噴霧剤と1以上の非CFC噴霧剤の混合物を、本発明のエアロゾル液剤に使用できることも当業者には明らかであろう。
【0031】
吸入用溶液に用いることができる適当な共溶媒は、1以上の、C2-6脂肪族アルコール類及びポリオール類などの極性共溶媒、例えば、エタノール、イソプロパノール、プロピレングリコールを含み得る。好ましくは、該共溶媒は、該製剤の15〜20wt%の量で存在する。
【0032】
好適には、吸入用溶液に用いることができる低揮発性構成成分は、ポリオール、好ましくは、グリセロール、ミリスチン酸イソプロピルを含み得る。該低揮発性構成成分は、該製剤の0.5〜1%の範囲で存在し得る。
好適には、吸入用溶液は、他の物質、例えば、ポリオキシエチレンアルコール類及びポリオキシエチレン脂肪酸エステル類を含み得る。
【0033】
好適には、吸入用溶液に用いることができる保存剤は、該製剤の0.01〜0.03%の範囲で存在し得る。吸入用溶液に用いることができる保存剤は、塩化ベンザルコニウムを含み得る。
好適には、吸入用溶液に用いることができるキレート剤は、該製剤の0.0002〜0.001%の範囲で存在し得る。吸入用溶液に用いることができるキレート剤は、EDTAを含み得る。
【0034】
好適には、吸入用溶液に用いることができるpH調整剤は、有機酸又は無機酸、例えば、塩酸、クエン酸などを含み得る。
1以上の界面活性物質を用いることができ、これは、吸入用溶液を安定化させ、かつ定量吸入器のバルブシステムに潤滑を与える。最も一般的に用いられる界面活性物質の幾つかは、油類(例えば、トウモロコシ油、オリーブ油など)、レシチンなどのリン脂質類、オレイン酸などの酸を含み得る。
【0035】
本発明の吸入用溶液は、βアドレナリン作動薬、又はコルチコステロイド薬、又はそれらの医薬として許容し得る塩、溶媒和物、互変異性体、誘導体、鏡像異性体、異性体、水和物、プロドラッグ、若しくはその多形から選択される1以上の活性剤を更に含み得る。
【0036】
本発明の好ましい実施態様によると、吸入可能な溶液は、抗コリン薬、又はその塩、溶媒和物、互変異性体、誘導体、鏡像異性体、異性体、水和物、プロドラッグ、若しくはその多形、好ましくは、チオトロピウム、イプラトロピウム、オキシトロピウム、アクリジニウム、又はそれらの医薬として許容し得る塩、溶媒和物、互変異性体、誘導体、鏡像異性体、異性体、水和物、プロドラッグ、若しくはその多形、より好ましくは、臭化チオトロピウムを含み、前記活性粒子/エアロゾル粒子の所望のFPDによって特徴付けられる、絞り弁及び0.2mm〜0.4mm径(好ましくは、0.2〜0.33mm、より好ましくは、0.28〜0.33mm)の範囲の小孔作動装置を含む加圧式定量吸入器を用いて使用され得る。
【0037】
本発明の好ましい実施態様によると、吸入可能な溶液は、チオトロピウム、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物、互変異性体、誘導体、鏡像異性体、異性体、水和物、プロドラッグ、若しくはその多形、より好ましくは、臭化チオトロピウムを含み、加圧式定量吸入器を用いて使用され得る。ここで、前記チオトロピウム濃度は、前記活性粒子/エアロゾル粒子の所望のFPDによって特徴付けられる、2.5μg〜18μg、好ましくは、2.5〜15μg、より好ましくは4.5〜9μgの範囲の単回用量に対応する。
【0038】
好ましくは、吸入可能な溶液は、2.5μg〜18μg、好ましくは、2.5〜15μg、より好ましくは、4.5〜9μgの範囲の単回用量の臭化チオトロピウムを、1以上の共溶媒、低揮発性構成成分、HFC噴霧剤又はそれらの混合物を含む、1以上の医薬として許容し得る賦形剤とともに含み、前記活性粒子/エアロゾル粒子の所望のFPDによって特徴付けられる、絞り弁及び0.2mm〜0.4mm径(好ましくは、0.2〜0.33mm、より好ましくは、0.28〜0.33mm)の範囲の小孔作動装置を含む定量吸入器を用いて使用され得る。
【0039】
好ましくは、吸入可能な溶液は、抗コリン薬、又はその塩、溶媒和物、互変異性体、誘導体、鏡像異性体、異性体、水和物、プロドラッグ、若しくはその多形、好ましくは、チオトロピウム、イプラトロピウム、オキシトロピウム、アクリジニウム、又はそれらの医薬として許容し得る塩、溶媒和物、互変異性体、誘導体、鏡像異性体、異性体、水和物、プロドラッグ、若しくはその多形、より好ましくは、臭化チオトロピウム、及び1以上のβアドレナリン作動薬、若しくはコルチコステロイド薬、又はその両方を含み、前記活性粒子/エアロゾル粒子の所望のFPDによって特徴付けられる、絞り弁及び0.2mm〜0.4mm径(好ましくは、0.2〜0.33mm、より好ましくは、0.28〜0.33mm)の範囲の小孔作動装置を含む加圧式定量吸入器を用いて使用され得る。
【0040】
本発明の好ましい実施態様によると、吸入可能な溶液は、チオトロピウム、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物、互変異性体、誘導体、鏡像異性体、異性体、水和物、プロドラッグ、若しくはその多形、より好ましくは、臭化チオトロピウム、及び1以上のβアドレナリン作動薬、若しくはコルチコステロイド薬、又はその両方を含み、加圧式定量吸入器を用いて使用され得る。ここで、前記チオトロピウム濃度は、前記活性粒子/エアロゾル粒子の所望のFPDによって特徴付けられる、2.5μg〜18μg、好ましくは、2.5〜15μg、より好ましくは、4.5〜9μgの範囲の単回用量に対応する。
【0041】
好ましくは、吸入可能な溶液は、2.5μg〜18μg、好ましくは、2.5〜15μg、より好ましくは、4.5〜9μgの範囲の単回用量の臭化チオトロピウムを、1以上の医薬として許容し得る賦形剤、及び1以上のβアドレナリン作動薬、若しくはコルチコステロイド薬、又はその両方と、1以上の共溶媒、低揮発性構成成分、HFC噴霧剤又はそれらの混合物とともに含み、前記活性粒子/エアロゾル粒子の所望のFPDによって特徴付けられる、絞り弁及び0.2mm〜0.4mm径(好ましくは、0.2〜0.33mm、より好ましくは、0.28〜0.33mm)の範囲の小孔作動装置を含む定量吸入器を用いて使用され得る。
【0042】
本発明の別の実施態様によると、前記活性粒子/エアロゾル粒子の所望のFPDによって特徴付けられる、絞り弁及び0.2mm〜0.4mm径(好ましくは、0.2〜0.33mm、より好ましくは、0.28〜0.33mm)の範囲の小孔作動装置を含む定量吸入器を用いて使用される、抗コリン薬、又はその塩、溶媒和物、互変異性体、誘導体、鏡像異性体、異性体、水和物、プロドラッグ、若しくはその多形、好ましくは、チオトロピウム、イプラトロピウム、オキシトロピウム、アクリジニウム、又はそれらの医薬として許容し得る塩、溶媒和物、互変異性体、誘導体、鏡像異性体、異性体、水和物、プロドラッグ、若しくはその多形、より好ましくは、臭化チオトロピウムを、HFC噴霧剤、共溶媒、低揮発性構成成分、安定化剤、分散剤、pH調整剤、表面活性剤、又はそれらの混合物を含む1以上の医薬として許容し得る賦形剤とともに、投与する方法が提供される。
【0043】
本発明の別の実施態様によると、加圧式定量吸入器を用いて使用される、チオトロピウム、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物、互変異性体、誘導体、鏡像異性体、異性体、水和物、プロドラッグ、若しくはその多形、より好ましくは、臭化チオトロピウム、及び1以上のβアドレナリン作動薬、若しくはコルチコステロイド薬、又はその両方を、投与する方法が提供される。ここで、前記チオトロピウム濃度は、前記活性粒子/エアロゾル粒子の所望のFPDによって特徴付けられる、2.5μg〜18μg、好ましくは、2.5〜15μg、より好ましくは4.5〜9μgの範囲の単回用量に対応する。
【0044】
好ましくは、前記活性粒子/エアロゾル粒子の所望のFPDによって特徴付けられる、絞り弁及び0.2mm〜0.4mm径(好ましくは、0.2〜0.33mm、より好ましくは、0.28〜0.33mm)の範囲の小孔作動装置を含む定量吸入器を用いて使用される、2.5μg〜18μg、好ましくは、2.5〜15μg、より好ましくは4.5〜9μgの範囲の単回用量の臭化チオトロピウムを、1以上の共溶媒、低揮発性構成成分、HFC噴霧剤又はそれらの混合物を含む、1以上の医薬として許容し得る賦形剤とともに、投与する方法が提供される。
【0045】
(図面の詳細な説明)
図1を参照して、本発明の典型的な実施態様を、概して10と指定される定量吸入器(MDI)の形態で開示する。
該吸入器10は、抗コリン薬を含む液体の医薬組成物14を収容するキャニスタ12を含む。該キャニスタ内部には、保持カップ(retaining cup)24も存在し、絞り弁18に係合する。キャニスタ12内部には加圧ガス相16が存在し、絞り弁18が作動装置22によって開口されると、その圧力がキャニスタ12から組成物14を定量用量で追い出す。
【0046】
絞り弁18は、組成物14の必要用量を収容する計量チャンバ(metering chamber)20を有する。絞り弁18は、作動装置22によって作動されると、必要用量の組成物14を送達する働きをする。上述の通り、組成物14中の必要用量の抗コリン薬は、好ましくは、2.5〜18μgである。
【0047】
作動装置22は、患者によって操作されて、必要容量が送達される。該用量は、計量チャンバ20から作動装置22の膨張チャンバ(expansion chamber)26に流れて、作動装置ノズル28を通過する。膨張チャンバ26において組成物14は膨張し、続いて動作装置ノズル28を通過して流れ、患者に送達するための組成物14の高流量噴霧30を形成する。
【0048】
図1に示される吸入器の構造は、従来型のものであり、その操作は当業者には十分に理解されるであろう。しかしながら、本出願人は、作動装置ノズル28に0.2〜0.4mmの範囲の直径を与えることによって、抗コリン薬の必要容量を予想されるものよりも低くし(具体的には、2.5〜18μg、好ましくは、2.5〜15μg、より好ましくは、4.5〜9μg)、それでも効果的なFPDを提供できることを見出した。
【実施例】
【0049】
以下の実施例は、本発明の説明のみを目的とし、本発明の範囲を何ら限定するものではない。
【0050】
(実施例I)
【表1】

(製造方法)
1) EDTA二ナトリウムを純水に溶解させた。
2) 上記溶液を塩化ベンザルコニウム及びグリセロールを含有するエタノールに加え、1NのHClでpHを2.7〜3.1の間に調整した。
3) 臭化チオトロピウム一水和物を上記溶液に加え、溶解するまで混合し、続いて缶に充填し、適当な絞り弁を圧着した。
4) 充填用HFA-134a噴霧剤をバルブを介して充填した。
【0051】
(実施例II)
【表2】

(製造方法)
1) グリセロールを純水及びエタノール中に溶解させた。
2) クエン酸無水物でpHを2.7〜3.1の間に調整した。
3) 臭化チオトロピウム一水和物を上記溶液に加え、溶解するまで混合し、続いて缶に充填し、適当な絞り弁を圧着した。
4) 充填用HFA-134a噴霧剤をバルブを介して充填した。
【0052】
(実施例III)
【表3】

(製造方法)
1) 純水をエタノールに溶解させた。
2) クエン酸無水物でpHを2.7〜3.1の間に調整した。
3) 臭化チオトロピウム一水和物を上記溶液に加え、溶解するまで混合し、続いて缶に充填し、適当な絞り弁を圧着した。
4) 充填用HFA-134a噴霧剤をバルブを介して充填した。
【0053】
(実施例IV)
【表4】

(製造方法)
1) クエン酸をエタノールに溶解させて、pHを2.7〜3.1の間に調整した。
2) 臭化チオトロピウム一水和物を上記溶液に加え、溶解するまで混合し、続いて缶に充填し、適当な絞り弁を圧着した。
4) 充填用HFA-134a噴霧剤をバルブを介して充填した。
【0054】
(実施例V)
【表5】

(製造方法)
1) 純水をエタノールに溶解させた。
2) クエン酸無水物でpHを2.7〜3.1の間に調整した。
3) 臭化チオトロピウム一水和物を上記溶液に加え、溶解するまで混合し、続いて缶に充填し、適当な絞り弁を圧着した。
4) 充填用HFA-134a噴霧剤をバルブを介して充填した。
【0055】
(実施例VI)
【表6】

(製造方法)
1) クエン酸をエタノールに溶解させて、pHを2.7〜3.1の間に調整した。
2) 臭化チオトロピウム一水和物を上記溶液に加え、溶解するまで混合し、続いて缶に充填し、適当な絞り弁を圧着した。
3) 充填用HFA-134a噴霧剤をバルブを介して充填した。
【0056】
(実施例VII)
0.2〜0.4mmの範囲の孔を有する吸入器の有効性を実証するために、一連の試験を実施した。
(試験1)
製品名:チオトロピウムBR HFA吸入器(4.5MCG/SP)120MD
缶のタイプ:19ml 陽極酸化処理
バルブのタイプ:50mcl PE
製剤:15%エタノール+0.5%水+クエン酸+HFA134a
試験の結果を表1に示す。微細粒子量(FPM)の結果は、カスケードインパクターで測定し、結果はμgで示す。
【0057】
(試験2)
製品名:チオトロピウムBR HFA吸入器(4.5MCG/SP)120MD
缶のタイプ:19ml 陽極酸化処理
バルブのタイプ:50mcl PE
製剤:15%エタノール+クエン酸+HFA134a
試験の結果を表2に示す。微細粒子量(FPM)の結果は、カスケードインパクターで測定し、結果はμgで示す。
【0058】
(試験3)
製品名:チオトロピウムBR HFA吸入器(4.5MCG/SP)120MD
缶のタイプ:19ml 陽極酸化処理
バルブのタイプ:50mcl PE
製剤:15%エタノール+0.5%水+1%グリセソール(glycesol)+クエン酸+HFA134a
試験の結果を表3に示す。微細粒子量(FPM)の結果は、カスケードインパクターで測定し、結果はμgで示す。
【0059】
(試験4)
製品名:チオトロピウムBR HFA吸入器(4.5MCG/SP)120MD
缶のタイプ:19ml 陽極酸化処理
バルブのタイプ:50mcl PE
製剤:15%エタノール+0.5%水+BKC+EDTA二ナトリウム+1N HCl+HFA134a
試験の結果を表4に示す。微細粒子量(FPM)の結果は、カスケードインパクターで測定し、結果はμgで示す。
【0060】
【表7】

【0061】
【表8】

【0062】
【表9】

【0063】
【表10】

【0064】
本明細書中に開示された発明に様々な代替及び修正が、本発明の精神を逸脱することなくなされ得ることが、当業者には容易に認識されるであろう。したがって、本発明は、好ましい実施態様、及び任意の特徴によって具体的に開示されているが、本明細書中で開示された思想の修正及び変更が当業者によって用いられ得、そのような修正及び変更は本発明の範囲内にあると見なされると理解されるべきである。
【0065】
本明細書中で使用される用語及び専門用語は、説明のためのものであり、限定と見なされるべきものでないことを理解されたい。本明細書における「含む(including)」、「含む(comprising)」又は「有する(having)」及びそれらの変形の使用は、その後に記載された事項及びその等価物、並びに更なる事項を包含することを意味する。
本明細書及び添付の特許請求の範囲において、単数形「ひとつの(a)」、「ひとつの(an)」、「該(the)」は、明らかに別の指示がない限り複数の対照物が含まれることに留意されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸入製剤のための吸入器であって、加圧下で医薬組成物を収容するキャニスタ、それを必要とする患者に投与するために、該キャニスタから定量用量の該組成物を計量するための絞り弁、及び該患者への該定量用量の放出を作動させるための作動装置を含み、該作動装置が0.2〜0.4mmの範囲の直径を有する放出孔を含み、かつ該医薬組成物が抗コリン薬及び医薬として許容し得る噴霧剤を含む、前記吸入器。
【請求項2】
前記抗コリン薬が、チオトロピウム、イプラトロピウム、オキシトロピウム、アクリジニウム、それらの医薬として許容し得る塩又は溶媒和物、及びそれらの混合物から選択される、請求項1記載の吸入器。
【請求項3】
前記抗コリン薬が、臭化チオトロピウムである、請求項1又は2記載の吸入器。
【請求項4】
前記絞り弁が、2.5〜18μgの前記又は各抗コリン薬を含む定量用量の医薬組成物を施すように構成されている、請求項1、2又は3記載の吸入器。
【請求項5】
前記噴霧剤が、1以上の医薬として許容し得るHFC噴霧剤、及び/又は1以上の医薬として許容し得る炭化水素噴霧剤を含む、請求項1〜4のいずれか一項記載の吸入器。
【請求項6】
前記組成物が、共溶媒を更に含み、該共溶媒が、好ましくは、極性共溶媒である、請求項1〜5のいずれか一項記載の吸入器。
【請求項7】
前記共溶媒が、1以上のC2-6脂肪族アルコール、及び/又はポリオールを含む、請求項6記載の吸入器。
【請求項8】
前記医薬組成物が、1以上のβアドレナリン作動薬を更に含む、請求項1〜7のいずれか一項記載の吸入器。
【請求項9】
前記医薬組成物が、1以上のコルチコステロイド薬を更に含む、請求項1〜8のいずれか一項記載の吸入器。
【請求項10】
吸入製剤のための吸入器であって、加圧下で医薬組成物を収容するキャニスタ、それを必要とする患者に投与するために、該キャニスタから定量用量の該組成物を計量するための絞り弁、及び該患者への該定量用量の放出を作動させるための作動装置を含み、該作動装置が0.2〜0.4mmの範囲の直径を有する放出孔を含み、かつ該医薬組成物がチオトロピウム又はその塩、1以上の医薬として許容し得るHFC噴霧剤、及び/又は1以上の医薬として許容し得る炭化水素噴霧剤、及び1以上の医薬として許容し得る賦形剤を含む、前記吸入器。
【請求項11】
前記医薬組成物が、1以上のβアドレナリン作動薬を更に含む、請求項10記載の吸入器。
【請求項12】
前記医薬組成物が、1以上のコルチコステロイド薬を更に含む、請求項10又は11記載の吸入器。
【請求項13】
呼吸器疾患の治療における、請求項1〜12のいずれか一項記載の吸入器の使用。
【請求項14】
喘息及び/又は慢性閉塞性肺疾患の治療における、請求項1〜12のいずれか一項記載の吸入器の使用。

【図1】
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【公表番号】特表2013−510898(P2013−510898A)
【公表日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−539407(P2012−539407)
【出願日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【国際出願番号】PCT/GB2010/002126
【国際公開番号】WO2011/061498
【国際公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(511109180)シプラ・リミテッド (17)
【Fターム(参考)】