説明

吸入薬物製品、システムおよび使用

本発明の種々の実施形態は呼吸器の疾患を処置する薬物製品、吸入システムおよび方法を提供する。いくつかの実施形態は、加圧式定量噴霧式吸入器およびチャンバーを含む吸入システムを提供する。上記チャンバーは、約145ミリリットル(ml)から約200mlのチャンバー容量を有する静電防止チャンバーであり得る。一実施形態において、本発明は、加圧式定量噴霧式吸入器および静電防止チャンバーを含む薬物製品を提供し、該加圧式定量噴霧式吸入器は少なくとも一つのCFCではない噴霧剤、少なくとも一つの活性のある薬学的薬剤および必要に応じ少なくとも一つの賦形剤を含み、ここで、該少なくとも一つの活性のある薬学的薬剤は、フロン酸モメタゾン、フマル酸フォルモテロールおよびこれらの薬学的に受容可能な塩、異性体および組み合わせからなる群から選択される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸入薬物製品、システムおよびこれらの使用に向けられる。この製品は、呼吸器の疾患を処置するために有用な、加圧式定量噴霧式吸入器(pressurized metered dose inhaler)およびチャンバーを含み得る。
【背景技術】
【0002】
加圧式定量噴霧式吸入器(pMDI)薬物製品などの薬物製品は、広く使用されており、かつ、喘息および慢性閉塞性肺疾患(COPD)などのいろいろな疾患を処置するために非常に有効である。一般的に、pMDI薬物製品は、活性のある薬学的薬剤(APA)、噴霧剤(propellant)および必要に応じて一つまたはそれより多い賦形剤を有する。歴史的に、クロロフルオロカーボン(CFC)は多くの異なるAPAと適合性があることが見出されていることからCFCはpMDI薬物製品において好都合に用いられている。
【0003】
CFC噴霧剤は環境を傷つけることが見出されていることから、最近の取締りの変化はCFC噴霧剤の使用を制限している。1,1,1,2テトラフルオロエタン(HFA 134)および1,1,1,2,3,3,3ヘプタフルオロプロパン(HFA 227)などのCFCではない噴霧剤は、代わりとなるものとして使用されている。CFCではない噴霧剤は、受容可能な安定性のあるpMDI処方物を提供するために、一つまたはそれより多いさらなる賦形剤の利用を必要とし得る。さらなる賦形剤の使用は、噴出される処方物の細かい粒子の大きさの分布を変え得る。粒子の大きさの分布への変化は、pMDI薬物製品の効能に影響し得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、肺の標的とされる領域に達することができる細かい粒子の高いパーセンテージを有する薬物用量を噴出できるpMDI薬物製品を提供することが望ましい。用途が広くそして正しく使用することが誰にとっても容易であり、そのため、正しい用量が全ての被験体の肺に送達され得るpMDIを提供することもまた望ましい。これは、作動させたpMDIと呼吸の調和(breath coordination)を有し得ないいくつかの被験体への、または呼吸の困難を有する被験体に関しての課題であり得る。
【0005】
新しいCFCではない噴霧剤の使用に伴ない、pMDIの薬物製品は、特定の細かい粒子の分布を提供することにおける課題を経験している。さらに、そのようなpMDIは、類似した用量を全ての被験体に一貫して送達することが可能ではないかもしれない。したがって、喘息もしくはCOPDを有する被験体を処置するために用いられ得、全ての被験体に望ましい用量もしくは望ましいパーセンテージの細かい粒子を送達する薬物製品またはシステムを提供することが望ましくあり得る。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のいくつかの局面は、望ましい細かい粒子のフラクション(FPF)および望ましい細かい粒子の用量(FPD)を有するpMDIシステムを含む薬物製品に向けられる。細かい粒子は、約4.7μmまたはそれ未満の直径を有する粒子であるとみなされる。本発明の多数の実施形態は、pMDIを単独で含む吸入製品と比較したとき、意外な細かい粒子のフラクションを結果として生じるスペーサーまたはチャンバーを有するpMDIを提供する。チャンバーまたはスペーサーの使用はまた、細かい粒子のフラクションまたは用量を損なうことなく、吸入をpMDI作動と調和させることに困難を有する患者を好都合に助け得る。
【0007】
本発明の種々の実施形態は、加圧式定量噴霧式吸入器および静電防止チャンバーを含む薬物製品を提供する;加圧式定量噴霧式吸入器は、少なくとも一つのCFCではない噴霧剤、少なくとも一つの活性のある薬学的薬剤および必要に応じ少なくとも一つの賦形剤を含み、ここで、少なくとも一つの活性のある薬学的薬剤は、フロン酸モメタゾン、フマル酸フォルモテロールおよびこれらの薬学的に受容可能な塩、異性体および組み合わせからなる群から選択される;静電防止チャンバーは、約145mlから約200mlのチャンバー容量を有する。
【0008】
いくつかの実施形態において、薬物製品は、第二の薬物製品から送達される細かい粒子のフラクションの約25%以内である細かい粒子のフラクションを送達する。第二の薬物製品は、少なくとも一つのCFCではない噴霧剤、少なくとも一つの活性のある薬学的薬剤および必要に応じ少なくとも一つの賦形剤を含む加圧式定量噴霧式吸入器を含む。;ここで少なくとも一つの活性のある薬学的薬剤は、フロン酸モメタゾン、フマル酸フォルモテロールおよびこれらの薬学的に受容可能な塩、異性体および組み合わせからなる群から選択される;ここで第二の薬物製品はチャンバーを有さない。望ましくは、上記薬物製品および上記第二の薬物製品は、お互いの(プラスまたはマイナス)約25%以内;お互いの約20%;お互いの約15%以内;お互いの約10%以内;またはお互いの約5%以内の細かい粒子のフラクションまたは用量を送達する。
【0009】
細かい粒子は、約4.7ミクロンまたはそれ未満の空気力学的な直径を有する粒子であるとみなされる。
【0010】
多数の実施形態において、薬物製品は、少なくとも約30%または少なくとも約40%の細かい粒子のフラクションを有する用量を送達することができる。少なくとも一つのCFCではない噴霧剤は、1,1,1,2,3,3,3ヘプタフルオロプロパンからなり得る。
【0011】
多数の実施形態は、患者(処置するための方法を必要としている)における喘息または慢性閉塞性肺疾患を処置するための方法に向けられ、この方法は、上記患者に1,1,1,2,3,3,3ヘプタフルオロプロパン、フロン酸モメタゾン、フマル酸フォルモテロール、オレイン酸およびエタノールを含む処方物を投与することを含む;ここで、投与される処方物は少なくとも約30%の細かい粒子のフラクションを送達し、そして上記処方物は静電防止チャンバーに取り付けられた加圧式定量噴霧式吸入器から投与される。上記方法はフマル酸フォルモテロールの約5μgの用量を送達し得、ならびにフロン酸モメタゾンの約50μgから約200μgが患者に投与され、および一日に一回または二回投与され得る。投与された処方物は、少なくとも約40%の細かい粒子のフラクションを有し得る。
【0012】
本発明の種々の局面は、弁付き保持チャンバー(valved holding chamber)(VHC)および静電防止チャンバーなどのチャンバーまたはスペーサーを含む。本発明の種々の実施形態において、静電防止チャンバーは、約125mlから約225ml;約140mlから約210ml;約145mlから約200ml;約148mlまたは約194mlまたは約198mlの容量を有し得る。
【0013】
本発明の他の実施形態は、加圧式定量噴霧式吸入器(懸濁物の処方物を含む)および静電防止チャンバーを含む吸入システムを提供する;この懸濁物の処方物は、1,1,1,2,3,3,3ヘプタフルオロプロパン、フマル酸フォルモテロール、フロン酸モメタゾン、エタノール、オレイン酸を含む。投与される時、上記処方物は、細かい粒子のフラクションの少なくとも約30%を有し得る。上記吸入システムは、細かい粒子のフラクション(これは、第二の吸入システムから送達される細かい粒子のフラクションの約25%以内である)を送達することができる。第二の吸入システムは、少なくとも一つのCFCではない噴霧剤、少なくとも一つの活性のある薬学的薬剤および必要に応じ少なくとも一つの賦形剤を含む加圧式定量噴霧式吸入器を含む;ここで少なくとも一つの活性のある薬学的薬剤は、フロン酸モメタゾン、フマル酸フォルモテロールおよびこれらの薬学的に受容可能な塩、異性体および組み合わせからなる群から選択される;ここで第二の薬物製品はチャンバーを有さない。請求項19に記載の吸入システムであって、ここで、上記吸入システムおよび上記第二の吸入システムはお互いの約5%以内の細かい粒子のフラクションを送達する、吸入システム。
【0014】
本発明のさらなる実施形態は、フロン酸モメタゾンおよびフマル酸フォルモテロールを含む吸入される処方物を提供し、ここで上記吸入される処方物は少なくとも約30%の細かい粒子のフラクションを含み、そして静電防止チャンバーに取り付けられた加圧式定量噴霧式吸入器から投与される。投与される場合、上記処方物は、細かい粒子のフラクションの少なくとも約40%もまた有し得る。
【0015】
本発明のいくつかの種類の実施形態は、加圧式定量噴霧式吸入器およびチャンバーを含む薬物製品を提供する;加圧式定量噴霧式吸入器は、少なくとも一つのCFCではない噴霧剤、少なくとも一つの活性のある薬学的薬剤および必要に応じ一つまたはそれより多い賦形剤を含む。
【0016】
本発明の他の実施形態は、患者(処置するための方法を必要としている)における喘息または慢性閉塞性肺疾患を処置するための方法を提供し、この方法は、上記患者に少なくとも一つのCFCではない噴霧剤、少なくとも一つの活性のある薬学的薬剤および必要に応じ一つまたはそれより多いの賦形剤を含む処方物を投与する工程を含む。上記処方物は、1,1,1,2,3,3,3ヘプタフルオロプロパン、フロン酸モメタゾン、フマル酸フォルモテロール、オレイン酸およびエタノールを含み得る。上記処方物は、チャンバーに取り付けられたpMDIから作動させられる。
【0017】
本発明のさらなる実施形態は、加圧式定量噴霧式吸入器(懸濁物の処方物を含む)を含む吸入システムを提供する。懸濁物の処方物は、少なくとも一つのCFCではない噴霧剤、少なくとも一つの活性のある薬学的薬剤および必要に応じ一つまたはそれより多い賦形剤を含む。本発明の種々の局面は、コルチコステロイドおよび長時間作用性(long−acting)β2−アゴニストの組み合わせ製品を有する処方物を提供する。上記処方物は、1,1,1,2,3,3,3ヘプタフルオロプロパン、フマル酸フォルモテロール、フロン酸モメタゾン、エタノール、オレイン酸を含み得る。上記システムはpMDIに取り付けられた静電防止チャンバーを含む。望ましくは、細かい粒子の少なくとも約30%または少なくとも約40%が、約4.7μm未満の大きさを有する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、フマル酸フォルモテロールについてのMDI単独、AEROCHAMBER Z−STAT PLUS(登録商標)、AEROCHAMBER MAX(登録商標)、VORTEX、OPTICHAMBER(登録商標)に対するAnderson Cascade Impactor(ACI)の結果を示す。
【図2】図2は、フロン酸モメタゾンについてのMDI単独、AEROCHAMBER Z−STAT PLUS(登録商標)、AEROCHAMBER MAX(登録商標)、VORTEX、OPTICHAMBER(登録商標)に対するAnderson Cascade Impactor(ACI)の結果を示す。
【図3】図3は、AEROCHAMBER MAX(登録商標)を用いたフマル酸フォルモテロールについての、累積質量(μg)対空気力学的直径(μm)の流量依存を示す。
【図4】図4は、AEROCHAMBER MAX(登録商標)を用いたフロン酸モメタゾンについての、累積質量(μg)対空気力学的直径(μm)の流量依存を示す。
【図5】図5は、AEROCHAMBER Z−STAT PLUS(登録商標)を用いたフマル酸フォルモテロールについての、累積質量(μg)対空気力学的直径(μm)の流量依存を示す。
【図6】図6は、AEROCHAMBER Z−STAT PLUS(登録商標)を用いたフロン酸モメタゾンについての、累積質量(μg)対空気力学的直径(μm)の流量依存を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(詳細な記述)
本発明のいくつかの実施形態は、患者(処置するための方法を必要としている)における喘息または慢性閉塞性肺疾患を処置するための方法を提供し、この方法は、上記患者に、HFA 134またはHFA 227などのCFCではない噴霧剤、少なくとも一つの活性のある薬学的薬剤および必要に応じ少なくとも一つの賦形剤を含む処方物を投与する工程を含む。有用な活性のある薬学的薬剤としては、フロン酸モメタゾンおよび/またはフマル酸フォルモテロールが挙げられる。上記処方物は、チャンバーに取り付けられたpMDIから作動させられる。
【0020】
薬物製品および吸入システムは、静電防止チャンバーもまた含み得る。上記製品または吸入システムの投与後、細かい粒子の少なくとも約30%または少なくとも約40%が約4.7μm未満の大きさを有し、これは細かい粒子の用量としてもまた知られる。上記システムは、約10%未満が口腔咽頭領域内に沈着されるように口腔咽頭領域内に実質的に沈着されない、投与される処方物もまた提供し得る。チャンバーなしで使用される場合、口腔咽頭領域内に沈着される粒子の量は、20%を超え得る。
【0021】
細かい粒子は、約4.7ミクロンまたはそれ未満の空気力学的直径を有する粒子であるとみなされる。
【0022】
静電防止チャンバーは、電荷(charge)散逸的特性を有するチャンバーとして定義される。上記チャンバーはプラスチックまたは金属で作製され得る。チャンバーは静電荷を散逸させるいくつかのタイプのポリマーを含むことによって静電防止の特性を有するように作製され得る。さらに、静電防止でないチャンバーは、ふさわしい量の水もしくは他の適切な液体をチャンバーに導入するまたはこれらでチャンバーをゆすぐことによって静電防止の性質を有するように作製され得る。
【0023】
上記静電防止チャンバーは約100mlから約250ml;125mlから約225ml;約140mlから約210ml;約145mlから約200ml;または約148mlまたは約194mlまたは約198mlの容量を有し得る。
【0024】
有用なチャンバーとしては、AEROCHAMBER Z−STAT PLUSTM、AEROCHAMBER MAX(登録商標)、VORTEX(登録商標)、OPTICHAMBER(登録商標)が挙げられる。特に有用なチャンバーとしては、約148mlのチャンバー容量を有するAEROCHAMBER Z−STAT PLUSTM、約198mlの容量を有するAEROCHAMBER MAX(登録商標)および194mlの容量を有するVORTEX(登録商標)が挙げられる。
【0025】
適切な少なくとも一つの活性のある薬学的薬剤としては、抗コリン性の薬(anticholinergic)、コルチコステロイド、長時間作用性βアゴニスト、短時間作用性βアゴニスト、ホスホジエステラーゼIVインヒビターが挙げられるが、これらに限定されない。適切な医薬は、呼吸器の疾患、炎症性の疾患もしくは閉塞性の気道の疾患の予防または処置に有用であり得る。そのような疾患の例としては、喘息または慢性閉塞性肺疾患が挙げられる。
【0026】
適切な抗コリン性の薬としては、(R)−3−[2−ヒドロキシ−2,2−(ジチエン−2−イル)アセトキシ]−1−1[2−(フェニル)エチル]−1−アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン、グリコピロレート、臭化イプラトロピウム、臭化オキシトロピウム、硝酸メチルアトロピン、硫酸アトロピン、イプラトロピウム、ベラドンナ抽出物、スコポラミン、臭化メチルスコポラミン(scopolamine methobromide)、メトスコポラミン、臭化メチルホマトロピン(homatropine methobromide)、ヒヨスチアミン、イソプリオプラミド、オルフェナドリン、塩化ベンザルコニウム、臭化チオトロピウム、GSK202405、上記の何れかの個々の異性体または上記の何れかの薬学的に受容可能な塩もしくは水和物、または上記の二つまたはそれより多い組み合わせが挙げられる。
【0027】
適切なコルチコステロイドとしては、フロン酸モメタゾン;ジプロピオン酸ベクロメタゾン;ブデソニド;フルチカゾン;デキサメタゾン;フルニソリド;トリアムシノロン;(22R)−6.α.,9.α.−ジフルオロ−11.β.,21−ジヒドロキシ―16.α.,17.α.−プロピルメチレンジオキシ―4―プレグナ(pregnen)−3,20−ジオン、チプレダン、GSK685698、GSK799943または上記の何れかの薬学的に受容可能な塩もしくは水和物、または上記のうちの2つ以上の組み合わせが挙げられる。
【0028】
適切な長時間作用性βアゴニストとしては、カルモテロール、インダカテロール、TA−2005、サルメテロール、ホルモテロール、または上記の何れかの薬学的に受容可能な塩もしくは水和物、または上記のうちの2つ以上の組み合わせが挙げられる。適切な短時間作用性βアゴニストとしては、アルブテロール、硫酸テルブタリン、メタンスルホン酸ビオルテロール、レバルブテロール、硫酸メタプロテレノール、酢酸ピルブテロール、または上記の何れかの薬学的に受容可能な塩もしくは水和物、または上記のうちの2つ以上の組み合わせが挙げられる。
【0029】
適切なホスホジエステラーゼIVインヒビターとしては、シロミラスト、ロフルミラスト、テトミラスト、1−[[5−(1(S)−アミノエチル)−2−[8−メトキシ−2−(トリフルオロメチル)−5−キノリニル]−4−オキサゾリル]カルボニル]−4(R)−[(シクロプロピルカルボニル)アミノ]−L−プロリン、エチルエステルまたは上記の何れかの薬学的に受容可能な塩もしくは水和物、または上記のうちの2つ以上の組み合わせが挙げられる。
【0030】
本発明のある実施形態において、少なくとも一つの活性のある薬学的薬剤としては、コルチコステロイドおよび長時間作用性βアゴニストが挙げられる。少なくとも一つの活性のある薬学的薬剤としては、フロン酸モメタゾンもしくはフマル酸フォルモテロールまたはフロン酸モメタゾンおよびフマル酸フォルモテロールの組み合わせが挙げられ得る。
【0031】
フロン酸モメタゾンは抗炎症性のコルチコステロイドであり、9,21−ジクロロ−11(β),17―ジヒドロキシ−16(α)−メチルプレグナ−1,4−ジエン−3,20−ジオン17−(2フロエート)という化学的な名前を有する。これは、水にほとんど溶けない;メタノール、エタノールおよびイソプロパノールにわずかに溶ける;アセトンおよびクロロホルムに溶ける;ならびにテトラヒドロフランに大量に溶ける。オクタノールと水との間のフロン酸モメタゾンの分配係数は、5000より大きい。モメタゾンは、種々の水和された形態、結晶形態および鏡像体の形態(例えば、一水和物として)で存在し得る。
【0032】
フマル酸フォルモテロールは、選択的β−アドレナリン作用性気管支拡張薬である。これの化学的な名前は、(±)2―ヒドロキシ−5−[(1RS)−1−ヒドロキシ−2−[[(1RS)−2−(4−メトキシフェニル(methoxyphenyly)−1メチルエチル]―アミノ]エチル]ホルムアニリドフマレート二水和物である。フマル酸フォルモテロールは、白色から黄色っぽい結晶の粉末であり、これは、氷酢酸に大量に溶け、メタノールに溶け、エタノールおよびイソプロパノールに少しだけ溶け、水にわずかに溶け、ならびにアセトン、酢酸エチル、およびジエチルエーテルにほとんど溶けないと報告されている。フマル酸フォルモテロールは、種々の水和された形態、結晶形態および鏡像体の形態(例えば、一水和物として)で存在し得る。
【0033】
本発明は、フマル酸フォルモテロールおよび/もしくはフロン酸モメタゾン、またはこれらの末端の(end)塩、鏡像異性体およびクラスレートを有する医薬にとって有用である。
【0034】
フロン酸モメタゾンおよびフマル酸フォルモテロールは、約1対1のフロン酸モメタゾン対フマル酸フォルモテロールの重量比、または約50対1のフロン酸モメタゾン対フマル酸フォルモテロールの重量比、または約20対1のフロン酸モメタゾン対フマル酸フォルモテロールの重量比、または約12対1のフロン酸モメタゾン対フマル酸フォルモテロールの重量比、または約16対1のフロン酸モメタゾン対フマル酸フォルモテロールの重量比、または約10対1のフロン酸モメタゾン対フマル酸フォルモテロールの重量比、または約8対1のフロン酸モメタゾン対フマル酸フォルモテロールの重量比において存在し得る。
【0035】
これらの比率は、用量あたりフマル酸フォルモテロールの5μgに対しフロン酸モメタゾンの50μg、または用量あたりフマル酸フォルモテロールの約5μgに対しフロン酸モメタゾンの100μg、または用量あたりフマル酸フォルモテロールの約5μgに対しフロン酸モメタゾンの200μg、または用量あたりフマル酸フォルモテロールの約5μgに対しフロン酸モメタゾンの400μg、または用量あたりフマル酸フォルモテロールの約10μgに対しフロン酸モメタゾンの200μg、または用量あたりフマル酸フォルモテロールの約10μgに対しフロン酸モメタゾンの200μg、または用量あたりフマル酸フォルモテロールの約10μgに対しフロン酸モメタゾンの400μgの用量の範囲とおおよそ等しい。
【0036】
多くの他の処方物は単一の噴霧剤を用いるが、当該分野において噴霧剤を基礎とした薬学的なエアロゾルの処方物は、上記噴霧剤として液体のクロロフルオロカーボンの混合物を一般に用いる。当該分野において公知のように、噴霧剤は活性のある成分および賦形剤の両方に対するビヒクルとして役立つ。フルオロトリクロロメタン、ジクロロジフルオロメタンおよびジクロロテトラフルオロエタンは、吸入によって投与するためのエアロゾルの処方物において最も普通に用いられる噴霧剤である。しかしながら、そのようなクロロフルオロカーボン(CFC)は、オゾン層の破壊に関与しており、そのためこれらの製造は段階的に停止されている。HFA 134aおよびHFA 227は、オゾンに対し、多くのクロロフルオロカーボン噴霧剤より有害さが少ないことが言われており、そして個々または組み合わせにおいてのいずれかでのこれらの両者は、本発明の範囲内で用いられるとみなされる。しかしながら、従来のクロロフルオロカーボン、またはこれらの混合物もまた、本発明の処方物のための噴霧剤として用いられ得る。
【0037】
本発明の処方物は噴霧剤としてHFA 227を利用し、pMDIへのスペーサーまたはチャンバーの追加は標的とされる領域内に沈着される細かい粒子のフラクションのパーセンテージを上昇させるということが、意外にも見出されている。
【0038】
したがって、吸入のためのエアロゾルの懸濁物の処方物を含む、定量噴霧式吸入器のシステムが開示される。上記吸入のためのエアロゾルの懸濁物の処方物は、フロン酸モメタゾンの有効量;フマル酸フォルモテロールの有効量;および1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパンを含む。フロン酸モメタゾン対フマル酸フォルモテロールの比率は、フロン酸モメタゾンの約400μg対フマル酸フォルモテロールの約10μgからフロン酸モメタゾンの約50μg対フマル酸フォルモテロールの約5μgであり得る。上記吸入器のシステムは、スペーサーまたはチャンバーを含む。吸入される場合、上記吸入器のシステムは、細かい粒子の高いパーセンテージを肺の標的とされる領域に沈着させ、そして上記処方物のより低い量を喉または口腔前庭などの標的とされない領域に沈着させた。肺の標的とされる領域に送達される細かい粒子のパーセンテージは、少なくとも約30%または少なくとも約40%であることが望ましい。細かい粒子は、4.7μm未満の粒子として定義され得る。
【0039】
本発明の種々の実施形態は、フロン酸モメタゾンおよびフマル酸フォルモテロール、液体の賦形剤、ならびに界面活性剤との組み合わせにおいて、HFA 227またはHFA 134a、またはこれらの組み合わせを利用し得る。賦形剤は噴霧剤との医薬の適合性を促進するために用いられ得、ならびに賦形剤はまた、吐出圧(discharge pressure)を受容可能な範囲(つまり、約2.76〜5.52×10ニュートン/メートル絶対(40から80psi)、好ましくは3.454.83×105ニュートン/メートル絶対(50から70psi))に低下させる。望ましく選択される賦形剤は、医薬と反応せず、比較的有毒でなく、かつ約3.45×105ニュートン/メートル絶対(50psi)より下の蒸気圧を有するべきである。
【0040】
以下に用いられる場合、用語「中鎖脂肪酸」は、−−COOH基において終結しており、かつ6〜12個の炭素原子、好ましくは8〜10個の炭素原子を有するアルキル基の鎖をいう。用語「短鎖脂肪酸」は、−−COOH基において終結しており、かつ4〜8個の炭素原子を有するアルキル基の鎖をいう。用語「アルコール」は、メタノール、エタノールおよびイソプロパノールなどのC−Cアルコールを含む。
【0041】
界面活性剤は、エアロゾルの処方物中に含まれ得る。薬物は、噴霧剤においてゆるい綿状沈降物(floccule)を形成しており、そして沈む傾向も固くなる傾向も示さないので、処方物は、(使用する直前の適度な攪拌などによる)即時の分散性(dispersability)の維持のために界面活性剤を必要とはしないかもしれない。平静な保管におけるHFA 227の場合において、薬物の粒子は、これらの綿状沈降物の状態において懸濁されているままである。したがって、界面活性剤は、上記医薬と噴霧剤との間の表面および界面張力を下げるために必要に応じて添加され得る。医薬、噴霧剤および賦形剤が懸濁物を形成するために存在する場合、界面活性剤は必要とされてもよく、またはされなくてもよい。医薬、噴霧剤および賦形剤が溶液を形成するために存在する場合、界面活性剤は、特定の医薬および賦形剤の溶解性に一部依存して、必要とされてもよく、または必要とされなくてもよい。界面活性剤は、あらゆる適切な、上記医薬と反応せず、かつ医薬、賦形剤および噴霧剤との間の表面張力を実質的に低減させ、ならびに/または弁の潤滑剤として実質的に働く、有毒でない化合物であり得る。
【0042】
適切な界面活性剤としては、商用名OLEIC ACID NF6321の下で入手できるオレイン酸(Henkel Corp.Emery Group,Cincinnati,Ohioから);塩化セチルピリジニウム(Arrow Chemical,Inc.Westwood, N.J.から);商用名EPIKURON 200の下で入手できる大豆レシチン(Lucas Meyer Decatur,III.から);商用名TWEEN20の下で入手できるポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート(ICI Specialty Chemicals,Wilmington,Del.から);商用名TWEEN60の下で入手できるポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアラート(ICIから);商用名TWEEN80の下で入手できるポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレアート(ICIから);商用名BRIJ76の下で入手できるポリオキシエチレン(10)ステアリルエーテル(ICIから);商用名BRIJ92の下で入手できるポリオキシエチレン(2)オレイルエーテル(ICIから);商用名TECTRONIC 150 R1の下で入手できるポリオキシエチレン―ポリオキシプロピレン−エチレンジアミンブロック共重合体(BASFから);商用名PLURONIC L−92、PLURONIC L−121 end Pluronic F 68の下で入手できるポリオキシプロピレン―ポリオキシエチレンブロック共重合体(BASFから);商用名ALKASURF CO−40の下で入手できるヒマシ油エトキシレート(Rhone−Poulenc Mississauga Ontario,Canadaから);およびこれらの混合物が挙げられる。
【0043】
処方物における界面活性剤の有用な量としては、重量で、約0%から約10%、約0.001%から約10%、約0.001%から約5%、約0.001%から約1%、約0.001%から約0.01%、または.005%が挙げられる。
【0044】
エタノールにおけるわずかな溶解性を有する他の薬物と同様に、フロン酸モメタゾンについては、エタノールを含む処方物において結晶成長を示す傾向がある。薬物粒子の大きさの成長を促進しない処方のパラメーターは公知である。これらのパラメーターは、必要とされるエタノールの濃度を最小限にする利点を提供し、不快な味の感覚についての可能性を低減させ、そして組成物を子供および低いアルコール耐性を有する他の人たちによる使用に、より適切にする。
【0045】
エタノールのある最小限のレベルは、定量ディスペンサー(metered dose dispenser)からの一貫したかつ予測できる薬物の送達を提供するために用いられ得る。この最小限のレベルは、全処方物の約1重量パーセントであり、これは最低限に受容可能な薬物の送達を生じる。エタノールの上昇した量は、概して、薬物送達の特性を向上させる。実験のデータは、フロン酸モメタゾンの重量対エタノールの重量の比率が、粒子の大きさの上昇を防ぐ上で重要であることを示す。エタノールの適切な範囲としては、約1%から約10%、約1%から約5%、約1%から約3%、約1%から約2%が挙げられる。エタノールの適切な量としては、約1%、1.3%、約1.5%、約1.8%または約2%が挙げられる。
【0046】
上記活性のある成分は、以下のような処方物を収容する容器の中に入れられ得る:薬を収容する上記容器は、単一のまたは多数の工程において、好ましくは単一の工程において、医薬品、エタノールおよび界面活性剤によって充填され得る。同様に、噴霧剤または噴霧剤の混合物は、前述のまたは複数の工程において上記容器に添加され得る。本発明の処方物の懸濁物は、上記成分の綿状沈降物を含む。綿状沈降物は、格子型構造(これは、完全に沈むこと(settling)に抵抗する)を形成している粒子の凝集物である。格子のゆるい構造は、少しの量の攪拌によって凝集物を容易にばらばらにし、そして直ちに分布させることを可能にする。より具体的には、モメタゾンが噴霧剤中に懸濁される場合、徐々にモメタゾンの粒子は懸濁物の中心において綿状沈降物になる傾向がある。これらの粒子は、攪拌または定量噴霧式吸入器のかんを振ることで直ちに分散する。意外にも、上記懸濁物へのフォルモテロールの添加は、この現象を変えなかった。噴霧剤がHFA 227である場合、フマル酸フォルモテロールおよびフロン酸モメタゾンは懸濁物中で綿状沈降物を形成し、そしてモメタゾンおよびフォルモテロールはお互いに凝集される。噴霧剤がHFA 134aである場合、重量で約0.05%から約0.3%の量におけるラクトースなどのバルキング薬剤またはキャリアの存在は、吸入器の作動において薬物送達を高めるために好まれる。HFA 134aはHFA 227より高密度ではないので、134aを基にした処方物については、フォルモテロール、モメタゾンおよびラクトースはかんの底に対する沈殿物となる傾向を有する;したがって、上記計量器(meter)の作動の前に、処方物を再び形成するためにかんを振ることは、均一な薬物送達を確実にすることを助けるために行われ得る。HFA 134a懸濁物において用いられ得る他のバルキング薬剤としては、例えば、マンニトール、グルコース、スクロースおよびトレハロースが挙げられる。
【0047】
本発明の処方物は、他のエアロゾルの組成物についての当該分野において慣習である手順に従って作製される。一般に、噴霧剤以外の全ての成分は混合され、そしてエアロゾルの容器の中に導入される。その後、上記容器は上記噴霧剤の沸点より下の温度まで冷やされ得、そして絞り弁(metering valve)が容器の上に圧着(crimp)される前に、冷やされた噴霧剤の必要とされる量が添加され得る。あるいは、上記容器は、噴霧剤で充填される前に絞り弁が備え付けられ得、そして噴霧剤の必要とされる量が弁を通して導入される。
【0048】
本発明の処方物は、慣例的な充填の機器を用いてエアロゾルの容器中に充填され得る。HFA 227およびHFA 134aは、エアロゾルの弁の組立部品において現在利用されている全てのエラストマー化合物とは適合性がないかもしれないので、白色のブナゴム(white buna rubber)などの他の物質を代わりに用いること、または賦形剤および必要に応じて界面活性剤(これらは弁の構成要素へのHFA 227または134aの有害な影響を軽減する)を利用することが不可欠であり得る。本発明の懸濁物は、当該分野で公知である圧力充填手順または低温充填手順のいずれかによって調製され得る。
【0049】
特定の適用に応じて、上記容器は、単一または多数の投薬のための所定の処方物の量で満たされ得る。一般に、上記容器は多数の投薬のための大きさに作られており、したがって、送達される処方物が、各投薬において実質的に均一であることが非常に重要である。例えば、処方物が気管支拡張のためのものである場合、容器は一般に、200回の作動のために十分な処方物の量で満たされる。
【0050】
適切な懸濁物は、処方物のいくつかの物理的特性(すなわち、粒子の集塊の比率、集塊の大きさおよび粒子がクリーム状になる(creaming)/沈む比率)を観測することおよびこれらを受容可能な標準と比較することによって、一部選別され得る。上述の、適切な溶液は、推奨される保管の温度範囲の全体にわたって、上記医薬の溶解度を測定することによって選別/評価され得る。
【0051】
定量噴霧式吸入器に関して、懸濁物は効能および安定性の考慮に対して望ましくあり得る。一つまたはそれより多い他の賦形剤は、処方物の特性に応じて防腐剤、緩衝剤、酸化防止剤、甘味料および/または矯味矯臭薬もしくは、味を隠す他の薬剤として添加され得る。
【0052】
入手できる絞り弁は、作動あたり、約25から約100マイクロリットルの範囲の容量を送達する。一方、特定の病状を処置するための用量において必要とされる薬物物質の量は、弁の作動あたり、概して、約10から約500マイクログラムである。組み合されたこれらの二つの要因は、所与の処方物について、前述のエタノールのパラメーターの範囲内で限度を決定するという制約を引き起こす。
【0053】
喘息などの下部の呼吸器系の障害を処置するために適切である処方物において、薬物の少なくとも実質的な部分は、呼吸に適した大きさ(例えば、最も大きい寸法において約0.5から約10マイクロメートル)を有する懸濁された粒子として存在する。鼻炎などの上部の呼吸器系の障害を処置するために適切である処方物において、やや大きな薬物の粒子が許され得る。活性のある化合物が懸濁物を形成している場合、その粒子の大きさは比較的均一であるべきであり、実質的に全ての粒子は、好ましくは約0.1〜25ミクロンの間の範囲であり、好ましくは0.5〜10ミクロン、より好ましくは約1から約4.7ミクロンである。25ミクロンより大きい粒子は、口腔咽頭腔(oropharyngeal cavity)において停滞させられ得、一方、約0.5ミクロンより小さい粒子はおそらく消散され得、そのため患者の肺に届かないため、利用され得ない。
【0054】
気道の疾患(有効量におけるフロン酸モメタゾンおよびフマル酸フォルモテロールを用いる処置の影響を受けやすいような気道の疾患)を処置する方法もまた、本発明の範囲内である。上記医薬は、一日に一回または二回投与され得る。
【0055】
エアロゾルの処方物は、二つの薬物物質の粉末(分散させられたフロン酸モメタゾンおよびフマル酸フォルモテロール)と第三の粉末の界面活性剤の、よく混合された三成分のブレンドの分散系であり得る。第三の粉末の界面活性剤は、例えば、レシチン、ステアリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸マグネシウム、パルミチン酸マグネシウム、ラウリン酸マグネシウムおよび他の適切な乾燥粉末のブレンド界面活性剤などである。
【0056】
乾燥ブレンドは、粉末の均一なブレンドを達成するため、例えばTURBULA MIXER T2C内で約5分間、または当業者に公知であるような時間の量の間、混合され得る。この分散系は、粉末充填の器具を用いて、各吸入器のかんの中に個々に量って供給される(例えば、AUTODOSE POWDEEMIUM−ONE TOO MANY SYSTEMによって15mLのアルミニウムのテフロン(登録商標)で覆われた(FEP−−フッ化エチレンプロピレン共重合体)かん、または他のポリマーで覆われたかんの中に個々に量って供給される、など)。上記かんは、次に、63マイクロリットルの弁または同種のものと圧着させられ得、そして噴霧剤充填機器(例えばPAMASOL Model P2008/012など)を用いてHFA−227またはHFA−134a噴霧剤で充填され得る。懸濁物製品で充填されたかんは、その後、ソニケーター(sonicator)(例えば、BRANSON 5210ソニケーターなど)によって(当業者に公知であるように)約5分間超音波処理される。
【0057】
これらの特定の処方物は、さらなる賦形剤および/または添加物を使用することなく一貫したDrug Content Uniformity (DCU)を示す、二つの薬物物質の組み合わせのpMDIの製造を可能にしている。乾燥2−工程充填手順のこのタイプの使用は、充填プロセスの間の、活性のある成分の結晶成長の可能性を排除し、そして充填プロセスの始め、中頃および終わりの間に充填される製品における一貫した粒子の大きさの分布を保証する。この処方物および充填プロセスは、懸濁している媒体HFA−227における粒子の満足できる程度の分散、結晶成長がないこと、ケーキング(caking)がないこと、および用量の送達において満足できる程度の薬物の中身の均一性を保証する。
【0058】
適切な賦形剤としては、商用名MIGLYOL 840の下で入手できる中鎖脂肪酸のプロピレングリコールジエステル(Huls America,Inc.Piscataway,N.J.から);商用名MIGLYOL 812の下で入手できる中鎖脂肪酸(medium chain fatty adds)のトリグリセリドエステル(Hulsから);商用名VERTREL 245の下で入手できる過フルオロジメチルシクロブタン(E.I.DuPont de Nemours and Co.Inc.Wilmington,Del.から);商用名オクタフルオロシクロブタンの下で入手できる過フルオロシクロブタン(PCR Gainsville, Fla.から);商用名PEG 400の下で入手できるポリエチレングリコール(BASF Parsippany, N.J.から);メントール(Pluess−Stauffer International Stanford,Conn.から);商用名ラウログリコールの下で入手できるプロピレングリコールモノラウレート(Gattefosse Elmsford,N.Y.から);商用名TRANSCUTOLの下で入手できるジエチレングリコールモノエチルエーテル(Gattefosseから);商用名LABRAFAC HYDRO WL 1219の下で入手できる中鎖脂肪酸(medium chain fatty adds)のポリグリコール化グリセリド(Gattefosseから);エタノール、メタノールおよびイソプロパノールなどのアルコール;ユーカリ油(Pluses−Stauffer Internationalから入手できる);およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0059】
処方物中の賦形剤の有用な量としては、重量で約0%から約75%、約0.001%から約75%、約0.001%から約50%、約0.001から約10%、約0.001から約5、または約3%が挙げられる。
【0060】
実施例において、「パーセント」は、文脈が明らかに異なったことを示さない限り、重量のパーセンテージを示す。
【0061】
本発明のある局面は、下記の実施例においてさらに記載される。本発明の実施形態の記載は、例示および説明の目的のために示されている。これらは、網羅的であること、または本発明を開示されたまさにその形態に制限することは意図されず、そして言うまでもなく多数の変更および変化が、上記の教示を考慮して可能である。
【実施例】
【0062】
(実施例)
加圧式MDI製品を、単独でおよびAEROCHAMBER Z−STAT PlusTM(容量=148mL)、AEROCHAMBER MAX(登録商標)(容量=198mL)、VORTEX(登録商標) AND OPTICHAMBER(登録商標)などの一つのチャンバーと組み合わせたpMDIを含んだ吸入システム/薬物製品として検査した。
【0063】
空気力学的な粒子の大きさの分布を測定するために、USPスロート(throat)を有するAndersen Cascade Impactor(ACI)を用いた。二つの流量に対し、二つのインパクターの構成を用いた。28.3L/分での試料採取のため、プレート0から7までを用いた;60L/分での試料採取のため、プレート1から6までを用いた。製造業者は、各構成における上記プレートに対する有効カットオフ直径を提供した。送達された全用量値は、上記インパクター(スロート、プレートおよびフィルター)から回収された活性のある成分の全ての質量を報告する。細かい粒子の用量値は、4.7μm未満の空気力学的な直径を有する活性のある成分の全ての質量を報告する。
【0064】
(結果)
図1および2は、28.3L/分での継続的な流れの下でACIによって測定される場合の、両方の活性のある成分についての、スロート、細かい粒子の用量および送達された全用量の回収(recovery)を示す。説明の中で示されているような、異なるスペーサー装置およびpMDIについての回収を示す。データの点は、平均値(n=5)を表す;エラーバーは1標準偏差を示す。
【0065】
図1は、フマル酸フォルモテロールについての、マイクログラム単位で測定された、ACI内で回収された細かい粒子の用量を示す。いくつかの種類のチャンバーの使用は、ACIの「スロート」部分におけるフロン酸モメタゾンの沈着(deposition)を有意に(約90%)低減させた。pMDI単独およびAEROCHAMBER Z−STAT/PLUS(登録商標)を有するpMDIから回収された細かい粒子の質量(fine particle mass recovered)(FPD)は、類似しており、具体的には5%未満の違いであった。pMDIならびにAEROCHAMBER MAX(登録商標)およびVORTEX(登録商標)は類似しており、それぞれ約15%および約20%以内であった。OPTICHAMBER(登録商標)は、pMDI単独と比較したとき、FPD(μg)において約30%の低減を生じた。チャンバーの使用によって、フマル酸フォルモテロールについての送達された全用量は、約20から約30%減少した。測定は28.3L/分の継続する流量において行った。
【0066】
図2において示されるように、フロン酸モメタゾンについての結果はフマル酸フォルモテロールの結果に類似していた。いくつかの種類のチャンバーの使用は、ACIの「スロート」部分におけるフロン酸モメタゾンの沈着を有意に(約90%)低減させた。pMDI単独およびAEROCHAMBER Z−STAT/PLUS(登録商標)を有するpMDIからマイクログラム単位で回収された細かい粒子の用量の質量は類似しており、5%未満の違いであった。pMDI単独ならびにAEROCHAMBER MAX(登録商標)およびVORTEX(登録商標)のFPDは類似しており、それぞれ約15%および約20%以内であった。OPTICHAMBER(登録商標)は、pMDI単独と比較したとき、FPD(μg)において約30%の低減を生じた。チャンバーの使用によって、図2に示されるように、送達された全用量は、少なくとも約20から約30%減少した。ACI測定は28.3L/分の継続する流量において行った。
【0067】
図3〜6は、二つの異なるスペーサー装置を用いてACIで測定される場合の、活性のあるもの(active)についての累積質量対空気力学的直径を示す。装置、流量および収集時間を、個々のグラフの説明文の中で示す。細かい粒子の用量の評価を容易にするため、4.7μmのところにy軸を記す。データの点は平均値(n=10)を表す。
【0068】
図3〜6は、いくつかの種類のチャンバーを用いた、活性のあるものの流量依存を示す。オープンな円(open circle)を有する線は2秒間の60L/分の流量を表し、そして、黒いひし形を有する線は4秒間の28.3L/分の流量を表す。図3および4は、AEROCHAMBER MAX(登録商標)を用いた、フマル酸フォルモテロールおよびフロン酸モメタゾンをそれぞれ含む。図5および6は、AEROCHAMBER Z−STAT/PLUS(登録商標)を用いた、フマル酸フォルモテロールおよびフロン酸モメタゾンをそれぞれ含む。図3〜6において見られ得るように、検査されたサンプルの全てにおいて、4.7μmより下の空気力学的直径(μm)の累積質量(μg)は、流量にかかわらず、類似していた。すなわち、AEROCHAMBER MAX(登録商標)およびAEROCHAMBER Z−STAT/PLUS(登録商標)は、検査された流量によって影響されなかったことを決定した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧式定量噴霧式吸入器および静電防止チャンバーを含む薬物製品であって、該加圧式定量噴霧式吸入器は少なくとも一つのCFCではない噴霧剤、少なくとも一つの活性のある薬学的薬剤および必要に応じ少なくとも一つの賦形剤を含み、ここで、該少なくとも一つの活性のある薬学的薬剤は、フロン酸モメタゾン、フマル酸フォルモテロールおよびこれらの薬学的に受容可能な塩、異性体および組み合わせからなる群から選択され;該静電防止チャンバーは、約145mlから約200mlのチャンバー容量を有する、薬物製品。
【請求項2】
請求項1に記載の薬物製品であって、ここで、該薬物製品は第二の薬物製品から送達される細かい粒子のフラクションの約25%以内である細かい粒子のフラクションを送達し、該第二の薬物製品は、少なくとも一つのCFCではない噴霧剤、少なくとも一つの活性のある薬学的薬剤および必要に応じ少なくとも一つの賦形剤を含む加圧式定量噴霧式吸入器を含み、;ここで、該少なくとも一つの活性のある薬学的薬剤は、フロン酸モメタゾン、フマル酸フォルモテロールおよびこれらの薬学的に受容可能な塩、異性体および組み合わせからなる群から選択され;ここで、該第二の薬物製品はチャンバーを有さない、薬物製品。
【請求項3】
請求項2に記載の薬物製品であって、ここで、該薬物製品および前記第二の薬物製品はお互いの約20%以内の細かい粒子のフラクションを送達する、薬物製品。
【請求項4】
請求項2に記載の薬物製品であって、ここで、該薬物製品および前記第二の薬物製品はお互いの約10%以内の細かい粒子のフラクションを送達する、薬物製品。
【請求項5】
請求項2に記載の薬物製品であって、ここで、該薬物製品および前記第二の薬物製品はお互いの約5%以内の細かい粒子のフラクションを送達する、薬物製品。
【請求項6】
請求項1に記載の薬物製品であって、ここで、該薬物製品は少なくとも約30%の細かい粒子のフラクションを有する用量を送達することができる、薬物製品。
【請求項7】
請求項1に記載の薬物製品であって、ここで、該薬物製品は少なくとも約40%の細かい粒子のフラクションを有する用量を送達することができる、薬物製品。
【請求項8】
請求項1に記載の薬物製品であって、ここで、前記少なくとも一つのCFCではない噴霧剤は1,1,1,2,3,3,3ヘプタフルオロプロパンからなる、薬物製品。
【請求項9】
請求項1に記載の薬物製品であって、ここで、前記チャンバーは約148mlの容量を有する、薬物製品。
【請求項10】
請求項1に記載の薬物製品であって、ここで、前記チャンバーは約198mlの容量を有する、薬物製品。
【請求項11】
処置するための方法を必要としている患者における喘息または慢性閉塞性肺疾患を処置するための方法であって、該方法は該患者に1,1,1,2,3,3,3ヘプタフルオロプロパン、フロン酸モメタゾン、フマル酸フォルモテロール、オレイン酸およびエタノールを含む処方物を投与することを含み;ここで、該投与される処方物は少なくとも約30%の細かい粒子のフラクションを送達し、そして該処方物は静電防止チャンバーに取り付けられた加圧式定量噴霧式吸入器から投与される、方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法であって、ここで、フマル酸フォルモテロールの約5μgおよびフロン酸モメタゾンの約50μgから約200μgの用量が前記患者に投与される、方法。
【請求項13】
請求項11に記載の方法であって、ここで、前記処方物は一日に二回投与される、方法。
【請求項14】
請求項11に記載の方法であって、ここで、前記処方物は一日に一回投与される、方法。
【請求項15】
請求項11に記載の方法であって、ここで、前記静電防止チャンバーは約145mlから約200mlのチャンバー容量を有する、方法。
【請求項16】
請求項11に記載の方法であって、ここで、前記静電防止チャンバーは約148mlのチャンバー容量を有する、方法。
【請求項17】
請求項11に記載の方法であって、ここで、前記チャンバーは約198mlの容量を有する、方法。
【請求項18】
請求項11に記載の方法であって、ここで、前記投与される処方物は少なくとも約40%の細かい粒子のフラクションを含む、方法。
【請求項19】
懸濁物の処方物を含む加圧式定量噴霧式吸入器および静電防止チャンバーを含む吸入システムであって、該懸濁物の処方物は、1,1,1,2,3,3,3ヘプタフルオロプロパン、フマル酸フォルモテロール、フロン酸モメタゾン、エタノール、オレイン酸を含む、吸入システム。
【請求項20】
請求項19に記載の吸入システムであって、ここで、投与される場合、前記処方物は少なくとも約30%の細かい粒子のフラクションを有する、吸入システム。
【請求項21】
請求項19に記載の吸入システムであって、ここで、前記静電防止チャンバーは約145mlから約200mlのチャンバー容量を有する、吸入システム。
【請求項22】
請求項19に記載の吸入システムであって、ここで、該吸入システムは、第二の吸入システムから送達される細かい粒子のフラクションの約25%以内である細かい粒子のフラクションを送達し、該第二の吸入システムは、少なくとも一つのCFCではない噴霧剤、少なくとも一つの活性のある薬学的薬剤および必要に応じ少なくとも一つの賦形剤を含む加圧式定量噴霧式吸入器を含み;ここで、該少なくとも一つの活性のある薬学的薬剤は、フロン酸モメタゾン、フマル酸フォルモテロールおよびこれらの薬学的に受容可能な塩、異性体および組み合わせからなる群から選択され;ここで、第二の薬物製品はチャンバーを有さない、吸入システム。
【請求項23】
請求項19に記載の吸入システムであって、ここで、該吸入システムおよび前記第二の吸入システムはお互いの約5%以内の細かい粒子のフラクションを送達する、吸入システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−509936(P2011−509936A)
【公表日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−542367(P2010−542367)
【出願日】平成21年1月9日(2009.1.9)
【国際出願番号】PCT/US2009/030562
【国際公開番号】WO2009/089422
【国際公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(596129215)シェーリング コーポレイション (785)
【氏名又は名称原語表記】Schering Corporation
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】