説明

吸収体およびその使用方法

【課題】オーディオ機器に発生する振動の抑制または除去および電気的雑音を低減させる吸収体及びその使用方法を提供する。
【解決手段】吸収体は、プラスチックダンボールまたはアクリル容器などの内部空間に有機溶媒や高分子材料などの液体を封入した後に封止材で開口部を封止する。液体分子の回転周波数が吸収するべき振動および/又はノイズと同等になるように液体の双極子モーメントおよび/又は分子量を選択する。特に、電源に係わる雑音やスピーカなどの振動源に係わる雑音の除去性能に優れ、オーディオ機器の音質を著しく向上させる。また、オーディオ以外の機器に広く応用可能な形態で提供が可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収体およびその使用方法に係り、特にオーディオ機器や電子機器などの振動や電磁ノイズを吸収する吸収体およびその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オーディオ機器は電源トランスなどの振動源を内部に備えていたり、スピーカなどのように振動源を含んでいるため、機器内部に振動エネルギーが発生し、これらの振動が再生音に大きく影響して音質の劣化や音像定位に影響を与えている。また、電源トランスは高調波歪を発生するとともに、電源コードなどを通して外部から高周波域雑音が混入し、通常の電源フィルターではこれらを十分には除去できずに再生音に雑音として影響を及ぼしている。
【0003】
こうした影響除去の手法として、これまで、円錐形構造のスパイク1段又は多段構造がすでに実用化され、効果を発揮している(例えば特許文献1参照。)。
【0004】
図20は、従来の円錐型構造のスパイクを用いた振動防止支持装置の構造を示す断面図である。スパイクはスパイク受け111と、スパイク受け111に挿入される第1のスパイク110と、第1のスパイク110に重ねられる第2のスパイク120とスパイク受け111に入れられる液体113とよりなる。
【0005】
第1のスパイク110は上側の円柱部分114と下側の円錐部分115とで構成され、第2のスパイク120は上側の円柱部分121と下側の円錐部分122とで構成され、円錐部分122は第1のスパイク110の円柱部分114の上面で支持されている。そして、第2の円柱部分121の上面に振動を防止するスピーカなどの音響機器が載置される。
【0006】
このような振動防止支持装置はオーディオ機器などで、内部に発生する振動を機器外部に排除するとともに、外部からの振動を遮蔽するために実用化されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3848987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一般的に、振動の吸収や絶縁を目的としてゴムや振動吸収材(固体)が用いられている。これらはある特定の振動に有効ではあるが、人間の聴覚の周波数範囲をカバーする広い周波数特性を持つものはなく、かつ、素材の特徴が再生音に重畳してしまう問題点がある。
【0009】
これまでにある多くの技術は、主に、機器とベースの間に異種の素材を挟むことで振動特性を変化させ、音の変化を生じさせている。しかし、積極的に機器の振動を除去するという観点からではなく、振動特性の変更による技術であり、一長一短を持っていた。
【0010】
また、上記の如く、振動除去の観点から多段スパイク構造技術を採用した振動防止支持装置が提案されている。振動の排除と絶縁の技術により、効果を発揮している。
【0011】
しかし、上記の振動防止支持装置では、円錐形状内の振動伝播特性と端部での反射の影響により伝播特性に暴れが生じ、結果として白色雑音的ノイズは完全には除去されず、振動伝播特性が十分には改善されない問題点があった。
【0012】
また、これらは機器の筐体を支持する形で雑音対策を行っており、振動発生源に直接適用しにくいことから、雑音吸収が十分でないという問題点もあった。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は上述した問題点に鑑みてなされたものであり、第1に、開口部を有し固定形状の容器と、該固定形状の容器の内部空間に充填される有機溶剤、液体高分子材料、高分子材料の溶液のいずれかから選択される液体と、前記開口部を封止する封止材と、を具備し、振動若しくは電磁的ノイズ、又は振動及び電磁的ノイズを吸収することにより解決するものである。
【0014】
また、前記固定形状の容器は、プラスチックダンボールまたはアクリルボードまたは金属で形成されることを特徴とするものである。
【0015】
更に、前記液体の分子の回転周波数が、吸収すべき振動および/又はノイズと同等になるように前記液体の双極子モーメントおよび/又は分子量を選択することを特徴とするものである。
【0016】
更に、前記有機溶剤は、ジメチルスルホキシド、アセトン、アセトニトリル、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン、HMPA、スルホラン、ジメチルスルホンのいずれかであることを特徴とするものである。
【0017】
更に、前記高分子材料は、ポリエチレングリコール、エチレングリコール、エポキシ樹脂、ポリスチレン、ポリイミド、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂のいずれかであることを特徴とするものである。
【0018】
第2に、振動若しくは電磁的ノイズまたは振動及び電磁的ノイズを吸収する吸収体の使用方法であって、前記吸収体は、開口部を有し固定形状の容器と、該固定形状の容器の内部空間に充填される有機溶剤、液体高分子材料、高分子材料の溶液のいずれかから選択される液体と、前記開口部を封止する封止材と、を具備し、該吸収体を振動源および/又は電磁的ノイズ発生源に接触させ、振動若しくは電磁的ノイズまたは振動及び電磁的ノイズを吸収することを特徴とするものである。
【0019】
また、前記固定形状の容器を前記振動源および/又は電磁的ノイズ発生源に直接接触させることを特徴とするものである。
【0020】
更に、前記吸収体で前記振動源および/又は電磁的ノイズ発生源を被覆することを特徴とするものである。
【0021】
更に、前記吸収体を前記振動源および/又は電磁的ノイズ発生源に貼付することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0022】
本実施形態によれば、第1に、板状の吸収体が実現できるので、振動や電磁ノイズが問題となる箇所に貼付したり、あるいは筐体として構成機器そのものに用いることができ、効率的に振動吸収や電磁ノイズの吸収が行われ、雑音を低減することができる。
【0023】
有機溶剤や、高分子材料はその構造あるいは、分子の双極子モーメントの効果により、外部からの機械的な振動による直接的な振動を吸収する効果と、電磁力に起因したモーメントの回転運動によるエネルギー吸収する効果を同時に有する。したがってこれらの液体を、プラスチックダンボールの波型スペーサー板の隙間や、アクリルボードを貼り合わせて二重構造にした容器等の隙間に封入して吸収体とすることにより、振動や電磁ノイズを効率的に吸収することができる。
【0024】
具体的には、電源に係わる雑音やスピーカなどの振動源に係わる雑音の除去性能に優れ、スピーカやアンプなどの振動発生源に吸収体を貼付したり、あるいは構成機器の筐体の材料に吸収体を用いることにより、再生音の臨場感や演奏家の実在感の阻害を防止できるなど、オーディオ機器の音質を著しく向上させる。
【0025】
第2に、固定形状の容器を板状に使用することにより、小型オーディオ機器、パソコン、DVD、BD、携帯電話機などに幅広く使用できる。具体的には、小型オーディオ機器や携帯電話機などの振動源に対応する筐体部分に容易に貼付することができ、電気的雑音の効率的な抑制や音の明瞭度を向上させる。
【0026】
第3に、溶液の特性を調整することにより広い範囲にわたる雑音吸収特性を調整することが可能である。
【0027】
具体的には、密閉容器に封入する液体の分子量の大小と双極子モーメントの大小の割合で、エネルギーをよく吸収する周波数範囲が変化する。つまり、吸収する対象の周波数を特定し、その周波数を良く吸収するであろう双極子モーメントと分子量(溶液の場合、溶媒の分子量の加味する)の組合せを設定して、有効な材料を選定する。この組合せにより、数十HzからGHz程度の範囲の周波数を吸収することができる。
【0028】
第4に、振動および電磁的ノイズの吸収対策において、円錐型構造のスパイクを用いた振動防止支持装置などと比較して省スペース化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の吸収体を説明する(A)斜視図、(B)断面図、(C)平面図である。
【図2】本発明の吸収体を説明する斜視図である。
【図3】本発明の第1の実施形態の使用方法を説明するための(A)斜視図、(B)断面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態の使用方法を説明するための(A)断面図、(B)斜視図、(C)断面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態の使用方法を説明するための概要図である。
【図6】本発明の第3の実施形態の使用方法を説明するための(A)概要図、(B)概要図である。
【図7】本発明の実施形態の特性を説明するための特性図である。
【図8】本発明の実施形態の特性を説明するための特性図である。
【図9】本発明の実施形態のテスト結果を説明する概要図である。
【図10】本発明の実施形態のテスト結果を説明するグラフである。
【図11】本発明の実施形態のテスト結果を説明する概要図である。
【図12】本発明の実施形態のテスト結果を説明する概要図である。
【図13】本発明の実施形態のテスト結果を説明する概要図である。
【図14】本発明の実施形態の特性評価を説明するグラフである。
【図15】本発明の実施形態の特性評価を説明する特性図である。
【図16】本発明の実施形態の特性評価を説明する特性図である。
【図17】本発明の実施形態の特性評価を説明する特性図である。
【図18】本発明の実施形態の特性評価を説明する特性図である。
【図19】本発明の実施形態の特性評価を説明する特性図である。
【図20】従来技術を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1から図19を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
【0031】
図1(A)は本発明の吸収体1を示す斜視図であり、図1(B)は図1(A)のa−a線断面図であり、図1(C)は開口部を封止した吸収体1を示す平面図である。ここでは、吸収体1の固定形状の容器2がプラスチックダンボール2aの場合について説明する。尚、図1(A)(C)の点線は、波型スペーサー22で仕切られた各内部空間23の境界を表している。
【0032】
吸収体1は、固定形状の容器2と、この内部空間に充填される液体3と、開口部を封止する封止材4とからなる。後に詳述するが、本実施形態の吸収体1は、音響機器や、電子機器などが有する振動源の振動やそれに伴う雑音、および電磁ノイズを吸収するものである。
【0033】
固定形状の容器2は、水分を通しにくい性質で、水分をもらさずに封止でき、長期(例えば5年から6年程度)保存が可能な材料からなる。具体的には、例えばポリエチレンまたはポリエチレンテレフタラート(Polyethylene terephthalate:PET)など高分子材料製プラスチックダンボール2aである。
【0034】
ここでプラスチックダンボール2aとは、図1(B)の如く、プラスチックの表板20とプラスチックの裏板21との間にプラスチックの波型スペーサー22が貼り付けられた構造であり、波型スペーサー22により仕切られた複数の内部空間23を有し、その両端は開口されている。かかる内部空間23が液体3の容器部分となる。尚、プラスチックダンボールは、目的に応じてその厚さを適宜選択し、また所望の大きさに切り出して用いる。
【0035】
液体3は、有機溶剤、液体高分子材料、高分子材料の溶液のいずれかから選択され、固定形状の容器2の内部空間23に充填される。より詳細には、図1(A)の如く、プラスチックダンボール2aの両端の開口部は充填口であり、一方の開口部24aより注射器で液体3を注入し、開口部24a付近に3〜5mm程度の空間部を残す。この際、他方の開口部24bは開口された状態であるが、液体3に粘性があるために表面張力が働き注入された液体3は外部へ溢れ出すことはない。そして、図1(C)の如く、開口部24a付近に設けた空間部に封止材4(ホットメルト樹脂などの熱可塑性樹脂を用いる)を充填して封止する。
【0036】
その後、反対側の開口部24bからも同様に液体3の充填および開口部24bの封止が行われ、プラスチックダンボール2aは密封状態となる。液体3は内部空間23にほぼ充填されていれば吸収体1として十分な効果が得られる。
【0037】
尚、図示は省略するが、注射器で注入する代わりに、水槽に液体3を満たしその中にプラスチックダンボール2aをつけ、内部空間23の上部に3〜5mm程度の空間部を残し、その空間部にホットメルト樹脂4を充填して開口部24aを封止し、その後、反対側の開口部24bも同様に封止を行い密封状態とする方法であってもよい。
【0038】
液体3の一例として、有機溶剤の場合はジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide:DMSO)、アセトン、アセトニトリル、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMEU)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、HMPA、スルホラン(SF)、ジメチルスルホン(MSM)、などである。尚、有機溶剤を用いる場合には、プラスチックダンボールや後述のアクリルボードなどの高分子材料から成る固定形状の容器2を溶解するおそれがあるため、金属から成る固定形状の容器2を用いることが好適である。
【0039】
また、液体高分子材料としては、ポリエチレングリコール(polyethylene glycol:PEG)、エチレングリコール、エポキシ樹脂、ポリスチレン、ポリイミド、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、などの液体が挙げられる。
【0040】
更に、高分子材料の溶液の場合は、ポリエチレングリコール(polyethylene glycol:PEG)、エチレングリコール(ethylene glycol)、エポキシ樹脂、ポリスチレン、ポリイミド、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、などを水、アルコール、シリコンオイルといった有機溶剤などの溶媒と混合したものが挙げられる。
【0041】
吸収体1が振動や電磁ノイズを吸収する原理は以下の通りである。
【0042】
高分子材料は1次元構造、さらに複雑な2次元構造、3次元構造と各種構造で重合した物質であり、共有結合力で、これらの構造を維持する性質を持っている。そのため、振動などの外力により変形させられたとき元に戻る復元力を発生し、質量による慣性力とあいまって外力と同じ周波数の振動を発生する。この振動による内部摩擦により振動エネルギーが吸収される。
【0043】
また、高分子材料には、双極子モーメントの効果が大きいものがあり、周囲電界の変動により分子に回転力が生じ、周囲の分子との摩擦により、変動電界のエネルギーを吸収する効果を持つ。この効果により、回路や回路基板における変動電界による影響除去・抑制が見込まれる。
【0044】
例えば、分子量100万のポリエチレングリコール(PEG)では、炭素Cと水素H2および酸素Oの単位(−CH2−CH2−O−)が7万個以上も直列に共有結合して鎖状の構造をしており、CとCの結合は約110度の角度で結合し同様に110度の角度で結合するOをはさんで最大で長さ約1.5mm程度にまでおよぶ非常に細長い紐状になっていると考えられる。この紐は、これらの共有結合の角度を保とうとする硬い性質を持っている。
【0045】
一方で、各結合は結合の軸を中心に回転しうる柔軟な構造となっている。水溶液とした場合、この紐は部分的に他の紐と絡まりあって内部に水の分子を取り込んでいる。このためこれらの紐が相互にまたは間に水などの分子を付着させて取り込む形で複雑に絡み合うことにより、部分的に拘束されて弾性力のある紐となっており、バネを形成していると考えられる。
【0046】
一方、分子量が大きくさらに水などの分子が付着することで1本の紐の質量は大きくなって、バネと各分子の質量の相互関係により振動系を形成している。したがって、外力によって液内部に振動を生じ外部振動の周波数が固有振動数と一致する場合、共振により大きく振動して、紐と紐の間および紐の周りに付着している水などの溶液の分子との間の摩擦により振動エネルギーが吸収される、一種のバネーダンパーマス系を構成して振動吸収効果を大きくしている。
【0047】
以上は、振動エネルギーの機械的メカニズムによる吸収機構であるが、一方で、双極子モーメントに起因した電磁力に基づくエネルギー吸収機構が考えられる。すなわち、周囲磁界の変動により、回転可能な双極子モーメントにより高周波域において仮想的に微弱ではあるが導電性を持つと見なせる高分子材料溶液に、磁界変動を妨げようとする電界(渦電流の要因)が発生し、この変動電界によって分子(双極子モーメント)に回転力が生じ、回転のための駆動力および周囲の分子との摩擦により、変動電界のエネルギーを吸収する効果を持つ。この効果により、電源コードや電源トランスにおける雑音除去・抑制が見込まれる。
【0048】
同様に、周囲の振動が溶液に伝わることにより、双極子モーメントが振動方向に変位する。この変位自体はミクロンオーダーの変位であっても、モーメントにとっては大きな変位である。この振動運動と外部磁界(地磁気など)との相互作用により分子(双極子モーメント)に回転力が生じ、回転のための駆動力および周囲の分子との摩擦により、振動のエネルギーを吸収する効果を持つ。この効果により、スピーカマグネットやアナログプレーヤなどに生じる振動吸収が生じ、振動に起因した雑音の除去・抑制が見込まれる。
【0049】
例えば、分子量100万のPEGでは、炭素2個、水素4個、酸素1個からなる単位(CHO)が2万個以上も直列に共有結合して鎖状の構造をしており、CとCおよびOの結合は約110度の角度で結合して長さ約1.5mm程度の細長い紐状になっていると考えられる。
【0050】
一方で、CとOの間の結合は結合の腕方向に伸びているが、各結合は回転可能であり、結合の角度を保ったまま固まりになる場合もあり、長く伸びる場合もある。また、螺旋状に分子が並んだ場合は短くまとまった形状にもなりうる。また、分子を構成するHやOは親水性が良く、PEGの水溶液では、水の分子がPEG分子の周りに絡みつきやすく、長く伸びた構造になっていると考えられる。これは、PEGの水溶液に回転における弾性(ねじり戻し)が生じている原因と考える。
【0051】
このため,振動と外部磁界や変動磁界などによって生じる回転トルクは、分子の回転において分子の重量のみでなく周囲の水の分子まで伴って回転させることとなり、外部のエネルギーを大きく消費するとともに、共振周波数を低くし、音声領域での効果を生じていると考えられる。
【0052】
たとえば、PEGの双極子モーメントを考える。エチレングリコール(ethylene glycol:EG)の双極子モーメントは約2D(デバイ)であるのに対し、EGが10個重合したPEGでは両端の距離が約2倍に対し双極子モーメントは約10Dとなり5倍に達している。つまり、重合により双極子モーメントが増加し、変動磁界に対するトルクや分子の運動と地磁気の相互作用に起因するトルクが増加し分子の回転運動が誘発されやすい状況になっていくことが示される。
【0053】
水の双極子モーメントは1.85Dで、分子量が18であり,外部から受けるトルクは小さいがそれ以上に慣性モーメントが小さく、回転の周波数は非常に高くGHz程度になる。
【0054】
一方、PEGでは双極子モーメントの大きさが大きく駆動トルクも大きくなるが、分子の質量や大きさの増加と付着する水の分子による質量増加により慣性モーメントが著しく増加するため、分子の回転周波数はKHz程度まで低下し、可聴域での効果が期待される。
【0055】
このように、本実施形態の吸収体1の振動吸収能力は上記の解析とともに、双極子モーメントの運動と地磁気または外部磁界の相互作用によるモーメントに起因する分子の回転運動と粘性による運動エネルギーの減衰が効果を高めていると考える。
【0056】
以下は、この点についての理論的考察である。
【0057】
PEG分子が外部振動により変位d[m]の調和振動をすると仮定する。外部磁界は地磁気で磁束密度B[Wb/m]、分子内の分極による分極モーメントの強さをM[D(デバイ)]、相当電荷量をq[C]、分子を長さl[m]、半径r[m]の円筒で質量m[kg]と仮定すると、慣性モーメントJ[kgm]は以下の(1)式で表される。
【0058】
【数1】

相当電荷量qは、M=qlDを用いて単位Cにより表現するなら以下の(2)式で表される。
【0059】
【数2】

また、外部磁界Bの中において角周波数ωで分子が強制振動されるとき、分子に生じる回転トルクτ[Nm]は磁界と双極子モーメントがなす角度をφとして以下の(3)式の通りである。
【0060】
【数3】

ここで、磁界と双極子モーメントがなす角度φはトルクを受けて回転する間に磁界と直行するようになるため、π/2とおくことができる。分子の回転に外力が最も多く費やされる状況として、トルクτを受けて分子が半回転したとき逆方向のトルクにより反転する状況を仮定する。今、単純に粘性による減衰を無視して分子を回転させるためにのみ外力が用いられるとするなら、トルクによる回転の角度をθとして、運動方程式は以下の(4)式で表される。
【0061】
【数4】

回転運動の周期と加振力の周期が一致するとして、これを時間tの積分範囲0〜π/ωの範囲で2回積分して、(5)式を得る。
【0062】
【数5】

そして、θ=πとおくことにより(6)式を得る。
【0063】
【数6】

さらに、(3)式で振動速度の振幅v=ωdを考慮すると(7)式により最大のエネルギー損失を与える周波数を推定することが出来る。
【0064】
【数7】

これに基づき、分極モーメントの強さM=10D、分子の長さl=30μm、分子の近似半径r=0.3nm、振動振幅d=10μm、分子の質量m=1.17×10−22kg、外部磁束密度(地磁気)B=0.000045Wb/m、を仮定してωを求めた場合、約2.9kHzとなる。この値はモーメントが最大180度回転する場合であり、この周波数より高い周波数でエネルギー吸収の効果が生じる。さらに、粘性による吸収は、回転速度に比例するため高い周波数領域でより効果的にエネルギー吸収が生じる。ただし、水溶液の場合PEGが親水性であることを考慮すると、分子の周囲にクラスタ化した水の分子が付着し、見かけ上の質量を増加し、上記の最低周波数はさらに低い領域に移行すると考えられる。
【0065】
また、振動振幅を10μmとしたが、100μm程度の振幅も生じうるであろうし、分子量によっては分子の長さも、最も長く伸びた場合数mmにも及びうる。これらの幅を考慮するなら、PEG溶液の外部振動エネルギー吸収能力の周波数幅はかなり広範囲にわたるものと考えられる。これに、溶液の粘性や弾性を考慮すると、分子量に特有の共振特性が生じるものと考えられる。これらの周波数は十分可聴域に入る周波数であることが推測される。
【0066】
電磁ノイズ吸収では、電流の変化に起因した磁場の変動を抑制するよう電界が生じ、その電界により溶液内の双極子モーメントにトルクが発生し回転運動となる。この往復回転運動や分子の回転と溶液の粘性により運動エネルギーが吸収され、電源コードなどに流れる交流電流の負荷となってコードにおいて減衰させられ、機器に到達するノイズの量が低減し抑制される。効果が期待されるノイズ成分は非常に高い周波数成分であり、溶液中の高分子の分子量や双極子モーメントの大きさにより、吸収効果を期待する周波数範囲が設定可能となる。
【0067】
電線内を流れる変動電流J[A]により周囲に変動磁界B[Wb/m]が生じる。このとき、Bの変動を抑制するようBの時間微分に応じて電界強度E[V/m]の変化が電線の周囲に発生し、これによりPEG溶液の分極モーメントが外部トルクτ[Nm]を受け回転し、電流Jに仕事をさせることとなる。これにより、変動電流が抑制され、伝達されにくくなる。前述から、トルクの大きさにもよるが、可聴周波数域での雑音電流(商用周波数以外の電流成分)、特に、高周波数域での雑音電流抑制に効果が期待できる。
【0068】
尚、液体3が有機溶剤の場合も、動作原理は上記と同様である。有機溶剤は、分子量が小さいので、高い周波数において有効と考えるが、分極の強さ、つまり双極子モーメントの大きさにより対応可能な周波数領域は変化する。また、粘性の大きさは材料やその濃度によって変化する。
【0069】
このため、十分な振動および電磁的ノイズの吸収特性を得るためには、液体の分子量と双極子モーメントを適宜選択する。
【0070】
具体的に説明すると、本実施形態の吸収体1の液体3は、分子量と双極子モーメントによる分子の回転周波数を例えば100Hzから50000Hzの範囲となるように、調整する。
【0071】
つまり、電子レンジでは水のエネルギー吸収が最も高い周波数である2.5GHz程度に設定されているが、この逆の計算を行って対象とする周波数範囲を決めた後、その周波数を良く吸収するであろう双極子モーメントと分子量(溶液の場合、溶媒の分子量の加味する)の組合せを設定して、有効な材料を選定する。
【0072】
分子量が100万の液体3場合、分子の回転周波数は150Hz程度である。したがって、分子の回転周波数が上記の範囲(100Hzから50000Hz)となる場合を算出すると、双極子モーメントは2D〜500Dとなる。また実験的には、分子量で10000〜2000000程度のPEG水溶液の場合に、分子の回転周波数が、上記の範囲となる。
【0073】
このように、液体3の双極子モーメントと分子量の組合せを適宜選択することにより、数十HzからGHzまでの範囲の周波数を吸収することができる。
【0074】
双極子モーメントが大きいと回転トルクが大きく、エネルギー吸収が高周波数に移行する。したがって、どのような周波数を対象にするかと分子量との兼ね合いで適切な双極子モーメントの範囲が決定される。本実施形態の吸収体1に用いる範囲の一例としては、1.5D〜500D程度である。
【0075】
また、分子量が大きいと大きな回転トルクが必要となり、エネルギー吸収が低周波数に移行する。したがって、どのような周波数を対象にするかと双極子モーメントとの兼ね合いで適切な分子量の範囲が決定される。本実施形態の吸収体1に用いる範囲の一例としては、水のみで18、PEGなどで200から500万程度である。
【0076】
尚、これらは一例であり、水の分子がPEGの分子にどの程度絡みついているかによって変わるものであり、双極子モーメントと、分子量の相互の値の関係で対応周波数が変化する。したがって、吸収したい周波数に応じて、液体の分子量と双極子モーメントを適宜選択する。
【0077】
図2を参照して、本発明の吸収体1の固定形状の容器2がアクリルボードで形成された場合について説明する。
【0078】
固定形状の容器2は、一定の厚さを有する複数枚のアクリルボードを貼り合わせて二重構造とし、その内部空間23に液体3が充填(封入)される。より詳細には、図2の如く、上面アクリルボード25と底面アクリルボード26とを対向させ、両者を側面アクリルボード27a、27b、27c、27dを用いて貼り合わせて内部空間23を形成する構造である。これらのアクリルボードの貼り合わせには、アクリル用接着剤などを用いる。
【0079】
尚、このように形成された固定形状の容器2を以下、アクリル容器2bと称する。
【0080】
液体3は、アクリル容器2bの一面、例えば上面アクリルボード25を貼り合わせる前に内部空間23に充填され、その後上面アクリルボード25を貼り合わせて密封状態にされる。あるいは、アクリル容器2bを形成した後に一部に充填口(図示せず)を設け、注射器などを用いて内部空間23に液体3を充填した後に充填口を封止材4(ホットメルト樹脂などの熱可塑性樹脂を用いる)で封止する方法であってもよい。尚、液体3については図1のものと同様であるので、ここでは詳細な説明は省略する。
【0081】
上述の如く、図1および図2を用いてプラスチックダンボールあるいはアクリルボードにより固定形状の容器2を形成する場合を説明したが、高分子材料に限らず、銅、真鍮、アルミニウムなどの金属により固定形状の容器2を形成しても良い。
【0082】
図3から図4は、第1の実施形態として吸収体1をスピーカエンクロージャの材料に使用した場合の一例を示す図である。
【0083】
図3を参照して、スピーカエンクロージャ11の材料にプラスチックダンボール2aの吸収体1aを使用する場合を説明する。図3(A)がプラスチックダンボールの吸収体1aを使用したスピーカエンクロージャ11の斜視図であり、図3(B)が図3(A)のb−b線断面図である。
【0084】
プラスチックダンボールの吸収体1aは、図1に示す如く、プラスチックダンボール2aをスピーカエンクロージャ11の各板のサイズに切り出した後に液体3を充填して形成される。
【0085】
具体的には、正面および背面の板のサイズは幅w1が220mm、高さh1が320mm、厚さd1が5mmであり、上面および底面の板のサイズは幅w2が210mm、高さh2が50mm、厚さd2が5mmであり、左右側面の板のサイズは幅w3が50mm、高さh3が320mm、厚さd3が5mmである。正面に配置されるプラスチックダンボールの吸収体1aにはスピーカの取り付け穴を、背面に配置されるプラスチックダンボールの吸収体1aには端子取り付け穴を予め開けておき、各取り付け穴の周端部は封止材4で封止される。
【0086】
かかるプラスチックダンボールの吸収体1aを用いてスピーカエンクロージャ11を組み立てる。尚、図示は省略するが、必要に応じてスピーカエンクロージャ11の内部にプラスチックダンボール2aなどで補強を行うことにより、筐体としての強度を高めることができる。
【0087】
その後、スピーカエンクロージャ11にスピーカ12および端子(図示せず)が取り付けられるので、スピーカおよび端子は固定形状の容器2と直接接触する。
【0088】
尚、プラスチックダンボールの吸収体1aは、振動源や電磁ノイズ発生源など(以下、ノイズ源と総称する)であるスピーカおよび端子の全面を被覆しなくてもよく、一部が直接接触していればよい。プラスチックダンボールの吸収体1aとノイズ源の接触面積が大きい方が、吸収能力は高くなる。
【0089】
スピーカエンクロージャ11にプラスチックダンボールの吸収体1aを使用した場合、スピーカユニットに生じた振動はプラスチックダンボールの吸収体1aの溶液3を振動させ、地磁気やスピーカのマグネットによる磁気の中を振動することによりトルクを受け、分子の回転により運動エネルギーが吸収され、振動が抑制される。
【0090】
固定形状の容器2の大きさおよび形状を適宜選択することで、狭小な部分でも広範な部分でも、ノイズ源の種々の大きさ及び形状に合わせて適用できる。
【0091】
また、図示は省略するが、プラスチックダンボールの吸収体1aの上にノイズ源を載置したり、逆に、ノイズ源の上にプラスチックダンボールの吸収体1aを載置して使用することもできる。
【0092】
既述の如く、プラスチックダンボールの吸収体1aの溶液3は、ノイズ源となるスピーカ12や端子の周波数に応じて、その振動や雑音が吸収できるように、特性(分子量、双極子モーメント)が適宜選択される。
【0093】
図4を参照して、スピーカエンクロージャ11の材料にアクリルボードで二重構造に形成した吸収体1b(以下、アクリル容器の吸収体と総称する)を使用する場合を説明する。図4(A)がアクリル容器の吸収体1bを説明する断面図であり、図4(B)がアクリル容器の吸収体1bを使用したスピーカエンクロージャ11の斜視図であり、図4(C)が図4(B)のc−c線断面図である。
【0094】
アクリル容器2bの吸収体1bは、図4(A)の如く、所望の大きさに切り出した6枚のアクリルボードを貼り合わせた固定形状の容器2(アクリル容器2b)の内部空間23に液体3を充填したものである。具体的には、上面アクリルボード25は5mm厚のものを用い、底面アクリルボード26は4mm厚のものを用い、側面アクリルボード27b、27dと図示されない側面アクリルボード27a、27cは5mm角のものを用いて、一組のアクリル容器2bを形成する。尚、上面アクリルボード25と底面アクリルボード26とを貼り合わせる際に、上面アクリルボード25の周端より5mm程内側に側面アクリルボード27a、27b、27c、27dを配置することで、他のアクリル容器の吸収体1bと貼り合わせる際の接合部28を形成することができる。
【0095】
かかる6組のアクリル容器の吸収体1bを用いてスピーカエンクロージャ11を構成する。図4(C)の如く、隣り合うアクリル容器の吸収体1bの接合部28がアクリル用接着剤で接合される。
【0096】
具体的には、正面および背面に配置されるアクリル容器の吸収体1bは、上面アクリルボード25のサイズが138mm×208mm×5mm(幅w×高さh×厚さdの順に記載する、以下同じ)、底面アクリルボード26のサイズが128mm×198mm×4mm、側面アクリルボード27a、27b、27c、27dのサイズは198mmあるいは118mmの長さを有する5mm角の角材である。また、上面および底面に配置されるアクリル容器の吸収体1bは、上面アクリルボード25のサイズが128mm×168mm×5mm、底面アクリルボード26のサイズが118mm×158mm×4mm、側面アクリルボード27a、27b、27c、27dのサイズは158mmあるいは108mmの長さを有する5mm角の角材である。更に、左右側面に配置されるアクリル容器の吸収体1bは、上面アクリルボード25のサイズが168mm×208mm×5mm、底面アクリルボード26のサイズが158mm×198mm×4mm、側面アクリルボード27a、27b、27c、27dのサイズは198mmあるいは148mmの長さを有する5mm角の角材である。
【0097】
尚、プラスチックダンボールの吸収体1aで構成されるスピーカエンクロージャ11と同様に、正面側および背面側のアクリル容器の吸収体1bにはスピーカ12および端子(図示せず)の取り付け穴が予め開けられる。例えば、図4(B)(C)の如く、スピーカの取り付け穴13aは、正面側のアクリル容器の吸収体1bの上面アクリルボード25と底面アクリルボード26に開けられる。そして、スピーカの取り付け穴13aの直径よりも1辺が長い厚さが5mmの正方形の板(以下、スピーカ取り付け用の板13と総称する)にスピーカの取り付け穴13aを開けたものを準備し、それを上面アクリルボード25と底面アクリルボード26の間に挟む形でスピーカ取り付け穴13a部分を封止するように接着剤で固定する。
【0098】
具体的には、スピーカ取り付け用の板13のサイズは、94mm×94mm×5mmであり、その中央に直径70mmのスピーカの取り付け穴13aを開口する。また、正面側のアクリル容器の吸収体1bの上面アクリルボード25及び底面アクリルボード26には直径70mmの円状の穴が開口される。そして、これらのスピーカの取り付け穴13aの位置を合わせて接着剤で貼り合わせる。
【0099】
尚、スピーカ取り付け用の板13もアクリル材を用いるのが望ましい。
【0100】
その後、スピーカ12および端子が取り付けられるので、スピーカ12および端子はアクリル容器の吸収体1bと直接接触する。
【0101】
図5を参照して、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態は、図1に示すプラスチックダンボールの吸収体1aをノート型パーソナルコンピュータ(以下「ノート型PC」という。)などの電子機器30に利用するものである。図5はプラスチックダンボールの吸収体1aの使用例を示す図である。
【0102】
図5の如く、プラスチックダンボールの吸収体1aは、キーボードを覆う大きさに切り出されたプラスチックダンボール2aに液体3を充填し、封止したものである。ボード状のプラスチックダンボールの吸収体1aは、ノート型PC30のキーボード30a上に載置して使用する。尚、図示は省略するが、プラスチックダンボールの吸収体1a上にノート型PC30を載置して使用してもよく、この場合にはプラスチックダンボールの吸収体1aがノート型PC30の裏面と接触するので、プラスチックダンボールの吸収体1aがノート型PC30の吸排気口を塞がないよう、これを除いた領域でプラスチックダンボールの吸収体1a上に袋状の容器に液体3を封入した吸収体1を配置する。
【0103】
このように、プラスチックダンボールの吸収体1aをノート型PC30に用いた場合、ノート型PC30内の電源部やハードディスクに生じる振動や電磁ノイズを吸収することができる。
【0104】
尚、図示は省略するが第2の実施形態において、ノート型PC30に変えてデスクトップ型パーソナルコンピュータ(以下「デスクトップ型PC」という。)に適用してもよい。この場合には、所望の大きさのプラスチックダンボールの吸収体1aをデスクトップ型PCの電源やハードディスクユニットに貼り付けて使用する。
【0105】
図6を参照して、第3の実施形態について説明する。第3の実施形態は、図1に示すプラスチックダンボールの吸収体1aを小型電子機器40に利用するものである。図6(A)はプラスチックダンボールの吸収体1aを携帯電話機40aに貼り付けた使用例を示す図であり、図6(B)はプラスチックダンボールの吸収体1aを小型ディジタル音響機器40bに貼り付けた使用例を示す図である。
【0106】
携帯電話機40aや小型ディジタル音響機器40bなどの小型電子機器40は駆動部分がないため雑音混入が少なく高品質であるが、ディジタル信号のパルス状の電圧・電流変化が広帯域雑音を引き起こしてアース電位を揺らがせ、ヘッドホンなどを駆動するアナログ回路に影響し、音楽鑑賞時に高周波広帯域雑音が残留し、音の解像度を低下させている。
【0107】
図6(A)(B)の如く、小型で、かつ薄型のプラスチックダンボール2aの隙間に液体3を封入して封止したシート状のプラスチックダンボールの吸収体1aを小型電子機器40の筐体に貼り付けて用いることにより、高周波広帯域雑音の抑制や明瞭度の向上等の成果を得ることができる。具体的には、プラスチックダンボールの吸収体1aを携帯電話機40aのスピーカ付近の筐体、あるいは小型ディジタル音響機器40bの筐体の背面側全体に貼り付けて使用する。
【0108】
このように、プラスチックダンボールの吸収体1aを小型電子機器40に用いた場合、小型電子機器40内のディジタル信号の変化により生じる高周波広帯域雑音を吸収することができる。
【0109】
図7から図10を参照して、本実施形態の吸収体1に対する特性の測定と吸収体1の有無による試聴の比較結果を説明する。
【0110】
まず、図7及び図8を参照して、吸収体1をスピーカシステムへ適用した場合の特性について説明する。FOSTEX社のフルレンジユニット(FE87E)を用いたスピーカシステムのエンクロージャについて、吸収体1を適用した場合と適用しない場合について音質音像表現の改善について比較した。
【0111】
図7が正弦波信号をスピーカに入力した時のスピーカユニット中心部の振動周波数特性を測定し、信号成分に対する高周波歪成分の減衰量を比較した結果を示しており、図には1kHzの正弦波信号における特性の測定結果を示す。横軸が高調波の次数であり、縦軸が基本波とのレベル差[dB]である。また、斜線の棒グラフが吸収体1を適用した場合、すなわち図3の如くスピーカエンクロージャ11の材料として通常木材を用いる代わりにプラスチックダンボールの吸収体1aを用いてスピーカシステムを構成した場合であり、無地の棒グラフが吸収体1を適用しない場合、すなわちスピーカエンクロージャ11の材料として通常の木材を適用した場合である。
【0112】
周波数は、[信号の周波数]×[次数]で算出される。本来、高周波歪は不用な雑音成分であり、その減衰量が大きいほど性能が向上しているといえる。
【0113】
図に示されるように、全ての高調波次数において、高周波歪の低減量は吸収体1を不適用の場合(無地の棒グラフ)よりも吸収体1を適用した場合(斜線の棒グラフ)のほうが大きく、吸収体1の効果が十分に現れていることが分る。
【0114】
図8は、同様に、スピーカ放射音に対して高調波歪の低減量を比較した結果を示しており、図には1kHzのスピーカ放射音における特性の測定結果を示す。尚、横軸、縦軸、斜線あるいは無地の棒グラフは図7と同様である。
【0115】
図の如く、1kHzの放射音では、吸収体1を用いた場合には8kHzあたりの歪低減量が大きく、後述の小型オーディオ音響機器40の周波数特性の測定結果(図19を参照。)と同様の傾向を得ている。この歪の低減が雑音感の低減、特に、高周波数域での高域雑音の低減に繋がっていると考えられる。
【0116】
特に、質的には細かな音の表現力が増加し、吸収体1を用いることにより音の違いが表現できるようになり、演奏者、楽器の実在感、会場の臨場感などの表現力が非常に向上していると判断できる。
【0117】
一方、試聴によっても効果の確認を行った。試聴環境として、アンプおよびCDプレーヤ(DENNON社製RCD−M37)、スピーカ(KRYNA社製 K102)、スピーカスタンド(KRYNA社製 KRYNA PRO MGT−60RS)、スピーカケーブル(KRYNA Spca7)、電源ケーブル(DENNON社製RCD−M37 標準ケーブル)を用いて音楽CD(Compact Disc)を再生し、スピーカシステムのスピーカエンクロージャの材料として吸収体1の使用の有無で比較した。
【0118】
比較対象は以下の通りである。
【0119】
対象1:スピーカエンクロージャ11の材料に水を封入したプラスチックダンボールの吸収体を用いた薄型スピーカ
対象2:スピーカエンクロージャ11の材料に液体3を封入したプラスチックダンボールの吸収体1aを用いた薄型スピーカ(図3参照)
対象3:スピーカエンクロージャ11の材料に木材を用い、同一容積にしたスピーカ
図9及び図10を参照して、評価内容と方法および比較結果を説明する。
【0120】
図9(A)(B)はスピーカPの振動板に対峙する被験者Sを背後から見た図(スピーカPについて正面図)であり、図9(C)(D)はスピーカPの振動板に対峙する被験者Sを真上から見た図(スピーカPについて上面図)である。また、図9(A)(C)が対象2、図9(B)(D)が対象3の場合である。尚、ここでは対象2および対象3のみで結果を比較する。
【0121】
図10は対象1〜対象3における音質の比較結果を示すレーダーグラフである。
【0122】
5名の被験者sについて、左右スピーカpの中央で、スピーカpから距離約2mの位置にて試聴させ、以下の2点について評価した。
【0123】
第1は、音像の定位位置および音像の大小についての評価であり、楽曲中のボーカルVと楽器としてドラムD、ピアノP、ベースBの音像位置および音像の大きさ・広がり(音像のぼけ具合)とを○印の位置と大きさで表し、評価用紙に記入させた。
【0124】
第2は、音質の評価であり、解像力・奥行き・広がり・高さ・帯域・軽さ・音歪感・静寂感・音質を5段階にて評価させた。レーダーグラフの□印が対象1、○印が対象2、▲印が対象3の評価結果である。点の付け方としては、各評価者が最高の音質として経験して基準としている状態の評価を5とし、これを基準にどの程度のレベルであるかを評価させた。尚、5名の評価結果の平均値を求めた。
【0125】
評価結果は以下の通りであり、まず、第1の音像定位の比較について説明する。
【0126】
図9(B)(D)に示す対象3(木材を適用)の結果では、音像の印象が大きくぼけたイメージであるが、図9(A)(C)に示す対象2(液体3入り吸収体1を適用)では音像のイメージが小さく明確になっている。この傾向は5人の被験者に共通であった。
【0127】
また、音像の位置については、対象3(図9(B)(D))、対象2(図9(A)(C))の順で音像位置の高さが高くなり奥行きがわずかであるが遠めに変化している。この傾向も5名に共通の傾向であった。
【0128】
これらの結果より、対象3(木材を適用)、対象2(液体3入り吸収体1を適用)の順で音像が明確になり、音像の位置もより明確に認識できるようになることが示された。これらにより、吸収体1の効果として、液体3を封入することで通常用いられる木材よりも音像表現の改善に高い効果をもたらすことが示される。
【0129】
第2に音質の比較について、説明する。
【0130】
比較結果を表1及び図10に示す。図10は表1の評価結果をレーダーグラフで表したものである。
【0131】
結果から示されるように、プラスチックダンボール2aを用いその中に液体3を充填した吸収体1を適用した対象2(○印)では、全ての評価項目において、プラスチックダンボール2aに水を封入した吸収体を適用した対象1(□印)や、木材を適用した対象3(▲印)と比較して大きく改善が見られる。また、対象1(水入り吸収体を適用)と対象3(木材を適用)との差の傾向をみると、「解像力」、「空間的広がり感」の表現においては対象1(水入り吸収体を適用)が優れているのに対し、「音の歪感」、「静寂感」など音質的な面においては対象3(木材を適用)が優れていることが示されている。
【0132】
すなわち、プラスチックダンボール2aを用いても効果は見られないが、液体3を用いることにより全ての評価項目において大きく改善が見られ、液体3を充填したプラスチックダンボールの吸収体1aの効果は大きく、スピーカシステムにおける効果も大きいことが示される。
【0133】
尚、比較の基準が高精度なスピーカシステム11であるために、評価値は中央値となる「3」より低めであるが、液体3を封入したプラスチックダンボールの吸収体1aを用いることによるポイントの改善幅は1〜1.8程度もあり、改善効果はかなり大きいといえる。特に、音像定位の空間的広がりに関わる項目や音の歪の低減を実現できている。
【0134】
【表1】


次に、図11及び図14を参照して、吸収体1をパーソナルコンピュータに適用した場合の評価結果を説明する。
【0135】
最近、ノート型PC30が音楽鑑賞用の音源として用いられる場合が増加しており、こうした利用形態における音質改善が求められている。そこで、図5の如く、ノート型PC30のキーボード上にプラスチックダンボールの吸収体1aを載置した場合と、何も載置しない場合(吸収体1不適用)において、以下の3点について比較した。
【0136】
第1は、ノート型PC30に取り付けられているスピーカから聞こえる音について評価した。
【0137】
図11及び図12を参照して、異なる曲調の楽曲における音像の定位位置および音像の大小についての比較結果を説明する。図11(A)(B)及び図12(A)(B)はノート型PC30のスピーカpに対峙する被験者sから見た正面図であり、図11(C)(D)及び図12(C)(D)はスピーカpに対峙する被験者sを上方から見た平面図である。
【0138】
また、図11(A)(C)及び図12(A)(C)が何も載置しない場合、図11(B)(D)及び図12(B)(D)がプラスチックダンボールの吸収体1aを載置した場合である。尚、図の斜線部分はノート型PC30のキーボード30a部分であり、その上方の四角枠はノート型PC30のディスプレイ30bであり、キーボード30a上に載置されたプラスチックダンボールの吸収体1aの図示は省略する。
【0139】
5名の被験者sについて、左右スピーカpの中央で、スピーカpから距離約0.5mの位置にて試聴させて評価した。
【0140】
具体的には、図11がビートルズの楽曲を試聴した場合であり、図12がオペラの楽曲を試聴した場合である。図11では楽曲中のボーカルVと、楽器としてドラムD、波の音W、ギターG、図12では楽曲中のテナーT、ソプラノS、楽器としてヴァイオリンVn、チェロC、木管楽器M、金管楽器K、ティンパニーTiの音像位置および音像の大きさ・広がり(音像のぼけ具合)とを○印の位置と大きさで表し、評価用紙に記入させた。
【0141】
図11(A)(C)、図12(A)(C)の如く、吸収体1を不適用の場合には、スピーカpそのものから音が聞こえ、スピーカ間の音像定位はほとんど感じられず、また音に深みもない。一方、図11(B)(D)、図12(B)(D)の如く、プラスチックダンボールの吸収体1aをノート型PC30のキーボード30a上に載置した場合には、スピーカpから離れた位置から音が聞こえるようになり、空間的な広がり感が感じられるようになると同時に、音に深みが出てきて、細かな音まで聞こえるようになり、音の解像度の向上を実現できる。
【0142】
第2は、ノート型PC30にヘッドホンを接続して聞く場合について評価した。
【0143】
図13を参照して、ヘッドホンで聞いた場合の音像の定位位置の違いの比較結果を説明する。図13(A)(B)はノート型PC30のスピーカp(図示せず)に対峙する被験者sの正面図であり、図13(C)(D)はその左側面図であり、図13(E)(F)はその右側面図である。また、図13(A)(C)(E)がノート型PC30のキーボード30a上に何も載置しない場合、図13(B)(D)(F)がプラスチックダンボールの吸収体1aを載置した場合である。
【0144】
具体的には、ビートルズの楽曲を試聴し、楽曲中のボーカルVと楽器としてドラムD、波の音W、ギターGの音像の大きさ・広がりを前述と同様に記入させた。
【0145】
図13の如く、吸収体1を不適用の場合と比較して、プラスチックダンボールの吸収体1aを載置した場合には、雑音(高周波数域のかすかな白色雑音)が低減し、音の解像度の向上を実現できる。従って、前述の第1の評価で述べたスピーカの評価の場合と同様の改善が見られた。
【0146】
第3は、ノート型PC30内でのデータ転送速度について評価した。評価内容としては、ベンチマークテスト用のソフトを用い、メインメモリとハードディスク間の(1)書き込み、(2)読み出しの速度の変化について実験した。ノート型PC30の動作としては、(a)シーケンシャル・リード・ライト、(b)ランダム・リード・ライト、(c)ブロック・リード・ライトの3種類を、<1>吸収体1を不適用、<2>ノート型PC30の下に円錐型構造の多段スパイク(図20参照)を適用し、かつノート型PC30のキーボード上にプラスチックダンボールの吸収体1aを適用、<3>ノート型PC30の下にプラスチックダンボールの吸収体1aを適用、<4>ノート型PC30の下及びノート型PC30のキーボード上に液体3入りパックを適用、<5>ノート型PC30のキーボード上にプラスチックダンボールの吸収体1aを適用、<6>ノート型PC30の下に円錐型構造の1段スパイクを適用し、かつノート型PC30のキーボード上にプラスチックダンボールの吸収体1aを適用、の6通りに対して行い、その評価結果を比較した。評価方法としては、9回テストを行いその最大値を評価結果としている。
【0147】
評価結果を表2に示す。尚、上段を平均値(Av.)とし、下段を標準偏差(S.D.)とする。また、<1>の「吸収体1を不適用」を「ノーマル」、<2>の「ノート型PC30の下に円錐型構造の多段スパイク(図20参照)を適用し、かつノート型PC30のキーボード上にプラスチックダンボールの吸収体1aを適用」を「E+Board」、<3>の「ノート型PC30の下にプラスチックダンボールの吸収体1aを適用」を「Board(Bot)」、<4>の「ノート型PC30の下及びノート型PC30のキーボード上にプラスチックダンボールの吸収体1を適用」を「Board+Pack」、<5>の「ノート型PC30のキーボード上にプラスチックダンボールの吸収体1aを適用」を「Up Board」、<6>の「ノート型PC30の下に円錐型構造の1段スパイクを適用し、かつノート型PC30のキーボード上にプラスチックダンボールの吸収体1aを適用」を「Nyron+Board」と示す。
【0148】
結果から示されるように、(a)シーケンシャル・リード・ライトの平均値においては、吸収体1不適用の<1>に比べ、プラスチックダンボールの吸収体1aを適用した<2>〜<6>の評価結果では、2〜4%程度の転送速度を向上させることができる。
【0149】
すなわち、電源ノイズ・ハードディスクの振動に起因したノイズの低減により、ハードディスクのリードライトでの微少信号の変動が低減され、読み取り・書き込みミスが低減し、速度の向上につながったと言える。
【0150】
【表2】


尚、ノート型PC30に代えてデスクトップ型PCを用いて上述のベンチマークテストを行った結果を図14に示す。デスクトップ型PCの場合には、プラスチックダンボールの吸収体1aをデスクトップ型PCの電源やハードディスクユニットに貼り付けて評価した。図14の如く、吸収体1不適用の場合(図中、ノーマルが該当)と比較して、ハードディスク上にプラスチックダンボールの吸収体1aを載置した場合(図中、HDが該当)には、2%程度の転送速度を向上させることができる。
【0151】
次に、図15〜図19を参照して、小型電子機器40における吸収体1の適用の有無による信号出力パワースペクトルの比較結果を説明する。図6の如く、携帯電話機40aや小型ディジタル音響機器40bの筐体にプラスチックダンボールの吸収体1aを貼付した場合における音質音像表現の改善を評価した。具体的には、各図に示す周波数[Hz]の正弦波で、予めコンピュータから小型ディジタル音響機器40bに転送し、再生する際に、プラスチックダンボールの吸収体1aの有無による変化を与えた結果を示した。
【0152】
図15〜図19では、小型ディジタル音響機器40b自体(吸収体1不適用)の周波数特性を実線、小型ディジタル音響機器40bにプラスチックダンボールの吸収体1aを適用した場合の周波数特性の測定結果を細実線で示した。横軸は周波数[Hz]であり、縦軸は信号電圧のパワースペクトル[dB]である。
【0153】
図15は1kHzの場合における正弦波信号再生時のヘッドホン出力の周波数分析結果を示す特性図であり、図16は2kHzの場合の分析結果の特性図であり、図17は4kHzの場合の分析結果の特性図であり、図18は5kHzの場合の分析結果の特性図であり、図19は8kHzの場合の分析結果の特性図である。
【0154】
小型ディジタル音響機器40bは駆動部分がないため雑音混入が少なく高音質であるが、ディジタル信号の変化がヘッドホンなどを駆動するアナログ回路に影響し、音楽鑑賞時に高周波広帯域雑音が残留し、音の解像度を低下させている欠点がある。
【0155】
しかしながら図6の如く、小型でかつ薄型のプラスチックダンボールの吸収体1aを小型電子機器40に貼付して用いることにより、高周波広帯域雑音の抑制や明瞭度の向上等の成果を得ることができる。これにより、「雑音の低減」や「音楽の音の明確化の向上」の評価を得ている。
【0156】
ここで、図15〜図19を参照して吸収体の特性を説明する。図に示す結果は、小型ディジタル音響機器40に予め1kHz、2kHz、4kHz、5kHz、8kHzの正弦波信号を試験信号として音楽ファイルの形で入力しておき、それを再生したときのヘッドホン出力端子の電圧信号を周波数分析した結果である。吸収体なし(実線)に対し吸収体あり(細実線)の場合、どの周波数の入力信号に対しても、6kHzから9.5kHzにかけての雑音成分が約5dB程度低減されており、この広帯域雑音の低減効果が、後述の雑音の低減と音の明確さにつながっていると考えられる。
【0157】
また、使用者の反応としては、(1)雑音が減って音が明確になった、(2)二重唱など音が重なったところでの音の分離が良くなった、(3)長時間聞いていても耳が痛くなくなった(疲れにくくなった)などが挙げられており、小型電子機器40での音質改善効果が十分にあることが判明した。
【符号の説明】
【0158】
1 吸収体
1a プラスチックダンボールの吸収体
1b アクリル容器の吸収体
2 固定形状の容器
2a プラスチックダンボール
2b アクリル容器
3 液体
4 封止材
11 スピーカエンクロージャ
12 スピーカ
13 スピーカ取り付け板
13a スピーカの取り付け穴
20 表板
21 裏板
22 波型スペーサー
23 内部空間
24、24a、24b 開口部
25 上面アクリルボード
26 底面アクリルボード
27a、27b、27c、27d 側面アクリルボード
28 接合部
30 電子機器
30a キーボード
30b ディスプレイ
40 小型電子機器
40a 携帯電話機
40b 小型オーディオ音響機器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有し固定形状の容器と、
該固定形状の容器の内部空間に充填される有機溶剤、液体高分子材料、高分子材料の溶液のいずれかから選択される液体と、
前記開口部を封止する封止材と、
を具備し、
振動若しくは電磁的ノイズ、又は振動及び電磁的ノイズを吸収することを特徴とする吸収体。
【請求項2】
前記固定形状の容器は、プラスチックダンボールまたはアクリルボードまたは金属で形成されることを特徴とする請求項1に記載の吸収体。
【請求項3】
前記液体の分子の回転周波数が、吸収すべき振動および/又はノイズと同等になるように前記液体の双極子モーメントおよび/又は分子量を選択することを特徴とする請求項1に記載の吸収体。
【請求項4】
前記有機溶剤は、ジメチルスルホキシド、アセトン、アセトニトリル、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン、HMPA、スルホラン、ジメチルスルホンのいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の吸収体。
【請求項5】
前記高分子材料は、ポリエチレングリコール、エチレングリコール、エポキシ樹脂、ポリスチレン、ポリイミド、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の吸収体。
【請求項6】
振動若しくは電磁的ノイズまたは振動及び電磁的ノイズを吸収する吸収体の使用方法であって、
前記吸収体は、開口部を有し固定形状の容器と、該固定形状の容器の内部空間に充填される有機溶剤、液体高分子材料、高分子材料の溶液のいずれかから選択される液体と、前記開口部を封止する封止材と、を具備し、
該吸収体を振動源および/又は電磁的ノイズ発生源に接触させ、振動若しくは電磁的ノイズまたは振動及び電磁的ノイズを吸収することを特徴とする吸収体の使用方法。
【請求項7】
前記固定形状の容器を前記振動源および/又は電磁的ノイズ発生源に直接接触させることを特徴とする請求項6に記載の吸収体の使用方法。
【請求項8】
前記吸収体で前記振動源および/又は電磁的ノイズ発生源を被覆することを特徴とする請求項7に記載の吸収体の使用方法。
【請求項9】
前記吸収体を前記振動源および/又は電磁的ノイズ発生源に貼付することを特徴とする請求項7に記載の吸収体の使用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−77895(P2012−77895A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−226313(P2010−226313)
【出願日】平成22年10月6日(2010.10.6)
【出願人】(000125347)学校法人近畿大学 (389)
【出願人】(506314863)KRYNA株式会社 (6)
【Fターム(参考)】