説明

吸収体の製造方法及び製造装置

【課題】回転ドラムの凹部からの堆積物の離型性に優れ、該堆積物を他の搬送手段上にスムーズに転写させることができ、厚みや高さ、坪量等が部分的に異なる吸収体を容易に製造することのできる吸収体の製造方法及び製造装置を提供すること。
【解決手段】本発明の吸収体の製造方法は、回転ドラム3の外周面3A上にその周方向に沿って設けられた複数の凹部画成部材35,36間に位置する凹部30に、原料を堆積させて堆積物を形成し、該堆積物を他の搬送手段上に転写させる工程を具備する。凹部画成部材35,36を回転ドラム3の幅方向Yに移動可能に設け、凹部30内に堆積物を形成した後で且つ該堆積物を他の搬送手段上に転写させる前に、凹部画成部材35,36を幅方向Yに移動させて凹部30の幅を変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収体の製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨ておむつや生理用ナプキン、失禁パッド等の吸収性物品の吸収体の製造においては、空気流に乗せて供給した吸収体の原料(解繊パルプ等の繊維材料や吸水性ポリマー等)を、回転ドラムの外周面に形成された集積用の凹部に吸引して堆積させ、該凹部に対応する形状に成形された堆積物を、トランスファーロールやコンベア等の他の搬送手段上に離型することが行われている。そして、その離型された堆積物が、そのまま、又は他のシート材等と組み合わされて吸収体として用いられる。
【0003】
ところで、回転ドラムの凹部内に堆積した堆積物を該凹部から離型させる方法としては、回転ドラムの内方から外周面(凹部の底面)を通じて外方へ向けてエアを噴出させ、該エアにより凹部内の堆積物を他の搬送手段上に離型させる方法が知られている〔例えば、特許文献1(特に図1)及び特許文献2(特に図8及び図9)参照〕。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−161153号公報
【特許文献2】特開2006−115911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び2に記載の吸収体の製造方法を利用した場合には、回転ドラムの凹部内の堆積物の離型性に改良の余地がある。特に、回転ドラムを用いて厚みや坪量等が部分的に異なる特殊な形態の吸収体を製造するに当たり、回転ドラムの該凹部内に形成された、該吸収体に対応する特殊な形態の堆積物を、トランスファーロールやコンベア等の他の搬送手段上にスムーズに転写させることが要望されているところ、斯かる要望に十分に応え得る技術は未だ提供されていない。
【0006】
従って、本発明は、回転ドラムの凹部からの堆積物の離型性に優れ、該堆積物を他の搬送手段上にスムーズに転写させることができ、吸収体を容易に製造することのできる吸収体の製造方法を提供することを課題とする。また、本発明は、堆積物が収容されている凹部の幅を容易に変更可能で、前記吸収体の製造方法の実施等に好適に用い得る吸収体の製造装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、回転ドラムの外周面上に該回転ドラムの周方向に沿って設けられた複数の凹部画成部材間に位置する凹部に、原料を堆積させて堆積物を形成し、該堆積物を他の搬送手段上に転写させる工程を具備する吸収体の製造方法であって、前記凹部画成部材を前記回転ドラムの幅方向に移動可能に設け、前記凹部内に前記堆積物を形成した後で且つ該堆積物を前記他の搬送手段上に転写させる前に、該凹部画成部材を該幅方向に移動させて該凹部の幅を変化させる、吸収体の製造方法を提供するものである。
【0008】
また、本発明は、外周面に凹部を有する回転ドラムを備え、空気流に乗せて供給した原料を、該凹部の底面に吸引して堆積させた後、その堆積物を該底面から離脱させるように構成されている吸収体の製造装置であって、前記凹部は、前記回転ドラムの外周面上に該回転ドラムの周方向に沿って設けられた複数の凹部画成部材間に位置し、前記凹部画成部材は、前記回転ドラムの外周面上を該回転ドラムの幅方向に移動可能に設けられており、該凹部画成部材の該幅方向の移動により、前記凹部の幅を変化させ得るようになされており、前記凹部は、前記回転ドラムの周方向に所定間隔を置いて複数設けられており、該回転ドラムの外周面上における、複数の前記凹部画成部材間の該所定間隔に対応する部位に、複数の該凹部を該周方向に分け隔てる隔壁部材が設けられており、前記隔壁部材と前記凹部画成部材との間に伸縮部材が介在され、該伸縮部材の伸縮方向は、前記回転ドラムの幅方向に一致しており、前記回転ドラムは、前記凹部画成部材より該回転ドラムの幅方向の外方に位置し且つ該凹部画成部材に当接して該凹部画成部材の該幅方向の外方への移動を妨げるストッパーが設けられたストッパー付設領域と、該ストッパーが設けられていないストッパー非付設領域とを、該回転ドラムの周方向に有しており、前記回転ドラムの回転により、前記凹部画成部材が該回転ドラムの周方向に搬送されている場合において、該凹部画成部材は、前記ストッパー付設領域を搬送中は、前記隔壁部材と前記ストッパーとの間において前記伸縮部材により該隔壁部材から離れる方向に付勢されており、該ストッパー付設領域を通過して前記ストッパー非付設領域に搬送されると、該伸縮部材の伸長により、該回転ドラムの幅方向の外方に移動するようになされている、吸収体の製造装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の吸収体の製造方法によれば、回転ドラムの凹部からの堆積物の離型性に優れ、該堆積物を他の搬送手段上にスムーズに転写させることができ、吸収体を容易に製造することができる。また、本発明の吸収体の製造装置は、堆積物が収容されている凹部の幅を容易に変更可能であり、本発明の吸収体の製造方法の実施等に好適に用い得る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明(第1発明)の吸収体の製造装置の一実施態様を示す概略図である。
【図2】図2は、図1に示す回転ドラムの外周面の一部を模式的に示す図で、凹部画成部材が付勢された状態を示す平面図である。
【図3】図3は、図1又は図2のI−I線断面を模式的に示す断面図である。
【図4】図4は、図1又は図2のII−II線断面を模式的に示す断面図である。
【図5】図5は、図1に示す回転ドラムの外周面の一部を模式的に示す図で、凹部画成部材が開放された状態を示す平面図である。
【図6】図6は、図1に示す回転ドラムの回転に伴う凹部画成部材の移動パターンの説明図である。
【図7】図7は、図1のIII−III線断面を模式的に示す断面図であり、堆積物が凹部から離型して他の搬送手段上に転写される様子を示す図である。
【図8】図8は、本発明(第1発明)の吸収体の製造装置の他の実施態様の図6相当図である。
【図9】図9は、本発明(第1発明)の吸収体の製造装置の他の実施態様における要部(凹部画成部材)を模式的に示す断面図である。
【図10】図10は、本発明(第2発明)の吸収体の製造装置の一実施態様を示す概略図である。
【図11】図11(a)は、図10のI−I線断面を模式的に示す断面図、図11(b)は、図10のII−II線断面を模式的に示す断面図である。
【図12】図12は、図10に示す製造装置におけるカム溝の形状を示す平面図であり、図12(a)は、図10のP1位置のカム溝の形状を示し、図12(b)は、図10のP2位置のカム溝の形状を示す。
【図13】図13は、図10に示す回転ドラムの回転に伴う凹部画成部材の揺動の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明について、その好ましい実施態様に基づき図面を参照しながら説明する。本発明の吸収体の製造方法及び製造装置は、使用する回転ドラムの形態によって2つに大別することができ、具体的には、1)「原料堆積用凹部がドラム周方向に所定間隔を置いて外周面に複数設けられた回転ドラム」(後述する回転ドラム3)を使用する場合に好適なものと、2)「ドラム周方向の全長に亘って連続する1つの原料堆積用凹部が外周面に設けられた回転ドラム」(後述する回転ドラム2)を使用する場合に好適なものとに大別できる。以下、本発明の吸収体の製造方法及び製造装置のうち、前記1)に好適なものを第1発明、前記2)に好適なものを第2発明ともいう。
【0012】
先ず、第1発明について説明する。第1発明の一実施態様である吸収体の製造装置1は、図1〜図3に示すように、外周面3Aに凹部30を有する回転ドラム3を備え、空気流に乗せて供給した吸収体の原料41(解繊パルプ等の繊維材料や吸水性ポリマー等)を、凹部30の底面30Aに吸引して堆積させた後、その堆積物を底面30Aから離脱させるように構成されているもので、回転ドラム3に加えて更に、回転ドラム3の外周面3A上に原料41を供給するダクト4と、回転ドラム3の下方に配されたバキュームコンベア7とを備えている。後述するように、回転ドラム3は、内部に相互に独立した複数(4つ)の空間A、B、C及びDを周方向に有し且つ凹部30の底面30Aが通気性を有する回転ドラムであり、使用時には、複数の空間A、B、C及びDのうちの少なくとも一部(A、B及びC)を負圧に維持する。
【0013】
回転ドラム3は、図3に示すように、回転ドラム3の外周面3Aを形成する円筒状の外周部32と、外周部32に連接され外周部32と共に方向R1(回転ドラム3の周方向)に回転する支持部33と、該支持部33に対向配置され回転しない非回転部34とを含んで構成されている。外周部32における回転ドラム3の幅方向Y(回転ドラム3の周方向と直交する方向)の中央部は、凹部30の底面30Aを形成する開孔部材31から構成されている。凹部30の底面30Aは、回転ドラム3の外周面3Aの一部である。開孔部材31は、多数の細孔を有していて部材31全体として通気性を有し、空気流に乗せて供給された吸収体の原料41を透過させずに空気のみを透過させ得るものである。凹部30の底面30A(開孔部材31)の平面視形状は、製造する吸収体(堆積物)の平面視形状に対応しており、本実施態様においては、図2に示すように、長手方向(回転ドラム3の回転方向R1)の中央部が括れた砂時計状である。ここで、「平面視」とは、対象物(凹部30等)を、回転ドラム3の外周面3Aの法線方向(回転ドラム3の回転軸方向と直交する方向)の外方から見た場合を意味する。
【0014】
支持部33は回転ドラム3の幅方向Yの一端側、非回転部34は他端側に位置し、共に円盤状をなし回転ドラム3の側面を形成している。支持部33は、モータ等の原動機(図示せず)からの動力を受けて水平軸回りを方向R1に回転するようになされており、外周部32は、この支持部33の回転によって水平軸回りを一体的に回転する。非回転部34には、回転ドラム3の内部を周方向に複数の領域に仕切るプレートが固定されており、このプレートによって、回転ドラム3の内部には、図1に示すように、相互間が仕切られて相互に独立した複数(4つ)の空間A、B、C及びDが形成されている。このように、回転ドラム3内の空間A〜Dは、回転しない非回転部34に固定されたプレートによって互いに仕切られているため、外周部32及び支持部33が方向R1に回転しても、空間A〜Dの位置は不変である。
【0015】
回転ドラム3には、吸気ファン等の公知の排気装置(図示せず)が接続されており、該排気装置を作動させることにより、回転ドラム3の複数の空間A、B、C及びDのうちの一部である空間A、B及びC内をそれぞれ負圧に維持可能である。凹部30が負圧に維持された空間A、B及びC上を通過している間、凹部30の底面30Aを構成する開孔部材31の多数の細孔が吸引孔として機能する。また、回転ドラム3には、装置外の空気を取り込み可能な配管(図示せず)又は空間D内を陽圧に維持するブロワー(図示せず)が接続されている。
【0016】
空間A、B及びCの負圧の程度は、個々独立して調整可能であり、互いに同じでも良く、異なっていても良い。回転ドラム3の各空間の負圧の程度は、当該空間上に位置する凹部30の底面30A(開孔部材31)の多数の細孔(吸引孔)が回転ドラム3の外部から内部に空気を吸入するときの吸引力(即ち原料41の吸引力)と密接に関係し、該負圧に比例して該吸引力が大きくなる。回転ドラム3の複数の空間A、B及びCは、負圧の程度が相対的に高い高負圧空間と負圧の程度が相対的に低い低負圧空間とを含んでいる。本実施態様においては、ダクト4に対応して配置された空間Aは、前記高負圧空間とされ、空間Aよりも回転方向R1の下流側(後述する凹部画成部材35,36及びその間に位置する凹部30の搬送方向の下流側)に配置された空間B及びCは、空間Aに比して負圧の程度が低い前記低負圧空間とされている。従って、回転ドラム3の負圧に維持された空間の該負圧による、凹部30の底面30Aの吸引力は、凹部30が空間A上に位置しているときよりも、空間B及びC上に位置しているときの方が低い。尚、空間Bと空間Cとの関係に関しては、両空間B、Cの負圧の程度は同じであっても良く、あるいは、空間Bよりも回転方向R1の下流側に配置された空間Cは、空間Bに比して負圧の程度が低くても良い。
【0017】
回転ドラム3の凹部30は、図2及び図3に示すように、回転ドラム3の外周面3A上に該回転ドラム3の周方向(回転方向R1)に沿って設けられた複数の凹部画成部材35,36間に位置している。本実施態様においては、凹部30は、図1に示すように、回転ドラム3の周方向に所定間隔を置いて複数設けられており、複数の凹部30は、それぞれ、図2及び図3に示すように、回転ドラム3の外周面3Aにおける回転方向R1の左右両側それぞれに設けられた2個(一対)の凹部画成部材35,36間に位置している。従って、本実施態様においては、凹部画成部材35,36は、それぞれ、複数の凹部30と同数配置されている。凹部画成部材35,36及びその間に位置する凹部30は、方向R1(回転ドラム3の周方向)に回転に設けられた外周部32上に配置されており、従って、回転ドラム3の複数の空間A、B、C及びD上を周方向に搬送可能に設けられている。
【0018】
図2及び図4に示すように、回転ドラム3の外周面3A上における、複数の凹部画成部材35,36間の、回転ドラム3の周方向に隣接する2つの凹部30,30の間隔に対応する部位には、複数の凹部30を該周方向(回転方向R1)に分け隔てる隔壁部材37が固定されている。隔壁部材37は、平面視して矩形形状を有し、1つの凹部30を挟んで回転ドラム3の周方向の前後それぞれに設けられている。凹部画成部材35,36及び隔壁部材37は、何れも、金属、樹脂等から形成された薄板状の非通気性部材であり、これらの厚みは略同じである。凹部30は、一対の凹部画成部材35,36及び一対の隔壁部材37,37に挟まれた空間である。凹部30の深さは、凹部画成部材35,36及び隔壁部材37の厚みに略等しい。
【0019】
凹部画成部材35,36は、回転ドラム3の外周面3A上を回転ドラム3の幅方向Yに移動可能に設けられており、凹部画成部材35,36の幅方向Yの移動により、凹部30内に堆積物が収容されていない状態はもとより、凹部30内に堆積物が収容されている状態でも、凹部30の幅(幅方向Yの長さ)を変化させ得るようになされている。
【0020】
本実施態様においては、凹部画成部材35,36は、回転ドラム3の回転に伴い所定のパターンで、回転ドラム3の幅方向Yに揺動するようになされており、その揺動機構は、以下に説明するように、凹部画成部材35,36を幅方向Yの外方に向けて付勢する付勢手段としての伸縮部材38と、凹部画成部材35,36の幅方向Yの外方への移動を妨げるストッパー8とを含んで構成されている。
【0021】
即ち、図2及び図4に示すように、一対の隔壁部材37,37と凹部画成部材35,36との間には、伸縮部材38が介在されている。伸縮部材38は、隔壁部材37及び凹部画成部材35,36を幅方向Yに連結する1本の棒状のシャフト39の周囲に巻き付けられ、その長さ方向の一端が、隔壁部材37における回転ドラム3の周方向(回転方向R1)に沿う側面に固定され、長さ方向の他端が、隔壁部材37の該側面に対向する、凹部画成部材36又は35の該周方向に沿う内側面に固定されている。伸縮部材38の伸縮方向は、回転ドラム3の幅方向Yに一致している。本実施態様においては、伸縮部材38としてコイルスプリングを採用している。シャフト39は、隔壁部材37の内部を幅方向Yに貫通しており、更にその長さ方向の両端部が、凹部画成部材35,36の内部に穿設された、幅方向Yに延びる開口39aに挿入されている。シャフト39は、隔壁部材37に固定されていて回転ドラム3の外周面3Aと一体化されているが、凹部画成部材35,36(開口39aを画成する内壁)とは固定されていない。従って、両部材35,36は、それぞれ、シャフト39が開口39aに挿入された状態で、回転ドラム3の外周面3A上を、伸縮部材38の伸縮可能範囲内で幅方向Yに移動可能である。
【0022】
また、図1〜図4に示すように、回転ドラム3は、凹部画成部材36(回転方向R1から見たときに左側に位置する凹部画成部材)より回転ドラム3の幅方向Yの外方に位置し且つ該凹部画成部材36に当接して該凹部画成部材36の幅方向Yの外方への移動を妨げるストッパー8が設けられたストッパー付設領域と、ストッパー8が設けられていないストッパー非付設領域とを、回転ドラム3の周方向に有している。ストッパー8は、回転ドラム3の周方向に連続的に延びて弧状に形成されており、回転ドラム3の非回転部34の外面(回転ドラム3の側面)に固定されている。外周部32及びその外面上に設けられた凹部画成部材35,36及び隔壁部材37が方向R1に回転しても、ストッパー8は非回転部34に固定されているため回転せず、従って、ストッパー8の付設位置(前記ストッパー付設領域及び前記ストッパー非付設領域の位置)は、回転ドラム3の回転にかかわらず不変である。
【0023】
本実施態様においては、図1に示すように、ストッパー8は、非回転部34の外面(回転ドラム3の側面)において、回転ドラム3の空間A、B及びCの周方向の全長に亘り、更に空間Aからこれに隣接する空間Dの一部に延出しており、ストッパー8全体として周方向に連続している。即ち、本実施態様においては、回転ドラム3の空間A、B及びC並びに空間Dにおける空間A寄りの部分は、回転ドラム3の周方向に連続した前記ストッパー付設領域となっており、空間Dにおける該空間A寄りの部分を除く他の部分は、ストッパー8が設けられておらず、該周方向に連続した前記ストッパー非付設領域となっている。
【0024】
ストッパー8は、図3及び図4に示す如き回転ドラム3の断面視において、回転ドラム3の外周面3A(凹部30の底面30A)から回転ドラム3の半径方向Zの外方に突出しており、その突出部81が、前記ストッパー付設領域において、凹部画成部材36の幅方向Yの外方への移動を直接妨げる手段として機能する。前記ストッパー付設領域において、凹部画成部材36は、その回転ドラム3の周方向に沿う外側面36s(凹部画成部材36において幅方向Yの外方に最も突出している部分)が、突出部81の該周方向に沿う内側面に当接し、その状態で伸縮部材38により隔壁部材37から離れる方向に付勢(幅方向Yの外方に向けて付勢)される。
【0025】
本実施態様においては、回転ドラム3の外周面3Aを幅方向Yに二分する仮想直線を引いた場合に、該仮想直線とストッパー8(突出部81における回転ドラム3の周方向に沿う内側面)との離間距離(外周面3Aに沿った測定した場合の離間距離)は、ストッパー8の回転ドラム3に対応する所定区間において一定(不変)である。即ち、凹部画成部材36と当接するストッパー8(突出部81)の内側面は、所定区間において実質的に凹凸の無い平坦面となっている。本実施態様におけるストッパー8(突出部81)の内側面の平坦面となっている所定区間は、回転ドラム3の空間Dの一部から空間A及び空間Bに亘り、更に空間Cの一部までに対応する連続する区間である。従って、凹部画成部材36は、回転ドラム3の回転により前記ストッパー付設領域を搬送中において、伸縮部材38により隔壁部材37から離れる方向に付勢されつつストッパー8(突出部81)の内側面(平坦面)に当接している状態では、幅方向Yに移動しない。
【0026】
本実施態様においては、ストッパー8は、回転ドラム3の幅方向Yの一端側(凹部画成部材36側)にのみ設けられており、他端側には設けられておらず、従って、凹部画成部材36と対をなす凹部画成部材35に関し、ストッパー8(突出部81)の如き、凹部画成部材35の幅方向Yの移動を直接妨げる手段は採用されていない。その代わりに、本実施態様においては、図2に示すように、回転ドラム3の幅方向Yに張設されたワイヤー80及びこれに固定されたフック部材85,86を含んで構成された、凹部画成部材35,36の連動機構が採用されており、該連動機構により、凹部画成部材35は、凹部画成部材36と同じタイミングで幅方向Yの外方又は内方に移動可能である。
【0027】
凹部画成部材35,36の連動機構について説明すると、図2に示すように、回転ドラム3の外周面3Aにおける、相対向する左右一対の凹部画成部材35,36を挟んで回転ドラム3の周方向の前後それぞれには、外周面3Aから突出形成された一対のワイヤー張設具87,88間に架け渡されたワイヤー80が設けられており、凹部画成部材36はフック部材86を介して、また、凹部画成部材35はフック部材85を介して、それぞれ、回転ドラム3の周方向の前後それぞれのワイヤー80と接続されている。フック部材85,86は、それぞれ、ワイヤー80の所定部位に固定されており、ワイヤー80がワイヤー張設具87,88周りを回転すると、それに連動してフック部材85,86は幅方向Yに移動する。フック部材85,86は、凹部画成部材35,36に固定されているので、フック部材85,86の幅方向Yの移動を制御することにより、凹部画成部材35,36の幅方向Yの移動を制御可能である。
【0028】
ストッパー8が設けられている前記ストッパー付設領域においては、図2に示すように、凹部画成部材36に固定されたフック部材86は、最寄りのワイヤー張設具88(回転ドラムの外周面を幅方向に二分する仮想直線を基準として当該フック部材と同じ側に位置するワイヤー張設具)に接しておらず、ワイヤー張設具88から所定距離L1離間しており、また、凹部画成部材35に固定されたフック部材85も、最寄りのワイヤー張設具87に接しておらず、ワイヤー張設具87から所定距離L2離間している。フック部材86と最寄りのワイヤー張設具88との離間距離L1は、ストッパー8が無くなった場合(凹部画成部材35,36が前記ストッパー付設領域から前記ストッパー非付設領域に搬送された場合)における凹部画成部材36の幅方向Yの外方への移動可能距離に等しく、また、フック部材85とワイヤー張設具87との離間距離L2は、ストッパー8が無くなった場合における凹部画成部材35の幅方向Yの外方への移動可能距離に等しく、また、離間距離L1と離間距離L2とは略等しく設定されている。
【0029】
図2に示す状態からストッパー8が無くなる、即ち、回転ドラム3の回転により凹部画成部材35,36がストッパー8の無い前記ストッパー非付設領域に搬送されると、伸縮部材38の伸長により、凹部画成部材36は幅方向Yの外方に移動し、それに伴って凹部画成部材36に固定されているフック部材86も、最寄りのワイヤー張設具88に向かって幅方向Yの外方に移動する。また、フック部材86の斯かる移動に伴って、ワイヤー80がワイヤー張設具87,88周りを回転し、それによってワイヤー80に固定されているフック部材85が、最寄りのワイヤー張設具87に向かって幅方向Yの外方に移動し、これに連動して、フック部材85に固定されている凹部画成部材35が幅方向Yの外方に移動する。このように、凹部画成部材35,36は、ワイヤー80及びこれに固定されたフック部材85,86によって、略同じタイミングで幅方向Yの外方に移動する。フック部材85,86は、それぞれ、幅方向Yの外方へ所定距離L1,L2移動し、略同時に最寄りのワイヤー張設具87,88に当接し、それによってフック部材85,86の幅方向Yの外方への移動が止まると、凹部画成部材35,36の幅方向Yの外方への移動も止まる。結果として、図5に示すように、凹部画成部材35,36は、それぞれ、幅方向Yの最外方に位置し、凹部30の幅(幅方向Yの長さ)は最長となる。
【0030】
このように、本実施態様においては、回転ドラム3の回転により、凹部画成部材35,36が回転ドラム3の周方向に搬送されている場合において、凹部画成部材35,36は、ストッパー8が存する前記ストッパー付設領域を搬送中は、図2に示すように、隔壁部材37とストッパー8との間において伸縮部材38により隔壁部材37から離れる方向に付勢されており、該ストッパー付設領域を通過してストッパー8が存していない前記ストッパー非付設領域に搬送されると、伸縮部材38の伸長により、回転ドラム3の幅方向Yの外方に移動するようになされており、最終的に図5に示す如き開放状態となる。
【0031】
また、前記ストッパー非付設領域において図5に示す如き開放状態にある凹部画成部材35,36は、回転ドラム3の回転により前記ストッパー付設領域に搬送されると、幅方向Yの最外方に位置していた開放状態の凹部画成部材36は、ストッパー8と当接することによって幅方向Yの内方に押され、それに伴って、凹部画成部材36に固定され且つワイヤー張設具88に当接していたフック部材86が、ワイヤー張設具88から離れるように幅方向Yの内方に移動する。また、フック部材86の斯かる移動に伴って、ワイヤー80がワイヤー張設具87,88周りを回転し、それによってワイヤー80に固定され且つワイヤー張設具87に当接していたフック部材85が、ワイヤー張設具87から離れるように幅方向Yの内方に移動し、これに連動して、フック部材85に固定されている凹部画成部材35が幅方向Yの内方に移動する。結果として、図2に示すように、凹部画成部材35,36は、それぞれ、幅方向Yの最内方に位置し、凹部30の幅(幅方向Yの長さ)は最短となる。このとき、凹部画成部材36,36それぞれと隔壁部材37との間に介在された伸縮部材38は幅方向Yに圧縮され、凹部画成部材36,36それぞれは、圧縮された伸縮部材38により隔壁部材37から離れる方向に付勢(幅方向Yの外方に向けて付勢)される。
【0032】
図6には、回転ドラム3の回転に伴う凹部画成部材35,36の移動パターンが示されている。本実施態様においては、前述したように、回転ドラム3の空間A、B及びC並びに空間Dにおける空間A寄りの部分D2は、前記ストッパー付設領域、空間Dにおける該部分D2を除く他の部分D1は、前記ストッパー非付設領域となっている。後述する吸収体の製造方法においては、凹部画成部材35,36が空間A上を搬送中に、両部材35,36間に位置する凹部30の底面30A上に吸収体の原料41が吸引堆積され、凹部画成部材35,36が空間D(部分D1)上を搬送中に、両部材35,36間に位置する凹部30から原料41(堆積物42)が離型され、他の搬送手段(バキュームコンベア7)上に転写される。図6中の符合Pは、凹部30内の堆積物42のバキュームコンベア7上への転写位置を示しており、本実施態様においては、図1に示すように、回転ドラム3の最下部(回転ドラム3のバキュームボックス74との対向位置)である。斯かる製造方法に鑑み、凹部画成部材35,36は、図6に示すように、空間Dの部分D1上から部分D2上を経て空間A上に搬送される過程で、図5に示す如き開放状態から図2に示す如き付勢された状態とされ、空間A上及び空間B上を搬送中は、この付勢された状態が維持され、空間C上から空間Dの部分D1上へ搬送される過程で、図5に示す如き開放状態とされる。
【0033】
図6に示すように、凹部画成部材36における回転ドラム3の周方向に沿う外側部の、搬送方向(回転方向R1)の前後両端部36r,36r(図6中斜線を付した部分)は、それぞれ平面視において、該搬送方向の外方に向かって幅(幅方向Yの長さ)が漸次減少するテーパー形状を有している。また、ストッパー8の長さ方向(回転ドラム3の周方向)の前後両端部8r,8rも、それぞれ平面視において、該長さ方向の外方に向かって幅(幅方向Yの長さ)が漸次減少するテーパー形状を有しているが、斯かるテーパー形状を構成する、回転ドラム3の周方向に沿う相対向する一対の辺の長短関係が、凹部画成部材36の端部36rにおけるそれとは逆になっており、テーパー形状の端部36rに対し逆テーパー形状を有している。このように、回転ドラム3の回転によって互いに接離する関係にある凹部画成部材36及びストッパー8それぞれの周方向の端部36r,8rをテーパー状に形成することにより、凹部画成部材36が前記ストッパー非付設領域から前記ストッパー付設領域へ搬送されるときに、走行する凹部画成部材36の端部36rがストッパー8の端部8rに引っ掛かるおそれが低減し、回転ドラム3の回転(凹部画成部材35,36の搬送)が支障なく行われるようになる。
【0034】
製造装置1について更に説明すると、ダクト4は、図1に示すように、回転ドラム3の外周面3Aの一部を覆う一端部を有し、空気流に乗せて飛散状態とされた原料41を、外周面3A上に供給する。ダクト4の他端部側には、解繊パルプ等の繊維材料(吸収体原料)をダクト4内に飛散状態として供給する繊維材料供給装置(図示せず)が設けられており、更に、回転ドラム3と該繊維材料供給装置との間には、ダクト4内に吸水性ポリマーの粒子(吸収体原料)を導入するポリマー導入口40が設けられている。
【0035】
バキュームコンベア7(他の搬送手段)は、駆動ロール71及び従動ロール72に架け渡された無端状の通気性ベルト73と、通気性ベルト73を挟んで回転ドラム3と対向する位置に配されたバキュームボックス74とを備えている。
【0036】
次に、前述した吸収体の製造装置1を用いて吸収体を連続的に製造する方法、即ち、本発明の吸収体の製造方法の第1実施態様について説明する。第1実施態様の製造方法は、回転ドラム3の凹部30に、原料41を堆積させて堆積物42を形成し、堆積物42をバキュームコンベア7(他の搬送手段)上に転写させる工程を具備している。第1実施態様の製造方法の主たる特長の1つは、凹部画成部材35,36を回転ドラム3の幅方向Yに移動可能に設け、凹部30内に堆積物42を形成した後で且つ該堆積物42をバキュームコンベア7上に転写させる前に、凹部画成部材35,36を幅方向Yに移動させて凹部30の幅(幅方向Yの長さ)を変化させる点にある。
【0037】
第1実施態様の製造方法の実施に先立ち、先ず、回転ドラム3内の空間A、B及びC内を、回転ドラム3に接続された排気装置を作動させて負圧にする。空間A内を負圧にすることにより、ダクト4内に、吸収体の原料41を回転ドラム3の外周面3Aに搬送する空気流(バキュームエアー)が生じる。また、回転ドラム3を方向R1に回転させ、バキュームコンベア7を作動させる。そして、前記繊維材料導入装置を作動させ、必要に応じ、ポリマー導入口40から吸水性ポリマーの粒子を導入して、ダクト4内に原料41を供給すると、原料41はダクト4内を流れる空気流に乗り、飛散状態となって回転ドラム3の外周面3Aに向けて供給される。
【0038】
第1実施態様では、前述したように、ダクト4に対応して配置された空間Aを、負圧の程度が相対的に高い高負圧空間とし、凹部画成部材35,36及びその間に位置する凹部30の搬送方向(回転方向R1)の下流側に配置された、空間B及びCを、空間Aに比して負圧の程度が低い低負圧空間とする。また、空間Bと空間Cとの負圧の程度の関係については、空間B=空間C又は空間B>空間Cとする。従って、凹部30の底面30Aの吸引力は、凹部30(凹部画成部材35,36)の回転ドラム3の周方向における位置によって異なり、第1実施態様では、空間A>空間B=空間Cとなるか、又は空間A>空間B>空間Cとなる。空間B及びCの負圧の程度は、凹部30が該空間B及びC上に位置するときに、その底面30Aに、該凹部30内に堆積した原料41(堆積物42)を保持し得る吸引力が発現し得る程度であれば良い。空間B及びCの負圧の程度を空間Aに比して低くすることにより、凹部30内の堆積物42を吸引保持する底面30Aの吸引力は、該凹部30(凹部画成部材35,36)が空間Aから空間B及びCを経て転写位置P(空間D)に向かうに従って段階的に減少するようになるため、該吸引力がこのように凹部30の搬送方向に向けて段階的に減少しない場合(例えば、空間B及びCが空間Aと同程度の負圧に維持されている場合)に比して、転写位置Pにおける堆積物42の離型がよりスムーズになされるようになる。
【0039】
第1実施態様では、凹部30が空間A(前記高負圧空間)上に位置しているときに、その負圧による吸引力によって原料41を凹部30の底面30Aに吸引堆積させて堆積物42を形成する。即ち、図6に示すように、凹部画成部材35,36は、ダクト4に覆われている空間A上(前記ストッパー付設領域)を搬送されている間は、それぞれ、伸縮部材38により隔壁部材37から離れる方向に付勢された状態(幅方向Yの外方に向けて付勢された状態)にあって、幅方向Yの最内方に位置しており(図2参照)、このとき、両部材35,36間に位置する、相対的に狭い幅の凹部30の底面30A上に、原料41が吸引されて堆積する。空間A上における回転方向R1の下流側においては、凹部30内が原料41で略満たされた状態となり、凹部30内に堆積物42が形成される。こうして凹部30内に形成された堆積物42は、回転ドラム3の方向R1への更なる回転により、空間B上を経て空間C上に搬送される。
【0040】
また、第1実施態様では、凹部30が負圧に維持された回転ドラム3の所定の空間上に位置し且つ該凹部30内に堆積物42が収容されているときに、凹部画成部材35,36を回転ドラム3の幅方向Yに移動させて該凹部30の幅を変化させる。より具体的には、凹部30(凹部画成部材35,36)が空間C(前記低負圧空間)上に位置し且つ該凹部30内に堆積物42が収容されているときに、凹部画成部材35,36を回転ドラム3の幅方向Yに移動させて該凹部30の幅を変化させる。即ち、図6に示すように、凹部画成部材35,36は、空間C上から空間Dの部分D1上に差し掛かる部分を搬送中に、付勢された状態の凹部画成部材36がストッパー8(突出部81)のテーパー形状の端部8rの内側面に当接しつつ搬送されることにより、そのテーパー形状に対応して回転ドラム3の幅方向Yの外方へ徐々に移動し、部分D1上に搬送された直後は、ストッパー8が無くなることによって図5に示す如き開放状態となる。凹部画成部材35,36の斯かる開放状態は、両部材35,36間の堆積物42が所定の転写位置P(回転ドラム3の最下部で、バキュームボックス74との対向位置)に搬送される前までになされる。
【0041】
そして、開放状態の凹部画成部材35,36間の堆積物42は、回転ドラム3の回転により転写位置Pに搬送されると、図7に示すように、堆積物42の自重とバキュームボックス74からの吸引とによって、相対的に広い幅の凹部30から離型し、バキュームコンベア7の通気性ベルト73上に転写される。第1実施態様においては、図1に示すように、予め通気性ベルト73上に、ティッシュペーパー又は透液性の不織布等からなる帯状のコアラップシート44が導入されており、凹部30から離型した堆積物42は、コアラップシート44上に転写される。その後、コアラップシート44の搬送方向MDに沿う両側部が折り返され、堆積物42の上下両面がコアラップシート44で被覆されて、目的とする吸収体(吸収性物品1枚分の寸法に切断された吸収体)が得られる。
【0042】
一方、凹部画成部材35,36は、転写位置Pに対応する空間Dの部分D1上での堆積物42の離型完了後、回転ドラム3の方向R1への更なる回転により、空間Dの部分D2上を経て空間A上に再び搬送されるところ、図6に示すように、空間Dの部分D2上を搬送中に、ストッパー8(突出部81)のテーパー形状の端部8rの内側面に当接しつつ搬送されることにより、そのテーパー形状に対応して回転ドラム3の幅方向Yの内方へ徐々に移動し、空間A上に搬送された直後は、ストッパー8の存在によって図2に示す如き、隔壁部材37から離れる方向に付勢された状態(幅方向Yの外方に向けて付勢された状態)となる。
【0043】
第1実施態様の吸収体の製造方法においては、前述したように、回転ドラム3の凹部30内に堆積物42を形成した後で且つ該堆積物42を他の搬送手段(バキュームコンベア7)上に転写させる前に、凹部画成部材35,36を回転ドラム3の幅方向Yの外方に移動させて、両部材35,36間に位置する凹部30の幅を堆積物42の幅よりも広くしており、それによって、所定の転写位置Pにおいて、堆積物42は、図7に示すように、両部材35,36によって挟持されておらず、回転ドラム3の外周面3A(凹部30の底面30A)に対し実質的に固定されていない状態となっている。そのため、バキュームコンベア7(コアラップシート44)の上方に両部材35,36を位置させるだけで、両部材35,36間に位置する相対的に広い幅の凹部30内の堆積物42は、凹部30からスムーズに離型し、バキュームコンベア7上に転写される。このように、第1実施態様の吸収体の製造方法によれば、凹部30からの堆積物42の離型性に優れ、堆積物42を他の搬送手段上にスムーズに転写させることができる。また、第1実施態様の吸収体の製造方法によれば、比較的簡単な設備で堆積物42の離型性を高め、他の搬送手段への転写性を向上することができるので、製造装置の大型化、複雑化を招かず、比較的低廉な製造コストで、厚みや高さ、坪量等が部分的に異なる吸収体を容易に製造することができる。
【0044】
凹部画成部材35,36を回転ドラム3の幅方向Yの外方に移動させて、両部材35,36間に位置する凹部30の幅を該凹部30内の堆積物42の幅よりも広くする場合、前述した作用効果をより確実に奏させるようにする観点から、両部材35,36の幅方向Yの外方への移動量は、それぞれ、堆積物42の幅方向Yの長さ〔堆積物42における該長さが最大である部分の長さ(堆積物42の最大幅)〕に対し、3%以上とすることが好ましい。
【0045】
ところで、前述した第1実施態様における凹部画成部材35,36の移動パターンは、堆積物42の転写前に回転ドラム3の幅方向Yの外方に移動するものであったが、第1発明においては、他の移動パターンを採ることもできる。具体的には、回転ドラム3の凹部30内に堆積物42を形成した後で且つ該堆積物42を他の搬送手段(バキュームコンベア7)上に転写させる前に、凹部画成部材35,36を回転ドラム3の幅方向Yの内方に移動させて凹部30の幅を狭くすることにより、凹部30内の堆積物42を両部材35,36で幅方向Yに圧縮し、更に、両部材35,36を幅方向Yの外方に移動させて凹部30の幅を広くしても良い(第2実施態様)。
【0046】
即ち、第2実施態様の製造方法では、前記ストッパー付設領域において、堆積物42の転写前に、凹部画成部材35,36を、図2に示す如き、隔壁部材37から離れる方向に付勢された状態から更に回転ドラム3の幅方向Yの内方に移動させて、両部材35,36で堆積物42を幅方向Yに一度圧縮して堆積物42を幅狭に成形した後、両部材35,36の前記ストッパー付設領域から前記ストッパー非付設領域への搬送により、両部材35,36を幅方向Yの外方に移動させて図5に示す如き開放状態とし、その開放状態を維持させたまま所定の転写位置P(図1参照)で堆積物42を凹部30から離型し、バキュームコンベア7上に転写させる。
【0047】
第2実施態様の製造方法において、図2に示す如き付勢された状態の両部材35,36を更に幅方向Yの内方に移動させるには、凹部画成部材36が、回転ドラム3の回転により前記ストッパー付設領域を搬送中において、伸縮部材38により隔壁部材37から離れる方向に付勢されつつストッパー8(突出部81)の内側面に当接している状態で、幅方向Yの内方に移動可能になされていれば良い。そのためには、回転ドラム3の外周面3Aを幅方向Yに二分する仮想直線を引いた場合に、該仮想直線とストッパー8(突出部81における回転ドラム3の周方向に沿う内側面)との離間距離を、ストッパー8の長さ方向(回転ドラム3の周方向)において長い離間距離から短い離間距離に変化させれば良い。
【0048】
前記離間距離をこのように変化させる方法としては、図8に示すように、凹部画成部材36と当接するストッパー8(突出部81)の内側面に、幅方向Yの内方側に隆起する凸状部82を部分的に設ける方法が挙げられる。図8に示す態様では、ストッパー8における空間C上に位置する部分(ストッパー8の長さ方向の端部8rの近傍)の内側面の少なくとも一部が、その周辺部に比して幅方向Yの内方側に隆起して凸状部82を形成している。凸状部82は、図2に示す如き平面視において、ストッパー8の長さ方向の外方に向かって幅(幅方向Yの長さ)が漸次減少するテーパー形状を有しており、ストッパー8の端部8rと同様の形状を有している。
【0049】
このように、ストッパー8(突出部81)の内側面を、凸状部82とそれ以外の平坦部(凸状部82が設けられていない部分)とを有する凹凸面とした場合、該凹凸面に当接した状態で周方向に搬送されている凹部画成部材36は、凸状部82の基端部(平坦部から凸状部82へと続く部分)を越えて凸状部82の頂部に向かう過程(前記離間距離が長い離間距離から短い離間距離に変化する過程)で、幅方向Yの内方に移動し、凸状部82の頂部を越えて平坦部に向かう過程(前記離間距離が短い離間距離から長い離間距離に変化する過程)で、幅方向Yの外方に移動する。第2実施態様の製造方法によれば、凹部30内の堆積物42をバキュームコンベア7上に転写する前に、凹部画成部材35,36で該堆積物42を幅方向Yに圧縮するため、斯かる圧縮工程の無い第1実施態様の製造方法に比して、堆積物42の凹部30からの離型がよりスムーズになされる。
【0050】
堆積物42の転写前の凹部画成部材35,36による前記圧縮工程に起因する作用効果をより確実に奏させるようにする観点から、両部材35,36の幅方向Yの内方への移動量は、それぞれ、圧縮前の堆積物42の幅方向Yの長さ〔堆積物42における該長さが最大である部分の長さ(堆積物42の最大幅)〕に対し、3%以上10%以下とすることが好ましい。
【0051】
第1発明は前記実施態様に制限されない。例えば、前記実施態様では、凹部画成部材35,36の幅(幅方向Yの長さ)は、それぞれ、図7に示すように、該部材35,36の厚み方向(回転ドラム3の半径方向Z)において一定であったが、図9に示すように、厚み方向において異なっていても良い。図9に示す凹部画成部材35A,36Aは、それぞれ、図9に示す如き回転ドラム3の幅方向Yに沿う断面視において、回転ドラム3の外周面3Aから離れるに従って幅が増加するテーパー形状を有している。
【0052】
また、第1発明において、前記実施態様では、ストッパー8は、回転ドラム3の幅方向Yの一端側(凹部画成部材36側)にのみ設けられており、他端側(凹部画成部材35側)には設けられていなかったが、一端側に加えて他端側にもストッパー8を設けることができる。その場合、凹部画成部材35も、凹部画成部材36と同様に、伸縮部材38とストッパー8とによって回転ドラム3の外周面3A上を幅方向Yに移動することが可能となるので、前述した凹部画成部材の連動機構(ワイヤー80及びこれに固定されたフック部材85,86等)は無くても良い。
【0053】
また、第1発明において、前記実施態様では、凹部画成部材35,36の揺動機構は、両部材35,36を回転ドラム3の幅方向Yの外方に向けて付勢する付勢手段としての伸縮部材38と、両部材35,36の幅方向Yの外方への移動を妨げるストッパー8とを含んで構成されていたが、第1発明における凹部画成部材の揺動機構は、これに限定されず、例えば、付勢手段に代えてエアシリンダーや油圧シリンダーを用いたものでも良い。また、伸縮部材38としては、前記実施態様の如きコイルスプリングに限定されず、例えば板バネを用いることもできる。
【0054】
次に、第2発明について説明する。第2発明については、前述した第1発明と異なる構成部分を主として説明し、同様の構成部分は同一の符号を付して説明を省略する。特に説明しない構成部分は、第1発明についての説明が適宜適用される。
【0055】
第2発明の一実施態様である吸収体の製造装置1Aは、図10及び図11に示すように、外周面2Aに凹部20を有する回転ドラム2を備え、空気流に乗せて供給した吸収体の原料41(解繊パルプ等の繊維材料や吸水性ポリマー等)を、凹部20の底面20Aに吸引して堆積させた後、その堆積物を底面20Aから離脱させるように構成されているもので、回転ドラム2に加えて更に、ダクト4と、回転ドラム2の斜め下方に配置され、矢印R2方向に回転駆動されるトランスファーロール5と、トランスファーロール5と回転ドラム2との間を通るように配されたメッシュベルト6と、トランスファーロール5の下方に配されたバキュームコンベア7とを備えている。本実施態様においては、凹部20は、回転ドラム2の周方向の全長に亘って連続しており、その数は1つである。
【0056】
回転ドラム2は、図10に示すように、回転ドラム2の外周面2Aを形成し且つ矢印R1方向に回転する外周部21と、外周部21の内側に位置し回転しない非回転部27とを有している。外周部21は、円筒状をなし、モータ等の原動機からの動力を受けて水平軸回りを回転する。非回転部27は、内部に仕切られた空間E,F及びGを有し、また、外周部21を回転可能に支持している。回転ドラム2には、吸気ファン等の公知の排気装置(図示せず)が接続されており、該排気装置を作動させることにより、空間E及びF内をそれぞれ負圧に維持可能である。凹部20が負圧に維持された空間E及びF上を通過している間、凹部20の底面20Aを構成する後述する開孔部材21の多数の細孔が吸引孔として機能する。また、回転ドラム2には、装置外の空気を取り込み可能な配管(図示せず)又は空間G内を陽圧に維持するブロワーが接続されている。
【0057】
図11に示すように、回転ドラム2の外周部21における幅方向Yの中央部は、凹部20の底面20Aを形成する開孔部材21から構成されている。凹部20の底面20Aは、回転ドラム2の外周面2Aの一部である。開孔部材21は、多数の細孔を有していて部材21全体として通気性を有し、空気流に乗せて供給された吸収体の原料41を透過させずに空気のみを透過させ得るものである。凹部20の底面20A(開孔部材21)の平面視形状は、製造する吸収体(堆積物)の平面視形状に対応しており、本実施態様においては、矩形形状である。ここで、「平面視」とは、対象物(凹部20等)を、回転ドラム2の外周面2Aの法線方向(回転ドラム2の回転軸方向と直交する方向)の外方から見た場合を意味する。回転ドラム2の外周部21は、図11に示すように、一対の環状体23,23及び環状体23,23間に架け渡して回転ドラム2の周方向に間欠的に固定された複数本の間欠支持体24を備えた円筒状の通気性支持構造体を備えており、開孔部材21は、該通気性支持構造体に固定支持されて円筒状の形態を維持している。
【0058】
回転ドラム2の凹部20は、図11に示すように、回転ドラム2の外周面2A上に該回転ドラム2の周方向(回転方向R1)に沿って設けられた複数の凹部画成部材25,25間に位置している。凹部画成部材25は、回転ドラム2の幅方向Yに、相互に離間させて一対設けられており、また、そのような凹部画成部材25が、図10に示すように、回転ドラム2の周方向に沿って複数(図示例では5個)設けられている。周方向に隣接する凹部画成部材25どうしは接触又は近接している。
【0059】
凹部画成部材25は、回転ドラム2と一体となって該回転ドラム2の回転軸周りを周回するようになされており、また、周回しながら、回転ドラム2の幅方向Yに移動可能になされている。より具体的には、凹部画成部材25は、断面円弧状の内面及び外面を有しており、図示しない支持機構により、その内面側が、開孔部材21及び一対の環状体23の外周面からなる円筒面に接触した状態で、回転ドラム2の幅方向Yに移動可能なように支持されている。そして、そのように支持された状態の凹部画成部材25が、該凹部画成部材25の外側に配置された溝付き板28aのカム溝28bと、カム溝28b内に挿入可能に該凹部画成部材25の外面に設けられた突起26との相互作用により、回転ドラム2の幅方向Yに移動するようになされている。
【0060】
凹部画成部材25を回転ドラム2の幅方向Yに移動可能に支持する支持機構としては、目的を達成し得る限り任意の構成のものを用いることができるが、例えば、凹部画成部材25及び前記の通気性支持構造体の一方に幅方向Yに延びるガイドレールを設け、他方に該ガイドレールに係合しつつ該ガイドレール沿って移動する係合部を設けたものや、凹部画成部材25及び前記の通気性支持構造体の一方に幅方向Yに延びるガイド棒を設け、他方に該ガイド棒を挿通するガイド孔を設けたもの等が挙げられる。このようなガイド機構によって、凹部画成部材25は、環状体23に連結され且つ環状体23に対して幅方向Yに移動自在となっている。
【0061】
製造装置1Aにおいては、複数の凹部画成部材25それぞれは、回転ドラム2の回転に伴い所定のパターンで、回転ドラム2の幅方向Yに揺動するようになされている。以下では、凹部画成部材25を幅方向Yに揺動させるための揺動機構(カム機構)について説明する。製造装置1Aにおいては、後述するように、回転ドラム2の外周面2Aの近傍に、板状部材の内面(外周面2Aとの対向面)に特定形状のカム溝28bが設けられた溝付き板28a(原動節)を、外周面2Aに対向配置し、凹部画成部材25(従動節)とカム溝28bとを、凹部画成部材25の外面(外周面2Aとの対向面とは反対側の面)に設けられた突起26で連結して正面カム機構を構成している。
【0062】
図10に示すように、溝付き板28aは、回転ドラム2の上側における凹部画成部材25の外側(P1位置)と、回転ドラム2の下側における凹部画成部材25の外側(P2位置)とに設けられている。P1位置及びP2位置のそれぞれを移動開始位置として、溝付き板28aは、回転ドラム2の幅方向Yの左右両側に設けられている。P1位置は、ダクト4における回転方向R1の下流側の端部とトランスファーロール5(他の搬送手段)との間(空間F)に存し、P2位置は、回転ドラム2の凹部20からトランスファーロール5への堆積物43の転写位置Pより回転方向R1の下流側(空間G)に存している。
【0063】
図11に示すように、溝付き板28aは、不動支持体28の一端部に設けられている。不動支持体28は、回転ドラム2の外周部21が回転しても回転せず、不動支持体28の他端側は、回転ドラム2の非回転部27の一部を構成する積繊ブラケット27aに固定されている。尚、溝付き板28aは、不動支持体28の一端部に設けるのではなく、ダクト4の外面に一端が固定され他端は固定されていない平板部材としても良い。溝付き板28aの長さ(回転ドラム2の周方向の長さ)は、凹部画成部材25の長さ(回転ドラム2の周方向の長さ)と同等かやや短いことが好ましい。
【0064】
溝付き板28aの内面(回転ドラム2の外周面2Aとの対向面)には、図12に示す形態のカム溝28bが形成されている。図12(a)は、P1位置における溝付き板28aの形状を示し、図12(b)は、P2位置における溝付き板28aの形状を示す。図12(a)及び図12(b)に示すように、P1,P2の何れの位置においても、一対の溝付き板28a,28aは、回転ドラム2の幅方向Yと直交する凹部20の底面20Aの中心線CL(底面20Aを幅方向Yに二分する直線)に対して略対称に配置されている。溝付き板28aには、カム溝28bが形成されている。一対の溝付き板28a,28aそれぞれに形成されたカム溝28b,28bは、中心線CLに対して略対称な形状をしている。カム溝28bは、溝付き板28aの回転方向R1(回転ドラム2の周方向)における一端から他端に亘って帯状に形成されている。P1位置のカム溝28bは、図12(a)に示すように、回転方向R1に向かって幅方向Yの外方に傾斜した傾斜部28b’を有し、P2位置のカム溝28bは、図12(b)に示すように、回転方向R1に向かって幅方向Yの内方に傾斜した傾斜部28b”を有する。傾斜部28b’及び傾斜部28b”以外の箇所においてカム溝28bは回転方向R1に平行である。
【0065】
他方、凹部画成部材25の外面(回転ドラム2の外周面2Aとの対向面とは反対側の面)には、カム溝28b内に挿入される突起26が、設けられている。図示例においては、突起26は、各凹部画成部材25の進行方向(回転方向R1)の前端寄りの位置に設けられている。そして、回転ドラム2の外周部21が回転して、凹部画成部材25が、不動支持体28を設けた位置P1に到達すると、図13に示すように、凹部画成部材25の進行方向の前端側から突起26が溝付き板28aのカム溝28b内に入り、カム溝28bと突起26との相互作用により、凹部画成部材25が、カム溝28bの形状に応じた方向に移動する。図13の中央に示す上下一対の凹部画成部材25,25は、カム溝28bと突起26との相互作用により、両者間の間隔が拡大する途中の状態である。
【0066】
トランスファーロール5(他の搬送手段)は、通気性を有する円筒状の外周部を有しており、モータ等の原動機からの動力を受けて、その外周部が水平軸回りを回転する。トランスファーロール5の内側(回転軸側)の非回転部分には、内部を減圧可能な空間Hが形成されている。空間Hには、吸気ファン等の公知の排気装置(図示せず)が接続されており、該排気装置を作動させることにより、空間H内を負圧に維持可能である。
【0067】
メッシュベルト6は、網目を有する帯状の通気性ベルトが無端状に連結されたものであり、複数のフリーロール61及びトランスファーロール5に案内されて所定の経路を連続的に移動する。メッシュベルト6は、トランスファーロール5の回転によって駆動される。メッシュベルト6は、図10に示すように、トランスファーロール5の外周面に沿った状態で回転ドラム2とトランスファーロール5との間を通過した後、トランスファーロール5から離れてバキュームコンベア7に沿って搬送された後、再びトランスファーロール5の外周面上に戻るように配されている。
【0068】
次に、前述した吸収体の製造装置1Aを用いて吸収体を連続的に製造する方法、即ち、本発明の吸収体の製造方法の第3実施態様について説明する。第3実施態様の製造方法は、回転ドラム2の周方向に連続して延びる1つの凹部20に、原料41を堆積させて連続帯状の堆積物43を形成し、堆積物43をトランスファーロール5(他の搬送手段)上に転写させる工程を具備している。第3実施態様の製造方法の主たる特長の1つは、凹部画成部材25を回転ドラム2の幅方向Yに移動可能に設け、凹部20内に堆積物43を形成した後で且つ該堆積物43をトランスファーロール5上に転写させる前に、凹部画成部材25を幅方向Yに移動させて凹部20の幅(幅方向Yの長さ)を変化させる点にある。
【0069】
第3実施態様の製造方法の実施に先立ち、先ず、回転ドラム2内の空間E及びF内、トランスファーロール5内の空間H内を、回転ドラム2に接続された排気装置を作動させて負圧にする。空間E内を負圧にすることにより、ダクト4内に、吸収体の原料41を回転ドラム2の外周面2Aに搬送する空気流(バキュームエアー)が生じる。また、回転ドラム2を方向R1に、トランスファーロール5を方向R2にそれぞれ回転させ、バキュームコンベア7を作動させる。そして、ダクト4の他端部側(回転ドラム2の外周面2Aを覆う一端部側とは反対側)に配された繊維材料導入装置(図示せず)を作動させ、必要に応じ、ポリマー導入口40から吸水性ポリマーの粒子を導入して、ダクト4内に原料41を供給すると、原料41はダクト4内を流れる空気流に乗り、飛散状態となって回転ドラム2の外周面2Aに向けて供給される。
【0070】
回転ドラム2の幅方向Yに相互に離間させて設けられた一対の凹部画成部材25,25がダクト4に覆われている空間E上を搬送されている間に、両部材25,25間に位置する凹部20の底面20A上には、原料41が吸引されて堆積する。第3実施態様においては、両部材25,25が空間E上を搬送中は、図13の一番右の凹部画成部材25,25のように、両部材25,25間に位置する凹部20の幅W(幅方向Yの長さ)は、相対的に狭い幅W1となっている。空間E上における回転方向R1の下流側においては、凹部20内が原料41で略満たされた状態となり、凹部20内に連続帯状の堆積物43が形成される。
【0071】
こうして、相対的に狭い幅W1を有する凹部20内に形成された堆積物43は、回転ドラム2の方向R1への更なる回転により、空間F上に搬送される。そして、凹部20を挟んで左右両側に位置する一対の凹部画成部材25,25が、溝付き板28aを設けた位置P1に到達すると、凹部画成部材25に設けた突起26が進行方向(回転方向R1)の前端側からカム溝28b内に入り、図13の中央の凹部画成部材25,25のように、傾斜部28b’(図12(a)参照)を有するカム溝28bと突起26との相互作用により、凹部画成部材25,25間に位置する凹部20の幅Wは、相対的に狭い幅W1から相対的に広い幅W2へと漸次拡大する。そして、凹部画成部材25が位置P1に設けた溝付き板28aを通過した時点(転写位置Pの近傍で転写位置Pより回転方向R1の上流位置に到達した時点)では、図13の左の凹部画成部材25,25のように、凹部画成部材25,25間に位置する凹部20の幅は、W1より大のW2となっており、即ち、凹部20内の堆積物43の幅よりも広くなっている。
【0072】
そして、相対的に広い幅W2の凹部20を形成する一対の凹部画成部材25,25が、回転ドラム2の回転により空間G上の転写位置Pに到達すると、両部材25,25間の堆積物43は、該凹部20から容易に離型し、メッシュベルト6が巻き掛けられたトランスファーロール5(他の搬送手段)上へ転写される。こうして、トランスファーロール5上に転写された堆積物43は、トランスファーロール5上に吸引保持されたまま、トランスファーロール5のR2方向への回転により、バキュームコンベア7上に搬送・転写される。第3実施態様においては、図10に示すように、予めバキュームコンベア7の通気性ベルト73上に、コアラップシート44が導入されており、凹部20から離型した連続帯状の堆積物43は、コアラップシート44上に転写される。その後、コアラップシート44の搬送方向MDに沿う両側部が折り返され、堆積物43の上下両面がコアラップシート44で被覆され、更に所定の間隔で切断されて、目的とする吸収体(吸収性物品1枚分の寸法に切断された吸収体)が得られる。
【0073】
一方、一対の凹部画成部材25,25は、転写位置Pに対応する空間G上での堆積物43の離型完了後、回転ドラム2の方向R1への更なる回転により、溝付き板28aを設けた位置P2に搬送される。凹部画成部材25が位置P2に到達すると、突起26が進行方向(回転方向R1)の前端側からカム溝28b内に入り、傾斜部28b”(図12(b)参照)を有するカム溝28bと突起26との相互作用により、凹部画成部材25,25間に位置する凹部20の幅Wは、相対的に広い幅W2から相対的に狭い幅W1へと漸次縮小する。そして、凹部画成部材25が位置P2に設けた溝付き板28aを通過した時点(ダクト4の近傍でダクト4より回転方向R1の上流位置に到達した時点)では、凹部画成部材25,25間に位置する凹部20の幅は、W2より小のW1となっている。W1は、P1位置の溝付き板28aのW1と同じである。
【0074】
第3実施態様の吸収体の製造方法においては、前述したように、回転ドラム2の凹部20内に堆積物43を形成した後で且つ該堆積物43を他の搬送手段(トランスファーロール5)上に転写させる前に、一対の凹部画成部材25,25を回転ドラム2の幅方向Yの外方に移動させて、両部材25,25間に位置する凹部20の幅を、狭い幅から広い幅に変化させており(堆積物43の幅よりも広くしており)、それによって、所定の転写位置Pにおいて、堆積物42は、両部材25,25によって挟持されておらず、回転ドラム2の外周面2A(凹部20の底面20A)に対し実質的に固定されていない状態となっている。そのため、両部材25,25間に位置する相対的に広い幅の凹部20内の堆積物43は、トランスファーロール5の吸引により凹部20から容易に離型し、メッシュベルト6上に転写される。このように、第3実施態様の吸収体の製造方法によれば、凹部20からの堆積物43の離型性に優れ、連続帯状の堆積物43を他の搬送手段上にスムーズに転写させることができ、前述した第1実施態様の吸収体の製造方法と同様の効果が奏される。
【0075】
第2発明は前記実施態様に制限されない。例えば、カム溝28bを有する溝付き板28aをP1位置及びP2位置だけでなく、回転ドラム2の周方向の全長に亘って設けることにより、カム溝28bを回転ドラム2の全周に形成しても良い。その場合、一対の凹部画成部材25,25の位置を変更しない箇所では、カム溝28bは回転ドラム2の幅方向Yに一定の位置に設けられている。また、回転ドラム2の幅方向Yに離間した一対の凹部画成部材25,25は、一方のみが可動であっても良い。また、回転ドラム2の周方向に配置する凹部画成部材25の個数は、図示例の5個に代えて、1〜4個、あるいは6〜10個等とすることもできる。
【0076】
また、第2発明において、溝付き板28aに設けるカム溝28bの平面視形状は、凹部画成部材25の揺動パターンに応じて適宜に決定することができる。また、カム溝28bを、溝付き板28aに設ける代わりに、凹部画成部材25に設け、突起26を、凹部画成部材25に設ける代わりに、溝付き板28aと同位置の板部材に設けても良い。
【0077】
以上、本発明(第1発明、第2発明)の吸収体の製造方法及び製造装置について説明したが、本発明は、前述した実施態様に制限されず、それぞれ適宜変更可能である。前述した一の実施態様における説明省略部分及び一の実施態様のみが有する要件は、それぞれ他の実施態様に適宜適用することができ、また、各実施態様における要件は、適宜、実施態様間で相互に置換可能である。
【0078】
前述した吸収体の製造装置1において、凹部画成部材35,36は、凹部30内に堆積物42を形成した後で且つ堆積物42を他の搬送手段(バキュームコンベア7)上に転写させる前に、凹部30の幅を変化させ得るようになされていたが、凹部30の底面30Aに原料を吸引して堆積させている間(堆積物42の形成途中)に、凹部30の幅を変化させ得るようになされていても良い。
【0079】
また、前述した吸収体の製造装置1において、ワイヤー80及びこれに固定されたフック部材85,86を含んで構成された、凹部画成部材35,36の連動機構は、凹部30の底面30Aと同一平面上に、両部材35,36と回転ドラム3の径方向において同位置に設けられていたが、両部材35,36よりも回転ドラム3の内方側(例えば、隔壁部材37や伸縮部材38よりもドラム内方側)に設けても良い。前記連動機構の配置をそのようにすることで、回転ドラム3の外周面3Aにおける原料堆積可能領域の面積をより大きくすることが可能となる。尚、図2や図5は、説明容易の観点から、前記連動機構を実際よりも大きめに図示して強調したものであり、前記連動機構の実際の寸法とは無関係である。尤も、外周面3Aにおける原料堆積可能領域の面積は、特に制限されず大きくても小さくても良く、任意に設定可能である。
【0080】
また、第1発明の第2実施態様(図8参照)において、凹部画成部材35,36を回転ドラム3の幅方向Yの内方に移動させて転写前の堆積物42を両部材35,36で圧縮した後は、両部材35,36を幅方向Yの外方へ移動させて、両部材35,36で規定される凹部30の幅(幅方向Yの長さ)を堆積物42の圧縮時よりも広くすれば良く、両部材35,36による堆積物42の圧縮後で転写前の凹部30の幅は、堆積物42の形成時(両部材35,36による堆積物42の圧縮前)における凹部30の幅と同じにしても良く、あるいは図5に示すように、堆積物42の形成時における凹部30の幅よりも長くしても良い。
【0081】
本発明で製造する吸収体は、吸収性物品の吸収体として好ましく用いられる。吸収性物品は、主として尿や経血等の身体から排泄される体液を吸収保持するために用いられるものである。吸収性物品には、例えば使い捨ておむつ、生理用ナプキン、失禁パッド、パンティライナー(おりものシート)等が包含されるが、これらに限定されるものではなく、人体から排出される液の吸収に用いられる物品を広く包含する。
【0082】
吸収性物品は、典型的には、表面シート、裏面シート、及び両シート間に介在配置された液保持性の吸収体を具備している。表面シートは、吸収体の表面を被覆するコアラップシートが兼ねていても良い。裏面シートは水蒸気透過性を有していても良い。吸収性物品は更に、該吸収性物品の具体的な用途に応じた各種部材を具備していても良い。そのような部材は当業者に公知である。例えば吸収性物品を使い捨ておむつや生理用ナプキンに適用する場合には、吸収体の起立した両側部の更に外側に、一対又は二対以上の立体ガードを配置することができる。
【符号の説明】
【0083】
1,1A 吸収体の製造装置
2,3 回転ドラム
2A,3A 回転ドラムの外周面
20,30 回転ドラムの凹部
20A,30A 凹部の底面
25,35,36,35A,36A 凹部画成部材
26 突起
28 不動支持体
28a 溝付き板
28b カム溝
37 隔壁部材
38 伸縮部材
4 ダクト
41 吸収体の原料
42,43 堆積物
5 トランスファーロール(他の搬送手段)
7 バキュームコンベア(他の搬送手段)
8 ストッパー
80 ワイヤー
85,86 フック部材
87,88 ワイヤー張設具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転ドラムの外周面上に該回転ドラムの周方向に沿って設けられた複数の凹部画成部材間に位置する凹部に、原料を堆積させて堆積物を形成し、該堆積物を他の搬送手段上に転写させる工程を具備する吸収体の製造方法であって、
前記凹部画成部材を前記回転ドラムの幅方向に移動可能に設け、前記凹部内に前記堆積物を形成した後で且つ該堆積物を前記他の搬送手段上に転写させる前に、該凹部画成部材を該幅方向に移動させて該凹部の幅を変化させる、吸収体の製造方法。
【請求項2】
前記凹部内に前記堆積物を形成した後で且つ該堆積物を前記他の搬送手段上に転写させる前に、前記凹部画成部材を前記回転ドラムの幅方向の外方に移動させて前記凹部の幅を該堆積物の幅よりも広くする、請求項1記載の吸収体の製造方法。
【請求項3】
前記凹部内に前記堆積物を形成した後で且つ該堆積物を前記他の搬送手段上に転写させる前に、前記凹部画成部材を前記回転ドラムの幅方向の内方に移動させて前記凹部の幅を狭くすることにより、該凹部内の該堆積物を該凹部画成部材で該幅方向に圧縮し、更に、該凹部画成部材を該幅方向の外方に移動させて該凹部の幅を広くする、請求項1記載の吸収体の製造方法。
【請求項4】
前記回転ドラムとして、内部に相互に独立した複数の空間を周方向に有し且つ前記凹部の底面が通気性を有する回転ドラムを用い、複数の該空間のうちの少なくとも一部を負圧に維持し、複数の前記凹部画成部材及びその間に位置する該凹部を、複数の該空間上を周方向に搬送可能に設け、
前記凹部が負圧に維持された前記空間上に位置し且つ該凹部内に前記堆積物が収容されているときに、前記凹部画成部材を前記回転ドラムの幅方向に移動させて該凹部の幅を変化させる請求項1〜3の何れか一項に記載の吸収体の製造方法。
【請求項5】
前記回転ドラムの複数の前記空間は、負圧の程度が相対的に高い高負圧空間と負圧の程度が相対的に低い低負圧空間とを含んでおり、
前記凹部が前記高負圧空間上に位置しているときに、その負圧による吸引力によって前記原料を前記凹部の底面に吸引堆積させて前記堆積物を形成し、前記凹部が前記低負圧空間上に位置し且つ該凹部内に前記堆積物が収容されているときに、前記凹部画成部材を前記回転ドラムの幅方向に移動させて該凹部の幅を変化させる請求項4記載の吸収体の製造方法。
【請求項6】
外周面に凹部を有する回転ドラムを備え、空気流に乗せて供給した原料を、該凹部の底面に吸引して堆積させた後、その堆積物を該底面から離脱させるように構成されている吸収体の製造装置であって、
前記凹部は、前記回転ドラムの外周面上に該回転ドラムの周方向に沿って設けられた複数の凹部画成部材間に位置し、
前記凹部画成部材は、前記回転ドラムの外周面上を該回転ドラムの幅方向に移動可能に設けられており、該凹部画成部材の該幅方向の移動により、前記凹部の幅を変化させ得るようになされており、
前記凹部は、前記回転ドラムの周方向に所定間隔を置いて複数設けられており、該回転ドラムの外周面上における、複数の前記凹部画成部材間の該所定間隔に対応する部位に、複数の該凹部を該周方向に分け隔てる隔壁部材が設けられており、
前記隔壁部材と前記凹部画成部材との間に伸縮部材が介在され、該伸縮部材の伸縮方向は、前記回転ドラムの幅方向に一致しており、
前記回転ドラムは、前記凹部画成部材より該回転ドラムの幅方向の外方に位置し且つ該凹部画成部材に当接して該凹部画成部材の該幅方向の外方への移動を妨げるストッパーが設けられたストッパー付設領域と、該ストッパーが設けられていないストッパー非付設領域とを、該回転ドラムの周方向に有しており、
前記回転ドラムの回転により、前記凹部画成部材が該回転ドラムの周方向に搬送されている場合において、該凹部画成部材は、前記ストッパー付設領域を搬送中は、前記隔壁部材と前記ストッパーとの間において前記伸縮部材により該隔壁部材から離れる方向に付勢されており、該ストッパー付設領域を通過して前記ストッパー非付設領域に搬送されると、該伸縮部材の伸長により、該回転ドラムの幅方向の外方に移動するようになされている、吸収体の製造装置。
【請求項7】
前記凹部画成部材の前記幅方向の移動は、前記凹部内に前記原料が収容されている状態で実施可能になされている、請求項6記載の吸収体の製造装置。
【請求項8】
前記凹部画成部材は、前記凹部内に前記堆積物を形成した後で且つ該堆積物を前記他の搬送手段上に転写させる前に、該凹部の幅を変化させ得るようになされている、請求項7記載の吸収体の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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