説明

吸収体の製造方法

【課題】厚み方向の全域に亘って原料が存在していない空間部を有する吸収体を効率良く製造し得る吸収体の製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の吸収体の製造方法は、開口部6が形成された通気性シート5を、外面に凹部15が形成され且つ凹部15の底面15aで被搬送物を吸引保持しつつ搬送する搬送手段11の底面15aに密着させた状態で、空気中に飛散させた吸収体の原料を底面15a上に吸引して凹部15内に堆積体30を形成し、通気性シート5上に堆積体30が積層した積層体35を得る堆積工程と、積層体35を凹部15の底面15aから剥離する剥離工程とを具備する。前記堆積工程において凹部15の底面15aにおける開口部6に対応する部位に堆積した前記原料が、前記剥離工程後に該部位に残存する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨ておむつや生理用ナプキン、失禁パッド等の吸収性物品の製造においては、空気中に飛散させた吸収体の原料(解繊パルプ等の繊維材料、吸水性ポリマーの粒子等)を、回転ドラム等の吸引装置の外面に形成された凹部に吸引して堆積させ、該凹部内に堆積した堆積体を、そのまま、あるいは透水性のシート材(台紙)で被覆して吸収体として用いることが行われている。
【0003】
吸収体の製造に関し、特許文献1には、吸収体の原料を、凹部を周面に形成した回転ドラムの該周面に巻き付けた不織布上に堆積させた後、該原料により形成される吸収体を該不織布と共に台紙上に受け渡すようにした吸収性物品の製造装置が記載されている。特許文献1に記載の吸収性物品の製造装置によれば、回転ドラムの周面に巻き付けた不織布中に吸収体が食い込むことにより、あたかも一枚の紙状の如き吸収体を形成することが可能となるため、その後の吸収体の台紙上への受け渡しが安定し、吸収体がバラバラにならずに所定の凹部の形状を保持した状態で台紙上に受け渡すことができるとされている。
【0004】
また、吸収体の原料が堆積していない非積繊部(厚み方向の全域に亘って原料が存在していない空間部)を有する吸収体の製造に関し、例えば特許文献2には、長手方向中央部の両側縁部に、幅方向内方に括れた括れ部(非積繊部)を有する吸収体の製造方法として、括れ部を有しない長尺状の堆積物を形成し、該堆積物における括れ部の形成予定位置を、括れ部に対応した形状を有する吸引口を周面に備えた吸引ドラムの該吸引口により吸引除去する方法が記載されている。また特許文献3には、回転ドラムの凹部の底面を形成する底面板に、非積繊部を形成するための凸部を突出形成することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−137286号公報
【特許文献2】特開2006−340940号公報
【特許文献3】特開2007−54219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
厚み方向の全域に亘って原料が存在していない空間部を有する吸収体を製造する場合、特許文献2に記載の製造方法では、空間部の平面視形状に合わせた吸引口を備えた吸引ドラムを用いるため、空間部の位置や形状を変更する場合には、吸引口を含めた吸引ドラムの構成を変更する必要があり、そのため、製造コストの高騰や吸引ドラムの交換作業の煩雑化を招くおそれがある。また、特許文献3に記載の製造方法では、空間部に対応した凸部が突出形成された底面板を用いるため、空間部の位置や形状を変更する場合には、底面板を変更する必要があり、特許文献2に記載の製造方法と同様の不都合が懸念される。前記空間部を有する吸収体を効率良く製造する方法は未だ提供されていない。
【0007】
従って、本発明は、厚み方向の全域に亘って原料が存在していない空間部を有する吸収体を効率良く製造し得る吸収体の製造方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、厚み方向の全域に亘って原料が存在していない空間部を有する吸収体の製造方法であって、開口部が形成された通気性シートを、被搬送物を保持部で吸引保持しつつ搬送する搬送手段の該保持部に密着させた状態で、空気中に飛散させた前記原料を該保持部上に吸引して堆積体を形成し、該通気性シート上に該堆積体が積層した積層体を得る堆積工程と、前記積層体を前記保持部から剥離する剥離工程とを具備し、前記堆積工程において前記保持部における前記開口部に対応する部位に堆積した前記原料が、前記剥離工程後に該部位に残存する、吸収体の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の吸収体の製造方法によれば、厚み方向の全域に亘って原料が存在していない空間部を有する吸収体を効率良く製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の製造方法により製造される吸収体の一例を模式的に示す図で、図1(a)は平面図、図1(b)は図1(a)のI−I線断面図、図1(c)は空間部に沿って屈曲した状態を示す断面図である。
【図2】図2は、本発明の吸収体の製造方法の実施に用い得る吸収体の製造装置の一例を示す模式断面図であり、(a)〜(d)は、それぞれ、図2中の符合(a)〜(d)で示す位置における通気性シートや堆積体の模式的な上面図である。
【図3】図3は、図2に示す製造装置における回転ドラム(吸引装置)の外周面及びその近傍のドラム幅方向(回転軸方向)に沿う断面を示す断面図である。
【図4】図4は、図2に示す製造装置におけるガイドロールの模式断面図である。
【図5】図5は、本発明の製造方法により製造される吸収体の他の例を模式的に示す図で、図5(a)は平面図、図5(b)は図5(a)のII−II線断面図である。
【図6】図6は、本発明の吸収体の製造方法の実施に用い得る吸収体の製造装置の他の例を示す模式断面図である。
【図7】図7は、本発明の製造方法により製造される吸収体の更に他の例の幅方向に沿う断面図(図1(b)相当図)である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の吸収体の製造方法を、その好ましい一実施態様(第1実施態様)に基づき図面を参照しながら説明する。本発明で製造する吸収体は、吸収性物品の吸収体として好ましく用いられる。吸収性物品は、主として尿や経血等の身体から排泄される体液を吸収保持するために用いられるものである。吸収性物品には、例えば使い捨ておむつ、生理用ナプキン、失禁パッド、パンティライナー等が包含されるが、これらに限定されるものではなく、人体から排出される液の吸収に用いられる物品を広く包含する。
【0012】
吸収性物品は、典型的には、表面シート、裏面シート及び両シート間に介在配置された液保持性の吸収体を具備している。表面シート及び裏面シートとしては、当該技術分野において通常用いられている材料を特に制限なく用いることができる。例えば、表面シートとしては、親水化処理が施された各種不織布や開孔フィルムを用いることができる。裏面シートとしては、熱可塑性樹脂のフィルムや、該フィルムと不織布とのラミネートを用いることができ、水蒸気透過性を有するものを用いることもできる。
【0013】
第1実施態様の製造方法により製造される吸収体1Aは、図1に示すように、液保持性の吸収性コア2Aが、液透過性の被覆シート3により被覆されて構成されている。吸収性コア2Aは、図1(a)に示すように、平面視して一方向に長い形状(矩形形状)を有し、その周縁から所定距離離間した位置に、厚み方向の全域に亘って原料が存在していない一対の空間部4,4を有している。空間部4は、図1(a)に示すように、平面視して矩形形状を有し、吸収性コア2Aの長手方向Xに沿う両側縁2s,2sそれぞれから長手方向Xと直交する幅方向Yの内方に所定距離離間した位置に形成されている。空間部4の長手方向Xの長さは、吸収性コア2Aの長手方向Xの長さに対して、好ましくは10〜90%、更に好ましくは30〜70%である。また、空間部4の幅方向Yの長さ(幅)は、好ましくは5〜30mm、更に好ましくは10〜20mmである。空間部4の幅方向Yの長さは、吸収性コア2Aの幅方向Yの長さに対して、好ましくは5〜50%、更に好ましくは10〜25%である。
【0014】
吸収性コア2Aは、後述するように、吸収体の原料を堆積して得られる堆積体からなる。吸収体の原料としては、当該技術分野において通常用いられている材料を特に制限なく用いることができ、例えば繊維材料として、解繊パルプ等のパルプ繊維、レーヨン繊維、コットン繊維等のセルロース系繊維の短繊維や、ポリエチレン等の合成繊維の短繊維等が用いられる。これらの繊維材料は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、吸収体の原料として、繊維材料と共に、粒子状又は繊維状の吸水性ポリマーを用いることもでき、更に必要に応じ、消臭剤や抗菌剤等を用いることもできる。
【0015】
被覆シート3は、図1に示すように、吸収性コア2Aの幅方向Yの長さの2倍以上3倍以下の幅を有する1枚のシートであり、吸収性コア2Aの一面及び他面それぞれの全域を被覆している。吸収性コア2Aの一面における幅方向Yの中央部には、被覆シート3の長手方向Xに沿う両側縁部が重ね合わされた重合部31が、吸収性コア2Aの長手方向Xの全長に亘って形成されている。重合部31において、これを構成する被覆シート3の両側縁部どうしは、ホットメルト型接着剤等の公知の接合手段により接合されていても良い。被覆シート3としては、当該技術分野において通常用いられている液透過性の材料を特に制限なく用いることができ、例えば、ティッシュペーパー、スパンボンド不織布、スパンボンド−メルトブローン−スパンボンド不織布、スパンボンド−メルトブローン−メルトブローン−スパンボンド不織布、ニードルパンチ不織布、スパンレース不織布、乾式パルプシート、エアスルー不織布、エアレイドシート、開孔フィルム等を用いることができる。
【0016】
図1(b)に示すように、吸収性コア2Aと被覆シート3との間には通気性シート5が介在配置されている。通気性シート5は、吸収性コア2Aにおける、被覆シート3の重合部31が存する面(重合部配置面)とは反対側の面を直接被覆している。通気性シート5は、図1に示す如き吸収体1Aの平面視において、吸収性コア2Aと同形状で同寸法あるいは吸収性コア2Aよりやや幅広であり、空間部4に対応する部位(平面視して空間部4と重なる部位)に、平面視して空間部4と同形状(矩形形状)で同寸法の開口部6を有している。開口部6は、通気性シート5を厚み方向に貫通しており、厚み方向の全域に亘って通気性シート5の形成材料が存在していない部位である。通気性シート5としては、前述した被覆シート3として使用可能なものを用いることができる。
【0017】
吸収体1Aは、肌対向面を形成する表面シート、非肌対向面を形成する裏面シート及び両シート間に介在配置された吸収体を具備する吸収性物品において、該吸収体として好適に用いられる。その場合、前記重合部配置面が肌対向面(吸収性物品の着用時に着用者の肌側に向けられる面)とされ、該重合部配置面とは反対側の面が非肌対向面〔吸収性物品の着用時に肌側とは反対側(着衣側)に向けられる面〕とされても良く、あるいはこれとは逆に、該重合部配置面が非肌対向面とされ、該重合部配置面とは反対側の面が肌当対向面とされても良い。何れの配置形態にしても、吸収体1Aを具備する吸収性物品によれば、吸収性コア2Aに、厚み方向の全域に亘って吸収体の原料が存在しておらず、尿等の体液の引き込み速度が他の部位に比して大きい空間部4が形成されているため、表面シート上に排泄された体液は、空間部4の作用によって速やかに吸収体1A側に引き込まれ、それによって優れた防漏性、表面ドライ感が得られる。また、吸収体1Aは、図1(c)に示すように、長手方向Xに延びる空間部4を折曲線として、空間部4よりも幅方向Yの外方に位置する両側部が屈曲し易いため、吸収体1Aを具備する吸収性物品は、着用者の肌に追従し易くフィット性に優れる。
【0018】
また、吸収体1Aは、通気性シート5を含んで構成されていることにより、吸収性物品に組み込まれて使用された場合には、該吸収性物品の肌対向面(前記表面シートの肌対向面)のドライ感(表面ドライ感)を向上させ得る。即ち、通気性シート5が非肌対向面側(前記裏面シート側)に位置するように吸収体1Aが吸収性物品に組み込まれた場合、体液は、空間部4の作用によって吸収体1A内に速やかに引き込まれた後、非肌対向面側に配置された通気性シート5によって保持されるため、液戻りが生じ難く、優れた表面ドライ感が得られる。また、通気性シート5が肌対向面側(前記表面シート側)に位置するように吸収体1Aが吸収性物品に組み込まれた場合、体液は、通気性シート5を伝って吸収性コア2Aの肌対向面の全域に拡散し、且つ空間部4を伝って非肌対向面側へ速やかに移行するので、優れた表面ドライ感が得られる。
【0019】
次に、吸収体1Aの製造に用いられる製造装置10Aについて説明する。製造装置10Aは、図2に示すように、円筒状の回転ドラム11と、回転ドラム11の外面(外周面)に吸収体の原料を供給するダクト16とを備え、更に、被覆シート3及び通気性シート5(通気性シート原反5’)それぞれの搬送路を形成する多数のロール並びに被覆シート3の折り返し手段20等を備えている。折り返し手段20としては、吸収体あるいは吸収性物品の製造においてシートの折り返しに従来用いられてきた装置と同様の装置を用いることができ、例えば、折り返しガイドや折り返しバー等が挙げられる。
【0020】
回転ドラム11は、被搬送物を保持部で吸引保持しつつ搬送する搬送手段の一例であり、外面(外周面)に凹部15が形成され且つ凹部15の底面15a(保持部)からの吸引を行うように構成されており、図3に示すように、金属製の剛体からなる中空円筒状のドラム本体12と、ドラム本体12の外面側に重ねて固定された多孔性プレート13と、多孔性プレート13の外面側に重ねて固定されたパターン形成プレート14とを有している。凹部15は、吸収体の原料を堆積させて堆積体30(被搬送物)を形成する部位であり、回転ドラム11の外周面における回転軸方向Y(ドラム幅方向)の中央部に、周方向の全長に亘って連続して形成されている。第1実施態様においては、吸収性コア2Aの幅方向Y(図1参照)と回転ドラム11の回転軸方向Yとが一致しており、従って、吸収性コア2Aの長手方向Xは、回転ドラム11の回転方向R1(図2参照)と一致している。
【0021】
多孔性プレート13は、凹部15の底面15a(保持部)を形成するもので、多数の細孔を有し、空気流に乗せて供給された吸収体の原料を透過させずに空気のみを透過させる。多孔性プレート26としては、金属又は樹脂製のメッシュプレートや、金属又は樹脂製の板にエッチングやパンチングで多数の細孔を形成したもの等が用いられる。
【0022】
パターン形成プレート14は、凹部15の幅(回転軸方向Yの長さ)を規定するもので、凹部15を挟んで回転軸方向Yの両側に一対配されている。また、パターン形成プレート14は、その回転ドラム11の周方向に沿う内側端面が、凹部15の内側面15bを形成しており、凹部15の深さを決定する要素となっている。パターン形成プレート14の取り付け位置(一対のパターン形成プレート14,14の間隔)や厚み(前記内側端面の高さ)は、吸収性コア2A(堆積体30)の幅や原料の堆積量等を考慮して決定される。パターン形成プレート14は、非通気性であり、例えばステンレス板等の金属板からなり、その厚みは例えば2〜12mm程度である。
【0023】
回転ドラム11の回転軸方向Yの一端には、モータ等の原動機からの動力を受けて回転する平面視円形状の回転板(図示せず)が固定されており、回転ドラム11は、この回転板の回転によって回転軸回りを図2中の矢印R1方向に回転する。一方、回転ドラム11の回転軸方向Yの他端には、製造装置10Aの他の構成部材に固定されていて回転しない平面視円形状の固定板(図示せず)が固定されている。この固定板には、回転ドラム11(ドラム本体12)の内部を周方向に複数の領域に仕切るプレートが固定されており、このプレートによって、回転ドラム11の内部には、相互間が仕切られた空間A、B、C及びDが形成されている。つまり、空間A〜Dどうし間は、前記固定板から前記回転板に向かって延びるプレートにより仕切られている。前記回転板に固定されたドラム本体12等が回転しても、前記固定板に固定されたプレートは回転せず、従って、空間A、B、C及びDの位置は変わらない。
【0024】
空間A及びBには、回転ドラム11の外部に設けられた吸気ファン等の吸引力の発生源(図示せず)が接続されており、該発生源を作動させることにより、空間A及びB内を負圧に維持可能である。凹部15が、負圧に維持された空間A及びB上を通過している間、凹部15の底面15aを形成する多孔性プレート13の細孔が吸引孔として機能する。第1実施態様においては、後述する剥離工程をスムーズに実施する観点から、空間Bは空間Aに比して吸引力が小さく設定されている。即ち、回転ドラム11(搬送手段)は、凹部15の底面15a(保持部)からの吸引力が相対的に強い強吸引部と、該吸引力が相対的に弱い弱吸引部とを、堆積体30(被搬送物)の搬送方向(回転ドラム11の回転方向R1)に有し、空間A上の底面15aが該強吸引部、空間B上の底面15aが該弱吸引部として機能する。
【0025】
空間Cは、後述する剥離工程後に、凹部15の底面15a上に残存する不使用原料32(後述する堆積工程において底面15aにおける通気性シート5の開口部6に対応する部位に堆積した吸収体の原料)を、後述する回収手段17に受け渡す際に、回転ドラム11(ドラム本体12)の内部から底面15a(多孔性プレート13)に向かうブロー(空気流)が生じる領域である。また、空間Dは、底面15a(多孔性プレート13)をはじめとする回転ドラム11の構成部材のクリーニング領域であり、該構成部材に残存する吸収体の原料を、回転ドラム11の外周面に近接して設けられた原料受け(図示せず)に受け渡すために、回転ドラム11(ドラム本体12)の内部から底面15a(多孔性プレート13)に向かうブロー(空気流)が生じる領域である。空間C及びDのブローの発生源(図示せず)は、回転ドラム11の外部に設けられており、該ブローの発生源と空間C及びDとはそれぞれ個別のダクトを通じて連通している。尚、回転ドラム11はクリーニング領域を有していなくても良く、その場合、空間Dにブローを発生させる必要はない。
【0026】
ダクト16は、図2に示すように、その一端側が、前記空間A上に位置する回転ドラム1の外周面を覆っており、図示しない他端側には、図示しない吸収体原料導入装置を有している。空間A上に位置する凹部15の底面15aからの吸引により、ダクト16内には、前記吸収体原料導入装置から底面15aに向けて流れる空気流が生じるように構成されている。前記吸収体原料導入装置は、例えば、シート状の木材パルプを粉砕して解繊パルプとし、その解繊パルプ(繊維材料)をダクト16内に送り込む粉砕機を備えている。ダクト16の途中に吸水性ポリマーの粒子を導入する吸水性ポリマー導入部を設けることもできる。
【0027】
回収手段17は、後述する剥離工程後に、凹部15の底面15a上に残存する不使用原料32を吸引して回収し、回収した不使用原料32を前記吸収体原料導入装置に供給できるようになっている。
【0028】
第1実施態様の製造方法においては、開口部が形成されていない通気性シート原反5’に開口部6を形成し、こうして開口部6が形成された通気性シート5を回転ドラム11の外周面上に供給する。斯かる開口部形成工程を実施する手段として、製造装置10Aは、図2に示すように、回転ドラム11よりもシート搬送方向MDの上流側に、カッター刃を有するカッターロールとこれを受けるアンビルロールとからなる開口部形成手段18を備えている。通気性シート原反5’を、開口部形成手段18における前記カッターロールと前記アンビルロールとの間を通過させることにより、所定位置に開口部6が形成された通気性シート5が得られる。通気性シート原反5’から切除された、開口部6と同形状の不要部は、不要部回収装置29によって吸引回収される。
【0029】
後述するように、通気性シート5は、回転ドラム11の空間Aの外周面上(ダクト16に覆われた部分)を搬送中は、凹部15の底面15aに密着した状態とされるが、空間Aを通過して空間Bの外周面上に移行すると、該通気性シート5上に堆積した吸収体の原料(堆積体30)と共に底面15aから剥離され、回転ドラム11から遠ざかる方向に搬送される。第1実施態様の製造方法においては、斯かる通気性シート5の回転ドラム11からの剥離(後述する剥離工程)をスムーズに実施するために、図2及び図4に示すように、回転ドラム11の近傍で凹部15の底面15aと対向する位置に、底面15aに吸引保持されつつ搬送される通気性シート5を底面15aから遠ざかる方向に案内するガイドロール19を配置している。より具体的には、ガイドロール19は、空間B上で、ダクト16の前記一端側におけるシート搬送方向MDの下流側の端部の近傍に配置されている。ガイドロール19は、金属製の剛体からなる中空円筒状のロール本体(図示せず)と、該ロール本体の外面側に重ねて固定され、ガイドロール19の外周面を形成する外周面プレート(図示せず)とを有し、回転ドラム11の回転軸と平行な回転軸回りを矢印R2方向に回転可能になされている。ガイドロール19の回転軸方向(ドラム幅方向)の長さは、回転ドラム11のそれと略同じである。
【0030】
尚、ガイドロール19は、金属製のものに制限されず、他の材料から構成されていても良く、例えばカーボン製のものでも良い。カーボン製のガイドロール19は、金属製のガイドロール19に比して軽く、外周面における他の部材との摩擦が少なく、イナーシャが小さいため、通気性シート5に大きな搬送テンションをかけずにこれを搬送することが可能である。従って、カーボン製のガイドロール19は、通気性シート5が大きな搬送テンションをかけられないものである場合、例えば、伸長性の高いシートや坪量の小さいシートである場合に特に有用である。
【0031】
ガイドロール19は、図4に示すように、その内部にブロー領域19Aが形成されており、このブロー領域19Aにより、ガイドロール19の外周面から凹部15の底面15aに向けて空気流を噴射可能になされている。第1実施態様の製造方法においては、後述するように、堆積工程において底面15aにおける通気性シート5の開口部6に対応する部位に堆積した吸収体の原料(堆積体30中の不使用原料32)が、通気性シート5の底面15aからの剥離(剥離工程)後に該部位に残存するようにし、そうすることによって空間部4を有する吸収体1Aを製造しているところ、ブロー領域19Aは、斯かる剥離工程後の不使用原料32の残存をより安定的に行うために、ガイドロール19の内部からその外周面に向かうブロー(空気流)が生じる領域である。
【0032】
ブロー領域19Aは、ガイドロール19における回転ドラム11との最近接部P又はその近傍からガイドロール19の回転方向R2(周方向)に所定距離離間した位置に亘る領域の全幅〔ガイドロール19の幅方向(回転軸方向)の全域〕に亘って存しており、第1実施態様ではガイドロール19の周方向の略1/4を占めている。ブロー領域19Aは、ガイドロール19を構成する前記ロール本体等が回転軸回りを回転しても、回転しないようになっている。ブロー領域19Aのブローの発生源(図示せず)は、ガイドロール19の外部に設けられている。ガイドロール19の外周面を形成する前記外周面プレートは、ブロー領域19Aによるブローを有効にする観点から、通気性を有しており、具体的には、凹部15の底面15aを形成する多孔性プレート13と同様の素材から形成されているが、該素材に限定されるものではない。尚、ブロー領域19Aによるブローは、通気性シート5及びその上に積層した吸収体の原料(堆積体30)で形成された積層体35の搬送方向の全幅(シート搬送方向MDと直交する方向の全域)に亘って均一に実施されても良く、あるいは通気性シート5の開口部6に対応する部位(不使用原料32の存する部位)にのみ選択的に実施しても良い。ここで、「堆積体」は、凹部内に堆積され通気性シート上に積層させた解繊パルプや吸水性ポリマー等の吸収体の原料であり、「積層体」は、通気性シート及び通気性シート上に積層させた堆積体で形成される。通気性シートも吸収体の構成材料の一部である。
【0033】
次に、前述した吸収体の製造装置10Aを用いて吸収体1Aを連続的に製造する方法、即ち、本発明の吸収体の製造方法の第1実施態様について、図2を参照しながら説明する。第1実施態様の製造方法は、開口部6が形成された通気性シート5を、回転ドラム11(搬送手段)の凹部15の底面15a(保持部)に密着させた状態で、吸収体の原料(解繊パルプ等の繊維材料、吸水性ポリマーの粒子等)を底面15a上に吸引して凹部15内に堆積体30を形成し、通気性シート5上に堆積体30が積層した積層体35を得る「堆積工程」と、積層体35を底面15aから剥離する「剥離工程」とを具備する。第1実施態様の製造方法においては、前記堆積工程を前記強吸引部(回転ドラム11の空間A上の凹部15の底面15a)で実施し、前記剥離工程を前記弱吸引部(回転ドラム11の空間B上の凹部15の底面15a)で実施する。
【0034】
製造装置10Aを用いて吸収体1Aを製造するためには、回転ドラム11を方向R1に回転させると共に、回転ドラム11内の空間A及びB内を、それぞれに接続された前記吸引力の発生源を作動させて負圧にする。前述したように、空間Bは空間Aに比して吸引力が小さくなるように設定される。主として空間A内を負圧にすることにより、ダクト16内に、吸収体の原料を回転ドラム11の外周面に搬送し得る空気流が生じる。この状態で、ダクト16の図示しない他端側から吸収体の原料を供給すると、該原料は前記空気流に乗り、飛散状態となって回転ドラム11の外周面(凹部15)に向けて供給される。
【0035】
先ず、開口部が形成されていないロール状の通気性シート原反5’が、駆動ロール及び従動ロールからなる複数のロールに案内されて回転ドラム11に向けて搬送され、その途中に配置された開口部形成手段18によって、シート搬送方向MD(通気性シート原反5’の長手方向)に延びる一対の矩形形状の開口部6,6を形成され、開口部6が形成された帯状の通気性シート5とされる(図2(a)参照)。
【0036】
こうして開口部6が形成された通気性シート5は、回転ドラム11の外周面に形成された凹部15上に供給され、ダクト16に覆われた空間Aの外周面上を搬送中は、凹部15の底面15aからの吸引により該底面15aに密着する。通気性シート5の幅(シート搬送方向MDと直交する方向の長さ)は、凹部15の幅(回転ドラム11の回転軸方向の長さ)と略同じ、もしくは、それよりも広く設定されており、空間Aの外周面上を搬送中の底面15aは、開口部6に対応する部位を除き、通気性シート5で被覆された状態となる。通気性シート5は、凹部15の底面15aに密着した状態で、回転ドラム11の回転によってダクト16に覆われた部分(空間A)に搬送され、該部分において吸収体の原料が吸引されて凹部15内に堆積体30が形成され、結果として、通気性シート5上に堆積体30が積層された、通気性シート5と堆積体30との2層構造の積層体35が得られる(堆積工程)。この堆積工程では、ダクト16に覆われた部分(空間A)を通過中の凹部15の底面15aの全域に向けて吸収体の原料が供給されるため、該底面15aに密着した通気性シート5はもとより、通気性シート5で被覆されていない、底面15aにおける通気性シート5の開口部6に対応する部位にも該原料が堆積する(図2(b)参照)。ダクト16の前記一端側におけるシート搬送方向MDの下流側(ガイドロール19の近傍)においては、凹部15が略完全に吸収体の原料(堆積体30)によって覆われた状態になる。
【0037】
積層体35は、ダクト16に覆われた部分(空間A)を通過後、空間Bを通過中にガイドロール19に案内されて凹部15の底面15aから剥離される(剥離工程)。底面15aに通気性シート15を介して密着している積層体35を、該通気性シート5ごと該底面15aから剥離していくと、前記堆積工程において底面15aにおける通気性シート5の開口部6に対応する部位(以下、開口部対向部ともいう)に堆積した吸収体の原料は、通気性シート5上に存しておらず底面15a上に吸引保持された状態にあるため、剥離されていく積層体35側に留まらずに、開口部6を介して積層体35の下方から離脱し、結果として、底面15aの前記開口部対応部に吸引保持されたまま残存する。図2中の符合32は、斯かる積層体35の剥離後に底面15a上に残存する吸収体の原料(以下、不使用原料ともいう)を示している。そして、積層体35から不使用原料32が離脱する結果、積層体35における堆積体30には、通気性シート5の開口部6に対応する部位に、厚み方向の全域に亘って吸収体の原料が存在していない空間部4が形成され、吸収性コア2Aとされる(図2(c)参照)。
【0038】
第1実施態様の製造方法においては、前述したガイドロール19のブロー領域19の作用により、ガイドロール19の外周面から凹部15の底面15aに向けてブロー(空気流)が噴射されるため、該外周面に近接している積層体35に該ブローが当たり、それによって不使用原料32の積層体35からの離脱が一層促進され、前記剥離工程が一層スムーズに実施される。また、前記剥離工程は、積層体35が空間A(ダクト16に覆われた部分)を通過して空間Bに移行したところで実施されるところ、前述したように、空間Bは空間Aに比して吸引力が弱い弱吸引部であるため、空間Bでの積層体35の剥離は、空間Aでのそれに比してスムーズに行われ易い。このように、前記剥離工程を前記弱吸引部(回転ドラム11の空間B上の凹部15の底面15a)で実施することによっても、前記剥離工程のスムーズな実施が図られる。尚、不使用原料32の積層体35からの離脱に関し、ガイドロール19によるブローが果たす役割は、基本的に補助的なものであるので、該ブローの排出力(積層体35から不使用原料32を押し出す力)は、ブロー領域19に対向配置された回転ドラム11の空間B(弱吸引部)の吸引力に比して、通常弱く設定される。
【0039】
このように、ガイドロール19(搬送手段の保持部に向けて空気流を噴射可能なガイドロール)は、不使用原料32の積層体35からの離脱促進に有用ではあるが、本発明の製造方法の実施に際し必須のものではなく、ガイドロール19は無くても良い。ガイドロール19を用いる場合は、第1実施態様のように、回転ドラム11の空間B(搬送手段の弱吸引部)と対向する位置にガイドロール19を配置することが好ましく、そうすることによって、ガイドロール19によるブローと空間Bによる弱吸引とが相俟って、不使用原料32の積層体35からの離脱(積層体35の剥離)がより一層促進される。ガイドロール19を用いない場合は、不使用原料32の積層体35からの離脱を補助する、ガイドロール19からのブロー(空気流)が無いため、空間Bの吸引力は、ブローがある場合と比較して大きくする必要があり、その場合、通気性シート5の搬送テンションを増加させる必要が生じる場合がある。
【0040】
また、ガイドロール19(搬送手段の保持部に向けて空気流を噴射可能なガイドロール)と回転ドラム11の空間B(搬送手段の弱吸引部)との組み合わせの採用によって、通気性シート5(積層体35)の回転ドラム11からの剥離が促進されるので、通気性シート5の搬送テンションの増加を防ぐことが可能となり、それによって通気性シート5の選択の幅が広がり、また、搬送テンションに起因する通気性シート5の幅縮みが抑制される。通気性シート5の搬送テンションが大きすぎると、幅縮みが生じて通気性シート5の幅(シート搬送方向MDと直交する方向の長さ)が小さくなり、設計通りの幅が得られなくなるおそれがある。
【0041】
前記剥離工程後、凹部15の底面15a上に残存する不使用原料32は、回転ドラム11の回転によって空間Bから空間Cに搬送され、空間C上にて回収手段17の吸引によって底面15aから剥離されて回収される。前述したように、空間Cでは、回転ドラム11(ドラム本体12)の内部から底面15a(多孔性プレート13)に向かうブロー(空気流)が生じているため、回収手段17の吸引力と相俟って、不使用原料32の回収は一層スムーズに実施される。回収手段17によって回収された不使用原料32は、ダクト16の前記吸収体原料導入装置に供給され、吸収体の原料として再利用される。
【0042】
回収手段17による不使用原料32の回収後、底面15a(多孔性プレート13)をはじめとする回転ドラム11の構成部材は、回転ドラム11の回転によって空間Dに搬送され、空間Dで発生している、回転ドラム11(ドラム本体12)の内部から底面15a(多孔性プレート13)に向かうブロー(空気流)によって、残存する吸収体の原料が脱落されてクリーニングされる。空間Dで回転ドラム11から脱落した吸収体の原料を、ダクト16の前記吸収体原料導入装置に供給して吸収体の原料として再利用しても良い。
【0043】
第1実施態様の製造方法においては、前記剥離工程後に、凹部15の底面15aから剥離した積層体35を通気性シート5とは別のシート(被覆シート3)で被覆する(被覆工程)。より具体的には、積層体35を構成する通気性シート5及び堆積体30(吸収性コア2A)それぞれよりも幅広の帯状の被覆シート3を、積層体35における通気性シート5に直接重ねるように供給して3層積層体を得、該3層積層体を折り返し手段20に導入する。被覆シート3を通気性シート5に重ねる前に、被覆シート3における通気性シート5との対向面の所定箇所に、図示しない接着剤塗布手段によりホットメルト型接着剤等の接着剤を塗布しても良い。
【0044】
折り返し手段20において、前記3層積層体は、被覆シート3における幅方向Y(シート搬送方向MDと直交する方向)の外方に延出している両側縁部(換言すると、積層体35が載置されていない領域)が堆積体30上に折り返される(図2(d)参照)。その結果、積層体35が被覆シート3で被覆された帯状の吸収体1Aが得られる。前記被覆工程後、帯状の吸収体1Aを切断装置(図示せず)によって吸収性物品一個分の長さに順次切断することにより、複数個の吸収体1Aが連続的に得られる。
【0045】
第1実施態様の製造方法によれば、開口部6が形成された通気性シート5を用い、これを回転ドラム11(搬送手段)の凹部15の底面15a(保持部)に密着させた状態で吸収体の原料を該底面15a上に吸引堆積し、該凹部15内に通気性シート5と堆積体30との積層体35を形成し、然る後、積層体35を底面15aから剥離し、それによって底面15aにおける開口部6に対応する部位に堆積した不使用原料32を積層体35から離脱させて、堆積体30に空間部4を形成する(吸収性コア2Aを形成する)ようにしたので、公知の通常の吸収体製造装置(積繊装置)に付帯されていない特殊な設備、例えば、空間部を有しない吸収体中間体の空間部形成予定位置から吸収体材料を除去するための設備の導入や既存の設備の大幅改造を必要とせず、既存の設備を利用して、空間部4を有する吸収体1Aを効率良く製造することができる。また、空間部4の位置や形状を変更する場合には、開口部形成手段18による開口部形成条件を変更し、通気性シート5の開口部6の位置や形状や数等を変更するだけで足りるため、斯かる変更作業が容易であり、比較的低コストで吸収体1Aを製造できる。
【0046】
以下、本発明の他の実施態様について説明する。後述する他の実施態様については、前述した第1実施態様と異なる構成部分を主として説明し、同様の構成部分は同一の符号を付して説明を省略する。特に説明しない構成部分は、前述した第1実施態様についての説明が適宜適用される。
【0047】
図5には、本発明の第2実施態様の製造方法により製造される吸収体1Bが示されている。図1に示す吸収体1Aの吸収性コア2Aは、単層構造であるのに対し、図5に示す吸収体1Bの吸収性コア2Bは、第1層21と第2層22との積層体からなる2層構造である。第1層21は、吸収体1Aの吸収性コア2Aと同様に構成されており、第1層21(吸収性コア2B)の長手方向Xに沿う両側縁2s,2sそれぞれから長手方向Xと直交する幅方向Yの内方に所定距離離間した位置に、厚み方向の全域に亘って原料が存在していない一対の空間部4,4を有している。第2層22は、長手方向Xの長さは第1層21のそれと同じであるが、幅方向Yの長さ(幅)が、第1層21における一対の空間部4,4の間隔と略同じであり、平面視において、第1層21に比して幅狭の矩形形状を有している。第2層22は、第1層21における一対の空間部4,4間に配置されている。通気性シート5は、第1層21における第2層22との対向面とは反対側の面を直接被覆しており、また、通気性シート5に接触するように、被覆シート3の重合部31が吸収性コア2Bの長手方向Xの全長に亘って形成されている。吸収体1Bによっても、吸収体1Aと同様の効果が奏される。特に、吸収体1Bによれば、吸収性コア2Bの第1層21の幅方向Yの中央部と第2層22とが厚み方向で重なっているため、吸収体の幅方向Yの中央部が単層構造である場合に比して、排泄された体液を保持できる量が増し、優れた防漏性、表面ドライ感が奏される。
【0048】
図6には、吸収体1Bの製造に用いられる製造装置10Bが示されている。図6に示すように、製造装置10Bは吸引装置として2台の回転ドラム11,25を備えており、回転ドラム11は第1層21(積層体)の形成に用いられ、回転ドラム25は第2層22(吸収体原料層)の形成に用いられる。
【0049】
製造装置10Bにおける回転ドラム11の内部には、相互間が仕切られた空間E、F及びGが形成されている。空間Eには、回転ドラム11の外部に設けられた吸引力の発生源(図示せず)が接続されており、該発生源を作動させることにより、空間E内を負圧に維持可能である。空間Fは空間Eに比して吸引力が小さく設定されており、空間E上の底面15aは、吸引力が相対的に強い強吸引部、空間F上の底面15aは、該吸引力が相対的に弱い弱吸引部として機能する。また、回転ドラム11の近傍で空間Fと対向する位置にはガイドロール19が設けられており、第2実施態様でも第1実施態様と同様に、搬送手段の保持部(空間Fの底面15a)に向けて空気流を噴射可能なガイドロールと搬送手段の弱吸引部(空間F)との組み合わせが採用されている。空間Gは、前記剥離工程後に、凹部15の底面15a上に残存する不使用原料32を回収手段17に受け渡す際に、回転ドラム11(ドラム本体12)の内部から底面15a(多孔性プレート13)に向かうブロー(空気流)が生じる領域である。空間Gのブローの発生源(図示せず)は、回転ドラム11の外部に設けられている。
【0050】
製造装置10Bにおける回転ドラム25は、基本的に回転ドラム11と同様に構成されており、その外周面における回転軸方向(ドラム幅方向)の中央部に、吸収体の原料を堆積させて第2層22(吸収体原料層)を形成する凹部(図示せず)が、周方向の全長に亘って連続して形成されている。回転ドラム25の内部には、相互間が仕切られた空間H,I及びJが形成されている。空間Hには、回転ドラム25の外部に設けられた吸引力の発生源(図示せず)が接続されており、該発生源を作動させることにより、空間H内を負圧に維持可能である。空間Iは、前記凹部内に形成された第2層22を、回転ドラム25の下方を走行する帯状の被覆シート3上に転写させる際に、斯かる転写をスムーズに行うべく、回転ドラム25(ドラム本体)の内部から図示しない前記凹部の底面(多孔性プレート)に向かうブロー(空気流)が生じる領域である。また、空間Jは、回転ドラム25の構成部材のクリーニング領域であり、空間Iと同様のブロー(空気流)が生じる領域である。空間I及びJのブローの発生源(図示せず)は、回転ドラム25の外部に設けられており、該ブローの発生源と空間I及びJとはそれぞれ個別のダクトを通じて連通している。
【0051】
回転ドラム25の空間H上の外周面(凹部)は、ダクト26の一端側によって覆われている。ダクト26は、製造装置10Aにおけるダクト16と同様に構成されており、ダクト26の図示しない他端側には、図示しない吸収体原料導入装置を有している。
【0052】
次に、前述した吸収体の製造装置10Bを用いて吸収体1Bを連続的に製造する方法、即ち、本発明の吸収体の製造方法の第2実施態様について、図6を参照しながら説明する。第2実施態様の製造方法は、前記剥離工程後に、回転ドラム11の凹部15の底面15a(搬送手段の保持部)から剥離した積層体35を、別途製造した吸収体原料層(第2層22)に重ね合わせる重合工程を具備している。第2実施態様の製造方法では、回転ドラム11を用いて、空間部4を有する第1層21を形成するところ、この第1層21の形成は、開口部6が形成された通気性シート5を用い、前述した第1実施態様と同様に堆積工程及び剥離工程を経てなされる。
【0053】
即ち、開口部が形成されていない帯状の通気性シート原反5’をシート搬送方向MD1に搬送し、開口部形成手段18を通過させて通気性シート原反5’に開口部6を形成し、そうして得られた開口部6が形成された帯状の通気性シート5を、回転ドラム11の凹部15の底面15aに密着させた状態で、ダクト16で覆われた部分にて吸収体の原料を底面15a上に吸引堆積し、凹部15内に通気性シート5と堆積体30との積層体35を形成する(堆積工程)。然る後、ガイドロール19の案内によって積層体35を底面15aから剥離し(剥離工程)、それによって、底面15aにおける開口部6に対応する部位に堆積した不使用原料32を、積層体35から離脱させて底面15a上に残存させる。こうして、底面15aから剥離された積層体35における堆積体30に空間部4が形成され、帯状の堆積体30は帯状の第1層21となる。
【0054】
また別途、回転ドラム25を用いて常法に従って帯状の第2層22(吸収体原料層)を形成する。即ち、ダクト26内を空気流に乗せて供給した吸収体の原料を、空間Hを通過中の回転ドラム25の外周面の凹部(図示せず)内に吸引堆積して帯状の第2層22を形成する。こうして形成された帯状の第2層22は、回転ドラム25のR3方向の回転によって回転ドラム25の最下点位置に向けて搬送される。
【0055】
回転ドラム25の下方には、帯状の被覆シート3が、シート搬送方向MD1とは反対方向であるシート搬送方向MD2に水平搬送されており、回転ドラム25の前記凹部内の帯状の第2層22は、回転ドラム25の前記最下点位置又はその近傍にて、搬送中の帯状の被覆シート3上に転写される。この第2層22の転写は、回転ドラム25における空間Iに生じるブロー(空気流)によってスムーズに実施される。
【0056】
こうして帯状の被覆シート3上に転写された帯状の第2層22は、引き続きシート搬送方向MD2に水平搬送され、回転ドラム11の下方にて、回転ドラム11の凹部15の底面15aから剥離された帯状の積層体35(帯状の通気性シート5と帯状の第1層21との積層体)に、該積層体35の第1層21と第2層22とが対向するように重ね合わされる(重合工程)。然る後、これらを折り返し手段20に導入し、被覆シート3における、積層体35(通気性シート5及び第1層21)並びに第2層22が載置されていない領域を、通気性シート5上に折り返す(被覆工程)。その結果、第2層22、第1層21及び通気性シート5が順次積層された3層構造の積層体が被覆シート3で被覆された、帯状の吸収体1Bが得られる。前記被覆工程後、帯状の吸収体1Bを切断装置(図示せず)によって吸収性物品一個分の長さに順次切断することにより、複数個の吸収体1Bが連続的に得られる。
【0057】
以上、本発明の吸収体の製造方法について説明したが、本発明は、前述した実施態様に制限されず適宜変更可能である。例えば、前記実施態様は、開口部6が形成された通気性シート5とは別のシート(被覆シート3)を用いたが、被覆シート3は用いなくても良い。図7には、被覆シート3を用いずに製造した吸収体1Cが示されている。吸収体1Cにおいては、吸収性コア2Aに比して幅広の(幅方向Yの長さが長い)1枚の通気性シート5が用いられ、この幅広の通気性シート5によって、吸収性コア2Aの一面及び他面それぞれの全域が被覆されている。吸収性コア2Aの一面における幅方向Yの中央部には、通気性シート5の長手方向に沿う両側縁部が重ね合わされた重合部51が、吸収性コア2Aの長手方向の全長に亘って形成されている。吸収性コア2Aの他面には、通気性シート5の開口部6が存している。
【0058】
また、前記実施態様において、回転ドラムの外周面の凹部(吸収体の原料が吸引堆積される部位)は、回転ドラムの周方向の全長に亘って連続的に形成されていたが、回転ドラムの周方向に所定の間隔を置いて間欠的に形成されていても良い。また、本発明の実施に用いる搬送手段は、被搬送物を保持部で吸引保持しつつ搬送し得るものであれば良く、前述した回転ドラムに限定されず、例えば、駆動ロール及び従動ロールに架け渡された無端状の通気性ベルトと、相対向する該通気性ベルト間に介在配置されたバキューム機構とを備えたものでも良い。
【0059】
前述した一の実施態様における説明省略部分及び一の実施態様のみが有する構成要件は、それぞれ他の実施態様に適宜適用することができ、また、各実施態様における構成要件は、適宜、実施態様間で相互に置換可能である。
【符号の説明】
【0060】
1A,1B,1C 吸収体
2A,2B 吸収性コア
3 被覆シート
4 空間部
5’ 通気性シート原反
5 通気性シート
6 開口部
10A,10B 吸収体の製造装置
11,25 回転ドラム(搬送手段)
12 ドラム本体
13 多孔性プレート
14 パターン形成プレート
15 凹部
15a 凹部の底面(保持部)
16,26 ダクト
17 回収手段
18 開口部形成手段
19 ガイドロール
20 折り返し手段
21 吸収性コアの第1層
22 吸収性コアの第2層
30 堆積体
32 不使用原料
35 通気性シートと堆積体との積層体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚み方向の全域に亘って原料が存在していない空間部を有する吸収体の製造方法であって、
開口部が形成された通気性シートを、被搬送物を保持部で吸引保持しつつ搬送する搬送手段の該保持部に密着させた状態で、空気中に飛散させた前記原料を該保持部上に吸引して堆積体を形成し、該通気性シート上に該堆積体が積層した積層体を得る堆積工程と、前記積層体を前記保持部から剥離する剥離工程とを具備し、
前記堆積工程において前記保持部における前記開口部に対応する部位に堆積した前記原料が、前記剥離工程後に該部位に残存する、吸収体の製造方法。
【請求項2】
前記堆積工程の前に、前記開口部が形成されていない通気性シート原反に該開口部を形成する開口部形成工程を具備する、請求項1記載の吸収体の製造方法。
【請求項3】
前記搬送手段は、前記保持部からの吸引力が相対的に強い強吸引部と、該吸引力が相対的に弱い弱吸引部とを、被搬送物の搬送方向に有し、前記堆積工程を該強吸引部で実施し、前記剥離工程を該弱吸引部で実施する、請求項1又は2記載の吸収体の製造方法。
【請求項4】
前記搬送手段の近傍で前記保持部と対向する位置に、該保持部に吸引保持されつつ搬送される前記通気性シートを該保持部から遠ざかる方向に案内し且つ該保持部に向けて空気流を噴射可能なガイドロールを配置する、請求項1〜3の何れか一項に記載の吸収体の製造方法。
【請求項5】
前記剥離工程後に、前記保持部から剥離した前記積層体を前記通気性シートとは別のシートで被覆する被覆工程を具備する、請求項1〜4の何れか一項に記載の吸収体の製造方法。
【請求項6】
前記剥離工程後に、前記保持部から剥離した前記積層体を別途製造した吸収体原料層に重ね合わせる重合工程を具備する、請求項1〜5の何れか一項に記載の吸収体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−103006(P2013−103006A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249695(P2011−249695)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】