説明

吸収性シート

【課題】 体液の吸収状態を見えにくくするだけでなく、更に進んで、着用者におしゃれ感覚(又は高級感)を与える吸収性シートを提供する。
【解決手段】 本発明の吸水性シート1は、液透過性及び液保持性を有する吸収層2と、液不透過性を有する防漏シート(防漏層)3とを備え、防漏シート3には、模様5が印刷されており、防漏シート3の模様5が肌当接面側から認識可能に構成されている。吸収層2は、不織布からなることが好ましく、また、着色剤の含量が2%以下であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、おりものシート、パンティライナー、尿漏れシート、生理用ナプキンあるいは汗脇パッド、襟元パッド、母乳パッド等のように、下着やシャツ及びブラウス等の衣服に着けられた状態で体液を吸収する吸収性シートに関し、特に、薄型の吸収性シートに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の吸収性シートは、少量の体液が排泄される際に用いられるものであり、下着等衣服の内面に貼り付けられた状態で体液を吸収するようになっている。
近年、吸収性シートには、それぞれ、ブルー、ピンク、モカ、黒等の数種の色に着色されたものが知られており、衣服の色と同系色のものを選択して装着し、衣服を脱いだ際、衣服の色に対して吸収性シートの色を目立たないようにした技術が提案されている(例えば、非特許文献1、特許文献1参照)。
しかし、衣服には多種多様の色彩、模様、風合いがあり、非特許文献1に示された吸収性シートでは、吸収性シートの色を衣服の色に対して目立たなくさせるには限界があった。一方、生理用ナプキンのうち、ウィング等の一部を透明にして、装着時に下着色が透けて着用感を目立たなくさせたものが提案されている(特許文献2参照)。
【0003】
他方、生理用ナプキンや使い捨ておむつ等の吸収性物品に模様や記号等を印刷した技術が知られている。例えば、使い捨ておむつにおいては、バックシートの裏面に模様を印刷して、その模様が外層シート側から鮮明に見せるようにしたものがある(特許文献3参照)。また、生理用ナプキンにおいては、その前後を指標する記号をトップシートの表面等に印刷したもの(特許文献4参照)、吸収体の表面層を着色したもの(特許文献5参照)、バックシートの裏面に模様を印刷して、その模様が包装紙側から見せるようにしたものがある(特許文献6参照)。
【非特許文献1】”ソフィ Colorライナー”、[on line]、ユニチャーム、[平成15年7月24日検索]、インターネット<URL:http://www.unicharm.co.jp/newpro/color/>
【特許文献1】特開2004−130056号公報
【特許文献2】特表2003−527928号公報
【特許文献3】特開2002−11045号公報
【特許文献4】特開2002−360620号公報
【特許文献5】特開2003−210523号公報
【特許文献6】特開2003−199786号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、吸収性シートを使用する際、着用した際に目立たなくしたり、おりもの等の体液の吸収状態を見えにくくするだけでなく、更に進んで、着用者におしゃれ感覚(又は高級感)を与えることが要望されている。
しかしながら、特許文献1の生理用ナプキンにあっては、その一部を透明にするだけで、吸収状態を見えにくくすること等ができず、特許文献2、5の使い捨ておむつ等にあっては、外側に模様を印刷するだけでは、上記要望が達成されない。また、特許文献3、4の生理用ナプキンにあっては、おしゃれ感覚が乏しく、また繊維層に鮮明な模様を印刷することが困難であった。
【0005】
従って、本発明の目的は、体液の吸収状態を見えにくくするだけでなく、更に進んで、着用者におしゃれ感覚(又は高級感)を与える吸収性シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、吸収層と防漏層とを備え、防漏層には、模様が形成されており、該防漏層の模様が肌当接面側から認識可能に構成されている吸収性シートを提供することにより、前記目的を達成したものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、吸収性シートの内側の模様を肌当接面側から透かして目視することにより、着用者におしゃれ感覚(又は高級感)を与えると共に、脱衣の際、体液の吸収状態を模様で見えにくくすることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の吸水性シートの最も好ましい一実施形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1又は図2に示すように、本実施形態の吸水性シート1は、少量の経血を吸収するパンティライナーであり、液透過性及び液保持性を有する吸収層2と、液不透過性を有する防漏シート(防漏層)3とを備え、防漏シート3には、全体に亘る模様5が印刷されており、吸収層2は、防漏シート3の模様5を透かすように肌当接面側から認識可能に構成されている。以下、かかる吸収性シート1の詳細を述べる。
本発明において模様が認識可能であるということは、模様の有無が認識できることだけではなく、模様の色や形状まで認識できるレベルを指す。模様の認識は、通常の吸収性シートの装着および取り外しの際にされるものであり、光にかざす等の特別の動作は不要である。
【0009】
本実施形態の吸収性シート1は、1又は複数の吸収層2と、防漏シート3とからなる積層状構造であり、極めて薄いシート状に形成されている。吸収性シート1は、下着等に装着して使用されるが、装着用の粘着剤が吸収性シートの非肌当接面(防漏シート3の外面)に設けられている(図示省略)。
【0010】
まず、吸収層2について説明する。
吸収層2は、液透過性のみならず液保持性の確保と、透明感の確保とのバランスを保つ観点から、繊維集合体(不織布、不織布化されていないウェブ状態のもの)を含むことが好ましい。本実施形態の場合、吸収層2は、主に液透過性を有する上層シート2Aと、主に液保持性を有する下層シート2Bとの2枚からなる多層構造にし、表面層は液透過層として機能させ、下層を吸収層として機能させている。このような吸収層2に用いられる各層は、不織布等の繊維集合体が好ましく、同じ種類のものでもよく、異なる種類のものであってもよい。またシート全体の薄さと透明感(模様の鮮明性)を優先する観点から、下層シート2Bを削除することも可能である。
【0011】
吸収層2の上層シート2Aには、エンボス又は開孔からなる配列パターンが全面に亘って形成されている(図示しない)。この配列パターンは、吸収層2の表層部で液透過性を発揮させる機能のほか、防漏シート3上の模様5と重なって融合し、その模様5を立体的に見せる等変化させる機能を有する。
上層シート2Aは、不織布で構成されることが好ましいが、不織布化されていないウェブ状態のものや、透明な開孔フィルムで構成されていてもよい。
【0012】
吸収層2の下層シート2Bも同様に不織布で構成されることが望ましい。特に吸収層全体の透明感を上げる観点より、上層シート2Aより透明度が高く、繊度が大きく、単独ではエンボス又は開孔からなる所定のパターンを有しない方が望ましい。一方、吸収層2全体の透明度を増すために、上層シート2Aと一体にエンボスや開孔を行って所定のパターンを形成することも好ましく用いられる。
【0013】
このような吸収層2を構成する不織布は、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン等のポリアミドなどの熱可塑性樹脂からなる繊維から構成される不織布、又は、上記繊維の2種類以上の複合繊維から構成される不織布であり、その繊度が1〜7dtexであることが好ましい。
吸収層2の最上表面(上層シート2A)は、例えばレーヨンのスパンレース不織布のように、高い親水性及び柔軟性を発現する不織布であってもよく、この場合、その繊度が1.5〜5dtexであることが好ましい。
【0014】
不織布の1枚当たりの坪量は、クッションとして機能する柔軟性、及び十分な透明感を確保するという観点から、10〜100g/m2であり、特に、15〜40g/m2であることが好ましい。不織布の1枚当たりの厚さは、0.1〜1mmであり、特に、0.2〜0.6mmであることが好ましい。
【0015】
なお、不織布に、吸収性向上の観点から、親水化処理を施すのが好ましく、以下、この点について説明する。
不織布表面の親水化処理は、おりもののように少量の体液を積極的に吸収して人体の表面に残さないようにする機能を有する。本実施形態の吸水性シートは、生理用ナプキンや紙おむつのように大量の体液を吸収するものでないため、親水化処理を必ずしも必要としないが、表面上において体液を残さずにサラットした使用感を担保するには、親水化処理を施すことが好ましい。
特に、吸収層2が1枚の不織布から構成される場合、その不織布は、体液が肌当接面側から背面側に移行しやすい構造であることが好ましい。このような構造は、毛管力について背面側を肌当接面側よりも大きくすることにより実現されるものであり、(1)背面側の繊維が、肌当接面側の繊維よりも強く親水化されている、(2)背面側の繊維が、肌当接面側の繊維よりも細くされている、等の構成により具現化される。このような構造の具体的な製造方法については、不織布の形成工程において、予め、繊維ウェブを2層で積繊したものを用意しておき、上記(1)にあっては、背面側の繊維を強親水性の親水化剤で処理するか、あるいは、背面側の繊維に付着する親水化剤の量を増やし、上記(2)にあっては、背面側の繊維ウェブに用いる繊維を細くする。
以上のような構造を有する不織布は、1枚であっても、「液透過性」及び「液保持性」の双方を発揮するようになる。
【0016】
吸収層2は透明感が高く、吸収層2を構成する繊維に含有される着色剤の含量は、2質量%以下にしている。この着色剤には、例えば、酸化チタン(TiO2)、炭酸カルシウム(CaCO3)、硫酸バリウム(BaSO4)等が挙げられる。
特に、酸化チタンは、主に白色顔料として用いられ、不織布を構成する繊維に含有された場合、高い白色度、大きい遮蔽力等を発揮するものであるが、本実施形態の場合、不織布自体の透明感を高める観点から、不織布を構成する繊維における酸化チタンの含有量は、0〜2質量%が好ましく、0〜0.5質量%が特に好ましい。
特に、吸収層2が複数の場合、吸収層2の最表層以外の層は、酸化チタンの含有量が0.5質量%以下であり、吸収層2の最表層は、2質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下であることが、多層構造全体の透明感維持の点で好ましい。
【0017】
また、吸収層2は、上記同様の観点から、紙、パルプ又は吸収ポリマー等のように、通常の状態では不透明(白色)である繊維(吸収材)からなる吸収層が含まれないことが好ましいが、透明性を阻害しない範囲で含有させてもよい。以上のような構成の吸収層2は、透明度が高く、以下に定義する背黒色明度LBが0〜20であり、且つ、背白色明度LWが30〜100に設定されている。
本出願において定義する、「背黒色明度LB」とは、Lab表色系において、標準黒色板を背面にしたシートが示す明度L値をいい、その値が0〜100の範囲で小さく、標準黒色板のL値に近い程、シートの透明感が高いことを意味する。
また、本出願において定義する、「背白色明度LW」とは、標準白色板を背面にしたシートが示す明度L値をいい、その値が0〜100の範囲で大きく、標準白色板のL値に近い程、シートの透明感が高いことを意味する。
一般的には、「背黒色明度LB」が低い程、黒色であることを意味し、表面が黒いシートを含み、また、「背白色明度LW」が高い程、白色であることを意味し、表面が白いシートを含む。したがって、本願が規定する2つの明度を満足するものは、透明感が高いシートであることを示している。
このような光透過率によって規定された吸収層2は、本来の液透過性及び液保持性を発揮するほか、防漏シート3上の模様5を表面上に透かして浮き上がらせる視認機能を有する。
【0018】
不織布の製造方法には、スパンボンド法、エアスルー法、ヒートロール法、スパンレース法等が用いられるが、特に、不織布の繊維同士を密着させて繊維間の乱反射を抑制する観点から、スパンボンド法又はヒートロール法を用いることが好ましい。一方、不織布の柔軟性、タッチ感の良さの観点からはエアスルー法が望ましく、ヒートロール法を併用することによって不織布の透明度を高めることも可能である。
【0019】
吸収層2が上層シート2A、下層シート2Bから構成される場合、この不織布同士の接着には、ホットメルト接着又はヒートシール(エンボス)及びこれらの併用がなされる。ホットメルト接着にはスパイラルスプレー、多列ビード、スロットスプレー、薄膜等が用いられるが、上記同様に繊維間の乱反射を抑制するには全面で密着させるメルトパターン(スパイラル、スロット、薄膜)がよく、吸収性の観点からは適当に隙間のあるパターンが良い(スパイラル、多列ビード)。また、適当に隙間のあるパターンでは、全体の透明性を低下させない効果がある点で優れる。以上の点から、スパイラルスプレー法が好ましい。また後述するように、ヒートシール(エンボス)を併用することによって不織布の密着性を高めることが更に好ましい。
【0020】
不織布同士の接着剤には、スチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)系、スチレン-エチレン-ブタジエン-スチレン(SEBS)系、オレフィン系ホットメルト等が用いられるが、上記同様に吸収層2の層間の透明感を高める観点から、接着剤における酸化チタンの含有量は、0〜0.5重量%が好ましい。
【0021】
なお、接着剤の塗工量は、不織布同士の十分な接合力の確保と、不織布の積層間における透明感の確保とのバランスを保つ観点から、3〜15g/m2であることが好ましい。
【0022】
吸収層2には、透明化のためエンボスが施されている。エンボスの占有面積率が、15%以上であると、エンボス部分の透明度の高い領域の視覚印象が強まり、全体が非常に透明な印象となるため好ましい。一方、全体の柔らかさと吸収性の観点からはエンボスの占有面積率が50%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましい。
また、エンボスは、シート全体の硬さを上げないためにはドット状、小円状など離散的な配列パターンが好ましく、特に直径2mm以下の円形のドットが全面に亘った配列パターンが、透明性、柔軟性の両立から好ましい。
【0023】
このような配列パターンは、上述したように、防漏シート3上の模様5と融合して、立体的な模様を構成するようになっている。更には、防漏シート上の模様と相関づけられる所定の模様の組み合わせを選択することで、該立体効果をより印象付けることができる。例えば、以下の組合せが挙げられる。
幾何学模様の組み合わせ(防漏層星型(中塗り)に対し、吸収層星型(輪郭線)、
防漏層円型(同)に対し、吸収層円(輪郭線)等)
関係する模様の組み合わせ(防漏層花模様に対し、吸収層花模様、
防漏層花模様に対し、吸収層葉模様等。)
上下の層でパターンが反復する場合、吸収層に用いるエンボスを輪郭線の大柄模様にするなどの方法で印象性を向上することが可能である。
【0024】
吸収層2には、例えば、カミツレ抽出分始め各種精油分含有の植物オイル等のような油脂剤(油脂成分)、又はグリセリン等のようなローション剤(粘性成分)が含浸させることも好ましい。このような油脂剤又はローション剤は、本来、(1)製品の柔軟性を向上する、(2)製品表面の滑らかさを改善する、(3)着用者の皮膚のかぶれ等を防止する、等の目的で少量用いられるものであるが、不織布における繊維間隙を充填し、繊維間の乱反射を抑制して透明化する機能を発揮する。吸収層2が多層の不織布である場合には、少なくとも1層に含浸させることが好ましく、吸収性シート1の全体に、油脂剤又はローション剤が含浸されていてもよい。
【0025】
模様5は、防漏材5の少なくとも排泄部当接部およびその周囲に存在していれば良く、防漏シート3の全体に亘って存在してもよい。模様5の形成方法は、インクジェット方式、スクリーン印刷方式等により行われ、模様5の表面に樹脂のラミネートが施されてもよい。
模様5は、単色で同じ模様の繰り返しでもよく、多色で複数の模様の組み合わせでもよく、また、星やハート、キャラクターのようにマーク状のもの、格子柄や波状曲線、幾何学模様等の組み合わせでもよい。
【0026】
本実施形態の防漏シート3は、液不透過性のシートに模様5が全面に亘って印刷されたものであるが、以下の用途によって、第1防漏シート3と、第2防漏シート3とに分けられる。第1防漏シート3は、吸収層2と共に下着色を透かし、その下着色を背色に模様5を表面上に浮き上がらせることを用途にした半透明シートである。第2防漏シート3は、下着色を透かさず、第2防漏シート3自体の地色を背色に模様5を表面上に浮き上がらせることを用途にした不透明シートである。以下、防漏シート3について、第1防漏シート3と第2防漏シート3とに分けて説明する。
【0027】
第1防漏シート(半透明シート)3の模様5は、着用者におしゃれ感覚(又は高級感)を与える観点から、第1防漏シート3の表面全体に亘って印刷されることが好ましい。また、体液の吸収状態を目立たなくする観点では、模様5は、着用者の排泄部と対向する第1防漏シート3の略中央部に、密集して印刷されることが好ましい。パンティライナーの場合、おりものの白色〜淡黄色〜褐色の汚れた印象を緩和する観点から、淡青色、淡黄色、淡赤色などの印象性の良好な色調から適宜選択可能である。また、褐色のおりものや経血等の体液を吸収する場合、模様5の色は、この体液と同系の暖色から選択される。
【0028】
第1防漏シート3及び吸収層2を通して、模様5を最表面に浮かび上がらせる観点では、模様5の印刷面は、第1防漏シート3の内面(吸収層2側の面)又は外面の何れか又は双方であってもよい。模様5の印刷面は、第1防漏シート3及び吸収層2の光透過率、厚さ、枚数等に基づく全体の透明度と、模様5の彩度との関係から相対的に選択される。すなわち、印刷面の位置は、模様5による視覚的刺激性を緩和しその緩和に強弱つける観点から、模様5の彩度を増減させる意義を有する。
例えば、模様5の彩度の加減が吸収層2の光透過で十分な場合には、印刷面の位置を第1防漏シート3の内面とし、模様5の彩度の低減が吸収層2の光透過で足りない場合には、印刷面の位置を第1防漏シート3の外面とし、模様5の彩度を最表面上で強弱つける場合には、印刷面の位置を第1防漏シート3の内面及び外面の双方とする。
【0029】
第1防漏シート3は、例えば、ポリエチレン、ポリ酢酸ビニル、或いはエチレン-酢酸ビニル共重合体やポリエチレン-ポリ酢酸ビニル複合フィルム等のポリオレフィン系樹脂等の熱可塑性樹脂からなる液不透過性のフィルムであり、着色剤を含まない通常のポリエチレンフィルムを用いることも可能である。また、該フィルムを多孔性にし、透湿性を有することも好ましい。該フィルムにポリエステル系もしくはウレタン系の非晶質フィルムを用い、透湿性を与えることも有効である。
高い透明性の観点から、フィルムの1枚当たりの坪量は、15〜50g/m2であり、フィルムの1枚当たりの厚さは、0.05〜0.4mmが好ましい。
【0030】
第1防漏シート3は、上記吸収層2と同様、フィルムに含有される着色剤の量を、2質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下にしたものであり、この着色剤には、上記同様、酸化チタン(TiO2)、炭酸カルシウム(CaCO3)、硫酸バリウム(BaSO4)等が挙げられる。
特に、酸化チタンの含有量を0.5質量%以下にすることが、高い透明性の観点から一層好ましい。
【0031】
ここで、一般に、多孔性の透湿シートは、当業者に多用されており、この透湿シートにおいては、ベースフィルム中に、相溶性のない炭酸カルシウム(CaCO3)等の無機紛体を多量に分散させ、ベースフィルムを延伸する際に、紛体と樹脂界面に微細な剥離(孔)を形成し、その微細孔を水蒸気の放出孔としている。このような透湿フィルムは、多量の顔料を含み、微細孔自体における光の乱反射によりフィルム自身を濁らせるため、本実施形態の防漏シートとして不適切である。
そのため、第1防漏シート3には、透明性を確保しつつ透湿機能をも確保する観点から、ポリエステル系もしくはウレタン系エラストマーからなるフィルムが用いられている。このフィルムを構成する樹脂は、非晶性部分における高い分子運動性、及び高い親水性に起因して、選択的にフィルムに取り込んだ水蒸気を外部に放出するという性質を有し、この性質により、フィルムに透明性及び透湿性をもたせるものである。
【0032】
このような第1防漏シート3は、本来の液不透過性を発揮するほか、透かした下着色を背色にして防漏シート3上の模様5を浮き上がらせる視認機能を有する。
【0033】
フィルム(第1防漏シート3)と不織布(下層シート2B)とは、ヒートシールや超音波、接着剤等によって、周囲や全体を接着される。接着剤の場合は、スロットスプレー法、スパイラルスプレー法、薄膜塗工等により、オレフィン系ホットメルト、スチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)系、スチレン-エチレン-ブタジエン-スチレン(SEBS)系等の接着剤が用いられる。この接着剤における酸化チタンの含有量は、上記不織布同士の接着剤の場合と同様、0〜0.5重量%が好ましい。
【0034】
次に、第2防漏シート(不透明シート)3は、主に、着色剤の含有量、光透過率、模様5の印刷面の位置等が、上記第1防漏シート3と異なり、この異なる構成について説明し、その他の構成等は上記第1防漏シート3と同様であるためその説明を省略する。
【0035】
第2防漏シート3は、着色剤の含量が2%以上の不透明シートであり、光透過率に対応する前記背黒色明度LBが30以上であり、且つ、背白色明度LWが30〜100に設定されたものである。
本願に用いる防漏シートは、印刷した模様が視認できる背景色としての明度が必要であり、この効果を維持した範囲で着色する(例えば、淡赤色、淡桃色、淡青色など)ことが可能である。何れの場合も、上記明度を保って着色した結果標準黒色板の色に対する隠蔽効果が高く、30以上の明度を示す。
同様に高い明度の色調を有する結果、背白色明度LWは、その色調固有の高い明度を示す。
このように規定された第2防漏シート3は、第2防漏シート3自体の地色を背色にして防漏シート3上の模様5を鮮明に浮き上がらせる視認機能を有する。なお、第2防漏シート3の地色は、下着色と調和し、模様5の色とも調和する色又は模様5の色と反対色から選択される。
そして、模様5は、このような第2防漏シート3の内面に印刷されている。
【0036】
尚、第2防漏シート3には、透湿シートを用いる事も好ましい。この場合、前記の如く多孔性の透湿シートにおいては、ベースフィルム中に、相溶性のない炭酸カルシウム(CaCO3)等の無機紛体を多量に分散させ、ベースフィルムを延伸して微細な剥離(孔)を形成し、その微細孔を水蒸気の放出孔とする。このような透湿フィルムの場合は多量の顔料を含む。適当な着色剤の配合量は40質量%以上70質量%以内、好ましくは50質量%以上70質量%以内である。
【0037】
第1防漏シート3が透湿フィルムである場合、その透湿フィルムの透湿度は、広く、1.0〜2.5g/(100cm2・24hr)が好ましいが、表面に印刷された模様によって透湿性が下がり、本来の透湿性を確保する観点から、透湿フィルムの透湿度は、2.0g/(100cm2・24h)以上に設定される。この点について換言すれば、特定の透湿度で規定された第1防漏シート3は、本来の透湿性を保有しつつ、体液を染み出しにくい透湿性・防水シートとして機能し、また、表面に印刷された模様は、第1防漏シート3に含浸した体液の染み出しを防止する保護膜として機能する。
【0038】
次に、上述した吸収層2及び防漏シート3が積層されてなる吸収性シート1について説明する。
吸収性シート1は、ヒートシールに等により、一体的に接合されている。吸収性シート1の平面視における接合面積率は、不織布の繊維同士を密着させてその空隙を小さくし繊維間の乱反射を抑える観点から、15〜50%が好ましい。
【0039】
防漏シート3の外面には、衣服固着用(衣服装着用)の粘着剤が貼付されている。この粘着剤は、上記接着剤について述べた観点と同様に、例えばSEBS系ホットメルト等において、酸化チタンの含有量を0〜0.5重量%にしたものであり、剥離紙によって覆われている。
【0040】
吸収性シート1の全体の厚さは、シートのクッション感(柔らかさ)と吸収容量の確保と、全体の透明感の確保とのバランスを保つ観点から、2mm以内であり、好ましくは1.5mm以内である。なお、最低限の吸収性及びクッション感を確保する観点からは、吸収性シート1の厚さが、0.3mm以上であることが好ましく、0.6mm以上であることがより好ましい。吸収性シート1の厚さは、ピーコック厚さゲージにて、2.5g/cm2の荷重で測定する。
【0041】
以上述べたように、本実施形態によれば、防漏シート3の全体に亘って印刷した模様5を、吸収層2を通して透かし、肌当接面側から認識可能にしたため、吸収性シート1の全面で内側の模様5を透かして目視することにより、着用者におしゃれ感覚(又は高級感)を与えると共に、脱衣の際、体液の吸収状態が模様に紛れて見えにくくすることもできる。さらに、防漏シート3が半透明の場合、吸収性シート1全体の透明感により着用感を目立たなくさせることもできる。
【0042】
また、本実施形態によれば、防漏シート3が不透明の場合、模様5を防漏シート3の内面に印刷し、防漏シート3の透過率を吸収層2の透過率より低く設定したため、下着色に依らず地色を背色にして模様5を鮮明にしたり、地色を下着色と調和させてこれに模様5を融合させたりすることができる。
【0043】
防漏シート3が不透明の場合、模様5を防漏シート3の内面に印刷し、また、模様5の色を調整することにより、防漏シート3の外面(非肌当設面)より模様が認識されない形態にした場合には、模様5が下着を透して見えにくく、吸収性シートの着用を他者に気づかれにくいため、下着や衣服の種類に気遣う必要がなくなる。また、防漏シート3の外面(非肌当設面)より模様が知覚されない場合には、模様5が下着を通して見えることはなく、一層、吸収性シートの着用を他者に気づかれにくくなる。ここで、外面から「認識されない」とは、模様の詳細や形状までは認識できないレベルを指し、「知覚されない」とは、模様の有無が気づかないレベルを指す。
【0044】
さらに、本実施形態によれば、吸収層2の表面層に、エンボス又は開孔からなる配列パターンを形成したため、防漏シート3上の模様5と融合して、立体的な模様を構成することができる。
【0045】
さらにまた、本実施形態によれば、全面的に印刷された防漏シート3の透湿度を、2.0g/(100cm2・24h)以上にしたため、本来の防漏シート3の透湿性を保有しつつ、防漏シート3から体液を染み出しにくくすることができる。
【0046】
着色個装材料との組み合わせにおいては、更に異なる視覚的効果をもたらすことができる。
具体的には、例えば、青に着色した剥離処理個装フィルムにかかる吸収シートを剥離可能に貼り合わせて提供される吸収性物品において、防漏シート3が個装フィルムの色をすかす程度の透明度を有し、かつ該防漏シート3に施された模様5の少なくとも一部が個装フィルムの色調と同系色であった場合、該模様は個装フィルムから製品を剥がすと始めて現れることになるため、使用者に視覚的インパクトを与えることが可能である。該模様と、異なる色調の模様とを組み合わせて印刷してなる製品の場合は、個装開封時に識別可能な模様と、製品を剥がして始めて現れる模様とが組み合わさって更にインパクトを与えることが可能である。この場合フィルムの色の濃度如何で、該防漏シートは第1防漏シートの場合も第2防漏シートの場合もあり得る。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本実施形態の吸収性シートの外観を示す斜視図である。
【図2】図1のA−A切断線に沿った断面図である。
【符号の説明】
【0048】
2 吸収層
3 防漏シート(防漏材)、第1防漏シート(半透明シート)、第2防漏シート(不透明シート)
5 模様

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収層と防漏層とを備え、防漏層には模様が形成されており、防漏層の模様が肌当接面側から認識可能に構成されている吸収性シート。
【請求項2】
前記吸収層は、不織布で構成されている請求項1記載の吸収性シート。
【請求項3】
前記吸収層は、着色剤の含量が2%以下である請求項1又は2に記載の吸収性シート。
【請求項4】
前記吸収層は、背黒色明度LBが0〜20であり、且つ、背白色明度LWが30〜100である請求項1〜3の何れかに記載の吸収性シート。
【請求項5】
前記吸収層には、エンボス又は開孔からなる配列パターンが形成されている請求項1〜4の何れかに記載の吸収性シート。
【請求項6】
前記模様は、前記防漏層の内面に印刷されており、防漏材層の外面から認識されない請求項1〜5の何れかに記載の吸収性シート。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−26080(P2006−26080A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−208859(P2004−208859)
【出願日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】