説明

吸収性及び生体適合性繊維ガラス組成物並びにそれらの使用

本発明は、SiO2 60〜70質量%、Na2O 5〜20質量%、CaO 5〜25質量%、MgO 0〜10質量%、P25 0.5〜3.0質量%、B23 0〜15質量%、Al23 0〜5質量%を含み、並びに0.05質量%未満のカリウムを含む生体適合性及び吸収性の溶融法作成ガラス組成物に関する。この発明はまた、本発明のガラス組成物から製造された生体適合性及び吸収性ガラス繊維に関する。この発明はさらに、本発明の繊維を含む医療用具に関する。この発明はまたさらに、ガラス繊維を製造するための本発明の組成物の使用、及び医療用具を製造するための本発明の繊維の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カリウムフリーの溶融法で作成した吸収性及び生体適合性ガラス組成物、それらの組成物の繊維ガラス、並びに医療用具の製造のためのそれらの使用、並びにそれらの吸収性繊維を含む医療用具に関係する。
【背景技術】
【0002】
様々な生体活性ガラス組成物が当技術分野で知られている。それらは、骨及び軟組織に結合することができ、それらは、哺乳類体内で組織増殖または骨成長を促進するために用いられ得る。生体活性ガラスはまた概して、前記ガラス内で成長する新しい組織の形成を導く。生体活性ガラスが生理環境に接するとき、シリカゲルの層がガラスの表面に形成される。この反応に続いて、リン酸カルシウムがこの層に堆積し、ヒドロキシル−カーボネートアパタイトに最終的に結晶化される。このヒドロキシル−カーボネートアパタイト層のために、哺乳類の体内に入れられるときに生体活性ガラスの吸収が遅くなる。
【0003】
他の種類の吸収性ガラス組成物が当技術分野で知られている。吸収性ガラスは必ずしも生体活性ではなく、すなわち、ガラス表面上にヒドロキシルカーボネートアパタイトを形成しない。吸収性ガラス組成物はガラス繊維産業で用いられ、ガラス繊維がもたらす問題、例えばガラス繊維断熱材の取り付けの際の肺内部におけるガラス繊維がもたらす問題を解決する。有害作用が生体に起きないように、繊維が好ましくは比較的早く消失する。一つの吸収性ガラス組成物が文書EP0412878に開示されている。その繊維は、32日以内で分解する。しかしながら、そのような分解速度は、ほとんどの医療用途、例えば骨欠損または骨折を固定するためのスクリュー(screw)またはピン(pin)用には速すぎる。
【0004】
文書EP0915812B1及びEP1484292A1は、労働安全衛生を改善するための生体溶解性組成物を開示している。WO03/018496A1は、抗炎症性創傷治療ガラス粉末組成物を開示している。US6,482,444B1は、in vitro及びex vivoの細胞培養に用いられる用具を作製するために、インプラントされる材料に用いられる銀含有生体活性のゾルゲル法により得られるガラス組成物を開示している。
【0005】
文書EP0802890B1は、広い使用範囲(working range)を有する生体活性ガラス組成物を開示している。失透問題は、ガラスにカリウム及び所望によりマグネシウムを加えることにより、回避される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、生体適合性及び吸収性の溶融法作成ガラス組成物を提供することである。
【0007】
本発明の他の目的は、生体適合性及び吸収性ガラス繊維を提供することである。
【0008】
本発明のさらなる目的は、医療用具を提供することである。
【0009】
本発明のさらに他の目的は、吸収性の溶融法作成ガラス組成物及び繊維の使用を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
したがって、本発明は、
SiO2 60〜70質量%
Na2O 5〜20質量%
CaO 5〜25質量%
MgO 0〜10質量%
25 0.5〜3.0質量%
23 0〜15質量%
Al23 0〜5質量%、及び
Li2O 0〜1質量%
を含み、
0.05質量%未満のカリウムを含む、生体適合性及び吸収性の溶融法作成ガラス組成物を提供する。
【0011】
本発明はまた、本発明の生体適合性及び吸収性の溶融法作成ガラス組成物から製造した生体適合性及び吸収性ガラス繊維を提供する。
【0012】
本発明は、本発明の繊維を含む医療用具をさらに提供する。
【0013】
本発明は、ガラス繊維を製造するための本発明の生体適合性及び吸収性の溶融法作成ガラス組成物の使用、並びに医療用具を製造するための本発明の繊維の使用をさらに提供する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明に係る組成物を含む様々な繊維組成物の繊維の溶解時間の関数としてのSBF溶解試験におけるpH変化を表す。
【図2】図2は、本発明の様々な繊維組成物の溶解時間の関数としてのSBF溶解試験における引張り強度の変化を表す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
定義
本願に用いられる用語は、特に定義されないものは、1987年及び1992年の生体材料のコンセンサス会議で同意されたものであり、Williams, DF(ed.): Definitions in biomaterials: Proceedings of a consensus conference of the European Society for Biomaterials, Chester, England. March 3-5, 1986. Elsevier, Amsterdam 1987, and Williams DF, Black J, Doherty PJ. Second consensus conference on definitions in biomaterials. ln: Doherty PJ, Williams RL, Williams DF, Lee AJ (eds). Biomaterial-Tissue Interfaces. Amsterdam: Elsevier, 1992を参照されたい。
【0016】
本願において、生体活性材料とは、生体活性を生じさせるかまたは調節するように設計された材料を意味する。生体活性材料はしばしば、哺乳類の組織と化学的に結合することができる表面活性材料である。
【0017】
本明細書における吸収性と言う用語は、哺乳類の体内に導入されたとき及び生理環境に接触したときの長期の移植の際に、材料が分解される(disintegrated)、すなわち分解される(decomposed)ことを意味する。特に、吸収性ガラスという用語は、生理環境に接触したときに、その表面にヒドロキシル−カーボネートアパタイト層を形成しないシリカリッチのガラスを意味する。吸収性ガラスは、吸収によって体内から消失し、その分解過程の際に、細胞または細胞増殖を実質的に活性化しない。
【0018】
生体材料とは、生態系と適合させて、生体の任意の組織、器官、または機能を、評価、処理、増進(augment)、または置換することを意図する材料を意味する。生体適合性とは、医療用具に用いられる材料の性能であって、特定の位置内で適切な宿主反応を起こすことにより安全に且つ的確に機能する材料の性能を意味する。吸収とは、単純な溶解による生体材料の分解を意味する。複合材料とは、少なくとも2つの異なる構成、例えば有機ポリマー及びガラス等のセラミック材料を含む材料を意味する。
【0019】
溶融法作製ガラス繊維とは、700〜1500℃の坩堝中でガラスを溶融し、坩堝の穴を通して溶融ガラスのガラス繊維を引き出すことによって製造されるガラス繊維を意味し、5〜300μm(マイクロメートル)の範囲の直径を有する繊維が得られる。
【0020】
本明細書において、医療用具という用語は、生体内に用いられる任意の種類のインプラント、及び組織または骨の治療または再生のサポートに用いられる用具に関する。本明細書において、インプラントには、骨折の固定のための及び/若しくは治療用に骨折を固定する骨切り術のための、スクリュー(screw)、プレート、ピン、びょう(tack)、若しくはくぎ(nail);骨への軟組織の固定、骨内への軟組織の固定、及び軟組織への軟組織の固定用の縫合アンカー(suture anchor)、びょう、スクリュー、ボルト、くぎ、クランプ、ステント、及び他の用具;並びに組織若しくは骨の治療若しくは再生のサポートに用いられる用具;または後側方脊椎椎体固定(postero-lateral vertebral fusion)、椎体間固定(interbody fusion)、及び脊髄手術における他の作業用の頸部くさび(cervical wedge)及び腰椎間ケージ(lumbar cage)及びプレート及びスクリュー等、の外科的な筋骨格用途に用いられる任意の種類のインプラントが含まれる。医療用具材料の用途及び目的に応じて、本医療用具は、生体適合性であること、及び哺乳類の体内で制御された吸収を示すことが期待され、そのように設計される。最適な吸収速度は、所望のインプラント位置における組織の再生速度に直接比例する。骨組織の場合、インプラントの大きな割合が、好ましくは、組織内で用途に応じて6〜14ヶ月以内に吸収/分解される。治療組織への物理的サポートが望ましい場合は、吸収速度は、数ヶ月または数年であってもよい。さらに、本発明は、カニューレ(canule)、カテーテル、及びステントなどの医療用具に使用され得る。本発明は、組織工学用の繊維強化足場(scaffold)に使用され得る。
【0021】
本明細書において、特に指定がなければ、「含む」(comprise)、「含む」(comprises)、及び「含む」(comprising)はそれぞれ、「含む」(include)、「含む」(includes)、及び「含む」(including)を意味する。すなわち、本発明が特定の特徴を含むものとして記載または規定されるとき、同じ発明の様々な実施形態が追加の特徴を含んでもよい。
【0022】
本発明の好ましい実施形態
本発明は、医療用具に好適に用いられるゆっくりとした吸収性及び生体適合性の繊維ガラス組成物を提供する。分解性ガラスの吸収は、組成、及び体積に対する表面の比、すなわち、生理環境による表面浸食に依存する。繊維の体積に対する大きな表面比のために、アルカリ及びアルカリ土類金属イオンの生理環境への放出が不所望に速くなり得る。したがって、ガラスの吸収速度並びにアルカリ及びアルカリ土類金属イオンの生理環境への放出を把握し制御し得ることが重要である。生体活性繊維ガラスは、アルカリ交換反応により水溶液と接触すると直ちに反応し始める。すなわち、ガラス中のナトリウム及びカリウムイオンが、溶液の水素イオンによって置き換えられる。急速な高分解性は、その緩衝能力にもかかわらず、望ましくない高い値に、周りの間質液のpHを局所的に増加するだろう。さらに、生体液は、比較的高い含有量のナトリウムを含むが、カリウムイオンの含有量は低い。したがって、ガラスからのカリウムイオンの急速な浸出は、ナトリウムイオンの浸出よりも、局所的な生体液組成に、より高い相対的影響を有しやすい。すなわち、アルカリ金属イオンは、有害な高い局所的pH上昇に関与し、また、所定の場合に、カリウムが、神経毒性及び細胞毒性作用による生理的問題を引き起こし得る。
【0023】
このたび、驚くべきことに、溶融法作成ガラス繊維組成物にカリウムを含めないことが、生体適合性を向上し、神経毒性及び細胞毒性作用を取り除くということが判明した。カリウムは、筋肉収縮及び神経伝達において重要な役割を果たす。筋肉及び神経細胞は、細胞へカリウムが入り細胞からカリウムが出るための特殊経路を有する。組織中の細胞外マトリックスにてカリウムの量が増加すると、例えば筋肉及び神経の細胞が損傷し得る、すなわち、ヒト組織に毒性であり得ることが当技術分野で良く知られている。
【0024】
さらに、本発明にて示されるガラス組成物中のシリカ及び他の成分、すなわち、Na2O、CaO、MgO、P25、B23、及びAl23の量を変えることによって、ガラス繊維の吸収速度が、容易に制御され得、異なる最終用途に適切であり得る。
【0025】
本発明の一態様によれば、SiO2及びNa2Oの量が重要な特徴であり、それぞれ、好ましくは60〜70質量%及び5〜20質量%の量に保持して、放出アルカリ金属の量を多くせずにガラス繊維の吸収性を維持すべきであり、このようにして、生理環境における有害または毒性の局所的pHピークを防止する。加えて、長期間の生体活性の保持、すなわちガラス繊維のCaP形成を行うために、リン及びカルシウム酸化物の十分な量が必要である。さらに、アルミニウム及び酸化ホウ素が、溶解性を減少するために用いられ得、酸化マグネシウムが、弾性を向上し、溶融物からの繊維形成を促進するために加えられ得る。
【0026】
本発明に好適な、典型的なカリウムフリー、すなわち、最大でもごく微量のカリウムを含む、吸収性の溶融法作成ガラス組成物は、
SiO2 60〜70質量%
Na2O 5〜20質量%
CaO 5〜25質量%
MgO 0〜10質量%
25 0.5〜3.0質量%
23 0〜15質量%
Al23 0〜5質量%、及び
Li2O 0〜1質量%
を含む。
【0027】
本ガラス組成物はカリウムフリーであるが、例えば、原材料からの不純物として、0.05質量%以下、好ましくは0.03質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下、最も好ましくは0.005質量%以下のカリウムを含んでもよい。カリウムは好ましくは除かれ、不純物としてさえも避けるべきである。
【0028】
本発明の多くの好ましい組成物は、
SiO2 62〜68質量%
Na2O 10〜15質量%
CaO 8〜20質量%
MgO 0〜10質量%
25 0.5〜3質量%
23 0〜4質量%、及び
Al23 0〜2.5質量%
を含む。
【0029】
本発明の多くの他の好ましい組成物は、
SiO2 62〜68質量%
Na2O 10〜15質量%
CaO 10〜20質量%
MgO 0〜10質量%
25 0.5〜3質量%
23 1.3〜4質量%、及び
Al23 0〜2.5質量%
を含む。
【0030】
本発明のいくつかの好ましい組成物は、
SiO2 62〜68質量%
Na2O 10〜15質量%
CaO 8〜20質量%
MgO 0〜6質量%
25 0.5〜3質量%
23 0〜4質量%、及び
Al23 0〜2.5質量%
を含む。
【0031】
本発明のいくつかの他の好ましい組成物は、
SiO2 64〜66質量%
Na2O 5〜10質量%
CaO 11〜18質量%
MgO 2〜8質量%
25 0.5〜3質量%
23 0〜5質量%、及び
Al23 0〜1.0質量%
を含む。
【0032】
本発明のさらなる好ましい組成物は、
SiO2 64〜66質量%
Na2O 5〜10質量%
CaO 12〜18質量%
MgO 2〜6質量%
25 0.5〜3質量%
23 0〜3質量%、及び
Al23 0〜1.0質量%
を含む。
【0033】
本発明の吸収性及び生体適合性の溶融法作成ガラス繊維は、本発明に係る吸収性ガラス組成物から作られる。本発明に係る好ましい繊維は、本発明の好ましい組成物から作られる。
【0034】
本発明の典型的な繊維が疑似体液(SBF)中にin vitroで完全に吸収される時間であって、+37℃にて浸漬溶解(dissolution in sink)させることによって決定される吸収速度を用いた吸収カーブの直線部分を用いて計算される時間は、1〜100ヶ月、好ましくは2〜45ヶ月、より好ましくは3〜15ヶ月、さらに好ましくは4〜70ヶ月、さらにより好ましくは5〜30ヶ月、最も好ましくは6〜15ヶ月である。
【0035】
本発明の典型的な繊維の太さは、300μm未満、好ましくは1〜75μm、より好ましくは5〜30μm、さらに好ましくは10〜25μm、さらにより好ましくは10〜20μm、最も好ましくは約15μmである。
【0036】
本発明の典型的な繊維の引張り強度は、0.7〜3GPa、好ましくは0.9〜2.5GPa、より好ましくは1.0〜2.0GPa、最も好ましくは1.5〜2.0GPaである。
【0037】
本発明の他の典型的な繊維の引張り強度は、0.6〜2GPa、好ましくは0.9〜1.8GPa、より好ましくは1.0〜1.6GPa、最も好ましくは1.1〜1.5GPaである。
【0038】
本発明に係る医療用具は、本発明の繊維を含む。本発明に係る好ましい医療用具は、本発明の好ましい繊維を含む。本発明に係る多くの好ましい用具は、本発明の短(chopper)及び/若しくは長(continuous)繊維に完全に基づくものであるか、若しくは短及び/若しくは長繊維を含み;並びに/または本発明に係る繊維を含む任意の種類のテキスタイル、織布、若しくは不織布である。
【0039】
本発明の典型的な医療用具が、生体内で用いられる任意の種類のインプラント、好ましくは、関節インプラント、内部/外部固定用具、ステント、ピン、くぎ、スクリュー、スパイク、スタッド、プレート、並びに組織または骨の治療及び/または再生をサポートするための用具からなる群から選択される。
【0040】
本発明の医療用具のいくつかの好ましい実施態様において、本発明に係る繊維の量は、前記医療用具の繊維の全体積の10体積%超、好ましくは40体積%超、より好ましくは60体積%超、最も好ましくは90体積%超である。
【0041】
本発明のいくつかの好ましい実施態様において、繊維は、連続ポリマーマトリックス中に埋め込まれている。好ましくは、ポリマーマトリックスが、ポリグリコリド(PGA); グリコリド/L−ラクチドコポリマー(PGA/PLLA)、グリコリド/トリメチレンカーボネートコポリマー(PGA/TMC)等のグリコリドのコポリマー; ポリラクチド(PLA); ポリ−L−ラクチド(PLLA)、ポリ−DL−ラクチド(PDLLA)、L−ラクチド/DL−ラクチドコポリマー等のPLAのステレオコポリマー; ラクチド/テトラメチルグリコリドコポリマー、ラクチド/トリメチレンカーボネートコポリマー、ラクチド/d−バレロラクトンコポリマー、ラクチド/ε−カプロラクトンコポリマー等のPLAの他のコポリマー; ラクチド/グリコリド/トリメチレンカーボネートターポリマー、ラクチド/グリコリド/ε−カプロラクトンターポリマー、PLA/ポリエチレンオキシドコポリマー等のPLAのターポリマー; ポリデプシペプチド; 非対称3,6−置換型のポリ−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン; ポリヒドロキシブチレート(PHB)等のポリヒドロキシアルカノエート; PHB/b−ヒドロキシバレレートコポリマー(PHB/PHV); ポリ−b−ヒドロキシプロピオネート(PHPA); ポリ−p−ジオキサノン(PDS); ポリ−d−バレロラクトン; ポリ−ε−カプロラクトン; メチルメタクリレート−N−ビニルピロリドンコポリマー; ポリエステルアミド; シュウ酸のポリエステル; ポリジヒドロピラン; ポリアルキル−2−シアノアクリレート; ポリウレタン(PU); ポリビニルアルコール(PVA); ポリペプチド; ポリ−b−リンゴ酸(PMLA); ポリ−b−アルカン酸; ポリカーボネート; ポリオルトエステル; ポリホスフェート; ポリ(エステル無水物)、及びそれらの混合物または熱硬化性樹脂からなる群から選択される少なくとも1つのポリマー; 並びに好ましくはポリ(ε−カプロラクトン)、ポリ(ε−カプロラクトン−L−ラクチド)コポリマー、ポリラクチド−co−グリコリド、及びポリラクチドからなる群から選択される少なくとも1つのポリマーを含む。
【0042】
このような繊維または本医療用具に含まれる繊維は、生理環境にさらされたときに吸収性及び生体適合性である。
【0043】
上述のガラス組成物は、繊維ガラス製造プロセスに含まれる所定の制限を除いて、当技術分野で知られている標準溶融プロセスにしたがって作られる。原材料の純度、粒径分布、溶融、破砕、及び再溶融プロセスのシーケンスに由来する均質性に特別な焦点を置く必要がある。次いで、溶融法により作られる均質ガラスプリフォームは、特許出願EP1958925A1に記載の方法にしたがって繊維に延伸される。吸収性及び生体活性ガラスは、ガラスが加熱されるときに、アモルファスガラス状態から結晶状態に移行する強い傾向を有するため、繊維を製造するための特許技術、例えば特許出願EP1958925A1に記載の技術であって、吸収性及び生体活性ガラスの幅広い範囲の製造を可能にし、繊維の製造の際の結晶化に関する問題を回避する技術が、好ましく用いられる。
【0044】
ほとんどの生体分解性ガラス組成物は、結晶化特性、溶融粘度特性、及び溶融強度に起因して、溶融法で作成される繊維の延伸に不適切であることが当業者に知られている。驚くべきことに、上述の組成物が、繊維延伸促進(及び細胞毒性)成分のK2Oを欠いているにもかかわらず、特許出願EP1958925A1に記載される方法を用いて産業スケールでも繊維の延伸に適していることが本発明において見出された。本繊維は、例えば同じ直径を有するポリマー繊維と比較した場合に、改良された強度特性を示す。本発明の一実施態様によれば、好適なガラス繊維は、通常、700MPa〜3GPa、より典型的には900MPa〜2.5GPa、好ましくは1.0〜2.0GPa、より好ましくは1.5〜2.0GPaの引張り強度を示す。比較ポリマー繊維は概して300〜600MPaの引張り強度を有する。ガラス繊維の弾性率は概して50〜100GPa、より典型的には60〜80GPa、好ましくは65〜75GPaである。
【0045】
本発明に係る医療用具の利点は、それらが、カリウムの放出及び/または局所的な高pHによる毒性作用をもたらさずに、分解によって生体から消失することである。
【0046】
本発明に係る医療用具の他の利点は、それらの強度及び製造の実現可能性である。本発明に係る医療用具は、繊維を、ポリマーマトリックス、好ましくは吸収性ポリマーマトリックスとともに配置し、任意の種類のポリマー加工装置、例えばオープン若しくはクローズドバッチミキサー若しくはニーダー、連続攪拌タンク反応器若しくはミキサー、押出機、注入成型機、RIM、管型反応器、または当分野で知られている他の標準溶融加工若しくは溶融混合装置を用いて、ポリマーマトリックスとともに配置した繊維を、連続繊維及び/若しくは短(chopped)/カット(cut)繊維及び/若しくは織布、不織布のマット/テキスタイルの所望の配向を有するインプラントに作る及び/若しく成形することによって製造され得る。本発明の一つの利点は、マトリックス材料の溶融温度が約30〜300℃であり、繊維のガラス転移温度が約450〜650℃であることである。結果として、ガラス繊維は、溶融マトリックス材料の温度によって損傷せず、マトリックスを固化させたときに強い繊維強化医療用具が得られる。本発明に係るインプラントはまた、任意の種類のポリマー加工装置、例えば、オープン若しくはクローズドバッチミキサー若しくはニーダー、連続攪拌タンク反応器若しくはミキサー、押出機、注入成型機、RIM、管型反応器、または当分野で知られている他の標準溶融加工若しくは溶融混合装置を用いることによって、製造され得る。
【0047】
本発明に係るガラス組成物は、吸収性であることに加えて、生体適合性でもある。したがって、本ガラス組成物は、ヒトなどの哺乳類に埋め込まれ得、不所望の態様で反応せず、副作用も起こさず、または周辺の組織と拒絶反応を起こさない。
【0048】
本発明に係る吸収性ガラス組成物の吸収速度は、通常、1〜100ヶ月、3〜30ヶ月、4〜80ヶ月、5〜45ヶ月、6〜20ヶ月であり、8〜16ヶ月のときもあり、これらの吸収速度は、医療用途に十分である。例えば、前十字靱帯スクリューの典型的な吸収速度は3〜24ヶ月であり、そのとき、組成物のシリカ含有量は、おおよそ60〜65質量%である。組成物が内部の固定用具に好適な医療用具に用いられるとき、典型的な吸収速度は12〜24ヶ月であり、そのとき、組成物のシリカ含有量は、おおよそ66〜70質量%である。
【0049】
吸収速度または分解は、水溶液中への所定の浸漬時間にて溶解したシリカイオン濃度を測定することによって測定され得る。吸収速度、すなわちガラス繊維の分解を測定するための好適な方法は、例えば、J. Korventausta et al., Biomaterials, Vol. 24, Issue 28, December 2003, pp. 5173 - 5182に開示されている。分解を測定する他の方法は、水溶液中での質量損失、pH変化、及び機械強度の低下をモニターすることである。
【0050】
本発明はまた、上で規定した吸収性及び生体適合性ガラス組成物から作られた吸収性及び生体適合性ガラス繊維に関する。好適な吸収性及び生体適合性ガラス組成物に関連して上に列記した全ての特徴及び実施形態は、本発明に係る好適な繊維及び医療用具に準用される。
【0051】
本発明の一実施態様によれば、本発明に好適な繊維の太さは300μm未満、典型的には1〜75μm、より典型的には5〜30μm、好ましくは10〜25μm、より好ましくは10〜20μm、通常、約15μmである。繊維は、糸、ひも、ロービング、及びバンドとして、長い単一の繊維として用いられ得るか、またはテキスタイル技術の方法を用いて作成した様々な種類の布として用いられ得る。
【0052】
繊維はまた、短繊維、及び短繊維から製造されたマットまたはテキスタイルとして使用され得る。例えば、本発明の一実施態様によれば、300μm未満、典型的には1〜75μm、より典型的には5〜30μm、好ましくは10〜25μm、より好ましくは10〜20μm、通常、約15μmの直径を有する繊維が、短繊維として用いられ得る。短繊維はまた、不織テキスタイル状材料を調製するために用いられ得る。これらの不織テキスタイルは、吸収性プラスチックと組み合わされ得、例えば、熱成形インプラントの製造に用いられ得る。短繊維はまた、射出成形またはポリマー加工の分野で知られている他の加工技術によって製造されるインプラントを強化するために用いられ得る。
【0053】
本発明の一実施態様によれば、短繊維の長さは、20mm未満、典型的には0.5〜10mm、より典型的には1〜5mm、好ましくは3〜5mm、通常、約5mmである。本発明の他の実施態様によれば、長繊維の長さは、20mm超、好ましくは30mm超、通常、40mm超、または最も好ましくは、一例としての引き抜き成形における完全な長繊維と同じ長さである。
【0054】
本発明に好適な吸収性ガラス組成物は、様々な医療用具を製造するために用いられ得る。そのような用具は、治療の際に、欠陥部位をサポートし強化するために用いられ得、欠陥が治癒すると組織の一部を形成することができる。上述のいくつかの組成物の長期間の生体活性のために、組織は、吸収性材料内で増殖して、組織再生足場として機能し得る。
【0055】
本発明に係る医療用具はポリマーマトリックス、好ましくは連続ポリマーマトリックスを含むが、不連続ポリマーマトリックスを排除せず、ポリマーマトリックスは天然に生体適合性である。前記生体適合性のポリマーマトリックスはまた吸収性であってもよく、好ましくは吸収性であるが、生体安定性の生体適合性ポリマーを排除しない。
【0056】
吸収性ガラス繊維は、好ましくは、連続ポリマーマトリックス内に埋め込まれるが、これは繊維の表面が前記ポリマーによって覆われることを意味する。好ましくは繊維表面の少なくとも80%がポリマーマトリックスによって覆われ、さらに好ましくは繊維表面の少なくとも90%、最も好ましくは繊維表面の少なくとも95%がポリマーマトリックスによって覆われる。また、好ましくは、医療用具の表面の繊維の少なくとも99%がポリマーマトリックスによって覆われる。
【0057】
本発明によれば、繊維は、分解性ガラスを含み、より高い生体活性及び吸収速度を有するまたは有さない組織工学医療用具における分解性マトリックスに埋め込まれた耐荷重成分として用いられ得、顆粒状、球状、ブロック状、及び繊維状の形態であることができる。
【0058】
本発明によれば、繊維は、多孔質組織工学足場における分解性マトリックスに埋め込まれた生体活性成分として用いられ得る。好ましくは、足場は、60%、より好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも90%の空孔率を有する。
【0059】
本発明に係る医療用具のポリマーマトリックス材料は、メタクリル酸、アクリル酸、及びビニルピロリドンのポリマー、ポリオレフィン、ポリアルキレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポリラクトン、ポリカーボネート、ポリ無水物、脂肪族ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、液晶ポリマー、ポリオルトエステル、上述のもののコポリマー及び上述のポリマーの熱硬化性樹脂、ヒドロキシ酸由来の単位をベースとするポリマー及びコポリマー、並びに糖、でんぷん、セルロース及びセルロース誘導体、多糖、コラーゲン、キトサン、フィブリン、ヒアルロン酸(hyalyronic acid)、ポリペプチド、及びプロテイン等の天然ポリマー等の、生体適合性ポリマーからなる群から選択され得る。
【0060】
したがって、ポリマーマトリックス材料は、生体安定性または吸収性材料のいずれかであってもよい。材料は多孔質であることができ、また使用の際及び/または組織と接触するときに多孔質になることができる。生体安定性ポリマーは溶解せず、または生体液または組織と接触して反応しない。いくつかの好適な生体安定性ポリマーは、メチル(メタクリレート)等のアクリル酸またはメタクリル酸の誘導体である。いくつかの好適な吸収性ポリマーは、ラクトン及びラクチド及びポリカーボネートのホモ−及びコポリマーである。ポリマーは、生体分解性及び/若しくは生体吸収性ポリマー並びに/または生体ポリマーであってもよく、好ましくはヒドロキシ酸単位から誘導され、好ましいポリマー材料は、ポリ(ε−カプロラクトン−L−ラクチド)コポリマー、またはポリ(ε−カプロラクトン)、またはポリ(DL−ラクチド)、またはポリ(L−ラクチド)、またはポリ(L−ラクチド−co−グリコリド)である。また、上述のポリマーの任意の混合物及びそれらの様々な形態が用いられ得る。いくつかの実施形態について、ガッタパーチャが用いられ得る。
【0061】
本発明の一実施形態によれば、次の吸収性ポリマー、コポリマー、及びターポリマーがまた、マトリックス材料として用いられ得る:ポリグリコリド(PGA); グリコリドのコポリマー、グリコリド/トリメチレンカーボネートコポリマー(PGA/TMC); ラクチド/テトラメチルグリコリドコポリマー、ラクチド/トリメチレンカーボネートコポリマー、ラクチド/d−バレロラクトンコポリマー、ラクチド/ε−カプロラクトンコポリマー等のPLAの他のコポリマー; ラクチド/グリコリド/トリメチレンカーボネートターポリマー、ラクチド/グリコリド/ε−カプロラクトンターポリマー、PLA/ポリエチレンオキシドコポリマー等のPLAのターポリマー; ポリデプシペプチド; 非対称3,6−置換型のポリ−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン; ポリヒドロキシブチレート(PHB)等のポリヒドロキシアルカノエート; PHB/b−ヒドロキシバレレートコポリマー(PHB/PHV); ポリ−b−ヒドロキシプロピオネート(PHPA); ポリ−p−ジオキサノン(PDS); ポリ−d−バレロラクトン − ポリ−ε−カプロラクトン; メチルメタクリレート−N−ビニルピロリドンコポリマー; ポリエステルアミド; シュウ酸のポリエステル; ポリジヒドロピラン; ポリアルキル−2−シアノアクリレート; ポリウレタン(PU);ポリビニルアルコール(PVA); ポリペプチド; ポリ−b−リンゴ酸(PMLA); ポリ−b−アルカン酸; ポリカーボネート; ポリオルトエステル; ポリホスフェート; ポリ(エステル無水物); 及びそれらの混合物; 及び上述のポリマーの熱硬化性樹脂。
【0062】
本発明に係る医療用具はまた、EP0802890及びEP1405647に開示される組成物から作成される繊維等の生体活性ガラス繊維を含んでもよい。医療用具はまた、ポリマーマトリックスと関連した上述の任意のポリマーの繊維等のポリマー繊維を含んでもよい。ただし、吸収性ガラス繊維の量は、医療用具の繊維の全体積の、通常10体積%超、好ましくは40体積%超、より好ましくは60体積%超、最も好ましくは90体積%超である。
【0063】
本発明のさらなる他の実施態様によれば、医療用具は、異なる組成を有する2以上の種類の吸収性繊維を含んでもよい。医療用具はまた、異なるメジアン径を有する2以上の繊維群を含んでもよい。また、医療用具の全ての繊維は同じ直径を有さないが、その直径は所望により様々であってもよいということが可能である。
【0064】
本発明に係る医療用具に用いられる全ての繊維は、長繊維または短繊維等の様々な形態であってもよい。それらの配向はまた、それらが用いられる医療用具、及び目的とする用途の機能に依存して自由に選択され得る。
【実施例】
【0065】
ここで、本発明の実施態様は、以下の例に、より詳細に記載される。例は、例は例示的であり、本発明の組成物、方法、及び用途を限定するものではなく、このことは当業者に自明である。
【0066】
生体分解性ガラスプリフォームの一般的な製造を、次の手順にしたがって行った:原材料の乾燥混合、炉内の白金坩堝中での溶解、アニール、粉砕、再溶融、及びアニール。用いた原材料源は、SiO2、Al23、Na2CO3、(CaHPO4)(H2O)、CaCO3、H3BO3、及びMgOである。繊維の延伸を、特許出願EP1958925A1に記載の方法にしたがって行った。
【0067】
例1
pH調査用に製造したガラス繊維組成物
一般的手順にしたがって、次の組成物を、pH調査用のプリフォーム及び繊維の製造に用いた。
【0068】
【表1】

【0069】
繊維断面のSEM像から、平均繊維直径を35μmと推論した。短(cut)(16mg)繊維を、16mlの疑似体液(Kokubo et.al. J.Biomed. Mater. Res. 24 (1990), p.72 によるSBF)に浸漬、すなわちシンク条件(sink condition)下においた。これらの値は、SBFの体積に対する表面積の比に、約0.4cm-1を与えた。用いた浸漬時間の間隔は4〜72時間であった。試料を、37℃の水浴中に保持した。SBFから試料を分離した後、溶液の最終pHを測定した。最初の72時間のpH変化を図1に示す。
【0070】
低速で反応するガラス繊維FL107、FL207、及び中速のS59についてのpH増加は、最初の4時間の間、最小であった。明確なpH増加は、結果から推論され得ない。対照的に、他のガラスのpHは、この時間間隔の間に既に増加した。最初の72時間に、低速ガラスのpHは直線的に増加したが、高速ガラスのpHは、最初の24時間に、より急速に増加し、その後、pHの増加速度は減少した。このことは、高速ガラスについては、リン酸カルシウムの反応層の形成が24時間後に既に始まっており、それによって溶液及びガラスの間に拡散バリアが形成されたことが示唆される。低速ガラスのpHは、1週間までは直線的に増加し続け、その後、反応速度は減少した。速度の減少は、CaP層の形成が始まり、これが、浸出に対して保護層として機能したことを示唆している。
【0071】
例2
高速吸収の、幹細胞を有するカリウム含有繊維ガラス組成物1−98のin vitro試験
【0072】
上の例1に示した高速吸収のカリウム含有繊維ガラス組成物1−98を、加湿5%CO2雰囲気中で、10%のウシ胎仔血清(FBS)、1%の抗生物質/抗真菌剤(antimocotic)、及び1%のL−グルタミンを補充したDMEM−F12中で培養したヒト脂肪幹細胞を用いてin vitroで試験した。繊維ガラス1−98及び細胞を組み合わせる前に、繊維ガラスを、細胞増殖培地を用いて最初に三回洗浄し、次いで、48時間、細胞増殖培地を用いて培養した。細胞の生存を、非定量的生死染色法(non-quantitative dead/alive staining method)を用いて試験した。
【0073】
細胞生存試験の結果を以下に示す:
細胞増殖培地のpHの顕著で急速な上昇、
1−98繊維ガラスについて3日間培養したとき、ほとんどすべての細胞が死滅、
繊維表面に成長していたほんのわずかの生細胞が、緑の細胞質染色によって示される異常形態を有した。
【0074】
例3
アルミナ及び低含有量のリンを有する低速吸収性及び生体適合性繊維ガラス
【0075】
一般的手順にしたがって、次の組成物をプリフォーム及び繊維の製造に用いた:
SiO2 64.0質量%、
Na2O 11.0質量%、
CaO 18.0質量%、
23 2.0質量%、
MgO 2.0質量%、
25 0.5質量%、
Al23 2.5質量%。
【0076】
延伸後、保護ガス下にて繊維をホイル袋に保管し、さらなる分析及び使用のために保管した。組成及び非晶質性について、XRF及びXRDをそれぞれ用いて確認した。平均繊維直径は約35μmであった。
【0077】
例4
高含有量のシリカを有する低速吸収性及び生体適合性繊維ガラス
【0078】
一般的手順にしたがって、次の組成物をプリフォーム及び繊維の製造に用いた:
SiO2 65.5質量%、
Na2O 12.0質量%、
CaO 18.0質量%、
25 1.5質量%、
23 2.0質量%、
MgO 1.0質量%。
【0079】
延伸後、保護ガス下にて繊維をホイル袋に保管し、さらなる分析及び使用のために保管した。組成及び非晶質性について、XRF及びXRDをそれぞれ用いて確認した。平均繊維直径は約35μmであった。
【0080】
例5
高含有量のナトリウム及びマグネシウムを有する低速吸収性及び生体適合性繊維ガラス
【0081】
一般的手順にしたがって、次の組成物をプリフォーム及び繊維の製造に用いた:
SiO2 64.0質量%、
Na2O 16.0質量%、
CaO 14.0質量%、
25 1.0質量%、
23 1.5質量%、
MgO 3.5質量%。
【0082】
延伸後、保護ガス下にて繊維をホイル袋に保管し、さらなる分析及び使用のために保管した。組成及び非晶質性について、XRF及びXRDをそれぞれ用いて確認した。平均繊維直径は約35μmであった。
【0083】
例6
低含有量のナトリウム及び高含有量のカルシウムを有する低速吸収性及び生体適合性繊維ガラス
【0084】
一般的手順にしたがって、次の組成物をプリフォーム及び繊維の製造に用いた:
SiO2 61.0質量%、
Na2O 10.0質量%、
CaO 22.0質量%、
25 3.0質量%、
23 1.0質量%、
MgO 3.0質量%。
【0085】
延伸後、保護ガス下にて繊維をホイル袋に保管し、さらなる分析及び使用のために保管した。組成及び非晶質性について、XRF及びXRDをそれぞれ用いて確認した。平均繊維直径は約35μmであった。
【0086】
例7
低含有量のカルシウム及び高含有量のシリコンを有する低速吸収性及び生体適合性繊維ガラス
【0087】
一般的手順にしたがって、次の組成物をプリフォーム及び繊維の製造用の製造した:
【表2】

【0088】
例8
選択した吸収性及び生体適合性カリウムフリーガラス繊維組成物のガラス溶融物の物理的特性
【0089】
物理的特性(すなわち溶融粘度)を、選択した吸収性及び生体適合性カリウムフリーガラス繊維組成物について、高温回転式粘度計を用いて測定した:
【表3】

【表4】

【0090】
例9
E−ガラスに対する選択した吸収性及び生体適合性カリウムフリーガラス繊維の引張特性の比較
【0091】
単一ガラス繊維の引張り挙動の比較にて、DIN EN ISO5079及びDIN 53835−2にしたがって、1Nのロードセルを備えたFavigraph半自動繊維引張り試験機を用いた。引張り試験を、長さ50mmのゲージを用い、0.2mm/分のクロスヘッドスピードで行った。吸収性及び生体適合性カリウムフリーガラス繊維と、同じ方法で製造された市販のE−ガラス繊維とを比較した。50の並行試料からの平均値としての結果を示す。
【0092】
【表5】

【表6】

【0093】
例10
疑似体液(SBF)中の溶解による機械的強度の関数としてのガラス繊維の吸収
【0094】
一般的手順にしたがって、次の組成物をプリフォーム及び繊維の製造用に用いた:
【表7】

【0095】
ガラス繊維の吸収を、SBF溶解における機械的強度の低下によって測定した。溶解の調査を、繊維をSBFに浸漬することによって行い、試料を0日後、7日後、及び14日後に引き出して分析した。繊維の引張り試験を、ASTM C 1557−03標準にしたがって行った。引張り強度は、ピーク力及び繊維の断面積の比率から計算される。
【0096】
溶解時間の関数としての引張り強度の結果を図2に示す。結果は、本発明に係るガラス繊維組成物に比べて、高速分解性繊維ガラス組成物S59は、SBF中への7日間の浸漬時間の後にすでに急速にその強度を失ったことを示している。
【0097】
他の好ましい実施形態
当然のことながら、本発明の組成物、繊維、医療用具、及び使用は、様々な実施形態で組み込まれ得るが、そのうちの一部のみが、本明細書に開示される。他の実施形態が存在し本発明の趣旨から外れないことは、当業者には明らかである。したがって、記載された実施形態は例示であり、限定するものとして解釈すべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体適合性及び吸収性の溶融法作成ガラス組成物であって、
SiO2 60〜70質量%
Na2O 5〜20質量%
CaO 5〜25質量%
MgO 0〜10質量%
25 0.5〜3.0質量%
23 0〜15質量%
Al23 0〜5質量%を含み、且つ
0.05質量%未満のカリウム
を含むガラス組成物。
【請求項2】
0.03質量%未満、好ましくは0.01質量%未満、最も好ましくは0.005質量%未満のカリウムを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物が、
SiO2 62〜68質量%
Na2O 10〜15質量%
CaO 8〜20質量%
MgO 0〜10質量%
25 0.5〜3質量%
23 0〜4質量%、及び
Al23 0〜2.5質量%
を含むことを特徴とする。請求項1または2に記載の生体活性組成物。
【請求項4】
前記組成物が、
SiO2 64〜66質量%
Na2O 5〜10質量%
CaO 10〜15質量%
MgO 2〜6質量%
25 0.5〜3質量%
23 0〜3質量%、及び
Al23 0〜1.0質量%
を含むことを特徴とする。請求項1または2に記載の組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の生体適合性及び吸収性の溶融法作成ガラス組成物から作られた生体適合性及び吸収性ガラス繊維。
【請求項6】
前記繊維が疑似体液(SBF)中にin vitroで完全に吸収される時間であって、+37℃にて浸漬溶解させることによって決定される吸収速度を用いた吸収カーブの直線部分を用いて計算される時間が、1〜100ヶ月、好ましくは2〜45ヶ月、より好ましくは3〜15ヶ月、さらに好ましくは4〜70ヶ月、さらにより好ましくは5〜30ヶ月、最も好ましくは6〜15ヶ月であることを特徴とする、請求項5に記載の繊維。
【請求項7】
前記繊維の太さが、300μm未満、好ましくは1〜75μm、より好ましくは5〜30μm、さらに好ましくは10〜25μm、さらにより好ましくは10〜20μm、最も好ましくは約15μmであることを特徴とする、請求項5または6に記載の繊維。
【請求項8】
前記繊維の引張り強度が0.7〜3GPa、好ましくは0.9〜2.5GPa、より好ましくは1.0〜2.0GPa、最も好ましくは1.5〜2.0GPaであることを特徴とする、請求項5、6、または7に記載の繊維。
【請求項9】
請求項5〜8のいずれか一項に記載の繊維を含む医療用具。
【請求項10】
前記用具が、請求項5〜8のいずれか一項に記載の短及び/若しくは長繊維に完全に基づいたものであるか、若しくは前記短及び/若しくは長繊維を含み;並びに/または請求項5〜8のいずれか一項に記載の繊維を含む任意の種類のテキスタイル、織布、若しくは不織布であることを特徴とする、請求項9に記載の医療用具。
【請求項11】
用具が、生体内で用いられる任意の種類のインプラント、好ましくは、関節インプラント、内部/外部固定用具、ステント、ピン、くぎ、スクリュー、スパイク、スタッド、プレート、並びに組織または骨の治療及び/または再生をサポートするための用具からなる群から選択されることを特徴とする、請求項9または10に記載の医療用具。
【請求項12】
請求項4〜7のいずれか一項に記載の繊維の量が、前記医療用具の繊維の全体積の10体積%超、好ましくは40体積%超、より好ましくは60体積%超、最も好ましくは90体積%超である、請求項9、10、または11に記載の医療用具。
【請求項13】
前記繊維が、連続ポリマーマトリックス中に埋め込まれている、請求項9〜12のいずれか一項に記載の医療用具。
【請求項14】
前記マトリックスポリマーが、ポリグリコリド(PGA); グリコリド/L−ラクチドコポリマー(PGA/PLLA)、グリコリド/トリメチレンカーボネートコポリマー(PGA/TMC)等のグリコリドのコポリマー; ポリラクチド(PLA); ポリ−L−ラクチド(PLLA)、ポリ−DL−ラクチド(PDLLA)、L−ラクチド/DL−ラクチドコポリマー等のPLAのステレオコポリマー; ラクチド/テトラメチルグリコリドコポリマー、ラクチド/トリメチレンカーボネートコポリマー、ラクチド/d−バレロラクトンコポリマー、ラクチド/ε−カプロラクトンコポリマー等のPLAの他のコポリマー; ラクチド/グリコリド/トリメチレンカーボネートターポリマー、ラクチド/グリコリド/ε−カプロラクトンターポリマー、PLA/ポリエチレンオキシドコポリマー等のPLAのターポリマー; ポリデプシペプチド; 非対称3,6−置換型ポリ−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン; ポリヒドロキシブチレート(PHB)等のポリヒドロキシアルカノエート; PHB/b−ヒドロキシバレレートコポリマー(PHB/PHV); ポリ−b−ヒドロキシプロピオネート(PHPA); ポリ−p−ジオキサノン(PDS); ポリ−d−バレロラクトン; ポリ−ε−カプロラクトン; メチルメタクリレート−N−ビニルピロリドンコポリマー; ポリエステルアミド; シュウ酸のポリエステル; ポリジヒドロピラン; ポリアルキル−2−シアノアクリレート; ポリウレタン(PU); ポリビニルアルコール(PVA); ポリペプチド; ポリ−b−リンゴ酸(PMLA); ポリ−b−アルカン酸; ポリカーボネート; ポリオルトエステル; ポリホスフェート; ポリ(エステル無水物)、及びそれらの混合物または熱硬化性樹脂からなる群から選択される少なくとも1つのポリマー; 並びに好ましくはポリ(ε−カプロラクトン)、ポリ(ε−カプロラクトン−L−ラクチド)コポリマー、ポリラクチド−co−グリコリド、及びポリラクチドからなる群から選択される少なくとも1つのポリマーを含むことを特徴とする、請求項13に記載の医療用具。
【請求項15】
ガラス繊維を製造するための、請求項1〜4のいずれか一項に記載の生体適合性及び吸収性の溶融法作成ガラス組成物の使用。
【請求項16】
医療用具を製造するための、請求項5〜8のいずれか一項に記載の繊維の使用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−524705(P2012−524705A)
【公表日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−506468(P2012−506468)
【出願日】平成22年4月20日(2010.4.20)
【国際出願番号】PCT/EP2010/055192
【国際公開番号】WO2010/122019
【国際公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(503115906)
【Fターム(参考)】