説明

吸収性物品に係る肌側シートの開口部の検査装置、及び検査方法

【課題】吸収性物品に係る肌側シートの開口部を検査する検査装置等を提供する。
【解決手段】検査装置よりも上流側に配置された開口部形成装置10によって、開口部2hは形成される。検査装置は、肌側シート2aが吸収体3に重ね合わせられるよりも前に、前記肌側シート2aの片面のうちで前記開口部2hが形成された領域を撮像して前記領域の平面画像のデータを平面画像データとして生成する撮像処理部32と、前記平面画像データに基づいて二値化画像を生成する際に、前記二値化画像において二値のうちの一方の値によって特定される画像に、前記平面画像のうちで前記開口部2hが撮像されている領域が含まれるように二値化処理を行う二値化処理部36と、前記二値化画像に基づいて前記開口部2hの異常の有無の判定を行う異常判定処理部36と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生理用ナプキン等の吸収性物品に係る肌側シートの開口部の検査装置、及び検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、排泄液等の液体を吸収する吸収性物品の一例として生理用ナプキンが知られている。かかるナプキンは、パルプ繊維を主材とする吸収体と、この吸収体を着用者の肌側から覆って設けられた液透過性の肌側シートと、同吸収体を非肌側から覆って設けられた液不透過性の防漏シートと、を有する。ここで、肌側シートには、同シートを厚み方向に貫通する複数の開口部が形成されている。そして、これら開口部によって肌側シートから吸収体への液体の円滑な浸透を図っている。
【0003】
かかる開口部の形成は、ナプキンの製造ラインに設置された穿孔装置によって行われる。すなわち、同装置は、互いの外周面を対向させながら駆動回転する一対のロールを有し、一方のロールの外周面には、複数の先細り形状のピン部材が設けられており、他方のロールの外周面には、これらピン部材を挿入可能な凹部が設けられている。よって、これらロール同士の間のロール間隙に肌側シートが通される際に、上記のピン部材が肌側シートを厚み方向に貫通することで、上記開口部が形成される(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3688633号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、これらピン部材は、ロールの回転動作によって円弧軌道を移動しながら肌側シートを貫通して開口部を形成し、しかる後に、ピン部材は円弧軌道を描きながら肌側シートから抜けていく。そのため、ピン部材の肌側シートへの貫入深さが深いと、ピン部材が肌側シートの開口部から抜ける際に、ピン部材の先端部で開口部の周縁部を引っかけて、その開口形状を崩してしまう。例えば、開口部の平面形状が、ピン部材の円弧軌道に沿う方向に拡大した長孔状になってしまう。そして、当該長孔の長さが長くなりすぎると、そのナプキンは見た目や風合いが悪くなって、異常品となる。
【0006】
一方、ピン部材の肌側シートへの貫入深さが浅いと、ピン部材が抜けた後の開口部の周縁部の形状の復元の影響もあって、十分大きな開口面積の開口部を形成することができず、また最悪の場合には厚み方向に貫通すらしていないことも有り得て、その場合には、肌側シートから吸収体への液体の浸透性が悪くなり、かかるナプキンも異常品となる。
【0007】
そこで、ナプキンの製造ラインでは、ピン部材の肌側シートへの貫入深さを上述の異常が生じないような深さに設定しているが、肌側シートの坪量のばらつきに応じて、開口部の周縁部の形状の復元の程度やひっかかりの程度も変化するため、かかる製造上の諸条件の変動によって異常が生じる虞がある。
【0008】
そのため、肌側シートに形成された開口部の異常の有無を検査する必要があるが、上述の特許文献1には、かかる開口部の異常の有無を検査する装置や方法については開示されておらず、当該検査装置や検査方法が待望されていた。
【0009】
本発明は、上記のような従来の問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、生理用ナプキン等の吸収性物品に係る肌側シートの開口部を検査する検査装置及び検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための主たる発明は、
吸収性物品に係る肌側シートに厚み方向に貫通形成された複数の開口部を検査する検査装置であって、
前記肌側シートは、前記吸収性物品の着用時に、液体を吸収する吸収体を着用者の肌側から覆いつつ該着用者の肌に当接するシートであり、
前記肌側シートが搬送される搬送方向に関して前記検査装置よりも上流側に配置された開口部形成装置によって、前記開口部は形成され、
前記肌側シートが前記吸収体に重ね合わせられるよりも前に、前記肌側シートの片面のうちで前記開口部が形成された領域を撮像して前記領域の平面画像のデータを平面画像データとして生成する撮像処理部と、
前記平面画像データに基づいて二値化画像を生成する際に、前記二値化画像において二値のうちの一方の値によって特定される画像に、前記平面画像のうちで前記開口部が撮像されている領域が含まれるように二値化処理を行う二値化処理部と、
前記二値化画像に基づいて前記開口部の異常の有無の判定を行う異常判定処理部と、を有することを特徴とする吸収性物品に係る肌側シートの開口部の検査装置である。
【0011】
また、
吸収性物品に係る肌側シートに厚み方向に貫通形成された複数の開口部を検査する検査方法であって、
前記肌側シートは、前記吸収性物品の着用時に、液体を吸収する吸収体を着用者の肌側から覆いつつ該着用者の肌に当接するシートであり、
前記肌側シートが搬送される搬送方向に関して、前記開口部を検査する工程よりも上流側に配置された開口部形成装置によって、前記開口部は形成され、
前記肌側シートが前記吸収体に重ね合わせられるよりも前に、前記肌側シートの片面のうちで前記開口部が形成された領域を撮像して前記領域の平面画像のデータを平面画像データとして生成することと、
前記平面画像データに基づいて二値化画像を生成する際に、前記二値化画像において二値のうちの一方の値によって特定される画像に、前記平面画像のうちで前記開口部が撮像されている領域が含まれるように二値化処理を行うことと、
前記二値化画像に基づいて前記開口部の異常の有無の判定を行うことと、を有することを特徴とする吸収性物品に係る肌側シートの開口部の検査方法である。
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、生理用ナプキン等の吸収性物品に係る肌側シートの開口部を検査する検査装置及び検査方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1Aはナプキン1の平面図であり、図1Bは、図1A中のB−B断面図である。
【図2】図2Aは、図1A中のII部拡大図であり、図2Bは、図2A中のB−B断面図であり、図2Cは、表面シート2の連続シート2aに開口部2h,2h…が形成される様子を示す概略断面図である。
【図3】ナプキン1の製造ラインにおける穿孔工程P1と積層工程P2とを示す概略側面図である。
【図4】図4Aは、小さい開口面積Mの開口部2hを形成する場合のピンロール10b及び受けロール10aの一部拡大断面図であり、図4Bは、大きい開口面積Mの開口部2hを形成する場合のピンロール10b及び受けロール10aの一部拡大断面図である。
【図5】平面画像及び検査ウインドウW1のイメージ図である。
【図6】図6Aは、二値化処理前の検査ウインドウW1内の平面画像であり、図6Bは、同平面画像に対して二値化処理を行って生成された二値化画像である。
【図7】本実施形態の変形例の概略側面図である。
【図8】盛り上がり部2p,2p…が撮像された平面画像、及び検査ウインドウW2のイメージ図である。
【図9】図9Aは、第2二値化処理前の検査ウインドウW2内の平面画像であり、図9Bは、同平面画像に対して第2二値化処理を行って生成された二値化画像である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
吸収性物品に係る肌側シートに厚み方向に貫通形成された複数の開口部を検査する検査装置であって、
前記肌側シートは、前記吸収性物品の着用時に、液体を吸収する吸収体を着用者の肌側から覆いつつ該着用者の肌に当接するシートであり、
前記肌側シートが搬送される搬送方向に関して前記検査装置よりも上流側に配置された開口部形成装置によって、前記開口部は形成され、
前記肌側シートが前記吸収体に重ね合わせられるよりも前に、前記肌側シートの片面のうちで前記開口部が形成された領域を撮像して前記領域の平面画像のデータを平面画像データとして生成する撮像処理部と、
前記平面画像データに基づいて二値化画像を生成する際に、前記二値化画像において二値のうちの一方の値によって特定される画像に、前記平面画像のうちで前記開口部が撮像されている領域が含まれるように二値化処理を行う二値化処理部と、
前記二値化画像に基づいて前記開口部の異常の有無の判定を行う異常判定処理部と、を有することを特徴とする吸収性物品に係る肌側シートの開口部の検査装置。
【0015】
このような吸収性物品に係る肌側シートの開口部の検査装置によれば、肌側シートにおける開口部が形成された領域を撮像して平面画像データを生成し、この平面画像データに基づいて二値化画像を生成する。そして、この二値化画像に基づいて開口部の異常の有無の判定を行う。よって、肌側シートの開口部の異常の検査を正確に行うことができる。
【0016】
また、上記の平面画像データは、肌側シートが吸収体に重ね合わせられるよりも前の時点での撮像により生成される。よって、吸収体に重ね合わせられることに起因した肌側シートの曲がりや皺等の外乱を一切無くした状態で、開口部を撮像してなる平面画像を得ることができる。つまり、この平面画像データには、開口部の平面形状が正しく記録されている。よって、この平面画像データに基づいて、開口部の異常の有無を正確に判定可能となる。
【0017】
かかる吸収性物品に係る肌側シートの開口部の検査装置であって、
前記開口部形成装置は、互いの外周面を対向させながら前記搬送方向に沿って回転する一対のロールと、前記一対のロール同士の間のロール間隙の大きさを制御する制御部と、を有し、
前記一対のロールのうちの一方のロールは、その外周面から突出する複数の先細り形状のピン部材を有するとともに、他方のロールは、その外周面に、前記ピン部材を挿入可能な凹部を有し、
前記肌側シートが前記ロール間隙を通過する際に、前記ピン部材が前記肌側シートを前記厚み方向に貫通することにより前記開口部が形成され、
前記異常の有無の判定に係り、前記開口部の開口面積が過大であると判定された場合には、前記制御部は、前記ロール間隙の大きさを拡大方向に変更する一方、前記開口部の開口面積が過小であると判定された場合には、前記制御部は、前記ロール間隙の大きさを縮小方向に変更するのが望ましい。
【0018】
このような吸収性物品に係る肌側シートの開口部の検査装置によれば、異常の無い開口部、つまり、開口面積が過小でない開口部であって、しかも開口部の形状の崩れも抑制された開口部を形成可能となる。詳しくは次の通りである。
【0019】
開口部の開口面積が過大になる一因としては、ピン部材の先細り形状の部分の肌側シートへの貫入深さが深く、ピン部材が肌側シートから抜ける際にピン部材が開口部の周縁部を引っかけて拡大してしまうことが挙げられ、つまり、開口面積が過大になることに付随して、開口部の開口形状も崩れてしまっている。よって、かかる場合には、制御部は、ロール間隙の大きさを拡大方向に変更し、これにより、貫入深さは浅くなって、開口部の開口形状の崩れは抑制される。
一方、開口部の開口面積が過小になる一因としては、ピン部材の先細り形状の部分の肌側シートへの貫入深さが浅く、開口部が径方向にあまり広がっていないことが挙げられる。よって、かかる場合には、制御部は、貫入深さを深くすべく、ロール間隙の大きさを縮小方向に変更し、これにより、開口面積の過小状態が解消される。
【0020】
かかる吸収性物品に係る肌側シートの開口部の検査装置であって、
前記肌側シートは、前記着用者の排泄口部が当接されると想定される排泄口部当接想定位置を有し、
前記二値化処理部は、前記平面画像における二値化処理の対象領域を内方に区画して限定する検査ウインドウを、前記排泄口部当接想定位置の撮像部分に対応して設定するのが望ましい。
【0021】
このような吸収性物品に係る肌側シートの開口部の検査装置によれば、肌側シートにおける排泄口部当接想定位置の撮像部分に対応して検査ウインドウを設定する。よって、二値化処理部の演算負荷の軽減を図りながらも、肌側シートにおいて最も良好な吸液性や触感等の風合いが要求される位置たる排泄口部当接想定位置について、開口部の検査を確実に行うことができる。
【0022】
かかる吸収性物品に係る肌側シートの開口部の検査装置であって、
前記開口部形成装置は、先細り形状の複数のピン部材を有し、
前記ピン部材は、前記厚み方向のうちで前記肌側シートの肌側面から非肌側面へと進む方向を突き通し方向として前記肌側シートを貫通することにより前記開口部を形成し、
前記肌側シートの前記開口部の内周形状は、前記突き通し方向に進むに従って開口面積が小さくなったテーパー形状であるとともに、前記肌側シートの前記非肌側面には、前記開口部の貫通形成に伴って該開口部の周縁部が山状に盛り上がってなる盛り上がり部が形成されており、
前記撮像処理部による前記開口部が形成された領域の撮像は、前記盛り上がり部が他の部材に接触する前に行われるのが望ましい。
【0023】
このような吸収性物品に係る肌側シートの開口部の検査装置によれば、盛り上がり部が他の部材に接触する前に、肌側シートにおける開口部が形成された領域の撮像が行われる。よって、他の部材によって開口部が変形等されていない状態で肌側シートを撮像することができて、これにより、開口部形成装置の単独要因で同開口部に異常が生じたのか否かを速やかに知ることができる。
【0024】
かかる吸収性物品に係る肌側シートの開口部の検査装置であって、
前記開口部形成装置は、先細り形状の複数のピン部材を有し、
前記ピン部材は、前記厚み方向のうちで前記肌側シートの肌側面から非肌側面へと進む方向を突き通し方向として前記肌側シートを貫通することにより前記開口部を形成し、
前記肌側シートの前記開口部の内周形状は、前記突き通し方向に進むに従って開口面積が小さくなったテーパー形状であるとともに、前記肌側シートの前記非肌側面には、前記開口部の貫通形成に伴って該開口部の周縁部が山状に盛り上がってなる盛り上がり部が形成されており、
前記肌側面を照らす照明部材を有するとともに、前記撮像処理部は、前記非肌側面に対向して配置され、前記照明部材からの照射光が前記肌側シートを前記厚み方向に透過してなる透過光を前記撮像処理部が受光して撮像するのが望ましい。
【0025】
このような吸収性物品に係る肌側シートの開口部の検査装置によれば、肌側シートの開口部を鮮明に撮像可能となる。詳しくは次の通りである。例えば、照明部材と撮像処理部との配置関係が上述とは逆の場合には、照明部材の照射光が、非肌側面に投じられるが、その場合には、非肌側面の盛り上がり部のテーパー状の外周面によって照射光が放射状に外方に拡散されてしまい、その結果、開口部がぼやけて撮像されてしまう虞がある。この点につき、上述の検査装置によれば、照明部材の照射光は、肌側面に向けて投じられるが、この肌側面には盛り上がり部は存在しない。よって、開口部の周囲部分での照射光の拡散は回避され、その結果として開口部を鮮明に撮像可能となる。
【0026】
かかる吸収性物品に係る肌側シートの開口部の検査装置であって、
前記開口部形成装置は、先細り形状の複数のピン部材を有し、
前記ピン部材は、前記厚み方向のうちで前記肌側シートの肌側面から非肌側面へと進む方向を突き通し方向として前記肌側シートを貫通することにより前記開口部を形成し、
前記肌側シートの前記開口部の内周形状は、前記突き通し方向に進むに従って開口面積が小さくなったテーパー形状であるとともに、前記肌側シートの前記非肌側面には、前記開口部の貫通形成に伴って該開口部の周縁部が山状に盛り上がってなる盛り上がり部が形成されており、
前記開口部が形成された前記肌側シートの前記肌側面を外周面に当接させながら所定の巻き付き角度で前記肌側シートを巻き付けて搬送するデフレクターロールを有し、
前記撮像処理部を第1撮像処理部とし、前記二値化処理部を第1二値化処理部とし、前記異常判定処理部を第1異常判定処理部とした場合に、
前記肌側シートのうちで前記デフレクターロールに巻き付いている部分であって、前記盛り上がり部を含む前記部分を、前記盛り上がり部の盛り上がり形状が判別可能な方向から撮像して前記部分の平面画像のデータを平面画像データとして生成する第2撮像処理部と、
前記平面画像データに基づいて二値化画像を生成する際に、前記二値化画像において二値のうちの一方の値によって特定される画像に、前記平面画像のうちで前記盛り上がり部が撮像されている領域が含まれるように二値化処理を行う第2二値化処理部と、
前記二値化画像に基づいて前記開口部の異常の有無の判定を行う第2異常判定処理部と、を有するのが望ましい。
【0027】
このような吸収性物品に係る肌側シートの開口部の検査装置によれば、開口部の異常の有無の判定を、開口部の平面形状だけでなく、盛り上がり部の盛り上がり形状も加味して行うことができる。よって、開口部の異常の有無の判定を、より精細に行うことができる。
【0028】
かかる吸収性物品に係る肌側シートの開口部の検査装置であって、
前記異常判定処理部による異常の有無の判定は、前記二値化処理部で生成された二値化画像のうちで前記一方の値によって特定される画像の大きさを示す値に基づいて行われ、
前記異常判定処理部は、前記開口部の開口面積に係る目標範囲を有し、
前記異常判定処理部は、前記画像の大きさを示す値が前記目標範囲の上限値よりも大きい場合には、前記異常の有無の判定結果として、前記開口部の開口面積が過大であるとの判定結果を出力する一方、前記画像の大きさを示す値が前記目標範囲の下限値よりも小さい場合には、前記異常の有無の判定結果として、前記開口部の開口面積が過小であるとの判定結果を出力するのが望ましい。
【0029】
このような吸収性物品に係る肌側シートの開口部の検査装置によれば、開口部の開口面積が過大であるか過小であるかの判定を速やかに行うことができる。
【0030】
また、
吸収性物品に係る肌側シートに厚み方向に貫通形成された複数の開口部を検査する検査方法であって、
前記肌側シートは、前記吸収性物品の着用時に、液体を吸収する吸収体を着用者の肌側から覆いつつ該着用者の肌に当接するシートであり、
前記肌側シートが搬送される搬送方向に関して、前記開口部を検査する工程よりも上流側に配置された開口部形成装置によって、前記開口部は形成され、
前記肌側シートが前記吸収体に重ね合わせられるよりも前に、前記肌側シートの片面のうちで前記開口部が形成された領域を撮像して前記領域の平面画像のデータを平面画像データとして生成することと、
前記平面画像データに基づいて二値化画像を生成する際に、前記二値化画像において二値のうちの一方の値によって特定される画像に、前記平面画像のうちで前記開口部が撮像されている領域が含まれるように二値化処理を行うことと、
前記二値化画像に基づいて前記開口部の異常の有無の判定を行うことと、を有することを特徴とする吸収性物品に係る肌側シートの開口部の検査方法。
【0031】
このような吸収性物品に係る肌側シートの開口部の検査方法によれば、肌側シートにおける開口部が形成された領域を撮像して平面画像データを生成し、この平面画像データに基づいて二値化画像を生成する。そして、この二値化画像に基づいて開口部の異常の有無の判定を行う。よって、肌側シートの開口部の異常の検査を正確に行うことができる。
【0032】
また、上記の平面画像データは、肌側シートが吸収体に重ね合わせられるよりも前の時点での撮像により生成される。よって、吸収体に重ね合わせられることに起因した肌側シートの曲がりや皺等の外乱を一切無くした状態で、開口部を撮像してなる平面画像を得ることができる。つまり、この平面画像データには、開口部の平面形状が正しく記録されている。よって、この平面画像データに基づいて、開口部の異常の有無を正確に判定可能となる。
【0033】
===本実施形態===
本実施形態の吸収性物品に係る肌側シートの開口部2hの検査装置30は、吸収性物品の一例としての生理用ナプキン1の製造ラインで使用される。
図1Aはナプキン1の平面図であり、図1Bは、図1A中のB−B断面図である。図2Aは、図1A中のII部拡大図であり、図2Bは、図2A中のB−B断面図である。また、図2Cは、表面シート2の連続シート2aに開口部2h,2h…が形成される様子を示す概略断面図である。
【0034】
図1A及び図1Bに示すように、ナプキン1は、長手方向と幅方向と厚み方向とを有する平面視略長方形の部材である。そして、その構成部品として、経血等の液体を吸収して保持する吸収体3と、この吸収体3を着用者の肌側から覆いつつ着用時に着用者の肌側に当接する不織布等の液透過性の表面シート2(肌側シートに相当)と、同吸収体3を非肌側から覆って設けられ非肌側からの液体の漏れを防ぐフィルム等の液不透過性の裏面シート4と、を有する。
【0035】
吸収体3は、パルプ繊維等の液体吸収性繊維を略直方体等の所定形状に成形したものを本体とする。その平面サイズは、ナプキン1の長手方向及び幅方向の両方向に関して、表面シート2及び裏面シート4の両者よりも小さいサイズになっている。よって、これらシート2,4同士は、上記の両方向に関して吸収体3からはみ出す部分にて互いに貼り合わせられ、これにより、これらシート2,4同士の間に吸収体3は保持されている。なお、ここでは、吸収体3の本体の形状として略直方体を例示しているが、何等これに限るものではなく、任意の三次元形状に成形したものを本体としても良い。また、吸収体3は、単にパルプ繊維を成形してなる成形体に限るものではなく、パルプ繊維の成形体をティッシュペーパーで被覆したものを用いても良いし、内部に高吸収性ポリマーが混入されていても良い。
【0036】
表面シート2の表面2s1には、エンボス溝7が所定の形成パターンでナプキン1の厚み方向に圧搾されて形成されている。これにより、表面シート2と吸収体3とは接合一体化されている。また、この図1Aの例では、エンボス溝7の輪郭部は、表面シート2の表面2s1において、ナプキン1の長手方向に長い略長円形状に形成されていて、その内方に閉領域7Rが区画されているが、同輪郭部の形状は何等略長円形状に限らず別形状でも良く、更には、複数の溝状部分が、互いに不連続に組み合わされて、全体として一つの形成パターンをなしていても良いし、溝状部分に代えて、複数の島状凹部の集合体が一つの形成パターンで押圧形成されていても良い。
【0037】
また、図2A及び図2Bに示すように、表面シート2には、同シート2を厚み方向に貫通する複数の開口部2h,2h…が表面2s1の所定範囲に亘って所定の形成パターンで離散的且つ群状に密集して形成されており、これにより、これら開口部2h,2h…は、開口部2hの一群たる開口部群をなしている。これらの開口部2h,2h…は、表面シート2から吸収体3への液体の浸透性を高めるためのものである。この例では、図1Aに示すようにエンボス溝7で区画された上記閉領域7R内の全域に亘って千鳥配置で形成されているが、何等これに限るものではない。例えば、開口部2h,2h…の形成対象範囲は、閉領域7R内の一部であっても良いし、あるいは閉領域7R内に限らずに表面シート2の全域であっても良い。また、形成パターンとしては格子配置でも良いし、これ以外でも良い。
【0038】
図2Cに示すように、各開口部2hは、後述する穿孔装置10(開口部形成装置に相当)によって表面シート2の肌側面たる表面2s1の方からピン部材14を突き刺して、非肌側面たる裏面2s2の方へと突き通すことにより形成される。つまり、厚み方向における表面2s1から裏面2s2へと進む方向が、ピン部材14の突き通し方向となる。そのため、裏面2s2には、開口部2hの周縁部が山状に盛り上がってなる盛り上がり部2pが形成されている。また、ピン部材14は、先端側が先細り形状の錘体の一例としての円錐部14eで、根元側が柱体の一例としての円柱部14bである。よって、基本的には、開口部2hの内周形状は、表面2s1側から裏面2s2側へ向かうに従って開口面積が漸減したテーパー形状に形成されるが、何等これに限らない。また、かかるテーパー形状に基づいて、開口部2hの開口面積は、厚み方向の位置に応じて異なることになるが、以下の説明で「開口部2hの開口面積」と言う場合には、開口部2hにおいて最小の開口面積Mを指すものとし、つまり、図2Cのテーパー形状の場合には、表面2s1での開口面積ではなくて裏面2s2での開口面積Mのことになる。
【0039】
図3は、ナプキン1の製造ラインにおいて表面シート2の連続シート2aに開口部2h,2h…を形成する穿孔工程P1と、開口部2h,2h…が形成された同連続シート2aを吸収体3,3…に重ね合わせる積層工程P2とを示す概略側面図である。
【0040】
穿孔工程P1には、不図示のリール装置から繰り出された表面シート2の連続シート2a(以下、単に表面シート2aとも言う)が搬送方向に沿って連続して送り込まれる。そして、穿孔工程P1に配置された穿孔装置10に通されることにより、表面シート2aには複数の開口部2h,2h…が厚み方向に貫通形成される。なお、以下の説明では、表面シート2aの搬送方向と直交する方向(図3中では、その紙面を貫通する方向)のことを「CD方向」とも言う。
【0041】
穿孔装置10は、外周面を互いに対向させつつ、CD方向に沿った回転軸C10周りに駆動回転する上下一対のロール10a,10bを有している。そして、この例では、表面シート2aは、下ロール10bに所定の巻き付き角度で巻き付けられており、この巻き付き範囲では、表面シート2aは、下ロール10bとほぼ相対滑り無く一体となって周方向に移動し、そして、巻き付き範囲の終端において下ロール10bから離脱して、次の積層工程P2へ向けて送出される。
【0042】
ここで、上記巻き付き範囲の略中間位置には、上ロール10aが対向配置されている。また、この例では、表面シート2aの表面2s1に相当する下面の方から表面シート2aにピン部材14を突き通して(突き抜いて)開口部2hを形成可能なように、下ロール10bの方が、外周面に複数のピン部材14,14…を有したピンロール10bとなっており、上ロール10aの方は、外周面にピン部材14を挿入可能な凹部としての複数の孔部16,16…が各ピン部材14,14…に対応して形成された受けロール10aとなっている。更には、これらピン部材14,14…は、上述の開口部2h,2h…の形成パターンに対応した配置で、ピンロール10bの外周面に設けられている。詳しくは、ピン部材14,14…は、エンボス溝7が内方に区画すべき閉領域7Rの形状に対応させて千鳥配置で並んで配置されている。よって、これらロール10a,10b同士の間のロール間隙G10を表面シート2aが通過する際に、ピンロール10bのピン部材14,14…の各先端部が受けロール10aの各孔部16,16…に順次挿入されることにより、表面シート2aにおいてエンボス溝7が区画すべき閉領域7Rの部分が、ピン部材14,14…によって串刺し状に突き抜かれ、これにより、同閉領域7Rには開口部群、つまり千鳥配置で複数の開口部2h,2hが貫通形成される。そして、巻き付き範囲の終端では、各ピン部材14,14…が表面シート2aの開口部2h,2h…から順次抜けていきながら、表面シート2aはピンロール10bから離脱する。
【0043】
かかる穿孔装置10は、開口部2hの開口面積Mの調整機能を有している。この開口面積Mの調整は、ロール間隙G10の大きさの変更を通じて、ピン部材14の表面シート2aへの貫入深さD14を変更することで行われる。図4A及び図4Bは、その説明図であり、どちらの図も、ピンロール10bのピン部材14と受けロール10aの孔部16とを拡大断面視で示している。図4Aに示すように、ピンロール10bの先端の円錐部14eは、表面シート2aの厚さよりも十分長い長さを有している。そして、同図4Aに示すようにロール間隙G10が広い場合には、ピン部材14の円錐部14eの表面シート2aへの貫入深さD14が浅くなり、その結果、小径の開口部2hが形成されるので開口部2hの開口面積Mは小さくなる。一方、図4Bのようにロール間隙G10が狭い場合には、ピン部材14の円錐部14eの表面シート2aへの貫入深さD14が深くなり、その結果、大径の開口部2hが形成されるので開口部2hの開口面積Mは大きくなる。よって、開口面積Mを、減少方向に変更したい場合には、ロール間隙G10を拡大方向に操作し、増加方向に変更したい場合には、ロール間隙G10を縮小方向に操作すれば良い。
【0044】
なお、ロール間隙G10の大きさを調整する調整機構の一例としては、例えば次のような構成が挙げられる。先ず、ピンロール10b又は受けロール10aの少なくとも一方10b(10a)が、ロール10b(10a)のCD方向の両端部において、適宜な油圧シリンダー等のアクチュエータ(不図示)により昇降可能に支持されており、また、穿孔装置10は、アクチュエータを制御する制御部18(図3)を有している。そして、制御部18が、アクチュエータを介してピンロール10bと受けロール10aとの間のロール間隙G10を拡縮変更することで、上述の開口部2hの開口面積Mの調整が行われる。
【0045】
次の積層工程P2には、デフレクターロール20が設けられている(図3)。そして、穿孔工程P1から搬送された表面シート2aは、その表面2s1がデフレクターロール20の外周面に当接するように所定の巻き付き角度で同ロール20に巻き付けられることによって、その搬送方向が略反転される。なお、この略反転によって表面シート2aは上下方向にも反転されることとなり、つまり、この略反転後には、表面シート2aは、その表面2s1が上方を向き、裏面2s2が下方を向いた状態となる。
【0046】
また、この反転後の表面シート2aの搬送経路の下方には、吸収体3の搬送経路が設定されており、複数の吸収体3,3…が、その搬送方向を表面シート2aの搬送方向に沿わせながら、同搬送方向に間欠的に製品ピッチで並んだ状態で搬送されている。そして、表面シート2aは、その裏面2s2を吸収体3に対向させながら、上方から吸収体3に重ね合わせられ、以降これら表面シート2aと吸収体3,3…とは一体となって搬送方向に沿って搬送される。
【0047】
そして、この後の工程(不図示)では、エンボスロールによってエンボス溝7が形成され、また裏面シート4の連続シートが下方から貼り合わされた後に、ダイカッター装置で図1Aのナプキン1の外形形状に打ち抜かれ、以上をもって、同図1Aのナプキン1が生成される。
【0048】
ところで、既述のように、図3の穿孔装置10では、ピンロール10bの各ピン部材14が、同ロール10bの回転動作によって円弧軌道を移動しながら表面シート2aを貫通して開口部2hを形成し、しかる後に、ピン部材14は円弧軌道を描きながら表面シート2aから抜けていく。そのため、ピン部材14の表面シート2aへの貫入深さD14が深いと(図4B)、ピン部材14が表面シート2aの開口部2hから抜ける際に、ピン部材14の先端部で開口部2hの周縁部を引っかけて、その開口形状を崩し易くなる。例えば、開口部2hの平面形状が、ピン部材14の円弧軌道に沿う方向に拡大した長孔状になってしまう。そして、当該長孔の長さが長くなりすぎると、そのナプキン1は見た目や風合いが悪くなって異常品となる。
【0049】
逆に、ピン部材14の表面シート2aへの貫入深さD14が浅い場合には(図4A)、前述のように、開口部2hの開口面積Mが小さく形成されるが、その場合には開口部2hの周縁部に十分な変形量を付与し難いことから、ピン部材14が抜けた後に開口部2hの周縁部が開口部2hを塞ぐ方向に復元し易く、計画値よりも小さな開口面積Mの開口部2hになり易い。そして、その結果として、表面シート2aから吸収体3への液体の浸透性が悪くなって、当該ナプキン1も異常品となる。
【0050】
そのため、本実施形態では、図3に示すように、穿孔工程P1と、その下流側の積層工程P2との間に、表面シート2aの開口部2hの異常の有無を検査する検査装置30が配置されている。そして、この異常の有無の判定は、例えば表面シート2aにおいて単票状のナプキン1の製品1に相当する単位たる単位表面シート2U毎に行われる。そして、ある単位表面シート2Uに対して「異常有り」と判定した場合には、この判定結果を穿孔装置10の制御部18に送信し、穿孔装置10のロール間隙G10の拡縮制御に供する。
【0051】
かかる検査装置30は、表面シート2aの搬送路のうちでピンロール10bとデフレクターロール20との間の平坦な搬送路部分に対向して配置された撮像処理部としてのカメラ32と、同搬送路部分をカメラ32とで上下から挟むような位置に配置された照明部材34と、表面シート2aの開口部2hの異常の有無を判定する画像処理部36と、を有する。
【0052】
カメラ32は、例えばCCD(電荷結合素子)カメラである。そして、表面シート2aの裏面2s2(「肌側シートの片面」及び「肌側シートの非肌側面」に相当)に対向して配置されており、これにより、撮像位置PS1を通過する表面シート2aの裏面2s2を撮像し、裏面2s2の平面画像のデータを生成する。撮像動作は、同期信号に基づいてなされ、これにより、単位表面シート2Uを、その平面中心がほぼ平面画像の平面中心に揃うように撮像する。ここで、同期信号とは、単位表面シート2Uの一つ分に相当する搬送量を単位搬送量として0°〜360°の各回転角度値を、搬送量に比例して割り当ててなる回転角度信号である。よって、上述のように単位表面シート2Uの平面中心と平面画像の平面中心とが一致するような撮像タイミングに対応した同期信号の位相を、所定の回転角度値として見つけ出し、その位相たる所定の回転角度値で撮像動作を行うように予め設定しておけば、以降に撮像位置PS1を通過する全ての単位表面シート2Uに対して、上述のように、単位表面シート2Uの平面中心と平面画像の平面中心が揃うように撮像することができる。
【0053】
そして、このような撮像タイミングに調整されたカメラ32は、単位表面シート2U毎に撮像を繰り返し行い、撮像の都度、撮像された平面画像のデータを平面画像データとして生成する。そして、生成の都度、平面画像データを画像処理部36へ送信する。すると、画像処理部36では、平面画像データに基づいて、表面シート2aの開口部2hの異常の有無の判定を単位表面シート2U毎に行う。これにより、ナプキン1は全数検査されることになる。但し、何等これに限るものではなく、例えば単位表面シート2Uの幾つかおきに撮像しても良い。
【0054】
ちなみに、上述のようにカメラ32は、穿孔装置10の直近下流に配置されている。よって、カメラ32による表面シート2aの裏面2s2の撮像は、表面シート2aの裏面2s2の盛り上がり部2p,2p…が他の部材に接触する前に行われ、つまり、他の部材によって開口部2h,2h…が変形等されない状態で表面シート2aを撮像することができる。これにより、穿孔装置10の単独要因で開口部2hに異常が生じたのか否かを知ることができて、このことは、開口部2hの異常発生時に原因部位を絞り込む際に有効となる。
【0055】
照明部材34は、例えば白色LEDライトや蛍光灯などの適宜なライトであり、その光源の種類は、その場の撮像状況に応じて適宜選定される。また、上述したように、照明部材34の配置位置は、表面シート2aをカメラ32とで同シート2aの厚み方向から挟むような位置、つまり表面シート2aの表面2s1側に設定されている。これにより、カメラ32は、表面シート2aを厚み方向に透過した透過光を受光することで撮像する。
【0056】
ここで、この例では、照明部材34の配置位置を表面シート2aの表面2s1側に設定しているが、この理由は、このようにした方が、開口部2hを鮮明に撮像可能となるからである。詳説すると、例えば、照明部材34とカメラ32との配置関係が上述とは逆の場合には、照明部材34の照射光が、表面シート2aの裏面2s2に投じられる。そして、その場合には、裏面2s2の開口部2hの周囲に存在する盛り上がり部2pのテーパー状の外周面によって照射光が放射状に外方に拡散されてしまい、その結果、開口部2hがぼやけて撮像されてしまう虞がある。この点につき、本実施形態のように、照明部材34を表面2s1側に配置すれば、その照射光が投じられる表面2s1には、盛り上がり部2pが存在しないので、開口部2hの周囲部分での照射光の拡散は回避され、その結果として開口部2hを鮮明に撮像可能となるのである。
【0057】
画像処理部36は、適宜なコンピュータを本体とし、プロセッサとメモリとを有する。そして、メモリに予め格納された各種処理プログラムをプロセッサが読み出して実行することにより、各種の演算処理を行う。
すなわち、本実施形態にあっては、メモリ内には、平面画像データから開口部異常検査用の二値化画像を生成するための二値化処理プログラム、及び上記開口部異常検査用の二値化画像に基づいて表面シート2aの開口部2hの異常の有無を判定するための異常判定処理プログラムが予め格納されている。
【0058】
よって、プロセッサが、これらプログラムを適宜読み出して実行することにより、画像処理部36は、平面画像データから開口部異常検査用の二値化画像を生成する二値化処理部として機能するとともに、当該開口部異常検査用の二値化画像に基づいて表面シート2aの開口部2hの異常の有無を判定する異常判定処理部としても機能する。以下、二値化処理、及び異常判定処理について説明する。
【0059】
先ず、二値化処理の説明の前に、図5を参照しながら平面画像及び平面画像データについて説明する。
図5は、平面画像のイメージ図である。なお、同図5中においては、平面画像の平面サイズ等を理解し易くする目的で、ナプキン1の外形線やエンボス溝7、吸収体3等を仮想的に二点鎖線で示しているが、実際にはこの段階の表面シート2a(単位表面シート2U)にこのような線は無い。
【0060】
平面画像は、例えばCD方向をX方向とし、搬送方向をY方向として撮像されており、また、平面画像は、単位表面シート2Uの全域が一画像として撮像されている。
かかる平面画像は、X方向及びY方向の両方向にそれぞれ所定の解像度に基づく所定ピッチで格子状に並ぶ多数の画素の集合体である。換言すると、平面画像は、X方向に一直線に所定ピッチで並ぶ複数の画素からなる画素列が、Y方向に複数列所定ピッチで並んで構成される。そして、平面画像データは、各画素に対応させてそれぞれ色情報を有している。例えば、平面画像データがグレースケールの場合には、画素毎に色情報として明度のみを有している。そして、その場合には、単位表面シート2Uにおいて透光性の高い領域に対応する各画素は明るくなるので、その画素の明度は高い値になっているが、他方、透光性の低い領域に対応する各画素は暗くなるので、その画素の明度は低い値になっている。
【0061】
ここで、開口部2hは表面シート2aを厚み方向に貫通しているので、その投光性は、表面シート2aのうちで開口部2hが形成されていない部分(以下、開口部未形成部分とも言う)よりも高い。よって、明度が所定値以上の画素に注目することで、図5の平面画像上において、開口部2hが撮像されている領域A2h(図6A)の画素を特定することができる。なお、以下では、平面画像データがグレースケールのデータであるものとして説明する。
【0062】
この二値化処理では、画像処理部36の演算負荷軽減のために、平面画像における二値化処理の対象範囲を限定している。すなわち、二値化処理では、図5に示すように検査ウインドウW1が設定され、これにより、平面画像のうちの検査ウインドウW1で囲まれた領域のみを二値化処理の対象とする。なお、検査ウインドウW1の詳細については後述する。
【0063】
また、同二値化処理では、予め定められた第1二値化用閾値を用いる。この第1二値化用閾値は、開口部2hに対応する画素の明度と、開口部未形成部分に対応する画素の明度との間の値に設定され、予めメモリ内に格納されている。
【0064】
そして、図6Aの検査ウインドウW1内の画素のうちで、第1二値化用閾値以上の明度の画素を、図6Bの二値化画像における二値(例えば0と1)のうちの一方の値たる「1」によって特定される白画像に割り振り、他方、第1二値化用閾値未満の明度の画素を、もう一方の値たる「0」によって特定される黒画像に割り振る。これを、図6Aの検査ウインドウW1内の全ての画素について行う。これにより、図6Aに示すように検査ウインドウW1内の画素のうちで開口部2hが撮像されている領域A2h,A2h…が、図6Bに示すように二値化画像における白画像に含まれ、それ以外の部分(例えば開口部未形成部分が撮像されている領域)は、黒画像に含まれるように処理される。すなわち、平面画像データを、図6A(図5)に示す検査ウインドウW1を用いて二値化処理することにより、図6Bの二値化画像が生成される。
【0065】
そうしたら、画像処理部36は、異常判定処理へ移行する。そして、この異常判定処理では、先ず、図6Bの二値化画像上での白画像の面積を求める。ここで、画素の平面サイズは、XY方向の各解像度などに基づいて予めわかっている。よって、この画素の平面サイズに、白画像に割り振られた画素の数たる画素数を乗算することにより、白画像の面積が算出される。ちなみに、この白画像の面積が、請求項に係る「二値化処理部で生成された二値化画像のうちで前記一方の値によって特定される画像の大きさを示す値」に相当する。
【0066】
次に、画像処理部36は、算出された白画像の面積を、予めメモリに格納された目標範囲と大小比較する。そして、白画像の面積が目標範囲内に入っている場合には、画像処理部36は、「開口部2hの開口面積Mは適正範囲なので、開口部2hの異常は生じていない」と判定する。
【0067】
一方、白画像の面積が目標範囲の上限値よりも大きい場合には、「開口部2hの開口面積Mは過大であり、つまり、開口部2hの長孔形状が許容限度を超えて崩れた状態の開口部形状異常が発生している」と判定する。そして、穿孔装置10の制御部18に、「開口部形状異常有り」の判定結果を送信する。すると、これを受信した制御部18は、ピンロール10bと受けロール10aとの間のロール間隙G10を、現状値よりも規定値だけ大きくなるように拡大方向に変更する。これにより、ピンロール10bのピン部材14の表面シート2aへの貫入深さD14は浅くなって、上述の開口部2hの開口形状の崩れが抑制される。
【0068】
また、白画像の面積が目標範囲の下限値よりも小さい場合には、「開口部2hの開口面積Mは過小であり、つまり、吸収体3への液体の浸透性を確保不能な程度に開口部2hの開口面積Mが過小の状態たる開口面積過小異常が発生している」と判定する。そして、穿孔装置10の制御部18に、「開口面積過小異常有り」の判定結果を送信する。すると、これを受信した制御部18は、ピンロール10bと受けロール10aとの間のロール間隙G10を、現状値よりも規定値だけ小さくなるように縮小方向に変更する。これにより、ピンロール10bのピン部材14の表面シート2aへの貫入深さD14は深くなって開口部2hの開口面積Mが拡大される。
【0069】
なお、上述の目標範囲は、メモリ内に予め格納された固定値である。そして、この目標範囲は、例えば次のような製造ラインでの実験的手法により求められる。先ず、開口部2h,2h…が正常に形成された単位表面シート2Uのサンプルを複数枚用意する。次に、これらサンプルを検査装置30の上記CCDカメラ32で撮像して、サンプル毎に上述の二値化処理を行い、サンプル毎に検査ウインドウW1内の白画像の面積を求める。そして、これら全サンプルの白画像の面積の平均値及び標準偏差σを算出し、当該平均値よりも2σだけ大きい値を、上記の目標範囲の上限値として用い、同平均値よりも2σだけ小さい値を、同目標範囲の下限値として用いる。ちなみに、検査装置30が「異常有り」の判定を多発する場合には、目標範囲を拡げても良い。
また、場合によっては、画像処理部36のメモリは、上限値よりも更に大きい値を(例えば、上述の平均値よりも3σだけ大きい値)を上側上限値として予め有するようにするとともに、下限値よりも更に小さい値を(例えば、上述の平均値よりも3σだけ小さい値)を下側下限値として予め有するようにし、そして、上述の白画像の面積が、これら上側上限値及び下側上限値で規定される数値範囲から外れる場合に、画像処理部36は、この平面画像に対応する単位表面シート2Uに対して開口部不良情報を付与するなど不良品であることを関連付けして、下工程での良品と不良品との分別処理に供するようにしても良い。
【0070】
ここで、図5を参照しながら、検査ウインドウW1について説明する。前述したように、検査ウインドウW1は、二値化処理の際に平面画像において参照する領域を区画して限定するツールであり、つまり、二値化処理の際には、検査ウインドウW1内に属する画素のみを参照し、検査ウインドウW1外の画素については参照しないようにすることができる。検査ウインドウW1は、平面画像において開口部2hの撮像領域A2hを有する部分のうちで、特に良好な吸液性や触感等の風合いが要求される平面位置に対応する部分に対応して設定されている。かかる平面位置の一例としては、ナプキン1の表面シート2aのうちで、着用者の排泄口部が当接すると想定される排泄口部当接想定位置Pzが挙げられる。
【0071】
かかる排泄口部当接想定位置Pzの幅方向の位置は、一般に製品の種類によらず、ナプキン1の幅方向の中心線CL上に設定されている。但し、長手方向の位置に関しては、製品に応じて設定位置が異なることがある。そのため、この長手方向の位置については、通常、着色等により目印が形成されている。なお、目印が形成されていない場合には、一般に長手方向の中央位置に設定されているが、ナプキン1が幅方向の両側にそれぞれ拡幅した部分たるウイング部1w,1w(ナプキン1を下着の内面に固定する際に下着の外面に折り返して同外面に粘着固定される部分)を有する場合には、二つのウイング部1w,1wの平面中心C1w,C1w同士を結ぶ線分L1wとナプキン1の幅方向の中心線CLとの交点CPの位置に、排泄口部当接想定位置Pzが設定されている。なお、本実施形態では、ナプキン1がウイング部1w,1wを有しているので、上述の交点CPの位置の撮像部分ACPに対応させて検査ウインドウW1が設定されている。
【0072】
ところで、この検査ウインドウW1内に限った画素の参照は、例えば次のようにして実現される。先ず、平面画像の各画素には、XY座標が付与されていて、これらXY座標はメモリに記録されている。また、画像処理部36は、このXY座標を指定することで、検査ウインドウW1内に属する画素の色情報にアクセス可能に構成されている。よって、検査ウインドウW1内に位置すべき画素のXY座標のデータを、予めメモリ内に記録しておけば、上述の検査ウインドウW1内に限った画素の参照を実現可能となる。
【0073】
図7は、本実施形態の変形例の概略側面図である。上述の実施形態では、開口部2hの検査装置30が一つだけ設けられていたが、この変形例では、更にもう一つ開口部2hの検査装置40が追加されている点で相違し、これ以外の内容は概ね同じである。よって、以下では、同一の構成については同一の符号を付し、その説明については省略する。また、説明の都合上、前述の検査装置30のことを第1検査装置30と言い、本変形例にて追設される検査装置40のことを第2検査装置40と言う。
【0074】
前述の第1検査装置30では、開口面積Mという謂わば開口部2hの平面形状(横断面形状)に基づく指標を用いて、直接的に開口部2hの異常の有無を判定していたが、この第2検査装置40では、開口部2hの周縁部の盛り上がり部2pの高さという謂わば盛り上がり形状(縦断面形状)に基づく指標を用いて、間接的に開口部2hの異常の有無を判定している。
【0075】
すなわち、この第2検査装置40では、盛り上がり部2pの高さを測定し、この盛り上がり部2pの高さが、目標範囲内に入っている場合には、「開口部2hの異常は生じていない」と判断する。一方、盛り上がり部2pの高さが目標範囲から外れている場合には、「開口部2hの異常が発生している」と判定し、当該判定結果を穿孔装置10の制御部18へ向けて送信する。これについては後述する。
【0076】
以下、この第2検査装置40について詳しく説明する。この第2検査装置40も、CCDカメラ42(第2撮像処理部に相当)と、照明部材44(第2照明部材に相当)と、画像処理部46(第2画像処理部に相当)と、を有している。
【0077】
カメラ42は、デフレクターロール20に略対向して配置されている。そして、カメラ42の撮像位置PS2は、デフレクターロール20に掛け回された表面シート2aの円弧状の搬送軌道のうちで搬送方向が略反転する位置に設定されており、且つ、カメラ42の向きは、円弧状の搬送軌道の略接線方向から上記撮像位置PS2を臨むような向きに設定されている。これにより、盛り上がり部2pが撮像位置PS2を通過する際に、CD方向に沿って並ぶ複数の盛り上がり部2p,2p…の各盛り上がり形状がそれぞれ判別可能に撮像される(図8)。
【0078】
撮像動作は、第1検査装置30と同様に、同期信号に基づいてなされ、これにより、単位表面シート2Uにおける搬送方向の略中央位置の盛り上がり部2pが、ほぼ平面画像の平面中心に揃うように撮像される(例えば図8)。そして、かかるカメラ42は、単位表面シート2U毎に撮像を繰り返し行い、撮像の都度、撮像された平面画像のデータを平面画像データとして生成する。また、生成の都度、平面画像データを画像処理部46へ送信する。これにより、画像処理部46では、平面画像データに基づいて、表面シート2aの開口部2hの異常の有無の判定を単位表面シート2U毎に行う。つまり、ナプキン1は全数検査される。但し、何等これに限るものではなく、例えば単位表面シート2Uの幾つかおきに撮像しても良い。
【0079】
照明部材44も、第1検査装置30と同様に、白色LEDライトや蛍光灯などの適宜なライトである。そして、照明部材44の配置位置は、上述の撮像位置PS2をカメラ42とで挟むような位置に設定されている。
【0080】
画像処理部46も、第1検査装置30と同様に適宜なコンピュータを本体とし、プロセッサとメモリとを有する。そして、メモリに予め格納された各種処理プログラムをプロセッサが読み出して実行することにより、各種の演算処理を行う。
すなわち、この第2検査装置40の画像処理部46にあっては、メモリ内には、平面画像データから盛り上がり部2pの高さ寸法評価用の二値化画像を生成するための第2二値化処理プログラム、及び盛り上がり部2pの高さ寸法評価用の二値化画像に基づいて表面シート2aの開口部2hの異常の有無を判定するための第2異常判定処理プログラムが予め格納されている。
【0081】
よって、プロセッサが、これらプログラムを適宜読み出して実行することにより、画像処理部46は、平面画像データから盛り上がり部2pの高さ寸法評価用の二値化画像を生成する第2二値化処理部として機能するとともに、当該盛り上がり部2pの高さ寸法評価用の二値化画像に基づいて表面シート2aの開口部2hの異常の有無を判定する第2異常判定処理部としても機能する。以下、第2二値化処理、及び第2異常判定処理について説明する。
【0082】
先ず始めに、画像処理部46は、第2二値化処理を行うことによって、盛り上がり部2pの高さを算出する。この第2二値化処理は、カメラ42で盛り上がり部2pを撮像して生成された平面画像データに対して行われる。
【0083】
図8は、盛り上がり部2p,2p…が撮像された平面画像のイメージ図である。平面画像は、例えば表面シート2aの幅方向たるCD方向をX方向とし、表面シート2aの厚み方向をY方向として撮像されており、また、平面画像は、CD方向に沿った直線上に一列に並ぶ全ての盛り上がり部2p,2p…が一画像に収まるように撮像されている。
ここで、図7を参照してわかるように、撮像位置PS2とカメラ42と照明部材44との位置関係は、撮像位置PS2をカメラ42と照明部材44とで挟むような位置関係になっている。そのため、図8の平面画像上においては、撮像位置PS2を通過する盛り上がり部2p,2p…及び同盛り上がり部2p,2p…に連続しつつそれよりもカメラ42側に位置する表面シート2aは、暗部として撮像されるが、同盛り上がり部2p,2p…よりも照明部材44側に位置して同盛り上がり部2p,2p…の背景となる空間SPは、明部として撮像されている。
よって、明度が所定値以下の画素に注目すれば、盛り上がり部2pが撮像されている領域A2pの画素や表面シート2aが撮像されている領域A2aの画素を、背景の空間SPが撮像されている背景領域ASPの画素と区別して特定することができる。なお、上記所定値は、背景領域ASPの画素の明度と、盛り上がり部2pに対応する画素の明度との間の値に設定され、当該所定値は、第2二値化用閾値として画像処理部46のメモリに予め格納されている。
【0084】
一方、図8に示すように、この第2二値化処理においても、画像処理部46の演算負荷軽減目的で、検査ウインドウW2を使用する。この検査ウインドウW2は、少なくとも一つの盛り上がり部2pが撮像されている領域A2p(以下、「盛り上がり部2pの撮像領域A2p」とも言う)が含まれるように設定され、この例では、検査ウインドウW2の内方に、平面画像が有する全ての盛り上がり部2p,2p…の撮像領域A2p,A2p…が含まれるように検査ウインドウW2は設定されている。
【0085】
そして、当該第2二値化処理では、図9Aの検査ウインドウW2内の画素のうちで、第2二値化用閾値以下の明度の画素を、図9Bの二値化画像における二値(例えば0と1)のうちの一方の値たる「0」によって特定される黒画像に割り振り、他方、第2二値化用閾値よりも大きい明度の画素を、もう一方の値たる「1」によって特定される白画像に割り振る。これを、図9Aの検査ウインドウW2内の全ての画素について行う。これにより、図9Aに示すように検査ウインドウW2内の画素のうちで、盛り上がり部2pの撮像領域A2pが、二値化画像における黒画像に含まれるように処理され、背景領域ASPが、二値化画像における白画像に含まれるように処理される。すなわち、平面画像データを、図9Aに示す検査ウインドウW2を用いて二値化処理することにより、図9Bの二値化画像が生成される。
【0086】
そうしたら、画像処理部46は、この二値化画像の黒画像に基づいて、盛り上がり部2pの高さを算出する。詳しくは、図9Bに示すように、黒画像は、各盛り上がり部2pに相当する部分として、Y方向に突出した突出部B2pをX方向に間欠的に有し、また、盛り上がり部2p,2p同士の間の非盛り上がり部2fに相当する部分として、X方向に隣り合う突出部B2p,B2p同士の間の位置に底部B2fを有している。よって、各盛り上がり部2pの高さは、突出部B2pのY座標の最大値から、この突出部B2pの隣に位置する底部B2fのY座標の最小値を減算した減算値HB2pとして求めることができる。そして、当該減算値HB2pたる高さを、全ての突出部B2p,B2p…について求め、これらの平均値を盛り上がり部2pの高さの代表値とする。
但し、かかる二値化画像に基づく盛り上がり部2pの高さの算出方法は、何等これに限るものではなく、周知のエッジ検出法等を用いても良いし、これら以外の方法によっても構わない。
【0087】
次に、画像処理部46は、第2異常判定処理に移行する。第2異常判定処理では、この高さの代表値を予めメモリに格納された目標範囲と大小比較する。
【0088】
そして、上記の高さの代表値が、この目標範囲内に入っている場合には、画像処理部46は、「盛り上がり部2pの高さは適正範囲なので、開口部2hの異常は生じていない」と判定する。
一方、高さの代表値が目標範囲の上限値よりも大きい場合には、「盛り上がり部2pの高さは過大であり、つまり、開口部2hの長孔形状が許容限度を超えて崩れた状態の開口部形状異常が発生している」と判定する。そして、穿孔装置10の制御部18に、「開口部形状異常有り」の判定結果を送信する。
また、高さの代表値が目標範囲の下限値よりも小さい場合には、「盛り上がり部2pの高さは過小であり、つまり、吸収体3への液体の浸透性を確保不能な程度に開口部2hの開口面積Mが過小の状態たる開口面積過小異常が発生している」と判定する。そして、穿孔装置10の制御部18に、「開口面積過小異常有り」の判定結果を送信する。
【0089】
ここで、穿孔装置10の制御部18には、かかる判定結果が第2検査装置40からだけではなく、第1検査装置30からも送信される。そして、第1及び第2検査装置30,40の何れか一方から、上述の「開口部形状異常有り」の判定結果、若しくは「開口面積過小異常有り」の判定結果が送信された場合には、その判定結果に従って、制御部18は、ピンロール10bと受けロール10aとの間のロール間隙G10の大きさを変更する。
【0090】
但し、その際、第1検査装置30と第2検査装置40との間で、互いの判定結果が食い違う場合があり得る。そのため、そのような場合に備えて、穿孔装置10の制御部18には、どちらか一方の判定結果を、ロール間隙G10の拡縮制御に優先させるように、予め優先順が設定されている。例えば、この変形例では、第1検査装置30よりも第2検査装置40の方の判定結果を優先させるように設定されている。
【0091】
ところで、メモリに格納された高さの目標範囲は、第1検査装置30の場合と同様に、次のような製造ラインでの実験的手法により求められる。すなわち、開口部2h,2h…が正常に形成された単位表面シート2Uのサンプルを複数枚用意する。次に、これらサンプルを第2検査装置40の上記CCDカメラ42で撮像して、サンプル毎に第2二値化処理を行い、サンプル毎に検査ウインドウW2内の黒画像の全ての突出部B2p,B2p…の高さHB2p,HB2p…を平均化して前述の高さの代表値を求める。そして、サンプル毎に得られた高さの代表値を全サンプルで平均化することにより、高さの代表値の平均値及び標準偏差σを算出する。そうしたら、当該平均値よりも2σだけ大きい値を、上記の目標範囲の上限値として使用し、同平均値よりも2σだけ小さい値を、同目標範囲の下限値として使用する。ちなみに、検査装置40が「異常有り」の判定を多発する場合には、目標範囲を拡げても良い。
また、場合によっては、画像処理部46のメモリは、上限値よりも更に大きい値を(例えば、上述の平均値よりも3σだけ大きい値)を上側上限値として予め有するようにするとともに、下限値よりも更に小さい値を(例えば、上述の平均値よりも3σだけ小さい値)を下側下限値として予め有するようにし、そして、第2異常判定処理において算出される盛り上がり部2pに係る高さの代表値が、これら上側上限値及び下側上限値で規定される数値範囲から外れる場合には、画像処理部46は、この平面画像に対応する単位表面シート2Uに対して開口部不良情報を付与するなど不良品であることを関連付けして、下工程での良品と不良品との分別処理に供するようにしても良い。
【0092】
===その他の実施の形態===
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。また、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更や改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれるのはいうまでもない。例えば、以下に示すような変形が可能である。
【0093】
上述の実施形態では、平面画像データの一例として、各画素の色情報が明度のみを有したグレースケールのデータを示したが、何等これに限るものではない。例えば、各画素の色情報が明度、色相、及び彩度を有したカラー画像データであっても良い。そして、その場合には、前述の二値化処理として、カラー二値化処理を行うこともできる。
ちなみに、カラー二値化処理とは、平面画像のカラー画像データから、特定の色情報を有する画素を抽出する処理のことである。ここで、色情報は、前述のように明度、色相、及び彩度の三要素をそれぞれ数値で有している。よって、明度、色相、及び彩度のそれぞれについて、抽出すべき画素の色情報の数値範囲を、第1(又は第2)二値化用閾値として画像処理部36(46)のメモリに予め設定しておけば、画像処理部36(46)は、その設定された色情報の画素を平面画像から抽出することができる。
すなわち、上述の第1(又は第2)二値化用閾値の三つの数値範囲を、平面画像のうちで開口部2hが撮像されている領域A2h(又は盛り上がり部2pの撮像領域A2p)に固有な色に基づいて予め設定しておけば、画像処理部36(46)は、平面画像データに記録されている平面画像の各画素の色情報を参照し、そして、上述の第1(又は第2)二値化用閾値の三つの数値範囲を全て満たす画素を例えば白の画素に割り振り、満たさない画素を例えば黒の画素に割り振る。そして、この割り振り動作を、平面画像データの全ての画素について行い、これにより、平面画像のうちで開口部2hが撮像されている領域A2h(又は盛り上がり部2pの撮像領域A2p)が、白の画素の領域として抽出される。この方法によれば、上記開口部2hが撮像されている領域A2h(又は盛り上がり部2pの撮像領域A2p)に固有な色に基づいて、平面画像から同領域A2h(又は領域A2p)を抽出するので、その抽出精度を高めることができる。なお、上述したこと以外の内容は、グレースケールを例に既述した内容と同じなので、その説明については省略する。
【0094】
上述の実施形態では、画像処理部36は、二値化画像における白画像の面積に基づいて開口部2hの異常の有無の判定を行っていたが、何等これに限るものではない。つまり、白画像の大きさを示す値であれば、面積以外の指示値を用いても良い。例えば、白画像の画素数で異常の有無の判定をしても良い。そして、その場合には、第1異常判定用閾値として、画素数で表現された固定値が予め各画像処理部36のメモリに設定される。
【0095】
上述の実施形態では、開口部2hの異常の有無の判定の際に、開口部2hが含まれる方の画像たる白画像の面積に基づいて開口部2hの異常の有無の判定をしていたが、何等これに限るものではない。例えば、開口部2hが含まれない方の画像たる黒画像の面積に基づいて開口部2hの異常の有無を判定しても良い。なお、この場合には、前述したのと同様の実験的手法によって、黒画像の面積に対応した目標範囲が予め用意されているのは言うまでもない。
【0096】
上述の実施形態では、第1検査装置30のCCDカメラ32を表面シート2aの裏面2s2に対向させて配置し、その逆側たる表面2s1に照明部材34を対向させて配置していたが、この配置関係は逆でも良い。すなわち、同カメラ32を表面2s1に対向させて配置し、照明部材34を裏面2s2に対向させて配置しても良い。更に言えば、カメラ32の撮像は、何等表面シート2aからの透過光の受光に限るものではなく、つまり表面シート2aからの反射光を受光して撮像しても良い。この場合には、照明部材34は、表面シート2aに対してカメラ32と同じ側に配置され、また、画像処理部36のメモリの第1二値化用閾値、及び異常判定処理に供する目標範囲には、それぞれ、反射光に対応した値が設定されるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0097】
1 ナプキン(吸収性物品、製品)、1w ウイング部、
2 表面シート(肌側シート)、2U 単位表面シート、
2a 表面シートの連続シート(肌側シート)、
2f 非盛り上がり部、2h 開口部、2p 盛り上がり部、
2s1 表面(肌側面)、2s2 裏面(非肌側面)、
3 吸収体、4 裏面シート、
7 エンボス溝、7R 閉領域、
10 穿孔装置(開口部形成装置)、
10a 受けロール(一方のロール)、10b ピンロール(他方のロール)、
14 ピン部材、14b 円柱部、14e 円錐部、16 孔部(凹部)、
18 制御部、
20 デフレクターロール、
30 検査装置、32 CCDカメラ(撮像処理部、第1撮像処理部)、
34 照明部材、
36 画像処理部(二値化処理部、異常判定処理部、第1二値化処理部、第1異常判定処理部)、
40 検査装置、42 CCDカメラ(第2撮像処理部)、44 照明部材、
46 画像処理部(第2二値化処理部、第2異常判定処理部)、
A2a 表面シートが撮像されている領域、
A2h 開口部が撮像されている領域、
A2p 盛り上がり部の撮像領域(盛り上がり部が撮像されている領域)、
B2f 黒画像における底部、B2p 黒画像における突出部、
C1w ウイング部の平面中心、CL ナプキンの幅方向の中心線、
CP 交点、L1w 線分、
P1 穿孔工程、P2 積層工程、Pz 排泄口部当接想定位置、
SP 背景となる空間、
W1 検査ウインドウ、W2 検査ウインドウ、
ACP 交点の位置の撮像部分、ASP 背景領域、
C10 回転軸、G10 ロール間隙、
PS1 撮像位置、PS2 撮像位置、M 開口面積、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収性物品に係る肌側シートに厚み方向に貫通形成された複数の開口部を検査する検査装置であって、
前記肌側シートは、前記吸収性物品の着用時に、液体を吸収する吸収体を着用者の肌側から覆いつつ該着用者の肌に当接するシートであり、
前記肌側シートが搬送される搬送方向に関して前記検査装置よりも上流側に配置された開口部形成装置によって、前記開口部は形成され、
前記肌側シートが前記吸収体に重ね合わせられるよりも前に、前記肌側シートの片面のうちで前記開口部が形成された領域を撮像して前記領域の平面画像のデータを平面画像データとして生成する撮像処理部と、
前記平面画像データに基づいて二値化画像を生成する際に、前記二値化画像において二値のうちの一方の値によって特定される画像に、前記平面画像のうちで前記開口部が撮像されている領域が含まれるように二値化処理を行う二値化処理部と、
前記二値化画像に基づいて前記開口部の異常の有無の判定を行う異常判定処理部と、を有することを特徴とする吸収性物品に係る肌側シートの開口部の検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載の吸収性物品に係る肌側シートの開口部の検査装置であって、
前記開口部形成装置は、互いの外周面を対向させながら前記搬送方向に沿って回転する一対のロールと、前記一対のロール同士の間のロール間隙の大きさを制御する制御部と、を有し、
前記一対のロールのうちの一方のロールは、その外周面から突出する複数の先細り形状のピン部材を有するとともに、他方のロールは、その外周面に、前記ピン部材を挿入可能な凹部を有し、
前記肌側シートが前記ロール間隙を通過する際に、前記ピン部材が前記肌側シートを前記厚み方向に貫通することにより前記開口部が形成され、
前記異常の有無の判定に係り、前記開口部の開口面積が過大であると判定された場合には、前記制御部は、前記ロール間隙の大きさを拡大方向に変更する一方、前記開口部の開口面積が過小であると判定された場合には、前記制御部は、前記ロール間隙の大きさを縮小方向に変更することを特徴とする吸収性物品に係る肌側シートの開口部の検査装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の吸収性物品に係る肌側シートの開口部の検査装置であって、
前記肌側シートは、前記着用者の排泄口部が当接されると想定される排泄口部当接想定位置を有し、
前記二値化処理部は、前記平面画像における二値化処理の対象領域を内方に区画して限定する検査ウインドウを、前記排泄口部当接想定位置の撮像部分に対応して設定することを特徴とする吸収性物品に係る肌側シートの開口部の検査装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかに記載の吸収性物品に係る肌側シートの開口部の検査装置であって、
前記開口部形成装置は、先細り形状の複数のピン部材を有し、
前記ピン部材は、前記厚み方向のうちで前記肌側シートの肌側面から非肌側面へと進む方向を突き通し方向として前記肌側シートを貫通することにより前記開口部を形成し、
前記肌側シートの前記開口部の内周形状は、前記突き通し方向に進むに従って開口面積が小さくなったテーパー形状であるとともに、前記肌側シートの前記非肌側面には、前記開口部の貫通形成に伴って該開口部の周縁部が山状に盛り上がってなる盛り上がり部が形成されており、
前記撮像処理部による前記開口部が形成された領域の撮像は、前記盛り上がり部が他の部材に接触する前に行われることを特徴とする吸収性物品に係る肌側シートの開口部の検査装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れかに記載の吸収性物品に係る肌側シートの開口部の検査装置であって、
前記開口部形成装置は、先細り形状の複数のピン部材を有し、
前記ピン部材は、前記厚み方向のうちで前記肌側シートの肌側面から非肌側面へと進む方向を突き通し方向として前記肌側シートを貫通することにより前記開口部を形成し、
前記肌側シートの前記開口部の内周形状は、前記突き通し方向に進むに従って開口面積が小さくなったテーパー形状であるとともに、前記肌側シートの前記非肌側面には、前記開口部の貫通形成に伴って該開口部の周縁部が山状に盛り上がってなる盛り上がり部が形成されており、
前記肌側面を照らす照明部材を有するとともに、前記撮像処理部は、前記非肌側面に対向して配置され、前記照明部材からの照射光が前記肌側シートを前記厚み方向に透過してなる透過光を前記撮像処理部が受光して撮像することを特徴とする吸収性物品に係る肌側シートの開口部の検査装置。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れかに記載の吸収性物品に係る肌側シートの開口部の検査装置であって、
前記開口部形成装置は、先細り形状の複数のピン部材を有し、
前記ピン部材は、前記厚み方向のうちで前記肌側シートの肌側面から非肌側面へと進む方向を突き通し方向として前記肌側シートを貫通することにより前記開口部を形成し、
前記肌側シートの前記開口部の内周形状は、前記突き通し方向に進むに従って開口面積が小さくなったテーパー形状であるとともに、前記肌側シートの前記非肌側面には、前記開口部の貫通形成に伴って該開口部の周縁部が山状に盛り上がってなる盛り上がり部が形成されており、
前記開口部が形成された前記肌側シートの前記肌側面を外周面に当接させながら所定の巻き付き角度で前記肌側シートを巻き付けて搬送するデフレクターロールを有し、
前記撮像処理部を第1撮像処理部とし、前記二値化処理部を第1二値化処理部とし、前記異常判定処理部を第1異常判定処理部とした場合に、
前記肌側シートのうちで前記デフレクターロールに巻き付いている部分であって、前記盛り上がり部を含む前記部分を、前記盛り上がり部の盛り上がり形状が判別可能な方向から撮像して前記部分の平面画像のデータを平面画像データとして生成する第2撮像処理部と、
前記平面画像データに基づいて二値化画像を生成する際に、前記二値化画像において二値のうちの一方の値によって特定される画像に、前記平面画像のうちで前記盛り上がり部が撮像されている領域が含まれるように二値化処理を行う第2二値化処理部と、
前記二値化画像に基づいて前記開口部の異常の有無の判定を行う第2異常判定処理部と、を有することを特徴とする吸収性物品に係る肌側シートの開口部の検査装置。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れかに記載の吸収性物品に係る肌側シートの開口部の検査装置であって、
前記異常判定処理部による異常の有無の判定は、前記二値化処理部で生成された二値化画像のうちで前記一方の値によって特定される画像の大きさを示す値に基づいて行われ、
前記異常判定処理部は、前記開口部の開口面積に係る目標範囲を有し、
前記異常判定処理部は、前記画像の大きさを示す値が前記目標範囲の上限値よりも大きい場合には、前記異常の有無の判定結果として、前記開口部の開口面積が過大であるとの判定結果を出力する一方、前記画像の大きさを示す値が前記目標範囲の下限値よりも小さい場合には、前記異常の有無の判定結果として、前記開口部の開口面積が過小であるとの判定結果を出力することを特徴とする吸収性物品に係る肌側シートの開口部の検査装置。
【請求項8】
吸収性物品に係る肌側シートに厚み方向に貫通形成された複数の開口部を検査する検査方法であって、
前記肌側シートは、前記吸収性物品の着用時に、液体を吸収する吸収体を着用者の肌側から覆いつつ該着用者の肌に当接するシートであり、
前記肌側シートが搬送される搬送方向に関して、前記開口部を検査する工程よりも上流側に配置された開口部形成装置によって、前記開口部は形成され、
前記肌側シートが前記吸収体に重ね合わせられるよりも前に、前記肌側シートの片面のうちで前記開口部が形成された領域を撮像して前記領域の平面画像のデータを平面画像データとして生成することと、
前記平面画像データに基づいて二値化画像を生成する際に、前記二値化画像において二値のうちの一方の値によって特定される画像に、前記平面画像のうちで前記開口部が撮像されている領域が含まれるように二値化処理を行うことと、
前記二値化画像に基づいて前記開口部の異常の有無の判定を行うことと、を有することを特徴とする吸収性物品に係る肌側シートの開口部の検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−85759(P2013−85759A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−229939(P2011−229939)
【出願日】平成23年10月19日(2011.10.19)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】