説明

吸収性物品の製造装置

【課題】持ち上げ部材の可動範囲を制限することなく、吸収性物品を加工する工程を実行するユニットの領域全体に亘って持ち上げ部材を用いることができる吸収性物品の製造装置を提供する。
【解決手段】吸収性物品の製造装置1は、吸収性物品を加工する工程を実行する複数のユニットU1〜U8と、対象物を持ち上げる持ち上げ部材10と、持ち上げ部材を支持する支持体20と、を備える。支持体は、複数の支柱と、支柱と接続された複数の梁材22と、梁材に接続されて持ち上げ部材を機械方向に沿ってガイドする第1レール23と、第1レールに接続され、持ち上げ部材を交差方向に沿ってガイドする第2レール24と、を備え、第1レールは、機械方向において全ユニットU1〜U8に跨っている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品の製造装置に関し、特に吸収性物品を構成するウェブ等の資材を持ち上げる持ち上げ部材を有する吸収性物品の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨て着用物品等の吸収性物品の製造装置は、吸収体を成型する工程や、ウェブを重ね合わせる工程等、複数の工程を実行する。特許文献1には、各工程を実行するユニットを複数備える吸収性物品の製造装置が記載されている。この吸収性物品の製造装置は、例えば、資材が設置されるユニットにおいて、ウェブ等の資材を持ち上げる持ち上げ部材が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2003−521338号公報(図37及び図38等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述の吸収性物品の製造装置には、以下の問題点があった。
【0005】
吸収性物品の製造装置は、資材を設置する必要があるユニットにのみ持ち上げ部材を設置している。しかし、製造装置のメンテナンスやユニットの入れ替え等においても持ち上げ部材を用いることがある。このような場合に、上述の吸収性物品の製造装置は、一部のユニットにのみ持ち上げ部材が設けられているため、製造装置が設置された領域全体に亘って持ち上げ部材を用いることができない。
【0006】
また、吸収性物品の製造装置の領域全体に亘って持ち上げ部材を用いるために、吸収性物品の製造装置を設置した建屋の天井下にレールを設置し、このレールに沿って持ち上げ部材を移動させることが考えられる。しかし、吸収性物品の製造装置と天井下との間には、例えば、粉塵を吸引するための吸引チューブや配線等が配されている。よって、天井下にレールを設置して、そのレールに沿って持ち上げ部材を移動しようとすると、持ち上げ部材と配線等が干渉することがあり、持ち上げ部材の可動範囲が制限されることがある。
【0007】
そこで、本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、持ち上げ部材の可動範囲を制限することなく、吸収性物品を加工する工程を実行するユニットの領域全体に亘って持ち上げ部材を用いることができる吸収性物品の製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するため、本発明は、吸収性物品を加工する工程を各々実行し、前記吸収性物品の加工工程に沿った機械方向(機械方向MD)に隣接して配置された複数のユニット(ユニットU1〜U8)と、前記ユニットに設置される対象物を持ち上げる持ち上げ部材(持ち上げ部材10)と、前記各ユニットと接続され、前記持ち上げ部材を支持する支持体(支持体20)と、を備える吸収性物品の製造装置1である。前記支持体は、前記ユニットが設置された床面(床面FL)から鉛直方向(鉛直方向GD)に延びる複数の支柱(支柱21)と、前記支柱と接続され、水平方向に架設された複数の梁材(梁材22)と、前記梁材に接続されて前記機械方向に沿って延び、前記持ち上げ部材を前記機械方向に沿ってガイドする第1レール(第1レール23)と、前記第1レールに接続され、前記機械方向と交差する交差方向(交差方向CD)に沿って前記ユニットに向かって延び、かつ前記持ち上げ部材を前記交差方向に沿ってガイドする第2レール(第2レール24)と、を備え、前記第1レールは、前記機械方向において全ユニット(ユニットU1〜U8)に跨って配置されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る吸収性物品の製造装置は、複数のユニットが機械方向に隣接して配置されており、全ユニットに跨って第1レールが配置されている。第1レールに沿って持ち上げ部材を移動させることにより、複数のユニットに跨って持ち上げ部材を配することができる。よって、複数のユニットの領域全体に持ち上げ部材を配して、持ち上げ部材を用いることができる。
【0010】
持ち上げ部材は、床面から鉛直方向に延びた支柱と、この支柱と接続された梁材と、から構成された支持体によって支持されている。よって、ユニットの上方に配線等がある場合であっても、配線等による制限を受けずに持ち上げ部材を可動させることができる。天井下から持ち上げ部材を吊す構成と比較して、持ち上げ部材の可動範囲の制限を少なくすることができる。持ち上げ部材の作業性を向上させて、生産効率や安全性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態に係る吸収性物品の製造装置の正面図である。
【図2】図1に示す吸収性物品の製造装置の左側面図である。
【図3】図1に示す吸収性物品の製造装置の平面図である。
【図4】図1に示す吸収性物品の製造装置の模式斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下において、本発明に係る吸収性物品の製造装置1について、図面を参照しながら説明する。具体的には、(1)吸収性物品の製造装置の構造、(2)その他の実施形態について説明する。
【0013】
なお、以下の図面の記載において、同一または類似の部分には、同一または類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な寸法などは以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0014】
(1)吸収性物品の製造装置の構成
まず、本実施形態に係る吸収性物品の製造装置1の構成について、図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態に係る吸収性物品の製造装置1の正面図である。図2は、吸収性物品の製造装置1の左側面図である。図3は、吸収性物品の製造装置1の平面図である。図4は、吸収性物品の製造装置1の模式斜視図であり、後述するユニットの詳細な構造を省略して示している。
【0015】
本実施の形態に係る吸収性物品の製造装置1は、吸収性物品を加工する工程を各々実行する複数のユニットU1〜U8と、ユニットU1〜U8に設置される対象物を持ち上げる持ち上げ部材10と、各ユニットと接続され、持ち上げ部材10を支持する支持体20と、を備える。
【0016】
各ユニットは、使い捨ておむつや生理用ナプキン等の吸収性物品の製造工程を実行する。本実施の形態におけるユニットは、例えば、吸収性物品を構成するウェブを繰り出す工程、ウェブ同士を積層する工程、ウェブにギャザーを形成するための弾性部材を配置する工程、ウェブに粘着材やテープ材を接合する工程、ウェブ同士を接合する工程、ウェブを切断する工程、ウェブを折り畳む工程を含む。
【0017】
本実施の形態におけるユニットU1は、吸収体積層工程であり、ユニットUU2は、吸収体成型・プレス工程であり、ユニットU3は、トップシート成型工程であり、ユニットU4は、全体貼り合せ工程、ユニットU5は、バックシート成型工程、ユニットU6は、サイドシート成型及びテープ取り付け工程であり、ユニットU7は、製品切り離し工程、ユニットU8は、製品折り工程である。
【0018】
複数のユニットは、吸収性物品の加工工程に沿った機械方向MDに隣接して配置されている。機械方向MDは、吸収性物品の製造装置1の長手方向に沿っており、図1及び図3に示す右側から左側に向かう方向である。
【0019】
なお、本実施の形態に係る吸収性物品の製造装置1のユニット同士は、機械方向MDに接して配置されているが、必ずしもこの構成に限られない。例えば、ユニットは、機械方向MDにおいて並んでいればよく、ユニットとユニットとの間に隙間が設けられていてもよい。
【0020】
持ち上げ部材10は、対象物を上方に持ち上げる機能を有する部材であり、例えば、ホイスト、クレーンを例示できる。持ち上げ部材10は、第1持ち上げ部材11と、第2持ち上げ部材12とを有する。第2持ち上げ部材12は、第1持ち上げ部材よりも持ち上げ可能な重量が大きい。
【0021】
持ち上げ部材10は、吸収性物品の資材のみならず、メンテナンス時等においてはユニットを構成する機械を持ち上げることが想定され、種々の対象物を持ち上げることが考えられる。対象物によって重量は異なり、その重量に対応した持ち上げ部材を用いることが必要となる。持ち上げ可能な重量が異なる第1持ち上げ部材12と第2持ち上げ部材12とを備えることにより、重量が異なる対象物を持ち上げる場合であっても、用途に応じて適した持ち上げ部材を用いることが可能となる。
【0022】
支持体20は、支柱21と、梁材22と、第1レール23と、第2レール24と、ブレース材28と、を備える。支柱21は、ユニットU1〜U8が設置された床面FLから鉛直方向GDに延びている。
【0023】
梁材22は、支柱21と接続されており、水平方向に架設される。梁材22は、機械方向MDに沿って配置された第1梁材22Aと、機械方向MDと交差する交差方向CDに沿って配置された第2梁材22Bと、を備える。
【0024】
第2梁材22Bの一端は、支柱21に接続され、他端は、鉛直方向GDに延びる柱材25を介してユニットに接続されている。一般的に、吸収性物品の加工工程を実行するユニットは、多数の機械部品や資材が装着されており、支持体20に比べて重量が重い。第2梁材22Bの他端を、比較的重量が重いユニットに接続することにより、第2梁材22Bの他端の変位を抑制して、支持体20の安定性を高めることができる。
【0025】
支柱と支柱の間、及び梁材と梁材との間には、支持体の構造体としての強度を固めるためのブレース材28が配置されている。なお、支持体の構造体としての強度が得られる場合には、ブレース材28を設けなくてもよい。
【0026】
なお、本実施の形態では、柱材25を介して第2梁材22Bとユニットとを接続しているが、第2梁材22Bとユニットとを直接接続するように構成してもよい。
【0027】
第1レール23及び第2レール24は、持ち上げ部材10をガイドする。第1レール23は、梁材22に接続されており、機械方向MDに沿って延びている。第1レール23は、持ち上げ部材11を機械方向MDに沿ってガイドする。第2レール24は、第1レール23に対して連結部材26を介して接続され、交差方向CDに沿ってユニットに向かって延びている。第2レール24は、持ち上げ部材10を交差方向CDに沿ってガイドする。
【0028】
本実施の形態に係る第1レール23は、全ユニットU1〜U8に跨って配置されている。第1レール23は、2本配置されており、交差方向において離間し、互いに平行に配置されている。この一対の第1レール23を跨って第2レール24が配置されている。
【0029】
なお、本実施の形態に係る第1レール23は、2本配置されているが、1本であってもよい。しかし、第1レール23が2本配置され、この2本の第1レール23に対して第2レール24を連結することにより、第2レール24の安定性を高めることができる。
【0030】
第1レール23は、I型鋼によって構成されている。第1レール23の上面は、第2梁材22Bの下面に接続されている。第1レール23の交差方向端部に位置する一対の側面には、連結部材26が係合している。この一対の側面は、I型鋼の凹んだ面である。連結部材26は、第1レール23を挟むように、一対の側面にそれぞれ係合している。
【0031】
連結部材26は、第1レール23に沿って機械方向MDに移動する。なお、第1レール23の上面と第2梁材22Bの下面とが連結されており、第1レール23の上面よりも下方に位置する側面に連結部材26が係合しているため、連結部材26は、第2梁材22Bと干渉せずに、第1レール23に沿って機械方向MDに移動する。
【0032】
連結部材26の下面には、第2レール24の上面が連結されている。第2レール24は、連結部材26を介して、第1レール23に沿って機械方向MDに移動する。持ち上げ部材10は、第2レール24に装着されており、第2レール24に沿って交差方向CDにスライド移動可能に構成されている。
【0033】
第2レール24に装着された持ち上げ部材10は、第2レール24に沿って交差方向CDに移動することができ、かつ第2レール24は、全ユニットに跨って配置された第1レール23に沿って機械方向MDに移動することができる。したがって、機械方向MD及び交差方向CDに沿って持ち上げ部材10を移動させて、ユニットの全体領域に持ち上げ部材10を配して、全ユニットにおいて持ち上げ部材10を用いることができる。
【0034】
なお、本実施の形態において第1レール23が跨って配置される全ユニットは、吸収性物品の加工工程を実行するユニットを指しており、吸収性物品を製造した後の処理を実行する後処理ユニット(例えば、計数工程や搬送工程、及び包装工程)を含まない概念である。したがって、第1レールは、後処理ユニットにも跨って配置されていてもよいが、後処理ユニットに跨って配置されていなくてもよい。
【0035】
持ち上げ部材10は、床面FLから鉛直方向GDに延びた支柱21と、この支柱21と接続された梁材22と、から構成された支持体20によって支持されている。よって、ユニットの上方に配線等がある場合であっても、配線等による制限を受けずに持ち上げ部材を可動させることができる。天井下から持ち上げ部材を吊す構成と比較して、持ち上げ部材の可動範囲の制限を少なくすることができる。
【0036】
(2)その他の実施形態
第2レールは、ユニットよりも交差方向内側に配置されているが、交差方向においてユニットを跨って配置されていてもよいし、ユニットよりも交差方向外側に配置されていてもよい。例えば、ユニットの上方やユニットよりも交差方向外側に到達するように第2レールを配置することにより、ユニットの上面やユニットの裏側(交差方向外側)の資材や装置を持ち上げることが可能となり、持ち上げ部材を使用可能な領域を更に広げることができる。
【0037】
第1レールは、少なくとも機械方向に向かって持ち上げ部材を案内するように構成されていればよく、例えば、機械方向に対して傾斜して配置され、交差方向に案内しつつ機械方向に向けて案内するように構成されていてもよい。
【0038】
第2レールは、少なくとも交差方向に向かって持ち上げ部材を案内するように構成されていればよく、例えば、交差方向に対して傾斜して配置され、機械方向に案内しつつ交差方向に向けて案内するように構成されていてもよい。
【0039】
第1レールは、直接梁材に対して接続されていてもよいし、連結部材や鉛直方向に延びる柱材を介して梁材に接続されていてもよい。第2レールは、直接第1レールに対して接続されていてもよいし、連結部材を介して第1レールに対して接続されていてもよいし、支柱や梁材を介して第1レールに接続されていてもよい。
【0040】
本実施の形態に係る第1レールは、I型鋼であるが、溝型鋼や角型鋼であってもよい。なお、第1レールと連結部材との係合は、I型鋼によって構成されるレールと、レールに沿って移動するローラ等の摺動部材とによる係合に限られず、例えば、ラック・アンド・ピニオン機構による係合であってもよい。
【0041】
本実施の形態においては、第2レールに持ち上げ部材を装着し、第2レールを介して第1レールが配置された全領域に持ち上げ部材を移動させるように構成しているが、第1レールに直接持ち上げ部材を装着するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0042】
CD…交差方向、 GD…鉛直方向、 MD…機械方向、 FL…床面、 U1〜U8…ユニット、 1…製造装置、 10…持ち上げ部材、 11…第1持ち上げ部材、 12…第2持ち上げ部材、 20…支持体、 21…支柱、 22…梁材、 22…第2梁材、 22A…第1梁材、 22B…第2梁材、 23…第1レール、 24…第2レール、 25…柱材、 26…連結部材、 28…ブレース材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収性物品を加工する工程を各々実行し、前記吸収性物品の加工工程に沿った機械方向に隣接して配置された複数のユニットと、
前記ユニットに設置される対象物を持ち上げる持ち上げ部材と、
前記各ユニットと接続され、前記持ち上げ部材を支持する支持体と、を備える吸収性物品の製造装置であって、
前記支持体は、
前記ユニットが設置された床面から鉛直方向に延びる複数の支柱と、
前記支柱と接続され、水平方向に架設された複数の梁材と、
前記梁材に接続されて前記機械方向に沿って延び、前記持ち上げ部材を前記機械方向に沿ってガイドする第1レールと、
前記第1レールに接続され、前記機械方向と交差する交差方向に沿って前記ユニットに向かって延び、かつ前記持ち上げ部材を前記交差方向に沿ってガイドする第2レールと、を備え、
前記第1レールは、前記機械方向において全ユニットに跨って配置されている、吸収性物品の製造装置。
【請求項2】
前記第2レールは、連結部材を介して前記第1レールに接続されており、
前記連結部材は、前記第1レールに沿って前記機械方向に移動可能に構成されており、
前記第1レールは、前記連結部材及び前記第2レールを機械方向に沿ってガイドする、請求項1に記載の吸収性物品の製造装置。
【請求項3】
前記梁材の一端は、前記支柱に接続され、
前記梁材の他端は、前記ユニットに接続されている、請求項1又は請求項2に記載の吸収性物品の製造装置。
【請求項4】
前記持ち上げ部材は、第1持ち上げ部材と、前記第1持ち上げ部材よりも持ち上げ可能な重量が大きい第2持ち上げ部材と、を備えている、請求項1から請求項3のいずれかに記載の吸収性物品の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−13467(P2013−13467A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−146877(P2011−146877)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】