説明

吸収性物品及び該吸収性物品を使用した体液吸収物品

【課題】別体のインナーを併用した一定期間の使用に耐え得る耐久性と、単独での使用にも耐え得る吸収性能の双方を具備した吸収性物品と、該吸収性物品を使用した使い捨て紙おむつ等の体液吸収物品を提供する。
【解決手段】不透液性シート2と透液性トップシート3との間に吸収体4を介在させてなる吸収性物品1において、不透液性シート2の上に吸収体4を配置し、吸収体4の上にエアレイド不織布からなるセカンドシート8を配置するとともに、不透液性シート2と吸収体4、吸収体4とセカンドシート8との間をそれぞれホットメルト接着剤9a,9で固定し、かつ、セカンドシート8の上から熱エンボス加工を施し、その後セカンドシート8の上に透液性トップシート3を配置した吸収性物品、及び吸収性物品1を使用した体液吸収物品を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、別体の吸収パッドとしてのインナーを併用した一定期間の継続した使用に耐え得る耐久性と、単独での使用にも耐え得る吸収性能の双方を具備した吸収性物品と、該吸収性物品を使用した使い捨て紙おむつ等の体液吸収物品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から吸収性物品を使用した体液吸収物品として、パンツタイプの紙おむつ,フラットタイプの紙おむつ,失禁用パッド,生理用ナプキン等が広く提供されており、幼児から老人まで日常生活を快適に営むための必要不可欠な物品となっている。これらの吸収性物品は、尿や水様便等の体液を吸収するために、不透液性シートと透液性トップシートとの間に吸収体を介在させてなる構成を基本としている。
【0003】
例えば、パンツタイプの使い捨て紙おむつは、幼児用から成人向けまで幅広い用途のものが提供されており、家庭は勿論、病院や各種の介護施設、看護施設等において広く日常消費品として使用されている。そして近時は、コストや環境面、更には作業者効率等を考慮して、使い捨て紙おむつを単体で使用するのではなく、別体の吸収性物品である吸収パッドとしてのインナーを併用して使用し、使用後は体液を吸収したインナーのみを交換することによって、使い捨て紙おむつを一定期間継続して、具体的には入浴間隔に合わせて3〜4日間継続して使用するインナー交換スタイルが主流となっている。即ち、使い捨て紙おむつはおむつカバー的な役割となっている。また、近時はサイズの異なるインナーを複数併用することも行われている。
【0004】
また、吸収性物品の基本構成として、吸収体に一旦吸収された体液が着用者の身体の動静等によって逆戻りすることを防ぐために、透液性トップシートと吸収体との間にセカンドシートを介在させた構成も採用されている。このセカンドシートは、透液性トップシートを介して侵入した体液を受けて、吸収体に移行させて吸収させる体液拡散シートとして作用するものであり、同時に逆戻りを防止するためのものである。
【0005】
このセカンドシートとして各種の不織布を採用した吸収性物品が提供されており、例えばエアースルー不織布を使用したり(特許文献1)、 繊維長38〜90mmの短繊維不織布と繊維長3〜30mmの短繊維不織布が接合された少なくとも2層の複合化不織布を使用する例が提供されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4164416号公報
【特許文献2】特許第4324982号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
各種の介護施設や看護施設、或いは家庭における現況の介護環境では、人的労力としても経費の面からも、更には環境面からも、インナーを併用することにより使い捨て紙おむつを一定期間、具体的には3〜4日間程度繰り返して継続使用する使用形態を前提とせざるを得ない。
【0008】
そのため、使い捨て紙おむつも吸収性能そのものよりも、インナーを併用し易いように薄くて、かつ、インナーを交換することによって繰り返し使用可能な耐久性のある製品が求められている。近時の使い捨て紙おむつは、吸収体の量を減らして薄くして継続使用中に着用者の身体の動静等によって、吸収体が損壊して捩れたり、ずれたりすることがないようにして耐久性を向上させた製品が主流となっている。
【0009】
しかしながら、常にインナーを併用して使用しているわけではなく、一定期間経過後や入浴後等において使い捨て紙おむつを交換する前には、インナーを併用することなく単独で使用し、1〜3回程度排出された体液を吸収・保持させることが行われている。この場合には、吸収体を薄くして耐久性を向上させた使い捨て紙おむつは、薄くゴワゴワして使用感が悪いとともに、吸収性能が不十分であり、液漏れのおそれがある。
【0010】
一方、単体での使用に適した十分量の吸収体を装備した厚みのある使い捨て紙おむつは、風合いや使用感は良好であるが、インナーを併用して一定期間継続して使用しようとすると、吸収体は単体で必要十分な吸収量を有しているため、継続使用中に吸収体が着用者の身体の動静等によって損壊して型崩れを生じてしまうことが多く、耐久性に欠けることとなる。そのため、インナーを併用する現況の使用形態には適していない。
【0011】
出願人は、使い捨て紙おむつは体液吸収物品である以上、インナーを併用するとしても単独で、即ちインナーを併用しなくとも、排泄された尿や水様便等の体液を速やかに吸収体に吸収し、外部に漏れたり、浸み出ることがない基本性能を具備することが本来必要であると考える。そのためには必要十分量の吸収体を装備すれば使用感や吸収性能は向上する。しかしながら、インナーを併用することにより一定期間継続して繰り返し使用するうちに、着用者の身体の動静等によって吸収体が損壊して、ずれたり偏って使用できなくなってしまい、耐久性に欠けることとなる。一方、吸収体の量を減らして薄くすると耐久性は向上するが、使用感が悪く、又使い捨て紙おむつ単独での使用に適さなくなってしまう。
【0012】
なお、特許文献1,2におけるセカンドシートは専ら単独での使用時における体液の拡散性を向上させるとともに、逆戻りを防止するためのものである。そのため、単独使用時において、一旦吸収した体液の逆戻りを防止することによって、吸収性能の保持に貢献することはできるが、絶対的な吸収量そのものを増加させるためのものではない。そのため、セカンドシートによって、インナー併用時における耐久性と単独使用時における吸収性能保持という前記課題を同時に解決することはできない。
【0013】
そこで、出願人はこれらの相反する課題を同時に解決し、単独での使用にも耐え得る十分な吸収性能を保持するとともに、インナーを併用して一定期間使用することのできる耐久性の双方を同時に具備した吸収性物品と、該吸収性物品を使用した使い捨て紙おむつ等の体液吸収物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は上記課題に示す吸収性能と耐久性の双方を実現するためには、少なくとも必要十分量の吸収体を装備することを前提とする必要があると考えた。そこで、この前提の下に、一定期間、具体的には3〜4日間程度継続して繰り返し使用した場合に、着用者の身体の動静等によっても吸収体が損壊しないように、吸収性物品に熱エンボス加工を施して吸収体を固定する手段を採用したが、この熱エンボス加工だけでは、吸収体の損壊を防ぐには不十分であった。
【0015】
そこで、熱エンボス加工に加えて、ホットメルト接着剤により、不透液性シート,吸収体,透液性トップシートの各構成要素を強固に固定する手段を採用したが、そのために必要な量のホットメルト接着剤を塗布すると、熱エンボス加工時における熱エンボスロールは70℃〜90℃に加熱されているため、ホットメルト接着剤が熱エンボス加工時の温度によって透液性トップシートから滲み出し、熱エンボスロールに付着して絡みつくという新たな問題が生じた。更に、出願人は、透液性トップシートを介して侵入した体液を受けて、吸収体に移行させて吸収させる体液拡散シートとして使用されているセカンドシートに着目し、ティッシュペーパーからなるセカンドシートを吸収体と透液性トップシートとの間に介在させ、透液性トップシートを固定する前に、セカンドシートの上から熱エンボス加工を施すことによってホットメルト接着剤の滲み出しを防止することを試みた。
【0016】
その結果、一定厚さを有するティッシュペーパーからなるセカンドシートによって熱エンボス加工によるホットメルト接着剤の滲み出しは防止することができた。しかしながら、体液を吸収したウェット時において着用者の身体の動静によってティッシュペーパーが破壊されてしまい、目標とする1〜3回程度排出された体液を吸収して保持することは困難であった。
【0017】
更に、セカンドシートとして、特許文献1に示すエアースルー不織布からなるセカンドシートについても試行をしたが、エアースルー不織布は嵩高でウェット時の強度もあるが、密度が低くホットメルト接着剤を塗布した状態で、70℃〜90℃の温度範囲の熱エンボス加工を施すと、ホットメルト接着剤の滲み出しを防ぐことができなかった。
【0018】
これらの試行に基づき、本発明者は必要十分量の吸収体を装備した際における耐久性を吸収体に付与するためには、熱エンボス加工とホットメルト接着剤による強固な固定を同時に施すことが必要であるとの考えに至り、ホットメルト接着剤の滲み出し防止とともに、熱エンボス加工を可能とし、更にウェット時の耐久性を保持する部材について鋭意研究を行った。
【0019】
その研究過程において発明者はエアレイド不織布に着目し、ホットメルト接着剤の滲み出しを防ぐことに対して一定の効果があったティッシュペーパーとの乾燥時及び湿潤時の引張強度の比較検討を行った。その結果を表1に示す。なお、測定方法は25mmの幅の試料をチャック間距離100mmでチャックし、ロードセル定格49Nで、試験速度150mm/分で測定した。
【0020】
【表1】

【0021】
表1に示すように、ティッシュペーパーは湿潤時、即ち体液を吸収した後の引張強度、特に縦方向の引張強度が乾燥時の引張強度8.53Nから湿潤時は4.01Nと1/2以下に低下している。また、幅方向の引張強度は縦方向の引張強度に比較して乾燥時においても低い値となっている。このことから、前記した体液を吸収したウェット時において着用者の身体の動静によってティッシュペーパーが破壊されたことが裏付けされている。
【0022】
これに対して、エアレイド不織布の湿潤時の引張強度は、乾燥時の引張強度に比較して、縦方向の引張強度が10.8Nから9.11Nと僅かに低下するにとどまり、幅方向の引張強度は8.92Nから10.8Nと増大している。このことから、エアレイド不織布は体液を吸収したウェット時において着用者の身体の動静によって容易に破壊されない耐久性を有している。次にエアレイド不織布が熱エンボス加工時においてホットメルト接着剤の滲み出しを防ぐことができることを確認するために、ティッシュペーパーとエアレイド不織布の吸収性能についての比較試験を行った。その結果を表2に示す。なお、測定方法は、次のようにして行った。
【0023】
[製品重量]
電子天秤を用いて試料の重量を測定し、同一重量の試料とした。
【0024】
[吸収速度]
生理食塩水(0.9%)200mlを試料が吸収するまでの時間を測定し、小数点以下を四捨五入して吸収時間とした。
【0025】
[逆戻り量]
次の手順で測定した。
(1)100mm×100mm大のクレープ紙100枚程度の重量を測定した。測定値:a(但し、50g以上とする)
(2)吸収速度を測定した後の試料を10分間放置した後、クレープ紙の上に載せ、更に錘(20Kg)を載せて5分間放置した。
(3)その後、錘、試料を取り除いて、クレープ紙の重量を測定した。測定値:b
(4)測定値bから測定値aを減算した値を、小数点以下を四捨五入して、逆戻り量とした。
【0026】
【表2】

【0027】
表2に示すように、エアレイド不織布はティッシュペーパーに比較して、吸収速度が40秒から37秒に向上するとともに、逆戻り量が56gから38gに減少しており、又エアレイド不織布は耐熱性を有するため、熱エンボス加工時における70℃〜90℃の温度によってもホットメルト接着剤が滲み出すことを効果的に防ぐことができることを知見した。
【0028】
その結果、上記目的を達成するために、不透液性シートと透液性トップシートとの間に吸収体を介在させてなる吸収性物品において、吸収体の上にホットメルト接着剤を介してエアレイド不織布からなるセカンドシートを固定するとともに、セカンドシートの上から熱エンボス加工を施し、その後にセカンドシートの上に透液性トップシートを固定した吸収性物品を基本として提供する。また、不透液性シートの上に吸収体を配置し、吸収体の上にエアレイド不織布からなるセカンドシートを配置するとともに、不透液性シートと吸収体、吸収体とセカンドシートとの間をそれぞれホットメルト接着剤で固定し、かつ、セカンドシートの上から熱エンボス加工を施し、その後セカンドシートの上に透液性トップシートを配置した吸収性物品を提供する。
【0029】
そして、エアレイド不織布は、熱融着性の合成繊維を含有している構成、エアレイド不織布は、芯鞘構造を有する熱融着性の合成繊維と粉砕パルプを原料とし、合成繊維とパルプ繊維の混合割合の異なる3層構造であって、外側に位置する第1層と第3層は合成繊維90重量%、粉砕パルプ10重量%からなり、中間に位置する第2層は合成繊維40重量%、粉砕パルプ60重量%からなる構成、合成繊維として、ポリプロピレンとポリエチレンテフタレートの混合繊維、又はポリエチレンテフタレートとポリエチレンの混合繊維を使用する構成、第1層と第3層の坪量を6g/m〜8g/mとし、第2層の坪量を11g/m〜14g/mとした構成を提供する。
【0030】
また、熱エンボス加工を70℃〜90℃の温度範囲で施す構成、セカンドシートと透液性トップシートとの間をホットメルト接着剤にて固定した構成、エアレイド不織布によって、熱エンボス加工時の熱によるホットメルト接着剤のセカンドシートからの滲み出しを防止する構成、及びエアレイド不織布によって、吸収時における耐久性を向上させた構成を提供する。
【0031】
また、上記構成の吸収性物品を用いたことを特徴とする体液吸収物品、上記構成の吸収性物品を用いて、基材上に前記吸収性物品を配置した吸収性物品を使用した体液吸収物品、及び体液吸収物品が、パンツタイプの紙おむつ,フラットタイプの紙おむつ,失禁用パッド又は生理用ナプキンである構成を提供する。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、エアレイド不織布からなるセカンドシートを透液性トップシートと吸収体の間に介在させることにより、セカンドシートと吸収体の間を強固に固定するために必要十分な量のホットメルト接着剤を介在させた状態で、セカンドシートの上から70℃〜90℃の温度範囲の熱エンボス加工を施した場合にもホットメルト接着剤がセカンドシートから滲み出すことがない。そのため、セカンドシートの上から熱エンボス加工を施すこととホットメルト接着剤の相乗効果によって、吸収体とセカンドシートを強固に固定することができる。また、透液性トップシートを固定する前に熱エンボス加工を施すため、セカンドシートと透液性トップシートの間に介在させたホットメルト接着剤が透液性トップシートから滲み出すこともない。
【0033】
よって、必要十分量の吸収体を装備した状態で、インナーを介在させて一定期間継続して使用するインナー交換スタイルとして使用するのに十分な耐久性を付与することができる。一方、インナー交換スタイルとして一定期間使用後や入浴後等において使い捨て紙おむつを交換する前には、インナーを併用することなく単独で使用し、1〜3回程度排出された体液を吸収・保持させることができる。そのため、単独での使用にも耐え得る十分な吸収性能の保持と、インナーを併用して一定期間使用することのできる耐久性の双方を同時に具備することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明にかかる吸収性物品の要部横断面図。
【図2】本発明にかかる吸収性物品の要部縦断面図。
【図3】本発明にかかるセカンドシートの構成を示す要部断面図。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下図面に基づいて本発明にかかる吸収性物品及び該吸収性物品を使用した体液吸収物品の実施形態を説明する。図1は本発明にかかる吸収性物品1の要部横断面図であり、図2は要部縦断面図である。図において、2はポリエチレン、ポリプロピレンなどからなる不透液性シートであり、吸収性物品1に吸収した尿や水様便等の体液を外部に漏らさないためのものであり、体圧がかかった程度では、体液は透液しない。3はポリエチレン,ポリプロピレン,ポリエチレンテレフタレート,レーヨン,コットンなどからなる透液性トップシートである。
【0036】
4aは第1吸収体、4bは第2吸収体であり、両者を積層して吸収体4が構成されている。5は第1吸収体4aを被覆しているティッシュペーパーである。図示例では第1吸収体4aと第2吸収体4bに2分割した2層構造としたが、1層構造又は3層以上の多層構造としてもよい。この吸収体4は粉砕パルプや高吸水性樹脂などからなり、排泄された尿や水様便等の体液を吸収して保持するものである。よって、吸収性物品1に排泄された尿や水様便等の体液は、透液性トップシート3を透過して吸収体4に素早く吸収される。本発明では、排泄された尿や水様便等の体液をインナーを併用することなく単独で速やかに吸収し、1〜3回分程度の体液を保持できるだけの必要十分量の吸収体4を装備する。
【0037】
6は不透液性サイドシートであり、不透液性シート2と透液性トップシート3とを長手方向に一体に連接するとともに、自由端部として形成された先端部の長手方向に伸長状態の1乃至複数本の弾性体7を添設して立上りギャザー6aとして形成している。この不透液性サイドシート6は、ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリエチレンテレフタレートなどからなる撥水性不織布を採用することが適当であり、排泄された体液が吸収体4に吸収されるまでの間、体液の漏れを防止することができる。
【0038】
8はエアレイド不織布からなるセカンドシートであり、透液性トップシート3と吸収体4(図示例では第2吸収体4b)との間に介在させてある。このエアレイド不織布からなるセカンドシート8を介在させたことが本発明の特徴である。エアレイド不織布は、空気中に熱融着繊維、パルプ等を分散して作ったシートに熱をかけて結合させた不織布であり、例えば繊維長1mm〜10mmの芯鞘構造の合成繊維、例えばポリプロピレンとポリエチレンテフタレートの混合繊維(PP/PET)、若しくはポリエチレンテフタレートとポリエチレンの混合繊維(PET/PE)と粉砕パルプを原料とし、合成繊維とパルプ繊維の混合割合の違う3層構造で構成されている。図3はセカンドシート8の構成を示す要部断面図であり、外側に位置する第1層8aと第3層8cは合成繊維90重量%、粉砕パルプ10重量%からなり、中間に位置する第2層8bは合成繊維40重量%、粉砕パルプ60重量%から構成している。そして、第1層8aと第3層8cの坪量をそれぞれ6g/m〜8g/mとし、第2層8bの坪量を11g/m〜14g/mとし、セカンドシート8全体の坪量を23g/m〜30g/mとする。
【0039】
このエアレイド不織布からなるセカンドシート8は、気密度がエアースルー不織布よりも高く、ティッシュペーパーに近いため、加熱された場合にもホットメルト接着剤が滲み出し難い。一方、ドライ状態は勿論、体液によってウェット状態となった場合においても強度はティッシュペーパーよりも高い。よって、ホットメルト接着剤を使用した強固な固定を施した後に熱エンボス加工を施しても、ホットメルト接着剤が滲み出すことがない。更に、体液の吸収速度を向上させ、逆戻りを防ぐ効果もある。
【0040】
吸収性物品1は、不透液性シート2と透液性トップシート3との間に第1吸収体4a及び第2吸収体4bを積層した吸収体4を介在させて構成されている。具体的には、ティッシュペーパー5によって巻装された第1吸収体4a上にホットメルト接着剤9aを介して第2吸収体4bを接着して積層した吸収体4を不透液性シート2の幅方向及び長手方向の所定範囲に塗布したホットメルト接着剤9aで不透液性シート2上に接着して固定する。なお、第1吸収体4aの上下両面はホットメルト接着剤9aによって、ティッシュペーパー5に接着されている。
【0041】
そして、エアレイド不織布からなるセカンドシート8を同様に、セカンドシート8の裏面の幅方向及び長手方向の所定範囲に塗布したホットメルト接着剤9を介して吸収体4の上面(図示例では第2吸収体4bの上面)に接着して固定する。このように、ホットメルト接着剤9,9aを使用して、不透液性シート2,吸収体4,セカンドシート8を強固に固定した後に、更に70℃〜90℃の温度範囲に加熱した熱エンボスロールを使用して、セカンドシート8の上から全体に熱エンボス加工を施す。この熱エンボス加工によって吸収体4を締め固めることができ、排泄された尿や水様便等の体液をインナーを併用することなく単独で速やかに吸収し、1〜3回分程度の体液を保持できるだけの必要十分量の吸収体4に耐久性を付与することができる。
【0042】
このようにして、セカンドシート8の上から、熱エンボス加工を施して、吸収体4を充分に締め固めてから、裏面にホットメルト接着剤9aを塗布した透液性トップシート3をセカンドシート8の上面に接着して固定する。更に、不透液性サイドシート6の基端部6bをホットメルト接着剤9aを介して不透液性シート2の両端上面に接着して固定するとともに、不透液性サイドシート6の中間部6cをホットメルト接着剤9aを介して吸収体4上に接着して固定する。
【0043】
上記した構成の吸収性物品1をパンツタイプの紙おむつ,フラットタイプの紙おむつ,失禁用パッド,生理用ナプキンその他の体液吸収物品に使用する場合には、体液吸収物品の特徴に応じて適宜の基材(図示略)の上に吸収性物品1を配置して固定し、公知の手段によって体液吸収物品を完成させればよい。また、生理用ナプキン等体液吸収物品の用途によっては、基材を使用することなく、吸収性物品1のみで、或いは他の公知の部材と組み合わせて、体液吸収物品とすることも可能である。
【0044】
本発明にかかる吸収性物品1を使用して、製品重量119g,121g,123gのMサイズの使い捨て紙おむつ(実施例1〜3)を製造し、その保水量を測定した。また、比較例として吸収体の量を減らして薄くしてインナー使用を前提とした製品重量91g,92gの市販のMサイズの使い捨て紙おむつ(比較例1〜3)の保水量を測定した。この製品重量の差は吸収体の量の差である。その結果を表3に示す。なお、保持させる液体としては生理食塩水(0.9%)を使用した。
【0045】
【表3】

【0046】
表3に示すように本発明にかかる実施例1〜3の方が比較例1〜3と比較して、製品重量が重く、即ち吸収体4の量が多いことに起因して、保水量も大幅に増加している。例えば、比較例1の保水量は809gであるのに対して、実施例1の保水量は1411gであり、約1.7倍に向上している。よって、実施例1〜3によればインナーを使用することなく、単独で1〜3回程度排出された体液を吸収・保持させることができる。
【0047】
また、本発明にかかる吸収性物品を使用した使い捨て紙おむつと、熱エンボス加工を施さなかった以外は本発明にかかる吸収性物品を使用した使い捨て紙おむつの引張強度を測定した結果を表4に示す。なお、測定方法は50mm幅の試料をチャック間距離100mmでチャックし、ロードセル定格245Nで、試験速度200mm/分で測定した。
【0048】
【表4】

【0049】
表4に示すように、吸収体に熱エンボス加工を施すことによって、使い捨て紙おむつの引張強度が37Nから43Nに向上している。この引張強度の向上によって、体液を吸収したウェット時における着用者の身体の動静によって吸収体が破壊されることを少なくすることができると考えられる。そのため、インナーを併用して一定期間継続して使用した後や入浴後等において使い捨て紙おむつを交換する前には、インナーを併用することなく単独で使用し、1〜3回程度排出された体液を吸収・保持させることが可能となり、使い捨て紙おむつ単独での使用にも適している。即ち、使い捨て紙おむつとは別体の吸収パッドとしてのインナーを併用した一定期間の継続した使用に耐え得る耐久性と、単独での使用にも耐え得る吸収性能の双方を実現することができる。
【0050】
上記構成の吸収性物品1或いは吸収性物品1を使用した体液吸収物品において、インナーを併用して一定期間継続して使用した場合にも、熱エンボス加工とホットメルト接着剤9の相乗効果によって、吸収体4が着用者の身体の動静によって損壊されることがなく安定して使用することができる。しかも、エアレイド不織布からなるセカンドシート8を介在させてあるため、熱エンボス加工時にホットメルト接着剤9がセカンドシート8から滲み出すこともない。
【0051】
また、一定期間使用後や入浴後等において吸収性物品1や体液吸収物品を交換する前において、インナーを併用することなく単独で使用する場合においても、必要十分量の吸収体4を装備しているため、体液等が漏れることもない。しかもセカンドシート8は、一度の排泄量が多かった場合においても、速やかに拡散させて吸収体4に吸収させることができる。また、セカンドシート8は、使用時に着用者の体圧がかかったり、或いは吸収体4が既に一定量の体液を吸収して吸収能力が低下している場合においても体液の逆流を防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
以上詳細に説明したように、本発明によれば、エアレイド不織布からなるセカンドシートを透液性トップシートと吸収体の間に介在させることにより、セカンドシートと吸収体の間を強固に固定するために必要十分な量のホットメルト接着剤を介在させた状態で、セカンドシートの上から70℃〜90℃の温度範囲の熱エンボス加工を施した場合にもホットメルト接着剤がセカンドシートから滲み出すことがない。そのため、セカンドシートの上から熱エンボス加工を施すこととホットメルト接着剤の相乗効果によって、吸収体とセカンドシートを強固に固定することができる。また、透液性トップシートを固定する前に熱エンボス加工を施すため、セカンドシートと透液性トップシートの間に介在させたホットメルト接着剤が透液性トップシートから滲み出すこともない。
【0053】
よって、必要十分量の吸収体を装備した状態で、インナーを介在させて一定期間、具体的には3〜4日間程度継続して使用するインナー交換スタイルとして使用するのに十分な耐久性を付与することができる。一方、インナー交換スタイルとして一定期間使用後や入浴後等において使い捨て紙おむつを交換する前には、インナーを併用することなく単独で使用し、1〜3回程度排出された体液を吸収・保持させることができる。そのため、単独での使用にも耐え得る十分な吸収性能の保持と、インナーを併用して一定期間使用することのできる耐久性の双方を同時に具備することができる。
【符号の説明】
【0054】
1…吸収性物品
2…不透液性シート
3…透液性トップシート
4…吸収体
5…ティッシュペーパー
6…不透液性サイドシート
7…弾性体
8…セカンドシート
8a…第1層
8b…第2層
8c…第3層
9,9a…ホットメルト接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不透液性シートと透液性トップシートとの間に吸収体を介在させてなる吸収性物品において、
吸収体の上にホットメルト接着剤を介してエアレイド不織布からなるセカンドシートを固定するとともに、セカンドシートの上から熱エンボス加工を施し、その後にセカンドシートの上に透液性トップシートを固定したことを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
不透液性シートと透液性トップシートとの間に吸収体を介在させてなる吸収性物品において、
不透液性シートの上に吸収体を配置し、吸収体の上にエアレイド不織布からなるセカンドシートを配置するとともに、不透液性シートと吸収体、吸収体とセカンドシートとの間をそれぞれホットメルト接着剤で固定し、かつ、セカンドシートの上から熱エンボス加工を施し、その後セカンドシートの上に透液性トップシートを配置したことを特徴とする吸収性物品。
【請求項3】
エアレイド不織布は、熱融着性の合成繊維を含有している請求項1又は2記載の吸収性物品。
【請求項4】
エアレイド不織布は、芯鞘構造を有する熱融着性の合成繊維と粉砕パルプを原料とし、合成繊維とパルプ繊維の混合割合の異なる3層構造であって、外側に位置する第1層と第3層は合成繊維90重量%、粉砕パルプ10重量%からなり、中間に位置する第2層は合成繊維40重量%、粉砕パルプ60重量%からなる請求項1又は2記載の吸収性物品。
【請求項5】
合成繊維として、ポリプロピレンとポリエチレンテフタレートの混合繊維、又はポリエチレンテフタレートとポリエチレンの混合繊維を使用する請求項4記載の吸収性物品。
【請求項6】
第1層と第3層の坪量を6g/m〜8g/mとし、第2層の坪量を11g/m〜14g/mとした請求項4又は5記載の吸収性物品。
【請求項7】
熱エンボス加工を70℃〜90℃の温度範囲で施す請求項1,2,3,4,5又は6記載の吸収性物品。
【請求項8】
セカンドシートと透液性トップシートとの間をホットメルト接着剤にて固定した請求項1,2,3,4,5,6又は7記載の吸収性物品。
【請求項9】
エアレイド不織布によって、熱エンボス加工時の熱によるホットメルト接着剤のセカンドシートからの滲み出しを防止する請求項1,2,3,4,5,6,7又は8記載の吸収性物品。
【請求項10】
エアレイド不織布によって、吸収時における耐久性を向上させた請求項1,2,3,4,5,6,7,8又は9記載の吸収性物品。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の吸収性物品を用いたことを特徴とする吸収性物品を使用した体液吸収物品。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれかに記載の吸収性物品を用いて、基材上に前記吸収性物品を配置したことを特徴とする吸収性物品を使用した体液吸収物品。
【請求項13】
体液吸収物品が、パンツタイプの紙おむつ,フラットタイプの紙おむつ,失禁用パッド又は生理用ナプキンである請求項11又は12記載の吸収性物品を使用した体液吸収物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−61237(P2012−61237A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−209537(P2010−209537)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(592111012)株式会社近澤製紙所 (4)
【Fターム(参考)】