説明

吸収性物品

【課題】
本発明は、ナノファイバー集合体と高吸水性樹脂を用いることで、薄く、保水性および吸水速度に優れた吸収性物品を提供するものである。この吸収性物品は、おむつ、生理用ナプキン、失禁パッドおよびふき取り用ワイピングクロス等の衛生材料用品に好適である。
【解決手段】
数平均による単繊維繊度が1×10−7〜2×10−4dtexの熱可塑性ポリマーからなるナノファイバー集合体と、吸水量がその質量の50〜80倍である高吸水性樹脂を用い、第1層にナノファイバー集合体、第2層に高吸水性樹脂の層の構造を有する吸収性物品であり、ナノファイバー集合体は綿、織物、編物、フェルト、抄紙および不織布からなる群から選ばれた形態の繊維構造体で構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノファイバー集合体を用いてなる衛生材料用品に好適な吸収性物品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
単繊維直径が2〜5μmである微細繊維は、従来からワイピングクロスやめがね拭きなどに使われてきた。また、その柔らかな風合いから、人工皮革などにも応用されている。また、最近では、衣料用途や生活資材用途だけでなく、ハードディスク研磨布(特許文献1参照)など産業資材用途にも用いられている。
【0003】
微細繊維の特徴の一つとして、微細繊維で構成される集合体の表面積が従来の繊維からなる集合体と比べ非常に大きくなるため、その間隙に水や、機能性薬剤など水と親和性の高い物質を蓄えることができることが知られている。
【0004】
一方で、紙おむつや生理用ナプキンには、尿や経血など体液を吸収するための吸収シートが配設されている。この吸収シートは、薄葉紙などの上層と下層との間や、粉砕された木材パルプの中にポリアクリル酸塩などの高吸水性樹脂(以下、SAPと略称する。)を入れた構成となっている。木材パルプは、安価で、吸水性が高い為、従来、紙おむつや生理用品などの衛生材料用品の吸収体として用いられてきた。しかしながら、木材パルプは、綿状であるため、嵩高く、吸収体を薄型化するためには向いていない。そこで、吸収体を薄型化および高吸収化するために、SAPを用いた吸収体を使うことが主流となっている。SAPは、木材パルプ以上に吸水性が高いため、木材パルプのみで吸収シートを構成したものに比べ、体液の吸収性に優れ、かつ吸収シートを薄型化することができる。また、SAPは、乾燥状態においては粉末状で、体液を吸収すると分子鎖の間に水分子を抱え込むことでゲル化するため、吸収された体液を吸収シートの中に保持することができ、体液の戻りや漏れを防止することができ、着用者の装着感を向上させることができる。
【0005】
しかしながら、紙おむつや生理用ナプキン等に使用される吸収シートにおいて、薄型化および吸水性を高めるためにSAPの量を多くすると、吸水前の粉末状のSAPが着用者の動きによって、吸収シートの上層や下層、または、前方や後方間で移動し、SAPの分布にむらが生じることとなる。このとき、SAPの少ないところに体液が当たると、体液をSAPによって完全に吸収しきることができず、体液の戻りや漏れが発生することとなり、着用者に不快感を与えることとなる。
【0006】
また、SAPは、従来の吸収シートに使用されている綿状パルプと比べ瞬間的に水を吸収する能力に劣るため、SAP100%の吸収シートは、理論上は可能であるが尿や経血を吸収するシートに実用上使用することはできない。このため、現行の吸収シートは、綿状パルプとSAPを併用した構成となっているものがほとんどであるが、綿状パルプとSAPの構成比は50:50程度が実用上の限界であり、SAPを主体とする紙おむつや生理用ナプキン吸収体を得ることは極めて難しかった。
【0007】
また別に、木材パルプを用いずに、微細繊維を用いた高吸水性シートとして、微細繊維、高分子吸収体およびシート支持体で構成されたパルプレス吸収体が提案されている(特許文献2参照)。しかしながら、この提案では微細繊維は、高吸水性樹脂を固定し分散させるために用いられており、体液を十分に吸収させることはできず、特に体液を吸収させるスピードが従来から用いられている、パルプに比べて劣っている。
【0008】
すなわち、未だ紙おむつや生理用ナプキン等の吸収シートを薄型化することができる技術は確立できていないのが現状である。
【特許文献1】特開2001−1252号公報
【特許文献2】特開平11−170414号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、紙おむつや生理用ナプキン等の吸収シートを、従来より50〜90%薄型化させることができる吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を達成するための本発明の吸収性物品は、数平均による単繊維繊度が1×10−7〜2×10−4dtexである熱可塑性ポリマーからなるナノファイバー集合体と、吸水量が該ナノファイバー集合体の質量の50〜80倍の高吸水性樹脂からなることを特徴とする吸収性物品である。
【0011】
本発明の好ましい態様によれば、本発明の吸収性物品は、第1層にナノファイバー集合体の層があり、第2層に高吸水性樹脂の層がある構造を有している。また、上記ナノファイバー集合体の吸水量は、その質量の2〜7倍である。また、ナノファイバー集合体の単繊維間の空隙に機能性薬剤を含有している。
【0012】
また、本発明の好ましい態様によれば、ナノファイバー集合体は、綿ウェブ、織物、編物、フェルト、抄紙および不織布からなる群から選ばれた形態の繊維構造体である。繊維構造体は、ナノファイバー集合体を含む不織布と他の不織布を積層した複合構造体であってもよい。
【0013】
本発明の吸収性物品は、特におむつ、生理用品、失禁パッドおよびふき取り用ワイピングクロス等の衛生材料用品に好適に用いられる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の吸収性物品によれば、従来の素材に比べて単繊維繊度が格段に小さくなることで、表面積が増大し、従来の木材パルプと高吸水性樹脂を用いた吸収性物品よりも、薄型で装着感が良く、装着時の見栄えの良い、おむつや生理用ナプキン、また、吸収速度の速く、ふき取り時の使用感のよいおしり拭き等のワイピングクロス等の衛生材料用品を得ることができる。また、本発明の吸収性物品は、液拡散性に優れており、しかも吸水速度速度が速いという効果がある。さらに、単繊維繊度が格段に細くなることで、その繊維間空隙に、例えば、消臭剤や保湿剤等の機能性薬剤を担持することができることから、匂いが少なく、肌に優しいという優れた効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の吸収性物品を実施するための最良の形態を詳細に説明する。
【0016】
本発明で用いられるナノファイバー集合体を構成するナノファイバーは、熱可塑性ポリマーからなり、数平均による単繊維繊度が1×10−7〜2×10−4dtexである熱可塑性ポリマーからなる微細繊維である。ナノファイバーを構成するポリマーとしては、製糸性および生産性の点から熱可塑性ポリマーが好適である。
【0017】
熱可塑性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリ乳酸などのポリエステル、ポリアミド、およびポリプロピレンやポリエチレンなどのポリオレフィン系ポリマー等が挙げられる。また、熱可塑性ポリマーの融点は160℃以上であることが好ましく、ナノファイバーにした場合の耐熱性が良好である。さらに、熱可塑性ポリマーには、粒子、難燃剤および帯電防止剤などの添加物を含有させても良く、また、熱可塑性ポリマーの性質を損なわない範囲で、他の成分が共重合されていても良い。
【0018】
続いて、ナノファイバーを用いた吸収性物品の構成について述べる。
【0019】
本発明の吸収性物品とは、おむつや生理用ナプキン等の吸収体に用いられる部材であり、主としてナノファイバー集合体と高吸水性樹脂とで構成されている。ナノファイバー集合体には、おもに装着感の向上、液拡散性および液の一時保持機能を持たせる。また、高吸水性樹脂には液の永久保持機能を持たせる。
【0020】
本発明における吸収性物品は、表側第1層にナノファイバー集合体があり、第2層に高吸水性樹脂からなる保水層を持つ構造であることが好ましい。
【0021】
本発明においてナノファイバーは、単繊維繊度が1×10−7〜2×10−4dtex、すなわち単繊維直径を1〜500nmのナノオーダーとすることで、極めて特異な機能を発現する。すなわち、このように極めて細い繊維とすることで、ナノファイバーを繊維束としたとき1〜20万のナノファイバーが集合した構造とすることができるため、従来のマイクロファイバーからなる繊維束とは異なり、表面積が極めて大きくなることから、繊維束の単繊維間の空隙に大量の水を含むことができる。吸水量は、ナノファイバー集合体の重量のおよそ2〜7倍である。
【0022】
本発明における吸収性物品は、ナノファイバー集合体の単繊維間の空隙に機能性薬剤を含浸させることができる。機能性薬剤としては、親水性の薬剤が好ましく、消臭剤、光触媒または保湿剤などを付着させると、装着者の装着性を向上させることができる。
【0023】
機能性薬剤の付着量は、ナノファイバー集合体重量の0.3〜5重量%であることが好ましい。付着量が0.3重量%より少ないと機能性薬剤の効果を十分に発揮させることができず、また5重量%を超えるとコストパフォーマンスが悪くなるだけでなく、ナノファイバー集合体の風合いが悪くなる傾向を示す。
【0024】
ナノファイバー集合体の目付は、液の一時保水性および液拡散性が良好であることから、20〜2000g/mの範囲であることが好ましい。目付が20g/m未満では液の一時保水機能が著しく低下するため、吸収性物品としての性能を満たすことが出来ず、また2000g/mを超えると、コストパフォーマンスが悪くなるだけでなく、吸収性物品が厚くなり装着者の使用感が悪くなる傾向を示す。
【0025】
本発明の好ましい態様において、第一層のナノファイバー集合体は、綿ウェブ、織物、編物、フェルトおよび不織布等のいずれかの形態の繊維構造体である。高吸水性樹脂と用いるときの加工性が向上するため、このような形態の繊維構造体が選択され好適に用いられる。
【0026】
本発明の好ましい態様によれば、ナノファイバー集合体は、綿ウェブ、織物、編物、フェルト、抄紙および不織布からなる群から選ばれた形態の繊維構造体である。繊維構造体は、ナノファイバー集合体を含む不織布であってもよく、さらにその不織布とナノファイバー以外の不織布を積層した複合構造体であってもよい。ナノファーバー以外の不織布の素材は、天然繊維や化学繊維等特に限定されないが、化学繊維がコストと形態安定性から好ましく用いられる。不織布の形態や製法も特に限定されず、ニードルパンチ法、ウオータージェットパンチ法、スパンボンド法、またそれらの複合紡糸等、公知の不織布製法を用いることができる。
【0027】
繊維構造体は、ナノファイバー集合体だけで構成されていてもよいが、本発明で用いられるナノファイバーの他に、綿、麻および毛などの天然繊維や、マイクロファイバーなどの微細繊維などを含んでいても良い。ナノファイバー集合体の他にマイクロファイバー等を混ぜ合わせることで、コストパフォーマンスが上昇するだけでなく、強度等の物性面での性能向上を図ることができる。また、ナノファイバー集合体の他に綿、麻などの天然繊維を混ぜ合わせることで、天然繊維の持つ風合い、吸水性に加え、ナノファイバーの持つ風合い、吸水性が合わさることで今までにない質感を持った布帛ができ、着用者の使用感の向上を図ることができる。
他の繊維の混率は、ナノファイバーの特徴をなくすことなく天然繊維やマイクロファイバーの機能を取り入れることができることから、10〜50重量%の範囲であることが好ましい。他の繊維の混率が50重量%を超えると、ナノファイバーよりも天然繊維、マイクロファイバーの性質が大きくなり、ナノファイバー独自の性質が損なわれてしまう可能性がある。
【0028】
ナノファイバー集合体の厚さは、0.1mmから20mmの範囲であることが好ましい。厚さがこの範囲にあると、吸収体の吸水速度と吸収量が、吸収体の薄さと最もバランスとれるからである。厚さが0.1mmより薄くなると、吸収体の吸収量が少なくなり、液が横に漏れてしまい、厚さが20mmより厚くなると、吸収速度と吸収量の点は問題ないが、着用時のごわつきや、外観などを損なうという傾向を示す。
【0029】
本発明における吸収性物品は、第2層に高吸水性樹脂からなる保水層を持つ構造であることが好ましい。排出された尿は、第1層のナノファイバー集合体により一時的に保水拡散され、第2層の高吸水性樹脂により閉じ込められることによって、濡れ戻りのなく装着間の良い吸収性物品となるためである。第2層に使用される高吸水性樹脂としては、ポリアクリル酸塩や、ポリビニルアルコール系およびポリアクリルアミド系などの合成ポリマー、およびデンプン系やセルロース系などの種々のものが使用される。中でも、ポリアクリル酸系の高分子化合物であり、1gの高吸水性樹脂が15gの生理食塩水を吸水するときの速度が7秒以下、好ましくは4秒以下であり、吸水倍率が50〜80倍の高吸水性樹が好ましく用いられる。高吸水性樹脂の粒径については特に限定されないが、直径50〜200μmのものが生産性良く吸水性物品を作成できることから好ましく用いられる。
高吸水性樹脂からなる保水層の厚さは、一般的な尿の量を吸収できる十分な保水量を有するという点で、0.1〜1.0mmの範囲であることが好ましい。厚さが0.1mmより薄くなると、十分尿を保持することが出来ず、1.0mmより厚くなるとコストパフォーマンスが悪くなる傾向がある。
【0030】
表側第1層である、ナノファイバー集合体と第2層である高吸水性樹脂層の積層方法については、特に限定されず、バインダー樹脂に高吸水性樹脂を分散させ、ナノファイバー集合体にコーティングする方法、熱接着シートを用いて積層後、熱接着させる方法、高吸水性樹脂に接着剤をスプレー噴霧し、ナノファイバー集合体を接着する方法が挙げられる。中でも、生産性が高く、高吸水性樹脂を均一に付着させることができることから、コーティング法が好ましい。
【0031】
本発明で用いられるバインダー樹脂は、分散剤を用いない無溶剤タイプであり、かつ粘度が5〜20Pa・s(5,000〜20,000cP)の範囲内にあるものが好ましく用いられる。樹脂の粘度についてはJIS Z8803に基づきB型粘度系で測定したときの粘度をいう。5Pa・s(5,000cP)未満であると粘度が低すぎてナイフコーティングに適さない。また、逆に20Pa・s(20,000cP)より大きいと、低塗工量のコーティングができにくくなる。
【0032】
コーティング方法としては、樹脂の低塗工化および生産性から、ナイフコーティング法を用いる。ナイフコーティング法には、ナイフオーバーロール法、ナイフオーバーベルト法、フローティングナイフ法があるが樹脂の低塗工化の面からフローティングナイフ法が好ましく用いられる。
【0033】
また、コーティングに用いるコーティングナイフについては、低塗工量かするために鋭角刃のコーティングナイフを用いる。コーティングナイフの形状については、円弧ナイフやせき板ナイフなどが用いられるが、樹脂の低塗工量化の面から、せき板ナイフが好ましい。
また、第1層と第2層の間に、吸水性を阻害させない程度に消臭性樹脂、消臭剤、芳香剤を封入したカプセル等を積層しても良い。その方法は、前記の積層法を用いることができる。
【0034】
本発明のおける吸収性物品は、薄型で液拡散性に優れ、液の吸収策度も大きく、装着者の使用感が良いため、おむつ、生理用ナプキン、失禁パッドおよびふき取り用ワイピングクロス等の衛生材料用品の用途に好適である。
【実施例】
【0035】
以下、本発明の吸収性物品について実施例を用いて説明する。なお、実施例中の測定方法は、以下の方法を用いた。
【0036】
A.ポリマーの溶融粘度
東洋精機キャピログラフ1Bによりポリマーの溶融粘度を測定した。なお、サンプル投入から測定開始までのポリマーの貯留時間は10分とした。
【0037】
B.融点
Perkin Elmaer DSC−7を用いて2nd runでポリマーの融解を示すピークトップ温度をポリマーの融点とした。このときの昇温速度は16℃/分、サンプル量は10mgとした。
【0038】
C.ナノファイバー繊維のウースター斑(U%)
ツェルベガーウスター株式会社製USTER TESTER 4を用いて給糸速度200m/分でノーマルモードで測定を行った。
【0039】
C.力学特性
室温(25℃)で、初期試料長=200mm、引っ張り速度=200mm/分とし、JIS L1013に示される条件で荷重−伸長曲線を求めた。次に、破断時の荷重値を初期の繊度で割り、それを強度とし、破断時の伸びを初期試料長で割り伸度として強伸度曲線を求めた。
【0040】
D.保水量
繊維布帛を生理食塩水を満たした浴の中に浸し、十分浸漬した後、繊維布帛静かに持上
げ1分間放置した。その後、重量を測定し、浸漬前の重量と比較した倍率を保水量とした。
【0041】
E.液拡散性
吸収性物品の上から生理食塩水を0.1mlを静置し、一分後の拡散面積を測定し元の液滴との倍率で測定し、液拡散性とした。
【0042】
F.吸水速度
生理食塩水5mlを吸収性物品に滴下して表面から全て吸収されるまでの時間を測定した。
【0043】
G.厚さ
JIS L1913−1998年度に準拠して測定した。
【0044】
H.消臭性
サンプル1.0gを入れた500mlの容器に初期濃度が200ppmとなるようにアンモニアガスを入れて密閉し、30分放置後、ガス検知管で残留アンモニア濃度を測定した。
【0045】
実施例で用いたナノファイバーの原糸であるナノファイバー繊維の製造方法を、以下の参考例に示す。
【0046】
(参考例)
溶融粘度53Pa・s(262℃、剪断速度121.6sec−1)、融点220℃のN6(20重量%)と溶融粘度310Pa・s(262℃、剪断速度121.6sec−1)、融点225℃のイソフタル酸を8mol%、ビスフェノールAを4mol%共重合した融点225℃の共重合PET(80重量%)を、2軸押し出し混練機で260℃の温度で混練してポリマーアロイチップを得た。なお、この共重合PETの262℃、1216sec−1での溶融粘度は、180Pa・sであった。このときの混練条件は、以下のとおりであった。
【0047】
スクリュー型式 同方向完全噛合型 2条ネジ
スクリュー 直径37mm、有効長さ1670mm、L/D=45.1
混練部長さはスクリュー有効長さの28%
混練部はスクリュー有効長さの1/3より吐出側に位置させた。
【0048】
途中3個所のバックフロー部有り
ポリマー供給 N6と共重合PETを別々に計量し、別々に混練機に供給した。
【0049】
温度 260℃
ベント 2個所
このようにして得られたポリマーアロイを275℃の温度で溶融し、紡糸温度280℃のスピンブロックに導いた。そして、限界濾過径15μmの金属不織布でポリマーアロイ溶融体を濾過した後、口金面温度262℃とした口金から溶融紡糸した。このとき、口金としては、吐出孔上部に直径0.3mmの計量部を備えた、吐出孔径が0.7mm、吐出孔長が1.85mmのものを用いた。そして、このときの単孔あたりの吐出量を2.9g/分とした。さらに、口金下面から冷却開始点までの距離は9cmであった。吐出された糸条は20℃の温度の冷却風で1mにわたって冷却固化され、口金から1.8m下方に設置した給油ガイドで給油された後、非加熱の第1引き取りローラーおよび第2引き取りローラーを介して900m/分で巻き取られた。このときの紡糸性は良好であり、24時間の連続紡糸の間の糸切れはゼロであった。そして、これを第1ホットローラーの温度を90℃とし、第2ホットローラーの温度を130℃として延伸熱処理した。このとき、第1ホットローラーと第2ホットローラー間の延伸倍率を3.2倍とした。得られたポリマーアロイ繊維は、120dtex、12フィラメント、強度4.0cN/dtex、伸度35%、U%=1.7%の優れた特性を示した。また、得られたポリマーアロイ繊維の横断面をTEMで観察したところ、共重合PETが海(薄い部分)、N6(濃い部分)が島の海島構造を示し、島N6の数平均による直径は55nmであり、N6が超微分散化したポリマーアロイ繊維が得られた。
【0050】
続いて得られたポリマーアロイ繊維を丸編みし編物とした。そして、参考例1の繊維を用いた編物を10%の水酸化ナトリウム水溶液(98℃、浴比1:40)で2時間浸漬することでポリマーアロイ繊維中の海ポリマーの99%以上を加水分解除去した。また、参考例3、4の繊維を用いた丸編みをトリクロロエチレンで処理することで海ポリマーの99%以上を溶出し、ナノファイバー編物を得た。
【0051】
(実施例1)
参考例で得られたナノファイバー編物(単繊維繊度1×10−7〜2×10−4dtex、保水量5.5倍)に、高吸水性樹脂粉末(三洋化成製 “サンフレッシュ”(登録商標)ST−250)40重量部、バインダー樹脂40重量部およびトルエン20重量部を混合したスラリーを、コーティングナイフを用いて10g/mの塗布量でコーティングし、150℃、1分間熱風乾燥機にて乾燥させた。得られた吸収性物品は、液拡散性が8倍以上であり、吸水速度が2秒以下と良好な吸水性を示した。また、吸収体の厚みが5.2mmとごわつき感の少ない吸収体を得ることができた。
【0052】
(実施例2)
本実施例では、バインダー樹脂の有無での吸水性変化を確認するために行った。高吸水性樹脂をバインダー樹脂を用いずに使用したこと以外は、実施例1と同様に実施した。参考例で得られたナノファイバー編物(保水量5.5倍)の4辺をヒートシールにて融着させ、高吸水性樹脂粉末(三洋化成製 ST−250)2gをこぼれない用に入れ、偏りのないように十分分散させた。得られた、吸収性物品は、液拡散性が12倍以上であり、吸水速度が1.5秒以下と良好な吸水性を示した。
【0053】
(実施例3)
本実施例では、ナノファイバー(単繊維繊度1×10−7〜2×10−4dtex、保水量5.5倍)に消臭剤(明成化学工業株式会社製“メイカフレッシュ”(登録商標)BS(R))を1重量%、水99重量%からなる加工液に浸した後マングルで絞り、150℃以下の温度で乾燥させ、吸収性物品に消臭機能を付与させた。それ以外は実施例1と同様に実施した。得られた、吸収性物品は、液拡散性が8倍以上であり、吸水速度が2秒以下であり、アンモニア消臭性が10ppmと吸水性能だけでなく優れた消臭性も示した。
【0054】
(実施例4)
本実施例では、ナノファイバー(単繊維繊度1×10−7〜2×10−4dtex、保水量5.5倍)に保湿剤(高松油脂株式会社製 “マイルドフィニッシュ”(登録商標)20P−M)を1重量%、水99重量%からなる加工液に浸した後マングルで絞り、150℃以下の温度で乾燥させ吸収性物品にスキンケア機能を付与した。それ以外は、実施例1と同様に実施した。得られた、吸収性物品は、液拡散性が8倍以上であり、吸水速度が2秒以下と優れた吸水性能を示しただけでなく、触ったときの風合いがしっとりとしており、手触りの良いものであった。
【0055】
(比較例)
上記実施例1〜4に対し、吸収性物品を構成する繊維を、ナノファイバーから通常の単繊維繊度の繊維からなる布帛、マイクロファイバーからなる布帛および綿状パルプからなる布帛に変更して実施した。その結果、ナノファイバー集合体を用いた吸収性物品に比べ繊維布帛における保水量が少ないことから、液拡散性および吸水速度ともに劣るものであった。
【0056】
(比較例1)
比較例1は、ナノファイバー集合体の代わりにマイクロファイバー(ポリエステル、0.22dtex、保水量3.5倍)不織布を用いた他は、実施例1と同様にして吸収性物品を得た。得られた吸収性物品は、液拡散性が5.5倍であり、吸水速度が4秒と実施例1比べ劣るものであった。
【0057】
(比較例2)
比較例2は、通常の紙おむつに使用されている綿状パルプ、高吸水性樹脂を用い、その液拡散性、吸水速度を測定した。その結果、液拡散性が6.0倍であり、吸水速度が2秒以下と吸水性は良好な数値を示した。しかしながら、吸収性物品の厚みは、17mmと実施例1とくらべ厚みが大きく、装着時のごわつきや、見栄えの悪さなどが懸念される。
【0058】
実施例1〜4と比較例1、2の結果を表1に示す。表1から明らかなように、本発明の実施例1〜4の吸収性物品は、従来の綿状パルプ使用品より薄く、保水性および液拡散性に優れていることがわかる。それに対し、比較例1と2の吸収性物品は、液拡散性および吸水速度ともに劣り、吸収性物品として不向きであるといえる。
【0059】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明のおける吸収性物品は、薄型で保水性と液拡散性に優れ、液の吸収策度も大きく、装着者の使用感が良いため、おむつ、生理用ナプキン、失禁パッドおよびふき取り用ワイピングクロス等の衛生材料用途に好適であり、産業上有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
数平均による単繊維繊度が1×10−7〜2×10−4dtexである熱可塑性ポリマーからなるナノファイバー集合体と、吸水量が該ナノファイバー集合体の質量の50〜80倍の高吸水性樹脂からなることを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
第1層にナノファイバー集合体の層があり、第2層に高吸水性樹脂の層がある積層構造を有している請求項1記載の吸収性物品。
【請求項3】
ナノファイバー集合体の吸水量が、その質量の2〜7倍である請求項1または2記載の吸収性物品。
【請求項4】
ナノファイバー集合体の単繊維間の空隙に機能性薬剤を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の吸収性物品。
【請求項5】
ナノファイバー集合体が、綿ウェブ、織物、編物、フェルト、抄紙および不織布からなる群から選ばれた形態の繊維構造体である請求項1〜4のいずれかに記載の吸収性物品。
【請求項6】
繊維構造体が、ナノファイバー集合体を含む不織布と他の不織布を積層した複合構造体であることを特徴とする請求項6に記載の吸収性物品。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の吸水性物品が、おむつ、生理用品、失禁パッドまたはふき取り用ワイピングクロスに用いられることを特徴とする衛生材料用品。

【公開番号】特開2006−57200(P2006−57200A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−239278(P2004−239278)
【出願日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】