説明

吸収性物品

【課題】着色が施されているにも拘わらず着用者の肌を汚染することの無い、機能性シートを備える吸収性物品を提供する。
【解決手段】シート部材10、並びにシート部材10より小さい機能性シート51および体液吸収体30を備え、シート部材10に機能性シート51および体液吸収体30が取り付けられた吸収性物品1aにおいて、機能性シート51は、着用者の肌に当接可能にシート部材10に重ね合わせて接合され、機能性シート51とシート部材10との間に、外部から視認可能な着色部4が設けられていることを特徴とする構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は機能性シートを備える吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨ておむつや生理用ナプキン等の吸収性物品に抗菌剤や消臭剤を含有する機能性シートを取り付けて、新たな機能を付加する技術が知られている。この技術では、抗菌剤等の固有の色を隠蔽するため、あるいは機能性シートが無い製品との判別を容易にするために、吸収性物品に印刷等により着色を施すことがある。
【0003】
特許文献1には、吸収性本体の肌当接面側の吸収体よりも外方の領域に、その厚み方向に凹んだ凹部が複数個形成され、凹部の底部にインキが転写された印刷部を設けて、図柄が形成されている吸収性物品が開示されている。
【特許文献1】特開2006−181193号公報(請求項1、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の吸収性物品によれば、図柄を印刷することにより防漏性の向上を図り、更に防漏性の向上を装着者に認識させて安心感を与えることができるという効果が得られる。
しかし、着用者の肌に当接する面に印刷部を設けると、着用者の動きによりインキが剥離して着用者の肌を汚染するという問題があり、さらに改良する必要がある。
【0005】
本発明はこのような従来技術に鑑み、着色が施されているにも拘わらず着用者の肌を汚染することの無い、機能性シートを備える吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述の課題を解決するための本発明は、シート部材、並びにシート部材より小さい機能性シートおよび体液吸収体を備え、シート部材に機能性シートおよび体液吸収体が取り付けられた吸収性物品を前提とする。
【0007】
この前提における本発明の特徴は、機能性シートは、着用者の肌に当接可能にシート部材に重ね合わせて接合され、機能性シートとシート部材との間に、外部から視認可能な着色部が設けられていることにある。
【0008】
本発明の1つの実施態様では、機能性シートはシート部材に接合領域を介して接合され、接合領域は機能性シートの外周縁から内側に離間して配設され、着色部は、接合領域と同じ領域ないし接合領域の内側に設けられる。
【0009】
さらに別の実施態様では、着色部は、機能性シートに印刷されたインキと、シート部材に印刷されたインキと、シート部材に機能性シートを接合するとともに顔料を含有するホットメルト接着剤との、少なくともいずれか1つで構成されている。
【0010】
また別の実施態様では、体液吸収体は、少なくとも粉砕パルプを含む吸液性材料を備え、着色部は、シート部材の吸液性材料が存在しない部分に設けられている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の吸収性物品では、シート部材と機能性シートとの間に外部から視認可能な着色部が設けられているので、着色部は機能性シートに覆われて着用者の肌に直接触れないため、着用者の肌を汚染することが無い。
【0012】
着色部を接合領域と同じ領域ないし接合領域の内側に設ければ、着色部が着用者の肌に触れることをさらに有効に防止することができる。
【0013】
また、着色部を、シート部材の粉砕パルプを含む体液吸収材料が存在しない部分に設ければ、着色部が粉砕パルプを含む体液吸収材料で遮蔽されないため、着色部の視認性が高まる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明について、吸収性物品がおむつ1で、機能性シートが抗菌性の吸汗性シート51である場合を例に、添付の図面を適宜参照して説明する。
図1は、この発明に係る使い捨ておむつ1の部分破断斜視図である。おむつ1は、内面シート2、外面シート3と防漏シート17を主な構成要素とするシート部材10と、シート部材10より小さい吸汗性シート51と、体液吸収体30とを備える。
【0015】
おむつ1は、透液性と通気性を有し着用者の肌に接触可能な内面シート2と、不透液性で通気性を有し外装材となる外面シート3とが、ホットメルト接着剤(図示せず)を介して互いに重なり合って接合してパンツ型を形成しているものであって、着用者の股下に位置する股下域6と、股下域6の前方につながる前胴周り域7と、股下域6の後方につながる後胴周り域8とを有し、前後胴周り域7,8の側縁部分7a,8aどうしが合掌状に重なり合い、図の上下方向へ間欠的に並ぶ接合部9において互いに溶着していて、胴周り開口11と一対の脚周り開口12とが形成されている。
【0016】
さらに、内面シート2と外面シート3の間には、股下域6から前胴周り域7と後胴周り域8とに向かって延びる不透液性の防漏シート17が介在する。また、内面シート2の内面側(着用者の肌に向き合う側)には点線で示す体液吸収体30が取り付けられている。また、後胴周り域8の胴周り開口11近傍には、外部から視認可能な着色部4を有する吸汗性シート51が、着用者の肌に当接可能におむつ1を構成するシート部材10に接合されている。なお、図1では着色部4は吸汗性シート51の裏面に位置しており、着色部4が視認される部分を斜線で表わしている。
【0017】
胴周り開口11の開口縁の近傍には、胴周り開口11の開口縁と並行に延びる複数条の胴周り弾性部材13が、内面シート2と外面シート3の間にあって少なくとも一方に伸長状態で接合している。脚周り開口12の開口縁近傍では、脚周り開口12の開口縁に並行して延びる複数条の脚周り弾性部材14が、内面シート2と外面シート3の間にあって少なくとも一方に伸長状態で接合している。さらに、胴周り開口11の開口縁のうちの前縁部7bおよび後縁部8bと脚周り開口12の開口縁との間には、胴周り弾性部材13に並行して胴周り方向へ延びる複数条の補助胴周り弾性部材16が、内面シート2と外面シート3の間にあって少なくとも一方に伸長状態で接合している。
【0018】
図2は、図1のおむつ1の前後胴周り域7,8を接合部9において剥離し、おむつ1の全体を双頭矢印Xで示す幅方向と、双頭矢印Xに直交する双頭矢印Yで示す前後方向とに伸展したときのおむつ1aの部分破断平面図であって、図にはおむつ1aの着用者の肌に対向する面である内面シート2側が示されている。
【0019】
内面シート2、外面シート3と防漏シート17を主な構成要素とするシート部材10は、股下域6付近がおむつ1aの内方に向け湾曲した砂時計型を呈している。また、おむつ1aのシート部材10を構成する内面シート2の中央部分には、体液吸収体30が、透液性のトップシート36で覆われて取り付けられている。体液吸収体30は股下域6から前胴周り域7と後胴周り域8とに向かって延び、幅方向寸法をほぼ2等分する縦中心線Cに関し対称な形状である。
【0020】
体液吸収体30は、粉砕パルプや粉砕パルプと高吸水性ポリマー粒子との混合物等の吸液性材料31を、ティッシュペーパ32とティッシュペーパ33との間に挟持して形成され、さらに透液性を有し着用者の肌側に位置するトップシート36で被覆されている。ティッシュペーパ32,33とトップシート36はほぼ同形同大であり、体液吸収体30の前後方向に延びる両側縁43と、幅方向へ延びる前端縁41および後端縁42において、これら3枚のシートが重なり合っている。なお、図示例では、体液吸収体30と防漏シート17との間に内面シート2が介在している。
【0021】
おむつ1aの前後胴周り域7,8では、図1において胴周り開口11の周縁部を形成している前縁部7bと後縁部8bとが図2では幅方向へ延びている。
外面シート3は、前縁部7bと後縁部8bにおいておむつ1aの、体液吸収体30が取り付けられている側へ折り返されている。以下の説明では、外面シート3の前縁部7b側で折り返されている部分を前方折り返し部46と呼び、後縁部8b側で折り返されている部分を後方折り返し部47と呼ぶ。
【0022】
前方折り返し部46の先端である前方下縁46aは、体液吸収体30の前端縁41と重なり合う位置にある。また、後方折り返し部47の先端である後方下縁47aは体液吸収体30の後端縁42と重なり合うが、吸液性材料31には重ならない位置にある。
【0023】
図2において、前方折り返し部46と後方折り返し部47は、ホットメルト接着剤等の接着剤52を介して内面シート2に接合している。前方折り返し部46と後方折り返し部47は不透液性の外面シート3によって形成されているので、体液吸収体30に吸収された体液が前後胴周り域7,8において体液吸収体30から滲み出て肌に触れることが防止される。
【0024】
吸汗性シート51はほぼ長方形であり、後方折り返し部47の着用者の肌に対向する面に、ホットメルト接着剤57が塗布された領域である接合領域61を介して、着用者の肌に当接可能に接合されている。ホットメルト接着剤57は、ドット状、ストライプ状またはスパイラル状に塗布される。さらに、吸汗性シート51と後方折り返し部47の間には外部から視認可能な着色部4が設けられている。なお、図2では着色部4は吸汗性シート51の裏面に位置するが、図示は省略している。
【0025】
長方形の吸汗性シート51の長手方向に延びる下端50aと上端50bは、おむつ1aの幅方向に延在し、後方折り返し部47の後方下縁47aにほぼ並行している。おむつ1aの幅方向における吸汗性シート51の寸法は、体液吸収体30より大きく、後方折り返し部47と同じか小さい。図2では、おむつ1aの側縁部分8aまで延在する例を示している。また、吸汗性シート51の下端50aと上端50bとの間の寸法は、後方折り返し部47の後方下縁47aと後方上縁47bとの間の寸法よりも小さい。
【0026】
ここで、吸汗性シート51は、上層と下層に通気性と透液性を有する目付25g/cmのポリエステル繊維の不織布を用い、中間層には、抗菌剤を付着させた目付20g/cmの吸水性を有するティッシュペーパを用いて順次積層した後、高圧水流で交絡させて形成したものである。このような構成の吸汗性シート51が肌に当接したとき、汗が上層から中間層に向かって浸透、拡散し、吸水性の中間層に保持されることにより、汗による湿潤感が解消され、清涼感がもたらされる。
【0027】
さらに、吸汗性シート51の中間層に付着させた抗菌剤によって、汗により増殖し易い菌、例えば表皮ブドウ状球菌等の増殖が抑えられ、この菌が原因となり得るあせもの発生も抑えられる。このような抗菌剤には、例えばアルキルピリジニウム塩、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩(塩化ベンザルコニウム)、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、塩化ベンゼトニウムの群からなる第4級アンモニウム塩から選ぶことができる。また、このような抗菌剤にカテキン等を添加することもできる。
【0028】
吸汗性シート51を後方折り返し部47に接合する接合領域61は、吸汗性シート51の外周縁58の内側に離間して配設され、ホットメルト接着剤57が、例えば1〜20個/cmの割合の小さなドットとして塗布されている。吸汗性シート51の、外周縁58と接合領域61の間の領域は、後方折り返し部47に接合されない非接合領域62となっている。なお、吸汗性シート51の外周縁58には、下端50aと上端50bが含まれている。
【0029】
着色部4は、接合領域61と同じ領域内にあり、かつ体液吸収体30の後端縁42と重ならない位置に設けられている。換言すると、着色部4は、吸汗性シート51の外周縁58から離間して、おむつ1aを構成するシート部材10の、粉砕パルプを含む吸液性材料31が存在しない部分に設けられている。
【0030】
図3は、図2のIII−III線切断面を示す図である。
吸汗性シート51は、外面シート3の折返し部47に接合領域61を介して着用者の肌に当接可能に接合されるとともに、接合領域61と吸汗性シート51の外周縁58の間に位置する非接合領域62を有する。着色部4は吸汗性シート51に印刷されたインキ59で構成されており、吸汗性シート51と折返し部47の間に位置し、接合領域61と同じ領域内にある。また、着色部4は、体液吸収体30の後端縁42と重ならない位置に設けられている。
【0031】
図3から分かるように、おむつ1aの着用者の肌に当接する側から着色部4を見たとき、不織布で形成された吸汗性シート51を通して着色部4を視認可能である。これにより、おむつ1aを着用するためパンツ形状にしたとき、吸汗性シート51を備えるおむつ1aであることと、吸汗性シート51の位置を確認することができ、吸汗性シート51を着用者の背側に正しく位置させることができる。
【0032】
また、吸汗性シート51は粉砕パルプを含む吸液性材料31が存在しない部分に設けられている。このような構成にすれば、おむつ1aを外装側から見たとき、着色部4が光を透過しない吸液性材料31で遮蔽されることはなく、内面シート2と外面シート3の折り返し部47を通して着色部4を視認し易くなるので好ましい。これにより、おむつ1aをパンツ型に拡げてみるまでもなく、吸汗性シート51を備えるおむつ1aであることを確認することができる。
【0033】
さらに、着色部4は、吸汗性シート51と、外面シート3の折返し部47との間に設けられ、吸汗性シート51で覆われているので着用者の肌に直接触れないため、剥離したインキ59により着用者の肌が汚染されることが防止される。
また、着色部4は接合領域61と同じ領域に設けられているので、おむつ1を着用するとき、あるいは着用者の動きによって吸汗性シート51をめくる方向に力が加わったときでも、図3に矢印Zで示すように、非接合領域62が先に変形してめくれるので、吸汗性シート51のめくれ発生が抑制される。この結果、吸汗性シート51がめくれて着色部4が露出することによる着用者の肌の汚染を防止することができる。このような非接合領域62の幅、すなわち吸汗性シート51の外周縁58と接合領域61との距離は、少なくとも1mm以上、好ましくは3mm以上である。
【0034】
着色部4の形成に用いるインキ59に特に制限はなく、吸汗性シート51やシート部材10の材質に応じて、吸収性物品の分野で公知のものを適宜選択して用いることができる。また、着色部4の視認性を高めるには、着色部4を覆う吸汗性シート51や外面シート3の折返し部47との明度差を大きくすることが好ましい。一般に吸収性物品は白色の不織布で製造されることが多い。白色の不織布の透視性が低いとき、例えば明度の低い黒色、青色、緑色等の印刷インキを用いて不織布との明度差を大きくすることにより、着色部4の視認性を高めることができる。
【0035】
着色部4を接合領域61と同じ領域に設ける一例として、図4(a)に摸式的に示すインキ59の印刷パターンのように、ホットメルト接着剤57のドットとインキ59のドットが交互に並ぶ配置とすることができる。このようにインキ59をドットで印刷すれば、連続した線で印刷する場合と比較して吸汗性シート51の剛性の上昇を小さくすることができ、吸汗性シート51を構成する不織布の良好な風合いを維持することができるので好ましい。
【0036】
また、吸汗性シート51の通気性を損なわないよう、接合領域61の面積に対するインキ59の総塗布面積を30%以下にすることが好ましい。インキ59の総塗布面積を小さくするため、図4(a)において接合領域61の中央部にインキ59を印刷しない領域を設けることもできる。あるいは、インキ59をドット形状に印刷するのではなく、例えば外径が1.0mmのドットの内側に、内径が0.6mm以下の印刷されていない部分を有する環状として印刷することもできる。
【0037】
インキ59を、内径が0.6mm以下の印刷されていない部分を有する環状に印刷すると、不織布を通して見たとき輪郭がぼやけ、肉眼では内側のインキ59が印刷されていない部分を認められず、ドット状に印刷されている場合との判別は困難である。従って、インキ59を環状に印刷すれば、ドット状に印刷した場合と同等の視認性を維持しつつ、印刷面積を少なくすることが可能となる結果、優れた通気性を有する吸汗性シート51を得ることができる。
【0038】
あるいは、図4(b)に示すように、インキ59のドットを接合領域61の内側に印刷することにより、着色部4を接合領域61の内側に設ける構成にすることもできる。この構成によれば、着色部4の外側が接合領域61で接合されているので、吸汗性シート51がめくれて着用者の肌を汚染することをより有効に防止できる。なお、インキ59は、予め吸汗性シート51、および/またはシート部材10を構成する外面シート3等の接合領域61に該当する部分に印刷しておく。
【0039】
さらに、顔料を含有するホットメルト接着剤を用いて着色部4を形成する構成にすることができる。この構成によれば、顔料がホットメルト接着剤の中に封じ込められているので、着用者の肌の汚染を有効に防止することができるとともに、インキ59を印刷する工程を省略することができる。
【0040】
また、機能性シートである吸汗性シート51に対するインキ59の印刷パターンを図5(a)〜図5(c)に摸式的に示す。以下の説明では、インキ59を吸汗性シート51に印刷するものとして説明するが、シート部材10に印刷することもできる。図5(a)に示すように、インキ59を、長方形の吸汗性シート51の下端50aと上端50bから離間し、両側縁50c、50dに接するようにドット状に印刷して着色部4を形成してもよいし、図5(b)に示すように、インキ59を長方形の吸汗性シート51の下端50aと上端50bに接し、両側縁50c、50dから離間してドット状に印刷して着色部4を形成してもよい。
【0041】
このとき、図5(a)に示すように、ホットメルト接着剤57をストライプ状に吸汗性シート51の長手方向に塗布して両側縁50c、50dにわたる接合領域61を形成し、非接合領域62を下端50aと上端50bに沿う部分にのみ設けてもよいし、図5(b)に示すように、ホットメルト接着剤57を長手方向に直交する上下方向に塗布し、非接合領域62を、両側縁50c、50dにのみ設けてもよい。このように、非接合領域62を、吸汗性シート51の外周縁58の全周ではなく、一部のみに設ける構成にすることもできる。
【0042】
ここで、吸汗性シート51を、その長手方向がおむつ1aの幅方向に並行するように取り付ける場合、吸汗性シート51は着用者の動きにより上下方向にめくられやすい。ホットメルト接着剤57を図5(b)のように上下方向に塗布し、下端50aから上端50bにわたる接合領域61を形成すれば、着用者が動いたときでも、吸汗性シート51はめくれ難くなる。
【0043】
また、インキ59の別の印刷パターンの例として、図5(c)のように、吸汗性シート51の下端50a、上端50b、両側縁50c、50dから離間してドット状に印刷してもよい。この場合、ホットメルト接着剤57は、図示例のように長手方向にストライプ状に塗布してもよいし、上下方向にストライプ状に塗布してもよい。但しいずれの場合も、インキ59は、ホットメルト接着剤57が塗布される接合領域61と同じ領域か、接合領域61の内側に印刷される。
【0044】
また、前記のように、吸汗性シート51は上層と下層がポリエステル繊維の不織布で、中間層がティッシュペーパの積層体を、高圧水流で交絡させて形成したものである。
吸汗性シート51の高圧水流を打ち込んだ側の表面(以下、打ち込み面という)と、その反対側の表面(以下、反対面という)とを日本電子株式会社製のJSM−5800型走査型電子顕微鏡(SEM)により比較すると、打ち込み面では一方向に配列した繊維が多く観察され、繊維どうしが交差する点が少ない(図6)。これに対し、反対面では、高圧水流を打ち込む際に跳ね返った高圧水流の影響を受け、打ち込み面より繊維の配列がランダムになる結果、繊維どうしが交差する点が多くなっている(図7)。
このように、打ち込み面は繊維どうしが交差する点が少ないため、反対面と比較したとき、打ち込み面の方が平滑になる。
【0045】
このため、吸汗性シート51の反対面にインキ59を印刷して着色部4を形成すれば、吸汗性シート51を着用者の肌に当接する側から見たとき、平滑な打ち込み面を通して着色部4を観察することになるので、着色部4を視認しやすくなる。また、平滑な打ち込み面が着用者の肌に当接する側に位置するため、肌への密着性が向上し、吸汗、抗菌機能の肌への効率が向上する。
【0046】
さらに、吸汗性シート51に印刷されたインキ59をSEMで観察すると、繊維どうしが交差する点では、インキ59が繊維間で膜状に広がって付着しており(図8)、1本の繊維の周囲に付着しているインキ59(図9)と較べて、同一量のインキ59でより広い範囲が着色されていることが分かる。従って、繊維どうしが交差する点が多い反対面に印刷すれば、同一量のインキ59を用いてより視認性の高い着色部4を形成することができる。
【0047】
以上の説明から明らかなように、吸汗性シート51を、吸水性を有する中間層と、通気性と透液性を有する合成樹脂製の繊維不織布から成る上層および下層とを含む積層体の上層から下層に向けて高圧水流を打ち込んで繊維を交絡させて形成することが好ましい。このようにして形成した吸汗性シート51の下層側(反対面)に着色部4を設け、上層側(打ち込み面)を着用者の肌に当接可能にシート部材10に接合すれば、着色部4を視認しやすく、吸汗性シート51の肌への密着性が向上し、また、視認性の高い着色部4を形成することができる。
【0048】
以上、実施の形態に基づき説明したが、本発明はこれに限定されず種々変更して実施することができる。
【0049】
例えば、吸汗性シート51として、ティッシュペーパが2枚のポリエステル繊維の不織布の間に挟持されている例を示したが、吸汗性シート51は、中間層が吸水性を有し、上層と下層が通気性と透液性を有する合成樹脂製の繊維不織布やフィルムで補強された3層構造であればよい。従って、中間層には、レーヨン、コットン、パルプ等のセルロースを含有する親水性繊維を使用することもできる。また、吸汗性シート51の上層と下層には、通気性と透液性を有するポリエチレン、ポリプロピレン等の繊維不織布やフィルムを使用することもできる。
【0050】
上層と下層に不織布を用いる場合、複数の種類の繊維の混繊としてもよく、例えば親水化処理されたポリエステル繊維を混合すれば、吸汗性シート51の透液性を高めることができる。ポリエステル繊維の親水化処理としては、例えば、ポリエチレングリコールをポリエステルにブレンド、あるいはグラフト重合して改質する方法が挙げられる。
【0051】
また、シート部材10を主として内面シート2、外面シート3と防漏シート17で構成した場合に基づき説明したが、例えば内面シート2を分割する等により、さらに多数のシートでシート部材10を構成してもよい。あるいは、外面シート3を折り返さずに、前縁部7bと後縁部8bで内面シート2と外面シート3を重ね合わせて接合する構成にしてもよい。さらに、着色部4を形成するインキ59は、塩化コバルト(II)等の水に対するソルバトクロミズムを有する薬剤等の、顔料以外の成分を含んでいてもよい。
【0052】
また、着色部4を体液吸収体30の後端縁42と重ならない位置に設ける場合を例に説明したが、着色部4と体液吸収体30との位置関係はこれに限定されず、着色部4を、体液吸収体30を構成するティッシュペーパ32,33と一部重なる位置に設けることもできるし、吸液性材料31と一部重なる位置に設けることもできる。
別言すれば、着色部4は機能性シート(吸汗性シート51)に対応した位置で機能性シートとシート部材10との間に外部から視認可能に設ければよく、機能性シートの体液吸収体30や吸液性材料31に対する取り付け位置、大きさは、必要に応じて適宜変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】おむつの部分破断斜視図。
【図2】図1のおむつを分解し、伸展した状態で示す図。
【図3】図2のIII−III線切断面を示す図。
【図4】接合領域に対するインキの印刷パターンを示す模式図。
【図5】機能性シートに対するインキの印刷パターンを示す模式図。
【図6】打ち込み面のSEM写真。
【図7】反対面のSEM写真。
【図8】繊維どうしが交差する点に印刷されたインキのSEM写真。
【図9】1本の繊維に付着しているインキのSEM写真。
【符号の説明】
【0054】
1 おむつ(吸収性物品)
4 着色部
10 シート部材
30 体液吸収体
31 吸液性材料
51 吸汗性シート(機能性シート)
57 ホットメルト接着剤
58 外周縁
59 インキ
61 接合領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート部材、並びに前記シート部材より小さい機能性シートおよび体液吸収体を備え、前記シート部材に前記機能性シートおよび前記体液吸収体が取り付けられた吸収性物品において、
前記機能性シートは、着用者の肌に当接可能に前記シート部材に重ね合わせて接合され、
前記機能性シートと前記シート部材との間に、外部から視認可能な着色部が設けられていることを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
前記機能性シートは前記シート部材に接合領域を介して接合され、
前記接合領域は前記機能性シートの外周縁から内側に離間して配設され、
前記着色部は、前記接合領域と同じ領域ないし前記接合領域の内側に設けられる請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記着色部は、
前記機能性シートに印刷されたインキと、
前記シート部材に印刷されたインキと、
前記シート部材に前記機能性シートを接合するとともに顔料を含有するホットメルト接着剤との、
少なくともいずれか1つで構成されている請求項1または請求項2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記体液吸収体は、少なくとも粉砕パルプを含む吸液性材料を備え、
前記着色部は、前記シート部材の前記吸液性材料が存在しない部分に設けられている請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の吸収性物品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2008−188182(P2008−188182A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−24791(P2007−24791)
【出願日】平成19年2月2日(2007.2.2)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】