説明

吸収性物品

【課題】着用者の身体と表面シートとの間に隙間が生じることを防止すること。
【解決手段】幅方向にわたって折り曲げられて個包装構造をなしている吸収性物品である。吸収体が下部吸収体と上部吸収体を有している。上部吸収体は前方上部吸収体と後方上部吸収体を有している。前方上部吸収体と後方上部吸収体との間、又は前方上部吸収体の後端部で、表面シートと吸収体とを固定部を有するとともに、固定部と後方上部吸収体の間が、表面シートと吸収体とが非接合状態の離間部となっている。個包装を解き、装着状態において、固定部と後方上部吸収体との間に位置する個包装時の折り曲げ線を頂部として、表面シートが肌に向けて隆起して表面シート離間部が形成される。前方上部吸収体及び後方上部吸収体上の表面シート並びに表面シート離間部が、略面状をなして装着者の肌と当接する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生理用ナプキンや失禁パッド等の吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
生理用ナプキン等の吸収性物品において、身体への密着性や漏れ防止性を向上させるために、吸収体上に中高のクッション層(中高部)を介在させることが知られている。例えば、本出願人は先に、中高部が、吸収性物品の前方部及び後方部に別個に設けられた前方中高部と後方中高部とからなり、前方中高部と後方中高部との間に、前方部又は後方部の変形を、互いに影響させない折り曲げ起点が設けられている吸収性物品を提案した(特許文献1参照)。この折り曲げ起点は、表面シート及び吸収体を圧密化して形成されたいわゆるエンボス溝である。
【0003】
この吸収性物品は、例えば図10(a)に示すように、下部吸収体113aと、その上に配置された前方上部吸収体113b及び後方上部吸収体113cとを有している。前方上部吸収体113bは、上述した前方中高部に対応するものであり、後方上部吸収体113cは後方中高部に対応するものである。前方上部吸収体113bの周縁部においては、表面シート111と下部吸収体113aとがエンボス加工によって一体化されて、実質的に閉じた環状の溝部161が形成されている。このような構造の吸収性物品を、その幅方向にわたって1カ所又は2カ所以上で折り曲げて、その全体を包装フィルム等の包装材で包むことで個包装構造が完成する。上述した溝部161は圧密化によって厚みが減じられていることで、折り曲げ性向を有することから、包装構造を形成するときの折り曲げにおいては、前方上部吸収体113bと後方上部吸収体113cとの間に位置する溝部161において容易に吸収性物品を折り曲げることができる。
【0004】
しかし、上述の折り曲げを行うと、表面シート111のうち、前方上部吸収体113bと後方上部吸収体113cとの間に位置する部位111Aに折りぐせがついたり、小じわが発生したりしてしまう。その結果、折りたたみ状態の包装構造を展開して着用者の身体に装着すると、折りぐせや小じわに起因して、図10(b)に示すように、前方上部吸収体113bと後方上部吸収体113cとの間において、着用者の身体と吸収性物品との間に隙間Sが生じやすい。この隙間Sは、排泄された液の液溜まりとなってしまうことから、そこからの液漏れが起こりやすくなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−239162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、前述した従来技術が有する欠点を解消し得る吸収性物品の包装構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、着用者の肌対向面側に位置する表面シートと、非肌対向面側に位置する裏面シートと、両シート間に介在する吸収体とを備え、実質的に縦長形状であり、幅方向にわたって折り曲げられて個包装構造をなしている吸収性物品であって、
前記吸収体は、下部吸収体と、該下部吸収体の肌当接面側における長手方向の前後に位置する上部吸収体とを有し、
前記上部吸収体は前後に互いに離間しており、排泄部位に位置する前方上部吸収体と、該前方上部吸収体よりも後方に位置する後方上部吸収体とを有し、
前記前方上部吸収体と前記後方上部吸収体との間、又は前記前方上部吸収体の後端部で、前記表面シートと前記吸収体とを固定部を有するとともに、該固定部と該後方上部吸収体の間が、該表面シートと該吸収体とが非接合状態の離間部となっており、
個包装を解き、装着状態において、前記固定部と前記後方上部吸収体との間に位置する個包装時の折り曲げ線を頂部として、表面シートが肌に向けて隆起して表面シート離間部が形成され、前記前方上部吸収体及び前記後方上部吸収体上の表面シート並びに前記表面シート離間部が、略面状をなして装着者の肌と当接する吸収性物品を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、吸収性物品の装着状態において、前後の上部吸収体間の部位に位置する表面シートが、着用者の身体に向けてループ状に突出するので、当該部位において着用者の身体と表面シートとの間に隙間が生じづらくなり、液溜まりの発生やそれに起因する液漏れの発生が効果的に防止される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明の一実施形態の吸収性物品としての生理用ナプキンを示す斜視図である。
【図2】図2は、図1におけるII−II線断面図である。
【図3】図3は、図1に示す生理用ナプキンを折りたたんで個包装構造を形成する状態の途中を示す斜視図である。
【図4】図4は、図1に示す生理用ナプキンを身体に装着した状態を示す模式図である。
【図5】図5(a)及び(b)はそれぞれ、前方エンボス溝部及び後方エンボス溝部の形状を示すナプキンの平面図である。
【図6】図6は、前方エンボス溝部及び後方エンボス溝部の形状を示す別のナプキンの平面図である。
【図7】図7は、前方エンボス溝部及び後方エンボス溝部の形状を示す別のナプキンの平面図である。
【図8】図8は、前方エンボス溝部及び後方エンボス溝部の形状を示す更に別のナプキンの平面図である。
【図9】図9(a)ないし(d)はそれぞれ、本発明に用いられる表面シートに施されるエンボスパターンを示す平面図である。
【図10】図10(a)は、従来の吸収性物品の長手方向に沿う断面図であり、図10(b)は、図10(a)に示す吸収性物品の装着状態での長手方向に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図1には、本発明の吸収性物品の一実施形態としての生理用ナプキンの個包装構造における生理用ナプキンの斜視図が示されている。図2は、図1におけるII-II線断面図である。
【0011】
本実施形態の包装構造における生理用ナプキン10は、着用者のショーツ内面における股下部に装着されて、主として経血や尿の吸収に用いられるものである。ナプキン10は、図1に示すように、長手方向及びそれに直交する幅方向を有する縦長の形状をしている。ナプキン10は、着用者の肌対向面側に位置する表面シート11、非肌対向面側である外方を向く(ショーツ内面側を向く)裏面シート12及び両シート11,12間に介在する吸収体13を有している。
【0012】
ナプキン10は、その裏面シート12の側に配された包装フィルム等からなる包装材(図示せず)とともに、図1に示す一点鎖線A1,A2,A3の3本の仮想線に沿って幅方向に折り曲げられて個包装構造となる。詳細には、図3に示すように、ナプキン10は包装材(図示せず)とともに、その前方寄りの部位及び後方寄りの部位が、一点鎖線A1及びA2に沿って表面シート11の側に折り曲げられる。更にナプキン10は、その長手方向の概ね中央域において、一点鎖線A3に沿って表面シート11の側に二つ折りさられる。このようにナプキン10は、その幅方向にわたって3カ所の位置で折り曲げられ、四つ折りの折りたたみ構造となる。そして、この折りたたみ構造の最外面に位置する包装材(図示せず)によってナプキン10が包まれて、個包装構造(図示せず)が完成する。
【0013】
吸収体13は、上下2段構造になっている。すなわち吸収体13は、下側(すなわち裏面シート側)に位置する下部吸収コア13aと、下部吸収コア13aの肌当接面側である上側(すなわち表面シート側)に位置する2つの上部吸収コア13b,13cとを有している。下部吸収コア13aと、2つの上部吸収コア13b,13cとは、一体でもよく、あるいは別体でもよい。下部吸収コア13aはその平面視において、ナプキン10の平面視での形状よりも一回り程度小さくなっている。2つの上部吸収コア13b,13cはそれらの平面視においていずれも、下部吸収コア13aの平面視での形状よりも寸法が小さくなっている。したがって吸収体13を、上部吸収コア13b,13c側から平面視すると、下部吸収コア13aの上面13a’が一部露出した状態になっている。そして上部吸収コア13b,13cは、下部吸収コア13aの上面13a’から肌対向面側に向けて隆起している。
【0014】
2つの上部吸収コア13b,13cは、ナプキン10の幅方向中央域に、長手方向に沿って直列に、かつ間隔をおいて前後に配置されている。2つの上部吸収コア13b,13cはナプキン10の長手方向に沿って前後に互いに離間している。上部吸収コア13bは、ナプキン10の装着状態において、着用者の排泄部位にほぼ位置している。一方、上部吸収コア13cは、上部吸収コア13bよりも後方に位置している。下部吸収コア13a及び上部吸収コア13b,13cは、これら全体が基台シート(図示せず)に包まれて吸収体5が形成されている。
【0015】
ナプキン10はその幅方向中央域の肌対向面側において隆起する中高部50を有している。中高部50は、別個に設けられる前方中高部51と後方中高部52とからなる。「前方」及び「後方」とは、ナプキン10の装着状態において、着用者の身体の前側及び後側に位置する方向を言う。
【0016】
前方中高部51及び後方中高部52は、ナプキン10の長手方向に沿って直列に配置されている。前方中高部51及び後方中高部52はいずれも、ナプキン10の長手方向に延びている。また、前方中高部51及び後方中高部52はいずれも、ナプキン10の幅よりも狭幅となっている。ナプキン10の平面視において、前方中高部51及び後方中高部52はいずれも略長円形をしている。前方中高部51及び後方中高部52は、上述した上部吸収コア13b,13cからそれぞれ構成されている。したがって、以下の説明では、ナプキン10の前方側に位置する上部吸収コア13bのことを、前方上部吸収コア13bと呼び、後方側に位置する上部吸収コア13cのことを、後方上部吸収コア13cと呼ぶ。
【0017】
ナプキン10は、前方中高部51の周縁の位置に、該前方中高部51の略全域を取り囲むように形成された環状をした凹状の前方エンボス溝部61を有している。前方エンボス溝部61は、前方上部吸収コア13bの周縁の位置において、表面シート11と下部吸収コア13aとを、エンボス加工によって圧密一体化して形成されている。前方エンボス溝部61は、前方中高部51の前方端縁部及び後方端縁部にそれぞれ位置し、かつ略U字状をした前方溝部61a及び後方溝部61b、並びに前方中高部51の左右の側縁部に位置する側方溝部61c,61cとから構成されている。これらの溝部は互いに滑らかに連なり、実質的に閉じた環状の形状を構成している。前方溝部61a及び後方溝部61bは、いずれもナプキン20の概ね幅方向に延びている。側方溝部61cは、ナプキン20の概ね長手方向に延びている。
【0018】
またナプキン10は、後方中高部52の周縁の位置に、該後方中高部52の両側縁部及び後方端縁部を取り囲むように形成された略U字状をした凹状の後方エンボス溝部62を有している。後方エンボス溝部62は、後方上部吸収コア13cの周縁の位置において、表面シート4と下部吸収コア13aとを、エンボス加工によって圧密一体化して形成されている。後方エンボス溝部62は、後方中高部52の後方端縁部に位置し、かつ略U字状の後方溝部62b及び後方中高部52の左右の側縁部に位置する側方溝部62c,62cとから構成されている。これらの溝部は互いに滑らかに連なっている。後方溝部62bは、ナプキン10の概ね幅方向に延びている。側方溝部62cは、ナプキン20の概ね長手方向に延びている。
【0019】
更にナプキン10は、前方エンボス溝部61に連なり、かつナプキンの後方部の周縁に位置する後方最外周エンボス溝部63を有している。エンボス溝部63は後方エンボス溝部62を取り囲むように形成されている。
【0020】
ナプキン10は、その幅方向の両側の位置に、長手方向に延びる一対の防漏カフ70,70を有している。防漏カフ70は、その幅方向の断面形状が略T字形をしている。このような形状の防漏カフ70の詳細は、例えば本出願人の先の出願に係る特開2003−245306号公報に記載されている。
【0021】
更にナプキン10は、その幅方向の左右側縁部から側方に延出した一対のウイング部80,80を有している。ウイング部80は、ナプキン10の長手方向における形成位置が、前方中高部51の形成位置とほぼ一致している。
【0022】
ナプキン10における表面シート11としては、例えば透液性を有するシート材料である不織布や穿孔フィルム等を好適に用いることができる。裏面シート12としては、例えば不透液性のフィルムや、スパンボンド−メルトブローン−スパンボンド不織布等からなる撥水性のシート材料が用いられる。裏面シート12は水蒸気透過性を有していてもよい。基台シートとしては、例えばティッシュペーパーや不織布等の透水性を有する繊維シートを用いることができる。吸収コア13a,13b,13cは、例えば木材パルプ繊維と高吸収性ポリマーの粒子の混合物から構成されている。
【0023】
以上の構成を有するナプキン10においては、図1に示すように、ナプキン10を折りたたんで包装構造にするときに形成される折り曲げ線の位置、すなわち一点鎖線A3で表される位置が、前方エンボス溝部61のうち、前方上部吸収コア13bと後方上部吸収コア13cとの間に位置する部位である後方溝部61b(この部位は、表面シート11と吸収体とをナプキン10の幅方向に固定した部位である)の形成位置と異なっている。詳細には、ナプキン10は、後方溝部61bと後方上部吸収コア13cとの間の位置で、一点鎖線A3に沿って折り曲げられる。つまり、ナプキン10を折り曲げる位置と後方溝部61bの位置とが一致していない。このような折り曲げ関係で個包装構造が形成されていることによって次の有利な効果が奏される。
【0024】
すなわち、ナプキン10が平坦な状態のときは、表面シート11は吸収体の表面の凸凹形状に沿っている。ところで、後方溝部61bと後方中高部52との間の位置において表面シート11は吸収体と非接合状態の離間部になっているので、個包装を解き、ナプキン10が装着状態になっているときは、該離間部における表面シート11には、ナプキン10の折り曲げによって緩みが生じている。その結果、表面シート11は、後方溝部61bによって吸収体に固定されている位置を起点に、その緩みが生じている部分が吸収体から離間し突出する。この突出によって、表面シート11のうち、前後の上部吸収コア13b,13c間の部位に位置する部位11Aが図4に示すように変形し、個包装時の折り曲げ線A3(図3参照)を頂部として、表面シート11が肌に向けて隆起して表面シート離間部11Bが形成され、表面シート11にしわが形成されることを抑制する。すなわち部位11Aが、後方溝部61bと、後方上部吸収コア13cの上面とを変形の支点として、着用者の身体Bに向けて橋架けのループ状に突出して表面シート離間部11Bが形成される。その結果、前方上部吸収コア13b及び後方上部吸収コア13c上の表面シート11並びに表面シート離間部11Bが、略面状をなして装着者の肌と当接するようになる。
【0025】
このようなループ状に突出した表面シート離間部11Bの形成においては、後方中高部52の頂部と表面シート11とが接着剤等で固定されているか、後方中高部52の頂部から表面シート11が浮かないように構成されていれば、表面シート離間部11Bの形状が安定する。本実施形態の生理用ナプキン10では、U字状の後方エンボス溝部62が形成されていることによって、ナプキン10の幅方向中央部における表面シート11の離間・突出が安定化されている。更に、後方エンボス溝部62の側方溝部62cが、後方中高部52の頂部からの表面シート11の浮きを抑えるように、該後方中高部52の側方に位置し、かつ生理用ナプキン10の側方側へ広がる形状を有しているので、このことによっても安定した橋架けのループ形状の表面シート離間部11Bが形成できるようになっている。
【0026】
ループ形状の表面シート離間部11Bは、その突出の程度に応じて、その一部が着用者の身体Bに接触する。その結果、表面シート離間部11Bにおいては、着用者の身体Bと表面シート11との間に隙間が生じづらくなる。したがって、排泄された液が、前方中高部51と後方中高部52との間に溜まることや、それに起因してナプキン10から液漏れが起こることが効果的に防止される。
【0027】
橋架けのループ状の表面シート離間部11Bを効果的に形成するために、ループの一方の起点となる後方溝部61bは、後方上部吸収コア13cの前端縁13c’(図4参照)から前方上部吸収コア13bとの間で可能な限り離間していることが好ましい。前方上部吸収コア13bと後方上部吸収コア13cとの離間距離は、好ましくは15〜40mm、更に好ましくは15〜25mmである。表面シート11には肌と接触する点を考慮して柔軟性が求められるところ、この離間距離が大きすぎると表面シート11の剛性不足に起因して、ナプキン10の装着時に表面シート離間部11Bがつぶれ、また湾曲可能な表面シート11が多く存在し過ぎることに起因する小じわが発生し、液の吸収時に液溜まりが起きて漏れを生じることがある。一方、離間距離が小さすぎると、前方中高部51及び後方中高部52が接触してナプキンが着用者の身体形状にフィットしにくくなることがあり、また表面シート11の隆起が起こらないこともある。
【0028】
本発明者らの検討の結果、橋架けのループ状の表面シート離間部11Bの突出の程度は、前方エンボス溝部61の後方溝部61bの平面視での形状で変化することが判明した。例えば図5(a)に示すように、平面視において後方溝部61bが、後方中高部52の側に向けて凸をなす略U字状の場合と、図5(b)に示すように、後方溝部61bが、後方中高部52の側に向けて凸をなす略V字状の場合とを比較すると、図5(b)に示す略V字状の方が、前方エンボス溝部61の後端部と後方エンボス溝部62の前端部との間で、表面シート11が突出する領域を広くすることができるので、表面シート離間部11Bの突出の程度が大きい。図5(a)及び(b)に示す後方溝部61bを、前方中高部51側に向けて凸をなす略U字状や略V字状に形成し、かつ後方エンボス溝部62に隣接するように配置しても同様の効果が得られる。
【0029】
前記の実施形態においては、前方エンボス溝部61が略環状であり、後方エンボス溝部62が略U字状の開いた(非環状の)形状をしていたが、これに代えて、ナプキン10の折り曲げ線が、前方上部吸収コア13bと後方上部吸収コア13cとの間であって、かつその間に形成される前方エンボス溝部61と異なる位置に位置する場合には、図6に示すように、前方エンボス溝部61が略U字状に開いた非環状の形状でもよい。また後方エンボス溝部62も、略U字状に開いた非環状の形状でもよい。同図に示す前方エンボス溝部61及び後方エンボス溝部62は、いずれもナプキン10の長手方向中央部に向けて開いた略U字状になっている。そして、ナプキン10の折り曲げ線は、略U字状の前方エンボス溝部61における2つの端部よりも後方エンボス溝部62側に位置している。ナプキン10は、この折り曲げ線の位置で幅方向に沿って折り曲げられて、個包装構造となされる。
【0030】
図6に示す実施形態においては、非環状の前方エンボス溝部61における前方溝部61aが、前方中高部51の前方側の端部に位置することで、前方上部吸収コア13bの後方側の端部に表面シート11が固定され、橋架けのループ状の表面シート離間部11Bが形成される。この場合、表面シート離間部11Bは、前方上部吸収コア13bの後方側の端部の上面と、後方上部吸収コア13cの上面とを変形の支点として形成される。
【0031】
図7に示す実施形態においては、前方上部吸収コア13bの後方端縁に沿って形成された後方溝部61bと、後方上部吸収コア13cの前方端縁に沿って形成された前方溝部62aとを有し、両溝部61b,62aの間において、ナプキン10が折り曲げられて包装構造をなしている。後方溝部61b及び前方溝部62aの幅は、前方上部吸収コア13bの幅及び後方上部吸収コア13cの幅よりも小さくなっている。同図に示す実施形態においては、後方溝部61b及び前方溝部62aの端部よりも外方の位置に、一対の橋架けのループ状の表面シート離間部11B,11Bが形成される。同図に示す後方溝部61bは略U字状であるが、これに代えて略V字状とすることができる。前方溝部62aについても同様であり、略U字状又は略V字状とすることができる。したがって、後方溝部61b及び前方溝部62aの形状の組み合わせは4通りとなる。そのような組み合わせのうち、同図に示すように、後方溝部61b及び前方溝部62aがいずれも略V字状である場合が、突出部位11Aの突出の程度が最も大きい。
【0032】
図8には、本発明の別の実施形態が示されている。同図に示す実施形態は、図5(a)及び(b)において、ナプキン10の幅方向に延びるエンボス溝部である後方溝部61bに代えて、ドット状のエンボス凹部Eを形成した例である。エンボス凹部Eは、前方上部吸収コア13bの後方端縁において、ナプキン10の幅方向略中央部に形成されている。ナプキン10は、エンボス凹部Eと後方上部吸収コア13cの前方端縁との間の位置で、幅方向に沿って折り曲げられて、包装構造となされる。本実施形態においては、ループ状の表面シート離間部11Bは、エンボス凹部Eと、後方上部吸収コア13cの上面とを変形の支点として、着用者の身体Bに向けて突出する。このドット状のエンボス凹部Eは、前方エンボス溝部61寄りの位置に形成されているが、これに代えて後方エンボス溝部62寄りの位置に形成してもよい。また、前方エンボス溝部61寄りの位置に第1のドット状エンボス溝部を形成し、かつ後方エンボス溝部62寄りの位置に第2のドット状エンボス溝部を形成してもよい。
【0033】
以上の各実施形態において、ループ状の表面シート離間部11Bの突出の程度は、表面シート11の材質を適切に選択することによっても達成される。一般的な観点からは、柔軟で、嵩高であり、かつしわになりにくい性質の不織布を用いることが、ナプキン10が個包装構造となって折りたたまれたときに、表面シート11に折り目がつきにくい点で好ましい。例えば、構成する繊維が長手方向配向性を有している不織布からなる表面シート11を用いると、該不織布はナプキン10の幅方向に折れ曲がりにくくなるので、表面シート離間部11Bを形成しやすくなる。
【0034】
また、不織布に特定のパターンのエンボス加工又は凹凸構造を施すことでもループ状の表面シート離間部11Bを形成させやすくなる。例えば、図9(a)及び(b)に示すように、連続線からなり、かつナプキン10の長手方向に延びる複数条のエンボス部40を有する不織布を表面シート11として用いると、隣り合うエンボス部40の間の部位41の剛性が相対的に低くなることから、該部位41が長手方向に沿って折曲しやすくなる。つまり該部位41に、長手方向に沿う折曲性向が発現する。その結果、不織布は幅方向に折れ曲がりにくくなるので、ループ状の表面シート離間部11Bを形成しやすくなる。また、ナプキン10を個包装構造としたときに、表面シート11に折り目がつきにくくなる。なお、図9(a)に示すエンボス部40は直線状のものであり、図9(b)に示すエンボス部40は波形のものである。
【0035】
エンボス部は、図9(c)に示すように、不連続なエンボス点42の点列であってもよい。このエンボス点42の点列がナプキン10の長手方向に延び、その点列が多列に配されることで、点列間の部位41の剛性が相対的に低くなる。その結果、該部位41が長手方向に沿って折曲しやすくなり、該部位41に長手方向に沿う折曲性向が発現する。更に、エンボス点42の連なりを凹部として形成すると、ナプキン10の長手方向に延びる凹凸構造が形成されて、よりループ状の表面シート離間部11Bが形成しやすくなり、またナプキン10を個包装構造としたときに、表面シート11に折り目がつきにくくなる。
【0036】
このように、表面シート11が、その長手方向に沿う折曲性向を有するものであれば、図9(a)ないし(c)に示すエンボスパターン以外のパターンを採用することもできる。例えば、図9(d)に示すように、非エンボス部位43がナプキン10の幅方向に沿って不連続に直線状に連なるようなエンボスパターンを不織布に形成することで、折り曲げ線と略平行な方向に可撓軸が形成されにくくなり、該非エンボス部位43の連なり部位の剛性を相対的に低くすることができる。その結果、該部位が長手方向に沿って折曲しやすくなり、該部位に長手方向に沿う折曲性向が発現する。同様の効果は、ナプキン10の幅方向に沿って不連続な凹凸構造を形成した場合にも得ることができる。
【0037】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。例えば前記実施形態は、本発明を生理用ナプキンに適用した例であるが、本発明は生理用ナプキン以外の吸収性物品である失禁パッド等にも同様に適用できる。
【0038】
また、前記実施形態においては、前方上部吸収コア13bと後方上部吸収コア13cとの間にエンボス凹部を形成して、表面シート11と吸収体とを固定したが、これに代えて、前方上部吸収コア13bの後端部にエンボス凹部を形成し、表面シート11と吸収体とを固定してもよい。
【0039】
また、前記実施形態においては、ナプキン10を複数箇所で折り曲げて包装構造を形成したが、これに代えて、ナプキン10を1カ所で折り曲げて包装構造を形成してもよい。
【0040】
また、前記実施形態においては、防漏性を主目的として、前方エンボス溝部61に連なり、かつナプキンの後方部の周縁に位置する後方最外周エンボス溝部63を形成しているが、前方エンボス溝部61をナプキン全体の周縁部に形成する(全周化する)等の形態にすれば、エンボス溝63を形成しなくてもよい。
【0041】
また、上述した各実施形態を、当業者の技術常識の範囲において適宜組み合わせて更に別の実施形態としてもよく、そのような実施形態は本発明の範囲内である。
【符号の説明】
【0042】
10 生理用ナプキン(吸収性物品)
11 表面シート
12 裏面シート
13 吸収体
13a 下部吸収コア
13b 前方上部吸収コア
13c 後方上部吸収コア
50 中高部
51 前方中高部
52 後方中高部
61 前方エンボス溝部
61a 前方溝部
61b 後方溝部
61c 側方溝部
62 後方エンボス溝部
62b 後方溝部
62c 側方溝部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の肌対向面側に位置する表面シートと、非肌対向面側に位置する裏面シートと、両シート間に介在する吸収体とを備え、実質的に縦長形状であり、幅方向にわたって折り曲げられて個包装構造をなしている吸収性物品であって、
前記吸収体は、下部吸収体と、該下部吸収体の肌当接面側における長手方向の前後に位置する上部吸収体とを有し、
前記上部吸収体は前後に互いに離間しており、排泄部位に位置する前方上部吸収体と、該前方上部吸収体よりも後方に位置する後方上部吸収体とを有し、
前記前方上部吸収体と前記後方上部吸収体との間、又は前記前方上部吸収体の後端部で、前記表面シートと前記吸収体とを固定部を有するとともに、該固定部と該後方上部吸収体の間が、該表面シートと該吸収体とが非接合状態の離間部となっており、
個包装を解き、装着状態において、前記固定部と前記後方上部吸収体との間に位置する個包装時の折り曲げ線を頂部として、表面シートが肌に向けて隆起して表面シート離間部が形成され、前記前方上部吸収体及び前記後方上部吸収体上の表面シート並びに前記表面シート離間部が、略面状をなして装着者の肌と当接する吸収性物品。
【請求項2】
前記前方上部吸収体と前記後方上部吸収体との間に前記固定部が形成され、該固定部は、前記下部吸収体と前記表面シートとが圧密化されて形成されたエンボス凹部からなり、
前記吸収性物品が、前記前方上部吸収体と前記後方上部吸収体との間において、前記エンボス凹部と異なる位置で折り曲げられて前記個包装構造をなしている請求項1記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記表面シートが、連続線又は不連続点の点列からなり、かつ長手方向に延びる複数条のエンボス部を有し、前記吸収性物品が折り曲げられて個包装されたときに、前記表面シートに折り目がつきにくくなっている請求項1又は2記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記表面シートを構成する繊維が長手方向配向性を有し、かつ厚みが0.5mm以上であり、前記吸収性物品が折り曲げられて個包装されたときに、前記表面シートに折り目がつきにくくなっている請求項1又は2記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記固定部が、前記表面シートと前記吸収体とを、吸収性物品の幅方向にわたって固定して形成されている請求項1ないし4のいずれかに記載の吸収性物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−201093(P2010−201093A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−52710(P2009−52710)
【出願日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】