説明

吸収性物品

【課題】標識材の視覚的変化で排尿があったことを時機よく知ることができ、特に一回の排尿の量のばらつきがあっても適切に交換の時機を知り判断することができる吸収性物品を提供する。
【解決手段】表面シートと裏面シートと該両シートに介在された吸収体とを有し、前記表面シートを着用者肌当接面側とし裏面シートを着用者非肌当接面側として装着する吸収性物品であって、前記吸収性物品は縦方向とこれに直交する幅方向を有しており、前記吸収体と前記裏面シートとの間に液との接触により視覚的に変化する標識材を有し、前記吸収体は着用者肌当接面側に位置する肌側吸収体と非肌当接面側に位置する非肌側吸収体とで構成され、前記肌側吸収体と非肌側吸収体との間には面方向に液を拡散させる液拡散機構を備えた吸収性物品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は吸収性物品に関し、特に排尿による変色等で取替え時期を知らせる機能を有する吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨ておむつなどの吸収性物品に尿インジケータを設ける技術が知られている(特許文献1及び2参照)。例えば、裏面シートと吸収体との間に水分と接触すると変色するインジケータを設けて、裏面シート側から透視可能とすることで変色を視認する方法がある。この場合、吸収体の厚み方向に透過した液が吸収体の非肌面側から移行してインジケータを変色させる。
前記インジケータの配置において裏面シート側からの変色の視認性について工夫されたものがある。例えば、薄紙と保形シートとを用いて尿に溶け出す変色剤の拡散を防いで変色の視認性を向上させようとするおむつ(特許文献3参照)や、バックシート内側に水溶性透明樹脂層と該透明樹脂層上の水溶性インク層とを形成し排尿による色のはっきりとした消失で変化の視認性を向上させようとするおむつ(特許文献4参照)が開示されている。さらにpHが4以上で色変化がおきる親水性組成物と該親水性組成物のpHを4以下に保つ酸性化合物とを含有するインジケータを水に溶解するとアルカリ性を呈するバックシートの肌面側に塗布してなる使い捨ておむつが開示されている(特許文献5参照)。これにより、高温・高湿度下での微量の水分など吸収体の液吸収とは関係ない要因による誤った変色を防ぐができるとされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭56−28016号公報
【特許文献2】実開昭58−7809号公報
【特許文献3】特開2004−337386号公報
【特許文献4】特開2004−222808号公報
【特許文献5】特開平11−4852号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで上述したような従来の吸収体の非肌面側にインジケータのあるおむつなどの吸収性物品においては、通常液が吸収体の非肌面側に到達するまでそのインジケータは変色しない。つまり、変色するときには吸収体が既に相当量の液体を吸収しており、場合によっては吸収保持容量の限界に達してしまっていることがある。あるいは、まだ吸収保持容量に余裕があるにもかかわらず変色してしまうことがある。これに対し、使い捨ておむつの吸収保持容量に対し所望の時期にその変色を確認できれば、その利便性は大幅に向上する。排便と異なり排尿は日中頻繁にあることを考慮すると、利用者あるいは保護者等にとっておむつの交換作業の手間を大きく改善するものとなる。特に早すぎたり遅すぎたりせず、丁度よいタイミングで排尿を検知し、尿漏れによる衣類交換などその後始末を回避できるのであれば、利用者や保護者ないし介助者等の負担を軽減できる。
【0005】
そこで本発明は、標識材の視覚的変化で排尿があったことを時機よく知ることができ、特に一回の排尿の量のばらつきがあっても適切に交換の時機を知り判断することができる吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、表面シートと裏面シートと該両シートに介在された吸収体とを有し、前記表面シートを着用者肌当接面側とし裏面シートを着用者非肌当接面側として装着する吸収性物品であって、前記吸収性物品は縦方向とこれに直交する幅方向を有しており、前記吸収体と前記裏面シートとの間に液との接触により視覚的に変化する標識材を有し、前記吸収体は着用者肌当接面側に位置する肌側吸収体と非肌当接面側に位置する非肌側吸収体とで構成され、前記肌側吸収体と非肌側吸収体との間には面方向に液を拡散させる液拡散機構を備えた吸収性物品を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の吸収性物品は、標識材の視覚的変化で排尿があったことを時機よく知ることができ、特に一回の排尿の量のばらつきがあっても適切に交換の時機を知り判断することができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の吸収性物品における一実施形態(実施形態1)としての展開型使い捨ておむつの展開した状態を非肌面側(裏面シート側)から模式的に示す一部切欠展開平面図である。
【図2】図2(a)は図1のII−II線断面の拡大断面図であり、図2(b)はその一部の部材をさらに模式化して示した説明図である。
【図3】実施形態1の展開型使い捨ておむつにおける液拡散機構の変形例1を模式的に示す図2に相当する拡大断面図である。
【図4】図3における液拡散機構の変形例1としての導水溝が非肌側吸収体の肌面側に配設されている様子を肌側吸収体とともに模式的に示す分解斜視図である。
【図5】図3における液拡散機構の変形例2としての導水領域が非肌側吸収体の肌面側に配されている様子を肌側吸収体とともに模式的に示す分解斜視図である。
【図6】図3における液拡散機構の変形例3の一部を担う圧搾放液部が非肌側吸収体の肌面側に配設されている様子を肌側吸収体とともに模式的に示す分解斜視図である。
【図7】図6に示す液拡散機構を用いた展開型使い捨ておむつの装着時において、非肌側吸収体の股下部が縒れて傾斜導水路(液拡散機構の変形例3)が形成された状態を模式的に示す部分拡大斜視図である。
【図8】図3に示す導水溝が液を拡散させる様子を模式的に示す側面図である。
【図9】本発明の吸収性物品における別の実施形態(実施形態2)としての展開型使い捨ておむつの幅方向断面を模式的に示す図2に相当する拡大断面図である。
【図10】実施形態2の展開型使い捨ておむつにおける非肌側吸収体の変形例を模式的に示す図であり、(a)はその平面図であり、(b)はそのX−X断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
[実施形態1]
図1は本発明の吸収性物品における一実施形態(実施形態1)としての展開型使い捨ておむつ10の展開した状態を非肌面側(裏面シート側)から模式的に示す一部切欠展開平面図である。図2(a)は図1のII−II線断面の拡大断面図であり、図2(b)はその一部の部材をさらに模式化して示した説明図である。
本実施形態1の使い捨ておむつ10は、図1に示すとおり、肌当接面側に配置される液透過性の表面シート1、非肌当接面側に配置される防水性の裏面シート2、及び該両シートの間に介在される吸収体3を具備する。さらに一対のサイドシート7,7が表面シート1の肌面側に積層し幅方向外方に延出している。肌面側のサイドシート7及び表面シート1と、非肌面側の裏面シート2とが吸収体3の幅方向外方で接合され、使い捨ておむつ10の外形をなす。該使い捨ておむつ10は、その展開状態の平面視において、着用時に着用者の腹側に配される腹側部F、着用者の股下部分に配される股下部C、着用者の背側に配される背側部Rとからなり、その全体として股下部Cが幅方向内方に括れた砂時計形の形状を有している。
【0010】
本発明においては、特に断らない限り、人体に接触する側の面を肌側面ないし肌当接面あるいは表面といい、これと反対側の面を非肌面ないし非肌当接面あるいは裏面という。また、相対的に肌側面に近い方ないしその延長方向を肌面側、肌当接面側又は表面側といい、相対的に非肌面に近い方ないしその延長方向を非肌面側、非肌当接面側又は裏面側という。装着時に人体の前側に位置する方向を前方といいその端部を前端部とし、後側に位置する方向を後方といいその端部を後端部として説明する。吸収性物品の表面又は裏面の法線方向を厚み方向といいその量を厚さという。さらに、吸収性物品の平面視において相対的に長さのある方向を縦方向といい、この縦方向と直交する方向を幅方向という。なお、前記縦方向は典型的には装着状態において人体の前後方向と一致する。
【0011】
本実施形態1の使い捨ておむつ10において、前記吸収体3は肌面側の肌側吸収体31と非肌面側の非肌側吸収体32とからなり、各吸収体はそれぞれ吸収性コアを被覆シートで被覆してなる(図1では吸収性コアと被覆シートとを図示しておらず、煩雑さを避け吸収体のみを示している。)。肌側吸収体31は非肌側吸収体32よりも肌面側に配され表面シート1からの排泄液を吸収し保持する。一方、非肌側吸収体32は肌側吸収体31が液を吸収保持しきれなくなると、非肌側吸収体32が漏れ出る液を吸収保持できるので横漏れ防御に効果的である。
【0012】
本実施形態1の非肌側吸収体32において、その肌面側から幅方向両側面に回りこんで非肌面側までが1枚の液拡散シート4によって覆われている。該液拡散シート4のうち非肌側吸収体31の肌面側に配される部分は、肌側吸収体31の非肌側面を全面覆うように平面方向に広がる部分であり、肌側吸収体31から漏れ出る液を面方向へと拡散させる液拡散機構41となる(図2(a)参照)。一方、前記液拡散シート4のうち非肌側吸収体32の非肌面側に配される部分は、非肌側吸収体32と裏面シート2との間において平面方向に広がる部分であり、液拡散機構41で拡散された液を幅方向内方へと導く裏面側液拡散機構42となる(図2(a)参照)。なお、本発明において液拡散機構とは、排尿等の体液を積極的に吸収体の側面ないしはその外方へと拡散させる機能を有するものである。本発明において、液拡散機構が肌側吸収体31と非肌側吸収体32の間に配されることで、厚み方向に透過する液が途中で迅速に拡散し迂回して裏面シート2側のインジケータと接触し得る。液拡散機構は、肌側吸収体31と非肌側吸収体32の間に配されるものであれば、独立した部材からなる液拡散シート等のように両吸収体間に介在配置されるものに限らず、前記肌側吸収体31の非肌面側あるいは非肌側吸収体32の肌面側など所定の部材の一部分において液拡散機能をもたせた部分を含むものであってもよい。この液拡散機能は、例えば、部材が繊維からなる場合にその繊維の毛管力を利用する方法(例えば、繊維密度を高める方法)、部材に構造的な流路等を形成する方法等が挙げられる。
【0013】
前記裏面シート2と裏面側液拡散機構42との間には水分との接触によって視覚的に変化する3条の標識材(インジケータ)6a,6b,6cが配設されている。該インジケータ6a,6b,6cは、それぞれ股下部Cを中心に腹側部F及び/または背側部Rに至る縦方向に延在し幅方向に間欠的に配される。この縦方向に長さを持つ3条のインジケータ6a,6b,6cの集合体が面方向とりわけ幅方向に広がりを持つインジケータ領域6となる。該インジケータ領域6には、その幅方向の中央付近にインジケータ6bが配されており、その幅方向左右外方にインジケータ6a及び6cが配されている。インジケータ6bの位置及びその付近を中央領域といい、インジケータ6a及び6cの位置及びその付近を側部領域という。インジケータ6a,6b,6cは、いずれも前記裏面側液拡散機構42に当接している。なお、インジケータの「面方向の広がりを持つ」とは、1つのインジケータの連続的な面積の広がりや複数のインジケータの点在あるいは間欠的な配置による広がりをも含む意味である。換言すれば、前記インジケータ領域6は、本実施形態1の態様に限定されることなく、複数個の標識材の集合体からなる領域であってもよく、1つの標識材が幅方向に幅をもってあるいは縦方向に長さを持って面方向に所定面積を有する領域であってもよい。
【0014】
本実施形態1において、前記液拡散機構41による液の面方向への拡散は、非肌側吸収体32の広い面で液を吸収させるだけでなく、その液の一部を非肌面側に位置するインジケータ領域6へと迅速に導く作用を奏する。詳細は後述するが、本実施形態1においては、排尿等の体液が厚み方向に透過してそのまま裏面シート2側に到達することが抑制されると共に、その透過の途中、つまり肌側吸収体31の非肌面側に到達した段階で体液が液拡散機構41によって非肌側吸収体32の側面へと迂回され、さらに裏面側液拡散機構42に導かれて直接インジケータを変色させる。その変色によって、非肌側吸収体32までが吸収容量の限界になる前に取替え時期を知ることが可能となる。ここでインジケータとは、排尿等の水分に反応するものを意味し、例えばpHの変化によって色が変化する呈色指示薬を含む親水性組成物からなるものである。また「視覚的変化」あるいは「変色」とは、水分との接触で、ある色から他の色への色変化、有色から無色への色消失、無色から有色への色出現を含む意味である。
【0015】
インジケータ6a及び6cとインジケータ6bとでは、液拡散機構による体液との接触タイミングが異なるために、その変色のタイミングも異なる。換言すれば、2段階のインジケータの変色で2段階のおむつの取替え時期を知らせることができる。液漏れがないよう早めにおむつを取替えたい場合にはインジケータ6a及び6cの変色で取替え、吸収体の吸収容量近くまで使い切りたい場合にはインジケータ6bの変色まで待つことができる。インジケータ6a、6cを非肌側吸収体32の幅方向側縁に近付け、インジケータ6bを幅方向中央部付近に配置すると、変色タイミングを大きく異ならせることが可能となるので、液漏れの危険性をより回避しやすくなるので好ましい。特に、大人用おむつでは、被介護者が横向きに寝ることが多くあるので、横漏れの危険性を早期に知らせることが容易となる。
【0016】
本実施形態1において、着用状態で、股下部Cのやや腹側寄りに排尿ポイントpがあたり多くの排尿を受ける。図1に示す排尿ポイントpは男性の場合の位置であり、女性の場合はもう少し縦方向中央に寄った位置である。ここで排泄ポイントpとは、着用者が尿とりパッド10を着用した際に最初に尿を受ける領域及びその周辺を意味する。したがって、上述した液拡散機構41、インジケータ領域6の配置は排尿ポイントpとその周辺にかかるよう配することが好ましい。インジケータの視覚的変化のタイミングをインジケータ領域6の側部領域と中央部領域とで異ならせ易くするために、排尿ポイントpの領域において(中央領域にあたるインジケータ6bの配置領域とその周辺)、インジケータ領域6よりも肌当接面側に通液阻害領域8を設けることが好ましい。たとえば、液拡散シート4と非肌側吸収体32の非肌面側との間に疎水性の材料や撥水性の材料を配する方法が挙げられる。このようにすることによって、1度に大量の排尿があって、その勢いによって尿が非肌側吸収体32の非肌側面まで到達してしまった場合でも、インジケータ6bが直接濡れることは防止でき、液拡散手段41によって尿がインジケータ6bに到達するまで視覚的変化が起きないようにすることが可能となる。この目的においては、通液阻害領域8は、幅方向に関して排尿ポイントの下方とその周辺(中央部領域、インジケータ6bの存在する領域の範囲)のみに設ければよく、側部領域(インジケータ6a及び6cの存在する領域の範囲)には設けないことが好ましい。疎水性材料としては防水フィルムや疎水性のホットメルト等が、撥水性材料としては撥水性の不織布等が挙げられる。
【0017】
ここで図2(b)を参照して、インジケータ領域6におけるインジケータ6a,6b,6cが視覚的変化をおこす過程について、着用者が通常の仰向け状態で寝ている場合を想定して説明する。
本実施形態1の使い捨ておむつ10において、着用者が尿等を排泄すると肌側吸収体31の排泄ポイントp(図1参照)付近を中心に尿の排泄を受け、その排泄尿は最も低い位置にある股下部Cで主に厚み方向へと移行しながら、肌側吸収体31で吸収保持される。液が肌側吸収体31の非肌面側に到達すると、そこに配される液拡散機構41と接触する。該液拡散機構41においては、液が厚み方向に浸透しつつ(矢印a)平面方向に拡散(矢印a)する。厚み方向へ浸透した液は非肌側吸収体32で吸収保持されて尿漏れが効果的に抑えられる。これと同時に平面方向に拡散した液(矢印a)の一部が強く幅方向又は縦方向へと拡散し、該液拡散機構41から非肌側吸収体の側面を覆う液拡散シート4の側面部43,43を通って裏面側液拡散機構42へと導かれる(矢印a)。この液は、前記裏面側液拡散機構42によって幅方向内方へと進み、先ずインジケータ6a,6cを変色させる(矢印a)。肌側吸収体31がその吸収容量限界まで近づくと、より幅方向内側まで液が拡散するので、幅方向内側に配したインジケータ6bが変色しやすくなる。一方、肌側吸収体31が吸収容量限界となって、前述の非肌側吸収体32で吸収された液がさらに非肌面側へと厚み方向に浸透する。その位置には通液阻害領域8があり液の透過を防止するが、一定の液量等の圧力以上で通液阻害領域8を液が透過するようにしてインジケータ6bが変色するようにしてもよい。具体的には、通液阻害領域を撥水性の不織布で構成することが挙げられる。
【0018】
本実施形態1において、インジケータ6a及び/又は6cの変色はインジケータ6bの変色よりも早く生じ得る。本実施形態1において、インジケータ6a及び/又は6cの変色のタイミングが肌側吸収体31の吸収容量の限界の段階に相当するので、使用状況やニーズによってはまだその後も非肌側吸収体32によって十分尿が吸収保持される。つまり尿漏れ寸前ではなくその手前でインジケータ6a及び/又は6cの変色がおきるので、次のインジケータ6bの変色までおむつの交換時期の時間的な余裕ができる。
【0019】
通常、装着者によって排尿量や排尿回数に個人差があるためおむつの取替えのタイミングにも状況の差や個人差がある。例えば1回の排尿量が多い場合、従来の使い捨ておむつではまだ吸収容量に余力があるにも関わらず、吸収体下のインジケータ部分まで尿が到達してしまい、その時点でインジケータの変色が起き、たった1回の排尿でおむつを交換してしまうことがある。これに対し本実施形態1の使い捨ておむつ10においては、肌側吸収体31での液の浸透によってインジケータ6a及び/又は6cが変色しても非肌側吸収体32がしっかりと液を吸収保持してさらにインジケータ6bの変色までおむつの取替えを待つことができる。他の例として、1回の排尿量は少ないが排尿回数の多い人や排尿量がその都度異なる場合は、何度か排尿を繰り返し漸くインジケータが変色する。この場合、長時間の着用でインジケータの確認をつい忘れて取替えのタイミングがずれてしまうことがある。従来の使い捨ておむつでは、インジケータの変色の時点で吸収保持容量の限界となり、取替えのタイミングがずれることで尿漏れとなってしまうことがある。これに対し本実施形態1の使い捨ておむつ10においては、インジケータ6a及び/又は6cの変色の後も非肌側吸収体32が液を吸収保持するので、取替えのタイミングがずれても尿漏れを防ぐことができる。
【0020】
本実施形態1において、使い捨ておむつ10全体のごわつき感を抑えつつ十分な吸収性を持たせる観点から、肌側吸収体31の厚さ31vと非肌側吸収体32の厚さ32vとの比31v/32vは、1/1〜5/1で、31v+32vが10mm以下であることが好ましく、更に31v/32vが1/1〜3/1で、31v+32vが7mm以下であることが好ましい。
【0021】
[液拡散機構の変形例]
本実施形態1の展開型使い捨ておむつ10において、液拡散機構41は前述の液拡散シート4からなるものであるが、これに代えて非肌側吸収体32の肌面側の表面上に配される部分であってもよい。図3は実施形態1の展開型使い捨ておむつにおける液拡散機構の変形例を模式的に示す図2に相当する拡大断面図である。図3においては、後述の図4に示す導水溝fの位置における幅方向の拡大断面図を示しており、一方、裏面側液拡散機構42が非肌側吸収体321の非肌面側から幅方向側面の一部まで覆う液拡散シート4からなることを示す。図4では非肌側吸収体321の肌面側に形成された導水溝f(液拡散機構の変形例1)が示され、図5では非肌側吸収体322の肌面側に配された液拡散領域f(液拡散機構の変形例2)が示されている。図6においては非肌側吸収体323の肌面側に形成された圧搾放液部g,gが示され、図7で前記圧搾放液部gを含む股下部Cが縒れて傾斜導水路f(液拡散機構の変形例3)が形成された状態を示す。なお、図4〜6では、実際には厚み方向に直接積層された肌側吸収体と非肌側吸収体とを分離して示し、その他の部材を省略している。その他の部材は実施形態1における前述の部材を用いることができる。
【0022】
(液拡散機構の変形例1)
図4に示す非肌側吸収体321の肌面側は、肌側吸収体31からの液を吸収保持するべく、液拡散性であり液透過性である。非肌側吸収体321の肌面側の股下部Cには、液拡散路としての導水溝fが1条幅方向に形成されている。該導水溝fは非肌側吸収体321の肌面側から圧着されて形成され(図3及び4参照)、この部分において密度が高められている。該導水溝fを圧着形成する方法は、この種の物品に用いられる方法を適宜用いることができ、例えばエンボスロールにより溝形状に圧縮加工する方法が挙げられる。肌側吸収体31から漏れ出る液は、導水溝fへと導かれ、厚み方向へ透過されると同時に該導水溝fに沿って幅方向へと拡散される。
【0023】
(液拡散機構の変形例2)
図5に示す非肌側吸収体322の肌面側は、肌側吸収体31からの液を吸収保持するべく、液拡散性であり液透過性である。非肌側吸収体322の肌面側の股下部Cには、液を幅方向へ拡散させる液拡散機構としての導水領域fが配されている。該導水領域fは、その縦方向側縁に沿って撥水処理された2条の撥水性領域g,gを配置することで画される領域である。前記導水領域fにおいて、液は前記撥水性領域g、gに阻まれて縦方向へは広がり難く、導水領域fに沿って幅方向へと拡散する。
【0024】
(液拡散機構の変形例3)
図6に示す非肌側吸収体323の肌面側は肌側吸収体31からの液を吸収保持するべく、液拡散性であり液透過性である。非肌側吸収体323の肌面側には、その股下部Cにおいて縦方向に延びる圧搾放液部g,gが配設されている。図7に示すとおり、非肌側吸収体323の股下部Cは、おむつ装着時に着用者の両太腿の付け根内側により左右から幅方向内方への圧縮力wを受ける。その幅方向外方からの力によって前記圧搾放液部g,gが変形する。具体的には、圧搾放液部g,gは、その幅方向外側縁部j,jが内方へ縒れ、圧搾放液部の幅方向内側縁部j,jが非肌側吸収体323の股下部Cの中央領域cとともに肌面側へ隆起する。この状態において、前記中央領域cから圧搾放液部の内側縁部j,j、外側縁部j,jを経て、非肌側吸収体323の股下部幅方向側端部へと向かう下り傾斜を形成し、この一連の形状が液拡散機構としての傾斜導水路fとなる。前記圧搾放液部g,gはその溝に沿って液を縦方向に拡散させて非肌側吸収体323の広い平面で吸収させるとともに、液を幅方向へと拡散させる傾斜導水路fの一部を担う。該圧搾放液部g,gの配置が、肌側吸収体31から漏れ出てくる液を幅方向外方へと導くよう作用する。
【0025】
ここで図8を参照して、図4に示す非肌側吸収体321における液の厚み方向への吸収と導水溝fによる液の幅方向への拡散について説明する。なお、この液の厚み方向への吸収と液の幅方向への拡散は、図5に示す非肌側吸収体322及び図6及び7に示す非肌側吸収体323においても同様に生じるものである。図8は図4に示す導水溝fが液を拡散させる様子を模式的に示す側面図である。具体的には、肌面側の肌側吸収体31と非肌面側の非肌側吸収体321とが厚み方向に積層された状態で縦方向に切断した主に股下部Cを中心とする断面図であり、疎水機構、裏面側液拡散機構及びインジケータとともに模式的に示す拡大断面図である。
図8(a)に示すとおり、肌側吸収体31の股下部C付近で液を受け(矢印b)、この液が前記肌側吸収体31の非肌面側に到達して漏れ出ようとする(矢印b)。液が到達した非肌面側の部分には、図8(b)に示すとおり、非肌側吸収体321の導水溝fが液の受け皿として配されており、液は導水溝fへと導かれる。さらに図8(c)に示すとおり、その液の一部は厚み方向へ透過されて液漏れが生じないよう非肌側吸収体321でしっかりと吸収保持され(矢印b)、同時に液の他の一部は該導水溝fに沿って幅方向へと拡散する(矢印b)。幅方向へ拡散した液は、導水溝fの幅方向端から非肌側吸収体321の幅方向外方へと移行して(図示せず)、非肌側吸収体321の幅方向側面の一部まで覆う裏面側液拡散機構42(図3参照)に引き取られて、幅方向内方のインジケータ6a及び6cと接触し該インジケータ6a及び6cに視覚的変化が生じる。
【0026】
[実施形態2]
図9は、本発明の別の実施形態(実施形態2)としての展開型使い捨ておむつ20の幅方向断面を模式的に示す図2に相当する拡大断面図である。本実施形態2の使い捨ておむつ20において、図2に示す実施形態1の非肌側吸収体32に代えて、パルプと高吸収性ポリマーとからなる極めて薄いシート状の非肌側吸収体324を配置する。
本実施形態2において、前記非肌側吸収体324は肌側吸収体31の補助的な吸収容量を有する。該非肌側吸収体324は、繊維集合体91と繊維ウェブ92とが一体化されたシート状の繊維構造体であって、該繊維構造体中に高吸収性ポリマー93が分散固定されている。前記非肌側吸収体324は、高吸収性ポリマー93がシート内部に確実に固定されているので、高吸収性ポリマーの脱落やゲルブロッキングが生じ難く、吸収速度や液体の固定性に優れる。非肌側吸収体324は、その厚みの薄さに比して比較的高い吸収性を有する。このように非肌側吸収体324が高い吸収性能と厚みの薄さを兼ね備えているので、本実施形態2のおむつ20全体としては装着時のゴワつき感が和らげられ良好な装着感を感じることができるので好ましい。本実施形態2においては、非肌側吸収体324が肌側吸収体31の補助的な吸収容量であり、実質的におむつの取替え時期としてインジケータ6a及び6cが変色するが、その取替えまでの間、非肌側吸収体324が液を吸収して液漏れを防ぐことができる。
【0027】
[非肌側吸収体の変形例]
本実施形態2において、前記非肌側吸収体324に代えて、パルプ繊維等の繊維を含まない、いわゆるパルプレス構造の非肌側吸収体325であってもよい。該非肌側吸収体325も前記非肌側吸収体324と同様に厚みの薄いシート状であり、肌側吸収体31の補助的な吸収容量を有する。図10は、実施形態2の展開型使い捨ておむつにおける非肌側吸収体の変形例(非肌側吸収体325)を模式的に示す図であり、(a)はその平面図であり、(b)はそのX−X断面図である。前記非肌側吸収体325は、多数の吸収性ポリマーを2枚の液透過性のシートの間に挟持してなる(図10(b)参照)。非肌側吸収体325の平面視において、図10(a)が示すとおり、その縦方向に直線状に延在する4条の吸収ポリマー存在領域m〜mと3条の非存在領域n〜nとが幅方向に交互に配され、存在領域m及びmの幅方向外方が非存在領域n及びnで封止されている。さらに非肌側吸収体325の縦方向の中央の股下部Cにあたる位置に非存在領域nが幅方向に延在するように形成されている。
【0028】
本実施形態2において、前記非肌側吸収体325の存在領域m〜mでは、両シートの内側に塗布された接着剤層r,rで吸収ポリマーqが固着されている。非存在領域n〜nでは、2枚の液透過性シートが接着固定されている。接着はこの種の物品に用いられる接着方法を用いることができる。前記非存在領域n〜nは、吸収ポリマーが配されない分だけ存在領域m〜mよりも厚みが薄い。特に非存在領域n〜n及びnは存在領域m〜mの挟間で溝として液を平面方向に拡散させる。特に幅方向に延在する非存在領域nが前記非肌側吸収体321の導水溝fとしても機能する。肌側吸収体31から漏れ出た液は非肌側吸収体325の股下部Cに移行し、液の一部はその付近に位置する非存在領域nで受け取られる。該非存在領域nにおいては、その延在する幅方向へと液を拡散させることができる。他方、肌側吸収体31からの液の一部は、股下部C付近の非存在領域nで縦方向に拡散され周辺の存在領域m,m内部の吸収性ポリマーqで吸収保持される。また前記非存在領域nに沿って幅方向に拡散される液の一部は、これに直交する非存在領域n及びnで縦方向へと拡散され、周辺の存在領域m〜m内部の吸収性ポリマーqで吸収保持される。非肌側吸収体325においては、このようにして液を広い平面で吸収保持液し吸収むらを抑えることができる。非肌側吸収体325は、パルプレスであることで液の逆戻りを抑え、吸収ポリマーで液としっかりと吸収保持することができる。また非肌側吸収体325がパルプレスゆえに嵩高とならず尿とりパッドの厚みが抑えられ、着用者にとって装着時のゴワつき感が和らげられ良好な装着感を感じることができる。なお非肌側吸収体325における非存在領域n〜n及びnの配置を適宜変更することにより他の実施形態に適用可能である。
【0029】
なお、本実施形態2における使い捨ておむつ20は、前記非肌側吸収体324及び325以外の構成を前記実施形態1の使い捨ておむつ10と同一のものを採用でき、また液拡散機構を前述の変形例のいずれかとして任意に組合せることができる。
【0030】
以下本実施形態1及び2の展開型使い捨ておむつを構成する部材の素材について説明する。
[吸収体]
(肌側吸収体)
肌側吸収体31の形成材料としては、通常吸収性物品に用いられるものを用いることができる。具体的には例えば、吸収性コアとしては、繊維集合体又はこれと吸収性ポリマーとを併用させたもの等を用いることができる。繊維集合体を構成する繊維としては、パルプ繊維等の親水性天然繊維や、合成繊維(好ましくは親水化処理を施したもの)等を用いることができる。坪量は特に限定されないが、150g/m〜500g/mが好ましい。吸収性ポリマーとしては、この種の物品に通常使用されている各種のポリマー材料を用いることができ、例えば、ポリアクリル酸ソーダ、(アクリル酸−ビニルアルコール)共重合体、ポリアクリル酸ソーダ架橋体、(デンプン−アクリル酸)グラフト重合体、(イソブチレン−無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物、ポリアクリル酸カリウム、並びにポリアクリル酸セシウム等が挙げられる。吸収性ポリマーは、自重の20倍以上の水又は生理食塩水を吸収し保持し得る性能を有するような超吸収性高分子化合物であることが好ましい。また吸収性コアを被覆する被覆シートとしては、親水性のティッシュペーパー等の薄手の紙(薄葉紙)、コットンやレーヨンなどの親水性繊維からなる不織布、合成樹脂の繊維に親水化処理を施してなる不織布(SMS、SMMS、SSMS等の複合不織布)からなるものを用いることができる。
【0031】
(非肌側吸収体)
非肌側吸収体32,321,322,323としては、肌側吸収体31と同様の材料を用いることができる。また液を幅方向へと効果的に拡散させる観点から、非肌側吸収体321の導水溝f及び非肌側吸収体322の導水領域fの縦方向の幅は10〜50mmが好ましく、前記導水溝f及び非肌側吸収体323の圧搾放液部gの厚み方向の溝の深さは1mm〜3mmが好ましい。非肌側吸収体321及び非肌側吸収体323の厚さは、導水溝f及び圧搾放液部gを形成する観点から、2〜5mmが好ましく、2〜4mmがさらに好ましい。非肌側吸収体324としては、親水性繊維又は熱溶融性接着繊維または紙力補強剤並びに高吸収性ポリマーを含む薄い高吸収性シートであってもよい。この高吸収性シートは、高吸収性ポリマーを繊維ウェブ上に散布しその上に繊維集合体を重ね合わせて乾燥し一体化させたものである。その厚みは0.3〜1.5mmと薄いものであることが好ましい(特開平8−246395号公報参照)。この高吸収性シートは、極めて薄いシート内部の繊維に高吸収性ポリマーを三次元状に分散固定したものである。これにより高吸収性ポリマーの脱落することなく、繰り返し吸収する場合でもゲルブロッキングを生じにくいので液の吸収保持性能に優れている。非肌側吸収体325の形成素材は、特開2004−275225号公報に記載のものを用いることができる。
【0032】
[液拡散シート]
液拡散機構41、裏面側液拡散機構42及び側面部43を構成する液拡散シート4の形成素材として、通常の親水性シート、具体的にはレーヨン、コットン、パルプなどの親水性繊維等を含むものが挙げられる。拡散性を制御する方法としては、シートを構成する親水性繊維に加えて、(1)親水性粒子を含ませること、(2)疎水性繊維を含ませること、が挙げられる。親水性粒子としては、シリカ、酸化チタン、酸化アルミニウム等が挙げられ、特に酸化チタンが好ましい。疎水性繊維を加える場合には、親水性繊維を50質量%以上、特に60質量%以上、疎水性繊維を50質量%未満、特に40質量%未満の量で含むことができる。疎水性繊維としては例えば各種熱可塑性樹脂からなる繊維を用いることができる。本発明で使用される親水性繊維(不織布)の中には、疎水性の熱可塑性樹脂からなる繊維を各種親水処理した繊維や、疎水性繊維からなる不織布を各種親水化処理した不織布も含まれる。これらの繊維を含む繊維シートとしては、例えばスパンレース不織布、エアスルー不織布、紙などが挙げられる。具体的にはレーヨンとポリオレフィン系繊維とからなるスパンレース不織布が挙げられる。これらの繊維シートの坪量は15〜50g/m、特に18〜35g/mであることが、好ましい。
【0033】
液拡散シート4の液拡散性能はクレム吸水高さで示され、各インジケータへと液を的確に導く観点から、幅方向へのクレム吸水高さが25mm以上であることが好ましく、25mm〜100mmであることがより好ましく、35mm〜80mmであることがさらに好ましい。このように液拡散性に優れた液拡散シート4を配設することによって、適量の液が厚み方向へ透過されるよりも平面方向へ的確に導きかれ、しかも肌側吸収体31の吸収容量限界を遅滞なく知らせるようインジケータが変化するので効果的である。該液拡散シート4は、液を幅方向へ効果的に拡散する観点から、矩形の液拡散シートを股下部Cにおいて排泄ポイントp近傍に配置することで、インジケータに確実に液を伝達することができる。
【0034】
(液拡散シートのクレム吸水高さの測定方法)
液拡散シート4の液拡散性を示すクレム吸水高さの測定は、JIS P8141の紙及び板紙−吸水度試験方法−クレム法に順じて行うことができる。即ち、液拡散シートを幅20mm、長さ200mmの短冊状に裁断した後、縦方向を鉛直方向にして下端から15mmの部分までを水に浸し、水に浸してから10分後に水が何mm吸い上げられたかを測定する。この測定値をクレム吸水高さとする。
【0035】
[標識材(インジケータ)]
標識材(インジケータ)としては、塗布に適した剤状のものや、リトマス紙のようなシート状のもの等が挙げられる。インジケータをなす親水性組成物に含有される呈色指示薬としては、pHが3〜7で色が変化するものが好ましく、その例としてはブロモフェノールブルー、メチルオレンジ、アリザリンS、ブロモクレゾールグリーン、メチルレッド、ブロモクレゾールパープル等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの呈色指示薬のうち特に好ましいものとしては、ブロモフェノールブルー、ブロモクレゾールグリーン及びブロモクレゾールパープル等が挙げられる。これらの呈色指示薬は、上記親水性組成物の全量(酸性化合物+呈色指示薬)に対して好ましくは0.01〜50重量%、更に好ましくは0.01〜40重量%、一層好ましくは0.01〜1重量%、最も好ましくは0.01〜0.5重量%含有される。呈色指示薬の量が0.01重量%に満たないと変色しても色が薄く、外部から視認しづらくなることがあり、50重量%を超えると親水性組成物の変色前の色が濃すぎて外観がよくなく、更にコスト高になることがあるので上記範囲内とすることが好ましい。
【0036】
本発明において、少量の水分や高温・多湿下における排泄尿以外での変色を回避する観点から、親水性組成物に、特許第3558828号明細書に記載された、該親水性組成物のpHを保つことが可能で且つ該親水性組成物が水と接触しただけではそのpHが4を超えないように維持することが可能な酸性化合物を含有させ、また裏面シート2に、水分に溶解するとアルカリ性を呈する水溶性化合物を含有させることもできる。またインジケータをなす親水性組成物は、さらに粘着性を有する親水性ポリマーを含有することもできる。親水性組成物にホットメルト接着性が付与されて部材間の接合・固定が一層強固なものになると共に、ホットメルト塗工装置があれば、ライン上で塗工可能であり、加工適性が良くなる。即ち、上記酸性化合物、上記呈色指示薬および上記親水性ポリマーを含有してなる親水性組成物は、ホットメルト接着剤として機能する。上記親水性組成物は、上述した成分に加えて酸化防止剤、紫外線吸収剤等を含有していてもよい。これらの成分は、上記親水性組成物の全量に対して0.5〜5重量%含有されることが好ましく、0.5〜3重量%含有されることが更に好ましい。なお本発明において、インジケータは、裏面シート2に直接塗布する方法以外に、ティッシュペーパーや親水性不織布等の親水性シートに塗布したものを介在させることもできる。
【0037】
[その他の素材]
表面シート1、裏面シート2及びサイドシート7の形成材料としては、通常吸収性物品に使用されているものを用いることができる。
表面シート1としては、例えば、親水性不織布が好ましく、エアスルー不織布、ポイントボンド不織布、スパンボンド不織布、スパンレース不織布、立体賦形不織布と呼ばれている不織布で、その繊維がポリプロピレンの単繊維や、ポリプロピレンとポリエチレンの複合繊維、ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンの複合繊維等で親水化処理が施された繊維が好ましく、その坪量15〜50g/mのものが好適に使用できる。また、表面シート1の股下部分には、表面シート1の非肌面側に親水性穴開きフィルムや親水性不織布が部分的に重ねられていてもよい。
【0038】
裏面シート2の形成材料としては、防水性があり透湿性を有していれば特に限定されないが、例えば疎水性の熱可塑性樹脂と、炭酸カルシウム等からなる微小な無機フィラー又は相溶性のない有機高分子等とを溶融混練してフィルムを形成し、該フィルムを一軸又は二軸延伸して得られる多孔性フィルムが挙げられる。前記熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィンが挙げられる。該ポリオレフィンとしては、高〜低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等が挙げられ、これらを単独で又は混合して用いることができる。
【0039】
(防水性及び透湿性の好ましい数値範囲)
裏面シート2の防水性の程度は、液体の透過を十分に阻止する観点から、耐水圧で100mm以上が好ましく、500mm以上がさらに好ましい。また裏面シート2の透湿性の程度は、防水性を維持しつつ、おむつ内部のムレやそれに伴う着用者の肌のカブレを十分に防止する観点から、0.5〜4.0g/(100cm・h)が好ましく、1.0〜2.5g/(100cm・h)がさらに好ましい。なお、耐水圧はJIS L1092繊維製品の防水性試験方法に準じて行う方法により測定され、透湿性は温度条件を35℃としてJIS Z0208防湿包装材料の透湿試験方法に準じて行う方法により測定される。
【0040】
前記サイドシート7としては、例えば、撥水性不織布が好ましく、具体的には、スパンボンド不織布、スパンボンド−メルトブローン(SM)不織布、スパンボンド−メルトブローン−スパンボンド(SMS)不織布等が用いられる。
【0041】
本発明の吸収性物品において、標識材(インジケータ)領域6の平面視における位置及び範囲は、液との確実な接触と変色の視認性を確保できれば任意に決めることができる。該標識材領域6内において、各標識材の形状、大きさ、個数もまた上記の観点を踏まえ任意に採用することができる。本発明の吸収体物品は、上記実施形態における展開型使い捨ておむつに限らず、パンツ型使い捨ておむつや尿とりパッドであってもよく、また生理用ナプキン、パンティライナーや軽失禁パッドであってもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 表面シート
2 裏面シート
3 吸収体
31 肌側吸収体
32,321,322,323,324,325 非肌側吸収体
4 液拡散シート
41 液拡散機構
42 裏面側液拡散機構
6 標識材(インジケータ)領域
6a,6b,6c 標識材(インジケータ)
7 サイドシート
8 通液阻害領域
10、20 尿とりパッド
導水溝
導水領域
傾斜導水路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面シートと裏面シートと該両シートに介在された吸収体とを有し、前記表面シートを着用者肌当接面側とし裏面シートを着用者非肌当接面側として装着する吸収性物品であって、前記吸収性物品は縦方向とこれに直交する幅方向を有しており、前記吸収体と前記裏面シートとの間に液との接触により視覚的に変化する標識材を有し、前記吸収体は着用者肌当接面側に位置する肌側吸収体と非肌当接面側に位置する非肌側吸収体とで構成され、前記肌側吸収体と非肌側吸収体との間には面方向に液を拡散させる液拡散機構を備えた吸収性物品。
【請求項2】
前記液拡散機構が、液拡散シート、非肌側吸収体の肌側面の表面に形成された幅方向に延びる導水溝、非肌側吸収体の肌側面の表面に配される2条の撥水領域で挟まれた幅方向に延びる導水領域、及び非肌側吸収体の肌面側の表面に形成された縦方向に延びる2条の圧搾放液部のいずれかである請求項1記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記液拡散シートの前記幅方向クレム吸収高さが25mm以上である請求項2記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記非肌側吸収体と前記標識材との間に液を面方向に拡散させる裏面側液拡散機構が配されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記標識材は、縦方向に長さを持ち幅方向に間欠的に複数条配設されてなる請求項1〜4のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記裏面側液拡散機構が液拡散シートからなる請求項2〜6のいずれか1項に記載の吸収性物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−240050(P2011−240050A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−116663(P2010−116663)
【出願日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】