説明

吸収性物品

【課題】粘性の高い経血等の体液の保持性を高め、着用者の装着感を向上させることができる吸収性物品を提供する。
【解決手段】 吸収性物品1は、表面シート10、裏面シート20、及び吸収体30を有し、表面シートの肌当接面側には、液透過性の上層シート70が接合されている。上層シートは、吸収性物品の幅方向Wにおける中央部において長手方向Lに沿って配置されており、上層シートの幅方向における両端部には、表面シートに対して接合されない非接合領域S1が設けられている。非接合領域の周囲には、少なくとも表面シート及び吸収体を厚み方向に圧縮した圧搾部80が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関し、排泄口から排出された体液の保持性を高めることができる吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、液透過性の表面シートと、液不透過性の裏面シートと、表面シートと裏面シートとの間に配置される吸収体とを有する吸収性物品としての生理用ナプキンにおいて、表面シートと吸収体との間にセカンドシートを有する生理用ナプキンが記載されている。特許文献1のセカンドシートは、孔開きの不織布又はメッシュ状のフィルムからなり、表面シートを通過した体液を速やかに吸収体に移行させるためのものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−14880号公報(第4頁、図2等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、出願人は、上述の吸収性物品について、以下のような問題点を発見した。
生理用ナプキンにおいて吸収される経血は、汗等の体液と比較して粘性が高い。このような比較的粘性の高い体液は、繊維等が密集した密度の高い部分よりも、繊維の隙間等の空隙部分に保持され易い。しかし、特許文献1のセカンドシートは、表面シートと吸収体とによって挟まれているため、セカンドシートの空隙部分が減少する。よって、一時的に保持させる体液の量が減り、一度に多量の体液が排出されると体液がもれるおそれがある。
【0005】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、粘性の高い経血等の体液の保持性を高め、体液の漏れを抑制することができる吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するため、本発明に係る吸収性物品は、液透過性の表面シート(表面シート10)、液不透過性の裏面シート(裏面シート20)、及び前記表面シートと前記裏面シートとの間に配置される吸収体(吸収体30)を有する吸収性物品(吸収性物品1)であって、前記表面シートの肌当接面側には、液透過性の上層シート(上層シート70)が接合されており、前記上層シートは、前記吸収性物品の幅方向(幅方向W)における中央部において前記吸収性物品の長手方向(長手方向L)に沿って配置され、かつ着用者の排泄口に対向して配置される排泄口当接領域を含む中央領域(中央領域A3)を有しており、前記吸収性物品には、前記表面シート及び前記上層シートを厚み方向に圧縮した上層圧搾部(上層圧搾部71)が形成され、かつ少なくとも前記表面シート及び前記吸収体を厚み方向に圧縮した吸収体圧搾部が形成され、前記吸収体圧搾部は、前記上層シートよりも幅方向外側において前記吸収性物品の長手方向に沿って形成された長手方向圧搾部(長手方向圧搾部81)を有することを要旨とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る吸収性物品は、表面シート上に接合された上層シートによって、排泄口から排泄された体液を一時的に保持することができる。上層シートは、表面シート等によって挟まれていないため、上層シート内部の空隙が確保され易い。上層シートの空隙によって比較的粘性の高い経血等の体液を一時的に溜める量が増える。よって、一度に多量の体液が排出された場合であっても、体液の漏れを抑制することができる。上層シートの幅方向外側には、長手方向圧搾部が設けられている。長手方向圧搾部は、少なくとも表面シート及び吸収体が厚み方向に圧縮されており、比較的密度が高い部分である。この圧搾部が上層シートの幅方向外側に配置されているため、上層シートによって溜めた体液を比較的密度が高い長手方向圧搾部によって引き込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1の実施形態に係る吸収性物品の肌当接面側から見た平面図である。
【図2】図1に示す吸収性物品の背面図である。
【図3】図1に示すA−A断面の模式断面図である。
【図4】図1に示すB−B断面の模式断面図である。
【図5】第1の実施形態に係る吸収性物品の肌当接面側から見た平面図である。
【図6】図1に示す吸収性物品の着用した状態を模式的に示す断面図である。
【図7】本発明の実施形態に係る吸収性物品の製造方法を説明するための図である。
【図8】第2の実施形態に係る吸収性物品の肌当接面側から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1の実施形態)
図1及び図2を参照して、本発明の第1の実施形態に係る吸収性物品1について説明する。図1は、吸収性物品の平面図であり、図2は、吸収性物品の背面図である。図3は、図1に示すA−A断面図であり、図4は、図1に示すB−B断面図である。本実施形態に係る吸収性物品1は、例えば、生理用ナプキンである。
【0010】
実施の形態に係る吸収性物品は、夜用の生理用ナプキンである。したがって、本実施の形態に係る吸収性物品は、長手方向において着用者の前側に位置する前側領域よりも、着用者の後側に位置する後側領域の方が長く構成されている。なお、後述する一対のウイング部の間の領域は、着用者の排泄口が当接する排泄口当接領域を含む領域であり、その領域よりも前側が前側領域となり、その領域よりも後側が後側領域となる。なお、本実施の形態では、夜用の生理用ナプキンを例に挙げて説明しているが、本発明に係る吸収性物品は、昼用の生理用ナプキンにおいても適用することができる。昼用の生理用ナプキンは、本実施の形態に係る生理用ナプキンと比較して、後側領域の長手方向の長さが短い。例えば、昼用の生理用ナプキンの後側領域の長さは、前側領域と略同じ長さとなる。
【0011】
吸収性物品1は、着用者の肌に当接する表面シート10と、液体を透過しない液不透過性の裏面シート20と、吸収体30とを有する。吸収体30は、表面シート10と裏面シート20との間に配設される。従って、吸収体30は、図1及び図2において破線で示される。吸収体30は、吸収性物品1の長手方向L及び幅方向Wにおける中央部分に配設される。表面シート10の肌当接面側には、液透過性の上層シートが接合されている。
【0012】
吸収性物品1は、図1に示す平面視にて、長手方向Lに直交する幅方向Wにおいて吸収体30の外側に設けられるウイング部43,44を備える。更に、吸収性物品1は、幅方向Wにおいて吸収体30の外側に設けられるサイドシート41,42を備える。
【0013】
表面シート10は、体液等の液体を透過する液透過性のシートである。表面シート10は、少なくとも吸収体30の表面を覆う。表面シート10は、不織布、織布、有孔プラスチックシート、メッシュシート等、液体を透過する構造のシート状の材料であれば、特に限定されない。織布や不織布の素材としては、天然繊維、化学繊維のいずれも使用できる。
【0014】
裏面シート20は、表面シート10の長さと略同一の長さを有する。裏面シート20は、ポリエチレンシート、ポリプロピレン等を主体としたラミネート不織布、通気性の樹脂フィルム、スパンボンド、又はスパンレース等の不織布に通気性の樹脂フィルムが接合されたシートなどを用いることができる。裏面シート20は、着用時の違和感を生じさせない程度の柔軟性を有する材料とすることが好ましい。裏面シート20は、不透液性且つ透湿性であることが望ましく、例えばポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂に無機充填剤を溶融混練したものを延伸処理した微多孔性シートによって構成することができる。
【0015】
吸収体30は、親水性繊維、パルプを含む。吸収体30は、経血などの体液を吸収可能な材料によって形成される。吸収体30は、親水性繊維又は粉体をエアレイド法によって積層して形成されてもよいし、親水性繊維又は粉体をエアレイド法によってシート状に成形したエアレイドシートでもよいし、ティッシュ(例えば、目付15g/m)上に高吸収ポリマーを混入した粉砕パルプを配置し、ティッシュで包むことによって形成されていてもよい。
【0016】
本実施の形態に係る吸収体30は、綿状パルプや合成パルプ等を坪量100〜300g/m程度に積層したパルプ8を保護紙(図示せず)で包むことによって構成されている。吸収体30の幅方向における中央に位置するコア部31(例えば、図3参照)の厚みは、幅方向における両側部の厚みよりも厚い。なお、吸収体30は、全面ほぼ均一な厚みであってもよいし、非均一な厚みであってもよい。保護紙は、パルプの形状を保持するためのものであり、例えばクレープ紙やティッシュペーパーなどを用いることができる。
【0017】
吸収体30は、前後方向に延びる形状であり、裏面シート20よりも略一回り程度小さい。吸収体30の幅方向Wの長さは、成人女性の股間隔に対応しており、概ね50〜80mmである。吸収体30は、ホットメルトなどの接着剤によって裏面シート20に接着される。また、本実施の形態では、吸収体30と表面シート10とは、ホットメルト接着剤60によって接着されている(図3参照)。
【0018】
コア部31は、少なくとも着用者の排泄口が当接する排泄口当接領域の中心を含むように設けられる。排泄口当接領域の中心とは、着用者の排泄口が当接する領域の長手方向及び幅方向の中心である。例えば、ウイング部を有する吸収性物品においては、ウイング部の長手方向の中心が、排泄口当接領域の長手方向の中心となる。また、ウイング部を有しない吸収性物品においては、吸収体の幅方向の長さ寸法が最も短い位置が、排泄口当接領域の長手方向の中心となる。排泄口当接領域は、着用者の股間部と当接する領域に含まれており、着用者の両脚の間に位置する。
【0019】
サイドシート41,42は、表面シート10の両側に配設される。サイドシート41,42は、表面シート10と同様の材料から選ぶことができる。但し、サイドシート41,42を乗り越えて吸収性物品1外方へ経血が流れることを防止するためには、疎水性又は撥水性を有することが好ましい。サイドシート41,42は、吸収体30の側縁の一部及びウイング部43,44を覆う。
【0020】
吸収性物品1では、表面シート10、サイドシート41,42、及び裏面シート20の周縁が接合されて、吸収体30が内封される。表面シート10と裏面シート20との接合方法としては、ヒートエンボス加工、超音波、又はホットメルト接着剤のいずれか一つ、又は複数を組み合わせることが可能である。
【0021】
裏面シート20において、下着と接触する表面には、複数の領域において粘着材50が塗布されている(図2参照)。粘着材50は、吸収体の裏面側において長手方向Lに沿って間欠的に配置されている。粘着材50は、ウイング部43及びウイング部44において、下着と接触する表面にも設けられる。使用前の状態では、粘着材50は、剥離シート90に接している。剥離シート90は、使用前に粘着材50が劣化するのを防止している。そして、使用時に着用者によって剥離シート90が剥離される。
【0022】
なお、剥離シート90を有しない吸収性物品においては、吸収性物品を個別に包装する包装シートによって使用前に粘着材が劣化するのを防止するように構成されていてもよい。粘着材と包装シートが接する場合には、包装シートの表面には、粘着材の粘着力を低下させることなく粘着材を剥離可能にする処理を施すことが望ましい。
【0023】
上層シート70は、体液等の液体を透過する液透過性のシートである。上層シート70は、不織布、織布、有孔プラスチックシート、メッシュシート等、液体を透過する構造のシート状の材料であれば、特に限定されない。織布や不織布の素材としては、天然繊維、化学繊維のいずれも使用できる。上層シート70は、長手方向Lに延びる折り目を基点として折り畳まれており、吸収性物品の厚み方向Tにおいて2層又は3層に積層されている。
【0024】
このように上層シート70を折り畳んで積層することにより、上層シート70の嵩高を維持し、上層シート70内の空隙を確保することができる。折り畳まれた上層シートの層間は、ホットメルト接着剤によって接合されている。
【0025】
上層シート70の層間のホットメルト接着剤は、長手方向に沿って配置されていることが望ましい。接着剤が疎水性の場合には、排泄口から排出された体液を上層シートによって保持した際に、疎水性の接着領域を避けて(接着領域に沿って)、長手方向に体液を拡散させることができる。
【0026】
なお、本実施の形態では、上層シート70は積層して構成されているが、空隙を確保できる構成であればよく、例えば比較的嵩高のシート材を用いる場合においては、必ずしも積層されていなくてもよい。本実施の形態に係る上層シート70は、目付20g/mのエアースルー不織布であり、芯が2.2dtexのPET、鞘がPEの芯鞘構造の複合繊維からなる。この不織布に対して嵩回復処理(温度90度で10分間放置)を施し、密度が0.025g/cm3になるように調整している。このように上層シートに嵩回処理を施すことにより、上層シートの空隙を増やし、体液の保持性を向上させることができる。また、エアースルー不織布は、比較的空隙が多い不織布であり、体液の保持性を比較的高くすることができる。
【0027】
また、本実施の形態に係る表面シート10は、目付25g/mのエアースルー不織布であり、芯が2.2dtexのPET、鞘がPEの芯鞘構造の複合繊維からなる。なお、表面シートは、嵩回復処理を施していなく、密度は、0.055g/cm3である。
【0028】
このように表面シート10の繊維密度を上層シートの繊維密度よりも高く構成することにより、密度勾配によって上層シート70から表面シート10へ体液をスムーズに移行させることができる。また、嵩回復処理によって上層シートの密度が低下することにより、表面シートとの密度差を設け、密度勾配による上層シートから表面シートへ体液を円滑に移行させることが可能となる。具体的には、密度の低い上層シートによって保持した体液を、密度の高い表面シートに移行させることができる。
【0029】
上層シート70は、表面シート10の肌当接面側に接合されており、吸収性物品1の幅方向における中央部において吸収性物品1の長手方向Lに沿って配置されている。上層シート70の長手方向Lの長さは、吸収性物品1の長手方向Lの長さと略同じであり、上層シート70の幅方向Wの長さは、吸収性物品1の幅方向Wの長さよりも短く、吸収体30の幅方向Wの長さよりも短い。
【0030】
上層シート70は、表面シート10に接着剤を介して接着された接着領域A1と、表面シート10に接着剤を介して接着されない非接着領域A2とを備える。図5は、図1に示す吸収性物品の平面図であって、接着領域A1と非接着領域A2とを示した図である。図5において、接着領域A1は、斜線を付した領域である。接着領域A1は、上層シート70の幅方向Wの中央部において長手方向Lに沿って2列に配置されている。
【0031】
上層シート70は、着用者の排泄口に対向して配置される排泄口当接領域を含む中央領域を有している。排泄口当接領域は、着用者の排泄口が当接する領域である。中央領域A3は、排泄口当接領域の中心を少なくとも含む領域であればよく、中央領域A1の中心が排泄口当接領域の中心であってもよいし、中央領域A3の中心と排泄口当接領域の中心とがずれていてもよい。本実施の形態では、後述する第1長手方向圧搾部81Aと第1幅方向圧搾部82Aとの内側に位置する領域が中央領域A3となる。
【0032】
接着領域A1を幅方向に沿って2列に設けることにより、上層シートの幅方向両端部と、2列の接着領域A1間とに非接着領域をA2設けることができる。例えば、接着領域A1は、シート同士が接着されており、シート内の空隙が減少することがある。よって、接着領域A1は、非接着領域A2に比べて体液の保持性が低下することがある。しかし、吸収体の幅方向中央部に非接着領域を配置することにより、吸収体の幅方向中央部における体液の保持性を維持することができる。
【0033】
また、接着剤が疎水性の場合には、接着領域間に長手方向に延びる非接着領域を設けることにより、排泄口から排出された体液を上層シートによって引き込んだ後、疎水性の接着領域を避けて(接着領域に沿って)長手方向に体液を拡散させることができる。なお、本実施の形態では、接着領域を2列で設けて接着領域間に非接着領域を設けているが、接着領域を1列で設けてもよいし、接着領域を3列以上で設けてもよい。
【0034】
吸収性物品1には、少なくとも表面シート10及び吸収体30を厚み方向に圧縮した圧搾部80が形成されている。圧搾部80は、長手方向Lに沿って延びる長手方向圧搾部81と、幅方向に沿って延びる幅方向圧搾部82と、間欠的に複数形成された点状圧搾部83と、を有する。
【0035】
長手方向圧搾部81は、上層シート70よりも幅方向外側において、上層シート70に隣接して配置されている。長手方向圧搾部81は、表面シート10と吸収体30とが厚み方向において圧縮されている。長手方向圧搾部81は、長手方向Lに沿って2列に形成されており、幅方向内側に位置する第1長手方向圧搾部81Aと、第1長手方向圧搾部81Aよりも幅方向外側に配置された第2長手方向圧搾部81Bとを有する。
【0036】
長手方向圧搾部81は、上層シート70に隣接して配置されている。長手方向圧搾部81は、吸収体30が厚み方向に圧縮されており、体液等を引き込み易い。したがって、上層シート70によって一時的に保持した体液を上層シート70の近傍で引き込むことができ、上層シートによって保持した体液を迅速に吸収することができる。また、長手方向圧搾部81よりも幅方向外側への体液の拡散を抑制し、横漏れを防ぐことができる。
【0037】
幅方向圧搾部82は、幅方向Wに沿って形成されている。上層シート70が配置された領域に形成された幅方向圧搾部82は、上層シート70、表面シート10及び吸収体30が厚み方向において圧縮されて形成されている。上層シート70が配置されていない領域に形成された幅方向圧搾部82は、表面シート10及び吸収体30が厚み方向において圧縮されて形成されている。幅方向圧搾部82は、幅方向Wに沿って2列に形成されており、長手方向内側に位置する第1幅方向圧搾部82Aと、第1幅方向圧搾部よりも長手方向外側に配置された第2幅方向圧搾部82Bとを有する。
【0038】
長手方向圧搾部81は、長手方向Lに沿った直線に対して傾斜するように形成されていてもよく、長手方向Lに沿った直線と、長手方向圧搾部81とによって形成される角度(鋭角側)が45度以下であるものとする。一方、幅方向圧搾部82は、幅方向Wに沿った直線に対して傾斜するように形成されていてもよく、幅方向Wに沿った直線と、幅方向圧搾部82とによって形成される角度(鋭角側)が45度未満であるものとする。
【0039】
ここで、長手方向圧搾部81及び幅方向圧搾部82は、図1に示すように、接続されて周回状の圧搾部を形成していてもよいし、接続されていなくてもよい。本実施の形態では、第1長手方向圧搾部81Aと第1幅方向圧搾部82Aとが連続して形成されており、第2長手方向圧搾部81Bと第2幅方向圧搾部82Bとが連続して形成されている。また、長手方向圧搾部及び幅方向圧搾部は、接続されて略U字状の圧搾部を形成していてもよいし、接続されていなくてもよい。図5において、長手方向圧搾部と幅方向圧搾部との境界Xを図示する。
【0040】
点状圧搾部83は、円形状であって、間欠的に複数形成されている。点状圧搾部83は、第1長手方向圧搾部81A及び第1幅方向圧搾部82Aによって形成された周回状の圧搾部の外周であって、吸収体30の前側端部と吸収体30の後側端部とに形成されている。なお、点状圧搾部は、間欠的に複数設けられていればよく、その形状は、円形に限られず、楕円形、星形、ハード形、菱形等であってもよく、限定されない。
【0041】
吸収体30の前側端部と吸収体30の後側端部とにおいて、点状圧搾部によって上層シート、表面シート及び吸収体が一体化して接合されているため、表面から吸収層の距離が縮まる。着用者から排出されて後方に流れた体液は、上層シートの空隙で保持されて、点状圧搾部83において引き込むことができる。点状圧搾部83は、点在しているため、あらゆる方向に流れる体液に対して接触し易く、体液を引き込みやすい。
【0042】
点状圧搾部は、間欠的に配置されているため、幅方向に延びる幅方向圧搾部や長手方向に延びる長手方向圧搾部よりも硬くなり難い。しかし、点状圧搾部は、一部の領域の剛性が偏って硬くなることを防止することができ、装着感の悪化を抑制できる。
【0043】
また、例えば、圧搾部が幅方向に延びていたり、長手方向に延びていたりすると、圧搾部によって保持される体液が前後方向や幅方向に拡散してしまうおそれがある。特に、点状圧搾部83は、吸収体30の前側端部と吸収体30の後側端部とに配置されており、体液が拡散し過ぎると前漏れ等が発生するおそれがある。しかし、点状圧搾部は、円形であるため、保持した体液の拡散を抑制し、漏れを防ぐことができる。
【0044】
なお、圧搾部80は、上層シート70が配置されている領域においては、上層シート70、表面シート10及び吸収体30を厚み方向に圧縮して形成されており、上層シート70が配置されていない領域においては、表面シート10及び吸収体30を厚み方向に圧縮して形成されている。
【0045】
上層シート70の圧搾部80が形成された部分は、圧搾加工によって表面シート10と接合されている。よって、上層シート70と表面シート10とが接合されない非接合領域S1は、接着剤によって表面シート10と上層シート70とが接合されていない非接着領域A2であって、かつ、圧搾部80が形成されていない領域である。非接合領域S1は、図5にてドットを付した領域である。なお、ここでいう圧搾部が形成されていない領域とは、長手方向における上層シートに形成された圧搾部間の領域である。非接合領域S1は、接着剤によって表面シートと上層シートが接合されていなく、かつ圧搾部80が形成されていない領域であり、上層圧搾部71によって上層シートと表面シートが部分的に接合される場合において、上層圧搾部71によって接合された部分も含む概念である。
【0046】
圧搾部80は、少なくとも表面シート10及び吸収体30を厚み方向に圧縮して形成されており、比較的密度が高い部分となる。上層シート70の非接合領域S1の周囲に圧搾部80を形成することにより、上層シート70によって一時的に保持した体液を、比較的密度が高い圧搾部によって引き込むことができる。例えば、非接合領域S1の幅方向外側に長手方向圧搾部81が形成されているため、横漏れを防ぐことができ、非接合領域S1の長手方向外側に幅方向圧搾部82が形成されているため、前漏れ及び臀部における漏れを防止することができる。
【0047】
また、圧搾部80は、少なくとも表面シート10及び吸収体30を厚み方向に圧縮して形成されており、比較的硬い部分となる。上層シート70の幅方向外側に長手方向圧搾部81が形成されているため、幅方向外側から内側にむけて押圧された際に長手方向圧搾部81を基点に内側に向けて変形し、外力を吸収することができる。また、幅方向に延びる幅方向圧搾部が形成されているため、幅方向外側からの力に対する抵抗が大きくなる。よって、吸収性物品1を装着した着用者が両脚を閉じた状態等、吸収性物品1の幅方向両外側から内側に向かって力が掛かった場合に、吸収体の変形を抑制することができる。
【0048】
上層シート70には、表面シート10及び上層シート70を厚み方向に圧縮した上層圧搾部71が形成されている。上層圧搾部71は、格子状に配置されている。上層圧搾部71が形成された部分は、表面シート10と上層シート70が圧縮されて密着している。よって、上層圧搾部71を形成することにより、上層シート70から表面シート10への体液の移行性を高めることができる。一方、上層シート70のうち上層圧搾部71以外の部分では空隙を保持できるため、体液の一時的な保持を維持することができる。
【0049】
上層圧搾部71は、長手方向Lに対して傾斜して配置されている。よって、吸収性物品1が幅方向外側から内側に押圧された際に、傾斜した上層圧搾部71に沿って折れ曲がりやすくなり、吸収性物品が長手方向に沿って折り曲がることを抑制できる。また、上層圧搾部の格子形状は、幅方向よりも長手方向が長い菱形状であるため、体液が幅方向に拡散し難くなる。
【0050】
図6は、図1のA−A断面における吸収性物品の着用した状態を模式的に示した図である。(a)は、吸収性物品1を下着Sに装着した状態を示している。吸収性物品1の幅方向外側に配置されるウイング部43、44は、下着の裏面側に折り返されている。(b)は、吸収性物品1が幅方向外側から内側に向けて押圧された状態を示している。
【0051】
吸収性物品1が幅方向外側から内側に向けて押圧されると、第1長手方向圧搾部81A及び第2長手方向圧搾部81Bを基点に内側に向けて変形する。
【0052】
上層シート70は、吸収体30の幅方向における中央部のみにおいて表面シート10に接合されており、その両側には非接着領域A2が配置されている。よって、接着領域A1の上層シート70は、表面シート10と共に押し上げられ、非接着領域A2の上層シート70は、表面シート10と分離し、水平な状態で押し上げられる。このように変形することにより、上層シート70は、排泄口等着用者の身体に対向した状態で維持される。また、上層シート70は、着用者側(上方に)押し上げられるため、排泄口に上層シート70を近付けることができ、排泄口から排泄された体液を迅速に上層シートに引き込むことが可能となる。
【0053】
また、吸収性物品1は、上層シート70よりも幅方向外側において上層シート70に隣接した第1長手方向圧搾部81Aを基点にして幅方向内側に変形し、吸収体30が幅方向外側から内側への外力を吸収するように構成されている。よって、吸収性物品1を装着した着用者が両脚を閉じた状態等、吸収性物品1の幅方向両外側から内側に向かって力が掛かった場合に、上層シート70の変形を抑制することができる。また、長手方向圧搾部81は、少なくとも排泄口当接領域を跨いで長手方向に延びて形成されているため、少なくとも着用者の排泄口に対向して上層シートを配することができる。
【0054】
上層シートの非接合領域S1は、表面シート10に接合されていないため、吸収性物品が幅方向外側から内側に押圧された際に、表面シート等の変形に基づく上層シートの変形を少なくすることができる。よって、上層シートを排泄口等着用者の身体に対向した状態で維持し易くなる。
【0055】
上層シート70の長手方向圧搾部側の端部と、長手方向圧搾部の幅方向外側の端部との長さL1は、非接合領域の幅方向長さL2よりも長い。長さL1が長さL2よりも長いことにより、吸収性物品1が幅方向外側から内側に押圧されて、長手方向外側圧搾部が幅方向における内側に移動するように変形した場合であっても、上層シート70よりも幅方向外側に長手方向圧搾部81が配置される。よって、上層シート70によって一時的に保持した体液を長手方向圧搾部81にて引き込み、横漏れを防ぐことができる。なお、長手方向圧搾部81の幅方向外側の端部は、2本形成されている場合には、最も外側に位置する端部である。
【0056】
一方、吸収体の前端部及び後端部には、点状圧搾部83が形成されており、吸収体の前端部及び後端部は、幅方向に沿って折れ曲がり易くなったり、長手方向に沿って折れ曲がり易くなったりしない。したがって、吸収体30は、前後方向において着用者の身体の外形に沿って曲がり易くなり、吸収性物品のフィット性を向上させることができる。
【0057】
なお、圧搾部は、少なくとも表面シート10及び吸収体30を厚み方向Tに圧搾されて形成されていればよく、種々の構成を採用することができる。例えば、プレス加工やエンボス加工によって形成することができ、その形状は、格子網やハニカム形状であってもよい。
【0058】
なお、吸収性物品等の硬さは、例えば、JIS-1096に規定されているガーレー法を用いて測定することができる。また、吸収体の目付及び密度は、例えば、以下の測定方法によって測定することができる。包装体によって包装された吸収性物品においては包装体を開封し、折り畳まれた吸収性物品を展開して、目付及び密度を測定する部分の厚み及び面積を測定する。次いで、目付及び密度を測定する部分を吸収性物品から切り出し、切り出した部分の重量を測定する。次いで、切り出した部分から表面シート及び裏面シート等、吸収体以外の部分を取り除き、吸収体の重量を測定する。吸収体の重量と、目付及び密度を測定する部分の面積とに基づいて目付を算出する。目付及び厚みに基づいて、密度を算出する。
【0059】
なお、厚みは、以下のような測定方法によって測定することができる。具体的には、サンプルの吸収性物品を、液体窒素に含浸させて凍結させた後、剃刀でカットし、常温に戻した後、電子顕微鏡(例えば、キーエンス社VE7800)を用いて、50倍の倍率で測定する。ここで、サンプルの吸収性物品を凍結させる理由は、カット時の圧縮により厚みが変動するのを防ぐためである。
【0060】
次に、図7を参照して、本実施形態に係る吸収性物品1の製造方法の一部について説明する。なお、図7に記載されていない方法については、既存の方法を用いることができる。吸収性物品の製造方法は、図7に示すように、ステップ101において、上層第1生成工程を行う。具体的には、上層第1生成工程において、上層シート70に嵩高回復処理を施した後、上層シートを3つ折りに折り畳む。そして、表面シート10上にホットメルト接着剤60を介して上層シート70を接着する。嵩高回復処理は、例えば、上層シートを熱風が供給されている容器内を通過させることにより行う。
【0061】
次いで、ステップ102において、上層第2生成工程を行う。具体的には、表面シート10と上層シート70を厚み方向Tに圧縮加工し、上層圧搾部71を形成する。この圧縮加工は、例えば、加熱及び加圧を行うエンボスロール(上層シート側が凸状パターンであって、表面シート側がフラットパターン)を、上層シート70及び表面シート10を通過させることで、格子状の凹凸加工が形成される。
【0062】
ステップ103において、上層第3生成工程を行う。具体的には、表面シートとサイドシート41,42とを、例えば熱溶着によって接着する。
【0063】
次いで、ステップ104において、吸収体成型工程を行う。具体的には、成型ドラムによって吸収体の材料となるパルプを成型して吸収体30を成型する。なお、ステップ101〜103の上層生成工程と、ステップ104の吸収体成型工程の順序は、逆の順序であってもよい。
【0064】
ステップ105において、接合工程を行う。具体的には、ステップ103において生成した上層と、ステップ104において成型した吸収体30とを接合する接合工程を行う。
【0065】
ステップ106において、圧搾工程を行う。具体的には、吸収体30と表面シート10とを厚み方向に圧縮し、かつ上層シート、表面シート及び吸収体30を厚み方向に圧縮し、圧搾部80を形成する。ステップ107において、裏面シート接合工程を行う。具体的には、ステップ106において圧搾部を形成した吸収体及び表面シート等と、裏面シートとを接合する。なお、図7においては、図示しないが、裏面シートを接合した後、接着剤を塗布する工程を備える。上記の工程により、本実施の形態に係る吸収性物品を製造することができる。
【0066】
(第2の実施形態)
次いで、図8に基づいて第2の実施形態に係る吸収性物品1Aについて説明する。第2の実施形態に係る吸収性物品1Aは、昼用の生理用ナプキンである。第2の実施形態に係る吸収性物品1Aは、吸収性物品の後側領域の長さが前側領域と略同じ長さとなる。第2の実施形態において、第1の実施形態と同様の構成については、同符号を用いて説明を省略する。
【0067】
第2の実施形態に係る吸収性物品の上層シート70は、長手方向の長さが吸収性物品の長手方向の長さよりも短い。上層シート70は、吸収体30の長手方向の中央であって、幅方向の中央に配置されており、排泄口当接領域を覆うように配置されている。上層シート70には、表面シート10とともに厚み方向に圧縮された点状の圧搾部72が形成されている。この点状の圧搾部によって上層シート70と表面シート10とが接合されている。
【0068】
上述したように、本発明の実施形態を通じて本発明の内容を開示したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなる。
【0069】
例えば、本実施の形態に係る長手方向圧搾部は、第1長手方向圧搾部及び第2長手方向圧搾部の2本であるが、1本であってもよい。また、例えば、吸収性物品は、吸収体の幅方向外側端部に、ギャザーが形成されていてもよい。
【0070】
本実施形態では、吸収体と表面シートは、接着剤を介して接着されているが、吸収体と表面シートは、少なくとも非接合領域の下方において接合されていなくてもよい。吸収体と上層シートとが非接合領域の下方にて接合されていないことにより、吸収性物品が幅方向外側から内側に押圧された際に、吸収体の変形に基づく上層シートの変形を少なくすることができる。
【0071】
具体的には、吸収体は、吸収性物品が幅方向外側から内側に押圧されると、幅方向長さが短くなって厚みが厚くなる。したがって、吸収体上に配置された表面シートと上層シートが上側に押し上げられる。このとき、表面シートは、吸収体と接合されずに吸収体上に配置されているため、吸収体の幅方向の影響を受けずに厚み方向の変形のみ受けて、押し上げられる。よって、上層シートも押し上げられて、上層シートを排泄口等着用者の身体に対向した状態で維持し易くなる。
【符号の説明】
【0072】
A1…接着領域、 A2…非接着領域、 L…長手方向、 S1…非接合領域、 T…厚み方向、 W…幅方向、 X…境界、 1…吸収性物品、 10…表面シート、 20…裏面シート、 30…吸収体、 31…コア部、 41,42…サイドシート、 43,44…ウイング部、 50…粘着材、 60…ホットメルト接着剤、 70…上層シート、 71…上層圧搾部、 80…圧搾部、 81…長手方向圧搾部、 81A…第1長手方向圧搾部、 81B…第2長手方向圧搾部、 82…幅方向圧搾部、 82A…第1幅方向圧搾部、 82B…第2幅方向圧搾部、 83…点状圧搾部、 90…剥離シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性の表面シート、液不透過性の裏面シート、及び前記表面シートと前記裏面シートとの間に配置される吸収体を有する吸収性物品であって、
前記表面シートの肌当接面側には、液透過性の上層シートが設けられており、
前記上層シートは、前記吸収性物品の幅方向における中央部において前記吸収性物品の長手方向に沿って配置され、かつ着用者の排泄口に対向して配置される排泄口当接領域を含む中央領域を有しており、
前記吸収性物品には、前記表面シート及び前記上層シートを厚み方向に圧縮した上層圧搾部が形成され、かつ少なくとも前記表面シート及び前記吸収体を厚み方向に圧縮した吸収体圧搾部が形成され、
前記吸収体圧搾部は、前記上層シートよりも幅方向外側において前記吸収性物品の長手方向に沿って形成された長手方向圧搾部を有する、吸収性物品。
【請求項2】
前記吸収体圧搾部は、前記中央領域よりも前記長手方向外側に設けられ、前記幅方向に延びる幅方向圧搾部を有しており、
前記幅方向圧搾部は、前記上層シート、前記表面シート及び前記吸収体を厚み方向に圧縮されている、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記吸収体圧搾部は、前記中央領域よりも前記長手方向外側に設けられ、間欠的に複数形成された点状の点状圧搾部を有しており、
前記点状圧搾部は、前記上層シート、前記表面シート及び前記吸収体を厚み方向に圧縮されている、請求項1又は請求項2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記上層シートの前記幅方向における両端部には、前記表面シートに対して接合されない非接合領域が設けられており、
前記上層シートの前記長手方向圧搾部側の端部と、前記長手方向圧搾部の前記幅方向外側の端部との長さは、前記非接合領域の前記幅方向長さよりも長い、請求項1から請求項3のいずれかに記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記上層シートの前記幅方向における両端部には、前記表面シートに対して接合されない非接合領域が設けられており、
前記吸収体と前記表面シートは、少なくとも前記非接合領域の下方において接合されていない、請求項1から請求項3のいずれかに記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記上層圧搾部は、格子状に配置されている、請求項1から請求項5のいずれかに記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記表面シートにおける繊維密度は、前記上層シートにおける繊維密度よりも高くなるように構成されている、請求項1から請求項6のいずれかに記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記表面シートと前記上層シートとは、接着剤を介して接合されており、
前記接着剤は、前記長手方向に沿って延び、かつ幅方向において間隔を空けた複数の列状に配置されている。請求項1から請求項7のいずれかに記載の吸収性物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−239712(P2012−239712A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−113832(P2011−113832)
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】