吸収性物品
【課題】表面シートへの液残りや液戻りをより効果的に抑制することによりムレにくくし、さらに体液の排泄がいっきに多くあったときにすばやく対応可能であり、かつ装着者の身体にフィットし、その動きによく追随する柔軟性に優れる吸収性物品を提供する。
【解決手段】肌当接面側に配置される液透過性の表面シート、非肌当接面側に配置される裏面シート、及び該両シートの間に配置される吸収体を有する吸収性物品であって、前記表面シートは、その厚み方向に見て非肌当接面側よりも相対的に繊維密度の低い低密度部を肌当接面側に備える繊維の粗密構造と、平面方向への液の拡散を抑える抑制構造とを有し、前記吸収体は、高坪量部と低坪量部とを有し、前記高坪量部は前記低坪量部よりも相対的に高密度であり、前記低坪量部が前記高坪量部を囲むようにして平面方向に連続配置されている吸収性物品。
【解決手段】肌当接面側に配置される液透過性の表面シート、非肌当接面側に配置される裏面シート、及び該両シートの間に配置される吸収体を有する吸収性物品であって、前記表面シートは、その厚み方向に見て非肌当接面側よりも相対的に繊維密度の低い低密度部を肌当接面側に備える繊維の粗密構造と、平面方向への液の拡散を抑える抑制構造とを有し、前記吸収体は、高坪量部と低坪量部とを有し、前記高坪量部は前記低坪量部よりも相対的に高密度であり、前記低坪量部が前記高坪量部を囲むようにして平面方向に連続配置されている吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生理用ナプキンや使い捨ておむつ、失禁パンツ等の吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
生理用ナプキン等の吸収性物品においては、各部材の材料や構造を改良し、その機能や着用感の向上が図られてきた。吸収体についても、使用状況や物品の種類に応じた機能性のものが種々提案されている。
【0003】
例えば、表面シート、裏面シート及び吸収体を有するナプキンにおいて、吸収体の裏面シート側から陥没する多数の圧縮部が点在するように配置されたものが開示されている(特許文献1参照)。該圧縮部と圧縮されていない非圧縮部とはゆるやかに厚みを変化させて連続した起伏をなし、非圧縮部から圧縮部へと高まる密度勾配が形成される。これにより、表面シートから吸収体に導かれた液が素早く引き込まれ、液体の十分な吸収保持量を実現しつつ、液戻り防止性やモレ防止性を良化することができる。また、縦方向に筋状に延びる高密度部と低密度部とが交互に区画された吸収体を有する吸収性物品が開示されている(特許文献2参照)。この吸収体により、液の縦方向への液拡散が促進され、液の引き込み性に優れるとともに、幅方向からの圧力にも柔軟に変形可能とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−55352号公報
【特許文献2】特開2010−136899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記の従来の吸収性物品の吸収性能をさらに高め、表面シートへの液残りや液戻りをより効果的に抑制することによりムレにくくし、さらに体液の排泄がいっきに多くあったときにすばやく対応可能であり、かつ装着者の身体にフィットし、その動きによく追随する柔軟性に優れる吸収性物品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、肌当接面側に配置される液透過性の表面シート、非肌当接面側に配置される裏面シート、及び該両シートの間に配置される吸収体を有する吸収性物品であって、前記表面シートは、その厚み方向に見て非肌当接面側よりも相対的に繊維密度の低い低密度部を肌当接面側に備える繊維の粗密構造と、平面方向への液の拡散を抑える抑制構造とを有し、前記吸収体は、高坪量部と低坪量部とを有し、前記高坪量部は前記低坪量部よりも相対的に高密度であり、前記低坪量部が前記高坪量部を囲むようにして平面方向に連続配置されている吸収性物品により上記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の吸収性物品は、表面シートへの液残りや液戻りをより効果的に抑制し、ムレにくく、体液の排泄がいっきに多くあったとしてもすばやく対応して吸収性の回復・保持可能であるという優れた作用効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明における吸収性物品の一実施形態(第1実施形態)としての生理用ナプキンを肌当接面方向から示した一部切欠斜視図である。
【図2】図1に示すII−II線断面である。
【図3】第1実施形態に係る表面シートの肌当接側面を示す一部拡大平面図である。
【図4】第1実施形態に係る表面シートのエンボス部の変形例を示す説明図である。
【図5】第1実施形態に係る吸収体のみを非肌当接面側から模式的に示した平面図である。
【図6】図1に示す生理用ナプキンの所定の断面の一部を拡大して示した一部断面図である。
【図7】本発明における吸収性物品の他の実施形態(第2実施形態)としての生理用ナプキンの幅方向断面図である。
【図8】第1実施形態及び第2実施形態に係る吸収体の好ましい製造方法について、製造時におけるプレスロール加工前後の状態を概略化して示す工程説明図である。
【図9】(a−1)は回転ドラムの外周面にあるポケットを一部拡大して示す斜視図であり、(a−2)は回転ドラムのポケットに繊維材料が堆積した状態を示す断面図であり、(b)は吸収体前駆体が回転ドラムからバキュームコンベアへ離型される様子を示す説明図であり、(c)は加圧工程の説明図である。
【図10】堆積体(製造中間体)の一部を凸状部側から示す斜視図である。
【図11】吸収速度(D/W法)を測定するための装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本発明における吸収性物品の好ましい一実施形態(第1実施形態)としての生理用ナプキンを肌当接面方向から示した一部切欠斜視図であり、図2は図1に示すII−II線断面である。なお、これらの図において煩雑さを避けるため吸収体のコアラップシートを省略して示す。
【0010】
第1実施形態の生理用ナプキン10は、図1に示すように、肌当接面側に配置される液透過性の表面シート1、非肌当接面側に配置される裏面シート2、及び該両シートの間に配置される吸収体3を備え、実質的に縦長の形状である。裏面シート2の肌当接面側に吸収体3が接着剤等で接合され、吸収体3の長手方向左右両側の外方に裏面シート2が延出してその肌当接面側とサイドシート4とが当接し接合されている。裏面シート2とサイドシート4とが当接した部分では表面シート1が裏面シート2とサイドシート4とで挟持され、さらにその幅方向(X方向)内方向に向け表面シート1が吸収体3よりも肌当接面側に位置されるように配されている。このように積層された前記の各シート部材が吸収体3の外方で吸収体3を介在させずにヒートシール等により接合され、ナプキン10の外周縁部6を形成している。この外周縁部6は、全体的な伸縮性を阻害せず、一度吸収した液が漏れない程度に接合されている。サイドシート4の自由端41には外周縁部6へ向うポケット(図示せず)が形成され、液等の横モレを防ぐ効果を有する。なお、第1実施形態における生理用ナプキン10の幅方向左右両側部には、サイドシート4を有してなるウイング部42が生理用ナプキン10の幅方向外方に向って延出しており、生理用ナプキン10使用時には、この部分をショーツにおける股下部の非肌当接面側に巻き込んでショーツに固定する。
【0011】
生理用ナプキン10の肌当接面側には、表面シート1の肌当接面側から吸収体3にかけて圧搾した防漏溝5が施されている。防漏溝5は、経血等の排泄部対応領域の物品幅方向の左右両端寄りに物品縦方向に沿う2条の条溝7の部分を有する。防漏溝5は、条溝7の端部から長手方向にさらに延びて、吸収体3の前後端に近づくにつれ徐々に吸収体3の中央方向に向かい湾曲し、前端、後端が一致して無端環状に連続した全周溝をなしている(図1参照)。このようにすることで、ナプキンを装着して使用する際の排泄液の横漏れを効果的に防止することができる。第1実施形態における条溝7を含む防漏溝5の平面視形状は、前述の形状に限定されず、無端環状の前端、後端で互いに交差していてもよく、条溝7が全周溝の前後端部分と離間していてもよく、条溝7とは別の筋状の溝が幅方向に並列されていてもよく、用途に合わせ適宜決められることが好ましい。なお、排泄部対応領域とは経血もしくはおりもの等の排泄を直接受ける部分及びその近傍である。通常、昼用のナプキンなど前後対象に形成される場合は、排泄部対応領域は、ナプキンを長手方向に3等分した場合の中央領域であり、夜用のナプキンなどは、後方に臀部を覆う左右幅広な後方フラップを有し、ナプキンを長手方向に2等分した際の前側の中央よりにある。また、昼用、夜用にかかわらず、ショーツの股下部に折り曲げて固定するウイングを備える場合は、該ウイングの存在する領域に沿った長手方向両域が排泄部に対応する。
【0012】
表面シート1、裏面シート2、サイドシート4、及び吸収体3の材料や寸法等に関する詳細は後述する。第1実施形態において表面シート1は、排泄された液体を速やかに吸収し、吸収体に伝達する観点と、肌触りのよさの観点から肌当接面側及び非肌当接面側に繊維による突部を有した液透過性の不織布を用いている。また、裏面シート2としては、通気性を有した透湿性フィルムを単層で用いている。吸収体3としてはパルプ繊維等と吸収性ポリマーとを紙などのコアラップシート(図示せず)で被覆してなるものである。また、裏面シート2の非肌当接面側には、生理用ナプキン10を着衣に固定するための粘着剤(図示せず)が塗布されている。該粘着剤によって、生理用ナプキン10が使用者の着衣に接着固定される。第1実施形態の生理用ナプキン10は、その表面シート側を着用者の肌当接面側に向け、かつ、その縦方向を下腹部から臀部にかけて配し、その幅方向を左右の足をつなぐラインの方向に向けて配して着用する。
【0013】
本発明においては、特に断らない限り、人体に接触する側の面を肌側面ないし肌当接面あるいは表面といい、これと反対側の面を非肌面ないし非肌当接面あるいは裏面という。この2つの面において、肌側面に近い方ないしその延長方向を肌面側、肌当接面側又は表面側といい、非肌面に近い方ないしその延長方向を非肌面側、非肌当接面側又は裏面側という。装着時に人体の前側に位置する方向を前方といいその端部を前端部とし、後側に位置する方向を後方といいその端部を後端部として説明する。吸収性物品の表面又は裏面の法線方向を厚み方向といいその量を厚さという。更に、吸収性物品の平面視において腹側部から股下部を亘り背側部に至る方向を長手方向または縦方向といい、この縦方向と直交する方向を幅方向という。なお、前記縦方向は典型的には装着状態において人体の前後方向と一致する。
【0014】
第1実施形態の表面シート1は、図2の円拡大図に示すように、肌当接面側から上層11、下層12の2層の繊維層が積層されて形成されており、各層はそれぞれ異なる種類及び/又は配合の繊維の集合体から構成されている。上層11、下層12は、多数のエンボス部15におけるエンボス等の圧着によって接合されている。エンボス部15では、表面シート1の構成繊維が厚み方向に凹陥して多数の谷部を形成している。谷部間の非エンボス部、即ちエンボス部15に囲まれた領域は、突部14となる。上層11の突部14aは肌当接面側に突出し、下層12の突部14bは非肌当接面側に突出している。該突部14a及び14bは、いずれもドーム状の形状をなし、上述したエンボス部15と同様に平面視において上層11及び下層12の同じ位置に規則的に多数配されている。これによって、上層11及び下層12には、その全域に亘って多数の凹凸部が形成されている。
【0015】
ここで表面シート1が有する繊維の粗密構造について説明する。この繊維の粗密構造は、表面シート1をその厚み方向に見たときに、非肌当接面側よりも相対的に繊維密度の低い低密度部を肌当接面側に備える構造である。第1実施形態1の表面シート1においては、下層12の突部14bよりも上層11の突部14aの繊維密度が相対的に低い低密度部とされた構造である。これにより、肌に当接する上層11の突部14aから下層12の突部14bへと向って高まる構成繊維の密度差あるいは密度勾配が形成され、排泄液を素早く厚み方向に引き込んで吸収体3へと引き渡すことができる。この繊維の粗密構造は、少なくとも排泄部対応領域に配されることが好ましい。
【0016】
第1実施形態の表面シート1は、非熱収縮性融着繊維材料又は下層12の繊維よりも熱収縮温度の高い繊維を含む上層11、潜在捲縮性繊維を含む下層12を積層し加工して形成される。この上層11及び下層12を、エンボス等の圧着により所定のパターンで部分的に又は全面的に融着させた後、熱処理(熱風の吹き付け、赤外線の照射など)によって、下層12を水平方向に熱収縮させる。すると、下層の12の熱収縮に対して、上層11は熱収縮が起こらないか、下層12よりは熱収縮が小さい。そして、上層11、下層12が多数点在するエンボス部15で一体化されているために、上層11は下層12に比べ収縮しにくいことから歪が生じ、この歪によって上層11には構成繊維間の距離が広がるようにドーム状の凸な隆起が現れる。他方、上層11に収縮が起こらない又は熱収縮が小さいことは、下層12の収縮の抵抗となり、下層12の収縮が厚み方向へと働き突部14bが形成される。このようにして上層11の突部14aと下層12の突部14bとの間に構成繊維の密度差または密度勾配が形成され、表面シート1の液の拡散及び厚み方向への液の透過性が向上する。そのため2層の繊維層間には界面がないことが好ましい。なお具体的な製造方法は、例えば特開2004−166849号等に記載の方法を採用することができる。
【0017】
表面シート1の粗密構造において、液を素早く表面シート1の非肌当接面側へと引き込むため、上層11の突部14aの密度(m1)と下層12の突部14bの密度(m2)との比率(m1/m2)は、3/4〜1/20が好ましく、1/3〜1/10がさらに好ましい。上記の下限以上とすることで、肌当接面側から非肌当接面側に向かって毛管力が働き、肌近傍に残留する体液を速やかに吸収し、着用者に優れた装着感を提供することができ、上限以下とすることで下層部12が高密度となり、過度に硬くなることを防止することができる。
【0018】
[表面シート1の繊維密度の測定方法]
表面シート1の繊維密度は、KEYENCE社製マイクロスコープVHX−1000を用い観察し、上層11,下層12各々の厚みを測定し、設計した坪量を各々の厚みで除して算出できる。
【0019】
次に表面シート1の液拡散の抑制構造について説明する。この抑制構造は、排泄液が表面シート1に取り込まれた際、液量の多寡に係らず表面シート1の平面方向に液が拡散するのを抑え、前記繊維の粗密構造による液の透過性を補って、的確に液を捉えて引き込み、液の吸収体3への引き渡し効率を高める構造のことである。第1実施形態1の表面シート1においては、抑制構造とは、抑制部としてのエンボス部15であり、またその抑制部としてのエンボス部15の複数配置による表面シート1の構造であり、エンボス部15と下層12の突部14bとの組み合わせの構造である。まず、第1実施形態におけるエンボス部15は、表面シート1における他の部分に比して厚みが薄く密度が大きい部分である。各エンボス部15は、小円形で離散的に不連続に形成されており、全体として略千鳥格子状の配置パターンを形成している(図3参照)。つまり、各エンボス部15は、他のエンボス部15とは離間して独立の閉じた谷部を形成している。表面シート1は、複数のエンボス部15がそれぞれ独立に点在配置されることで、谷部にある液が他の谷部に移動し難い構造となっている。この谷部となるエンボス部15は、エンボスによる繊維の圧密化で突部14よりも繊維密度が高く毛管力が高い。これにより、表面シート1が受け取った液を平面方向に拡散させず、かつ高い毛管力により吸収体3へと排泄液を効果的に素早く引き込むことができる。さらに第1実施形態においては、下層12の突部12bがあることで、表面シート1の非肌当接面側では、エンボス部15と吸収体3との間に複数の突部14bに囲まれた一定の空間が保たれる。そして前記空間は繊維がなく平面方向に実質的に閉ざされた空間である。これにより、一旦引き込まれた液が表面シート1の肌当接面側に戻り難くなり、液が過度に拡散することなく吸収体へと移行しやすい構造となっている。
【0020】
この表面シート1の抑制構造が、前記の粗密構造と協働して、排泄液を過度に拡散させることなく素早く引き込んで吸収体3へと効率よく引き渡すことができる。これにより、表面シート1の肌側面では液残りと液戻りが抑制され、着用者に良好な装着感が提供される。なお、このエンボス部15の形状や配置は、各エンボス部15が互いに非連続で閉じた形状であれば、また突部14を囲む配置であれば、第1実施形態のもの以外にも、図4に示すように、十字形やひし形等の図形、これらの組み合わせ、直線、曲線形状のエンボスが任意に点在するようにしてもよく、構成繊維の密度勾配を有して液の拡散抑制と厚み方向への液の素早い引き込みとが実現される形状や配置を任意に採用することができる。例えば、十字形状のエンボス部15を突部14の四隅をL字に囲むようにして配置することもできる。この場合、向かい合う2つのエンボス部15の棒状部分に挟まれた吸収体の部分は、両エンボス部15の圧着に引っ張られて若干繊維密度が高められた中間密度部16となり(図4(a)参照)、突部14aとエンボス部15との密度差に加え、突部14aから中間密度部16、エンボス部15へと高まる密度差又は密度勾配でさらに液の拡散を抑えて厚み方向への透過性を高められるので好ましい。このように本発明における表面シート1の抑制構造は、第1実施形態におけるナプキン10に示したエンボス部15及びその配置に限定されることなく、繊維の粗密構造による液の透過性を補完して液の拡散を抑制する構造として様々な形態を採用できる。
【0021】
表面シート1において、上層11と下層12とをしっかりと接合して十分な高さの突部14を形成し、液の拡散抑制と厚み方向への引き込み性に効果的な粗密構造と液の拡散を抑制する構造とするために、表面シート1の肌当接面側の面積(q1)に対する全エンボス部15の合計面積(q2)の比率(q2/q1)は、適用する物品の用途によっても多少異なるが、1/10〜3/4が好ましく、1/6〜2/3がさらに好ましい。上記の下限以上とすることで、液の拡散抑制と厚み方向への引き込み性を発現するために十分な毛管勾配を形成することができ、上限以下とすることで表面シート1が過剰に硬くなることを防止すると共に表面シート1に適切な厚みを与え、着用者に柔らかな装着感を提供することができる。
また、抑制構造と繊維の粗密構造とによる素早い液の引き込み性の観点から、突部14aの平均密度(m1)、突部14bの平均密度(m2)、及びエンボス部15の平均密度(m3)の比率(m1/m2/m3)は、3/4/5〜1/20/30が好ましく、2/4/5〜1/10/20がさらに好ましい。上記の下限以上とすることで、表面シート1の突部14aからエンボス部15へ毛管勾配が形成され、速やかに肌当接面側から体液を移行させることができ、上限以下とすることでエンボス部15が過度に圧縮され、硬くなることを防止することができる。
【0022】
次に、吸収体3について、図2及び5を参照して説明する。吸収体3は、全体としてパルプ繊維と吸水性ポリマーとの混合積繊物をコアラップシート(図示せず)で被覆してなる。吸収体3には、前記積繊物の坪量が相対的に高い高坪量部としての突出吸収部33と低坪量部としての凹部吸収部34とを有する。高坪量部である突出吸収部33は凹部吸収部34よりも相対的に高密度にされており、低坪量部である凹部吸収部34が突出吸収部34を囲むようにして平面方向に連続配置されている。以下に第1実施形態における吸収体3の構造を詳述する。
まず、吸収体3には、少なくとも排泄部対応領域において、吸収性素材(パルプ繊維、吸収性ポリマーなど)を非肌当接面側から厚み方向に少なくして空隙部分とした凹部31が配されている。凹部31は、その非肌当接面側の平面視、幅方向(X方向)及び縦方向(Y方向)に沿ってそれぞれ複数条を格子状に配して形成されている。そして、この凹部31の肌当接面側の底部にはパルプ繊維を含む凹部吸収部34が配されている。つまり凹部吸収部34は、吸収体3の肌当接面側に偏倚して配されている。この吸収体3の非肌当接面側で格子状に連続的に配される凹部31とこれに対応して吸収体3の肌当接面側で平面方向に連続的に広がる凹部吸収部34とが厚み方向に連係して吸収体内で液を素早く透過させる通液構造となる。
凹部31及び凹部吸収部34に囲まれた吸収体3の部分が非肌当接面側に突出したブロック状の突出吸収部33として区画されて形成されている。第1実施形態においては、突出吸収部33が凹部吸収部34よりも厚みがあり、その厚みの差により凹部吸収部34が低坪量部とされ突出吸収部33が高坪量部とされている。また、吸収体3の詳細な製造方法は後述するが、第1実施形態における突出吸収部33は凹部吸収部34より相対的に高密度である。吸収体3は、高密度な高坪量部としての突出吸収部33とこれより相対的に低密度な低坪量部としての凹部吸収部34とを有し、凹部吸収部34が吸収体3の肌当接面側に偏倚して突出吸収部33を囲むよう平面方向に連続的に配置されている。つまり、吸収体3の平面視、突出吸収部33からなる高密度な高坪量部が凹部吸収部34からなる低密度な低坪量部の中に存在する海−島構造である。また、吸収体3の肌当接面側において、凹部吸収部34と突出吸収部33の肌当接面側の部分とが平坦な形状をなし、凹部吸収部34や突出吸収部33を含む吸収体3全体は継ぎ目のない一体構造となる。
【0023】
突出吸収部33は、高密度な高坪量部としてパルプ繊維と吸水性ポリマーとを含んで排泄液を吸収保持する部分となる。第1実施形態の個々の突出吸収部33の形状は、物品縦方向(Y方向)に長さを持つブロック状の略直方体形状である。突出吸収体33の配置は、平面視において自然状態で互いに所定の隙間s,r(図5参照)を有するように縦横方向に整列配設された市松配列である。つまり、多数の突出吸収部33を長手方向及び幅方向に投影したときにいずれの方向にもその投影像が重なる配置にされている。吸収体3を上述したように縦横の凹部31によって区画されることにより、その部分において可撓部位となり、生理用ナプキン10が肌面の起伏にフィットする「身体適合性」、及び着用者の動きにも良好に追随して肌に対する部分的な隙間の発生を防止する「動作追随性」が極めて高くなる。なお、突出吸収部33の配置は、第1実施形態のものに限定されず、そのほか適宜用途や機能に応じて配列を選択することができ、例えば千鳥状配列(上記投影像が長手方向及び/又は幅方向にみて略半ピッチずれのある配置)であってもよい。また突出吸収部33の形状も、液の適切な吸収保持性を有するのであれば、第1実施形態の形状のほか任意の形状を採用可能である。
【0024】
凹部吸収部34は、繊維の密度が低くかつ厚みの薄さによる低坪量のため、液の通液抵抗が低く、液の圧力損失を損なわずに液を素早く吸収体の厚み方向に透過させることができる。また吸収体3の肌当接面側が平坦で、かつ凹部吸収部34が肌当接面側で平面方向に連続的に広がっていることで、液との接触が良く、液を広い範囲で素早く吸収体3内部に引き込むことができる。つまり、凹部吸収部34が導液路となり、表面シート1からの液をすばやく吸収体3内部に引き込むチャンバーとなる。さらに凹部吸収部34に囲まれ連接する突出吸収部33は、凹部吸収部34よりも高密度な高坪量部である。そのため、凹部吸収部34を通過した液は、凹部吸収部34と突出吸収部33との繊維の密度差あるいは密度勾配によって生じる毛管力によって突出吸収部33へと素早く取り込まれ厚み方向に移動して保持される。加えて、経血等などの高粘性の液が一度に多量に排泄されたり繰り返し排泄されたりした場合にも、一度に突出吸収部33で吸収保持できなくとも、凹部吸収部34と厚み方向に繋がる凹部31が一時的に液を保持する緩衝機能を果たし、高密度部分と低密度部分の境界領域では液を留め置かないように働く拡散作用をも果たす。しかも凹部31が吸収体3の非肌当接面側で連接されていることによって、表面シート1よりも遠い位置で液を移動させて各突出吸収部33で確実に吸収保持させることができる。このように凹部吸収部34と凹部31とからなる通液構造によって、液が表面シート1側から吸収体3内部に素早く取り込まれて突出吸収部33で確実に吸収保持され得る。これにより吸収体3の肌当接面側での液残りが抑制され、かつ吸収体3内部から表面シート1への液戻りが生じ難い。
【0025】
さらに吸収体3を有するナプキン10において、装着中にかかる厚み方向の圧力があても、経血等の排泄液が表面シート1側へ液戻りしにくくなる。このことは、吸収体3の肌当接面側、特に凹部吸収部34が表面シート1や吸収体3の肌当接面側に液を残さず、素早く厚み方向に引き込んで複数の突出吸収部33に保持・固定することが1つの要因である。これに加え、前述の凹部吸収部34から凹部31へと繋がる通液構造が、液の引き込みと移動とを促し液戻り抑制に効果的に作用する。具体的には、凹部吸収部34が液を保持することなく素早く凹部31へ引き込むこと、凹部31へ一旦引き込まれた液が吸収体3の肌当接面側よりも比較的遠い位置となること、凹部31が吸収体3の非肌当接面側で液を素早く移動させて突出吸収部33に吸収保持させるので凹部31自体の貯蔵量も多くならないことなどの複数の作用により生じるものと考えられる。また、凹部吸収部34の存在で凹部31にかかる圧力が和らげられるとともに、この圧力で凹部31での液の移動が促されることも要因のひとつと考えられる。さらに、吸収体3は、その肌当接面から非肌当接面までを高密度な突出吸収部33で支えられる形態であるため、厚み方向の圧力に対しての変形が起こり難く、液戻り抑制やヨレ防止に効果的である。このように吸収体3の表面シート1側に液を残さずに凹部31に素早く引き込むことで、厚み方向の圧力でも液の表面シート1側への戻りが効果的に抑制され、良好なドライ感が得られる。
【0026】
吸収体3において、凹部吸収部34が液の保持量を抑えて液を素早く凹部31へ移動させ、凹部31が排泄液の一時貯蔵の機能を有して表面シート1側へ液を逆戻りさせないために、低密度な低坪量部である凹部吸収部34の構成部材の平均密度(m4)は、0.02〜0.09g/cm3が好ましく、0.03〜0.08g/cm3がさらに好ましい。他方、確実な液の保持・固定のために、高密度な高坪量部としての突出吸収部33の構成部材の平均密度(m5)は、0.10〜0.25g/cm3が好ましく、0.10〜0.20g/cm3がさらに好ましい。なお突出吸収部33は、製造時の圧縮により高密度化される部分であるが、たとえその厚み方向に均一な密度が形成されなくとも、全体として凹部吸収部34よりも密度が高まっていればよく、凹部吸収部34の平均密度(m4)と突出吸収部33の平均密度(m5)との比率(m4/m5)は、0.80以下が好ましく、0.60以下がさらに好ましい。この比率(m4/m5)について、上限以下とすることで、凹部吸収部34ないしは凹部31において液を一時的に保持し、突出吸収部33との間に働く毛管力により、突出吸収部33が効率良く液を吸引・保持する吸収機構が発現される。また、同様の理由から、凹部吸収部34の構成部材の平均坪量(w1)は、10〜150g/m2であることが好ましく、20〜140g/m2であることがさらに好ましい。突出吸収部33の構成部材の平均坪量(w2)は、160〜400g/m2であることが好ましく、200〜350g/m2であることがさらに好ましい。さらに、両者の平均坪量比(w1/w2)は、0.01〜0.90であることが好ましく、0.10〜0.70であることがさらに好ましい。
さらに凹部31の深さ(h2)の吸収体3の厚み(突出吸収体33の厚み)(h1)に対する割合(%)(図2参照)は、20〜80%であることが好ましく、30〜70%であることがさらに好ましい。上記下限以上とすることで、表面シートへの液残りや液戻りをより効果的に抑制することができ、上限以下とすることで表面シートより受け取った液を広げすぎずに突出吸収部33へと移動させることができる。
【0027】
[突出吸収部33及び凹部吸収部34の平均密度の測定方法]
突出吸収部33及び凹部吸収部34の密度とは、吸収体3の構成部材であるパルプ繊維と高吸水性ポリマーとを併せた密度である。吸収体3を、凹部31の壁面底部31a,31aから厚み方向に延ばした仮想線t,t(図5(B)参照)で切断して、突出吸収部33と凹部吸収部34とし、これらをそれぞれ長さ50mm、幅5mmの大きさに切り出しサンプルを調製する。次いで、電子天秤(A&D社製電子天秤GR−300、精度:小数点以下4桁)を用いサンプルの質量を測定する。定圧式厚み計を用い、サンプル厚みを測定し、測定したサンプルの質量を、サンプルの体積(厚み×長さ×幅)で除して各々の領域における部位の全材料の密度を算出する。なお、低圧式厚み計の測定時圧力は0.5g/cm2で行う。平均密度は、サンプルを任意の箇所で10個調整して、その平均で求められる。
【0028】
[突出吸収部33及び凹部吸収部34の平均坪量の測定方法]
突出吸収部33の平均坪量(w2)及び凹部吸収部34の平均坪量(w1)の測定方法は、測定するそれぞれの部位の面積を予め測定し、その測定領域を前述の仮想線t,t(図5(B)参照)でカッターで切断してその切断部の質量を測定する。測定した質量を面積で除して、各々の密度領域の平均坪量を測定する。平均坪量は、サンプルを任意の箇所で10個調整して、その平均で求められる。
【0029】
[突出吸収部33と凹部吸収部34(及び凹部31)の厚みの測定]
まず、凹部31は吸収体3の底部から肌当接面側に窪んで空隙のある部分とし、凹部吸収部34は凹部31の上部に位置する吸収体3の素材からなる部分として区分できる(図5(B))。突出吸収部33は、厚み方向に並ぶ凹部31及び凹部吸収部34の低密度領域39に隣接して囲まれる吸収体3の素材からなる上部から底部までの部分として区分できる(図5(B))。この突出吸収部33と凹部吸収部34及び凹部31との境界は、凹部31の壁面底部31a,31aから厚み方向に延ばした仮想線t,tとして規定できる(図5(B))。
このように区分される凹部吸収部34の厚み(h3=h1−h2)(図2参照)と突出吸収部33の厚み(h1)(図2参照)の測定は、大きさ37mm×37mm、厚み3mmのアクリルプレートを吸収体3の上に置き、KEYENCE社製非接触式レーザー変位計(レーザーヘッドLK−G30、変位計LK−GD500を用い突出吸収部33の厚み(h1)を計測し、凹部吸収部34の厚み(h3)を吸収体の図2相当の断面をKEYENCE社製マイクロスコープVHX‐1000を用いることで計測できる。
【0030】
第1実施形態の吸収体3のように、整列配置されたブロック状の突出吸収部33が高密度な高坪量部をなし、これを囲むように整列配置された凹部吸収部34が低密度な低坪量部をなす場合、液残りや液戻りなく高い液透過性と液保持性とを実現するため以下の間隔で配置されることが好ましい。使用する吸収性物品の用途によっても多少異なるが、ブロック状の突出吸収部33の長手方向長さk1(図5(C)参照)は、凹部を基軸に吸収体が徐々に肌当接面へ向かって湾曲し、着用者の身体の形状に沿って変形することを促すという観点から10〜30mmが好ましく、15〜25mmがより好ましい。その幅方向長さk2は、凹部が着用中に吸収体に加わる幅方向からの圧縮力を緩和する観点から5〜20mmが好ましく、7〜15mmがより好ましい。また、凹部31の長手方向長さsは1〜5mmが好ましく、1〜3mmがより好ましい。幅方向長さrは1〜5mmが好ましく、1〜3mmがより好ましい。
本発明において吸収体は、第1実施形態のように突出吸収部33と凹部吸収部34とによる整列配置の構造に限定されず、低密度な低坪量部が高密度な高坪量部を取り囲み、肌当接面側から素早く液を透過させて液戻りや液残りなく吸収保持させる構造であれば任意の形状や配置を採用することができる。その場合、前記の寸法と同様の趣旨で、吸収体の肌当接面側において、低密度な低坪量部の面積(q3)と高密度な高坪量部の面積(q4)との比率(q3/q4)が、2/3〜1/6であることが好ましく、1/2〜1/5であることが好ましい。
【0031】
第1実施形態の生理用ナプキン10においては、前述のとおり、表面シート1の繊維の粗密構造及び液拡散の抑制構造と、吸収体3の高密度な高坪量部とこれを囲んで平面方向に広がる低密度な低坪量部を有する構造とによって、液残りなく表面シート1から吸収体3へと液を素早く効率よく引き渡し、吸収体3内で表面シート1から遠い位置で液を素早く吸収保持することができる。つまり、排泄時から液の吸収保持に至るまでの固定化スピードが高められる。加えて、厚み方向の圧力においても液の表面シート1側への戻りが極めて効果的に抑制され得る。これにより生理用ナプキン10においては良好なドライ感が得られる。
【0032】
ここで第1実施形態の生理用ナプキン10における上述した区画された吸収体3と表面シート1との組み合せによる動的作用の特徴を図6に基づき説明する。図6は、図1に示す生理用ナプキンの所定の断面の一部を拡大して示した一部断面図である。なお、図の煩雑化を避け、裏面シート2及びサイドシート4は示しておらず、表面シート1の形状については模式化して示している。
生理用ナプキン10に液a1が排泄されると、表面シート1においては上層11の突部14aと下層の突部14bとの繊維の粗密構造によって液a1が表面シート1の非肌当接面側へと引き込まれる(矢印b1)。また、抑制部としてのエンボス部15を含む抑制構造により液の平面方向への拡散が抑えられ、突部14aの側面からエンボス部15へと高まる密度差又は密度勾配によりエンボス部15へ向かって液が吸引され表面シート1の非肌当接面側へと素早く引き込まれる(矢印b2)。この構造により、少ない液量であっても吸収体3へと導かれやすく効果的に吸収体3へと受け渡される。また、吸収体3の肌当接面側が平坦な形状であることで、表面シート1の非肌当接面側にある液a1が吸収体3と広い面で接触しやすく引き込まれやすい。特に吸収体3の導液部である凹部吸収部34において、液が過度な拡散なく素早く引き込まれる。つまり液a1は、通液抵抗が低い凹部吸収部34をチャンバーとして素早く吸収体3の厚み方向に向かって吸収される。そして液a1は、その一部が密度の高い突出吸収部33,33へ向かって移行し(矢印b3)、他の一部が凹部31に一時保持される(矢印b4)。このように、表面シート1から引き渡された液が凹部吸収部34で引き込まれ、矢印b3やb4へと分散されることで、吸収体の表面側での保持量を減少させ通液抵抗が更に低くなることとなる。これにより表面シート1への液戻りも効果的に抑制され得る。
このように第1実施形態における生理用ナプキン10は、厚み方向への液の高い引き込み性を有した表面シート1の性能を、吸収体3の高い厚み方向への液の透過性によって十分に発揮させることができ、これにより取り込んだ水分の肌への液戻りを抑え、好適なドライ感を使用者に与える効果を奏する。
【0033】
第1実施形態の生理用ナプキン10において、表面シート1と吸収体3との間で効率よく液の引き渡しがなされるよう、表面シート1の抑制部である複数のエンボス部15が吸収体3の低坪量部である凹部吸収部34及び高坪量部である突出吸収部33に亘って配置されることが好ましく、凹部吸収部34と厚み方向に重なる配置が多くあることがより好ましい。特にナプキン10の排泄部対応領域において、排泄液を直接受ける物品幅方向(X方向)の中央部において、複数のエンボス部15が物品縦方向(Y方向)に点在配置されて列をなし、このエンボス部15の列と吸収体3の凹部吸収部34とが厚み方向に重なる配置であることがさらに好ましい。この配置とすることで、液を拡散させることなく、直接受けた液を吸収体3へと素早く引き渡して吸収体3内部へと引き込み吸収保持させることができる。また物品縦方向(Y方向)においてエンボス部15の列と吸収体3の凹部吸収部34とが重なることで、液の吸収過程における幅方向への拡散を効果的に抑えることができる。これにより、表面シート1上の液残りや内部からの液戻りが効果的に抑制され、また幅方向端部での液漏れが生じ難くなり、良好な装着感が提供される。
【0034】
さらに第1実施形態の生理用ナプキン10は、表面シート1から吸収体3への液の効率的な引き渡しのため、表面シート1の突(ドーム状)部14と吸収体3の高坪量部(突出吸収部33)とは、以下の構造を形成することが好ましい。表面シート1の突部14は、着用者の肌と接し排泄された液を受け取り易く確実に受け渡すためには、吸収体3の高坪量部と重なる位置に配されていることが好ましい。また、多量の液を受け渡す際には、低坪量部(凹部吸収部34)による液拡散機能を発現しやすいように、表面シート1の突部14は、吸収体3の低坪量部に隣接して配されていることが好ましい。そのため、表面シート1の突部14と吸収体3の高坪量部とは、任意の断面において吸収体3の低坪量部と隣接する表面シート1の突部14の間に吸収体3の高坪量部にのみに重なる表面シート1の突部14が0〜3個であることが好ましく、より好ましくは0〜2個が好ましい。表面シート1の裏面側の形状は、平面的に透かし見た平面視において前記表面シート1の突部14に隣接し、吸収体3との間に(断面視で)隙間が形成されていると、液の吸収体3への受渡し性と多量排出時の液の吸収体3の低坪量部への導液が起こり易い点でより好ましい。また、表面シート1から吸収体3内部まで液残りなく素早く液を透過させて内部で吸収保持し液戻りを抑制するために、表面シート1の突部14aの平均密度(m1)<突部14bの平均密度(m2)<エンボス部15の平均密度(m3)<吸収体3の凹部吸収部34の平均密度(m4)<突出吸収部33の平均密度(m5)であることが好ましい。
【0035】
第1実施形態の吸収体3は、前述のとおり、液を保持して液戻りし難い吸水性ポリマーを含有することが好ましい。表面シート1上への液戻りをより効果的に抑制するため、該吸水性ポリマーは、凹部吸収部34よりも突出吸収部33の部分に多く偏倚して配されるのが好ましく、凹部吸収部34に配されずに突出吸収部33においてその非肌面側に多く偏倚して配されることがさらに好ましい。また、凹部31の非肌面側に吸水性ポリマーを配することも同様の観点から好ましい。
【0036】
第1実施形態の生理用ナプキン10において、その排泄部対応領域の幅方向両端にある2条の条溝7,7は、その位置において吸収体3の複数の突出吸収部33と凹部吸収部34とを物品縦方向(Y方向)に繋ぐように配設されることが好ましい。こうすることでナプキン10装着時に、着用者の足の付け付近において、突出吸収部34同士のせん断による形状崩れが防止され、幅方向からの液漏れを抑え得る。また、ナプキン10装着時に条溝7,7が折れ曲がり部となって着用者の体にフィットさせ易く、吸収体3の幅方向中央部分の突出吸収部33へ不要な負荷が掛かり難くなる。その結果、幅方向中央部分の液を多く保持する突出吸収部33の形状が崩れ難く液漏れがさらに防止され得る。また、凹部31が条溝7の幅方向外方の部分にまで延在して配されることが好ましい。この配置によって、条溝7は必ず突出吸収部33と吸収体凹部34を跨ぐように配置されることから、条溝7と吸収体凹部34とが重なる部分は条溝7と突出吸収部33が重なる部分よりも柔らかくなるため、製品の幅方向を軸とした製品曲げ剛性が低減され、股間から臀部にかけて着用者の身体のカーブに合わせて変形しやすくなるとともに、横漏れを起こし易い吸収体3両側部にも可撓性を付与し、着用者の股下にフィットさせることができ、着用者の体の動きにも追従して隙間が生じるのを防ぐことができる。
本発明における条溝7では、表面シート1と吸収体における固定をおこなうことができるため、特に条溝7間において上記効果に加えて、表面シート1と吸収体3に隙間が生じにくい。また、従来は表面シート1と吸収体3の間にホットメルト型粘着剤等を用いて固定して吸収性(特に液通過性)を高めることが通常実施されているが、表面シート1が伸縮機能を有する場合、装着者の肌と表面シート1のこすれを起こし易くなるため、本発明の条溝7によって固定された形態を用いると、粘着剤等の使用量を減少することができる。具体的には粘着剤の塗工ピッチを大きくすることで固定面積を減少したり、粘着剤を使用しないようにしながら、フィット性と吸収性を維持することが可能となる。
【0037】
次に、本発明の吸収性物品の他の実施形態(第2実施形態)としての生理用ナプキン20について、図7を参照しながら説明する。第2実施形態の生理用ナプキン20は、第1実施形態の生理用ナプキン20とは表面シートのみが異なる構成である。そのため以下の説明においては、第1実施形態と相違する表面シートを中心に説明し、その他の点は第1実施形態についての説明が適宜適用される。
図7は、吸収体3の肌当接面側に表面シート80を配した生理用ナプキン20の所定の断面の一部を拡大して示した一部断面図であり、第1実施形態の図6に相当する図である。表面シート80は、単層の繊維構造からなり、肌当接側面が多数のドーム状の突部84と厚み方向に窪んで谷部となるエンボス部85とを有する凹凸形状であり、非肌当接側面が平坦な形状である。
【0038】
表面シート80における繊維の粗密構造は、エンボス部85に囲まれた非エンボス領域において、肌当接面側の突部84が非肌当接面側の平坦部82よりも相対的に低密部された構造である。突部84は、構成繊維に含まれる熱伸長性繊維が熱風吹き付け等の熱処理によって伸長しながら厚み方向に隆起することで形成される。熱風吹き付け等熱処理は、エンボス処理等による複数のエンボス部85の形成後なされる。エンボス部84により繊維の一部が固定されているため、熱処理による熱伸長性繊維の伸長力は、エンボス部85に囲まれた領域において厚み方向に隆起するように作用する。また隆起した熱伸長性繊維は熱風で互いの繊維の交点が熱融着し、その熱融着点が隆起した部分の内部において三次元的に点在する。これにより、伸長した熱伸長性繊維の繊維間距離が拡大したドーム状の低密度な突部84が形成される。突部84において、ドームの頂点84aが最も繊維密度が低く、厚み方向に非肌面側に向かうにつれ密度が高められている。また、エンボス部34で繊維が固定されていることで、突部84の頂点84aからドームの側面に沿いエンボス部85に向かって高められる繊維の密度勾配が形成されている。これにより、排泄液を素早く厚み方向に透過させて吸収体3へと引き込むことができる。この繊維の粗密構造は、少なくとも排泄部対応領域に配されることが好ましい。なお具体的な製造方法は、例えば特開2005−350836号等に記載の方法を採用することができる。
【0039】
表面シート80の粗密構造において、液を素早く表面シート80の非肌当接面側へと引き込むため、突部84の平均密度(m31)と平坦部82の平均密度(m32)との比率(m31/m32)は、4/5〜1/10が好ましく、3/4〜1/5がさらに好ましい。上記の下限以上とすることで、表面シート1の突部14aからエンボス部15へ毛管勾配が形成され、速やかに肌当接面側から体液を移行させることができ、上限以下とすることでエンボス部15が過度に圧縮され、硬くなることを防止することができる。この平均密度(m31,m32)は、前述の表面シート1で用いた測定方法で測定することができる。
【0040】
表面シート80の液拡散の抑制構造は、突部84よりも窪んだ谷部となるエンボス部85及びその複数のエンボス部85の配置による表面シート80の構造である。各エンボス部85は、表面シート80と同様に、他のエンボス部85とは離間して独立の谷部を形成しており、谷部にある液が他の谷部に移動し難い構造となっている。これにより、表面シート80が受け取った液を平面方向に拡散させず、かつ高い毛管力により吸収体3へと排泄液を効果的に素早く透過させることができる。エンボス部85の形状は、表面シート1の場合と同様に小円形でもよく、直線や曲線、十条形状、楕円形等でもよく、閉じた形状であれば任意に採用することができる。またその配置も、表面シート1と同様に略千鳥格子状や格子状配置であってもよく、前記の粗密構造による毛管力を補うよう的確に液を捉えて引き込んで液残りさせない任意の配置を採用することができる。
この表面シート80の抑制構造が、前記の粗密構造と協働して、排泄液を過大に拡散させることなく素早く透過させて吸収体3へと効率よく引き渡すことができる。これにより、表面シート80の肌側面では液残りと液戻りが抑制され、着用者に良好な装着感が提供される。そしてこの表面シート80を有する生理用ナプキン20においても、生理用ナプキン10と同様に、表面シート1の繊維の粗密構造及び液拡散の抑制構造と、吸収体3の高密度な高坪量部とこれを囲んで平面方向に広がる低密度な低坪量部を有する構造とによって、液残りなく表面シート80から吸収体3へと液を素早く効率よく引き渡し、吸収体3内で表面シート80から遠い位置で液を素早く吸収保持することができる。
【0041】
表面シート80において、前述のとおり十分な高さの突部84を形成し、液の拡散抑制と厚み方向への透過性に効果的な粗密構造と液の抑制構造とするために、表面シート80の肌当接面側の面積(q31)に対する全エンボス部85の合計面積(q32)の比率(q31/q32)は、適用する物品の用途によっても多少異なるが、1/20〜1/2が好ましく、1/10〜1/3がさらに好ましい。上記の下限以上とすることで、表面シート80の突部14aからエンボス部15へ毛管勾配が形成され、速やかに肌当接面側から体液を移行させることができ、上限以下とすることでエンボス部15が過度に圧縮され、硬くなることを防止することができる。
また、抑制構造と繊維の粗密構造とによる素早い液の透過性の観点から、突部84の平均密度(m31)、平坦部82の平均密度(m32)、及びエンボス部85の平均密度(m33)の比率(m31/m32/m33)は、4/5/12〜1/10/30が好ましく、3/4/6〜1/5/20がさらに好ましい。上記の下限以上とすることで、表面シート80の突部14aからエンボス部15へ毛管勾配が形成され、速やかに肌当接面側から体液を移行させることができ、条件以下とすることでエンボス部15が過度に圧縮され、硬くなることを防止することができる。
【0042】
さらに第2実施形態の生理用ナプキン20は、表面シート80から吸収体3への液の効率的な引き渡しのため、表面シート80の突部84と吸収体3の高坪量部(突出吸収部33)が、任意の断面において吸収体3の低坪量部(凹部吸収部34)と隣接する表面シート80の突部84の間に吸収体3の高坪量部にのみに重なる表面シート1の突部84が0〜3個であることが好ましく、より好ましくは0〜2個が好ましい。表面シート80から吸収体3内部まで液残りなく素早く液を透過させて内部で吸収保持し液戻りを抑制するために、表面シート80の突部84の平均密度(m31)<平坦部82の平均密度(m32)<エンボス部85の平均密度(m33)<吸収体3の凹部吸収部34の平均密度(m4)<突出吸収部33の平均密度(m5)であることが好ましい。
【0043】
次に、第1実施形態及び第2実施形態で用いられる吸収体3の好ましい製造方法について図8〜10を参照して説明する。なお、吸収体3の形状、凹部31及び突出吸収部33の数や形状、配置等は模式化して図示している。
図8は、生理用ナプキン10の吸収体3の製造に好ましく用いられる吸収体の製造装置60を示す図である。製造装置60は、外周面に複数のポケット9(堆積部)がます目状に区切られた積繊プレートを有する回転ドラム62(図9(a−1)参照)と、回転ドラム62の外周面に向けて、繊維材料Sを飛散状態にて供給するダクト63と、ダクト63に繊維材料Sを供給する繊維材料供給部64と、ポケット9にあふれるように堆積させた過剰量の繊維材料を掻き取るスカッフィングロール65と、ポケット9から離型した堆積体(吸収体前駆体)70の上下面をコアラップシートで被覆する被覆機構(図示せず)と、吸収体前駆体70をコアラップシートで被覆して得られる吸収体連続体を、一対のプレスロール66a,66b間で加圧して圧縮する圧縮装置66と、圧縮後の吸収体連続体を、個々の生理用ナプキンに使用される寸法に切断して加工後の吸収体3とする切断装置(図示せず)を備えている。
【0044】
回転ドラム62は、円筒状をなし、図8中の矢印A方向に一定速度で回転駆動される。回転ドラム62の内側(回転軸側)の非回転部分には、吸気ファン(図示せず)が接続されており、該吸気ファンの駆動により、回転ドラム内側の仕切られた空間B及びEが負圧に維持される。外周面にある個々のポケット9の底面部には、メッシュプレートが配設され(図示せず)、多数の細孔を有している。個々のポケット9が、負圧に維持された空間B,E上を通過している間、各ポケット9の底面部の細孔が吸引孔として機能する。
【0045】
ダクト63は、回転ドラム62の外周面の一部を覆う吹き出し端部63aと、繊維材料供給装置64に接続された吹き込み端部63bとを有しており、空間B上に位置するポケット9の底面部からの吸引により、ダクト63内に、回転ドラム62の外周面に向けて流れる空気流が生じさせるように構成されている。繊維材料供給部64は、解繊機64eを備えており、ラチス64dにある原料S’が解繊機64eで解繊され、解繊された繊維材料Sをダクト63内に供給するように構成されている。
【0046】
スカッフィングロール65は、周囲にブラシを有しており、該ブラシにより、ポケット62内からあふれた繊維材料Sを掻き取る。スカッフィングロール65に掻き取られずポケット9内に残った堆積体(吸収体前駆体)70は、回転ドラム62の下方においてポケット9から離型される。ポケット9からの離型は、回転ドラム62内の仕切られた空間Dを図示しない加圧手段により陽圧に維持して、ポケット9の底面部の細孔から空気を吹き出させると共に、バキュームコンベア67側から吸引することにより行う。前記被覆機構は、バキュームコンベア67上に、コアラップシートを供給する公知の搬送機構と、コアラップシート上に堆積体(吸収体前駆体)70が載置された後に、該コアラップシートの両側部を、該堆積体(吸収体前駆体)70上に折り返し、その折り返しにより、堆積体(吸収体前駆体)70の上下両面をコアラップシートで被覆する機構とで構成されている。なお、図8において折り返しの工程の詳細は省略しており、折り返されたコアラップシートの状態も2本の線として単純に示している。
【0047】
図8に示す吸収体の製造装置60を用いて、上述した吸収体3を製造する方法について説明する。
まず、回転ドラム62及びスカッフィングロール65を回転させると共に、上記吸気ファン及び上記加圧手段を作動させて、空間B及びEを負圧にし、空間Dを陽圧にする。また、バキュームコンベア67、圧縮装置66及び上記切断装置を作動させる。吸気ファンの作動により、空間B上に位置するポケット9の底面部に吸引力が生じると共に、ダクト63内に、回転ドラム62の外周面に向けて流れる空気流が生じる。そして、繊維材料供給装置64を作動させて、ダクト63内に繊維材料S(パルプ繊維41及び高吸水性ポリマー42)を供給すると、該繊維材料Sは、飛散状態となって、ダクト63内を流れる空気流に載って、回転ドラム62の外周面に向けて供給される。
【0048】
個々のポケット9が、負圧に維持された空間B上を通過している間、ダクト63から供給される繊維材料Sが各ポケット9に吸引されて堆積する(図9(a−1)及び(a−2)参照)。この点について図9(a−2)を参照して説明すると、回転ドラム62の外周面にある積繊プレートにおいて、複数の仕切り91をより分けてパルプ繊維と吸水性ポリマーとの混合物が積繊され、さらに仕切り91の高さを超えて回転ドラム62の高さいっぱいにまで積繊される。各ポケット9には、やや過剰量の繊維材料を堆積させ、ポケット9内からあふれる繊維材料がスカッフィングロール65で掻き取られる。スカッフィングロール65に掻き取られずポケット9内に残った堆積体(吸収体前駆体)70は、バキュームコンベア67上に供給されたコアラップシート(図示せず)上に離型される(図9(b)参照)。図10は、コアラップシート上に離型された(吸収体前駆体)70を示す図であり、該堆積体(吸収体前駆体)70には、ポケット9内の複数の溝部9aに対応する複数の凸状部33Aが形成されている。吸収体前躯体70のうち、仕切り91の上に堆積した部分が吸収体3の凹部吸収部34となり、仕切り91が配されていた部分が吸収体3の凹部となる。
コアラップシート上の堆積体(吸収体前駆体)70は、折り返されたコアラップシートの両側部により凸状部33Aを有する面も被覆された後、ベルトコンベアにより吸収体全躯体70が反転し、の表裏が圧縮装置6に導入されて一対のプレスロール66a,66b間で加圧される(図9(c)参照)。これにより、凸状部33Aがつぶされて圧蜜化し、高密度な部分となる。凸状部33Aがつぶされた後の吸収体連続体は、図示しない切断手段で切断されて、個々の生理用ナプキンに使用される寸法の吸収体3となる。得られた吸収体3においては、吸収体全躯体70の凸状部33Aを圧蜜化した部分が、高密度な高坪量部としてのブロック状の突出吸収部33となる。
生理用ナプキン10及び20は、このようにして得られる吸収体3を、表面シート1の帯状原反と裏面シート2の帯状原反との間に間欠的に配置した後、吸収体3の周囲において、それらの表裏面シート間を接合し、次いで、個々の生理用ナプキンの寸法に切断することにより得られる。
【0049】
次に、第1実施形態の生理用ナプキン10及び第2実施形態の生理用ナプキン20を構成する部材の形成素材について説明する。
【0050】
第1実施形態の生理用ナプキン10を構成する表面シート1は、上層11及び下層12の2層の繊維層からなる。
上層11としては、例えば、カード法によって形成されたウェブや嵩高な不織布が好ましく用いられる。カード法によって形成されたウェブとは、不織布化される前の状態の繊維集合体のことである。つまり、不織布を製造する際に用いられるカードウエブに加えられる後処理、例えばエアスルー法やカレンダー法による加熱融着処理が施されていない状態にある、繊維同士が極めて緩く絡んでいる状態の繊維集合体のことである。カード法によって形成されたウェブを上層11として用いる場合には、上層11と下層12とを接合させると同時に又は接合させた後、上層11及び下層12中の繊維同士を熱融着させる。また、嵩高な不織布としては、エアスルー不織布、エアレイド不織布、レジンボンド不織布等が挙げられる。上層11の構成繊維は、実質的に熱収縮性を有しないものか、又は下層12の構成繊維の熱収縮温度以下で熱収縮しないものであることが好ましい。上層11の坪量は、充分な密度勾配を形成する観点及び表面シート1の肌触りを良好にする観点から、好ましくは10〜50g/m2、更に好ましくは15〜40g/m2である。
【0051】
下層12としては、カード法によって形成されたウェブや熱収縮性を有する不織布を用いることができる。下層12の構成繊維としては、熱可塑性ポリマー材料からなり、かつ、熱収縮性を有するものが好適に用いられる。そのような繊維の例としては、潜在捲縮性繊維が挙げられる。下層12中の潜在捲縮性繊維の含有割合は40〜100重量%であることが好ましい。潜在捲縮性繊維は、加熱される前においては、従来の不織布用の繊維と同様に取り扱うことができ、かつ、所定温度で加熱することによって螺旋状の捲縮が発現して収縮する性質を有する繊維である。
【0052】
潜在捲縮性繊維は、例えば、収縮率の異なる2種類の熱可塑性ポリマー材料を成分とする偏心芯鞘型又はサイド・バイ・サイド型の複合繊維からなる。その例としては、特開平9−296325号公報や特許第2759331号公報に記載のものが挙げられる。下層12は、例えば、このような潜在捲縮性繊維を含ませておき、上層11及び下層12との熱融着と同時に又はその後に、加熱により該繊維の捲縮を発現させ、収縮させることができる。下層12の坪量は、好ましくは10〜50g/m2、更に好ましくは15〜40g/m2である。
【0053】
これらの上層11及び下層12から構成される表面シート1は、その坪量が好ましくは20〜100g/m2、更に好ましくは35〜80g/m2である。表面シート1には、多数の凹凸部が形成されているので、該シート1は厚みが大きく嵩高なものになっている。
【0054】
第2実施形態の生理用ナプキン20を構成する表面シート80は、単層の繊維構造からなる。表面シート80の構成繊維として、加熱によってその長さが伸びる繊維(以下、この繊維を熱伸長性繊維という)を用いたことによって特徴付けられる。熱伸長性繊維としては、例えば加熱により樹脂の結晶状態が変化して伸びたり、あるいは捲縮加工が施された繊維であって捲縮が解除されて見かけの長さが伸びる繊維が挙げられる。特に好ましく用いられる熱伸長性繊維としては、配向指数が40%以上の第1樹脂成分と、該第1樹脂成分の融点より低い融点又は軟化点を有し且つ配向指数が25%以下の第2樹脂成分とからなり、第2樹脂成分が繊維表面の少なくとも一部を長さ方向に連続して存在している複合繊維(以下、この繊維を熱伸長性複合繊維という)が挙げられる。
【0055】
表面シート80は、熱伸長性複合繊維のみからなるものであってもよく、熱伸長性複合繊維と他の繊維との混合であってもよい。表面シート80が熱伸長性繊維と他の繊維との混合である場合、その繊維としては、熱伸長性複合繊維の熱伸長発現温度よりも高い融点を有する熱可塑性樹脂からなる繊維や、本来的に熱融着性を有さない繊維(例えばコットンやパルプ等の天然繊維、レーヨンやアセテート繊維など)が挙げられる。当該他の繊維は、表面シート80中に好ましくは5〜50重量%、更に好ましくは20〜30重量%含まれる。一方、熱伸長性複合繊維は、表面シート80中に50〜95重量%、特に70〜95重量%含まれることが、立体的な凹凸形状を効果的に形成し得る点から好ましい。立体的な凹凸形状を更に効果的に形成し得る点から、特に好ましくは、熱伸長性複合繊維のみからなる。
【0056】
熱伸縮性複合繊維は、例えば高速溶融紡糸法によって製造され、芯鞘型のものやサイド・バイ・サイド型のものを用いることができる。芯鞘型の熱伸長性複合繊維としては、同芯タイプや偏芯タイプのものを用いることができる。特に同芯タイプの芯鞘型であることが好ましい。この場合、第1樹脂成分が芯を構成しかつ第2樹脂成分が鞘を構成していることが、熱伸長性複合繊維の熱伸長率を高くし得る点から好ましい。第1樹脂成分及び第2樹脂成分の種類に特に制限はなく、繊維形成能のある樹脂であればよい。特に、両樹脂成分の融点差、又は第1樹脂成分の融点と第2樹脂成分の軟化点との差が10℃以上、特に20℃以上であることが、熱融着による不織布製造を容易に行い得る点から好ましい。熱伸長性複合繊維が芯鞘型である場合には、鞘成分の融点又は軟化点よりも芯成分の融点の方が高い樹脂を用いる。第1樹脂成分と第2樹脂成分との好ましい組み合わせとしては、第1樹脂成分をポリプロピレン(PP)とした場合の第2樹脂成分としては、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレンプロピレン共重合体、ポリスチレンなどが挙げられる。また、第1樹脂成分としてポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などのポリエステル系樹脂を用いた場合は、第2成分として、前述した第2樹脂成分の例に加え、ポリプロピレン(PP)、共重合ポリエステルなどが挙げられる。更に、第1樹脂成分としては、ポリアミド系重合体や前述した第1樹脂成分の2種以上の共重合体も挙げられ、また第2樹脂成分としては前述した第2樹脂成分の2種以上の共重合体なども挙げられる。これらは適宜組み合わされる。これらの組み合わせのうち、ポリプロピレン(PP)/高密度ポリエチレン(HDPE)を用いることが好ましい。この理由は、両樹脂成分の融点差が20〜40℃の範囲内であるため、不織布を容易に製造できるからである。また繊維の比重が低いため、軽量でかつコストに優れ、低熱量で焼却廃棄できる不織布が得られるからである。
【0057】
表面シート1及び80は、上述した形態に制限されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更が可能である。例えば、表面シート1は単層又は3層以上の繊維構造の繊維シートから構成されていてもよく、表面シート80は2層以上の繊維構造の繊維シートから構成されていてもよい。3層である場合、中層13を熱収縮性を有する繊維で構成し、上層11及び下層12を熱収縮性を有しない繊維から構成することが望ましい。また液の透過性を高める観点から、上層11の坪量が下層12の坪量よりも大きいことが望ましい。また、熱収縮による突部14の形成によらず表面シートの肌当接面側と非肌当接面側との繊維長の違いにより形成される突部を有する表面シートも好ましい。このようにすることで表面シートの剛性を下げることができ、好適な装着感を得ることができる。
【0058】
吸収体3の構成材料としては、特に制限はないが繊維材料、多孔質体、それらの組み合わせなどを用いることができる。繊維素材としては例えば、木材パルプ、コットン、麻などの天然繊維、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオフィレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール樹脂等の合成樹脂からなる単繊維、これらの樹脂を2種以上含む複合繊維、アセテートやレーヨンなどの半合成繊維を用いることができる。合成繊維からなる繊維を用いる場合、該繊維は熱によって形状が変化する熱収縮繊維であってもよい。例えば、熱によって繊度は大きくなるが繊維長が短くなるものや、繊度はほとんど変化しないが、形状がコイル状に変化することでみかけの繊維の占有する長さが短くなるものであってもよい。多孔質体としては、スポンジ、不織不、高吸水性ポリマーの凝集物(高吸水性ポリマーと繊維とが凝集したもの)などを用いることができる。
【0059】
裏面シート2は、透湿性フィルム単独、又はフィルムと不織布の貼り合わせ、撥水性の不織布(SMSやSMMS等)を用いることができる。コスト面やズレ止め粘着剤とのマッチングなどから、透湿フィルム単独を防漏材として用いることが最も好ましい。この場合のフィルム材としては、熱可塑性樹脂と、これと相溶性のない無機フィラーを溶融混練して押し出したフィルムを所定の寸法に延伸して微細孔をあけたフィルム、または、本質的に水分の相溶性が高く、浸透膜のように水蒸気排出可能な無孔性のフィルムが挙げられる。本発明に関わる湿度排出の性能を十分に発現し、かつ、水分のにじみ出しがない防漏層を具現化するには、透湿度は、0.7〜3.0g/100cm2hrの範囲にあることが好ましく、1.0〜2.5の範囲にあることが更に好ましい。さらっと感を十分に高める観点からは1.5〜2.5にあることが最も好ましい。また、フィルムの破れ等のトラブルなく使用可能であるためには、フィルム坪量は18〜70g/m2、より好ましくは25〜60g/m2である。また好ましい無機フィラー配合量は、フィルム全体の質量に対するフィラーの質量%として30〜65質量%、より好ましくは40〜60質量%である。
【0060】
サイドシート4は撥水性の不織布が好ましく、カード法により製造された不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、スパンレース不織布、ヒートロール不織布、ニードルパンチ不織布等の中から撥水性の物、または撥水処理した種々の不織布を用いることができる。特に好ましくは、例えば、スパンボンド不織布、スパンボンド−メルトブローン(SM)不織布、スパンボンド−メルトブローン−スパンボンド(SMS)不織布等が用いられる。
【0061】
本発明において、表面シートの粗密構造及び抑制構造は、液を平面方向に拡散させずに素早く吸収体へと引き渡しうる機能的な構造を意味し、上記の実施形態のも限定されない。また本発明において、吸収体の高密度な高坪量部とこれを囲む低密度な低坪量部との構造は、低密度な低坪量部で液を引き込んで高密度な高坪量部で吸収保持する機能的な構造を意味し、上記の実施形態のものに限定されない。例えば、明確な突出吸収部でなくてもよく、突出吸収部が凹部の区画で整列配置されているものでなくてもよい。高密度な高坪量部及び低密度な低坪量部の構造は、吸収体の排泄部対応領域のみに配されていてもよく、排泄部対応領域から前方領域まで又は排泄部対応領域から後方領域までに配されていてもよい。
また本発明の吸収性物品は、上記の実施形態に制限されるものではなく、例えば失禁パッド、失禁ライナ等に本発明を適応することができる。また、経血に限らずその他、尿、オリモノ、軟便等に対しても効果的である。また、表面シート1、吸収体3、裏面シート2及びサイドシート4の他にも用途や機能に合わせ適宜部材を組み込んでもよい。なお、上記実施形態の生理用ナプキンの表面シート1、吸収体3及び裏面シート2の材料、製法における条件や、製品の寸法諸言は特に限定されず、通常の吸収性物品において用いられている各種材料を用いることができる。
【実施例】
【0062】
以下に、本発明について実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明がこれにより限定して解釈されるものではない。
【0063】
[実施例1]
花王株式会社の市販の生理用ナプキン(商品名「ロリエエフ 多い昼〜ふつうの日用」)から表面シート及び吸収体を取り除き、下記の表面シート及び吸収体を配置し、他を復元して、評価用の生理用ナプキンのサンプルとした。
(1)表面シート(第1実施形態における表面シート)の製造
(上層)
非熱収縮性融着繊維として、大和紡績株式会社製の芯鞘型複合繊維(商品名NBF−SH、芯:ポリエチレンテレフタレート、鞘:ポリエチレン、芯/鞘重量比=5/5、繊度2.2dtex、繊維長51mm)を用いた。この繊維をカード機を用いて解繊しウエブとなし、次いでこれをエアスルー方式で熱処理(120℃)し坪量20g/m2のエアスルー不織布を得た。
(下層)
潜在捲縮性繊維(エチレン−プロピレンランダム共重合体を芯成分とし、ポリプロピレンを鞘成分とした熱収縮性を示す芯鞘型複合繊維、繊度2.2dtex、大和紡績株式会社製、捲縮開始温度90℃)を原料として用いて、上層繊維層と同様にカードウエブを製造した。得られたカードウエブの坪量は20g/m2であった。
(表面シート)
前記上層と下層を重ね合わせ、彫刻ロールと平滑ロールとの組合せからなる熱エンボスロール装置に通し、両層を部分的に接合し一体化し不織布を得た。この際、彫刻ロールを第2繊維層に当接させ、第2繊維層の側からエンボス加工が行われるようにした。彫刻ロールは175℃に、平滑ロールは125℃に設定されていた。彫刻ロールのエンボスパターンは、いわゆる千鳥格子状のパターンであり、個々のエンボス点が円形(エンボス面積0.047cm2)で且つ機械方向に沿うエンボス点の距離(ピッチ)は7mm、横方向に沿うエンボス点の距離(ピッチ)は7mm、斜め45°の方向に沿うエンボス点の距離は5mmであった。この時点でのエンボス面積率は7.2%であった。
得られた不織布を130℃に加熱した熱乾燥機内にて1〜3分間熱処理することで両面に突部を有する表面シートを得た。肌当接面側にある突部の繊維密度(m1)は0.04g/cm3であり、非肌当接面側にある突部の繊維密度(m2)は0.10g/cm3であり、エンボス部の繊維密度は0.70g/cm3であった。また表面シートの表面積(q1)に対するエンボス部の合計面積(q2)の割合(q2/q1)は、0.29であった。
【0064】
(2)吸収体の製造
図8で示した製造装置を用いて、突出吸収部の坪量200g/m2、凹部吸収部の坪量52g/m2のパルプ繊維及び高吸水性ポリマーの積繊体を得た(図5(c))。この積繊体をコアラップシートで被覆し、一対のプレスロール間に通して、3.0kgf/cm2の圧力で圧縮して吸収体を得た。この吸収体における、突出吸収部の平均密度(m5)は、0.12g/cm3であり、凹部吸収部の平均密度(m4)は、0.08g/cm3であった。高密度領域38の平均坪量(w2)は240g/m2であり、低密度領域39の平均坪量(w1)は100g/m2であった。また、凹部吸収部34の厚み(h3)は1.2mmであり、突出吸収部33の厚み(h1)は2.0mmであった。突出吸収部33の縦方向長さk1は20mmであり幅方向長さk2は10mmであり、凹部31の縦方向長さsは2.0mmであり幅方向長さrは1.0mmであった。
【0065】
[実施例2]
実施例1におけるサンプルの表面シートを下記のものに変えたサンプルとした。
・表面シート(第2実施形態における表面シート)の製造
繊維径4dtex熱伸長率8%の芯鞘型複合繊維(芯がポリプロピレン、鞘がポリエチレン)をカード機に通してウェブとし、該ウエブを、ヒートエンボス装置に導入して、該ウエブに線状の格子柄エンボスを形成した。次いで、そのウエブを、熱風吹き付け装置に導入し、エアスルー加工による熱風処理を行い、繊維は熱伸長して、線状のエンボスの近傍に繊維並列起立部を有する表面シートであった。
【0066】
[比較例1]
実施例1におけるサンプルの吸収体を下記のものに変えたサンプルとした。
花王株式会社の上記の市販の生理用ナプキンを、比較例の生理用ナプキンとして用いた。この市販の生理用ナプキンの吸収体には、直径2mmの円形のエンボス部が全域に亘って千鳥状に形成されていた。エンボス部の中心点間のピッチは7mmである。坪量(目付)は200g/m2であった。
【0067】
[比較例2]
実施例2におけるサンプルの吸収体を下記のものに変えたサンプルとした。
花王株式会社の上記の市販の生理用ナプキンを、比較例の生理用ナプキンとして用いた。この市販の生理用ナプキンの吸収体には、直径2mmの円形のエンボス部が全域に亘って千鳥状に形成されていた。エンボス部の中心点間のピッチは7mmである。坪量(目付)は200g/m2であった。
【0068】
[性能評価]
<吸収速度の測定方法>
吸収速度(D/W法)の測定方法は次のとおりである。測定には図11に示す装置を用いる。この装置は、横コック付きビュレットを備えている。ビュレットの内径は10.4mm、容積は50mLであり、目盛りが付されている。ビュレットの上端開口部にはゴム栓(シリコン栓でも可)が取り付けられて、該開口部を封止できるようになっている。ビュレットの下端には、内径6mmのビニール管の一端が接続されている。ビニール管の他端は、試料載置台の底面に接続されている。試料載置台は浅底のシャーレ状の形状のものである。試料載置台の底面は開口しており、その開口にビニール管の他端が接続されている。試料載置台の内径は53mmであり、深さは6mmである。試料載置台内にはガラスフィルター(JIS G1、直径52mmφ、厚さ4.3mm)が設置されている。ガラスフィルター上には濾紙(No.2、直径70mm)が載置される。
【0069】
<単位時間当たりの吸収量測定>
図11に示す装置を用いた単位時間当たりの吸収量の測定手順は次のとおりである。
(1)コックBを閉じ、コックAを開く。ビニール管内に空気が残らないように注意しながら、生理食塩水をビュレット内に注入する。注入は、試料載置台上のガラスフィルター(G1グレード)が十分に濡れるまで行う。
(2)コックAを閉じ、生理食塩水をビュレットの10mlの標線まで注入する。ビュレットの上端開口部のゴム栓を閉じ、更にコックAを開く。
(3)コックBを開き、コックBの管内に液が溜まらないように注意しながら、試料載置台上のガラスフィルターの上面の位置と、コックBの中心線の位置とを合わせる。
(4)ガラスフィルターの余分な水分をふき取る。また、ビュレットの液面を20mlの標線に合わせる。
(5)試料をガラスフィルター上に乗せる。このとき、試料載置台に置く試料は、吸収性物品中で肌側となる面が、ガラスフィルターと対向するようにする。
(6)コックBから気泡が出た時点でストップウォッチを作動させ、ビュレット内の生理食塩水の液面の経時変化を10分間測定する。液面の経時変化が、試料に吸収された生理食塩水の量に相当する。発生する気泡が少ないか、又は発生する気泡が小さいために測定しづらい場合には、試料のサイズを任意に変更してもよい。ビュレット内の生理食塩水の液面変化を読み取り、1分後、3分後、5分後、10分後の吸収量を求め、単位時間当たりの吸収量として表す。
【0070】
<表面液戻り量測定>
表層液戻り量の測定方法を以下に説明する。この表層液戻り量とは、吸収体に吸収された液が加圧によってどれだけ表層(表面シート)側へ戻るかを示したものである。この量が少ないほど、吸収体の液保持性が高く、装着時のドライ感が得られ易い。
まず生理用ナプキンを水平に置いた。この生理用ナプキン上に、底部に直径1cmの注入口がついた円筒つきアクリル板を重ねて、サンプルの排泄部対向領域(サンプルの長手方向前端から40mmの位置)に注入口から粘度を8.0±0.1cPに調整した3gの脱繊維馬血を注入した。注入後、その状態を1分間保持した。次に、円筒つきアクリル板を取り除き、表面シートの表面上に、縦6cm×横9.5cmで坪量13g/m2の予め質量を測定しておいた吸収紙(市販のティッシュペーパー)を載せた。さらにその上に圧力が4.5×102Paになるように錘を載せて5秒間加圧した。加圧後、吸収紙を取り出し、加圧前後の吸収紙の質量変化を測定し、吸収紙に吸収された脱繊維馬血の質量を表面液戻り量とした。
次いで、試験後のサンプルに再び上記のアクリル板を重ね、1回目の注入から3分後に再び注入口から3gの脱繊維馬血を追加して注入した。生理用ナプキンへの馬血の注入位置は、最初の3gを注入した位置と同じとした。そして、注入後1分間その状態を保持したままにした後、アクリル板を取り除き、前回と同様にして2回目の表面液戻り量を測定した。
上記の評価結果を下記表1に示す。
【0071】
【表1】
【0072】
表1に示す結果から明らかなように、実施例1及び2の生理用ナプキンは、液の吸収速度が速く吸収性能に優れることが分かった。その結果、実施例1及び2の生理用ナプキンは、排泄の初期の段階から液残りを抑え、液戻りも少なく、肌に対するドライ感が得られた。
【符号の説明】
【0073】
1 表面シート
14 突部
2 裏面シート
3 吸収体
31 凹部
33 突出吸収部
34 凹部吸収部
4 サイドシート
5 防漏溝
7 条溝
10 生理用ナプキン
【技術分野】
【0001】
本発明は、生理用ナプキンや使い捨ておむつ、失禁パンツ等の吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
生理用ナプキン等の吸収性物品においては、各部材の材料や構造を改良し、その機能や着用感の向上が図られてきた。吸収体についても、使用状況や物品の種類に応じた機能性のものが種々提案されている。
【0003】
例えば、表面シート、裏面シート及び吸収体を有するナプキンにおいて、吸収体の裏面シート側から陥没する多数の圧縮部が点在するように配置されたものが開示されている(特許文献1参照)。該圧縮部と圧縮されていない非圧縮部とはゆるやかに厚みを変化させて連続した起伏をなし、非圧縮部から圧縮部へと高まる密度勾配が形成される。これにより、表面シートから吸収体に導かれた液が素早く引き込まれ、液体の十分な吸収保持量を実現しつつ、液戻り防止性やモレ防止性を良化することができる。また、縦方向に筋状に延びる高密度部と低密度部とが交互に区画された吸収体を有する吸収性物品が開示されている(特許文献2参照)。この吸収体により、液の縦方向への液拡散が促進され、液の引き込み性に優れるとともに、幅方向からの圧力にも柔軟に変形可能とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−55352号公報
【特許文献2】特開2010−136899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記の従来の吸収性物品の吸収性能をさらに高め、表面シートへの液残りや液戻りをより効果的に抑制することによりムレにくくし、さらに体液の排泄がいっきに多くあったときにすばやく対応可能であり、かつ装着者の身体にフィットし、その動きによく追随する柔軟性に優れる吸収性物品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、肌当接面側に配置される液透過性の表面シート、非肌当接面側に配置される裏面シート、及び該両シートの間に配置される吸収体を有する吸収性物品であって、前記表面シートは、その厚み方向に見て非肌当接面側よりも相対的に繊維密度の低い低密度部を肌当接面側に備える繊維の粗密構造と、平面方向への液の拡散を抑える抑制構造とを有し、前記吸収体は、高坪量部と低坪量部とを有し、前記高坪量部は前記低坪量部よりも相対的に高密度であり、前記低坪量部が前記高坪量部を囲むようにして平面方向に連続配置されている吸収性物品により上記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の吸収性物品は、表面シートへの液残りや液戻りをより効果的に抑制し、ムレにくく、体液の排泄がいっきに多くあったとしてもすばやく対応して吸収性の回復・保持可能であるという優れた作用効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明における吸収性物品の一実施形態(第1実施形態)としての生理用ナプキンを肌当接面方向から示した一部切欠斜視図である。
【図2】図1に示すII−II線断面である。
【図3】第1実施形態に係る表面シートの肌当接側面を示す一部拡大平面図である。
【図4】第1実施形態に係る表面シートのエンボス部の変形例を示す説明図である。
【図5】第1実施形態に係る吸収体のみを非肌当接面側から模式的に示した平面図である。
【図6】図1に示す生理用ナプキンの所定の断面の一部を拡大して示した一部断面図である。
【図7】本発明における吸収性物品の他の実施形態(第2実施形態)としての生理用ナプキンの幅方向断面図である。
【図8】第1実施形態及び第2実施形態に係る吸収体の好ましい製造方法について、製造時におけるプレスロール加工前後の状態を概略化して示す工程説明図である。
【図9】(a−1)は回転ドラムの外周面にあるポケットを一部拡大して示す斜視図であり、(a−2)は回転ドラムのポケットに繊維材料が堆積した状態を示す断面図であり、(b)は吸収体前駆体が回転ドラムからバキュームコンベアへ離型される様子を示す説明図であり、(c)は加圧工程の説明図である。
【図10】堆積体(製造中間体)の一部を凸状部側から示す斜視図である。
【図11】吸収速度(D/W法)を測定するための装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本発明における吸収性物品の好ましい一実施形態(第1実施形態)としての生理用ナプキンを肌当接面方向から示した一部切欠斜視図であり、図2は図1に示すII−II線断面である。なお、これらの図において煩雑さを避けるため吸収体のコアラップシートを省略して示す。
【0010】
第1実施形態の生理用ナプキン10は、図1に示すように、肌当接面側に配置される液透過性の表面シート1、非肌当接面側に配置される裏面シート2、及び該両シートの間に配置される吸収体3を備え、実質的に縦長の形状である。裏面シート2の肌当接面側に吸収体3が接着剤等で接合され、吸収体3の長手方向左右両側の外方に裏面シート2が延出してその肌当接面側とサイドシート4とが当接し接合されている。裏面シート2とサイドシート4とが当接した部分では表面シート1が裏面シート2とサイドシート4とで挟持され、さらにその幅方向(X方向)内方向に向け表面シート1が吸収体3よりも肌当接面側に位置されるように配されている。このように積層された前記の各シート部材が吸収体3の外方で吸収体3を介在させずにヒートシール等により接合され、ナプキン10の外周縁部6を形成している。この外周縁部6は、全体的な伸縮性を阻害せず、一度吸収した液が漏れない程度に接合されている。サイドシート4の自由端41には外周縁部6へ向うポケット(図示せず)が形成され、液等の横モレを防ぐ効果を有する。なお、第1実施形態における生理用ナプキン10の幅方向左右両側部には、サイドシート4を有してなるウイング部42が生理用ナプキン10の幅方向外方に向って延出しており、生理用ナプキン10使用時には、この部分をショーツにおける股下部の非肌当接面側に巻き込んでショーツに固定する。
【0011】
生理用ナプキン10の肌当接面側には、表面シート1の肌当接面側から吸収体3にかけて圧搾した防漏溝5が施されている。防漏溝5は、経血等の排泄部対応領域の物品幅方向の左右両端寄りに物品縦方向に沿う2条の条溝7の部分を有する。防漏溝5は、条溝7の端部から長手方向にさらに延びて、吸収体3の前後端に近づくにつれ徐々に吸収体3の中央方向に向かい湾曲し、前端、後端が一致して無端環状に連続した全周溝をなしている(図1参照)。このようにすることで、ナプキンを装着して使用する際の排泄液の横漏れを効果的に防止することができる。第1実施形態における条溝7を含む防漏溝5の平面視形状は、前述の形状に限定されず、無端環状の前端、後端で互いに交差していてもよく、条溝7が全周溝の前後端部分と離間していてもよく、条溝7とは別の筋状の溝が幅方向に並列されていてもよく、用途に合わせ適宜決められることが好ましい。なお、排泄部対応領域とは経血もしくはおりもの等の排泄を直接受ける部分及びその近傍である。通常、昼用のナプキンなど前後対象に形成される場合は、排泄部対応領域は、ナプキンを長手方向に3等分した場合の中央領域であり、夜用のナプキンなどは、後方に臀部を覆う左右幅広な後方フラップを有し、ナプキンを長手方向に2等分した際の前側の中央よりにある。また、昼用、夜用にかかわらず、ショーツの股下部に折り曲げて固定するウイングを備える場合は、該ウイングの存在する領域に沿った長手方向両域が排泄部に対応する。
【0012】
表面シート1、裏面シート2、サイドシート4、及び吸収体3の材料や寸法等に関する詳細は後述する。第1実施形態において表面シート1は、排泄された液体を速やかに吸収し、吸収体に伝達する観点と、肌触りのよさの観点から肌当接面側及び非肌当接面側に繊維による突部を有した液透過性の不織布を用いている。また、裏面シート2としては、通気性を有した透湿性フィルムを単層で用いている。吸収体3としてはパルプ繊維等と吸収性ポリマーとを紙などのコアラップシート(図示せず)で被覆してなるものである。また、裏面シート2の非肌当接面側には、生理用ナプキン10を着衣に固定するための粘着剤(図示せず)が塗布されている。該粘着剤によって、生理用ナプキン10が使用者の着衣に接着固定される。第1実施形態の生理用ナプキン10は、その表面シート側を着用者の肌当接面側に向け、かつ、その縦方向を下腹部から臀部にかけて配し、その幅方向を左右の足をつなぐラインの方向に向けて配して着用する。
【0013】
本発明においては、特に断らない限り、人体に接触する側の面を肌側面ないし肌当接面あるいは表面といい、これと反対側の面を非肌面ないし非肌当接面あるいは裏面という。この2つの面において、肌側面に近い方ないしその延長方向を肌面側、肌当接面側又は表面側といい、非肌面に近い方ないしその延長方向を非肌面側、非肌当接面側又は裏面側という。装着時に人体の前側に位置する方向を前方といいその端部を前端部とし、後側に位置する方向を後方といいその端部を後端部として説明する。吸収性物品の表面又は裏面の法線方向を厚み方向といいその量を厚さという。更に、吸収性物品の平面視において腹側部から股下部を亘り背側部に至る方向を長手方向または縦方向といい、この縦方向と直交する方向を幅方向という。なお、前記縦方向は典型的には装着状態において人体の前後方向と一致する。
【0014】
第1実施形態の表面シート1は、図2の円拡大図に示すように、肌当接面側から上層11、下層12の2層の繊維層が積層されて形成されており、各層はそれぞれ異なる種類及び/又は配合の繊維の集合体から構成されている。上層11、下層12は、多数のエンボス部15におけるエンボス等の圧着によって接合されている。エンボス部15では、表面シート1の構成繊維が厚み方向に凹陥して多数の谷部を形成している。谷部間の非エンボス部、即ちエンボス部15に囲まれた領域は、突部14となる。上層11の突部14aは肌当接面側に突出し、下層12の突部14bは非肌当接面側に突出している。該突部14a及び14bは、いずれもドーム状の形状をなし、上述したエンボス部15と同様に平面視において上層11及び下層12の同じ位置に規則的に多数配されている。これによって、上層11及び下層12には、その全域に亘って多数の凹凸部が形成されている。
【0015】
ここで表面シート1が有する繊維の粗密構造について説明する。この繊維の粗密構造は、表面シート1をその厚み方向に見たときに、非肌当接面側よりも相対的に繊維密度の低い低密度部を肌当接面側に備える構造である。第1実施形態1の表面シート1においては、下層12の突部14bよりも上層11の突部14aの繊維密度が相対的に低い低密度部とされた構造である。これにより、肌に当接する上層11の突部14aから下層12の突部14bへと向って高まる構成繊維の密度差あるいは密度勾配が形成され、排泄液を素早く厚み方向に引き込んで吸収体3へと引き渡すことができる。この繊維の粗密構造は、少なくとも排泄部対応領域に配されることが好ましい。
【0016】
第1実施形態の表面シート1は、非熱収縮性融着繊維材料又は下層12の繊維よりも熱収縮温度の高い繊維を含む上層11、潜在捲縮性繊維を含む下層12を積層し加工して形成される。この上層11及び下層12を、エンボス等の圧着により所定のパターンで部分的に又は全面的に融着させた後、熱処理(熱風の吹き付け、赤外線の照射など)によって、下層12を水平方向に熱収縮させる。すると、下層の12の熱収縮に対して、上層11は熱収縮が起こらないか、下層12よりは熱収縮が小さい。そして、上層11、下層12が多数点在するエンボス部15で一体化されているために、上層11は下層12に比べ収縮しにくいことから歪が生じ、この歪によって上層11には構成繊維間の距離が広がるようにドーム状の凸な隆起が現れる。他方、上層11に収縮が起こらない又は熱収縮が小さいことは、下層12の収縮の抵抗となり、下層12の収縮が厚み方向へと働き突部14bが形成される。このようにして上層11の突部14aと下層12の突部14bとの間に構成繊維の密度差または密度勾配が形成され、表面シート1の液の拡散及び厚み方向への液の透過性が向上する。そのため2層の繊維層間には界面がないことが好ましい。なお具体的な製造方法は、例えば特開2004−166849号等に記載の方法を採用することができる。
【0017】
表面シート1の粗密構造において、液を素早く表面シート1の非肌当接面側へと引き込むため、上層11の突部14aの密度(m1)と下層12の突部14bの密度(m2)との比率(m1/m2)は、3/4〜1/20が好ましく、1/3〜1/10がさらに好ましい。上記の下限以上とすることで、肌当接面側から非肌当接面側に向かって毛管力が働き、肌近傍に残留する体液を速やかに吸収し、着用者に優れた装着感を提供することができ、上限以下とすることで下層部12が高密度となり、過度に硬くなることを防止することができる。
【0018】
[表面シート1の繊維密度の測定方法]
表面シート1の繊維密度は、KEYENCE社製マイクロスコープVHX−1000を用い観察し、上層11,下層12各々の厚みを測定し、設計した坪量を各々の厚みで除して算出できる。
【0019】
次に表面シート1の液拡散の抑制構造について説明する。この抑制構造は、排泄液が表面シート1に取り込まれた際、液量の多寡に係らず表面シート1の平面方向に液が拡散するのを抑え、前記繊維の粗密構造による液の透過性を補って、的確に液を捉えて引き込み、液の吸収体3への引き渡し効率を高める構造のことである。第1実施形態1の表面シート1においては、抑制構造とは、抑制部としてのエンボス部15であり、またその抑制部としてのエンボス部15の複数配置による表面シート1の構造であり、エンボス部15と下層12の突部14bとの組み合わせの構造である。まず、第1実施形態におけるエンボス部15は、表面シート1における他の部分に比して厚みが薄く密度が大きい部分である。各エンボス部15は、小円形で離散的に不連続に形成されており、全体として略千鳥格子状の配置パターンを形成している(図3参照)。つまり、各エンボス部15は、他のエンボス部15とは離間して独立の閉じた谷部を形成している。表面シート1は、複数のエンボス部15がそれぞれ独立に点在配置されることで、谷部にある液が他の谷部に移動し難い構造となっている。この谷部となるエンボス部15は、エンボスによる繊維の圧密化で突部14よりも繊維密度が高く毛管力が高い。これにより、表面シート1が受け取った液を平面方向に拡散させず、かつ高い毛管力により吸収体3へと排泄液を効果的に素早く引き込むことができる。さらに第1実施形態においては、下層12の突部12bがあることで、表面シート1の非肌当接面側では、エンボス部15と吸収体3との間に複数の突部14bに囲まれた一定の空間が保たれる。そして前記空間は繊維がなく平面方向に実質的に閉ざされた空間である。これにより、一旦引き込まれた液が表面シート1の肌当接面側に戻り難くなり、液が過度に拡散することなく吸収体へと移行しやすい構造となっている。
【0020】
この表面シート1の抑制構造が、前記の粗密構造と協働して、排泄液を過度に拡散させることなく素早く引き込んで吸収体3へと効率よく引き渡すことができる。これにより、表面シート1の肌側面では液残りと液戻りが抑制され、着用者に良好な装着感が提供される。なお、このエンボス部15の形状や配置は、各エンボス部15が互いに非連続で閉じた形状であれば、また突部14を囲む配置であれば、第1実施形態のもの以外にも、図4に示すように、十字形やひし形等の図形、これらの組み合わせ、直線、曲線形状のエンボスが任意に点在するようにしてもよく、構成繊維の密度勾配を有して液の拡散抑制と厚み方向への液の素早い引き込みとが実現される形状や配置を任意に採用することができる。例えば、十字形状のエンボス部15を突部14の四隅をL字に囲むようにして配置することもできる。この場合、向かい合う2つのエンボス部15の棒状部分に挟まれた吸収体の部分は、両エンボス部15の圧着に引っ張られて若干繊維密度が高められた中間密度部16となり(図4(a)参照)、突部14aとエンボス部15との密度差に加え、突部14aから中間密度部16、エンボス部15へと高まる密度差又は密度勾配でさらに液の拡散を抑えて厚み方向への透過性を高められるので好ましい。このように本発明における表面シート1の抑制構造は、第1実施形態におけるナプキン10に示したエンボス部15及びその配置に限定されることなく、繊維の粗密構造による液の透過性を補完して液の拡散を抑制する構造として様々な形態を採用できる。
【0021】
表面シート1において、上層11と下層12とをしっかりと接合して十分な高さの突部14を形成し、液の拡散抑制と厚み方向への引き込み性に効果的な粗密構造と液の拡散を抑制する構造とするために、表面シート1の肌当接面側の面積(q1)に対する全エンボス部15の合計面積(q2)の比率(q2/q1)は、適用する物品の用途によっても多少異なるが、1/10〜3/4が好ましく、1/6〜2/3がさらに好ましい。上記の下限以上とすることで、液の拡散抑制と厚み方向への引き込み性を発現するために十分な毛管勾配を形成することができ、上限以下とすることで表面シート1が過剰に硬くなることを防止すると共に表面シート1に適切な厚みを与え、着用者に柔らかな装着感を提供することができる。
また、抑制構造と繊維の粗密構造とによる素早い液の引き込み性の観点から、突部14aの平均密度(m1)、突部14bの平均密度(m2)、及びエンボス部15の平均密度(m3)の比率(m1/m2/m3)は、3/4/5〜1/20/30が好ましく、2/4/5〜1/10/20がさらに好ましい。上記の下限以上とすることで、表面シート1の突部14aからエンボス部15へ毛管勾配が形成され、速やかに肌当接面側から体液を移行させることができ、上限以下とすることでエンボス部15が過度に圧縮され、硬くなることを防止することができる。
【0022】
次に、吸収体3について、図2及び5を参照して説明する。吸収体3は、全体としてパルプ繊維と吸水性ポリマーとの混合積繊物をコアラップシート(図示せず)で被覆してなる。吸収体3には、前記積繊物の坪量が相対的に高い高坪量部としての突出吸収部33と低坪量部としての凹部吸収部34とを有する。高坪量部である突出吸収部33は凹部吸収部34よりも相対的に高密度にされており、低坪量部である凹部吸収部34が突出吸収部34を囲むようにして平面方向に連続配置されている。以下に第1実施形態における吸収体3の構造を詳述する。
まず、吸収体3には、少なくとも排泄部対応領域において、吸収性素材(パルプ繊維、吸収性ポリマーなど)を非肌当接面側から厚み方向に少なくして空隙部分とした凹部31が配されている。凹部31は、その非肌当接面側の平面視、幅方向(X方向)及び縦方向(Y方向)に沿ってそれぞれ複数条を格子状に配して形成されている。そして、この凹部31の肌当接面側の底部にはパルプ繊維を含む凹部吸収部34が配されている。つまり凹部吸収部34は、吸収体3の肌当接面側に偏倚して配されている。この吸収体3の非肌当接面側で格子状に連続的に配される凹部31とこれに対応して吸収体3の肌当接面側で平面方向に連続的に広がる凹部吸収部34とが厚み方向に連係して吸収体内で液を素早く透過させる通液構造となる。
凹部31及び凹部吸収部34に囲まれた吸収体3の部分が非肌当接面側に突出したブロック状の突出吸収部33として区画されて形成されている。第1実施形態においては、突出吸収部33が凹部吸収部34よりも厚みがあり、その厚みの差により凹部吸収部34が低坪量部とされ突出吸収部33が高坪量部とされている。また、吸収体3の詳細な製造方法は後述するが、第1実施形態における突出吸収部33は凹部吸収部34より相対的に高密度である。吸収体3は、高密度な高坪量部としての突出吸収部33とこれより相対的に低密度な低坪量部としての凹部吸収部34とを有し、凹部吸収部34が吸収体3の肌当接面側に偏倚して突出吸収部33を囲むよう平面方向に連続的に配置されている。つまり、吸収体3の平面視、突出吸収部33からなる高密度な高坪量部が凹部吸収部34からなる低密度な低坪量部の中に存在する海−島構造である。また、吸収体3の肌当接面側において、凹部吸収部34と突出吸収部33の肌当接面側の部分とが平坦な形状をなし、凹部吸収部34や突出吸収部33を含む吸収体3全体は継ぎ目のない一体構造となる。
【0023】
突出吸収部33は、高密度な高坪量部としてパルプ繊維と吸水性ポリマーとを含んで排泄液を吸収保持する部分となる。第1実施形態の個々の突出吸収部33の形状は、物品縦方向(Y方向)に長さを持つブロック状の略直方体形状である。突出吸収体33の配置は、平面視において自然状態で互いに所定の隙間s,r(図5参照)を有するように縦横方向に整列配設された市松配列である。つまり、多数の突出吸収部33を長手方向及び幅方向に投影したときにいずれの方向にもその投影像が重なる配置にされている。吸収体3を上述したように縦横の凹部31によって区画されることにより、その部分において可撓部位となり、生理用ナプキン10が肌面の起伏にフィットする「身体適合性」、及び着用者の動きにも良好に追随して肌に対する部分的な隙間の発生を防止する「動作追随性」が極めて高くなる。なお、突出吸収部33の配置は、第1実施形態のものに限定されず、そのほか適宜用途や機能に応じて配列を選択することができ、例えば千鳥状配列(上記投影像が長手方向及び/又は幅方向にみて略半ピッチずれのある配置)であってもよい。また突出吸収部33の形状も、液の適切な吸収保持性を有するのであれば、第1実施形態の形状のほか任意の形状を採用可能である。
【0024】
凹部吸収部34は、繊維の密度が低くかつ厚みの薄さによる低坪量のため、液の通液抵抗が低く、液の圧力損失を損なわずに液を素早く吸収体の厚み方向に透過させることができる。また吸収体3の肌当接面側が平坦で、かつ凹部吸収部34が肌当接面側で平面方向に連続的に広がっていることで、液との接触が良く、液を広い範囲で素早く吸収体3内部に引き込むことができる。つまり、凹部吸収部34が導液路となり、表面シート1からの液をすばやく吸収体3内部に引き込むチャンバーとなる。さらに凹部吸収部34に囲まれ連接する突出吸収部33は、凹部吸収部34よりも高密度な高坪量部である。そのため、凹部吸収部34を通過した液は、凹部吸収部34と突出吸収部33との繊維の密度差あるいは密度勾配によって生じる毛管力によって突出吸収部33へと素早く取り込まれ厚み方向に移動して保持される。加えて、経血等などの高粘性の液が一度に多量に排泄されたり繰り返し排泄されたりした場合にも、一度に突出吸収部33で吸収保持できなくとも、凹部吸収部34と厚み方向に繋がる凹部31が一時的に液を保持する緩衝機能を果たし、高密度部分と低密度部分の境界領域では液を留め置かないように働く拡散作用をも果たす。しかも凹部31が吸収体3の非肌当接面側で連接されていることによって、表面シート1よりも遠い位置で液を移動させて各突出吸収部33で確実に吸収保持させることができる。このように凹部吸収部34と凹部31とからなる通液構造によって、液が表面シート1側から吸収体3内部に素早く取り込まれて突出吸収部33で確実に吸収保持され得る。これにより吸収体3の肌当接面側での液残りが抑制され、かつ吸収体3内部から表面シート1への液戻りが生じ難い。
【0025】
さらに吸収体3を有するナプキン10において、装着中にかかる厚み方向の圧力があても、経血等の排泄液が表面シート1側へ液戻りしにくくなる。このことは、吸収体3の肌当接面側、特に凹部吸収部34が表面シート1や吸収体3の肌当接面側に液を残さず、素早く厚み方向に引き込んで複数の突出吸収部33に保持・固定することが1つの要因である。これに加え、前述の凹部吸収部34から凹部31へと繋がる通液構造が、液の引き込みと移動とを促し液戻り抑制に効果的に作用する。具体的には、凹部吸収部34が液を保持することなく素早く凹部31へ引き込むこと、凹部31へ一旦引き込まれた液が吸収体3の肌当接面側よりも比較的遠い位置となること、凹部31が吸収体3の非肌当接面側で液を素早く移動させて突出吸収部33に吸収保持させるので凹部31自体の貯蔵量も多くならないことなどの複数の作用により生じるものと考えられる。また、凹部吸収部34の存在で凹部31にかかる圧力が和らげられるとともに、この圧力で凹部31での液の移動が促されることも要因のひとつと考えられる。さらに、吸収体3は、その肌当接面から非肌当接面までを高密度な突出吸収部33で支えられる形態であるため、厚み方向の圧力に対しての変形が起こり難く、液戻り抑制やヨレ防止に効果的である。このように吸収体3の表面シート1側に液を残さずに凹部31に素早く引き込むことで、厚み方向の圧力でも液の表面シート1側への戻りが効果的に抑制され、良好なドライ感が得られる。
【0026】
吸収体3において、凹部吸収部34が液の保持量を抑えて液を素早く凹部31へ移動させ、凹部31が排泄液の一時貯蔵の機能を有して表面シート1側へ液を逆戻りさせないために、低密度な低坪量部である凹部吸収部34の構成部材の平均密度(m4)は、0.02〜0.09g/cm3が好ましく、0.03〜0.08g/cm3がさらに好ましい。他方、確実な液の保持・固定のために、高密度な高坪量部としての突出吸収部33の構成部材の平均密度(m5)は、0.10〜0.25g/cm3が好ましく、0.10〜0.20g/cm3がさらに好ましい。なお突出吸収部33は、製造時の圧縮により高密度化される部分であるが、たとえその厚み方向に均一な密度が形成されなくとも、全体として凹部吸収部34よりも密度が高まっていればよく、凹部吸収部34の平均密度(m4)と突出吸収部33の平均密度(m5)との比率(m4/m5)は、0.80以下が好ましく、0.60以下がさらに好ましい。この比率(m4/m5)について、上限以下とすることで、凹部吸収部34ないしは凹部31において液を一時的に保持し、突出吸収部33との間に働く毛管力により、突出吸収部33が効率良く液を吸引・保持する吸収機構が発現される。また、同様の理由から、凹部吸収部34の構成部材の平均坪量(w1)は、10〜150g/m2であることが好ましく、20〜140g/m2であることがさらに好ましい。突出吸収部33の構成部材の平均坪量(w2)は、160〜400g/m2であることが好ましく、200〜350g/m2であることがさらに好ましい。さらに、両者の平均坪量比(w1/w2)は、0.01〜0.90であることが好ましく、0.10〜0.70であることがさらに好ましい。
さらに凹部31の深さ(h2)の吸収体3の厚み(突出吸収体33の厚み)(h1)に対する割合(%)(図2参照)は、20〜80%であることが好ましく、30〜70%であることがさらに好ましい。上記下限以上とすることで、表面シートへの液残りや液戻りをより効果的に抑制することができ、上限以下とすることで表面シートより受け取った液を広げすぎずに突出吸収部33へと移動させることができる。
【0027】
[突出吸収部33及び凹部吸収部34の平均密度の測定方法]
突出吸収部33及び凹部吸収部34の密度とは、吸収体3の構成部材であるパルプ繊維と高吸水性ポリマーとを併せた密度である。吸収体3を、凹部31の壁面底部31a,31aから厚み方向に延ばした仮想線t,t(図5(B)参照)で切断して、突出吸収部33と凹部吸収部34とし、これらをそれぞれ長さ50mm、幅5mmの大きさに切り出しサンプルを調製する。次いで、電子天秤(A&D社製電子天秤GR−300、精度:小数点以下4桁)を用いサンプルの質量を測定する。定圧式厚み計を用い、サンプル厚みを測定し、測定したサンプルの質量を、サンプルの体積(厚み×長さ×幅)で除して各々の領域における部位の全材料の密度を算出する。なお、低圧式厚み計の測定時圧力は0.5g/cm2で行う。平均密度は、サンプルを任意の箇所で10個調整して、その平均で求められる。
【0028】
[突出吸収部33及び凹部吸収部34の平均坪量の測定方法]
突出吸収部33の平均坪量(w2)及び凹部吸収部34の平均坪量(w1)の測定方法は、測定するそれぞれの部位の面積を予め測定し、その測定領域を前述の仮想線t,t(図5(B)参照)でカッターで切断してその切断部の質量を測定する。測定した質量を面積で除して、各々の密度領域の平均坪量を測定する。平均坪量は、サンプルを任意の箇所で10個調整して、その平均で求められる。
【0029】
[突出吸収部33と凹部吸収部34(及び凹部31)の厚みの測定]
まず、凹部31は吸収体3の底部から肌当接面側に窪んで空隙のある部分とし、凹部吸収部34は凹部31の上部に位置する吸収体3の素材からなる部分として区分できる(図5(B))。突出吸収部33は、厚み方向に並ぶ凹部31及び凹部吸収部34の低密度領域39に隣接して囲まれる吸収体3の素材からなる上部から底部までの部分として区分できる(図5(B))。この突出吸収部33と凹部吸収部34及び凹部31との境界は、凹部31の壁面底部31a,31aから厚み方向に延ばした仮想線t,tとして規定できる(図5(B))。
このように区分される凹部吸収部34の厚み(h3=h1−h2)(図2参照)と突出吸収部33の厚み(h1)(図2参照)の測定は、大きさ37mm×37mm、厚み3mmのアクリルプレートを吸収体3の上に置き、KEYENCE社製非接触式レーザー変位計(レーザーヘッドLK−G30、変位計LK−GD500を用い突出吸収部33の厚み(h1)を計測し、凹部吸収部34の厚み(h3)を吸収体の図2相当の断面をKEYENCE社製マイクロスコープVHX‐1000を用いることで計測できる。
【0030】
第1実施形態の吸収体3のように、整列配置されたブロック状の突出吸収部33が高密度な高坪量部をなし、これを囲むように整列配置された凹部吸収部34が低密度な低坪量部をなす場合、液残りや液戻りなく高い液透過性と液保持性とを実現するため以下の間隔で配置されることが好ましい。使用する吸収性物品の用途によっても多少異なるが、ブロック状の突出吸収部33の長手方向長さk1(図5(C)参照)は、凹部を基軸に吸収体が徐々に肌当接面へ向かって湾曲し、着用者の身体の形状に沿って変形することを促すという観点から10〜30mmが好ましく、15〜25mmがより好ましい。その幅方向長さk2は、凹部が着用中に吸収体に加わる幅方向からの圧縮力を緩和する観点から5〜20mmが好ましく、7〜15mmがより好ましい。また、凹部31の長手方向長さsは1〜5mmが好ましく、1〜3mmがより好ましい。幅方向長さrは1〜5mmが好ましく、1〜3mmがより好ましい。
本発明において吸収体は、第1実施形態のように突出吸収部33と凹部吸収部34とによる整列配置の構造に限定されず、低密度な低坪量部が高密度な高坪量部を取り囲み、肌当接面側から素早く液を透過させて液戻りや液残りなく吸収保持させる構造であれば任意の形状や配置を採用することができる。その場合、前記の寸法と同様の趣旨で、吸収体の肌当接面側において、低密度な低坪量部の面積(q3)と高密度な高坪量部の面積(q4)との比率(q3/q4)が、2/3〜1/6であることが好ましく、1/2〜1/5であることが好ましい。
【0031】
第1実施形態の生理用ナプキン10においては、前述のとおり、表面シート1の繊維の粗密構造及び液拡散の抑制構造と、吸収体3の高密度な高坪量部とこれを囲んで平面方向に広がる低密度な低坪量部を有する構造とによって、液残りなく表面シート1から吸収体3へと液を素早く効率よく引き渡し、吸収体3内で表面シート1から遠い位置で液を素早く吸収保持することができる。つまり、排泄時から液の吸収保持に至るまでの固定化スピードが高められる。加えて、厚み方向の圧力においても液の表面シート1側への戻りが極めて効果的に抑制され得る。これにより生理用ナプキン10においては良好なドライ感が得られる。
【0032】
ここで第1実施形態の生理用ナプキン10における上述した区画された吸収体3と表面シート1との組み合せによる動的作用の特徴を図6に基づき説明する。図6は、図1に示す生理用ナプキンの所定の断面の一部を拡大して示した一部断面図である。なお、図の煩雑化を避け、裏面シート2及びサイドシート4は示しておらず、表面シート1の形状については模式化して示している。
生理用ナプキン10に液a1が排泄されると、表面シート1においては上層11の突部14aと下層の突部14bとの繊維の粗密構造によって液a1が表面シート1の非肌当接面側へと引き込まれる(矢印b1)。また、抑制部としてのエンボス部15を含む抑制構造により液の平面方向への拡散が抑えられ、突部14aの側面からエンボス部15へと高まる密度差又は密度勾配によりエンボス部15へ向かって液が吸引され表面シート1の非肌当接面側へと素早く引き込まれる(矢印b2)。この構造により、少ない液量であっても吸収体3へと導かれやすく効果的に吸収体3へと受け渡される。また、吸収体3の肌当接面側が平坦な形状であることで、表面シート1の非肌当接面側にある液a1が吸収体3と広い面で接触しやすく引き込まれやすい。特に吸収体3の導液部である凹部吸収部34において、液が過度な拡散なく素早く引き込まれる。つまり液a1は、通液抵抗が低い凹部吸収部34をチャンバーとして素早く吸収体3の厚み方向に向かって吸収される。そして液a1は、その一部が密度の高い突出吸収部33,33へ向かって移行し(矢印b3)、他の一部が凹部31に一時保持される(矢印b4)。このように、表面シート1から引き渡された液が凹部吸収部34で引き込まれ、矢印b3やb4へと分散されることで、吸収体の表面側での保持量を減少させ通液抵抗が更に低くなることとなる。これにより表面シート1への液戻りも効果的に抑制され得る。
このように第1実施形態における生理用ナプキン10は、厚み方向への液の高い引き込み性を有した表面シート1の性能を、吸収体3の高い厚み方向への液の透過性によって十分に発揮させることができ、これにより取り込んだ水分の肌への液戻りを抑え、好適なドライ感を使用者に与える効果を奏する。
【0033】
第1実施形態の生理用ナプキン10において、表面シート1と吸収体3との間で効率よく液の引き渡しがなされるよう、表面シート1の抑制部である複数のエンボス部15が吸収体3の低坪量部である凹部吸収部34及び高坪量部である突出吸収部33に亘って配置されることが好ましく、凹部吸収部34と厚み方向に重なる配置が多くあることがより好ましい。特にナプキン10の排泄部対応領域において、排泄液を直接受ける物品幅方向(X方向)の中央部において、複数のエンボス部15が物品縦方向(Y方向)に点在配置されて列をなし、このエンボス部15の列と吸収体3の凹部吸収部34とが厚み方向に重なる配置であることがさらに好ましい。この配置とすることで、液を拡散させることなく、直接受けた液を吸収体3へと素早く引き渡して吸収体3内部へと引き込み吸収保持させることができる。また物品縦方向(Y方向)においてエンボス部15の列と吸収体3の凹部吸収部34とが重なることで、液の吸収過程における幅方向への拡散を効果的に抑えることができる。これにより、表面シート1上の液残りや内部からの液戻りが効果的に抑制され、また幅方向端部での液漏れが生じ難くなり、良好な装着感が提供される。
【0034】
さらに第1実施形態の生理用ナプキン10は、表面シート1から吸収体3への液の効率的な引き渡しのため、表面シート1の突(ドーム状)部14と吸収体3の高坪量部(突出吸収部33)とは、以下の構造を形成することが好ましい。表面シート1の突部14は、着用者の肌と接し排泄された液を受け取り易く確実に受け渡すためには、吸収体3の高坪量部と重なる位置に配されていることが好ましい。また、多量の液を受け渡す際には、低坪量部(凹部吸収部34)による液拡散機能を発現しやすいように、表面シート1の突部14は、吸収体3の低坪量部に隣接して配されていることが好ましい。そのため、表面シート1の突部14と吸収体3の高坪量部とは、任意の断面において吸収体3の低坪量部と隣接する表面シート1の突部14の間に吸収体3の高坪量部にのみに重なる表面シート1の突部14が0〜3個であることが好ましく、より好ましくは0〜2個が好ましい。表面シート1の裏面側の形状は、平面的に透かし見た平面視において前記表面シート1の突部14に隣接し、吸収体3との間に(断面視で)隙間が形成されていると、液の吸収体3への受渡し性と多量排出時の液の吸収体3の低坪量部への導液が起こり易い点でより好ましい。また、表面シート1から吸収体3内部まで液残りなく素早く液を透過させて内部で吸収保持し液戻りを抑制するために、表面シート1の突部14aの平均密度(m1)<突部14bの平均密度(m2)<エンボス部15の平均密度(m3)<吸収体3の凹部吸収部34の平均密度(m4)<突出吸収部33の平均密度(m5)であることが好ましい。
【0035】
第1実施形態の吸収体3は、前述のとおり、液を保持して液戻りし難い吸水性ポリマーを含有することが好ましい。表面シート1上への液戻りをより効果的に抑制するため、該吸水性ポリマーは、凹部吸収部34よりも突出吸収部33の部分に多く偏倚して配されるのが好ましく、凹部吸収部34に配されずに突出吸収部33においてその非肌面側に多く偏倚して配されることがさらに好ましい。また、凹部31の非肌面側に吸水性ポリマーを配することも同様の観点から好ましい。
【0036】
第1実施形態の生理用ナプキン10において、その排泄部対応領域の幅方向両端にある2条の条溝7,7は、その位置において吸収体3の複数の突出吸収部33と凹部吸収部34とを物品縦方向(Y方向)に繋ぐように配設されることが好ましい。こうすることでナプキン10装着時に、着用者の足の付け付近において、突出吸収部34同士のせん断による形状崩れが防止され、幅方向からの液漏れを抑え得る。また、ナプキン10装着時に条溝7,7が折れ曲がり部となって着用者の体にフィットさせ易く、吸収体3の幅方向中央部分の突出吸収部33へ不要な負荷が掛かり難くなる。その結果、幅方向中央部分の液を多く保持する突出吸収部33の形状が崩れ難く液漏れがさらに防止され得る。また、凹部31が条溝7の幅方向外方の部分にまで延在して配されることが好ましい。この配置によって、条溝7は必ず突出吸収部33と吸収体凹部34を跨ぐように配置されることから、条溝7と吸収体凹部34とが重なる部分は条溝7と突出吸収部33が重なる部分よりも柔らかくなるため、製品の幅方向を軸とした製品曲げ剛性が低減され、股間から臀部にかけて着用者の身体のカーブに合わせて変形しやすくなるとともに、横漏れを起こし易い吸収体3両側部にも可撓性を付与し、着用者の股下にフィットさせることができ、着用者の体の動きにも追従して隙間が生じるのを防ぐことができる。
本発明における条溝7では、表面シート1と吸収体における固定をおこなうことができるため、特に条溝7間において上記効果に加えて、表面シート1と吸収体3に隙間が生じにくい。また、従来は表面シート1と吸収体3の間にホットメルト型粘着剤等を用いて固定して吸収性(特に液通過性)を高めることが通常実施されているが、表面シート1が伸縮機能を有する場合、装着者の肌と表面シート1のこすれを起こし易くなるため、本発明の条溝7によって固定された形態を用いると、粘着剤等の使用量を減少することができる。具体的には粘着剤の塗工ピッチを大きくすることで固定面積を減少したり、粘着剤を使用しないようにしながら、フィット性と吸収性を維持することが可能となる。
【0037】
次に、本発明の吸収性物品の他の実施形態(第2実施形態)としての生理用ナプキン20について、図7を参照しながら説明する。第2実施形態の生理用ナプキン20は、第1実施形態の生理用ナプキン20とは表面シートのみが異なる構成である。そのため以下の説明においては、第1実施形態と相違する表面シートを中心に説明し、その他の点は第1実施形態についての説明が適宜適用される。
図7は、吸収体3の肌当接面側に表面シート80を配した生理用ナプキン20の所定の断面の一部を拡大して示した一部断面図であり、第1実施形態の図6に相当する図である。表面シート80は、単層の繊維構造からなり、肌当接側面が多数のドーム状の突部84と厚み方向に窪んで谷部となるエンボス部85とを有する凹凸形状であり、非肌当接側面が平坦な形状である。
【0038】
表面シート80における繊維の粗密構造は、エンボス部85に囲まれた非エンボス領域において、肌当接面側の突部84が非肌当接面側の平坦部82よりも相対的に低密部された構造である。突部84は、構成繊維に含まれる熱伸長性繊維が熱風吹き付け等の熱処理によって伸長しながら厚み方向に隆起することで形成される。熱風吹き付け等熱処理は、エンボス処理等による複数のエンボス部85の形成後なされる。エンボス部84により繊維の一部が固定されているため、熱処理による熱伸長性繊維の伸長力は、エンボス部85に囲まれた領域において厚み方向に隆起するように作用する。また隆起した熱伸長性繊維は熱風で互いの繊維の交点が熱融着し、その熱融着点が隆起した部分の内部において三次元的に点在する。これにより、伸長した熱伸長性繊維の繊維間距離が拡大したドーム状の低密度な突部84が形成される。突部84において、ドームの頂点84aが最も繊維密度が低く、厚み方向に非肌面側に向かうにつれ密度が高められている。また、エンボス部34で繊維が固定されていることで、突部84の頂点84aからドームの側面に沿いエンボス部85に向かって高められる繊維の密度勾配が形成されている。これにより、排泄液を素早く厚み方向に透過させて吸収体3へと引き込むことができる。この繊維の粗密構造は、少なくとも排泄部対応領域に配されることが好ましい。なお具体的な製造方法は、例えば特開2005−350836号等に記載の方法を採用することができる。
【0039】
表面シート80の粗密構造において、液を素早く表面シート80の非肌当接面側へと引き込むため、突部84の平均密度(m31)と平坦部82の平均密度(m32)との比率(m31/m32)は、4/5〜1/10が好ましく、3/4〜1/5がさらに好ましい。上記の下限以上とすることで、表面シート1の突部14aからエンボス部15へ毛管勾配が形成され、速やかに肌当接面側から体液を移行させることができ、上限以下とすることでエンボス部15が過度に圧縮され、硬くなることを防止することができる。この平均密度(m31,m32)は、前述の表面シート1で用いた測定方法で測定することができる。
【0040】
表面シート80の液拡散の抑制構造は、突部84よりも窪んだ谷部となるエンボス部85及びその複数のエンボス部85の配置による表面シート80の構造である。各エンボス部85は、表面シート80と同様に、他のエンボス部85とは離間して独立の谷部を形成しており、谷部にある液が他の谷部に移動し難い構造となっている。これにより、表面シート80が受け取った液を平面方向に拡散させず、かつ高い毛管力により吸収体3へと排泄液を効果的に素早く透過させることができる。エンボス部85の形状は、表面シート1の場合と同様に小円形でもよく、直線や曲線、十条形状、楕円形等でもよく、閉じた形状であれば任意に採用することができる。またその配置も、表面シート1と同様に略千鳥格子状や格子状配置であってもよく、前記の粗密構造による毛管力を補うよう的確に液を捉えて引き込んで液残りさせない任意の配置を採用することができる。
この表面シート80の抑制構造が、前記の粗密構造と協働して、排泄液を過大に拡散させることなく素早く透過させて吸収体3へと効率よく引き渡すことができる。これにより、表面シート80の肌側面では液残りと液戻りが抑制され、着用者に良好な装着感が提供される。そしてこの表面シート80を有する生理用ナプキン20においても、生理用ナプキン10と同様に、表面シート1の繊維の粗密構造及び液拡散の抑制構造と、吸収体3の高密度な高坪量部とこれを囲んで平面方向に広がる低密度な低坪量部を有する構造とによって、液残りなく表面シート80から吸収体3へと液を素早く効率よく引き渡し、吸収体3内で表面シート80から遠い位置で液を素早く吸収保持することができる。
【0041】
表面シート80において、前述のとおり十分な高さの突部84を形成し、液の拡散抑制と厚み方向への透過性に効果的な粗密構造と液の抑制構造とするために、表面シート80の肌当接面側の面積(q31)に対する全エンボス部85の合計面積(q32)の比率(q31/q32)は、適用する物品の用途によっても多少異なるが、1/20〜1/2が好ましく、1/10〜1/3がさらに好ましい。上記の下限以上とすることで、表面シート80の突部14aからエンボス部15へ毛管勾配が形成され、速やかに肌当接面側から体液を移行させることができ、上限以下とすることでエンボス部15が過度に圧縮され、硬くなることを防止することができる。
また、抑制構造と繊維の粗密構造とによる素早い液の透過性の観点から、突部84の平均密度(m31)、平坦部82の平均密度(m32)、及びエンボス部85の平均密度(m33)の比率(m31/m32/m33)は、4/5/12〜1/10/30が好ましく、3/4/6〜1/5/20がさらに好ましい。上記の下限以上とすることで、表面シート80の突部14aからエンボス部15へ毛管勾配が形成され、速やかに肌当接面側から体液を移行させることができ、条件以下とすることでエンボス部15が過度に圧縮され、硬くなることを防止することができる。
【0042】
さらに第2実施形態の生理用ナプキン20は、表面シート80から吸収体3への液の効率的な引き渡しのため、表面シート80の突部84と吸収体3の高坪量部(突出吸収部33)が、任意の断面において吸収体3の低坪量部(凹部吸収部34)と隣接する表面シート80の突部84の間に吸収体3の高坪量部にのみに重なる表面シート1の突部84が0〜3個であることが好ましく、より好ましくは0〜2個が好ましい。表面シート80から吸収体3内部まで液残りなく素早く液を透過させて内部で吸収保持し液戻りを抑制するために、表面シート80の突部84の平均密度(m31)<平坦部82の平均密度(m32)<エンボス部85の平均密度(m33)<吸収体3の凹部吸収部34の平均密度(m4)<突出吸収部33の平均密度(m5)であることが好ましい。
【0043】
次に、第1実施形態及び第2実施形態で用いられる吸収体3の好ましい製造方法について図8〜10を参照して説明する。なお、吸収体3の形状、凹部31及び突出吸収部33の数や形状、配置等は模式化して図示している。
図8は、生理用ナプキン10の吸収体3の製造に好ましく用いられる吸収体の製造装置60を示す図である。製造装置60は、外周面に複数のポケット9(堆積部)がます目状に区切られた積繊プレートを有する回転ドラム62(図9(a−1)参照)と、回転ドラム62の外周面に向けて、繊維材料Sを飛散状態にて供給するダクト63と、ダクト63に繊維材料Sを供給する繊維材料供給部64と、ポケット9にあふれるように堆積させた過剰量の繊維材料を掻き取るスカッフィングロール65と、ポケット9から離型した堆積体(吸収体前駆体)70の上下面をコアラップシートで被覆する被覆機構(図示せず)と、吸収体前駆体70をコアラップシートで被覆して得られる吸収体連続体を、一対のプレスロール66a,66b間で加圧して圧縮する圧縮装置66と、圧縮後の吸収体連続体を、個々の生理用ナプキンに使用される寸法に切断して加工後の吸収体3とする切断装置(図示せず)を備えている。
【0044】
回転ドラム62は、円筒状をなし、図8中の矢印A方向に一定速度で回転駆動される。回転ドラム62の内側(回転軸側)の非回転部分には、吸気ファン(図示せず)が接続されており、該吸気ファンの駆動により、回転ドラム内側の仕切られた空間B及びEが負圧に維持される。外周面にある個々のポケット9の底面部には、メッシュプレートが配設され(図示せず)、多数の細孔を有している。個々のポケット9が、負圧に維持された空間B,E上を通過している間、各ポケット9の底面部の細孔が吸引孔として機能する。
【0045】
ダクト63は、回転ドラム62の外周面の一部を覆う吹き出し端部63aと、繊維材料供給装置64に接続された吹き込み端部63bとを有しており、空間B上に位置するポケット9の底面部からの吸引により、ダクト63内に、回転ドラム62の外周面に向けて流れる空気流が生じさせるように構成されている。繊維材料供給部64は、解繊機64eを備えており、ラチス64dにある原料S’が解繊機64eで解繊され、解繊された繊維材料Sをダクト63内に供給するように構成されている。
【0046】
スカッフィングロール65は、周囲にブラシを有しており、該ブラシにより、ポケット62内からあふれた繊維材料Sを掻き取る。スカッフィングロール65に掻き取られずポケット9内に残った堆積体(吸収体前駆体)70は、回転ドラム62の下方においてポケット9から離型される。ポケット9からの離型は、回転ドラム62内の仕切られた空間Dを図示しない加圧手段により陽圧に維持して、ポケット9の底面部の細孔から空気を吹き出させると共に、バキュームコンベア67側から吸引することにより行う。前記被覆機構は、バキュームコンベア67上に、コアラップシートを供給する公知の搬送機構と、コアラップシート上に堆積体(吸収体前駆体)70が載置された後に、該コアラップシートの両側部を、該堆積体(吸収体前駆体)70上に折り返し、その折り返しにより、堆積体(吸収体前駆体)70の上下両面をコアラップシートで被覆する機構とで構成されている。なお、図8において折り返しの工程の詳細は省略しており、折り返されたコアラップシートの状態も2本の線として単純に示している。
【0047】
図8に示す吸収体の製造装置60を用いて、上述した吸収体3を製造する方法について説明する。
まず、回転ドラム62及びスカッフィングロール65を回転させると共に、上記吸気ファン及び上記加圧手段を作動させて、空間B及びEを負圧にし、空間Dを陽圧にする。また、バキュームコンベア67、圧縮装置66及び上記切断装置を作動させる。吸気ファンの作動により、空間B上に位置するポケット9の底面部に吸引力が生じると共に、ダクト63内に、回転ドラム62の外周面に向けて流れる空気流が生じる。そして、繊維材料供給装置64を作動させて、ダクト63内に繊維材料S(パルプ繊維41及び高吸水性ポリマー42)を供給すると、該繊維材料Sは、飛散状態となって、ダクト63内を流れる空気流に載って、回転ドラム62の外周面に向けて供給される。
【0048】
個々のポケット9が、負圧に維持された空間B上を通過している間、ダクト63から供給される繊維材料Sが各ポケット9に吸引されて堆積する(図9(a−1)及び(a−2)参照)。この点について図9(a−2)を参照して説明すると、回転ドラム62の外周面にある積繊プレートにおいて、複数の仕切り91をより分けてパルプ繊維と吸水性ポリマーとの混合物が積繊され、さらに仕切り91の高さを超えて回転ドラム62の高さいっぱいにまで積繊される。各ポケット9には、やや過剰量の繊維材料を堆積させ、ポケット9内からあふれる繊維材料がスカッフィングロール65で掻き取られる。スカッフィングロール65に掻き取られずポケット9内に残った堆積体(吸収体前駆体)70は、バキュームコンベア67上に供給されたコアラップシート(図示せず)上に離型される(図9(b)参照)。図10は、コアラップシート上に離型された(吸収体前駆体)70を示す図であり、該堆積体(吸収体前駆体)70には、ポケット9内の複数の溝部9aに対応する複数の凸状部33Aが形成されている。吸収体前躯体70のうち、仕切り91の上に堆積した部分が吸収体3の凹部吸収部34となり、仕切り91が配されていた部分が吸収体3の凹部となる。
コアラップシート上の堆積体(吸収体前駆体)70は、折り返されたコアラップシートの両側部により凸状部33Aを有する面も被覆された後、ベルトコンベアにより吸収体全躯体70が反転し、の表裏が圧縮装置6に導入されて一対のプレスロール66a,66b間で加圧される(図9(c)参照)。これにより、凸状部33Aがつぶされて圧蜜化し、高密度な部分となる。凸状部33Aがつぶされた後の吸収体連続体は、図示しない切断手段で切断されて、個々の生理用ナプキンに使用される寸法の吸収体3となる。得られた吸収体3においては、吸収体全躯体70の凸状部33Aを圧蜜化した部分が、高密度な高坪量部としてのブロック状の突出吸収部33となる。
生理用ナプキン10及び20は、このようにして得られる吸収体3を、表面シート1の帯状原反と裏面シート2の帯状原反との間に間欠的に配置した後、吸収体3の周囲において、それらの表裏面シート間を接合し、次いで、個々の生理用ナプキンの寸法に切断することにより得られる。
【0049】
次に、第1実施形態の生理用ナプキン10及び第2実施形態の生理用ナプキン20を構成する部材の形成素材について説明する。
【0050】
第1実施形態の生理用ナプキン10を構成する表面シート1は、上層11及び下層12の2層の繊維層からなる。
上層11としては、例えば、カード法によって形成されたウェブや嵩高な不織布が好ましく用いられる。カード法によって形成されたウェブとは、不織布化される前の状態の繊維集合体のことである。つまり、不織布を製造する際に用いられるカードウエブに加えられる後処理、例えばエアスルー法やカレンダー法による加熱融着処理が施されていない状態にある、繊維同士が極めて緩く絡んでいる状態の繊維集合体のことである。カード法によって形成されたウェブを上層11として用いる場合には、上層11と下層12とを接合させると同時に又は接合させた後、上層11及び下層12中の繊維同士を熱融着させる。また、嵩高な不織布としては、エアスルー不織布、エアレイド不織布、レジンボンド不織布等が挙げられる。上層11の構成繊維は、実質的に熱収縮性を有しないものか、又は下層12の構成繊維の熱収縮温度以下で熱収縮しないものであることが好ましい。上層11の坪量は、充分な密度勾配を形成する観点及び表面シート1の肌触りを良好にする観点から、好ましくは10〜50g/m2、更に好ましくは15〜40g/m2である。
【0051】
下層12としては、カード法によって形成されたウェブや熱収縮性を有する不織布を用いることができる。下層12の構成繊維としては、熱可塑性ポリマー材料からなり、かつ、熱収縮性を有するものが好適に用いられる。そのような繊維の例としては、潜在捲縮性繊維が挙げられる。下層12中の潜在捲縮性繊維の含有割合は40〜100重量%であることが好ましい。潜在捲縮性繊維は、加熱される前においては、従来の不織布用の繊維と同様に取り扱うことができ、かつ、所定温度で加熱することによって螺旋状の捲縮が発現して収縮する性質を有する繊維である。
【0052】
潜在捲縮性繊維は、例えば、収縮率の異なる2種類の熱可塑性ポリマー材料を成分とする偏心芯鞘型又はサイド・バイ・サイド型の複合繊維からなる。その例としては、特開平9−296325号公報や特許第2759331号公報に記載のものが挙げられる。下層12は、例えば、このような潜在捲縮性繊維を含ませておき、上層11及び下層12との熱融着と同時に又はその後に、加熱により該繊維の捲縮を発現させ、収縮させることができる。下層12の坪量は、好ましくは10〜50g/m2、更に好ましくは15〜40g/m2である。
【0053】
これらの上層11及び下層12から構成される表面シート1は、その坪量が好ましくは20〜100g/m2、更に好ましくは35〜80g/m2である。表面シート1には、多数の凹凸部が形成されているので、該シート1は厚みが大きく嵩高なものになっている。
【0054】
第2実施形態の生理用ナプキン20を構成する表面シート80は、単層の繊維構造からなる。表面シート80の構成繊維として、加熱によってその長さが伸びる繊維(以下、この繊維を熱伸長性繊維という)を用いたことによって特徴付けられる。熱伸長性繊維としては、例えば加熱により樹脂の結晶状態が変化して伸びたり、あるいは捲縮加工が施された繊維であって捲縮が解除されて見かけの長さが伸びる繊維が挙げられる。特に好ましく用いられる熱伸長性繊維としては、配向指数が40%以上の第1樹脂成分と、該第1樹脂成分の融点より低い融点又は軟化点を有し且つ配向指数が25%以下の第2樹脂成分とからなり、第2樹脂成分が繊維表面の少なくとも一部を長さ方向に連続して存在している複合繊維(以下、この繊維を熱伸長性複合繊維という)が挙げられる。
【0055】
表面シート80は、熱伸長性複合繊維のみからなるものであってもよく、熱伸長性複合繊維と他の繊維との混合であってもよい。表面シート80が熱伸長性繊維と他の繊維との混合である場合、その繊維としては、熱伸長性複合繊維の熱伸長発現温度よりも高い融点を有する熱可塑性樹脂からなる繊維や、本来的に熱融着性を有さない繊維(例えばコットンやパルプ等の天然繊維、レーヨンやアセテート繊維など)が挙げられる。当該他の繊維は、表面シート80中に好ましくは5〜50重量%、更に好ましくは20〜30重量%含まれる。一方、熱伸長性複合繊維は、表面シート80中に50〜95重量%、特に70〜95重量%含まれることが、立体的な凹凸形状を効果的に形成し得る点から好ましい。立体的な凹凸形状を更に効果的に形成し得る点から、特に好ましくは、熱伸長性複合繊維のみからなる。
【0056】
熱伸縮性複合繊維は、例えば高速溶融紡糸法によって製造され、芯鞘型のものやサイド・バイ・サイド型のものを用いることができる。芯鞘型の熱伸長性複合繊維としては、同芯タイプや偏芯タイプのものを用いることができる。特に同芯タイプの芯鞘型であることが好ましい。この場合、第1樹脂成分が芯を構成しかつ第2樹脂成分が鞘を構成していることが、熱伸長性複合繊維の熱伸長率を高くし得る点から好ましい。第1樹脂成分及び第2樹脂成分の種類に特に制限はなく、繊維形成能のある樹脂であればよい。特に、両樹脂成分の融点差、又は第1樹脂成分の融点と第2樹脂成分の軟化点との差が10℃以上、特に20℃以上であることが、熱融着による不織布製造を容易に行い得る点から好ましい。熱伸長性複合繊維が芯鞘型である場合には、鞘成分の融点又は軟化点よりも芯成分の融点の方が高い樹脂を用いる。第1樹脂成分と第2樹脂成分との好ましい組み合わせとしては、第1樹脂成分をポリプロピレン(PP)とした場合の第2樹脂成分としては、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレンプロピレン共重合体、ポリスチレンなどが挙げられる。また、第1樹脂成分としてポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などのポリエステル系樹脂を用いた場合は、第2成分として、前述した第2樹脂成分の例に加え、ポリプロピレン(PP)、共重合ポリエステルなどが挙げられる。更に、第1樹脂成分としては、ポリアミド系重合体や前述した第1樹脂成分の2種以上の共重合体も挙げられ、また第2樹脂成分としては前述した第2樹脂成分の2種以上の共重合体なども挙げられる。これらは適宜組み合わされる。これらの組み合わせのうち、ポリプロピレン(PP)/高密度ポリエチレン(HDPE)を用いることが好ましい。この理由は、両樹脂成分の融点差が20〜40℃の範囲内であるため、不織布を容易に製造できるからである。また繊維の比重が低いため、軽量でかつコストに優れ、低熱量で焼却廃棄できる不織布が得られるからである。
【0057】
表面シート1及び80は、上述した形態に制限されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更が可能である。例えば、表面シート1は単層又は3層以上の繊維構造の繊維シートから構成されていてもよく、表面シート80は2層以上の繊維構造の繊維シートから構成されていてもよい。3層である場合、中層13を熱収縮性を有する繊維で構成し、上層11及び下層12を熱収縮性を有しない繊維から構成することが望ましい。また液の透過性を高める観点から、上層11の坪量が下層12の坪量よりも大きいことが望ましい。また、熱収縮による突部14の形成によらず表面シートの肌当接面側と非肌当接面側との繊維長の違いにより形成される突部を有する表面シートも好ましい。このようにすることで表面シートの剛性を下げることができ、好適な装着感を得ることができる。
【0058】
吸収体3の構成材料としては、特に制限はないが繊維材料、多孔質体、それらの組み合わせなどを用いることができる。繊維素材としては例えば、木材パルプ、コットン、麻などの天然繊維、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオフィレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール樹脂等の合成樹脂からなる単繊維、これらの樹脂を2種以上含む複合繊維、アセテートやレーヨンなどの半合成繊維を用いることができる。合成繊維からなる繊維を用いる場合、該繊維は熱によって形状が変化する熱収縮繊維であってもよい。例えば、熱によって繊度は大きくなるが繊維長が短くなるものや、繊度はほとんど変化しないが、形状がコイル状に変化することでみかけの繊維の占有する長さが短くなるものであってもよい。多孔質体としては、スポンジ、不織不、高吸水性ポリマーの凝集物(高吸水性ポリマーと繊維とが凝集したもの)などを用いることができる。
【0059】
裏面シート2は、透湿性フィルム単独、又はフィルムと不織布の貼り合わせ、撥水性の不織布(SMSやSMMS等)を用いることができる。コスト面やズレ止め粘着剤とのマッチングなどから、透湿フィルム単独を防漏材として用いることが最も好ましい。この場合のフィルム材としては、熱可塑性樹脂と、これと相溶性のない無機フィラーを溶融混練して押し出したフィルムを所定の寸法に延伸して微細孔をあけたフィルム、または、本質的に水分の相溶性が高く、浸透膜のように水蒸気排出可能な無孔性のフィルムが挙げられる。本発明に関わる湿度排出の性能を十分に発現し、かつ、水分のにじみ出しがない防漏層を具現化するには、透湿度は、0.7〜3.0g/100cm2hrの範囲にあることが好ましく、1.0〜2.5の範囲にあることが更に好ましい。さらっと感を十分に高める観点からは1.5〜2.5にあることが最も好ましい。また、フィルムの破れ等のトラブルなく使用可能であるためには、フィルム坪量は18〜70g/m2、より好ましくは25〜60g/m2である。また好ましい無機フィラー配合量は、フィルム全体の質量に対するフィラーの質量%として30〜65質量%、より好ましくは40〜60質量%である。
【0060】
サイドシート4は撥水性の不織布が好ましく、カード法により製造された不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、スパンレース不織布、ヒートロール不織布、ニードルパンチ不織布等の中から撥水性の物、または撥水処理した種々の不織布を用いることができる。特に好ましくは、例えば、スパンボンド不織布、スパンボンド−メルトブローン(SM)不織布、スパンボンド−メルトブローン−スパンボンド(SMS)不織布等が用いられる。
【0061】
本発明において、表面シートの粗密構造及び抑制構造は、液を平面方向に拡散させずに素早く吸収体へと引き渡しうる機能的な構造を意味し、上記の実施形態のも限定されない。また本発明において、吸収体の高密度な高坪量部とこれを囲む低密度な低坪量部との構造は、低密度な低坪量部で液を引き込んで高密度な高坪量部で吸収保持する機能的な構造を意味し、上記の実施形態のものに限定されない。例えば、明確な突出吸収部でなくてもよく、突出吸収部が凹部の区画で整列配置されているものでなくてもよい。高密度な高坪量部及び低密度な低坪量部の構造は、吸収体の排泄部対応領域のみに配されていてもよく、排泄部対応領域から前方領域まで又は排泄部対応領域から後方領域までに配されていてもよい。
また本発明の吸収性物品は、上記の実施形態に制限されるものではなく、例えば失禁パッド、失禁ライナ等に本発明を適応することができる。また、経血に限らずその他、尿、オリモノ、軟便等に対しても効果的である。また、表面シート1、吸収体3、裏面シート2及びサイドシート4の他にも用途や機能に合わせ適宜部材を組み込んでもよい。なお、上記実施形態の生理用ナプキンの表面シート1、吸収体3及び裏面シート2の材料、製法における条件や、製品の寸法諸言は特に限定されず、通常の吸収性物品において用いられている各種材料を用いることができる。
【実施例】
【0062】
以下に、本発明について実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明がこれにより限定して解釈されるものではない。
【0063】
[実施例1]
花王株式会社の市販の生理用ナプキン(商品名「ロリエエフ 多い昼〜ふつうの日用」)から表面シート及び吸収体を取り除き、下記の表面シート及び吸収体を配置し、他を復元して、評価用の生理用ナプキンのサンプルとした。
(1)表面シート(第1実施形態における表面シート)の製造
(上層)
非熱収縮性融着繊維として、大和紡績株式会社製の芯鞘型複合繊維(商品名NBF−SH、芯:ポリエチレンテレフタレート、鞘:ポリエチレン、芯/鞘重量比=5/5、繊度2.2dtex、繊維長51mm)を用いた。この繊維をカード機を用いて解繊しウエブとなし、次いでこれをエアスルー方式で熱処理(120℃)し坪量20g/m2のエアスルー不織布を得た。
(下層)
潜在捲縮性繊維(エチレン−プロピレンランダム共重合体を芯成分とし、ポリプロピレンを鞘成分とした熱収縮性を示す芯鞘型複合繊維、繊度2.2dtex、大和紡績株式会社製、捲縮開始温度90℃)を原料として用いて、上層繊維層と同様にカードウエブを製造した。得られたカードウエブの坪量は20g/m2であった。
(表面シート)
前記上層と下層を重ね合わせ、彫刻ロールと平滑ロールとの組合せからなる熱エンボスロール装置に通し、両層を部分的に接合し一体化し不織布を得た。この際、彫刻ロールを第2繊維層に当接させ、第2繊維層の側からエンボス加工が行われるようにした。彫刻ロールは175℃に、平滑ロールは125℃に設定されていた。彫刻ロールのエンボスパターンは、いわゆる千鳥格子状のパターンであり、個々のエンボス点が円形(エンボス面積0.047cm2)で且つ機械方向に沿うエンボス点の距離(ピッチ)は7mm、横方向に沿うエンボス点の距離(ピッチ)は7mm、斜め45°の方向に沿うエンボス点の距離は5mmであった。この時点でのエンボス面積率は7.2%であった。
得られた不織布を130℃に加熱した熱乾燥機内にて1〜3分間熱処理することで両面に突部を有する表面シートを得た。肌当接面側にある突部の繊維密度(m1)は0.04g/cm3であり、非肌当接面側にある突部の繊維密度(m2)は0.10g/cm3であり、エンボス部の繊維密度は0.70g/cm3であった。また表面シートの表面積(q1)に対するエンボス部の合計面積(q2)の割合(q2/q1)は、0.29であった。
【0064】
(2)吸収体の製造
図8で示した製造装置を用いて、突出吸収部の坪量200g/m2、凹部吸収部の坪量52g/m2のパルプ繊維及び高吸水性ポリマーの積繊体を得た(図5(c))。この積繊体をコアラップシートで被覆し、一対のプレスロール間に通して、3.0kgf/cm2の圧力で圧縮して吸収体を得た。この吸収体における、突出吸収部の平均密度(m5)は、0.12g/cm3であり、凹部吸収部の平均密度(m4)は、0.08g/cm3であった。高密度領域38の平均坪量(w2)は240g/m2であり、低密度領域39の平均坪量(w1)は100g/m2であった。また、凹部吸収部34の厚み(h3)は1.2mmであり、突出吸収部33の厚み(h1)は2.0mmであった。突出吸収部33の縦方向長さk1は20mmであり幅方向長さk2は10mmであり、凹部31の縦方向長さsは2.0mmであり幅方向長さrは1.0mmであった。
【0065】
[実施例2]
実施例1におけるサンプルの表面シートを下記のものに変えたサンプルとした。
・表面シート(第2実施形態における表面シート)の製造
繊維径4dtex熱伸長率8%の芯鞘型複合繊維(芯がポリプロピレン、鞘がポリエチレン)をカード機に通してウェブとし、該ウエブを、ヒートエンボス装置に導入して、該ウエブに線状の格子柄エンボスを形成した。次いで、そのウエブを、熱風吹き付け装置に導入し、エアスルー加工による熱風処理を行い、繊維は熱伸長して、線状のエンボスの近傍に繊維並列起立部を有する表面シートであった。
【0066】
[比較例1]
実施例1におけるサンプルの吸収体を下記のものに変えたサンプルとした。
花王株式会社の上記の市販の生理用ナプキンを、比較例の生理用ナプキンとして用いた。この市販の生理用ナプキンの吸収体には、直径2mmの円形のエンボス部が全域に亘って千鳥状に形成されていた。エンボス部の中心点間のピッチは7mmである。坪量(目付)は200g/m2であった。
【0067】
[比較例2]
実施例2におけるサンプルの吸収体を下記のものに変えたサンプルとした。
花王株式会社の上記の市販の生理用ナプキンを、比較例の生理用ナプキンとして用いた。この市販の生理用ナプキンの吸収体には、直径2mmの円形のエンボス部が全域に亘って千鳥状に形成されていた。エンボス部の中心点間のピッチは7mmである。坪量(目付)は200g/m2であった。
【0068】
[性能評価]
<吸収速度の測定方法>
吸収速度(D/W法)の測定方法は次のとおりである。測定には図11に示す装置を用いる。この装置は、横コック付きビュレットを備えている。ビュレットの内径は10.4mm、容積は50mLであり、目盛りが付されている。ビュレットの上端開口部にはゴム栓(シリコン栓でも可)が取り付けられて、該開口部を封止できるようになっている。ビュレットの下端には、内径6mmのビニール管の一端が接続されている。ビニール管の他端は、試料載置台の底面に接続されている。試料載置台は浅底のシャーレ状の形状のものである。試料載置台の底面は開口しており、その開口にビニール管の他端が接続されている。試料載置台の内径は53mmであり、深さは6mmである。試料載置台内にはガラスフィルター(JIS G1、直径52mmφ、厚さ4.3mm)が設置されている。ガラスフィルター上には濾紙(No.2、直径70mm)が載置される。
【0069】
<単位時間当たりの吸収量測定>
図11に示す装置を用いた単位時間当たりの吸収量の測定手順は次のとおりである。
(1)コックBを閉じ、コックAを開く。ビニール管内に空気が残らないように注意しながら、生理食塩水をビュレット内に注入する。注入は、試料載置台上のガラスフィルター(G1グレード)が十分に濡れるまで行う。
(2)コックAを閉じ、生理食塩水をビュレットの10mlの標線まで注入する。ビュレットの上端開口部のゴム栓を閉じ、更にコックAを開く。
(3)コックBを開き、コックBの管内に液が溜まらないように注意しながら、試料載置台上のガラスフィルターの上面の位置と、コックBの中心線の位置とを合わせる。
(4)ガラスフィルターの余分な水分をふき取る。また、ビュレットの液面を20mlの標線に合わせる。
(5)試料をガラスフィルター上に乗せる。このとき、試料載置台に置く試料は、吸収性物品中で肌側となる面が、ガラスフィルターと対向するようにする。
(6)コックBから気泡が出た時点でストップウォッチを作動させ、ビュレット内の生理食塩水の液面の経時変化を10分間測定する。液面の経時変化が、試料に吸収された生理食塩水の量に相当する。発生する気泡が少ないか、又は発生する気泡が小さいために測定しづらい場合には、試料のサイズを任意に変更してもよい。ビュレット内の生理食塩水の液面変化を読み取り、1分後、3分後、5分後、10分後の吸収量を求め、単位時間当たりの吸収量として表す。
【0070】
<表面液戻り量測定>
表層液戻り量の測定方法を以下に説明する。この表層液戻り量とは、吸収体に吸収された液が加圧によってどれだけ表層(表面シート)側へ戻るかを示したものである。この量が少ないほど、吸収体の液保持性が高く、装着時のドライ感が得られ易い。
まず生理用ナプキンを水平に置いた。この生理用ナプキン上に、底部に直径1cmの注入口がついた円筒つきアクリル板を重ねて、サンプルの排泄部対向領域(サンプルの長手方向前端から40mmの位置)に注入口から粘度を8.0±0.1cPに調整した3gの脱繊維馬血を注入した。注入後、その状態を1分間保持した。次に、円筒つきアクリル板を取り除き、表面シートの表面上に、縦6cm×横9.5cmで坪量13g/m2の予め質量を測定しておいた吸収紙(市販のティッシュペーパー)を載せた。さらにその上に圧力が4.5×102Paになるように錘を載せて5秒間加圧した。加圧後、吸収紙を取り出し、加圧前後の吸収紙の質量変化を測定し、吸収紙に吸収された脱繊維馬血の質量を表面液戻り量とした。
次いで、試験後のサンプルに再び上記のアクリル板を重ね、1回目の注入から3分後に再び注入口から3gの脱繊維馬血を追加して注入した。生理用ナプキンへの馬血の注入位置は、最初の3gを注入した位置と同じとした。そして、注入後1分間その状態を保持したままにした後、アクリル板を取り除き、前回と同様にして2回目の表面液戻り量を測定した。
上記の評価結果を下記表1に示す。
【0071】
【表1】
【0072】
表1に示す結果から明らかなように、実施例1及び2の生理用ナプキンは、液の吸収速度が速く吸収性能に優れることが分かった。その結果、実施例1及び2の生理用ナプキンは、排泄の初期の段階から液残りを抑え、液戻りも少なく、肌に対するドライ感が得られた。
【符号の説明】
【0073】
1 表面シート
14 突部
2 裏面シート
3 吸収体
31 凹部
33 突出吸収部
34 凹部吸収部
4 サイドシート
5 防漏溝
7 条溝
10 生理用ナプキン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
肌当接面側に配置される液透過性の表面シート、非肌当接面側に配置される裏面シート、及び該両シートの間に配置される吸収体を有する吸収性物品であって、
前記表面シートは、その厚み方向に見て非肌当接面側よりも相対的に繊維密度の低い低密度部を肌当接面側に備える繊維の粗密構造と、平面方向への液の拡散を抑える抑制構造とを有し、
前記吸収体は、高坪量部と低坪量部とを有し、前記高坪量部は前記低坪量部よりも相対的に高密度であり、前記低坪量部が前記高坪量部を囲むようにして平面方向に連続配置されている吸収性物品。
【請求項2】
前記表面シートの抑制構造は、繊維の圧縮によって形成される請求項1記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記表面シートの抑制構造は、前記吸収体の低坪量部及び高坪量部に亘って配設されている請求項1又は2記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記吸収性物品の着用者の排泄部に対応する領域において、少なくとも物品幅方向の中央部分に、前記表面シートの抑制構造を構成する複数の抑制部が物品長手方向に列をなすように配されており、かつ該抑制部の列と前記吸収体の低坪量部とが物品厚み方向に重なる部分を有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記表面シートと前記吸収体とを表面シート側から圧搾して形成される条溝が物品幅方向の左右両側縁寄りにあり、該条溝は、物品の長手方向に沿って前記吸収体の低坪量部と記高坪量部に亘り配設されている請求項1〜4のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記吸収体の前記低坪量部は、肌当接面側に偏在した凹部吸収部である請求項1〜5記載の吸収性物品。
【請求項1】
肌当接面側に配置される液透過性の表面シート、非肌当接面側に配置される裏面シート、及び該両シートの間に配置される吸収体を有する吸収性物品であって、
前記表面シートは、その厚み方向に見て非肌当接面側よりも相対的に繊維密度の低い低密度部を肌当接面側に備える繊維の粗密構造と、平面方向への液の拡散を抑える抑制構造とを有し、
前記吸収体は、高坪量部と低坪量部とを有し、前記高坪量部は前記低坪量部よりも相対的に高密度であり、前記低坪量部が前記高坪量部を囲むようにして平面方向に連続配置されている吸収性物品。
【請求項2】
前記表面シートの抑制構造は、繊維の圧縮によって形成される請求項1記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記表面シートの抑制構造は、前記吸収体の低坪量部及び高坪量部に亘って配設されている請求項1又は2記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記吸収性物品の着用者の排泄部に対応する領域において、少なくとも物品幅方向の中央部分に、前記表面シートの抑制構造を構成する複数の抑制部が物品長手方向に列をなすように配されており、かつ該抑制部の列と前記吸収体の低坪量部とが物品厚み方向に重なる部分を有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記表面シートと前記吸収体とを表面シート側から圧搾して形成される条溝が物品幅方向の左右両側縁寄りにあり、該条溝は、物品の長手方向に沿って前記吸収体の低坪量部と記高坪量部に亘り配設されている請求項1〜4のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記吸収体の前記低坪量部は、肌当接面側に偏在した凹部吸収部である請求項1〜5記載の吸収性物品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−239720(P2012−239720A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−114170(P2011−114170)
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]