説明

吸収性物品

【課題】表面シートへの液残りや液戻りをより一層効果的に抑制することによりムレにくくし、さらに体液の排泄がいっきに多くあったときにすばやく対応可能であり、かつ着用者の身体にフィットし、その動きによく追随する柔軟性に優れる吸収性物品を提供する。
【解決手段】肌当接面側に配置される液透過性の表面シート、非肌当接面側に配置される裏面シート、及び該両シートの間に配置される吸収体を有する吸収性物品であって、前記吸収体には高坪量領域と、該高坪量領域より相対的に坪量が低い低坪量領域とを有しており、前記低坪量領域が前記高坪量領域を囲むようにして平面方向に配置され、前記表面シートは肌当接面側に形成された複数の畝状の突部を有しており、前記表面シートの平面視において該突部の間の窪みには繊維量の少ない部分又は前記表面シートの厚み方向に通ずる開孔が形成されている吸収性物品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生理用ナプキン、使い捨ておむつ、失禁パンツ等の吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
生理用ナプキン等の吸収性物品においては、各部材の材料や構造を改良し、その機能や着用感の向上が図られてきた。吸収体についても、使用状況や物品の種類に応じた機能性のものが種々提案されている。
【0003】
例えば、表面シート、裏面シート及び吸収体を有するナプキンにおいて、吸収体の裏面シート側から陥没する多数の圧縮部が点在するように配置されたものが開示されている(特許文献1参照)。該圧縮部と圧縮されていない非圧縮部とはゆるやかに厚みを変化させて連続した起伏をなし、非圧縮部から圧縮部へと高まる密度勾配が形成される。これにより、表面シートから吸収体に導かれた液が素早く引き込まれ、液体の十分な吸収保持量を実現しつつ、液戻り防止性やモレ防止性を良化することができる。また、縦方向に筋状に延びる高密度部と低密度部とが交互に区画された吸収体を有する吸収性物品が開示されている(特許文献2参照)。この吸収体により、吸収性物品は、液の縦方向への液拡散が促進され、液引き込み性が高まるとともに、幅方向からの圧力にも柔軟に変形可能とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−55352号公報
【特許文献2】特開2010−136899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記の従来の吸収性物品の吸収性能をさらに高め、表面シートへの液残りや液戻りをより一層効果的に抑制することによりムレにくくし、さらに体液の排泄がいっきに多くあったときにすばやく対応可能であり、かつ着用者の身体にフィットし、その動きによく追随する柔軟性に優れる吸収性物品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、肌当接面側に配置される液透過性の表面シート、非肌当接面側に配置される裏面シート、及び該両シートの間に配置される吸収体を有する吸収性物品であって、前記吸収体には高坪量領域と、該高坪量領域より相対的に坪量が低い低坪量領域とを有しており、前記低坪量領域が前記高坪量領域を囲むようにして平面方向に配置され、前記表面シートは肌当接面側に形成された複数の畝状の突部を有しており、前記表面シートの平面視において該突部の間の窪みには繊維量の少ない部分又は前記表面シートの厚み方向に通ずる開孔が形成されている吸収性物品により上記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の吸収性物品は、体液の表面シートへの液残りや液戻りをより効果的に抑制し、ムレにくく、体液の排泄がいっきに多くあってもすばやく対応して、吸収性の即時の回復・保持が可能であるという優れた作用効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明における吸収性物品の一実施形態としての生理用ナプキンを肌当接面方向から示した一部切欠斜視図である。
【図2】図1に示すII−II線断面である。
【図3】本実施形態の生理用ナプキンにおける表面シートの一部を拡大して一部断面により模式的に示す斜視図である。
【図4】本実施形態に係る吸収体のみを模式的に示す図であり、(A)は吸収体をその肌当接面側からみた平面図であり、(B)は(A)のB−B線断面図であり、(C)は吸収体をその非肌当接面側からみた平面図である。
【図5】図1に示す生理用ナプキンの所定の断面の一部を拡大して示した一部断面図である。
【図6】第1実施形態及び第2実施形態に係る吸収体の好ましい製造方法について、製造時におけるプレスロール加工前後の状態を概略化して示す工程説明図である。
【図7】(a−1)は回転ドラムの外周面にあるポケットを一部拡大して示す斜視図であり、(a−2)は回転ドラムのポケットに繊維材料が堆積した状態を示す断面図であり、(b)は吸収体前駆体が回転ドラムからバキュームコンベアへ離型される様子を示す説明図であり、(c)は加圧工程の説明図である。
【図8】堆積体(製造中間体)の一部を凸状部側から示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本発明における吸収性物品の好ましい一実施形態としての生理用ナプキンを肌当接面方向から示した一部切欠斜視図であり、図2は図1に示すII−II線断面である。図3は本実施形態の生理用ナプキンにおける表面シートの一部を拡大して一部断面により模式的に示す斜視図である。また、図4は本実施形態に係る吸収体のみを模式的に示す図であり、(A)は吸収体をその肌当接面側からみた平面図であり、(B)は(A)のB−B線断面図であり、(C)は吸収体をその非肌当接面側からみた平面図である。なお、これらの図において煩雑さを避けるため吸収体のコアラップシートを省略して示す。
【0010】
まず本実施形態の上記生理用ナプキン10の概要を説明する。
本実施形態の実施形態の生理用ナプキン10は、図1に示すように、肌当接面側に配置される液透過性の表面シート1、非肌当接面側に配置される裏面シート2、及び該両シートの間に配置される吸収体3を備え、実質的に縦長の形状である。裏面シート2の肌当接面側に吸収体3が接着剤等で接合され配設されている。さらにその裏面シート2の肌当接面側における前記吸収体3の長手方向左右両側の外方ではサイドシート4が裏面シート2に当接して接合されている。その裏面シートとサイドシートとが当接した部分では表面シート1が裏面シート2とサイドシート4とで挟持され、さらにその幅方向(X方向)内方向に向け表面シート1が吸収体3よりも肌当接面側に位置されるように配されている。このように積層された前記の各シート部材が吸収体3の外方で吸収体3を介在させずにヒートシール等により接合され、ナプキン10の外周縁部6を形成している。この外周縁部6は、全体的な伸縮性を阻害せず、一度吸収した液が漏れない程度に接合されている。サイドシート4の自由端41には外周縁部6へ向うポケット(図示せず)が形成され、液等の横モレを防ぐ効果を有する。なお、本実施形態における生理用ナプキン10の幅方向左右両側部には、サイドシート4を有してなるウイング部42が生理用ナプキン10の幅方向外方に向って延出し、この部分をショーツにおける股下部の非肌当接面側に巻き込んで生理用ナプキン10をショーツに固定する。
【0011】
生理用ナプキン10の肌当接面側には、表面シート1の肌当接面側から吸収体3にかけて圧搾した防漏溝5が施されている。防漏溝5の平面視形状は、吸収体3の縦方向中央部分において、経血等の排泄部対応領域の幅方向左右両側に縦方向に長さを持つ圧搾部分が配置され、該左右それぞれの圧搾部分が吸収体3の前後端に近づくにつれ徐々に吸収体3の中央方向に向けて湾曲し、前端、後端が一致している。つまり、防漏溝5は、平面視において生理用ナプキン10の長手方向の両側部においてその肌当接面側に配された2本の圧搾部分が前後方向に延びて無端環状に連続した形状である(図1参照)。このようにすることで、ナプキンを装着して使用する際の排泄液の横漏れを効果的に防止することができる。なお、排泄部対応領域とは経血もしくはおりもの等の体液の排泄を直接受ける部分及びその近傍である。また、本実施形態における防漏溝5の平面視形状は、前述の形状に限定されず、無端環状の前端、後端で互いに交差していてもよく、用途に合わせ適宜決められることが好ましい。
【0012】
表面シート1、裏面シート2、サイドシート4、及び吸収体3の材料、一般的なサイズ等に関する詳細は後述する。本実施形態において表面シート1は、排泄された体液を速やかに吸収し、吸収体に受け渡す観点と、肌に対する触りのやさしさ観点から肌当接面側に繊維による突部を有した液透過性の不織布を用いている。また、裏面シート2としては、通気性を有した透湿性フィルムを単層で用いている。吸収体3としてはパルプ繊維等と吸収性ポリマーとを紙などのコアラップシート(図示せず)で被覆してなるものが好ましい。また、裏面シート2の非肌当接面側には、生理用ナプキン10を着衣に固定するための粘着剤(図示せず)が塗布されている。該粘着剤によって、生理用ナプキン10が使用者の着衣に接着固定される。本実施形態の生理用ナプキン10は、その表面シート側を着用者の肌当接面側に向け、かつ、その縦方向を下腹部から臀部にかけて配し、その幅方向を左右の足をつなぐラインの方向に向けて配して着用する。
【0013】
本発明においては、特に断らない限り、装着者の体に接触する側の面を肌側面ないし肌当接面あるいは表面といい、これと反対側の面を非肌面ないし非肌当接面あるいは裏面という。この2つの面において、肌側面に近い方ないしその延長方向を肌面側、肌当接面側又は表面側といい、非肌面に近い方ないしその延長方向を非肌面側、非肌当接面側又は裏面側という。装着時に着用者の前側に位置する方向を前方といいその端部を前端部とし、後側に位置する方向を後方といいその端部を後端部として説明する。吸収性物品の表面又は裏面の法線方向を厚み方向といいその量を厚さという。更に、吸収性物品の平面視において腹側部から股下部を亘り背側部に至る方向を長手方向又は縦方向といい、この縦方向と直交する方向を幅方向という。なお、前記縦方向は典型的には装着状態において装着者の体の前後方向と一致する。
【0014】
本実施形態の生理用ナプキン10において、表面シート1は肌当接面側に形成された複数の畝状の突部11(以下、畝部11ともいう。)を有している。該畝部11は表面シート1の坪量の高い領域とされ、その間の窪みの部分が坪量の低く厚みの薄い窪み部12とされている。畝部11及び窪み部12はそれぞれ長手方向(Y方向)に延びており、かつ、前記2つの領域が交互に幅方向(X方向)に複数配されているのが好ましい(図2,3参照)。この畝部11及び窪み部12は、窪み部12の部分で表面シート1の肌当接面側の構成繊維の量を少なくすることで形成されており、この畝部11及び窪み部12を含む表面シート1全体は継ぎ目のない一体構造をなしている。したがって、表面シート1は、その幅方向(X方向)断面でみたときに厚みが肌当接面側で周期的に変化する波形形状を有し、畝部11と窪み部12との間とは相対的な高低関係である(図2,3参照)。幅方向に隣り合う2つの畝部11の頂部11aの間に位置する最も実質厚みの薄い部位及びその近傍が窪み部12となる。畝部11と窪み部12との境界を定義するとすれば、畝部11の頂部11aにおける見掛け厚みの略1/2の厚みの位置を畝部11と窪み部12との境界部とすることができる。表面シート1の畝部11と窪み部12とは、その繊維量が異なることで実質的な坪量が異なっている。畝部11の坪量が窪み部12よりも相対的に大きいことによって、肌当接面側に張り出した畝部11は着用者の肌に当る部分として潰れにくく、かつ、柔軟に変形させることが可能となる。
【0015】
さらに、窪み部12の底部には、開孔部13が長手方向に所定間隔で間欠的に多数配されているのが好ましい(図3参照)。開孔部13は、図示のように長手方向に長さを持つ長方形状が好ましく、表面シート1の構成繊維がより分けられることにより形成できる。開孔部13は、繊維の熱変形を利用した圧着によって形成されるものではなく、構成繊維の繊維間距離が維持されて剛性が高まることなく、変形に対する柔軟性及び形状復元性に優れているのが好ましい。また、開孔部13では、繊維による通液抵抗が最も低い部分であるため、当然に液が透過し易く液残りを少なくすることができる。加えて、畝部11の頂部11aから窪み部12へ、さらに開孔部13の端部へと繊維密度が高まる密度勾配があることが好ましい。これより、排泄液が頂部11aから開孔部13へとさらに導かれ易くなる。また、低坪量の窪み部12が隣接する高坪量の畝部11の間で長手方向に配されていることから、液の長手方向の拡散を促し易く液の横漏れ防御にも効果的である。
なお本発明において、表面シートの開孔部13は、通液抵抗が少なく液の透過が高められる機能をみたすものであれば、必ずしも表面シート1の肌当接面側から非肌当接面側に貫通した完全に繊維のない孔でなくてもよい。例えば開孔部13として、繊維の圧搾等によって形成された窪み部12の繊維量に比してさらに繊維量の低い部分であってもよく、貫通孔と繊維量の少なくされた部分とが混在するものであってもよい。
【0016】
一方、本実施形態の生理用ナプキン10における吸収体3は、高坪量領域の突出吸収部33と、該高坪量領域より相対的に坪量が低い低坪量領域の凹部吸収部34及び凹部31とを有しており、前記低坪量領域が前記高坪量領域を囲むようにして平面方向に配置されている。吸収体3の構成について以下に詳述する。
吸収体3の非肌当接面側に幅方向に沿って延びる複数条の凹部31があり、前記吸収体3の凹部31がさらに吸収体3の長手方向に沿っても形成されている。すなわち、前記吸収体3の非肌当接面側は凹部31によって囲われた領域が突出吸収部33として区画されて形成されている。本実施形態の突出吸収部33は平面視において自然状態にて互いに対して所定の隙間s,r(図4参照)を有するように縦横方向に配設されている。本実施形態において突出吸収部33は縦横に突出吸収部33を投影したときに隣あう突出吸収部33と一致する市松配列である。つまり、多数の突出吸収部33を長手方向及び幅方向に投影したときにいずれの方向にもその投影像が重なる配置にされている。その他、適宜用途や機能に応じて配列を選択することができ、特に限定されないが、例えば千鳥状配列(上記投影像が長手方向及び/又は幅方向にみて略半ピッチずれのある配置)であってもよい。この突出吸収部33は、平面視において長手方向に長い略長方形状であるが、本発明においてこの形状は特に限定されず任意の形状のものを採用可能である。本実施形態において突出吸収部33はパルプ繊維と超吸収性ポリマーとから構成されており、その輪郭は図示したもののように定形的なものではなくてもよく、全体として上述した立体形状のものとされていることが好ましい。また、突出吸収部33の縦横の配列も上記に限らず用途に合わせ適宜決められるのが好ましい。吸収体3を上述したように縦横の凹部31によって区画されることにより、その部分において可撓部位となり、生理用ナプキン10が肌面の起伏にフィットする「身体適合性」、及び着用者の動きにも良好に追随して肌に対する部分的な隙間の発生を防止する「動作追随性」が極めて高くなる。
【0017】
本実施形態における吸収体3の凹部31の肌面側には、吸収体3の一部として、突出吸収部33よりも厚みの薄い領域である凹部吸収部34が配されている。突出吸収部33が配される吸収体3の領域P(図2)に比し、凹部吸収部34が配される吸収体の領域Q(図2)の坪量は小さい。また、吸収体3の詳細な製造方法は後述するが、本実施形態における突出吸収部33は凹部吸収部34より相対的に高密度であるのが好ましい。すなわち、本実施形態の吸収体3は高坪量で高密度な突出吸収部33と該高坪量で高密度な突出吸収部33より相対的に低坪量で低密度な凹部吸収部34とからなり、前記高坪量で高密度な突出吸収部33は前記低坪量で低密度な凹部吸収部34に平面視において囲われて区画されて形成されているのが好ましい。なお、凹部吸収部34と突出吸収部33の肌当接面側の部分とが平面方向に連なって吸収体3の肌当接面側の薄皮状部を形成している。凹部吸収部34や突出吸収部33を含む吸収体3全体は継ぎ目のない一体構造である。
【0018】
本実施形態の吸収体3は、凹部吸収部34では繊維の密度が低く、かつ、厚みが薄いことで坪量が低いことにより液の通液抵抗が低くなる。換言すると吸収体3の肌当接面側に到達した液は、表面シート1の非肌側面と厚み方向に隣接し吸収体3の肌面側で薄皮状部をなす、通液抵抗が低い凹部吸収部34から優先的に吸収されるということである。したがって、本実施形態の生理用ナプキン10おいては、表面シート1の窪み部12、特に開孔部13からこれに厚み方向に隣接する凹部吸収部34へ繋がる導液路が形成されている。この表面シート1と吸収体3とが連携した導液路によって、液の有する排泄時の勢い(運動エネルギー)や位置エネルギーを保持したまま、液が素早く透過され、表面シートの肌面に液残りが生じにくい。吸収体3においては、凹部吸収部34が表面シート1からの液をすばやく吸収体3内部に引き込むチャンバーの作用を奏する。凹部吸収部34を通過した液は、凹部吸収部34と突出吸収部33との繊維の密度の勾配(ないしは密度差)によって生じる毛管力によって突出吸収部33へと素早く取り込まれ厚み方向に引き込まれて保持される。一方、経血等などの高粘性の液が一度に多量に排泄されたり繰り返し排泄されたりした場合に、一度に突出吸収部33で吸収保持できなくとも、凹部吸収部34が素早く引き込んで凹部31が一時的に液を保持する緩衝作用を果たし、高密度部分と低密度部分の境界領域では液を留め置かないように働く拡散作用をも果たす。しかも、前述のとおり、吸収体3の非肌当接面側で凹部31が連接されていることによって、表面シート1よりも遠い位置で液を移動させて各突出吸収部33で確実に吸収保持させることができる。このように凹部吸収部34と凹部31とからなる通液構造によって、液が表面シート1側から吸収体3内部に素早く取り込まれて突出吸収部33で確実に吸収保持され得る。こうして吸収体3の肌当接面側での液残りが抑制され、かつ吸収体3内部から表面シート1への液戻りが生じ難い。
【0019】
表面シート1と吸収体3との液の引き渡しを毛管力の関係から見れば、表面シートに接する吸収体の面は低密度よりより高密度であるほど吸収力・保持力が強く、多量の液を吸収するのに好適と考えられる。しかし高密度だけでは一気に多量の体液が排泄されたときは、吸収体の吸収速度が体液の排泄速度に追いつかないため、液戻りが発生するのが避けられない。本実施形態では表面シート1の肌当接面側に複数の畝部11とその間の窪み部12を設けることにより、前記の多量の液は表面シート1上の遠くまでほぼ全体に素早く行き渡り平均化される。同時に、液は、窪み部12の開孔部13から非肌当接側方向に引き渡されて、表面シート1から吸収体3の凹部吸収部34へと通液抵抗なく透過される。凹部吸収部34に至った液は、その後直ちに突出吸収部に吸収・保持される。このように表面シート1の構成と吸収体3の構成との相互作用で生理用ナプキン10は、液残り及び液戻りの防止、ドライ感の良化、着用者の肌触りのよさを実現できることとなる。
【0020】
また、凹部吸収部34と凹部31とからなる通液構造によって、ナプキン10への着座時等にかかる厚み方向への圧力があったとしても、経血等の排泄液が表面シート1側へ液戻りしにくくなる。このことは、凹部吸収部34が液を保持することなく素早く凹部31へ引き込むこと、繊維密度の高い突出吸収部33の液保持性が高いこと、凹部31を有する貯蔵構造で吸収体3の非肌当接面側でも液を移動させて突出吸収部33に吸収保持させるので凹部31自体の貯蔵量も多くならないことなどの複数の作用により生じる。また、凹部吸収部34の存在で凹部31にかかる圧力が和らげられるとともに、この圧力で凹部31での液の移動が促されることも要因のひとつと考えられる。このように吸収体3の表面シート1側に液を残さずに凹部31に素早く引き込むことで、厚み方向の圧力においても液の表面シート1側への戻りが効果的に抑制され、ドライ感が高められる。
【0021】
ここで本実施形態の生理用ナプキン10における上述した区画された吸収体3と表面シート1との動的相互作用の特徴を図5に基づき詳しく説明する。図5は図1に示す生理用ナプキンの所定の断面の一部を拡大して示した一部断面図である。なお、図の煩雑化を避け、裏面シート2及びサイドシート4は示しておらず、表面シート1の形状については模式化して示しており、本発明の実施において必ずしも図示した形状と同一の形状のものに限定されない。
【0022】
本実施形態の生理用ナプキン10は上述した開孔部13と凹部吸収部34とが排泄部対応領域を含む平面視における幅方向の中心位置において厚み方向に略一致して配されている(図5参照)。このような配置にされた生理用ナプキン10に身体から排泄液aが排泄されると、表面シート1の窪み部12においては、畝部11に対し繊維量が相対的に少ない分、液の通液抵抗が低く、排泄液を素早く吸収体3側へ引き込むことができる。また、開孔部13においては当然に液が通液し易い。したがって、畝部11の頂部11aから窪み部12へは繊維密度の勾配による液の移行がなされ、窪み部12に集まった液は開孔部13によって吸収体3側への液の移行がなされる通液路が形成されることとなる。つまり、少ない液量であっても吸収体3へと導かれることとなり効果的に吸収体3側へと透過される。また、吸収体3の肌当接面側が平坦な形状であることで、表面シート1と吸収体3とが接触しやすく、表面シート1を通過した排泄液aが吸収体3に広い範囲で導かれやすい。一方、吸収体3は、前述のとおり、非肌当接面側に複数の凹部31を有して、その肌当接面側には凹部吸収部34が配されている。排泄された液aは通液抵抗が低い凹部吸収部34をチャンバーとして素早く吸収体3の厚み方向に向かって透過される。そして吸収体3の厚み方向に移行してきた排泄液aは、その一部が周辺の突出吸収部33へ向かう移行液aとなり、他の一部が凹部31に取り込まれる貯蔵液aとなる。このように、表面シート1から透過される液が凹部吸収部34で引き込まれ、aやaへと分散されることで、吸収体の表面側での保持量を減少させ通液抵抗が更に低くなることとなる。これにより表面シート1への液戻りも効果的に抑制され得る。
【0023】
このように本実施形態における生理用ナプキン10は、厚み方向への液の高い透過性を有した表面シート1の性能を、吸収体3の厚み方向への液の高い透過性によって十分に発揮させることができ、これにより取り込んだ水分の肌への液戻りを抑え、好適なドライ感を使用者に与える効果を奏する。なお、表面シート1の開孔部13と吸収体3の凹部吸収部34との厚み方向における位置関係においては本発明の実施において必ずしも一致しなくてもよい。
【0024】
また、本実施形態の吸収体3内部には吸水性ポリマーが存在することが好ましい。上述した液戻りをより効果的に抑制するため、該吸水性ポリマーは、凹部吸収部34よりも突出吸収部33の部分に多く偏倚して配されるのが好ましく、凹部吸収部34に配されずに突出吸収部33においてその非肌面側に多く偏倚して配されることがさらに好ましい。また、凹部31の非肌面側に吸水性ポリマーを配することも同様の観点から好ましい。
さらに本実施形態の吸収体3において、凹部31を有する通液構造が防漏溝5の幅方向外方の部分にまで延在して配設されることが好ましい。この配置によって、製品の幅方向を軸とした製品曲げ剛性が低減され、股間から臀部にかけて着用者の身体のカーブに合わせて変形しやすくなるとともに、横漏れを起こし易い吸収体3両側部にも可撓性を付与し、着用者の股下にフィットさせることができ、着用者の体の動きにも追従して隙間が生じるのを防ぐことができる。
【0025】
本実施形態の生理用ナプキン10において、その排泄部対応領域の幅方向両端にある防漏溝5の溝部分は、その位置において吸収体3の複数の突出吸収部33と凹部吸収部34とを物品縦方向(Y方向)に亘って配設されることが好ましい。こうすることでナプキン10装着時に、着用者の足の付け付近において、突出吸収部34同士のせん断による形状崩れが防止され、幅方向からの液漏れを抑え得る。また、ナプキン10装着時に防漏溝5が折れ曲がり部となって着用者の体にフィットさせ易く、吸収体3の幅方向中央部分の突出吸収部33へ不要な負荷が掛かり難くなる。その結果、幅方向中央部分の液を多く保持する突出吸収部33の形状が崩れ難く液漏れがさらに防止され得る。また、凹部31が条溝7の幅方向外方の部分にまで延在して配されることが好ましい。この配置によって、製品の幅方向を軸とした製品曲げ剛性が低減され、股間から臀部にかけて着用者の身体のカーブに合わせて変形しやすくなるとともに、横漏れを起こし易い吸収体3両側部にも可撓性を付与し、着用者の股下にフィットさせることができ、着用者の体の動きにも追従して隙間が生じるのを防ぐことができる。
防漏溝5の溝部分は、表面シート1と吸収体3とを張り合わせた後、表面シート1側から表面シート1と吸収体3とを圧縮して形成される。従って、防漏溝5はその周辺部と比較して風合いが硬くならず着用者に違和感を与えないよう、少なくともその一部が表面シート1の窪み部12と重なることが好ましい。この配置により、肌は表面シート1の畝部11に積極的に当たるため、風合いの硬い窪み部12と肌が直接当たることを防ぐことができ、着用者に良好な装着感を与えることができる。
【0026】
本実施形態における畝部11の見かけ厚みは、表面シート1の肌触りを良好にするために、0.1〜5.0mmが好ましく、0.3〜3.0mmがさらに好ましい。表面シート1の肌面側で見たときの畝部11と窪み部12との高低差は表面シート1のクッション性及び通気性を高め更に液の拡散を制御するために、0.2〜4.0mmが好ましく、0.2〜2.0mmがさらに好ましい。
【0027】
本実施形態における突出吸収部33及び凹部31の大きさ及び形状は特に限定されず使用する吸収性物品の用途によっても多少異なるが、突出吸収部33の長手方向長さk(図4参照)は、凹部を基軸に吸収体が徐々に肌当接面へ向かって湾曲し、着用者の身体の形状に沿って変形することを促すという観点から10〜30mmが好ましく、15〜25mmがより好ましい。その幅方向長さkは、凹部31が着用中に吸収体に加わる幅方向からの圧縮力を緩和する観点から5〜20mmが好ましく、7〜15mmがより好ましい。また、凹部31の長手方向長さsは1〜5mmが好ましく、1〜3mmがより好ましい。幅方向長さrは1〜5mmが好ましく、1〜3mmがより好ましい。
【0028】
また、上述したように凹部吸収部34が液の保持量を抑えて液を素早く凹部31へ移動させ、凹部31が排泄液の一時貯蔵の機能を有して表面シート1側へ液を逆戻りさせないために、凹部31の深さ(h2)の吸収体3の厚み(突出吸収部33の厚み)(h1)に対する割合(%)(図2参照)は、20〜80%であることが好ましく、30〜70%であることがさらに好ましい。上記下限以上とすることで、表面シートへの液残りや液戻りをより効果的に抑制することができ、上限以下とすることで表面シートより受け取った液を広げすぎずに突出吸収部33へと移動させることができる。同様の理由から、凹部吸収部34及び凹部31を有する領域Q(図2参照)の構成材料坪量(w)は、10〜150g/mであることが好ましく、20〜140g/mであることがさらに好ましい。突出吸収部33を有する領域P(図2参照)の坪量(w)は、160〜400g/mであることが好ましく、200〜350g/mであることがさらに好ましい。さらに、両者の坪量比(w/w)は、0.01〜0.90であることが好ましく、0.10〜0.70であることがさらに好ましい。
【0029】
本発明において、凹部31は、吸収体3の底部から肌当接面側に窪んで空隙となる部分である。凹部吸収部34とは厚み方向においては凹部31の上部に位置する吸収体3の領域であって、平面視においては幅方向においてr、長手方向においてsの領域である(図4参照)。突出吸収部33は、厚み方向に並ぶ凹部31及び凹部吸収部34の領域Qに隣接し、領域Qに囲まれる吸収体の上部から底部までの領域Pの図中2点鎖線で示した部分である(図2及び図5参照)。なお、図中に示した凹部吸収部34、及び突出吸収部33のそれぞれの領域は実際的には図示したように区画されている必要はなく、その範囲は使用する目的によって適宜決められることが好ましい。
【0030】
上述した凹部吸収部34の厚み(h)、及び突出吸収部33の厚み(h)の測定は、大きさ37mm×37mm、厚み3mmのアクリルプレートを吸収性コア10上に置き、KEYENCE社製非接触式レーザー変位計(レーザーヘッドLK−G30、変位計LK−GD500)を用い上部33aを含む突出吸収部33の厚み(h)を計測し、凹部吸収部34の厚み(h)を吸収体の図2相当の断面をKEYENCE社製マイクロスコープVHX−1000を用いることで計測した。
また凹部吸収部34の坪量(w)と突出吸収部33の坪量(w)の測定方法は、FEATHER社製カミソリ(フェザー剃刃S片刃)を押し当てて、凹部の凹部吸収部34を切り出して重量計測して切り出した部分の面積で除すことで算出し、同様に上部33aを含む突出吸収部33を切り出して重量計測して切り出した部分の面積で除すことで坪量を算出した。
【0031】
畝部11及び窪み部12の厚みや高低差は、マイクロスコープVH−8000(キーエンス社製)を用い、表面シート1の断面を50〜200倍に拡大観察して測定する。断面はフェザー剃刀(品番FAS−10、フェザー安全剃刀(株)社製)を用い、表面シート1の断面を切断して得ることができる。
【0032】
本実施形態における表面シート1は、排泄された体液を速やかに吸収し、吸収体に伝達する観点と肌触りのよさの観点とから親水性のサーマルボンド不織布が好ましく、特にエアスルー不織布が好ましい。表面シート1は親水化処理された熱可塑性樹脂繊維であり、かつ、該繊維が2次クリンプ又は3次クリンプのような立体捲縮がなされた繊維であることが好ましい。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン、及びこれらの複合繊維を作成し、所定の長さにカットしてステープルを形成する前の段階で、各種親水化剤を塗工する。親水化剤としては、αオレフィンスルホン酸塩に代表される各種アルキルスルホン酸塩、アクリル酸塩、アクリル酸塩/アクリルアミド共重合体、エステルアミド、エステルアミドの塩、ポリエチレングリコール及びその誘導物、水溶性ポリエステル樹脂、各種シリコーン誘導物、各種糖類誘導物、及びこれらの混合物など、当業者公知の親水化剤による親水化処理を用いることができる。このような本実施形態の表面シート1は、例えば、特開2010−106430号に記載の流体を吹き付けて繊維をより分ける流体交絡法を用いて製造することができる。
【0033】
本発明において、開孔部13は種々の形状を採用できその配置数や長手方向の配置間隔も任意に設定可能である。例えば、その形状として菱形、四角、三角、楕円でもよく、ハート形状などの図柄であってもよい。開孔部13は完全な穴ではなく極端に繊維量の少ない部分であってもよく、窪み部12が開孔部13を有さない構成であってもよい。畝部11については、長手方向に連続した形状であるが、複数個に分断されて小さな畝ブロックが長手方向に間欠的に配される形状であってもよい。この場合、幅方向の可撓性がより高められるので使用時のフィット性や個装時の折れ曲がり易さの観点から好ましい。本発明において、畝部11と窪み部12の形状は、上述の形態のほか、例えば、非肌当接面側にも畝と窪みとが交互に配される形状や非肌当接面側が肌当接面側に併せて起伏を有する形状であってもよい。表面シート1は、1層からなるものに限らず、上述の畝部11と窪み部12とを有するシートを上層とし、下層に別シートを配するなど2層以上の多層構造であってもよい。この場合、吸収した液を肌に戻さないことを考慮して、少なくとも下層の部分を排泄部対応領域に配することが好ましい。2層構造である場合(図示せず)、液の引き込み性から上層に比べ下層の毛管勾配を高めることが好ましい。毛管勾配を高める方法としては、例えば上層よりも下層の繊維の繊維径を小さくする方法が挙げられる。この場合、上層の繊維を2.0〜10.0dtexとし、下層の繊維を1.0〜8.0dtexとすることが好ましい。また上層よりも下層の親水性を高めることでも毛管勾配を高めることができる。あるいはこれらの両方の手段を採用してもよい。
【0034】
サイドシート4は撥水性の不織布が好ましく、カード法により製造された不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、スパンレース不織布、ヒートロール不織布、ニードルパンチ不織布等の中から撥水性の物、または撥水処理した種々の不織布を用いることができる。特に好ましくは、例えば、スパンボンド不織布、スパンボンド−メルトブローン(SM)不織布、スパンボンド−メルトブローン−スパンボンド(SMS)不織布等が用いられる。
【0035】
次に、本実施形態で用いられる吸収体3の好ましい製造方法について図6〜8を参照して説明する。なお、吸収体3の形状、凹部31及び突出吸収部33の数や形状、配置等は模式化して図示している。
図6は、生理用ナプキン10の吸収体3の製造に好ましく用いられる吸収体の製造装置60を示す図である。製造装置60は、外周面に複数のポケット9(堆積部)がます目状に区切られた積繊プレートを有する回転ドラム62(図7(a−1)参照)と、回転ドラム62の外周面に向けて、繊維材料Sを飛散状態にて供給するダクト63と、ダクト63に繊維材料Sを供給する繊維材料供給部64と、ポケット9にあふれるように堆積させた過剰量の繊維材料を掻き取るスカッフィングロール65と、ポケット9から離型した堆積体(吸収体前駆体)70の上下面をコアラップシート3bで被覆する被覆機構(図示せず)と、吸収体前駆体70をコアラップシート3bで被覆して得られる吸収体連続体を、一対のプレスロール66a,66b間で加圧して圧縮する圧縮装置66と、圧縮後の吸収体連続体を、個々の生理用ナプキンに使用される寸法に切断して加工後の吸収体3とする切断装置(図示せず)を備えている。
【0036】
回転ドラム62は、円筒状をなし、図8中の矢印A方向に一定速度で回転駆動される。回転ドラム62の内側(回転軸側)の非回転部分には、吸気ファン(図示せず)が接続されており、該吸気ファンの駆動により、回転ドラム内側の仕切られた空間B及びEが負圧に維持される。外周面にある個々のポケット9の底面部には、メッシュプレートが配設され(図示せず)、多数の細孔を有している。個々のポケット9が、負圧に維持された空間B,E上を通過している間、各ポケット9の底面部の細孔が吸引孔として機能する。
【0037】
ダクト63は、回転ドラム62の外周面の一部を覆う吹き出し端部63aと、繊維材料供給装置64に接続された吹き込み端部63bとを有しており、空間B上に位置するポケット9の底面部からの吸引により、ダクト63内に、回転ドラム62の外周面に向けて流れる空気流が生じさせるように構成されている。繊維材料供給部64は、解繊機64eを備えており、ラチス64dにある原料S’が解繊機64eで解繊され、解繊された繊維材料Sをダクト63内に供給するように構成されている。
【0038】
スカッフィングロール65は、周囲にブラシを有しており、該ブラシにより、ポケット62内からあふれた繊維材料Sを掻き取る。スカッフィングロール65に掻き取られずポケット9内に残った堆積体(吸収体前駆体)70は、回転ドラム62の下方においてポケット9から離型される。ポケット9からの離型は、回転ドラム62内の仕切られた空間Dを図示しない加圧手段により陽圧に維持して、ポケット9の底面部の細孔から空気を吹き出させると共に、バキュームコンベア67側から吸引することにより行う。前記被覆機構は、バキュームコンベア67上に、コアラップシート3bを供給する公知の搬送機構と、コアラップシート上に堆積体(吸収体前駆体)70が載置された後に、該コアラップシートの両側部を、該堆積体(吸収体前駆体)70上に折り返し、その折り返しにより、堆積体(吸収体前駆体)70の上下両面をコアラップシート3bで被覆する機構とで構成されている。なお、図6において折り返しの工程の詳細は省略しており、折り返されたコアラップシート3bの状態も2本の線として単純に示している。
【0039】
図6に示す吸収体の製造装置60を用いて、上述した吸収体3を製造する方法について説明する。
まず、回転ドラム62及びスカッフィングロール65を回転させると共に、上記吸気ファン及び上記加圧手段を作動させて、空間B及びEを負圧にし、空間Dを陽圧にする。また、バキュームコンベア67、圧縮装置66及び上記切断装置を作動させる。吸気ファンの作動により、空間B上に位置するポケット9の底面部に吸引力が生じると共に、ダクト63内に、回転ドラム62の外周面に向けて流れる空気流が生じる。そして、繊維材料供給装置64を作動させて、ダクト63内に繊維材料S(パルプ繊維41及び高吸水性ポリマー42)を供給すると、該繊維材料Sは、飛散状態となって、ダクト63内を流れる空気流に載って、回転ドラム62の外周面に向けて供給される。
【0040】
個々のポケット9が、負圧に維持された空間B上を通過している間、ダクト63から供給される繊維材料Sが各ポケット9に吸引されて堆積する(図7(a−1)及び(a−2)参照)。この点について図7(a−2)を参照して説明すると、回転ドラム62の外周面にある積繊プレートにおいて、複数の仕切り91をより分けてパルプ繊維と吸水性ポリマーとの混合物が積繊され、さらに仕切り91の高さを超えて回転ドラム62の高さいっぱいにまで積繊される。各ポケット9には、やや過剰量の繊維材料を堆積させ、ポケット9内からあふれる繊維材料がスカッフィングロール65で掻き取られる。スカッフィングロール65に掻き取られずポケット9内に残った堆積体(吸収体前駆体)70は、バキュームコンベア67上に供給されたコアラップシート3b上に離型される(図7(b)参照)。図8は、コアラップシート上に離型された(吸収体前駆体)70を示す図であり、該堆積体(吸収体前駆体)70には、ポケット9内の複数の溝部9aに対応する複数の凸状部33Aが形成されている。吸収体前躯体70のうち、仕切り91の上に堆積した部分が吸収体3の凹部吸収部34となり、仕切り91が配されていた部分が吸収体3の凹部31となる。
コアラップシート上の堆積体(吸収体前駆体)70は、折り返されたコアラップシート3bの両側部により凸状部33Aを有する面も被覆された後、ベルトコンベアにより吸収体全躯体70が反転し、の表裏が圧縮装置6に導入されて一対のプレスロール66a,66b間で加圧される(図7(c)参照)。これにより、凸状部33Aがつぶされて圧蜜化し、高密度な部分となる。凸状部33Aがつぶされた後の吸収体連続体は、図示しない切断手段で切断されて、個々の生理用ナプキンに使用される寸法の吸収体3となる。得られた吸収体3においては、吸収体全躯体70の凸状部33Aを圧蜜化した部分が、高密度な高坪量部としてのブロック状の突出吸収部33となる。
生理用ナプキン10は、このようにして得られる吸収体3を、表面シート1の帯状原反と裏面シート2の帯状原反との間に間欠的に配置した後、吸収体3の周囲において、それらの表裏面シート間を接合し、次いで、個々の生理用ナプキンの寸法に切断することにより得られる。
【0041】
以上、本発明の吸収体、その製造方法及び吸収性物品の一実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に制限されず、適宜変更することができる。
例えば、高密度部及び低密度部は、吸収体の長手方向の一部のみに形成されていても良い。例えば、吸収体の液排泄部対向部のみに形成されていても良く、前方部と液排泄部対向部のみに形成されていても良く、後方部と液排泄部対向部のみに形成されていても良い。
【0042】
吸収体3の構成材料としては、特に制限はないが繊維材料、多孔質体、それらの組み合わせなどを用いることができる。繊維素材としては例えば、木材パルプ、コットン、麻などの天然繊維、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオフィレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール樹脂等の合成樹脂からなる単繊維、これらの樹脂を2種以上含む複合繊維、アセテートやレーヨンなどの半合成繊維を用いることができる。合成繊維からなる繊維を用いる場合、該繊維は熱によって形状が変化する熱収縮繊維であってもよい。例えば、熱によって繊度は大きくなるが繊維長が短くなるものや、繊度はほとんど変化しないが、形状がコイル状に変化することでみかけの繊維の占有する長さが短くなるものであってもよい。多孔質体としては、スポンジ、不織不、高吸水性ポリマーの凝集物(高吸水性ポリマーと繊維とが凝集したもの)などを用いることができる。
【0043】
裏面シート2は、透湿性フィルム単独、又はフィルムと不織布の貼り合わせ、撥水性の不織布(SMSやSMMS等)を用いることができる。コスト面やズレ止め粘着剤とのマッチングなどから、透湿フィルム単独を防漏材として用いることが最も好ましい。この場合のフィルム材としては、熱可塑性樹脂と、これと相溶性のない無機フィラーを溶融混練して押し出したフィルムを所定の寸法に延伸して微細孔をあけたフィルム、または、本質的に水分の相溶性が高く、浸透膜のように水蒸気排出可能な無孔性のフィルムが挙げられる。本発明に関わる湿度排出の性能を十分に発現し、かつ、水分のにじみ出しがない防漏層を具現化するには、透湿度は、0.7〜3.0g/100cmhrの範囲にあることが好ましく、1.0〜2.5の範囲にあることが更に好ましい。さらっと感を十分に高める観点からは1.5〜2.5にあることが最も好ましい。また、フィルムの破れ等のトラブルなく使用可能であるためには、フィルム坪量は18〜70g/m、より好ましくは25〜60g/mである。また好ましい無機フィラー配合量は、フィルム全体の質量に対するフィラーの質量%として30〜65質量%、より好ましくは40〜60質量%である。
【0044】
本発明の吸収物品は、上記の実施形態の生理用ナプキンに制限されるものではなく、この種の生理用ナプキン、例えば失禁パッド、失禁ライナ等に本発明を適応することができる。また、経血に限らずその他、尿、オリモノ、軟便等に対しても効果的である。また、表面シート1、吸収体3、裏面シート2及びサイドシート4の他にも用途や機能に合わせ適宜部材を組み込んでもよい。なお、上記実施形態の生理用ナプキンの表面シート1、吸収体3及び裏面シート2の材料、製法における条件や、製品の寸法諸言は特に限定されず、通常の生理用ナプキン等において用いられている各種材料を用いることができる。
【実施例】
【0045】
以下に、本発明について実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明がこれにより限定して解釈されるものではない。
【0046】
[実施例1]
図1に示す構成の生理用ナプキンを常法に従って作製し、これを実施例1のサンプルとした。表面シート及び吸収体の製造方法の詳細は以下の通りである。
【0047】
(1)表面シート(第1実施形態における表面シート)の製造
鞘成分ポリエチレン/芯成分ポリエステルの4.4dtex×51mm芯鞘構造繊維を用いて、上述した表面シートの製造方法に従って水蒸気流による不織布化を行い、前述の畝溝構造及び開孔を有する40g/m2の表面シートを得た。得られた表面シートは、畝部の幅3mm、窪み部の幅2mm、厚み(畝部の頂部における見掛け厚み)1.2mmであったが、該厚みについては、該表面シートを60℃に加熱したプレスロール間に挿入して圧縮することで、0.7mmに調整した。表面シートの窪み部は窪み部の幅と略同じ幅を有する楕円状の開孔を有しており、圧縮後の開孔率は8%であった。
【0048】
(2)吸収体の製造
図6で示した製造装置を用いて、突出吸収部の坪量200g/m2、凹部吸収部の坪量52g/mのパルプ繊維及び高吸水性ポリマーの積繊体を得た。この積繊体をコアラップシートで被覆し、一対のプレスロール間に通して、3.0kgf/cmの圧力で圧縮して吸収体を得た。この吸収体における、突出吸収部の平均密度(m)は、0.12g/cmであり、凹部吸収部の平均密度(m)は、0.08g/cmであった。高密度領域38の平均坪量(w)は240g/mであり、低密度領域39の平均坪量(w)は100g/mであった。また、凹部吸収部34の厚み(h)は1.2mmであり、突出吸収部33の厚み(h)は2.0mmであった。突出吸収部33の縦方向長さkは20mmであり幅方向長さkは10mmであり、凹部31の縦方向長さsは2.0mmであり幅方向長さrは1.0mmであった。
【0049】
[比較例1]
表面シートとして、下記に示すものを用いた以外は実施例1と同様にして生理用ナプキンを作製し、それを比較例1とした。
比較例1の表面シートとしては、鞘成分ポリエチレン/芯成分ポリエステルの4.4dtex×51mm芯鞘構造繊維を用いて、カード法によって坪量40g/m2のカードウェブを製造した。このカードウェブに対して138℃±5℃の熱風をエアスルー方式で10秒間通過させて、繊維間の交点を熱融着させることで不織布化した。得られた表面シートの厚みは1.2mmであった。
【0050】
[比較例2]
吸収体として、下記に示すものを用いた以外は実施例1と同様にして生理用ナプキンを作製し、それを比較例2とした。
比較例2の吸収体としては、吸収体に高坪量領域及び低坪量領域を設けず、坪量200g/mの吸収体パルプに対し、坪量を50g/mの吸水ポリマーを均一に混合した混合積繊体を得た。この積繊体を一対のプレスロール間に通して、3.0kgf/cmの圧力で圧縮して吸収体を得た。得られた吸収体の厚みは2.0mmであった。
【0051】
[性能評価]
実施例および比較例のサンプル(生理用ナプキン)について、表層液戻り量を下記方法により測定した。それらの結果を下記表1に示す。
【0052】
<表層液戻り量>
表層液戻り量の測定方法を以下に説明する。この表層液戻り量とは、吸収体に吸収された液が加圧によってどれだけ表層(表面シート)側へ戻るかを示したものである。この量が少ないほど、吸収体の液保持性が高く、装着時のドライ感が得られ易い。
まず生理用ナプキンを水平に置いた。この生理用ナプキン上に、底部に直径1cmの注入口がついた円筒つきアクリル板を重ねて、サンプルの排泄部対向領域(サンプルの長手方向前端から40mmの位置)に注入口から粘度を8.0±0.1cPに調整した3gの脱繊維馬血を注入した。注入後、その状態を1分間保持した。次に、円筒つきアクリル板を取り除き、表面シートの表面上に、縦6cm×横9.5cmで坪量13g/mの予め質量を測定しておいた吸収紙(市販のティッシュペーパー)を載せた。さらにその上に圧力が4.5×10Paになるように錘を載せて5秒間加圧した。加圧後、吸収紙を取り出し、加圧前後の吸収紙の質量変化を測定し、吸収紙に吸収された脱繊維馬血の質量を表面液戻り量とした。
次いで、試験後のサンプルに再び上記のアクリル板を重ね、1回目の注入から3分後に再び注入口から3gの脱繊維馬血を追加して注入した。生理用ナプキンへの馬血の注入位置は、最初の3gを注入した位置と同じとした。そして、注入後1分間その状態を保持したままにした後、アクリル板を取り除き、前回と同様にして2回目の表面液戻り量を測定した。また、各々の液注入の際、液を注入してから全ての液を吸収するまでの時間(液吸収時間)を測定した。
上記の評価結果を下記表1に示す。
【0053】
【表1】

【0054】
表1に示す結果から明らかなように、実施例1は、比較例1及び2に比べ、液の吸収速度が速く、表層液戻り量が少なく、液引き込み性に優れることが分かった。このように、液の保持性に優れ、着用者の肌に液を戻しにくいことから、ムレにくく、一度の排泄液量が多いときであっても、着用者に優れたドライ感を与えてより快適な着用感を提供することができる。
【符号の説明】
【0055】
1 表面シート
11 畝部(突部)
12 窪み部
13 開孔部
2 裏面シート
3 吸収体
31 凹部
33 突出吸収部
34 凹部吸収部
4 サイドシート
5 防漏溝
10 生理用ナプキン


【特許請求の範囲】
【請求項1】
肌当接面側に配置される液透過性の表面シート、非肌当接面側に配置される裏面シート、及び該両シートの間に配置される吸収体を有する吸収性物品であって、
前記吸収体には高坪量領域と、該高坪量領域より相対的に坪量が低い低坪量領域とを有しており、前記低坪量領域が前記高坪量領域を囲むようにして平面方向に配置され、前記表面シートは肌当接面側に形成された複数の畝状の突部を有しており、前記表面シートの平面視において該突部の間の窪みには繊維量の少ない部分又は前記表面シートの厚み方向に通ずる開孔が形成されている吸収性物品。
【請求項2】
前記吸収体は、前記高坪量領域が前記低坪量領域より相対的に高密度である請求項1記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記表面シートにおける窪みに配された繊維量の少ない部分又は開孔部が、前記吸収性物品の排泄部対応領域において前記吸収体の前記低坪量領域と一致している部分を有する請求項1又は2記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記吸収体の低坪量領域は前記表面シート側に偏倚して配されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記表面シートと前記吸収体とを表面シート側から圧搾して形成される防漏溝が少なくとも物品幅方向の左右両側縁寄りにあり、該防漏溝は、物品の長手方向に沿って前記吸収体の前記低坪量領域と前記高坪量領域に亘り配設されている請求項1〜4のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記吸収体に含まれる吸水性ポリマーは、前記低坪量領域よりも前記高坪量領域に多く配される請求項1〜5のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記吸収体に含まれる吸水性ポリマーが前記低坪量領域の非肌当接面側に多く配されている請求項1〜6のいずれか1項に記載の吸収性物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−239721(P2012−239721A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−114171(P2011−114171)
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】