吸収性物品
【課題】極めて容易、かつ、衛生的に廃棄でき、交換の手間を軽減できる吸収性物品吸収性物品を提供する。
【解決手段】肌当接面側に配置される液透過性の表面シート1、非肌当接面側に配置される裏面シート2、及び該両シートの間に配置される吸収体3を有する縦長の吸収性物品であって、前記裏面シートの非肌当接面側には外層シートが配され、該外層シートは、前記吸収性物品本体に固着された固着部61、62と固着されていない自由部63、64とを有し、前記固着部は前記吸収性物品本体の長手方向前後端側に配されており、前記自由部は前記固着部の間に配されており、該自由部は、長手方向前後に少なくとも2つに分離し前記前後端の固着部それぞれに向かって折り返し可能に配されている吸収性物品10。
【解決手段】肌当接面側に配置される液透過性の表面シート1、非肌当接面側に配置される裏面シート2、及び該両シートの間に配置される吸収体3を有する縦長の吸収性物品であって、前記裏面シートの非肌当接面側には外層シートが配され、該外層シートは、前記吸収性物品本体に固着された固着部61、62と固着されていない自由部63、64とを有し、前記固着部は前記吸収性物品本体の長手方向前後端側に配されており、前記自由部は前記固着部の間に配されており、該自由部は、長手方向前後に少なくとも2つに分離し前記前後端の固着部それぞれに向かって折り返し可能に配されている吸収性物品10。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生理用ナプキン、失禁パッド、尿とりパッド等の吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
生理用ナプキンや失禁用パッド等は、衛生面から、1つ1つ個包装されて消費者に提供されている。この個包装用の部材を利用して利便性を向上させる工夫は過去いくつかなされてきた。例えば、特許文献1には、個別包装袋を生理用ナプキンの非肌当接面側の一端側に固着したまま使用させる生理用ナプキンが開示されている。これは、前記個別包装袋を廃棄時にも利用できるように単にナプキンと一体化させたものである。特許文献2には、伸長性両側シートが防漏シート側の幅方向端部に固着された生理用ナプキンが開示されている。これは、上記特許文献1と同じく、前記伸長性両側シートを使用時にもナプキンに固着させて廃棄時に利用できるようにしたものである。また、特許文献3には、個包装用シートを生理用ナプキンの非肌当接面側から肌当接面側に折り返すことにより生理用ナプキンの端部にポケットを形成し、漏れを抑制させる生理用ナプキンが開示されている。これは防漏性に着目したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平6−57335号公報
【特許文献2】実開平7−15020号公報
【特許文献3】特開2011−30638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、一般的に生理用ナプキン等は、使用時に、その裏面側でしっかりと下着等に固定させて剥がれ難くしている。使用後には、そのしっかり固定された固定面を下着等から引き剥がしてから畳んだり丸めたりしなければならず、容易ではない。ましてや同時に、新しいナプキンと交換をするには、新しいナプキンの個別包装体を剥離して粘着部を露出させ位置決めしてショーツに固定するなど煩雑である。さらに、これらの動作においては、使用済みナプキンの肌当接面が肌に触れ易く、手が汚れたり排泄された液が飛散したりするおそれがあった。特に公衆トイレのような不特定多数の人が使用する場所では衛生上好ましくない。このように廃棄や装着時の煩雑な動作は、トイレ内などの狭い環境下でなされることが多く、できるだけ手間を軽減でき衛生的であることが好ましい。しかし、前記文献の技術ではこのような廃棄や装着時の煩雑さの問題については着目されてはいなかった。
【0005】
上記の点に鑑み本発明は、極めて容易、かつ、衛生的に廃棄でき、交換の手間を軽減できる吸収性物品の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、肌当接面側に配置される液透過性の表面シート、非肌当接面側に配置される裏面シート、及び該両シートの間に配置される吸収体を有する縦長の吸収性物品であって、前記裏面シートの非肌当接面側には外層シートが配され、該外層シートは、前記吸収性物品本体に固着された固着部と固着されていない自由部とを有し、前記固着部は前記吸収性物品本体の長手方向前後端側に配されており、前記自由部は前記固着部の間に配されており、該自由部は、長手方向前後に少なくとも2つに分離し前記前後端側の固着部それぞれに向かって折り返し可能に配されている吸収性物品を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の吸収性物品は、極めて容易、かつ、衛生的に廃棄でき、交換の手間を軽減できるという優れた作用効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明における一実施形態としての生理用ナプキンの着用する直前(個別包装シートを折り返す前)の形状を肌面方向から模式的に示した一部切欠斜視図である。
【図2】図1の生理用ナプキンを3つ折りして個別包装体とした様子を模式的に示す一部切欠斜視図である。
【図3】図1に示すIII−III線断面の拡大断面図である。
【図4】本実施形態の生理用ナプキンを使用する前の状態を生理用ナプキンの幅方向から模式的に示した断面図である。
【図5】本実施形態の生理用ナプキンを使用している状態を生理用ナプキンの幅方向から模式的に示した断面図である。
【図6】本実施形態の生理用ナプキンにおける使用後の状態を生理用ナプキンの幅方向から模式的に示した断面図である。
【図7】本実施形態の生理用ナプキンにおける使用後の廃棄途中の様子を模式的に示す斜視図である。
【図8】本実施形態の生理用ナプキンにおける外層シートの別形態について示す図7相当の斜視図である。
【図9】本発明の他の好ましい実施形態としての生理用ナプキンを非肌当接面側から模式的に示す平面図である。
【図10】固着部の変形例を模式的に示す生理用ナプキンの非肌当接面側の平面図である。
【図11】固着部の他の変形例を模式的に示す生理用ナプキンの非肌当接面側の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明についてその好ましい実施形態を示し、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明における吸収性物品の一実施形態としての生理用ナプキン10の着用する直前(個別包装シートを折り返す前)の形状を肌面方向から模式的に示した一部切欠斜視図である。図2は、図1の生理用ナプキン10を3つ折りして個別包装体とした様子を模式的に示す一部切欠斜視図であり、(a)は生理用ナプキン10の端部を折り畳んだ状態の表面シート側を示し、(b)は裏面シート側を示す。図3は図1に示すIII−III線断面の断面図である。
【0010】
本実施形態の生理用ナプキン10は、肌当接面側に配置される液透過性の表面シート1、非肌当接面側に配置される裏面シート2、及び該両シートの間に配置される吸収体3を有し、縦長の形状である。裏面シート2の肌当接面側に吸収体3及び表面シート1が接着剤等で接合され配設されている。生理用ナプキン10は、表面シート側を着用者の肌当接面側に向け、かつ、その縦方向を下腹部から臀部にかけて配し、その幅方向を左右の足をつなぐラインの方向に向けて配して着用する。
【0011】
生理用ナプキン10において、裏面シート2の非肌当接面側には外層シート6としての個別包装シート60が配されている。個別包装シート60は、ナプキン10の外形よりもやや大きく、裏面シート2の非肌当接面の全面を覆うように配されている。この個別包装シート60は、生理用ナプキン10が使用前に汚れ等がつかないよう1つ1つ個別に袋状に包装するためのものである。その個別包装の状態としては、例えば図2に示すように、表面シート1側を包むようにして生理用ナプキン10を3つ折りし、個包装シート60の両端部を重ね合わせてシール65(図2(a)参照)で固定し、さらに個包装シート60の両側縁部をエンボス等により圧着して封緘する(以下、該圧着部分を圧着部66という。)。他方、この状態から、シール65及び圧着部66を解いて展開させると、図1に示すように使用面である表面シート1が現れる。
【0012】
図3に示すとおり、ナプキン10を展開した状態において、個別包装シート60は、生理用ナプキン10の長手方向前後端側の位置に前側固着部61、後側固着部62を有する。前側固着部61及び後側固着部62は、それぞれ裏面シート2に固着され、使用前後においても剥離されない。さらに個別包装シート60は、前側固着部61及び後側固着部62の間で、裏面シート2とは固着されていない前側自由部63及び後側自由部64を有する。このように個別包装シート60は、ナプキン10の前端部側から、前側固着部61、前側自由部63、後側自由部64、及び後側固着部62の順で区分される。また前側自由部63及び後側自由部64はそれぞれで分離し、前側自由部63は前側固着部61へ向かって、後側自由部64は後側固着部62へ向かって折り返し可能とされている(図3において、矢印の方向に展開させた状態の自由部63及び64を2点鎖線で示す。)。
【0013】
より詳細には、外層シート6における固着部と自由部とは前側固着境界線61wと後側固着境界線62wとによって区画され、固着境界線61w、62wよりも長手方向内方を自由部63、64とし、長手方向外方を固着部61、62とする。前側固着境界線61w及び後側固着境界線62wは、後述するように、廃棄時に固着部及び自由部で表面シートの汚れた部分を覆い易く、使用時に着衣等に安定的に固定し易くする観点から、適宜機能的に決めることができる。本実施形態のナプキン10は、排泄部対応領域を中央に配して前端部及び後端部がほぼ均等な長さのものである。この場合、両境界線は、前端部及び後端部の両方で表面シートの排泄部対応領域を十分覆うことができるよう、ナプキン10の4等分した両端の境界線付近にあるのが好ましい。なお、排泄部対応領域とは経血もしくは尿、おりもの等の排泄を直接受ける部分及びその近傍である。通常、昼用のナプキンなど前後対象に形成される場合は、排泄部対応領域は、ナプキンを長手方向に3等分した場合の中央領域であり、夜用のナプキンなどは、後方に臀部を覆う左右幅広な後方フラップを有し、ナプキンを長手方向に2等分した際の前側の中央よりにある。また、昼用、夜用にかかわらず、ショーツの股下部に折り曲げて固定するウイングを備える場合は、該ウイングの存在する領域に沿った長手方向両域が排泄部に対応する。
【0014】
前側自由部63及び後側自由部64は、使用する前の個包装された状態においては、裏面シート2の非肌当接面側に剥離可能に固定されている(図2(b)及び図3参照)。本実施形態においては、前側自由部63及び後側自由部64の、個包装された状態で裏面シート2に対向する面に粘着部63a及び64aが配設されている。粘着部63a及び64aが接する部分で、裏面シート2が剥離紙の機能を担う。そして使用時には、前側自由部63を前側固着部61側へ、後側自由部64を後側固着部62側へ折り返し、そこに現れる粘着部63a及び64aでナプキン10を着衣等に固定して使用することができる。なお、ナプキン10の着衣等への固定方法は、これに限らず、折り返す前の前側自由部63及び後側自由部64が面する裏面シート2の部分に粘着部を設けてもよい(図示せず)。その場合、前側自由部63及び後側自由部64が剥離紙の機能を担う。また個別包装状態において、前側自由部63及び後側自由部64が接する部分をシール67で締結固定してもよい。あるいは前側自由部63及び後側自由部64を一部重ね合わせて、一方の肌面側に粘着を設けて締結固定したり、1つの部材にミシン目などの破断誘導線を設けて分離可能にしたりしてもよい。
なお、本発明において固着(固着部)とは製品の使用上、脱着せず部材同士を剥離させないで使用すること(部位)であり、固定ないしは締結(固定部ないし締結部)とは粘着剤等によって一時的に部材同士が接合され、製品を使用するにあたって脱着が可能とされており、他の部材に前記接着剤を使用して接合することが可能なこと(部位)である。
【0015】
本発明においては、特に断らない限り、人体に接触する側の面を肌側面ないし肌当接面あるいは表面といい、これと反対側の面を非肌面ないし非肌当接面あるいは裏面という。この2つの面において、肌側面に近い方ないしその延長方向を肌面側、肌当接面側又は表面側といい、非肌面に近い方ないしその延長方向を非肌面側、非肌当接面側又は裏面側という。装着時に人体の前側に位置する方向を前方といいその端部を前端部とし、後側に位置する方向を後方といいその端部を後端部として説明する。吸収性物品の表面又は裏面の法線方向を厚み方向といいその量を厚さという。更に、吸収性物品の平面視において腹側部から股下部を亘り背側部に至る方向を縦方向といい、この縦方向と直交する方向を幅方向という。なお、前記縦方向は典型的には装着状態において人体の前後方向と一致する。
【0016】
ここで本実施形態の生理用ナプキン10の実施態様について図4〜6に基づきさらに詳しく説明する。図4、5及び6は本実施形態の生理用ナプキン10における使用する過程をその順で示している。図4は生理用ナプキン10を使用する前の状態を生理用ナプキンの幅方向から模式的に示した断面図である。図5は生理用ナプキン10を使用している状態を生理用ナプキンの幅方向から模式的に示した断面図である。図6は生理用ナプキンの使用後の廃棄過程における様子を生理用ナプキンの幅方向から模式的に示した断面図であり、(a)は廃棄第1段階、(b)は廃棄第2段階を示す。また図7は、図6(a)の廃棄第1段階の様子を模式的に示す斜視図である。図中、上側が身体側(肌面側)であり、図5においては図の煩雑化を避け身体を図示していない。また本発明の理解のため、ナプキンを構成する表面シート1、裏面シート2等は示さずに全体をナプキン本体10Aとして示し、ナプキン本体10Aと個別包装シート60との関係を中心に図示して示す。
【0017】
図4は使用する前、すなわち使用者が購入時に手にする形態である。一般的に生理用ナプキンを購入すると数個から数十個が1つの袋に梱包されており、更に一つ一つの生理用ナプキンを衛生的に持ち運べるように個別に包装がなされている。本実施形態の個別包装シート60は、前述のとおり、生理用ナプキン10を個別に包装する個別包装体としての機能を有しており、使用する前においては生理用ナプキン10の非肌当接面側の全域を覆っている。前側自由部63及び後側自由部64同士は、シール67で締結され、前側固着部61と後側固着部62とは一部重ね合されてシール65で締結されている。なお、図4では後側固着部62が前側固着部61の上に積層されて締結されているが、これに限定されず逆の配置であってもよい。
【0018】
次に図5を参照して、生理用ナプキン10の使用時の形態について説明する。使用時には前側自由部63を前側固着部61の非肌当接面側に折り返し、後側自由部64を後側固着部62の非肌当接面側にそれぞれ折り返し、前側自由部63及び後側自由部64の折り返した面に塗布された接着部63a及び64aを着衣等7に固定して使用する。このようにナプキン10の裏面シート側に2つの自由部63及び64が分離し各固着部側へ折り返し可能であることで、まずナプキン10の表面シート側を広げなくても、比較的小さな個包装状態に近い状態で着衣等7に固定することができる。また、2つの自由部がある位置が本実施形態のように排泄部対応領域あると、その大きさを基準に固定する位置を容易に定めることができる。そして、個別包装シート60を廃棄することなく使用することが可能であり、ごみの発生を抑えることができる。さらに、排泄部近傍に外層シート6が存在しないことにより幅方向の自由度に優れ柔らかい着用感を保持できる。加えてナプキン10の前端及び後端で、前側自由部63及び前側固着部61、後側自由部64及び後側固着部62が、それぞれ固着境界線61w、62wを起点とするくの字状の、非固定のシート積層構造ができる。これにより、生理用ナプキン10の前端部側では腹部方向に、後端部側では臀部方向に厚みが増えて、各固着部が立ち上がり易く、身体へのフィット感が向上し好適な着用感となる。
【0019】
さらに図6を参照して、上述した着用状態から本実施形態の生理用ナプキン10を廃棄する形態について説明する。本発明の吸収性物品は、固着部及び自由部の構造によって、使用済みのナプキンを簡易に、衛生的に廃棄することができる。
その好ましい廃棄手順としては、まず廃棄第1段階として、生理用ナプキン10の前端部と後端部とを表面シート1側に折り返す(図6(a)、図7参照)。このとき、裏面シート2側には、着衣等7とは非固定にされた前側固着部61及び後側固着部62があり、その部分に指を添えて軽くナプキンを折り畳むことができ、容易に表面シートの排泄部対応領域を覆い隠すことができる。このようにすると、排泄された液などをいち早く遮蔽できるだけでなく、周囲への液流れ等の飛散を防ぐことができる。本実施形態の生理用ナプキン10はこの折り返す位置が前側固着境界線61w及び後側固着境界線62wであり、この境界線を基点に生理用ナプキン10の前端及び後端が移動し、正確に折りたたみの形状を得られる。さらに上述した操作はナプキンをショーツ等の着衣からはずすことなく行えるため、手や衣服などへの飛散の恐れが少ない。なお、廃棄時の折り畳みは必ずしも特定の順序に限定されないが、好ましくは前端部を折り返してから後端部を折り返すことによってシール65を前側固着部61の非肌当接面側に固定することができ、手を離しても操作中にナプキンが開くことが無く便利である。
【0020】
そして廃棄第2段階として、前側自由部63及び後側自由部64を着衣等7から剥がし肌当接面側に折り返す。その際、前側自由部63と後側自由部64とを対面させて合わせ、シール67を介在させて固定する(図6(b)参照)。本発明はこのように合わされた部分を作りだすことによって使用済みの生理用ナプキン10に把手部68を容易に作ることができ、ナプキン10の汚れた部分に触れることなく廃棄できる。この把手部68は、上述した前側固着境界線61w及び後側固着境界線62wを起点とした容易な折りたたみともあいまって、難なく形成し易い。この把手部68が容易に形成できることで、上述の自由部による装着のし易さも加わって、極めて簡易で衛生的なナプキンの交換作業が可能となる。例えば、新旧ナプキンの交換と廃棄を同時に行うとき、使用済みのナプキンを2本の指などで持ったまま、新しいナプキンを大きく広げずとも簡単に位置決めして容易に装着でき、使用済みナプキン10は手を汚すことなく廃棄することも可能となる。その結果、使用済みナプキンを一時的に置いたり、トイレットペーパーに包んだりする必要がなくなり、極めて簡易で衛生的であり、かつ、ごみの低減にも貢献できるという優れた作用効果を奏する。なお把手部68は、シール67等による固定が好ましいが、固定されないままでも既に廃棄第1段階で表面シート1が隠蔽されているので手が汚れることがない。つまりナプキン交換時に一度把手部68から手をはなしても、ナプキン10本体に触れることなく、再び両自由部の端部のみを摘まんで把手部68を容易に形成できる。
【0021】
本実施形態による前端固着境界線61w及び後端固着境界線62wの位置は、使用する吸収性物品の大きさや用途によっても多少異なり一義的に定められない。しかし、廃棄時の表面シートの十分な被覆、装着時の容易な位置決めと安定的固定の観点から、前側固着境界線61w及び後側固着境界線62wで区分される、境界線61w外方の長さt1及び境界線62w外方の長さt2それぞれが、前側固着境界線61wから後側固着境界線62wまでの長さ(t3+t4)よりも短く(図1参照)、長さt1とt2の和(t1+t2)が前側固着境界線61wから後側固着境界線62wまでの長さ(t3+t4)の1倍〜2倍が好ましい。また、上記範囲にすることで廃棄第1段階において表面シートの隠蔽性が良好となり、かつ隠蔽形状を保つことができる。また、長さの比(t3/t1)及び(t4/t2)それぞれは1〜1.5が好ましい。上記範囲とすることで、廃棄第2段階において効果的な把手部68を形成することが容易となる。さらに長さの比(t1/t2)が0.6〜1.4で、長さの和(t1+t2)が、前側固着境界線61wから後側固着境界線62wの長さ(t3+t4)の1.1〜1.5倍であることがさらに好ましい。この場合、外層シート6の前端部又は後端部がナプキン10長手方向の前後端それぞれよりも長手方向外方へ延在している場合は、t1、t2の長さはそれぞれ、前側固着境界線61wから外装シート6の前側端部までの長さ、後側固着境界線62wから外層シート6の後側端部までの長さとし(図1参照)、一方、外層シート6の前端部又は後端部がナプキン10長手方向の先端と一致するか、又は長手方向内側までしか存在しない場合は、t1を前側固着境界線61wからナプキン10の前端縁Fまでの長さ、t2を後側固着境界線62wからナプキン10の後端縁Rまでの長さとする(図9参照)。
【0022】
また本発明の外層シート6が、本実施形態のようにナプキンよりも大きな個別包装シートである場合、ナプキンの幅方向にナプキン幅からはみ出す部分の長さが左右15mm以下であることが好ましく、装着時の違和感低減の観点からはみ出す部分が極力ないことが好ましい。上記上限は製造時において個別包装時の封緘が確かになる値である。
【0023】
図8は、本実施形態の生理用ナプキン10における外層シートの別形態(変形例)について示す図7相当の斜視図である。この形態の外層シートは、裏面シートの粘着部(図示せず)のみを覆う、個別包装シートよりも幅狭な剥離シート60’である。ただし、この剥離シート60’においても、前後端は裏面シート2にしっかりと固着された前側固着部61及び後側固着部62が形成さている。そしてその間は、裏面シート2の粘着部と剥離可能な前側自由部63及び後側自由部64となっている。したがって、図8が示すように、使用時には、個別包装シート60と同様に、自由部63及び64がそれぞれ固着部61及び62に折り返されて着衣等7に固定されている。そして廃棄時も同様に、固着部61及び62側から表面シートを覆い、次いで自由部63及び64で把手部を形成する2段階の処理ができる(図示せず)。したがって、この変形例においても、前記本実施形態の個別包装シート60と同様に、極めて容易、かつ、衛生的に廃棄でき、交換の手間を軽減できるという優れた作用効果を奏する。なお、この場合の個別包装の形態は、剥離シート60’の外側にさらに個別包装シートで覆うことで可能である。ただ、シール65を開放しナプキンの表面シートを展開する前に自由部のみを折り返して着衣等に装着することで簡易にナプキンの交換を行えることを考慮すれば、外層シートが個別包装シートである、前述の実施形態の方が好ましい。
【0024】
装着時にナプキンを安定固定し個別包装シートと同様の作用を奏する観点から、外層シートとしての剥離シート60’の幅(h1)とナプキン20の最大幅(h2)との比率(h1/h2)は、1/2〜1/1が好ましく、1/2〜3/4がさらに好ましい。
【0025】
図9は、本発明の他の好ましい実施形態としての生理用ナプキン20非肌当接面側から模式的に示す平面図である。生理用ナプキン20は、夜用など十分な吸収性を得るために後部を大きくしたものである。また生理用ナプキン20における外層シートは、ナプキンよりも幅の狭い剥離シート60’である。なお、この実施形態においても外層シート6は、剥離シート60’に限らず、幅広の個別包装シート60であってもよい。
本実施形態の生理用ナプキン20においては、廃棄時に、できるだけ後端部側で表面シートを覆うことができるよう、後側自由部64の長さ(t4)や後側固着境界線62w外方の長さ(t2)を十分にとることが好ましい。また、後側固着部62を表面シート側に折り畳んだ際に長手方向にはみ出すような場合は、必要により折り畳み境界線20vを設け、ナプキン30、後側固着部62の先端をさらに折り畳み易くすることが好ましい。後側固着部62が、表面シート側に折り畳んだ際に、長手方向にはみ出すことがないことが最も好ましいが、20vを設ける際には、後側固着境界線62w外方の長さ(t2)のうち境界線62wから20vまでの長さ(t21)が、前側固着境界線61wから後側固着境界線62wまでの長さ(t3+t4)とほぼ同じになるように20vを設けることが好ましい。さらに、後側固着境界線62wは、排泄部対応領域よりも後方にあることが好ましい。この時、前後固着部61及び62がナプキン長手方向の先端より短い場合は、長さt1を前側固着境界線61wからナプキンの前端縁Fまでの長さ、長さt2を後側固着境界線62wからナプキンの後端縁Rまでの長さとする。前後固着部61及び62がナプキン長手方向の先端より長い場合は、長さt1及びt2は、それぞれ該固着部の長さとする。
【0026】
以上のとおり、本実施形態の生理用ナプキン20においても、前述の生理用ナプキン10と同様に、自由部が固着部側に折り返されて着衣等にしっかりと固定でき、廃棄時には、固着部から簡単に表面シートを覆って、自由部が把手部となって2段階の処理ができ、衛生的に廃棄することができる。つまり、生理用ナプキン20においても、極めて容易、かつ、衛生的に廃棄でき、交換の手間を軽減できるという優れた作用効果を奏する。さらに、装着時に人体の後方領域とナプキンとのフィット感を向上させることで、就寝時の後方へのモレを低減させるよう働く効果がある。
【0027】
外層シートの素材としては、従来用いられている公知の材料を特に制限なく用いることができる。例えば、不織布や、樹脂フィルム、紙、これらの積層体等を用いることができる。好ましくは、装着時に自由部と固着部がくの字状の非固定のシート積層構造ができることにより、ナプキンと身体とのフィット性を向上し好適な着用感とするための剛性と、装着時の違和感低減のための柔軟性を考慮したものが良い。特に、個別包装シートとしては、柔軟性の点からはスパンボンドやエアスルーなどの不織布が、剥離シートとしては剛性の点から紙、紙と不織布やフィルムの積層体が望ましい。
【0028】
表面シート1は、排泄された体液を速やかに吸収し、吸収体に伝達する観点と肌触りのよさの観点とから親水化処理が施された各種不織布や開孔フィルム等の液透過性のシートを用いることが好ましい。表面シート1は親水化処理された熱可塑性樹脂繊維であり、かつ、該繊維が2次クリンプ又は3次クリンプのような立体捲縮がなされた繊維であることが好ましい。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン、及びこれらの複合繊維を作成し、所定の長さにカットしてステープルを形成する前の段階で、各種親水化剤を塗工する。親水化剤としては、αオレフィンスルホン酸塩に代表される各種アルキルスルホン酸塩、アクリル酸塩、アクリル酸塩/アクリルアミド共重合体、エステルアミド、エステルアミドの塩、ポリエチレングリコール及びその誘導物、水溶性ポリエステル樹脂、各種シリコーン誘導物、各種糖類誘導物、及びこれらの混合物など、当業者公知の親水化剤による親水化処理を用いることができる。
【0029】
吸収体3の構成材料としては、特に制限はないが繊維材料、多孔質体、多孔質体のみを紙や不織布で挟持したものなど、を用いることができる。繊維素材としては例えば、木材パルプ、コットン、麻などの天然繊維、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオフィレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール樹脂等の合成樹脂からなる単繊維、これらの樹脂を2種以上含む複合繊維、アセテートやレーヨンなどの半合成繊維を用いることができる。合成繊維からなる繊維を用いる場合、該繊維は熱によって形状が変化する熱収縮繊維であってもよい。例えば、熱によって繊度は大きくなるが繊維長は短くなるものや、熱によって繊度はほとんど変化しないが、形状がコイル状に変化することでみかけの繊維の占有する長さが短くなるものであってもよい。多孔質体としては、スポンジ、不織布、高吸水性ポリマーの凝集物(高吸水性ポリマーと繊維とが凝集したもの)などを用いることができる。
【0030】
裏面シート2は、不透湿性若しくは透湿性フィルム単独、又はフィルムと不織布の貼り合わせ、撥水性の不織布(SMSやSMMS等)を用いることができる。コスト面やズレ止め粘着剤とのマッチングなどから、透湿性フィルム単独を防漏材として用いることが最も好ましい。この場合の透湿性フィルム材としては、熱可塑性樹脂と、これと相溶性のない無機フィラーを溶融混練して押し出したフィルムを所定の寸法に延伸して微細孔をあけたフィルム、または、本質的に水分の相溶性が高く、浸透膜のように水蒸気排出可能な無孔性のフィルムが挙げられる。本発明に関わる湿度排出の性能を十分に発現し、かつ、水分のにじみ出しがない防漏層を具現化するには、透湿度は、0.7〜3.0g/100cm2hrの範囲にあることが好ましく、1.0〜2.5の範囲にあることが更に好ましい。さらっと感を十分に高める観点からは1.5〜2.5にあることが最も好ましい。また、フィルムの破れ等のトラブルなく使用可能であるためには、フィルム坪量は18〜70g/m2、より好ましくは25〜60g/m2である。また好ましい無機フィラー配合量は、フィルム全体の質量に対するフィラーの質量%として30〜65質量%、より好ましくは40〜60質量%である。
【0031】
本発明吸収性物品において、外層シートは、前述の機能を有するものであれば、個別包装シートや剥離シートに限定されず、様々な形態のものであってもよく、その他の機能を付加させたものであってもよい。たとえば、おむつと併用する尿取りパッドの場合で、接着面が面状ファスナーになったものも含む。
【0032】
本発明の吸収性物品は、上記の実施形態に制限されるものではなく、着用者の股下部から前後方向に縦長に装着するものであれば様々な形態のものを含む。たとえば、生理用ナプキンに限らず、失禁パッド、失禁ライナ等下着の股下部に取り付けるものに本発明を適応することができる。
【0033】
また、上述の実施形態では、固着部全域で外層シート6と裏面シート2とが固着された形態について説明したが、固着部とされる領域のうち、外層シート6と裏面シート2を固着させる部分としての前側固着領域61S及び/又は後側固着領域62Sでだけ固着され、それ以外の固着部では両シートが固着されていなくてもよい。例えば、固着領域61S、62Sそれぞれが複数、固着部61及び62内で長手方向(Y方向)に沿って非固着領域を挟むようにして間欠的に配置されるような形態が挙げられる(図10参照)。また、別の例として、前端縁F又は後端縁Rからナプキン10の長手方向(Y方向)内方に所定長さ迄の範囲では外層シート6と裏面シート2とが固着されていない非固着領域とされ、固着境界線から非固着部領域までの間で固着領域61p及び62pを以って両シートが固着されていても構わない(図11参照)。なお図10及び11では、前記の各固着領域の物品の平面方向に広がる範囲を示している。該固着領域は、物品の厚み方向に見ると、その範囲において外層シート6及び裏面シート2の積層部分を接合した領域である(図示せず)。
これらの場合、前後固着部61,62それぞれにおいて、長手方向(Y方向)に関し、前記固着領域の最前部から最後部までの配置長さu5及びu6が、前側固着境界線61wからナプキン10の前端縁Fまでの長さu1及び、後側固着境界線62wからナプキン10の後端縁Rまでの長さu2の3分の2以上であることが好ましく、また、固着領域の最大幅h2が固着部幅h1の2分の1以上を有するものであることが好ましい。例えば、配置長さが固着境界線61w、62wからナプキン前後端側に向かってそれぞれu1又はu2の3分の2の長さであり、幅がそれぞれ固着部幅の3分の2の長さである、長方形の固着領域を有するものも含む。前側固着領域61Sと及び後側固着領域62Sの長手方向内方の縁が固着境界線61w、62wとなる。
【0034】
また吸収性物品の長さ、物品の外形についても限定されるものではない。例えば、表面シート1、吸収体3、及び裏面シート2の他にも用途や機能に合わせ適宜部材を組み込んだり形状を変更したりしてもよい。またウイングの有無に限定されず、吸収性物品の幅方向外方にウイング部を設けて着衣等に固定する形態をとってもよく、その形態も任意のものを採用できる。なお、上記実施形態の吸収性物品の表面シート1、吸収体3及び裏面シート2の材料、製法における条件や、製品の寸法諸言は特に限定されず、通常の吸収性物品において用いられている各種材料を用いることができる。
【符号の説明】
【0035】
1 表面シート
2 裏面シート
3 吸収体
6 外層シート(個別包装シート60、剥離シート60’)
61 前側固着部
62 後側固着部
63 前側自由部
64 後側自由部
7 着衣等
10,20 生理用ナプキン
【技術分野】
【0001】
本発明は、生理用ナプキン、失禁パッド、尿とりパッド等の吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
生理用ナプキンや失禁用パッド等は、衛生面から、1つ1つ個包装されて消費者に提供されている。この個包装用の部材を利用して利便性を向上させる工夫は過去いくつかなされてきた。例えば、特許文献1には、個別包装袋を生理用ナプキンの非肌当接面側の一端側に固着したまま使用させる生理用ナプキンが開示されている。これは、前記個別包装袋を廃棄時にも利用できるように単にナプキンと一体化させたものである。特許文献2には、伸長性両側シートが防漏シート側の幅方向端部に固着された生理用ナプキンが開示されている。これは、上記特許文献1と同じく、前記伸長性両側シートを使用時にもナプキンに固着させて廃棄時に利用できるようにしたものである。また、特許文献3には、個包装用シートを生理用ナプキンの非肌当接面側から肌当接面側に折り返すことにより生理用ナプキンの端部にポケットを形成し、漏れを抑制させる生理用ナプキンが開示されている。これは防漏性に着目したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平6−57335号公報
【特許文献2】実開平7−15020号公報
【特許文献3】特開2011−30638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、一般的に生理用ナプキン等は、使用時に、その裏面側でしっかりと下着等に固定させて剥がれ難くしている。使用後には、そのしっかり固定された固定面を下着等から引き剥がしてから畳んだり丸めたりしなければならず、容易ではない。ましてや同時に、新しいナプキンと交換をするには、新しいナプキンの個別包装体を剥離して粘着部を露出させ位置決めしてショーツに固定するなど煩雑である。さらに、これらの動作においては、使用済みナプキンの肌当接面が肌に触れ易く、手が汚れたり排泄された液が飛散したりするおそれがあった。特に公衆トイレのような不特定多数の人が使用する場所では衛生上好ましくない。このように廃棄や装着時の煩雑な動作は、トイレ内などの狭い環境下でなされることが多く、できるだけ手間を軽減でき衛生的であることが好ましい。しかし、前記文献の技術ではこのような廃棄や装着時の煩雑さの問題については着目されてはいなかった。
【0005】
上記の点に鑑み本発明は、極めて容易、かつ、衛生的に廃棄でき、交換の手間を軽減できる吸収性物品の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、肌当接面側に配置される液透過性の表面シート、非肌当接面側に配置される裏面シート、及び該両シートの間に配置される吸収体を有する縦長の吸収性物品であって、前記裏面シートの非肌当接面側には外層シートが配され、該外層シートは、前記吸収性物品本体に固着された固着部と固着されていない自由部とを有し、前記固着部は前記吸収性物品本体の長手方向前後端側に配されており、前記自由部は前記固着部の間に配されており、該自由部は、長手方向前後に少なくとも2つに分離し前記前後端側の固着部それぞれに向かって折り返し可能に配されている吸収性物品を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の吸収性物品は、極めて容易、かつ、衛生的に廃棄でき、交換の手間を軽減できるという優れた作用効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明における一実施形態としての生理用ナプキンの着用する直前(個別包装シートを折り返す前)の形状を肌面方向から模式的に示した一部切欠斜視図である。
【図2】図1の生理用ナプキンを3つ折りして個別包装体とした様子を模式的に示す一部切欠斜視図である。
【図3】図1に示すIII−III線断面の拡大断面図である。
【図4】本実施形態の生理用ナプキンを使用する前の状態を生理用ナプキンの幅方向から模式的に示した断面図である。
【図5】本実施形態の生理用ナプキンを使用している状態を生理用ナプキンの幅方向から模式的に示した断面図である。
【図6】本実施形態の生理用ナプキンにおける使用後の状態を生理用ナプキンの幅方向から模式的に示した断面図である。
【図7】本実施形態の生理用ナプキンにおける使用後の廃棄途中の様子を模式的に示す斜視図である。
【図8】本実施形態の生理用ナプキンにおける外層シートの別形態について示す図7相当の斜視図である。
【図9】本発明の他の好ましい実施形態としての生理用ナプキンを非肌当接面側から模式的に示す平面図である。
【図10】固着部の変形例を模式的に示す生理用ナプキンの非肌当接面側の平面図である。
【図11】固着部の他の変形例を模式的に示す生理用ナプキンの非肌当接面側の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明についてその好ましい実施形態を示し、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明における吸収性物品の一実施形態としての生理用ナプキン10の着用する直前(個別包装シートを折り返す前)の形状を肌面方向から模式的に示した一部切欠斜視図である。図2は、図1の生理用ナプキン10を3つ折りして個別包装体とした様子を模式的に示す一部切欠斜視図であり、(a)は生理用ナプキン10の端部を折り畳んだ状態の表面シート側を示し、(b)は裏面シート側を示す。図3は図1に示すIII−III線断面の断面図である。
【0010】
本実施形態の生理用ナプキン10は、肌当接面側に配置される液透過性の表面シート1、非肌当接面側に配置される裏面シート2、及び該両シートの間に配置される吸収体3を有し、縦長の形状である。裏面シート2の肌当接面側に吸収体3及び表面シート1が接着剤等で接合され配設されている。生理用ナプキン10は、表面シート側を着用者の肌当接面側に向け、かつ、その縦方向を下腹部から臀部にかけて配し、その幅方向を左右の足をつなぐラインの方向に向けて配して着用する。
【0011】
生理用ナプキン10において、裏面シート2の非肌当接面側には外層シート6としての個別包装シート60が配されている。個別包装シート60は、ナプキン10の外形よりもやや大きく、裏面シート2の非肌当接面の全面を覆うように配されている。この個別包装シート60は、生理用ナプキン10が使用前に汚れ等がつかないよう1つ1つ個別に袋状に包装するためのものである。その個別包装の状態としては、例えば図2に示すように、表面シート1側を包むようにして生理用ナプキン10を3つ折りし、個包装シート60の両端部を重ね合わせてシール65(図2(a)参照)で固定し、さらに個包装シート60の両側縁部をエンボス等により圧着して封緘する(以下、該圧着部分を圧着部66という。)。他方、この状態から、シール65及び圧着部66を解いて展開させると、図1に示すように使用面である表面シート1が現れる。
【0012】
図3に示すとおり、ナプキン10を展開した状態において、個別包装シート60は、生理用ナプキン10の長手方向前後端側の位置に前側固着部61、後側固着部62を有する。前側固着部61及び後側固着部62は、それぞれ裏面シート2に固着され、使用前後においても剥離されない。さらに個別包装シート60は、前側固着部61及び後側固着部62の間で、裏面シート2とは固着されていない前側自由部63及び後側自由部64を有する。このように個別包装シート60は、ナプキン10の前端部側から、前側固着部61、前側自由部63、後側自由部64、及び後側固着部62の順で区分される。また前側自由部63及び後側自由部64はそれぞれで分離し、前側自由部63は前側固着部61へ向かって、後側自由部64は後側固着部62へ向かって折り返し可能とされている(図3において、矢印の方向に展開させた状態の自由部63及び64を2点鎖線で示す。)。
【0013】
より詳細には、外層シート6における固着部と自由部とは前側固着境界線61wと後側固着境界線62wとによって区画され、固着境界線61w、62wよりも長手方向内方を自由部63、64とし、長手方向外方を固着部61、62とする。前側固着境界線61w及び後側固着境界線62wは、後述するように、廃棄時に固着部及び自由部で表面シートの汚れた部分を覆い易く、使用時に着衣等に安定的に固定し易くする観点から、適宜機能的に決めることができる。本実施形態のナプキン10は、排泄部対応領域を中央に配して前端部及び後端部がほぼ均等な長さのものである。この場合、両境界線は、前端部及び後端部の両方で表面シートの排泄部対応領域を十分覆うことができるよう、ナプキン10の4等分した両端の境界線付近にあるのが好ましい。なお、排泄部対応領域とは経血もしくは尿、おりもの等の排泄を直接受ける部分及びその近傍である。通常、昼用のナプキンなど前後対象に形成される場合は、排泄部対応領域は、ナプキンを長手方向に3等分した場合の中央領域であり、夜用のナプキンなどは、後方に臀部を覆う左右幅広な後方フラップを有し、ナプキンを長手方向に2等分した際の前側の中央よりにある。また、昼用、夜用にかかわらず、ショーツの股下部に折り曲げて固定するウイングを備える場合は、該ウイングの存在する領域に沿った長手方向両域が排泄部に対応する。
【0014】
前側自由部63及び後側自由部64は、使用する前の個包装された状態においては、裏面シート2の非肌当接面側に剥離可能に固定されている(図2(b)及び図3参照)。本実施形態においては、前側自由部63及び後側自由部64の、個包装された状態で裏面シート2に対向する面に粘着部63a及び64aが配設されている。粘着部63a及び64aが接する部分で、裏面シート2が剥離紙の機能を担う。そして使用時には、前側自由部63を前側固着部61側へ、後側自由部64を後側固着部62側へ折り返し、そこに現れる粘着部63a及び64aでナプキン10を着衣等に固定して使用することができる。なお、ナプキン10の着衣等への固定方法は、これに限らず、折り返す前の前側自由部63及び後側自由部64が面する裏面シート2の部分に粘着部を設けてもよい(図示せず)。その場合、前側自由部63及び後側自由部64が剥離紙の機能を担う。また個別包装状態において、前側自由部63及び後側自由部64が接する部分をシール67で締結固定してもよい。あるいは前側自由部63及び後側自由部64を一部重ね合わせて、一方の肌面側に粘着を設けて締結固定したり、1つの部材にミシン目などの破断誘導線を設けて分離可能にしたりしてもよい。
なお、本発明において固着(固着部)とは製品の使用上、脱着せず部材同士を剥離させないで使用すること(部位)であり、固定ないしは締結(固定部ないし締結部)とは粘着剤等によって一時的に部材同士が接合され、製品を使用するにあたって脱着が可能とされており、他の部材に前記接着剤を使用して接合することが可能なこと(部位)である。
【0015】
本発明においては、特に断らない限り、人体に接触する側の面を肌側面ないし肌当接面あるいは表面といい、これと反対側の面を非肌面ないし非肌当接面あるいは裏面という。この2つの面において、肌側面に近い方ないしその延長方向を肌面側、肌当接面側又は表面側といい、非肌面に近い方ないしその延長方向を非肌面側、非肌当接面側又は裏面側という。装着時に人体の前側に位置する方向を前方といいその端部を前端部とし、後側に位置する方向を後方といいその端部を後端部として説明する。吸収性物品の表面又は裏面の法線方向を厚み方向といいその量を厚さという。更に、吸収性物品の平面視において腹側部から股下部を亘り背側部に至る方向を縦方向といい、この縦方向と直交する方向を幅方向という。なお、前記縦方向は典型的には装着状態において人体の前後方向と一致する。
【0016】
ここで本実施形態の生理用ナプキン10の実施態様について図4〜6に基づきさらに詳しく説明する。図4、5及び6は本実施形態の生理用ナプキン10における使用する過程をその順で示している。図4は生理用ナプキン10を使用する前の状態を生理用ナプキンの幅方向から模式的に示した断面図である。図5は生理用ナプキン10を使用している状態を生理用ナプキンの幅方向から模式的に示した断面図である。図6は生理用ナプキンの使用後の廃棄過程における様子を生理用ナプキンの幅方向から模式的に示した断面図であり、(a)は廃棄第1段階、(b)は廃棄第2段階を示す。また図7は、図6(a)の廃棄第1段階の様子を模式的に示す斜視図である。図中、上側が身体側(肌面側)であり、図5においては図の煩雑化を避け身体を図示していない。また本発明の理解のため、ナプキンを構成する表面シート1、裏面シート2等は示さずに全体をナプキン本体10Aとして示し、ナプキン本体10Aと個別包装シート60との関係を中心に図示して示す。
【0017】
図4は使用する前、すなわち使用者が購入時に手にする形態である。一般的に生理用ナプキンを購入すると数個から数十個が1つの袋に梱包されており、更に一つ一つの生理用ナプキンを衛生的に持ち運べるように個別に包装がなされている。本実施形態の個別包装シート60は、前述のとおり、生理用ナプキン10を個別に包装する個別包装体としての機能を有しており、使用する前においては生理用ナプキン10の非肌当接面側の全域を覆っている。前側自由部63及び後側自由部64同士は、シール67で締結され、前側固着部61と後側固着部62とは一部重ね合されてシール65で締結されている。なお、図4では後側固着部62が前側固着部61の上に積層されて締結されているが、これに限定されず逆の配置であってもよい。
【0018】
次に図5を参照して、生理用ナプキン10の使用時の形態について説明する。使用時には前側自由部63を前側固着部61の非肌当接面側に折り返し、後側自由部64を後側固着部62の非肌当接面側にそれぞれ折り返し、前側自由部63及び後側自由部64の折り返した面に塗布された接着部63a及び64aを着衣等7に固定して使用する。このようにナプキン10の裏面シート側に2つの自由部63及び64が分離し各固着部側へ折り返し可能であることで、まずナプキン10の表面シート側を広げなくても、比較的小さな個包装状態に近い状態で着衣等7に固定することができる。また、2つの自由部がある位置が本実施形態のように排泄部対応領域あると、その大きさを基準に固定する位置を容易に定めることができる。そして、個別包装シート60を廃棄することなく使用することが可能であり、ごみの発生を抑えることができる。さらに、排泄部近傍に外層シート6が存在しないことにより幅方向の自由度に優れ柔らかい着用感を保持できる。加えてナプキン10の前端及び後端で、前側自由部63及び前側固着部61、後側自由部64及び後側固着部62が、それぞれ固着境界線61w、62wを起点とするくの字状の、非固定のシート積層構造ができる。これにより、生理用ナプキン10の前端部側では腹部方向に、後端部側では臀部方向に厚みが増えて、各固着部が立ち上がり易く、身体へのフィット感が向上し好適な着用感となる。
【0019】
さらに図6を参照して、上述した着用状態から本実施形態の生理用ナプキン10を廃棄する形態について説明する。本発明の吸収性物品は、固着部及び自由部の構造によって、使用済みのナプキンを簡易に、衛生的に廃棄することができる。
その好ましい廃棄手順としては、まず廃棄第1段階として、生理用ナプキン10の前端部と後端部とを表面シート1側に折り返す(図6(a)、図7参照)。このとき、裏面シート2側には、着衣等7とは非固定にされた前側固着部61及び後側固着部62があり、その部分に指を添えて軽くナプキンを折り畳むことができ、容易に表面シートの排泄部対応領域を覆い隠すことができる。このようにすると、排泄された液などをいち早く遮蔽できるだけでなく、周囲への液流れ等の飛散を防ぐことができる。本実施形態の生理用ナプキン10はこの折り返す位置が前側固着境界線61w及び後側固着境界線62wであり、この境界線を基点に生理用ナプキン10の前端及び後端が移動し、正確に折りたたみの形状を得られる。さらに上述した操作はナプキンをショーツ等の着衣からはずすことなく行えるため、手や衣服などへの飛散の恐れが少ない。なお、廃棄時の折り畳みは必ずしも特定の順序に限定されないが、好ましくは前端部を折り返してから後端部を折り返すことによってシール65を前側固着部61の非肌当接面側に固定することができ、手を離しても操作中にナプキンが開くことが無く便利である。
【0020】
そして廃棄第2段階として、前側自由部63及び後側自由部64を着衣等7から剥がし肌当接面側に折り返す。その際、前側自由部63と後側自由部64とを対面させて合わせ、シール67を介在させて固定する(図6(b)参照)。本発明はこのように合わされた部分を作りだすことによって使用済みの生理用ナプキン10に把手部68を容易に作ることができ、ナプキン10の汚れた部分に触れることなく廃棄できる。この把手部68は、上述した前側固着境界線61w及び後側固着境界線62wを起点とした容易な折りたたみともあいまって、難なく形成し易い。この把手部68が容易に形成できることで、上述の自由部による装着のし易さも加わって、極めて簡易で衛生的なナプキンの交換作業が可能となる。例えば、新旧ナプキンの交換と廃棄を同時に行うとき、使用済みのナプキンを2本の指などで持ったまま、新しいナプキンを大きく広げずとも簡単に位置決めして容易に装着でき、使用済みナプキン10は手を汚すことなく廃棄することも可能となる。その結果、使用済みナプキンを一時的に置いたり、トイレットペーパーに包んだりする必要がなくなり、極めて簡易で衛生的であり、かつ、ごみの低減にも貢献できるという優れた作用効果を奏する。なお把手部68は、シール67等による固定が好ましいが、固定されないままでも既に廃棄第1段階で表面シート1が隠蔽されているので手が汚れることがない。つまりナプキン交換時に一度把手部68から手をはなしても、ナプキン10本体に触れることなく、再び両自由部の端部のみを摘まんで把手部68を容易に形成できる。
【0021】
本実施形態による前端固着境界線61w及び後端固着境界線62wの位置は、使用する吸収性物品の大きさや用途によっても多少異なり一義的に定められない。しかし、廃棄時の表面シートの十分な被覆、装着時の容易な位置決めと安定的固定の観点から、前側固着境界線61w及び後側固着境界線62wで区分される、境界線61w外方の長さt1及び境界線62w外方の長さt2それぞれが、前側固着境界線61wから後側固着境界線62wまでの長さ(t3+t4)よりも短く(図1参照)、長さt1とt2の和(t1+t2)が前側固着境界線61wから後側固着境界線62wまでの長さ(t3+t4)の1倍〜2倍が好ましい。また、上記範囲にすることで廃棄第1段階において表面シートの隠蔽性が良好となり、かつ隠蔽形状を保つことができる。また、長さの比(t3/t1)及び(t4/t2)それぞれは1〜1.5が好ましい。上記範囲とすることで、廃棄第2段階において効果的な把手部68を形成することが容易となる。さらに長さの比(t1/t2)が0.6〜1.4で、長さの和(t1+t2)が、前側固着境界線61wから後側固着境界線62wの長さ(t3+t4)の1.1〜1.5倍であることがさらに好ましい。この場合、外層シート6の前端部又は後端部がナプキン10長手方向の前後端それぞれよりも長手方向外方へ延在している場合は、t1、t2の長さはそれぞれ、前側固着境界線61wから外装シート6の前側端部までの長さ、後側固着境界線62wから外層シート6の後側端部までの長さとし(図1参照)、一方、外層シート6の前端部又は後端部がナプキン10長手方向の先端と一致するか、又は長手方向内側までしか存在しない場合は、t1を前側固着境界線61wからナプキン10の前端縁Fまでの長さ、t2を後側固着境界線62wからナプキン10の後端縁Rまでの長さとする(図9参照)。
【0022】
また本発明の外層シート6が、本実施形態のようにナプキンよりも大きな個別包装シートである場合、ナプキンの幅方向にナプキン幅からはみ出す部分の長さが左右15mm以下であることが好ましく、装着時の違和感低減の観点からはみ出す部分が極力ないことが好ましい。上記上限は製造時において個別包装時の封緘が確かになる値である。
【0023】
図8は、本実施形態の生理用ナプキン10における外層シートの別形態(変形例)について示す図7相当の斜視図である。この形態の外層シートは、裏面シートの粘着部(図示せず)のみを覆う、個別包装シートよりも幅狭な剥離シート60’である。ただし、この剥離シート60’においても、前後端は裏面シート2にしっかりと固着された前側固着部61及び後側固着部62が形成さている。そしてその間は、裏面シート2の粘着部と剥離可能な前側自由部63及び後側自由部64となっている。したがって、図8が示すように、使用時には、個別包装シート60と同様に、自由部63及び64がそれぞれ固着部61及び62に折り返されて着衣等7に固定されている。そして廃棄時も同様に、固着部61及び62側から表面シートを覆い、次いで自由部63及び64で把手部を形成する2段階の処理ができる(図示せず)。したがって、この変形例においても、前記本実施形態の個別包装シート60と同様に、極めて容易、かつ、衛生的に廃棄でき、交換の手間を軽減できるという優れた作用効果を奏する。なお、この場合の個別包装の形態は、剥離シート60’の外側にさらに個別包装シートで覆うことで可能である。ただ、シール65を開放しナプキンの表面シートを展開する前に自由部のみを折り返して着衣等に装着することで簡易にナプキンの交換を行えることを考慮すれば、外層シートが個別包装シートである、前述の実施形態の方が好ましい。
【0024】
装着時にナプキンを安定固定し個別包装シートと同様の作用を奏する観点から、外層シートとしての剥離シート60’の幅(h1)とナプキン20の最大幅(h2)との比率(h1/h2)は、1/2〜1/1が好ましく、1/2〜3/4がさらに好ましい。
【0025】
図9は、本発明の他の好ましい実施形態としての生理用ナプキン20非肌当接面側から模式的に示す平面図である。生理用ナプキン20は、夜用など十分な吸収性を得るために後部を大きくしたものである。また生理用ナプキン20における外層シートは、ナプキンよりも幅の狭い剥離シート60’である。なお、この実施形態においても外層シート6は、剥離シート60’に限らず、幅広の個別包装シート60であってもよい。
本実施形態の生理用ナプキン20においては、廃棄時に、できるだけ後端部側で表面シートを覆うことができるよう、後側自由部64の長さ(t4)や後側固着境界線62w外方の長さ(t2)を十分にとることが好ましい。また、後側固着部62を表面シート側に折り畳んだ際に長手方向にはみ出すような場合は、必要により折り畳み境界線20vを設け、ナプキン30、後側固着部62の先端をさらに折り畳み易くすることが好ましい。後側固着部62が、表面シート側に折り畳んだ際に、長手方向にはみ出すことがないことが最も好ましいが、20vを設ける際には、後側固着境界線62w外方の長さ(t2)のうち境界線62wから20vまでの長さ(t21)が、前側固着境界線61wから後側固着境界線62wまでの長さ(t3+t4)とほぼ同じになるように20vを設けることが好ましい。さらに、後側固着境界線62wは、排泄部対応領域よりも後方にあることが好ましい。この時、前後固着部61及び62がナプキン長手方向の先端より短い場合は、長さt1を前側固着境界線61wからナプキンの前端縁Fまでの長さ、長さt2を後側固着境界線62wからナプキンの後端縁Rまでの長さとする。前後固着部61及び62がナプキン長手方向の先端より長い場合は、長さt1及びt2は、それぞれ該固着部の長さとする。
【0026】
以上のとおり、本実施形態の生理用ナプキン20においても、前述の生理用ナプキン10と同様に、自由部が固着部側に折り返されて着衣等にしっかりと固定でき、廃棄時には、固着部から簡単に表面シートを覆って、自由部が把手部となって2段階の処理ができ、衛生的に廃棄することができる。つまり、生理用ナプキン20においても、極めて容易、かつ、衛生的に廃棄でき、交換の手間を軽減できるという優れた作用効果を奏する。さらに、装着時に人体の後方領域とナプキンとのフィット感を向上させることで、就寝時の後方へのモレを低減させるよう働く効果がある。
【0027】
外層シートの素材としては、従来用いられている公知の材料を特に制限なく用いることができる。例えば、不織布や、樹脂フィルム、紙、これらの積層体等を用いることができる。好ましくは、装着時に自由部と固着部がくの字状の非固定のシート積層構造ができることにより、ナプキンと身体とのフィット性を向上し好適な着用感とするための剛性と、装着時の違和感低減のための柔軟性を考慮したものが良い。特に、個別包装シートとしては、柔軟性の点からはスパンボンドやエアスルーなどの不織布が、剥離シートとしては剛性の点から紙、紙と不織布やフィルムの積層体が望ましい。
【0028】
表面シート1は、排泄された体液を速やかに吸収し、吸収体に伝達する観点と肌触りのよさの観点とから親水化処理が施された各種不織布や開孔フィルム等の液透過性のシートを用いることが好ましい。表面シート1は親水化処理された熱可塑性樹脂繊維であり、かつ、該繊維が2次クリンプ又は3次クリンプのような立体捲縮がなされた繊維であることが好ましい。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン、及びこれらの複合繊維を作成し、所定の長さにカットしてステープルを形成する前の段階で、各種親水化剤を塗工する。親水化剤としては、αオレフィンスルホン酸塩に代表される各種アルキルスルホン酸塩、アクリル酸塩、アクリル酸塩/アクリルアミド共重合体、エステルアミド、エステルアミドの塩、ポリエチレングリコール及びその誘導物、水溶性ポリエステル樹脂、各種シリコーン誘導物、各種糖類誘導物、及びこれらの混合物など、当業者公知の親水化剤による親水化処理を用いることができる。
【0029】
吸収体3の構成材料としては、特に制限はないが繊維材料、多孔質体、多孔質体のみを紙や不織布で挟持したものなど、を用いることができる。繊維素材としては例えば、木材パルプ、コットン、麻などの天然繊維、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオフィレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール樹脂等の合成樹脂からなる単繊維、これらの樹脂を2種以上含む複合繊維、アセテートやレーヨンなどの半合成繊維を用いることができる。合成繊維からなる繊維を用いる場合、該繊維は熱によって形状が変化する熱収縮繊維であってもよい。例えば、熱によって繊度は大きくなるが繊維長は短くなるものや、熱によって繊度はほとんど変化しないが、形状がコイル状に変化することでみかけの繊維の占有する長さが短くなるものであってもよい。多孔質体としては、スポンジ、不織布、高吸水性ポリマーの凝集物(高吸水性ポリマーと繊維とが凝集したもの)などを用いることができる。
【0030】
裏面シート2は、不透湿性若しくは透湿性フィルム単独、又はフィルムと不織布の貼り合わせ、撥水性の不織布(SMSやSMMS等)を用いることができる。コスト面やズレ止め粘着剤とのマッチングなどから、透湿性フィルム単独を防漏材として用いることが最も好ましい。この場合の透湿性フィルム材としては、熱可塑性樹脂と、これと相溶性のない無機フィラーを溶融混練して押し出したフィルムを所定の寸法に延伸して微細孔をあけたフィルム、または、本質的に水分の相溶性が高く、浸透膜のように水蒸気排出可能な無孔性のフィルムが挙げられる。本発明に関わる湿度排出の性能を十分に発現し、かつ、水分のにじみ出しがない防漏層を具現化するには、透湿度は、0.7〜3.0g/100cm2hrの範囲にあることが好ましく、1.0〜2.5の範囲にあることが更に好ましい。さらっと感を十分に高める観点からは1.5〜2.5にあることが最も好ましい。また、フィルムの破れ等のトラブルなく使用可能であるためには、フィルム坪量は18〜70g/m2、より好ましくは25〜60g/m2である。また好ましい無機フィラー配合量は、フィルム全体の質量に対するフィラーの質量%として30〜65質量%、より好ましくは40〜60質量%である。
【0031】
本発明吸収性物品において、外層シートは、前述の機能を有するものであれば、個別包装シートや剥離シートに限定されず、様々な形態のものであってもよく、その他の機能を付加させたものであってもよい。たとえば、おむつと併用する尿取りパッドの場合で、接着面が面状ファスナーになったものも含む。
【0032】
本発明の吸収性物品は、上記の実施形態に制限されるものではなく、着用者の股下部から前後方向に縦長に装着するものであれば様々な形態のものを含む。たとえば、生理用ナプキンに限らず、失禁パッド、失禁ライナ等下着の股下部に取り付けるものに本発明を適応することができる。
【0033】
また、上述の実施形態では、固着部全域で外層シート6と裏面シート2とが固着された形態について説明したが、固着部とされる領域のうち、外層シート6と裏面シート2を固着させる部分としての前側固着領域61S及び/又は後側固着領域62Sでだけ固着され、それ以外の固着部では両シートが固着されていなくてもよい。例えば、固着領域61S、62Sそれぞれが複数、固着部61及び62内で長手方向(Y方向)に沿って非固着領域を挟むようにして間欠的に配置されるような形態が挙げられる(図10参照)。また、別の例として、前端縁F又は後端縁Rからナプキン10の長手方向(Y方向)内方に所定長さ迄の範囲では外層シート6と裏面シート2とが固着されていない非固着領域とされ、固着境界線から非固着部領域までの間で固着領域61p及び62pを以って両シートが固着されていても構わない(図11参照)。なお図10及び11では、前記の各固着領域の物品の平面方向に広がる範囲を示している。該固着領域は、物品の厚み方向に見ると、その範囲において外層シート6及び裏面シート2の積層部分を接合した領域である(図示せず)。
これらの場合、前後固着部61,62それぞれにおいて、長手方向(Y方向)に関し、前記固着領域の最前部から最後部までの配置長さu5及びu6が、前側固着境界線61wからナプキン10の前端縁Fまでの長さu1及び、後側固着境界線62wからナプキン10の後端縁Rまでの長さu2の3分の2以上であることが好ましく、また、固着領域の最大幅h2が固着部幅h1の2分の1以上を有するものであることが好ましい。例えば、配置長さが固着境界線61w、62wからナプキン前後端側に向かってそれぞれu1又はu2の3分の2の長さであり、幅がそれぞれ固着部幅の3分の2の長さである、長方形の固着領域を有するものも含む。前側固着領域61Sと及び後側固着領域62Sの長手方向内方の縁が固着境界線61w、62wとなる。
【0034】
また吸収性物品の長さ、物品の外形についても限定されるものではない。例えば、表面シート1、吸収体3、及び裏面シート2の他にも用途や機能に合わせ適宜部材を組み込んだり形状を変更したりしてもよい。またウイングの有無に限定されず、吸収性物品の幅方向外方にウイング部を設けて着衣等に固定する形態をとってもよく、その形態も任意のものを採用できる。なお、上記実施形態の吸収性物品の表面シート1、吸収体3及び裏面シート2の材料、製法における条件や、製品の寸法諸言は特に限定されず、通常の吸収性物品において用いられている各種材料を用いることができる。
【符号の説明】
【0035】
1 表面シート
2 裏面シート
3 吸収体
6 外層シート(個別包装シート60、剥離シート60’)
61 前側固着部
62 後側固着部
63 前側自由部
64 後側自由部
7 着衣等
10,20 生理用ナプキン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
肌当接面側に配置される液透過性の表面シート、非肌当接面側に配置される裏面シート、及び該両シートの間に配置される吸収体を有する縦長の吸収性物品であって、
前記裏面シートの非肌当接面側には外層シートが配され、該外層シートは、前記吸収性物品本体に固着された固着部と固着されていない自由部とを有し、前記固着部は前記吸収性物品本体の長手方向前後端側に配されており、前記自由部は前記固着部の間に配されており、該自由部は、長手方向前後に少なくとも2つに分離し前記前後端の固着部それぞれに向かって折り返し可能に配されている吸収性物品。
【請求項2】
前記自由部を長手方向前後端それぞれに向かって折り返した際の該自由部の非肌当接面、又は、前記自由部の折り返しによって露出する裏面シートの非肌当接面に、着衣に固定可能な粘着部が施された請求項1記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記吸収性物品の廃棄時に、該吸収性物品本体の長手方向前後端を表面シート側に折り畳むことで前記外層シートの固着部が前記表面シートの排泄部対応領域を覆うようにされている請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記自由部は、物品長手方向前後端からさらに前記表面シート側を被覆可能とされており、前記自由部の前側のものと後側のものとが、前記表面シートの上方で対面して廃棄用包装体の把手部となる請求項1〜3のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記外層シートは前記吸収性物品の個別包装シートである請求項1〜4のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記吸収性物品の長手方向の左右両側縁部に一対のウイング部を有する請求項1〜5のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記少なくとも2つの自由部は、互いに向かい合う部分で分離可能に接合されている請求項1〜6のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記吸収性物品が生理用ナプキン、失禁パッド又は尿とりパッドである請求項1〜7のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項1】
肌当接面側に配置される液透過性の表面シート、非肌当接面側に配置される裏面シート、及び該両シートの間に配置される吸収体を有する縦長の吸収性物品であって、
前記裏面シートの非肌当接面側には外層シートが配され、該外層シートは、前記吸収性物品本体に固着された固着部と固着されていない自由部とを有し、前記固着部は前記吸収性物品本体の長手方向前後端側に配されており、前記自由部は前記固着部の間に配されており、該自由部は、長手方向前後に少なくとも2つに分離し前記前後端の固着部それぞれに向かって折り返し可能に配されている吸収性物品。
【請求項2】
前記自由部を長手方向前後端それぞれに向かって折り返した際の該自由部の非肌当接面、又は、前記自由部の折り返しによって露出する裏面シートの非肌当接面に、着衣に固定可能な粘着部が施された請求項1記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記吸収性物品の廃棄時に、該吸収性物品本体の長手方向前後端を表面シート側に折り畳むことで前記外層シートの固着部が前記表面シートの排泄部対応領域を覆うようにされている請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記自由部は、物品長手方向前後端からさらに前記表面シート側を被覆可能とされており、前記自由部の前側のものと後側のものとが、前記表面シートの上方で対面して廃棄用包装体の把手部となる請求項1〜3のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記外層シートは前記吸収性物品の個別包装シートである請求項1〜4のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記吸収性物品の長手方向の左右両側縁部に一対のウイング部を有する請求項1〜5のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記少なくとも2つの自由部は、互いに向かい合う部分で分離可能に接合されている請求項1〜6のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記吸収性物品が生理用ナプキン、失禁パッド又は尿とりパッドである請求項1〜7のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−102950(P2013−102950A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248666(P2011−248666)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】
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