説明

吸収性物品

【課題】吸収性能をさらに高め、液戻りや駅残りをさらに低減した吸収性物品を提供する。
【解決手段】肌当接面側に配置される液透過性の表面シート1、非肌当接面側に配置される裏面シート2、及び該両シートに介在された吸収体3を有する吸収性物品であって、前記表面シート1の少なくとも非肌当接面側は、裏面凸部が点在して凹凸形状をなし、該表面シートと前記吸収体との間には液透過性のサブレイヤ6が配され、該サブレイヤ6と前記表面シート1の裏面凸部とが当接部分で接しており、前記当接部分における前記サブレイヤの繊維密度が、該サブレイヤの他の部分よりも高い吸収性物品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使い捨ておむつや生理用ナプキン、失禁パンツ等の吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨ておむつ等の吸収性物品においては、各部材の材料や構造を改良し、その機能や着用感の向上が図られてきた。良好な着用感の向上として、おむつの肌当接部分と吸収体との距離を保って見かけの部材厚みを増す工夫が挙げられる。これにより、物品肌当接面側への液戻りやおむつ内の湿度上昇を抑制することができる。具体的には、表面シートの下にサブレイヤを積層したものや表面シートをエンボス等で凹凸に賦形したもの、該賦形シートを他の不織布シートと圧着等で接合固定させたものなどがある。このような改良を企図して開発がなされ、特に最近では使用状況や物品の種類に応じ、その機能性を高めたものが種々提案されている。
【0003】
特許文献1には、2層からなる凹凸構造を有する表面シートが開示されている。該表面シートは、多数の凸部、凹部が形成された中央領域と該中央領域の両側の側部領域を有する。前記中央領域の上層シートの凹部が下層シートとヒートロールによって加熱・加圧されることで、2層がしっかりと固定されている。これにより前記表面シートは、中央領域において高さのある凸部が安定維持されて高い液戻り防止性を有する。そして、吸収体への液の移行に優れる側部領域によって高い防漏性を得ることができるとされる。
また特許文献2には、ピンロールにて形成された凹凸形状を有した2層からなる表面シートが開示されている。前記表面シートの肌当接面側に設けられた導液凹部によって肌当接面側での液流れを軽減し、通気性及びクッション性に優れるとされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−118920号公報
【特許文献2】特開2009−89965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の部材積層による厚み増加によって、液の引き込み性を高め液戻りを防止し、良好な着用感を達成できた。
本発明は、従来の吸収性物品の吸収性能をさらに高め、液戻りや物品内部の湿度抑制とともに、使用状態や排泄量等によっては生じかねない肌面側の液残りをさらに低減して、着用者の肌への負担をより一層軽減できる吸収性物品の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、肌当接面側に配置される液透過性の表面シート、非肌当接面側に配置される裏面シート、及び該両シートに介在された吸収体を有する吸収性物品であって、前記表面シートの非肌当接面側は、裏面凸部が点在して凹凸形状をなし、該表面シートと前記吸収体との間には液透過性のサブレイヤが配され、該サブレイヤと前記表面シートの裏面凸部とが当接部分で接しており、前記当接部分における前記サブレイヤの繊維密度が、該サブレイヤの他の部分よりも高い吸収性物品により上記の課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の吸収性物品は、従来の吸収性物品の吸収性能をさらに高め、液戻りや物品内部の湿度抑制とともに、使用状態や排泄量等によっては生じかねない肌面側の液残りをさらに低減して、着用者の肌への負担をより一層軽減できるという優れた作用効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明における吸収性物品の好ましい一実施形態としての使い捨ておむつを肌当接面方向から模式的に示す一部切欠斜視図である。
【図2−1】(a)は図1に示すII−II線断面の断面図であり、(b)は表面シート及びサブレイヤの配置関係を模式的に示す一部拡大断面図である。
【図2−2】本実施形態の使い捨ておむつの断面を撮像した図面代用写真である。
【図3】裏面凸部における表面シート、サブレイヤ及び吸収体の関係を模式的に示す説明図である。
【図4】実施形態のおむつに用いられる表面シートを一部断面により模式的に示す斜視図である。
【図5】図2−1の所定の断面の一部を拡大して示した一部拡大断面図である。
【図6】表面シートの非肌当接面側における裏面凸部と裏面凹部との関係を平面視により模式的に示す説明図である。
【図7】本実施形態の表面シートの断面を撮像した図面代用写真である。
【図8】表面シートの断面形状の変形例を示す説明図である。
【図9】吸収性コアの変形例を示す説明図である。
【図10】実施例における表面シートの試験実施後の状態を撮像した図面代用写真である。
【図11】比較例における表面シートの試験実施後の状態を撮像した図面代用写真である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明についてその好ましい実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明における吸収性物品の好ましい一実施形態としての使い捨ておむつを肌当接面方向から模式的に示す一部切欠斜視図である。同図に示したおむつはテープ型の使い捨ておむつであり、平面に展開した状態のおむつを多少曲げて内側(肌当接面側)からみた状態で示している。
【0010】
まず本実施形態の上記使い捨ておむつ10の概要を説明する。
本実施形態の使い捨ておむつ10は、肌当接面側に配置される液透過性の表面シート1と、非肌当接面側に配置される裏面シート2と、これらの間に介在された吸収体3とを有する。表面シート1と吸収体3との間には液透過性のサブレイヤ6が配されている。吸収体3は吸収性コアを被覆シート(図示せず)で被覆されてなる。
サブレイヤ6は、表面シート6からの素早い液の引き込み、平面方向への液の拡散、及び吸収体3への液の効率的な引き渡しによって、吸収性能を向上させる部材である。またサブレイヤ6は、おむつ10の肌当接面側と吸収体3との間に所定の距離を設けて部材厚みを増すことができる。これにより、表面シート1側への液戻りを抑制し、おむつ10内部の湿度の抑制に効果的である。
【0011】
裏面シート2は展開状態で、その両側縁が長手方向(Y方向)中央部において内側に括れた略砂時計形の形状を有しておりおむつの外形をなす。このおむつ10の外形は、その展開状態として長手方向(Y方向)に着用者の腹側に配される腹側部Fと背側に配される背側部Rとその間に位置する股下部Cとに区分される。股下部Cは着用者の排泄部に対応する領域(排泄部対応領域)を含む。裏面シート2は1枚のシートからなるものであっても、複数のシートからなるものであってもよい。該吸収体3の上側を表面シート1及びサブレイヤ6が覆うように積層されて、裏面シート2上に配設されている。表面シート1、サブレイヤ6及び吸収体3はそれぞれ、裏面シート2よりも幅狭の略長方形状であり、これらの長手方向を裏面シート2の長手方向に一致させて配されている。さらに表面シート1の長手方向両側縁を覆ってさらに幅方向(X方向)外方に向けて、一対のサイドシート4,4が積層されている。サイドシート4の幅方向中央寄りの端部には、弾性部材を配した防漏カフ41が形成され、幅方向外方にはそれぞれ弾性部材を配したレッグギャザー42が形成されている。これらにより乳幼児の運動等による股関節部分における液体等の横漏れを効果的に防止し得る。本実施形態のおむつ10においては、さらに機能的な構造部やシート材等を設けてもよい。
【0012】
おむつ10の腹側部F及び背側部Rには、サイドシート4と裏面シート2とが積層されて幅方向外方に張り出した背側フラップ部51及び腹側フラップ部52が形成されている。背側フラップ部51にはファスニングテープ53が設けられている。このテープ53を腹側フラップ部52に設けたテープ貼付部(図示せず)に貼付して、おむつを装着固定することができる。このとき、おむつ長手方向中央を緩やかに内側に折り曲げて、吸収体3が乳幼児の臀部から下腹部にわたって沿わされるように着用する。これにより排泄物が的確に吸収体3に吸収保持される。
【0013】
上記表面シート1、裏面シート2、吸収部3及びサブレイヤ6の材料等の詳細は後述するが、本実施形態において表面シート1は、排泄された体液を速やかに吸収し、吸収体に伝達する観点と、肌触りのよさの観点から親水性のエアスルー不織布を用いている。また、裏面シート7としては、通気性を有した透湿性フィルムを用いている。吸収体3について、吸収体3はパルプ繊維と高吸収性ポリマーとから構成されたものを用いている。
サブレイヤ6としては、液透過性の繊維材料を主体としたシートからなる。またサブレイヤ6は、液の透過性及び拡散性の観点から、表面シートよりも繊維密度が低いものが好ましい。
【0014】
本発明においては、特に断らない限り、人体に接触する側の面を肌側面ないし肌当接面あるいは表面といい、これと反対側の面を非肌面ないし非肌当接面あるいは裏面という。この2つの面において、肌側面に近い方ないしその延長方向を肌面側、肌当接面側又は表面側といい、非肌面に近い方ないしその延長方向を非肌面側、非肌当接面側又は裏面側という。装着時に人体の前側に位置する方向を前方といいその端部を前端部とし、後側に位置する方向を後方といいその端部を後端部として説明する。吸収性物品の表面又は裏面の法線方向を厚み方向といいその量を厚さという。更に、吸収性物品の平面視において腹側部から股下部を亘り背側部に至る方向を縦方向又は長手方向といい、この縦(長手)方向と直交する方向を幅方向という。なお、前記縦方向は典型的には装着状態において人体の前後方向と一致する。
【0015】
次に図2−1及び図2−2を参照して、おむつ10の断面形状について説明し、表面シート1及びサブレイヤ6の構成について説明する。図2−1の(a)は図1に示すII−II線断面の断面図であり、(b)は表面シート及びサブレイヤ6の配置関係を模式的に示す一部拡大断面図である。図2−2は、使い捨ておむつ10の断面を撮像した図面代用写真である。なお、図2−2の図面代用写真において、表面シート1の裏面凸部8がサブレイヤ6に当接する部分を破線サークルで囲んだ部分として示した。
【0016】
図2−1(a)及び図2−2に示すように、おむつ10の断面形状は、吸収体3に対して表面シート1が裏面凸部8及び裏面凹部7を交互に繰り返す凹凸形状を有している。そして、裏面凸部8において、表面シート1とサブレイヤ6とが当接している。
本発明は、この表面シート1とサブレイヤ6との当接部分(以下、当接部分を符号63として示す。)の構造によって、サブレイヤの液引き込み性、液拡散性及び液戻り防止性を保持し、かつ、後述する、液残りのさらなる低減が実現される。この表面シート1及びサブレイヤ6の構成について、図2−1(b)を参照してさらに説明する。
【0017】
図2−1(b)に示すように、表面シート1の非肌面側には、肌当接面側(Z)から非肌当接面側(Z)へと突出した裏面凸部8が形成されている。この裏面凸部8は、面方向にほぼ等間隔で隣接して周期的に多数配されている。そして、各裏面凸部8の間は、非肌当接面側(Z)から肌当接面側(Z)へと窪んだ裏面凹部7となる。この配置は、個々の裏面凸部8が、平面視で各方向に点々と拡散する配置である。これによって、表面シート1の非肌当接面側は凹凸形状となっている。なお本実施形態においては、この裏面凸部8に対応する表面シート1の肌当接面側には表面凹部88が形成され、裏面凹部7に対応する表面シート1の肌当接面側には表面凸部78が形成されている。
【0018】
裏面凸部8は、前述のように、表面シート1の非肌当接面側において、吸収体3側に突出した部分である。そして裏面凸部8は、サブレイヤ6と当接部63で接している(図3参照)。この当接部63によって、吸収体3と表面シート1との間の隙間が埋められ、吸収体3からの吸引力がサブレイヤ6を介して表面シート1に伝わりやすい。さらに、当接部分63におけるサブレイヤ6の繊維密度は、それ以外のサブレイヤの繊維密度よりも高くされている(以下、繊維密度の高いサブレイヤ6の部分を密部61といい、繊維密度の低いサブレイヤ6の部分を粗部62という。)。これにより、サブレイヤ6の密部61の毛管力がサブレイヤ6の粗部62よりも液を引き込みやすく、吸収体3の吸引力と相俟って、表面シート1、特に裏面凸部8に残りやすい液をも積極的に引き込むことができる。そしてサブレイヤ6が吸収体3へと液を効率よく引き渡す。その結果、表面シート1の液残り抑制がさらに向上し、肌と表面シート1との間の湿度抑制がさらに向上する。
【0019】
本実施形態において、裏面凸部8は丸みのある頂部8aとされ、当接部63でのサブレイヤ6との接触面積が好適に抑えられている。これにより液戻りを抑えて、当接部63での液残り低減を実現できる。また接触面積の抑制により、後述の裏面凹部7における液吸収性能を阻害せず、表面シート1での濡れ抑制に効果的である。この効果を奏するものであれば、表面シート1の裏面凸部8は、本実施形態の頂部8aに限定されるものではなく、平面形状であってもよい。
【0020】
本発明において、液残り低減の観点から、当接部63に当接する裏面凸部8及びサブレイヤ6の密部61の構成繊維は、それぞれフィルム化されずに繊維間の隙間が維持されている。これは、従来のヒートシール等による繊維のフィルム化とは異なり、液の移行が妨げられない。そしてサブレイヤ6の密部61の毛管力を生かして表面シート1内の液を吸収体3へと力強く導くことができる。またフィルム化されないことで、当接部63が剛性化されずに肌触りがよくなる。そして、表面シート1及びサブレイヤ6による嵩高さとクッション性が阻害されず良好な着用感が得られる。また当接部63は、フィルム化による剛性を有さないので、表面シート1側からの厚み方向の押圧があっても、当接部63で力がそのまま下方に伝わらず和らげられる。そのため、押圧による液戻りがさらに生じ難くなり好ましい。
【0021】
さらに裏面凸部8とサブレイヤ6との当接部63は、ホットメルト接着剤等によって接合された部分と、接着剤等によって接合されていない部分とが混在することが好ましい。これにより、液残り低減と当接部63の安定化の両立がバランスよく図られる。なお、接着剤にて接合される部分は必要最小限にすることが好ましく、その範囲についても排泄部対応領域での接合部分を少なくすることが好ましい。そのようにすることで後述する液のスムーズな吸収体への流れを接着剤によって阻害されることを防ぎつつ柔軟な着用感を得ることができる。また、裏面凸部8とサブレイヤ6における密部61とが接している部分は表面シート1の全域である必要はなく、少なくとも排泄部対応領域を含む股下部Cに施されていることが好ましい。なお、排泄部対応領域とは尿もしくは便等の排泄を直接受ける部分及びその近傍である。
この観点から、接着剤等で接合された当接部の数(g)と非接合の当接部の数(g)の比率(g/g)は、1/1〜1/8が好ましく、1/2〜1/4がさらに好ましい。上記下限以上とすることで表面シート1とサブレイヤ6との接合が安定的となり、上記上限以下とすることで接着剤による吸収性阻害を防ぐことができる。なお、ホットメルト接着剤等で接着された当接部63においても、接着剤の膜を形成することなくスプレー塗布等により両者の繊維同士を点接合することが好ましい。これにより、裏面凸部8及びサブレイヤ6の密部61の繊維同士が接合されても、両者の繊維間の隙間が保持され易い。
【0022】
また当接部63の安定化の観点から、図3に示すように、サブレイヤ6の密部61は、非肌当接面側へと窪んだ凹部をなし、該凹部に裏面凸部8が入り込んで接していることが好ましい。この状態であると、密部61と裏面凸部8とを強固に接着しなくても当接状態が崩れ難く、安定化し易い。また密部61の領域面積を広げずとも、入り込み部分で裏面凸部8が密部61と接する面が適度に広がるので、吸収体3への移行効率が向上する。他方、後述する裏面凹部7において、サブレイヤ6の粗部62が嵩高く空間72に多少入り込んでいると、空間部72の液を誘導し易くなるので好ましい。この密部61の凹部厚みは、粗部62の厚みに対して30〜90%であることが好ましく、50〜70%であることがさらに好ましい。上記下限以上とすることで当接部における液戻りやおむつ内部への水蒸気蒸散を抑制することとなり、上記上限以下とすることで表面シート1とサブレイヤ6の当接状態が安定的に維持されることとなる。
【0023】
一方、裏面凹部7は、表面シート1の非肌当接側面の窪みであり、その窪みに沿った表面シート1がなす頂7aから底部7cへと向かう側壁部7bによって形成されている(図2−1(b)参照)。裏面凹部7の位置にはサブレイヤ6の粗部62が配されている。裏面凹部7とサブレイヤ6の粗部62との間は、空間部72となっている。空間部72は、表面シート1やサブレイヤ6の繊維材料が多少入り込むものがあっても実質的に空隙部分である。空隙であることで、表面シート1から透過される液の通液抵抗が低い。そして空間部72は、裏面凹部7にあることで肌側に比較的近い位置にあるので、頂部7aや側壁部7bから液を素早く取り込み易く、表面シート1が受けた液を積極的に透過させ易い。なお、このような空間部72は、表面シート1側からの力の影響を和らげる緩衝部位ともなって好ましい。
さらに、サブレイヤ6の粗部62は、密部61ほどには繊維が高められていないので、サブレイヤ6本来の機能である、液の引き込み性と液拡散性を発揮できる。そして粗部62は、空間部72に取り込まれた液を広い面積で吸収体3へと素早く引き渡すことができる。この観点から、サブレイヤ6の繊維密度は、表面シート1の裏面凹部7付近の繊維密度よりも低いことが好ましい。また、表面シート1、空間部72、サブレイヤ6の粗部62の構成によって、着用者の肌と吸収体との間の距離を広げて厚みを確保できる。これにより、肌側への液戻りを好適に抑制することができる。
【0024】
以上のとおり裏面凹部7において、空間部72及びサブレイヤ6の粗部62の組み合わせにより、表面シート1からの排泄液の吸収速度が向上し、かつ表面シート1の肌当接面側での液の拡散を抑制し得る。また、排泄液の排泄量が一度に多量となった場合でも、空間部72が表面シート1からの液を一時的に保持して液吸収の調整弁ともなり得る。そして空間部72は、パルプ繊維等からなる吸収性体3とは違って保水力が低いため、サブレイヤ6の液拡散作用と相俟って、吸収体3へと液を素早く引き渡すことができる。このように空間部72及びサブレイヤ6の粗部62の組み合わせは、液の調整弁として一時液を保持しつつもすぐに空間が回復し得るので、多量の排泄の場合のみならず、繰り返しの排泄の場合にあっても、十分対応可能である。また吸収体3の肌当接側面が実質的に平坦な形状であれば、この作用がより効果的なものとなり好ましい。
【0025】
裏面凹部7の形状は、前述の吸収速度の観点から、側壁部7bがなす裏面凹部7の断面形状が略放物線形状、裏面凹部7の空間形状は頂部7aに丸みのある円錐ないしは円錐台など錐体(円錐、円錐台、角錐、角錐台、斜円錐等など)に近い形状であることが好ましい。錐体形状のなだらかな傾斜が、液の排泄時の圧力を損なうことなく液を厚み方向に透過させつつ、より多くの液を素早く空間部72へと引き込むことができる。
また、裏面凹部7において、頂部7aとは裏面凹部7の立体空間の内壁をなす表面シート1の非肌当接側面のうち最も高い位置(Z方向)の部位であり、底部7cとは同空間のうち最も低い位置(Z方向)の部位である。裏面凹部の底部7cは裏面凸部8の頂部8aに一致する。なお、前述の裏面凹部7の頂部7aや底部7c(裏面凸部の頂部8a)は、曲面上の頂点として示しているがこれに限らずその周辺が平面状であってもよい。その場合、頂部7aは該平面の中央点あるいは平面の中でも最も高い地点、底部7cは該平面の中央点あるいは平面の中でも最も低い地点と定めることができる。この定義において、裏面凹部7の深さ(h)は、表面シート1の非肌当接側面の高低差であり、頂部7aから底部7cまでの距離である(図2−1(b)参照)。
【0026】
裏面凹部7の深さ(h)は、吸収性物品の大きさや用途によって異なり一義的に定められないが、0.5〜4mmが好ましく、1〜3mmがより好ましい。裏面凹部7の深さ(h)は、頂部7aおよび底部7cを通る表面シート1の断面を拡大し、隣り合う底部7cの接線t(図2−1(b)参照)と頂部7aとの距離を計測することでおこなう。計測には、キーエンス製VH−3000マイクロスコープによる拡大と、キャリブレーション設定後の2点間計測法によって計測する。電子顕微鏡を使用しても良い。
【0027】
以上のとおり、裏面凹部7の領域(空間部72及び粗部62の組み合わせ)と、裏面凸部8の領域(裏面凸部8及び密部61の当接部63)とが協働作用して、液吸収性能を高めて素早く液が吸収体3へと引き渡されて液戻りを抑制し、同時に液残り抑制が向上する。これにより、着用者の肌への液の接触がさらに抑制され、肌とおむつ10の肌面側との間における湿度低減効果がさらに向上する。このような部材間の構造は、少なくともおむつ10の股下部Cに配されることが好ましい。着用者の肌への良好なドライ感を実現できる。
また吸収体3は、サブレイヤ6及び空間部72によって拡散された液を広い面で吸収保持し、裏面シート2側への液の到達面積も広くなる。そして、裏面シート2から湿気を効率的に外部へと排出することが可能となる。その結果、湿気の気化熱によるおむつ温度の低下が裏面シート2側での広い面で実現され、おむつ10内部(裏面シート2と着用者の肌とに囲まれた部分)における水分蒸散が効果的に抑制され、おむつ10のムレをより生じ難くすることができる。
【0028】
本発明において、以上の作用効果の実現の観点から、サブレイヤ6の密部61の繊維密度(m61)は、15本/mm〜120本/mmであることが好ましく、20本/mm〜80本/mmであることがさらに好ましい。また、サブレイヤ6の粗部62の繊維密度(m62)は、10本/mm〜100本/mmであることが好ましく、15本/mm〜60本/mmであることがさらに好ましい。そして、密部61の繊維密度(m61)と粗部62の繊維密度(m62)との比率(m61/m62)は、6/5〜3/1が好ましく、7/5〜2/1がさらに好ましい。
さらに同様の観点から、サブレイヤ6の肌当接面側の面積(n)における、密部61の平面視領域の面積(n63)の割合(n63/n)は、1/20〜2/5が好ましく、1/10〜1/5がさらに好ましい。この平面視領域の面積(n63)とは、厚み方向の窪み壁面等を考慮せず、サブレイヤ6を肌当接面側から平面視したときの領域面積である。
【0029】
(密部61と粗部62との区分方法)
サブレイヤの密部61と粗部62とは、通常、密度の明確な境界が判別し難い。そのため、密部61を窪みになっている部分とし、あるいは密部61を裏面凸部8と当接している部分として、粗部62と区別することができる。
より具体的には、サブレイヤの隣り合う密部61を通るサブレイヤ6の断面を拡大し、サブレイヤ6の肌側表面の曲線が非肌当接面側に凹んだ曲線として湾曲し丸みを帯びいく領域ではさまれた部分とする。サブレイヤの肌側表面の断面は非肌当接面側に凹んだ曲線と肌当接面側に突出した曲線が連続的に繰り返される凹凸形状となる。この凹み部と突出部の境界にはほぼ直線となる領域を介して湾曲する方向が変化する。この直線が湾曲し丸みをおび始める境界で囲まれた凹み部分を窪みとする。
【0030】
(密度の測定方法)
下記走査電子顕微鏡を用いて拡大観察(繊維断面が30から60本計測できる倍率に調整;150〜500倍)して、一定面積あたりの前記切断面によって切断されている繊維の断面の数を数えた。次に1mm辺りの繊維の断面数に換算し、これを繊維密度(本/mm)とした。測定は3ヶ所行い、平均してそのサンプルの繊維密度とした。
・走査電子顕微鏡;日本電子(株)社製のJCM−5100(商品名)
【0031】
さらに表面シート1において、その肌当接面側は、裏面凹部7及び裏面凸部8の起伏に合わせて、表面凸部78及び表面凹部88が繰り返す凹凸形状であることが好ましい。この表裏一体となった凹凸形状は、平面方向に複数配置されて表面シート1全体として多方向に凹凸の繰り返しが形成されることが好ましい(図4参照)。この表面シート1の形状によって、サブレイヤ6との接触面積を低減できるだけでなく、着用者の肌と表面シート1との接触面積をも低減することができる。この接触面積の低減により肌の濡れ抑制にさらに効果的であり、凹凸部分で通気性も向上するのでムレ防止にもさらに効果的である。また表面シート1が両面において凹凸形状であれば、三次元的な動きに対してもよく追従して両面において点で支持される立体的なクッション性が発現する。表面凸部78の頂部78aが丸みを帯びた曲面形状であれば、このクッション性と相俟って柔らかな肌触り感が得られる。
【0032】
これに加えて表面シート1の凹凸形状には、図4に示すとおり、表面凸部78から表面凹部88へ向かって下り傾斜の側壁面88b(=78b)が形成され、表面凹部88が独立したすり鉢状又はカップ状にされていることが好ましい。これにより排泄液の捕集性と液吸収性能の向上がより効果的なものとなる。例えば、排泄液は表面凸部78の頂部78aよりもその側壁部78b(=88b)を下って(矢印b)表面凹部88の頂部88a付近に溜まり易く、平面方向へは移動し難くなる。これにより、表面シート1の肌当接面側での排泄液の拡散性がさらに抑えられ、かつ、該排泄液を厚み方向に肌から遠い位置へと移動させることができる。
この場合、図5に示すように、表面凹部88に移動した排泄液は、該側壁部88b(=裏面凹部7の側壁部7b)から空間部72へと引き込まれる(矢印b)。そして空間部72から平面方向へと液が拡散され(矢印b)、吸収性コア31へと引き渡されて(矢印b)固定化される。そして、表面凹部88に多くたまった液は、その部分で透過しきれずに液残りが生じ易い。しかし、その非肌面側が裏面凸部8としてサブレイヤ6の密部61と当接部63で当接しているため、より強いサブレイヤ6の引き込み力と吸収体3の吸引力とが相俟って、液残りを効果的に解消することができる(矢印b)。このように表面凸部78及び表面88の凹凸形状が、裏面凸部8及び裏面凹部7とサブレイヤ6とによる作用をより効果的なもとすることができる。
【0033】
表面シート1の非肌当接面側において、個々の裏面凸部8が複数の裏面凹部7に囲まれて平面方向に相互に独立配置とされ、個々の裏面凹部7はその空間が平面方向に相互に連接されていることが好ましい。前記の独立配置とは、裏面凸部8,8同士が完全に離間して全く分離したものに限らず、少なくとも頂部8a周辺が分離したものであれば一部の連接しているものをも含む。この好ましい配置について図6を参照して説明する。図6は、表面シートの非肌当接面側における裏面凹部と裏面凸部との関係を平面視により模式的に示す説明図であり、頂部7a及び8aの配置関係を基に簡略化しモデル化して示している。具体的には、裏面凹部7の頂部7aを白い円とし、裏面凸部8の頂部8aを黒い円として示した。図6において、頂部8a−頂部7a−頂部8aの間、頂部7a−頂部7aの間、頂部8a−頂部8aの間のそれぞれの領域が側壁部となる。そのうち、頂部8a−頂部8aの間の領域の側壁部は、前記好ましい配置の理解のため、細長い砂時計形状の図形で示し符号mとした。なお前記側壁部は、裏面凹部7及び裏面凸部8を連続的に形成する部分であり、前述の側壁部7b及び8bのいずれをも意味する。
【0034】
図6に示すとおり、裏面凸部8の頂部8a−頂部8aの間には側壁部mが配されている。この側壁部mは、裏面凸部8の頂部8aを完全に繋ぐ形状ではなく、図6が示す細長い砂時計形状のように、その中央部分でシート厚み方向(図2−1(b)におけるzからzの方向)に括れた形状であることが好ましい。その括れ部分で裏面凸部8,8は不完全ではあるが分断されそれぞれ独立となり、側壁部mの括れ部分で裏面凹部7はその空間が連接される。つまり、表面シート1の非肌当接面側において、頂部8a−頂部7a−頂部8aの間だけでなく、頂部8a−頂部8aの間が凹凸形状であることで、裏面凹部7,7同士を繋ぐ空間が形成されることとなる。例えば、図7に示すように、側壁部mがアーチ状に形成されていることが好ましい。側壁部mのアーチ状に沿って各裏面凹部7の空間は互いに図6や図7に付した白抜き矢印のように自由に往来可能な状態となる。表面シート1がこの好ましい形状であれば、この形状に沿って被覆シート32の進入部71が形成されて、その下の各空間部72も互いに連接した構造となる。これにより、空間部72に引き込まれた排泄液は、図6,7に示す白抜き矢印のように、裏面凹部7の支柱をより分けて自由に拡散することができ、吸収性コア31のより広い面で排泄液を効率的に吸収保持し、固定化することができる。
【0035】
おむつ10の図3や図5に示す液の吸収過程において、裏面凹部における表面シート1の不織布の繊維密度が頂部7aから底部7cへと高まる密度差または密度勾配があることが好ましい。こうすることで肌当接面側から素早く液を透過させて、より力強く液を内部へと引き込むことができる。この密度差、密度勾配は、例えば、図2−1(b)に示す裏面凹部7の所定断面において、頂部7aから底部7cに亘る表面シート1を裏面凹部7の高さ(h)の三等分(A部、B部、C部)とし、これらにおける各繊維密度(n,n,n)の平均を比較することで示すことができる。A部、B部、C部の繊維密度は、(n)<(n)<(n)が好ましく、その比率(n/n/n)は、2/6/10〜8/9/10が好ましく、3/5/10〜5/7/10がさらに好ましい。上記下限以上とすることで、肌触りの良さを確保することができ、上記上限以下とすることで、表面シート1の液残りを低減することができる。
【0036】
(密度の測定方法)
前述の裏面凹部7における表面シート1の頂部7a,側壁部7b,底部7cの密度(n,n,n)は、以下の方法により測定することができる。
裏面凹部7における深さ(h)を基準に、頂部7aから底部7bまでの表面シート1の部分を三等分したそれぞれをA部、B部、C部とし、表面シートの頂部7aおよび底部7bを通る切断面を、下記走査電子顕微鏡を用いて拡大観察(繊維断面が30から60本計測できる倍率に調整;150〜500倍)して、一定面積あたりの前記切断面によって切断されている繊維の断面の数を数えた。次に1mm辺りの繊維の断面数に換算し、これを繊維密度(本/mm)とした。測定は3ヶ所行い、平均してそのサンプルの繊維密度とした。
・走査電子顕微鏡;日本電子(株)社製のJCM−5100(商品名)
【0037】
(表面シートの断面形状の変形例)
おむつ10において、表面シート1の断面形状は、本実施形態の凹凸形状に限定されず、裏面凸部8及び裏面凹部7とその下のサブレイヤ6との配置関係を可能とするものであれば任意の形状とすることができる。例えば、図8に示すような、肌当接面側が平坦な形状(a)、裏面凸部8の頂部が平坦な形状(b)などが挙げられる。図8(b)のような形状の場合、裏面凹部7の底部7cは、裏面凸部8の頂部8aのある平面と裏面凹部7の側壁部7bの曲面との交差部分である。
これら表面シート1の変形例においては、裏面凸部8は裏面凹部7よりも厚みがある。そのため、裏面凸部の内部に液残りが生じやすい。しかしこの場合においても、裏面凸部8はサブレイヤ6の密部61と当接しているため、より強いサブレイヤ6の引き込み力と吸収体3の吸引力とが相俟って、液残りを効果的に解消することができる。またこの変形例においても、裏面凹部における表面シート1の不織布の繊維密度が頂部7aから底部7cへと高まる密度差または密度勾配があることが好ましい。こうすることで表面シート1の厚みの薄い部分から空間部72へと素早く液を透過させて、サブレイヤ6が力強く液を吸収体内部へと引き渡すことができる。
【0038】
(吸収体の変形例)
さらにおむつ10において、吸収体を構成する吸収性コアの形状は、本実施形態の肌当接側面が平坦な形状に限定されず、内部へ取り込んだ液を広く拡散させて素早く吸収保持させ固定化させることができるものを任意に採用することができる。例えば、図9に示すように、溝状の凹部91、該凹部に区分されたブロック状の突出吸収部93、及び凹部91に対応して該突出吸収部93の一面側を繋ぐ凹部吸収部94からなる吸収性コア90(図9(a)),90a(図9(b))などが挙げられる。この吸収性コアを用いた場合、空間部72に引き込まれた液は、凹部91やその下の凹部吸収部94に沿って拡散され各突出吸収部93に分散して吸収保持され固定化される。このような経路によって液が広い範囲で確実に固定化されるので、表面シート側への液戻りが生じ難い。さらにこの吸収性コア90及び90aにおいては、凹部吸収部94が突出吸収部93よりも低坪量とされていると、凹部吸収部94での通液抵抗が軽減されて液拡散がし易く、また液保持性が低減されて突出吸収部93への液の移行がなされ易くなる。また同様の観点から、低坪量の凹部吸収部94が高坪量の突出吸収部93よりも低密度であることが好ましい。この吸収性コア90及び90aは、凹部91のある面、低坪量の凹部吸収部94の面のいずれの面を肌当接面側にしてもよく、吸収性物品の目的に応じて任意の配置とすることができる。
この吸収性コア90又は90aを採用した場合、少なくとも排泄部対応領域を含む股下部Cにおいて、凹部91又は凹部吸収部94が裏面凹部7の空間部72と重なる配置であることが好ましい。これにより空間部72にある液が凹部91又は凹部吸収部94へと移行され易く、素早く拡散して固定化され易い。
【0039】
(裏面凹部7、裏面凸部8及び当接部63の形成方法)
図2−2に示すような裏面凹部7、裏面凸部8及び当接部63を有する吸収性物品は、この種の物品における通常の製造工程において得ることができる。例えば、おむつの組み立て過程で吸収体と表面シートとの積層段階で、凹凸部が形成された加圧ロールと該加圧ロールと対向配置されたアンビルロールとの間に、表面シート1が前記加圧ロールに当たるようにして前記積層物を導入して部分的に加圧することにより形成することができる。しかし、この加圧及び加熱は、表面シート1の賦形と当接部63の形成を目的とするものであるから、シート間の圧着固定のようにフィルム化する程の強固なものではない。この場合の加圧の条件は、加圧は0.2〜0.8MPaが好ましく、0.3〜0.6MPaがより好ましい。また、加圧とともに過熱を施す場合、その加熱は常温〜100℃が好ましく、40〜80℃がより好ましい。
さらに前記加圧ロールで裏面凹部を形成する場合、図4に示すような凹凸形状や図8に示すような凹凸形状を予め有する賦形シートを用いれば、より裏面凸部8におけるサブレイヤ6との当接部63の形成がより確実なものとなり、その際、当接部63におけるサブレイヤ6の部分が凹状に窪んだ密度の高いものが形成され得るので好ましい。
【0040】
前記賦形シートの製造は次のようにして行うことができる。融着する前の繊維ウェブを、所定の厚みとなるようカード機からウェブ賦形装置に供給し、多数の突起を有し通気性を有する台座の上に上記繊維ウェブを定着させる。次いで、その台座上の繊維ウェブに熱風を各繊維が適度に融着可能な温度で吹きつけて、前記台座上の突起にそって繊維ウェブを賦形するとともに、各繊維を融着させる。このときの熱風の温度は、繊維ウェブを構成する熱可塑性繊維の融点に対して0〜70℃高いことが好ましく、5〜50℃高いことがより好ましい。熱可塑性繊維としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン系、ポリエステル系、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系、ポリアクリルニトリル系等、またはこれら2種類以上からなる芯鞘型、サイドバイサイド型の複合繊維等を挙げることができる。熱可塑性繊維として、低融点成分及び高融点成分を含む複合繊維を用いる場合、繊維ウェブに吹き付ける熱風の温度は、低融点成分の融点以上で、かつ高融点成分の融点未満であることが好ましい。繊維ウェブに吹き付ける熱風の温度は、低融点成分の融点+0℃〜高融点成分の融点−10℃であることがより好ましく、低融点成分の融点+5℃〜高融点成分の融点−20℃であることが更に好ましい。繊維ウェブ及び不織布は、熱可塑性繊維を、30〜100質量%含んでいることが好ましく、より好ましくは40〜80質量%である。繊維ウェブ及び不織布は、本来的に熱融着性を有さない繊維(例えばコットンやパルプ等の天然繊維、レーヨンやアセテート繊維など)を含んでいてもよい。
【0041】
繊維ウェブを賦形する際の熱風の風速は、賦形性と風合いの観点から20〜130m/秒とすることがより好ましく、より好ましくは30〜100m/秒である。風速がこの下限値以上であると立体感が十分となり、クッション性と排泄物の捕集性の効果が十分に発揮され好ましい。風速がこの上限値以下であるとシートが開孔せず、耐圧縮性が良好に維持されるため、クッション性と排泄物の捕集性の効果が十分に発揮でき好ましい。
連続生産を考慮すると、上記台座を搬送可能なコンベア式またはドラム式のものとし、搬送されてくる型付けされた不織布を、ロールで巻き取っていく態様が挙げられる。なお、本実施形態の不織布についてMD方向及びCD方向をどちらに向けてもよい。
【0042】
表面シート1、サブレイヤ6、裏面シート2、吸収体3及びサイドシート4の形成材料としては、通常吸収性物品に使用されているものを用いることができる。
表面シート1としては、例えば、親水性不織布が好ましく、エアスルー不織布、ポイントボンド不織布、スパンボンド不織布、スパンレース不織布、立体賦形不織布と呼ばれている不織布で、その繊維がコットン等の天然繊維や、ポリプロピレンの単繊維、ポリプロピレンとポリエチレンの複合繊維、ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンの複合繊維等で親水化処理が施された繊維が好ましく、その坪量15〜50g/mのものが好適に使用できる。また、表面シート1の股下部分には、表面シート1の非肌面側に親水性穴開きフィルムや親水性不織布が部分的に重ねられていてもよい。
【0043】
サブレイヤ6としては、例えば、前述した液の拡散、透過の機能を発揮し得る点を勘案すると、不織布や嵩高のパルプシートを用いることが好ましい。不織布の具体例としては、エアスルー不織布、スパンレース不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布などが挙げられる。これらの不織布が、疎水性の繊維から構成されている場合には、親水化剤を用いて親水化させることが好ましい。サブレイヤ5の坪量は、20〜100g/m、特に30〜80g/mであることが好ましい。
【0044】
裏面シート2としては、例えば、防水性があり透湿性を有していれば特に限定されないが、例えば疎水性の熱可塑性樹脂と、炭酸カルシウム等からなる微小な無機フィラー又は相溶性のない有機高分子等とを溶融混練してフィルムを形成し、該フィルムを一軸又は二軸延伸して得られる多孔性フィルムが挙げられる。前記熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィンが挙げられる。該ポリオレフィンとしては、高〜低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等が挙げられ、これらを単独で又は混合して用いることができる。
【0045】
吸収体3としては、通常吸収性物品に用いられるものを用いることができる。具体的には、吸収性コアとしては、例えば、繊維集合体又はこれと高吸収性ポリマーとを併用させたもの等を用いることができる。繊維集合体を構成する繊維としては、パルプ繊維等の親水性天然繊維や、合成繊維(好ましくは親水化処理を施したもの)等を用いることができる。坪量は特に限定されないが、150g/m〜500g/mが好ましい。
また吸収性コアを被覆する被覆シートとしては、例えば、親水性のティッシュペーパー等の薄手の紙(薄葉紙)、クレープ紙、コットンやレーヨンなどの親水性繊維からなる不織布、合成樹脂の繊維に親水化処理を施してなる不織布、例えばエアスルー不織布、ポイントボンド不織布、スパンレース不織布、スパンボンド不織布、スパンボンド−メルトブローン−スパンボンド(SMS)不織布等からなるものを用いることができる。
【0046】
前記サイドシート4としては、例えば、撥水性不織布が好ましく、具体的には、スパンボンド不織布、スパンボンド−メルトブローン(SM)不織布、スパンボンド−メルトブローン−スパンボンド(SMS)不織布等が用いられる。サイドシート4の立体ギャザー用弾性部材やレッグギャザー用弾性部材としては、この種の物品に用いられる通常の弾性部材を用いることができ、例えば素材としては、スチレン−ブタジエン、ブタジエン、イソプレン、ネオプレン等の合成ゴム、天然ゴム、EVA、伸縮性ポリオレフィン、ポリウレタン等を挙げることができ、形態としては、断面が矩形、正方形、円形、多角形状等の糸状ないし紐状(平ゴム等)のもの、或いはマルチフィラメントタイプの糸状のもの等を用いることができる。
【0047】
本発明の吸収性物品において、吸収体は、その内部で液を吸収保持し固定化する機能を有するものであれば前記実施形態のものに限定されず、例えばシート状の薄型のものであってもよい。また本発明の吸収性物品において、サブレイヤは、前記吸収体の少なくとも肌当接面側を覆って液を該吸収体へと引き渡す機能を有するものであれば前記実施形態のものに限定されず、単層に限らず複数層であってもよい。
本発明の吸収性物品は、上記実施形態の展開型使い捨ておむつに限定されず、表面シートとサブレイヤと吸収体との関係を有するものを含む、例えば、パンツ型使い捨ておむつや、パンツ型使い捨ておむつであって一部を破断するとテープ型として利用可能なおむつであってもよく、また尿とりパッドや生理用ナプキン、パンティライナー、軽失禁パッドであってもよい。また本発明の吸収性物品は、経血に限らずその他、尿、オリモノ、軟便等に対しても効果的である。また本発明の吸収性物品は、本実施形態のものに用途や機能に合わせ適宜他の部材を組み込んでもよい。
【実施例】
【0048】
以下に、本発明について実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明がこれにより限定して解釈されるものではない。
【0049】
[実施例1]
ウェブ賦形装置に芯がポリエチレンテレフタレートで鞘がポリエチレンからなる芯鞘型複合繊維のウェブを定着させ、その台座上の繊維ウェブに熱風を吹きつけて、前記台座上の突起にそって繊維ウェブを賦形するとともに、各繊維を融着させることで表裏面とも凹凸形状(裏面凹部の頂部8a−8a間のピッチ(w)5mmと裏面凹部の深さ(h)2mm)である、図4に示す形状の賦形シートを形成し表面シートとして用いた。サブレイヤとしては坪量40g/mの親水性エアスルー不織布を用いた。非透液性の裏面シート、吸収性コア(パルプ坪量200g/m、高吸収性ポリマー坪量286g/m)を親水紙で被覆した吸収体、サブレイヤ、表面シートの順に積層し、それぞれをホットメルトで接着した。サブレイヤと表面シート間の接着にはホットメルトのスパイラルパターンを用い、サブレイヤと表面シート裏面凸部の当接部は接着されているものと非接着のものとが混在していた。この積層サンプルを花王株式会社製のおむつ「メリーズさらさらエアスルー Mサイズ」(商品名)現行市販品と同一のパック圧相当で密封し1ヶ月室温保存することでサブレイヤの凹凸構造及び繊維の粗密構造を形成した。
該サブレイヤの密部の繊維密度(m61)と粗部の繊維密度(m62)の比率(m61/m62)は1.65であった。
【0050】
[比較例1]
実施例1の積層サンプルの作成直後で密封保存していないものを比較例1のサンプルとした。該サンプルのサブレイヤは、実施例1のもののような凹凸構造及び繊維の粗密構造を有さず、平坦な形状のままとした。
【0051】
[比較例2]
実施例1の積層サンプルの構成のうち、吸収体と表面シートの間にサブレイヤを積層せず直接吸収体と表面シートを積層し、密封保存していないものを比較例2のサンプル(サブレイヤなし)とした。
[比較例3]
花王株式会社製の市販の使い捨ておむつ(商品名「メリーズさらさらエアスルー Mサイズ 」)を比較例3のサンプルとした。該サンプルは、ヒートシールにより賦形した肌面側が凹凸で非肌面側が平坦な2層表面シートを用い、かつサブレイヤを配したおむつである。
【0052】
[性能評価]
実施例および比較例のサンプル(使い捨ておむつ)について、加圧下分割注入での液戻り量と吸収時間、表面シートへの液残り量を測定した。測定試験としては、下記(1)及び(2)の2種類の試験によって行った。
(試験1)
まず、実施例1及び比較例1〜3の各サンプルについて、平面に展開したサンプルの腹側吸収体端部から長手方向で背側端部に155mmのところの吸収体幅方向中央部を液注入点とした。円筒状の注入部の付いたアクリル板を注入部の中央にサンプルの液注入点がくるようにサンプル上に載せ、更にそのアクリル板上に錘をのせ、2.0kPa(20gf/cm)の荷重を加えた。アクリル板に設けられた注入部は、内径36mmの円筒(高さ53mm)状をなし、アクリル板には、長手方向の1/3の部分、幅方向の中心軸に、該円筒状注入部の中心軸線が一致し、該円筒状注入部の内部とアクリル板の表面シート対向面との間を連通する内径36mmの貫通孔が形成されている。
注入部より液高10mmを維持しつつ、40gの人工尿を注入した。注入開始から人工尿が表面シート上から消失するまでの時間を吸収時間とした。人工尿の組成は、尿素1.94質量%、塩化ナトリウム0.795質量%、硫酸マグネシウム0.11質量%、塩化カルシウム0.062質量%、硫酸カリウム0.197質量%、赤色2号(染料)0.010質量%、水96.88質量%及びポリオキシエチレンラウリルエーテルEO付加モル数41(約0.07%)であり、表面張力を53±1dyne/cm(23℃)に調整したものである。
この人工尿の注入を10分間隔で4回行い10分間静置した後、錘及びアクリル板を取り除き、サンプル上にろ紙(ADVANTEC 5C 10mm×10mm)を16枚重ねて置き、更にその上に錘をのせて、3.4kPa(35gf/cm2)の荷重を加えた。その状態で2分間放置した後、ろ紙に吸収された人工尿の質量を計測し、その量を液戻り量とした。
【0053】
(試験2)
実施例1及び比較例1〜3の各サンプルについて、平面に展開したサンプルの腹側吸収体端部から長手方向で背側端部に155mmのところの吸収体幅方向中央部を液注入点とした。注入点を中心としてその周囲(10mm×20mm)の表面シートに予め切り込みを入れ、ポンプを用いて80gの人工尿を5g/secの速度で注入した。10分間静置した後、表面シートを静かにはがし質量を測定した。表面シートに吸収された人工尿をキムタオルなどで吸い取り、表面シートを1晩放置して乾燥させ、前記質量から乾燥後質量を引いたものを液残り量とした。
【0054】
上記の評価結果を下記表1に示す。また前記液残り試験で使用したサンプルを図10及び11で示す。図10は実施例1の試験体の表面シートの試験実施後の状態を示し、図11は比較例1の試験体の表面シートの試験実施後の状態を示す。図10及び図11のいずれにおいても、(a)は表面シートの肌当接面側を示し、(b)は非肌当接面側を示し、(c)は(b)を一部拡大して示した図面代用写真である。いずれの図面代用写真においても、黒い部分が液残りを示す。
【0055】
(表1)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
実施例1 比較例1 比較例2 比較例3
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加圧分割注入での液戻り量 0.14g 0.33g 0.84g 1.09g
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吸収時間 (4回目注入時) 38秒 65秒 92秒 33秒
(注入量160g、静置時間10分)
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表面シートの液残り量 0.11g 0.16g 0.10g 0.27g
(注入量80g、静置時間10分)
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【0056】
表1に示す結果から明らかなように、ヒートシールにより賦形した2層表面シートのおむつ(比較例3)では加圧下においてもサブレイヤに表面シート肌面側の凹凸が入り込まずに空間が維持される為に吸収速度は速いが、表面材内部に液残りとして保持される液量及び液戻り量は、実施例1および比較例1、2の使い捨ておむつの方が少なかった。これは、実施例1および比較例1、2の使い捨ておむつでは、表面シートが凹凸形状で1層である為に特に加圧下では厚みが減り、かつ該表面シートの裏面凸部がより下層の吸収体やサブレイヤに入り込んでいることによる。
さらにサブレイヤありの実施例1及び比較例1と、サブレイヤなしの比較例2との使い捨ておむつを比較すると、サブレイヤは液戻り量の抑制に大きな役割を果たしており、特に加圧分割注入ではサブレイヤがあることで液戻り量を大幅に低減していることがわかった。また、サブレイヤがあることで嵩高となり液を一時的に保持し平面方向に拡散する役割から、サブレイヤなしの比較例2よりも吸収時間が速いことが分かった。
加えて実施例1の使い捨ておむつは、比較例1に比して、さらに液戻り量を低減し、比較例3と遜色ない程度に吸収時間が短縮されてサブレイヤ本来の機能を向上させていた。なおかつ、比較例1に比して、液残りが抑制されていた。このことは、図10(実施例1)における液残りの黒色が、図11(比較例1)におけるものより明らかに薄くなっている様子からも分かる。この実施例1の液残り抑制の結果は、「サブレイヤがあると表面シートが吸収体から遠くなることにより吸収体の吸水力が及びにくくなり、表面シートの液残り量が多くなりやすい」という問題(比較例1)を克服し、サブレイヤなしの比較例2同等のレベルにまで液残りを低く抑えることができたことを示している。つまり、実施例1の凹凸サブレイヤを用いた使い捨ておむつは、サブレイヤありのメリットとサブレイヤなしのメリットとを両方達成した優れたものであることが分かる。
【符号の説明】
【0057】
1 表面シート
2 裏面シート
3 吸収体
4 サイドシート
6 サブレイヤ
61 密部
62 粗部
7 裏面凹部
8 裏面凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
肌当接面側に配置される液透過性の表面シート、非肌当接面側に配置される裏面シート、及び該両シートに介在された吸収体を有する吸収性物品であって、
前記表面シートの非肌当接面側は、裏面凸部が点在して凹凸形状をなし、該表面シートと前記吸収体との間には液透過性のサブレイヤが配され、該サブレイヤと前記表面シートの裏面凸部とが当接部分で接しており、
前記当接部分における前記サブレイヤの繊維密度が、該サブレイヤの他の部分よりも高い吸収性物品。
【請求項2】
前記表面シートの非肌当接面側における前記裏面凸部の周辺部分は、非肌当接面側から肌当接面側へと窪んだ裏面凹部をなし、該裏面凹部と前記サブレイヤとの間には空間部が形成されており、該空間部の位置にある前記サブレイヤの繊維密度は、前記裏面凸部と当接している前記サブレイヤの繊維密度よりも低い請求項1記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記表面シートの前記裏面凸部と前記サブレイヤとの当接部分において、両部材の繊維間の隙間が維持されている繊維構造である請求項1又は2記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記表面シートの裏面凸部と前記サブレイヤとの当接部分には、接着されているものと非接着のものとが混在している請求項1〜3のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記表面シートの裏面凸部と前記サブレイヤとの当接部分において、前記サブレイヤは非肌当接面側へと窪んだ凹部をなし、該サブレイヤの凹部に前記表面シートの裏面凸部が入り込んで接している請求項1〜4のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記サブレイヤのシート面積に対する裏面凸部との当接部分の領域面積の比率は、1/20〜2/5である請求項1〜5のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記表面シートの裏面凸部との当接部分におけるサブレイヤの繊維密度は、15本/mm〜120本/mmである請求項1〜6のいずれか1項に記載の吸収性物品。

【図1】
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【図2−1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図2−2】
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【図7】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−111169(P2013−111169A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−258874(P2011−258874)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】