説明

吸収性物品

【課題】本発明は、従来の吸収性物品の吸収性能をさらに高め、繰り返しの排泄液や多量の排泄液があっても、表面シートでの液の拡散を抑えつつ、液を素早く引きこんで吸収体内部で拡散させ効率よく吸収保持させる吸収性物品を提供する。
【解決手段】 肌当接面側に配置される液透過性の表面シート、非肌当接面側に配置される裏面シート、及び該両シートに介在された吸収体を有する吸収性物品であって、前記表面シートは不織布からなり、前記吸収体は吸収性コアとこれを被覆する被覆シートとを有し、前記表面シートの非肌当接面側には肌当接面側へと窪んだ裏面凹部が複数、隣接して分散配置されており、該裏面凹部に前記被覆シートが入り込み、該入り込んだ被覆シートと前記吸収性コアとの間に空間部が存在する吸収性物品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使い捨ておむつや生理用ナプキン、失禁パンツ等の吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨ておむつ等の吸収性物品においては、各部材の材料や構造を改良し、その機能着用感の向上が図られてきた。例えば、部材としての表面シートや吸収体についても、かかる改良を企図して開発がなされ、特に最近では使用状況や物品の種類に応じた機能性を高めたものが種々提案されている。
【0003】
特許文献1には、吸収体自体が表面シートと密着して凹凸形状をなす吸収性物品が開示されている。これにより液の内部移行性が高められ、かつソフトな肌触りを実現することができるとされる。特許文献2には、生理用ナプキンの排泄対向領域において、吸収体が肌当接面側から内部に及ぶ多数の凹部を有するものが開示されている。このナプキンでは、吸収体の肌当接面側の表面積が大きくなり凹部で液を捉えて内部へ引きこむので、液の肌面側での拡散を抑えてスポット吸収性に優れるとされる。これは、吸収体自体の形状の工夫によるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−119022号公報
【特許文献2】特開2008−18048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来の吸収性物品の吸収性能をさらに高め、繰り返しの排泄液や多量の排泄液があっても、表面シートでの液の拡散を抑えつつ、液を素早く引きこんで吸収体内部で拡散させ効率よく吸収保持させる吸収性物品の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、肌当接面側に配置される液透過性の表面シート、非肌当接面側に配置される裏面シート、及び該両シートに介在された吸収体を有する吸収性物品であって、前記表面シートは不織布からなり、前記吸収体は吸収性コアとこれを被覆する被覆シートとを有し、前記表面シートの非肌当接面側には肌当接面側へと窪んだ裏面凹部が複数、隣接して分散配置されており、該裏面凹部に前記被覆シートが入り込み、該入り込んだ被覆シートと前記吸収性コアとの間に空間部が存在する吸収性物品により上記の課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の吸収性物品は、前記裏面凹部とそこへ入り込んだ被覆シートと該被覆シート及び吸収性コア間に空間部を存在させることによって、表面シート側での液拡散を抑えて液の内部への引き込み力を高め、さらに引き込んだ液を吸収性コアにおいて拡散させて素早く液を内部で固定化することができる。したがって、本発明の吸収性物品は、従来の吸収性物品の吸収性能をさらに高め、繰り返しの排泄液や多量の排泄液があっても、表面シート側での液の拡散を抑えつつ、液を素早く引きこんで吸収体内部で拡散させるように促し効率よく吸収保持させることができ、これにより肌の濡れを抑え良好な装着感をもたらすという優れた作用効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明における吸収性物品の好ましい一実施形態としての使い捨ておむつを肌当接面方向から模式的に示す一部切欠斜視図である。
【図2−1】(a)は図1に示すII−II線断面の断面図であり、(b)は表面シートの断面を一部拡大して模式的に示す一部拡大断面図であり、(c)は表面シート及び被覆シートの配置関係を模式的に示す一部拡大断面図である。
【図2−2】本実施形態の使い捨ておむつの断面を撮像した図面代用写真である。
【図3】裏面凹部における表面シート、被覆シート及び吸収性コアの関係を模式的に示す説明図である。
【図4】実施形態のおむつに用いられる表面シートを一部断面により模式的に示す斜視図である。
【図5】図2−1(a)の所定の断面の一部を拡大して示した一部拡大断面図である。
【図6】表面シートの非肌当接面側における裏面凹部と裏面凸部との関係を平面視により模式的に示す説明図である。
【図7】本実施形態の表面シートの断面を撮像した図面代用写真である。
【図8】裏面凹部の断面形状の変形例を示す説明図である。
【図9】表面シートの断面形状の変形例を示す説明図である。
【図10】吸収性コアの変形例を示す説明図である。
【図11】実施例及び比較例における液の拡散状態を模式的に示す説明図である。
【図12】実施例及び比較例における液の拡散状態を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本発明における吸収性物品の好ましい一実施形態としての使い捨ておむつを肌当接面方向から模式的に示す一部切欠斜視図である。同図に示したおむつはテープ型の使い捨ておむつであり、平面に展開した状態のおむつを多少曲げて内側(肌当接面側)からみた状態で示している。
【0010】
まず本実施形態の上記使い捨ておむつ10の概要を説明する。
本実施形態の使い捨ておむつ10は、肌当接面側に配置される液透過性の表面シート1と、非肌当接面側に配置される裏面シート2と、これらの間に介在された吸収体3とを有する。吸収体3は吸収性コア31と被覆シート31及び32とを有する。吸収性コア31の肌当接側面及び非肌当接側面は平坦な形状である。その肌当接面側は被覆シート32で覆われ、非肌当接面側は被覆シート33で覆われ、該両被覆シートと吸収性コア31とはホットメルト接着剤をスプレー塗工等することで間欠的に接合されている。また、両被覆シートの幅方向端部は吸収性コアの両側縁外方で互いに接合されている。
【0011】
裏面シート2は展開状態で、その両側縁が長手方向(Y方向)中央部において内側に括れた略砂時計形の形状を有しておりおむつの外形をなす。このおむつ10の外形は、その展開状態として長手方向(Y方向)に着用者の腹側に配される腹側部Fと背側に配される背側部Rとその間に位置する股下部Cとに区分される。股下部Cは着用者の排泄部に対応する領域(排泄部対応領域)を含む。裏面シート2は1枚のシートからなるものであっても、複数のシートからなるものであってもよい。裏面シート2上に、表面シート1及び吸収体3が、該吸収体3の上側を表面シート1が覆うようにして配設されている。表面シート1及び吸収体3はそれぞれ、裏面シート2よりも幅狭の略長方形状であり、これらの長手方向を裏面シート2の長手方向に一致させて配されている。さらに表面シート1の長手方向両側縁から幅方向(X方向)外方に向けて、一対のサイドシート4,4が積層されている。サイドシート4の幅方向中央寄りの端部には、弾性部材を配した防漏カフ41が形成され、幅方向外方にはそれぞれ弾性部材を配したレッグギャザー42が形成されている。これらにより乳幼児の運動等による股関節部分における液体等の横漏れを効果的に防止し得る。本実施形態のおむつ10においては、さらに機能的な構造部やシート材等を設けてもよい。
【0012】
おむつ10の腹側部F及び背側部Rには、サイドシート4と裏面シート2とが積層されて幅方向外方に張り出した背側フラップ部51及び腹側フラップ部52が形成されている。背側フラップ部51にはファスニングテープ53が設けられている。このテープ53を腹側フラップ部52に設けたテープ貼付部(図示せず)に貼付して、おむつを装着固定することができる。このとき、おむつ長手方向中央を緩やかに内側に折り曲げて、吸収体3が乳幼児の臀部から下腹部にわたって沿わされるように着用する。これにより排泄物が的確に吸収体3に吸収保持される。
【0013】
上記表面シート1、裏面シート2、吸収部3の材料等の詳細は後述するが、本実施形態において表面シート1は、排泄された体液を速やかに吸収し、吸収体に伝達する観点と、肌触りのよさの観点から親水性のエアスルー不織布を用いている。また、裏面シート7としては、通気性を有した透湿性フィルムを用いている。吸収体3について、吸収性コア31はパルプ繊維と高吸収性ポリマーとから構成されたものを用い、被覆シート32及び33は親水性の高い素材を用いている。
【0014】
本発明においては、特に断らない限り、人体に接触する側の面を肌側面ないし肌当接面あるいは表面といい、これと反対側の面を非肌面ないし非肌当接面あるいは裏面という。この2つの面において、肌側面に近い方ないしその延長方向を肌面側、肌当接面側又は表面側といい、非肌面に近い方ないしその延長方向を非肌面側、非肌当接面側又は裏面側という。装着時に人体の前側に位置する方向を前方といいその端部を前端部とし、後側に位置する方向を後方といいその端部を後端部として説明する。吸収性物品の表面又は裏面の法線方向を厚み方向といいその量を厚さという。更に、吸収性物品の平面視において腹側部から股下部を亘り背側部に至る方向を縦方向又は長手方向といい、この縦(長手)方向と直交する方向を幅方向という。なお、前記縦方向は典型的には装着状態において人体の前後方向と一致する。
【0015】
次に図2−1及び図2−2を参照して、おむつ10の断面形状について説明する。図2−1の(a)は図1に示すII−II線断面の断面図であり、(b)は表面シートの断面を一部拡大して模式的に示す一部拡大断面図であり、(c)は表面シート及び被覆シートの配置関係を模式的に示す一部拡大断面図である。図2−2は、本実施形態の使い捨ておむつ10の断面を撮像した図面代用写真であり、該断面の全体を中央の写真で示し、そのうち裏面凹部の1つを拡大して右下に示している。この裏面凹部7の拡大図において、被覆シートの入り込んだ部分(進入部71)の下に位置する空間部72は破線サークルで囲んだ部分として示した。なお、吸収性コア31はパルプ繊維等からなる繊維集合体であり、その外面は、外縁の繊維が毛羽立つ等の微細な起伏を有する。そのため図2−1(a)において、吸収性コア31の外形の輪郭を、繊維集合体のおおよその範囲として二点鎖線で示した(図3及び5において同じ)。
【0016】
図2−1(a)に示すとおり、おむつ10の断面形状は、吸収性コア31に対して、表面シート1及び被覆シート31が凹凸形状を有している。この形状、特に裏面凹部7とその下の部材とによる構造によって、後述する、液の引き込み性の向上と吸収体内部での液拡散性及び液固定化速度の向上とが実現される。この表面シート1及び被覆シート31の断面形状につき図2−1(b)及び(c)を参照してさらに説明する。
図2−1(b)に示すとおり、表面シート1の非肌当接面側には、非肌当接面側(z)から肌当接面側(z)へと窪んだ裏面凹部7が形成されている。この裏面凹部7は平面方向にほぼ等間隔で隣接して周期的に多数配されており、この配置によって表面シート1の非肌当接面側は凹凸形状となっている。つまり各裏面凹部の間は、肌当接面側(z)から非肌当接面側(z)へと突出した裏面凸部8となる。ここで「裏面凹部が複数、隣接して分散配置される」とは、裏面凹部7の窪みの底となる後述の頂部7aと隣り合う7aとが底部7cを介して点々と配設され、これにより個々の裏面凹部7が平面視で各方向に拡散するよう配置されていることである。筋条の窪みが複数並列して配置されているものではない。なお本実施形態においては、この裏面凹部7に対応する表面シート1の肌当接面側には表面凸部78が形成され、裏面凸部8に対応する表面シート1の肌当接面側には表面凹部88が形成されている。
図2−1(c)及び図2−2に示すとおり、表面シート1の裏面凹部7には、吸収体3の肌当接面側を覆う被覆シート32の一部が隆起して入り込んだ進入部71が形成されている。本実施形態のおむつ10のように被覆シート32と吸収性コア31とがホットメルト接着剤で間欠的に接合されている場合には、該接着剤の間で被覆シート32が隆起し進入部71となることが好ましい。さらに図2−1(c)及び図2−2が示すとおり、裏面凹部7における被覆シート32と吸収性コア31との間には、空間部72が形成されている。この空間部72は、被覆シート32の隆起による進入部71の形成にともなって形成されたものである。進入部71,71,・・・の入り込み深さ(h)は、必ずしも均一ではなくてもよく、図2−2が示すような深いものばかりでなく、裏面凹部7の窪み深さ(h)>進入部71の入り込み深さ(h)となるものがあってもよい(図2−1(C)参照)。このような裏面凹部7においては、表面シート1と被覆シート32との間にも隙間が形成され、表面シート1側からの力の影響を和らげる緩衝隙間部73となって好ましい。
【0017】
裏面凹部7は、表面シート1の非肌当接側面の窪みであり、その窪みに沿った表面シート1がなす頂部7aから底部7cへと向かう側壁部7bで形成されている(図2−1(b)参照)。このような裏面凹部7は、柔らかな不織布からなるので必ずしも完全な幾何学図形として規定できないが、側壁部7bがなす裏面凹部7の断面形状は放物線に類似した形状となり、該裏面凹部7の空間形状は頂部7aに丸みのある円錐ないしは円錐台に類似した形状となっている。なお裏面凹部7の立体形状は、本実施形態のものに限定されず任意の凹部形状を採用することができ、例えば錐体や柱体のような形状であってもよい。本実施形態のように表面シートの肌当接面側にも凹凸形状がある場合は、肌当接面側の形状に合わせて錐体(円錐、円錐台、角錐、角錐台、斜円錐等など)のような形状であることが好ましい。本実施形態において、頂部7aとは裏面凹部7の立体空間の内壁をなす表面シート1の非肌当接側面のうち最も高い位置(Z方向)の部位であり、底部7cとは同空間のうち最も低い位置(Z方向)の部位である。したがって裏面凹部7と裏面凸部8とが交互に繰り返す凹凸形状にあっては、裏面凹部の底部7cは裏面凸部8の頂部8aに一致することとなる。なお前述の裏面凹部7の頂部7aや底部7c(裏面凸部の頂部8a)は、曲面上の頂点として示しているがこれに限らずその周辺が平面状であってもよい。その場合、頂部7aは該平面の中央点あるいは平面の中でも最も高い地点、底部7c(裏面凸部の頂部8a)は該平面の中央点あるいは平面の中でも最も低い地点と定めることができる。この定義において、前述の裏面凹部7の深さ(h)とは、表面シート1の非肌当接側面の高低差をいい、頂部7aから底部7cまでの距離である(図2−1(b)参照)。また同様に、前述の進入部71の深さ(h)とは、底部7cから進入部71の肌当接面側の最も高い位置との間の距離である(図2−1(c)参照)。
【0018】
次に図3を参照して、本実施形態の基本構造部分である裏面凹部7についてさらに詳述し、その作用効果について述べる。図3は、裏面凹部7における表面シート1、被覆シート32及び吸収性コア31の関係を模式的に示す説明図である。図3では(a)及び(b)の2パターンで示されている。(a)のパターンでは、進入部71の深さ(h)は、裏面凹部7の窪み深さ(h)よりも浅く(h<h)、空間部72とともに深さ(h)の緩衝隙間部73が形成されている。(b)のパターンでは(h=h)であり、空間部72は形成されるものの緩衝隙間部73は形成されていない。
【0019】
図3の(a)及び(b)のいずれのパターンにおいても、裏面凹部7が、表面シート1の非肌当接面側zから肌当接面側zへ向かって形成されていることで、着用者の肌に近い位置に表面シート下の液保持性の吸収体3の内部空間が形成される。これにより、内部空間への液の透過距離が短くなり、液の吸収性の向上に効果的である。さらに裏面凹部7に進入部71があることで、親水性の高い被覆シートが肌に近い位置となり、排泄液の吸収性コア31への素早い引き込みを確実なものとすることができる。この液引き込み性の観点から、裏面凹部7における側壁部7bと進入部71とが当接しその界面において隙間なく密着して接合されていることが好ましい(以下、接合部74という。)。これにより表面シート1にある排泄液を進入部71が直接的に引き込むことができる。その接合部74の形成方法としてホットメルト接着剤等で接着する方法があるが、接着剤の膜を形成することなくスプレー塗布等により両者の繊維同士を点接合することが好ましい。これにより、液透過性の不織布からなる側壁部7b(表面シート1)の粗な繊維間距離を維持して液を素早く透過させ、かつ、親水性の高い素材からなる進入部71(被覆シート32)が液の吸引力となって直接的に液を内部つまり吸収性コア31へと取り込むことができる。このような裏面凹部7における部材間の構造は、排泄液を拡散させずに素早く引き込む観点から、少なくともおむつ10の股下部Cに配されることが好ましい。
【0020】
以上の液の引き込み性を効果的なものとするためには、進入部71の深さ(h)は、裏面凹部7の窪み深さ(h)に対して、50%以上であることが好ましく、75%以上であることがさらに好ましい。上記下限以上とすることで、表面シート1の特に頂部7aの液残り量を低減することができる。なお実際的には、進入部71の裏面凹部7への入り込みの深さ(h)は、各裏面凹部7において必ずしも均一ではなかったり、場合によっては進入部71が実質的に形成されない裏面凹部7がまぎれたりすることもあり得る。この場合、裏面凹部の全体のうち、進入部71の深さ(h)が前記50%以上となるものの数が50%以上あることが好ましく、70%以上あることがさらに好ましい。上記下限以上とすることで、液吸収後、肌に触れる液量を低減することができる。
【0021】
さらに前記好ましい範囲にあって、(h<h)となる(a)パターンでは、液の引き込み性の向上を実現しつつ、緩衝隙間部73があることによって固有の作用を奏し得るので好ましい。具体的には、表面シート1側から加わる力の吸収体3への影響を和らげることができる。また、あえて肌に最も近い位置にある裏面凹部7の頂部7aが進入部71と接しないことで、進入部71に水分が含まれていても液戻りを抑制でき、表面シート1の良好なドライ感を実現できる。他方、(h=h)となる(b)パターンは側壁部7bから頂部7aまで進入部71が入り込んでいるので液の引き込み性の観点から好ましい。従って、表面シート1に形成される裏面凹部7全体のうち(a)パターンと(b)パターンとの比率(a)/(b)は、液の引き込み性が重視される排尿部付近では(b)パターンの比率が高いことが好ましく、液戻り抑制が重視される臀部付近では(a)パターンの比率が高いことが好ましい。排尿部付近での表面シート形成される裏面凹部7の(a)パターンと(b)パターンとの比率(a)/(b)は、液の引き込み性を重視する観点から、4/6〜0/10が好ましく、2/8〜0/10がさらに好ましい。臀部付近での表面シート1に形成される裏面凹部7の(a)パターンと(b)パターンとの比率(a)/(b)は、液戻り抑制を重視する観点から、6/4〜10/0が好ましく、8/2〜10/0がさらに好ましい。
【0022】
前述のとおり、裏面凹部7には空間部72が形成されている(図3の(a)及び(b))。空間部72は、進入部71が引き込んだ排泄液を吸収体3内部で拡散させて吸収性コアの広い面で直接的かつ効率的に吸収させることができる。これにより、表面シート1からの排泄液の吸収速度が向上し、かつ表面シート1の肌当接面側での液の拡散を抑制し得る。また、排泄液の排泄量が一度に多量となった場合でも、空間部72が表面シート1からの液を一時的に保持して液吸収の調整弁ともなり得る。そして空間部72は、パルプ繊維等からなる吸収性コア31とは違って保水力が低いため、吸収性コア31へと液を素早く引き渡すことができる。このように空間部72は、液の調整弁として一時液を保持しつつもすぐに空間が回復し得るので、多量の排泄の場合のみならず、繰り返しの排泄の場合にあっても、十分対応可能である。また吸収性コア31の肌当接側面が実質的に平坦な形状であれば、この空間部72の作用がより効果的なものとなり好ましい。とはいえ吸収性コア31の肌当接側面は平滑である必要はなく、パルプ繊維の毛羽立ち(図2−1(a)の小円(ii)内図参照)が空間部72にまで達していることが吸収性コアへの液の移行がすばやく行われる点で好ましい。
【0023】
(裏面凹部7の深さ(h)、進入部71の深さ(h)、及び緩衝隙間部73の深さ(h)の測定方法)
裏面凹部7の深さ(h)の計測は、頂部7aおよび底部7cを通る表面シート1の断面を拡大し、隣り合う底部7cの接線t(図2−1(c)参照)と頂部7aとの距離を計測することでおこなう。進入部71の深さ(h)の計測は、進入部71の肌当接面側凸部の頂部71aと前記底部7cの接線との距離を計測することでおこなう。その差を緩衝隙間部73の深さ(h)とした。(h=h−h)。計測には、キーエンス製VH−3000マイクロスコープによる拡大と、キャリブレーション設定後の2点間計測法による計測をおこなった。電子顕微鏡を使用しても良い。
【0024】
このようにおむつ10は、裏面凹部7及び進入部71の高い液引き込み力、空間部72の効率的な液の引き渡し性を兼ね備えた構造である。つまり、裏面凹部7、被覆シート32の進入部71、空間部72及び吸収性コア31の構造が協働して作用し、肌側面での液拡散を抑えつつ吸収体内部の吸収性コア31で液を拡散させて確実に液を吸収保持、固定化することができる。これにより、表面シート1側での液残りや液戻りが抑制されて、着用者の肌への良好なドライ感を実現できる。
また、広い面で液を吸収保持できる吸収性コア31においては、裏面シート2側への液の到達面積も広くなり、裏面シート2から湿気を効率的に外部へと排出することが可能となる。その結果、湿気の気化熱によるおむつ温度の低下が裏面シート2側での広い面で実現され、おむつ10内部(裏面シート2と着用者の肌とに囲まれた部分)における水分蒸散が効果的に抑制され、おむつ10のムレをより生じ難くすることができる。
【0025】
上記の作用効果の実現のため、図2−1(b)に示す、裏面凹部7における底部7c−底部7c間の距離(r)と裏面凹部の深さ(h)との比率(r/h)は、1/1〜3/1が好ましく、10/8〜10/4が好ましい。また、裏面凹部の頂部7a−7a間のピッチ(w)と裏面凹部の深さ(h)との比率(w/h)は、1/1〜3/1が好ましく、10/8〜10/4が好ましい。上記下限以上とすることで、被覆シートの進入がしやすい表面シート構造とすることができ、上記上限以下とすることで、空間72の体積を大きく確保することができる。
【0026】
表面シート1において、前述のとおり、裏面凹部7,7の間は裏面凸部8とされており、裏面凸部8には頂部8aを有することが好ましい。裏面凸部8においては、図3に示すとおり、表面シート1と吸収性コア31とが被覆シート32を介して頂部8aでの接触とされ、該接触面積を好適に抑えることができる。この吸収性コア31との接触面積を抑制することで、吸収性コア31上での液拡散が円滑となり吸収速度が短縮するほか、液吸収後での表面シート1側への液戻りが抑制され、前記裏面凹部7におる構造と相俟って、さらに表面シート1での濡れ抑制に効果的である。
【0027】
さらに表面シート1において、その肌当接面側は、裏面凹部7及び裏面凸部8の起伏に合わせて、表面凸部78及び表面凹部88が繰り返す凹凸形状であることが好ましい。この表裏一体となった凹凸形状は、平面方向に複数配置されて表面シート1全体として多方向に凹凸の繰り返しが形成されることが好ましい(図4参照)。この表面シート1の形状によって、吸収性コア31と表面シート1との接触面積を低減できるだけでなく、着用者の肌と表面シート1との接触面積をも低減することができる。この接触面積の低減により肌の濡れ抑制にさらに効果的であり、凹凸部分で通気性も向上するのでムレ防止にもさらに効果的である。また表面シート1が両面において凹凸形状であれば、三次元的な動きに対してもよく追従して両面において点で支持される立体的なクッション性が発現する。表面凸部78の頂部78aが丸みを帯びた曲面形状であれば、このクッション性と相俟って柔らかな肌触り感が得られる。
【0028】
これに加えて表面シート1の凹凸形状には、図4に示すとおり、表面凸部78から表面凹部88へ向かって下り傾斜の側壁面88b(=78b)が形成され、表面凹部88が独立したすり鉢状又はカップ状にされていることが好ましい。これにより排泄液の捕集性と液吸収性能の向上がより効果的なものとなる。この点につき、図5を参照して説明する。図5は、図2−1(a)の所定の断面の一部を拡大して示した一部拡大断面図である。なお、この断面として示す凹凸の列(k列)に対し、その奥の凹凸の列(k列)については、液透過の理解のため煩雑さを避けて裏面凸部は省略し表面凸部のみを示した。本実施形態において、例えば、排泄液aは表面凸部78の頂部78aよりもその側壁部78b(=88b)を下って(矢印b)表面凹部88の頂部88a付近に溜まり易く、平面方向へは移動し難くなる。これにより、表面シート1の肌当接面側での排泄液の拡散性がさらに抑えられ、かつ、該排泄液を厚み方向に肌から遠い位置へと移動させることができる。また表面凹部88に移動した排泄液は、該側壁部88b(=裏面凹部7の側壁部7b)から内部の接合部74を介して進入部71に吸引され(b)、空間部72へと引き込まれる。そして空間部72から平面方向へと液が拡散され(矢印b)、吸収性コア31へと引き渡されて(矢印b)固定化される。なお、矢印bからbまでは、前述の基本構造部分である裏面凹部についての作用機序である。このように表面凸部78及び表面88の凹凸形状が裏面凹部7の機能をより効果的なもとすることができる。
【0029】
表面シート1の非肌当接面側において、個々の裏面凸部8が複数の裏面凹部7に囲まれて平面方向に相互に独立配置とされ、個々の裏面凹部7はその空間が平面方向に相互に連接されていることが好ましい。前記の独立配置とは、裏面凸部8,8同士が完全に離間して全く分離したものに限らず、少なくとも頂部8a周辺が分離したものであれば一部の連接しているものをも含む。この好ましい配置について図6を参照して説明する。図6は、表面シートの非肌当接面側における裏面凹部と裏面凸部との関係を平面視により模式的に示す説明図であり、頂部7a及び8aの配置関係を基に簡略化しモデル化して示している。具体的には、裏面凹部7の頂部7aを白い円とし、裏面凸部8の頂部8aを黒い円として示した。図6において、頂部8a−頂部7a−頂部8aの間、頂部7a−頂部7aの間、頂部8a−頂部8aの間のそれぞれの領域が側壁部となる。そのうち、頂部8a−頂部8aの間の領域の側壁部は、前記好ましい配置の理解のため、細長い砂時計形状の図形で示し符号mとした。なお前記側壁部は、裏面凹部7及び裏面凸部8を連続的に形成する部分であり、前述の側壁部7b及び8bのいずれをも意味する。
【0030】
図6に示すとおり、裏面凸部8の頂部8a−頂部8aの間には側壁部mが配されている。この側壁部mは、裏面凸部8の頂部8aを完全に繋ぐ形状ではなく、図6が示す細長い砂時計形状のように、その中央部分でシート厚み方向(図2−1(b)におけるzからzの方向)に括れた形状であることが好ましい。その括れ部分で裏面凸部8,8は不完全ではあるが分断されそれぞれ独立となり、側壁部mの括れ部分で裏面凹部7はその空間が連接される。つまり、表面シート1の非肌当接面側において、頂部8a−頂部7a−頂部8aの間だけでなく、頂部8a−頂部8aの間が凹凸形状であることで、裏面凹部7,7同士を繋ぐ空間が形成されることとなる。例えば、図7に示すように、側壁部mがアーチ状に形成されていることが好ましい。側壁部mのアーチ状に沿って各裏面凹部7の空間は互いに図6や図7に付した白抜き矢印のように自由に往来可能な状態となる。表面シート1がこの好ましい形状であれば、この形状に沿って被覆シート32の進入部71が形成されて、その下の各空間部72も互いに連接した構造となる。これにより、空間部72に引き込まれた排泄液は、図6,7に示す白抜き矢印のように、裏面凹部7の支柱をより分けて自由に拡散することができ、吸収性コア31のより広い面で排泄液を効率的に吸収保持し、固定化することができる。
【0031】
おむつ10の図3や図5に示す液の吸収過程において、裏面凹部における表面シート1の不織布の繊維密度が頂部7aから底部7cへと高まる密度差または密度勾配があることが好ましい。こうすることで肌当接面側から素早く液を透過させて、より力強く液を内部へと引き込むことができる。この密度差、密度勾配は、例えば、図2−1(b)に示す裏面凹部7の所定断面において、頂部7aから底部7cに亘る表面シート1を裏面凹部7の高さ(h)の三等分(A部、B部、C部)とし、これらにおける各繊維密度(n,n,n)の平均を比較することで示すことができる。A部、B部、C部の繊維密度は、(n)<(n)<(n)が好ましく、その比率(n/n/n)は、2/6/10〜8/9/10が好ましく、3/5/10〜5/7/10がさらに好ましい。上記下限以上とすることで、肌触りの良さを確保するでき、上記上限以下とすることで、表面シート1の液残りを低減することができる。
【0032】
(密度の測定方法)
前述の裏面凹部7における表面シート1の頂部7a,側壁部7b,底部7cの密度(n,n,n)は、以下の方法により測定することができる。
裏面凹部7における深さ(h)を基準に、頂部7aから底部7bまでの表面シート1の部分を三等分したそれぞれをA部、B部、C部とし、表面シートの頂部7aおよび底部7bを通る切断面を、下記走査電子顕微鏡を用いて拡大観察(繊維断面が30から60本計測できる倍率に調整;150〜500倍)して、一定面積あたりの前記切断面によって切断されている繊維の断面の数を数えた。次に1mm辺りの繊維の断面数に換算し、これを繊維密度(本/mm)とした。測定は3ヶ所行い、平均してそのサンプルの繊維密度とした。
・走査電子顕微鏡;日本電子(株)社製のJCM−5100(商品名)
【0033】
(裏面凹部及び表面シートの断面形状の変形例)
おつむ10において、裏面凹部7の断面形状は、前述の形態(図2−1(b)参照)に限らず、前述の液吸収性を有するものであれば任意の形状とすることができる。例えば、図8に示すような、頂部7aが尖塔形状のもの(a)や、頂部7aが複数あるもの(b)、頂部7aが平坦なもの(c)、頂部7aが側壁部7b,7b間の幅に対して膨らんでいるもの(d)などが挙げられる。同様に、表面シート1の断面形状は、本実施形態の凹凸形状に限定されず、裏面凹部とその下の被覆シート32及び吸収性コア31との配置関係を可能とするものであれば任意の形状とすることができる。例えば、図9に示すような、肌当接面側が平坦な形状(a)、裏面凹部7,7間が離間し裏面凸部の頂部が平坦な形状(b)などが挙げられる。図9(b)のような形状の場合、裏面凹部7の底部7cは、裏面凸部8の頂部8aのある平面と裏面凹部7の側壁部7bの局面との交差部分である。
【0034】
(吸収性コアの変形例)
さらにおむつ10において、吸収性コアの形状は、本実施形態の肌当接側面が平坦な形状に限定されず、内部へ取り込んだ液を広く拡散させて素早く吸収保持させ固定化させることができるものを任意に採用することができる。例えば、図10に示すように、溝状の凹部91、該凹部に区分されたブロック状の突出吸収部93、及び凹部91に対応して該突出吸収部93の一面側を繋ぐ凹部吸収部94からなる吸収性コア90(図10(a)),90a(図10(b))などが挙げられる。この吸収性コアを用いた場合、空間部72に引き込まれた液は、凹部91やその下の凹部吸収部94に沿って拡散され各突出吸収部93に分散して吸収保持され固定化される。このような経路によって液が広い範囲で確実に固定化されるので、表面シート側への液戻りが生じ難い。さらにこの吸収性コア90及び90aにおいては、凹部吸収部94が突出吸収部93よりも低坪量とされていると、凹部吸収部94での通液抵抗が軽減されて液拡散がし易く、また液保持性が低減されて突出吸収部93への液の移行がなされ易くなる。また同様の観点から、低坪量の凹部吸収部94が高坪量の突出吸収部93よりも低密度であることが好ましい。この吸収性コア90及び90aは、凹部91のある面、低坪量の凹部吸収部94の面のいずれの面を肌当接面側にしてもよく、吸収性物品の目的に応じて任意の配置とすることができる。
この吸収性コア90又は90aを採用した場合、少なくとも排泄部対応領域を含む股下部Cにおいて、凹部91又は凹部吸収部94が裏面凹部7の空間部72と重なる配置であることが好ましい。これにより空間部72にある液が凹部91又は凹部吸収部94へと移行され易く、素早く拡散して固定化され易い。
【0035】
(裏面凹部7及び進入部71の形成方法)
図2−2に示すような裏面凹部7及び進入部71を有する吸収性物品は、この種の物品における通常の製造工程において得ることができる。例えば、おむつの組み立て過程で吸収体と表面シートとの積層段階で、凹凸部が形成された加圧ロールと該加圧ロールと対向配置されたアンビルロールとの間に、表面シート1が前記加圧ロールに当たるようにして前記積層物を導入して部分的に加圧及び加熱することにより形成することができる。その際、表面シート1の不織布と被覆シートとが密着して裏面凹部が形成されるよう、ホットメルト接着剤をスロットスプレー塗工、スパイラル塗工等で間欠的に接着することが好ましい。また、被覆シートと吸収性コアとの間はスパイラル塗工等でより疎に接着することが好ましい。この表面シートと被覆シートとの間の接着剤塗布密度(q)は、被覆シートと吸収性コアとの間のホットメルト接着剤の塗布密度(q)よりも高くしておくことが好ましく、その比率は(q/q)は2/1〜10/1が好ましく、3/1〜5/1がさらに好ましい。さらに前記加圧ロールで裏面凹部を形成する場合、図4に示すような凹凸形状や図9に示すような凹凸形状を予め有する賦形シートを用い、さらに被覆シートとして繊維の毛羽立ちのあるものや襞や皺があって伸縮性のあるものを用いれば、より裏面凹部における表面シート1と進入部71との密着性が高められ、より深く入り込んだ進入部71が形成され得るので好ましい。
【0036】
前記賦形シートの製造は次のようにして行うことができる。融着する前の繊維ウェブを、所定の厚みとなるようカード機からウェブ賦形装置に供給し、多数の突起を有し通気性を有する台座の上に上記繊維ウェブを定着させる。次いで、その台座上の繊維ウェブに熱風を各繊維が適度に融着可能な温度で吹きつけて、前記台座上の突起にそって繊維ウェブを賦形するとともに、各繊維を融着させる。このときの熱風の温度は、繊維ウェブを構成する熱可塑性繊維の融点に対して0〜70℃高いことが好ましく、5〜50℃高いことがより好ましい。熱可塑性繊維としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン系、ポリエステル系、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系、ポリアクリルニトリル系等、またはこれら2種類以上からなる芯鞘型、サイドバイサイド型の複合繊維等を挙げることができる。熱可塑性繊維として、低融点成分及び高融点成分を含む複合繊維を用いる場合、繊維ウェブに吹き付ける熱風の温度は、低融点成分の融点以上で、かつ高融点成分の融点未満であることが好ましい。繊維ウェブに吹き付ける熱風の温度は、低融点成分の融点+0℃〜高融点成分の融点−10℃であることがより好ましく、低融点成分の融点+5℃〜高融点成分の融点−20℃であることが更に好ましい。繊維ウェブ及び不織布は、熱可塑性繊維を、30〜100質量%含んでいることが好ましく、より好ましくは40〜80質量%である。繊維ウェブ及び不織布は、本来的に熱融着性を有さない繊維(例えばコットンやパルプ等の天然繊維、レーヨンやアセテート繊維など)を含んでいてもよい。
繊維ウェブを賦形する際の熱風の風速は、賦形性と風合いの観点から20〜130m/秒とすることがより好ましく、より好ましくは30〜100m/秒である。風速がこの下限値以上であると立体感が十分となり、クッション性と排泄物の捕集性の効果が十分に発揮され好ましい。風速がこの上限値以下であるとシートが開孔せず、耐圧縮性が良好に維持されるため、クッション性と排泄物の捕集性の効果が十分に発揮でき好ましい。
連続生産を考慮すると、上記台座を搬送可能なコンベア式またはドラム式のものとし、搬送されてくる型付けされた不織布を、ロールで巻き取っていく態様が挙げられる。なお、本実施形態の不織布についてMD方向及びCD方向をどちらに向けてもよい。
【0037】
表面シート1、裏面シート2、吸収体3及びサイドシート4の形成材料としては、通常吸収性物品に使用されているものを用いることができる。
表面シート1としては、例えば、親水性不織布が好ましく、エアスルー不織布、ポイントボンド不織布、スパンボンド不織布、スパンレース不織布、立体賦形不織布と呼ばれている不織布で、その繊維がコットン等の天然繊維や、ポリプロピレンの単繊維、ポリプロピレンとポリエチレンの複合繊維、ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンの複合繊維等で親水化処理が施された繊維が好ましく、その坪量15〜50g/mのものが好適に使用できる。また、表面シート1の股下部分には、表面シート1の非肌面側に親水性穴開きフィルムや親水性不織布が部分的に重ねられていてもよい。
【0038】
裏面シート2としては、例えば、防水性があり透湿性を有していれば特に限定されないが、例えば疎水性の熱可塑性樹脂と、炭酸カルシウム等からなる微小な無機フィラー又は相溶性のない有機高分子等とを溶融混練してフィルムを形成し、該フィルムを一軸又は二軸延伸して得られる多孔性フィルムが挙げられる。前記熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィンが挙げられる。該ポリオレフィンとしては、高〜低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等が挙げられ、これらを単独で又は混合して用いることができる。
【0039】
吸収体3としては、通常吸収性物品に用いられるものを用いることができる。具体的には、吸収性コアとしては、例えば、繊維集合体又はこれと高吸収性ポリマーとを併用させたもの等を用いることができる。繊維集合体を構成する繊維としては、パルプ繊維等の親水性天然繊維や、合成繊維(好ましくは親水化処理を施したもの)等を用いることができる。坪量は特に限定されないが、150g/m〜500g/mが好ましい。
また吸収性コアを被覆する被覆シートとしては、例えば、親水性のティッシュペーパー等の薄手の紙(薄葉紙)、クレープ紙、コットンやレーヨンなどの親水性繊維からなる不織布、合成樹脂の繊維に親水化処理を施してなる不織布、例えばエアスルー不織布、ポイントボンド不織布、スパンレース不織布、スパンボンド不織布、スパンボンド−メルトブローン−スパンボンド(SMS)不織布等からなるものを用いることができる。
【0040】
前記サイドシート4としては、例えば、撥水性不織布が好ましく、具体的には、スパンボンド不織布、スパンボンド−メルトブローン(SM)不織布、スパンボンド−メルトブローン−スパンボンド(SMS)不織布等が用いられる。サイドシート4の立体ギャザー用弾性部材やレッグギャザー用弾性部材としては、この種の物品に用いられる通常の弾性部材を用いることができ、例えば素材としては、スチレン−ブタジエン、ブタジエン、イソプレン、ネオプレン等の合成ゴム、天然ゴム、EVA、伸縮性ポリオレフィン、ポリウレタン等を挙げることができ、形態としては、断面が矩形、正方形、円形、多角形状等の糸状ないし紐状(平ゴム等)のもの、或いはマルチフィラメントタイプの糸状のもの等を用いることができる。
【0041】
本発明の吸収性物品において、吸収性コアは、その内部で液を吸収保持し固定化する機能を有するものであれば前記実施形態のものに限定されず、例えばシート状の薄型のものであってもよい。また本発明の吸収性物品において、被覆シートは、前記吸収性コアの少なくとも肌当接面側を覆って液を前記吸収性コアへと引き渡す機能を有するものであれば前記実施形態のものに限定されず、例えば液拡散性能を具備する部材であってもよく、また単層に限らず複数層であってもよい。
本発明の吸収性物品は、上記実施形態の展開型使い捨ておむつに限定されず、表面シートと被覆シートと吸収性コアとの関係を有するものを含む、例えば、パンツ型使い捨ておむつや、パンツ型使い捨ておむつであって一部を破断するとテープ型として利用可能なおむつであってもよく、また尿とりパッドや生理用ナプキン、パンティライナー、軽失禁パッドであってもよい。また本発明の吸収性物品は、経血に限らずその他、尿、オリモノ、軟便等に対しても効果的である。また本発明の吸収性物品は、本実施形態のものに用途や機能に合わせ適宜他の部材を組み込んでもよい。
【実施例】
【0042】
以下に、本発明について実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明がこれにより限定して解釈されるものではない。
【0043】
[実施例1]
ウェブ賦形装置に芯がポリエチレンテレフタレートで鞘がポリエチレンからなる芯鞘型複合繊維のウェブを定着させ、その台座上の繊維ウェブに熱風を吹きつけて、前記台座上の突起にそって繊維ウェブを賦形するとともに、各繊維を融着させることで表裏面とも凹凸形状(裏面凹部の頂部7a−7a間のピッチ(w)5mmと裏面凹部の深さ(h)2mm)である、図4に示す形状の賦形シートを形成し表面シートとして用いた。非透液性の裏面シート、吸収性コア(パルプ坪量200g/m、高吸収性ポリマー坪量286g/m)を親水紙で被覆した吸収体、表面シートの順に積層し、それぞれをホットメルトで接着した。裏面シート、吸収体形状、構成は対照の花王株式会社製のおむつ「メリーズさらさらエアスルー Mサイズ」(商品名)現行市販品と同一とした。この時、表面シートと被覆シートとの間の接着剤塗布密度(q)は15g/m、被覆シートと吸収性コアとの間のホットメルト接着剤の塗布密度(q)は5g/mとした。この積層サンプルをおむつ製品パック圧相当で密封し1ヶ月室温保存することで被覆シートの進入部を形成させた。
該裏面凹部の深さ(h)は平均1.5mmであった。また進入部の入り込み深さ(h)は平均1.3mmであった。(h)/(h)が50%以上となる裏面凹部の割合は95%であった。また、(h)/(h)が50%以上となる裏面凹部のうち、完全(100%)入り込んでいるもの割合は、60%であった。
【0044】
[実施例2]
実施例1の積層サンプルをおむつ製品パック圧相当で密封し3日間室温保存したものを実施例2のサンプルとした。
(1)該裏面凹部の深さ(h)は平均2.0mmであった。
(2)また進入部の入り込み深さ(h)は平均0.8mmであった。
(3)(h)/(h)が50%以上となる裏面凹部の割合は30%であった。
(4)(h)/(h)が50%以上となる裏面凹部のうち、完全(100%)入り込んでいるものの割合は5%であった。
【0045】
[比較例1]
花王株式会社製の市販の使い捨ておむつ(商品名「メリーズさらさらエアスルー Mサイズ」)と同仕様でサブレイヤのみを非搭載とした手作り品を比較例1のサンプルとした。
【0046】
[比較例2]
芯がポリエチレンテレフタレートで鞘がポリエチレンの芯鞘型複合繊維からなるフラットなエアスルー不織布を表面シートとし、実施例1、2と同様に非透液性の裏面シート、吸収性コア(パルプ坪量200g/m、高吸収性ポリマー坪量286g/m)を親水紙で被覆した吸収体、表面シートの順に積層し、それぞれをホットメルトで接着した。前述の繊維ウェブを賦形する装置の台座のみを取り出し、サンプル表面シート上に台座突起が表面シート側に接するように載せて加圧し1ヶ月静置して、表面シート、吸収体一体型の凹凸形状を形成させ比較例2のサンプルとした。
【0047】
[性能評価]
実施例および比較例のサンプル(使い捨ておむつ)について、表面シート、被覆シート、吸収性コアの各層における液拡散面積を測定した。測定試験としては、下記(1)及び(2)の2種類の試験によって行った。なお、吸収性コアでの液拡散とは、サンプルの下に投影装置を置き、光を照射した際に透過して得られる赤色の人工尿の拡散領域のことである。
(試験1)
まず、実施例1,2及び比較例1,2の各サンプルについて、平面に展開したサンプルの腹側吸収体端部から長手方向で背側端部に155mmのところの吸収体幅方向中央部を液注入点として、ポンプを用いて40gの人工尿を5g/secの速度で注入した。人工尿の組成は、尿素1.94重量%、塩化ナトリウム0.795重量%、硫酸マグネシウム0.11重量%、塩化カルシウム0.062重量%、硫酸カリウム0.197重量%、赤色2号(染料)0.010重量%、水96.88重量%及びポリオキシエチレンラウリルエーテル(約0.07、%)であり、表面張力を53±1dyne/cm(23℃)に調整したものである。10分間静置した後、表面シートを剥離して写真撮影し人工尿の拡散面積をOHPシートに写し取った。表面シートを剥離した後の吸収体上部被覆シートについても同様に写真撮影し人工尿の拡散面積をOHPシートに写し取った。サンプルを投影台上に載せて裏面シート側から光を照射して透過して得られる人工尿の拡散領域をOHPシートに写し取った。OHPシートの画像をスキャナーで取り込み画像解析ソフトImage−Pro Plus(日本ローパー製)を用いて拡散面積を算出した。
【0048】
(試験2)
実施例1及び比較例1の各サンプルについて、平面に展開したサンプルの腹側吸収体端部から長手方向で背側端部に155mmのところの吸収体幅方向中央部を液注入点として、ポンプを用いて40gの人工尿を5g/secの速度で注入した。10分間静置した後、上部から写真撮影し、さらに同注入点から40gの人工尿を5g/secの速度で注入した。さらに10分間静置した後、試験1同様に拡散面積の解析を行った。試験2では40g注入後の拡散面積の解析は不可能である。試験2では、2回目の人工尿注入前に撮影した写真画像によって、1回目の人工尿注入による表面シート上の人工尿拡散状態が試験1の同サンプルと同様であることを確認した。
【0049】
上記の評価結果を下記表1及び2に示す。また前記液拡散試験で使用したサンプルの液の拡散範囲を図11及び12で示す。表1及び図11は上記(試験1)の測定結果を示し、表2及び図12は上記(試験2)の測定結果を示す。表2及び図12での40g注入の値は試験1で実施した実施例1および比較例1のそれぞれの値を比較の為に並べてある。図11及び12において、表面シートの液の拡散範囲は撮像した代用写真に黒色のサークルを付した部分として示しており、被覆シート及び吸収性コアの液拡散範囲は黒線で囲んだ部分として示している。図11及び12に示される各サンプルにおける各層間の液拡散面積の変化や、さらに実施例1,2及び比較例1,2間の面積の相違は、表1及び2の測定結果に対応したものである。
【0050】
【表1】

【0051】
【表2】

【0052】
表1に示す結果及び図11から明らかなように、実施例1及び2の使い捨ておむつは、比較例1に比して対して、表面シートでの液の拡散を抑制しており、その一方で、被覆シートや吸収性コアといった表面シート下の内部構造においては、比較例と遜色なく十分液拡散がなされている。さらに表2に示す結果及び図12から明らかなように、実施例1の使い捨ておむつは、試験2における2回の液注入と試験1における1回のみの液注入とでは表面シートでの液拡散面積は実質同じ広さに抑えられていた。また実施例1の使い捨ておむつは、表面シートの液拡散の抑制にもかかわらず、吸収体内部ではその液累積量に応じて十分拡散されていた。これに対し、比較例では、試験2における2回の液注入後の表面シートの液拡散面積は、試験1における液1回のみの注入のものの約2倍の面積となってしまっていた。
以上のことから、実施例の使い捨ておむつは、繰り返しの排泄など液量の多寡に関わらず、表面シートでの液の拡散を抑えつつ、液を素早く引きこんで吸収体内部で拡散させ効率よく吸収保持させることができ、これにより肌の濡れを抑え良好な装着感をもたらすという優れた作用効果を奏することが分かった。
【符号の説明】
【0053】
1 表面シート
2 基盤シート
3 吸収体
31吸収性コア
32,33被覆シート
7 裏面凹部
71 進入部(被覆シートの入り込み部分)
72 空間部
73 緩衝隙間部
74 接合部
8 裏面凸部
78 表面凸部
88 表面凸部
10 吸収体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
肌当接面側に配置される液透過性の表面シート、非肌当接面側に配置される裏面シート、及び該両シートに介在された吸収体を有する吸収性物品であって、
前記表面シートは不織布からなり、前記吸収体は吸収性コアとこれを被覆する被覆シートとを有し、
前記表面シートの非肌当接面側には肌当接面側へと窪んだ裏面凹部が複数、隣接して分散配置されており、該裏面凹部に前記被覆シートが入り込み、該入り込んだ被覆シートと前記吸収性コアとの間に空間部が存在する吸収性物品。
【請求項2】
前記表面シートの非肌当接面側は、前記裏面凹部の周期的な配列によって凹凸形状となっている請求項1記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記表面シートの肌当接面側が凹凸形状である請求項1又は2記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記吸収性コアの肌当接面側は平坦な形状である請求項1〜3のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記表面シートの前記裏面凹部における前記被覆シートの入り込み深さが、前記裏面凹部の窪み深さの50%以上である請求項1〜4のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記裏面凹部において、前記表面シートと前記被覆シートの入り込んだ部分との間に隙間部がある請求項1〜5のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記裏面凹部には、前記被覆シートと前記表面シートとが接合されている部分がある請求項1〜5のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記表面シートの非肌当接面側には、複数の裏面凹部と複数の裏面凸部とが配されており、個々の前記裏面凸部は複数の前記裏面凹部に囲まれて相互に独立配置とされ、前記裏面凹部はその空間が相互に連接されている請求項1〜7のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項9】
前記裏面凹部は、表面シートからなる頂部、側壁部及び底部を有し、前記頂部から底部に向けて高まる表面シートの不織布繊維の密度差又は密度勾配がある請求項1〜8のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項10】
前記吸収性コアは繊維密度の粗密構造を有し、該吸収性コアの密度の粗な部分と前記空間部との重なる部分がある請求項1〜9のいずれか1項に記載の吸収性物品。

【図1】
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【図2−1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図2−2】
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【図7】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−17530(P2013−17530A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−151210(P2011−151210)
【出願日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】